京太郎「実は私は」和「吸血鬼」【咲SS】 (43)



・このSSは【咲】のキャラで【実は私は】のストーリーっぽく進行します

・メインは非安価 極まれに安価を取ることもあります

・京太郎が主人公のラブコメもの?です

・咲キャラの正体が実は○○と、原作にない設定に

・遅筆



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1409841648




 プロローグ


「み、見ましたね?」

「いや、俺は何も見てない! 本当に!」
 
 どうしてこんなことになったんだろうか?
 俺はただ、彼女に告白したかっただけなのに

「嘘です! 見たんでしょう!?」

「うぅっ、見てないっての!」

 でもこれが、俺と彼女を繋ぐ一つの物語の始まり

「気づかれてしまったのなら、仕方ありません」

 この日
 俺は誓った

「実は私は」


 なんとしても俺は彼女の【秘密】を守り


「吸血鬼――なんです」


 共に夢の舞台へ





 第一話 麻雀しよう!


京太郎「(よしよしよし、こーい!)」

 俺の名前は須賀京太郎 
 清澄高校一年の麻雀部員だ

久「さーて、いよいよオーラスねー」

まこ「どうなるかのー」

優希「負けないじょ」

 今こうやって同じ卓を囲んでいるのは
 三年の竹井久部長、二年の染谷まこ先輩、そして同じ一年の片岡優希
 全員べらぼうに強く、麻雀を始めたての俺はいつもボコられている

 現に今の時点で俺はこの中でぶっちぎりのドべ
 このままじゃ勝ち目なんてあるわけがない

京太郎「(だがしかーし、いつまでもやられっぱなしというわけにもいかないぜ!)」

 このオーラスで勝負をかけるために俺は秘策を用意していた
 そう、それがこの

京太郎「メガネだ!」

久「あら、須賀君?」

まこ「どうしたんじゃ、それ」

京太郎「ふっふっふ、俺はもう麻雀の弱点を克服したんですよ」

優希「弱点って、アレのか?」

 優希のいうアレとは、俺のある特異体質のこと
 いや、そこまで大げさにいうことでもないけどさ

久「なるほどねー。それで表情を隠そうってわけ」

まこ「京太郎は分かりやすいからのぅ」

京太郎「確かに俺は顔に出やすいですけど、これがあればもう怖いもの無しです!」

 そう、俺はなんでも顔に出てしまうというおまぬけな性分に生まれており
 嘘をついてもすぐにバレ
 相手を気遣っても逆に傷つけ

 こうした勝負事でも相手に感情が筒抜けになってしまう

久「穴の空いたザルが言うじゃない」

まこ「しかもスケベなことになるとことさら拍車がかかるけぇ」

優希「それで付いたあだ名が――」


京太郎「”エロザル”なんて不名誉なあだ名なわけでして」





 大体なんだよエロザルって
 苛めかよ、ただの悪口じゃねーか!

京太郎「だけどその不名誉なあだ名もここで撤回です!」

久「えらい自信ねー。さ、早くツモりなさい」

京太郎「は、はいっ!」

 ピコーン

京太郎「(おっ、いい牌だ)」

まこ「ふーん」

京太郎「(あっ、これはいらないな)」

優希「へぇー」

京太郎「(やった! テンパった!)」

久「テンパイおめでと。でもそれロンよ」

京太郎「うぇっ!?」

久「はい残念ー。愛も変わらずエロザルの名誉は守られましたー」

京太郎「嘘だぁ! 折角メガネで隠してたのに!」

まこ「あれで隠せとると思うちょったんか」

優希「アホの極みだじぇ」

京太郎「またダメだったのか、くそっ!」

 こんな調子で麻雀部じゃいつも負けっぱなし
 みんなが強いのもあるけど、俺が弱すぎるんだ

 これもそれも、俺がこんな嘘のつけない馬鹿正直だからいけないんだよなぁ

久「ほんと、苦労しそうね須賀君」

優希「京太郎、罪を犯すんじゃないじぇ。すぐに捕まるから」

まこ「ここまでじゃとのぅ」

京太郎「で、でも! 肝心なことは隠せてますから!」

 俺の抱える密かな秘密
 それは今のところ誰にもバレていない筈だ

久「あら、和のこと?」

優希「知ってるじぇ」

まこ「気づいとらんでも?」

京太郎「えええええ!?」



優希「みぃーんな知ってるじょ」

久「気づいてないのは天然の和くらいじゃないかしら?」

まこ「いや、アレで気づいてることも」

京太郎「うわぁぁぁ!」

 なんてこった!
 それじゃあ俺一人で隠せてると思い込んでたのかよ!

 くそ、こんな筈じゃなかったのに!

京太郎「い、いつから気づいてたんだよ!」

優希「そりゃお前が入部してきた時の顔で分かるじょ」

久「そりゃずーっと和の方を見ながらニヤニヤニヤニヤ」

まこ「よだれも出しよって」

京太郎「ま、まじっすか?」

久「マジ」

京太郎「じーざす!!」

優希「安心しろ駄犬。のどちゃんは気づいてないじぇ」

京太郎「ほ、本当か!?」

優希「多分」

京太郎「うぉぉぉぉぉい!!!」

久「そういえば同じクラスの嫁田君から聞いたけどさー、ふふん」

京太郎「え、なんですかその嫌な顔」

久「昔ー、告白しようとしたその前に玉砕したんだって?」

京太郎「なぁっ!?」

まこ「告白する前に?」

久「中学で同じクラスだった子を呼び出してさー、いざ告白しようとしたら」


~過去~

京太郎『よ、よく来てくれたな。実は俺は……」

『あ、あのさ。こういうところに呼び出すのやめてよ』

京太郎『え?』

『ただでさえクラスで嫁だとか、恋人とか言われて迷惑でしょ』

京太郎『め、迷惑?』

『ずっと同じクラスなだけなのに、嫌だよね』

京太郎『い、いやだよ、ね』フラフラ

 
友達A『タオルだ!! 誰かタオルを投入しろ!!』

友達B『担架持ってこーい!!』

京太郎『迷惑、嫌……あはは』






まこ「むごい」

優希「よくおめおめと生きていられるじぇ」

京太郎「だ、黙ってろ!!」

久「でも須賀君。正直言って原村さんは難しいと思うわよー」

京太郎「はい?」

久「考えても見なさい。麻雀弱い、成績は普通、スポーツだけ並以上、顔はまぁイケメンの須賀君と」

まこ「成績優秀、品行方正、才色兼備」

優希「美人でおっぱいでっかいじぇ」

久「運動はアレだけど、麻雀はインターミドルチャンプで両親は弁護士と検事なのよね」

京太郎「うぐっ」

 た、確かに和は俺なんかじゃ手の届かない高嶺の花だ
 だけど好きになっちまったからには仕方ないっていうか

 好きなもんは好きなわけで

京太郎「だから俺は」

久「そこでよ、須賀君!」

京太郎「そこで?」

久「フラれる前にフラれに行くのよ!」

京太郎「ええっ!?」

久「お膳立てして、部室に原村さんだけを残しておくから」

まこ「そこに京太郎が来て、告白」

優希「どーせフラれるだろうけど1%くらいは可能性あるじょ」

京太郎「み、みんな!」

久「悶々したって仕方ないでしょ? 早めに告白して吹っ切っちゃいなさい」

京太郎「部長、俺やります!」

まこ「よう言うた。それでこそ漢じゃ」

優希「フラれても私が慰めてあげるわよアナター♪」

京太郎「い・ら・ねー」

優希「むきゃー!! 本気で言ってるなキサマァー!!」

久「こらこら、暴れないの」

まこ「決行は明日じゃぞ、京太郎」

京太郎「あ、明日ですか!?」

久「善は急げっていうでしょ?」

京太郎「そりゃそうですけど」



久「大丈夫。フラれたって私達は同じ部活の仲間でしょ?」

まこ「和の奴も気にせんじゃろうし」

優希「何より、私達が慰めてやるじぇ!」

 なんてこった
 まだ知り合って間もない俺に為に、ここまで考えてくれてるなんて

京太郎「みんな……俺、絶対やり遂げます!」

 そうだ
 いつまでもウジウジしてたって仕方ない

 俺は告白するんだ

京太郎「俺は明日、告白します」 

久「(面白くなりそっ! ふふふっ)」

まこ「(フラれて落ち込んだらうちの店で女装バイトさせるかの)」

優希「(フラれろー!!! フラれろー!!!)」

京太郎「お、おーい?」

 大丈夫なのか、本当に
 なんだかすっごく嫌な表情してるように見えるんだけど

京太郎「でも、こうなったらやるっきゃない!」




 

 ~翌日~


 とまぁ、そんな経緯があり
 俺はこうして部室前で一人コソコソしてるわけだ

京太郎「(予定では和がこの後来る筈)」

 部室に和が入った後、俺も入って
 二人きりの状況で告白する

 例えフラれても、悔いのないように告白するんだ

京太郎「さぁ来い、和!」

 カツッ

京太郎「!」

 この足音は和だ
 隠れて様子を見よう

和「少し遅くなってしまいました」

 和だ
 ピンクの長髪と、たわわな胸を揺らしながら小走りでこっちに向かってくる

 なんと眼福な光景であることか

京太郎「ありがたやありがたや」


和「あれ、まだ誰も来ていませんね」

 ドアを開けて入っていったな
 よし、ここで張り紙を見るんだ和!

和「張り紙? 今日はみんな来れないので、掃除をお願いします……部長の字ですね」

 ドアの向こうで和がブツブツ言ってる
 どうやら張り紙を見つけてくれたらしい

和「今日は一人ですか。ふふっ、久しぶりに息抜きを」

 息抜き?
 なんか言ってるけど、うまく聞き取れないな

和「こうして羽を伸ばすのはやっぱり気持ちが……」

京太郎「(ええい、こそこそ聞き耳立てても仕方ない!)」

 突入だ!
 そして和に告白する!

京太郎「頼む、神様!」

 俺に勇気をくれ!




 バタンッ


京太郎「和!! 実は俺は――!」

和「ふぅー、やっぱり羽根を出すと気持ちが……」

 パタパタパタパタ

京太郎「え」

和「え?」パタパタパタ

 は、羽根?
 和の背中から、なんかでっけぇ羽根が生えてる?

和「す、須賀君っ!?」キラッ

 和の口が驚きで開かれ
 その中で輝く、二つの白い刃が俺の目に止まる

京太郎「牙ァ!?」

 あれって八重歯なのか?
 いや、それにしては異様に長いというか鋭いっていうか

 というかこれって完全に……

京太郎「きゅ、吸血鬼?」

和「あっ」サッ

 俺の言葉に慌てて口を塞ぐ和
 だけどそれ、もう手遅れ過ぎるんだけど

京太郎「あ、その。えーっと?」

 困惑する俺に対し、一方の和はキッと俺を睨みつけ
 その瞳には僅かに涙を浮かべている

和「み、見ましたね?」

京太郎「いや、俺は何も見てない! 本当に!」

 咄嗟に嘘をついた
 だけど、俺が嘘をつけないのは自分でもよくわかっている
 
和「嘘です! 見たんでしょう!?」

京太郎「うぅっ、見てないっての!」

 ダメだ、ごまかせない
 そもそも、正直に見たって言えば済む話なのに

 なぜなんだ

 どうしても素直に認めたくなかった





和「気づかれてしまったのなら、仕方ありません」

 ほんの少しの沈黙の後
 先に口を開いたのは和だった

和「実は私は」

 俺をまっすぐに見据えて
 その震える声で、確かに和は言った

和「吸血鬼――なんです」

 自らを、吸血鬼だと

京太郎「吸血鬼……」

和「こうなった以上、折角ですし事情をお話しますね」

 そう言って和は椅子に腰掛ける
 その姿はやはり、どこか悲しげに見えた

 一体、何が和をそこまで追い詰めているのだろうか

和「……実は私の父は、アーカー……いえ、ネロカオ……まぁ、とにかく吸血鬼でして」

京太郎「なんか強そうだね、和の父さん」

和「実際強いですよ。やっぱり次元が違うといいますか、人間ではありませんので」

京太郎「そ、そっか」

 触れないようにしておこう
 マジで犬の餌になりそうなきがする

和「母は普通の人間で、私はハーフになるんですが」

京太郎「へぇ、ハーフなんだ(なんか可愛い)」

和「父は頑固で偏屈で、私に吸血鬼としての生き方を教えようと必死だったんです」

京太郎「弁護士なのに?」

和「それは世を忍ぶ仮の姿だとか」

京太郎「吸血鬼も割と大変なんだね」

 変なタキシードみたいなの着て、棺桶に入ってるだけじゃないんだな

和「子供の頃からそればかりの父に反発して、私は今まで好きにやってきました」

京太郎「それが、麻雀なのか?」

和「はい。ですが、盤上の遊戯など血湧き肉躍らないと父は反対してまして」

京太郎「そりゃまぁ麻雀だし」









和「中学までは多めに見てくれていたんですが、私が大会で優勝してからが大変で」

京太郎「え? どういうこと?」

和「雑誌の取材とかが家に押しかけるようになりまして」

京太郎「それは大変だな」
 
 正体とかバレたら大変だろうし
 吸血鬼が存在するなんて世間にしれたら大問題だ

和「カメラのフラッシュが気に入らなかった父が、カメラマンを犬の餌に」

京太郎「たったそれだけで!?」

和「それからとにかく麻雀をやめさせたいらしく、高校進学にある条件を出してきたんです」

京太郎「条件?」

和「次の大会で優勝しなければ、東京へ引っ越すと」

京太郎「え? 引越し?」

和「はい。元々父の仕事の関係もありまして、私は反対しているんですけど」

京太郎「そ、そっか。引越し、ね」

和「それともう一つが」

京太郎「もう一つ?」

和「もし、誰か一人にでも私の正体を知られてしまったら」

京太郎「知られてしまったら?」

和「その時点で、高校をやめて吸血鬼として生きること」

京太郎「なっ!?」

 それって、もしかしなくても今のこの状況
 
京太郎「もしかして、俺のせいで……」

和「はい。私は約束を破ってしまったので、もうこの学校にはいられません」

京太郎「そんな! 待てよ! いきなりすぎんだろ!」

 こっちは既に頭がパンク状態なんだ
 好きな女が実は吸血鬼?
 大会で優勝しなきゃ引越し?
 
 正体がバレたら吸血鬼として生きる?

 そんなのめちゃくちゃだ!

京太郎「まさか本気じゃないよな?」

和「私だって本当は嫌です。でも、バレてしまった以上はもう」

 なんでだよ
 なんでそんな悲しそうな顔するんだ?

京太郎「嫌なら嫌ってハッキリ言えよ! どうして諦めるんだ!」

和「だって! 諦める以外にないじゃないですか! 私はもう正体がバレているんです!」

京太郎「あっ」

 そうだ
 和が吸血鬼だって、俺はもう知っている

 知ってしまったんだ


和「だから私はもう」

 やめてくれ和
 そんな悲しそうな顔、するなよ

 俺が好きな和はいつもにこやかで
 凛とすましてるけど、実はドジな部分もあって

 厳しい時ばかりでも、ちゃんと優しさを見せてくれる

 そんなお前が俺は――

 好きなんだからさ

京太郎「待てよ、和」

和「え?」

京太郎「まだ方法がある」

和「方法? いきなりなにを」

京太郎「俺が、俺が黙っていればいい!!」

和「須賀君が?」

京太郎「そうだよ! 和が吸血鬼なのを知ってるのは俺だけだ!」

 だったら隠せばいい
 俺が和を吸血鬼だと知ったことを、誰にも知られなければいい

京太郎「俺が黙ってさえいれば、和はまだまだこの学校にいられる!」

和「で、でも!」

京太郎「確かに俺はエロザルだの、なんだって言われてるけど! でも!」

 絶対に
 何があっても

京太郎「俺、この秘密だけは守りぬくから!! 和の為に!!」

和「須賀君……」

京太郎「だから、和!」

 俺は原村和が好きだ

京太郎「俺と、俺達と一緒に!!」

 顔も
 声も
 体も
 性格も
 仕草も
 匂いも

京太郎「全国大会で優勝しよう!」

 例え和が吸血鬼であっても、それは変わらない

和「……わ、私」

京太郎「頼む! 和! 俺、まだ和と離れたくないんだ!!」

和「私は、私はまだ……」

京太郎「和!」

和「私はまだ、この学校にいたい……です」

京太郎「和、お前……」



和「私、アナタを信じても――いいですか?」




京太郎「ああ。約束だ」

 俺は右手の小指を差し出す
 糸を汲んでくれたのか、和もそれに合わせて小指を突き出す

京太郎「俺は必ず秘密を守る。そして、お前と一緒に全国大会で優勝してみせる」

和「はい。その言葉を信じます」

 ゆーびきりーげんまーん
 うそつーいたらはーりせんぼーんのーます


京太郎・和「指切った!」


 一人の吸血鬼の少女と、どこにでもいる平凡な一人の少年

 同じ年に生まれ
 同じ学校に進学し
 同じ部活に入ったことだけが共通点の二人

 種族の垣根を超えて、交わされた約束は果たして――
 このまま潰えることなく有り続けるのか


 それとも、あるいは


 これにて第一話終
 
 必然的に決まっているポジションも数人いますが
 まだまだ未定が多いです 

・誰が実は○○だとか
・紅本先生はすこやんだとか

 よろしければ次回の更新までに意見をもらえれば幸いです


このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年09月08日 (月) 09:33:17   ID: aImwaMzA

いいね、俺の好きなマンガで絡めてくるとは……

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