卵子売りの少女「卵子ぃ、卵子はいかがですかぁ~」 (36)


卵子売りの少女「取れたての、新鮮な卵子(らんし)ぃ~、今ならとってもお得ですよ~、卵子、卵子ぃ~……」

少女「ぴっちぴちの乙女の、新鮮な卵子はいかがですかぁ~~」

サラリーマン「ちょっと顔見せて」

少女「はい!」

サラリーマン「ふん。十人並みだな。……わりぃが今度にしとくわ」

少女「またよろしくお願いします! えー、卵子ぃ、卵子はいかがですかぁ~、取れたての、乙女の卵子ですよ~」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ヒュゥゥゥゥゥ……


少女「はあ……」

少女「今日も全然売れなかった」

少女「どうしよう…… これじゃ今晩食べるパンも買えないよぉ」ポロポロ

???「元気出しなよ」

少女「誰?」

???「僕だよ」

少女「あ…… あなたは、精子売りの少年」


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精子売りの少年「冷えてきたね。何かあったかいものが飲みたい…… 横に座っていい?」

少女「うん、いいよ」

少年「やっぱり…… 売れ行き良くないの?」

少女「昨日も今日も、一個も売れないの。これだけ値段を抑えてるのに」

少年「僕とおんなじだ。今日は一滴も売れなかった」

少女「かわいそう……」

少年「同情してる場合じゃないだろ。このまんまじゃ僕ら飢え死にしちゃうよ」

少女「どうしたらいい?」

少年「どうしようもないかも……」

少女「あなた、顔色悪くない?」

少年「分かっちゃう?」

少女「……うん」

少年「頬っぺたに紅を塗って、せめて顔色だけでも良さそうに見せてるのに……」

少女「そうまでしないと、いけないんだ」


少年「そうだよ。せめて顔色だけでも元気そうに見せないと、商品も生きがよくないって思われちゃう」

少女「そっか。顔色良く見せないとだめだね」

少年「僕なんか、ろくなもの食べてないのに商品作らないといけないからね。それもますます薄利多売を強いられてるから、げっそりしていく一方だよ…… 君、商品いくらで売ってるの?」

少女「今週から値下げしたの。1個300円」

少年「高くないか?」

少女「そうかな?」

少年「僕なんか一滴20円だよ。しかも最近は、少年の新鮮な精液が美肌効果にいいなんてCMをやるもんだから、おばさんたちが大量に買い込んで単価が値崩れしてるんだ。僕の友達なんか、商品作ってる最中に死んだよ」

少女「新聞に出てたよね。自殺だって書いてあったけど」

少年「新聞はみんなそう書くんだよ。あいつ無理してたんだ。商品作るには滋養のあるもの食べなきゃいけないのに、ろくに食べもせず体に負担かけてたから」

少女「あなたも、無理しないでね」

少年「だけど無理しなかったら飢え死にするしかないよ?」

少女「どうしてなの? こんなに売れなくなるなんて」


少年「超絶美少年美少女にお客を取られちゃうからだろ。名家の血筋証明書を持ってる奴なんか、一滴5000万円でそれが売れに売れて、今じゃ豪邸に住んでるよ」

少女「適当に血筋の証明書作っちゃったらどうだろ?」

少年「駄目だってば。君知らないの? 証明書偽造した奴が半年前に捕まって、懲役30年の判決を受けたじゃないか! 僕たちの仕事じゃ、整形手術の無申告と証明書の偽造は厳罰に処されるんだぜ?」

少女「もう、こんな仕事やってられない!」

少年「僕もだ。だけど…… 他にできる仕事なんてないんだよ」

少女「いやだ…… もう」

少年「この仕事やめたら…… あとは一つしか残ってないよね」

少女「!」


少年「いいよ。君はやらなくても。僕がお客を取るから、君は呼び込みだけ手伝ってくれれば」

少女「駄目よそんなの!」

少年「僕は男だし、変態のおじさんおばさん相手でも何とか我慢できる。でも君は女の子だ。……やっちゃいけないよ」

少女「あなただけそんなことさせない! ねえ、まだ他に、生きていく道があるんじゃない?」

少年「どんな?」

少女「あったかいところへ行くのよ。南の方に」

少年「そりゃ楽しそうだね…… 雪も降らない、あったかい南の国……」


zzzzzz………


少女「少年どうしたの?」

少年「あ、ごめん…… このところ商品作り過ぎで疲れてるのか、すぐに眠くなっちゃうんだよ。ところで、君にお願いがあるんだ」

少女「何?」

少年「このごろマシーンが不調でさ。時々、起動しなくなるんだ。……手伝ってくれないかな?」

少女「いいよ! でも、私何をすればいい?」

少年「……それはその時に教えるよ」



超絶美少女(以下美少女)「ねえ見て見て、あれ、普通の少年と少女じゃない?」

超絶美少年(以下美少年)「ほんとだ、しかも生きてんじゃん! 信じらんねー!」

美少女「あれで自分の精子とか卵子売ってんだよ」

美少年「マジかよ? 正気とは思えねえな! きったねー顔してやがるのによ!」


少年「くそっ! 俺たちだって、同じ人間なんだぞ!」ダッ


美少年「お? 何か興奮してんじゃん普通が。おい、思い知らせてやりな」

黒服ども「はっ!」

少年「いくら貧乏だからって、……ぐっ!」


ドカッ
バキッ


黒服「少しは懲りたか。この普通野郎が」

少年「うぐぐぅっ……」


少女「少年しっかりして! あなたたち何てひどいことを!」

美少年「バーカ。てめえら下賤な遺伝子が俺たちに口きいてんじゃねえよ」

美少女「あの子たちきっとこの冬を越せないよ。雪の中で幸せにおねんねだね!」

美少年「雪が解けたら死体を発見してもらいな!」


ギャハハハハ!



少女「大丈夫? 血が、出てるよ」

少年「うううっ…… 畜生!」

少女「ほら、これで拭いて」

少年「うるさいっ!」ドンッ

少女「きゃ!」

少年「こうなったら…… こうなったら泥棒でも追剥ぎでも何でもやってやる!」ダッ

少女「待って!」


少女「行っちゃった…… あの子これからどうなるんだろ」

少女「そして私は一人ぼっち。パンを買うお金もない」



老人「お嬢さん、何を泣いてるの?」

少女「あ! はい、卵子、卵子はいかがでしょうか?」

老人「卵子を売ってるの? ……お幾らなの」

少女「1個300円です」

老人「随分安いね」

少女「今日は特別お安くなっております!」

老人「じゃあ1個…… いや、20個貰おうか」

少女「20個も? よろしいんですか?」

老人「うん」

少女「少々お待ちを…… あー、申し訳ありません、今は15個しかございません」

老人「じゃ、それ全部貰おう」

少女「ありがとうございます!」


老人「残り五つは明日ここに来れば買えるかな?」

少女「はい! 必ずご用意します」

老人「じゃあ今日のところはこれ。お釣りは要らないよ」

少女「え、1万円札…… 見たの何年振りだろう……」ブワッ

老人「泣いちゃいけない。それから、300円なんてのは安すぎるよ。そんな安売りは今日限りにしなさい」

少女「は、はい、ありがとうございました!」

老人「それじゃまた明日ね。おやすみ」

少女「おやすみなさい!」


少女「やった! これで今日の晩御飯はあったかいものが食べられる…… そうだ、精子売りの少年にも御馳走してあげよう」

少女「少年! 少年! どこへ行ったの…… 誰あなたたちは!? うっ!」


バタッ


黒服「フフフ……」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



少女「ここは…… どこ? そしてあなたたちは?」

少女2「あなたも捕まったのね」

少女3「私たちも、卵子を売っていて黒服に捕まったの」

少女4「あっちの檻を見て。精子売りの少年たちも捕まってるのよ」

少女「どうしてこんなひどいことをするの?」

美少女「それは私が教えてあげるよ」

卵子売りの少女たち「!」


美少女「お前たちにはこれから、超絶美少女ブランドの偽物を作ってもらうの。何たって私の卵子は偽物でも何百万って値がつくんだからね」

美少女「この特製排卵誘発剤を注射すれば、お前たちは排卵が止まらなくなる。ブランド品を毎日、大量生産するの…… 今まで月一回だなんて怠けてた罰よ」

少女「ひどい…… 私たちは卵子の工場じゃないわ!」

美少女「何をほざいてんの。自分じゃ食べていくこともできないくせに。大丈夫、しっかり卵子を生産すれば、最低限の食事はさせてあげるから。ねぇ美少年」


美少年「そうとも。お前たちは俺たちのブランドに乗っかるしか生きる道はないんだ。見ろ、精子売りどもだってさっそく生産に励んでもらわなくちゃならん」


少年2「やめろぉ!」

黒服「さっさと服脱げコラ!」


美少年「強壮剤入りの食事を与えて、特製吸引マシンで毎日20回は射精してもらう。こいつらだって、それで立派に世の中の役に立てる」

美少女「何だか味気ないわねぇ。少年たちがかわいそうじゃない?」

美少年「と、思うだろ? 実は食事に特殊な催淫剤を混ぜるんだ」

美少女「何それ?」

美少年「これが強烈でね、どんなにへばっててもアソコだけは24時間ギンギン。奴ら天国にいるのとおんなじで射精しまくりだ。こっちが羨ましくなるくらい」


美少女「うわ! よかったねー普通の少年たち!」

美少年「ただし、ちょっと寿命縮めるかもしれないがな」

美少女「いいんじゃない? それ以外世の中の役に立たないんだし! おまけに、天国みたいな気分で死ねるんでしょ?」

美少年「そりゃそうだ! で、このシステムをフル稼働して春までに生産目標を達成する」

美少女「私も負けちゃいられないね! どっちが先に目標を達成するか勝負しよっか?」

美少年「いくら賭ける?」


ギャハハハ



少女「少年少年!」

少年「少女? ……君も捕まったのか」

少女「射精しちゃ駄目だよ! 殺されちゃうから!」

少年「もうどうでもよくなってきたよ…… なんか、すごくいい気持ちで死ねるみたいだし、だったらその方が…… それに、眠くてたまらないんだ……」

少女「諦めないで! 私、卵子がたくさん売れたの、後であったかいものたくさん」

黒服「やかましい! 無駄口叩いてんじゃねえ!」ガシャーン

少女「ひっ!」




老人「ちょいと失礼しますよ」ガチャ

美少年&美少女「誰だあんた? どうやってここへ入った」


老人「わたしゃねえ、そこの普通の少女さんに用があってね。卵子を5個売ってもらう約束をしとったんだが」

美少女「おや? それはお買い上げありがとうございます! ただしこいつの卵子は超絶ブランド下で1個500万円となりますが?」

老人「そりゃおかしいね。私は昨日、彼女の卵子を1個300円で買ったんだが」

美少女「今日から私のブランドに入ったんだから仕方ないでしょ?」

老人「あんたのブランド? そんなもの1円の価値だってありゃせんだろ」

美少女「なん……だって?」

美少年「おいジジイ! 黙って聞いてりゃでかい口叩きやがって! こいつをつまみ出せ!」

黒服ども「おうっ!」ドドド



老人「やれやれ…… 大人しく年寄りの言うことを聞けんのか!」バキッ

黒服1「ぐはぁっ!」バタッ

黒服2「このやろっ!」

老人「ほりゃ!」ビシッ

黒服2「うぐっ……」ドサッ


少年(爺さんすげぇ…… 杖一本で黒服たちを次々に薙ぎ倒してる…… ? いや、あの身のこなしはどこかで見たことがある! あの人は、まさか……!)


黒服ども「クソジジイめ、こうなったら容赦しねえ! 覚悟しやがれ!」ギラッ

老人「ほう…… 長いもの抜きやがったな。そいつがてめえらの本性か。じゃあ手加減しねえぜ!」



ドギャギャギャギャギャギャギャギャ(爺さん無双中)



黒服ども「」


老人「ふう…… 久し振りにいい運動になったぜ。さて」ギロッ

美少年&美少女「ひいいい!」

老人「檻の中にはお前さんがたに入ってもらうよ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



少年&少女「ありがとうございます!」

老人「いいんだよ。さて、こいつらにはお仕置きが必要だな」

美少年「ごめんなさい、許して! もうこんなことしませんから!」

老人「謝るなよ。普通の少年にいい思いさせるってんだろ? お前が自分で楽しめばいいじゃねえか。その食事強制ホース咥えろ」

美少年「え? ちょ、ちょっと待って!」

老人「少年たち、そいつを押さえ付けときな」

精子売りの少年たち「はい!」ガシッ

美少年「やめてええええモゴォゥ」(ホース装着完了)

老人「で、こいつを動かすと……」


ウィーン
ズズズズズ


美少年「MOGAGAGAAAAAAA!!!」ドピュルルルル


アヘアヘ
ビクンビクン


老人「こりゃてえしたもんだな。さっそく白目むいてイっちまいやがった」



美少女「か、か、勘弁して!」

老人「俺は女いたぶる趣味はねえんだが、お仕置きは覚悟しろよ」

美少女「わ、私の純正卵子、1個が定価1億円なんだけどぉ! 特別に、1000万円に負けとくから! どう!? 闇に流せば1億5000万e」


バコッ


老人「てめえの腐れ卵子なんぞ1円の価値もあるかよ! 滅多には貰えねえ俺の純正生パンチだ、ありがたく受け取りな!」

美少女「」


少年&少女「本当に、何とお礼を言っていいか……」

老人「いいって。それよりお嬢さん、昨日約束した卵子は1個500円でいいか?」

少女「あ、はい、ありがとうございます、後で持ってきます!」

老人「いつでもいいよ。急がねえから」

少年「あのお爺さん、いいでしょうか」

老人「爺さんってのはやめてくれ。せめておじさんにしてくれよ。で、何だい」

少年「さっきのあなたの動きを見て…… あなたはもしや、2年前に突然引退して行方知れずになった伝説のボクシング世界チャンピオン、ザ・テンジン・ブラッディー・ミッチーでは?」


老人「バレちまったか……」

少女「え? 本当にあの『ザ・テンジン』なんですか!?」


ミッチー「まぁな」

少年「僕は小さい時あなたの試合を見ました! そしていつか、ボクサーになろうと…… なのに、いつの間にかこんな商売をするようになってしまって…… いえ、でも決心しました! 僕は今からボクサーを目指します!」

ミッチー「早まるなよ少年。殴られるってのは痛いぜ? よく考えるんだな。それからお二人さん」

少年&少女「はい!」

ミッチー「卵子とか精子ってのはな、金を取って売るもんじゃねえ。自分の大切な人に、心を込めて差し上げるもんだ。早いとここんな商売はやめな」

少年「すぐにやめます! でも…… ミッチーさん、その代わりと言ってはなんですが」

ミッチー「どうした?」

少年「プロになれるかどうかはともかく、……あの、ボクシングを教えてもらえないでしょうか!」

少女「私にも教えてください!」

ミッチー「おいおい。言っとくがな、ボクシングの練習はきついぜ。耐えられるのか?」

少年&少女「やります!」

ミッチー「そうか。ただし最初からグラブはめられるなんて思うなよ。まずは住み込みの雑用と使いっ走りで足腰鍛えてもらうぜ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



(ミッチーの屋敷)


ミッチー「ってなわけでハニー。ボクシングジムを開くことになっちまったよ」

愛人「おや。またどういう風の吹きまわし?」

ミッチー「弟子入りしたいって奴につかまっちまったのよ」

愛人「まあ退屈しのぎにはいいんじゃない?」

ミッチー「何だよその言い方」

愛人「だって最近つまんなそうな顔ばかりしてるんだもん。よっぽど、盆栽いじりでも始めたらって言おうかと」

ミッチー「そう人を年寄り扱いするなよ」

愛人「そういう歳でしょ? 年寄り扱いされたくなかったら、……今晩も頑張ってよね」

ミッチー「やれやれ……」


後進の指導。それも悪くねえかもな。
現役を引退してから政界入りも打診されたが、政治の世界はもうこりごりだ。



おっと。俺のことが初めてっていう君たちは、これを読んでくれ。

時平「急で悪いが遣唐使になってくれ」道真「何だと?」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/internet/14562/storage/1400909175.html)


俺の名はザ・テンジン・ブラッディー・ミッチー。

またどこかで会おうぜ。



終わり

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