女「あなたの財産が目当てなの」御曹司「なんというビッチ!」(34)

女「あたしと……結婚を前提にお付き合いして下さい!」

御曹司「!」

御曹司「ボクで……いいのかい?」

女「ええ……」

女「といっても、あなたはどうでもよくて、あなたの財産が目当てなの」

御曹司「おおっ、なんというビッチ!」

御曹司「ボクなんか、お金持ちの息子ってことしか取り柄のない」

御曹司「アホで、マヌケで、グズで、デブで、ボンクラな、典型的バカボンボンだけど」

御曹司「こんなボクにはキミのようなビッチこそがふさわしい!」

御曹司「ぜひ、ボクの財産目当てに婚約してくれたまえ!」

御曹司「せっかくだ。もう二人きりで暮らそうじゃないか!」

女「……」

御曹司「よ~し、今日もお肉食べるぞ~! デザートにケーキ食べるぞ~!」

御曹司「ご飯、まだ~?」チンチン

女「はい、できたわよ」

御曹司「!?」

御曹司(なんだこれは!?)

御曹司(肉は少なめで、魚と野菜を中心としたメニューがおよそ30品目以上!)

女「うふふ……どう?」

女「大好きな食事で、好きなものを食べられない気分は……」

女「こんなこと、初めてでしょう?」

御曹司「う、ぐぐ……なんてむごいことを!」

御曹司「ボクのストレスをためて、衰弱死させるつもりだな!?」

女「そのとおりよ」

御曹司「なんというビッチ! その心意気が気に入った!」

御曹司「いっぱい食べて、キミの目的が達せられるよう努力するよ!」モグモグ…

御曹司「ふぅ~、今日もゴロゴロして過ごすかぁ~」ゴロゴロ…

女「ダメよ」

御曹司「え」

女「ジョギングしましょう! 一緒に!」

女「あなたを疲れさせることで、少しでも寿命を縮めないとね!」

御曹司「まいったなぁ~。しかし……キミの誘いに乗ってやろう!」

御曹司「えっほ、えっほ、えっほ」スタタタタ…

女「ペースが早すぎるわ。もっとゆっくり!」タッタッタ…

御曹司「ひええ~、自分のペースで走らせてくれないのかい!? ひどいや!」タッタッタ…

女「あったりまえじゃない。あたしをなんだと思ってるの!?」タッタッタ…

女「あなたを苦しめることに、手段を選ばないわよ!」タッタッタ…

御曹司「う~む、恐ろしいほどにビッチだ……」タッタッタ…

御曹司「なんかもう、体が軽くなって、寿命が30年は縮んだ気がするねぇ」

女「と、ここで……さらに寿命を縮めさせるわ」

御曹司「ダメ押し!?」

女「あなた、今まで働いたことがないみたいだけど、働いてもらうわ」

御曹司「え~っ! ボク、働く必要なんかないんだよ?」

御曹司「だって、なにもしなくてもお金がどんどん入ってくるんだもん」

御曹司「それにさ、パパの会社手伝ったって、どうせ役に立たないし……」

女「黙れや!」

女「さあ、親の金に頼らずバリバリ働くのよ!」

女「んでもって、過労死しなさい!」

女「過労死なら、あたしが疑われることもないしね!」

御曹司「ひええ~っ!」バリバリ…

女「分からないところは教えてやるわ!」

御曹司「ありがとう! 徹底的にビッチだねぇ、キミは!」バリバリ…

御曹司「いやぁ~、よく働いた!」

御曹司「さぁってと、お酒飲もう! ナイアガラの滝でも浴びるようにね!」

女「ダメよ」

女「お酒はほどほどになさいな」

御曹司「ひえぇ~、酒を止められちゃうなんて!」

御曹司「キミは……そうやってボクを追い詰めて、殺す気だな!? そうなんだろう!?」

女「当然」

女「だってあたしは、あなたに少しでも早く死んで欲しいんだもの」

女「だからあなたも、あたしの期待に応えてちょうだいね!」

御曹司「惚れ惚れするほどのビッチっぷりだねぇ」

御曹司「よぉ~し、将来の妻の期待にこたえてやるぞぉ!」

御曹司「……」

御曹司「あれから一年……そろそろ結婚する時期になったけど」

御曹司「なぜだ!? ボクはいっこうに死にそうもない!」

御曹司「体重は100キロ近くから60キロ台にまで落ち」

御曹司「フルマラソンを走れる体力を手に入れ」

御曹司「仕事も順調だ!」

御曹司「全部無視してるけど、女性に言い寄られることも多くなった!」

御曹司「せっかく彼女があれほどのビッチっぷりを披露してくれてるっていうのに!」

御曹司「こうなったら死ぬ準備しなきゃ! 死んで財産を残さなきゃ!」

女「あら、その薬はなに? サプリメント?」

御曹司「ああ、これかい? 睡眠薬と毒薬を混ぜたものさ」

御曹司「キミと結婚した後、ボクは死のうと思う」

女「待ちなさい! そんなの許さないわ!」

御曹司「なぜだい? ボクが死ねば、ボクの財産はキミのものになるというのに!」

御曹司「パパたちの財産もいずれはキミのものだ!」

御曹司「なのに、なぜ止めるんだい!?」

女「そ、それは……」

御曹司「ま、まさか!」

御曹司「さては……キミはビッチなんかじゃなかったんだな!?」

女「……」

御曹司「そうか! キミはビッチのふりをした淑女だったんだ!」

御曹司「よくも騙しやがったな! 許さない!」

御曹司「こうなりゃ、どっちにしろ死んでやる! キミへの抗議のためにね!」

女「……」

女「甘いわね」

御曹司「なにっ!?」

女「あなたはビッチとの結婚を望んでいた」

女「もし、あたしが本当のビッチなら、典型的ビッチのように振る舞うと思う?」

御曹司「いや……むしろ、ボクが望まないことをするだろうから……」

御曹司「淑女のように振る舞うだろう!」

御曹司「!」ハッ

御曹司「ま、まさか……!」ガタガタ…

御曹司「まさか、あなたは伝説の……!?」

女「そう、ビッチの中のビッチ……ビッチ姫よ!」

御曹司「うああ、ああ……あぁ……」

女「そして、ビッチのビの字を半濁音に変えて」

女「さらに……小さいツを、伸ばし棒にしてごらんなさい」

御曹司「こ、これは──」

御曹司「ピーチ姫!?」

女「そう、あの伝説の姫と同じ名前になっちゃうの」

御曹司「あわわ……ピーチ姫といったら『日本三大姫』の一人じゃないか!」





ちなみに残り二人は、乙姫と織姫である!

御曹司「ということは、ボクはマリオかい?」

女「あなたは配管工じゃないでしょうが」

女「あなたは──そう、クッパよ!」

御曹司「クッパ!? 『世界四大カメ』の一人じゃないか!」





ちなみに残りは、ガメラ、ミュータントタートルズ、亀仙人である!

女「やっと分かった? あなたはカメだったのよ」

女「鶴は千年、亀は万年……ここまでいえば、もう分かるわね?」

御曹司「はうっ!」ビクビクーン

御曹司「ボクは……長生きしなきゃいけないんだね!?」

御曹司「カメだから!」

女「そう! カメだから!」

女「──って、バカヤロウ!!!」

ドゴォッ!

御曹司「ぐべっ!?」

女「そんなアホな理由で毎食毎食30品目も料理作ったり!」

女「一緒にジョギングしたり!」

女「仕事教えたり!」

女「酒を控えさせたりするわけないでしょーが!」

女「どんだけバカボンボンなのよ、あんた!」

御曹司「……」

女「あたしは……あなたが好きなのよ!」

女「愛しているのよ!」

御曹司「……」

女「いい加減、目を覚ましなさい!」

女「この……いじけボンボンがぁっ!」

ズドッ! ドドドドッ! ドゴォッ!

6HIT COMBO!

御曹司「ぐ、ぐふっ……」

女「あ、やりすぎちゃった……!?」

御曹司「はぁ……はぁ……」ムクッ

御曹司「……」

御曹司「ありがとう。目が覚めたよ」キリッ

御曹司「今までボクは……いくら頑張ってもどうせパパ……父には勝てないと……」

御曹司「自暴自棄になっていた」

御曹司「ボクは……父に負けないような立派な経営者になってみせるさ!」

女「ふふ……これであたしの役目も終わりね」

御曹司「えっ?」

女「あたしはね、実はあなたの父──社長の秘書なの。そして、頼まれたのよ」

女「あなたを更生させてくれってね」

御曹司「なんだって!?」

女「あなたが立派な一人前になった以上、あたしの役目は終わり」

女「もちろん、婚約も破棄。今のあなたなら、あたしよりいい人に巡り合えるはずよ」

女「それじゃあね……」スッ…

御曹司「待ってくれ」

女「!」

御曹司「ボクにとって、キミ以上の相手なんてあろうはずがない」

女「……」

御曹司「結婚しよう」

女「いいの? あたしはずっとあなたにウソついてたのよ?」

御曹司「いいんだよ」

御曹司「だって、ウソつきは泥棒の始まりっていうだろ?」

女「?」

御曹司「そしてキミは──ボクの心を盗んだ泥棒(シーフ)だったんだから!」

女「!」ズキュゥゥゥン

女(口説き文句なんて教えたことないのに……い、いつの間に!?)

女「いいのね? 本当にいいのね?」

御曹司「もちろんさ」

御曹司「バカボンボンとビッチで……二人仲良く生きていこうよ!」

女「……ええ!」





隠密「……」ササッ

隠密「──以上、報告を終わります」

社長「うむぅ~、あいつもようやく一人前となったか! 嬉しいぞぉ~!」

夫人「私も嬉しくてたまりませんわ」

社長「彼女もよくワシの依頼を果たしてくれたよ」

夫人「ところで、あの子と彼女が恋に落ちることも、あなたは計算済みだったの?」

社長「さすがのワシも人の心までは分からんよ」

社長「しかし、あの二人がくっついたらきっとお似合いだ、とは思っていた」

社長「ワァッハッハッハッハッハ……」

~ 結婚後 ~

御曹司「おおっ、今日もおいしそうで栄養がありそうな料理だ!」

御曹司「今日もキミはビッチすぎるよ! 愛してる!」

女「あなたこそ、今日は大きな契約を独力で取られたそうで」

女「まったく、どうしようもないほどバカボンボンね!」








END

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