上条当麻「――此れは一つの喜劇だよ」 (33)



多分短く終わる


何人か死にます


では宜しく




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昔どこかのお偉いさんは言っていた


――幸福は皆一様なもので、不幸はそれぞれ全く違うものだ――と


うろ覚えだからあんまり正しくないだろうが、兎に角そんな内容だった

今になって思う


あれは事実だ、と




雨が降る


学園都市の雨は意外と綺麗だ


イギリス産業革命の時代ような黒い雨じゃない

科学の最先端を行く町ながら、矛盾してると思う




土御門「流石だな、かみやん――もう第六位を殺したのか」


アロハシャツを着たグラサンの男――土御門元春が話しかける

上条当麻「ああ、お前とアウレオルスのお陰だ」


土御門「いや、寧ろお前が化け物だよ――上条当麻」


いつもとは違う口調。もう聞き慣れた。



土御門「アウレオルスがこじ開けた『神浄』の力を使いこなしてんだ。たいした精神力だよ」

上条当麻「そうでもないさ、土御門。此れは元々俺の中にあった力だ――だから使いこなせるのは道理さ」


土御門「なるほどな、魚が泳ぐのと同じと言いたいのか」

上条当麻「そういうこと」

土御門「ふうん――まぁ、とりあえず一人目撃破記念として旨い店にでも行くか?アレイスターから金はぶんどった」

上条当麻「ああ、肉汁たっぷりのステーキが食べたいな」

土御門「了解だにゃー」


こうして俺たちは雨のなか、死体を後にして立ち去った






此れは一人の愚者の物語


たった一度の過ちと――一輪の後悔のせいで世界の敵に回った男の馬鹿なお話


言い換えると――俺がたった一人の為に神上の位階に上り詰める物語






土御門と別れた後家に帰る


がらんどう


誰もいない


ベッドしかない


虚しい


寂しい



噛み殺す


寝る――







夢を見る


初めての●●の夢を見る






あの日も今日と同じく雨だった


ぐしゃりと潰れる頭蓋骨


木綿豆腐のような脳味噌を踏み抜く


赤髪の神父は、俺が剣士の死体を破損した時に言った一言に呆然として、叫んだ

――貴様正気か! そんなことをしたら、世界が終わる!

それにたいして、俺は答える




――いいんだよ、だって世界なんて等の昔に腐り落ちてるんだから



今でも思い出す


右手が竜の頭になる感覚を



――くっ

赤髪の神父は舌打ちする


――さようなら、頂きます


がぶりと頭を噛み砕く


剣士は殴り合いで殺した――がむしゃらで覚えてない

だから、これが初めての殺しの記憶



壊れた俺の誕生日







翌朝



ニャオ


俺の朝は野良の三毛猫の鳴き声から始まる

窓をこんこんと叩き、ニャオと鳴く野良の三毛猫に前日の残りの味噌汁に御飯をぶちこんだものを出す

ニャオニャァ


猫は貪る



平和な朝だった




プルプルプル


電話がなる


上条当麻「もしもし?」


電話してきたのは土御門

土御門「おはようかみやん――第五位を捕らえた」

上条当麻「さしで戦って殺すのか?」

土御門「いや、あんなへなちょこ殺したってかみやんの目的には届かない」

上条当麻「じゃあどうするんだ?」


土御門「とりあえず第五位には命を保証する代わりに協力させる――その後は俺が『処理』しておく」


上条当麻「了解した」


朝から今日やる話を聞かされる

全く――



昼間、何気なく外に出る

青空を見る

白い雲が海のような青空に浮かぶ


青空は嫌いだ


己の醜い心が浮き彫りになるようで――己の偽りが写し出されるようで――


前土御門が貸してくれた本でこんな話があった


――英雄が化け物と戦う

――三日三晩英雄と化け物は戦い続けた

――結局英雄が化け物の心臓を貫いた

――それと同時に英雄も死んだ



結局化け物は人の写し見――人の自己嫌悪だった


俺はそう解釈する


この世界にヒーローなんていない

この世界に化け物なんていない

いるのはそのなかに化け物とヒーローを飼っている『なにか』だけ



土御門と合流する前に、公園に向かう

人知れぬように公園の端に立てられている木の杭

この下にアウレオルスが眠っている


上条当麻「――馬鹿な男だ」



同じ目的を持った男

弔う為に頭を垂れる


上条当麻「――ありがとう――さようなら」


俺は進まなきゃいけない

もう――止まれない




学園都市のどこか――


俺は一人でバーに向かう


上条当麻「マスター、モスコミュールウォッカ抜きで」

マスター「あいよ」


マスターに一言言うと、マスターが俺をカウンターに入れる


マスター「土御門元春が待っている」


上条当麻「了解だ」


一歩一歩足を踏み入れる


さて――一体土御門は何をしようとしているのか?






「」フガフガモガモガ


上条当麻「土御門、俺にSMの趣味はないぞ」

地下室にいたのは土御門とギャクポールをされ、縛られている第五位


土御門「問題ないぜ、かみやん――今からかみやんの精神で第五位を破るだけだから」


上条当麻「は?どういうことだ?」


俺の問いかけに土御門は答える

土御門「今からこの電極をとうしてお前に第五位の能力を『増幅』させて干渉させる」

土御門「それを精神だけで破ればお前の勝ちだ」


上条当麻「ふぅん、じゃあ第五位だけは『殺さない』ってことか?」

土御門「そうだな、だけど破れたら第五位は能力を失い、一年くらい廃人になるだろうな」

土御門は当たり前のように言う


上条当麻「残酷だな」

土御門「命を保証するって約束は破ってない」

上条当麻「ははは、違いない」

「」フガフガモガモガ


耳に蝋を詰められているからか、第五位はこんな話をしていてもフガフガモガモガ言ってるだけだった


土御門「じゃあ――始めよう」

上条「わかった」




電極を繋いだ――瞬間


従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え

上条当麻「アバババッ」


頭の中に大量の命令が入る



頭が沸騰しそうなくらいの情報――命令



上条当麻「ガガガガッ」


口から意味のない言葉が漏れる



――これは――





動けない俺の耳に声が入る

食蜂「すごいわね――お陰で私は能力を失ったけど、これで馬鹿馬鹿しい目的に一歩近づいたんじゃない?」

土御門「なんだ、いつもの口調はやめたのか?」

食蜂「そりゃぁね、自分だけの現実を『食われた』んだからもう意味ないでしょう」

土御門「そうだな」

食蜂「とりあえず、彼の失禁したとかは処理してあげなさい――」

土御門「ああ――それでこれからの話だが」

食蜂「知ってるわよ、偽装死体で死を偽って、私はアディスアベバに潜伏でしょう?」

土御門「ああ――早くしろよ」

食蜂はそのまま去っていく


土御門「残りは科学は五人、か」



土御門は呟く





おい早くパンツを換えてくれ

心の中で俺は叫んだのだった




雨が降る―ー


『彼女』には最高の環境



御坂美琴「ふぅん―ーあの話は本当だったのね」



現れたのは電気の姫

多様な電子世界にさえも君臨する女帝



御坂美琴「どうしてこうなったのかしらね」


悲しげに姫は―ー女帝は笑う


上条当麻「さぁな?」


俺には答えられない







心理掌握と邂逅したあと、なぜこうなったか


それを説明するには二日前に遡らなくてはいけない


俺は雨の中、御坂美琴という存在を目の前にしながら目をつぶる








二日前


土御門「次の餌は第三位だ」


上条「――そうか」

土御門「六位、五位の能力を食った今なら、第三位を食っても問題ないだろう」

上条「ああ――」



土御門「わかっていただろう?此の道の先にあるのは俺達のバッドエンドなんだと」

上条「――」



言葉が出ない








御坂美琴――俺は彼女を殺せるのか?







土御門「実行は二日後――それまで覚悟を決めとけ」


土御門は去る

俺は心に迷いを抱く



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