勇者「何があったんだ!?」 (35)

【旅の宿屋】
 ここは旅の宿屋
 勇者御一行は戦闘によって負った傷を自然治癒のみで回復させるためにここに宿泊している

僧侶「ゆっ、勇者さまっ!!!」

 悲鳴にも似た叫び声があがった
 僧侶の部屋からだ

勇者「どうしたっ!!」

戦士「なんだなんだ?」

遊び人「いったいどうしたっていうの?」

 仲間が次々に僧侶の部屋に集まった



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 僧侶は怯えたような目つきで勇者を一瞥した

僧侶「勇者しゃま~ 私……私っ!」

 勇者の到着による安堵からか、僧侶はへなへなと座り込んでしまった

勇者「落ち着いて! いったい何があったんだ?」

 僧侶は口を開閉させながら、震える指を窓の外に向けた
 僧侶のなんとか絞り出した声に曰く、

僧侶「ま、窓の外に……」

戦士「窓の外だなっ!!」

 戦士が窓の縁に駆け寄り、今にも飛び出さんとする

勇者「まて! ここは二階だぞ!!」

 勇者のそうさけぶ声に戦士の声が重なった

戦士「あ、あれはっ……!」

勇者「戦士! 何があったんだ!?」

 戦士はおののいた様子で、窓の外のある一点を指し示した

戦士「勇者!! あれを見ろっ!!」

 戦士は携えていた剣を少し持ち上げた
 彼は僧侶の悲鳴を聞き、いの一番に自室を飛び出して来たが、剣だけは忘れなかったのだ

勇者「まさかっ! 魔物か!? この村にやって来たのか!?」

遊び人「あ、あれね……見えた見えた」

 遊び人もいつのまにか窓際に立っていた
 彼女は二人に比べると涼しい顔をしていた
 勇者は静かに窓へと歩みより、顔を出した

勇者「……」

勇者「なにも……見えないが……?」

 勇者が覗いた窓の外は閑とした村の夜だった
 魔物どころか、野良猫一匹いるか疑わしいほどだった

勇者「おい、戦士、遊び人、お前たちはいったい何を見たんだ?」

戦士「あれだよあれ!!」

 戦士は執拗に指をさし続ける
 勇者はその指を伝って闇夜に視線を走らせたが、やはり何も見あたらない

僧侶「……」フルフル

 僧侶は泣きそうになりながら頭を小刻みに振っている
 彼女はそうとうショッキングなものを見たのか
 勇者は血眼になって原因たるものを見ようとした
 そして勇者は窓から身をのりだした
 ちょうど頭だけが窓枠の外へと突き出ている



 ────────ガゴォンッ!!!
 突然不思議な音がした

勇者「───っ?????」 

 衝撃で勇者の首は落ちた
 これでは説明不足なので付け足すと

 上から落ちてきた金ダライが勇者の頭頂部にクリーンヒットした

勇者「いってぇ!! なんだ?!」

 勇者はしばらく頭を抱えてうずくまった

僧侶「いぇーい」
        パシッ
戦士「いぇーい」

 勇者は横で二人がハイタッチするのをしかと目撃した

僧侶「いぇーい ほら、遊び人ちゃんも!」
                   パシッ
遊び人「い、いぇーい……」


勇者「ぐっ……お前ら……」


僧侶「じゃあ勇者様お休みなさい」

戦士「乙~」

遊び人「なんかスマン……」

 僧侶はベッドに顎を放り投げ、他の二人もそれぞれの部屋へと淡白に帰っていった


勇者「ちょ……なんだよコレ」

 勇者はまだぐわんぐわんなっている頭を抱えるように自室に戻った

勇者「説明しろよな」

───翌朝

勇者「おはようみんな」

僧侶「ああ、おはようございます勇者様」

遊び人「起きるの遅かったわね」

勇者「昨日のはなんだっt………」

戦士「おう! 勇者も座れよ! 朝飯だぜ」

勇者「ああ、うん」

勇者「で、昨日のタライ………?はいったいなn……」

僧侶「ここの朝御飯がおいしいらしいんですよ」

勇者「え? ああ、そうなの……」

勇者「それより昨日のこt……」

戦士「おお! 確かに美味いぞ!」

勇者「……」 

勇者「……」

勇者「ああほんとだ確かに美味しい」

僧侶「そうでしょそうでしょう!!!」

遊び人「こ、この果物もなかなか水水しくて美味しいわね」

戦士「すげえ! こんな美味いリンゴ初めてだ!!!」

僧侶「戦士さん! リンゴの篭をひとりで占領しないでください」

戦士「すまねえ! ほらよっ!」

 戦士は勇者にリンゴをひとつ投げ渡した

勇者「あ、ありがとう……」

 勇者はリンゴを普通にキャッチするつもりだった
 しかし……

エビルアップル「キシャー!!!」

勇者「え? ちょ……!! 何?!」


 ガブッ!!!!!!

勇者「うわ!! 手が噛まれた痛い助けて!!」

 エビルアップルは大きな口で勇者の手に噛みつき、離れなかった

勇者「ちょ痛い誰か助けてコレ何とかして!!」


僧侶「いぇーい」
        パシッ
戦士「いぇーい」


勇者「くそっ!! またお前らか」


僧侶「ほら遊び人ちゃんも!!」
               パシッ
遊び人「い、いぇーい……」


勇者「なんかわからんけど俺が悪いなら謝るから早くコレ引き剥がして!!」

勇者「すみませんチェックアウトします」

主人「はいはい じゃあここに登記をお願い致します」

勇者「あ、はい」

主人「それはそうとお客さん」

主人「ゆうべはおたのしみでしたね」

勇者「え?」

戦士「まあな」

僧侶「噂に違わぬいい宿屋でした はいこれタライです 貸し出しありがとうございました」

勇者「は?」


主人「またご利用ください」

僧侶「いぇーい」
        パシッ
主人「いぇーい」


勇者「……もうまぢわけわかんない……」

遊び人「……」


僧侶「さ、勇者様! 旅の再開ですよ! 張り切っていきましょう」

 一行は次の町へ向けて歩き出した
戦士「次の町までいったいどれくらいあるんだ?」

僧侶「ええとですね……次の町へ行くためには東の森を抜けないといけないようですよ」

遊び人「結構かかるのね」

勇者「よしじゃあ行こう!!」


【魔物の森】
戦士「このあたりのモンスターはそんなに強くなさそうだな」

僧侶「ええ、でも数が多い見たいですね」

遊び人「まあ私たちのレベルあげるのにはいいかもね」

僧侶「それもそうですね」

僧侶「あれ? 勇者様は?」

戦士「そういえばいないな……」

僧侶「勇者様ー!!」

勇者「……」

僧侶「あ、こんな茂みに……どうしたんですか?」

勇者「……」

僧侶「そういえば勇者様なんでベトベトなんですか?」

遊び人「あらほんとだ……汚なっ!!」

戦士「いったい何があったんですか?」

勇者「……」

勇者「モンスターに……」

勇者「モンスターにやられたんだようわああああん」

戦士「モンスターったって……」

僧侶「このあたりの奴は低レベルで勇者様が負けることなんて……」

勇者「とりあえずこれを見ろよ!!」

 勇者は右手を取り出した

エビルアップル「ギェピーwwwwwwwww」

勇者「お前らがそのままにしておくから剣も握れねえよチクショー!!」

僧侶「ああ、無駄ですよ そのモンスターリンゴ一度噛みついたらたぶん3年は離れませんよ」

勇者「なんでだよ凶暴すぎるだろ!!」

戦士「まあ、仕方ないな」

勇者「何も仕方なくないよ!! こちとらスライムに襲われるわマンドラゴラに消化されるわ通りすがりの森のエルフに蜂蜜塗りたくられるわで身も心もベトベトなんだよ」

遊び人「……」

勇者「もういいもん!! 旅なんてもう知らないっ!!」

戦士「あ、スネた」

勇者「故郷に戻ってベトベトの道具屋として生きてやるっ!!」

勇者「お前らが来ても何も売ってやらねーから!! ザマーミロ!! あ、馬の糞なら100000Gで売ってやるから覚悟しろ!!」

 勇者は森の茂みを掻き分けて何処かへ行ってしまった

僧侶「ああっ!! お待ちください勇者様ー!」

遊び人(勇者もバカだったのか?)

【森の何処か】
勇者「グスンッ……」

勇者「折角俺がパーティのリーダーとして皆をここまで支えてきたのに……」

勇者「誰も俺を守ってくれないじゃないか!!!」

勇者「僧侶も僧侶だよ!!」プンスカ

勇者「回復魔法か膝枕のひとつでもかけてくれればいいのに!!」プンスカ

勇者「あーもういい もう知らん」

勇者「旅も魔王も知るもんか」

勇者「で、ここはいったいどこだ?」


【森の出口】
戦士「勇者いねえな……もう出口についちまったよ」

僧侶「勇者様のことですから、きっと何処かで迷っていらっしゃいますよ」

戦士「早いとこ探さなきゃな……勇者のやつ今全く闘えねえもん」

遊び人(勇者がさらにベトベトになってたらパーティ抜けよう……)

勇者「うわここ暗い……なんかモンスター出てきそう……やだなあ」

勇者「おーい!! 僧侶ー! 戦士ー! 遊び人!! いたら返事してくれー!!」

勇者「ハアッハアッ……どないしよ遭難してしもた……」

 その時勇者は偶然にも看板を見つけた

勇者「あ、こんなところに看板があるぞ!」

勇者「えーなになに?」

勇者「文字読めないけどたぶん『この先竜宮城』って書いてあるな……」

勇者「俺の勇者☆THE・直感パワー──スーパー理解能力エディション──がそう告げている、うん」

勇者「看板のさすほうへ行ってみよう」

エルフ「バカかお前は……それは『グリズリー出現注意』の看板だ」

勇者「あ! お前はさっきの!!」


~~~
【森の出口】
戦士「でも森の中にも看板くらいあるんじゃねえか?」

僧侶「あっても勇者様は文字が読めませんよ」

戦士「え? そうなの? なんで?」

僧侶「なんでも勇者様の実家はとても貧乏だったそうで……」

僧侶「勇者様は低等教育すらも受けてらっしゃらないのです」

戦士「あの勇者がそんなに貧乏だったのか……」

僧侶「はい……」

僧侶「勇者様によると、

勇者『俺の実家は貧乏でさあ……ご飯は毎日1食だけで……米も小麦も買えなかったからいっつも料理は煎ったヒマワリの種だったんだ』

   と、おっしゃってて……」

戦士「アイツも苦労してたんだなー」

僧侶「あ、あと

勇者『1回ヒマワリの種だと思ったらスキルの種だったこともあってうちのお母さんが食べたらヒマワリの種煎る技術だけ無駄にあがった』
   とかもおっしゃってました」

遊び人(なんかもうかわいそうになってきた)

勇者「お前はさっき俺に蜂蜜をこれでもかってくらい塗ったエルフ!!」

エルフ「ごめん地面にうつ伏せで伏してたから屍かと思って……」

勇者「ごめんじゃないよ!! 俺そのあとグリズリーにめっちゃ襲われたんだぞ!!」

エルフ「グリズリーに?」

勇者「ああ」

勇者「まあ余裕で倒したけどな」

勇者「思い出すだけでも手強い相手だったぜ……」ゼェゼェ……

エルフ(どっちだよ)

エルフ「まあ、倒してくれたならありがたい」

エルフ「私も蜂蜜を囮にヤツを倒そうとしていたのだ」

エルフ「最近この辺りで暴れまわっていたからな」

勇者「へえ」

エルフ「少し進んだところにエルフの秘境があるんだ どうだろう、うちへ来てくれないか? ご馳走するぞ」

勇者「ご馳走!? やったー」

【エルフの家】
エルフ「私はこの集落で狩人をしている」

エルフ「グリズリー討伐のお礼だ! 食ってくれ」

勇者「うわーい(^○^)山の幸だ!!」

勇者「いただきまーす!!」

エルフ「リンゴもあるぞ! この森の特産なんだ」

勇者「リンゴはダメ!! イヤな思い出しかないから」

エルフ「え? ああ、そう……」

勇者「俺がリンゴ嫌いになった過去聞きたい? いやダメだ 人の過去を聞きたがるなんて野暮だぜお嬢さん」

エルフ「は、はあ……」

エルフ(多分、彼の右手のあれのせいだろうな……)

エビルアップル「ギャースwwwwwwwww」

【3時間後】
勇者「でさーそこでお母さんが村長に向かって何て言ったと思う?」

勇者「なんと『ヒマワリの種でもいいんで』って言ったんだよコレが」

勇者「HAHAHAHA」

エルフ「そ、そうですか」

エルフ(ウゼエ……なんだこの勇者いい加減帰ってくれよ……どんだけ居座る気だよ)

エルフ「あの……お仲間とか……大丈夫ですか? 待たせているんじゃ……」

勇者「仲間? あんな奴らもう知るもんか!!」プンスカ

エルフ「喧嘩とかしたんですか?」

勇者「フッ……よしてくれお嬢さん 他人の痴話喧嘩に首を突っ込むなんて淑女の所業じゃないぜ」

エルフ(ウゼエ……冗談抜きでもう帰ってください)



 ────ゴギャァァァァァァァァァ
 けたたましい獣の咆哮が響いた

エルフ「なっ! 何事だ!?」

エルフ2「グリズリーが村に入って来たぞォォ!!」

エルフ「なんだって!?」

エルフ「なんで?! だってグリズリーはこの男が……」

エルフ「おい! グリズリーは本当に倒したんだろうな!!」

勇者「たぶん倒した」

エルフ「たぶんって……とにかくついてこい!!」

 エルフは勇者を引っ張ってそとに飛び出した
 そしてすぐに村を荒らしているグリズリーを見つけた

エルフ「おい勇者!! お前が倒したのはあのグリズリーか?」

グリズリー「グォォォォォォォン!!」

勇者「いや、あれよりかは小さかった」

エルフ「まさかあれとは別にグリズリーはいたのか……」

勇者「いやでも全然大丈夫 あんなにデカくなかったし……」

勇者「俺が倒したヤツはリスくらいの大きさで……あ、やっぱり俺が倒したのはただのリスだったわ」

エルフ「グリズリー倒してねえのかよチクショー!!!」

【一方そのころ】
戦士「勇者いた?」

僧侶「いませんでした……そちらは?」

戦士「……」

僧侶「本当にどこ行ったんでしょうか……」

僧侶「遊び人さんも荷物の番ありがとうございます」

遊び人「勇者のやつホントに故郷へ戻っちゃったんじゃない?」

僧侶「いえ……」

僧侶「勇者様は……あの方は約束は必ず守る人なんです」

戦士「そうだよな! 俺たちが酒場でパーティを組んだとき、アイツは言ってたもんな!」


勇者『俺たち四人でひとりもかけることなく旅を終えよう』

勇者『約束だ』


戦士「─────ってな」

遊び人「そうね」

僧侶「そうですよ!!」

遊び人「あ、僧侶ちゃんあのときのこと思い出したから笑ってる!」

僧侶「遊び人さんだって!!」

一同 \ ハハハハハハ /



戦士「勇者もきっと俺たちを待ってる」

戦士「よし! もっかい探しに行こうぜ!!」

グリズリー「グワァァァァァァアオ」

エルフ「くっ……」

 エルフはグリズリーの心臓へ何度も弓を射るが、硬い毛皮に阻まれて有効撃にはならない

エルフ「おい勇者!! アンタはなんかできないのか!!」

勇者「できない!!」

エルフ「なんでだよお前勇者だろ?」

勇者「だってこのリンゴ……」

エビルアップル「チョギプリィイwwwwwwwww」

エルフ「っまじかよ!!」

勇者「エルフさんガンバレー」

勇者「そうだ! グリズリーの攻撃の勢いを利用して倒すんだ!!」

エルフ「はあ?」

勇者「攻撃の強ければ強いほど相手の陰の部分はもろくなる!」

勇者「そこを見極めて指一本で突くんだ!!」

勇者「それこそが一指拳!」

エルフ「できるわけないでしょ世界観考えろ!!」

エルフ「って……きゃあ!!」

 エルフが勇者の方を向いた瞬間、グリズリーが彼女めがけて突進してきた

勇者「危ないっ!!」

グリズリー「ズァァァァァァッッッ」


 勇者はエルフを抱えるようにしてその場から飛び出した
 まさに間一髪というところで二人はグリズリーの体当たりをかわした

エルフ「あ、ありがとうございます」

勇者「だ、大丈夫か?」

エルフ「私は無傷だ!! でもお前……」

エルフ「肩から血が……」

勇者「これはさっきリスに噛まれたところだ」

エルフ「……」

 エルフがツッコもうとした時、勇者は真剣な顔になった
 
勇者「君はここに……」

エルフ「でも、勇者お前利き手が……」

勇者「大丈夫」

勇者「俺が君を守るよ……」

勇者「約束する」

エルフ「勇者……」



勇者「手が使えなくても俺には魔法があるのさ」
 
 すくっと立ち上がる勇者に後ろ大きな黒い体躯が迫ってきた

エルフ「勇者後ろ!!」

 勇者は頭をかいた

勇者「ええと、なんだっけ? バスロマン? 違うな……バスロータリーだっけか……?」

グリズリー「グアバォォォォォォ!!」

 グリズリーの凶拳が勇者に迫る

エルフ「勇者ァァァァァァ!!」

 エルフは思わず目を閉じた

勇者「ああ、そうだ……思い出した」

     《バシルーラ》

グリズリー「!!?」

グリズリー「ツァオォォォォォ!!」バヒューン!!!!!!!

 グリズリーは身を宙に浮かせたかと思うと、木々をなぎ倒しながら信じられないスピードで地平の彼方へと消えていった

エルフ「……す、すごい……」

【森の出口】
戦士「とりあえず勇者探すのは明日にしよう!」

僧侶「そうね、もう夕方の4時だし」

遊び人(まだ4時じゃん……意外に薄情だなコイツら……)

戦士「よーし!! 薪を拾ってきたからキャンプファイヤーしようぜ!!」

 戦士が火を灯すと、そこに何かが飛んできた

 グリズリーだった

戦士「グリズリー!?」

僧侶「へーこの森こんなのもいたんですね……まあいいやキャンプファイヤーがBBQに変わりましたし」

遊び人「言ってる場合か!!」

戦士「なんでこんなデカイやつが……どっから飛んできたんだ?」

僧侶「モンスターから魔力検知!! これは……勇者様の魔法です!!」

戦士「何っ? ってことは……」

僧侶「ええ、辿っていきましょう! 魔力の跡を」

【エルフの集落】

勇者「グリズリーは倒したよ。エルフ大丈夫か?」

エルフ「うぅっ………!」

勇者「オイオイ泣くやつがあるか……」

エルフ「だってよ……ゆ゛う゛じゃ………」

エルフ「袖が!!!」ドン!!

勇者「……安いもんだ……肩のチクチク感やゴワゴワ感くらい……」

勇者「無事で……よかった……」

エルフ「勇者……」



ガサッ

戦士「ああ、いた勇者」

勇者「あ、戦士」

戦士「おーい(^_^)/~~ 勇者いたぞ!! なんか袖がアンバランスだけど」

ぞろぞろ

僧侶「片ノースリーブですか?」

勇者「僧侶!」

遊び人(ベトベト……ではないみたい……よかった…… 袖はダサいけど)

勇者「遊び人も!」

エルフ(誰だコイツら……?)

僧侶「勇者様こちらの方は?」

勇者「ああこいつはこの森に住んでるエルフで、ここはそのエルフたちの隠れ里なんだ」

戦士「へーそういえば以前誰かがこの森でエルフに蜂蜜塗られたとか言ってるのを耳にしたがホントだったとはな」

僧侶「それ私も聞いたことありますよ!! エルフさん全然隠遁してないじゃないですか」

遊び人「たぶんそれソース源同じ人……」


エルフ「あなたがたはこの男の仲間なのか?」

僧侶「そうです私たちはパーティなんです」

勇者「ねえ僧侶フバーハかけて~ 肩が寒いよう(´;ω;`)」

これは~ 勇者御一行が普段決して交わることのない人々と生活を共にした~
愛と感動の記録である~

〔世界エルルン滞在記〕

【エルフの集落】
ここは~ 魔物の森にありながら~ 魔物が寄り付かない聖域として~ 少数種族であるエルフたちがひっそりとくらす村落である~

今回ここで暮らすのは勇者パーティ~

勇者「美味しい山の幸に期待したいですね」

僧侶「地元の人々の魔法にも興味ありますし」

戦士「はっきり言って不安もありますけど……」

遊び人「新しいことに出会える喜びのほうが大きいだろうっていうか……」

そんな四人が今回お世話になる人がこの人~

エルフ「えっ? ウチに来るの? 四人も?」

現地の人は戸惑っているようだ~


勇者「美味しい山の幸に期待したいですね」

僧侶「っていうか、もう暗くなってきたので……」

エルフ「えっ!? そ、そうですよね!? えっ!?」

こうして1日だけのはずだった宿泊は~
ずるずると一週間を超え~

エルフ「ところで、そろそろここから出ていって欲しいんだが……」

僧侶「えっ!?なんか言いましたか!?」チョキン

エルフ「ちょっ!! そのトマトまだ収穫時期じゃないから!!」


そしてしだいに勇者たちと現地の人との絆が生まれた~

エルフ「ところでそろそろここから出ていって……」

遊び人「……」

エルフ「…………食事の配膳お願いします」

遊び人「……」ホッ


時には対立することもあったが~ 

エルフ「そろそろここから……」

戦士「え?なんて?」カシャン

エルフ「勝手に人ん家の壺割るな!! おいそこ!!タンスを開けるな」

勇者「えっ!?ごめん」キィ

テロレッ

勇者「あ、これ布の……」

エルフ「ちょそれ私のパンt……//」

エルフ「お前らいい加減にしろよ!!」

エルフ「もう全員出てけ!! てか旅しろよ何滞在してんの!?」

こうして~ 別れの日~


勇者「別れかぁ……凄くつらいっすね……」

 僕らは 位置について 横一列でスタートを切った

勇者「ここへ来て一週間で美味しいものいっぱいもらって……」

 つまずいてる アイツのことみて
 ホントはしめしめとおもってた

勇者「エルフさんとも仲良くなって……」

 誰かを許せたり 大切なもの守れたり
 いまだ何一つ サマになっていやしない

勇者「マジで別れたくないっすよ……」

 相変わらずアノ日の駄目な僕

勇者「でも……僕はまだまだ未熟だって……彼女はそう教えてくれました」

勇者「僕らは僕らの生活に……彼女は彼女自身の旅を……」

 ずっと探していた 理想の自分は
 もうちょっと かっこよかったけれど

勇者「よし……そろそろ行かないと……湿っぽい別れはいけませんからね……」

 僕が歩いてきた その道のりを
 ホントは 「ジブン」っていうらしい

勇者「ありがとう………本当に……」

 世界中に溢れているため息と 僕と君の甘酸っぱい挫折に捧ぐ
 あと一歩だけ前に 進もう

勇者「さようなら……」

勇者「フンッ!!!」ッギギギ

エビルアップル「クニヘカエルンダナwwwwwww」

勇者「ハァッハアッ……とれない……」


〔アップルフェッショナル ~勇者の流儀~〕
終/製作 NHK

エルフ「そっちかよ!!」

エルフ「さんざん長々と演出して別れる相手はリンゴのほうかよ!! ってかまだついたままだったんだソレ」

エルフ「いいから早く出てけ!!」

勇者「そんな~」

戦士「マジかよ……」

僧侶「ヒモ生活がいい~」

遊び人(こいつらクズじゃねえか……)

エルフ「出てけ!!」

勇者「そんな~~」

エルフ「………」

エルフ「……フッ」

エルフ「勇者……」

勇者「何?」

エルフ「まあ……その……なんだ……」

エルフ「グリズリーから助けてくれたお礼だ受け取ってくれ」ポイッ

勇者「こ、これは……!?」

エルフ「エルフのお守りだ……」

勇者「……ありがとう」

エルフ「元気でな」

勇者「ああ……!!」


【森の出口】
僧侶「よかったですね勇者様」

勇者「ん?」

僧侶「実家以外にも帰るところができて」フフッ

勇者「……そうだな」フッ

戦士「さて! じゃあ次の町へ向かうか!」

勇者「おう!!」






勇者「でも俺まだお前らを許したわけじゃないからね……俺を置いていきやがって……てかこのリンゴホントなんなの?」

僧侶「それじゃ、勇者様も戻ったことだし、次の町へ向かいましょう!!」

戦士「おう!!」

勇者「…………」

遊び人(なんなんだこのパーティは……)

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