モバP「トレーナーさんとの約束」 (25)
あ、お帰りなさい。
プロデューサーさん。遅かったですけど大丈夫でした?
あら、あの子たち車で寝ちゃったんですか。珍しい。
まぁ確かに今日はちょっときつめなメニューでしたけど。
あ、ちひろさんなら先に帰っちゃいましたよ。
明日も来るらしいんで、何かあればその時にって伝言です。
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それじゃ私達も今日最後のお仕事、片付けちゃいましょうか。
ふふっ、私、この週の終わりのレッスン計画立てる時間が一番好きなんです!
毎週毎週少しずつ進捗を確認しながらやりますからね。
アイドルの子たちがちょっとずつ成長しているのが、すごくよくわかるんです。
トレーナー冥利に尽きるってやつですね!
さてと、まずは今週の様子なんですけど、ニュージェネレーションの三人はもう問題ないでしょう。
さすが、プロダクション立ち上げ当初から長いこと一緒にやってるだけあって息がぴったりです。
今度のライブも問題ないと思います。
来週いっぱいは練習量を少なめにして、ゆっくり調整していく感じでいいんじゃないでしょうか。
次に奏ちゃん、加蓮ちゃん、伊吹ちゃんのおためし短期ユニットですが、
こっちはもっとお互いに気を配るようにさせないといけないかもしれません。
ダンスが得意な伊吹ちゃんと、歌声が主力な加蓮ちゃん、それにビジュアルで魅せる奏ちゃん、
バランスは取れてるんですけど、各々が突出しすぎて、三人がソロでばらばらにアピールしてるように見えちゃってます。
それで、これからの方針なんですが、案が二つありまして…
全体のレベルを落として、三人の息を合わせてから引き上げるのか、
それともそれぞれ一番うまい子に他の二人を引っ張り上げてもらうのか、どっちにしましょうか?
私としてはどちらも一長一短だと思ってるんですが…
…わかりました。レベルはそのままうまい子に引っ張ってもらう方ですね。
確かにあの3人はみんなプライド高い方ですもんね。
そっちの方がうまくやってくれるかもしれません。
あとはフリルドスクエアのお披露目準備ですか。
忍ちゃん穂乃香ちゃん柚ちゃんはもうだいぶ仕上がってきたんですけど、
あずきちゃんがまだ合流して間もないのでちょっと苦戦してるみたいです。
でもあの子たち本当に仲がいいし、ああみえて練習熱心な子たちばっかりなんで、
イベントに間に合わせるのは問題ないと思うんですけど…
いや、忍ちゃんと穂乃香ちゃんはときどき鬼気迫るものがあるんで、
ちゃんと監視しとかないと陰で無理しすぎちゃうんじゃないかと…
え?だから柚ちゃんとあずきちゃんをユニットに加えた、ですか?
あぁなるほど、柚ちゃんたちで気軽さで適度に息を抜けるようにしたんですか。
よく考えてますね。
あ、もしかしてフリルドスクエアって最初は忍ちゃんと穂乃香ちゃんのデュオユニットの予定だったんじゃ…
…ふふっ、やっぱり。
聞きましたよ?ユニット名のスクエアって最初は広場のことだって言ってたらしいじゃないですか。
でもあとから実は正方形のことで最初から四人組の予定だったって言いなおしたとか。
ふふふっ、目が泳いでます。
もう、相変わらず変な意地を張って、しょうがない人ですね。
でもそれなら、もう少しあの子たち自身に任せてみましょうか。
上から厳しく言いつけるより、いいかもしれません。
もちろんちゃんと目は光らせておきますが。
それが私のお仕事ですからね。
プロデューサーさんが方針を決めて、私がお尻を叩いて、あとは自由に。
成功の秘訣です、なんて。
さて、あとの子たちは大体今のままを継続でいいと思うし、それぞれの担当プロデューサーにまかせるとして…
うーーーん、よし!今週はこんなものですかね!
もう誰もいませんし、あとは戸締りして帰るだけ、何ですが…
Pさん、今週ももう少し、のんびりしていきますよね?
ふふ、コーヒーくらいなら入れてあげますよ?
…ふぅ、思えば私達のつきあいも長くなりましたねぇ。
このあいだの3rdアニバーサリーも素敵でしたし。
あの時はPさん、ふっといなくなったと思ったら、裏口の辺りで一人で泣いてるんですもん。
あれほんとびっくりしたんですよ?
…ってこの話はしない約束でしたっけ?まぁいいじゃないですか。
私だってね、泣いちゃう気持ち、わかりますよ。
というかそのときだって、結局は慰めてたはずの私もつられて、二人で泣いてたじゃないですか。
暗い廊下のすみっこでおいおいおーいってね。
だからお互い様ですよ。恥ずかしくありませんって。
え?そういう問題じゃない?
はいはいわかりましたわかりました。もう言いませんって。
とはいえ、あの子たちのために私達も頑張りましたからね。
最初のころはお互い大変でしたね。
会社も起こしたばっかりなのに、なぜか社長のおかげで候補生はしっかり粒ぞろい。
スタッフはみんな若い人ばっかりで経験不足だったから、どれもこれも手探りでしたし。
そもそも本当の始まりは私とプロデューサーさんと社長さんでしたよね。
すぐにちひろさんを筆頭に人が増えてきましたけど。
気が付けばPさんなんて何人もプロデューサーを率いて頑張るチーフですし、私だって、初めは一人でここに就職して、
さぁ一人前になれるように頑張るぞって思ってたのに、結局よそから姉さんたちも呼んでこなきゃいけなくなったし。
そのうえ姉さんたち、この事務所では私の方が先輩だからって、総監督はお前がやるべきだーなんていうもんだからもう毎日のお仕事が大変で大変で。
さすがにアドバイスはしてくれるし、今ではもうだいぶ慣れましたけどね。
…でも、おかげで、…こうやって週に一回はPさんと二人っきりでお話しできるんですよね。…なーんて。
やっぱり、こうやってここまで頑張ってこれたのって、Pさんとの相性が合ってたのが一番効いてる気がするんですよ。
ひよっこ二人で、互いの分野でそれぞれ全力で走って、ときどきレッスンの方針とかでケンカして、また走って…
失敗することもあったけど、最後には全部全部いい方につなげられたから、あの3rdアニバーサリーがあったんです。
…今思い返すと、よくあれで仲違いしなかったなぁってくらいケンカしてましたね、
まぁそのおかげかどうか、もうたいていはツーカーで通じるようになりましたけど。
打ち合わせもぱっぱと終わって、のんびりできる時間が増えましたし、結果おーらい、です。
…さっき私、この時間が一番楽しみって言ったじゃないですか。
あの子たちの成長がよくわかるからって。
…ほんとは理由、それだけじゃないんですよね。
3年たって、私達も結構責任ある立場になって、お互いゆっくりお話しできる時間も少なくなっちゃいました。
昔、二人で買い出しに行ったの覚えてます?
ほら強化合宿の時の。
あのころはがむしゃらだったけど、まだまだそんな風にゆっくりできるタイミングもありましたよね。
それが今では、週末の仕事終わりの1時間ぽっち。
うれしいやらかなしいやら。
まぁ、ちひろさんも気を使って、週末はだいたい早めに帰ってくれてますけどね。
…あれ?気がついてなかったんですか?
そりゃはっきりとは言っていませんけど、なんとなくわかってくれてますよ?
…そんな苦虫かみつぶしたような顔して、そんなに周りに察せられるのがいやですか?
…はぁ、頑固なんだから。
まぁそもそも、私たち自身がお互いにはっきり名言はしてませんし、周りに伝えようなんてないんですが。
…わかってますよ。
今はアイドルの子達に手一杯だから、他のことはできない、でしょ?
…確かに私たちは裏方です。
あの子たちのためにまだまだやるべきことが山ほどあります。
だいたい私達の立場からしたら、間接的とはいえ事務所のアイドルの子達、みんなを担当しているようなものですから。
その全員をシンデレラにしてあげるためには、まだまだずっとずっと時間がかかるかもしれません。
…でもです、Pさん。
あの子たちを押しのけて、なんて言いません。
あの子たちの合間合間でいいから。
私のことも、ちょっとだけ見てくれるとうれしいなって、ずっと思ってます。
私もあなたも、今までだってこれからだって全力で走ります。
でも最近になってやっと余裕がでてきましたよね。
この打ち合わせに時間がかからなくなったみたいに、私たちの成長が、だいぶお仕事に融通を効かせてくれるようになりました。
その余裕を少しでいいから他のことに向けてくれても、いいんですよ?
…さて、私、戸締りしてきますね!
プロデューサーさんも帰る準備しといてください。
もう寒さも厳しいですから、風邪をひかないようにしないと。
アイドルだけじゃなくって、プロデューサーさんの体だって、替えのきかない大事な体なんですから。
さあ!来週も頑張りましょう!
あの子たちの可能性はこんなものではありません!
ビシバシしごいていきますよ!私と、あなたで!
そんなわけでこれからも、よろしくお願いしますね。
これから先もずっとずっと、一緒に頑張っていきましょう?
…私との約束、です。
おわり!
最近こんなのも書いてたんでよかったらどうぞ
モバP「工藤忍の独白」
モバP「速水奏のジレンマ」
ではでは、私はもう満足しました。
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