もし麦わらの一味が結成されなかったら?(28)


…麦わらの一味は、偶然に偶然が重なってて出来た一味である。

必然的に協力し、仲間になる筈だったのは、麦わらのルフィと狙撃の王様ぐらいであろう。


では、その偶然が起きなかったら?

又は、その偶然のタイミングがずれてしまっていたら?

…一体、何が起きていただろうか。


もし、海賊狩りのゾロの親友が生きていたら?

もし、泥棒猫のナミがリトルガーデンにてケスチアにかからなかったら?


…それらの場合は大剣豪、更には万能の医者は、海賊王とは共にいなかったであろう。



…今から語る話は、ソウルキングの手記と我が能力によって成される。



かつての海賊王の一味がいなかったら、この世界はどうなっていたであろうか?


…今、その質問に答えよう……。




「超人系、ユメユメの実……夢想実現人間」



・捏造がたくさんあります。悪しからず。

・話の都合により年齢が違う人物がおります。

・話の都合によりルフィが始めは殆ど出番がありません。

・基本的には敵対している場合が多い筈ですが、時には共闘する場合もあります。

・一味は1人につき一つは捏造があります。


海賊王ゴールド・ロジャーが海軍に拿捕され、東の海にて処刑されてから十年。

ある東の海の異国の文化が残る村にて、一つの出会いがあった。




…その少年は、目の前に倒れるガキ大将たちを見下ろしていた。

ついさっきまで強気だったガキ大将たちは、その少年の強さに圧倒されていたのだ。

自分たちよりも幼く、背も小さい。

尚且つ、こちらが数人に対し相手は1人。



「な、なのに………なんでおれたちがまけるんだよぉっ…」ボロッ

支援

>>5 ありがとう



「ち、ちくしょう……お前、何なんだよ!」

「…え?この村で他に強い奴?」

「い、居るかよそんなの…」


ガキ大将たちの返事に少年はうんざりした。

只でさえ、いつも威張り散らしてたガキ大将たちが弱かったせいで、拍子抜けも良い所だったのだ。





「…あ!この村じゃないけど居るぜ、強い奴…」



少年「隣の村か!?」

「あ、あぁ…。何でも、道場があるって話だ」

「この島から色んな奴がその道場に集まってるんだ。子供から大人まで、その道場に習いに行ってる」


少年はニヤリと微笑む。
…ただ、“微笑む”などという言葉が少し似合わないくらい、眼光は鋭かった。


少年「へへっ、そうか……。ありがとよ!」ダッ


「あっ、待てよ!お前、誰だ!?」




少年「おれの名はロロノア・ゾロ!一番強くなる男だ!」ダダダダッ



「…行っちまった」

「…鉄砲玉みたいだけど、強い奴だったな」

「…でも、珍しい出で立ちしてたな」

「あぁ、それはそうだな!オレ、この島で黒髪黒目じゃない奴初めて見たぜ!」

「いや、オレはもう1人見たことある。あの銀髪のガキだ」

「あぁ、アイツも道場に通ってるんじゃなかったっけ?」



…ここはシモツキ村。

海岸に接する、人々がよく出入りする港でもある。

「やーっ!」「キェェ!」


その村には、大きいながらも目立ちはしない、一つの剣術道場があった。

その道場に本日また1人、挑戦…もとい、入場希望者がやってきた。





ゾロ「たのもぅ――――!」バァン


「何だ!?」「道場破りか!?」


ゾロ「この道場で一番強い奴を出せ!おれと勝負しろ!」







…その日は騒がしい日だった。

何せ道場破りなんてものが来るんだもの。

妙に幼い声だなぁと思ったけど、それでもわたしは竹刀を振るう。

どうせお父さんが対応するだろう。


…なんて思ってたら、道場主……お父さんが、見知らぬ子供を引き連れて戻ってきた。


初めて見る子だった。

わたしと歳はあまり離れていないだろうが、わたしの方が少し背が高い。

それに、緑の髪で緑の目というのも珍しい。

…というより、黒髪黒目じゃないのは殆どいない。

島の外から来たのかな?



「…くいな」

くいな「…はい」


お父さん…道場主のコウシロウが私を呼ぶ。
もしかして、私にその子の相手をしろというのだろうか。


コウシロウ「この子と勝負をしてあげなさい」


…やっぱり。



ゾロ「何だよ、お前が相手してくれるんじゃないのかよ!」


あ、ムカつく。何コイツ。


コウシロウ「…くいなは女の子ですが、この道場では誰よりも強いですよ。男の子はもちろん、大人よりもね」

くいな「…」

ゾロ「…わかった。おれが勝ったらここの看板を貰うからな」

コウシロウ「では、君が負けたら…」

ゾロ「っ…。そんときは、ここの道場に入門してやる!」

コウシロウ「えぇ、それで構いませんよ」



…本当に可笑しな子だった。

好きな竹刀を使って良いと言われたら、右手、左手、更には口にまで、竹刀を三本ずつ持った。

しかも礼を二回する間に口から竹刀を二本落としてるし。

聞けば今日初めて竹刀を握ったと言う。

…そんなんで道場破りだなんて、とてもじゃないが勝てるわけがない。


…当然、試合にはわたしが勝った。

その日、彼ことロロノア・ゾロは、一心道場に入門した。



…ゾロは、ただの子供ではなかった。


まず、練習量が他と違う。
しかもあれは既に練習じゃなくて修行だ。

他が百をやればゾロは五百をやる。

わたしが五百をやればゾロは千をやる。


修行内容も普通じゃなかった。

自分の身長程もある岩を持ち上げてスクワットをしたり、顎の力を鍛えるために岩を口から綱で吊るして、そのまま維持したり。

あのゾロの修行風景は、わたしだけではなく、他に良い影響を与えた。

異常な体力に修行内容とも言えたが、本当に凄かったのはあの精神力と向上心。

その二つがわたしたちに良い影響を与えたのだ。

…さらに他と違うのがその成長速度。


わたしは、物心ついた時から剣を握っていた。

全ては道場を継ぐため。

そして、世界一の剣豪になるために。


…そのわたしの六年間の努力に、彼はたった一年の修行で追いついている。

わたしは、彼とは約二千の勝負を繰り広げた。

その全てにわたしは勝ち、彼は「次こそは勝つ!」と、悔しがっている。

だが、わたしにはわかる。

彼とわたしの間には、ほとんど差がない。

彼はわたしのすぐ後ろにいるのだ。


わたしが密かに行っている修行をやめてしまえば、わたしはたちまちゾロに敗れるだろう。

更に、今はまだゾロの方が発達が遅い。

女の子の方がいくらか身体が大きい。

…だが、いつかゾロは男性としての身体になっていくだろう。

しかもあんな無茶苦茶な修行をしているゾロなんだから、正に規格外な人間になるに決まってる。


…いつか、わたしはゾロに負けてしまうかもしれない。………でも。



キィン!


ゾロ「うわぁ!」ズサァッ



…今はまだ、わたしの方が強いらしい。


くいな「…これでわたしの二千一勝目ね」


ゾロ「…」

くいな「…?」

ゾロ「…ちくしょう」

くいな「…」

ゾロ「ちくしょぉぉぉ…」ギュゥッ



くいな「…悔しい?ゾロ…」

ゾロ「…当たり前だろ…!」





くいな「…本当に悔しいのは、わたしの方」

ゾロ「…え?」


―――――
――――
―――
――



ゾロ「…どういうことだよ、お前の方が悔しいって」


…わけわかんねぇよ。

勝ったのはお前。負けたのはオレ。

悔しがるのは当然負けたオレ。
しかも二千一敗目だ。


…どういうことなんだ?


くいな「…わたしはね、ゾロ。…いつか、君に負けちゃうの」

ゾロ「…そりゃそうだろ。オレは絶対お前に勝つからな」

くいな「そういう意味じゃないのよ!」

ゾロ「?」


くいな「…わたしは女の子。ゾロは男の子…」

くいな「男の子は大人になるにつれて、強く、逞しくなっていく。……女性よりも、遥かに」

ゾロ「!! まさか、お前…」

くいな「…女の子は、男の子に勝てないのよ」

くいな「今日お父様にも言われたわ。女の子には世界一の剣士はなれないって」




くいな「……ゾロはいいね。男の子だから…」…ポロ

くいな「…いいなぁ。君たちがうらやましいよ」ポロ ポロ…


――――本当に。


ゾロ「…何だよ」

ゾロ「何でそんなこと言うんだよ!」

くいな「え…」

ゾロ「そんなもん、お前に負けたオレが馬鹿みたいじゃねぇかよ!!」

くいな「…ゾロ……」



ゾロ「…約束しろ!」

くいな「!」

ゾロ「いつか、オレかお前のどっちかが世界一の剣豪になるんだ!!オレとお前で競い合うんだ!!!」


くいな「…」

ゾロ「…」フー・・・ フー・・・


くいな「…バカヤロー…」

くいな「弱い癖にさ」グイッ

ゾロ「…へっ」










「「約束だ」」




ガシッ!



くいな「……話変わるけど、今からどうする?」

ゾロ「…そんなもん、お前…とっとと帰って修行を……………………」

ゾロ「………」

くいな「……ゾロ?」





……何でその時そんなことを思ったかはわからない。

ただの気まぐれだったのかもしれない。

けど、オレはそのときそう思ったんだ。



ゾロ「…今日は道場に泊まってく」

くいな「へ」

ゾロ「お前の秘密の特訓を見るんだ」

くいな「なっ………知ってたの?」

ゾロ「まぁな。あんだけ強いのが何の努力もなしはねぇだろ」

くいな「……気を抜くと君に抜かされるからね」

ゾロ「…そうかよ」

くいな(…照れてる、かな?)


ゾロ「じゃ、道場行こうぜ」

くいな「ちゃんとお風呂入って寝てよ。いつでもどこでもいつの間にか寝ちゃうんだから…………」

ゾロ「へいへい」

くいな「あ、あと道場の床の上で寝てね」

ゾロ「はぁ!? 前みたいに一緒に寝りゃ良いだろうが!」

くいな「…」

ゾロ「………?」

くいな「」ダッ

ゾロ「な!ちょっと待てよくいな!」ダッ



…これは余談だけど、翌日くいなは階段から落ちた。

…まぁ、オレが階段下に居たから何もなかったけどな。

寝ぼけたか何か知らねぇけど、案外間抜けた所もあるんだと思って、少し笑えた。

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