一夏「……」
箒「……」
一夏「……」チラッ
箒「……」チラッ
一夏箒「…ッ///」ババッ
一夏(め、目が合ってしまった…)
箒「…///」
一夏「……」
箒「……」
箒「あの
一夏「なぁ
一夏「……」
箒「……」
≪1日目≫
一夏「な、何だよ」
箒「い、一夏こそどうした?」
一夏「いや、おれのは大した用じゃないから」
箒「わ、私のだって別に後でいい」
一夏「そ、そうか? ええと、だな…」
箒「……」
一夏「も、もう遅いから寝ようかな、って…。で、箒が先にシャワーを使いたいなら使ってくれよ」
箒「な、何だそんなことか。私のことは気にしなくていいから、お前が使え」
一夏「いいのか?」
箒「ああ。私はもう先に済ませたからな」
一夏「え? そうなのか?」
箒(こんな状況だから…既に念入りにシャワーを浴びていたなんて言えない…///)
一夏「分かった。じゃあ、シャワー浴びて寝るよ」
箒「あ、あぁ」
一夏「で、お前の用は何だったんだよ」
箒「お前がシャワーから出た後で言うさ。今は身を気を気を清めることだけに専念しておけ」
箒「こ、こんな状況だしな…」
一夏「そ、そうだな…あはは……」
………
……
…
ジャー…
一夏「……」キュッキュ
一夏「……」
一夏「どうしてこうなった…」
………
……
…
今は身を気を気を清めることだけに専念しておけ→今は身を清めることだけに専念しておけ
≪2時間前、一夏の部屋≫
鈴「いちかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」バーン!
一夏「うぉ、鈴…どうしたんだよそんな血相変えて」
鈴「どうしたじゃないわよ! 何だったのよさっきの部活は!」
一夏「何って…さっきラクロス部に駆り出されたことを言ってるのか?
自分で言うのも何だけど俺、頑張ってたぞ?」
鈴「ラクロスやったことないって言ってたのに…嘘ついたわねあんた!」
一夏「いや、嘘じゃねぇよ。まぁコツは割とすぐ掴めたけどな」
鈴(本当は初心者の一夏にあたしが手取り足取り教えてあげる算段だったのに…!)
鈴(しかも練習試合でファウルを取りまくって他の子の胸を揉むわ先輩や同期の子たちに相変わらずフラグを立てるわで!)
鈴「完全にあたし空気だったじゃない!」
一夏「何を怒ってるのか皆目見当つかないんだが…」
鈴「むきー! この分からず屋ー!!」<is展開>
一夏「うわ、ちょ! 俺の部屋で龍砲はやめてくれー!?」
≪一夏の部屋の前の廊下≫
ラウラ「ふふふ…ようやく手に入ったぞ…。嫁の秘蔵写真のsdを…。以前、買った写真にナイフで穴を空けてしまった時は
絶望しかけたが、持ち主がマスターデータを保持していたのは僥倖だったな」
ラウラ「…また大枚を叩いてしまったが、やむを得ん。これも必要経費だ。すぐにクラリッサに転送し、写真を引き伸ばすとするか」
ラウラ「ふふっ…今度は慎重に扱わねばならないな。そうだ、傷などつかないようにいっそのこと硬化合金板に加工プリントして―――
ドッゴォォォォォォォォ!!
ラウラ「うお、ビックリした…嫁の部屋から…?」
ラウラ「今のは鈴の龍砲だったな…。相も変わらず痴話喧嘩か?」
ラウラ「む…? 痴話喧嘩というのは男女間の恋愛のもつれから発生するものだっただろうか…?
いやそれとも『夫婦喧嘩』という単語があるし、別物か?」
ラウラ「うーむ…日本語というのは難しい。まぁいい。それよりも早くこのデータを部隊に送信しなければ」スッ
「」パッキーン
ラウラ「」
鈴「ちぃ! しぶといわね!」
一夏「ちょ、マジ勘弁してくれ! お前、何でそんなに怒ってるんだよ!?」
鈴「あんたがスケベだからよ!」
一夏「はぁ!?」
鈴「とぼけないでよね! 前半戦でdfの子にファウルして胸触ったのだって…わざとだったんでしょ!」
一夏「わ、わざとじゃねぇよ! 向こうのスティックが足にぶつかって転んだだけだ!
て、ていうか何でそれでお前が怒るんだよ!?」
鈴「ぬっがぁぁぁ!! 本当に馬鹿はいっぺん死ななきゃ治らないようね!!」ジャキッ
一夏「お、おいやめろ鈴! 落ち着―――
ゴォォォォォォォォォォン!!
一夏「へ……ド、ドアが…壁ごと、消し飛んだ…?」
ラウラ「嫁ぇ……りぃん……!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
一夏「ラ、ラウラ!? 何でお前までガチモードなんだ!?」
鈴「ちょっとラウラ。邪魔しないでよ」
ラウラ「お断りだ! よくも…よくも私の宝物を…! 絶対に許さんぞ鈴、一夏!!」
一夏「お、俺ぇ!?」
鈴「あんたが何に憤っているかは知らないけどね。取り込み中だから出てってくれないかしら」
ラウラ「その必要はない。今ここで私が貴様らに制裁を下すからだ!」ジャキッ
一夏「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!? こんな密室でレールカノンはやめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
鈴「ふーん…そう言えばあんたとカチあったのって初対面の時以来ね。丁度いいわ。あの時の借りを返してあげる!!」
<高電圧縛鎖(ボルティック・チェーン)>
一夏「ちょ、鈴!?」
ラウラ「その装備は…!」
鈴「そうよ! 本国に要請していたパッケージがようやく届いたの!」
鈴「本当は一夏を殺し切るための装備だったけど、まずはあんたで試してあげる!」
一夏「お、おい待て! 聞き捨てならない台詞が聞こえたぞ今!?」
ラウラ「ふん…実戦経験も積んでない装備で私に挑もうとは片腹痛いわ!
どうやら一度打ちのめされただけでは何も分からぬらしいな!」
鈴「負けっぱなしも借りを作るのも大嫌いなのよ!
それに、今度地面にキッスをするのは…あんたの方よラウラ!!」
ラウラ「上等だ!! その鼻っ柱ごと真っ二つにへし折ってくれるわ!!
私の家宝(になる予定だったもの)がされたようにな!!」
鈴「いざ……勝負!!」ゴウッ!!
一夏「やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」
………
……
…
≪職員室≫
千冬「…廊下側の内壁、外壁、共に全倒壊。西側、北側の壁も半壊。フロアにも5カ所の裂傷、及び陥没箇所が3点。
天井も同様に半壊に加え、電線ケーブル破損、断裂。水道管も破裂か…」
鈴「……」ズキズキ
ラウラ「……」ヒリヒリ
千冬「クローゼット、ベッド、デスク等々、生活必需家具も全損…。
蛍光灯やカーテンなどのインテリアも含めると……キリがないな」
千冬「と、まぁこれでやっと半分だ」
鈴「うッ…」
ラウラ「ぐぅ…」
千冬「…何か言うことはあるか?」
鈴「いえ…」
ラウラ「ありません…」
千冬「そうか。ここまで言わせておいて謝罪の一言も出ないとは。拳骨の一発では足りなかったか」グッ
鈴・ラウラ「「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!? ごごごごご、ごめんなさい!! 猛省しています!!」」
一夏「あ、ははは…俺の部屋が……」
箒(鈴とラウラは…自業自得とは言え気の毒はあるが…)
セシリア(だからって…)
シャル(何で僕たちまで呼ばれたんだろう…)
千冬「凰とボーデヴィッヒへの処罰はまぁ後にするとして…。問題は織斑の部屋だ。
あの部屋は1週間は出入り禁止になる」
一夏「えぇー…1週間か…」
千冬「間取りから考えれば補修工事は3日もあれば終わるんだが、
水道管の亀裂が激しいことと電線が完全にショートしていることが理由でどうしても時間がかかる。
まぁ業者に問い合わせてみたら、1週間で工事は終わるそうだ」
一夏「そ、そうか…それで1週間は早い方かな…?」
千冬「で、その間の織斑はどうするか、だが…」
一夏「千冬…じゃなかった織斑先生。俺はこれから自宅通学ですか?」
千冬「本当ならそれを勧めたいところだが、ここからだと遠すぎる」
一夏「でも、工事は1週間なんですよね? その間、俺が我慢すればいいんじゃないですか?」
千冬「……」
千冬「…確かに他の生徒ならそうするだろうが、織斑だけは許可することは出来ん」
一夏「な、何でですか?」
千冬「それは…お前を付け狙っている輩がいるからだ」
一夏「…ッ!!」
千冬「今年度の度重なる襲撃事件はほとんどがお前に接触、またはお前のisを奪取するのが目的だ。
だからお前をフリーにさせてしまえば、それだけ敵に好機を与えることになる」
千冬「織斑自体への危険度も増すし、何よりも市街地で戦闘を行われたら被害は甚大だ。それだけは避けなければならん」
千冬「だから織斑はなるべく学内に留めておきたい。破られてはいるがセキュリティもあるし、
外に出られるよりは被害も少なく、リスクも少ない」
一夏「……」
千冬「…まぁそれが大本の理由でもあるんだが」
一夏「え?」
千冬「お前の授業態度から考えて、自宅通学にすると遅刻が増えそうだ。
担任としてもそれは許可できん」
一夏「え、えぇー…」
一夏「ええと…じゃあどうすれば…?」
千冬「代わりの部屋を用意したいところだが、生憎今の寮には空きはない。そこで、だ」
千冬「織斑は今後1週間、篠ノ之と同室になって生活しろ」
セシリア「!?」
鈴「!?」
シャル「!?」
ラウラ「!?」
箒「なッ…!?」
一夏「へ…?」
セシリア「ちょちょ、ちょっと待ってください織斑先生! 何故篠ノ之さんと一夏さんが同室なのですの!?」
千冬「篠ノ之の同室の鷹月静寐が、最近実家の方で不幸があったらしくてな。
昨日から忌引きで1週間ほど帰省している」
千冬「…本来ならプライバシーの観点から言ってもあり得ないことだが、事情が事情だ。
一応鷹月には私から連絡を入れて、了承を貰っている」
セシリア「そ、そんな!」
千冬「というわけで篠ノ之の部屋には暫定的に1人分空きがある。
それに篠ノ之は過去に織斑と同室だったこともあるしな。他に部屋を割り振るよりは、気兼ねなど要らないだろう」
シャル「あ、あの! 織斑先生! 前に同室だったのは、僕も一緒なんですけど!」
千冬「それがなんだデュノア」
シャル「え、ええと、だから、その…」
千冬「お前は既にボーデヴィッヒと同室だろう」
ラウラ「そうだぞ。変なことを言うなシャルロット」
シャル「そ、それは、そうなんですけど、あぅ……」
千冬「とにかく話は以上だ。織斑は衣類と教材などをまとめて、篠ノ之の部屋に行ける準備をしておけ」
一夏「千冬…じゃない、織斑先生…本気ですか…?」
千冬「…私だって不本意といえば不本意だがやむをえまい。分かったのなら、織斑は早く準備をしろ」
一夏「は、はい…」
千冬「そういうわけで1週間我慢してもらうことになるが…まぁ宜しく頼む篠ノ之」
箒「は、はい…」
一夏「そ、そういう訳みたいだから…これから1週間、よろしくな箒」
箒「あ、あぁ…こちらこそ」
一夏「なんかごめんな…こんなことになっちまって」
箒「い、いいさ。気にしてない。それより、荷物をまとめたらどうだ?」
一夏「そうだな。じゃあまた後で、箒」ツカツカ
プシュー…
セシリア「な、納得できませんわ!」
シャル「一夏ぁ…」
鈴(何てことなの…あたしたちがバカなことをしたばっかりに…!)
ラウラ(こんなアドバンテージを持たせてしまうとは…一生の不覚だ…!)
千冬「……」
千冬「まぁ待てお前ら。織斑を篠ノ之と同室にしたのは他にも理由がある」
セシリア「え…?」
シャル「どういうことですか?」
千冬「…織斑に万が一があった場合、篠ノ之と同行していた方が都合がいいからだ」
箒「ッ!」
鈴「そ、それって…もし一夏がまた襲われたりしたら…」
ラウラ「箒が一緒に戦った方が、勝率が上がるからか…」
箒「……」
千冬「そうだ。しかし私としてはそれだけでは不安要素は拭えない。だからこの場にお前たちを呼んだ」
セシリア「はい?」
千冬「篠ノ之も場数を踏んできたとはいえ、実戦経験はまだまだ少ない。
そこで、お前たちがサポートしてやって欲しいんだ」
5人『―――!!』
シャル「それが…僕たちをここに呼んだ理由ですか?」
千冬「そうだ。学園からしても国家からしても、そして相手方からしても織斑が重要な存在であることには間違いない」
千冬「…襲撃の回数を重ねるごとに敵も強大になっていってる。
いつどこで敵と接触するかも不確実だ。用心するに越したことはない」
千冬「今回は諸事情により篠ノ之と同行する機会を増やすが、お前らはチームだ。その認識を忘れるな」
ラウラ「…教官。今ここでそれを言うのは適切ではありません」
鈴「それくらい、皆分かっています。何が起ころうと、皆を守りたいのは誰だって一緒ですから」
セシリア「ええ…決して一夏さんも篠ノ之さんも…この学園の誰にも、危害は加えさせませんわ」
千冬「…そうだな。改めて確認するまでもなかったか。ならお前ら、これからも用心を怠ることなく、精進しろよ」
『はい!!!』
箒「み、皆すまない…私が未熟であるばかりに…」
セシリア「気にすることではありませんわ」
鈴「そうよ。助け合うのが当然ってもんでしょ」
シャル「仲間、ならね。一夏なら絶対にそう言うよ?」
ラウラ「ははは、まったくだな」
箒「え、ええとだな…。こんなことになって言うのもなんだが…抜け駆けみたいなことはしないから安心してくれ」
セシリア「へ?」
箒「そ、その…皆の気遣いの礼というわけではないが…いや、もちろん感謝はしているが…」
箒「でも、こんな棚ぼたみたいな好機、私も望んでいないからな。だから出過ぎた真似などせず、慎ましく生活しようと思う」
セシリア(日本人は謙虚な民族と聞いてますが…)
ラウラ(ここまでとはな…)
鈴(というか箒が堅すぎるのよね…)
シャル(…まぁ安心できるといえばそうだけど)
千冬「ほれ、いつまで立ち話をしている。そろそろ消灯時間だから各自の部屋に戻れ」
セシリア「は、はい!」
シャル「じゃ、じゃあね皆! ラウラ、戻ろうか」
ラウラ「ああ、そうだな」
千冬「待てボーデヴィッヒ。それに凰。まだお前らの懲罰を告げてない」
鈴「げっ…」
ラウラ「わ、忘れてた…」
千冬「凰とボーデヴィッヒ。お前らは罰として1週間、放課後にアリーナ10周ランニングを課す。isスーツを着用してな」
鈴「」
ラウラ「」
セシリア(お可哀そうに…アレですか…)
箒(意味があるかどうかも分からないアレか…)
isスーツを着用してな→isを展開させてな。当然picなどの機能は切ってやれ
箒(し、しかし成り行きとはいえ一夏と1週間同室か…)
箒(前に同室だったころは散々だったからな…半裸状態で遭遇するし下着には手をかけられたし…)
箒(……)
箒(…そう言えばあの頃から私も大分変ったな)
箒(出過ぎた真似をるつもりはないが、せめて私がどれだけ成長したかはあいつに分からせてもいいだろう)
箒(…は!? そ、そういえばもうすぐ一夏が来る…! わわ、私の部屋に…!)
箒(一応整理整頓は心がけえているから散らかってはいないが、急いで部屋に戻って粗相がないかチェックしなければ…!)
箒(ついでに念入りにシャワーを浴びておこう…こ、これは決してやましい考えではないからな! )
箒(…大丈夫、だよな? 匂いとか…)スンスン
箒(い、いつもより時間をかけて浴びよう…念のため…念のためだ…!)
箒(……///)
千冬(……)
千冬(まぁ本当は同席させたのはお前らの反応を見るのが面白そうだったからなんだが…)
千冬(…それを言うのはやめておこう)
はい今日はここまで。箒ちゃん誕生日おめでとう。
しかしスレ立てたはいいけど今月マジ忙しすぎてワロエナイ…更新頻度は週に1回くらいになりそうなのです。
まぁまた長いような短いような期間になると思うけどそれでもよければ、ってとこで
ちなみにこのスレは安価もエロもないよ。
じゃあの
≪一日目夜:箒の部屋≫
一夏「ふぅー。さっぱりしたぜ」
箒「おう一夏。出た……くわぁ!?」
一夏「ん?」
箒「おおおおおおおおおおおおお前! 何という格好で出歩いているんだ!」
一夏「え? あ、わわわ、わりぃ!」
箒「はは、早く寝巻に着替えてこい!!」
一夏「わ、分かった! すまん!」
≪脱衣所≫
一夏「あ、危ねぇー…一人部屋が長かったせいかつい下着姿でうろついちまった…」
一夏「て、ていうか箒だって初めて部屋で会った時も似たような恰好してたってのに…まぁ流石に女子のいる前じゃ控えた方がいいか」
一夏「……」
一夏(あれ…なんか今の箒の行動微妙に…違和感を感じるのは…何でだ?)
一夏「ほ、箒? 出たぞ?」
箒「そ、そうか。まったく。いきなりあのような恰好を目の当たりにするとは思わなかったぞ」
一夏「悪い悪い…つい、いつもの癖で」
箒「間の抜けてるところは相変わらずだな。まぁいい。早く寝よう」
一夏「お、おう」
箒「おやすみ、一夏」
一夏「ああ。おやすみ、箒」
パチッ
一夏「……」
一夏(呆れてはいるが…それほど怒ってるわけでもなさそうだな…)
一夏(こういう時は大抵木刀とか竹刀とかisとかでボコられるパターンだと思ってたのに…)
一夏(何というか…いつもの箒らしくないような…)
一夏(……)
一夏(…まぁいいか)
一夏(…あ、そういえば)
一夏「…箒。起きてるか?」
箒「ああ。どうかしたか?」
一夏「いやさ、俺がシャワー出た後に何か用があるって言ってなかったか?」
箒「あ、あぁそうか。すっかり忘れるところだった」
一夏「はははは、箒も忘れることってあるんだな」
箒「……」
一夏「で、何だったんだよ?」
箒「い、いや…やはり、いい。何でもない」
一夏「は?」
箒「いいんだ。忘れてくれ」
一夏「お、おいおい…言おうとして途中で止めるなよ。余計気になるじゃないか」
箒「……」
箒「い、いやな…明日の朝なんだが…」
一夏「ん?」
箒「その…私は剣道の朝稽古があるから先に部屋を出る。だから、一人で起きてくれ」
一夏「そんなことか。分かったよ」
箒「……」
一夏(…言いよどむほどのことか? まぁ確かに朝起きた時に箒がいなかったらちょっとビックリするかもしれないけどさ)
箒(…本当は、一緒に稽古に誘おうと思っていたのだが)
箒(しかし、あの4人にああ言った手前だ。出しゃばった真似をするのだけは避けたい)
箒(…それによくよく考えれば、私が今まで一夏を剣道に誘ったときも、一夏は渋々だった気がする)
箒(…そんな気の滅入る話を振っても仕様がないだろう)
箒(……)
一夏「…なぁ箒」
箒「な、なんだ一夏」
一夏「明日の朝の稽古さ…俺も付き合っていいか?」
箒「え!?」
一夏「な、何でそんなに驚くんだよ…」
箒「い、いい、いや、だって…ほ、本当か!?」
一夏「あ、あぁ。お前が良ければだけど」
箒「も、勿論だ! で、でも…てっきりお前は、誘っても遠慮するものだと…」
一夏「変な奴だな。いつも無理やり誘うのはお前なのに、今日に限っては遠慮するなんて」
箒(ぐッ…! 私が今どんな気持ちで躊躇っていたかも知らないでコイツは…!)プルプル
一夏「んーまぁそうだな。確かにお前から剣道に誘われた時はちょっと面倒だなぁ、って思う時もあるけどさ」
箒「……」
一夏「…でも、お前がこんなにも頑張っているってのに、俺だけ呑気に寝ているのってさ…なんか、嫌な気がしたんだ」
箒「え…?」
一夏「それにさ。俺たちってパートナーみたいなもんだろ?」
箒「…!!」
一夏「何だか相棒にどんどん置いてかれちまうのは…やっぱり情けないと思う」
箒「一夏…」
一夏「あと…」
箒「ん?」
一夏「普段から箒によく誘ってもらうのに急に遠慮されると…何か変な気分になるな」
一夏「だからもしかしたら…寂しいのかもしれないな」
箒「ッ!」
一夏「って、ハハハ…。何言ってんだ俺。こんな子供みたいなこと言ったりして…」
箒「…///」
箒「そ、そこまで言うのなら仕方ないな。お前も付き合わせてやろう」
一夏「おいおい、何だよそれ」
箒「確かにこのままでは私ばかりが強くなってしまうからな。実戦で私の足を引っ張られても適わん。だ、だから特別だ」
一夏「そ、そうか。まぁ俺も弱くなってなんてないぜ。この前お前と手合わせしたときも、充分お前と渡り合えたと思っているしな」
箒「ふふっ…私をあの時の実力と同じだと思っているのなら気の毒だな。私は…1秒前の私よりも常に強くなっている自信がある!」
一夏「はははっ。じゃあ、明日早いからもう寝ようか。おやすみ、箒」
箒「あ、あぁ。おやすみ、一夏」
箒(…結局これも抜け駆けみたいになってしまったが、まぁこれはセーフ…だよな?)
箒(し、しかし一夏の奴…あんな風に想っていてくれたとは…)
箒(…///)
箒(ま、まずい…興奮して眠れないかもしれん…)
………
……
…
≪二日目:剣道場≫
一夏「よし。基礎稽古も浚ったし、手合わせ願おうか」
箒「いいだろう。久しぶりにお前の腕前を、篤と見させてもらおう」
一夏「いいぜ。じゃあ早速――」スチャ
箒「こらこらいきなり構えるな。まずは提刀からの立会いだ」
一夏「お、おう…」
一夏「提刀して、帯刀して、開始線まで歩み寄って蹲踞…」
箒「立会人がいないから審判は私がする」
一夏「前々から思っていたけど、この立会いの流れって何の意味があるのかな?」
箒「何を言ってる。試合前の重要な作法ではないか。相手を敬い、正々堂々と剣を交える誓いを立てる行為が、この立会いなのだ」
一夏「そ、そっか」
箒「やれやれ。ではいくぞ。いざ尋常に……始め!!」
一夏「先手必勝だ!!」ダダッ
箒(相も変わらず直進的だな! そんなものすぐに払って…)
ダダダッ
箒(―――速い!?)
一夏「めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!」
バシィィ!!
箒「ぐっ…!」
一夏「ちっ…流石にそう簡単には上手くいかないか」
箒(速いだけでなく重い…! ちゃんと剣先に全体重を込められている…!)
箒(払って返すつもりが、防ぐだけでやっとだ…! まるで瞬時加速(イグニッション・ブースト)を体現したかのように速い…!)
一夏(こっから…畳み掛ける!!)グッ!
箒(―――!! 追撃か! 甘いな!)
箒(大振りに剣を構えれば…胴はがら空きだ!)スッ
箒「ッつぁぁッッ!!」ビュッ
一夏「!!」
ヒュッ…シュタッ
箒「!?」
一夏「ふぅ…危ない危ない。容赦なく突きかよ、怖いな」
箒(後ろに跳んでかわした…!? 一足飛びで三歩半は下がったぞ…!?)
箒(さっきの間合いの詰め方といい、それはまるで…!)
箒「…一夏。それはまさか…『縮地』か?」
一夏「ん? 何だそれ?」
箒「い、いや…お前がやっている足運びが…まさにそれと酷似していたものだから…」
一夏「そうなのか。まぁ俺も正式な名前までは知らないんだけどな。楯無さんから教わったものだし」
箒「なッ…!?」
一夏「あの人の家業って、暗殺部隊を相手にしているだろ? だから、暗部対抗の歩行術を特別に教えてくれたんだ」
一夏「相手に気づかれないように近づき、尚且つ自分の間合いの内に一瞬で詰め寄る必殺の足運び…だったっけ、確か」
箒「相手の目にはいつの間にか敵が近づいているように見え…まるで距離が何の前触れもなく縮まってしまったかのような錯覚すら覚える…」
箒「故に『縮地』…!」
一夏「ああ、なるほどな。だからそんな風に呼ぶのか」
箒「……」
一夏「歩き方のコツなんだけどな。『歩く』って言うよりは『詰め寄る』ってイメージで足を動かすんだ。
それと、出来るだけ体をぶらさないで近づけば、目の錯覚でいきなり近づいてきてるように見えるらしい」
一夏「さてさて。稽古とはいえ試合中に水を差して悪かったな。仕切りなおしだ」
箒「…一夏。私はお前に詫びなければならないようだ」
一夏「ん?」
箒「まさかお前がここまでやるなんて思いもしなかったからな…。だから私はこの試合のどこかで…無意識に加減を加えていた」
一夏「…ッ!!」
箒「無論、お前をバカにして手を抜いていたわけではない。ただ私は…嬉しかったんだ」
一夏「え…?」
箒「お前がこうして剣を取ってくれて。相手してくれて…そのことで浮かれていた」
箒「お前と久しぶりに稽古できたことが嬉しくて…それで、せめてこの時間を出来るだけ長く味わっていたくて…。
だから私は…剣に、手心を加えていた」
箒「そんな浮ついた心で今のお前の相手が…務まるわけがない。すまなかった」
一夏「…いいよ、箒」
箒「一夏…」
一夏「でも、そういうことなら切り替えてくれ。本気でこないとお前…怒るぜ?」
箒「無論だ。ここからが本当の…真剣勝負だッ!!」ジャキッ
一夏「じゃあ改めて…試合再開だな!」
箒「ああ。お前には私の…全身全霊の剣を以って迎え撃つ!!」
箒「この私が独自に編み出した…必殺の太刀でな…!!」スッ
一夏「!!??」
箒「……」
一夏(な、何だ箒の構えは…? 剣を後ろに構えて、体を捻っているような…)
一夏(剣を納刀しているような姿勢にも見えるが…明らかに『居合い』の構えじゃない…。背中まで見えるほど体を反らしているし…)
箒(……)
一夏(…けど、あの姿勢と不動の構えは『居合い』に他ならないよな。箒オリジナルの『居合い』ってところか)
一夏(…やりづらいな。『居合い』相手に無闇に飛び込むのは愚策と分かっているんだけど…。
かといって俺には攻めることしかできないし…)
箒「……」ジリ…ジリ…
一夏(…足じゃなくて足の指で徐々に間合いを詰められてる!?)
一夏(このままじゃジリ貧だ…! 相打ち覚悟で…返し技を決めるしかない!!)
一夏(この俺の『縮地』は、相手に悟らせないで近づける!
反応はどうしても一瞬遅れるなら、その刹那が決め手だ!!)
一夏(俺の間合いまで、あと2歩…1歩半…1歩…)
一夏(半歩……今だ…!!)ダッ
箒「!!」
一夏「めぇぇぇぇぇぇぇ―――」
ダッ!!
一夏(なッ!? 俺が飛び出すタイミングを見計らって…! 箒も動いた!?)
一夏(ま、まずい…! 咄嗟で、は、反応が遅れ―――)
箒(相手の速度を利用し…逆にそれをいなし、自分の剣閃に力の流れを誘導する…!)
箒(流水のようにしなやかに、そして叩き込むときは業火のように猛々しく…!)
箒(これが…これこそが……!!)
箒「秘剣『燕返し』!!!」
バシーン!!
一夏「いでぇぇぇぇぇ!!??」
箒「胴ありだな。私の勝ちだ、一夏」
一夏(ぜ、絶対気のせいだよな…何だか技を繰り出した箒に…羽が生えたり目が赤くなったような気がしたのは…)
一夏(しかも竹刀の周りに葉っぱが飛んでいるように見えたのも錯覚だ…そ、そうに違いない…)
一夏「いででで…衝撃が防具を完全に突き抜けら…」
箒「す、すまん…これは手加減が難しくてな」
一夏「そ、そうか…しかしビックリしたな。俺と同じタイミングで飛び出してくるとは思わなかった」
箒「それがこの技の要だからな。相手の速度に自分の剣を乗せて、力をそのまま返すのだ」
一夏「ま、マジかよ…でも、それにしてもタイミング良すぎないか?
自慢じゃないけど予備動作も極力殺しているから、相手に悟られるような動きなんかしてないはずだぜ?」
箒「予備動作を完全に殺しきるなんて不可能だ。足先、重心、お前の目線に気を使えば、対処の仕様はいくらでもある」
一夏「えぇー…はぁ、俺もまだまだだな…」
箒「…まぁお前がどれだけ気配を殺そうとしても、だ」
一夏「ん?」
箒「私にだけは通用しないとだけ言っておこう」
一夏「はぁ?」
箒(一夏をずっと…想ってきた私だからな)
箒(だから一夏のすべてを感じられる自信がある。心音や呼吸、体温の温もりまでも)
箒(どれだけ気配を殺そうと、私には一夏が分かる。一夏を、感じられるようになるんだ)
はい今日はここまで。久しぶりって言うべきなのかな。ごめんね死んでたわけじゃないのよ
まぁ仕事関係で忙殺されてはいるけども…いやすまん
まぁ来月くらいからはガッツリ書くのすまん
おやすみじゃあの
≪その日の昼休み:屋上≫
セシリア「……」ジィー
鈴「……」ジィー
シャル「……」ジィー
ラウラ「……」ジィー
箒「……」←正座中
ラウラ「…何故呼ばれているかは分かっているな?」
箒「い、いや、あの」
セシリア「今朝は早くから随分とお楽しみだったようですわね…」
箒「だ、だからそれは…」
鈴「昨日、ああ言ったそばからやらかしてくれるなんて…やってくれるわね」
シャル「どういうことか説明してもらうからね…」
箒(な、何でこんなことに…)
………
……
…
≪同日:朝稽古後の箒たちの部屋≫
箒「……」ソロソロ
箒「い、一夏! 今なら大丈夫だ!」コソコソ
一夏「ん、あぁ。分かった」
箒「い、いいか! 私がまずは先に部屋を出るから、お前は5分後きっかりに食堂に向かってくれ!」
一夏「あ、あのさ箒…なんでこんなコソコソする必要があるんだ?」
箒「何でもだ! こちらにも色々と事情がある!」
一夏「いや、まぁいいけど…」
箒(き、昨日抜け駆けしないと言った手前だ…。朝に一緒に食堂に向かった日には、何を言われるか分かったもんじゃないからな…)
………
……
…
≪食堂≫
アハハ デサー ホントウデスノ? ム、ソレワ キョウミブカイ
一夏「おう、おはよう皆」
シャル「あ、おはよう一夏!」
セシリア「おはようございます、一夏さん」
鈴「おはよっ一夏!」
ラウラ「うむ、今日もいい天気だな嫁よ」
一夏「ああ、それに箒、おはよ……って、さっき言ったか、ははは」
箒「…///」プイ
鈴「…ねぇ一夏。昨日、何もなかったわよね?」
一夏「は?」
鈴「いや、まぁ何となく…気になるっていうかさ」
シャル(箒に訊いても『何事もなかった』の一点張りだし…)
セシリア(嘘ではないんでしょうけど…一夏さんから確証が得られない限りは安心できませんわね…)
ラウラ「で、どうなのだ嫁よ。まさか私というものがありながら『シュラバ』などはないだろうな?」
一夏「いや、何だよ修羅場って…」
ラウラ「恋仲の男性が他の女性に現を抜かしていると『シュラバ』になるとクラリッサから教わったものでな」
一夏「いや、それって段階が一つ抜けてるぞ…もしかして『浮気』のことか?」
一夏「ていうか俺はお前の嫁じゃないって何度言ったら…」
ラウラ「何でもいい。ともかく、どうなんだ?」
一夏「いや、何もなかったといえば…そうなのか?」
鈴「何よその含みのある言い方」
一夏「いや、これといって特別なことなんかなかったしな」
一夏「シャワー浴びて、少し話して寝ただけだし…」
セシリア「シャ、シャシャシャシャワーを!? まさか、二人で―――」ガタッ
一夏「うわっ違うってセシリア! 俺が先にシャワーを使わせてもらったんだ! 箒はそのまま寝たけど!」
セシリア「な、何だそういうことでしたの…」ホッ
シャル(きっと箒のことだから、一夏が来る前に念入りにシャワー浴びてたんだろうなぁ…)
ラウラ「ふむなんだ。まぁそれなら特別危惧することもあるまい」
鈴「そうね。別段何事もなかったていうのは本当だったみたいだし」
セシリア「杞憂なようでホッとしましたわ」
一夏「み、皆して俺の何がそんなに心配なんだよ…」
箒(良かった…何事もなく終わりそうだ…)
シャル「……」
シャル「ちなみにさ一夏、箒とどんなこと話したの?」
箒「!?」
一夏「へ?」
シャル「ちょっと気になったから」
一夏「どんなことって言われてもなぁ…えっと今朝の稽古の約束―――」
箒「いいい、一夏ぁ!!」ガタッ
ヒロイン一同『!!??』
一夏「うぉ…な、何だよ箒…」
箒「そ、そのことは! そのことは話すな!」
一夏「え、何で?」
箒「なな、何でだっていい! とにかくそれは秘密―――」
セシリア「一夏さん」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
一夏「ん?」
鈴「詳しく聞かせてくれるかしら?」ドドドドドドドドドド
一夏(あ、れ…? セシリアと鈴の瞳に光が見えないぞ…?)
箒「な、なぁ皆! 朝食も済んだことだし、そろそろ教室に移動しないか! 急がないと織斑先生に―――」
シャル「…ラウラ、お願い」
ラウラ「了解した。ちょっと大人しくしていろ箒」ガシッ
箒「うわぁ!? い、いきなり後ろ手を組み……い、いだだだだだだだだだ! 関節を極めるなぁ!」
鈴「さぁ一夏…」
セシリア「これで…」
シャル「話してくれるよね…?」
一夏(え、なんかデジャヴが…)
………
……
…
≪現在:屋上≫
鈴「…と、まぁ事のあらましはこんなとこよね」
セシリア「ええ、そうですわね」
箒(うぅ…一夏のうつけ者ぉ…)
シャル「まぁ誘ったのは箒じゃなくて一夏だったってことはよく分かったけど」
ラウラ「…何故私たちに黙っていた、箒?」
箒「うッ、ぐ…そ、それは…」
鈴「……」
セシリア「……」
シャル「……」
ラウラ「……」
箒「み、皆だって分かっているはずだ! 昨日確約したにも関わらず、抜け駆けめいた真似をしたことを後悔しているのだ!」
鈴「…それは本当なの?」
箒「当たり前だ! 私の意思ではないとはいえ、約束を反故にした事実に変わりはない!」
セシリア「箒さん。本当に後悔なさってますの?」
箒「は?」
シャル「一夏と、一緒に居れたこと」
箒「そ、それは…」
ラウラ「していたはず、ない。そうだろ箒」
箒「……」
箒「…それとこれとは別だ。一夏と居れたことは楽しかったが、私はそのためにお前たちの気持ちを踏みにじったも同然だ」
箒「責任は果たす。さぁ、好きにするがいい! 何なら切腹も厭わん!!」
シャル「いや、それは流石に…」
鈴「ていうか…あんた全然分かってないわね」
箒「は?」
鈴「もう一回訊くけど、何でこうして呼ばれたか分かる?」
箒「だ、だから…私が抜け駆けしたから」
セシリア「違いますわよ」
箒「え…?」
シャル「別に僕たちは、箒が一夏と一緒に稽古したことに怒ってたわけじゃないよ」
ラウラ「私たちがお前に失望しているのは、箒。お前が私たちにそれを隠そうとしていたからだ」
箒「あ…」
鈴「別にやましいことでも後悔することでもないんでしょ? なら、堂々と胸を張っていればいいじゃない
セシリア「そもそも誘ったのは一夏さん本人なのですから、後ろめたいことなど何もありませんわ」
シャル「なのに変に隠そうとされちゃうと、嫌でも勘ぐっちゃうじゃない」
ラウラ「私たちはそんなに信用できないか、箒?」
箒「皆…」
鈴「そうね。やっぱり内緒にされるのって嫌な気分になるわ。
…まぁ平然と自慢される方が癪だけども」
セシリア「友人と思ってくださるなら、包み隠さずにちゃんと言ってほしいですわ。
…抜け駆けというのは多少あるかもしれませんが」
シャル「別に僕たちは箒たちを制限したいわけじゃないからね。一夏や箒の意思だって尊重したいもん。
…もちろんある程度以上は公認しないけど」
ラウラ「そういうことだ。しかし一夏は私の嫁であることは確定事項だ。異論は認めん」
箒「み、皆…すまない…」
箒(しかし釘を刺すところはきっちり刺すのだな、皆…)
箒「…そうだな。私は…お前たちを信用しきれてなかったのだな」
箒「…すまなかった皆。無礼を許してくれ」ササッ
鈴「あぁもうあんたは…いちいちこれくらいで頭を下げるんじゃないわよ」
セシリア「もう過ぎたことですから、これからに気を配っていただければ何も言いませんわ」
シャル「そういうことだよ。さぁ皆。食堂に行こうよ。一夏待たせてるし」
ラウラ「そうだな。ほら、さっさと立て、箒」
箒「あ、あぁ。今行く」スクッ
箒「……」
箒(私は…)
箒(本当にいい友人に…恵まれているな…)
そのヒロインたちは短期集中的にスレが建てられてスムーズに完結までいってたな
箒はどこらへんが書きづらいんだろう・・・エロなし縛りか?
≪放課後:アリーナ≫
楯無「はいじゃあ今日の特訓はここまでー! 2人とも、お疲れ様☆」
一夏「は、はい…」ゼェゼェ
箒「ありがとう…ご、ございました…」ハァハァ
楯無「それにしても箒ちゃん。新装備の扱い、大分慣れてきたわねー」
箒「え、ええ、まぁ」
楯無(絢爛舞踏も任意で発動できるようになったし。何気に一夏くんと同じか、それ以上に成長が著しいわよね、箒ちゃん)
楯無「でも欲を言えば、穿千って破壊力がずば抜けてる分、連射性能に欠けてるわね。
その辺りをもうちょっと改良してくれれば言うことないんだけど」
箒「そ、そんなこと急に言われても…」
楯無「大丈夫よー。isっていうのは定着すればするほど操縦者の意志を汲んでくれるものだから。
現に、紅椿の展開装甲ってマルチカスタマイズしやすい仕様なんでしょ?」
箒「それはそうなんですが、そんなすぐには…」
楯無「はっはっは。まぁ焦らず、努力することを怠らずにいれば大丈夫だって」
箒「は、はぁ…」
一夏「じゃあ俺たち、そろそろ上がります」
楯無「こらこら一夏くん。君はまだやることがあるでしょ」
一夏「へ?」
楯無「『へ?』じゃないでしょー。生徒会から配る生徒だよりの最終チェック、まだ終わってないわよ」
一夏「あ、やっべ…忘れてた…」
楯無「まったく。しっかりしてくんないと困っちゃうなー」
一夏「す、すいません…。悪いな箒。そういうわけだから、先に戻っててくれ」
楯無(…ん?)
箒「ああ、分かった。大変だな」
一夏「もういい加減慣れたよ。ほいこれ、部屋の鍵。お前は先に戻ってろよ」チャラ
箒「了解した。仕事、頑張れよ」
一夏「ありがとな。じゃあまた後でな箒」
箒「ああ」
楯無(え、ちょ、何この通い妻に対するみたいなやり取り)
楯無「い、一夏くん…さっきのって、何…?」
一夏「はい?」
楯無「ええと…私の気のせいでなければ、箒ちゃんと一緒に住んでいるような口振りだったけど?」
一夏「あれ、言ってませんでしたっけ? 俺今、箒と同室なんですよ」
楯無「へ?」
一夏「諸事情で俺の部屋がしばらく使えなくなって…それで箒の同室の子が、家庭の事情で部屋を空けているから、
その間だけ箒の部屋でお世話になることになったんです」
楯無「そ、そうなんだーふーん…」ソワソワ
一夏「…?(なんでソワソワしてるんだ?)」
楯無(一夏くんと箒ちゃんがねー…何だか最近2人ってくっつき過ぎだと思うんだけどなー…)イジイジ
楯無(私が療養中の時も、2人で写真撮影と称してデートなんかしてたらしいし…。
箒ちゃん、後半は何も覚えてないとか言ってるけど、どうも気になるのよねー…)クルクル
楯無(……)
楯無(い、いや、別に気にしてないわよ? うん、2人がどうしようとどうなろうと関係ないしー?)イジリイジリ
一夏(さっきから楯無さん、髪の毛弄たりしてどうしたんだ? 痒いのかな?)
楯無(そ、そうよ。これは2人の問題なんだから私がどーこー言おうとすることじゃ)モジモジ
一夏「あのー楯無さん? どうかしたんですか?」
楯無「ふぇ!? ななななななななななんでもないわよ!」
一夏「?」
楯無(あ、あぁもう…何やってんのよ…こんなの私らしくない…)
楯無(むしろ一夏くんも箒ちゃんも大事な後輩なんだから…
ここで背中を押してあげるくらいしなくてどうすんのよ…)
楯無(……)
楯無「い、一夏くんはさ」
一夏「はい?」
楯無「その…抵抗とかないの? いきなり女の子と2人きりで過ごすことになったりして」
一夏「…それを貴女が訊きますか」
楯無「ぎっくぅ…ま、まぁ、それはそうだけどさぁ…」
一夏「んー…確かに面識のない女子相手だったら緊張はすると思いますけど…
あの幼馴染の箒ですから、あまり抵抗はなかったですね」
楯無「そ、そうなんだ」
一夏「その辺も千冬…じゃなかった。織斑先生も配慮してくれたみたいで。
実際、箒にも昔からのよしみで良くしてもらってますから」
楯無「ふ、ふーん…」
楯無(本当に他意はないのねぇ…)
楯無(……)
楯無(でもまぁ、色恋沙汰はどうあれ、一夏くんと箒ちゃんが一緒に暮らすことにそんなデメリットはないか)
楯無(isの相性から言っても、2人はパートナーみたいなものだし…これを機に信頼関係を深めてもらうべきよね)
楯無「そっか。じゃあこれを機にもっとお互いのことを理解し合うようにしないとね」
一夏「あっはは。まぁ俺と箒の仲ですから、これ以上知るようなこともないと思いますけど」
楯無(いや、君は一番知らなきゃいけない部分を華麗にスルーし続けているよ)
楯無「そういうことなら共同生活、頑張りなさいな。ただし不純異性交遊などは慎むよーにっ」
一夏「し、しませんよ…何言ってんですか…」
楯無「にゃはは☆ 冗談冗談♪ まぁ一夏くんにはそういう期待はしてないから気にしない気にしない!」
一夏「な、何ですかそれ…そんな馬鹿にしなくてもいいじゃないですか」
楯無(一応褒めてるんだけどなぁー)
楯無「でも意外だねー。こう言っちゃ何だけど箒ちゃんって結構気難しいところとかもあるのに、上手くやれてるんだね」
一夏「そうなんですよ。てっきり大反対されると思ったんですけど、あっさり受け入れられちゃって」
楯無「だよねー。でも、2人きりの時とかはやっぱり怒られたりキツいこと言われたりしてるんじゃないの?」
一夏「ははは、まぁ確かに……でもまぁ、最近あいつ、ちょっと変わりましたよね」
楯無「ん?」
一夏「昨日、風呂から出たときに小言は言われたんですよ。
まぁ大抵そういう時って木刀とか竹刀で殴られるパターンなんですが…そういうこともなくて」
楯無「はい?」
一夏「何というか…大人しくなったというか、丸くなったんですよね、箒の奴」
楯無「!?」
一夏「あっはは…まぁ俺もその方が有難いですけどね。打たれ強いとは言っても、痛いのは嫌なんで」
楯無「な、なるほどねー…」
楯無(あ、あの箒ちゃんが…一夏くんへの暴力を抑えられてる!?)
楯無(箒ちゃんは典型的なツンデレ…そして話を統合するにこれは…デレの初期兆候なんじゃ…!?)
楯無(ま、まずいわ…こっち方面でも成長が著しいなんて想定外よ…な、何とかしないと…)
楯無(……)
楯無(って、だから何で私が焦る必要があるのよ。阿呆らしいったら―――)
一夏「まぁそんなわけで、あいつとの生活も悪くないというか、むしろ落ち着いてる感じでホッとしてるっていうか。
結構気に入ってんですよね」
楯無「……」ムスッ
一夏(ん…? 気のせいか、何だか背中がゾワゾワするぞ…?)
楯無(ふーん…そんな風に言っちゃうんだー…)
楯無(一時的とはいえ、寝食を共にしたことがある女の子の前で…そんなこと言っちゃうんだー…)
楯無(ちょっとそういう子には…お仕置きが必要だよねー…)チラッ
一夏「…!?」ゾクッ
楯無(うふふ…箒ちゃんとの共同生活か…面白そうだね…)
楯無(真に信頼し合えるパートナーとは…降りかかる障害に立ち向かえてこそよねっ★)ニシシッ
楯無(くっくっく…さぁて、どうやってかき乱してやろうかしら…)
楯無(……)
楯無(べ、別に妬いてない。妬いてるわけじゃないんだからねっ/// ただのほんの茶目っ気なんだからねっ!)
一夏(何故だろう…嫌な汗が噴き出て止まらない…)ダラダラ
………
……
…
≪その日の夜:箒の部屋の前≫
一夏(あぁー疲れた…やっと終わったぜ…)
スッ
一夏(おっと…箒は先に帰っているだろうな)
一夏(初対面の時はいきなり開けたもんだから大変だったからなぁ…一応ノックしておこう)
コンコン
『はーい、どちら様ですかー?』
一夏「箒、俺だ。今、入って大丈夫か?」
『何だ一夏か。ああ、問題ないぞ』
一夏「そうか。じゃあ入るぜ」
ガチャッ
箒「どうしたんだ? 今はお前の部屋でもあるわけだから、遠慮せずに入ればいいだろう」
一夏「いや、お前と初めて部屋で鉢合わせした時を思い出して…」
箒「?」
箒「……」
箒「…!!」カァァァァッ
一夏「あ」
箒「お、おおおおおおおおおおお前という奴は! あの時の事を蒸し返す気か!?」クワッ
一夏「ひぃ!?(こ、今度こそ殴られる!?)」
箒「…ッ」プルプル
一夏「あ、れ…?(やっぱり、殴ってこない?)」
箒「ま、まぁいい。お前も少しは学習してるみたいだな。その点だけは誉めてやろう」
一夏「そ、そうか…」
一夏「…なぁ箒」
箒「なんだ」
一夏「何て言うかお前…変わったよな」
箒「え?」
一夏「ええと、さ…大人しくなったというか、お淑やかになったというか…」
箒「…それは今までの私が粗暴でがさつだったと言いたいのか?」
一夏「そ、そんなんじゃねぇよ…」
箒「…まぁお前と初めて会った時から、色々なことがあったからな」
箒「一夏と再会して、初めて自分のisを手に入れて、死線を何度も経験して…」
箒「姉さんのことも…お前や楯無さんと話しているうちに、自分でも何とかしようと思うようになって…」
箒「それで、いつの間にか私はいい友人に恵まれるようになった。
1人でいる事には何の疑問も抱かずにいた私だが…今では、本当に充実した生活を送らせてもらっている」
箒「だから私も、今の関係を壊さないように…立派な皆に見合うようになろうと、努力しているのかもしれないな」
一夏「…そうか。すごく立派だな」
箒「…そんなことないさ」
一夏「え?」
箒(私をこうしてくれたのは…お前のおかげだからな、一夏)
箒「どうしたんだ、いきなりそんな話を振るとは」
一夏「いや、な。楯無さんと色々話しててさ。それで…お前って最近変わったなぁ、って思ってな」
箒「そ、そうか」
一夏「箒も箒で…やっぱり頑張ってるんだな。すげぇよ」
箒「そんなことない。私は別段、特別なことはしていないさ」
一夏「謙虚な奴だな。まぁその方が箒らしいけどさ」
一夏「楯無さんもいい機会だから有意義に過ごせ、って言われてるから。
あと少しの辛抱だけど、よろしくな」
箒「あ、あぁ…」
一夏(しかしあと数日とは言え、あの箒と…)
一夏「…共同生活、か」ボソッ
箒「ふぇっ!?」
一夏「ん?」
箒「い、一夏!? 今、何て言った!?」
一夏「あっ、やっべ…漏れてたか?」
箒「きょきょきょ、共同生活!?」
一夏「あ、あぁ。そんな感じでさっき楯無さんにからかわていたから」
箒「な、何だそうか…」
一夏「へ、変なこと言ってごめんな。忘れてくれ、箒」
箒「……」
一夏(…何だ? このほっとしたような残念に思ってるような微妙な表情は…)
箒(一夏がそう思っていたわけではないのか…。何だか少し残念だな)
箒(……)
箒(しかし共同生活、か…)
箒(い、一夏とのきょうどう、せいかつぅ……)
箒(~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッ///)プュゥゥ…
一夏「…箒?」
箒「い、一夏! あのな!」
一夏「ん?」
箒「え、ええと…さ、さっきは言いそびれたが、その…」
一夏「?」
箒「お、おかえり……なさい…///」
一夏「え…? あ、あぁ。ただいま、箒」
箒「///」カァァ…
一夏(あ、あれ…ちょっとキュンときた…)
一夏「何だよ今更。変な奴だな」
箒「う、うるさい! もう宵も更けた! そろそろ寝るぞ!」
一夏「ああそうだな。俺も地味に疲れたし」
箒「では、電気を消すぞ」
一夏「分かった。あ、そうだ箒」
箒「ん?」
一夏「明日も朝稽古、やりたいからさ。また起こしてくれ」
箒「ッ!!」
箒「わ、分かった!! 必ず起こしてやる!」
一夏「お、おう…」
箒「…♪」
………
……
…
今日はここまで~
最近鬱ss書きたい(ボソッ
じゃあの
>>82
というよりは単に書き馴れてないだけかもしれん。
箒ちゃんも大好きなんだけどなぁ…
≪7年前:とある小学校の教室≫
「やーいやーい!! 男女ー!」
「かえせ! 私のリボンをかえせ!」
「くやしければ取ってみやがれー! ほーれパース!」
「あぁ…!」
箒(何だ…? この風景は)
「やめろ! きたない手でさわるなぁ!」
「そんな大事なものなら、取り返してみろー!」
「やめろ…やめろぉ…!」
箒(……)
「き、きさまら恥ずかしくないのか!
男がよってたかって、女子をいじめるなどと!」
箒(ああ、そうか…)
「おぉーおぉー? どこにその女子がいるってー?」
「どこにもいないよなー? 俺ら以外だと、男女がいるだけだよなー?」
「男女っていうか、ただのゴリラだよな!」
「あっははは! そうだよなー!」
「き、きさまらー!」
箒(これは…夢か…あの頃の…)
箒(あの頃から私は…只々愚直だったな)
箒(父の教えを守り、剣の道を貫き、謹厳であることが是であると信じて疑わなかった。
その結果クラスの皆とも馴染めず、男子から冷やかしを受ける毎日だった…)
箒(しかしそれでも私は、私のしていることには間違いはないと…自分を曲げることはしなかった。
今のように、周囲と衝突を繰り返していたな…)
箒(確かこの後、私は……)
「き、きさまら…ひきょうだぞ…! こんな、こんなぁ…!」ジワッ
「あっ! こいつ、泣くのかー!?」
「男女が泣いてやんのー! やーいやーい! 泣き虫男女ー!」
「な、泣いてない! 誰が、泣くもん、かぁ…!」プルプル
箒(……)
箒(……)
箒(…やはりダメか。抗おうとしてもできない。
夢は夢でも、自分からは干渉できない類のようだなこれは)
箒(…悔しかったな、この頃は)
箒(普段なら男子数人程度なら竹刀がなくても相手にできたが…
この日の私は、ほんの不注意でリボンを取られてしまって…)
箒(一夏が似合うって…褒めてくれたリボンを取られたのが悔しくて…。
何としてでも取り返そうと我を忘れて、それで軽くあしらわれていた…)
「かえ、せぇ…それは大切な…たい、せつなぁ…ひっぐ…」
「あー! ついに泣いたー! 男女ゴリラのくせにー!」
「そんな人間みたいに泣くなよー! ウホウホ言いながら泣けよなー!」
「いちかがぁ…いちかが、にあうって、いっでぐれ、だ…えっぐ……」
「織斑の名前出しやがったぜー! 本当に男女はあいつが好きなんだなー!」
「あんなダッセー奴のどこがいーんだかなー。まぁ男女ゴリラで泣き虫のこいつにはお似合いか!」
「あっはっはっはっはっはっはっはっは!!」
「いぢが、をぉ…わるぐ、いうなぁ…! うぁぁぁぁぁぁぁ……」
箒(……)
「あぁー泣いてる泣いてるー! 男女が泣いてるー!」
「いーけないんだーいけないんだー! 先生に……言わなくてもいいか!」
「だな! 男女が泣いたって何も悪くないよな!」
「ひっぐ……ぐす、うぇぇぇぇぇぇぇ……」
箒(……)
箒(…これ以上はあまり見たくないな)
箒(この頃の記憶はもうあまりないが…きっと碌でもないものに違いない。
夢ならさっさと醒めて欲しいものだ)
箒(やれやれ…何で今更になってこんな―――
「お前ら!! 箒をいじめんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!」
箒(――!!??)
「いっでぇ!? な、何すんだよ織斑!」
「うっせぇ!! 俺のことならともかく…箒のことをいじめる奴は誰だろうと許さねぇ!!」
箒(一、夏……?)
「ぎゃぁ!? て、てめぇ!! まだこりてないのか!
またママ…じゃない、お袋に言いつけるぞ!!」
「何だお前ら。この間俺に負けてこりてないどころか、今度はよってたかって女の子をいじめて、しかもママにたよるのかよ。
どこまでカッコ悪いんだ。だっせぇ」
「う、うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ―――ぴぎゃぁ!?」
箒(あぁ、一夏……そうだ、何で忘れていたんだろう…)
「でもたしかにチクられるとメンドーだから顔はかんべんしてやるよ。
ただしそれ以外なら…ようしゃなくボコる」
「ひ、ひぃ!?」
「嫌ならとっとと消えろ。めざわりだ。二度とダセぇことすんなよボケナス」
箒(この時もまた……一夏が、助けてくれたんだ…)
いちか「ったく、本当にアイツらったらだせぇなぁ。
今度またこんなことしたら次こそ顔面にケリ入れてやる」
ほうき「……」
いちか「…でも千冬姉にこれ以上、めーわくかけられないしなぁ…。
がまんするしかないのかな…あぁムカつく……」
ほうき「……」
箒(そうだった……この時も一夏は…私を助けてくれたんだ…)
箒(…いや、今思えば一夏はいつも私の傍にいてくれた。
私を助け…支え…励ましてくれたんだ…)
箒(この頃から……私は、一夏を……)
箒(本当に…何でこんなことも覚えていないんだろう…。
これも大切な、一夏との想いでのはずなのに…)
いちか「っと、大丈夫か箒? 立てるか?」
ほうき「……」
箒(…はて。どうしてこの時の私は、こんなにも黙っているんだろうか…?)
いちか「どこか、いたくないか? ぐうぜん、教室に忘れ物を取りに来れて良かったぜ」
ほうき「…な」
いちか「ん?」
ほうき「なんであんなことした!?」
いちか「は?」
箒(あ……)
箒(あぁー…そういうことか…)
ほうき「よ、よけいなことはするな! お前がこなくとも…あの手のれんちゅうなら、ゆびさきで片づけられた!」
いちか「い、いやだって…明らかにお前、いじめられてたし…助けなきゃ、って…」
ほうき「いいいい、いじめられてなんかいない! ただ、ふかくを取っただけだ!」
いちか「え、えぇー……」
箒(これは……別の意味で忌まわしい記憶の方か…)
箒(一刻も早く記憶から抹消したい…過去の恥部だ……)
箒(…そうだったな。助けてくれた一夏に見惚れていたが…実は恥ずかしさの方が勝っていたんだ)
箒(無様な姿を見られたことで…そして何より、嗚咽交じりの私のあの台詞を聞かれたんじゃないかと思って…)
箒(それで、恥ずかしさを紛らわせるためにこんな態度を…)
いちか「いや、ぜったいにいじめられてたってお前…。この目で見たもん」
ほうき「だ、だからみまちがいだ! お前がいなくとも、私は勝ってた!!」
いちか「あぁもう……とにかく顔をこれでふいてくれ。俺のハンカチで悪いけど」
ほうき「ななななななな泣いてなんかいない! これは汗だ!!」
いちか「いや、何言ってんだよ…どう見たって泣いて―――」
ほうき「し、しつこい! 男子がねちねちとせんさくするな! 男らしくない!!」
いちか「えぇー…」
箒(…頭が痛くなってきた)
箒(我ながら…どうして昔からこう、不器用にしか振る舞えなかったのだろう…)
箒(あぁ、思い出したくもない……恥ずかしい……)
いちか「はぁ…もういいや…帰ろうぜ、箒」
ほうき「あ、あぁ…すまかったな」
いちか「いいよ別に。俺も忘れ物取りに来れたし」
ほうき「……は」
いちか「ん?」
ほうき「ハンカチ……ありがとう…」
いちか「え? あぁ、気にするなよ、それくらい」
ほうき「ちゃ、ちゃんと洗って、返すからな……」
いちか「いいよ別に。メンドーだから今返せよ」
ほうき「だ、だめだ! 人から借りたものを、汚いままで返せるか!」
いちか「気にしねぇって」
ほうき「お前がしなくても、私がするんだ! いいから待ってろ!」
いちか「わ、分かったよ…。そんなに怒ることないだろ」
箒(……)
箒(何だかんだ言っても、やはりこの頃は楽しかったな)
箒(一夏と剣道の稽古をして…一緒に帰ったりして…)
箒(…姉さんのことで転校させられるまでは、毎日が楽しかった)
箒(一夏と会えるのが…嬉しかった…)
箒(……)
ほうき「ま、まったく……お前はこれだから…」
いちか「…なぁ箒」
ほうき「ん?」
いちか「お前さ。もっと俺をたよれよな」
ほうき「え…?」
いちか「同じクラスだし、同じ道場だし、それにお前のおじさんやおばさんに、たまにご飯をごちそうされてるしさ」
いちか「俺には親はいないけど…でも、おじさんもおばさんも、俺のお父さんやお母さんみたいなもんだから」
ほうき「……」
いちか「だから、ほら…何て言うかもう俺たち…家族みたいなもんじゃないか?」
ほうき「……ッ///」
いちか「ええと、つまり、その…もし箒がこまったときとか、ダメなときとかあったらな」
いちか「俺がすぐ助けてやるから。守ってやるから」
ほうき「――!!」
いちか「だからお前も…俺のこと、もっとたよれよ。男なんだから、それくらいとーぜんだ」
ほうき「~~~~~~~~///」カァァァァ…
いちか「…って、何言ってんだろうな俺…すっげぇはずかしいや…」ポリポリ
ほうき「…一夏」
いちか「ん?」
ほうき「わ、私は…お前にたよりっきりになるほど、弱くなるつもりはない」
ほうき「だ、だから…お前がもし、あぶなかったり、こまったりしたら…」
いちか「?」
ほうき「わわ、私が助けてやるからな! 安心しろ!」
箒()
箒(…つくづく自分の要領の悪さに頭を抱えてしまう……)
いちか「えぇー…何でおれが助けられる側になってんだよ…?」
ほうき「お前がまだまだみじゅくだからだ! だから、私が助けてやるんだ!」
いちか「何だよー…いやならいやだって言えよなー…」
箒(違うぞ!? 本当は嬉しかった! 嬉しかったんだからな、一夏!?)
いちか「やれやれ…でもまぁ、たしかに箒の方が俺より強いのは本当だしなー」
ほうき「そそ、そうだろう! お前が私を守るなんて10年早い!!」
いちか「何だよそれ…でもまぁ、見てな。10年なんて言わずに、小学校を卒業するまでには、お前より強くなってやる!」
ほうき「ムリだな! お前じゃ100年経ったって、私には勝てないさ!」
いちか「っぷは! 何だよそれー! さっきは10年早いとか言ってたくせにさー!」
ほうき「お前は一生みじゅくものだからだ! っぷくく…あははははははははははははははははは!!」
いちか「あはははははははははははははははははははは!!」
箒(…もうすぐこの頃から10年か)
箒(…安心しろ。お前はもうとっくに…私より強くなってるさ)
ほうき「な、なぁ一夏…」
いちか「ん?」
ほうき「さ、さっき、私のこと…かか、家族、と言ったよな?」
いちか「ああ。そう思ってるぜ?」
ほうき「で、ではっ!!」
いちか「?」
ほうき「わわわ、私と、一夏は、つまり、その……あぅ…///」
いちか「へ?」
ほうき「つつ、つまりだな! 私がおおお、おくさんで、一夏が―――」
いちか「いや、ふつーに兄妹だろ」
ほうき「」
箒(……)
箒(私も大概だが、この頃からまるで成長してないな、一夏も…)
ほうき「」
いちか「まーとーぜん俺がお兄さんだよな。さっきだって俺が助けたんだしな」
ほうき「」
いちか「あれ? でも箒の方が誕生日って早いんだっけ? じゃあ箒がお姉さん…?」
ほうき「」
いちか「うーん…箒お姉さん、か…何か変な感じだな! あはは!!」
ほうき「……」
いちか「…箒? どうしたんだよ、さっきからだまって―――
ほうき「…ふんっ!」ドスッ
いちか「ぎゃぁ!?」
いちか「な、何しやがる!」
ほうき「知らんわ!このバカ!!」
いちか「はぁ! いきなり何だよ!?」
ほうき「うるさいわこのバカ! お前なんか一生バカだ! バーカバーカ!」
いちか「て、てめぇ…バカって言う方がバカなんだからな!」
ほうき「言ってろ! お前を以上のバカなんか存在しないわこのバーカ!!」
いちか「こ、この野郎ぉぉぉぉ…! もう卒業までなんて言わねぇ…!
今この場でお前をたおしてやるっ!!」
ほうき「やれるもんならやってみろ! お前には無理だバカ一夏! 略してバーカ!!」
いちか「ほうき~~~~~~~~~~っっ!!」
箒(…子供か私は)
箒(…あ、子供か)
お風呂はいってくるのです
いちか「はぁ…はぁ…はぁ…な、何でそんなに足がはやいんだよ…」
ほうき「たんれんが足りないんだ、このみじゅくバカが」
いちか「またお前は……ああもう、メンドーになってきた…もうバカでいいよ…」
ほうき「ふんっ。分かればいいんだ、バカ一夏」
いちか「…なぁ箒」
ほうき「なんだ」
いちか「俺たち、さ。ずっと友達でいような」
ほうき「?」
箒(―――!!)
いちか「俺には親とか…クラスでもあんなんだし、友達みたいなのもいないから」
いちか「箒とはさいしょはいろいろあったけど…今は、すっげぇ楽しいんだ」
いちか「こうしてふざけたり、ケンカしたり、いっしょに帰ったり、けいこしたり…」
ほうき「……」
いちか「箒は…俺にできた初めての友達だからな。
初めてできた友達がお前で…本当に良かったよ」
ほうき「……」
いちか「だから俺…お前とずっとさ、こうしていたいんだよ」
いちか「え、ええとさ…う、うまく言えないけどな!
俺たち、これからも友達でいようぜ! 箒!」
ほうき「……」
箒(あ…)
ほうき「……」
箒(……)
ほうき「ふ、ふん…とーぜんだ。お前はだらしないし、弱いし、みじゅくだし…」
ほうき「だだ、だからお前は…私がずっと付いていなければダメだ!
しょうがないから、付き合ってやる! かんしゃするんだな!」
箒(……)
箒(…違う)
箒(私が言いたかったのは…こんな事じゃない…)
いちか「な、何だよそれー…どうしてお前はそう、えらそーなんだよぉ…」
ほうき「もんくを言うな! お前がそこまで言うから、付き合ってやるんだ!」
いちか「ちぇっ…まーいーや。じゃあ、俺こっちだから。また明日な、箒」
ほうき「ああ! またな、一夏!」
箒(―――!! いけない…!!)
箒(ここで帰しては…いけない!)
箒(私はもうすぐ…一夏と離れ離れになってしまう…!
でもこの時はまだ、ずっと一夏と一緒にいられると思っていた…!)
箒(本当は…もっと伝えたかったことがあったのに…それも出来ないまま、離れて行ってしまう…!)
箒(それが本当に悲しくて…淋しくて…心が張り裂けそうだった…!!)
ほうき「~♪」
箒(もう……もう、そんな想いをするのは…)
ほうき「……」ピタッ
箒(絶対に……)
ほうき「―――」
箒(嫌だ―――!!)
「いちかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
いちか「ん?」
箒「はぁ、はぁ、はぁ…」
いちか「どうしたんだよ箒? いきなり走ってきて」
箒(動いた…動かせた……? 何だかよく分からんが、やった…!)
箒「あ、あのな一夏!」
いちか「?」
箒「その…急にこんなこと言ってしまって悪いが…私はもうすぐ、転校しなければならないんだ…」
いちか「え、えぇ!? うそだろ、箒!?」
箒「す、すまない…でも、本当なんだ…」
いちか「そんな…いやだよ! 約束したじゃないか、箒!!」
箒「だ、大丈夫だ! すぐに……とは言えないが、また会えるから!!」
いちか「え…? ど、どうしてそんなこと…」
箒「詳しいことは言えない! でも……行ってしまう前に、聴いてくれ!!」
箒「お前の交わしてくれた約束…本当に嬉しかった!
私もずっと…このまま、お前と一緒に過ごしたいと思う!!」
箒「だからたとえ離れても…お前の事は忘れない!! ずっとずっと、お前の事を想い続ける!!」
いちか「ほう、き…?」
箒「お前は私と…ずっと、友達でいようと言ってくれた! 私も初めてできた友達がお前で…本当に良かった!!」
箒「だからこれからも私と…ずっとずっと、仲良くして欲しい!!」
いちか「え…?」
箒「はぁ…はぁ…はぁ…」
いちか「も、もちろんだ! 俺たちの友情は、ずっとだからな!」
いちか「で、でもお前がなんか、そういうのハッキリ言うのって初めてきくな…あはは…///」
箒「でも…でも、私は……」
いちか「ほ、ほうき…?」
箒(言え…言うんだ、私…! あの頃の、篠ノ之箒!!)
箒(たとえこれが夢でも…現実でなくてもいい…! だから言うんだ…!)
箒(私が…本当に、伝えたかったことを…!)
箒「……お前との約束、これからも違える気持ちはない。
どんな時も、どんな場所でも、私はいつまでもお前の近くにいたいと願っている」
いちか「え…あ、うん…/// きゅ、急に恥ずかしいこと言うなよ…どうしたんだよ、箒?」
箒「…でもそれは友人としてではなく」
いちか「え?」
箒「私はもっと別の形で…お前と歩んでいきたいッ!!」
いちか「な、なに、いって…///」ドキドキ
箒「き、聴いてくれ一夏!!」
いちか「ッ!?」ビクッ
箒「わ、私はな、その……ず、ずっと前から……」ドキドキ
いちか「――――!!??」バクバク
箒「い、一夏の……ことが…す、好――――
………
……
…
≪三日目:箒の部屋≫
箒「……」パチッ
箒「……」
箒「…」
箒「…なんてタイミングだ」
箒「醒めて欲しいときに醒めず、一番肝心な時に覚醒するとは…」
箒「はぁ…」
箒「……」チラッ
一夏「すぅ…すぅ…」
箒「…人の気も知らないで安らかに眠りおって」
箒「……」
箒「…なぁ一夏。あの時の約束、覚えているだろうか」
箒「お前は…ずっと私と友達でいようと言ってくれた。その時は本当に嬉しかったし、これからもそうでありたいのは本心だ」
箒「約束した途端に離れてしまったのはすまなかったな。
でも…こうしてまたお前と会えた時は……本当に、奇跡だと思った」
一夏「……」スゥ…スゥ…
箒「…なぁ一夏」
箒「私は…お前が好きだ」
箒「…お前にとって私は、ずっと幼馴染なのかもしれない。
でもそれと同じように…私はずっと、お前のことを好きでいると思う」
箒「お前はそんな私でも…友達でいてくれるだろうか?」
一夏「……」クゥ…クゥ…
箒「……」
箒「夢の中や…意識のないときなら、こうも上手く言えるのに」
箒「…卑怯者だな、私は」
箒「…起きるにはまだ少しだけ早いか。先にシャワーを済ませておくとしよう」スクッ
箒(けど…けどいつか、本当に一夏に――)
一夏「ほう、き…行くな、よぉ…」
箒「!!??」
箒「い、一夏!? おおおおおおおおおお起きて―――
一夏「俺、まだそのビデオ…見てないんだから…」
箒「へ?」
一夏「むにゃむにゃ…」
箒「ね、寝言か…どんな夢見てんだまったく…」
箒「まったく紛らわしい…今日は少しキツく起こしてやるとするか」
箒「はぁ…早くシャワーを浴びて…」
一夏「箒……貸したハンカチ……」
箒「!!??」
一夏「……くぅ…」
箒「一、夏…?」
箒「……」
箒「本当にどんな夢を見てるんだろうな」
箒「でも…私が出てる夢なのか」
一夏「……」スゥ…スゥ…
箒「…本当に安心しきった顔で寝おって」
箒「…やはり今日は、少しだけ優しく起こしてやろう」
箒「…少しだけ、な」
箒「…ふふっ♪」
はいひとまずはここまで
この後はちょっとしばらく充電期間に入ります。どうもほったらかした所為で感覚がボケてしまっているようだ。
納得いくモンを書き溜めるまではしばらくはお休みしますのです…いやごめん
久しぶりにvipでスレ立てるとか、まずは勘を取り戻すことから始めようかな。
だって俺だって箒ちゃん幸せにしたいんだもん
うんgdgdでごめんねほんとに
じゃあの
箒「ふぅ…さっぱりした。…ん?」
一夏「……」←半目でこっちを見てる
箒「い、一夏…? 起きているのか?」
一夏「ああ箒…おはよう…」
箒「お、起きていたのか…ちょっと吃驚したぞ」
一夏「んああ…朝、か…」
箒「ああ。眠いなら寝ててもいいぞ? 昨日は遅くまで生徒会の仕事に明け暮れていたからな」
一夏「んあ、そうか……すぅ…」
箒「やれやれ」
一夏「あ…」
箒「…?」
一夏「そういや今日も朝稽古あるじゃねぇか。やっぱり今起きるよ」ノソノソ
箒「お、おう…そうか」
一夏「箒もひどい奴だな。昨日起こすって約束したのに」
箒「まぁ、あまり疲れているお前を振り回すのも気が引けただけだ」
一夏「そんな気を回されても逆にショックだよ。ふぁぁ…」
箒「やれやれ、無理せず寝足りないなら寝ればよかろうに」
一夏「いいよ。稽古してれば眠気も覚めてくるだろうし」
箒「む、そんなことではいかんぞ一夏」
一夏「ん?」
箒「そんな弛んだ状態で足を運んでは道場に失礼だろう。
心身ともに、身嗜みを整えてこそ武芸を嗜む資格が生まれるんだ」
一夏「んー…じゃあ顔でも洗ってくるか」
箒「洗顔もいいが、シャワーはどうだ? 朝に浴びる冷水は、身も心もシャキッとするぞ」
一夏「そういうのはあんましないんだけど…まぁたまにはいいか。入ってくるよ」
箒「ああ、そうしろ」
箒(ん…? 待て…? そういえばさっきまでシャワー室は私が…)
一夏「じゃあしばらくシャワーを借り―――」
箒「いいいいいいいいいいいいいい一夏! ちょっと待ってろ!!」ドタドタ
一夏「どわぁ!?」
一夏「な、何だよ…いきなりシャワー室にかけこんで…。
吃驚してもう目が覚めちまったよ…」
※女子はトイレやシャワーなどの自分の使用後をすごく気にする時があります。
具体的には床に落ちてる縮れ毛とか(ry
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません