男「ダクソ学園高等部?」 (567)


男「……ヤバい」


男「あれ、どうしてこうなったんだろう……。今日は、高校の入学式だったはずなのに……」


ザワザワ


男「い、いや、ここも高校なのかな……? そんなことが書いてあった気もするけど、正直それどころじゃない……」


男「マズいなぁ……。これは大変マズいなぁ……」


男「……ってか……――」











男「なんで、みんな鎧来てるんだよ……」






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ガチャガチャ


男「鎧もそうだけど、みんな剣とかも普通に持ち歩いてるし……。なんだよ、アレって銃刀法違反とかに引っかかるんじゃないのかよ……?」ブツブツ


男「いや、鎧着てるのはまだ人だってわかるからいいさ。なんで、下半身蜘蛛の人とかいるの? いや、あれは人なの?」ブツブツ


男「あのカラスと人をミックスさせたような奴はなんなの? 剥製? ……そっか、剥製か。趣味悪すぎないか――あぁ、ダメだ動いたよ。アレ生きてるよ……」ブツブツ


男「これは夢なの……? 夢だよね……。こんなの現実じゃありえないよね……」ブツブツ


ガチャガチャ

ボゥッ


男「あれ今あの人、手から火出したけど……。マジック? マジックやってるの? なんで? どういう仕組みなの?」ブツブツ


男「夢……これは夢……。夢……だと思いたいけど――」


ガチャガチャ

カキンッキンッ


男「あぁあああ……どうしよう……。ヘタに動いたら殺されそうで怖い……」


男「なんか、流されるままに席についちゃったけど、マズいんじゃないのか……。この席の人きたら、俺刺されるんじゃないのか……」ブツブツ


男「い、いや、でも……一応案内されたんだし、俺は悪くないよな。いや、悪いはずがない。……てか、悪くてもいいから、一刻も早く家に帰してくれ……」ブツブツ


ドサッ


?「――よぉっ!」


男「――――っ!!?」ビクゥッ‼


?「ん? お前見たことない顔だな……。――あぁ、高校から入ってきたやつか?」


男「あ……、は、はい…………そう、です……」ビクビク


?「あー、そうなのか……。まぁ、いいや」


アオニート「俺はアオニートっていうんだ。よろしくな」


男「あ、あおにーと……??」


男(どういうことなんだ……? し、しかし、まともそうな人でよかった……)


アオニート「あぁ。……お前はなんて言うんだ?」


男「あっ……お、男っていいます……」


アオニート「はははっ! そんなかしこまらなくてもいいって! ――男な、わかった。わからないことだらけで不安だろうから、俺がいろいろ教えてやるよ」


男「あ、あり……がとう……」オドオド


アオニート「――それにしても変な装備してるんだな。武器も持ってないって……。持たざる者ってやつか? 高校デビューのつもりなら、やめた方がいいぞ?」


男「あ、あはは…………??」


アオニート「しっかし、お前みたいなやつ珍しいな。だいたい中学から上がってくるってやつのはずなんだけど……」


男「あ、あぁ、そうなんだ……。お、俺も、なんでここに居るのか…………」ビクビク


アオニート「まぁ、でもそんなことは些細なことだっ! 今日から、同じ釜の飯を食う仲になるわけだし、仲良くしようぜ」


男「う、うん……こちら……こそ………………へっ?」パチクリ


アオニート「あぁ? どうした?」


男「い、いやっ……なんでも……ない……です……」


男(いま同じ釜の飯を食う仲って言った……? あれ、出れないの? こ、これって本格的にマズいんじゃ……――)


アオニート「――おっ、始まるみたいだな」


男「え、えっ?」




「あー、皆さん。自分の席にお戻りください」


「――これより、開会式を始めます。まず初めに、学園長からのお言葉です」


グウィン「ゴホンっ! えー、一年生の皆さん初めまして。学園長のグウィンだ……――」



男「ぐうぃん……??」


アオニート「よそから来ても、うちの学園長は知ってるだろ? いつ見てもすげぇ髭だよな」


男(なんだろう。なんか、アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブル○ア先生みたい……)ボー



グウィン「こんな良き日に、皆さんと出会えたことを、とてもうれしく思う。えぇー、これからの学校生活も――」


男(…………あぁ、目を瞑れば、別に何でもないのになぁ……)


グウィン「――自分の夢に向かって、このワシの雷の槍のようにまっすぐ進んでもらいたいと思います……――」



グウィン「――間違っても! この髭のようにちぢれないでもらいたい!」




シーン…




グウィン「……ふっ……ふふ……けっさく……ふふふふ…………っ!」クスクス



シーン…




「――……えぇー、学園長のお言葉でした。学園長、今日までご苦労様でした」


グウィン「ファッ!?」

間違えた。

「開会式」→「入学式」

ドンマイ、俺。


「えー続きまして、生徒会長から歓迎の言葉です」


「みなさん、おはようございます。わたくし、副会長のサリヴァーンと申します」


サリヴァーン「えー、本日。会長のエルドリッチ君が体調不良でお休みのため、代わりにわたくしが歓迎の言葉を読ませていただきます」


男「……なんか、怖い人だな……」


アオニート「あぁ、その感じは間違ってないかもな。実際、生徒会のエルドリッチ先輩とサリヴァーン先輩、書記のマクダネル先輩は、何かと黒いうわさがあるからなぁ……」


アオニート「――あっ、このことはあんまり口にしないほうがいいぜ? どこでだれに聞かれてるかわからないからな……」


男「う、うん……気を付けるよ……」


サリヴァーン「――以上をもって、歓迎の言葉とします」


「えー、サリヴァーンさん、ありがとうございました。……それでは続きまして――」



――――――


――――


――


男「…………終わった……」


男「……なんていうか、生きてる気がしねぇ……」


アオニート「おーい、男。早く教室行こうぜ」


男「えっ、あ、あぁ、うん……」オズオズ


男(とりあえず、今はおとなしくしておこう……。残念ながら夢じゃないみたいだし……、隙をみて帰らないと……――。しかし、ここどこなんだろう。なんかものすごい景色が外に広がってる気がするけど、気のせいだよね。俺、帰れる――)



ドンッ‼


男「――うわっ!!」ドサッ


「――きゃっ」


男「ごっ、ごめんなさいっ! 俺、ぼーっとしてて――っ!」


「――いえ、こちらこそごめんなさい。お怪我はありませんか……?」ニッコリ


男「――っ。……い、いえ、全然……大丈夫です……」


男(すごい……綺麗で大きな人だな……身長2メートルぐらいあるんじゃないか……? ……別のとこも、すごく……大きい……)


「それならよかったです。……新入生の人ですか? ――あっ、失礼しました。私の名はグヴィネヴィアと言います。……あなたは?」ニッコリ


男「あっ、えっと……お、男……と、いいます……」オドオド


グヴィネヴィア「ふふっ、男くんですね。覚えておきます。――あっ、いけない用事があるんでした……。それでは、男くん……また会えるといいですね?」ニッコリ


男「は…………はい……こちらこそ…………」


男「………………」ボー


アオニート「――おいッ! 男っ!」


男「――っ! な、なにっ? どうしたの!?」


アオニート「お、お前……グヴィネヴィア先輩と知り合いなのかッ!!?」ガシッ


男「え、えっ!?? い、いやぁ違うよ! 今ぼーっとしてたら、ぶつかっちゃって……」


アオニート「マジかよっ!? いいなぁ、羨ましいぜ……」


男「えっと……さっきの人って、そんな有名な人なの?」


アオニート「はぁ!? 当たり前だろ?? いくら他所から来たって言っても、グヴィネヴィア先輩ぐらいは知ってろよっ!」


男「あ、あぁ……うん、ごめん……」


アオニート「あの美貌……。あの物腰の柔らかさ……。そしておっぱいっ! いやぁ、たまんねぇよ……」


男「……たしかに……」ボソッ


アオニート「――まぁ、だから。校内外問わず、ファンクラブがあるらしいぜ」


男「へ、へぇ……すごいね……」


アオニート「校外のことは知らないが……。――あぁ、噂をすれば……。おい、アレ見てみろよ」


男「え? あ、……あれは……?」


アオニート「グヴィネヴィアファンクラブの、ナンバー2と3……。オーンスタイン先輩とスモウ先輩だ……」


男「あ、あれが…………。す、すごい迫力だね……。――……って、あれ? ね、ねぇ、こっちに向かってきてない??」


アオニート「…………俺、先に教室で待ってるからよ。じゃなっ!」ダッシュ


男「えっ? えっ?? ちょ、ちょっと――」


ガシッ


男「――っ!!」ビクゥッ‼


オーンスタイン「おう新入生。ちょっと話聞いてもいいか……?」ギロッ


男「は、はいぃ……」ビクビク


スモウ「お前、今、グヴィネヴィア様に、ぶつかった、か?」


男「あ、いや……あの……不可抗力と言いますか……。ちょ、ちょっと考え事をしてまして……」ガクガク


オーンスタイン「へぇ、考え事してたら、グヴィネヴィア様にぶつかっても許されるのか? そうじゃないよなぁ?」


男「あっ、いや……ボク、あの、全然知らなくて……」


スモウ「新入生、だからって、許せる、ことと、許せないことが、ある」


男「そ、そんな……っ!」


オーンスタイン「――さて、ここじゃ場所も悪いし……移動するか」グイッ


男「えっ、あの、どこに行くんですか……?」


スモウ「黙って、ついて、こい」ドンッ


男「うわぁっ!」


男「――……あぁ、もうダメだ……。きっとあの槍で刺されて、でっかいハンマーでつぶされちゃうんだ……。あぁ、どうしてこんなことに……。俺が悪いのかな……俺、何かしたっけかな……。あれかな……、燃えるゴミの日にペットボトル出しちゃったからかな……あはは……ついてねぇ……――」ブツブツ


オーンスタイン「ふんっ、情けない野郎だ。……まぁ、見せしめになってくれや。物のついでだ、この学校のルールを体に教え込んでやる」


男「…………………………」ブツブツ


スモウ「なにか、言い残すこと、あるか」


男「…………あぁ……。――そうだ、お二人はどっちがナンバー2で、どっちがナンバー3なんですか? ……なーんて……」アハハ…




オーンスタイン「あぁ? 決まってんだろ。俺が会員ナンバー2だっ!」ドヤッ


スモウ「違う、俺、2番」



男「……えっ?」



オーンスタイン「あぁっ?」ギロッ


スモウ「なんだよ」ドンッ


オーンスタイン「おうおうおうおう、クソデブが調子乗ってんじゃねぇぞ? てめぇがナンバー2なわけがねぇだろ?」


スモウ「黙れ、弱っちい、攻撃しか、できない、くせに」


オーンスタイン「うるせぇよ。俺はおめぇみてぇな脳筋野郎とは違うんだよ」


スモウ「雑魚」


オーンスタイン「――っ! よーし分かったいい度胸だ。……今、ここでどっちがナンバー2だか決めようじゃねぇかっ!」スッ


スモウ「望む、ところ」ドンッ




男「………………」


男(――えっ、戦うのこの二人?? 大丈夫だよね。巻き添え食らって死んだりしないよね。ってか、この人たちにとっての命って、軽すぎやしないか……。……とりあえず、逃げたいけど……いや、でも、刺されるかもしれないし……。あぁ、どうしよう……――)




「――おいっ! そこで何をやっているっ!!」


オーンスタイン「……チッ。邪魔が入ったな……」


スモウ「これは、厄介」

「オーンスタインとスモウ……。またお前たち二人かっ! 今日という今日は……――」


オーンスタイン「――しょうがねぇ、引くぞ」


スモウ「勝負、お預け」


オーンスタイン「――おいっ、新入生っ!!」


男「は、はいぃっ!」ビクッ‼


オーンスタイン「今回は見逃してやるが……次はねぇからな。覚悟しておけよ」


男「あ、ありがとうございます……」


ダッダッダ…


「――待てっ! ……チッ、逃げ足の速い……」


「……ん? あぁ、新入生か……。今回は災難だったな……」


男「あ、あはは…………」


「……だけど、勘違いしないでくれ。あいつらが少し特殊なだけで、いい学校なんだ」ニコッ


男「あ、いや……。大丈夫です……」


男(女の人だ……。少し、男勝りな感じだけど……、きれいな人だな……)


グウィンドリン「私は、二年風紀委員のグウィンドリンだ。……君の名前は?」


男「あ、男って、言います……」


グウィンドリン「男……? ――あぁ、そういえばさっき姉さんが言ってたのは君か」


男「お、お姉さん……ですか??」


グウィンドリン「ん、知らないのか? ははっ、逆に珍しいな。……三年生のグヴィネヴィアは私の姉なんだ。さっき会ったんだろう?」


男「――あっ! そ、そうだったんですか……!」


グウィンドリン「あぁ……。なんだろうな、君とは長い付き合いになりそうだ」





グウィンドリン「――それにしても、何も武器を持っていないなんて……。君は相当腕に自信があるんだなっ!」


男「へっ!? い、いやっ、そ、そういうわけでは――」


グウィンドリン「まぁまぁ……。どうだ? よかったら君も風紀委員に入らないか? 歓迎するぞっ」


男「あっ、えっと……。か、考えておきます……」


グウィンドリン「そうだな。――さて、そろそろ教室に行かないと遅れてしまうぞ」


男「えっ? あぁっ! そ、それじゃ、ぐうぃんどりんさん。ありがとうございましたっ!」


グウィンドリン「あぁ、君も気を付けるんだぞ」

すまんな。
ブラッドボーンはやったことないんだ。
ダークソウル3が終わったらやろうかなとは思ってるけど……。

別に、誰か書いてもいいんだよ。


あと、設定とかいろいろ無視して、自分の都合のいいように書いていきます。
がんばります。


男「――……って、ぐうぃん……なんとかさんと別れたはいいけど……。そもそも俺、どこが自分の教室なのかもわからないんだけど……」


男「うーん…………」ウロウロ


男「……あれっ?」



「………………」ウロウロ



男「……あの、フード被った人……。入学式の時に同じ列に座ってた人だよな……? ――ってことは、あの人に聞けば、自分の教室がわかるかもしれない……!」


男「……よしっ」


男「――……あ、あのー?」


「………………っ!!」ビクッ


男「あ、あっ、ごめんなさい。えっと、たぶん同じクラスの人ですよね……?? 俺……ちょっと、自分の教室がわからなくなっちゃって……」


「………………っ」アセアセ


男「………………?」


「………………!」バタバタ


男「………………??」


男(人見知りな人だったのかな……?? まぁ、鎧着た人たちよりかは、安心するけど……。……しかし、そんなローブみたいので右往左往してたら――)



ガッ‼


「………………っ!」


男「――危ないッ!!」


ガシッ

ドンガラガッシャーン‼


男「……いてて……。――あ、あはは、大丈夫だった?」


「………………」カァアア


「――……ロザリアさーん……、どこいったの―……? ――……えっ?」パチクリ


「――っ!! ちょ、ちょっとっ! あなた、ロザリアさんに何してるんですかっ!!」


男「へっ!? ――い、いいいいいやいや、違うんですっ!! じ、事故なんですっ!」


「い、いくらロザリアさんが、無口で人見知りだからって……! そんな破廉恥なっ! ……ふ、風紀委員の兄様に言いつけますからねっ!」ビシッ


男「ま、待ってくださいっ! ほ、本当に誤解なんですっ!!」


「いいや、待ちませんっ! ほらっ、ロザリアさん……。――……えっ? 違う……勘違い?」



「――本当にすみませんでしたっ!!」


男「い、いやっ、そんな気にしないでくださいっ! 紛らわしかったのは事実ですし……」


ヨルシカ「申し遅れました。私の名はヨルシカと申します。――こちらは従妹のロザリアさん。すごく恥ずかしがり屋さんなんですけど、どうか仲良くしてください……」


ロザリア「………………っ」ペコリッ


男「そうなんだ……。さっきはごめんなさい。怖がらせちゃったよね……」


ロザリア「………………っ!」ブンブンッ


男「あははっ、許してくれるの? ありがとう」ニッコリ


ロザリア「………………」カァアア


男(やっと、話の通じそうな人に会えた……)


ヨルシカ「ふふっ、とても優しい方なんですね。……こんな方を暴漢と間違えてしまうなんて……」


男「ほ、本当に気にしないでください。……すごく仲がいいんですね」


ヨルシカ「まぁ、姉妹みたいなものですから……」ニコッ





ヨルシカ「――しかし、見たことのない不思議な装備ですね……。武器も持ってないなんて……、とても勇敢な方なのですねっ」


男「あ、あはは…………。…………そんな変なのか……これ…………」ボソッ


ヨルシカ「あっ……もうこんな時間ですね……。男さんも同じクラスなのでしょう? 行きましょうか」


男「あ、はい! ついていきます……」



――――――


――――


――



アオニート「――よぉっ! 遅かったな」


男「あ、アオニートくん……っ。さっきは――っ!」


アオニート「――おっと! 誰が風紀委員のキアラン先輩に報告したと思ってるんだ? えぇ??」


男「え……? あ、アオニートくんが呼んでくれたの?」


アオニート「へへっ、まぁな。二人つかまったっていいことないしな」


男「あ……ありがとう……」


アオニート「いいってことよ。ほら、早く席つけよ」


男「う、うん……」


男(――ってか……。俺の席あるのか……? これ、さすがにいよいよ気づかれるんじゃないのか……)


男(そしたらどうなるんだろう。俺、殺されちゃうのかな……。やだなぁ……、死にたくねぇなぁ……)ブツブツ


ザワザワ…


アオニート「――しっかし、担任の先生は誰なんだろうなぁ……。気になるよなっ?」


男「えっ? あ、あぁ、そうだね……」


アオニート「俺的には、奇跡のレア先生だといいなぁ……」


男「き、奇跡……??」


男(奇跡のレア先生ってなんだよ……。奇跡って……、奇跡ってなんだ……?? 宗教的な何かなのか……? ここってそういうところなのか――??)



ザワザワ…



ガララッ‼



「はーい、席ついてーっ!」アハッ



シーン…



男「……どういうことなの……」ポカーン…


男(……なんで頭に麻袋かぶってるの……?)


アオニート「……クソッ……最悪だ……っ!!」ガンッ


男「えっ!?」



アオニート「あいつ……。――いや、アレは家庭科のミルドレット……」


男「か、家庭科の先生なんだ……」


アオニート「あぁ……だから包丁持ってるだろ?」


男「いや、俺の知ってる包丁と違う」


アオニート「ミルドレット先生は、独身をこじらせていてな……。いまや、参加する合コンで自分が気に入った相手が居れば、男はもちろん、女だろうが関係なく食おうと襲い掛かるんだ……」


男「へ、へぇ……」


アオニート「その所業からついたあだ名が『人食いミルドレット』。……気を付けろよ、男……。これは、やばい一年間になりそうだぜ……」


男「………………っ」ゴクッ



ミルドレット「――みんなーっ。はじめましてだよねぇ~っ?」キャハッ


シーン…


ミルドレット「私の名前は~……。――家庭科のミルドレットちゃんでーすっ!」キャピキャピ


シーン…


ミルドレット「今日から一年間、このクラスの担任を受け持つことになったから、よろしくねーっ!」


ミルドレット「好きな食べ物はぁ、お肉かなぁ~! えへへ、だからぁちょーっと肉食系っていわれることもあるんだけどぉ~……」テヘッ


シーン…


ミルドレット「私は、いま彼氏募集してるから……ねっ!」ウィンクッ


シーン…



男「………………キツイなぁ……」ボソッ


アオニート「……目を合わせるなよ……とにかく時間が過ぎ去るのを待つんだ……」


ミルドレット「…………ちっ……。――はぁーい、ではまずは……――」



――――――

――――

――



キーンコーンカーンコーン


男「……終わったぁ……」


男(しかし、まったく何も言われなかったけど、大丈夫なの? 何か言われそうでビクビクしてたけど、逆に何も言われないっていうのも、怖いな……。俺、こんなところの入学試験受けたつもりはないぞ……)


アオニート「――……ふぅ、ひとまずはやり過ごしたな……。で、今日はどこ行く?」


男「えっ?? 行くって……どこに?」


アオニート「いやほら、部活の見学とか、委員会の見学とかよ」


男「あ、あぁ……。ど、どうしようかな……」アハハ…


アオニート「ほら、どれに行くよ?」ピラッ


男「え、えぇっと…………」


男(……なんだこれ……、普通のに交じってよくわからないのがいっぱいあるな……。黒騎士部とか……、折れた直剣委員会とか…………)


男「――……あっ、飼育委員なんてあるんだ……」


アオニート「ん? なんだ、動物好きなのか?」


男「う、うん。動物って結構好きなんだよね……」


アオニート「ふぅーん……。じゃ、今日のところはそれにするか……。俺も、暇だし付き合うぜ」


男「あ、うん。ありがとう……」


ヨルシカ「……男さん?」


男「え? あ、あぁ、ヨルシカさんとロザリアさん……」


ロザリア「………………」ペコリッ


ヨルシカ「男さん達は、どこに見学に行くんですか?」


男「と、とりあえず、飼育委員を見に行ってみようかなって……。ヨルシカさん達もどこか行くの?」


ヨルシカ「飼育委員ですか……。やっぱり、とても勇気のある方なのですねっ!」


男「えっ?」


ヨルシカ「私は、兄様と同じ風紀委員に入ろうと思ってますので、ロザリアさんに付き合おうと思っています」


男「そっか、もう決まってるんだね」


ヨルシカ「えぇ……。――では、また明日お会いしましょう?」


男「う、うん……また明日……」


グイッ


男「んっ?」


ロザリア「………………」アセアセ


男「え……手紙??」


ロザリア「………………」ダッシュ


男「あ、あっ、ちょっと……っ!」


ヨルシカ「まぁ……っ! ふふっ、ロザリアさんからの友情の証みたいなものだと思いますよ?」


男「そ、そっか……。うれしいな……」


ヨルシカ「ロザリアさんが、自分からこういうことをするのはとても珍しいので……。ぜひ、仲良くしてあげてください」ニコッ


男「うん、そうするよ」


ヨルシカ「では、私はロザリアさんを追いかけますので、では……」


男「ま、またね……」


男「…………まぁ、いいことだよな……」


アオニート「――……男……お前、ヨルシカさんと仲いいのか……っ?」


男「えっ……? い、いや、仲がいいというか、ちょっと教室まで案内してもらったんだけど……」


アオニート「はぁ……? お前、ヨルシカさんが誰の妹だか知ってるのか……?」


男「い、いや、知らないけど……」


アオニート「なんか、お前には縁があるみたいだが……。あの、グヴィネヴィアさんの妹なんだぜ?」


男「えっ!? あっ、そ、そうだったんだ……。たしかに、きれいな人だもんね……」


アオニート「助けてもらった時には、グウィンドリン先輩に助けてもらったんだろ?」


男「あ、うん……。そっか、確かにすごい偶然だね」


アオニート「かぁーっ! 羨ましいぜまったく……中学からの俺だって、まともに話したこともねぇのにさっ!」


男「あ、あはは……」


男(ってことは……、ヨルシカさんが兄が風紀委員とか言ってたし、グウィンドリンさんとは別にもう一人いるのか……。……それって――)




男「ヨルシカさん達って、(男一人女三人の)四人兄妹なんだねっ!」


アオニート「えっ? あぁ、(男二人女二人の)四人兄妹だな」




男「そっかぁ……。そのもう一人のお兄さんも見てみたいなぁ……」


アオニート「あー……。まあ、あの人はある意味伝説みたいな人だからなぁ……」


男「そうなのっ!!?」


アオニート「おう。……あのオーンスタイン先輩も、頭が上がらないらしいぜ……」


男「へ、へぇ……すごい人なんだなぁ……」


アオニート「――……さて、そいじゃ飼育委員に見学に行こうぜー」


男「うん、そうだねっ!」



――――――

――――

――



アオニート「――……えぇっと、ここらのはずなんだけどなぁ……」


「――あれ、君たち……。もしかして見学に来たのかい?」


男「あ、はいっ。そうなんです」


アルトリウス「いやー、うれしいなぁ。――あ、ボクは三年のアルトリウスって言うんだ。一応、飼育委員の委員長をやってるよ、よろしくね」


男「よ、よろしくお願いします……」


男(かっこいい鎧の人だなぁ……。――……って、もう、みんな鎧で居ることに違和感を感じなくなってきてるな……。でも、この人は優しそうな人だし、よかった……)

そういや、ダークソウル2のDLCやってなかった。



アルトリウス「いやいや、全然新入生来てくれなかったから、どうしようかなーと思ってたところなんだよね」アハハ…


男「そうなんですか……。それで、どんなのを飼育してるんですか?」


アルトリウス「まあ、そんな珍しいものはないよ……。――あぁ、しいて言えば竜が居ることぐらいかな。中学じゃ飼えないもんね?」


男「り……りゅう……??」


男(……りゅう……リュウ………………竜?? い、いや、聞き間違えだよな……)


アオニート「――あぁ、アルトリウス先輩。こいつ、高校から入ったやつなんで知らないんですよ」


アルトリウス「あっ、そうなんだ。へぇー珍しいねぇ……」


アルトリウス「――まぁ、興味があるなら見ていきなよ。案内するからさ」


男「あっ……、お願いします……」


アルトリウス「ははっ、そんなに怖がらなくてもいいよ。一年生に竜の世話はやらせないからさ。……ほら、ここには小動物をまとめてるんだ。一年生はまずここからかな」


男「小動物ですかぁ……」


男(前半部分は聞かなかったことにしよう……)


ガチャ…





男「」





アオニート「――ん? おー、さすが高校になると違うもんだなぁ……」


アルトリウス「まぁ、ちょっと大きくなりすぎたとこもあるけどね……。――ん、男くん? どうかしたかい?」


男「……あ、いや…………なんでも…………ないです……」


男(でかいでかいでかいでかいでかい……。あれ、ネズミなのか!? 突然変異にもほどがあるだろぉおお……)


男(いや、ダメだって、どっちかと言えばこっちが捕食対象だよ……。ヤバいよ、これヤバいって……)


アオニート「――おいっ! ……どうかしたのか?」


男「あ、あああああああぁ……。ちょ、ちょっとネズミが……」


アルトリウス「あれ、ネズミ嫌いだったのか……。じゃあ、そっちに猫が居るけど……」


男「ね、猫ですかっ! い、いいですね!!」


男(――あれ、待てよ……。まさか、化け猫みたいなやつじゃないよな……)


アルトリウス「ははっ、猫好きなんだねー」アハハッ

ニャーン…


アルトリウス「――ほらっ」


男「あっ…………猫だ…………」ホッ


男「わぁ……かわいいなぁ……」ナデナデ




「おい、アルトリウス……これはなんだい? 私たちは見世物じゃあないんだよ」



男「えっ?」キョロキョロ


アルトリウス「まぁまぁ、そういわないでよアルヴィナ……。ほら、この子新入生なんだ。猫が好きなんだってさ」


アオニート「おぉー。二匹もいるのか……。よかったな、男」


男「えっ? もう一匹は――」




アルヴィナ「ふんっ、それがなんだってんだい? はぁ……まったく……」



男「」




男(しゃべってる……。えっ、嘘だよな……。猫がしゃべってる……。てか、でけぇ……)


「――……あら、もう私には興味が無くなったのかしら?」


男「えっ……?」


シャラゴア「私は、シャラゴアっていうのよ。……ふふっ、あなた、いい匂いね」ゴロゴロ


男「」



男「………………」


男「………………」スクッ


男「………………」スタスタ


アオニート「お、おいっ、男! どこ行くんだよ――……」



ガチャ

バタン



男「…………夢かっ。……そうだよな、それ以外に考えられないよ。……このネズミたちも、ちょっと大きくなりすぎちゃっただけなんだよな。ネズミに罪はない――」


「……ん? おい人間、腹が空いたぞ。早く余に食べ物を持ってこい」


男「………………――」フラッ

バタッ…


――

――――

――――――



男(――……なんだか、いい匂いがする……)


男(……すごく、落ち着くなぁ……)


男(ずっと、寝ていたい気分だ……。……って、あれ、なんで、俺は、寝てるんだっけ……?)


男「……ネズミ……」ボソッ


「――……あっ、男くん……目が覚めましたか?」


男「えっ……?」ボーッ


男(……この大きなかたまりは……――)


グヴィネヴィア「ふふっ、また会いましたね」ニッコリ


男「――っ! ぐ、グヴィネヴィアさんっ!!? ど、どうして……っ。――って、ここは……!!?」キョロキョロ


グヴィネヴィア「ここは保健室ですよ。でも、ビックリしました……。アルトリウスくんが、急に倒れたって言って担いできたんですから」


男「あ、あぁ……そっか……。……で、でもどうして、グヴィネヴィアさんが……?」


グヴィネヴィア「私は保健委員ですから」ニコッ


男「な、なるほど……」


グヴィネヴィア「……しかし、いったい何があったんですか? 急に倒れたというのは……」


男「い、いやぁ……なんて言えばいいんでしょう……。……いろいろ、いっぱいになっちゃって…………」ハァ…


グヴィネヴィア「…………? ――まぁ、初めてのことだらけで心配ですよね。……ゆっくり慣れていけば大丈夫ですよ」フフッ


男「……そうですね。……ははっ、グヴィネヴィアさんが保健室に居たら、みんな怪我して保健室にきちゃいそうですね」


グヴィネヴィア「……よくわかりましたね」ビックリ


男「えっ?」


グヴィネヴィア「……そうなんですよ。私の当番の日になると、急に怪我人が……。だから、普段はやらないんですけど、今日は偶然でした」


男「へ、へぇ……」


グヴィネヴィア「偶然……。ふふっ、これは、運命だったりするのかもしれませんね?」ニコッ


男「…………えっ??」カァアア




ガララッ


アオニート「し、失礼しますっ!! お、男くんの友達のアオニートですっ!」


グヴィネヴィア「……あっ、ちょうどいま、目を覚ましたところですよ」ニコッ


アオニート「は、はいっ!! 恐縮ですっ!!」


アルトリウス「――やぁやぁ……。よかった……、もし目が覚まさなかったらどうしようかと思ったよ……」


男「ご、ご心配をおかけしました……」


アルトリウス「ははっ、気にしないでくれよ。……とりあえず、今日のところは帰った方がいいかもね」


男「はい……」


アルトリウス「まぁ、委員会に入らなくても、気が向いたら遊びに来ればいいよ。シャラゴアも君のこと気に入ったみたいだし、まだまだ狼とか蛇とかもいるからねっ!」


男「ははっ、ありがとうございます」


アルトリウス「うん。それじゃ……グヴィネヴィアさん、アオニート君……後はよろしく」


スタスタ…


男「本当、アルトリウス先輩はいい人ですね……」


グヴィネヴィア「そうですね……。でも、あぁ見えても剣を持てば、とてもお強いんですよ」


男「そうなんですか……へぇ……」


男(…………でも、なにと戦うの……??)


グヴィネヴィア「――さて、それじゃそろそろ大丈夫そうですか?」


男「あっ、はい! すいません、ありがとうございました!」ビシッ


グヴィネヴィア「はい、体には気を付けて……。……アオニートくん、ちゃんと部屋まで届けてあげてくださいね?」ニコッ


アオニート「は、はいぃ!!! おまかせくださいっ!!」


男「あ、あはは…………――」



――――――


――――


――




アオニート「――はぁー、緊張したぜ……」


男「本当、きれいな人だよね……」


アオニート「なぁ、最後見たか? あのグヴィネヴィア先輩が俺に笑ってくれたんだぜっ!? も、もしかしたら……もしかするかもしれねぇよな…………」


男「あーうん。そうだといいね」


アオニート「うおぉおおおおおおお!! がんばるぜぇええええええ!!」




アオニート「――さて、着いた……」


男「……着いちゃった……」ボソッ


アオニート「あ? なんか言ったか??」


男「いや、なにも」


アオニート「ここが、男子寮だ。お前も一回ぐらい見てるんじゃないのか?」


男「い、いや、まぁ……。色々あってさ……」


アオニート「ふーん……、まあいいけどよ。――……で、お前何号室なんだ?」


男「…………え?」


アオニート「は? いや、だから何号室だよ」


男「………………さぁ……」シラー


アオニート「はぁ……。なんだお前、自分の部屋の番号見てくるの忘れたのかよ……」


男「――あ、あははっ! そ、そうなんだよね……」


アオニート「しょうがねぇやつだな……。うーん、ミリーちゃんなら知ってるかな……」


男「ミリーちゃん…………?」


アオニート「あぁ、男子寮の寮長やってる人だよ……。――あ、おーいっ! ミリーちゃーんっ!」


ミリベス「――いや、アオニートくん……。私はミリベスですから、そんな風に呼ばないでと……」ウンザリ


アオニート「まぁまぁ! こいつが自分の部屋わからないって言ってるんだけど、ミリーちゃんわかる?」


ミリベス「えっ? ……あぁ、男くんですね? えぇっと……、確か男くんは……――」


男(えっ……初対面だよな……? なんで俺のこと知って……)


ミリベス「あぁ、208号室ですね。……もう、ダメですよ? ちゃんと見てこないと……」ハァ…


男「は、はい、ごめんなさい……」


アオニート「――おっ、なんだよ俺の隣かよ! 俺、209号室なんだよな!」


男「あっ、そうなんだ……。よかったよ、知ってる人で……」


アオニート「よしっ、じゃあさっさと行こうぜー……! ありがとね、ミリーちゃん」


ミリベス「はいはい」


男「あはは……――」




――部屋の前――



アオニート「――おーっし。……んじゃ、お前は一応倒れてるんだし、今日のところは安静にしてろよ」


男「あー……、そうだね。ありがとう」


アオニート「まぁたぶん、俺も部屋に居ると思うからさ、何かあったら遠慮せずに呼べよな」


男「わかった。それじゃ……」


アオニート「おーう……」


ガチャ

バタン


男「…………ここが俺の部屋か……」


男「ベッドに、机と椅子……。最低限のものはあるって感じだなぁ……」


男「…………ふぅ……」ドサッ


男「…………もう、夢じゃないんだよなぁ……」


男「やっと落ち着けるようになったんだし、少し状況を考えよう……」


男「………………」


男「――……って言っても、気付いたらこの学校の入学式会場に居て、そのまま流されに流されただけだもんなぁ……」


男「……異世界に迷い込んでしまったのだろうか? いや、そんなファンタジーな……」


男「……でも、そうとしか説明もできないし……。……ってか、俺はこの世界では、普通に認知されてたみたいだよな……。席だって俺の席あるし、この部屋だって……」


男「うぅー……わからない……。……ははっ、寝たらちゃっかり家にいたりして……」


男「…………そうだな、とりあえず寝るか……」


男「――はぁ、せっかくピカピカの学ランも、この世界じゃ何だか浮くだけだなぁ……――」


ガサッ


男「――ん? ポケットになにか……」


男「……あっ、これ……。ロザリアさんがくれた手紙じゃないか……」



――ふふっ、ロザリアさんからの友情の証みたいなものだと思いますよ?



男「……たしか、ヨルシカさんがそんなこと言ってたよね……」


男「寝る前に、読んでみるか……――」


ピラッ

ミスった。

男「寝る前に、読んでみるか……――」 ×

男「寝る前に、読んでおかないと……――」 ○


なんか変だったよね。

ブラボやってないらしいが>>1はどのくらいシリーズ把握してるのか








 『好きです』





男「」







男「………………」ゴシゴシ


男「ふぅ……落ち着け……俺……。……一気に眠気も冷めたけど、まぁ落ち着けよ……」


男「え、えぇっと……?」チラッ



『好きです』



男「…………ほ、本当に書いてあるよな……?」


男「…………なんで? ロザリアさんとは今日あったばかりだよな……」


男「……しかし、これしか書いてない……のか……。……ん? いや、二枚目もあるのか……――」







『生年月日は何ですか?
 血液型は?
 好きな食べ物は何ですか?
 休みの日は何をやっているんですか?
 趣味は何ですか?
 部屋は何号室ですか?
 いつも何時ごろに起きますか?
 朝ごはんはパンですか?
 好きな女性のタイプは?
 どんな髪型が好きですか?
 背は高い方が好きですか?
 胸は大きい方が好きですか?
 眼鏡属性はありますか?
 
 ……三枚目の紙に書いて
           明日私に下さい』





男「………………」



ガタッ‼ ガチャガチャ…



男「――っ!!」ビクゥッ‼


男(……げ、玄関から物音が……。い、いいいいいいやっ! 気のせいだよな気のせいに違いないよな……よしっ――!)


男「寝よう」

>>71
ダークソウル1・2・3しかやってないよ。


――――翌日


ドンドンッ!!


アオニート「――おーい男ー? まだ寝てんのかー?」


男「い、今行くよー!」イソイソ


ガチャ


男「――お、お待たせ……」


アオニート「おせぇよ……ったく」


男(……結局、夢なんかじゃなかったなぁ……)ハァ…


アオニート「なんだよため息なんてついて……。――あぁ、飯食ってねぇのか?」


男「ま、まぁそんなとこ……」


アオニート「昨日の夜、誘いはしたんだぜ? でも、返事なかったからよ……」


男「そうだったんだ……。別れた後、すぐ寝ちゃって……。ごめん」


アオニート「気にすんなよ、昨日はしょうがねぇだろ。――……あ、そういやさ」


男「うん」


アオニート「お前を呼ぼうとしたときに、ロザリアさんを見た気がしたんだよなぁ……。でも、あのロザリアさんが男子寮に居るわけねぇし……。お前、知らないよな?」


男「う、うん……。ま、まったくわからないなぁ……」


アオニート「だよなぁ……。なんだったんだろ……」


男「あ、あはは……」



――――――


――――


――




ガララッ


アオニート「――おいーっす」


男「お、おはよう……」


ヨルシカ「――男さんっ! 大丈夫なんですかっ!?」


男「え、えっ……――?」





ヨルシカ「昨日……急に倒れたみたいじゃないですか……。私もロザリアさんも、すごく心配したんですよ……?」


ロザリア「………………っ」コクコクッ


男「あ、あぁ、知ってたんだ……。――でも、もう大丈夫だよ! 心配してくれてありがとう」


ヨルシカ「そうですか……。……でも、びっくりしましたよ。ちょうど、私たちが保健委員の見学に行こうとしたときに、男さんが担ぎ込まれていたので……」


男「あ、あはは……。かっこ悪いとこ見られちゃったね……」


ヨルシカ「なにかお手伝いをと思ったのですけど、グヴィネヴィア姉様も居たことですし、邪魔しちゃいけないと思ってその日は帰ったんです……」


ヨルシカ「でも、よかった……。帰ってからも心配で心配で……」


男「……ありがとう、ヨルシカさん」ニコッ


ヨルシカ「……っ。い、いえ、別に……普通の事ですし……」


男「……と、ところでなんだけど……。ろ、ロザリアさんとはずっと一緒に居たの……?」コソコソッ


ヨルシカ「えっ? ま、まぁ……お互い自分の部屋に戻ったときは、さすがに一緒には居なかったですけど……」


男「……そ、そっか」


グイッ


男「あ、ろ、ロザリアさん……。あ、改めておはよう」


ロザリア「………………」ペコリッ


ロザリア「………………っ」グイグイッ


男「え、えっ? な、なにどうしたの??」


ロザリア「………………!」ガサガサ


男「か、紙……? ――あ、あぁご、ごめんねっ! 手紙はどっかに落としちゃったみたいでさっ! 答えは書いてこれなかったんだよね! あ、あははは……」


ロザリア「………………っ!!」ガーン…


ロザリア「――………………っ」カキカキ


男「あ、あれ……ロザリアさん……?」


ロザリア「………………」ピラッ


男「こ、これは……」


男「ま、また同じの書いてくれたんだ……」


ロザリア「………………」キラキラ


男「う、うん……今度は、書くよ……」アハハ…



男(――……あれ? 質問が変わってる……? たしか、部屋の番号の質問があった気がしたけど……。それが無くなって、『部屋の鍵は2本以上ありますか?』の質問が増えてる……)


男「――……それにしても、クラスをよく見るといろんな人が居るんだね」


アオニート「は? 急にどうした?」


男「い、いや……、昨日はあまり見る余裕がなかったからさ……。――……心に……」ボソッ


アオニート「俺は中学からだから、別にいつも通りな感じだけどな」


男「まぁ、そうだよね……。あのトゲトゲの人とか、特徴的だよね。……なんか怖いし……」


アオニート「あぁ、カークな。あいつ、すごく内向的な性格なんだよ。それを鎧でカバーしてるつもりらしいぜ」


男「そ、そうなんだ……。人は見かけによらないってやつだね……」


男「あと、気になるのは……。――あっ、あの人かな」


アオニート「ん? あぁ、ジークリンデのことか?」


男「そうかな? なんか……えっと……なんて言えばいいのかな……」


男「まるで……あれは……永s――」


アオニート「――おっと! ……男、決してあいつのことを『玉ねぎみたい』って言っちゃダメだぜ?」


男「えっ? あ、あぁ……うん……」


アオニート「あいつら、あんなふざけた格好してるけどな。『玉ねぎ』って言われると怒るんだよ」


男「へぇー……」


アオニート「あぁ、だから『玉ねぎ』ってあいつらの前で言っちゃダメだぞ?」


男「も、もうわかったよ?」


アオニート「まぁわかる。どう見たって『玉ねぎ』だしな。でも、しかし、だ……。うっかり『玉ねぎ』なんて――」



ガンッッッ‼‼



ジークリンデ「うっっるさいのよっ!!! ――またあんたね、ホークウッドっ!!」


アオニート「――っ! ……いってねぇな玉ねぎっ!!」グワッ


ジークリンデ「なっ……! また言ったわね! 今日こそタダじゃおかないんだからっ!!」


アオニート「おうおう上等だっ! みじん切りにしてやるぜ……。――玉ねぎだけになっ!!」



ワーワーギャーギャー




男「………………」


ヨルシカ「……この光景、中学の時もよく見ました」


男「へぇ……」

ミスった。

アオニート「――っ! ……いってねぇな玉ねぎっ!!」グワッ
 ↓
アオニート「――っ! ……いってぇな玉ねぎっ!!」グワッ


で、お願いします。

青くねえじゃねーか!

ニートでもないな。

>>95 >>96
キャベツ太郎だって、キャベツも太郎も入ってないぞ。




アオニート「………………」チーン…


ジークリンデ「はぁ……はぁ……。私の勝ちね……」ゼェゼェ


ジークリンデ「――ゴホンッ……。え、えっと、男くん……だよね? 初めまして、私はジークリンデって言うの。よろしくねっ?」


男「えっ? あ、あぁ……よろしく、お願いします……」オドオド


男(あ……普通の人なのか……)


ジークリンデ「あ、あの、えーっと……。ほ、ホークウッドとはね、えっとまぁ……小さい頃からの腐れ縁みたいな感じで……。だ、だから気にしないでね?」


男「べ、別に、何も気にしてないよ……」


ジークリンデ「そ、そう? なら、いいんだけ――」


ガシッ



アオニート「――ふっ、油断したな?」



ガンッ‼


ジークリンデ「――いっ……! あ、あんたねぇ……っ!!」



ワーワーギャーギャー



男「あ、あはは……」


「お、男くん……?」


男「へっ? は、はいっ」


カーク「は、初めまして……。ぼ、僕……カークって言うんだ……よろしくね」


男「あぁ……。お、男って言います、よろしく……」


カーク「うん、みんな知ってると思うよ……。君は、有名人だからね……」


男「えっ!!? そ、そう……なの……?」


カーク「うん……。と、とても珍しい装備だし……」


男「あ、あぁ…………」ハハッ…


カーク「そ、それで……。――あ、あのっ! ろ、ロザリアさん……」


ロザリア「………………っ!」ビクッ


カーク「あ、ご、ごめん……。驚かす気は、なかったんだ……」


カーク「え、えっと……覚えてるかな……? 僕、中学のころ同じクラスだったんだけど……」


ロザリア「………………」


カーク「………………」


ロザリア「………………」


カーク「……あ、あはは…………」




ロザリア「………………?」



カーク「」



ヨルシカ「――ろ、ロザリアさんっ? ほ、ほら、後ろのほうの席に居たじゃないですかっ、ねっ??」



ロザリア「………………??」



カーク「」



ロザリア「………………」フイッ



カーク「」



ヨルシカ「あぁ……もう……」




ロザリア「………………っ!」グイグイッ


男「え、えっ、俺?? な、なに……??」


ロザリア「………………っ」


男「――い、いや、本当だって! 部屋の鍵は一本しかないから! う、嘘なんて書かないよ……」アセアセ



カーク「」



カーク「――……随分、仲がいいんだね……男くん……」


男「い、いや……そ、そうなる……――」


カーク「………………」ゴゴゴゴゴゴ…


男「――……の……かな……」アハハ…



男(あれ? すごい怒ってないか……? よく見えないけど、睨み付けられてる気がする……)ビクビク






アオニート「――はぁー……。朝から疲れたぜまったく……」


男「アオニート君が悪い気もするけど……」


アオニート「でも、玉ねぎに見えるだろ?」


男「………………まぁ…………」


アオニート「やっぱりなーそうだよなー」


男「――そ、そういえばっ! さっき、ジークリンデさんがホークウッドって呼んでなかった……?」


アオニート「ん? あぁ、俺はホークウッド・アオニートって言うんだよ。アオニート家の三男なんだ」


男「じゃ、じゃあお兄さんがいるんだ」


アオニート「二年と三年にな。俺んちは代々――」



キーンコーンカーンコーン


ガララッ‼



ミルドレット「――はぁーいっ!! みんな元気ぃー? 朝のHR始めるよーっ!」キャハッ


アオニート「おっと、マズい……。男……、切り抜けるぞ」


男「う、うん…………」



――――――

――――

――





アオニート「――ふぅ、冷や冷やするぜ……」


男「あ、あはは……。毎朝こうなのか……」


アオニート「さて、確か今日の授業は奇跡だよな?」


男「えっ?? ご、ごめん、何も知らないんだけど……」


アオニート「俺も、奇跡は苦手なんだよなー……。まぁ、一緒に頑張ろうぜ」


男「う、うん…………?」


男(や、やっぱり宗教的な何かなんだろうか……。ちょっと……怖いな……)






アオニート「――ふわぁ……。今日はいい天気でよかったな」


男「うん、そうだね……」


男(なんか、外にきちゃったけど……。奇跡って、外でやることなの? やっぱり、どっかの方角に祈ったり……)


ワーッ‼

ザワザワ



男「うん……? なんか、急にみんな騒ぎ出したな……」


アオニート「おいおいおいおい!! ぐ、グヴィネヴィア先輩だぜっ!?」バシバシッ


男「えっ……? ほ、本当だ……。……で、でもグヴィネヴィア先輩って三年生だよね??」


アオニート「も、もちろんそのはずなんだが……――」



レア「は、はーいっ! い、一年生の皆さん聞いてくださーい!」



アオニート「――おぉおおおおお!! あ、アレは奇跡のレア先生だぜっ!!?」


男「あぁ……、そういえば昨日、担任になってくれたらいいなって言ってた先生だよね……?」


アオニート「あぁ……。実はレア先生って、最近この学園に来た先生なんだよ。人見知りな性格で、少しおとなしい体系ではあるが……あの守ってやりたくなる感じ……。たまらねぇよなっ?」


男「う、うん……。たしかに、かわいいって感じがするね」


レア「――え、えっと……。きょ、今日の授業は、最初ということもありますので、三年生と合同の授業となりましたっ!」


レア「一年生の皆さんは、三年生の奇跡を見て、参考にしたり、教わったりしてくださいっ!」


レア「三年生の皆さんは、新入生の人たちの実力を見てあげてください」


レア「も、もちろんっ、何かわからないことがあったら、先生に聞きに来てくださいっ!」


レア「きょ、今日は私と、ペトルス先生が居ますので……。遠慮なく来てくださいね」



アオニート「や、やべぇな……。なんて最高な授業なんだ……っ! なっ、男もそう思うだろっ!?」


男「えっ?? う、うぅん……」


アオニート「おいおい大丈夫かよ? あのレア先生に、グヴィネヴィア先輩まで居るんだぜっ!? どっかの玉ねぎとは大違い――」


バァンッ‼


アオニート「――うおぉおっ!!?」ドシャァ


男「あ、アオニート君が吹っ飛んだ……っ?」


ジークリンデ「聞こえたわよホークウッド……。あんた、本当に懲りないわね……」


男「……い、今の……ジークリンデさんが……?」


ジークリンデ「そうよ? ……私、奇跡は結構得意なの。今のは『放つフォース』って言ってね……――」


男「す、すごいっ!! ど、どうやってやったのっ!?」


ジークリンデ「えっ? そ、そう……? えへへ……」テレテレ


アオニート「……玉ねぎ……」ボソッ


ジークリンデ「――っ! また言ったわねっ!!」フォンッ


アオニート「ちょ、まっ――!」バァンッ‼


ドシャアッ


アオニート「………………」チーン


男「す、すごい……。アオニート君、離れてたのに……」


ジークリンデ「へへっ! すごいでしょ? 男くんにだったら教えてあげてもいいよっ?」


男「ほ、本当にっ? ぜ、ぜひ……――」



「ガハハハハッ! どうやら、腕を上げたみたいだなっ!」



ジークリンデ「――……こ、この声は……っ!!」


ジークマイヤー「久しぶりじゃあないかっ! いつぶりだろうなっ」


ジークリンデ「じ、ジークマイヤーさんっ!!」


男「えっ? えっ??」


男(……同じ、鎧の人がもう一人……? ちょ、ちょっと細く見えるのがジークリンデさんかな……?)


ジークリンデ「――あ、紹介するね。この人はジークマイヤーさん。三年生で、私の従兄なの」


男「へ、へぇー! ど、どうも、男と言います……」


ジークマイヤー「ガハハハッ! 知っているぞ! 新入生に武器も持たぬ、大変勇気のある者が入ったとなっ!!」


男「………………あ、あはは……」


ジークリンデ「そうだっ! 奇跡もジークマイヤーさんに教えてもらおうよっ! 私より教えるの上手だと思うし」


男「あ、うん……。そ、そうしようかな――」


アオニート「――うぅん……。クソッ、頭がいてぇ……」ムクリッ…



アオニート「……あぁ? ――おいおい、なんで玉ねぎが二つあるんだ?」



「「………………」」


アオニート「――えっ? ちょ、いや……まって……う、うわぁああああ――」ドォンッ‼


ドォンッ‼
イヤァアアア‼
バァンッ
タスケテェエエ‼

……




男「――他人のふりしよう……」


男「………………」


男「……とは言っても……、よくよく考えたらアオニート君と離れたら、ほかに仲のいい人居ないんだよなぁ……」


男「どうしよう……。――あっ、先生のとこ行けばいいのかな……。……って、あれ? 先生どこ行ったんだろ……」キョロキョロ




「……じゃないですか……ねぇ……?」


「そ……その…………ますっ!」



男「……えっ?」



ペトルス「いいじゃないですか……。今日、一緒にご飯でも行きましょうよ」


レア「い、いえ、本当に……大丈夫ですから……」


ペトルス「レア先生もこの学校に来たばかりで色々心配でしょう? たまにはお酒でも飲むのも大事ですよ……」ベタベタ


レア「わ、私っ、お、お酒は苦手で……」


ペトルス「おやっ、それはいけない。……これから、いろいろ付き合いとかあるんですから、慣れといた方がいいんじゃないですか?」スリスリ


レア「い、いや……その……」



男(…………こ、これは……見ちゃいけないとこ見ちゃったんじゃないか……?)



ペトルス「なら、私のおすすめのお店があるので、そこにしましょう。初めてでもおいしいお酒がありますから」


レア「……い……いや……私は…………」


ペトルス「じゃあ、今夜でいいですね? レア先生?」ガシッ


レア「………………………………」



男(れ、レア先生困ってそうだ……。た、助けてあげたいけど……ぺトルス先生は武器持ってるし……勝てないよな……)


男(……俺にも、さっきのやつが使えたら……っ!)フォン…


男「え、えっ……これは……さっき、ジークリンデさんが使ってた時の光…………」


男「――や、やるだけ、やってみようっ!! え、えいっ!!」フォンッ‼


バァンッ‼


ペトルス「――ゴフゥッ!!?」


ドシャァッ‼


レア「――え、えっ!? ぺ、ぺトルス先生っ!?」


男「あ……本当にできた……」


男「す、すごい……俺にこんな力が……っ!」ワナワナ


ペトルス「――っ!! 貴様っ! この私に放つフォースをやるとは!! クラスと名前を言えっ!!」


男「ご、ごめんなさい……。僕、初めてで……」


ペトルス「そんなこと関係あるかッ!! お前……後悔させて――」




グヴィネヴィア「すいませんでした。ぺトルス先生」




ペトルス「――やる……。え? ぐ、グヴィネヴィアさん……?」


男「えっ……?」


グヴィネヴィア「私が見本のためにやった放つフォースが、そちらへ飛んで行ってしまったようで……。本当に、すいませんでした」ペコリッ


ペトルス「いっ、いや……! わ、私はこいつがやったのを見て――」


グヴィネヴィア「――ですが、先生? いくら先生といえども、やっていいことと、やってはいけないことがあるように思うんですよね……?」ニッコリ ゴゴゴゴゴゴ…


ペトルス「……っ。……な、なんのことだか……」


グヴィネヴィア「――あら、そうですか……。それは大変失礼いたしました……」



グヴィネヴィア「――それでは、次はこの太陽の光の槍が『間違って』飛んでいくこともあるかもしれませんが……。その時はごめんなさいね……?」ニッコリ バチバチバチ…



ペトルス「」



男「ぐ、グヴィネヴィア先輩…………」


ペトルス「――あ、あぁそういえば急用を思い出した! れ、レア先生、後はよろしくお願いしますね」ソソクサッ


レア「あ、は、はい……」


男「………………」アゼン…


男「――って、ぐ、グヴィネヴィア先輩っ! ご、ごめんなさい! 本当は俺が――」


グヴィネヴィア「――いや、いいんです。どちらにしろ、私が先に気付いていれば、私がやっていました。……それより、男くんの勇敢な行動に感動しましたよ?」


男「で、でも……これじゃ……」


グヴィネヴィア「…………あら? もしかして……――」


男「――えぇっ!!? ぐ、グヴィネヴィア先輩って、学園長の娘さんだったんですかっ!!?」


グヴィネヴィア「はい……。自分で言うのもなんですけど、知らない人が居るとは思いませんでした……」


グヴィネヴィア「――まぁ、ですので。少しズルかもしれないですけど、ペトルス先生のことは私から父に言っておきますから……」


男「あ……、だからぺトルス先生、あんなにビビって……」


グヴィネヴィア「……それにしても、まだ一年生だというのに、放つフォースを使えるだなんて……。すごいです」ニコッ


男「い、いや……。さ、さっき教えてもらって……あの……」テレテレ


グヴィネヴィア「…………やっぱり……」ボソッ


男「――え? な、何か……?」


グヴィネヴィア「――いえ、何も……。あ、私はヨルシカと、ロザリアちゃんに教えてるんですけど……男くんも一緒にどうですか?」ニッコリ


男「あ、あぁ……っと…………」



ロザリア「………………」ジー



男「――あ、ダイジョウブデース……」


グヴィネヴィア「……そうですか……。――まぁ、私のところに来てくれれば、いつでも教えますから。気軽に来てくださいね?」ニコッ


男「は、はい! ありがとうございます……」








男「――ふぅ……。なんだかドッと疲れた気がする……」


男「……でも、なんか奇跡ってものについて少しわかった気がするぞ……」


男「この世界では魔法が使えるんだ……。そして、この世界ではそれを奇跡って呼んでるんだな」


男「……なんだそれ……。――って言いたくなるけど、実際自分で使ったしな……」


男「……ははっ。なんか、少し楽しくなってきちゃった……」


男「疲れてるのかな……」




「――ちがぁああああああうっ!!!」




男「――っ!」ビクッ



「しっかりと足をそろえてっ!! そして、左右の腕はまっすぐ斜め上にあげるんだっ!」



男「な、なんだ……??」

「まだだっ! まだ角度が足りないっ!!」


「――よーし……。それでいいだろう……」



男「な、並々ならぬ雰囲気を感じる……」



アオニート「――あの人はソラール先輩だ……」



男「――っ!? あ、アオニート君……だ、大丈夫なの……?」


アオニート「この有様を見て、大丈夫に見えるんだったらお前の目はいかれてるぜ」ボロッ


男「……ごめん……」


男「――そ、それで、ソラール先輩っていうのは……?」


アオニート「三年生の先輩でな。何を隠そう、あの――」


ガシッ‼


男「――っ!」ビクッ


ソラール「――おぉ、なんだ。……君たちも、俺に教わりに来たのか? そうだろう、いい心がけだ……」ポンポン


男「あ……は、はい……」


ソラール「うんうん。君、名前はなんて言うんだ?」


男「あ、お、男って……言います……」



ソラール「…………男??」


ソラール「男……。どこかで聞いた名だな……」ウーン…



アオニート「――お、おいぃぃっ! お、お前マズいんじゃないのかっ!?」コソコソッ


男「え、えっ?? な、なんでよ?」コソコソ


アオニート「ソラール先輩はな……――」




アオニート「――あの、グヴィネヴィアファンクラブのナンバー1なんだよっ!」




男「……え、えぇっ!? って、ことは……オーンスタイン先輩とスモウ先輩……。……俺の名前も……」


男「――も、もっと早く言ってよっ!?」


アオニート「い、いや、だって……――」コソコソッ


ガシッ‼


男「」


男「あ、あの…………えっと…………」ガタガタ


ソラール「そうかそうか……。君が『男』くんだったか……」ゴゴゴゴ…


男「い、いや……ち、違うんです……」


ソラール「……違う? じゃあ、そっちの子かな?」


アオニート「いえ、そいつが男です。――じゃ、ボク先生に呼ばれてるんで……」


男「あ、アオニート君……っ」


ソラール「まぁ……オーンスタインくんとスモウくんから、話は聞いているよ……」ゴゴゴゴ…


男「………………」ビクビクッ


ソラール「さぁ、覚悟を決めるんだな……っ!!」


男「――――っ!!」









ソラール「――なんてなっ! ハッハッハッハ!」




男「………………へっ?」


ソラール「いやー、すまない。そんなに怖がるとは……」


男「えっ? えっ??」


ソラール「さて、どうしたものか……。――……どうやら君はグヴィネヴィアさんと仲がいいみたいだからな、話しても大丈夫だろう」


男「ま、待ってください、は、話についていけないです……」


ソラール「まぁまぁ。簡単に言うとな、俺はグヴィネヴィアさんに頼まれて、ナンバー1になってるんだ」


男「た、頼まれて……?」


ソラール「あぁ……。まぁ、話すと長くなるんだが……。――君はオーンスタインくんとスモウくんに会っているんだよね?」


男「は、はい……。す、すごく怖かったです……」


ソラール「そこが問題なんだ。彼らは強い……。その力をぶつけるところを探しているようにも見える」


ソラール「そこで、だ。今こそあの二人は、ナンバー2と3ということでおとなしくしているが……――」


男「――あっ、そ、そうか……。もし、どっちがナンバー1なんだって話になった時……、大変なことになりそうですね……」


ソラール「おぉ、察しがいいな。……きっとあの二人は、どちらかが倒れるまで争い続けるだろう……」


ソラール「――だから、俺がナンバー1の座に居ることによって、二人を落ち着かせてるのさ」


ソラール「――とはいえ、表向きはそのファンクラブのナンバー1……」


ソラール「このまま君を見逃したとあっては、それはそれで疑いの目で見られてしまうだろう」


男「…………えっ?」


ソラール「と、いうわけで……――」








ソラール「――おぉっ!! いいじゃないか、男くんっ!!」


男「は、はぁ……」 Y


ソラール「うん! 実に素晴らしい! その角度っ! その角度だッ!!」


男「………………」


ソラール「いいぞぉ~……。男くんには、どうやら太陽の戦士の素質が備わっているようだなっ!」


男「た、太陽の戦士ですか……」


ソラール「あぁっ!」


ソラール「――……俺はな、あの太陽みたいに……でっかくなりたいんだよ……」シミジミ


男「………………」


ソラール「………………」


男「……な、なれるといいですね……」


ソラール「――わかってくれるかっ! 気に入ったっ! 気に入ったぞ男くんっ!!」


男「………………」


ソラール「よしっ……。そんな君に、この太陽のメダルを上げようじゃないかっ」


男「太陽のメダル……? お金……じゃないよね……」


男「これ、何に使うんですか?」


ソラール「これは特別製でなっ! これを持っていると……なんとっ!!」


男「な、なんと……っ?」



ソラール「出席簿の君の名前が、光り輝くようになってるんだっ!」



男「…………へぇー……なんだそれ……」ボソッ


ソラール「さぁっ! 受け取ってくれ!」ガシッ


男「あ、ありがとうございます……」


キーンコーンカーンコーン


ソラール「――おぉ、これで授業も終わりか……。しかし、未来有望な太陽の戦士も見つかったことだし、実に良い授業だった」


男「あ、あはは……」


ソラール「――……そうだな。……オーンスタインくんとスモウくんには、私のほうから言っておこう」


男「そ、ソラール先輩……本当ですかっ?」


ソラール「当たり前じゃないか! 男くんと私はいわば、兄弟。困ったときは、いつでも頼るといい」


男「……あ、ありがとうございますっ!」


ソラール「はっはっは! それじゃあな、男くん。勉学に励めよっ」ハッハッハ


男「はいっ!」


男「なんかもう……。俺からしたら、太陽みたいな人だな……――」







アオニート「――おっすっ! 男、大丈夫だったか?」


男「………………」ツーン


アオニート「い、いやぁ悪かったって!」


アオニート「で、でもまぁ、ソラール先輩と仲良くなったみたいじゃないか! いったい、なにしたんだ?」


男「さぁね」ツーン


アオニート「お前……。……男だって、俺が玉ねぎ二つにやられてた時、助けてくれなかったろっ?」


男「あれは自業自得って言うんだよ……」


アオニート「まぁまぁ! チャラにしてやるからよっ!」


男「いや、だから……。……はぁ、わかったよ。ごめんねアオニート君」


アオニート「おうよっ!」


アハハッ‼
マッタクナァ…



「――お、男くんっ」


男「えっ……? ――あっ、れ、レア先生……」


レア「……さっきはありがとう。ごめんね、先生が情けないばかりに……」


男「い、いえっ! お礼は俺よりも、グヴィネヴィア先輩に……」


レア「さっき行ってきました。……でも、グヴィネヴィアさんも男くんに……って」ニコッ


レア「……とにかく、ありがとうございました。……奇跡のことなら、いつでも聞いてね」


男「は、はいっ! よろしくお願いしますっ!」


レア「ふふっ、それじゃあね……」


男「あはは………………」


アオニート「――おい、男」


男「……なんだい?」


アオニート「説明しな。どういうことだ?」


男「……あぁー、そっか。アオニート君倒れてたもんね……」


男「えっとね……――」








男「――なんてなことがあったんだよ……」


アオニート「マジかよっ!! うおぉおお、俺が助けてればなぁああああ……」ガックシ


男「あ、あはは……」


男「――しかし、俺があんな魔法使えるなんて……」


アオニート「は、魔法? 奇跡だろ?」


男「そ、そうそう。奇跡奇跡……」


アオニート「たしかに……。たぶん、一年でそれ使えるのは玉ねぎだけだぞ」


男「い、いいかげんやめなよ……。そう呼ぶの……」


アオニート「いいのいいのっ! ……男は奇跡得意だったんだなぁ……」シミジミ


男「い、いや、どうなんだか……」


男「――……でも、グヴィネヴィア先輩もすごかったよっ! なんか、手に電気がビリビリしてた」


アオニート「そりゃ当たり前だろ? グヴィネヴィア先輩は奇跡検定1級もってんだから……」


男「そ、そんなのあるんだ……」ヘェー…


アオニート「先生でさえ取るのは難しいと言われる1級だからな。本当はグヴィネヴィア先輩、授業なんか受けなくてもいいんだろうな」


男「そんなすごいんだね……」


アオニート「ってか、有名な話だろ? お前、ホント何も知らないんだな」


男「あ、あはは……」



キーンコーンカーンコーン



男「――えっ、今日はこれで終わりなの?」


アオニート「まあ、最初だからなー。お前だって、奇跡使ったんだから疲れたろ?」


男「え? ……あぁ、確かに……少しだるいかも……」


アオニート「そういうことだ。……さて、今日もどっか見学行くかー?」


男「あぁ~……。特にはなぁ……」


男「――あっ、この黒騎士部っていうのと、銀騎士部っていうのは何が違うの?」


アオニート「えっ……お前、あれに興味あるのか……?」


男「まぁ……少し気になるぐらいだけど……」


アオニート「そうだなー……。まぁ、何が違うかっていうと、鎧の色ぐらいしかやってることは変わらないんだが……」


アオニート「……しいていうなら――」



アオニート「――黒騎士部が中二病の集まりで、銀騎士部がナルシストたちの集まり……って感じかな」



男「……へぇ……」


アオニート「どっちか行くか?」


男「いや、いいや……」


男「うーん……。――アオニート君は行きたいところはないの?」


アオニート「あー……俺は部とかに入るつもりじゃねぇんだよな」


男「じゃあ……なにするの?」


アオニート「ふふっ……。実はな、ファランの番人同好会ってのがあってさっ! 俺、そこにしようとしてるんだよなっ!」


男「ふぁらんの番人…………?」


アオニート「あぁっ! かっこいいだろっ!? 俺、ファランの不死隊に憧れててさっ! ……あの、盾を持たない独特な戦闘スタイル……。痺れるなぁ……」


男(……なんだろう、自衛隊みたいなやつかな……?)


アオニート「俺、卒業したら、絶対にファランの不死隊に入るんだっ! ちゃんとトレーニングもしてるんだぜっ!」キラキラ


男「そうなんだ……。でもなんか、辛そうだけど……」


アオニート「大丈夫大丈夫っ! 俺、我慢強いし」ヘラヘラ


男(あ、これダメなやつだ……)



男「――……まぁでも、アオニート君も行きたいところがないんだったら、俺は帰って休もうかな……」


アオニート「あー……。まぁたしかに、急ぐ必要はないしなー」


アオニート「んじゃあ、帰るかー」


男「うん、そうだね……――」







アオニート「――そうだからさっ! ちゃんと、寝る前に腕立て10回と腹筋10回やることにしてんだっ!」


男「……へぇー……。……まぁ、継続は力なりっていうしね……」


アオニート「この調子でいけば、入隊試験なんて余裕だと思うんだけどなっ」ヘラヘラ


男「が、がんばってね……」アハハ…



カランカランッ‼



男「――っ!」ビクッ


アオニート「ん? あぁ……物が落ちただけか」


男「そうだ…………ね…………あれ……?」


男(あの物陰から、少し出てる布は……。……ま、まさか……ね……)


アオニート「――あ? どうかしたか?」


男「い、いやっ! 大丈夫大丈夫……」


男「……そんな、ロザリアさんが居るわけ……――」チラッ




ロザリア「………………」ジー




男「――……よし、帰ろう。帰って早く寝よう」スタスタ


アオニート「えっ? あ、あぁ……、そんな急がなくても…………」


男「いいやっ、一刻も早く帰ろう」スタスタ


アオニート「わ、わかったよ……――」



――――――


――――


――

―――翌朝


チュンチュン…


男「――……ん……うぅ……」モゾモゾ


男「………………朝か……」


男「…………あぁっと……昨日は何したんだっけな……」ゴソゴソ


男「アオニート君と一緒にご飯食べて……」


男「あぁ、そうだ。学園から色々支給品があったから、とりあえず朝ごはん用にパン貰ったんだっけな……」


男「……でも、貰えてよかった……。諭吉が通用しそうな世界じゃないし……」


男「うん、いい匂いだ。いただきまーす」モグモグ…



ドンドンッ


アオニート「――おーいっ! そろそろ行こうぜー!」


男「あっ、はいはい! いま行く――」ハッ


男「あれ………………」


男「………………」


男「………………あれ……――」






男「――……なんで、焼いたパンが机の上に置いてあったんだ……?」






男「………………」


男「……寝ながら焼いたのか……いや、そんなまさか……」


男「………………」ゾクッ


男「……えっ、まさか……いや、そんな……でも……あれ……」ブツブツ



アオニート「――おーいっ? どうしたー!」ドンドン



男「あ、あぁ! いま、行くよ……」


男「……鍵は、閉まってるよな……」ガチャリ

ガチャ

アオニート「あぁ、やっとか……。なんだ、寝てたのか?」


男「い、いや……、なんか……ね。色々……ね……――」


――――学校



男「――部屋の鍵ってさ、一本しかないよね?」


アオニート「あ? 知らねぇよ。一本しかもらってねぇなら、一本じゃないのか?」


男「……だよな……」


アオニート「なんだ、失くしたのか?」


男「いや、そういうわけじゃないんだけどさ……」


男「――……そうだよな、無意識でやっただけかもしれないし……。気にしない気にしない……」ブツブツ


スタスタ…


男「あ、あれは……」


男「――ジークリンデさんっ! おはよう」


「うーむ……?」


アオニート「はぁ? お前、何言ってんだ……?」


男「……え??」


「貴公、それは私に言ったのか?」


男「あ、あれっ!? ご、ごめんなさい! え、えっと……ジークマイヤー先輩……でしたっけ? あ、あれ、でもここ一年の廊下だし……?」


「はっはっは! まぁ、気にすることはない」


ジークバルド「私の名はジークバルド。クラスは違えど、仲良くしようではないか!」


男「あ、あっ……はい……こちらこそ……」


男(え、こんなの……な、何人いるの……? で、でも、『ジーク』ってついてるし、兄妹とかなのかな……?)


アオニート「――ったく……見りゃわかるだろ??」


男「あ、あはは……」


男(わかるわけねぇよ……――)






ジークリンデ「――あははっ、そうだよね! 初めて見る人には見分けづらいよね!」


男「や、やっぱりそうだよねっ? 俺だけじゃないよね??」


ジークリンデ「うんうん。ホークウッドは小さい頃から見てるからわかるってだけだよ。……まぁでも、いつか男くんもわかってくれると嬉しいな」ニコッ


男「う、うん……。がんばるよ……」



アオニート「別に頑張って覚えるほどの価値もねぇけどな。玉ねぎは玉ねぎだし」


ジークリンデ「……あんた、最近えらいしつこいわね……」


男「ま、まぁまぁ……」


男「――そ、そうそう、ジークリンデさんとジークバルドくんは兄妹とかなの??」


ジークリンデ「ううん、違うよ。まぁ、よく言われるけどねー」


男「あっ、違うんだ」


アオニート「あぁ、こいつの住んでる地域が変なんだよ」



ガンッ‼



アオニート「――ってぇ!!」


ジークリンデ「あんたは少し、言葉を控えなさい……」


アオニート「事実だろっ?」


ジークリンデ「……まぁ、否定はしないけど……」


男「な、なんかいろいろあるんだね……」


ジークリンデ「ま、ちょっとね」


ジークリンデ「――私の住んでる地域はカタリナ地区って言うんだけど、その中でも私の家の周辺では「ジーク」って名前の最初につけると、縁起がいいって言われてるの」


男「へぇー。だからか……」


ジークリンデ「そう。だから近所には、他にもジークフリートさんとかジークジオンさんとかいう人もいるけど、別に親戚ってわけじゃ――」



男「じ、ジークジオンって人が居るの……っ??」



ジークリンデ「えっ? そうだけど……。……知りあい??」


男「え、あぁいや……。なんというか……うーん……」


アオニート「そんな名前の人居たっけか?」


ジークリンデ「居たでしょ? あんた、あんな特徴的な人忘れたの? ほら、赤い鎧の……」


アオニート「――あぁ、オニオンレッドか。そういやあいつ、そんな名前だったな」


ジークリンデ「な、なによそれ。……ちょっとかっこいいわね……」




ジークリンデ「――あっ、そうそう。男くん、昨日放つフォース使ってたよねっ?」


男「あ、あぁ……。正直、なんで使えたのかよくわからないけどね……」アハハ…


ジークリンデ「でも使えたのは事実だよ! すごいわ! ホークウッドとは大違いね」


男「あ、あはは……。そうかな……――」




アオニート「はっ、あんなクソみたいな奇跡使いたくもねぇわ」


男「あ、アオニートくんっ!?」


ジークリンデ「へぇ……『クソみたい』とは言ってくれるじゃない……っ!!」フォン…


男「あっ、ふ、二人とも……!」




ワーワーギャーギャー

ドンガラガッシャーン‼

ガンガンッ‼

ワーワー





男「……あぁ…………」


男「……まぁ、いっか」


男「さて、とりあえず準備でも……」ガサガサ



チクッ



男「――いっ……。な、なんだ……?」クルッ



カーク「――あぁ、男くん。ごめんね。ちょっとよそ見してたら、ぶつかっちゃったみたいで……」


男「あ、あぁ、大丈夫だよ。気にしないで……」アハハ…


カーク「………………」クルッ


男(あれー……怒ってる……? なんか俺やっちゃったかな……)ガタガタ


グイグイッ


男「――えっ? あ、あぁ、ロザリアさん……おはよう。」


ロザリア「………………っ!」


男「あぁ、これ? ちょっと今ね……。――大丈夫だよ、全然痛くないから……」


ロザリア「………………」ホゥ…


パァアア…


男「……えっ!? き、傷が……治って……」


男「――す、すごいっ! これも奇跡なのっ!? わぁ、ありがとうロザリアさんっ!」ガシッ


ロザリア「………………っ!!」カァアア…



カーク「」



男「あははっ! 俺も覚えたいなぁ……。今度、俺にも教えてよっ?」


ロザリア「………………!」コクコク


男「本当に? ありがとう!」


男「うわー……。奇跡ってこんなこともできるんだ……――」ボソッ


男「――――っ!?」ゾクッ



カーク「………………………………」ゴゴゴゴゴゴゴゴ…



男(な、なんだ……なんか寒気が……)

風邪ひいてた。
がんばる。




ガンガンッ‼

ドゥン‼


ジークリンデ「――あ、あら……今日はしぶといわね……」グググ…


アオニート「それは……こっちの台詞だ……っ!」グググ…




キーンコーンカーンコーン


ガララッ




ジークリンデ「なっ……!」ビクッ


アオニート「はっ、し、しまったっ! 見つかる――!」




レア「は、はーい……。それでは、皆さん……席についてくださーい……」




男「あ……あれ……? ミルドレット先生じゃ……ないっ……!?」



レア「え、えー、ミルドレット先生は……えっと……諸事情で……今日はお休みです」アワアワ



アオニート「…………ダメだったんだな」


男「ダメ……? なにが?」


アオニート「合コンだ。だいたいミルドレット先生が急に休む時は、それが原因なことが多いからな」


男「へ、へぇ…………」


アオニート「しかし、助かったぜ……。ミルドレット先生に目を付けられたら、この先一年キツイからな……」フゥ…


男「はっ、そうか……。あえて、誰かが犠牲になれば…………」チラッ


アオニート「だとしたらお前を巻き込んでやるからな」


男「じょ、冗談だよ……」アハハ…



レア「――そ、それでは、出席をとりまーす」ピラッ


ピカー


レア「………………?」


レア(なんで、男くんの名前が光ってるんだろう……)

――――職員室


ミルドレット「――ねぇっ!! 酷いと思わないっ!? クラちゃんだってそう思うでしょぉお……!!」ガシッ


クラーナ「誰がクラちゃんだ。二度と呼ぶなよ」


ミルドレット「そんなこといわないでぇぇ……ひっく……」グスッ


クラーナ「……というか、お前酒臭くないか?」


ミルドレット「当たり前でしょっ!! 飲まなきゃやってられないのよぉ……」シクシク…


クラーナ「はぁ……。……まぁ、アレだ。次があるだろ」シレッ


ミルドレット「何よぉ! クラちゃんだって独り身のくせにぃいい……」ガシガシ


クラーナ「あーそうだな、はいはい」


ミルドレット「せっかく……昨日は運命の人に出会えたと思ったのにぃ……」ヒック


クラーナ「いつもそう言ってるじゃないか。そんな簡単にいるもんでもないだろう」


ミルドレット「そうっ! そうなのよぉっ! 簡単にはいないんだからぁ……!」ウワーン


クラーナ「…………もうあれだ、帰れ」


ミルドレット「酷いわぁっ! クラちゃんまで私をいらない子扱いするのねぇっ……!」


クラーナ「………………」ウンザリ…



キーンコーンカーンコーン



クラーナ「――あぁ、ほら。予鈴なったぞ」


ミルドレット「あぁー……。………………気持ち悪い……」ウッ…


クラーナ「はぁっ!? ちょ、こ、ここで吐くんじゃないぞっ!?」


ワーワーギャーギャー


レア「――ミルドレット先生ー? どこにいるんです…………あっ」


クラーナ「あぁ、レア先生……。悪いんだが、こいつの代わりに教室に行ってくれないか? もう、帰らせるから……」


レア「あ、あぁ……わかりました……」


クラーナ「ほら、早くトイレにでも毒沼にでも行って吐いてこい」


ミルドレット「イヤだぁ……! クラちゃんも一緒にぃ……」


クラーナ「わかったからっ! ほら、ちゃんと歩け……」


――――――

――――

――



レア「――え、えー……、これで連絡事項はすべてです……」


レア「……あっ! もう一つありました!」アセアセ


レア「今日、ダークレイス注意報が発令されました。……まぁ、この辺りは大丈夫だと思いますけど、皆さん緊急時の時には慌てないようにしましょう」


エー‼
マジカヨ…
コワイナァ…
ザワザワ


男(……ダークレイス注意報……? 光化学スモック注意報の仲間みたいなやつかな……――?)







キーンコーンカーンコーン




男「……ね、ねぇ、さっき言ってた、ダークレイス注意報って……――」



アオニート「――さってと……。確か今日は魔術だったよなぁ?」



男「ま、魔術……っ!?」グワッ


アオニート「あ、あぁ……違ったっけ?」


男(魔術……っ!! それは魔法とイコールでいいんだよねっ? まぁ、奇跡も魔法みたいなもんだとは思うけど、本当の魔法が……!)


男「魔術っ! 楽しみだねっ!」キラキラ


アオニート「お、おう……。男は、魔術が得意なのか?」


男「い、いや、まぁ……なんていうかな。興味がある……みたいな?」


アオニート「あー、見た目的にそっち系っぽいもんな」


男「……そっち系……?」


アオニート「――まあ、いいや。そいじゃ、さっさと行こうぜー」


男「あっ、うん!」






――――


アオニート「――ってことがあってな、とりあえず左手にパリングダガー持ってるんだよな」


男「へぇー……??」


男「――あれっ……っ!? ……しまった、教室に忘れ物しちゃった。す、すぐ取ってくるから、アオニートくん先に行っててっ!」ダッシュ


アオニート「おーう。待ってるぞー……――」

ミス。

レア「今日、ダークレイス注意報が発令されました。……まぁ、この辺りは大丈夫だと思いますけど、皆さん緊急時の時には慌てないようにしましょう」

 ↓

レア「今日、ダークレイス注意報が発令されました。……まぁ、この辺りは大丈夫だと思いますけど、皆さん緊急時には慌てないようにしましょう」


ダッダッダ…


男「――えぇーっと……。……あっ、こっちから行った方が、教室に近道だったりするかな……?」スタスタ…


男「……しかし、魔術かー。使えたら、俺も魔法使いってことになるのかなー……」


男「…………まぁ、使えるかもわからないけど……」


男「で、でもっ! 奇跡も使えたんだし、きっと魔術だって……っ!」




ヒソヒソ…




男「――ん? これは……話し声……?」


男「だ、誰かいるのかな……」コソコソ




「――決まりですね……。決行日については……また考えるとしましょう」


「ほ、本当にやるんだよね……?」




男(……あれは……、確か入学式の時に挨拶してた……。たしか、サリヴァーン……先輩だっけ……?)


男(一緒に居る、小太りの人は誰だろう……? あれが、書記の人なのかな?)




サリヴァーン「当たり前でしょう? これも、エルドリッチ先輩のため……!」


?「で、でもぉ……。き、キアラン先輩とか……怖いし……」


サリヴァーン「ふんっ。キアランはどうせ来年には居ない……」


サリヴァーン「私たちの目的はグウィンドリンただ一人。……なに、私の計画通りに行けば、なんのことはない」



男(……ぐ、グウィンドリン先輩……!? な、なんだ……この人たち、いったいなにを……?)



?「う、うん……。そうだね……」


サリヴァーン「――さて、それでは授業が始まってしまいます。……たしか、一年生と合同だとか……。はぁ……面倒くさい……」


ツカツカ…



男(――って!!? マズい、こっちに来るんじゃないのか……!? ど、どうしよう……! 隠れないと……でもそんなところもないし……ど、どうしよう――)




ガシッ




男「――――っ!!?」


男「――――っ!!?」ムグッ…!


男(そ、そんなっ!? いつの間にこんな近くに……!?)


「……静かにしてろ」ボソッ


男「………………?」


ホワァ…


男(……? な、なんだ今の感覚……?)



ツカツカ…



男(――って! き、気付かれ――!!)





サリヴァーン「………………」ツカツカ…


?「………………」ススス…





男(………………あ、あれ……?)


男(…………行っちゃった……。どうして……)


「――……もう、大丈夫か」パッ


男「――ぷはっ……。……あ、えっと……ありがとう、ございます……」オドオド


「気にしなくていい」スッ


男「あ、あの! お、俺は男って言います! あ、あなたは……?」


オーベック「……俺の名はオーベック。……一応、お前と同じクラスなんだがな」


男「えっ!? あ、ご、ごめん……なさい……。まだ、全然覚えられてなくて……」


オーベック「――授業に向かおうとしてたら、コソコソしてる奴が見えたからな。何をしてんのかと思ったんだが」


男「あ、あはは……。ちょっと、忘れ物をしちゃって……。……で、でも、全然気づかなかったよ」


オーベック「あぁ、癖で……な。……それで、お前は何をしてたんだ? 忘れ物を取りに戻ってるようには見えなかったが」


男「え、えぇっと……。……なんていうかな……その……」モゴモゴ


男(あぁ、どう説明すればいいのかわからない……。結局どういうことなのかもわからなかったし……)ウーン…


オーベック「……別に、話したくないならいい」フンッ


男「――い、いやっ! そういうわけじゃ……!」


オーベック「そんなことより、早く取りに行った方がいいんじゃないのか? ……もう授業始まるぞ」

男「――あっ! そ、そうだった……! ご、ごめんね、また後で!!」ダッシュ


オーベック「……あぁ」


タッタッタ…


オーベック「………………ふんっ」ツカツカ





キーンコーンカーンコーン


アオニート「――ったく……。ギリギリじゃねぇか」


男「ハァ……いや……まったく…………ゼェ……疲れた……」ハァハァ…


アオニート「何かやってたのか?」


男「え? ……あぁー、ちょっとね……」


アオニート「……ふーん」


アオニート「――ま、いいけどよ」




「よぅし……、それじゃ授業始めるぞぉ……」



アオニート「お……、へぇーアレがローガン先生か……」


男「ローガン……先生。……有名な人なの?」


アオニート「はぁ?? お前……」


アオニート「――ハァ……。ま、男が何も知らねぇのは今に始まったことでもねぇか……」


男「あ、あはは……」


アオニート「ローガン先生、言わずと知れた魔術の先生だ。……結構、いろんなところに呼ばれるぐらいの人だぞ? 聞いたこともないのか?」


男「え、っと……。そう、言われれば……聞いたことがあるような……ないような……」シラー


アオニート「まったく……」



ローガン「あー今日の授業は、昨日の奇跡の授業で三年生と合同でやってたのを見て、楽そうだったから今回も採用した」



男「……楽そうって……」


ローガン「今日は二年生とだけどな。よぉーし、怪我だけはするなよー」



男「…………な、なんか、適当な感じだね」


アオニート「まぁ、そういう人なんだよ。……ちなみに噂だけど、酒飲むとパンツ一丁になって、はしゃぐらしいぜ」


男「嘘ォッ!?」ビックリ


アオニート「――まぁ、それはそうと……」ボソッ


男「全然そんな人には見えないけど…………。……え、何か言った?」


アオニート「男、お前って魔術が得意なんだろ?」


男「…………あ、いや、そういうわけじゃ……」


アオニート「まぁまぁ、そんな謙遜しなくていいって」


男「全然そんなことはないんだけど……」


アオニート「俺にはわかる。……なにも持ってないように見えるのも、そういうことなんだろ?」


男「そ、そういうこと……??」


アオニート「姿を消す魔術ってのは有名だけどよ、聞いた話だと、自分の武器を消せる魔術ってのもあるんだろ?」


男(姿を消す……? ……そっか、だからさっきは気付かれなかったのか……)


アオニート「なぁ、男!」


男「なっ、なに!?」ビクッ


アオニート「隠さなくていいからさ、ちょっと魔術見せてくれよ……」コソッ


男「えーっと……」ダラダラ


アオニート「なんだよ、いいだろ? 俺とお前の那珂なんだしさ」


男「………………」


アオニート「一つだけでいいからさ! 別にいいだろ? ちゃちゃっと詠唱して、やってくれよ」


男「…………え、詠唱……」ゴクッ


男(…………そうか。……もしかしたらこの世界なら、俺にだって魔法が使えるのかもしれない……!!)


男(そうだ、そうだよ! 昨日は奇跡だって使えたんだし、可能性は……!!)グッ


男「――よし……!」










男「黄昏よりも昏きもの……血の流れより紅き――」ゴォオオ‼








アオニート「――はぁ? 何言ってんだ?」ポカン


男「」

ミスった。


× アオニート「なんだよ、いいだろ? 俺とお前の那珂なんだしさ」

○ アオニート「なんだよ、いいだろ? 俺とお前の仲なんだしさ」


男「…………ちょっとトイレ行ってくる」フラッ


アオニート「え? お、おい……」


男「………………」トボトボ…






ジャー…


男「――いや、逆に考えようじゃないか……」


男「そうだよ! もし、ドラグス○イブなんて万が一にも出来ちゃってたら、それこそ大変なことになってたに違いないし……」


男「うん、出来なくてよかった……」ハハ…


男「………………」


男「はぁ………………」


男(……ド○グスレイブができなかったことも少し残念ではあるけど、それより気がかりなのはさっきの事なんだよな……)


男(でも、俺が見たことをそのまま誰かに言っても、信じてもらえるとも思えないし……)


男(そう思われてもグウィンドリン先輩には言っといた方がいいかな?)


男(うーん……。困った……)


男「はぁ………………」トボトボ




「――おや、どうかしたのかい?」




男「……っ! は、はいっ!」


ペイト「いやぁ、すまないね。……ボクの名前はペイトっていうんだ。なんだか悩んでるようだったから、つい声かけちゃったよ」


男「ペイト先輩……ですか。――あ、あはは……悩んでるように見えてました……?」


ペイト「まぁね。…………どうかな、よければ話聞こうか?」


男「あ……あぁ……っと……」ウーン…


男(でも……そうだよな……。俺がこのまま黙ってるよりは、グウィンドリン先輩と同級生のペイト先輩に言った方がいいかも……)


ペイト「話すだけでも楽になるよ思うよ? ね? ボクを信用してよ……?」ニコッ


男(悪い人では、ない……よな……?)


男「あ、えっと……実は……――」



ペイト「………………」ニヤッ


男「……実は、グウィンドリン先輩の事なんですけど……」


ペイト「グウィンドリン君かー! なら、ちょうどいい。ボクは彼の親友だからね」


男(……彼?? ……まあ、いいか)


男「さっき、一階の廊下で聞いちゃったんです……。生徒会副会長のサリヴァーン先輩が……――――」








ペイト「――……へぇ、そんなことが」


男「あ、あの、ペイト先輩はどう思いますか?」


ペイト「そうだね……。正直なとこ……あんまり信用はできないね」


男「…………そう、ですよね」


ペイト「副会長のサリヴァーン君は、成績優秀だし先生からの評価も高いし、後輩からの人気もある。……一年生の君が何か言ったところで、グウィンドリン君が素直に受け止めるとは思えないな」


男「はぁ…………」


ペイト「――ただ、生徒会に黒いうわさが流れてるのは、ボクも知ってる」


男「えっ?」


ペイト「だからグウィンドリン君には、ボクが責任をもって伝えといてあげるよ!」


男「ほ、本当ですか!?」


ペイト「あぁもちろん! 親友であるボクから伝えたほうが、グウィンドリン君も信用してくれるだろうしね! ……でも、男君」


男「はい……?」


ペイト「これは非常にデリケートな問題だ。だからこのこと、他の人には絶対に他言無用だよ? いいね?」


男「わ、わかりました……!」


ペイト「よし! ……それじゃ、授業に戻ろうか」


男「あ、そういえば授業中でしたね……」アハハ…


ペイト「あぁ、もしよかったらボクが男くんの魔法を見てあげようか?」


男「いえ、友達が待ってるんで……。ありがとうございます」


ペイト「そうか……。それじゃ、くれぐれも……ね?」


男「はい! それじゃ――」ダッダッ




ペイト「……これは、いいネタだなぁ……」ボソッ


メタルギアやってた。
アイマスが出る前に、ちょくちょく進めます。


男「――ふぅ……。なんだか、人に話したらすっきりしたな」


男「とりあえず、これで心配の種は消えたわけだし……」


男「がんばって魔術を……!」


男「……っと、ところでアオニート君はどこだろう」


男「さっきはあの辺に……――」





アオニート「あっ……いや、その……大丈夫っす……」


「いや、本当なんだって。この指輪買うとさ、すげぇいいことあるんだよ。いやマジで」


アオニート「そ、そうなんすか……。で、でも、俺は……」


「いやいやいやいや。お前は運がいいなぁー。うん、つくづく運がいい。な? 先行投資ってやつだよ。わかるだろ?」ガシッ





男(……なんか、スキンヘッドの人に絡まれてる……。先輩……かな? あまり、いい人には見えないけど……)



アオニート「あ、ぁの……で、でも……」チラッ


男「あっ……」


アオニート「――っ! お、おーい! 男っ!!」


男「………………」フイッ


アオニート「あ、あれ? お、おーいっ!!」


男「……ごめん」


アオニート「えっ、ちょっ!」


ガシッ


「ん~? どうしたどうした。話をうやむやにしようったって、そうはいかないぜ?」


アオニート「あ、あぅ、そんなつもりじゃ……」


「まぁ、まだじっくり時間はあるわけだし、ゆっくり話し合おうぜ? なぁ、一年生?」


アオニート「あ、あはは…………――」






男「……さ、さてと、どうしようかな……あはは……」



男「……あれっ? ……あの人って……さっきの助けてくれた……?」


男「――ね、ねぇ! お、オーベック君……だよね?」


オーベック「お前は……。なんだ、なにか用でもあるのか?」


男「ま、まぁ……。……改めて、さっきはありがとう。助かったよ」


オーベック「ふんっ、そんなことか。……別に気にしなくていい。ただの気まぐれだ」


男「ごめんね。自分でも、何が起きてるのか整理できてなくて……、いまでもよくわからないんだけど……」


オーベック「……気にしなくていいと言った」


男「うん……」


男「――あ、そうだ! ねぇ、さっき使ってたのってもしかして、姿を消す魔法とかなのっ?」


オーベック「そうだが……。なんだ、わかってなかったのか?」


男「ぜ、全然! すごいんだね! オーベック君って」


オーベック「なんだ、お前も魔術が得意なように見えたが……。違うのか」


男「そ、そんなに得意そうに見えるのかな……?」


オーベック「まぁ、普通は思うだろうな」


男「そうなんだ……」


男「……じゃあさ! オーベック君、俺に魔法を教えてくれない?」


オーベック「断る」


男「は、早いね……」


オーベック「なんのための授業だ。二年生に聞けばいいだろう」


男「そ、それはそうなんだけど……」


男「……オーベック君と、仲良くなりたいなって……思って」ボソッ


オーベック「………………」


男「ご、ごめん。――ま、まぁ、クラスメイトとしてこれからも……」


オーベック「…………チッ。――なんの魔術が使いたいんだ?」


男「えっ……?」


オーベック「さっきのか? それとも別のか」


男「お、教えてくれるの……?」


オーベック「……教えなくてもいいんだぞ」


男「い、いやいや! じゃ、じゃあさっきの! さっきのでお願いしますっ!」


――――――

――――

――




男「――わぁ、できたっ! ねぇ、できてるよねっ!? オーベック君!」


オーベック「…………あ、あぁ……」


男「わぁ…………! これが魔法かぁ……!」ワイワイ


オーベック「……すごいな。まさか、こんな早く覚えるとは思わなかった」


男「えっ? えへへ……。まぁ、先生の教え方が良かったからかな」


オーベック「…………ふんっ、調子に乗るなよ。これはまだまだ、初歩だからな」


男「うん! ありがとう、オーベック君」



キーンコーンカーンコーン



男「あっ……。これで授業も終わりだね……。残念だなぁ、せっかく楽しくなってきたのに」


オーベック「…………決めておけ」ボソッ


男「えっ?」


オーベック「……次の授業までに、覚えたい魔術を決めておけと言ったんだ」


男「……次も教えてくれるの?」


オーベック「……暇だったらな」フンッ


男「わかった、決めておくよ! よろしくね、オーベック君」


オーベック「………………」




ガシッ


アオニート「――よぉ……これはこれは、男くんじゃないですか……」


男「………………あはは……」ダラダラ


アオニート「親友を置いて、いったい何やってたんですかねぇ……?」


男「あ、あのね、お、オーベック君に魔法を……――」



ガラーン…



男「……あ、あれ……もう、いない……」


アオニート「オーベック? あぁ、そういや同じクラスだったか……」


男「そ、そうそう! 魔法を一つ使えるようになったんだ!」


アオニート「へぇ……。そりゃ、俺を見捨ててくれた甲斐があったってもんだなぁ?」


男「……ご、ごめん」


アオニート「……はぁ……。まぁ、パッチ先輩につかまったんじゃ、お前が居てもどうしようもなかったけどよ……」


男「ゆ、有名な人なの?」


アオニート「悪い意味でな。……ほれ、これやるよ男」ポイッ


男「――わっ! ……っと、これは……指輪?」


アオニート「いま、パッチ先輩にもらったんだけどよ。俺は別の指輪付けてるし、お前にやるよ」


男「ね、ねぇ、なんか頭蓋骨みたいにみえるんだけど、気のせいかな……?」


アオニート「さぁ? とりあえずつけるといいことあるらしいぜ」


男「そ、そうなんだ……。じゃ、じゃあ、ありがたくいただくよ」スッ


アオニート「――さぁって! さっさと教室に戻ろうぜー。疲れちまったよ……」


男「うん、そうだね」



――

――――

――――――







「――貴様、その情報……どこで……?」


「さぁね? ところで、どうする? ボクはこれをグウィンドリン君に言いに行ってもいいんだけど……?」


「……くっ! 望みは何でしょうか……?」


「来年さぁ。ボクを生徒会に推薦してくれないかな? あぁあぁ、別に会長になりたいってわけじゃない。監事とかでいいからさ」


「………………」


「……ま、どっちでもいいんだけどね」


「……わかりました。しかし、わかってるでしょうね? もし、これが……」


「もちろん、わかってるよ。……ボク自身はグウィンドリン君とは、何の関係もないし」


「……ならいい。ちなみに、余計な詮索もしないでくださいね。……計画に支障が出る」


「はいはい。わかってるよ……――」

side story

   『ペトルス先生の憂鬱』



―――職員室


ペトルス「……ふぅ、明日の準備も終わったし、そろそろ帰るか……」


ペトルス「……ん? あれは、レア先生……。レア先生もこれから帰るとこか」


ペトルス「この前は邪魔が入ったが、今度は……」


スタスタ…


ペトルス「――レア先生」


レア「――っ!!? あ、あぁあああ、私、急用があるので失礼しますっ!!」ダッシュ


ペトルス「………………」


ペトルス「…………チッ、まったく最近のやつは……」


ペトルス「――……あれは……」



クラーナ「はぁ……疲れた……」グデー



ペトルス「……クラーナ先生か……。うん、悪くないか……」


ペトルス「――……あ、あぁ、クラーナ先生。クラーナ先生もこれから帰るとこですか?」


クラーナ「え? あぁ、ぺトルス先生……。はい、そんなとこですね」


ペトルス「そうですか。……もし、よろしかったら、今日……飲みに行きませんか?」


クラーナ「あぁー結構です。家に帰って、まりもの水かえないといけないんでー」


ペトルス「ま、まり……。――た、たまには……」


クラーナ「――あ、ペトルス先生。……さっきレア先生に話しかけようとしてましたよねぇ?


ペトルス「――っ。あ、あれは……」


クラーナ「あれ……、私の記憶が正しかったらなんですけど、グウィン校長にきつく言われてませんでしたか? ……どうでしたっけ?」


ペトルス「あ……う…………」


クラーナ「……まぁ、私に関係のないことなら、とやかく言うつもりはないですが……」


ペトルス「………………」




クラーナ「――あぁ、そうだ。ミルドレットでも誘ったらどうです? よろこんで着いていくと思いますよ」


ペトルス「いや、アレはちょっと……」


クラーナ「――では、私はこれで……」


ペトルス「あ、はい……。お疲れ様です……」



ガララ…バタン



ペトルス「………………」


ペトルス「……チッ。……魔女が調子に乗りやがって……」


ペトルス「仕方がない。もう、誰も残ってないし、今日のところはおとなしく……――」


ペトルス「……ん? ……あれは」


ペトルス「たしか、リーシュとか言ったか……」


ペトルス「……ふんっ、この際アレでもいいか……」


スタスタ…


ペトルス「――リーシュ先生、お疲れ様です」


リーシュ「えっ? あぁ、これはこれはぺトルス先生。お疲れ様です」


ペトルス「もう帰りですか?」


リーシュ「そうですね。これから帰ろうかとしてたところです」


ペトルス「それはそれは。……どうですか? これから一緒に飲みにでも行きませんか?」


リーシュ「奢りですか?」


ペトルス「……えっ?」


リーシュ「奢りですか?」


ペトルス「あ、あぁ……。そ、そうですね、私が奢りましょう……か」


リーシュ「なら行きます」スクッ


ペトルス「そ、そうですか! で、では……」


ペトルス(ふんっ、まぁいい……。飲ませてしまえば、こっちのものだ……――)





―――翌朝


レア「あっ、今日ペトルス先生おやすみなんですか?」

「えぇ、急に。困るんですけどねぇ……。申し訳ないんですけど、かわりに授業に出てもらってもいいですか?」

レア「は、はい。大丈夫です」

レア「それにしても、急にどうしたんでしょう……? ――リーシュ先生、何か知ってます?」


リーシュ「…………さぁ? わかりません」ニコッ

キーンコーンカーンコーン

レア「――それでは、皆さん気を付けて帰ってくださいね。さようなら」


サヨナラー‼
ワーワー
オワッター‼
カエロウゼー‼


男「ふぅ……」


アオニート「――よっし、男! 帰るかー」


男「あ、実はちょっと行きたいところがあるんだよね」


アオニート「おっ、行きたいところ? どこだ?」


男「飼育委員に。……あれからアルトリウス先輩にお礼も言ってないし。それに、他の委員会とかは……その……意味わからないし……」ボソッ


アオニート「ふーん、そうか」


男「――あっ、全然先に帰っちゃっててもいいよ? 付き合ってもらうのも悪いし」


アオニート「いや、別にそんなことはないんだが……。――でも、そうだな」


アオニート「ちょっと俺も、ファランの番人同好会を見てこようかなって思ってたんだよ」


男「そっか。……じゃあ、また明日だね」


アオニート「おう。じゃあなー!」




男「……さて、それじゃ行こうかな――」


チクッ


男「――いっ!!」


男「な、なんだ……?」クルッ


カーク「……ん? あぁ、ごめんごめん。気付かなかったよ……」


男「あ、あぁ、大丈夫……だよ……」アハハ…


ロザリア「………………っ!」グイグイッ


男「えっ? ――あ、ロザリアさん……」


ポワァ


男「わぁ……やっぱりすごいねっ! ありがとう」ニコッ


ロザリア「………………っ」カァアア




カーク「………………」ゴゴゴゴゴゴ…


男(……あれ、なんか最近同じようなことがあったような……)ゾクッ


ヨルシカ「あれ、今日はアオニート君は一緒じゃないんですね」


男「あ、ヨルシカさん。うん、俺はこの前飼育委員のアルトリウス先輩に迷惑かけちゃって、あれ以来お礼も言ってなかったから……。アオニート君は、同好会を見に行くんだって」


ヨルシカ「そうなんですか」


男「二人はどうするの? やっぱりヨルシカさんは風紀委員で、ロザリアさんは保健委員なの?」


ヨルシカ「えぇ、前から決めてましたしね。――……あっそういえば、兄様が男さんも風紀委員に入らないのかと、気にしてましたよ?」フフッ


男「えっ?? お兄さん……?」




――アオニート「あー……。まあ、あの人はある意味伝説みたいな人だからなぁ……」




男(――って言ってた、あの? なんでだろう……、会ったことあったかな……??)


ロザリア「………………っ」グイグイッ


男「ん? どうしたの?」


ロザリア「………………!」ポワァ


男「奇跡……? ――あ、そっか。教えてほしいってお願いしたんだよね。今度、ゆっくり教えてくれるとうれしいな」ニコッ


ロザリア「………………っ!」コクコクッ


男「ありがとう! ……よし、じゃ二人とも、また明日!」


ヨルシカ「はい」ニコッ


ロザリア「…………っ」




――――――

――――

――






「――あら、このクラブに入りたいの……?」


「……へぇ、なかなかいい目をしてるわね」


「――わかりました、認めましょう。……ただし、このクラブは一度入れば抜けることは許されません。今なら、間に合いますよ?」


「…………どうやら、覚悟はあるようですね」


「……私? ……そうですね、ほかの部員からは『簒奪者』と呼ばれています」




「――では、歓迎します。ようこそ……闇霊クラブへ」


男「――さってと……、たしか飼育委員はこっちの方向だったよなぁ……」


男「……着く前に、心の準備しとかないとなぁ……。前回はネズミと猫だけでお腹いっぱいだったわけだし……」


男「今度は何が出てくるのやら……」


男「――まぁ、考えてても仕方ないか……」


男「っと……、あれ? こっちの道だっけ……」スタスタ


男「あれ? ……うーんと……。……あっ、そういえばホームルームの時に、簡単な地図を渡されたなぁ……」ガサゴソ


男「……ん、どこだ?」



ドンッ



男「――うわっ!」


「おっと……」


男「ご、ごめんなさい! ちょ、ちょっとよそ見してて……!」


「いやいや……。……あれ? おぉ、男くんじゃないか」


男「……えっ?」チラッ


グウィンドリン「会ったのは入学式以来かな? ……でも、妹から君の話は聞いているよ」


男「ぐ、グウィンドリン先輩! こ、こんにちは」


グウィンドリン「ははっ、こんにちは。……ヨルシカと同じクラスなんだよね? あいつは少し世間知らずのところもあるけど、いい子なんだ。ぜひ仲良くしてやってくれ」


男「い、いえっ! こっちこそ、お世話になってばかりで……」


グウィンドリン「ところで、どこに向かっていたんだ? ……もしかして、風紀委員の見学にっ?」キラキラ


男「あ、い、いや……。し、飼育委員のアルトリウス先輩のところに……。少し用がありまして……」


グウィンドリン「なんだ、そうなのか……。……風紀委員には興味はないのかな? どうだい、一回見学だけでも……!」


男「や、やっぱり、俺には少し……荷が重いかなぁ……と……」アハハ…


グウィンドリン「ふむ……、そんなことはないと思うけどな。……しかしまぁ、強制するわけにもいかないか!」


男「なんか……ごめんなさい」


グウィンドリン「いやいや、気にしないで! ……それじゃ、またね!」


男「――あっ、ぐ、グウィンドリン先輩っ!」


グウィンドリン「ん? どうした、男くん」


男(今朝見たこと……。ペイト先輩はもう言ってくれたのかな? ……そんな感じには見えないけど……)


男「あ、あの……ペイト先輩から……聞きました?」


グウィンドリン「ペイト……くん……。――あぁっ、聞いたよ。……そんな恥ずかしがらなくてもいいのに!」アハハッ


男「なんだ……よかっ――」


男(……えっ? 『恥ずかしがらなくてもいいのに』?? どういう意味だ……?)


グウィンドリン「――あぁそうだ、それで思い出したよ。……はい、これ」ギュ


男「な、これは……?」


グウィンドリン「それはね、まぁ元はウチの部長が私にくれた指輪なんだが……。正直、私はあんまり使わないんだ」


男(指輪……。なんだろうこの模様……、蜂?)


グウィンドリン「……だから、それ上げるよ」


男「えぇっ? い、いやでもこれって……」


グウィンドリン「いや、是非つけてくれないか? たぶんそのほうが、ずっと有意義だと思うんだ」


男「で、でも……」


グウィンドリン「私がもってても、宝の持ち腐れってやつさ。そう、これは私からの入学祝いってことで!」


男「そ、そうですか……。……わかりました、ありがたく使わせていただきます!」


グウィンドリン「うん! いやよかったよ、ふさわしい人に渡せてさ。……それじゃ、今度こそまたね!」


男「は、はいっ! ありがとうございます!」



男「………………」


男「……やっぱり、きれいな人だなぁ……」ボソッ


男「――しかし、指輪もらっちゃったけど……」


男「使う?? そのままの意味なのか……。それともこの指輪には、何か特別な力が……?」


男「……まぁいいか。とりあえずつけとこう」


男「……アオニート君にもらったのもあって、なんか急にアクセサリーが増えたなぁ……」


男「――っと、こんなことしてる場合じゃない。アルトリウス先輩のところ行かないと……――」スタスタ…





スッ…


ペイト「――ふぅ……危ない危ない。さっそく嘘がバレちゃうところだった……」


ペイト「ま、もう大丈夫そうかな? 生徒会が何するつもりなのかは知らないけど、事が起きるまでは慎重に行かないと……」


――――――

――――

――


男「うーん……。迷ったかなぁ……」ウロウロ


男「というか、そもそも現在地がよくわからん……」


男「何か目印になるようなものはないかな……」キョロキョロ


男「――おっ、あれは何かの委員会の教室かな?」


男「それじゃ、その委員会とこの地図を合わせれば、現在地がわかるはずだよね……」


男「えっと……。ここは……?」




  『折れた直剣委員会』




男「………………」


男「た、たしかに、そんな委員会もあった気がするなぁ……」


男「………………」


男「ちょ、ちょっとだけ覗いてみようかな……」ソー…




「貴公、もしかして入会希望者か?」




男「――っ!!」ビクゥッ‼


ユリア「……驚かしてすまない。そんなつもりではなかったのだが……。――私の名はユリア。……貴公は……新入生のようだが」


男「こ、こちらこそびっくりしちゃって……。自分は男って言います!」


ユリア「男……そうか……。ほう……、これはこれは……」マジマジ


男「な、なにか……?」ビクビク


ユリア「……いや、なんでもない。……それで、入会の希望ということでいいのだろうか?」


男「へっ? ち、ちがっ――」


ユリア「それはよかった。新入生が来なくて困っていたのだ。……さぁ、中へ。茶でもだそうか」グイッ



男「――い、いやっ、ちょっと前を通りがかって気になっただけなんですっ! あ、あああの、自分急いでるんで、それではっ!」ダッシュ




ユリア「あっ……。………………見つけたぞ。あれは……いずれ…………」ボソッ


「――おや、どうしました? ユリア教頭先生」


ユリア「あぁ、ヨエル先生。……いや、今はまだ時期ではないな。……いずれ……その時は来るだろう」


ヨエル「………………?」


男「――あぁー……怖かった」ドキドキ


男「……でも結局、あの委員会は何をする委員会だったんだろう……?」


男「まぁ……いっか。もう、かかわり合うことはないだろうし……」


男「――おっ、この道は見覚えがあるぞ! よしよし、こっちのほうに歩いていけば……」


男「……見つけた。はぁ……ここまで来るのに、なんかすごい疲れちゃったなぁ……」


男「さて、アルトリウス先輩は居るかな……」


男「すぅ……はぁ……。もう、何を見たって驚かないぞ……。ネズミでも猫でもトカゲでもなんでもかかってこいだ……!!」



トントン



男「――し、失礼しますっ!!」バンッ‼





「――あら……? 初めて見る顔ですね……。失礼ですが、どちら様でしょうか?」




男「………………」


「………………? ――あぁ、もしかして新入生ですか? 飼育委員を希望の??」


男「………………」


「………………??」


男(……か……カラス……っ!!? でも、立ってるし……しゃべってるし……)


オルニフェクス「……え、えぇっと……、私は二年生のオルニフェクスといいます。……貴方のお名前は?」


男(……そうだ。そういえば入学式の時に見たなぁ……。最初は剥製かなんかだと思ってたのに……。こう、目の前に来ると……結構、デカいんだなぁ……)


オルニフェクス「…………??? あ、あの、ご用件は……」


アルトリウス「――おーっす。……って、あれ?」


オルニフェクス「あっ、委員長。いまちょうど新入生の子がきたんですけど……」


アルトリウス「おぉっ、なんだ男くんじゃないか! 今日はどうしたんだいっ? もしかして飼育委員に入ってくれる気になったのかなっ?」ガシッ


男「――……はっ!! あ……、アルトリウス先輩……?」


アルトリウス「…………? なにかあったのか……――??」



――――――


――――


――

よし、頑張ります。
艦これとデモンズやってたよ。



アルトリウス「――あはははっ! そうかそうか、そういうことだったか!」


オルニフェクス「はぁ……、まぁそうですよね」ガックシ…


男「あ、あのごめんなさいっ! お、俺、こういうのに慣れてなくて、その……」


オルニフェクス「いや、いいんですよ。むしろ、ビックリされないほうが珍しいですし……」


アルトリウス「いやいや……。まぁ、ボクはなんだかんだで色々な人を見てきたから、特に何も思わなかったけど……」


アルトリウス「――おっと、ところで。男くんはどうしてここに?」


男「実はこの前のことで、アルトリウス先輩にお礼をと思って……」


アルトリウス「あぁ、あはは。そんな気にしなくていいのに……」


男「とはいっても、なにかできるわけではないんですけどね」アハハ…


アルトリウス「……しかし、男くん。いま、入ろうとしてる委員会は本当に無いのかい?」


男「えっ……まぁ……」


アルトリウス「ふぅん……」チラッ


オルニフェクス「………………」ススッ



ガチャリ



男「…………あれ? な、なんで鍵を閉めるんですか……?」


アルトリウス「いやいや! 別に変なことを考えているわけじゃあないよ。気にしないでくれ」


男「い、いや、えっと……」


アルトリウス「オルニフェクスさん、お茶を淹れてくれるかい?」


男「あ、あのアルトリウス先輩? そ、そろそろ……」


アルトリウス「なぁに、もう少しゆっくりしてったって罰は当たらないさ。オルニフェクスさんもそう思うよね?」


オルニフェクス「まったくですねぇ、委員長」ニコッ


アルトリウス「さぁて…………――」





アルトリウス「――ゆっくり話そうか。男くん?」




待ってた
26とアクアはどう?

>>250
取れたよ。今回は運がよかった。



――

――――

――――――



スタスタ…


アオニート「――なんだよ。結局飼育委員にしたのか」


男「結局っていうか……。まぁ、なんていうか……」ゴニョゴニョ


アオニート「あん?」


男「そういうアオニートくんはどうだったのさ? ファランの……なんとかってやつに入ることにしたの?」


アオニート「え? あぁ……まぁ…………」


男「…………あれ? なんか歯切れが悪いね」


アオニート「まぁ、えっとさ。ちょっと、別の同好会もいいかなぁ……なんて思ったり……な」


男「前まであんなに、夢なんだーとか言ってなかった?」


アオニート「な、なんだよ! 未来はまだ決まったわけじゃないだろ!」プンスカ


男「まぁ……、いいけどさ。ちなみに、別の同好会って?」


アオニート「え? こ、古竜の…………――い、いやっ! なんでもない。忘れてくれ」アセアセ


男「そ、そっか。じゃあ、詳しくは聞かないよ……」


アオニート「あ、あぁ! なんか悪いな! ――それじゃ、また明日な男!」


男「うん、わかった……」



男「……なんだろう?」




side story

   『がんばれ、ミルドレット』




ミルドレット「――あぁー、毒沼に沈んでいきたい」ズーン…


クラーナ「おぉ行って来い。戻ってくるなよ」


ミルドレット「もうっ! 親友がこんなにセンチメンタルになってるっていうのに、止めてくれたっていいじゃん!」プンスカ


クラーナ「誰が親友だ。私にデメリットしかないだろ」


ミルドレット「はぁーあ……。クラちゃんもいつからこんなつまらない女になったのかしら……」


クラーナ「……こっちがため息つきたいよ、まったく……」


クラーナ「だいたい、お前レア先生にちゃんと礼とか言ったんだろうな? ただでさえ奇跡はあのサボった公然猥褻カット野郎のせいで大変だったってのに……」


ミルドレット「言ったわよっ! そこまで人間終わってないわ」


クラーナ「ほう……。私は礼を言われた記憶がないんだがなぁ……??」


ミルドレット「そ・れ・は! 私とクラちゃんの仲なんだから……ねっ?」キラッ


クラーナ「あー……うぜー……」ボソッ


ミルドレット「そんなこと言わないでよ! ほら、今度クラーナちゃんの運命の人探すの手伝ってあげるから!」


クラーナ「百歩譲って探すとしても、お前にだけは手伝ってほしくないな」


ミルドレット「そういえば……。クラーナちゃんの好みって知らないなぁ。――ねぇ! 好みの男性っているの!?」


クラーナ「居ない」


ミルドレット「あらあらー? そんな隠さなくてもいいのに……」


クラーナ「………………」ウンザリ…





ミルドレット「――…………ねぇ、クラーナちゃん」



クラーナ「…………? どうした、急に」


ミルドレット「……運命の人ってさ、やっぱり居ないのかなぁ……?」


クラーナ「…………お前は信じてるんじゃなかったのか?」


ミルドレット「いやまぁ、そうなんだけどさ……」


ミルドレット「でも、巡り合える人が居るなら、巡り合えない人だって居てもおかしくないのかなぁ……って」


クラーナ「………………」


ミルドレット「その点、クラーナちゃんはいつかちゃんと見つけられそうだよね! なんだかんだ言ってさ」


クラーナ「………………」



クラーナ「――私も、考えたことがないわけでもない」ボソッ



ミルドレット「えっ?」


クラーナ「まぁそれはお前の言う、私が『つまらない女』になる前だが」


ミルドレット「あっ……」


クラーナ「きっとそういうものは、気づいた時にはそこにあるものなんだろう。本当にその時が来たのなら、すぐにわかるようになってるんじゃないか?」


ミルドレット「…………そうだね」



ミルドレット「――じゃあ! 私はいつも通り、探して探して探しまくるわっ!!」グワッ‼


クラーナ「…………お前、話……――いや、いいか……」ハァ…


ミルドレット「やっぱ自分から探した方が、早くその時が来るような気がするもん! ね、そういうことだよねっ?」


クラーナ「あー、そうだそうだ。もう好きにしろ」


ミルドレット「よーしっ! がんばるぞー!!」



クラーナ「……きっと、お前みたいなバカにでもすぐわかるようになってるだろ」


ミルドレット「ちょ、なによそれっ! ……例えば?」


クラーナ「例えば? ……そうだな――」




クラーナ「――わかりやすいように、名前とか光ってるんじゃないか?」


ミルドレット「あははっ! それはわかりやすいね――!」

――――――
――――


チュンチュン…


カチャカチャ

コトンッ…

トントン…

ガチャ…バタンッ

……ガチャリ




男「――……うぅん?」モゾモゾ


男「…………あぁ……朝かぁ……」


男「ダメだなぁ……。目が覚めたら元の世界に戻ってるとかないかなぁ……」ハァ…


男「何か方法は…………」


男「とりあえずご飯食べるか……」


男「………………」


男「………………あれ?」


男「……パンとコーヒーが……」


男「………………あったかい……」


男「………………」


男「い、いや、でも……」


ガチャガチャ


男「うん、鍵はかかってるし……」


男「…………まぁ……いっか」モグモグ


男「きょ、今日は扉が開かないように何かおいておこうかな……!」モグモグ



ドンドンドンッ‼



男「――ッ!?」ビクゥッ‼


アオニート「おーい! 起きてるかー?」


男「あ、アオニートくんか……。――う、うんっ、起きてるよ!」


アオニート「おう、早くしろよー!」


男「は、はーい!」


男「………………と、とりあえず、今は忘れよう……うん」

スタスタ…


アオニート「――はぁー、今日は呪術の授業だなー……」


男「…………じゅ、呪術……??」


アオニート「は? お前、だから時間割ぐらい見とけって……」


男「あ、あはは……」


男(見てもよくわからないんだよ……)


男「じゅ、呪術って……えっと……やっぱり藁人形とか使ったり……するの??」


アオニート「……改めて思うけど、お前ってなんか変なとこあるよな」


男「………………そうかな」


アオニート「まぁ、いいけどよ。そんなお前と居て、退屈はしねぇし」


男「まぁ……それはよかったよ」



ガララッ



アオニート「おいーっす」


男「おはようー」


ヨルシカ「――あっ、男さん。おはようございます」ニコッ


男「おはよう!」


ロザリア「………………っ」


男「あっ……ろ、ロザリアさんもおはよう……」オズオズ


ロザリア「………………?」


男(い、いや、まだロザリアさんって決まったわけじゃないんだし……落ち着け、俺……)


ジークリンデ「男くんおはよう! ――……あぁ、ついでにホークウッドも」


アオニート「ほぉおおおおう!? ついでだと?? 相も変わらず腐った性根は治らねぇもんだなぁ、えぇタマネギ?」


ジークリンデ「あんたにだけは言われたくないわねぇ??」カチンッ



ゴゴゴゴゴゴゴ…


男「――ま、まぁまぁ、二人ともっ!! ほら、先生来るよ!」


ガラララッ‼



ミルドレット「――はぁーいっ、みんなおっはよーっ!! 昨日は急に休んじゃってごめんねぇ? ちょっとぉ、大人の事情で……。――あ、あははっ、それじゃ出席とりまーすっ!」ピラッ

ブラボおもしろいね。




ピカー


ミルドレット「――…………えっ……?」


シーン…


男「…………あれ? ……どうしたんだろ、ミルドレット先生……」コソコソ


アオニート「さぁ? 別のクラスの出席簿でも持ってきちまったんじゃないか?」コソコソ


男「あぁ……。そんな感じかな……」チラッ


ミルドレット「………………」ジーッ


男「………………っ」サッ


男(……あ、あれ? なんか見られてないか……? コソコソ話してるの見つかったのかな……?)


ミルドレット「………………」ジーッ


男(す、すごい視線を感じる……。あれぇ……??)



ヨルシカ「――あ、あの、ミルドレット先生? どうかしたんですか?」



ミルドレット「――はっ!! ……あ、あぁいや、なんでもないよっ? そ、それじゃ出席とりまーす――」アセアセ






ミルドレット「――はいっ。みんな元気そうでよかったぁ。えーっと、今日の連絡事項は……特に無いかなっ」アハッ


ミルドレット「それじゃ、これで朝のHRを終わりにします。じゃあ……、また放課後にね?」チラッ



ガララッ…



アオニート「――ふぅ……終わったぜ」


男「ね、ねぇアオニート君。な、なんかすごいミルドレット先生こっち見てた気がするんだけど、大丈夫かな??」


アオニート「あぁ? そうか? 気のせいだろ」


男「そ、そうならいいんだけど……」


アオニート「さて、今日は呪術かぁー。先生は誰だろうな? ロザベナ先生だったら、からかえるから楽しいんだけど」


男「まぁ、そこら辺はよくわからないけど……」


――――――

――――

――

――

――――

――――――



キーンコーンカーンコーン…


ガララッ



アオニート「あ、あれはっ……!!」


男「あ、女の人……?」



クラーナ「はい席につけー……。授業始めるぞ」パンパン



アオニート「おぉおおおおおおお……!! クラーナ先生じゃねぇか!! やったなぁ男っ!」バシバシッ


男「えっ? あぁ、うん……そうだね」


アオニート「うっはぁー! こりゃ、楽しい授業になりそうだぜ!」


クラーナ「おい、そこうるさいぞ。……ったく、えぇっとこのクラスは……」ピラッ


クラーナ「ん? …………あぁ、そうか。キミ達の担任はミルドレットか……」


クラーナ「…………そうか……」


クラーナ「…………同情するよ……」



「「「………………………………」」」



男(――あっ……。なんか今、クラスが一つになった気がした)


クラーナ「――さて。じゃ、教科書開いて……――」






クラーナ「――とまぁ、こういうわけなんだが……。えぇーっと、俗に魔女と呼ばれる……――」ツラツラ…


男(そういえば、なんだかんだで座学って初めてかな。なんか新鮮……。内容はよくわからないけど)


アオニート「……いやぁー、やっぱりクラーナ先生はいいよな」


アオニート「『相談に乗ってもらいたい先生』第一位。あの美貌。それでいて、他の男をまったく寄せ付けないあの性格」


アオニート「――だが、努力する者には優しくしてくれることもある……。……こりゃ、ファンも多いって話だぜ……」


男「そ、そうなんだ……詳しいね。まぁたしかに、わかる気はするよ」


アオニート「あぁー……。俺も優しくされてぇ……」


男「あ、あはは…………」

ごめん。関係ないんだけど、ブラボやってる人に聞きたい。
いま、隠し街ってとこまで来たんだけど、これ全体の何割ぐらいかな?

サンタさんにお持ち帰りされたのか
それとも普通にストーリー進めてロマ殺したあとたどり着いたのか

前者ならまだ前半
後者なら中盤終了して後半突入したあたり


クラーナ「――おい、授業始まった時もうるさいと言ったのが聞こえなかったか?」



男「――っ!?」ビクッ


アオニート「…………あ、ご、ごめんなさい……」


男(あ、あれ、いつの間にこんな近くに……??)


クラーナ「……まぁいい。――それじゃ、質問をしよう」


ボウッ


男「なっ……!? きゅ、急に火が……!?」


アオニート「……こ、こんな近くでクラーナ先生見たの初めてだぜ……!! うおぉ…………!」キラキラ


男「えっ。……あぁ、そう……」


クラーナ「――さて、君たち二人にはこの火がどう見える?」


男「この……火……?」


クラーナ「では、アオニート君? 君から答えろ」


アオニート「き、綺麗です……」


男「…………それ……『火が』ってことだよね……??」ボソッ


クラーナ「ほう、そうか。……そっちの……ん?」


ピカー


クラーナ「……なんで名前が……――」


クラーナ「――まぁいい。……で、どう思う? 男君」


男「ど、どうって……」


男(火が? なんだ、燃えそうとか言えばいいのか?)


男「え、えっと……――」




男「――恐いです」



クラーナ「………………ほう……」ピクッ


キーンコーンカーンコーン


クラーナ「――あぁ、時間か……。それでは、次の授業までにクラス全員、このことについてよく考えておけ。……次はそこから始める」


クラーナ「…………男君、いま感じたことを忘れるなよ。……それじゃあな」ボソッ


男「は……はい……」

みんなありがとう。
ダクソ3で言う竜狩りの鎧みたいな感じかな。
>>283 ので言うと、後者になるっぽい。灯りが付けられないとかはよくわからないけど、月は赤い。



男「……いま感じたこと」ボソッ


アオニート「――おいおいおいおい! 呪術ってこれからもクラーク先生なのかなっ!?」


男「えっ? あ、あぁ……どうだろうね?」


アオニート「いやー楽しいなぁ! 俺も呪術頑張っちゃおうかなぁ!!」ウキウキ


男「あ、あはは……」


男「……しかし、奇跡と魔術と呪術って……なにが違うんだ…………? 全部、魔法じゃないのか……??」ボソッ




「――やぁ」



男「――――ッ!!?」ビクゥッ‼


「……すまない。そんなに驚くとは」


男「い、いやっ、大丈夫です……。……あの、キミは……?」


男(おっきいとんがり帽子だ……。すごい魔女っぽい……)


カルラ「私の名はカルラ。いや、少し貴公と話がしたいと思ってね……。いま大丈夫かな……?」


男「あっ、はい……」


カルラ「フフッ。そんなかしこまらないでくれたまえよ。同じクラスの一員なんだ、仲良くしようじゃないか……」


男「そ、そう、だね。俺も友達が少ないから、うれしいよ」


カルラ「それはよかった……。さて、どうだろう? ここで私のようなものと話していたら、貴公も嫌だろう? 場所を変えないか」


男「いやっ、そんなことは……。まぁ、わかったよ。……でも、長くなるの?」


カルラ「まぁ、ほどほどにはな……」スッ


男(なんだろう……? でもよく考えると、話されても理解できないかもしれないな……)



ガララッ



ロザリア「………………」ジーッ


ヨルシカ「……あれ、ロザリアさん。どうかしたんですか?」


ロザリア「………………」フルフル


ヨルシカ「…………? ――あれ、男さんが居ませんね。……お手洗いとかでしょうか?」


ロザリア「………………」



ロザリア「………………」ジーッ

クラーク…?大志を抱くのかな?

>>295
おぉ、しばらく何が変なのかわからなかった。

クラーナでお願いします。


男「――でも、少し長くなりそうなら帰りのHRが終わってからでもよかったんじゃないの?」


カルラ「ん……、貴公は出たかったのか?」


男「…………いや、まぁ。どっちかと言えば出たくは…………」


カルラ「だろう? なに、居なくても大丈夫さ。……案外、貴公も真面目なんだな」フフッ


男「そ、そんなわけじゃないけど……」


男「……ところで、話っていうのは……? 正直、俺はカルラさんの期待に応えられる自信はないんだけど……」


カルラ「大丈夫さ。……言ってしまえば、私は貴公の存在そのものが気になっていてね」


男「――――っ」


男「…………え、えっと……それは……どういう、ことかな……?」アハハ…


男(――まさか、俺がココじゃないところから来たことが……!? で、でも、なんでっ? どうすれば……)


カルラ「…………うん、ここら辺ならいいだろう」


カルラ「……なぁ、男くん。いきなりで悪いが、色々と質問させてもらってもいいかな?」


男「ま、まぁ……プライベートなこと以外なら応えるよ」アハハ…


カルラ「さっきの授業……。貴公は何故、火を怖いといったんだ?」


男「えっ? ……なんで、って言われても……。思ったことを言っただけだよ」


カルラ「ほう。……まぁ、私も呪術に関しては詳しくはないのだが……少しくらいなら知っているつもりだ」


カルラ「さぞ、才能に溢れているのだろう。……現に、君はクラーナ先生にさっそく目をかけられたようだしな」


男「俺が?? うーん、よくわからないけど……」


男(あんまり迂闊なことも言えないな……。どうすればいいのか……。ばれたら火炙りとか……――。…………ありそうで怖い)


カルラ「――実は、貴公のことをずっと見ていた」


男「そっ、それはまたどうして?? こ、こんな平々凡々な人間である俺を……?」


カルラ「フフッ……貴公は面白いな。…………自分のことを平々凡々な男だと、本当に思っているのか?」フフッ


男「……あぁー……――」


男(たしかに、この環境だったら変なのは俺だよな……)


カルラ「――単刀直入に言わせてもらおう」


男「――っ。う、うん…………」




カルラ「私と一緒に、闇の魔術について研究しないかっ?」ガシッ


男「………………へっ??」ポカン


男「や……闇の……魔術…………???」


カルラ「いや、みなまで言わなくていい……。……そう、確かにあまり褒められたことではないかもしれない……」


男(えっ、そうなの?)


カルラ「…………でも、私は……貴公と一緒に……」


男「あー……。――えっと、失望させちゃうかもしれないけど。俺、正直そういうのは得意じゃないんだ……」


男「よ、よくそういう風には見られたりする……みたいなんだけどね」


カルラ「……さっき言っただろう。私はずっと貴公のことを見ていた」


男「えっ?」


カルラ「ただ、私が求めているのはそういうものではない」


カルラ「確かに、貴公はあまり得意ではないようにも見える。――しかし、大事なのはその……なんて言えばいいかな。……対応力とでもいうか」


男「………………?」


カルラ「最初の奇跡の授業の時、貴公は『放つフォース』を使っていたな」


カルラ「……あれは、元から覚えていたのか?」


男「い、いや、そういうわけじゃないんだけど……。――でも、アレは偶然みたいなもので」


カルラ「そう、偶然かもしれない。……ただ、貴公が使ったことは事実だ」


男「ま、まぁ、そうなるのかな……」


カルラ「そして昨日の魔術の授業。貴公はオーベックくんに教わっていた……。それで、一つ魔術を覚えていたな?」


男「う、うん…………」


カルラ「それで、今日の呪術の授業だ。……これはさっき言ったな」


カルラ「……私が言いたいのは、貴公の可能性の話さ」


男「…………可能性」


カルラ「あぁ、貴公ならきっと…………」


カルラ「――どうだろうか? 私と一緒に……」


男「……ちょっと考える時間が欲しいかな。まだ、よく把握できてもないし」


カルラ「……そうだな。そんな急ぐものでもない」


カルラ「それでは……。待っているぞ、男くん」


スタスタ…


男「…………闇の魔術かぁ……」

生きてるヒモをとり逃した。悔しい。


オーベック「――カルラさん……ねぇ」


男「うん。中学生の時はどんな感じだったのかなーって」


オーベック「…………A++」


男「えっ?」


オーベック「……ってとこだな」


男「あっ……そう」


オーベック「しっかし、帰りのHRサボってどこ行ってたかと思えば……。はぁ、青春だねぇ」


男「そ、そんなんじゃないよ……。俺自身も、よくわかってないし……」


オーベック「はいはい……。――そういや」


男「ん?」


オーベック「ミルドレット先生が、やけにお前の事気にしてたけど……。お前、いつの間にそんな目を付けられることしたんだ?」


男「えっ!? や、やっぱまずかったかなっ!?」


オーベック「いや、でもカルラさんのことは気にしてなかったし……。もしかしたら、ミルドレット先生の次のターゲットはお前かもな」


男「ははっ、まさかぁ……。理由もないでしょ」


オーベック「普通だったらな。――ただ、ミルドレット先生に常識は通じないからな……」


男「こ、恐いこと言わないでよ……」


オーベック「……さぁて。男、お前は委員会行くのか?」


男「そうだね。オーベック君は?」


オーベック「俺も……同好会に顔出してみるよ……」ゴニョゴニョ


男「そ、そっか……。まぁ、頑張ってね」


オーベック「お、おうっ! それじゃ、また明日な――!」




「――ん? 君は、確か同じクラスの……」


「……なに? ……彼に近づくな……って?」


「ふふっ……、おかしなことを言うものだな。……それは、私の勝手だろう?」


「私は好きなようにやらせてもらうよ……。……君には、悪いけどね……」


――――――

――――

――

―――飼育委員


男「あの、こんにちはー……」


オルニフェクス「――あっ、これはこれは。この度新しく飼育委員に入った男くんじゃないですか」


男「わ、わかってますよ。入ると決めたからには、しっかりやります」グッ


オルニフェクス「ふふっ、それはよかった」


男「……ところで、俺はいったい何をすれば……?」


オルニフェクス「まぁ、一年生なので、ネズミ達とアルヴィナ達にご飯と、遊び相手になってあげてください」


男「遊び相手……」


オルニフェクス「じゃ、私は外の蛇とかにご飯を上げてきます」


男「あ、わかりました。……あれ、俺はずっとここに居ていいんですか?」


オルニフェクス「そうですねぇ。……もし、やることが無くなってしまったら、狼のところにアルトリウス先輩が居ると思いますので、そっち行ってみてください」


男「はい、わかりました!」


オルニフェクス「それじゃ、よろしくお願いしますね」


ガチャ…
バタン


男「……よしっ、やるか」




「――光栄だろう? 余に食事を運ぶことができるというのは」

男「うんうん。そうだねぇ」

「フフンッ、そうだろう。汝、なかなか良い仕事をするじゃないか。褒めて遣わす」

男「あはは、ありがとう」

男(……前はよくわかんなかったけど、喋るのコイツだけなんだな)

男(――……あぁ、ダメだ。喋るのが当たり前になってきた……)



ゴロゴロ…

アルヴィナ「――違うよ! もっとこう、力強くやりなっ!」ゴロゴロ…

男「あ、あぁ、ごめん」

アルヴィナ「ん、そうだ……。なんだ、物覚えが早いじゃないか」

シャラゴア「あら、色男さん? 私を忘れてないかしら?」ゴロゴロ…

男「えっ? ご、ごめんね」ナデナデ…

シャラゴア「別に謝らなくてもいいのよ。ウフフ」ゴロゴロ…

ゴロゴロ…

ゴロゴロ…

――――――

――――

――


――

――――

――――――


スースー…


男「――……さて、みんな寝ちゃったな」


男「っと……、オルニフェクス先輩は居ないし……。そういえば、狼のところにアルトリウス先輩が居るんだっけ」


男「狼かぁ。……猫も好きだけど、どっちかっていうと犬派なんだよね。……よしっ、行ってみよう――!」







グルル…


男「――……まぁ、普通の狼じゃないよね。そんな感じはしてたよ。もう慣れたよ」ポケー


アルトリウス「……ん?? ――おぉ、男くんじゃないか! どうしたんだい?」


男「あぁ、オルニフェクス先輩がアルトリウス先輩がここに居るって言ってて……」


アルトリウス「そうかそうか。アルヴィナ達の世話はどうだった?」


男「何とかできそうです。それで、みんな寝ちゃったんでこっち来たんですけど……」


アルトリウス「ははっ、そうだったのか。うんうん、男くんは光るものがあるね」


男「いえ、そんなことは……」


グルル…


アルトリウス「――あぁっ、紹介が遅れたね。こいつはシフ。……ボクの親友だ」


男「親友……。わぁ、なんか素敵ですね」


アルトリウス「あはは、ありがとう。……シフのことは小さい頃から面倒見てるんだ。どうだい、可愛いだろう?」


男「ま、まぁ、可愛い……は可愛いですね」


男(でかいけど……)


アルトリウス「シフ、よかったなぁ。男くんが可愛いって言ってくれたぞ。ほーら……――」





ガブッ‼




男「えっ」


アルトリウス「………………」


男「えっ、あの………………」


男「あ、あの……ひ、左腕が……あの……えっ」


アルトリウス「ははっ、まったくこいつめー! 気にしないでいいよ、甘噛みだから。こいつ照れ屋なんだ」


男「い、いや、あのっ、それにしてはえげつないほど歯が食い込んでる気が……」


アルトリウス「大丈夫大丈夫! 全然痛くないからっ」


男「い、痛くないって……」


グルルル…‼


男「それで痛くないんだったら、左腕がかなりマズい状況なのでは……」


アルトリウス「あははっ、まったく男くんは心配性だなぁ……大丈夫だって――」


アルトリウス「………………たぶんね」


男「………………」


アルトリウス「――あっ、男くんも触ってみるかい?」


男「いや、大丈夫です」


――――――

――――

――


――

――――

――――――


アルトリウス「――よーっし! 今日はここらへんで解散しようか」


オルニフェクス「わかりました。……いやー、優秀な新入生が居ると楽ですねぇ」ニコッ


男「ははは……。……まぁ、役に立てたならよかったです」


アルトリウス「……あー、そうだ。オルニフェクスさん、ちょっと話があるんだ……。いいかな?」


オルニフェクス「えっ? まぁ、大丈夫ですけど……」


アルトリウス「よし、じゃあ男くん、また明日ね?」


男「わ、わかりました。……それじゃ、お先に失礼します」


ガチャ…

バタン


オルニフェクス「どう……ですか? アル……ス先輩」


アルトリウス「いや……シースの……だけどさ。実は……――」


男「……なにかあったのかな? ……とりあえず、帰るか」







男「――しかし、今日は何だかいろいろあって疲れたなぁ……」


男「……でも、なんだかんだでやっていけるもんだね。……明日はどうかなぁ……――」



「や、やっぱりやめましょうっ?? ねっ?」


「ここまで来て、何を怖気ついてるんですか!」


男「えっ?」


ガサガサッ‼

バッ‼



「失礼。あなたが男さんですね?」ビシッ‼


男「えっ、あっ、はい……」ビクッ


男(なんか急に出てきた……。…………四人も。……というか……――)


ヨルシカ「………………」シラー


男「よ、ヨルシカ……さん?? こ、これはいったい……」


シーリス「まずは自己紹介といきましょう。……私の名はシーリス。今日はあなたに話があってきました」


ヘイゼル「やっほー、ヘイゼルだよっ! よろしくっ」


レオナール「我が名はレオナール。……この仮面か? フンッ、気にするな。……この仮面を外すとき、俺の中に封印されて――」


シーリス「――今日は、あなたに話があってきましたっ!」


男「そ、そう、ですか……。えと、どのようなご用件で……?」チラッ


ヨルシカ「………………」シラー


シーリス「率直に言わせていただきます」




シーリス「――男さん。ロザリアさんに、もう近づかないでいただけますか」




男「……えっ?」


ヨルシカ「――い、いや、違うんですよ男さん! これにはその、訳がありまして……」


シーリス「なにも違くなんてありません。……そのままの意味です」


男「え、えーっと……。――理由は……? ちゃんとした理由があるなら、俺もそうするように心がけるけど……」


シーリス「コホン……。そういえば、まだ言ってませんでしたね……」



シーリス「――私たちっ!!」




「「「ロザリア様親衛隊!!!」」」


ヨルシカ「………………」



男「………………」


シーリス「……と、いうことです」


男「えっ」


シーリス「私はですね。あんなに可憐で、可愛らしく、触れば崩れてしまいそうな儚い女神に、あなたのような野蛮な男性に近づいて欲しくないのです!」


男「そ、そっか……。――で、でも、そっちにも男の人がいるようだけど……」


シーリス「いいんです。あれは雑用です」


男「………………」


シーリス「嗚呼、世界から野蛮な男のような生き物が消え去ればいいのに。女だけの世界になればそうすれば、私たちは愛し、愛され……。完璧な世界が出来上がるというのに……」


男「え、えっと……」オドオド


ヨルシカ「本当にごめんなさい…………」


シーリス「――それじゃ、そういうことですので。わかりましたね、男さん?」


男「あー、えっと……」チラッ


ヨルシカ「………………」ジーッ


男「…………はぁ」




男「――イヤだ。って言ったら?」




シーリス「…………はい? 聞き間違えじゃ、ないですよね?」


男「うん。シーリスさんの考えも、まぁ…………素晴らしいとは思うよ」


男「……でもさ。悪いけど、その前にもうロザリアさんとは友達なんだ」


男「一度築かれたその関係を、初対面の君になにか言われたからといって、なかったという事にはできないよ」


シーリス「………………」ギロッ


男「………………」



ヨルシカ「――ほら、シーリスさんっ! 男さんの言う通りですよ。……大丈夫です、男さんはシーリスさんが思ってるような男性じゃないですよ」



シーリス「………………ふんっ」


シーリス「……ヘイゼルさん……と雑用。行きますよ」ツカツカ…


ヘイゼル「あれ、もう終わりー? ――それじゃ、また明日ね男くん!」ブンブン


レオナール「………………」ズーン…



男「…………ぷはぁ……」ハァ…


男「……あー、怖かった……。……よ、ヨルシカさん。あの人たちは……?」


ヨルシカ「ほ、本当にごめんなさい! し、シーリスさんとは幼馴染で……」


ヨルシカ「シーリスさんは……その……男の人が苦手……というか…………。えっと……女の人にしか興味がないというか……」


男「まぁ……、言いたいことはわかるよ」


ヨルシカ「あるとき、ロザリアさんに一目惚れしたみたいで……。それ以来、ロザリアさんに近付こうとする人、プレゼントを渡そうとする人、全てを敵と考えてしまうみたいで……」


男「わーそれはまた、はた迷惑な……」


ヨルシカ「――あ、あっ!! だ、だからといって、私は違いますよ!?? 私はちゃんと男の人が好きです!!!」


男「えっ」


ヨルシカ「へっ!? ――い、いやっ!! 違うんです! そういう意味じゃなくて……!! えっと……えっと…………。――失礼しますっ!!」ダッシュ

フライドチキン持ってるやつ強い……。


side story

  『恋する、ミルドレット』



ミルドレット「――ね、ねぇクラちゃん? こっちとこっち……、どっちのずた袋のほうが可愛いかな?」ソワソワ


クラーナ「はぁ?? ついに頭イカれたのか」


ミルドレット「こ、これは真剣なのっ! ねぇっ! どっちが可愛い??」ズイッ


クラーナ「い、いや、どっちが……って言われても……。違いがわからんのだが……」


ミルドレット「もうっ、冗談はいいから。クラちゃんだって、ずた袋の一枚や二枚持ってるでしょ?」


クラーナ「お前と一緒にするなよ。しばき倒すぞ」


ミルドレット「あーどうしよう……! もう、帰りのHR始まっちゃうよぉ……」ソワソワ


クラーナ「はぁ……急にどうした? なにかあったのか?」


ミルドレット「ダメッ!! いくらクラちゃんでもこればっかりは言えないわっ!」ノーッ‼


クラーナ「あぁそうか。じゃ、がんばれ」フイッ


ミルドレット「ちょ、ちょっとぐらい食い下がってくれてもいいじゃない!?」


クラーナ「興味ないな」


ミルドレット「じ、実はなんだけどねっ! 私、見つけちゃったかもしれないの……。私の……運命の――」



キーンコーンカーンコーン



ミルドレット「――って! は、早くいかなきゃ! じゃ、また後でね!」ダッシュ


クラーナ「はぁ……。まったく、なんなんだあいつは……――」







ミルドレット「――…………はぁぁあああ……」ズーン


クラーナ「………………」


ミルドレット「あぁーあ……。…………はぁ…………」


クラーナ「――それじゃ、私は帰るぞ」スクッ


ミルドレット「待ってよっ!」ガシッ


クラーナ「………………」ウンザリ…


ミルドレット「そんなあからさまに面倒くさそうな顔しないでよっ!?」

1はゴースの遺子まで行ったのかな?
技量高けりゃパリィとバクスタ取っていけばなんとかなるはず


>>329 倒せました。慣れですね。




クラーナ「――運命の人を見つけた? へえ、よかったじゃないか」


ミルドレット「えへへへへへ…………。……まぁ、帰りのHRには居なかったんだけど……」


クラーナ「しかし、どうしてまた急に……」


ミルドレット「前言ってたことが本当にあったのっ!」


クラーナ「ほう」


ミルドレット「そう、それは沼地ですらも輝く、七色石のような…………」キラキラ


クラーナ「輝く……――?」ハッ






「――――わかりやすいように、名前とか光ってるんじゃないか?」



ピカー

「――――……なんで名前が……――」






クラーナ「………………あー…………」ボソッ


ミルドレット「はぁーっ、運命って本当にあるのねっ!」


クラーナ「あ、あぁ……、えっと……。み、ミルドレット? その、言い辛いんだが……――」


ミルドレット「もう、合コンもお酒もやめるっ! もっといいずた袋も買って……。あぁ、包丁も毎日研がないとっ! あとは……あとは……――」ホワァ…


クラーナ「………………」


クラーナ「…………いや、このままにしといた方がおとなしくなるか……」ボソッ


ミルドレット「――えっ? 何か言った?」


クラーナ「いや、私は応援すると言ったのさ。きっとお前が頑張れば、それが誰だかは知らんが、そいつもきっと振り向いてくれるだろ」グッ


ミルドレット「あ、うん。ありがとう……。――……い、いつもなら軽く流すのに、なんでか妙に乗り気じゃない? クラちゃん……」


クラーナ「そんなことはない。これで私への被害が減るだなんて、ちっとも思っちゃいない」


ミルドレット「そ、そう……? な、ならいいんだけど」



ミルドレット「――よ、よーしっ! がんばるぞー!」ゴゴゴゴゴ…




クラーナ「…………すまんな、男くん。……犠牲になってくれ……――――」ボソッ


―――男の部屋


男「――ックシュン!!」


男「うぅん……、なんだ風邪か?」


男「この世界って薬とかちゃんとあるんだろうか。……あ、魔法で直せるのかな」


男「さて、明日は……。……そうだ、実戦の授業なんだっけ?」


男「実戦って…………。そ、そんなマジな奴じゃないよね? 柔道とか、そんな感じだよね?」


男「…………さ、最悪見学でいいかな……」


男「――おっと、もうこんな時間か。……寝よう」


男「…………あ、そうだ。ちゃんと鍵と……チェーンもかけて……」ガチャガチャ


男「よし。寝るか……――」






チュンチュン…

ユサユサ…


男「うぅん…………?」


ユサユサ…


男「あぁ……はい。起きます……」ムニャムニャ


男「――んー……っと」モソモソ


カチャカチャ


男「えっ? コーヒー? ……あぁ、ミルク入れてほしいな」


男「……うん。ありがとう」


男「いやー、やっぱりコーヒーは淹れたてが………………………………」ハッ‼




ロザリア「………………」トントントン…




男「……あっ…………あれ…………?」


男(おかしいな……。……台所に立ってるのは……ロザリアさん? ……まだ夢を見てるんだろうか)


男「あ、あの……ロザリア……さん? ……ね、ねぇ、なんでここに――」


ロザリア「………………?」クルッ ギラッ


男「――あっ、えっと……なんでも……ないです」


ロザリア「………………」ニコッ


トントントントン…


男(し、しまった……。包丁持って振り返られたから、なんかつい日和ってしまった……)


男(ダメだ。ちゃんと言わないと……。ちゃんと…………――)





男「――あ、おいしい」


ロザリア「………………!」


男「ロザリアさん料理もできるんだ。すごいね!」ニコッ


ロザリア「………………」カァアア…


男「……と、ところで……その……――」


ロザリア「………………」スッ


男「――あ、どこに……」


ロザリア「………………」フリフリ


男「あぁ、うん。それじゃ、学校で…………」


カチャ…カチャン

ギィィ…バタン


ガチャリ



男「――……あれ?」


男「…………鍵が……閉まってる……」


男「じ、自分のは……あるよね」


男「………………」


男「こ、これも奇跡ってやつなのか……?」


男「い、いやでも、こんな奇跡あったら不法侵入し放題じゃないか……」


男「………………」


男「こ、このままじゃダメだ……。今日、ロザリアさんとちゃんと話さないと……」


男「まぁ、でも……――」



男「ご飯はおいしいな……」


―――学校


ガララッ


アオニート「――おいーっす」


男「おはよー」


ヨルシカ「あ、おはようございます」


ロザリア「………………!」


男「あっ……、ろ、ロザリアさん。……おはよう」オドオド


ヨルシカ「………………?」


アオニート「――いやーっ、しかしよぉ! 今日は実戦の授業だぜっ!? やっとだぜ……」


男「あー、アオニートくんは楽しみにしてたんだ」


アオニート「あったりめぇよ。ふっふっふ、見てろよ男。ここからファランの不死隊で活躍するであろう、俺の伝説が始まるんだ……」キラキラ


男「へぇー……。がんばってね」


アオニート「……なんか、少しも気持ちが伝わってこないんだが……」


男「そ、そんなことはないよ!」


キーンコーンカーンコーン


男「――あっ、ほらチャイムなったよ。席につかないと……」


アオニート「……そういや、ミルドレット先生がいつも参加してる合コンをキャンセルしたって……さっきだれか言ってたなぁ」


男「へぇ……?」


アオニート「――まぁ、そんなこと、都市伝説級にあり得ない――」


ザワザワ…


ガララッ

ピタッ



ミルドレット「みんな、おはようございます。……うん、今日もみんな居るみたいで、先生安心したわ」ニコッ



アオニート「――はず……なんだが……」アゼン…


男「あれ……。なんだかいつもと雰囲気が違うね……」


ミルドレット「それでは、出席をとります。今日は実戦の授業だから……もし具合が悪い人とか居たら、先に言ってね?」


アオニート「……これは……、いったい……なにがあったっていうんだ…………っ!!?」ゴクリ…


男「そ、そんな大げさな……」アハハ…


ミルドレット「――はい、みんな出席ですね。それでは、これで朝のHRを終わりにします」


キリツ、キヲツケ。

レイ。


ザワザワ…。


アオニート「おぉおおお…………。いまだかつて、これほど安全なHRがあっただろうか……!?」


男「そ、そうだね……。なんか平和過ぎて、みんな戸惑ってるね……」


アオニート「…………まさか、男ができたとかっ!?」ハッ‼


男「あぁー……。ま、まぁそれなら、みんな平和で……――」




ミルドレット「――あっ、男くーん」



男「」




ミルドレット「……ごめんね、プリント運ぶの手伝ってくれない?」ニッコリ




男「えっ。な、なんでおれ……――」


アオニート「………………」


男「ち、違うでしょ? ね、ねぇ、なんか言ってよアオニート君……!」


アオニート「……俺、先にグラウンド行ってるから……」


男「ちょっ――」




ミルドレット「お・と・こ・くん? ……聞こえたかな?」




男「あっ、はい。手伝いますっ!」ビシッ‼




――――――

――――

――




ミルドレット「――うん、ここでいいかな。……手伝ってくれてありがとうね?」ニコッ


男「あ、あぁ……いえ……これぐらいは」


男(あれ、なんだ……。ただ本当に手伝ってほしかっただけなのかな……? まぁ、なんで俺が選ばれたのかがわからないけど……)


ミルドレット「それじゃ、授業に遅れちゃいけないし。もう行っていいよ」


男「あっ、わかりました……」


男(これで終わりか、よかった……。……それじゃ、誰か別の人を見つけたってことかな? どんな人なんだろう……気になる)


男「…………あ、あの~……ミルドレット先生?」


ミルドレット「ん? どうかしたの?」


男「いや、大したことじゃないんですけど……。何か、いいこととかあったんですか?」


ミルドレット「え、えっ? どうして……?」


男「うーん……。なんていえばいいんだろう……」


男「なんか急に、親しみやすくなった気がして……あはは」


ミルドレット「……っ!! ――あ、あぁ~……ちょっとね……」


ミルドレット「あ、あの……えっと。ち、ちなみに……男くんは、今の先生のほうが……良い?」


男「えっ?」


男(――あぁ、相手の人のタイプになれるようにってことかな? ……まぁ、前のときよりは……」


男「そうですねっ。そう思います」ニコッ


ミルドレット「――――っ!」ドキッ


男「それじゃ、これで失礼しまーす」


ミルドレット「あ、あぁ、うん……。気を付けて……ね」



ガララッ

ピシャン



ミルドレット「………………………………」


クラーナ「――ん? どうしたんだ、そんな間の抜けた顔して……」




ミルドレット「……あっ、クラーナ先生。おはようございます……」


クラーナ「」




クラーナ「………………………………おはよう……」


クラーナ「あぁ……っと…………………………。……きょうも、がんばろうな」グッ


ミルドレット「え? あぁ、うん……?」



男「――さぁって……気を取り直して……」


男「はぁ……しかし、授業怖いなぁ……。ケガとかしないよね……」


男「ロザリアさんに奇跡教えてもらえばよかったなぁ……。――って、そうだ。ロザリアさんに今日の事聞かなきゃいけないし……」ブツブツ



「――やぁっ!」



男「うわぁっ!」


「あははっ、どうしたんだい? なにか考え事?」


男「あー……うん、そんなとこ。えぇっと君は確か、昨日の…………――」



男「――エンジェル?」


ヘイゼル「ヘイゼルだよ。……まぁ、悪い気はしないけど」アハハ



ヘイゼル「……あっ、もしかして今のは、男くん風の口説き文句だったりしたのかな?」


男「い、いやっ! そんなつもりじゃなかったけど……」アセアセ


ヘイゼル「あははっ、冗談だよ。いやー、やっぱ面白いね。男くんは」


男「あ、あはは……」


男「……って、その……ヘイゼルさんは――」


ヘイゼル「呼び捨てでいいよっ。なんかむずかゆいし……」


男「じゃ、じゃあヘイゼルは……。えぇっと………………」


ヘイゼル「――敵なんじゃないか……って?」


男「……うん。……俺に何かしにきた……ってわけじゃないよね?」


ヘイゼル「……さぁ? どうだろうね……?」ニコッ


男「………………」ゴクッ




ヘイゼル「……なーんてねっ! 大丈夫さ、心配しないでっ。あたしはただ、シーリスちゃんが面白くて側にいるだけだからさ」



男「そうなの……?」


ヘイゼル「うんっ。いやー、おかげで毎日笑わせてもらってるよー」アハハッ


男(なんか、すごい陽気な人だな。一緒に居ると、こっちまで楽しくなりそうな……)


ヘイゼル「――おっと、そうだそうだ。ちょっと男くんに訪ねたいことがあるんだったよ」ポンッ


男「訪ねたいこと……?」


ヘイゼル「うんっ。――カークくんと同じクラスだったよね?」


男「カーク……。――あぁ、トゲトゲの」


ヘイゼル「そうそうっ! ちょっと探しててね。どこに居るか知らない?」


男「あー、俺もいま先生に頼まれごとをやってたから……。――仲がいいの?」


ヘイゼル「えっ? うーん、仲が良いっていうか……。……同じクラブに入ってるんだよね。先生からの伝言を伝えようと思ったんだけど……」


男「へぇー……。どんなクラブなの??」


ヘイゼル「ふふーん……ひ・み・つ。……よく言うでしょ? 女は秘密が多い方が綺麗になれるって」


男「ははっ、そっか。……じゃ、カークくんに聞いてみるよ」


ヘイゼル「…………まぁ、教えてくれないと思うけどね……」ボソッ


男「えっ?」


ヘイゼル「――ううんっ、何でもない。……じゃ、カークくんは何とか探してみるよ!」


男「あ、あぁうん。力になれなくてごめんね」


ヘイゼル「気にしないでよっ」


ヘイゼル「……キミはいい人だね」


男「そんなことないよ。……もう、いろいろと精いっぱいで、逆に落ち着いてきたぐらいだね」


ヘイゼル「あははっ」


ヘイゼル「…………アタシは、個人的にはキミの事……結構気に入ってるんだよね」


男「……それは……どういう?」


ヘイゼル「――まぁ、がんばってねってことさっ! 応援してるからっ。……それじゃ、またねっ!」ダッシュ


男「あ、あぁうん……じゃあね」


男「……なんか、嵐みたいな人だったなぁ……――」












男「――ってか、あの頭はなんなんだ……。突っ込んじゃいけないのか……?」



――――――

――――

――


―――校庭


男「――ってことで、安心したよ……」


アオニート「ふーん……。他にねぇ……」ウーン…


男「と、ところで……」キョロキョロ…


ガチャガチャ

キンキンッ


男「な、なんかみんな物騒じゃない……? あ、危ないよ……ねぇ?」


アオニート「はぁ? 危ないって、授業だろ? なに言ってんだよ」


男「あー、そうなんだ……。そうだよね……」



キーンコーンカーンコーン



アオニート「――よーっし、ついにこの時間がやってきたぜ……。ふふふっ……」


男「………………」


男「――あれ? ……ヨルシカさんとロザリアさんは見学なの?」


ヨルシカ「はい。ちょっと、私たちは……。あまりこういうのは得意ではないので」


ロザリア「………………」


男「そっか……。……俺も――」


ヨルシカ「――私、男さんのこと応援してますからっ! 頑張ってくださいねっ?」ニコッ


ロザリア「………………っ!」


男「――あぁ……うん。がんばる」グッ



「よぉおおっし、皆の者……集まれぃ!」



男「……はぁ…………」トボトボ…


アオニート「おっ、あれはバンホルト先生じゃないか? 学はないけど、武はかなり凄いらしいぜ」


男「へぇ」


アオニート「なんだよ元気ねぇな……。あぁ、そうか。確かにこの授業は得意そうじゃないしな」


男「ははっ、まぁね」


アオニート「ふっふっふ……。これでやっと、俺のすごいところを見せられるってわけだ……」ニヤリ


男「ははは…………」

バンホルト「えぇー、今日のこの授業は、このバンホルトが受け持つことになったっ!! よろしく頼むぞっ!」


ハーイ


バンホルト「――うむ、いい返事だ。しかし、某も君たちを一人ひとり見てあげたいところだが、残念ながら体が足らぬ」


バンホルト「そこでっ! 三年生の中から、某が選りすぐった者たちに協力してもらうことにした! 皆の者、遠慮なぞせずじっくりと見てもらうといい」




キアラン「風紀委員のキアランだ。よろしく頼む」


シバ「同じく、風紀委員のシバだ」


ロートレク「はぁ……ロートレクだ。まったく、面倒くさい……」




バンホルト「よぉし! それでは、存分に鍛錬と参ろうではないか! この蒼月の剣にかけて、真面目に取り組むのだぞ!」




アオニート「うおぉおおお! 盛り上がってきたぜぇえええ!」


男「………………」


アオニート「うおぉおおおおお!!」


ガンッ‼‼


アオニート「――がっ……!」


ジークリンデ「なーに叫んでんのよ、うるさいわね……。男くんが困ってるでしょ?」


男「あっ、ジークリンデさん。……ジークリンデさんもやるの?」


ジークリンデ「まぁね。奇跡でもいいんだけど、やっぱり剣も使えないとね」スラッ


男「そっか……。すごいね」


ジークリンデ「そ、そうかな? えへへ、でも――」


ガンッ‼‼


ジークリンデ「――ぐっ……!」




アオニート「おうおうおうおうおう、こんのクソ玉ねぎ野郎がぁ……!! いい機会だ。ここでボッコボコにしてやるよ……」ゴゴゴゴゴ…


ジークリンデ「へぇ……っ!!? 受けて立とうじゃない。……後悔するんじゃないわよっ!!」


ガンガンッ‼

キンッ‼



男「……あー…………」


「――おや、君はもしかして男くんかな?」

男「は、はいっ! え、えっと……もしかして……キアラン先輩……ですか?」


キアラン「そうだ。直接話すのは初めましてになるかな? グウィンドリンのやつから話は聞いているよ」


男「自分も、入学式の時には助けてもらいまして……。ありがとうございます」


キアラン「ん? あぁ、そうか……。それで、グウィンドリンを行かせたんだったな」


男「そうですね。それから、グウィンドリン先輩にお世話になってます」


キアラン「そうか。まぁ、それも縁なんだろう」


キアラン「――そうだ。せっかくだし、この授業。私が男くんのことを見ようか」


男「えっ? あ、あの……その……実は俺は……」オドオド


キアラン「……? ――あぁ、もしかして武器を持ってないとかかい?」


男「ま、まぁ、そうといいますか……そういう問題でもないといいますか…………」


キアラン「ははっ、まぁ気にすることはないよ。実際、そういう一年生もたまには居るからね」


キアラン「――そうだ!」ゴソゴソ


男「えっ?」


キアラン「……これを、君に上げよう」スッ


ギラッ


男「あ、あの、これは……?」


キアラン「私が昔使っていた短剣だ。今はもう使わないし、ちょうど学校に寄付でもしようかと思っていたんだが。……ちょうどよかった。もし、迷惑じゃなければ受け取ってくれないか?」


男「は、はい……。なら……」スッ


キアラン「これなら、きっと初心者にも使いやすいと思う。……どうかな?」


男「そ、そうですね……」


キアラン「――よし、それじゃさっそくやろうか。……まずはその武器になれるとこから始めようか」


男「は、はいっ! がんばります……!」





キアラン「――おぉ、なかなか筋がいいじゃないか。これはグウィンドリンが目をかけるのもわかるな」


男「あ、あはは……。ありがとうございます……」ハァハァ…


キアラン「よーし、じゃあ次は……――」


「――い、委員長っ!! すいません緊急で……。ちょっといいですかっ?」


キアラン「なに? ……わかった。――悪いな男くん。すこし急用ができた……。また、機会があれば続きを教えるよ」


男「わ、わかりました。またお願いします!」

こういうアニメが見たい

短剣か、黄金の残光かね

>>348 シーリスは小林ゆうさんがいいです。

>>349 いや、普通に盗人の短刀的なものです。いまキアランは、残光と残滅を使っているから、それはいらないってことです。




男「緊急な事ってなんだろう? なんかあったのかな……」


男「まぁ、俺には関係ないか」


男「しかし、これ……もらっちゃったけど……。危ないよな……。いやまぁ、他の皆はもっと危ないもん持ってるんだけど……」


チクッ


男「……いっ! ――……え?」


カーク「――あぁ、ごめんね男くん。僕の不注意で……」ギロッ


男「あ、うん……。き、気を付けてね……?」


男(わ、わざと……だよね?? あれ、俺なんか嫌われることしたかな……)


カーク「……そうだ。いい機会だし、ちょっと手合わせしようよ」スッ


男「あ、えっと……。お、俺は……その……あまり得意じゃなくて……さ。できれば、別の人と――」


カーク「ほら、構えなよ」


男「…………ほ、本気……?」ビクビク


カーク「そっちから来ないなら……、こっちから行くよッ!」ブンッ


男「――うわぁっ!!?」


スカッ


男「いっ……」


男(よ、よかった、かすっただけか……。…………というか、いま本気だったよね……?)


男(あんなトゲトゲの剣で斬られたら…………。――い、いや、考えたくない)


カーク「まだまだっ!!」ブンッ


男「――っ!!」サッ


男(だ、ダメだ……。に、逃げないと……!)


ドンッ


男「えっ?」


男(しまった! 誰かにぶつかった……?)


カーク「………………っ!」


男「――ろ、ロザリアさんっ!? な、なんでここに……」


ロザリア「………………っ」ホワァ


男「えっ……。……ロザリアさん……わざわざ傷を治しに……?」


カーク「…………お前……ばかり……っ!!」


男「――えっ?」


カーク「…………ロザリアさん……どいてくれるかな。…………これは、僕と男くんとの問題なんだ」


男(え、えぇええっ?? いったい何のことかわからない……)


ロザリア「………………っ」フルフルッ


カーク「…………っ!」


カーク「――わかったよ……。そこまで言うなら……もうっ――!!」






ガッシャーン‼‼

キャーキャー
ワーッ






男「……えっ? な、なんだ……??」


「に、逃げろーッ!!」





「 ダークレイスだッ!! 」






キャーッ‼
ニゲロー‼




男「えっ? ……えっ?? い、いったい何が……??」


アオニート「――男っ!! なにやってんだ、早く逃げるぞッ!!」


ジークリンデ「男くんッ! 早くっ!!」


男「う、うんわかった!!」ダッシュ





あ、トリミスった。



ロートレク「――おいおいおいおい……。どうなってんだよこれは……」


バンホルト「おぉ、これも三年生が用意したイベントか?」


ロートレク「そんなわけがないだろバカか。……そういえば、たしかにダークレイス注意報はでてたが……」


バンホルト「えっ、い、いま先生に向かってバカって……――」


シバ「なぜここまで入られるまで気が付かなかった……? 門番のグンダさんはどうしたというのだ……」


ロートレク「とりあえず、考えてる暇はない。面倒くさいが、一年生が居るんだ。……やるぞ!」


シバ「仕方がないな――!」



キンッ‼

ザシュ‼

ワー‼
キャー‼





男「――はぁ……はぁ……。あ、アオニートくん!? こ、これはいったい……?」


アオニート「はぁ!? ……あぁもうっ、説明してるヒマなんかねぇよッ! さっさと、校舎の中に逃げるぞッ!」


ジークリンデ「こ、こんなことってあり得るのっ!? ま、まさか、ダークレイスが……」


アオニート「俺が知るかよッ!」




ヨルシカ「――ロザリアさんっ!! ロザリアさん、早くッ!!」




男「――えっ!?」バッ



ロザリア「………………!」ガタガタ…


男(ろ、ロザリアさんが座り込んでる……。立てないのかっ? ――って、あの黒いのが……!)


ヨルシカ「ロザリアさんッ!!」


男(ロザリアさんが……やられちゃう……っ! ……俺のケガを治しに来てくれたから……!?)


男「だ、誰か助けに――っ」


カーク「あっ…………あ……」ガタガタ…


男「――あぁ、もうっ!!!」ダッ‼




男「うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」


アオニート「――男っ!?」


男(――もう、剣が振り下ろされちゃう……!! ロザリアさん……っ!!!)




ロザリア「………………」ガタガタ


ダークレイス「………………」スッ



ダークレイス「――――ッ!」ブンッ‼


ロザリア「…………っ!!」




男「――ォオオオオオオオッッ!!」グッ‼




バァンッ‼




男(――……なんだ? 俺は、いま……なにをしたんだ……?)




ジークリンデ「……す、すごい……っ!!」


アオニート「あの野郎……。パリィしやがった……!?」




キアラン「――男くんッ!! 今がチャンスだッ!!」



男「――――ッ!」ギラッ



ザシュッ‼



ドサッ



男「……な、なんだ……体が……勝手に……?」


男(……まるでこの動きを、俺の体が覚えてるみたいだ……)


ダークレイス「………………っ」ギロッ


男「あ、あ……他にもいっぱい……」


キアラン「……いけないっ! ――男くんっ、早くそこの女の子を連れてこっちへ来るんだっ!!」


男「は、はい……っ。――だ、ダメだ……。今頃震えが……」ガタガタ…


キアラン「――くっ! ……間に合うか……っ?」ダッ‼


ダークレイス「――――――ッ!」


男(さ、さっきと同じことをすれば……! ――い、いや、正直自分でもどうやってたのかわからない……)


ギュッ


ロザリア「………………」ガタガタ…


男「ロザリアさん……。――大丈夫、俺が守るから!」グッ‼


ロザリア「………………っ!」


男(――とは、言っても……)



ガシャガシャ

ワラワラ…


ダークレイス「――――――ッ」スッ


男「……もう、ダメか……」









ザシュッ‼








キアラン「…………ッ!」


ジークリンデ「男くんっ!!」


ヨルシカ「男さん……っ!」


アオニート「男ォッ!!」








男「…………っ! ――……あ、あれ? 斬られて……ないっ??」





アルトリウス「――もう大丈夫。……男くん、ボクは君と知り合うことができて、光栄に思う」





男「あ、アルトリウス先輩……?」


アルトリウス「自らの危険を顧みず、他の誰かを救うということは、誰にでもできることじゃない。……心から、君の事を尊敬する」


男「あ、ありがとう……ござい……――せ、先輩ッ! 後ろにッ!!」


ダークレイス「………………ッ!」ヨロ…


ドサッ‼




キアラン「――まったく……。おいしいところを持っていくじゃないか」


アルトリウス「ははっ、まぁね」


キアラン「しかしよかった……。ケガは?」


男「だ、大丈夫です……」


キアラン「……それにしても、まだ教えていなかったのに、よくパリィできたな」


男「ぱ、ぱりぃ……? お、俺も、もう無我夢中で……」


キアラン「まぁ、何はともあれよかった……。……その指輪は、確かにふさわしい人へと渡ったようだ」


男「えっ……?」


アルトリウス「キアランっ! 来るよ!」スッ


キアラン「あぁ、わかってる!」


アルトリウス「男くんは少しジッとしててくれ。……安全はボク達が確保しよう」


キアラン「…………しかし、数が多いな……。なんだってこんな……」


アルトリウス「…………うん? ――男くん、その指輪……見せてもらってもいいかな?」


男「えっ? あ、こ、コレですか?」


アルトリウス「いや、スズメバチの指輪じゃない。もう一つの……」


男「あ、どうぞ……」


アルトリウス「………………これは……。男くん、これは君のかい?」


男「い、いや……それはアオニートくんに……。――と、いうかアオニートくんも、えっと……パッチって人に買わされたみたいなんですけど……」


アルトリウス「なるほど……。これ、もらってもいいかな?」


男「いいですけど……」


アルトリウス「……これはどうやらダークレイスを引き付けてしまうみたいだ。……男くん、つける指輪は選んだ方がいいよ?」


男「そ、そんな指輪だったんですかっ!?」


アルトリウス「よし……。――さぁ、そこの子を連れて早くみんなのところにっ!」


男「――はいっ! ……行こう、ロザリアさんっ」ガシッ


ロザリア「………………っ!」コクンッ





キアラン「――懐かしいな、お前とこうして背中を預けるのも」


アルトリウス「そうだね……。それにしても、色々と不運が重なるね……」


キアラン「シースの件か? 気負わなくていい。あれはお前の責任じゃない」


アルトリウス「………………」


キアラン「それに、グウィンドリンのやつも行かせてる。大丈夫だ」


アルトリウス「……それもそうか――」




アルトリウス「――しっかし、今回のダークレイスは数が多いねぇ……。やれるかい、キアラン?」


キアラン「そうだな……。あと一体多かったら無理だったかもしれん」


アルトリウス「ははっ、そっか。……それじゃ、その一体はボクが倒そう」


キアラン「え? ……なんだ、お前もやるのか」ニヤッ


アルトリウス「はぁ、まったく……――」アハハ…


キンッ‼

ザシュ‼






ヨルシカ「――ロザリアさんっ! よかった……本当によかった……」


ヨルシカ「男さん、ありがとうございます……! ありがとうございます……!」ガシッ


男「いや……。俺もアルトリウス先輩が居なかったらどうなってたか……」


ジークリンデ「男くんはすごいよっ! 胸を張っていいんだよ」


アオニート「……悔しいけどよ、俺は動けなかった……。とりあえず、お前が無事でよかったぜっ」


男「みんな……。ありがとう!」



カーク「――……男くん」


男「あ……。カークくん……」


カーク「…………僕の負けだ。……僕も……動けなかった……」


男「あっ、いや……――」


男(――……ダメだな。なんて言葉をかければいいのかわからない……)


カーク「…………ありがとう。…………でも、次こそは……負けない……」グスッ


男「…………うんっ」



キンッ‼

グサッ‼

ザシュッ‼




アオニート「……それにしても……、アルトリウス先輩すげぇな……。いつものんびりしてると思ってたぜ……」


男「俺も……。キアラン先輩もすごいね」


ジークリンデ「やっぱり、風紀委員長ともなると強くなくちゃいけないのね……」


男「風紀委員……」


男「――あれっ? あの、ロートレクって先輩とシバって先輩も風紀委員なんだよね?」


ヨルシカ「えぇ、あとあそこにいるのも風紀委員のルカティエル先輩です」


男「……グウィンドリン先輩は?」


アオニート「あぁー、さっきキアラン先輩が話してたのをチラッと聞いたんだけどよ。なんか別の問題もあったらしいぜ」


男「へぇー……。風紀委員って大変なんだね」


アオニート「まぁ、さすがに人が足りないらしくて……――」











アオニート「――生徒会も、一緒らしいけどな」









男「――――えっ?」


男「……あ、アオニートくん……。それってどういうことっ?」


アオニート「え? ……どういうことも何も、そのままの意味だろ」


男「………………」


男(……大丈夫……だよね? 生徒会って……。――で、でも、グウィンドリン先輩も知ってるはずだし……)


ヨルシカ「……どうかしたんですか? 顔色が悪いようですけど……」


男「あぁ……っと……」


男(……ここは、正直に言おう)


男「じ、実は……――」


――

――――

――――――


アオニート「――はっ! お前、いくら何でもそれはないぜ」


男「で、でも……」


アオニート「たしかに、入学式の時にそんな噂があるってことは言ったけどよ。……でもだからといって、生徒会がグウィンドリン先輩を狙う意味はないだろ?」


男「…………まぁそうかな……」


ヨルシカ「私も……。男さんを疑うわけじゃないんですけど、もしかしたら別の会話を聞き間違えたのかも……?」


ジークリンデ「私はよくわからないけど……。生徒会のサリヴァーン先輩とマクダネル先輩は成績も先生からの評価も優秀って話だよね」


男「やっぱ、そうなのかな……」


アオニート「そうそうっ! 男の聞き間違えだろっ、忘れろよ。――そんなことより、見ろよアレ! かっこいいよなぁ……!!」


男「………………」







グイッ



男「…………? ――あれ、オーベック君?」


オーベック「いまの話、……あの時のか?」


男「……うん。はは……やっぱり、俺の聞き間違い――」


オーベック「確かめにいくか」


男「えっ?」


オーベック「ただ、様子を見に行くだけだ。……まぁ、別に行かないのならそれでもいいが」


男「…………一緒に行ってくれるの?」


オーベック「……俺も、生徒会にはまったく疑問を感じてないわけじゃないからな……」


オーベック「――で、どうするんだ?」


男「……行こう。やっぱり、このモヤモヤをそのままにしておけないから……」


オーベック「場所ならわかる。着いてこい」


男「う、うん……っ!」


アオニート「――ん? おい、男。どこ行くんだよ?」


男「俺は……ちょっとトイレに。すぐ戻ってくるよ」



男「――……ねぇ、聞いていいかな?」


オーベック「くだらない質問なら応えないぞ」


男「……オーベック君ってさ。もしかして、生徒会のこと調べてたりするの?」


オーベック「…………なんの話だかわからんな」


男「……そっか。まぁ、なんとなくそう思っただけなんだけどさ」


オーベック「ふん…………」


オーベック「――そうだな。……『言えない』。それが答えだ」


男「……わかった」


オーベック「……そろそろ着くぞ」






男「――あ、あれは……!?」


男(で、でかい……竜みたいな……。本当にいるんだ……)


オーベック「シース。普段なら厳重に戸締りしたうえで飼育されていたもんだが……。どうやら、逃げ出したらしい」


オーベック「何者かの手によって……な」


男「……昨日、アルトリウス先輩がオルニフェクス先輩と話してたのは、それだったのかな……」


オーベック「――居たぞ」





グウィンドリン「――クッ……。全部貴様らの仕業だったのか……!!」


サリヴァーン「はっはっは……。これで話を聞く気になりましたか? グウィンドリン……」




男「――ぐ、グウィンドリン先輩……っ」


オーベック「よせっ! ……俺たちが出たところで、事態は何も変わらん」


オーベック「どうやったのかは知らんが、シースを手なずけてるようだ。……俺たちが敵う相手じゃない」


男「……でもっ」


オーベック「様子を見るだけだと言っただろ。冷静になれ」


男「………………」


男「――俺は冷静だよ。……だから、オーベック君。戻って、誰かに知らせて」


オーベック「……お前はどうする――お、おいっ!」


男「――グウィンドリン先輩っ!」


グウィンドリン「えっ!? お、男くんっ? ど、どうして……ここに……?」


サリヴァーン「……何者だ?」


マクダネル「ど、どうしようっ! み、見られちゃったよっ! さ、サリヴァーンくん……っ」


サリヴァーン「ふんっ。どちらにしろ、ここまで来たらもう引き下がれるわけもないでしょう」


サリヴァーン「それに、一人に見られたところで――」





サリヴァーン「――なかった事にすればいい」





男「――ッ」ゾクッ


男(ヤバい……。今まであった人の中でも……特に……)


男「………………」チラッ


オーベック「…………チッ」ダッ


男「――……え、えぇっと……、な、なにしてるのかなーって思ったんですけど……」


男(……しまった、勢いで出ちゃったけど……俺、何もできないんじゃないのか……)


グウィンドリン「――お、おいっ!! 彼は関係ないだろう……!?」


サリヴァーン「ほう、そうですねぇ……。まぁ、それも貴方の答え次第といったとこでしょうか……」


グウィンドリン「……男くん。こっちに……っ」


男「ご、ごめんなさい……。グウィンドリン先輩……」


グウィンドリン「いや、心強いよ。私も一人では、恐いから」


サリヴァーン「次期風紀委員長ともあろう貴方が、私たちの前では手も足も出ない。……滑稽ですね」


グウィンドリン「シースまで使っておいて何を……。ダークレイスも貴様たちの仕業だろう? 関係のない生徒まで巻き込むなんて……っ」


サリヴァーン「それもこれも……。すべてはエルドリッチ先輩のためっ! まぁ、グンダさんには悪かったとは思ってますよ」フフッ…


男「エルドリッチ……? それって確か、生徒会長の……? ぐ、グウィンドリン先輩、何かしたんですか?」


グウィンドリン「………………い、いや。……まぁ…………うーん………………」


男「………………?」




サリヴァーン「――さぁっ!! そろそろ答えていただきましょうか、グウィンドリンっ!!」




男(いったいなんなんだ……!? ここまでの大事件を起こしてまで、グウィンドリン先輩にしてもらいたいことって……?)



マクダネル「も、もう観念したほうが……いいぞ……」



サリヴァーン「言えっ!! エルドリッチ先輩と…………――」










サリヴァーン「 ――付き合うとっ!! 」










男「えっ」



グウィンドリン「だ、だから何度も言っているだろう……っ!!」










グウィンドリン「 私は、お・と・こ・だッ!! 」










男「えっ」



グウィンドリン「えっ?」





サリヴァーン「 それでもいいッ!! 」





男「えっ」




男「………………えっ」




サリヴァーン「半年前……。エルドリッチ先輩は貴様に告白して、フられた……」


グウィンドリン「当たり前だ」


サリヴァーン「そのショックで学校を休むようになり……。最近になると、ついに来なくなってしまった……!」


サリヴァーン「このままでは卒業も危うい……。――グウィンドリンッ! 貴様の責任は大きいぞッ!」


グウィンドリン「私の知ったことかッ!! だいたいメンタルが弱すぎるだろうッ!」


グウィンドリン「――というか、問題はそこじゃない! 最初に私の事を女だと勘違いしてたのは、百歩譲ってまだいいが……。なぜわかった時点で諦めないんだっ」


サリヴァーン「……エルドリッチ先輩は気付いたのですよ……。本当の愛の前には、性別など関係がないということにね……」


グウィンドリン「別にエルドリッチの愛とやらの考え方はどうでもいいっ。それを私に押し付けるなっ!」


グウィンドリン「――男くんもそう思うだろうっ?」


男「へっ!? あ、あぁ……そう……ですね……。グウィンドリン先輩……」


グウィンドリン「………………な、なぁ、まさかとは思うんだが……。もしかして君も……」


男「――いいいいやいやいやいやっ!! わかってましたよっ!? えぇ、わかってましたともっ!!」


グウィンドリン「そうだよなっ。よかった……」ホッ…


マクダネル「い、いや……ど、どう考えてもあいつも……」


男「――と、とりあえずアレじゃないですかっ!? ぐ、グウィンドリン先輩が嫌がってるわけですからっ、諦めたほうがいいんじゃないですかっ?」


サリヴァーン「ふんっ、部外者は黙ってるがいい」


グウィンドリン「言ってしまえば、お前たちも部外者なわけだが」


グウィンドリン「――それに、こういう場合。エルドリッチ本人が来るのが筋ってものだろう。なんで貴様らが……。しかも、こんな事件まで起こすような真似を……」」


サリヴァーン「エルドリッチ先輩はシャイなんですよ」


男「なんだそれ」


サリヴァーン「………………」ギロッ


男「うっ……ごめんなさい」


サリヴァーン「ゴホン……。……なぜ、こんな計画を立てたか……ですって……? それは……――」




サリヴァーン「――どんな手段を用いても、お前をエルドリッチ先輩のとこへ連れていくためですよ」




グウィンドリン「――っ!」


サリヴァーン「ふはははっ!! 三年の風紀委員はダークレイスの事で手がいっぱいでしょう? ……どうです、大人しくしてくれれば、優しくしてあげますよ?」


グウィンドリン「私を……甘く見るなよ……っ!!」

今ダクソやってて分かったんだけど。

ロザリアはずっとフードみたいのつけてるんだろうなと思ってたら、よく見たら髪の毛なんだね。

あまり影響ないとは思うけど、俺はフード付きローブみたいのを着てる設定で書いてたから、変なところあっても脳内変換お願いします。


グウィンドリン「――男くんはここに居て。……動かないでジッとしてるんだっ」


男「は、はい……っ」



バシュッ‼

ガキィン‼



サリヴァーン「――さすが、と言ったところでしょうか」


グウィンドリン「そんな余裕ぶってて大丈夫なのか?」


サリヴァーン「えぇ……。――シースッ!!」


グウィンドリン「――――ッ!!」


ピィイイ‼


男「な、なんだ……あれ……!? 結晶……?」


サリヴァーン「ほう……、避けましたか。……そうでなくては」


グウィンドリン「……くっ!」









サリヴァーン「――……もう、諦めたらどうです? グウィンドリン……。勝ち目がないのはわかっているでしょう?」


グウィンドリン「はぁ……はぁ……! まだ……ッ!」


マクダネル「さ、サリヴァーンくん……。そろそろ……」


サリヴァーン「……時間か。――さて、できるだけ傷つかないようにしたかったのですが……。私は、お前の力を少し見くびっていたようです」


グウィンドリン「はぁ……くっ……」ガクッ


サリヴァーン「……抵抗されても面倒ですからね。私の剣で終わらせてあげましょう」スッ


男(マズい……。もう、グウィンドリン先輩は動けない……!)


サリヴァーン「……では――」ブンッ


男「――グウィンドリン先輩っ!!」ダッ


グウィンドリン「……っ! だ、ダメだ男くん、こっちへ来ては……――っ!」




バァン…ッ‼




サリヴァーン「――――なっ!!?」


グウィンドリン「お、男くん……!」


男「で、できたっ!!」


男「――うおぉおおおおッ!!」グッ


サリヴァーン「こ、この……っ!!」



ガキィンッ‼



男「――は、弾かれた……っ!?」


サリヴァーン「………………っ!」ブンッ


ドゴッ‼


男「――うぐっ!?」ドシャァ


グウィンドリン「男くんっ!!」


サリヴァーン「危なかった……。……一年生だと思って、油断してましたよ。まさか、この私がパリィされるなんてね……」


グウィンドリン「――ま、待ってくれ! 私が……、私が大人しくすればいいんだろうっ!? だから、彼は……!」


サリヴァーン「……もう遅い」


グウィンドリン「なっ……」


サリヴァーン「……少しでも危険は減らしたいものでね。……私がやるのはやめましょう。――……シース!」


シース「………………っ」キュィイン


サリヴァーン「それじゃあ……今度こそ、終わりです」


シース「………………ッ!!」ピィイイイ‼


グウィンドリン「く、くそっ……!!」






ビュンッ‼‼




ギャァアアアア‼






サリヴァーン「――な……に……!? シースッ!!」


グウィンドリン「……あ、あの矢は……!!」


グウィンドリン「ゴー先輩……っ!!」


――

――――

――――――


ゴー「――ふははっ、命中だ」


「すごいっす。おでには、ぜんぜん、みえないっす……」


ゴー「急がなくていい。いずれ、見えるようになる」


「しょうじん、するっす」


ゴー「――さて、あとは任せたぞ、アルトリウス……」







男「――う、うぅん……」


グウィンドリン「目が覚めたか、男くんっ!」


男「は、はい……。……って、なにがあったんですか……!?」


グウィンドリン「ゴー先輩の矢だ。間一髪だったよ……」


男「矢……? で、でも……どこにも――」キョロキョロ


グウィンドリン「たぶん学校の屋上から射ったんだろう。……あの人はそういう人だ」


男(学校の屋上……!? そんな距離から……)


グウィンドリン「今のうちに、逃げるぞっ!」


男「は、はい――!」




サリヴァーン「――逃がすと思っているんですか?」




グウィンドリン「しつこい……ッ!!」


男「グウィンドリン先輩っ!!」


グウィンドリン「私はいいっ! 先に行け!」


サリヴァーン「ふんっ、どちらも逃がしはしませんよっ!」


男「――なっ、ぶ、分身した……っ!!?」


グウィンドリン「お、男くん――っ!!」




ザシュッ‼



サリヴァーン「……そ、そんな…………!!」


グウィンドリン「……あ、あなたは……」






アルトリウス「――ははっ、また間一髪だったね……。こんな機会、そうそうあってほしくはないんだけど……」


シフ「………………」グルル…






男「アルトリウス先輩……!!」


サリヴァーン「――馬鹿なっ! 早すぎる……!! まだ、時間は……」


アルトリウス「……サリヴァーンくん。……君は優秀だ」


アルトリウス「――が、キアランを含む三年生風紀委員を集めてしまったのはマズかったね。……バンホルト先生にそう吹き込んだのは君だろう? ただ、そのおかげで、ボクが抜け出せてしまった」


アルトリウス「……もちろん、他にも実力のある生徒がいるしね」


サリヴァーン「…………く、クソッ……!!」


アルトリウス「――グウィンドリンくん。……悪かった、こうなったのはボクの責任でもある」


グウィンドリン「そ、そんなことはありません! シースが逃げられたのも、サリヴァーンが……――」


アルトリウス「いいや、ボクの管理が甘かったんだ……。――だから、ボクに責任を取らせてくれ」


アルトリウス「……男くん。ボクがここに来られたのも、君が友達を送ってくれたおかげだ。……まぁ、危ない事に手を出したのは、あまり褒められたことではないけど……ね」


男「す、すいません……」


アルトリウス「――さぁ、コレを使って帰るんだ。グヴィネヴィアさんが待ってるよ」


グウィンドリン「ま、待ってくださいっ! 私も戦います!」


アルトリウス「……ごめんね。こう見えて、ボクは結構怒っているんだ。――……わかるね?」ゴゴゴゴゴ…


グウィンドリン「…………っ! ――わ、わかりました……」


グウィンドリン「――さぁ、男くん。……行こう」


男「…………はい」


男「――あ、アルトリウス先輩っ! ……頑張ってください」


アルトリウス「……あぁ、ありがとう」




シュイィイイン…



アルトリウス「……それにしても、流石はゴーだね。百発百中だ。――なぁ、シース」


シース「…………ッ」ビクゥッ‼


アルトリウス「あんなに優しく世話してあげたのに……、残念だよ」ゴゴゴゴ…


シース「………………」ガタガタガタガタッ


シフ「………………」グルル…


サリヴァーン「――ふ、ふんっ! た、確かに計画は失敗したが……、こちらはシースもいる! お、おぉおおお前など敵ではないッ!!」ガタガタ…


アルトリウス「………………」ゴゴゴゴゴ…


マクダネル「………………」ショワァ…


アルトリウス「……君たちが今回の黒幕ってことで、いいんだよね……?」ゴゴゴゴゴゴ…


サリヴァーン「………………あ……いや…………」ガタガタ…






アルトリウス「やるよ、シフ」







ギィヤァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア……――




――――――

――――

――













シュイィイイイン…


男「――うわぁ……。なんだ、変な感じ……」


グヴィネヴィア「男くんっ! グウィンドリンっ!」ガシッ


男「えっ……むぐっ!」


グウィンドリン「ね、姉さん……!」


グヴィネヴィア「心配したんですよっ! ――ケガはっ? どこか痛いところはっ?」アセアセ



グウィンドリン「私は大丈夫だ。男くんのほうを見てやってくれ」


男「い、いやっ! 俺も大丈――っつ……」


グウィンドリン「無理をするな。サリヴァーンにやられていただろう。……姉さん」


グヴィネヴィア「少し……ジッとしててくださいね」ホワァア…


アオニート「――男ッ! お前トイレに行ってたんじゃねぇのかよ……。……まったく、あまり心配させないでくれよ……」


男「あはは、ごめん。でも、見過ごせなかったんだ」


ジークリンデ「本当……男くんはすごいな。尊敬する」


ヨルシカ「男さん……。さっきは疑って……ごめんなさい……」グスッ


男「ううん。ヨルシカさんの反応は当たり前のことだよ。気にしないで」


ギュッ…


ロザリア「………………っ」ギュッ


男「……ロザリアさんも、心配してくれたの? ……ありがとう」


ロザリア「………………」ポカポカ


男「あはは……」


グヴィネヴィア「……男くんは、みんなに慕われてるんですね……」


男「いい友達ばかりで……。俺にはもったいないくらいです」


グヴィネヴィア「――男くん。……改めて言わせてください」


グウィネヴィア「……ロザリアちゃんと、弟のことを助けてもらって……。……本当にありが――」






ドォオオオオオンッ‼






男「――――っ!!? な、なんだ……!?」ビクゥッ





「 妹たちよぉおおおおッ!!! お兄ちゃんがいま助けに来たぞぉおおおおおおおおおッ!!! 」




グヴィネヴィア「あぁ…………」

グウィンドリン「あー…………」

ヨルシカ「あっ…………」

ロザリア「…………ぁ」



スモウ「ふぅんっ!! ……あの、お方は……」


ザシュッ‼


オーンスタイン「きたな……。グヴィネヴィアファンクラブ創設者にして、グヴィネヴィア様の実の兄……! その名も――」バリバリッ


ドォオオンッ‼


オーンスタイン「――――先輩がっ!!」


スモウ「もう、ダークレイスなんか、敵じゃ、ない」


オーンスタイン「あぁっ! こんな奴ら、さっさと片付けてやるぜっ!」









男(でっかい鳥に乗ってる……。あの人は味方なんだよね……? 妹たちって……?)


アオニート「あっ……あれはっ!! ま、まさかお目にかかれるとは思わなかったぜ……!!」


男「あ、アオニートくん。知ってるの?」


アオニート「もちろんだっ! あれは何を隠そう……グウィネヴィア先輩たちの――」






グヴィネヴィア「――知らない人です」キッパリ





アオニート「――あ……え……?」


グヴィネヴィア「……ですよね? グウィンドリン?」ゴゴゴゴ…


グウィンドリン「えっ……。あ、あぁ……うん……」


グヴィネヴィア「ねぇ? ヨルシカ?」ゴゴゴゴ…


ヨルシカ「は、はいっ! 知らない人ですっ!」


グヴィネヴィア「……ロザリアちゃんも……あの人なんて知らないよね……?」ゴゴゴゴ…


ロザリア「………………っ!」ブンブンッ


男(す、すごいプレッシャーだ……)





「ウオォオオオオオオオッ!! こんな奴らさっさと蹴散らしてやるからなぁあああああッ!!」バリバリッ


ドォオオオオオンッ‼



――

――――

――――――


男「――す、すごい……。あっというまに、ダークレイスが居なくなっちゃった……」


アオニート「まさに一騎当千って感じだったな……」



ドスゥン…



「――はっはっは! 探したぞ、可愛い妹たちよッ!!」


「おぉ、ヨルシカか。大きくなったなぁ……!」シミジミ…


ヨルシカ「………………」シラー


「んっ? そこに居るのはロザリアちゃんか? いやー、可愛くなっちゃって!」


ロザリア「………………」フイッ


「――おぉっ、グウィンドリンじゃないか! ……そうだっ、この後にでも男同士で温泉にでも行こうじゃないか! なぁっ?」


グウィンドリン「あ……いや………………」シラー


グヴィネヴィア「………………」ツカツカ… シュィイイン…


「……はっはっは。我が最愛の妹、グヴィネヴィアよ! お前も俺に会いたかったか! そうだっ、お前もこの後一緒に――ごふぅっ!!?」 ドゥンッ‼


グヴィネヴィア「………………」シュィイイン…


「――ちょ、ちょっ!! あ、あれかっ!? この前風呂を覗いたのをまだ――ぐはぁっ!!」 ドゥンッ‼



男「な、なんだ……? グヴィネヴィア先輩を中心に何かが……?」


ジークリンデ「……あれは、神の怒りね。――……ほら、私や男くんも一回放つフォースをやったじゃない? あれの元になった術よ」


男「へ、へぇ……」


ドゥンッ‼


アオニート「……しかし、すげぇな……。グヴィネヴィア先輩の神の怒りをあれだけ食らっても、まだ意識があるなんて……」


ドゥンッ‼


「――ぐ、グヴィネヴィア? こ、これ以上は本当に……――ごはぁっ!」 ドゥンッ‼


グヴィネヴィア「………………」シュィイイン…


グウィンドリン「――ね、姉さんっ!? さ、さすがに神の怒りをそこまでやったら……えっと……そこの人も……――」



グヴィネヴィア「 フォースです 」


グウィンドリン「えっ」


グヴィネヴィア「フォースです。――ねぇ、ヨルシカ?」ゴゴゴゴ…


ヨルシカ「は、はいっ!! フォースです!」


グウィンドリン「い、いや……さすがに……」



「………………」チーン…



グヴィネヴィア「…………はぁ。しょうがないですね……」


グヴィネヴィア「――シバさん、ロートレクさん?」


シバ「は、はいっ!」ビシッ


グヴィネヴィア「ここに、風紀の乱れの塊のような男が居ますよ。……あぁ、弟は少し怪我をしてまして……。お手を煩わせて、申し訳ないのですが……」


ロートレク「い、いや……しかし……」


グヴィネヴィア「…………そうですか」




グヴィネヴィア「――なら、私がやります」シュィイイン…




グウィンドリン「あ、ああっ!! もうケガは大丈夫だからっ! 私がっ、私がやるよっ!」


グヴィネヴィア「ダメですよグウィンドリン、無理しちゃ。…………終わらせますから」


シバ「――や、やりますっ! ここは風紀委員にお任せくださいっ!!」


ロートレク「おいっ! さっさと連れていくぞっ!」



ワーワー…――




男「……怖い」

アオニート「奇遇だな。俺も同じ感情だよ」ガタガタ…

男「……でも、これで終わったのかな」

アオニート「あぁ……たぶんな……――」


――――――

――――

――


男「――あっ! ……さっきはありがとう。……助けを呼んできてくれて」


オーベック「……ふんっ。……貸しだからな」


男「……うん、わかった――」ニコッ

とりあえずは、あとラストだけです。

ただその前にいくつか、1レスや2レスで終わるような話を入れていきたいなと思います。


ラストだけ見たいよーという方は、今度に出る新作の、最後のファンタジーが発売するまでには終わりにする予定なので、来月の頭ぐらいにまた見に来ていただければ終わってると思います。


ダクソSSは需要もないかと思ったけど、案外見てくれてる人がいてうれしいです。

それでは、よろしくお願いします。


―――次の日


アオニート「――しっかし、昨日はあんな大事件があったのに、学校あるなんてなぁ……」


男「あはは……。まぁたしかに、休みでもよかったよね」


スタスタ…


男「……あっ……」



シーリス「――あら、御機嫌よう。男くん」ニッコリ



男「ご、ごきげんよう……?」


アオニート「ん? 知り合いか?」


男「ま、まぁ……。そんなとこ……」


アオニート「お前って、地味に交友関係広いよな。色々と知らないにしては」


男「あ、あはは……」


アオニート「――ま、なら俺は先に行ってるぞー」


男「う、うん……」


シーリス「………………」ジーッ


男「………………」


男(な、なんだ……? ってか、同じ人……だよね?)


男「えっと……。どうしたの?」


シーリス「………………」ジーッ


ヨルシカ「……ほらっ! シーリスさん?」


男「あれ、ヨルシカさん……?」


ヨルシカ「おはようございます。……どうやら、シーリスさんが男くんに言いたいことがあるようで、私も付き添うことにしたんです」


男「言いたいこと……?」


シーリス「そ、そんなこと言ってないでしょっ! いい加減な事言わないでっ!」キーッ‼


男(……あ、さっきはアオニートくんが居たから、猫かぶってたのか……)


シーリス「………………とう……」


男「へっ??」


シーリス「あ……アリガ……トウ……」


男「…………はぁ?」


シーリス「――――ッ!! だ、だからっ、昨日ロザリアさんを救ってくれてありがとうって言ったんですっ!! 一回で聞き取れないんですかっ!?」


男「あ、あぁ……そういう……」


シーリス「ふんっ! ――だからと言って、いい気にならないことですね! ……私だって、その場に居れば同じことをしてました。……それじゃ、それだけですので」プイッ


スタスタスタスタ…


男「わ、わかっ――って、居なくなるの早いな……」


ヨルシカ「シーリスさんは、あぁ見えてすっごく感謝してるんですよ。……それはわかってあげてください」


男「う、うん……」


ヨルシカ「それじゃ、私たちも学校に行きましょうか」


男「そうだね。そうしよう……――」








―――学校


ガララッ


男「おはよー……――うわっ!?」ドンッ


ロザリア「………………」ガシッ


男「ろ、ロザリアさん……おはよう」アハハ…


ロザリア「………………っ」ギロッ


ヨルシカ「ち、違いますよっ! お、男さんとはついさっき会ったばかりでっ……。ぐ、偶然ですよ偶然っ」


ロザリア「………………」フイッ


ギュゥウウウ…


男「あー……」




男(――昨日のあの一件から、ロザリアさんの行動がより積極的になった)


男(当たり前のように、今日の朝も部屋にいた。でも、もう何も言えなかった)


男(……ダメと言ったら、どんな行動に出るのかがわからなくて怖い)


男(まぁ、別に何かが盗まれる……とは言っても、盗むものもないんだけど。そういう被害があるわけでもなく、ただただご飯を作りに来てくれるだけなので、そのままでもいいかという気持ちだ――)



カーク「………………」ゴゴゴゴゴ…



男(――ただ、最近カークくんが怖い)



『楽しい放課後』



―――とある日の放課後


キーンコーンカーンコーン



男「――うぅーん……。今日も終わった……」


アオニート「そういや男はよー。放課後なんか予定とかあるのか?」


男「えっ? あぁー、いや。そういえば、今日は飼育委員もいいって言われてたなぁ」


アオニート「おぉ、ならちょうどよかった。そいじゃ、この後――」



カルラ「――話を割ってすまない。……男くん、今日は暇ってことでいいのかな?」



男「あ、あぁ、カルラさん……。まぁ、そういうことになるのかな……」


カルラ「それじゃ、どうだろう? 実は私は監獄巡りをするのが好きなんだが……、この後一緒に行かないか?」


男「か、監獄巡りっ!? ……でも、なんだろう。少し興味があるなぁ」


アオニート「………………」ポツーン…


カルラ「そうかっ。なら、さっそく……」


グイグイッ


男「――えっ? ろ、ロザリアさん……?」


ロザリア「………………っ!」


男「え……約束……??」


ツネッ‼


男「いたいっ! ――あ、あぁ、奇跡?? そ、そっか、教えてもらうって言ったもんね」


ガシッ‼


カルラ「……すまないね、ロザリアさん。今日は私のほうが先だ……。諦めてくれないか……?」グググ…


ロザリア「………………っ」グググ…


カルラ「自分のほうが先だって……? どうなのかな、現にいま男くんは知らなかったように思えるが?」ニヤッ


ロザリア「………………」グルル…


男(なんだこの状況……)


アオニート「……俺、帰るわ」トボトボ…


男「あ、あぁ……なんか……ごめんね……」

ダクソやるのが久々過ぎて、サリヴァーンに勝てねぇ。
フリーデにも勝てねぇ。

楽しくなってきました。

今からダクソ3やる俺に一言

>>435
グンダさんは強いぞ。



『部活動見学』



―――弓道場


グウィンドリン「――さあ、こっちだよ男くん」


男「あ、はい……」


男(――流れに流されて、なんか弓道場まで誘導されてしまった……。部活なんて、やる気はないんだけどなぁ……)


コンチワーッス‼

オツカレサマデス‼


男「……というか、アレですね。グウィンドリン先輩は弓道部だったんですね」


グウィンドリン「あぁ、一応だけどね。普段は風紀委員が忙しくて、あまり顔出せないんだけど……」


ドスゥン…


ゴー「……ん? ――おぉ、これはこれは……。部活に顔を出すなんて久しぶりじゃないのか?」


男(巨人…………。……遠くからでしか見たことなかったけど、近くで見ると迫力があるなぁ……。――しかし、慣れって怖いな。別に不思議じゃなくなってきた……)


グウィンドリン「えぇ、すいません忙しくて……。――それで、この一年生が噂の男くんなんですよ」


グウィンドリン「男くん、この人がゴー先輩だ。先日シースを射抜いたのもこの人だ」


グウィンドリン「ゴー先輩はすごいんだぞっ。弓道大会の巨人の部で、数々の賞をとってるんだ!」


男「こ、この人が……。――この前はありがとうございましたっ」


ゴー「ふははっ! なぁに、友に頼まれた事をしただけだ……。……それで、君も弓道部に入る……ということでいいのかね?」


男「えっ??」


ガシッ


グウィンドリン「ふふ……。男くんは……まだ部活は決めてないんだったよね……?」


男「い、いや……そうですけど……」


グウィンドリン「それはよかった。……ね?」


男「いや、ね? じゃないですよっ! お、俺だって、飼育委員がありますし……」


ゴー「まぁまぁ……。君を取ったとアルトリウスに知れたら、私が怒られてしまう。……だから、委員会優先でかまわないぞ」


男「そ、そういうことじゃないんですよっ! ぐ、グウィンドリン先輩……これを狙って……」


グウィンドリン「いやいや……。でも、どうだ? 弓の扱いは覚えておいて損はないんじゃないかと、私は思うんだけどなぁ……?」


男「ゆ、弓って言われましても……」

「フゥーハハハッ!! 話は聞かせてもらっ――」


グウィンドリン「――あぁ、あれは無視して構わない」


男「えっ」


「お、おいっ、グウィンドリンっ! 一応俺は先輩だぞっ!」


グウィンドリン「はぁ……。どうしたんですか? ファリス先輩」


ファリス「お、お前……ゴーと扱いの差が……。――いや、まぁそれはいい」


ファリス「入部するということなら、この弓道部部長のファリスを通してもらわないと困るなぁっ!」


男「あっ、ゴー先輩が部長じゃないんですか」


グウィンドリン「そういうのを嫌う人なんだ。……あと、趣味でプロレスもやってるから、忙しいのもあるな」


男「マジですかっ!?」


ファリス「話を聞けっ! ……ただ、知っての通り……今年は新入部員も少ない。是非とも男くんに入っていただきたいと思う」


男「あ、あの、俺は……」


ファリス「そこで……だ。賭けをしないか?」


男「か、賭け……?」


ファリス「あぁ……。――見よっ!!」バッ‼


ガラーン…


男「……えっ??」


ファリス「……見えるか? 1キロ先にある的がっ!!」


男「ま、的……!?」


男(小さすぎて見えない……)


ファリス「……キミはあの的を射抜けると思うか?」


男「あ、あれを……? ……そ、そりゃ、無理だと思いますけど……」


ファリス「ふっ、やはりな……。……ならこれでどうだ?」


ファリス「あの的を見事、射貫けたのなら……キミには弓道部に入ってもらう」


男「えっ、イヤです」


ファリス「そしてっ、射抜けなかったら……。ふふっ、君にはこのファリス印の弓をプレゼントしようっ!」


男「いや、いらないです」


ファリス「……よしっ! ――やれっ、ゴーっ!」


男「――って、ファリス先輩がやるんじゃないんですかっ!?」


ファリス「フゥーハハハッ! 誰が私がやるなどと言ったのだ! 私には無理だっ!」


男「す、すごい堂々としてる……!」


ゴー「ふははっ。……そういうことなら、見事……射貫いてみせよう」


男「い、いやっ!! その前に俺は良いって言ってないんですけどっ!」


グウィンドリン「まぁまぁ……。出来ないと思うんだろう?」ニヤッ


男「そ、そりゃ……」


男(……でも、待てよ……。この前のシースの時も、すごく遠くから狙ってきてたわけだし……)



男「――わかりました」



ファリス「おぉ、そうかそうかっ!」


男「ただっ! 条件があります」


グウィンドリン「条件……??」


男「そうです! ……えっと……そうだなぁ……。ゴー先輩には目隠しをしてもらうってのはどうですか?」


ファリス「なっ……! そ、それじゃ……」オドオド


男「正直、俺にこの勝負を受ける義理なんてないわけですし、これでも譲歩したほうですけど……?」


グウィンドリン「しかし、さすがに……」


男「なら、帰ります!」




ゴー「――ふははっ! よし、ならば受けてたとう」




男「…………えっ??」


ゴー「目隠しとはな……。たしかに、私はまだ目に頼りすぎているのかもしれない」


男「えっ、あ、あの……」


ゴー「…………よしっ、これでいいかな?」ギュッ


ゴー「――では、行くぞ……。……むぅうううん……っ!!」ギリギリ…





バシュッ‼






――こうして、男は弓道部に入った。


『パッチという男』


―――校舎裏


パッチ「――けっ!! ……ったく、なんで俺が怒られなきゃなんねぇんだよっ」


パッチ「まさか、あの拾った指輪がそんな奴だったとは……。あぁーあ、めんどくせぇ」


カランッ…


パッチ「ん? なんでこんなところにスコップが……」


パッチ「………………あっ」ピコーンッ


パッチ「へっへっへ……。よぉーっし、ちょっとやる気だすかっ!」ザッ‼


ザクッ…

ザクッ…



―――1時間後


パッチ「――よーしよし、こんなもんでいいだろ」


ポッカリ


パッチ「まぁまぁ、いい穴ができたんじゃねぇかな。んじゃ、うまくカモフラージュして……」ポンポン


パッチ「へへっ……。これでわからねぇ」


パッチ「さてと……。落ちたやつから金でも巻き上げて、それでうまいもんでも食うかっ!」


パッチ「ここなら先公の目もないだろ。んじゃ、あっちで寝てるかな」


パッチ「誰か落ちたら音でわかるだろ。そいじゃ……――」


グーグー…




「――うおぉおおおお!!??」


ズサァア‼

ドシャッ‼


パッチ「――はっ!! ……すっかり寝ちまったぜ。……でも今の音……へへっ!」ダッ‼


パッチ「――おうおうおうおう! ずいぶんと間抜けな奴だなぁ……。……ま、とりあえず出して欲しけりゃ、金を――」



グウィン「い、たたたた……。――んん、君は……??」



パッチ「……あっ……どうもー……――」



――パッチ、停学。


『怪しい委員会』



男「――また最後にミルドレット先生に頼み事されちゃって、時間かかっちゃった……」


男「早く飼育委員行かないと……」ダッダッ…


男「…………ん? あれって……?」





ユリア「あぁ……たんだ……」


「それは…………ですね…………」





男「あれは……ユリア先生……だっけ? そっか、ここは折れた直剣委員会の前か……」


男「でも、今更遠回りも面倒くさいし……。何気ない顔でスルーしないと……」


男「――……こんにちは~……」スルー…




ユリア「――おぉ、男くんじゃないか。まぁ、待ちたまえ」



男「あっ、はい」


男(ダメだったー)


「……あら、それじゃ私は帰ることにするわ」


ユリア「あぁ、ではまたな」


ペタペタ…


男(……裸足? 変な人だなぁ……。――って、この世界じゃ変でもないのか……)


男「え、えっと……大丈夫だったんですか? お客さんじゃ……」


ユリア「ん? ――あぁ、気にしなくていい。あれは私の姉でね。近くの村でちょっとした絵画教室を営んでいるんだ」


男「あっ、そうだったんですか」


ユリア「まぁ、私の事はいい。……それで、どうかな? 折れた直剣委員会に興味は?」


男「じ、実はもう飼育委員に入ってしまいまして……。ごめんなさい」


ユリア「なんだ、そうだったのか。――いや、かまわないよ」


ユリア「…………些細なことだ」ボソッ


男「…………えっ?」


ユリア「――君には素質がある」


男「素質…………?」


ユリア「あぁ…………――」





ユリア「 ――主役になる、素質だ 」





男「…………?? す、すいません、意味が……」


ユリア「じきにわかるさ」


ユリア「……まぁ、折れた直剣委員会はいつでも君を歓迎しよう。時が来る、その時まで」


男「い、いや、多分それは無いと……」


ユリア「………………」


男「………………あ」


男「――えっと! それじゃ、さようならっ!!」ダッ‼


ユリア「……あぁ、気を付けるんだぞ」










ユリア「――待つさ、何年でもな」





「……ユリア先生? どうしたんですか」


ユリア「おぉ、アンリくんか。……ふふっ、面白くなってきたな」


アンリ「はぁ……。――あ、そういえばホレイスは遅れてくるって言ってました」


ユリア「ふむ、そうか。……いや、優秀な新入生が入ってくれて助かるよ」


アンリ「またまた……」


ユリア「……そういえば、ついこの間のあの大事件。……君のお兄さんは何をしてたんだ?」


アンリ「さぁ……? いつも通り引きこもっていたと思いますけど……」


ユリア「……そうか」


アンリ「はぁ……卒業する気あるんですかねぇ……」


ユリア「まぁ……、なるようになるものさ……――」



「アンリくん」ってなってるけど、一応女の設定です。


『クラーナ先生の贖罪』



ミルドレット「――ねぇねぇ、どうかなっ? これ、今流行のずた袋なんだって!」キャッキャ


クラーナ「へ、へぇ……そうなのか……」


レア「あ、あのっ! ミルドレット先生っ! ちょ、ちょっと聞きたいことがあるんですけど……」


ミルドレット「あっ、はい。なんですかーっ?」ニコニコ


レア「……え、えっと……ここなんですけど――」




コルニクス「……最近、ミルドレット先生が……うーん、なんというか……。…………変わりましたな」


クラーナ「あ、あぁ、コルニクス先生……。えぇ、まぁ……ぷ、プライベートで何かあったようで……あはは……」


コルニクス「ほうほう。まぁ、なにはともあれいいことだ。いやぁ、前までのミルドレット先生は……――」


クラーナ(……もしかして、私の立ち位置っていうのも、結構面倒くさいんじゃないだろうか……)


クラーナ(ミルドレットを止めたほうが……? ……いや、しかし…………――)


コルニクス「――先生? クラーナ先生? どうかしましたかな?」


クラーナ「あ、あぁっ、いや! す、すいません、授業がありますので、これで……」ソソクサ…


コルニクス「………………?」






キーンコーンカーンコーン


クラーナ「……はぁ…………」


男「……あれ? クラーナ先生がため息ついてる……。なんだろう、疲れてるのかな?」


アオニート「いやぁ、なにか悩んでる姿も美しいな……」ホワァ…


男「あっ……そう……ね」


クラーナ(――いかんな。今は授業に集中しないと……)



クラーナ「えー、それじゃ今日は実技に入る。……目を瞑って、暗闇の中の火を想像するんだ」


シーン…


クラーナ「そうだ、集中しろ……。私がいいというまで、火を見つめるんだ」


クラーナ「………………」


クラーナ「…………ん? 男君、呪術の火はどうした?」


男「へっ??」


男「あ、え……っと…………??」


クラーナ「呪術の火だ。まさか、持ってないのか?」


男「………………??」ポカーン


クラーナ「……男君? なぜちゃんと準備をして――」


クラーナ「………………」


クラーナ(……しかし、私にこの子を責める資格があるのだろうか……。なんだろう、罪悪感がすごいな……)


男「あ、あの…………ご、ごめんなさい……」


クラーナ「――ほら、私のをやる」ホウッ…


男「えっ、あの、これは……!」


クラーナ「いい。なんだ……その……まぁアレだ。……大事にしろよ」


男「あ、ありがとうございます!」


クラーナ「それじゃ、さっき言ったとおりにするんだ。……目を瞑って、そこに燃える火を思い浮かべるんだ」


クラーナ「そして……――」




ボウッ‼




男「――うわぁっ!!?」


クラーナ「……な……っ!?」


男「び、びっくりした……。――で、でも、これって成功ですかっ?」


クラーナ「あ、あぁ……そうだが……」


男「えへへ、やったー!」


クラーナ「…………っ」ドキッ


クラーナ(………………なんだ、いま……私は……)ギュッ…


クラーナ「ま、まぁ、あまり浮かれないことだ……」


男「そ、そうですね……。すいません……」


クラーナ「うっ……。……し、しかしまぁ、よくやった」ポンッ


男「あ、ありがとうございますっ!」




クラーナ(――…………しかし、それにしてもこんな短時間で……。この子はいったい……?)



『オーベックの秘密』



「――オーベックよ。この度の働き、よく動いてくれたな」


オーベック「……いえ」


「生徒会の動きにいち早く気づき、そして行動を起こしたことは素直に褒めよう。…………しかし、だ……」


オーベック「………………」


「生徒会の居場所を突き止めたとき、何故まず我々に報告をしなかった?」


オーベック「報告するまでもないかと……」


「それはお前の決めることではない」


「……聞いた話じゃ、貴様がアルトリウスに場所を知らせたらしいじゃないか」


オーベック「……そうするのが最良の行動だと判断しました」


「……何が『最良の行動』だ。……おかげでアルトリウスの奴が勘付いた。あいつは基本的には自分から動くタイプではないが、人脈と人望がある。敵に回られると厄介なんだ。わかるだろう?」


オーベック「申し訳ございません」


「まったく、本当にわかっているのか? 貴重なチャンスを――」



「――まぁまぁ、いいじゃないか」



「ろ、ローガン先生……」


ローガン「時間ならある。……それより、優秀な若手が来てくれたことを喜ぼうじゃないか……カリオン先生」


カリオン「………………」


ローガン「――オーベック君……だったな? 期待しているぞ……」ポンッ


オーベック「………………はい……」





キーンコーンカーンコーン


男「――……あっ、オーベックくん! 俺もいま委員会の帰りなんだけど、オーベックくんも委員会とかだったの?」


オーベック「まぁ……そんなとこだ」


男「そうそう! この前教えてもらった照らす光なんだけど――」ペラペラ


オーベック「………………ふっ……」


男「――いやー、トイレの時使っちゃダメだね! 危うく大惨事に……。……ってあれ、どうかしたの?」


オーベック「……いや、お前らしいなと思ってな……――」フンッ


『ドキドキ・体育祭』



―――教室:朝


ワイワイ…


男「――体育祭???」


アオニート「あぁ、そろそろそんな季節だなぁ、ってさ」


男「あー……。……そういえば学校だもんね、ココ……」


アオニート「は?」


男「い、いやまぁ……。……とはいえ、そんな盛り上がるもんなの?」


アオニート「正直微妙だな。兄貴のは見たことあるけど、まぁ……それなりだ」


男「だよねぇ。……ほどほどに頑張るよ」


ガララッ


ミルドレット「――はーい、みんなおはようございます」


ミルドレット「……うん、全員居るかな。連絡事項は……――」




ミルドレット「――と、このぐらいかな。……あ、それと、今日の放課後は来月に控えた体育祭について話し合うから、みんなちょっと教室で待っててね」


エーッ‼


ミルドレット「まぁまぁ、これも行事だから……。それじゃ、朝のHRを終わりにします」


キリーツ
キヲツケー
レイ


ザワザワ…



アオニート「噂をすれば、もう体育祭について話し合うんだな」


男「出場する競技を決めるとかそんなことでしょ?」


アオニート「多分な。あー、めんどくせぇ……」


男「あはは……」


ミルドレット「――男くーん! ちょっと手伝ってほしいなー」ニコッ


男「あっ、はいっ! ……ちょっと行ってくる」


アオニート「おーう。……しかしミルドレット先生、よく男に頼み事してるよな」


男「うーん、そうかな? まぁ、頼られるのは悪い気はしないから、気にしてないけど……――」

ミル姉笑ってもわからないんじゃ…いや、雰囲気か…



―――放課後



ミルドレット「――それじゃプリントを配るから、みんな見てー」


ミルドレット「その紙に、今年の体育祭で行われる競技が書いてあるから、自分が出たい競技にチェックしてね」


ミルドレット「あ、そうそう。もちろん、みんな必ず一つは何かに出ないとダメだからね~」



アオニート「はぁー、どれにしようかなー。男はどれにする?」


男「えっ……いや……。えっ……これは…………えっ……」


アオニート「ん? どうした」


男(こ、これは……!? 競技って50m走とかじゃないのっ??)


男「あ、アオニートくん。こ、この『竜の炎障害物競争』って……」


アオニート「へぇ、それに出たいのか? たまに思うけど、度胸あるよな、お前」


男「いやいやいやいや……。ど、どういう感じなのかな? って、思って……」


アオニート「どういう感じって……。竜の炎を避けながら競争するんだろ。逆にそれ以外なにがあるんだよ」


男「あっ、そういう感じなんだ……。へぇー、あっ、そうなんだ……」ゴクリッ


男(ヤバい。これはヤバい……。『結晶トカゲ取り競争』って、飼育してるやつ?? 見たことはあるけど……、アレをどうするんだ……。想像できねぇ……)


アオニート「――あっ、そっか。お前飼育委員だからそれ参加できねぇじゃん。残念だったな」


男「えっ? あっ、そうなの……。そっか、なんとなく理由はわかるけど……」


男(やべぇ、体育祭やべぇ……。俺なんかが出れるのあるのだろうか……)


男「――あっ、この『沼走り競争』なら……」



ミルドレット「男くん、それにでるのっ?」



男「わぁっ!?」ビクッ


ミルドレット「実は、それ先生得意なんだ。……もし出るなら、私が手取り足取り……――」


男「い、いやっ! ま、まだ考え中です……」


ミルドレット「……そっかぁ。まぁ、いつでも言ってね?」ニコッ


男「は、はい!」


男(……なんだ、なんか危険を感じた……。これは避けよう……)


男(でも、これ以外で安全そうな種目かぁ……――)


>>480 それを言うなら、ミル姉さんに限った話じゃないけどね。まぁ、雰囲気でお願いします。



男「――こ、これは……!?」


男「あ、アオニートくん! こ、これはどういう競技なのかな!?」


アオニート「あん? ……どういうって、お前やったことないのか、これ?」


男「い、いや、そういうわけじゃないんだけど、俺の知ってるのと違うかもしれないから……」


アオニート「そんなことあるか?」


アオニート「――……まぁ、これはクジを引いて、そこに書いてあるものを持ってゴールするやつだろ」


男「だ、だよねっ! 『借り物競争』ってそういうやつだよねっ!!」


男「こ、これなら……!」



トントン…

ガララッ


ミルドレット「……あら! みんな、応援団長が来たようね!」


男「応援団長……。へぇー、もう決まって――…………えっ」




グヴィネヴィア「一年生の皆さん! この度、我が青組の応援団長になりました、グヴィネヴィアです! みんな初めてで不安でしょうけど、頑張りましょうねっ!」グッ‼







 シ ー ン …






 ウ オ ォ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ !!!!





グヴィネヴィア「――あらっ、みんな元気ですね!」ニッコリ


男「………………」ポカーン…


ヨルシカ「ね、姉様……!?」


グヴィネヴィア「――あぁヨルシカ、男くん。ふふっ、同じ組でよかった」


男「ぐ、グヴィネヴィア先輩……。た、体育祭とか好きなんですか??」


グヴィネヴィア「えっ? ……いや、実はそういう訳じゃないんですけど……。……でも、やっぱり最後の体育祭だから、がんばろうって思ったんです!」ニコッ


男「あっ、そう……ですよね!」


グヴィネヴィア「一緒に、頑張りましょうね!」グッ‼


――

――――

――――――


ミルドレット「――それじゃ、そろそろいいかな?」


ミルドレット「体育委員の……ホレイスくん。プリント集めてもらえる?」


ホレイス「……はい……」





ホレイス「――……集計……できました……」


ミルドレット「はい、ありがとう。……こ、これは……」


ミルドレット「えぇっと……、すごく偏っちゃったなぁ……」



アオニート「男は結局何にしたんだ?」


男「『借り物競争』だよ。……それ以外は……ねぇ?」


アオニート「やっぱり、考えることは一緒だよな」


男「えっ、アオニートくんも――?」




ミルドレット「えー、『借り物競争』に過半数が集まっちゃってるから、じゃんけんしましょう」




男「」



男(――でも、そうか……。怖いのは俺だけじゃないんだ……)



男(……しかし、このじゃんけん……負けられないっ!!)ゴゴゴゴゴ…



アオニート「ふっ、俺も負けないぜ、男……!!」


ワーワー‼
ウオォオオ…‼





男「――勝った…………っ!!」ハァ…ハァ…


アオニート「くっ……!! ちくしょーっ!」


男(よかった、本当によかった……! 心臓が飛び出そうになるくらい緊張したよ……)


アオニート「……はぁ、しょうがねぇな! それじゃ、後は任せたぜ男っ!」


男「うんっ! 全力で頑張るよっ!」グッ‼



――後日



男「――で、何とか借り物競争だけ頑張ればよくはなったけど……」



イーッチ‼
ニーッ‼

ファイトー‼




男「ほかの競技にでるみんなが、すごい熱くなってる……」


男「でもまぁ、応援団長がグヴィネヴィア先輩だしね……。たしかに、頑張りたくはなるか……」


ヨルシカ「――あっ、男さん……。男さんは練習しないんですか?」


男「あぁ、ヨルシカさん。……まぁ、借り物競争だしね」


ヨルシカ「まぁ、そうですよね」アハハ…


男「ヨルシカさんは何の競技に出るの?」


ヨルシカ「私は奇跡しか取り柄がないので……。『雷のやり投げ』ですね」


男「へ、へぇ……」


ヨルシカ「まあ、グヴィネヴィア姉様ほどではないですけど……」


男「いやいや、がんばってねっ!」


グイッ


ロザリア「………………っ」


男「もちろん、ロザリアさんのことも応援してるよ!」


ヨルシカ「最近は、ロザリアさんもいつも男さんの傍に居ますね」


男「あ、あはは……」


ヨルシカ「……少し……嫉妬しちゃいます……」ボソッ


男「えっ?」


ヨルシカ「い、いえっ! ……で、でも……その……――」


ヨルシカ「――……た、たまには、私とも……仲良くしてくださいね……?」ボソッ


男「…………?? もちろん、ヨルシカさんは大事な友達だよっ!」グッ‼


ヨルシカ「……あー…………」



ヨルシカ「……ふふっ、ありがとうございます」ニコッ


――――そして、体育祭当日……




男「――つくづく思うけど……」



ドォオンッ‼

ワーワー‼



男「これは、体育祭なのか……。もうゲームとかで見るような、神々の戦争のようにも見えるよ……」


男「本当に借り物競争でよかった…………。……まぁ別の競技だったら、もう休むけど……」



グヴィネヴィア「がんばってくださーいっ!」フレッフレッ‼



男「……でも、グヴィネヴィア先輩に余計な心配させたくないしなぁ」


男「借り物競争は最後のほうか……。それまでに得点がひらいてくれてればいいんだけど……」


アオニート「なんだ、もう自分の事心配してるのか?」


男「まぁね……。やっぱり緊張はするよ」


アオニート「まぁ大丈夫さ。――あ、そうそう、当たりカードは俺が書いてやったからな」


男「へっ? 当たりカード??」


アオニート「あ? なんだ、知らなかったのか……」


アオニート「当たりカードってのは、借り物競争の時に、クラスで三枚まで作ることができるんだよ」


アオニート「自分のクラスが有利になるように作っていいことになっててな」


アオニート「運よくその三枚のうちの一つが引ければ……。ってことだ」


男「な、なるほど……。……ちなみにアオニートくんはなんて書いてくれたの?」


アオニート「おいおい……。決まってるだろ? 言わせんなよっ」アッハッハ…


男「………………???」


アオニート「――まぁ、引ける可能性なんてほとんどないだろうし、あんま期待はするなよ」


男「そっか……。まぁ、そうだね」


男(…………待てよ? 当日になって今更だけど……、借り物が普通じゃない可能性も…………)


男「…………いやいやっ! もう、覚悟を決めよう……」グッ‼


アオニート「――よっしゃ! 次は、俺の竜の炎障害物競走だぜっ! 応援してくれよなっ!」


男「そ、そっか……。き、気を付けてねっ!」


アオニート「おうっ!


――――――

――――

――


アオニート「……も、燃え尽きたぜ…………」プスプス…


男「す、すごいね……。執念のゴールだったね……」


アオニート「ま、まぁ……、グヴィネヴィア先輩のためだしな……」ヘヘッ…


男(……というか、ごく普通に燃えたけど……。……この世界では俺も魔法が使えたように、燃えても大丈夫なんだろうか……)



ジークリンデ「――やったーっ! 『フォース相撲』で1位になったよっ!」キャッキャ



男「あっ、ジークリンデさん。おめでとう! すごかったね!」


ジークリンデ「本当っ? いやぁ、やっぱりジークバルドくんは手ごわかったけど……。でも、なんとか勝ったわっ!」


アオニート「まったくだ。……あの玉ねぎ対玉ねぎの戦いに、みんな肩を震わせて――」


ガンッ‼


アオニート「――ぐっ……! て、てめぇ……俺は怪我人だぞ……」


ジークリンデ「ふんっ、怪我人なら怪我人らしくおとなしくしてろってのよ」


ジークリンデ「……で、でも男くん……。もしかして、みんな笑ってた……??」


男「いやいやっ! 全然そんなことなかったら安心してっ!」グッ‼


男(……まぁ、どっちがジークリンデさんかわからなかったから、どっちを応援すればいいのかもわからず困りはしたけど……)


ジークリンデ「そ、そっか! よかった……」


ジークリンデ「――って、そろそろ借り物競争じゃない??」



 「えぇー、次は『ハベルの鎧徒競走』です。……借り物競争に出る選手は集合場所に集まってください」



男「あっ、本当だ! じゃ、じゃあ、行ってくるね!」


ジークリンデ「うんっ! 応援してるから!」




男「――はぁ……すげぇ、緊張してきたなぁ……」


トントンッ


男「えっ?」


グヴィネヴィア「ふふっ、次はいよいよ男くんの番ですか?」


男「グヴィネヴィア先輩……。そうですっ、がんばりますっ」グッ‼


グヴィネヴィア「まぁ、頼もしいですね。……それじゃ、男くんにはこれを」スッ


男「えっ……、指輪……?」


男(金の蛇……? しかし、やたらと重いな……)


グヴィネヴィア「これは、お守りです。……それでは、頑張ってくださいねっ?」ギュッ


男「は、はい――!」






「――それでは、これより借り物競争を行います」


「一年生の部、出場選手は……――」



男(よ、よかった……。コースの途中にすげぇ障害物とかあるんじゃないかと思ったけど、なにもない……)


男(……しかし、得点差は微妙だなぁ……。トップは黄色組で、青組は2位か……。……これ、割と重要な立場じゃないか?)


男(……でも、負けるわけにはいかない……! グヴィネヴィア先輩にとっては、最後の体育祭なわけだし、あんなに頑張ってるんだから……!)


男(アオニートくんだって焼かれながらも2位をとったし、ヨルシカさんも1位をとってた……。ジークリンデさんも、オーベックくんも、ロザリアさんだって頑張ったんだ……!!)


男(黄色組にだけは、負けちゃいけない……。黄色って……)チラッ



ヘイゼル「ふっふっ……。どうやら、キミとは戦わないといけない宿命みたいだね……!」



男「ヘイゼルさん……!」


男(あっ、ちゃんと黄色い鉢巻してるんだ……。分かりづらい……)


ヘイゼル「悪いけど負けないからねっ。特に、キミに負けるとシーリスちゃんがうるさいからさっ」


男「俺だって負ける気はないよ……!」



「それでは、ルールを説明します」


「ゴールまでの途中に置いてある箱にくじが入っています。それを引いて、そこに書いてあるお題をもってゴールした選手の勝ちになります」


「くじの引き直しは、二回まで可能です。ただし、二回引き直してもできない場合は失格とします」


「くじの中には、クラスが書いた当たりカードが入っていますので、それに賭けるかは選手次第です」


「箱の中には約50枚のくじが入ってますので、よく考えてください」


男(多いなっ! ご、50分の3か……)




「それでは始めます。第一レース、一年生の方、並んでください」




男「ふぅ……。――よしっ!!」パンッ


ヘイゼル「ふふふっ、気合入ってるねっ」


男「俺が足を引っ張るわけにはいかないからね……」



「位置について……」


「よーい……――」




 パァンッ‼



男「よしっ!!」ダッシュ‼


ヘイゼル「うっ……風の抵抗が……」



ワーワー‼

ガンバレー‼



男(走る速さは、俺の居た世界と変わらないっぽいし、これなら……!)



「青組の男くんっ、勢いよくスタートを切りました! 次点に赤組のアンリさん! そして、出遅れたかっ黄組のヘイゼルさん!」


「――そして青組、一番最初にくじへとたどり着いたーっ!」




男「で、でてくれ……当たりカード……!」ガサゴソ…



男「――これだッ!!」スッ‼



男(……この紙、青色? も、もしかして……――)



「おーっと!! なんという強運!! 青組の男君はいきなり当たりカードを引き当てたっ!!!」



ウオォオオオ!

ワーワー‼

ガンバレー‼



男「や、やった……!! な、中身は…………――!!」カサカサ…





 『愛している人』




男「」



「どうしたどうした!? 当たりカードを引いたはずの青組、固まってしまったーっ!!」



男(う、嘘だろ……!? なんでアオニート君がこんなものを……っ!?)


男「…………いや、違う……。この文字……アオニートくんの字じゃない……??」


男「ど、どこかで見たことが……――はっ!!」バッ‼




ロザリア「………………」ジーッ




男(ロザリアさんの字だ……っ!! ど、どういうことなのっ!? 当たりカードって……)



ヘイゼル「――着いたっ! いよーっし……!」ガサガサ…


ヘイゼル「……お、これはっ!」



「おっとぉ!! なんとなんと黄組も当たりカードを引いたぁっ!! いきなりの大波乱! このレースの行方はどうなるっ!?」



ヘイゼル「ふむふむ……レオナールくんの仮面か……。ふふっ、シーリスちゃんが書いたやつかなっ」


男(シーリスさん「が」……!? って、ことは……当たりカード三枚は、クラスの別々の三人が書いている!?)


ヘイゼル「それじゃ男くん、何を悩んでるかわからないけど、お先にっ!」ダッ‼


男「あっ……!!」


ヘイゼル「うぅっ……風の抵抗で首が……」


男(どうする……!? これで……、いやでも…………。悩んでる暇はない…………。――……クソッ!!)



男「ひ、引き直しますっ!!」ガサゴソ…



「な、なんとぉっ!!? 当たりカードが出たにもかかわらず、青組が引き直したァッ!!」


キラッ

男「――これでっ!!」バッ



「なっ……! なんという豪運ッ!!! 青組、再び当たりカードを引いたァアアアア!!」



男「す、すごい……!! な、流れが来てるぞ……!!」カサカサ…





『おっぱいが大きい人』



男「」


「し、しかし、再び青組固まったぁああッ!! なんだ、あの紙にはなんて書いてあるんだァ!?」


男(あ…………あ、あの腐れニートや――ッ!!)


男(――いや、違うッ!? これもアオニートくんの字じゃない……!!?)


男(い、いったい誰が…………!?)チラッ



ホレイス「………………っ」グッ‼



男(う、うおぉおおお……!! グッ、じゃねぇよこのむっつり鉄仮面野郎がァアアア……ッ!!)ダンッ‼


ガンバレー‼

ワーワー‼

ドウシター‼


「青組の男くん、悔しそうに机を叩いていますっ!! なにがあったんだぁ!?」



ヘイゼル「――ほーらっ!! 早く仮面貸してよっ!」


レオナール「だ、ダメだっ!! これを外すと、封印がぁああ……っ!」



「しかし、当たりカードを引いた黄組も何やらもめている様子っ! これは最後までわからないぞっ!!」



男(ど、どうする……!? これは、えっと…………えっと…………っ!!)アセアセ



グヴィネヴィア「――男くーんっ! がんばってくださーいっ!」フレッフレッ



男「………………っ!」



男「――ひ、引き直します……っ!!」


男(ごめんなさい、グヴィネヴィア先輩……! 俺は根性無しです……)ガサガサ…


「な、なんとォ! 二度の当たりカードを置いて、再び引き直したァッ!!?? い、いったいどうなっているんだァ!」


キラッ

男「――こ、これでッ!!」バッ


「な、なななななっ!!? またしても当たりカードォオオオオオオッッ!!! すごいっ!! 今までの歴史でもこんなことがあったでしょうかっ!!?」


男「こ、これは……、アオニート君のだよねっ!!? や、やったぞ……っ!!」カサカサ…






『おっぱいがすごく大きい人』




男「――あんのクソ野郎ッッッ!!!!」ダンッ‼


ワーワー‼

ガンバレー‼



「前代未聞の強運を見せてくれている青組っ! しかし、その顔はあまり優れないようです!」


「しかしっ! 引き直しは二回まで! そもそも当たりカードを引き直すのもおかしな話ですが、これ以上は失格となります」



男「………………ッ!!」


男(もう……やるしか……)




男「………………」チラッ


カルラ「……なんだ…………?」ドキッ


男「………………」チラッ


ヨルシカ「えっ…………?」ドキッ


男「………………」チラッ


ロザリア「………………」ジーッ




グヴィネヴィア「がんばってくださーいっ!」バインッ



男「あぁ、もうっ!!」



男「――グヴィネヴィア先輩っ!! 一緒に来てくれませんかっ!!」


グヴィネヴィア「え、えっ?? わ、私ですかっ?」


男「はいっ! お願いしますっ!」ガシッ‼


グヴィネヴィア「あっ……はい……」ドキッ




レオナール「わ、わかったっ!! なら、一緒にゴールすればいいんじゃないかっ!!?」


ヘイゼル「えっ? ……まぁ、たしかに……それもそっか。じゃ、行くよっ!」グイッ



グヴィネヴィア「はぁ……はぁ……」バインッ


男(……あれ、なんだこの生暖かい視線は……?)ハァ…ハァ…


オォ……

デカイナ…

フゥ…


男(…………あれ、もしかして借り物競争の人気が高かった理由って…………)


パァンパァンッ‼


「ついにゴールしましたっ! 一着は……――」



「――青組ですっ!!」



ウオォオオオ‼

ヤッター‼

ワーワー‼



男「はぁ……はぁ……。す、すいませんグヴィネヴィア先輩……いきなり……」


グヴィネヴィア「だ、大丈夫ですよ……! ……あ、あの……男くん……手が……」カァアア…


男「――あっ、ご、ごめんなさいっ!」バッ


グヴィネヴィア「い、いえ…………」



「二着は黄組っ! ……赤組のアンリさんは、気絶していたため残念でした」



男(あっ、やっぱり普通のやつは危ないんだ……)



「それでは、くじの内容と正しいか発表しましょうっ!!」



男「えっ」


「まずは黄組から。……レオナールくんの仮面……と。たしかに、本人が居ますが、良しとしましょう」


ヘイゼル「あーあ……。レオナールくんがさっさと仮面貸してくれれば、一着だったのにー」


レオナール「だ、だから、仮面をはずすと封印が……――」


「それでは、青組っ! これで合っていれば、青組は黄組と得点が逆転しますっ!」


グヴィネヴィア「そういえば……どういう内容だったんですか? ――あっ、身長が高い人……とかですか? 私、体が大きいですし……」


男「あ、あぁぁあああのっ!! べ、別に発表しなくても……!!」




「えー………………………………。あ、青組はおっ……む、胸が大きい人ということで! 見事、青組一着ですっ!!」



ワーワー‼

ヤッタゼー‼

ウオォオオ‼



男「………………」カァアアア…


グヴィネヴィア「………………」カァアアア…


ワーワー‼

イエー‼


男「あ、あの……ぐ、グヴィネヴィア先輩……」


グヴィネヴィア「………………」カァアア…


男「…………ごめんなさい……」



ツネッ‼



男「――イッ!!? ろ、ロザリアさんっ!?」


ロザリア「………………っ!」ゲシゲシッ


男「ま、待ってよっ! 勝ったんだよっ!? よ、喜ぼう――」


ガシッ


カルラ「――いやぁ……こんな痩せた貧相な体で申し訳なかったなぁ……男くん?」ギリギリ…


男「誰もそんなこと思ってないよっ!? ちょ、ちょっと話を……」


ヨルシカ「………………」ジーッ


男「よ、ヨルシカさんっ! た、助け――」


ヨルシカ「………………っ」プイッ


男「えぇっ!?」


アオニート「……いやぁ、最高だったぜ」グッ‼


男「ぐっ……最初っからこれが狙いだったんだね……っ!」


男「こ、この……ッ!!」


グイッ


ロザリア「………………っ!」ギュゥウ…


カルラ「まぁまぁ……、ちょっと話し合おうじゃないか、男くん……なぁ?」ニッコリ


男「あぁ……、うん…………――――」







――――こうして、体育祭は青組の優勝に終わったが、その後数カ月の間、男は巨乳好きという話だけが広まった。




『ロザリアの日常』


―――ロザリアの部屋



チュンチュン…



ロザリア「………………」ガバッ‼



ロザリア「………………っ」セッセッ




ロザリア「………………」シュイィイイン…








―――男の部屋




シュイィイイン…




男「………………」グー…グー…



ロザリア「………………」…ィイイン



ロザリア「………………」スクッ



男「………………うーん……」スピー…



ロザリア「………………」ジーッ…



ロザリア「………………っ」グッ



カチャカチャ…


ジューッ…


チーンッ




――――――


――――


――


ユサユサ…


男「――………………んー……」ムクッ


ロザリア「………………っ」ニコッ


男「……あぁ……おはよう……」


ロザリア「………………!」


男「あっ……うん。ありがとう……」


ロザリア「………………♪」


男「お、おいしいよっ」


ロザリア「………………」カチャカチャ…


男「………………」


男「――ね、ねぇ、ロザリアさんっ」


ロザリア「………………っ」ピクッ


男「あ、えっと……なんていうかな……。う、うれしいんだけどさっ?」


ロザリア「………………」


男「や、やっぱ、こういうのってあまりよくないんじゃないかなぁ……って……」


ロザリア「………………」バリバリッ…‼


男「…………思ったり……思わなかったり…………あの…………」




ロザリア「………………」バチバチッ‼




男「――って、言うのは冗談でっ!! い、いつもありがとうねっ?」ニゴッ



ロザリア「………………っ♪」ニコッ


男「あ、あはは…………――」


ロザリア「………………」カチャカチャ…








ロザリア「――………………っ!」フリフリ


男「う、うん。学校でね……」


ガチャ…

バタンッ



ロザリア「………………」ゴソゴソ



ガチャリ



ロザリア「………………~♪」





――――――


――――


――








ヨルシカ「――あら、ロザリアさん……。どこか出かけてたんですか?」


ロザリア「………………!」


ヨルシカ「さ、散歩……? ろ、ロザリアさんが……??」


ヨルシカ「――あっ、ご、ごめんなさいっ! そうですよねっ、朝のお散歩も気持ちがいいですもんねっ?」


ロザリア「………………っ♪」


ヨルシカ「……ふふっ、ロザリアさんも変わりましたねっ」


ヨルシカ「…………あれ、でも……。『家路』使えましたよね? 最近使ってるの見たことないですけど……」


ロザリア「………………っ!」


ヨルシカ「一つしかできない……?? ……えっと、それは……――?」


ロザリア「………………っ」


ヨルシカ「あ、あぁ、そうですね。学校の準備をしないと……」


ロザリア「………………♪」


ヨルシカ「………………」


ヨルシカ「……まぁ、良い変化ですよねっ。ふふっ……」



――――――

――――

――



―――そして、時は流れ……




キンッ‼

ドンッ‼




アオニート「――ぐっ……!!」ドシャ


スッ


アオニート「……ま、マジかよ……」ガクリッ


ジークリンデ「う、ウソ……っ! 男くんの勝ちよっ!」


男「はぁ……はぁ……!! やった……!」


ロザリア「………………っ!」


ヨルシカ「すごいですっ! 純粋な実戦でアオニートくんに勝っちゃうなんて……」


アオニート「……ったはぁ……!! ……まさか、負けるとはなぁ……」ドーン…


男「いやぁ……、自分でもびっくりだよ……」


ジークリンデ「ホークウッドはこんなやつだけど、実戦だけでいったら上位の成績なのに……」


ヨルシカ「……それに、このまえ奇跡検定も2級とってましたよね……。もう、私が教えてもらう立場になってしまいそうです……」


ロザリア「………………っ」


男「いやいや! グヴィネヴィア先輩とか、ヨルシカさんロザリアさん、ジークリンデさんがよく教えてくれたからだよっ!」


アオニート「でも、魔術も2級とったんだっけ?」


ジークリンデ「呪術もとってたよねっ? ……すごいよ。天才ってこういう人のことを言うんだね」


男「い、いや、そんな大げさな事じゃ……」


ポンッ


アオニート「――やめろよ。じゃあなんだ、最後の頼みの綱だった実戦までも負けた俺の立場がねぇじゃねぇか……」


男「あ、あぁ……ごめん……」


アオニート「あぁーっ!! 見てろよ、男っ!! 次やるときは絶対に負けないからなっ!!」


男「……うんっ! 俺も負けないように頑張るよっ!」


ジークリンデ「無理に決まってるでしょ……。剣しか使えないあんたとは違って、男くんはどんな武器でも使えるんだから……」


アオニート「あぁんっ!? うるせぇよっ! 一つを極めれば、なんとやらっていうだろっ!!」


男「あ、あはは……――」





アオニート「――それじゃ、また明日なー」


男「うん、じゃあね!」


ガチャ
バタンッ


男「……ふぅ……」



男(――この学校に入学してから、もうすぐで一年が経つ)



男(どうにかして帰れないかといろいろ考えたこともあったけど、なんだかんだでここまで来てしまった)



男(やっていけるかと不安に思っていた日々もあったけど……。不思議なことに、やってこれた)



男(――と、いうより、自画自賛するわけではないのだけど、なんでもできてしまうのだ)



男(魔術も、奇跡も、呪術も。……しっかりと、授業を受けて、教えてもらいながらやるとだいたいできてしまう)



男(逆に、俺から見れば、何故みんなができないのかよくわからないほどに)



男(武器の使い方もそう。武器を握り、何回か使っているうちに、なんとなくその武器の使い方がわかる)



男(でも、周りの人はそうではないみたい……。だから、なんか変な感じだ)



男(休日とかに特にやることもないから、みんなが薦めるままに試験とかを受けていたら、資格をとれていたこともあるみたい……)



男(――まぁ、何に使えるのかもよくわからないんだけど……)



ドサッ


男「でも……、もう帰れないのかなぁ……」



男(やっぱり、寂しくはなる。このままでいいんだろうか……)



男(最初と違って、この世界の居心地が悪いわけではないけど……)



男(俺は…………もう………………――)



――――――

――――

――




―――学校


ワイワイ

ガヤガヤ


アオニート「――……そういや、そろそろあの季節だなぁ」


男「…………? ……焼き芋とか?」


アオニート「ちげぇよ。……もうすぐ三年生は卒業だろ?」


男「あぁ……まぁ……そうだねぇ。……在校生で何かやるの??」


アオニート「在校生でっていうか……。――あぁ、そっか。なんか懐かしいな、これも」


男「な、なにが……??」


アオニート「いやさ、最初は男が何も知らなかったから、よく教えてやってたよな」


男「あぁー、そういうことね……」


アオニート「しっかし、これも知らないとはなぁ……」


男「ま、まぁまぁ……。じゃあ、あの時みたいに教えてよ」




アオニート「――三年生の卒業記念にさ、演劇をやるんだよ」




男「演劇……?? え、演劇って……あの??」


アオニート「割と常識じゃないか?」


男「あぁー……そう……だったような気も……しなくも……ないような……」アハハ…


男(……まぁ、でも……。元の世界にもそういう学校が、探せばあるのかもしれない……かな?)


アオニート「まぁ、一年生に名前の付いた役なんて滅多にもらえるもんじゃないから、気楽にやればいいんだよ」ハハッ


男「……ん?? 誰がやるの??」


アオニート「誰がっていうか、学校全体でやるんだよ」


男「へぇー…………」


男(体育祭とか、文化祭みたいなもんなのかな……)


男(しかし、何をやるんだろう……? まさかシンデレラとかじゃあるまいし……。まぁ、その時わかるのかな……――)


――――――

――――

――



―――放課後


キーンコーンカーンコーン…


男「――よぉーっし……。今日も終わった……」


アオニート「男は今日も委員会か?」


男「まぁね。アオニートくんも?」


アオニート「あぁ、いつかお前に勝つためにトレーニングもしねぇとな」


男「あははっ、負けてらんないね……――」



ピンポンパンポーンッ



『えー、生徒の呼び出しをします。――……一年生の男くん。一年の男くん。至急、学園長室のほうへ来てください』



ピンポンパンポーン…



男「えっ……俺?」


アオニート「なんだ、なんかやったのか?」


男「いやっ……。なにもやってないとは思うんだけど……」


男「――ま、まぁ、とりあえず行ってくる」


アオニート「おーう。じゃ、また明日なー……」








―――学園長室前


男「――ふぅ……。なんか緊張するな……」


男「よしっ……!」


トントンッ


男「し、失礼しますっ!」


ガチャ…


男「……あ、あれ……っ??」


グヴィネヴィア「あぁ、こんにちは、男くん」ニコッ

グウィンドリン「やぁ、男くん」


男「な、なんで先輩方が……??」




グウィン「――……ほう。君が男くんかね?」


男「……っ! は、はいっ」ビシッ


男(う、うわぁ……。こんな学園長先生をまじまじと見たのは初めてかも……)


グウィン「ふむふむ……。なるほどな……」ムム…


男「………………??」オドオド


グウィン「ほうほう……。うむ……たしかに……」ムムム…


男「えっ…………あ、あの……??」


グヴィネヴィア「……ごほんっ。……お父様」ボソッ


グウィン「――おぉっ! いかんいかんっ、すまんな男くん。はっはっは……」


男「は、はぁ……」


グウィン「……さて、君を今回呼び出したのは、君に是非にと頼みたいことがあってな」ホッホッホ…


男「た、頼みたいこと……ですか??」


グウィン「うむ。……今度、三年生の卒業制作で演劇をやるということは、もちろん知っているな?」


男「は、はいっ。もちろんです……」アハハ…


男(よかった……。ちょうど聞いてて……)


グウィン「とはいえ、君も一年生だからあまり知らないかもしれんが……。通常ならば、この演劇は三年生が主体となってやるものなのだ……――」



グウィン「――が、しかーっしっ!!」



男「…………っ!」ビクッ


グウィン「今回……ワシの頭に、まるで雷のごとき衝撃があってなっ! とても素晴らしい物語を思いついたのだっ!!」


男「あっ……と、いうことは……学園長先生が脚本を……??」


グウィン「その通りッ!!」グワッ‼


男(す、すごい勢いだな……)


グウィン「……しかし、これには問題があってな」


男「問題……?」


グウィン「うむ……。脚本はできたのだが……、これが大作でな。とても今年の演劇だけに収められなくなってしまったのだ……」


男「あ、あぁ……そうなんですかぁ……」


グウィン「――だから、思い切って三回に分けることにしてな」



男「は、はぁ……分ける……」


グウィン「うむっ! 実にワシとしても心苦しいわけではあるのだが、しかして――っ」


グヴィネヴィア「――お父様。……そろそろ本題に」


グウィン「おぉ、そうだなっ!」


グウィン「……男くん、君には……――」







グウィン「 主役をやってもらいたい 」







男「…………はっ??」


グウィン「三年生の中から主役を選ぶとなると、毎年主役が変わってしまうのがどうもワシのイメージとは離れてしまってな」


グウィン「ならば、と。初の試みではあるが、一年生である男くんに主役をやってもらいたいのだ」


男「ちょ、ちょっ……ちょっと待ってくださいっ! な、なんで俺……っていうのは、置いといて……」


男「も、もしかして、それだと……三年間、俺に主役をやれ……ってことですかっ!?」


グウィン「うむっ、理解が早いなっ」


男「む、むむむむ無理ですよっ!!? い、イヤですっ! お断りしますっ!!」


グウィン「――今回、一年生の中から主役を探すとなったとき、真っ先に名前が挙がったのが君だ」


男「な、なんで……」


グウィン「多くの先生方が君の名前を言うのだ。ミルドレット先生、クラーナ先生、レア先生、バンホルト先生……そのほかにもたくさんの先生方がね」


グウィン「そして、ここにいる我が子たちにも、一年生の中にいい子は居ないかと聞いてみると、なんと二人そろって君の名前をいうのだ」


男「せ、先輩……?」


グヴィネヴィア「私は、男くん以外には居ないと思っています」ニコッ


グウィンドリン「私もそう思っている」


グウィン「勉学の成績も優秀そのもの。それに加えて、実戦、奇跡、呪術、魔術……、その全てが一年生の中では上位の実力だそうじゃないか」


グウィン「こう見えても、ワシは人を見る目はあると自負している」


グウィン「……そして、いま会ってみて確信した。ワシも君になら主役を任せられるとな……」


男「……で、でも…………」


トントンッ

ガチャリ…


グウィン「――おぉ、ユリア教頭先生」


ユリア「いや、遅れてすいません。……やぁ、男くん」


男「こ、こんにちは……」


男(……ユリア先生と……誰だろう? 見たことない女の人……)


ユリア「ははっ、その様子だともう用件は伝わったようだ」


グウィン「そうだそうだ、ユリア先生も男くんのことを強く推していていてな」


男「えっ? そ、そうなんですか……?」


ユリア「言ったろう? ……君には素質があると」


男「――あっ……。あれって、そういう……」


ユリア「……さて、どうですか? この子は……」




「…………確かに。この子なら大丈夫でしょう」




グウィン「おぉ、それはよかった。これはこれは、火防女協会からわざわざ……」


火防女「いえ…………」


男(ひ、ひもりめ……?? な、なんだ……なんか話が大きいんじゃないか……!?)


ユリア「火防女協会のことは……。――まぁ、追々でいいだろう」



グウィン「――それで、引き受けてくれるかな? 男くん」



男「い、いや……でも…………」



グヴィネヴィア「男くん……心配しないで」


グウィンドリン「……大丈夫だ」


ユリア「……さぁ、どうする?」



男「…………お、俺は……――」




――――――

――――

――



―――次の日の朝:教室



ワーワー

ザワザワ…


アオニート「――マジかよッ!!? お、お前が主役ッ!??」


ヨルシカ「す、すごいですよっ! たぶん、初めての事なんじゃないですかっ?」


ロザリア「………………っ!」


カルラ「さすがだな……」フフッ


ジークリンデ「……でも確かに。一年生の中から選ぶとなると、男くん以外には居ないよね……! おめでとうっ!」


男「あ、ありがとう……? よく、わかってないんだけど……」


男(……あの後結局、場の空気からイヤとは言えなかった……)


男「ま、まぁ、でもっ! やるからにはしっかりやらないと……だよね」


アオニート「おいおいっ。そんな弱気で大丈夫かよ」


男「弱気っていうか、正直自信は無いよ……」



ガララッ



ミルドレット「はーい、みんな席についてー。……それじゃ、出席をとります――」








ミルドレット「――うん、連絡事項はこんなところかな……」


ミルドレット「……では、みんなも気になってると思うけど、今年の演劇のことについて話をしたいと思います」


ワーワー
ザワザワ


ミルドレット「まずはっ、今年の主役……。異例で一年生の中から選ぶことになりましたが、なんと我がクラスの男くんに決まりましたっ! はい、拍手!」


ワーワー‼
パチパチパチパチッ‼
スゲー‼


男「あ、あはは……」


ミルドレット「――それじゃ、みんなの役割の書いてある紙を配ります。みんな、ちゃんと目を通してねー」


アオニート「なんかワクワクするな……。どんな感じなんだか!」


男「そ、そうだね。本当、どんな感じなんだろう……」



ミルドレット「――これで行き渡ったかな? まぁ、一年生は雑用の仕事が多いかもしれないけど、責任をもって行動しましょう」


ハーイ
ザワザワ


ミルドレット「それでは、これでHRを終わりにします――」




男「あ、俺には紙ないんだ……。アオニートくんはどんなことをやるの?」


アオニート「え、えっ!? あ、あー……。――き、気にすんなよっ! お前は自分の事だけ気にしてろって!」


男「そ、そう……。なら、まぁ……詳しくは聞かないよ……」


ジークリンデ「――お、男くんっ!! やったよっ!」


男「えっ? ジークリンデさん……どうしたの?」


ジークリンデ「私ねっ、役をもらえたのっ!」


男「ほ、本当にっ? うわぁ、どんな役なの?」


ジークリンデ「えっとね……――」




ジークリンデ「ジークマイヤーさんも出るんだけど、私はその娘役なんだってっ!」




男「へ、へぇー……?」


男(娘役……。……しかし、まったく何も聞かされてないけど……。どういうストーリーなんだろう……?)


ジークリンデ「きっと、ジークマイヤーさんが私を薦めてくれたのかな。うわぁ、一年生で役をもらえるなんてっ」


アオニート「……ふんっ、見た目が奇抜だからだろ」ボソッ


ブンッ‼


アオニート「――うおっ!? あっぶねぇなっ!!」


ジークリンデ「あら、ごめんなさい。……で、あんたはどんな役割なのよ?」


アオニート「あぁっ!? うるせぇな、お前に言う義理はねぇ」


ジークリンデ「そうね。私もあんたのことに興味ないから、言わなくてもいいわ。……まあ、男くんと私の邪魔はしないでよね?」フンッ


アオニート「お? よし、喧嘩か? いいだろう、やってやるよコンチクショーっ!!」


ワーワー
ギャーギャー


男「はぁ、一年たっても変わらないなぁ……」アハハ…




男「――ヨルシカさんと、ロザリアさんはどんな役割なの?」


ヨルシカ「ふふっ、私たちは雑用ですね。……えっと『罠を踏んだ時に出てくる矢の補充役』です」


ロザリア「………………」コクコクッ


男「え、わ、罠っ!?」


男(ど、どういうことなの……!?)


ヨルシカ「まぁ、一年生はだいたいこういう雑用が多いと思いますよ?」


男「へ、へぇ……。カルラさんも?」


カルラ「あぁ、私も似たようなものさ」


男(いや、罠がでてくるって……?? 俺、なにやらされるの……)



カーク「――男くん」


男「あ、あぁカークくん……。どうしたの?」


カーク「実は、僕も役を貰えたんだ」


男「そ、そうなんだっ! どんな役なの?」


カーク「あー…………いや、ごめん。やっぱり内緒にしておくよ。……ビックリさせたいからさ」


男「び、ビックリ……? そ、そっか……、わかった。楽しみにしてるよ」


カーク「……うん。楽しみにしててね。フフ……フフフフ……」スタスタ…


男「な、なんか……怖いな……」


男「――オーベックくんはどんな感じなの?」


オーベック「俺も雑用だ。お前と違って目立ってもないしな」


男「お、俺だって、目立ちたくて目立ってるわけじゃないよ……」



ピンポンパンポーンッ


『男くん、男くん。学園長室まで来てください』


ピンポンパンポーン…



オーベック「お呼びだぞ。……たぶん演劇の事じゃないのか」


男「あぁ……そうかな……?」


――――――

――――


―――学園長室前


男「――あれっ、グヴィネヴィア先輩。グヴィネヴィア先輩も……?」


グヴィネヴィア「あぁ、男くん。私も呼ばれまして、調度いま着いたところなんです」


男「そうなんですか。……そうだ、グヴィネヴィア先輩は何か役を……?」


グヴィネヴィア「ふふっ、私は『主役に大切なものを渡す』役です。……楽しみですね」


男「へぇー……。……それにしても、俺は物語について何にも知らないんですけど……。なにか知ってます?」


グヴィネヴィア「さぁ……? もしかしたら、それを話すために呼んだのかもしれませんし、とりあえず中に入りましょうか」


男「あ、そうですね」


トントンッ

ガチャ…


男「失礼します。……って、あ――!?」




アルトリウス「――おっ、やっと主役がきたね」




男「……先輩も呼ばれてたんですかっ?」


男(……というか、思ってたより人がいる……。みんな三年生の人なのかな?)


アルトリウス「あぁ……。まぁ、詳しくは言えないけど重要な役をやることになってね」


男「そ、そうなんですか……」


グウィン「おぉ、来たか男くん。……これで重要な役は集まったな」


グウィン「まぁ、他にもゴーくんとかにも頼んでいるが……。彼はここに入れないからな、後で伝えるとしよう」


グウィン「――それでは、諸君。いまここに居るのは、重要な役目を持っている者たちだ。……今回の演劇は君たちにかかっているといっても過言ではない」


グウィン「だがもちろん、他にも頑張ってくれる生徒たちがいる。そして、君たちは彼らが居てこそのものだということを忘れないでほしい」


ハイッ‼


グウィン「……では、それぞれに台本を渡そう」


ザワザワ…


男「――…………あれ?」


男「あ、あのっ! じ、自分のが無いみたいなんですが……」


グウィン「――おぉ、うっかりして言うのを忘れていた。……実は、君にはないんだ」


男「へっ??」



グウィン「ふっふっふ……。この演劇の面白いところはな、男くん……」


グウィン「何も知らない主役……というところにあるのだよ」


男「……は……はぁ……?」


グウィン「何も知らない主役ということは、何も知らない観客たちと同じになる。……いわば、観客も主役になるのだ」


男「………………」


男(まぁ……わかるような……わからないような…………)


男「……で、でも……。さすがに無理がありそうなんですけど……」


グウィン「大丈夫だ。物語はそういう風にできているからな」


男「うーん…………」


グウィン「気持ちはわかる。……だが、そんな君を支えるために、彼らも居る」


男「………………」


グウィン「男くんが笑う、怒る。座るのか、立つのか。それとも歩くのか、走るのか……。それでたとえ転ぼうが、すべてが物語になる。……素晴らしいとは思わないか?」


男「………………と、いうことは……――」




男「全部、アドリブってことじゃ……――」




グウィン「――さてっ、みんな帰ってしっかりと読みこんできてくれたまえ」


男「いやいやいやいやっ!!? これはあまりにも乱暴な気が……!!」


ポンッ


アルトリウス「――さっ、委員会に行くぞ」


男「えぇっ!? い、いや、行きますけど……、行きますけどもっ!」


アルトリウス「まぁまぁ、それをカバーするために僕たちが居るんだから、どーんと大船に乗ったつもりで居なよ」


男「…………わ、わかりました……」シブシブ…


男(でも、本当に大丈夫なのかな……?)



――――――


――――


――






―――さらに時は経ち……本番当日



ザワザワ…
ワーワー
ジュンビスルゾー‼



男「――うわぁ……」


男(なんか…………想像してたのと全然違うなぁ……)


アオニート「おう、男。……いよいよ当日だな」


男「あ、あぁ、うん……。でも、アレだね……。すごいスケールだね……」


アオニート「まぁ、それが見どころだしな」


アオニート「いやー、しかしお前と出会って、もう一年経つんだな……。早いもんだぜ」


男「……そうだね。入学式で、話しかけられたときは怖かったけど」


アオニート「はぁ!? なんでだよっ、怖い要素ないだろ!?」


男「あははっ、あの時は不安でいっぱいだったからさ」


アオニート「ふーん……」


男「――しっかし、それにしても本当にストーリー教えてもらえないとは……」


アオニート「らしいなー。……俺も役割しか教えてもらってないし」


男「というか、今更ではあるんだけどこれは演劇と言えるのかな」


男「演劇ってさ、もっとこう……、舞台の上でお客さんの前でやるものじゃない??」


アオニート「…………あぁ、だからいいんだろ?」


男「……え? どういうこと??」


アオニート「だから……――」





アオニート「――ここが舞台で、客もいるんだから」





男「………………えっ?」


ホワァン…


男「――わぁっ!? な、なんだ、文字が出てきた……」





アオニート「おっ、それはアレじゃないか? なんか聞いた話だと、主役を務める人にしか見えない字があるらしいぜ」


男「そ、そんなのあるんだ……」


アオニート「そろそろ本番だから見えるようになったのかもな」


アオニート「多分、なんかアドバイスとか書いてあるんじゃね?」


男「へ、へぇー……そうなんだ……。えっと……――」











『帰りたい』










男「――――えっ……?」




『絶望』                            『やっちまった…』


 『悲しみ』              『よく考えろ』



『またここか…』    『助けてくれ…』                     『無駄』




男(なんだよ……これ……)


男(しかも……これって…………――)





男「――俺の……字……?」



男(そんな……っ。こんなところ、来るのも初めてなのに……っ!??)




『がんばれよ』                             『ここからが本番だ』



         『立ち止まるな』           『そんな馬鹿な…』




男(…………でも、間違いない。……これは、俺の字だ……)




『帰りたい…』        『太陽万歳』


       『心が折れそうだ…』        『よく考えろ』

『諦めろ』


 『立ち止まるな』      『夢みたい…』        『勇気』




男「…………俺は……ここに来るのが……初めてじゃ……ない……?」




「――おいっ」




男「――――ッ!?」ビクッ



アオニート「それでよっ! なんて書いてあるんだ??」



男「あ……あぁ……えっとね……」



男「………………」



男「――『がんばれ』とか、そんなことだよっ」



アオニート「あー、そうなのかー。なんだつまんねー」



男「あはは……。――ね、ねぇ、アオニートくん?」



アオニート「んー?」



男「……去年も演劇ってあったんだよね……? 去年は誰が主役だったの?」



アオニート「おいおい、俺だって今年から入ったんだから、知るわけねぇだろ?」



男「……そ、そう……だよね……」



ソロソロイキマースッ



アオニート「――おっ、そろそろか。じゃ、俺も行くわ」



男「うん……」



アオニート「…………あっ、そうそう――」




男「えっ?」



アオニート「いつだかに言いそうになっちまった事があるんだけどよ」



アオニート「俺が三兄弟ってことは言ったよな?」



男「あ、あぁ……そういえば、聞いた気がする」



アオニート「俺んちは代々やらなきゃいけないことがあってな」



男「やらなきゃ……??」



アオニート「あぁ……――」






アオニート「 ――監視と説明……ってな 」






男「……そ、それって……どういう……?」



アオニート「――まっ、アレだ。俺の兄貴が出るからよろしくって事だよ。……じゃ、今度こそ行くわ」



男「ま、待っ――。ダメだ……意味がわからないよ……」





『覚悟はできたか?』





男「できるわけないだろ……。――でも……」


男「なんだろう、不思議だな……。少し、元気が出たよ」ハハッ


「本番行きまーすっ」


男「――やるしかないんだ……やろう……」



男「きっと、そうすれば……俺がここに居る意味も分かるのかもしれないから……――」






         古い時代 世界はまだ分かたれず、霧に覆われ……――――


お わ り


これで終わりとなります。

半年以上の間お付き合いしていただき、ありがとうございました。


元々はグヴィネヴィアのあったかふわふわを見てたら思いついた物語でしたが、書いててなかなか楽しかったです。


今のところ、ブラボとかデモンズの設定でやる気はないです。

もし、書きたいという人が居るなら全然やってくれていいです。私も見たいです。


最初は文化祭とかもやるかなーとか思っていたんですが、さすがに長くなってきたのと、これ以上はダレてきそうなので、あとはみなさまの優秀なフロム脳にお任せします。


一応、補足説明みたいなものもこの後に出したいと思います。

ただ蛇足になるかもしれないので、見なくても大丈夫です。



まだ次は考えていないですが、もし機会がありましたらまた暖かく見守っていただけると嬉しいです。



さて、皆さんの操っていた主人公はいったい……――。


それでは。



・三年生


『グヴィネヴィア』

 主役に、王の器を渡す役。その後、卒業。


『アルトリウス』

 主役の前に立ちはだかるボス役。ただし、左腕で盾を持てなかったため、シナリオも多少変更された。その後、卒業。


『ゴー』

 主役を助けるサポート役。しかし、攻撃されると自慢のプロレスで応戦する。その後、卒業。


『キアラン』

 アルトリウスの親友役。その後、卒業。


『ソラール』

 初期から主役を助ける役。その後、卒業。


『ジークマイヤー』

 主役の助けとなる役。ジークマイヤーからの提案でジークリンデも役をもらえることになった。その後、卒業。


『ロートレク』

 ちょっぴりヒール役。少し本人は不満そう。だが、枠にはまっていた。その後、卒業。


『シバ』

 団長の役。アルヴィナには嫌われている。その後、卒業。


『エルドリッチ』

 グウィンドリンに振られたのが原因で、不登校になる。その後、出席日数も足りず、留年。

 不登校は次の年まで続いたが、また勇気を出してグウィンドリンに告白するも、玉砕。再び不登校になり、また留年。

 その次の年にはグウィンドリンが卒業したこともあり、学校をやめるかもしれないという噂になった。

 しかし、サリヴァーンとマクダネルの機転によって、その年の演劇にはグウィンドリンのコスプレで登場。

 主役の前にボス役として立ちはだかった。その後、グウィンからの温情もあり卒業。



・二年生


『グウィンドリン』

 主役のサポートする役。しかし、場合によっては主役と戦うボス役を二年生でこなす。
 
 三年生になった年も参加するかと思ったが、PTAから親の贔屓を受けてるんじゃないかと疑われ、自分から辞退した。

 三年生の時にエルドリッチに告白されるも、一蹴。その後、卒業


『オーンスタイン』

 グヴィネヴィアが居る部屋を守る役。グウィンから勝手に仲がいいと勘違いされ、二人で守ることになる。

 どちらか片方がやられた際のアクションはアドリブ。

 三年生の時にも、ちょっとしたボス役をもらう。その後、卒業。


『スモウ』

 グヴィネヴィアが居る部屋を守る役。

 三年生の時には悪さがバレ、役をもらえなかった。その後、卒業。


『ルカティエル』

 主役を助ける役。その後、卒業。


『ペイト』

 ダークレイス事件に関わっていたんじゃないかと疑われるも、証拠がなく御咎めなし。

 しかし、その後は生徒会にも入れず、一応役をもらい。普通に卒業する。


『パッチ』

 グウィンを落とし穴に落としたことにより、停学になる。
 
 しかし、その時グウィンに目を付けられ、役をもらえることになる。

 出席日数が足りず、一回留年はしたものの、三年間同じ役をこなす。その後、無事卒業。


『オルニフェクス』

 主役にアイテムを売ったりする役。その後、卒業。


『サリヴァーン』

 あれだけの事件を起こしたということで、留年。

 しかし、成績だけはよかったので何とか退学にはならなかった。

 だが、学校に復帰したときにはエルドリッチが不登校だったため、見捨てては置けず、また留年。

 その後、マクダネルと協力して何とかエルドリッチを復帰させる。

 そして、主役の前に立ちはだかる強力なボス役を演じる。演じるというよりは本気である。その後、卒業。


『マクダネル』

 エルドリッチと同じ。

 ある意味で主役をサポートする役。

 しかし、マクダネル本人が緊張でしゃべれなくなってしまうため、本番ではまったく言葉も動きもない役をすることになる。その後、卒業。



・一年生(主に三作目)


『ホークウッド(アオニート)』

 一年生の時には、主役が北の不死院に戻ってきたときにたいまつをもって襲い掛かる亡者役。

 二年生の時にも亡者役をするも、三年生の時には念願の役をもらえる。

 そして、場合によっては主人公に立ちはだかる役。三年生になり強くなったのを見せつける。その後、卒業。


『ロザリア』

 主役の助けをする役。

 しかし、男が居ないときは持ち場に居ないことが多い。その後、卒業。


『ヨルシカ』

 主役の助けをする役。

 三年の時には風紀委員の委員長となり、その後、卒業。


『カルラ』

 主役に色々教える役。

 本人たっての希望で牢屋の中で主役を待つ。その後、卒業。



『ジークリンデ』

 一年生の時に、ジークマイヤーの娘役として抜擢。

 しかし、二年生の時には雑用になり、三年生の時もジークバルドに役をとられてしまった。その後、卒業。


『ジークバルド』

 主役を大いに助ける役。

 男とは仲良しではないが、グウィンが男といつも一緒に居る(本当はジークリンデ)と勘違いして採用された。その後、卒業。


『オーベック』

 主役に魔術を教える役。

 元はローガン率いる隠密に所属していたが、一年生の時にローガンが問題を起こしたため、うやむやになる。

 本人は内心ホッとしている。その後、卒業。


『シーリス』

 主人公の助けを(嫌々ながらも)する役。しかし、ロザリアに近づくと敵対する。

 共闘するときも手を抜いてることが多い。その後、卒業。


『レオナール』

 主役に助言と敵対する役。

 演技とはいえロザリアに危害を加えたことになっているので、シーリスに雑巾扱いされる。その後、卒業。


『ヘイゼル』

 闇霊として主役に襲い掛かる役。しかし、少し不満そう。

 場合によっては主役の味方にもなる。その後、卒業。


『カーク』

 リーシュ先生のごり押しとその特徴的な見た目もあり、一年生の時から主役を襲う役をもらう。

 しかし、結局勝つことはできなかった。その後、卒業。



・先生とその他


『グウィン』

 脚本・監督を務める。

 そのためか、一作目と三作目で最後のボス役をする。

 職権乱用じゃないかと噂されるが、もみ消す。


『ミルドレット』

 一作目において主役を襲う役。

 しかし、その後は主役を助ける役になる。

 だが、張り切り過ぎて溶岩に突っ込み、倒れることもある。


『クラーナ』

 一作目において、主役に呪術を教える役とミルドレットを監視する役。

 ちょっとデレる。


『レア』

 一作目において、主役に奇跡を教える役。

 ペトルスと近くに居るのを嫌がるため、グウィンにペトルスだけ別行動にするように頼む。


『ペトルス』

 (一応)主役に奇跡を教える役。

 しかし、あまりいい扱いはされなかった。


『リーシュ』

 二作目において、主役に奇跡を教える役。

 裏の顔は闇霊クラブの長。カークを気に入っており、ごり押しで役につけさせた。


『ローガン』

 その実は学園を乗っ取ろうと画策する、隠密の長。

 ……しかし、一作目において本番前に酒を飲み、パンツ一丁で登場するという問題を起こし、謹慎することになる。


『グンダ』

 学園の警備員。

 二作目で鏡の騎士役として出る。その演技力をグウィンに買われ、三作目でも登場。主役を苦しめる。


『ユリア』

 三作目において、主役のサポート役。

 実は次期学園長を狙っている。そして、主役をたぶらかす。

 展開によっては最後に……。



こんなもんかな。


あと、私の頭の中の設定では、学年はループするようになってます。

男たちが二年生になった時には、新入生としてグヴィネヴィア達が入学しますが、気づくことができません。

そして、男が三年生になり卒業した時には、また一年生になります。この時に記憶が無くなります。

しかし、中にはループがわかっている生徒もいます。



依頼は出しますが、もし質問があれば答えます。

うちのは女なんですがそれは・・・


みんなありがとう。


>>563

すまん、>>554に書き忘れた。

ループしてるってことになるんだけども、ただそうすると留年してるエルドリッチ達とパッチの辻褄が合わないのよね。

「男」が三年生になって卒業するときに、ループすると同時にリセットされると思ってほしい。

そして、その時に「女」としてやり直すこともある。



「女」が主人公だったら、今度はアオニートとかオーベックとか、グウィンドリンもヒロイン(?)になる。

カークの「女」とロザリアの間で揺れる恋心とか、アオニートとジークリンデとの三角関係とか、シーリスのガチレズの対象にもなるから、そっちが主人公でも面白かったかもね。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年09月29日 (木) 01:09:02   ID: fqnf0-Q3

続きが楽しみだ

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