男「ンッン~♪」
友「男くん、始業前から随分とご機嫌だね」
男「あ、分かる?」 チッ! チッ!
友「分かるとも。普段の朝なら低血圧で何を聞いても『かゆ…うま…』しか言わない君が」
男「yes i am!」 チッ♪チッ♪
友「机の上で虚空に見栄を切っていればね」
男「バァン!」バァン
友「男くん、目立つからとりあえずだね」
男「ズアッ!」ズアッ
友「…」ゴゴゴゴゴ
男「」
―――――
男「悪かった。余りにもハッピーな事があったもんでな」
友「いや、付き合いは長いから慣れているさ」
男「いやいや、そこに甘んじる訳にはいかないだろ」
友「むしろ僕は机の上でバァンな君のことを誰も注意しないこのクラスが問題だと思うよ」
男「そんな…俺って…エアーマンだったのか…」ズーン
友「エアー…?空気ってことかい?それはありえないな」
男「便所行ってくる…」
友「その弁当をしまい給え」
友「いいかい?さっきの行動を思い返してごらんよ」
男「あぁ」
友「女さんが教室に来た時、君はなんと言った?」
男「おはよう」
友「そしたら女さんは『おはよう、男くん!』とにこやかに挨拶したね」
男「あぁ。八重歯が眩しい、素直で元気な娘だと思う。お嫁さんにしたい」
友「」ムカッ
ビシッ
男「あ痛ぁ!」
男「ぐああ…今のデコピンの経緯がわからない」
友「…机の上に乗った事への咎めだよ」
男「そんなに間を置いて飛んでくるのかよ…」
友「コホン。次、委員長が登校してきた。君は?」
男「おはよう」
友「そうだ。そしたら委員長は『おはようございます。今日は私と日直ですね』と答えた」
男「あぁ。メガネが眩しい、知的で真面目な娘だと思う。お嫁さんにしたい」
ビシッ
男「ゲハァッ!」
男「カハッ…今のデコピンの経緯は…?」
友「…机の上に乗った事への咎めだよ」
男「流石に2度目は想像できねぇよ…」
友「ね?君は空気なんかじゃない。問題はクラス自体が君の異常な行動をまったく気にも止めてないんだ」
男「俺を俺らしくいさせてくれる…。いい奴らだな。なんか泣けてきたよ」ウウッ
友「…僕も何だか泣けてきたよ…」
友「…話がそれてしまったね。肝心なのは君が何故ハッピーかと言う点についてだ」
男「あ、それ聞いちゃう?」ヘヘッ
友「叶うなら是非教えてほしいね」
男「あ、それ聞いちゃう?それ聞いちゃうと長くなるよ」ヘヘッ
友「長くなっても構わんさ、なにしろ僕は」
男「あ、それ聞いちゃう?それ聞いちゃうと長くなるよ」ヘヘッ
友「…」ドドドドド
男「話をしよう」キリッ
男「妹がくる」
友「1行どころか4文字に収まるじゃないか…それのどこが長…」
男「…」
友「…もう一度言ってくれないか」
男「来妹」
友「…僕の目を見て正直に答えてくれ」
男「いいぞ」
友「それは実在しているのかい?」
男「…?どういう意味だ?」
友「いや、巷では脳内妹という極めて悪性の強い妹が群雄割拠しているらしいんだ」
男「妹がたくさん…ひしめきあって…胸が熱くなるな…」
友「…僕の知る限りでは…君に妹さんはいなかったはずだけど」
男「あぁ、昨日までいなかったよ」
友「き、昨日まで…?」
男「今朝できたんだ」
友「」
―男自宅 1時間前
男父『おはよう息子よ』グッパオン
男『おはよう父さん』メギャン
男父『息子よ。大事な話がある』
男『なんだい父さん』
男父『新しいお母さんだ』
新母『新しい母です』
男『男です。父をよろしくお願いします』
男「と、いうわけなんだ」
友「…なるほど。とでも言うと思っているのかい!?」
友「まるでわからないよ!どんだけ物分り良いんだ君は!」
友「新しい母親ができたというのにその反応はもう…もうなんか色々とおかしいだろう!」ダンッ
友「普通は『新しい母親が異性としてしか見れないっ!』とか『俺の母さんは一人なんだ!認められないよ!』だとか」
友「それで『俺は一体…どうすれば…』と悩む君を僕が真摯に慰めてポイントを稼ぐレベルだよそれは!」ゼェハァゼェハァ
男「父さんの幸せは父さんのものだ。俺がとやかく言うことじゃない」
友「…男くんの精神年齢が自分より上なのか下なのか、時折僕はわからなくなるよ」
男「普段から色々と友に頼りきりだからな。下だろう」ハハッ
友「勢いに任せて色々と激しい失言をしたことに対して反応がないのも
ほっとする反面複雑な気持ちでいっぱいだよ」
男「まぁそんなこんなで」
友「…新しい母親に連れ子がいた、と」
男「exactry」コクリ
男「俺はずっと妹を持つことに憧れていたんだ」
友「…突然すぎるカミングアウトに言葉を失ったよ」
男「ほら、友にも妹がいるじゃないか。一人っ子だからそーいうの羨ましくってさ」
友「ああ、そういう憧れか」
男「?他にどういう憧れが…」
友「…自分が必要以上に汚れていることを知覚してしまうからスルーしてくれ」
男「ふむ。…まぁ姉でも嬉しかっただろうけど…妹だから格別だな」
友「兄や弟じゃダメなのかい?君の論理だと同性でも」
男「女の子だぞ!見てるだけで幸せになれるじゃないか!」
友「…うん、そうだね。わかってたよ。君はそういう奴だった」ハァ
男「年下だとこっちが先輩だろ?色々なことを手取り足取り教えたりできるし」
友「…色々…手取り…足取り…」ボー
男「先輩風ビュービュー吹かして…どした友?」
友「ハッ…!いやいや気にしないでくれたまえ」
友「とすると君は年下が好きなのかい?」
男「好みだなー。守ってあげたい、とか教えてあげたい、とか保護欲にまみれてしまうなー」
友(…すべて逆方向をゆく僕の存在が疎ましい…)
男「…おーい友ー?また思考モードかー?」ブンブン
友「…自分が1年遅く生まれる可能性について計算していただけだよ」
男「それじゃ一緒のクラスになれないじゃないか。寂しいこと言うなよ」ハハッ
友「…ッ!君は本当に…ッ!…ハァ、いいよ、もう話を続けてくれ」///
男「甘えてくれると嬉しいな。自分にこう、なんか委ねてくれる、みたいな」
友「…ほほう」メモメモ
男「…急にノート出して何?今日宿題あったっけ?」
友「いや突然無性にポエムを綴りたくなっただけだよ。構わずに続けてくれ」
男「そう、宿題とかいいね。教えて欲しいなーとか言われたらキュンとするね」
友「何故僕はいつも君に教えている立場なんだぁっ!」バリッ
男「おわぁっ!ノートが!何々、友どうした!?」
友「…というフレーズを思いついたんだ」
男「熱いパトスだな。完成したら俺にも見せてくれ」
友「ああ。…完成したらね」
男「でもあれだね。もう妹ならホントどんなんでもいい」
友「…君、どうなんだその発言は」
男「だって妹と一口に言っても…素直タイプ、元気っタイプ、従順タイプ、天真爛漫タイプ
お母さんタイプ、おしゃまタイプ、ツンデレタイプ、ヤンデレタイプ、真面目タイプ
エロスタイプ、mタイプ、sタイプ、クールタイプ、双子タイプ、天才タイプ、小心タイプ
etc…」
友「」
男「しかもそれらの混合タイプもあるわけだから妹の可能性は無限大だ」
友「…君が妹に対する並々ならぬ期待を抱いているのはわかったよ」
男「髪型もあるなー。ポニーテールとかツインテール、いやサイドテールも…」
友「…テール尽くしだね」
男「年下を強調すると、やはりそこら辺がセオリーかなと」
友「…僕もちょっと伸ばしてみようかな…」ボソ
男「友は短くても、長くても似合うだろー」
友「ッ」///
男「どんな妹なんだろうなー。楽しみだなー」
友「…でも同じ妹を持つ者として言っておくよ」
男「ん?」
友「兄妹ってのは君が思っているほどいいモノではない」
男「…え」
友「公平性を謳われて何もかも半分こ。しかもトラブルが起きた時は年長が責任を取らされる」
男「…」
友「同じ家に住んでるから衝突もしょっちゅうだ」
男「…でもさ」
男「それと同じくらい、いい事もあるでしょ」
友「…」
男「友が妹の話をする時にさ、たまに『しょーもない』とは言いつつ嬉しそうなの見てると」
友「…」
男「やっぱり妹っていいなーって思ってさ」
友「…まぁ、ね」ポリポリ
友「ただ君の妹は、僕の妹と大きく違う点がある」
男「?妹に差なんてあるのか?」
友「あるとも。それまで一緒に育ってきたか実妹か、ある日突然やってきた義妹か、という差だ」
男「本当だ…そうか…一緒に育ちたかったなぁ…」
友「言ってしまえば昨日まで他人だった人間が、突然家族になる訳だ」
男「あぁ。今朝存在を知ったからな」
友「ましてや異性!一つ屋根の下で暮らす男女!一つ屋根の下…一つ屋根の下ぁ!」ギリッ
男「友も俺に負けず劣らず妹に関心を寄せているんだな」
友「…すまない取り乱した」
男「いいって事よ。同じ妹を持つ者同士じゃないか」
友「僕が言いたいのはつまり、その、昨日まで他人だった異性がだね…その、一緒に暮らすと…」
男「ふむ?」
友「い、意識しないのかい?君は、その、女性として…」
男「ん?妹は女性だぞ?」
友「いや、そういう定義の話ではなくてだね…」
男「???」
友「…ま、眩しい…君の存在が眩しいよ…」ウゥッ
男「あ、カーテン?すまんな気づかなくて。この時期窓際モロだもんな」
友「…ううっ…その優しさが今は茨の刺のように僕に突き刺さる…」
男「ハハッ。ポエムが絶好調だな」
友「…まぁ。間違いが起きそうにないことが確認できただけでもよしとするべきか」
男「ってことで今日は帰り寄り道できないんだ。義母さんが義妹を連れてくるみたいで」
友「僕のことは気にしないでいいよ。これから一緒に暮らすんだ、親睦を深め合うといい」
男「グラッツェ。そう言ってくれると助かるぜ」
ガラッ
教師「ほいほーい席着いてー。お、男くん妹できたらしいじゃーん」
友「伝達が早いよッ!」ダァン
教師「おおっ。友さんエキサイトしてるねー。青春だねー」
友「つい今しがた僕が知った事実を何故先生が知ってるんですか!」
教師「や、もうツイートにすごい数の生徒が群がってるし」
友「情報化社会めッ」
教師「同じ苗字で1学年下の女生徒の転学届け受理されたのあたし知ってるし」
友「先生プライバシーって言葉知ってますか」
教師「教員とっけーん。はっはー」フンゾリ
友「モラルは死んだ…」ガクリ
―放課後
男「じゃぁ友の妹さんにも伝えておいて」
友「あぁ、ひょっとしたら同じクラスになるかもしれないしね」
男「じゃあな。また明日」
友「さよなら。また明日」
テクテク
友「…うん。男くんの妹が美人って決まった訳でもないんだ」
友「ひょっとしたらジャバザハットみたいな妹かもしれないじゃないか」
友「………だから心配をするのは早計。…のはず。うん」
―男自宅
男「時に父さん」
父「なんだ息子よ」
男「何故教えてくれたのが今朝だったんだ。予め知っていれば俺も色々と準備ができたのに」
父「あぁそのことか。いやな、極めて我が家の家族に重要なことだからな」
父「明日伝えよう、明日伝えようと思っているうちに当日になってしまったんだ」
男「ふむ。なら仕方ないな」
父「…おや、私を怒らないのか?『このダメ親父ィ!』と罵らないのか?」
男「いつもだったら泣くまで殴るのをやめないけど」
父「そう。私はそれを覚悟していたのだが」
男「今日は妹が来る日だからね。それくらいは許すよ」
父「フフ、前からお前は大層妹に関心がある息子だったからな」
男「それに自分の惚れた人の前で情けない姿で会いたくないでしょ?」
父「…私は実にいい息子を持ったな」ホッコリ
男「そうだ父さん」
父「なにかな愛しい息子よ」
男「妹ができた喜びでまるで聞いてなかったけれど」
父「そうだな。朝『ディ・モールト・ベネ!』と叫んで学校へ行ってしまったからな」
男「どんな娘だった?父さんは会っているんでしょ?」
父「もちろんさ。可愛くて綺麗な娘だったな。もちろん母さんには及ばないが」ハッハッハ
男「そうか。よく考えたら朝会った義母さんも美人だったな」
父「そうそう。お前の話をしたら食い入るようにして聞いていたぞ」
男「おお、なんだかムズムズしてきた」
父「お互いに楽しみにしているようだし、お前も順風満帆だな」ハッハッハ
ピンポーン
父「む。来たようだな」
男「くっ。柄にもなく緊張してきた」
父「そう肩肘を張るな息子よ。これから毎日一緒なんだからな」
ガチャッ
母「こんにちわ」
父「『ただいま』だハニー。その挨拶は間違っているぞ」キラキラ
母「ただいま、私の旦那様…」キラキラ
男「…父さん」
父「おお、いかんいかん。お前の存在をすっかり忘れていた」
母「ただいま、男くん。今朝会ったわね」
男「おかえり、母さん。朝はろくに挨拶もできなくてすいません」
母「いえいえ。ほらあなたもこちらに来て挨拶なさい」
妹「…」
男「黒髪のポニーテール…」ボソ
妹「…妹と申します」
男「…ベネ」
父「ほらどうした。ちゃんと挨拶しなさい」
男「は、あ、はい!えっと…男と、言います。よ、よろしく」
母「あらやだこの娘ったら。さっきまであんなにはしゃいでたのに」
妹「…」ギュッ
父「私は母さんの荷物を引き受ける。男は妹の荷物を部屋まで運びなさい」
男「了解。部屋は2階なんだ。案内するよ」
妹「…」コクリ
トットットッ
ガチャッ
男「ここが今日から妹の部屋だ」
妹「…」ジー
男「父さんがアホだったから来るのが分かったのが今日だったんだ」
妹「…」ジー
男「だから簡単にしか掃除できてないんだけど。今度の休みにピッカピカにするよ」
妹「…」ジィィィィ
男「…あの、そんなにじっと見詰められると…」
妹「…貴様が私の兄か」
男「……き、きさ?え?」
妹「柔和そうだと言えば聞こえはいいが…見るからに軟弱者だ」
男「…え?…え?」
妹「優しさでどうにかしようという魂胆が丸見えだ」
ズィッ
男「わっ」
妹「いいか」
妹「犬は餌で飼える。人は金で飼える。だが妹を飼う事は…何人にもできん」
妹「私はお前が兄などと言うことは一切認めない」
ギラッ
妹「―お前の全てを否定してやる」
男「」
―リビング 夕食タイム
父「このバーニャカウダのソース絶品だな!」
母「あら、そんな褒めるほどのものじゃありませんよ」
父「そうだな。君のソースには劣る代物だ」キラン
母「やだ、あなたったらもう」///
妹「…」モグモグ
男「」
父「そういえばどうした息子よ。先程から一人だけ真っ白になっているが」
母「あら、食べられない野菜でもあったのかしら。ごめんなさいね、男くん」
妹「いえ、余りに美味しすぎて呆然としているみたいですよ」
男「」ビクッ
父「ハッハッハ。なんだそうか!これからは毎日食べれるぞ」
母「気に入ってもらえたみたいで何よりだわ」ウフフ
男「」
―次の日
友「おはよう男くん。件の妹さんはうわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
男「かゆ…うま…」ズリズリ
友「どうしたんだ男くん!低血圧ってレベルじゃないぞ!」
男「ヴァー」ズリズリ
友「まさかこんな平穏な街にもアンブレラの魔手が…!」ハッ
男「ヴァー」ズリズリ
―30分後
男「ハッ…ここは!?」
友「保健室だよ。icu並の設備があって本当に良かった…」グスッ
男「ど、どういうことだ?」
友「君は死ぬ寸前だったんだ。一度は心肺停止状態までいってしまって…」
男「…そう…か」
友「何を聞いても『かゆ…うま…』か『いも…こわ…』しか言わないし」
男「いも…いも…う…と…」ピーーーーーーーーーー
友「男くぅぅぅぅぅぅぅん!」ガバッ
保険医「そこをどきなさい!お願い!戻ってきて!」
フィィィィィィン バヂィ!!
―――――
男「ありがとうございました」
友「ありがとうございました!」
保険医「気にしないで。生徒の命を救うのが保険医としての使命よ」シュッ ボッ
フー
保険医「ただ一つ言わせてもらうわ、男くん」
男「はい?」
保険医「あなたは体はまるで健康なのに命の灯火が消えかけていた」
男「…」
保険医「心がそれほどまでに弱っていたの」
男「…それは」
保険医「精神が肉体を凌駕している状態なら、それはプラスにもマイナスにも働くわ」
男「…」
保険医「何があったのかは知らないけれど…一人では溜め込まないことね」
男「…はい」
保険医「もし誰かの助けが欲しいと思ったのなら私のところへ来なさい」
男「え?」
保険医「…生徒の命を救うのは何もフィジカルな面においてだけじゃないわ」ニコッ
男「…はい!」
保険医「…まぁ、もっとも…」フー
男「へ?」
保険医「…私の出番はなさそうだけれどね」ジロッ
友「…」ムスー
友「ハッ!…え、何!?僕は別に何もアレです!」ワタワタ
保険医「…フフッ。まぁいいわ。体には気をつけて。手洗いうがいを忘れないでね」ヒラヒラ
男「…あれが伝説の衛生兵か…………お嫁さんにしたい…」
友「」ムカッ
バッ
男「――ッ…あれ?デコピンがこない」
友「フンッ。まがりなりにも病み上がりの人間なんかに暴力を奮う訳がないだろう」ポスン
男「…悪い。迷惑かけたな」
友「…これぐらい迷惑でも何でもないさ」
男「迷惑ついでですまんが…話を聞いてもらえないか?」
友「僕でいいなら、いつでも」
―昼休み 屋上
男「結局4限まで友をサボらせる結果になっちまったな」
友「普段からの積み重ねがあるからね。それぐらいサボったところでなんともないさ」
男「う…耳が痛いな…」
友「それに先生に許可を得ている…症状が深刻だったからね。無論今日のサボりは通知表にはカウントされない」
男「そこら辺ちゃっかりしてるよな。流石友だ」
友「…それで?君に一体何があったんだい?」
男「……昨日、妹に、会った」
友「それはもちろん知っているよ」
男「その、妹が…妹が…」ギュッ
友「?男くん」
男「い、妹……妹………」ハァーハァー
友「!?男くん!大丈夫かい!?」
男「す、すまない…まだ少し後遺症があるな…」
友「そ、それもそうだけど男子生徒が息を荒くしながら妹を連呼するのは絵面的にもマズい!」
友「!…察するに妹さんが…やっぱりジャバザハットみたいな妹だったのかい?それでショックのあまり…」
男「ジャバザハット?とんでもない。例えるならパドメ・アミダラのレベルだ」
友「……なんてことだ…危惧していた事態が発生してしまった…一つ屋根の下美人母娘と生活…」
男「…妹に、妹に初めて会った時…俺、思ったんだ…ご先祖様グラッツェってね」
友「…ご先祖様は何で感謝されたのか首を傾げてると思うけどね」
男「あぁ、黒髪のポニーテールに凛々しい顔に凛々しい瞳、こんなに綺麗な娘が俺の妹になるのか、って」
友「…」イライラ
男「…だがそれは見た目だけ、仮初めの姿だったんだ…」ガクガクブルブル
友「男くん…?」
男「俺はもし妹ができたらという仮定で千を超える妹の姿を常に模索してきた」
友「…もはや何も言うまいよ」
男「だけどその千のイメージは何の役にも立たなかった…。完全に想定外で予想外な妹だったんだ…」
友「…普段脳天気な君がそこまで畏怖する妹さんって…一体どんな人なんだい?」
男「そうだな…。まず会った直後に軟弱者となじられた」
友「…え?」
男「間を置かず、俺を兄とは決して認めないと宣言し」
友「え?え?」
男「更に…存在を…全否定された…」
友「」
男「俺は甘かった…妹を持つということに幻想を抱いていたんだ…」
友「…確かに間違いなく確定的明らかに君は幻想を抱いていたけれどね」
男「ううっ…妹…」サメザメ
友(男くんがかつてないほどに打ちひしがれている…)
男「妹よ…なぜ…」
友(…でもよく考えたらこれって僕にとっては好ましい状況なんじゃないか?)
友(男くんが見目麗しい義妹と間違いを犯すこともないし…)
男「……」
友(…なにしろ僕はこの些かセックスアピールに欠ける貧相な体に理詰めの頭と口調)
男「こんなに苦しいのなら…」
友(おまけにまるで進展のない友人というポジションに甘んじている…)
男「こんなに悲しいのなら…」
友(だったらそう、傷ついた男くんを慰めてこの機に親密に…)チロッ
男「…ふぐっ、うっ、ぐすっ」ダバー
友「…」チクリ
友「ハァ…僕って奴はどうしてこう利己的に立ち回れないんだろうねぇ…」ボソ
男「妹など…妹などっ…!」ブワー
友「…男くん、良かったら昨日の経緯を簡単に話してくれないかな」
男「妹などいら…え?」グスッ
友「ひょっとしたらそこに解決の糸口があるかもしれないだろ?」
男「…ああ。嘆いていても何も始まらないからな」
友「そうそう、その意気だよ」
男「俺の妹ロードの為に!力を貸してくれ友よ!」
友「…あー、やる気失せるなぁもう…」
―カクカクシカジカ
友「ふむ…実に奇妙だね」
男「奇妙?」
友「君の父親の話によれば妹さんは君に対して『興味があった』ことになる」
男「うん。確かにそうだな」
友「更に母親の証言によると直前まで『はしゃいでいた』らしい」
男「そう、聞いたけどな」
友「そこまで聞く限りは『兄ができる事に好意的な妹』にしか聞こえない…」
友「加えて両親の前では平静を装いつつ何事もなかったのように過ごし…」
友「男くんに対して見せたような獰猛な姿は見せていない…」
男「なまじ顔の整った顔で言ってくるから破壊力が凄まじいんだ」
男「誰かがいるとニコニコ狐目なのに、俺と対峙した時だけカッと見開いて…」ガクブル
友「…まだ情報が足りないな。他に何か変わった事はなかったかい?」
男「…そういえば…」
―昨日 2fトイレ
男「ふぃー…あそこまで嫌われてしまうとは…」ゴソゴソ
男「俺そこまで失礼な態度だったかな…」ヨッコイセ
ガチャッ
男「…」
妹「…」
チョロチョロチョロチョロ
男「あっ、ちょっ」
妹「…どけ」
男「え」
妹「何度も言わせるな。どけ、と言っているんだ」
男「」
妹「私が用を足すのに貴様は邪魔だ」
男「ひーーーーん!」ピュー
―――――
友「…oh」
男「…」ズーン
友「て、徹底しているね妹さん…」
男「まさか家の中でズボンを下ろしたままピヨピヨ走り回るとは思わなかった…」
友「…まさかパンツも…?」ボソッ
男「ん?」
友「な、何でもないよ!うん!何でもない!」ブンブン
男「あと他にも…」
友「この上まだあるというのかい!?」ガタッ
―昨日 浴室
男「あ”ー炭酸系の入浴剤は最高じゃぁ~」ザブー
男「…なんだっけか…風呂はリリンの生み出した文化の…」
ガチャッ
男「キ…ワ…ミ…」
妹「…」
男「…」
カポーン
男「…まさか」
妹「言外の事を察したようだな。阿呆ではないようだ」
男「し、しかし俺は今素っ裸でその…」
妹「そこをどけ。私が湯浴みをするのに二人では手狭だ」
ザバーッ
男「うわーーーーん!」ピュー
―――――
友「…」
男「…へへっ…笑えよ友…」ズズーン
友(…何だろうこの胸のざわつき…。何かが引っ掛かる…)
友(この2件のケースは男が虐げられているという点で一致している)
友(傍から見れば傍若無人な妹が兄の平穏を乱しているようにしか見えない)
友(一つ一つを分けて見れば勿論その通りだ。でも2つを比較すると…比較…ってちょっと待った)
友「って事は君は妹さんの裸体を隅々まで見てしまったのかい!?」グアッ
男「ええっ!?」
友「不可抗力とは言え…なんて…なんて破廉恥な…」ワナワナ
男「待った!それは大いなる誤解だ!」ブンブン
友「何が誤解なものか!いいかい?記憶って言うのはそう簡単に忘却できるものじゃ…」
男「いや、そもそも見れる訳がないんだって!」
友「…見れる、訳がない?」
男「だって妹は…タオルを巻いてたんだからさ!」
友「タオ…ル…?」
男「そう、胸元から足元まですっぽり。だから見てない!」
友「…」ブツブツ
男「そりゃぁ、確かに見たいって気持ちもちょっとはあったけどさ…」
友「ッ!」バッ
男「ヒィッ!たんま!この年頃で女の子に興味がないなんて逆に異常だと俺は」
友「…男、昨日のことをよく思い出してくれ」
男「…へ?」
友「トイレに入った時、鍵は掛けたかい?」
男「か、鍵?」
友「すごく、重要なことなんだ」
男「そりゃ掛けたよ。鍵を掛けないでするほどオープンな性格じゃないし」
友「…そうか…やっぱり…」
男「ん?あれ?…じゃぁ何で昨日ドアが開いたんだ?」
ペコポン!
友「謎は…すべて解けた!」
ギィィィィ バタンッ!
ガチャコンッ バァン!
―男自宅
友(…男くんのくれた情報通りだな)
友(両親は出掛けていて不在、夜になるまで帰ってこない)
友(妹さんは男くんに呼び出してもらって不在)
友(呼び出し場所の公園は徒歩なら片道15分。自転車は通学用に男くんが1台持っているだけ)
友(確実に30分は家の捜索に充てられる)
友(預かった鍵で…開いた!)
ガチャッ
バタンッ
友(念の為に靴は持って入ろう)
友(効率から考えれば1階から調べたいところだけど…)
トットットッ
友(どうしても最初に確認しなきゃいけないことがある)
友(2階のトイレ…もし僕の推理が間違っていなければ…)
ガチャッ
カチャン カチャッ
友(―思った通りだ…鍵が壊されている…)
友(ツマミをひねる一般的なタイプの鍵だけど…回しても横に錠が出ない)
友(勿論ドアの隙間を見れば壊れているのはすぐ分かるけれど…)
友(そんなのトイレに入るのにいちいち気にするわけがない)
友(しかもこの鍵、外側からは壊れているようにはまったく見えない…)
友(つまり1度完全にドアからはずしたあと解体して)
友(内部の任意の箇所のみを破壊してもう一度取り付けたんだ)
友(…ドアにわずかな凹みと傷…小さいけれど多分マイナスドライバーを当てた跡だ)
友(ニスの剥がれた跡が新しいってことは…やっぱり間違いない)
友(この鍵が壊れたのは前からじゃない…昨日ってことだ)
友(そして鍵を壊したことによって昨日得した人物が一人だけいる)
友(アクシデントを装いつつ男くんの痴態を見ることに成功したたった一人の人間…)
友(…でもまだこれだけじゃ足りない。あともうひと押し必要だ)
友(―次の惨劇の舞台は浴室、昨日起こった第二の事件)
友(限りなく薄い線だけれど、これだけの行動力ならもしかすると…)
―男家 脱衣所
友「…」///
友「こ、これから僕が取る行動は男くんの為であって」
友「決してやましい行動ではない!」
友「お、男くんの許可も取っているし!捜査上仕方がないことなんだよ!うん!」
友「だ、だから、ええっとその…ええいままよ!」ズボッ
友(昨日のお風呂でのアクシデントはあくまで『囮』)
友(何故ならトイレで痴態を見る利益はとっくに得ているからだ)
友(なら何故男くんを慌てさせてわざわざ浴室から追い出す必要があったのか…)
友(それは一刻も早くこの場所から目を逸らして欲しかったから)
友(この…『洗濯カゴ』からね)
友(お風呂を出た後で洗濯カゴを確認する可能性は低いけれど)
友(一番上に置いていた自分の服や下着が『消えている』と誰でも不自然に思うはず)
友(だから男くんを慌てさせて浴室―脱衣所から追い出したんだ)
友(その後で自分の脱いだ服を上に重ねることで衣服の有無を見えなくし…)
友(後はそれより後に入った人の衣服が重なり、カモフラージュは完璧になる)
友「…あった、妹さんの下着…ってことはこれより上はどけてしまって」ヨッ
友「…」ゴソゴソ
友「!」
友「…これは…男くんのtシャツ…」
クンクン
友「はぁ…安らぐなぁ…持って帰りたい…」ポワー
友「…あ、匂いだけじゃなくて…」ポワー
友「…ペロッ…これは男くんの汗!」ペコポン!
友「ふわー…何て幸せな日なんだろ…役得だなぁ…」ポポワー
友「…」ポワー
友「…」
友「ハッ!」///
友「ぼ、ぼ僕はとんでもないことを…」ワタワタ
友「ううっ…最低だ…完全に変態じゃないかぁ…」ズーン
友「…さっさと調べて終わりにしよう。これ以上やっていたら僕がおかしくなってしまう…」ハァ
友「…」ゴソゴソ
友(…やっぱりない)
友(男くんのyシャツとズボン、それにtシャツはあったけれど…)
友(『パンツ』と『靴下』だけが綺麗さっぱり消えてる…)
友(…これで鍵は揃った。後は消えた物を見つければ決定的)
友(そしてそれがある場所も検討がついている)
トットットッ
友(トイレで男くんのあられもない姿を堪能したあと…)
友(もっとも匂いが強くついた衣服を現場から持ち去った犯人…)
友「それは『妹』さん…あなただったんだ!」ビシィッ
『妹の部屋 ノックしてください』
友「…」
ガチャッ
友「…」
友(もし僕が妹さんで男くんの衣服を手にしていたら…)
友「…」
友「///」ボッ
友「こ、こっち!手にしていたらベッドの中に」ババッ
友「…あった。パンツと靴下…やっぱりここにあったんだ…」
妹「見つかって良かったな」
友「!?」ガタッ
妹「…それで?見つけてどうするつもりかな?」
友「…ッ」
妹「見たこともない不審な人物が部屋を物色している…」
友「…」
妹「警察に通報されても文句は言えない状況だな」
友「ぼ、僕は」
妹「言わなくても結構」スッ
妹「友。4人家族の長女。妹が同じ学園に通っている」
友「…え」
妹「私の兄とは中学時代からの付き合いで、奇跡的にも現在まで全て同じクラス」
友「な…君が何故」
妹「やや中性的な風貌と男性寄りの話し言葉で孤立しがちだったあなたを…」
友「…」
妹「兄の脳天気かつ柔和な対応でクラスに溶け込ませ、以来友人として多くの時を過ごしてきた」
友「…」
妹「コンプレックスは何事も理詰めで動く性格と…凹凸に欠ける自分の体」ジッ
友「な!」///
妹「兄の妹です、と名乗って転校してくるのに不安だとか情に訴えかければ…」
妹「皆よくペラペラと喋ってくれた」
友「…」
妹「兄のケータイの半分近くのメールと着信履歴を占めていることから鑑みるに…」
友「…そこまで調べているのか…」
妹「相当な信頼を置かれているらしいな。…所在不明の下着を探す事を任されるくらいには」
友「くっ…」
妹「ここに私が現れた事がよほど予想外だったようだ」
友「…君は男くんと公園で待ち合わせたんじゃなかったのかい?」
妹「フフッ。登校前まで生ける屍のようだった兄が…昼過ぎに私と放課後会いたいと話を振ってきた」
友「…それで勘付いたのか」
妹「そう。不自然だと思うには充分な理由だ」
妹「兄には待ち合わせ場所を変更するように伝えてある」
妹「今頃は町外れのボーリング場に向けて自転車を走らせてることだろう」
妹「つまりたっぷり1時間は帰ってこない」
友「…」
妹「さて兄の親友の探偵さん。そろそろ聞かせてもらおうか」
友「…何をだい?」
妹「勿論人様の家に上がりこんだ挙句、私の部屋を勝手に荒らしている理由だ」
友「一昨日までは男くんの家だったから…ってのは通じそうにないね」
友「彼が落ち込むようなことがあって相談に乗ってあげたんだ」
妹「ほう」
友「そしてその悩み事を解決する為にどうしても確かめなきゃいけないことがあった」
妹「それがその下着、という訳か?」
友「そう。そしてもう一つ、トイレの鍵だよ」
妹「…」ピクッ
友「トイレの鍵はつい最近はずされた物で、しかも外から確認できないように細工されていた」
妹「…驚いた。もうそこまで調べていたのか」
友「…随分とあっさり認めるんだね」
妹「そうだな。トイレの細工もその下着も私がやったことだ」
友「…」
妹「最もたった1日で、しかも家族ですらない人間に見破られるとは思っていなかったが」
友「…どうしてそんな事をしたんだい?」
妹「理由か?」
友「…」コクッ
妹「これは家族の問題だ。当事者同士で片付けることであって答える義理はないと思うが」
友「…家族?兄などと認めない、存在の全てを否定すると言ったのは君だったはずだ」
妹「…」
友「だから何でこんなことをしたのか…その理由が知りたいんだ」
妹「…」
友「…そう簡単に答えてはくれないか。じゃぁ僕はこれで失礼させてもらうよ」
妹「…どこへ行くんだ」
友「勝手に部屋に入った事はこの通り、お詫びするよ。理由はさっき述べた通りだ」
友「無論この部屋の物は盗っていないし、壊してもいない。確認するべきことは終わったからお暇させてもらおうと思ってね」
友「…君が何故こんなことをしたかを聞けなかったのは心残りだけど」
妹「…帰って兄に報告するのか?」
友「…黙ってされて気持ちのいいことじゃないからね。君の行動にも気を病んでいたようだし」
妹「それは困るな。こちらにも都合ってものがある」ゴソッ
友「それは…スマートフォン?」
妹「ここに面白い動画がある。見てみるか?」スッ
―――――
友『…』ゴソゴソ
友『!』
友『…これは…男くんのtシャツ…』
―――――
友「こ!これは!」ザワ…
―――――
友『はぁ…安らぐなぁ…持って帰りたい…』
友『…あ、匂いだけじゃなくて…』
友『…ペロッ…これは男くんの汗!』
―――――
友「…ッ」サー
プツッ
妹「なんだっけ友さん…『黙ってされて気持ちのいいことじゃない』…だったか?」ニヤッ
妹「背後から撮られている事も分からずに耽るとは…よほど熱心だったようだ」
友「じゃぁさっきやけにあっさり認めたのは…!」
妹「フフッ。そう、この動画があったからね。余計な手間をかけずに済んだ」
友「…ッ…僕と…取引しろっていうのか…」ギリッ
妹「取引?勘違いしてもらっちゃ困るな」
妹「さっきの推理は勿論間違ってはいないが…表向きは全て『仮定』の話だろう?」
友「でもっ!こうして下着は現に君の部屋に…!」
妹「『下着』なんてこの部屋に最初からなかった。私が回収してしまえばそういうことになる」スッ
友「くっ!卑怯な…」
妹「こちらにはこうして動かぬ証拠の『動画』が手元にある」
友「うぅっ…」
妹「どちらが有利で、どちらが不利か…それくらいの分別はつくはずだ」
友「君はっ…その動画を…」
妹「そうだな。友さんが妙な真似をすると誤ってメールに添付して兄に送信してしまうかもしれないな」
友「そっ、それは…それだけは…」
妹「妙な真似をすれば、の話だ。ただお互いの立ち位置をハッキリさせたかった」
友「…」ガクッ
妹「その様子だとよほど兄に熱を上げているようだな」
友「…ぐ」カァッ
妹「大方、自分に女性の魅力がないと諦めていたところに…」
友「よ、余計なお世話だ!」
妹「気まぐれな兄の世辞でも貰ったか…」
友「ええっ!?」///
妹「図星か。何とも分かりやすい」
友「う、うるさいうるさい!」ブンブン
妹「フン。その分だと褒めてくれる男なら誰でも良かったんじゃないのか」
友「………誰でも……だと……」ゴゴゴゴゴ
友「…誰でもいいはずないだろう…」ゴゴゴゴゴ
妹「!」
友「男くんだから…男くんだから僕は好きになったんだ!」
妹「…何を」
友「僕は中学の頃…何もかもが鬱陶しくてしょうがなかった…!」
友「書物の中で埋もれている方がよっぽどマシだと人との関わりを断った!」
友「煩わしいことに気を使って自分を消耗するのが馬鹿らしく感じていたんだ!」
友「だけど彼はそんな独り善がりで世間知らずの僕をそこから引っ張りだしてくれたんだ!」
友「僕は自分が臆病で、自分が拒否される事が怖くて前に進めなかったことを…!」
友「挑戦を放棄していたことを言い訳していただけだったんだ!」
友「男くんと一緒に過ごすことで僕は…僕は……!」
―――――
男『本読んでて楽しいなら…何でいつも眉間シワ寄ってんだ?』
男『そういう他人の目で物事見るよりさ、やっぱ自分の目ん玉で見た方が面白いぜ~』
男『いいよ。一人で怖かったら一緒に恥かこうぜ』
男『心配すんな。お前は一人じゃない。俺たちは一つだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
―――――
友「―それを…それを誰でもいいだって?男くんの魅力をよく知りもせずに!」
妹「…」
友「妹さんは男くんの一体何を分かっているって言うんだ!」
妹「あなたに…私の思いを理解できるはずがない。だから」
友「ああ!分かりたくもないね!人の弱みを握ってその上どうこうしようなんて気持ち分かるはずがない!」
妹「…さっきから言わせておけば…!」
スッ
妹「動画が、どうなっても構わないんだな」
友「…」
友「…いいよ。好きにしたまえ」
妹「!」
友「…好きな人の事だから気になるし、好きな人のものだから触れてみたい」
友「好きな食べ物、好きな本、好きなブランド、好きな映画…どれも気になって仕方ない」
友「そしてそれは本人に近づけば近づくほど魅力を高めていく」
友「それに触れたいと感じるのは自然な事だと僕は思う」
友「無論、だからと言って許される訳じゃないけれど…」
友「今回僕はそうやって卑しい行為をしてしまった」
友「当然インモラルで良くない行為だ。本人に黙ったままでいるのはもっとアンフェアだろう」
友「…だから僕がしてしまった過ちは男くんに伝えるべきだ」
友「それで今の関係が変化してしまうと思うと胸が張り裂けそうになるけれど…」
友「今までの生活だけでも僕は彼から色々な宝物を貰ってきた」
友「もし男くんが僕の行為を知って距離を取るようになっても…」
キッ
友「悔いは、ない」
妹「…い…」
友「…?」
妹「貴様に…分かるはずがない…私の気持ちが…思いが…」
友「…それはさっき」
妹「そうやって自分に嘘をつかずに…素直に生きることができれば…どれだけ楽な事か…」
友「…自分に嘘を…」キュッ
妹「…………私はこれまでずっと…ずっと兄を持つことに憧れていたんだ」
友「………………え?」
妹「私はもし兄ができたらという仮定で千を超える兄の姿を模索してきた」
友「…え……あれ?」
妹「兄に甘えたり、私という存在を委ねてしまいたい…」
友「………んー?」
妹「兄に守ってもらいたい。兄に手取り足取り色々教えてもらいたい…」
友「……あるぇー?」
妹「だが長女として産まれてしまった以上、私に残っていた可能性は後から誕生してくる弟や妹しかなかった…」
友「…最近、ごく最近…」
妹「兄がいないという状況は、私の兄への羨望や憧憬をただただより強くするだけだった…」ググッ
友「似た話を聞いたよーな気がする…」ダラダラ
妹「成長するにつれて、私にとって兄の存在は絶対の価値観…即ち正義へと変貌していった」
妹「兄は後からできるものではないと悟り、もう『二次元でいい』と覚悟を決めた時…私に転機が訪れた…」
妹「母の再婚話だった。…私はもしやと思い、一縷の望みを懸けて母に尋ねた」
友「…」
妹「…連れ子がいたのだ。それも男…更に1つ年上の男。私が狂おしい程に欲した兄だった」
友「そ、それが男くんだった…」
妹「母は再婚は自分だけで決断していい事じゃないからと迷っていた…」
妹「新しい父親と連れ子が懸念材料だったのだろう。無論全てを聞く前に再婚は快諾した」
友「…」
妹「兄が出来る事に待ちきれなかった私は、母と相手の父の逢瀬に勝手に参加した」
妹「これから再婚する相手の父親との対話、という都合のいい大義名分もあったことだしな」
妹「母が愛した新しい父は確かに素晴らしい男性だった。…そこで確信したのだ」
妹「『この男性の血を引いている私のまだ見ぬ兄はきっと素晴らしい兄に違いない』、と」
妹「この日程この世に生を授かったことを感謝した日はなかった…」
妹「私が一度は諦めた兄ロードを…再び歩み始めることができたのだから…」
友「…」
妹「そこで私は致命的なミスを犯してしまった…」
妹「兄が出来る事を楽しみにするあまり…兄の情報の入手の一切を拒否したのだ」
妹「フィルム越しや、液晶越しにではなく…直に会って兄を感じたい…」
妹「その強い思いが…私が事前に兄を知る事ができた未来を奪ってしまった…」
妹「…何故…あの時……私は……!」ギリッ
友「…」
妹「私が会った兄は…『最高の兄』であり…『最悪の兄』だった!」
妹「むしろ兄としては史上最悪な代物だったんだ!」
友「い、一体どういうこと?僕には何が何やらさっぱり…」
妹「…私は完全に失念していたのだ…」
妹「この体には母の血が強く流れていることを…!」
妹「そして兄には!母の愛した男性の血が流れていることをっ…!」バァン
友「!」ペコポン!
妹「私の考えうる限りで最高の兄だった…!」
妹「人の良さそうな顔立ち。全体から漂う優しさ。それでいてどこか少年のような無邪気さ」
妹「よく見ればしっかりしている筋肉と体躯。しかもウニ頭に一部に癖の強そうな寝癖がちょっぴりある…!」
妹「だが…!だが……!」
妹「最高の兄であると同時に………!」
妹「 最 高 に 『 理 想 の 男 性 』で も あ っ た ん だ ッ ッ … … ! !」
友「…やはり…僕の推理は間違っていなかった…」
妹「貴様には分かるまい…」ググッ
妹「兄として慕おうとしていた人物が…」
妹「私が異性として付き合いたく、かつ突き合いたい人物だったという苦しみが…」
妹「理想の兄を目の前にして兄を失ってしまったこの苦しみが…!」
妹「貴様に…理解できるはずがない!」グァッ
友(…これで全ての点が線になった)
友(男くんを慕う行動と男くんを拒否する行動。この2つは矛盾しているようで矛盾していなかった)
友(彼女の動機は…『ツンデレ』)
友(…デレる事を誰も知らない。だから誰も得しない…そんな悲しいツンデレだったんだ…)
妹「兄を前にして私の心は千々に乱れた」
妹「私にとって最早兄とは絶対の存在意義であり正義」
妹「だが雌である以上至高の雄に惹かれることもまた必然であり摂理」
妹「兄に忠を尽くすか、自分に忠を尽くすか…私は決断を迫られた」
妹「…そして私は自分に忠を尽くす選択肢を選んだのだ」
妹「私自身が信じる正義を貫くために…!」
友「!…まさか昨日のやりとりは…」
妹「そうだ!だから『兄の全てを否定する』と宣言した!」
妹「兄を否定すると同時に私は妹であることをやめたのだ!」
妹「兄でないなら私はもう迷う必要はない!一匹の雌と雄で快感の頂きを目指すだけだ!」
友「…でも!それじゃぁ君の兄の、兄への正義はどこに行ってしまったんだ!」
妹「何も兄は3次元だけではない2次元には私を受け入れてくれる兄たちがたくさんいる…」
妹「私にはもう…これしか取るべき道は残っていなかったんだよ…」フヒ ヒヒ
友(今にも崩壊しそうな精神を保つ為に、異常な行動で調和を取っている…)
友(恐らく今は何を伝えても妹さんには届かない…)
妹(ただ兄に甘えたかった)
妹(ただ兄に教えてもらいたかった)
妹(ただ…ただ…それだけだったのに…)
妹(今…私が兄を見ると不純な気持ちがどうしても混ざってしまう)
妹(触れてみたい、交わってみたい、唇を…。そういった恋人を思うような気持ちがこみあげてくる…)
妹(純粋に兄と妹の関係になりたかった。兄を支えられるただの妹でありたかった…)
友(何てことだ…信じられない…)
友(これだけ狂気を感じる程に兄という存在を欲しているのに…)
友(兄と一線を超えることを躊躇っているのか…)
友(男くんと妹さんは血が繋がっていないのに…とても似ている…)
友(二人ともなんて…なんて純粋なんだ…)
友(実の兄妹じゃないから結婚だってできるのに…!)
友(むしろ棚ボタイベントに近いのに…!)
妹「…フフッ…人に悩み事を打ち明けることに何の意味があるのか今までさっぱり分からなかったが…」
妹「胸の内を曝け出すのは存外気分がいいものだな。大分気分が晴れやかになった」
妹「…だがこの事実を貴様が知っている事実が私にとって不都合なことには変わりない」
妹「ここで見たこと聞いたことは、全て忘れてもらう」
友「…ここで過ごした時間は濃密すぎて…忘れようったって忘れられないよ」
妹「いや、忘れてもらう。必ず」
ガララッ
友「なっ…こ、これは…!」
ド ン !
友「凄まじくアダルトで大人の玩具の数々がクローゼットにギッチリ…」
妹「無駄遣いせずに一切合切を注ぎ込んだ私のコレクションだ。フフッ、これは」
友「ボンテージ!それも本革じゃないか!完璧に手入れされて、光沢を放っている…」
妹「…」
友「これはガラスの浣腸器…やはり煮沸消毒が可能な点を考えると鉄板だね」
妹「…」
友「ボールギャグに目隠しに首輪…あ!こっちにはパドルまである!バラ鞭が定番なのに何て渋いチョイスなんだ」
妹「…」
友「と思ったらやっぱりあったね。おお。麻縄に手錠にカテー…テ……ル……………」
妹「…」
友「…」
妹「…」
友「…」
妹「…」
友「…って言うのをこの前テレビの特番でやっていてだね!僕は全ッ然興味ないけどなんとなく記憶に」
妹「阿呆。テレビでやる訳なかろうが」
友「…うん、流石に特番はないな…」ガクリ
友「!そうじゃない!こんな素晴らし…いかがわしいモノがここにあるって事は…」
妹「フフッ」
友「まさか男くんを監禁してアレをアレしてアレする為に…!」ゴクリ
妹「阿呆。そのボンテージをよく見ろ」
友「ん…女モノ…?じゃぁこの珠玉の…淫猥なコレクションは…」
妹「全て私自身を対象とした拘束具と玩具だ」
友「人を拘束する道具を拘束される側が持っている…?」
妹「…お前がm気質で、惚れた相手が目の前にいたら…虐められたいと思うだろう?」
妹「誰だってそうする。私だってそうする」
友「確かに…。じゃぁこれは…男くんに使わせる為に揃えたツール…」
妹「その通り。どこかの誰かのように凹凸に乏しい体ではないからな」
友「ぐっ」
妹「極めて肉体的なアプローチを兄に仕掛けた上で理性を崩壊させ…」
妹「存分にこの子達を使ってもらい、兄とお互いに依存し共生する計画…だった」
友「…だった?」
妹「ああ。予定は変更だ。最初に使用するのが私じゃないのは多少気に食わないが…致し方あるまい」
友「!まさかこれを使って僕を!?」
妹「そう。幸い監禁に必要な道具は全て揃っている。勿論それを使いこなせる人間もいる」
友「う…」
妹「この部屋を出れる時は、まともな思考能力を持たない…快楽しか求めない廃人になってからだ」
友「ぼ、僕はそんな調教には絶対に屈しないぞ!」
妹「大丈夫だ。千を超える兄を模索してきた、と先刻言ったばかりじゃないか…」ジリッ
友「ひっ…」
妹「…それに先程の道具に対する反応で大体分かっている」
友「あっ」カアッ
妹「私達はどうやら同じ穴のムジナだったらしい」ニヤッ
友(くっ…マズい。窓は開いていないし、唯一の出入口のドアの前には妹さん)
友(限りなく目がマジだから本気だ…。監禁された上にアレをアレしてアレされてしまう…)
友(それにパッと見は分からないけれどよく見れば体の各所が鍛え込まれている…)
友(恐らくあの蠱惑的なボディを維持する為に自分を磨いてきたのだろう…)
友(僕の貧弱な体力では抵抗したところで返り討ちにあうのがオチ)
友(更にこの状況で最上級にマズいのは…!)
友( 僕 が 限 り な く m 気 質 だ と い う こ と ッ !)
友(例え鉄の意思を持って反抗したとしても…ntrのヒロイン並の絶望が待っているのは確実ッ!)
友(このままでは男くんの為に捧げたい操を無機物に奪われてしまう…どうすれば…)
友(考えろ…あきらめるな…この絶体絶命の状況を覆す方法は?)
ペコポン!
3択 1つだけ選びなさい
答え①頭脳明晰な私は突如反撃のアイディアが閃く。
答え②男くんが来て助けてくれる。
答え③覆せない。現実はアヘ顔タブルピースである。
友(私がマルをつけたいのは②だけど期待は出来ない…)
友(1時間は帰ってこれない男くんが都合よく現れて)
友(囚われのお姫様を救う王子様のように登場して『待ってました!』とばかりに)
友(間一髪助けてくれるなんてのは妄想を絶している…いや理想だけれども…)
友(やはりここは現実を見据えて①!万事に役に立つ孫子の兵法によれば…)
友(作戦は奇を持って良しとすべし!)
バッ
友「ああっ!あんなところに妹さんを今にも犯し倒しそうな雰囲気の男くんがっ!」ビシィ
妹「何ッ!私は一向に構わんッ!」ババッ
友(かかった!この隙に乗じて真横を抜ける!)
ギラッ
妹「―そんな手に引っ掛かるとでも思ったのか」
友「ッ!でも今どう見ても本気―」
妹「見え見えなんだよ、阿呆が」ザッ
―――――
―――――
友(クソッ!流石に稚拙すぎだとは思ったけど他にどうしようもなかった…)
友(やっぱり最初からこの状況は『詰み』…いわゆる将棋やチェスで言う…)
友(『チェックメイト』、だったんだ…)
友(つまり、そう…)
友(答えは③………)
友(答えは③……)
友(答えは③…)
―――――
―――
―
ガッ
妹「な!?」
友「え」
友「…な…そんな…ありえない…僕は夢でも見ているのか…」
妹「いるはずがない…今頃はボーリング場で待ちぼうけを食っているはずだ…それが何故…」
?「ンッン~♪」チッ! チッ!
友「き、君は…」
妹「私の…」
友『男くん!』
妹『兄さん!』
男「yes i am!」チッ♪チッ♪
ちなみにボーリングだと穴掘りになるぞ
スポーツの方はボ“ウ“リング
>>168
訂正ありがとう。修正しておきます…
続きは眠いんで夜書きますね。
見てくれる人にマジ感謝。おやすみー。
友「君がどうしてここに!」
男「妙な質問をしてくれるな我が友よ」ズァッ
友「へ?」
男「ここは俺の家だ。俺がいたって不思議はなァい!」バァン
妹「…」
友「…」
男「ボウリングをするのにマイシューズとマイグローブがない事に気が付いてな…」
妹「なっ…!」
男「全速力で引き返してきた!」メギャァン
友「……理由は聞かない方が良かった…」
男「で、自室に行こうとしたら何やら物騒な事になってた、と」グイッ
妹「…くっ」
男「今の一撃、申し分なし。衝突の瞬間まで筋肉を弛緩させる、武術の基本がしっかり守られていた…」
男「だが…」
ギロリ
男「その力の矛先が俺の友人ってのは穏やかな話じゃないな」
妹「…」
妹「…私の心を理解できるのは私だけだ。他人に言ったところで」
男「いや、他人じゃないな。『兄妹』だ」
妹「…ッ」
男「それに心だってある程度は理解できる」
妹「…え?」
男「何しろさっきからそこで聞いていたからな」ビッ
妹「なっ…!?」カァッ
友「えぇぇぇぇぇぇ!?」カァッ
友「どどどどどういうことだい!?今来たんじゃなかったのかい!?」ワタワタ
男「うんにゃ。来たのは少し前」
友「じゃぁもっと早く僕を助けてよ!聞いてたんだったら僕が限りなく極限なのは分かったろう!?」
男「いやぁこういうのって当事者同士で片をつけるのが筋だからさー」
男「横から俺が出てどーのこーの言うより、話し合いで折り合いつくならそれが一番かな、と」ポリポリ
友「じゃ、じゃぁ、それじゃぁ…」サー
妹「私の気持ちも…全部…知っているのか…」サー
友「ど、どこから!?まさか告白のくだりから!?いやどこから聞かれても致命的な事しか僕言ってないよぉ!」ガンガン
男「結果的に立ち聞きしてしまったのは悪い。この通り謝る」ドゲザ
妹「う…」タジッ
男「で、妹さん…いや妹よ」
妹「…」プイッ
男「…俺もな。ずっと妹が欲しかったんだよ」
妹「…え」
友「…」
男「物心ついた頃には母さん亡くなっててさ」
男「公園とかで遊んでる兄妹見てるとすごい羨ましかったんだ」
男「…だけど妹が欲しいって言っても父さん一人じゃどうにもならんし」
男「でも人間手に入らないって思うと欲しくなる生き物だから…」
男「俺も相当妹への願望こじらせてここまでデカくなっちまった」
男「で、そこへ来て今回の再婚話だろ?」
男「俺すっごい嬉しくてさ。そりゃもう机の上でお立ち台やるほどに!」
友「男くん…」
妹「…」
男「…だからさ、妹であることをやめるなんて…悲しいこと言わないで欲しい」
妹「…ッ!でも私は貴様を…貴様を異性として否が応にも見てしまう…!」ウルッ
男「…」
妹「もしもそれが原因で家族の絆が壊れて…兄と妹の関係でいられなくなるかもと思うと…私は…私は…!」
男「ね。妹、俺の目を見て」スッ
妹「う…」
男「…変な話、仕方がないことなんだよ」
妹「…え?」
男「だって俺たち、つい一昨日まで他人だったんだぜ?」
妹「…あ」
男「そこの友と友妹みたいに、生まれた時から一緒に家族だった訳じゃないんだ」
妹「…」
友「…」
男「だからそう、俺たち家族初心者で、かつ兄妹のビギナーなんだよ」
妹「ビギ…ナー…」
男「そうそう。だったらさ、ゆっくり…ゆっくり兄妹になっていけばいい」
妹「ゆっくり…」
男「それに妹がさっきあげた問題だってさ、まだ始まってもない兄妹生活の話だろ?」
妹「…」
男「人生何をするにしたって障害は付き物だし、やってみなきゃ分かんねぇ」
妹「…」
男「それにお互い兄妹へのこじらせちまった思いのパワーでmaxなんだ」
男「ひょっとしたらそこら辺の血が繋がってる兄妹より…」
男「グレートでブラボーな絆を築けるかも!」グッ
妹「う…」
男「な?」ナデナデ
妹「…あ」///
男「だから、さ」スッ
妹「か、顔近っ…」
男「こんな兄で良かったら…仲のいい兄妹目指そうぜ」コツン
妹「…うぐっ」ジワァ
妹「ふわあぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」ダキッ
妹「に、兄さん、兄さぁぁぁぁぁぁん!」
男「…」ナデナデ
友「…」キュッ
友(人の器が小さいと罵られても仕方ないけど…。僕の心の中は黒くてもやもやした嫉妬の塊でいっぱいだ…)
友(…本当は抱き合ってる二人を引き剥がしたい。今すぐにでも。…でも)
友(それはできない。…何故ならあそこにいる妹さんは過去の僕だから)
友(ああやって、僕も昔救ってもらったから)
友(妹さんの目を見れば分かる…。さっきまでヤンデレ特有の光の消えた瞳だったけど…)
友(今はあんなに涙が…感情が素直に出てきてるもの…)
友(しかし流石男くんだな…。僕では御しきれない、いや他の誰にもどうこうできないであろう妹さんを…)
友(こうも簡単に受け入れてしまうなんて…。フフッ…。流石僕の認めた人…そして…)
友(…僕の大好きな人)
友(………………ん?)
友(……………………)
友(…………………あ)
友(…………ああああ)
友(あああああああ!)///
友「」///
男「…落ち着いた?」
妹「あ、ああ。も、もう大丈夫だ」ズズッ
男「あー、袖で拭うなよ。これ使えこれ」
妹「…ハンカチ?」
男「おう。今時ハンカチ常備してるなんて紳士の鏡だろ。まぁそれも友が持て持てとしつこくて…」
妹(…ハンカチ。使用を許可されたハンカチ。直にいただいたハンカチハンカチハンカチ)
男「…なんだよ。まぁ使ってくれ」
ハッ
妹「…ひ、1つ我儘を聞いて欲しい」
男「ん?」
友「」///
妹「…兄上、と呼ばせて欲しい」ジッ
男「おぉう、やけにかしこばった呼び方だな」
妹「いや駄目ならいい…」シュン
男「いやいや、好きなように呼びなよ。それが妹の理想なんだろ?」ポンッ
妹「本当か!じゃ、じゃぁ…あ、兄上」
男「なんだ妹よ」キリッ
妹「…ッ。兄上って呼んだだけだ。他意はない」フイッ
男「アッハッハッハ!そうか!好きなだけ呼ぶがいい!……ん?」
友(マズいマズいマズい!さっき男くんは『聞いていた』と言っていた!あのわりと赤裸々な告白を!)///
男「おーい。友。大丈夫か?」
友「わッ!だ、大丈夫だ!問題ない!」
男「そりゃ駄目な時に言うセリフだ。さっきどっか打ったか?」
友「い、いやどこも打ってないって平気だよ。うん」
男「拳が当たる前に止めたと思ったけど…どれ」ペタペタ
友「わっ、ひゃっ!唐突に体を触らな、ひっ!」
男「いや念には念を入れてだ。男にとって傷は勲章だけど女はそうはいかないからな」
友「お、女…」///
友「……き、君は…さっき僕たちの会話を聞いていたと言ったね…」
男「その節は本当にすまん。いや謝っても」
友「そ、それは本当にいいんだ。ぼ、僕が気になってるのは、その…」
男「?」
友「会話を聞いた上で…僕のことを…その…どう、思ったのか、聞きたくて…」モジモジ
男「?…どう思うも何も…」
男「お前は俺にとって大切な奴だよ」
友「たたたたたたた大切なァ!!」リンゴーン リンゴーン
妹「」ガタッ
友(大切とは。もっとも必要であり、重んじられるさま。重要であるさま)
友(丁寧に扱って、大事にするさま。即ちこのタイミングでの大切な奴の意味合いは)
友(恋人。もしくは人生にとっての伴侶。不純異性交遊。節度を持ったお突き合い)プシュー
友「我が…生涯に…一片の…ブッ」ツー
男「おわぁ!?友ぉどうしたぁ!やっぱり打ってたんだな!ヤセ我慢なんて無茶しやがって…」
友「い、いや気にしないでくれ。これはどちらかと言うと内側からの破壊で外因的な問題じゃない」
男「そ、そうなのか?よく分からないが平気なのか?」
友「ああ。どちらかと言うと幸せダメージでご馳走様でしたな感じだ。問題ない」
男「……しかしさっきの話からどうして友をどう思うだのなんだのって話題になったんだ?」
友「へ?どうもこうも何も私の告白を君が聞いてそれで…」
男「ん?友の告白?俺は妹の告白は確かに聞いたけど…友のは聞いてないぞ」
友「……え?」
男「うん。聞いてない」
友「……じゃぁどこから…」
男「えーっと、妹が俺と同じく兄妹を持つことに憧れていた―のあたりからかな」
友「…」
男「そしたら段々険悪なムードが強くなってきて…」
友「…」プルプル
男「…まさに拳が衝突するその刹那…って友?どした?」
友「…何でもないよ」フンッ
男「えぇ!?何で怒ってるんだ!?今怒るところあったか!?」
友「…怒ってない」ムスー
男「えぇー…。あ!ひょっとして俺が来る前に友が言ったっていう告白って奴が―」
友「ッ!何でもない!何でもない!何でもない!」ブンブン
男「だったらちゃんとそれを聞いて―」
友「何でもないったら何でもない!僕の勝手な一人相撲だったんだ!忘れたまえ!」ポカポカ
男「あだだだだだ!やめろ!グルグルパンチは地味に痛い!痛”ッ!」
妹「…友さん」
友「…」ピタッ
妹「御免なさい」ドゲザ
友「…」
妹「…兄が関わっていたとは言え、貴女に危害を加えようした罪は重い…」
友「…」
妹「どんな責め苦であろうと受ける。好きにしてくれ」
友「…そう。じゃぁお言葉に甘えて」
男「あ!友っ、待っ」
妹「…ッ!」
妹「………?」チラッ
ビシッ
妹「…うっ!…え?」ヒリヒリ
友「どう?男くんを1年中撃ち抜き続けたデコピンの味は?」
友「これで全部精算したよ。綺麗さっぱりオシマイ」
妹「…いや私がした事はこんな罰じゃとても―」
友「…いいんだよ。好意故のことだし、結果として僕に実害はなかった」
妹「友さん…」
友「人は反省し、やり直せる生き物だし。何より…」
友「男くんが認めてるのに、僕が認めないなんてことになったら」
友「男くんより物分りが悪いみたいで腑に落ちないモノがあるしね」ジロッ
男「oh…まだ怒ってる…」ウゥッ
友「…それにどうせ足蹴にしたって悦ばれるのがオチだしね」ボソボソ
妹「…私は別にそれを狙った訳では」ボソボソ
友「ってことでこれは仲直りの握手。ほらっ」
妹「友さん…」
友「あとさ。その、さん付けって何だかムズムズするからやめて欲しいな」ハハ
妹「じゃぁ、先輩」
友「んー、まぁそれならいいか」スッ
妹「…はい」スッ
ガシッ
男「ゆゆ友情パパワー!」グッド!
友「茶化さないッ!」ビスッ
男「ゲハァッ!」
男「ゲハァッ!」ドタッ
男「うごご…相変わらず喉仏を正確に撃ち抜くな友よ…」サスサス
男「少しは手加減ってもんを……ん?」
男「…これは…」ツマミッ
妹「…あ」
友「…あ」
男「……首輪?」シゲシゲ
妹「う…」
友(妹さんの大暴露と僕の勘違いで完全に意識の外だったけど…)
友(m趣味も男くんにも露呈してるんだった…)
友(ノーマルな感性からすれば、これは限りなくアウトに近いアウト。…僕が言うのも何だけど)
友(……しかし首輪を持つ男くんか…。これは、ふむ、かなりイイんじゃないかな、うん)ムフー
クルクル
男「…おお、他にもいっぱいあるな」パシッ
妹「…」
男「これ全部妹の?」
妹「…はい」
男「ふーむ…あのさ」
妹「は、はい」ビクッ
男「妹さえ良ければ…コレ今度ちゃんと見させて貰える?」
妹「」
友「そう来たかぁ!」グァッ
男「聞いた上に見たから…もうプライベートもへったくれもなくて申し訳ないんだけどさ…」ペコリ
妹「そ、それはいい。ではなくて…引いたりしないのか?」
男「いや全然。俺自身平凡より異端がモットーだしな」
友「…まさにその最たるモノだからね君は…」
男「それにこの首輪1つ取っても全然オモチャっぽくない。随所にこだわりが見える」
妹「…ベルトの素材自体や裏地、刺繍も選んで縫製してもらった一品物なんだ」///
男「なるほど。風格あるもんなこいつ」
男「いやね。実は前からこの手のモノに興味があったから」ホホーウ
ペコポン!
友「!」バッ
妹「!」バッ
友「グッド!」ボソッ
妹「グッド!」ボソッ
ピシ! ガシ! グッ! グッ!
男「どうせ聞くならその道を行くプロに……って何やってんだ二人とも」
友「何でもないよ♪」ピシ! ガシ! グッ! グッ!
妹「何でもないな♪」ピシ! ガシ! グッ! グッ!
妹「フンッ、そういう事ならやぶさかではない」
男「おお、ありがたいな。友も頼むぞ」
友「ああ」コクン
友「…って違う!何で僕に振ってくるんだ!」
男「いやさっきの聞く限り相当詳しそうだったから」
友「…コホン」///
友「いいかい男くん、物事というのは多面的に見る必要があるのだよ」
友「その為には一見関係ないようなものまで含めて様々な知識を吸収する必要がある」
友「つまり僕が知的好奇心を満たした上で更に自身のqolを向上させてだね―」クドクド
男「あ、風呂掃除しなきゃ」
友「人の話は最後まで聞きたまえ!」
男「時間も時間だし、今日は晩飯うちで食ってけよ」
友「む…気持ちはありがたいが…」
男「父さんたちも友なら大歓迎だろ」
友「いや、まだ家族になって日が浅いのなら部外者はいない方がだね…」チラッ
妹「…私なら構わないぞ先輩」
男「な?妹もああ言ってることだしさ」
友「…それならお言葉に甘えて…ご相伴に預かるとしようかな」
男「ベネ。母さんにも紹介できるから丁度良かった」
友「しょ、紹介って君…」///
男「そいじゃ風呂掃除してくるからまた後でな」ガチャッ
バタン
友「…」
妹「…」
友「…ふぅ」
妹「…はぁ」
友「なんだかドッと疲れたよ…」グッタリ
妹「…私もそれには同意する」グッタリ
友「次から次へとやたら濃密な時間だったから当然だけど…」ボケー
友「…」ボケー
妹「…なぁ先輩」
友「ん?何かな?」ボケー
妹「兄上は…いつもああなのか?」
友「んー……うん、そうだね。いつもあんな感じだよ」
妹「…兄上はその、何と言ったらいいんだろうか…うまく言えないな」
友「…いや、言いたいことは大体伝わったよ。何しろ僕も最初は驚いたクチだから」
友「彼の特性、人間性についてじゃないかな?」
妹「…ああ」
友「そうだな。実に例えにくいことこの上なしだね…」
友「一番しっくりくるとすれば…そう、彼は『重い人』なんだ」
妹「…重い?」
友「とびっきり重い人間だよ。僕と君との間に現れる最も重い質量を持った人間」
妹「???」
友「君と僕との立ち位置は普段だったら何も変わらない」
友「君の価値観と僕の価値観は別物で相容れることはない」
友「僕たちの中にはそれぞれの法則があり、それに従って日々生きている」
友「その考え方を他人にとやかく言われる筋合いはないし、簡単に変えたりもしないだろう」
友「歩み寄る意思がなければ反目し、自分たちの利益を守るか奪い合う…」
友「今回はまさにそのケースだった」
妹「…ああ」
友「だけどそれは僕たちの立ち位置が普段通りだったらって話」
友「男くんが現れると状況は劇的に変わるんだ」
妹「…」ゴクリ
友「そう、全ては男くん中心に動き出す」
友「男くんという、僕らにとって最も『重い物体』が現れたから」
妹「!」
友「僕らは立ち位置を普段通り保つことはできない」
友「今まで地面だと思っていた平面は壁になり…」
友「抱えていたものは床にではなく男くんに転がり始める」
友「何故なら男くんを中心に強烈な引力が発生するから」
友「そうなると自分たちが持ってる法則なんて何の役にも立たない」
友「彼が現れた瞬間に、僕らの重力の中心は自分ではなく…」
友「男くんになるから」
妹「…」コクリ
友「当然僕らは慌てふためく。普段持っている常識は通じない」
友「自分の保身に精一杯で…あげくの果てにボロボロと身から色々こぼれ落ちる」
友「それは隠していた感情だったり、後で使おうと思っていたフラグだったり」
友「デコピンだったり、視姦だったり…そういったありとあらゆるモノが男くん目がけて落ちていく」
友「で、ギリギリ掴めたモノはいいけど…それ以外はあえなく男くんに叩きつけられる」
友「…それでいて無傷だったり、逆にキャッチしていたりするんだけどね」
友「そしてひと通り男くんから発生した重力の嵐が過ぎ去ると…」
友「なぜか事態は収束している」
妹「…それも極めていい方向に」
友「うん。さっきもそう」
友「男くんの介入がなければ、僕は君によって肉便器にされてしまいbadend」
友「君も兄さんと念願の兄妹生活は送れず、最終的に肉欲に溺れた男女の関係になりbadend」
友「どちらもsan値がガリガリ減るだけの未来が待ってたんだけど…」
妹「…回避できているな」
友「そう、過程はどうあれ何故か回避しているんだ」
友「会ったときからそうなんだ。何かトラブルが起こりそうになるとどこからか現れて」
友「勝手に事態を引っ掻き回しながら良い方向へ持っていく」
友「理屈じゃないんだ。男くんが放つ引力が環境を変えていってしまう」
友「ずっと観察してるけど…どうしてそうなるかはまるで証明できないんだよ」
友「本当に興味の尽きない、不思議な男なんだ…彼はね」フフッ
妹「…そこまで兄上にイカれているのか」フゥ
友「イカれッ!?」ボッ
妹「ああ。何やら惚気話を質の悪いポエムに詰め込んだようだった」
友「き、君が聞いたから僕は答えたまでで惚気なんて1つも」ブンブン
妹「だが理解できる。今は言葉でなく、心でな」
友「え」ピタッ
妹「引力か…言い得て妙だ。それなら私たちが惹かれるのも仕方ないな」
友「…僕らにとっては当然の物理法則だからね」
妹「私も相当イカれているようだ」
友「ああ、相当イカれているね。僕に負けず劣らず」
妹「…フフッ」
友「…フフッ」
間空けすぎてマジごめんなさい
つか支援ありがとです
続き落としてきます
妹「こうして本心で話すのは人生で初めて…いや二回目の経験か」
友「…二回目?」
妹「そう驚いた顔をするな。元々人と慣れ合うのは苦手な質でな」
友「…分かるよ。どちらかと言えば僕もそっち寄りだし。ただ一人で抱え込むよりは―」
妹「いや、考えを改めるつもりは毛頭ない」
友「…そう」
妹「…今は理解者も増えたことだしな」
友「フフッ、そうだね。男くんという君にとって最良の理解者がいるもの」
妹「…いや、それともう一人」ジッ
友「…え?」
友「…僕?」
妹「ああ」コクリ
スッ
妹「先輩さえ良ければ友達になって欲しい」
友「…」
妹「我儘な申し出なのは分かっている。ただ…」
妹「…私の秘密をここまで知っている人間は先輩しかいない」
妹「母と父、兄、そして先輩の前では偽らない自分でいられるなら…」
妹「…私はとても嬉しい」
友「…」
妹「勿論嫌ならば断っても構わない。先刻の事の手前、節操がないとは自分でも思うが…」
スッ
妹「…!」
友「いいよ。今から僕らは友達だ」
妹「…いいのか」
友「自分から言っておいて確認を取るのかい?」フフッ
妹「…正直断られると思っていたからな」
友「…僕も同じ理由さ」
妹「…同じ?」
友「僕の胸の内も君にはもうバレバレだしね」ポリポリ
友「秘密を知っている、ってことなら妹さんと同じなんだよ」
友「そして秘密を共有してるからこそお互いに相談できる事もある」チラッ
ズラリ
妹「…!そうだな。確かにそうだ」チラッ
友「幸い僕らは同じ趣味を持っていることだし、話題も合いそうだ」チラチラッ
友「じゃぁ、はい。握手」グッ
妹「ああ。今日から私たちは友達だ」グッ
友「…まさかこんな結果になるとはね」フフッ
妹「私も驚いている。が、何はともあれ今日から私達は良き友であり―」
友「そうだね。僕からもよろしく頼むよ」
妹「良きライバルだ」
友「そうだね。僕にとって君はライバル…………ライバル?」
妹「そうだ。友であり、ライバルだ」
友「ライバルって…君は何か競うつもりなのかい?…ひょっとして趣味のことかな」
友「僕はsmと言ったような倒錯的な行為は誰かと競ってプレイのレベルを上げるんじゃなくてお互いの信頼関係を―」
妹「smではない」
友「じゃぁ一体何の…」
妹「恋のライバルだ」
友「」
友「……ちょっと、待って。恋?恋ってまさか…」
妹「そのまさかだ」
友「まさかの先をまだ言ってないよ!男くんのことを言っているのかい!?」
妹「言わずもがなだ」
友「いやいやいや!さっき全力で解決したじゃないか!」
妹「あぁ。私は兄上にゆっくり妹になっていけばいいと諭された」
友「そう!だから君は男女の関係ではなく真っ当な妹になった訳で―」
妹「人の話したコトはよく聞いておけ先輩。誰がそんな事を言ったんだ」
友「君がさっき…………。確かに言ってはいないね…。じゃぁまた振り出しに―」
妹「いや。兄上の言葉は私にしっかりと届いた。私は、私の心はまさにあの瞬間から妹になっている」
友「ええ!?じゃぁどういうことなんだい!?わけが分からないよ…」
妹「私は兄上という、兄宇宙に置ける最上位の兄物質に触れたことで生まれ変わったんだ」
友「『兄物質』…。アニマター…。新しい…惹かれるな…」
妹「妹を超える存在。実妹の上―――の、更に上」
友「…い、嫌な予感がするけどそれってもしかして…」
妹「私は上級職『義妹』にクラスチェンジした」バァン
友「うぐっ!やっぱり……。ってことは気付いているんだね…」
義妹「ああ。よく考えたら兄上と結婚もできるからな」キリッ
友「危惧していた通りの展開じゃないですかー!やだー!」ジタバタ
義妹「今まで私は兄と妹にこだわるあまり、大きな視野で物事を見て来なかった」
義妹「『妹』か『女』か。どちらかを選ぶ二元論でしか兄妹観を捉えてなかったんだ」
義妹「兄上は私に教えてくれた。兄妹のカタチは1つではないと。特に私達は他の兄妹とは違う、と」
義妹「なら『or』でなく『and』でもいいはずだ。『妹』として、そして『女』として愛してしまえば良い」
義妹「そう、私は最初から迷う必要なんてなかった」
義妹「兄上はきっとそれを教えてくれたんだ…」
友「そんな意図を持って男くんが接するわけないだろう!」
義妹「私の正義は今この時を持って、『兄』の一文字ではなく―」
友「頼むから人の話を聞いてくれたまえ!」
義妹「『三文字』の正義を心に掲げる!すなわち―」
義妹「『兄・即・姦』!」バァン
友「か、かん…?」
兄・即・姦はおかしいだろ
>>240
姦する→婦女子を犯す
男には使えない言葉じゃないですかー!やだー!
ごめん。姦→犯にしときます。
義妹「今まで私は兄と妹にこだわるあまり、大きな視野で物事を見て来なかった」
義妹「『妹』か『女』か。どちらかを選ぶ二元論でしか兄妹観を捉えてなかったんだ」
義妹「兄上は私に教えてくれた。兄妹のカタチは1つではないと。特に私達は他の兄妹とは違う、と」
義妹「なら『or』でなく『and』でもいいはずだ。『妹』として、そして『女』として愛してしまえば良い」
義妹「そう、私は最初から迷う必要なんてなかった」
義妹「兄上はきっとそれを教えてくれたんだ…」
友「そんな意図を持って男くんが接するわけないだろう!」
義妹「私の正義は今この時を持って、『兄』の一文字ではなく―」
友「頼むから人の話を聞いてくれたまえ!」
義妹「『三文字』の正義を心に掲げる!すなわち―」
義妹「『兄・即・犯』!」バァン
友「は、はん…?」
義妹「『兄・即・犯』とはこう書く」スッスッ
友「…字面からしてなんてエロス溢れる正義なんだ…」
義妹「『兄から 即座に 犯されるべし』という、私の精神を端的に表した言葉だ」
友「字の並びからして君が犯す側かと思ったよ…」
義妹「阿呆。そんな美味しい役目を何故兄上に渡さねばならんのだ」
友「まぁそこは僕も同意するけれど…」
義妹「あくまで責められるのは私だ。そこは絶対に譲れん」
友「…ちょっと、待ってくれ。じゃぁ今の君の状態を簡単にまとめると―」
友「依然として、男くんの貞操を狙いつつ貞操を狙われることはやめずに…」
友「かつ妹としても日々を過ごして2つの意味でウルトラハッピー♪ってことかい?」
義妹「その通りだ」
スッ カチャッ
友「も、もしもし僕だ。…あ、ありのまま今起こった事を話すよ…
『男くんの説得によって真っ当な妹になったと思ったら真っ当な変態になっていた』
な、何を言っているのか分からないと思うけれど、僕も何が起こったかさっぱり分からない…
頭がどうにかなりそうだった…
歴史の修正力だとか世界線の収束だとかそんなチャチなものじゃ断じてない…
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったよ…」
義妹「…急に虚空に向かって話出すな。どうかしたのか先輩?」
友「…軽く現実逃避をしたくなっただけだよ。あとどうかしているのは君の方だろ」スッ
義妹「兄上が魅力的だから仕方ない」
友「そうか…確かにそれなら仕方な…ッ!仕方なくない!君はタブーに触れてるからアウトだ!」
義妹「禁忌か…昂ぶるな」
友「たかぶっ………駄目だ…。燃料を注いだだけで全然制止できてない…」ガクリ
男『おーい!父さん達帰ってきたから飯の準備しようぜー!』
義妹「…だそうだ」
友「…聞こえてるよ。じゃぁ、下に行こうか」ハァ
義妹「…私はもう宣言したからな」
友「…本気、なんだね」
義妹「ああ。先輩の言葉を借りるならフェアに。友として、そしてライバルとしてだ」
友「…」
義妹「…当然だが兄上と過ごした時間は先輩の方がはるかに長い」
義妹「これから私が同じ家で暮らすアドバンテージがあったとしても―」
義妹「私が知らない、先輩と二人だけの思い出がたくさんある」
義妹「そこにはどんなに私が努力しても入れない領域だ」
義妹「どちらが有利で、どちらが不利かはまったく分からない」
義妹「だが私は決意した以上全力を尽くす。結果は兄のみぞ知ると言ったところだな」
義妹「先輩も兄上の隣に立ちたいと思うならば―」
友「ッ!僕は―」
コンコン ガチャッ
男「無限に広がる大宇宙!」バァン
友「脈絡がなさすぎるよ!どんな挨拶なんだよ!あとノックの意味皆無だから!」ビシィ
男「ハハッ、絶好調だな友よ。その調子で晩飯の準備も頼むぜ」
義妹「…」
義妹「…私は先に降りているぞ」
男「おう。人海戦術でちゃっちゃとやっつけちゃおうぜ」
スッ
義妹「…先輩、私は負けませんよ」ボソッ
友「…ッ」
友(僕は…。僕は……!)
ギュッ
―男家 1階 食卓
父「はっはっは!そうか!やけに敬語ばかりだったのは照れていたからか!」
義妹「可愛げがなくてすまない。父にとって理想の娘ではないかもしれないが―」
父「いやなに気にすることはない。うちにいる時は自分が自然体でいられるのが一番だ」
母「父さんも言ってくれている訳だし、あなたもいつも通りでいいのよ」ウフフ
父「違うだろハニー。父さんではなくダーリンだ。もしくは旦那様でも可だ」
母「旦那様…」キラキラ
父「どうしたマイスウィートハート…」キラキラ
キラキラキラキラキラキラ
義妹「…」キラキラ
キラキラキラキラキラキラ
友「…」キラキラ
キラキラキラキラ
男「オクラの煮浸しうまいなー!もっとおかかかけよう!」モグモグ
友「…コホン。あの、男くん」ツンツン
男「ん?友もおかかかける?じゃぁおかかかけようね、おかか。はい」サッサッ
友「違う!おかかじゃないよ!あぁっ僕はそんなにおかかかけなくてもいいよ!」
男「オカカカケヨウネー♪」サッサッ
ビキッ
友「ふんっ!」シュッ
ビスッ
男「ゲハァッ!」
義妹「…何度見ても見事な技だな」モグモグ
友「そうじゃなくて君の母親に僕を紹介するって話だよ!」ボソボソッ
男「オカカ…ケヨ…ウ…ゴホッゲホッ…そういやそうだった」サスサス
友「このままだと初対面のままこのキラキラ空間に取り残されるから頼むよ」
スッ
男「父さん、続きはベッドの中で」
友「ブゥーーーーーーッ!」
父「…ハッ!確かにそうだな。確かにこのテーブルの上で続きはできんな」
母「母さん達うっかりしていたわ。ごめんね男くん」
友「え”ほっ、げほっ」ウルウル ジーッ
義妹「…先輩、何も言わなくてもいい…目を見れば分かる、ああ」サスサス
男「ほいじゃまぁ気を取り直して、と」パン
男「父さんは知ってると思うけど、母さんは初対面だから紹介するね」
男「こちらクラスメイトで友達の『友』。俺が学校でものっそいお世話になっていて足を向けては寝られない人です」
友「あしっ!?…コホン。ど、どうも学校で良き友?として色々教えられ?てます『友』です」
友「長い付き合いになるかもしれないので…よろしくお願いします!」バッ
母「あら、礼儀正しい娘ねー。眼もとっても可愛くてキュート。でも目の下に隈が結構多いわね…」
母「ストレスを溜めやすいタイプなのかしら?」
友「…えぇ、特に自分に対して溜めやすい傾向にありますね。ハハッ」ハァ
母「…駄目よ」ガシッ
友「え、え?何が駄目なんですか」
母「こんなに可愛いのにストレス溜めて魅力半減なんて…許された事じゃないわ」ギラギラ
義妹「…母の変なスイッチを押したな先輩」モグモグ
友「妹さん見てないで助けてよ!何か君のお母さんの目が怖いよ!」
母「さぁ!ストレスを発散させて魅力を取り戻して!早く!」
友「あの、いえ、そのですね。発散させると言っても私一人でどうにかなる訳ではなくて…」
チラッ
父「! 今視線がマイサンの方に泳いだぞ!」
友「あ、違っ、今のは別に!」ワタワタ
男「えぇ!?俺!?」
父「…息子よ。まさか友さんに迷惑を…」
母「男くん、心当たりがあるなら、ね?」
男「…言われてみれば…心当たり、たくさんあります…」ズーン
友「ち、違います違います!どちらかと言うとそのストレスは自分のせいで男くんは関係ないんです!」ブンブン
父「…心優しい友さんのことだ。きっとお前をかばっているんだな…」
母「女の子に気を使わせちゃ、メ、だよ男くん?」
男「…友、すまなかった…」ペコリ
友「えぇぇ!?男くん椅子の上で土下座とか器用すぎるよ!違うから!顔上げてよ!」
男「…学校で俺がいつもフリーダムにしているから友がそのせいでストレスの塊に…」ウウッ
友「か、塊!?だから違うってば!っていうかフリーダムなの自覚してたことに驚きだよ!」
男「…思えば友という存在に俺自身が甘えていたんだ…」
友「っくぅ!甘えるのは全然構わないけれど状況が状況だから全然素直に喜べない!」
ガシッ
友「違うったら違う!僕の言葉を聞いてくれ!ストレスの原因は君のフリーダムさとはまるで関係ない!」
男「……そうじゃないのか?」
友「断じて違うよ!」
男「……あ……そうか」
友「や、やっと分かってくれた?そう原因は―」
男「実は俺の相手することにもう疲れてて…なかなか言い出せないから…それでストレスに…」ズズーン
友「」
友「…あの、ね?男くんそんなにマイナスな方向に―」アセアセ
男「…分かった。ならもう馴れ馴れしく声をかけたりしないし!巻き込んだりしない!」
友「だ、駄目駄目!そんなことしたら更に僕のストレスがマッハだよ!」ババババ
男「これまでの非礼はパシリとか献上品を奉納して何とかする!」
友「コッチヲミロー!望んでないよそんなことー!」ピョンピョン
男「…今まで気づけなくて悪かったな、本当に…ごめん」
友「」
プチン
友「絶っ~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
対に違うからァァァァァァーーーーっ!!」
…ィィィィン
父「」
母「」
男「」
妹「…」モグモグ
友「僕は君の存在にストレスを感じたりしたことなんか一度だってないよ!」
男「…ほ、本当に?一度も?」
友「う”っ…いや一度もって言うのは言い過ぎかもしれないけれど…」
男「や、やっぱりかぁ…」ガクーン
友「ち、違うんだよ!人として付き合う以上は多少の衝突があって当たり前で、その…」
男「…その?」
友「だからッ!そういうマイナスも全部ひっくるめて君と一緒にいたいって思ってるって事だよ!」
男「おお!そこまでか!」パァツ
友「むしろ!僕は!君のことがッ…!」ズアッ
妹「…!」ピキーン
友「き、君の!ことがッ…!」ゴゴゴゴ
男「お、俺の…ことが…?」
妹「…」ゴゴゴゴ
友「すっ…!すっ、すぅ……」ゴゴゴゴ
男「大丈夫かおい!?顔真っ赤だぞ!」
妹「…」ゴゴゴゴ
友「ぅ…k」チラッ
父「…」ハラハラ
母「…」ワクワク
友「ぐっ!」ビクッ
友「…す……き…やき」ガクリ
妹「ふぅ…」
男「ス…キ…ヤキ…?」
友「そ、そう。…す、すきやき」
男「…僕は君のことが…すきやき?ってまるで意味が―」
友「きっ、君のことがすきやき一緒につつきたいと思えるくらい気の置ける人って意味だよ!」
男「そ、そうなのか?…でも確かにそれはフレンドリィな感じがするな」
友「で、でしょ!だから君がネガティブになるのは誤解なんだよ。ね?」
男「おう、分かった!しかし友にすきやき認定されるほど親愛の情を傾けられていたとはな!」
友「そうだよ!まったく君はいっつもいっつも鈍いんだからまったくもう!」
友(アハハ…ハァ……伝え損なった…。でも男くん両親+妹の前は流石に羞恥プレイが過ぎるよ…。無理だよそんなの…)ボソボソ
いやいや気を置いちゃダメだって
それじゃ一線引いた間柄になっちゃうから(;^_^)
>>266
ごめん。
脳内補完よろです。
男「となると今度オレの奢りですきやきだな!日頃の感謝の意味も込めて!」
友「ブツブツ…って本当かい!?男くんと二人で…すきやきデート…」
父「かくして男と友は更に親交を深め、すきやきの誓いを交わすのであった!」バッ
母「だが卵を荒くとくのか白身を一体化させるまでとくのか、二人の意見は交じり合うことはないまま、肉に火が通ってゆく…」ババッ
父母『次回、「瞬間、卵、重ねて」絶対に見てく―』
友「急に出てきて勝手に次回予告風にまとめないでください!」
―友家 友自室
グター
友「……うぅ……今日は凄まじい一日だった……」
友「謎を解いたり戦ったり大暴露したり友達が出来たり…」
友「もう…わけがわからないよ…」ハァ
ゴロゴロ
友「…妹さん、本気だもんなぁ…」
友「僕は…このままの僕でいいのかな…」
友「それで男くんの隣に…立てるのかな…」
???『おっねぃちゃーん!入っていいー?』
コンコン
友妹「入るよー」
友「…ノックの意味とは…一体…」
友妹「やや!お姉ちゃんツッコミ冴えないねー。お疲れ?」
友「…見たままの通りだよ」グッタリ
友妹「宿題でお姉ちゃん先生に教えて欲しいところあるんだけど」
友「…パスさせてもらうよ。今日はそっとしておいて欲しい」
友妹「えー!提出明日なんだよー!お願いっ!お姉ちゃん!」
友「…………おねだり、か」
友「…僕にもそういう女の子っぽさがあればいいのか…」ボソ
友妹「!」ペコポン
友妹「ハッハァーン…私、分かっちゃったかも」
友「…何が?」
友妹「お姉ちゃんがヘロってる原因だよ!」
友「…やれやれ、宿題の無心をする友妹なんかに分かるはずが」
友妹「ズバリ!男先輩のことでしょ!」ビシィッ
友「」
友「ハハッ、何を馬鹿な。度し難いな」
友妹「お姉ちゃん、髪かきあげて誤魔化しても無駄だよ。
その鼻に刺さってる指何とかしないと爽やかさの欠片もないよ」
友「痛ッ…結構深く…っじゃない!何故分かったんだ!情報公開を請求する!」
友妹「あ、あっさり認めちゃうんだ」
友「え…?」
友妹「私、わりと当てずっぽうに言ったんだけど」
友「…………」ガクリ
友妹「いやー、お姉ちゃんは男先輩関係はホント脇が甘いよねー」
友「うぐっ」
友妹「普段はバリバリの論理武装で隙がまったくないのにさー」
友「ぐふっ」
友妹「でも普段パーペキなお姉ちゃんが振り回されるような原因と言ったら、ね」
友「………」
友妹「大抵は男先輩に関することだから…言ってみたらそのものズバリと」
友「………」ゴソゴソ
友妹「まぁそれはさておきお姉ちゃん、何があったか詳しく…あれ?お姉ちゃんどこー?」
友「………」
友妹「……布団に篭ってる…。おーいお姉ちゃん」
友「………」ブツブツ
友妹「…ん?」
友「…もう駄目だ…おしまいだ…僕は肉体どころか精神まで駄目な奴なんだ…」ブツブツ
友妹「じ、自虐モードに入ってる…」
友「よりによって脳ミソに皺1つなさそうな友妹なんかに看破された…死にたい…」ブツブツ
友妹「自虐ついでに私までディスられてる!ていうかお姉ちゃん普段私をそんな目で見てたの!?」
友「…ふふ…どうせこうやって自棄になったところを町中でdqnに絡まれて…」ブツブツ
友妹「お、お姉ちゃーん?」
友「『男かと思ったら女かよ』的な事を言われて逆上した僕はあっさり返り討ちに遭って…」ブツブツ
友妹「お姉ちゃん!?」
友「『へへっ。まぁ女にゃ変わりねぇか』的な展開で仲間を呼んで軽ワゴンに押し込まれて…」ブツブツ
友妹「お姉ちゃん思考がよじれすぎだよ!一体何の影響を受けてるの!?」
友「嫌がる僕を無理やり力で押さえつけて代わる代わる僕を」
友妹「ストップ!スターーップ!」
友妹「お姉ちゃん落ち着いてよ!そんな展開あるはずないでしょ!」
友「………確かに」
友妹「おお、急に冷静になった」
友「…お前は僕が見切り品のクズ野菜みたいなdqnの目にも止まらない貧相なボディだから、
そういう性的対象にもならないって言いたいんだろう?」
友妹「ちっとも冷静じゃない!そんな事思ってもないよ!何でそんなに卑屈になってるの!?」
友「…同情はよしてくれよ。自分でも分かってたさそんな事。今世の中の流行は男の娘だからね。
僕の股間に禍々しいバベルの塔でもそびえていればまだ需要はあったんだろうね…」
友妹「バ、バベッ!?」
友「…ふふ、そう言えばこの前男くんと学校の帰りにゲーセン寄った時だったか…」
友妹「お姉ちゃん目のハイライトが消えてるよ!軽くレイプ目になってるよ!」
友「彼がハイスコアを出してね…名前入力の画面になったんだよ…」
友妹「は、話がまるで見えない…。お姉ちゃんの自虐の出口も見えない…」
友「そしたらさ…男くんがね…面倒くさいからってさ…カーソルを初期位置のままボタンを連打したんだよ…」
友妹「……まさか」
友「そう…そしたら当然スコアネームは『aaa』になる訳だよ。aaa…。aaaなんだよ…」
友妹「お、お姉ちゃん…それは…」
友「aaaは実在するんだよ…。僕が生き証人なんだよ…絶壁なんだよ…」
友妹「お姉ちゃん…それ以上…いけない…」ブワッ
友「aaaって『ノーネーム』とも読まれるんだよね…アナグラムすると『ノームーネ』…ないチチ…フフフ…」
友妹「お姉ちゃんうまくない!全然うまくないよ!」
―2時間後
友妹「はいお姉ちゃんアイスココア」
友「ん…ありがとう」
友妹「…お姉ちゃん、落ち着いた?」
友「…うん、何とか」
友妹「良かった…正直お姉ちゃんが延々とモロッコ言い始めた時は駄目かと思ったよ…」
友「…ネガティブのトリガーを久々に引いてしまったよ」
友妹「もう話してくれるよね?今日は一体何があったの?」
友「話せばわりと長くなるんだけどね…」
カクカクシカジカ
友妹「ほほーう。男先輩に突然個性が天元突破してる義理の妹さんが」
友「要約するとそうなるかな。結果的には妹さんとも友人になれたから良かったんだけどね」
友妹「ある日突然ワガママボディのお兄ちゃん大好きな義妹ができたと…
お姉ちゃん、それなんてエ」
友「それ以上いけない」
友妹「っとと。確かにそこに触れてはいけないか。それ言ったらお姉ちゃんも充分おかしいし」
友「そうだろう。問題はそこではなく…ん?」
友妹「それでお姉ちゃんはこれからどうするつもりなの?」
友「…え?ああ…いや…特に何を変えようという訳では…」
友妹「え?」
友「いや、別に今までと同じでもいいかな、と僕は思う訳で…」
友妹「ん?」
友「ほら、その、僕は今の距離感も嫌いじゃないから…」
友妹「…」プルプル
友「…友妹、そんなに震えてどうしたんだい?」
友妹「喝ーーーーーーッ!」ビリビリ
友「ひゅいっ!?」ビクッ
友妹「甘い!お姉ちゃん甘すぎる!甘すぎて聞いてる私が頭痛を訴えるレベルだよ!」
友「え?え?」
友妹「お姉ちゃんいい?男妹さんは男先輩の事が好きでなおかつ居住空間を共有しているんだよ」
友「う、うん」
友妹「間違いが起こってもおかしくない…いやもう近い将来間違いが起こるのは間違いないよ」
友「えぇ!間違いがゲシュタルト崩壊してきた…」
友妹「しかも男女の心理的な距離は物理的な距離に比例して近くなるんだよ」
友「…ということはつまり」ゴクリ
友妹「今まで物理的な距離が一番近かったのはお姉ちゃんだったの。でも今日からは…」
友「一番近いのは男くんの妹さん…!?」ガァーン
友妹「そして男先輩以外に聡明なお姉ちゃんなら分かるはずだよ…」
友「な、何が!?」
友妹「最初無茶なお願いをすることによって後のお願いを通りやすくする…」
友「…ドア・イン・ザ・フェイステクニック」
友妹「そうだよ。既に男妹さんは男先輩に対する兄妹の絆を超えた愛の告白を…
なんやかんやで済ましているんだよ!」
友「…」パクパク
友妹「一番の難関を突破してしまっているのだから…あとはもう
『兄上、まぐわいましょう』→『それは無理』
『では頬に接吻して下さい』→『まぁそれ位なら』
とやりたい放題だよ!あとはそのラインを徐々に徐々に上げていけば…」ゴクリ
友「…何かドキドキしてきた…これがntrの鬱何とかなのか…」ゴクリ
友妹「お姉ちゃんこれで現状を認識できた…って何で頬を赤らめながら膝をついているの?」
友「…いや、気にしないで欲しい」
友妹「そ、そう?じゃぁ続けて…更にお姉ちゃんと男妹さんには決定的な違いがあるんだよ!」
友「…妹さんは告白したけれど、僕は告白していない」
友妹「そう!これで分かったでしょ!
言うなればこれはもはやデフコン2…いやデフコン1の状態なんだよ!」
友「…つまり戦いは既に始まっている訳だ」キリッ
友妹「そう!ならばお姉ちゃんの取るべき方法は1つ!」ビシィ
友「僕が取るべき選択は…」キリッ
友妹「うん!」
友「……」キリッ
友妹「……」
友「……」キリッ
友妹「……」プルプル
友妹「ぅうおああああああ!!」ブゥゥーン
友「!…今僕の目にも確実に見えた…!見えないちゃぶ台がひっくり返される様子がしっかりと…!」
友妹「そうだよお姉ちゃん!思わずエアーちゃぶ台返しだよ!」
友「すごい才能だ…!他者の眼にまでイメージを見せてしまう…圧倒的想像力ッ!」
友妹「そ、そう?えへへ、わりと私もそこは…ってお姉ちゃん!論点をすり替えないッ!」
友「う”っ…」
友妹「為すべきことすべきこと…当然お姉ちゃんも同じラインに立つ為に、いやその先に立つ為には!」
友「そっ、それ以上聞きたくないっ!」
友妹「お姉ちゃんも男先輩に『告白』するっきゃないでしょッ!」
友「ぅぅ……」カァァァァ
友妹「むしろ告白するタイミングは今しかないよ!」
友「くっ!ど、どういう理屈でその結論に至ったか3行くらいで簡潔にまとめて僕に示してみせなよ!」
友妹「変わらぬ友情を享受していた平和な日々
ある日崩れ去る日常
隠していた気持ちが溢」
友「ぅうおあああ!ストップ!スタァーップ!分かった僕の負け!それ以上先は、もう、ぁぁ…」カァァ
友妹「こちとらいつ進展するかまったく分からない少女漫画のような展開を目の前で何年間も見てきたの…
お姉ちゃんの心の動きなんか透けて見えるんだよ…」ゴゴゴゴ
友「僕の妹からかつてないほどのプレッシャーが放たれている…」ビクビク
友妹「さっき言った通り、唐突な告白でもないの。環境が変わり、気持ちも変わる。自然な流れよ!
今回の事件はむしろ数年の凪を脱出する一陣の風と見るべき!」
友「一陣の…風…」
友妹「ああもう煮え切らないなぁ…お姉ちゃんは男先輩のこと好きなんでしょ?」
友「………好き……です……」///
友妹「男先輩と周りが反吐ぶちまけそうなストロベリータイム過ごしたいでしょ?」
友「………それは…うん……」///
友妹「でもこのまま告白もせずにぐだぐだやってたら…」
友「や、やってたら…」
友妹「ある日突然現れたぽっと出のどこの馬の骨かも分からない女に男先輩が盗られちゃうんだよ?
お姉ちゃんそれでいいの?」
友「い、嫌だよ…そんなのってないよ…」
友妹「だったらお姉ちゃんの取る行動は1つだよね?」
友「…僕が……男くんに…告白する……」
友「…でも、もし、告白することで…今の関係より男くんが遠くなってしまったら…僕は…」
友妹「…お姉ちゃん、どの道このまま停滞を決め込んでいたら負けちゃうんだよ」
友「…」
友妹「だったら闘わなきゃ。この世に乙女として生を受けたなら、
とてもかなわぬ…かなわなかろう…と思っても闘うんだよ」
友「…」
友妹「胸を張って恋をする為に!」
友「…ふぅ。ま、僕に張る胸はないけどね」スッ
友妹「! お姉ちゃん!」
友「友妹よ、どうやら僕はお前に励まされてしまったようだ」
友妹「…何その嫌そうな言い方は」ムッ
友「いや、感謝している。僕に足りなかったものが一体何なのか、それがようやく分かった気がするよ」
友妹「じゃぁ、お姉ちゃんは…!」
友「うん、これでようやく元通りかな」
友妹「復ッ活ッ!お姉ちゃん復活ッッ!お姉ちゃん復活ッッ!」
友「うん、明日…明日、僕は男くんに、告白をするよ」
友妹「お姉ちゃん復活ッッ!お姉ちゃん復活ッッ!お姉ちゃん復活ッッ!」
友「…」ビキビキ
友妹「お姉ちゃん復活ッッ!お姉ちゃん復ッ
シュッ
ビシィッ
友妹「ゲハァッ!?」ゴロゴロ
友妹「あ”がッ…相も変わらずスンゴイ威力…げほっ」
友「とにもかくにも礼を言うよ。覚悟を決めることができたのは…友妹、君のおかげだからね」
友妹「ふーーー…。感謝してよね。それでさっさと大団円を迎えてきちゃってよ」
友「フフッ、どうなるかは分からないけれどね。悔いのないようにしてみせるさ」
友妹「それで終わったらちゃんと私のところ来てどうなったか細部までとことん教えてね」
友「何でそこまで…まぁそうか。世話になった分の駄賃みたいなものだしね。いいよ」
友妹「そう、そうでなくっちゃ私の小説のラストが埋まらないからさー」
友「…………………ん?」
友「……今何と言ったのかな、友妹」
友妹「お姉ちゃんどうしたのそんな怖い顔して。私は単に小説……を………」ダラダラ
友「小説を…何かな?詳しく事情を説明してくれ給え」ズズズ…
友妹「いやぁ自作の鬼畜縄攻小説がお姉ちゃんの問題が片付かないとそわそわして進まないって感じで」ハハハ…
ボッ
友「…次は隣のおさげを吹き飛ばすよ」ゴゴゴゴ
友妹「ひぃぃぃ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!2人をモデルにした小説を書いてましたぁ!」ガクブル
友「…いつからなのかな?非常に興味深いものがあるね」
友妹「いやホント最近ぽっと思いついただけで出来心というか遊び心ですよ」ハハハ…
ギリギリギリギリ
友「…本当に?」
友妹「違います違います違います!本当は2人が出会った頃からわりと詳細に色々と書いてましたぁ!」
友「…正直に答えたようだね。情状酌量の余地はありそうだ」
友妹「こんな美味しいネタをそのまま放置するには忍びなくて…それで気付いたら狂ったように打ち込んでたんです…」
友「…まぁ話をまとめると、だ。僕を励まし、焚き付けた理由の中には『自分の創作』に対する焦りもあった訳だ」
友妹「うぐっ」
友「まぁ若干動機が不純とは言え励まされて僕が覚悟をキメたのだから結果的には良かったと言えるね」
友妹「…そ、そうだよね、へへ」
友「 で も 駄 目 」
友妹「ええぇ!?」
友「いくら面白いものが書けそうだからって本人の許可なしに僕だけならず男くんまでも書いてしまったと言うのはいただけないね」
友妹「いやでも嘘偽りなく書いていて変な脚色は一切かけてなくてですね―」
友「なおのことアウト。個人情報駄々漏れ。よってその小説は没収だな、うんうん」
友妹「! あ!お姉ちゃんその小説をどうするつも」
友「さてもちろん悪い事をしてしまった妹は長女として躾けなければならないね」
友妹「ええ!?情状酌量ってさっきお姉ちゃん言ってたじゃん!」
友「確かに情状酌量の余地ありって言ってたな…すまんありゃ嘘だった」
友妹「ええぇぇぇぇ!?」
友「さて今回のお仕置きは…『経絡秘孔全てを丹念にデコピン』かな」
友妹「…ッッ!」パクパク
友「…慣れれば痛いのも良く感じるようになるさ」///
友妹「な、ならないよ…なるはずがないよ……あ、こっちこないで!ちょ!たんま!トイレ!」
『ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!』
―翌朝 通学路
テクテク
友妹「うぅ…昨日は体が内側からはじけて死ぬかと思ったよ…」
友「やれやれ。大袈裟だな友妹は」
友妹「大袈裟じゃないよ!お姉ちゃんがデコピンを撃つ度に私の関節ありえない方向に曲がってたから!」
友「気のせいだよ友妹。経絡秘孔なんてこの世に存在しないよ。ファンタジーや世紀末じゃあるまいし」ハハッ
友妹「…う、嘘だ…撃ち込まれる度に変な効果音鳴りまくってたもの…絶対人体に害がある暗殺拳とかだよ…」ボソボソ
友「…何か文句があるのかい?愛しい愛しい友妹よ」ニコニコ
友妹「いッ!いえいえいえいえッ!ないです!これっぽっちもナノミクロンもないですよ~♪」ダラダラ
友「そう…ならいいかな。あ、そうそう、友妹のこの小説なんだけれど」
友妹「お、やったー!返してくれるの?内心焼却処分されるんじゃないかとヒヤヒヤしてたんだよ!」
友「一応最後まで目を通させてもらったよ」
友妹「……そ、それで…?」ビクビク
友「…僕と男くんをモデルにされていると言う点に目を瞑れば、そうだね。よくできているよ」
友妹「………………へ?」
友「僕たちを細部に渡って観察しているのがよく分かる内容だった。学生の等身大の恋が丁寧に描かれていて好感が持てたよ」
友妹「…………え?………え?」
友「…悔しい話だが、男くんの体育祭での活躍に僕の心が揺れ動くシーンはそう…僕の思っていたことと一分のズレもなかった…」
友妹「…お姉ちゃん………」
友「事実を元に描いているとは言え…人の心の中までは無論見ることはできないしね。見事だよ」ポフッ
友妹「あ…」
友「フフッ。成績は芳しくないみたいだけどいいモノは持っているじゃないか友妹」ナデナデ
友妹「え、あ、いやぁ、何かこう、ドストレートに褒められると照れちゃうなぁ…へへ」///
友「…さて本題はここからなのだけれど」ガキョッ
友妹「いぎっ!?お、お姉ちゃんそんなに引き寄せられるとく、首が…」
友「この『濡れ場』のシーンは…どういう事なのかな?」ニコニコ
友妹「………………………」パクパク
パラパラ
友「そう、ここだよ。このページ。ええと『後夜祭で浮かれるクラスメイトを尻目に後片付けを~』」
友妹「……」ダラダラ
友「友妹も知っての通り、僕と男くんはこんなにお近づきにはなってはいないし…」
友妹「……」ダラダラ
友「体育倉庫に2人で閉じ込められて一晩同じ場所で過ごしたこともない」
友妹「あわわわ」
友「そしてどういう意図で…」
友妹「ごっ!ごめんなさぃぃぃぃ!」
友妹「つ、つい出来心で乙女回路がギュンギュン回ってしまったんですぅぅぅぅ!」
友「…うん?」
友妹「や、やっぱりハプニングからの心ときめく閉鎖空間は必須かなーと思いまして…」
友「…ふむ?」
友妹「体育祭からの体育倉庫は実に自然な流れだし王道だし聖域だしカビ臭いマットだし…」
友「…ほう?」
友妹「お互い制服ではなく体操着という目にする事が少ない服装で更に異空間だし…」
友「…ほほう?」
友妹「更にうちの学園は何故か絶滅したはずのブルマ指定でフェチ感もマシマシで…」
友「………」
友妹「………匂いとか…その……あの……」
友「………うん?」
友妹「……いやその…何か……生まれてきてごめんなさい……」ズーン
友「…友妹は何か決定的な思い違いをしていないかい?」
友妹「はい…来世からやり直しま………へ?」キョトン
友「僕はね、このシーンのシチュエーションは非常に気に入ってるし…高く評価しているんだよ」
友妹「……え?…あれ?勝手に創作したから怒ってたんじゃ…?」
友「違うよ。むしろ創作はあって然り。何しろ小説なんだからね」
友妹「…えぇ?じゃぁ何で」
友「埃っぽい空気の中で汗ばんでしまった体操着。倉庫特有のカビ臭さの中に僅かに感じ取れるお互いの匂い…」
友妹「!……お姉ちゃんも分かるの!?それ分かっちゃうの!?」
友「嗅覚からお互いを意識させる雰囲気に持っていく…密室特有の息苦しさも相まってなかなか良かったよ」
友妹「でしょ!異性を意識するのはまず視覚からが王道なんだけど、お姉ちゃんの場合だと胸がアレだから苦肉の策で…」
友「………」
友妹「く!工夫!そう工夫なんだよ!嗅覚に着目するとは流石私ダナー!自分でも惚れ惚れしちゃうナー!」ダラダラ
友妹「…むふふ。でもそうか、それ分かっちゃうかー。やっぱり私達は姉妹なんだねーうんうん」
友「…そう。姉妹だね。そして姉妹でも分かり合えない事も勿論あるんだよ」ガキョッ
友妹「ぶげっ…ぐぇ!?ちょっと首は待ってよ!たった今私たち分かり合えたばかりじゃん!何故にキレていらっしゃるの!?」
友「分かり合ったよ…でもね?僕が評価したのは『シチュエーション』と『雰囲気』なんだ…」ググッ
友妹「ぎぎぎ……あ、あと評価されて…ないのは……かひゅっ……て、『展開』…?」
友「よく出来ました。分かっているじゃないか。じゃぁ少し弁解を聞こうか」ピタッ
友妹「べ、弁解って言ったって何を弁解すれば……」
友「ブー。タイムアウト。さぁ首をこちらに渡してもらおうか」
友妹「タイム短ッ!第一私弁解しなきゃならないな展開なんて作ってないよ!」
友「…残念だ。我が妹よ…」ペキパキ ペキパキ
友妹「ひゅぃっ!そ、そんなゆっくりとジリジリ間を詰めてこないで!」
友「…聞こえんな…妹の祈りなど」
友妹「大体『クール系お姉ちゃんがリードする』展開のどこが不満なの!?」
友「…もう一度言いたまえ」ピタァ
友妹「…『クール系お姉ちゃんがリードする』展開のどこが……」
友「…………………」ゴゴゴゴゴゴゴ
友妹「あ…あの姉の目……出来損ないの恋愛マンガのアンソロジーでも見るかのように冷たい目だ。
残酷な目だ…『かわいそうだけど明日の朝には返本のダンボールに埋まる運命なのね』ってかんじの!」
友「…分かってない。まるで分かってないよ…」ユラァ
友妹「な、何がでしょうか!?」
友「見た目がクール系だからリードする…?男くんの世話をいつも焼いているからリードする…?」
友妹「…うん。普段のお姉ちゃんならやっぱりそれが王道というか」
友「違う!それは大きな間違いだ!」カッ
友妹「ま、間違い!?」
友「普段そうやって男くんの面倒を見ているからこそ…世話焼き姉ポジションの僕だからこそ…!」
友「こういった手合いの一夜の過ちイベントはその逆っ…!床の中ではその上下が逆転っ…!」
友「抵抗することもできずに服従!思い知らされる男と女の力の差!普段の冷静な仮面は剥がされて更に加速するリビドー!」
友「そう!普段とのギャップに若い二人は暴走し、そして屈服してしまう…!これこそが王道なんだよ!」グッ
友妹「それ絶対に王道じゃないから!!お姉ちゃんの勝手な性癖だからー!!」
友「やはり僕らは相容れないようだね。…残念だ。君にもう少しmの気があれば…」
友妹「憐憫の眼差しで私を見るなぁ!あとmじゃないのが悪いみたいな空気を作るなぁ!」
友「大丈夫…大丈夫だよ。少し…もう少しその痛みを超えた先へ連れていってあげよう…」ジリッ
友妹「いやそれ展開が気に入らなかったからお姉ちゃんが鬱憤を晴らそうとしてるだけしょ!」ズサッ
友「…多少は」ジリッ
友妹「多少だったら見逃してください!」ズサッ
友「…本音を言うとこの機に乗じて友妹と価値観を共有したい…」ジリッ
友妹「それは全力でお断りさせてもらいます!」ズサッ
友「口ではなく体に聞けば素直な答えが帰ってくるかな…?」ペキパキッ
友妹「非ぃ文明的だよ!だってそれ望む答えが返ってくるまで続けるような奴でしょ!?」
友「………」グググッ
友妹「無言で指に力を溜めるなぁー!…くっ、私ってばかつてないくらいに万事休す…!」
友「………ッ」ミキッ ミキミキィ
友妹「…き、昨日食らったデコピンの比じゃない!うー!考えろ私!何とか無事に済む方法を!」
友「……ッッ」ビキキッ
友妹「ノーマルの道を踏み外さずかつお姉ちゃんの攻撃を止める方法…えーとうーんと…」
友「…それじゃぁさよなら。…いやようこそ、かな?」フッ
ボッ
友妹「うわぁぁぁぁぁ!待って待ってタイムタイム!わ、私に名案があるの!」
ピタッ
友「…名案?」
友妹「そ、そうそうそう!書く!そう書く!私が!私がそこを書き直す!書き直す私が!」
友「…あのシーンを?」
友妹「そう!もうがっつりお姉ちゃんが満足する感じで!はい!」
友「…容赦無い感じで?」
友妹「もちろん容赦無い感じで!マシマシで!」
友「…ふむ」
友「それなら…そうだね。そのシーンを見る前に結論を急ぐのは良策とは言い難いね」
友妹「で、でしょでしょ!」
友「僕をよりよく観察してシーンを創作するということは…即ち作品を完成に近付ける行為と同義と言える」
友妹「そうそう!まさにその通りだよお姉ちゃん!」
友「僕は決して君の作品が好みじゃないから言っている訳ではないんだよ?まだ未完成な部分があるから意見を述べたまでさ」
友妹「うんうん、アドバイスはすごく助かるよ!(絶対に嘘だ)」
友「うん、ならそうだね。一旦この話は保留にして次書き上がった時にまた続きを始めよう」ホッコリ
友妹「…ぶはーーーー………何とか……乗り切っ……た……」
友「うん?」
友妹「いやー創作意欲ガンガン湧いてきちゃってマジでどうしようとか言ってましたアハハ」ダラダラ
友「うん、楽しみにしてるよ」ホッコリ
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません