モバP「不安の種」 (52)
アイドルマスターシンデレラガールズのSSスレです。
同名の漫画のような展開を目指した短編です。
それの足元にも及びませんがホラーっぽいところもあるかもしれないので、一応ご注意ください。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1419178904
『視聴者』
『――では、今夜のゲストは三代目シンデレラガールに輝いた、渋谷凛さんです!』
凛『こんばんは。今日はよろしくお願いします』
P「お、また出てる……テレビで見ない日はないな」
P(素質は見出されていたが……やはりシンデレラともなると喰い付きが違うな。連日メディアに引っ張りだこだ)
P「……その分、逆に付いて行ってやれる日は減ったな。今日もお互い直行直帰だったし……はぁ」
『――シンデレラに選抜されてから、何か変わったことは?』
凛『うん。やっぱり、私自身も事務所の人も忙しくなったってトコかな。まあ、忙しいに越したことはない――そうでしょう?』
P(凛をテレビで見ない日はない――その頃から気になり始めた、奇妙な感覚)
『――ははは、さすがの実力というか、もう怖いものナシみたいですね?』
凛『そうかな……ああ、でも少し困ったことはあるよ』
P(テレビに映る凛)
P「……馬鹿らしい。早くやすもう」
P(本当にバカらしいことだ。只の勘違いだ)
P「カメラ目線だからだよな……それにしてもカメラを意識しすぎだ。注意しとかないと」シュポッ
凛『……私、タバコのにおいが苦手で。事務所にコッソリ吸う人がいるから、ずっと注意して見てたんだけどね。最近は忙しくて中々――もっとも』
凛『家の中までは見れないんだけどね』
『――ははは。怖い怖い』
凛「ふふっ」
凛『ははは』ジロリ
P「…………」
ぐりぐり
―――2014.渋谷区
きらり「んー? きらりがどんどんおっきくなってるりゆう? うーん、きらりがおっきくなってるのはぁ……」モジモジ
きらり「うぇへへ! Pちゃんすきすきなキモチが、抑えきれないからなのだ☆」カァッ
きらり「うっきゃー!」バンバン
きらり「いっちゃったー! はずかしー! でもでもぉ、Pちゃんがいいって言ってくれたから……」グスッ
きらり「……ふつうじゃないきらりのこと、きらりのままでいてくれって、言ってくれたから、きらりはもうがまんしないのっ!」ビシッ
きらり「今みたいにPちゃんと二人きりの時はぁ……すっ、すきなキモチがぼーんっ! ってなるからぁ、きらりもおっきくなっちゃうのかなっ、かなっ☆ うぇへ!」
きらり「Pちゃん! きらり、もっともぉーっと大きくなってぇ、いつでもどこでも、Pちゃんに見てもらえるようがんばるからにぃ☆」グッ
P(はるか雲の上からきらりの声が聞こえてくる。だが、縮んでくれと誰が言えるだろうか)
―――2014.県境?
楓「ビールを浴びーるように飲みましょう……ふふっ」
楓「サンドイッチ、挟んどいっち……うーん……」
楓「カフェオレのことなら、オレにまかふぇて……これだわ」
楓「鶏肉は……ちきんと食べましょう! ……これは違うかしら?」
楓「しょっちゅう焼酎……しょちゅう、しょーちゅー……うふふふっ!」
P「…………」
P(きのうのレシートは店に捨てたはずだよな?)
楓「貴方とコンビに♪」クスッ
―――年代不詳
『道連れ』
小梅「あ……今、振り返っちゃ……ダメ」
P「お、おう……小梅が言うと洒落にならないな」
小梅「……まだダメ………あの角を右に曲がるまで……まっすぐ」
P「ほ、本当にだいじょ」
小梅「右。しばらくは………」
P(右に曲がると茄子がいた)
茄子「あら♪ お二人とも戻りですか? せっかくですしご一緒しましょうか♪」
小梅「…………今度は、ひだり」
P(左に曲がると芳乃がいた)
芳乃「んー? かような所でお会いするとはー。ふーむ……これも何かの縁、お供となりましょー」
小梅「……まっすぐ。まっすぐ、まっすぐ」
P(真っ直ぐ行くとこずえがいた)
こずえ「ふわぁー……ぷろでゅーさー、まいごー? みんな……こずえがつれってってあげるよー……?」
P(小梅が喋らなくなった。他の皆も――俺の後ろを歩いている、ようだ)
P「なあ。どうなった? もうずいぶん歩いたが、ここはどこだ? もういいのか? もう振り返っても――」ピタッ
「前を」
「イイ」
「前へ」
「イイヨ」
「まえー」
「ミロ」 「前…」
P(誰の声だ?)
――場所は伏す
『非常線』
P「おっと――すみませ……っ」ドンッ
『――っちっ、ちゃんと前見て歩けよクソ野郎が』
『マジどこに目付いてんだよ……お? そこのねーちゃん、そんな情けね~ヤツすてちまえばぁ?』
P「……あいたた。さ、急ごうアーニャ」
アナスタシア「プロデューサー!」
アナスタシア「……ッ」
――――――――――――――
P「おーい、アーニャ……参ったな、もう休憩終わるってのにどこに……ん?」
アナスタシア「……………………」
P「あ、あんなとこに……電話してるのか」タッタッタッ
アナスタシア「●●●● ●● ●●」
アナスタシア「●●● ●● ● ●●● ●●●●」
P「っ!」ピタッ
P(ロシア語……だよな? 教わって少しは慣れたつもりだったが……全然知らない単語ばっかり)
P(というか……)
アナスタシア「●●● ●● ●●●●」
アナスタシア「●●●!!」
Анастасия「●●●!!! ●●●!!! ●●●●●●●●●●●●!!!!!!!!」
――――――――――――――
『では、次のニュースです。今日夕方、新宿区歌舞伎町のカラオケ店に武装した集団が突如押し入り、偶然居合わせた男性二人が――』
――2月.歌舞伎町〇丁目
『学習』
ドン、ドンッ
杏「……ふぬぁー、むにゃむにゃ」
ドンドンッ、ドンッ
杏「……もー、きらりー? ぷろでゅーさー? あとごじゅっぷんねかせ」
ド
ゴ
ン
ッ
杏「っ?!」ビクッ
ゴンゴン!!
ガチャガチャガチャッ!!!
ガンガンガンッ!!
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!!!!!
杏「あわ、あわわわ…………っ?!」
――――――――――――――――――――――――――――
杏「……ってなことがあってさぁ。きらりとかプロデューサーだったら声でわかるし、飴で釣ってくるだろうし」
P「どうりで今日ちゃんと出てきたのか……しかし怖いなソレ。大丈夫だったのか?」
杏「しばらく黙ってたらどっか行ったみたいだけど……はぁ~。酔っ払いが部屋間違えたのかな? シャレにならない勢いだったからなぁ……」
P「今日は寮に居た方がいいんじゃないのか?」
杏「……いや、これは試練だよ。杏が一人で起きられるようになるための試練」
P「ほう」
杏「だから明日は自分で起きてくるから、起こしに来なくていいからね!」
P「心配だなあ……二重の意味で」
杏「それに、酔っ払いごときに杏のだらけ道を阻まれるなんてシャクだからね」
P「結局だらけんのか」
――――――――――――――――――――――――――――
――明朝
トントン、トントントントン
『ア”ン”ズチャン”ア”メダヨア”メ!! ア”メダヨ!! ア”メ!!』
トントン、トントントントン
『ア”メダヨ!! ア”メダッテバ!! ア”ケテア”ケテア”ケテ!!! キラリダヨ!! プロデューサーダヨ!! ダカラア”ケテ!!』
ガチャガチャガチャガチャ
カ”
チ
ャ!
『ア”メダヨ!!』
杏「~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!」ブルブルブルブル
―――残り37分
『約束』
P(ぺロがいなくなった)
P(草野球場から雪美めがけて飛んできたファールボールを、ぺロはかばうようにして受けた)
P(ボール共々吹き飛んだぺロはよろよろと立ち上がると、茂みの中に消え――どれだけ探しても見つけることはできなかった)
雪美「ぺロは…………帰ってくる……かならず……約束………したの……ずっと……ずっといっしょ……」
P(俺は、何も言うことができなかった。死を教えることの勇気を、その時点では持ち得ていなかった)
P(翌日、覚悟して出社した俺が、事務所で見たのは)
雪美「あ…………P……ほら……ペロ……帰ってきた……約束どおり…………」
P(聞けば以前も、こんなことがあったらしい。はじめは掌ほどの大きさだったペロが、車に跳ね飛ばされたあと姿を消し――俺の知っていたあの黒猫として帰ってきたそうだ)
雪美「さ……ぺロ…………Pに……ごめんなさい……して…………?」
P(雪美に促され、漆黒の獣が俺の指を舐めた)
――――2014.事務所
『いちぬけ』
ほたる(今の事務所に移籍して、プロデューサーさんや沢山の仲間に出会えて……私はもう、不幸なんかじゃない)
ほたる(Pさん……今、私……とても幸せです)
――!!
ほたる「っ!」ゾクッ!
ほたる(その幸せを、掴み始めた頃からでしょうか――)
――セイデ!! アンタノセイデ!! アンタガヌケタカラ ワタシガモットフコウニナッタ!!
アンタガシアワセニナッタカラ ソノブンミンナフコウニナル!! ユルセナイユルセナイ!!
ほたる(街を歩く度……形にすらならない、なりそこなった『何か』と、遭遇するようになりました)
ほたる(時には鉛筆で黒々と塗り潰した人物像のように、時には、耳元にべったり張り付いた唇のように――不安定で、しかし、ある種の生々しさをもって)
――シアワセ? ネエイマシアワセナノ? イイナアトテモ! ソノシアワセワケテヨ!! ネエ ネエネエネエ!!
イイジャナイシアワセナンデショ!! ワタシトチガッテアンタハ!!
アハ! アハハハハハ!! アンタモケッキョクソウナンダ!!! セカイデイチバンフコウッテカオシテ!! ソコカラヌケタラ!! カワイソウッテメデ!!
シタヲミクダスヨウナヤツナンダ!!!! ワタシガシアワセ? チガウ! ワタシハシアワセ!!!
『オマエトチガッテワタシハシアワセ!!』 ソウオモッテルンダロウ!!!!
ほたる「大丈夫、だいじょうぶ…………聞こえない、何も、聞こえない…………っ!!」
ほたる(――その人物像から覗く目は、その冷たい唇から垂れ流される怨嗟の声は)
――ヨカッタネ ワタシトチガッテ シアワセニナレテ
ほたる(不幸な誰か? それとも――)
―――2014.ショーウィンドウの前
『まゆの左手』
P「なあまゆ、前々から思っていたんだが……その左手って、まゆのこだわりなのか?」
まゆ「拘り……ですかぁ?」
P「いつも左手首隠しているからさ、何かジンクスなのかなって思って」
まゆ「これはまゆとPさんを繋ぐ運命のリボンなの……これが無くなったら、まゆがまゆじゃなくなっちゃうかも。そんなの耐えられませんよねぇ? Pさん」
P「ま、まあ確かに、まゆがまゆじゃなくなっちゃうのは嫌だな」
まゆ「うふふ♪ ねぇ、もしかしてPさん……まゆの左手首、リボンをほどいてみたいんですかぁ?」
P「正直気になるかな……でもまゆが嫌なら無理は」
まゆ「いいですよぉ?」
P「えっ……いいのか?」
まゆ「その代り……Pさんが解いてくださいねぇ? Pさんにしてもらいたいの。それがダメなら……このお話はおしまいです♪」
P「じゃ、じゃあ……」
まゆ「はい、どうぞ……Pさん」
しゅる……
まゆ「あ……ッ」ヒクッ
しゅるしゅる、しゅるしゅる……
P(本当に幾重にも巻いてあるんだな……どうりで地肌が見えない訳だ)
まゆ「そう……んっ! Pさぁん、おじょうず……っ、まゆ、ほどかれて、カラダまでとろけちゃいそう……」
しゅるしゅるしゅる……くるくるくる……っ、
P(そろそろ肌も見えてきたな。よかった、傷一つもない……これで終わ……)
まゆ「ああ……まゆとPさんの足元、真っ赤になってる……真っ赤なリボンで、真っ赤に染まって」
くるくるくるくる―――ぐっ!!
P「な……」
クッ! グッ!!
P(コレ、肌から、直接生えて……?)
まゆ「止めないで」
グイ!! グイッ!!
P「ま、まゆ、手を離……」
まゆ「止めないでぇ……リボンの下まで、ハダの下まで、全部、ぜぇーんぶ巻き取って……ぇ!」
グイグイグイ……ッ!!
P「よせっ、まゆ、ま」
まゆ「ああッ 感じるの……Pさんのチカラ!
分かるの
Pさんのココロ……ッ!!
Pさんのナカ、いま、まゆのことでいっぱい!
い
ま
ゆ
コ
ト
考
え
て
ッ
!!
」
P(リボンが、剥がれ
た)
――20×× 都内某楽屋
これでおしまいです
お読みくださった方ありがとうございました
不憫な扱いをしたアイドルのPさんにはお詫び申し上げます
このSSまとめへのコメント
あの独特の雰囲気を文字に起こすのは無理があったね