未央「アイドル辞める、か……」 (48)

 ※アニメシンデレラガールズ第6話のネタバレを含みます。

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未央「…………」トボトボ

未央「明日からどうしよう……」

未央「学校も行きづらくなっちゃったな……」

未央「はぁ……」

 ドンッ

未央「あっ!?」

「きゃっ!」

未央「あ、ご、ごめんなさい! ついぼーっとしてて……大丈夫ですか?」

「あ、はい。私は大丈夫です……って、あ!」

未央「え?」

「あなた……もしかしてさっき、サンセットシティでライブやってた!?」

未央「えっ……」

「やっぱり! あの、私、さっきのライブ観てました! すっごくかっこよかったです!」

未央「……え? あ、ああ……そうなんだ。ありがと……」

「いいなぁ……早く私も、自分のライブやってみたいなぁ」

未央「えっ?」

「あっ、すみません。実は私もアイドル……の見習いみたいなこと、やってるんです」

未央「えっ。そうなの?」

「はい! あっ、申し遅れました! 私……」

可奈「――矢吹可奈といいます! 同じアイドル仲間として、今後ともよろしくお願いします!」

未央「…………」

可奈「あ、ごめんなさい! 仲間なんて失礼ですよね。私はまだ自分のライブもやったことないのに……」

未央「…………」

可奈「……あはは……」

可奈「ええと……ミオさん、でしたっけ?」

未央「! なんで、私の名前」

可奈「あ、なんか上の階にいた応援団みたいな方々がそう呼んでたので……」

未央「…………」

可奈「あっ、もしかして違いましたか? すみません!」

未央「……いや、合ってるよ。本田未央」

可奈「よかった! でも本田さんはすごいですよね」

未央「すごい?」

可奈「はい。実は私も、ちょうど一年くらい前に、今日と同じ会場のミニライブに出たんですけど……」

未央「えっ、そうなの?」

可奈「はい。あっ、でも自分のライブじゃないんです。アイドルの先輩方のバックダンサーとして出演して」

未央「……そうなんだ」

可奈「はい」

未央(……バックダンサー……か)

可奈「でもその時は私、初めてのライブだったってこともあって、すごく緊張しちゃって……」

未央「…………」

可奈「全然上手く出来なくて。最後なんか転倒までしちゃって、先輩方のライブ、台無しにしちゃって……」

未央「…………」

可奈「だから、そんな私から見たら、本田さんはすごいなって思ったんです」

未央「…………」

可奈「バックダンサーとしての出演じゃなくて、自分のライブで、あんなに堂々と歌って、踊れて……」

未央「…………」

可奈「だから、今日の本田さん達の頑張ってる姿を見て、私ももっと頑張らないと! って思ったんです」

未央「……でもさ」

可奈「?」

未央「どれだけちゃんと歌って踊っても……観てくれるお客さんがいないんじゃ、意味無いよね」

可奈「……え?」

未央「…………」

可奈「えっと、今日のライブ……お客さん、結構いたと思うんですけど……」

未央「……あれで?」

可奈「えっ」

未央「あんなんじゃ全然足りないよ! もっとこう、会場全部を埋め尽くすくらいの人が来て、見渡す限りキラキラで、歓声とかもすごくて……!」

可奈「え、えっと……でも確か本田さん達って、今日が初ライブだったんですよね?」

未央「……あー、うん。ただ私達、前にもっと大きな会場でバックダンサーやったことあってさ」

可奈「あっ、そうなんですか。じゃあその時は、もっとたくさんのお客さんが来てくれたんですね」

未央「たくさんなんてもんじゃないよ。もう会場の隅っこまでびっしり!」

可奈「へー」

未央「それで皆手に、なんだっけ。あの光る棒? みたいなの持っててさ。会場全体がまるで光の海みたいだったんだ!」

可奈「あー! わかりますわかります! 私が去年出させてもらったライブもそんな感じでした!」

未央「えっ。そんな大きな会場のライブも出てたの?」

可奈「はい。そっちもバックダンサーとしての出演ですけど」

未央「……へぇ。ちなみにどこの会場?」

可奈「アリーナです」

未央「へぇ……アリーナかぁ……って、アリーナ!?」

可奈「はい」

未央「アリーナって……あのアリーナ?」

可奈「はい」

未央「…………。(それ、でかいなんてもんじゃないんじゃ……)」

可奈「? 本田さん?」

未央「あ、ああ、ごめん。えっとじゃあ、そのライブに出てたアイドルって、やっぱり超有名どころだったりする?」

可奈「はい。765プロの先輩方です」

未央「! 765プロって……あの、ミキミキとか春香ちゃんとか如月千早の?」

可奈「はい」

未央「…………! (出てたんだ……あの765プロのライブに……)」

未央「……ん?」

可奈「? どうかしました?」

未央「えっと、そのライブって、いつあったやつ?」

可奈「去年の秋ですけど」

未央「もう半年以上前か……じゃあ今頃、あなたにもすっごくたくさんお仕事来てたりするの?」

可奈「いやー、それが鳴かず飛ばずといいますか……まだ私、所属事務所も決まってなくて」

未央「えっ。そうなの?」

可奈「はい」

未央「…………」

可奈「オーディションも色々受けてるんですけど、一向に採用されなくて……あはは」

未央「そうなんだ……」

未央(先輩アイドルのバックダンサーやったからって、すぐにデビューできるわけじゃないんだ……)

未央(じゃあ私って、もしかして……)

未央(…………)

未央「……あれ? じゃああなた、765プロの所属じゃないのにライブに出れたの?」

可奈「あ、はい。それはスクールの先生が紹介してくれて」

未央「スクール?」

可奈「はい。アイドル候補生の養成場みたいなところです。今も普段はそこでレッスンしてます」

未央「あー……。(そういえばしまむーもそんなこと言ってたような……)」

可奈「本田さんも、デビューする前はどこかのスクールに通ってたんですか?」

未央「え? いや、私は行ってないよ」

可奈「そうなんですか?」

未央「うん。346プロのシンデレラプロジェクトってのに応募したら採用されたから、そこで事務所も決まったって感じ」

未央(……本当は一回落とされたけどね……)

可奈「あれ? でもそのプロジェクトって最近始まったばっかりですよね?」

未央「そうだよ。よく知ってるね」

可奈「一応同じ業界ですから……。じゃあ本田さんって、アイドルになってからまだほとんど日が経ってない……ってことですか?」

未央「んー、そうだね。ダンスは元々学校の友達とかとよくやってたけど」

可奈「そうなんだ……」

未央「? どうしたの?」

可奈「あ、いえ……世の中にはこういう人もいるんだな、って思って……」

未央「……え?」

可奈「私、もう今のスクールに通い始めてから3年になるんです。なのに未だに所属事務所も決まらず、デビューなんて夢のまた夢で……」

未央「…………」

可奈「これまでやった仕事といえば、さっき言った、765プロの先輩方のバックダンサーくらいだし……」

未央「…………」

可奈「あっ! ご、ごめんなさい。私ったら、つい……」

未央「い、いや……別にいいけど」

可奈「…………」

未央「…………」

未央(スクールに3年……しまむーも、このプロジェクトに受かるまではずっとレッスンばっかりだったって言ってたっけ……)

未央(それにこの子は、私が出たのよりもっと大きな会場のライブにも出てるのに、まだデビューも決まってない……)

未央(じゃあ、私は……)

未央「…………」

可奈「な、なんか暗い話しちゃってごめんなさい。でも私、全然落ち込んでなんかいませんから!」

未央「えっ」

可奈「……実は私、前に一度、アイドル辞めようって思ったことがあったんです」

未央「!」

可奈「そのときはもう、本当に何もかも忘れたくて、捨て去りたくて……でも」

未央「…………」

可奈「私、やっぱりアイドル続けていたいって。憧れの先輩達と一緒のステージに立ちたいって」

可奈「それが私の本当の気持ちだって……気付いたから。だから」

可奈「もう絶対に諦めないって決めたんです。たとえ何があっても、絶対に」

未央「…………」

可奈「それに……私の一番の憧れの先輩が、教えてくれたんです」

未央「? 何を?」

可奈「『上達の速さは人それぞれ。何事も一歩ずつ』って」

未央「…………」

可奈「『アイドルになりたいって思った憧れを忘れなければ、いつか絶対できるようになる』って」

未央「……憧れ……」

可奈「だから私、落ち込んでなんかいないんです」

未央「…………」

可奈「たとえ一歩ずつでも、前に進んでいけば……いつか絶対、憧れのアイドルになれるって信じてますから!」

未央「…………」

可奈「って、また私ったら一方的に……す、すみません!」

未央「あ、いや……」

可奈「大体こんなこと、私が偉そうに本田さんに言うことじゃないですよね。本田さんはもう私より先にデビューして、ライブまでやってるのに……」

未央「…………」

可奈「? 本田さん?」

未央(憧れのアイドル、か……たとえばそう、美嘉姉みたいな……)

未央(会場をお客さんでいっぱいに埋め尽くして、見渡す限り光の海で、歓声も鳴り止まないで……)

未央(――……ああ、そうか)

未央(あれは美嘉姉が、これまでずっと頑張ってきた結果なんだ)

未央(たとえ一歩ずつでも、自分の憧れを胸に、美嘉姉が前に進んでいったから……あのステージがあったんだ)

未央(それに比べて、私は……)

未央(プロジェクトに採用されてから、トントン拍子でここまできたけど)

未央(それは全部、プロデューサーや美嘉姉のおかげだ)

未央(私自身は、まだ何もやってない)

未央(しまむーが、ずっと頑張ってきたようなことも)

未央(この子が、今頑張っているようなことも)

未央(なのに、その先に得られるはずのものさえも、当然に用意されているんだと……勝手に思い込んでたんだ)

未央(いっぱいのお客さんも、光の海も、鳴り止まない歓声も……全部、自分の力で手に入れないといけないものだったのに)

未央(そして、そんな簡単なことにも気が付かないほどに……)

未央(私は……恵まれてたんだ)

可奈「あ、あの……本田さん?」

未央「……え? あ、ごめん。何?」

可奈「あ、えっと……やっぱり気を悪くされちゃいましたよね、すみません!」

未央「え?」

可奈「私なんかが、偉そうな口利いちゃって……本当、ごめんなさ……」

未央「ああ、違う、違うって!」

可奈「……え?」

未央「全然、気悪くなんかしてないって。ていうか、むしろ……」

可奈「?」

未央「……可奈ちゃん? だっけ」

可奈「は、はい」

未央「……ありがとね。可奈ちゃん」

可奈「? え、な、何が……」

未央「あなたの話を聞いて、私、すごく大切なことに気が付いたんだ。だから……ありがとう」

可奈「え、ええっ。わ、私なんてそんな、何も……ただ、先輩に言われた言葉とかをそのまま言っただけで……」

未央「……ねぇ、可奈ちゃん」

可奈「は、はい」

未央「私も、もう絶対に諦めない。……そう、決めたから」

可奈「えっ?」

未央「……ふふっ。何でもない!」

可奈「??」

可奈「じゃあ……今日は色々と、ありがとうございました」

未央「ううん。こっちこそ、本当にありがとう」

可奈「えへへ……。あ、そうだ。ライブ、また観に行ってもいいですか?」

未央「もっちろん! ていうか、事務所にも遊びにおいでよ! しまむーやしぶりんも紹介したいしさ」

可奈「本当ですか!? 是非行かせて頂きます!」

未央「うん、待ってるからね。あ、あとオーディション、受かったら絶対連絡してね。祝勝会しよっ」

可奈「! はい! ありがとうございます!」

未央「それじゃあまたね。これからもお互い頑張ろう!」

可奈「はい! 本田さん!」

未央「あ、それと」

可奈「? はい」

未央「次会う時からは未央、でいいよ」

可奈「じゃあ……改めて、これからもよろしくお願いします! 未央さん!」

未央「ん。こっちこそよろしくね。可奈ちゃん」

可奈「……ふふっ」

未央「……あははっ」

未央「……さて、と」スッ

未央「…………」


未央(今すぐ連絡を取りたい人はたくさんいる)

未央(今すぐ連絡を取らなきゃいけない人も、たくさんいる)

未央(でも、まずは――……)ピッ




未央「…………」

P『はい』

未央「あっ。プロデューサー? 私。未央」

P『……本田さん。あの、さっきは……』

未央「ああ、待って待って! プロデューサー」

P『……えっ』

未央「多分、色々言いたいことあると思うけど……最初の一言は、まず私に言わせてほしいんだ」

P『……はあ。わかりました』

未央「……………」




未央(今すぐ言いたいことはたくさんある)

未央(今すぐ言わなきゃいけないことも、たくさんある)

未央(でも、まずは――……)







未央「――……ありがとう。プロデューサー」










ちゃんみおだってみかねぇのお陰だって事はわかっていたはずだし、あれよりは全然少ないとは思っていただろう
でも「普通」を知らないから、普通だと思っていた基準より現実は遥かに少なくて、落差があまりにも大きすぎた
そのためにちゃんみおは失敗だと思ってしまい、それをリーダーである自分の責任だと思ってしまった(実際問題初ライブとしては成功だろうが)
だから武内Pの「当然の結果です」という言葉に対し、「失敗して当たり前だろ?」みたいに言われてると感じてしまった
凛は同じ経験をしてきて、そんな未央の気持ちがわかるからこそ武内Pを睨みつけた

ちゃんみおは姉ヶ崎さんのおかげで一気にここまで来れた尊敬してます!って気持ちはあったろうがいきなりすごいライブを体験してしまったから自分たちもこの程度は当たり前に入るだろうと勘違いしてた
だが現実は残酷で思った以上に入らなくて自分の実力はこんなもん?と落ち込む

まあ友達に早く来なきゃいい場所取れないよとか天狗だったし仕方ない

そこで悔しくて顔を合わせる事もできずにいたんだ
自分の実力不足で人が入らなかったんだと

だけど武内Pは「初めての三人のライブでこのくらいなら当然」と慰めみたいに言ったのを「お前の実力的にはこの程度しか入らないのは当たり前」みたいに聞こえて自分は才能ないアイドルを辞めると逃げた

凛は「プロデューサーはちゃんと正確に物事を伝えろ!」みたいに睨み付けたって可能性も

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