ドラゴン「貴様は何故戦うのか?」(45)
即興で。
それは唐突にやってくては、天災の如くに国を破壊し、血を求める。
かつての姿など欠片もない、荒れ果てた国。
絶望を見た少年の瞳に暗い影が宿る
数年後ーー
「また、この時がきましたね。」
「・・・生贄が用意できるだけましだ、さぁ生贄を捧げよ」
大きな馬車の中に人が乗っていく。ドラゴンの生贄になるために。
席に着くと隣の男が話しかけてきた。
隣の男「レッドドラゴンがいる場所を知っているかい?」
男「いや、知らないな」
隣の男「つまらない冗談だな。せめて最後の旅行くらい暖かなところで楽しみたいものだった。まさか、あの北国だとはね」
男「北国に旅行ね。そっちだってつまらないじゃないか」
隣の男「気分の問題さ」
そういった隣の男の肩は震えている。
数週間、数ヶ月を馬車に揺られ、北国へと着いた。
長い旅路にも思えたし、短くもあった。
隣の男「いよいよか」
男「腰の痛む馬車なんかとはお別れさ」
隣の男「乗っていた時は文句しかでなかったもんだが、いざなくなると侘しいものだね」
男「心にもない事を、今も不平不満しかないだろうが。ここからなんて武器を運べないようにと歩きだぞ」
男「今更抵抗もなにもなかろうに、ドラゴン様は何を考えていらっしゃるのか」
隣の男「まぁそう腐らんな、互いの家族のために、な」
生贄には家庭を持つものが優先的に選ばれる。
選ばれた五万人が行った先で反逆を起こさないように。
反逆をすれば何が起こるか想像に難くない、まず持って国は助からない。
そして、国に残した家族も助からない。
国は生贄を志願した者には報酬を与える。家族の安泰、もとい金を。
飴と鞭で国民を追い詰め、生贄を捧げる。ままならない事
隣の男「おいおい、お前さんは何を持っているわけ?」
男「カエルだけど」ゲコゲコ
隣の男「なにに使うって言うんだい?そんな気味の悪い色をしたものを食べるって訳じゃないだろうね?」
男「知らないのか?カエルは鶏肉っぽいらしいぞ」
隣の男「やめとけって、そいつは毒だってきっと」
男「お前の言う通り毒を持っている。一滴であの世逝きさ」
隣の男「そんなもん、どうするつもりだ?」
男「だから、食べr」
隣の男「毒で死ぬのも、食われて死ぬのも一緒だろう?な、やめとこうぜ」
男「落ち着け、死ぬつもりは無いから。ちゃんと腑分けすれば大丈夫さ」
隣の男「俺は食わないからな」
男「ほいほい」
そうして早々と時間は過ぎ去り、一切の滞りなく、一行はドラゴンへ近づいていくのだった。
ブルース・リーじゃなかった…
生贄の前夜ーー
男「そろそろか」
男は寝ている護衛兵の剣と弓を奪うと、サッと護衛兵の首を切り落とした。
男はそれに留まらず、次から次へと首をはねていく。
瞬く間に当たり一面が血の海へと変わっていく。
生暖かい血に吹きかけられたのか目を覚ました者もいるが、状況を把握する前に男の一振りで殺されていく。
さすがに時間の経過とともに異変に気づく者達が出始め、あたりは騒然としてきた。
しかし、それに構うことなく男は切り続ける。
女「ギャーーーーーーー」
金切り声を皮切りに人々は目覚め始めるが、時すでに遅し。唯一武器を持った護衛兵はもういない。
達人のような剣捌きで流れるように人を切り捨てる。
しかし、ある男を前に立ち止まる
隣の男「どうして、どうしてこんな事を」
男「・・・」
隣の男「おい、何か言ってくれよ。お前さんにも家族がいるんだろう?なんで、なんでなんだ?」
男「ここで死んだら、死にきれないか?」
隣の男「もちろんだ、生贄になるから、家族を守r」
バサッ
男「なら、いいんだ。この剣の錆びとなれ」
この後も男は生贄を切り続けた・・・
>>6
申し訳ない。竜にすべきだったか
生贄の日ーー
ドラゴン「くくく、見ていたぞ。人間」
男「・・・」
ドラゴン「笑止、その禍々しき剣で我を切らんとするか」
ドラゴン「しかしどんな聖剣、魔剣であろうと我の前に近づく事さえ叶わぬ。この息吹によってな」
ドラゴンが口を開けたとき、男は素早く弓を番え口内に矢を放つ。
そして、男に灼熱の息吹が襲い掛かる。
しかし、息吹は男に届かずにすぼんでいく。
ドラゴン「貴様ぁあ!・・・毒か、矢に毒を塗っていたのか」
男の腰には矢筒以外にも袋がある。その袋には腑分けされたヤドクカエルの毒袋が詰まっていた。
ドラゴン「小癪な事をしてくる。だが甘い、人間の致死量と我では比べ物にならん」
男「だが、自慢の息吹はこれまでだ」
男「家族を守るための生贄になる事さえ許されず、おれに殺され何千、何万の怨念が募り募ったために魔剣となった」
男「この魔剣グラムとオマエの巨躯で、勝負だ」
ドラゴン「これほどの屈辱、忘れない。ズタズタに引き裂いてくれる!」
ドラゴンの攻撃をかわし、内側に潜り腕に斬りかかる。
今まで傷一つなかった鱗をたやすく両断し、肉を絶つ。そこから吹き付ける血で塗れた剣は怪しく光る。
男は止まることなく足、腹を切り裂き、男を仕留めんとする尾までをも真っ二つにする。
しかし、ドラゴンの息吹が男に吹きかかる。
男は全身を焼かれ、のたうち回る。
ドラゴン「こんな毒、一瞬しか効かぬ。ガハァ・・・ここらで手打ちにしないか」
ドラゴン「このまま戦ったとしても、両者まともに動けずに泥沼になるだけだ」
ドラゴンはいたる所から血を流し、男は全身が黒焦げている。
ドラゴン「また後日に決着をつけようじゃないか」
そう、後日に我が飛べるようになれば国ごとオマエを滅ぼしてくれる。空では剣も弓も届くまい。
今全身に激痛が走り、男はまともに考える余裕は無い。さすれば逃げる、いつもの人間のように。
男「・・・」
男は、立ち上がる。
男の目はまっすぐにドラゴンを見据えていた。
ドラゴン「聞いていたのか?オマエに逃げるチャンスを与えたのだぞ」
ドラゴン「・・・貴様は何故戦うのか?何故逃げるという選択肢を選ばない!」
男はドラゴンに駆け寄ると一閃、首を断ち切った。
男「・・・この怨念のために」
国のため、家族のため、自身のため、そのためにドラゴンを倒すつもりだった。
しかし、おれは自我をなくし、生贄の怨念に喰われていた。
この後、皮膚のただれた男が各地の竜を倒し、ドラゴンスレイヤーとして悪名を馳せるのだった。
完
需要、あったのだろうか?
ハードボイルドを目指してたら、ダークヒーローなった。
じゅ、需要があれば続編書いてあげなくもないんだからね!
>>27
起承転結の転って最も盛り上がる部分じゃん
普通そこで興奮するもんじゃないの?
それとも引き合いに出してるのが4コマ漫画だから関係ないとでも言いたいの?
>>29
普通は盛り上がるっていうか、そこで盛り上げなきゃいけないけど、
この作品はその盛り上がりが足りないって言う事だと
第二章「ドラゴンスレイヤー」
男「ハァ・・ハァ・・・・」
息も絶え絶えに男は北国を目指して歩く。
しかし、雪が降る中で男は意識を失ってしまう。
?「こいつは・・・もうダメなんじゃないか?
・・・けれど、放って置く訳にはいかないか」
とある小屋にてーー
男「っ・・・ここは?」
?「まさか本当に起きるとはね、ここはおれの小屋だ。あんたが雪に埋もれていたから引き抜いてやったのさ。
あんた、後少しで死ぬところだったんだぜ?」
男「そうなのか・・・ありがとう、助かった」
狩人「おれは狩人。ここら辺で狩猟生活をしている。あんたは?」
男「自分は・・・男、だ。今は手持ちがないが、礼は必ず返そう。剣はどこに?」
狩人「これだろう?礼なんていらない、と言いたい所だが中々厳しくてね。貰えるなら貰っておきたい」
男「正直なやつだな。北国に行きたいのだが・・・ぐっ」
動こうとした男の顔が歪む。
狩人「しばらくは動ける体じゃないぞ。三日三晩寝込んでたからな、体力的にもキツイと思うぞ」
男「みたいだな、けど時間がないんだ。世話になったな」
男はおぼつかない足取りで狩人の小屋をでる。
改めて・・・
第二章「ドラゴンスレイヤー」
村長「・・・というわけなんだ。北国の英雄よ、頼まれてくれんかの?」
男がドラゴンを倒したという噂は、あっという間に広まった。
訪れる村の先々で魔物絡みの依頼を受ける事も多かったが、
男「・・・英雄などではない。自分には時間がないんだ、他を当たってくれ」
村長「我々を見捨てるのですか、英雄が?」
男はスラリと剣を抜くと、村長の喉元に突きつける。
男「頼む、そこを退いてくれ。急いでいるんだ」
男の体にはびっしりと脂汗が浮いており、その表情は強張っている。
男「・・・自分は何をしているのか」
魔剣を振るって以来というものの、
周期的に殺戮衝動に駆られるのだ。怨念よるものだろう妬み、羨望、嫉妬、自棄が男の意識を乗っ取ろうとするのだ。
危うく村長を殺しそうになった自分がいる。自分が自分でなくなる瞬間がある事が、怖い。
男はせかされるように西国へと進んでいた。
次のドラゴンを倒すために。誰に言われた訳でもない、自分の使命だと、自分の意思なんだと自分に言い聞かせながら。
その道中、ドラゴンスレイヤーに興味があるという女に出くわす。
女「村からアナタを追いかけて来たんです。私も西国に用がありまして・・・
武術は心得ていますが一人では心細くて、ご一緒してもいいかしら?」
男「・・・オレはお前を殺すかもしれない、それでもいいのなら」
女「返り討ちにしても怒らないでね?」
男「・・・好きにしろ」
洞窟ーー
男「これが村長の言ってたオークの巣・・・」
道中、落とし穴にはまり、そのまま巣に落ちたのだった。
女「まぁいいじゃないですか。どっちみち倒す予定だったのでしょう?探す手間が省けましたよ」
男「いや、相手をするつもりはなかったのだが・・・」
女「へっ?また、なんで」
男「・・・時間がないんだ」
ふとした気配に身を翻すと、そこには魔物の姿が。
かなりの数に囲まれている。「いつのまに・・・」どちらともなく呟きがもれる。
女「じ、実践はは、初めて、です」
男「・・・」
女「男さん!!もう、やめて、もう充分だよ・・・」
女の叫び声で我に帰る。我を忘れて死んだオークをなぶり続けていた。
周りには幾つものオークの亡骸が転がっていた。すべて、自分でしたことだった。
女「それが、魔剣グラム・・・」
男の戦いぶりは水のようだった。
流れるように敵と敵との間に入り込み、相手の武器、防具ごと体を真っ二つにしていく。
すべてを剣が両断できるという前提での動きは、一切の無駄を生まない太刀筋。
これが魔剣グラムの圧倒的な力・・・
もう無理なんで・・・
西国は男を利用しようとしたので、男を監禁して拷問
北国から一緒だった女が男を救出。
男「どうしてオレを・・・」女「惚れた理由を聞くのって野暮じゃない?」
そのまま西国のドラゴンを見事なコンビネーションで女と討伐
女は魔剣の製造方法などを聞くが、男は一切の口を割らず。
そして南国へ向かう
南国では騎士と出会う事に
騎士は真面目で正義感強しおすし
魔剣グラムという力を持っていながら人助けもせずに、むしろ町を壊滅させたという噂さえある男に怒りを覚えていた。
もし自分が魔剣を手にしていたら・・・という想像をしている自分が嫌だった。
男を実際目の前にすると貧弱そうな出立ちで自分の方が強いという印象を受けた。
手合わせを申し込むとあっさりと断られる。
そんな男に対して、逃げているだけではないのか?やはり・・・という妄想が高まる。
騎士は強引に手合わせをさせる事に。
国王と手を組んでもいいし、騎士団で囲んでもいいし、色々手段はあるでしょう
同じ刃物を持って戦うとそこそこ健闘するものの、騎士が勝つ事に。
騎士は妄想を確信へと変えて魔剣の奪取を決意する。
そこに女が現れて、魔剣を騎士に渡す
騎士「なぜ・・・これを?」女「男は英雄なんかじゃない。あなたが成るべきなの」
男はいつも言う。鞘から剣を抜くなと。
男の傍にいる女から背中を押され、興奮しきった表情で剣を抜く
剣を抜いたとたん騎士の精神は崩壊し、怨念に乗っ取られる。
うわごとの様に繰り返す
「憎い、何故、憎い・・・男をコロス・・・ボクハ英雄ニナル」
魔剣を奪われて情報収集していた男に、不穏な噂が耳に入る。
東国のある剣士が魔剣を手にしたらしい。すでに東国のドラゴンは討たれているという。
生贄五万人すべてあの晩で切ることは不可能だった。あの雪の中、準備なしで生贄が生き残る事はないと考えていたが、
どうやら東国に逃げ切った生き残りもいたらしい。
魔剣がこの世に二振り。良い話じゃなかった。
そして騎士の目的、否、怨念の目的・・・男と相見えることに
男との一騎打ち、魔剣グラムを持った騎士が勝てないはずが無かった。
だが、勝敗は一瞬だった。
男が急所を狙った一閃を放つ。騎士は受ける。
当然の如く、魔剣グラムに防がれた剣は男の目の前で真っ二つになるが、男は止まる事無く懐に潜り込む。
残った刀身で騎士の首を貫く。
受けて、鍔迫り合いの後、返し技で男を切るつもりだった。
手合わせで男はこの動作に弱い事はわかっていた。なぜ弱いのかを考えもしなかった。
騎士を倒した男の後ろに、女が現れる。
女は男の首筋に刃物を当てると一言
女「もう時間切れよ・・・」
正面から戦って男に勝てるものはいないが、不意打ちとなれば手も足も出ない。普通の人間だった。
女は北国の手先だと言う。
任務は魔剣グラムの情報収集。男を北国の戦力として加える事。どうしても加えれなかった場合、殺害後魔剣グラムの確保。
男を誘惑し製造方法を聞きだそうとし、実験のため騎士に魔剣を引き抜かせた。
愛し合ったのは北国の戦力にするため。
だが、状況は変わった。もう一つの魔剣の存在によって。
製造方法は明るみには出ていないが、北国はその情報を手に入れた。
騎士の結果から魔剣は最初の所有者しか使えず、製造方法もわかった。この時点で魔剣の情報収集の任務は終わり。
また、魔剣に意思を取られている男を北国が利用する事はできない。
つまり、殺害後に魔剣グラムの確保が女の任務となったという訳らしい。
女から死角で女に攻撃できる場所・・・
男は踵で女の足の甲を思いっきり踏みつける。
隙ができた女の腕を掴み強引に背負い投げ。そのまま腕を固めてナイフを落とす。
男は動けない彼女に止めを刺す。
南国のドラゴンの討伐に向かう途中、噂の剣士に出会う。
剣士「ここに来ると思っていたよ」
目的が同じだったので協力してドラゴンを倒すことになる。
剣士とドラゴンを倒した後、自分の持っている剣について剣士は語り始めた。
剣士が持っている剣は魔剣バルムンクと呼ばれているらしい。
東国によって正義を洗脳された者が、東国によって愛国心を持つように洗脳された五万人を切り続ける。
そうして第二のドラゴンスレイヤーは生まれたという。
時代は変わる。正義も変わる。
東国、南国、中央国と移動しているうちに何年がたっただろう。
見慣れた馬車の中で、自分の正義は昔の正義だと、剣士は語る。
だけど、思うように動けないんだ。
事あるごとに剣士はしきりに言葉を繰り返していた。
剣士に国から手紙が届いたらしい。
剣士「君を殺せだってさ」
魔剣を東国唯一の物にするために。
自分でもわからないんだ。五万人を殺して得た正義の剣が君を殺す意味が、君を殺す正義の意味がわからないんだ。
僕の洗脳された頭に聞いても教えてくれない。正義の為なんだとしか。
どうすればいいだろうね?
剣士は涙を流しながら対峙する。
魔剣と魔剣の斬りあい。自分の剣が通らないというだけで、みっともないぐらいに両者は戦えなかった。
ただ、騎士との経験。その差だったのか男が生き残る。
そして、中央国のドラゴンと相見えた時、
ドラゴン「貴様は何故戦うのか?」
完
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