SS深夜で書いたSSを手直し(三点リーダー等)したものです。
セシリア編がやっと完成したのですが、せっかくなので
先に書いた4人のを直そうと思いました。
よろしくお願いします。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1368877499
あたしはある日、気分転換にIS学園の裏にある雑木林に出かけた。
天気も良かったし、気分も上々♪
……そして、あたしはアレを見つけた。
鈴「なにこれ……?」
鈴「なんで電話ボックスがここに?」
鈴「…………」
鈴「……あ」
鈴「そういえば、子供の頃見たアニメに面白い道具があったわね」
鈴「確か……」
キィ……パタン ガチャ
鈴「もしも一夏が、あたしにぞっこんだったら!」
鈴「な〜んて……」
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリンッ!!
鈴「!!?」
バタンッ! バタバタバタ……
鈴「…………」 ドキ ドキ ドキ
鈴「……びっくりした」
鈴「なんなのよ……もう」
鈴「行こ……」
タッ タッ タッ…
——翌日の朝——
——IS学園廊下——
鈴「おっはよ! 一夏!」
一夏「おう、おはよう! 鈴」
一夏「今日も可愛いな、鈴……」 ニコ
鈴「!?」 ///
鈴「な、なによ! いきなり!?」 ///
一夏「? 俺、何か変な事、言ったか?」
鈴「か、可愛いって……」 ///
一夏「いつも言ってるだろ? そんな事……」
一夏「鈴は可愛いし、一番輝いてる女の子だよ」 ニコ///
鈴「!!???!?!?!」 ///
鈴(えっ!? えっ!? えっ!?) ///
鈴(ちょっ……!? なに!? なにが起こってるの!?) ///
鈴(やば……! い、一夏の顔が見れない……!!) ///
鈴(どどど、どうなってるの!?) ///
一夏「……? どうしたんだ? 鈴?」
鈴「べ……別に……な、なんでも、ないっ」 ///
一夏「そっか……それならいいんだが」
一夏「……っと、もう教室か」
一夏「それじゃあな、鈴」
鈴「う、うん」 ///
鈴「…………」 ///
鈴(あ〜もう……ニヤニヤが止まらないっ) ///
鈴(…………)
鈴(……て言うか、あの電話ボックス?)
鈴(…………)
鈴(まさか、ね……)
——昼休み——
——食堂——
一夏「鈴、なに食う?」
鈴「そ、そうね……」
鈴「久しぶりに、サバの味噌煮定食にでもしようかな♪」
鈴(よ、よかった……何とかドキドキは収まってる……)
一夏「俺は、カレーにでもするかな」
一夏「それでさ、鈴」
鈴「うん?」
一夏「明日の休み、どこに行く?」
鈴「……へ?」
一夏「俺としては、遊園地の後、映画を見て晩飯……」
一夏「まあ定番だけど、こんな感じでどうかと思ってるんだが?」
鈴「何の話?」
一夏「おいおい……どうしたんだよ? 鈴?」
一夏「明日デートしようって、前から言ってたじゃないか」 クスッ
鈴「ぶふぉっ!?」
一夏「ってわぁ!?」
一夏「ホ、ホント、どうしたんだよ? 鈴……」
鈴「ゲホゲホッ……! デ、デート!?」 ///
一夏「おう」
鈴「…………」 ///
鈴「ふ、二人だけで?」 ///
一夏「普通そうだろ?」
鈴「う、うん! い、行く! 絶対行く!」 ///
一夏「そうか。 今のプランでいいか?」
鈴「も、もちろん!」 ///
一夏「よし、明日が楽しみだな♪」
鈴(…………) ///
鈴(……だめ、これはもう間違いない) ///
鈴(……あの電話ボックス) ///
鈴(本物ね……) ///
鈴(…………) ///
鈴(明日、何着て行こう……) ///
——翌日の朝——
——モノレールIS学園前駅——
鈴「……あ、一夏!」
鈴(私服の一夏って……なんか新鮮ね♪)
一夏「おう、鈴」
鈴「待たせちゃった?」
一夏「いや、全然」
一夏「それに鈴を待たせるわけには、いかないしな」 ニコ
鈴「一夏……」 ///
一夏「鈴、いつも可愛いけど」
一夏「きょ、今日は、格別だな……」 ///
鈴「えへ……えへへ。 ありがとう」 ///
一夏「私服も、そのリボンも、凄く似合ってる」 ///
鈴「も、もう! 褒めすぎだって!」 二ヘラ〜///
アハハハ…… ///
一夏「じゃ……そろそろ行くか!」
鈴「うん!」
——午前中——
——遊園地——
一夏「さあて、何に乗るかな?」
鈴「定番のジェットコースターは?」
一夏「いきなりは、キツイな……」
鈴「でも早く並ばないと、今日は休日で人が多いから」
鈴「かなり待つことになるんじゃない?」
一夏「むむっ……確かに」
鈴「じゃあ決まり! 行こっ! 一夏!」
一夏(しょっぱなに絶叫マシンかぁ……)
一夏「うひぃっぃぃいっぃぃ!!!!」 ゴ————————
鈴「きゃああああっ!!」 ゴ————————
一夏「あばばばばばばっっ!!!!」 ゴ————————
鈴「をををををををおおおおおおっ!!!!」 ゴ————————
一夏「あちょおおおおおおおっ!!!!」 ゴ————————
鈴「ほぉあたああああああああっつ!!!!」 ゴ————————
一夏「はあっはあっ……」
鈴「あははははっ!」
鈴「楽しかったね! 一夏!」
一夏「お、おう……」
鈴「次、何乗る?」
一夏「……す、すまん。 休憩させてくれ……」
鈴「うふふ。 いいよ、一夏!」
———————————
一夏「よし! 復活!」
鈴「じゃあ次は……ソフトにミラーハウスとかどう?」
一夏「ん? 乗り物じゃなくてもいいのか?」
鈴「ま、一夏の体調を考えて……ね!」 クスッ
一夏「すまないな……。 でも、正直助かる」 クスッ
一夏「……前言撤回、こりゃクラクラするな」
鈴「……ごめん」 シュン…
一夏「はは……俺も初めてだったからな……しかたn いてっ!」 ゴツン!
鈴「あっ、大丈夫? ……キャッ!」 コンッ!
一夏「っと! 鈴!?」
鈴「あはは……平気!」
一夏「……そ、そうか」 ホッ…
一夏「…………」 ///
一夏「よ、よし!」 ///
ススッ……… ギュッ
鈴「!!?」 ///
鈴「い、一夏!?」 ///
一夏「こ、こうやって、体を密着させれば……大丈夫だ!」 ///
一夏「鈴は、俺が守る!」 ///
鈴(ふわあああああああああっ!!?) ///
鈴(い、一夏に……抱きよせられてるっ) ///
鈴(あ……あ……なんか、もう……わけ、わかんないっ) ドキドキ///
鈴(一夏の……鼓動が……息遣いが……温もりが……) ドキドキ///
鈴(凄い……近いっ) ドキドキ///
———————————
鈴「ハー……ハー……」 ///
一夏「……? 鈴、大丈夫か?」
鈴「だ、大丈夫……」 ///
鈴(違う意味で大丈夫じゃないけど……) ドキドキ///
一夏「そ、そうか。 ならいいんだが……」
一夏「そういや、腹減ったな。 そろそろ昼にするか?」
鈴「う、うん! いいわね」
一夏「よし、決まりだ」 クスッ
一夏「鈴、ホットドッグ」
鈴「あ、ありがと、一夏」
一夏「飲み物は、コーラで良かったか?」
鈴「うん!」 ニコ
一夏「……だいぶ混んできたな」
鈴「休日だもん。 親子連れがやっぱり多いね」
一夏「俺達みたいなカップルも、結構いるけどな」 ハハ…
鈴「」 ///
一夏「……? 鈴?」
鈴「う、うん!? な、なに?」 ///
一夏「やっぱり……ちょっと変だぞ?」
鈴「そ……そう?」 ///
一夏「まるで……付き合い始めた頃の鈴みたいだ……」
鈴「!?」 ///
鈴(つ、付き合っているんだ……! あたし達……) ///
鈴「そ……そんなに、変、かな?」 ///
一夏「あ、いや、それは言葉のアヤってやつだよ」
一夏「今の鈴も……凄く可愛い……」 ///
鈴「!? も、もう! 一夏ったら……」 モジモジ///
鈴(あ……あたし、ホントにどうにかなっちゃいそう……) ///
一夏「じゃ……そろそろ、次、行くか?」
鈴「うん!」
一夏「どこにする?」
鈴「次は、一夏が行きたい所がいいかな……」 ニコ
一夏「俺の行きたいところ、か……」
一夏「う〜ん……」
———————————
鈴「へえ……遊園地の中にもゲーセンってあるのね」
一夏「ハハハ……鈴、前にも同じ事、言ってたぞ?」
鈴「そ、そうだった?」
一夏「ま、いいさ。 じゃあ……手始めに格ゲーでもどうだ?」
鈴「うん!」
一夏「くっ……!」 カタカタ
鈴「よっ……とあっ!」 カタタッ カタッ!
一夏「なんのっ!」 カタッ! カタタンッ!
鈴「わっ!? ちょっ!」 カトトッ!
一夏「うしっ!」 ユー ウィン!
鈴「あーもう! 惜しかった……」 ユー ロスト……
一夏「最後のラッシュ、ヤバかったぜ……」
鈴「そろそろ別のゲームしない?」
一夏「ああ、いいぜ」
一夏「クレーンゲームか」
鈴「そんなに得意じゃないんだけどね……」
鈴「二人なら、取れるかな〜と思って」
一夏「よし、いっちょ、やってみるか!」
鈴「あのモッピー人形なら、いけるんじゃない?」
一夏「おっ、良い具合に腕が引っ掛かりやすそうだな」
一夏「狙ってみよう」
鈴「……そう、ちょい右!」 ウィ〜ン……
鈴「ハ〜イ! そこで真っ直ぐ!」 ウィ〜ン……
一夏「……よし、こんどこそ!」 グォ〜ン……
一夏・鈴「…………」 ドキドキ…
一夏・鈴「!!」
一夏・鈴(そのまま……そのまま……!)
一夏・鈴「…………」 ドキドキ…
ガコンッ!
一夏「よしっ!!」 ガッツポーズ!
鈴「やったぁ!!」
鈴「次は……プリクラ!」
一夏「おう、いいぞ」
パシャ……パシャ……
一夏「……お〜い、鈴、何枚撮るんだよ?」
鈴「いいじゃない! 記念よ、記念!」
一夏「そろそろ映画の時間が気になってきてな……」
鈴「え? まだ大丈夫でしょ?」
一夏「……最後に行きたいアトラクションがあるんだよ」
鈴「そう? じゃ、これで最後にするね!」 ニコ
一夏「おう」
一夏(でも……喜んでる鈴、見ているだけで時間が経つのを忘れるな) ///
———————————
鈴「……観覧車」 ///
一夏「遊園地のシメといえば、やっぱ、これだろ?」 ///
鈴「う、うん」 ///
一夏「そろそろ……俺達だな」 ///
鈴「うん……」 ///
一夏(鈴……。 なんだよ、この可愛い生き物は……) ///
ガチン……パタン……
一夏「よっと……」
鈴「ふふ……上がってきた、上がってきた」
鈴「わあ……」
一夏「良い景色だな」
鈴「うん……。 ねえ、一夏。 IS学園ってどっちの方向?」
一夏「確か……こっちの方かな?」
鈴「あれかな? 湖は見えるけど……建物は無理みたい」
一夏「そりゃそうだ……けっこうな距離だからな」
一夏「……鈴」
鈴「うん? なに?」
一夏「こっちに……俺の隣に座らないか?」 ///
鈴「!!」 ///
鈴「う、うん……」 ///
ツツツ……ストン
一夏「…………」 ///
鈴「…………」 ///
静かに思えた。
ホントは、ゴンドラのきしみや、観覧車の駆動音がしていたハズだけど……
気にならなかった。
一夏が、あたしの肩に手を回してきた。
緊張しているらしく、少しぎこちない感じで……。
でもそれは……自分も同じだった。
あたしは……ゆっくりと一夏の方に顔を向けて、そのまま目を閉じた。
……少しして、自分の唇に優しく何かが触れる。
よく、「甘酸っぱい味」って表現を聞くけど、……それは正確じゃない。
あたしは、唇で、体で、心で……「五感」と呼ばれるすべてと、もう一つの何かで
「それ」を感じていたのだから……。
言葉では、表現し切れない、そんな体験……。
……その後の事を あたしは、ほとんど覚えていない。
映画を見て、二人で夕食を食べた……と思うんだけど……。
ふと、我に帰ったのは、IS学園寮の自分の部屋に戻った時だった。
…………恥ずかしいけど、あたしは度々、一夏との「体験」を思い出しては
一人、身悶えていた……。
——次の日——
——IS学園・廊下——
鈴「♪〜♪〜♪〜」 ウキウキ♪
鈴(はあ……。 あたし、たぶん、ニヤニヤしてるんだろうな……) ///
鈴(いいのかな……こんなに幸せで……) ///
鈴(ふふふふふ〜) ///
鈴(…………) ///
鈴(……あ)
鈴(そういえば……他の4人は、どうしているんだろう?)
鈴(…………)
鈴(……あたしがその立場なら)
鈴(顔を合わせ辛いな……)
箒「……!」
鈴「……!」
鈴(思っているそばから……)
鈴「……お、おはよう、箒」
箒「……!?」
箒「…………っ」 タッ タッ タッ…
鈴「…………」
鈴(…………やっぱり……そうだよね) ハァ……
セシリア「……ちょっと、あなた」
セシリア「そんなところに突っ立って居られると、邪魔なんですけど」
鈴「あっ、ごめん……って、セシリア」
セシリア「……!?」
鈴「?」
セシリア「……何ですの? わたくし達」
セシリア「ファーストネームで呼び合う仲などでは、ございませんけど?」
セシリア「中国の代表候補生……」 ギロッ……
鈴「……!?」 ビクッ!
セシリア「……ふん」 スタ スタ スタ…
鈴(…………)
鈴(…………そりゃ)
鈴(祝福してくれないだろうなって、思ってたけど……)
鈴(あんな……殺意をこめた目で、見なくてもいいじゃない)
鈴(…………)
——1組・2組・合同実習授業——
千冬「それでは、授業を始める」
千冬「今日は、専用機持ちと一般生徒で短時間の模擬戦を行い」
千冬「それぞれの技量を上げてもらう」
ハ〜イ
鈴(……あれ?)
鈴(シャルロットとラウラ、今日休みかしら?)
鈴(…………)
鈴「ね、モブ子」
モブ子「うん? なに?」
鈴「今日……シャルロットとラウラ、休みなの?」
ザワッ………!
鈴「……えっ!?」
鈴(なに!? この空気……!?)
千冬「凰……貴様……!」
鈴「え? え!?」
一夏「ちふ……織斑先生!」
一夏「鈴は、ここの所、記憶が曖昧になってて……」
一夏「様子がおかしかったんです!」
千冬「……」
一夏「今すぐ医療室に連れて行きます!」
千冬「……ふん。 わかった、連れて行け」
一夏「ありがとうございます!」
一夏「さ、ほら、鈴!」 グイッ
鈴「え? え? うん……」
——IS学園・どこかの個室——
一夏「はー……まったく、肝を冷やしたよ……」
鈴「…………」
一夏「……鈴、最近、様子がおかしかったし」
一夏「もしかして、本当に記憶が無いのか?」
鈴「……え〜っと、その……そう」
一夏「……マジかよ」
鈴「……ごめん」
一夏「……まあ、そうでなきゃ、あんな事は言わないだろうしな」
一夏「何があったか話すよ……」
鈴「うん、お願い」
一夏「まず……シャルロットだけどな」
一夏「女だった事は、覚えているか?」
鈴「うん」
一夏「あいつは最初、男としてここに来た」
一夏「問題は、どうして性別を詐称してまで転入してきたか、その理由だ」
一夏「デュノア社の産業スパイとして、この俺と、俺のISに近づく為だった……」
鈴「…………」
一夏「……でも、彼女は俺にバレた時、素直に話してくれたけどな」
一夏「自分の意思ではなかった事や、謝罪もしてくれた」
一夏「けど……同情はしたけど、見過ごす事は出来なかった」
鈴「…………」
一夏「千冬姉に伝えて、出来るだけ配慮してくれと付け加えておいた」
一夏「それから2〜3日後にフランスへ強制送還されたよ」
鈴「……IS学園特記事項は?」
一夏「なに言ってるんだよ、鈴」
一夏「ISの国際条約に明らかに違反するし、彼女の為にもならないだろ?」
鈴「…………」
鈴(……あれ? なんだろ? この気持ち……)
一夏「そして、ラウラの事だけど……」
一夏「結論から言うと……彼女は……」
一夏「もう、この世にいない」
鈴「…………」
鈴「えっ!?」
一夏「鈴は、ラウラが俺を憎んでいた事は、覚えているか?」
鈴「……転校初日に一夏をひっぱたいたわ」
一夏「そうだった。 そんな事もあったな」 クスッ…
一夏「だが……あいつは、事もあろうに……」
一夏「鈴を……!」 ギリッ
鈴「……!」 ///
鈴「…………」
鈴「えっと……確かその時、セシリアも居なかった?」
一夏「あんな女、どうでもいいよ……」
鈴「…………」
鈴(……まただ)
一夏「俺は、我を忘れて、ラウラに飛び掛った」
一夏「まあ……AICでボコボコにされたんだがな」
一夏「千冬姉が止めに入ってくれ無ければ……」
一夏「俺は……殺られていただろう」
鈴「…………」
一夏「……だが、ラウラは、何かに火が点いていた」
一夏「尊敬してたはずの千冬姉の静止を振り切って、俺に止めを刺そうとした」
一夏「……千冬姉に切り伏せられたラウラは」
一夏「その場で暴走した」
鈴「…………」
一夏「千冬姉は……なんとかラウラを救おうとしたけど……」
一夏「どんなに切り伏せても、ダメージを与えても」
一夏「暴走したラウラは、止まらなかった」
鈴「…………」
一夏「……どのくらい時間が過ぎたのか」
一夏「突然、ラウラが倒れて動かなくなった」
一夏「電池の切れたオモチャの様に……」
鈴「…………」
一夏「ラウラは、酷い状態だったらしい」
一夏「直接の死因は、折れた肋骨が肺に刺さり」
一夏「呼吸困難による窒息死だったそうだけど……」
一夏「全身の骨が、何十箇所も折れていたとか」
鈴「…………」
一夏「千冬姉も相当ショックを受けていたな……」
一夏「状況は、仕方なかったとはいえ……ラウラの命を奪ってしまったのだから」
一夏「で……今に至る」
鈴「…………?」
鈴「福音事件は?」
一夏「……は?」
一夏「なんだ? 福音事件って?」
鈴「……ううん、何でも無い」
鈴(こっちでは、福音事件そのものが無かった事になってるのね……)
鈴「一夏……」
一夏「ん?」
鈴「箒とセシリアは……」
鈴「あたしと何かあったのかな?」
一夏「…………」
鈴「……?」
一夏「鈴、あいつらに何かされたのか?」
鈴「……は? ううん、そうじゃないんだけど」
鈴「ちょっと気になっただけ」
一夏「……なら、いいんだが」 ホッ……
一夏「箒は、なんだかんだと難癖つけては、俺と鈴の間に入ろうとしてな」
一夏「はっきり『止めてくれ』って言ったら」
一夏「なんか泣きながら俺に告白してきたんだ」
鈴「……!!」
一夏「……ま、気持ちは嬉しかったけど、心を鬼にして」
一夏「『迷惑だ』と突き放した……」
鈴「…………」
一夏「それが……箒の為さ」
一夏「俺には、鈴が居てくれるから」 ///
鈴「う、うん」 ///
一夏「セシリアも状況は、箒に似ているんだけど」
一夏「あいつ……振られた腹いせに、事ある毎に鈴に突っかかってな」
一夏「俺の知らない所で、ずい分と鈴を困らせていた」
鈴「…………」
一夏「もちろん俺は注意したさ」
一夏「俺を一方的に好きになって、振られて、その腹いせを何の関係もない」
一夏「鈴にするのが、イギリスの流儀なのか?」
一夏「……ってな」
鈴「うわぁ……」
一夏「それからは、俺を毛嫌いするようになったな」
一夏「ま……それがあの女の正体なんだろう」 ヤレヤレ…
鈴「…………」
鈴(……そっか)
鈴(そういう事か……)
鈴(……”違う”んだ。 この一夏は……)
一夏「……鈴?」
鈴「ん? ふふ……なんでもない」
一夏「そうか……」
鈴「…………」
鈴「……ね、一夏」
一夏「なんだ?」
鈴「一夏は、どうしてあたしの事を そんなに好きでいてくれるの?」
一夏「……………………」
一夏「……それ、本気で言ってるのか?」
鈴「……ごめん」
一夏「……………………」
一夏「……幼い頃、鈴は俺に言ってくれたよな?」
一夏「毎日、酢豚を作ってくれるって」
鈴「うん」
一夏「その時に……表面上は何でもないって顔をしたけど……」
一夏「内心は……鈴が、とても愛おしく思えた」 ///
鈴「う、うん」 ///
一夏「……俺、鈴と離れる事になって」
一夏「それを受け入れられなくて、現実の事として認識していなかった」
鈴「…………」
一夏「最初は、声だった。 自分を呼ぶ、鈴の声がしないって気がついた」
一夏「いちかーって、元気のいい鈴の声……」
一夏「そして、いつしか鈴を探していた。 ……無意識に」
一夏「いつも隣にいた存在が無くなって、寂しかったんだろう……」
鈴「…………」
一夏「……ある日、俺は」
一夏「鈴の家に……あのラーメン店に行ってみた」
一夏「そこにいるかもって思って……」
鈴「…………」
一夏「……何も無かった」
一夏「店はおろか、建物があった痕跡も何もかも……」
一夏「そこは、ただの更地になっていたんだ」
鈴「…………」
一夏「…………ああ、もう鈴は、居ないんだ」
一夏「俺は……泣きながら、それをやっと理解したんだ……」
鈴「…………」
一夏「いつか鈴に会いに行こう」
一夏「そう思いながら、色々あってIS学園に編入して」
一夏「しばらくしたら……」
鈴「あたしが転校してきた」 クス
一夏「そう」 クス
一夏「まあ……冷静になれば、ちょっと恥ずかしいんだけど」
一夏「あの時、気がついたら鈴を抱きしめてた……」 ///
鈴「えっ……」
一夏「その事は、覚えてるか?」
鈴「……ごめん」
一夏「そっか……」
一夏「ああ、いや……別にいいんだよ」
一夏「思い出は、これからたくさん作っていけばいいんだし、な」 ニコ
鈴「…………」
鈴「……うん、そうだね、一夏」 ニコ
——夜——
——IS学園寮・鈴の部屋——
鈴(…………)
鈴(……贅沢だな、あたし)
鈴(あの一夏は……)
鈴(あたしの理想の一夏じゃない)
鈴(一途で、真っ直ぐで、あたしの事だけを見てくれてる……)
鈴(まさに……望んだ通りの一夏……)
鈴(…………)
——IS学園裏の雑木林——
ザッ ザッ ザッ…
鈴(……………………)
鈴(……どこだったかな?)
鈴(確か……この辺……)
鈴(……!)
鈴(あった!)
あたしは、あの電話ボックスに入った。
そして、受話器を取ろうとして……ためらった。
鈴(……あの一夏は、あたしの理想)
鈴(でも……)
鈴(この世界は)
鈴(こんな世界は)
鈴(あたしは、望んでいない)
鈴(…………)
鈴(あたしは、知っているもの)
鈴(一夏を取り合う、ライバル……でも)
鈴(箒は、不器用だけど……とっても真面目だし)
鈴(セシリアは、ちょっと間が抜けてるけど……、一緒に居て楽しいし)
鈴(シャルロットは、抜け目が無くて油断できないけど、頼りになる仲間だし)
鈴(ラウラは、世間知らずで行動が読めない奴だけど、素直な所は可愛いし……)
鈴(……それに)
鈴(一夏は……みんなを悪く言ったりしない) クスッ…
あたしは、受話器を取った。
鈴「………………」
鈴「もとに……」
鈴「もどれ!!」
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリンッ!!
鈴「…………」
鈴「甲龍!」 スウウウウウンッ!
ISを起動させると、あたしは電話ボックス持ち上げ
湖のど真ん中まで移動した。 そして……
鈴「……龍砲!!」
ドゴオオオオオン!!
鈴「………………」
鈴(これで……いいのよ……)
電話ボックスは砕け散って、湖面に消えていった……。
後悔はある。 でも……あれは、あってはいけない物だと、あたしは思った。
——翌日の朝——
——IS学園・1組教室——
鈴「おはよう!」
セシリア「あら、鈴さん。 おはようございます」
箒「おはよう」
ラウラ「おはよう、鈴」
シャル「おはよう。 今日も元気だね、鈴」
鈴「ふふん、まあね」
鈴「…………」
鈴「あのさ、今日のお昼、屋上で食べない?」
鈴「…… 一夏抜きで」
箒・ラウ・セシ・シャ「……?」
——昼——
——IS学園・屋上——
アハハ……ウフフ……
セシリア「たまにはいいですわね、こういうのも」
鈴「でしょ?」
シャル「うん。 不思議だけど……とっても新鮮だね」
ラウラ「……なぜだかわからないが、落ち着くな」
箒「一夏がいると緊張するからかな?」
鈴「たぶんそうね」
鈴「……あたしね、夢を見たの」
鈴「一夏がね、あたしにぞっこんな夢……」
セシリア「……鈴さん? 何かあると思ったら、夢のご自慢ですか?」
箒(私も見てみたいな……) ///
鈴「途中までは……良かったんだけどね」
シャル「途中まで?」
鈴「そう。 夢の中の一夏は、あたしには優しいんだけど……」
鈴「みんなには、どこか冷めた態度でね」
鈴「……なんか、違うなって思っちゃった」
ラウラ「ふむ……確かに嫁らしくないな」
シャル「一夏なら誰かと付き合っていても、態度を変えなさそうだもんね」 クスッ
箒「……でも、それはそれでヤキモキしそうだな」
セシリア「箒さんの言う通りですけど……だからこその一夏さんですわ」 フウ…
鈴「そうよね……なんであんなの好きになっちゃったんだか……」
鈴「女心を全っ然、分かろうとしないし」
ラウラ「公然と嫁宣言してるのに、一向に振り向かないし」
セシリア「頼りがいのある発言をしたかと思えば、あっさり期待を裏切りますし」
シャル「どんなアピールも、常にナナメ上に受け取るし」
箒「その割には、ハレンチな奇行ををするし」
鈴「うわ……みんな言いたい放題ね」
ラウラ「……だが、反論は難しいな」
シャル「……うん、ホントだね」
セシリア「的確ですわ……」
箒「ハハハ……ハァ……」
箒「……今頃、一夏は何をしているだろうな?」
ラウラ「昼食を取っているに決まっているだろう?」
シャル「ラウラ、そういう事じゃないんだよ」
セシリア「わたくし達がいなくて、寂しい、とか思っているのでは?」
鈴「だとしたら、ちょっといい気味ね」 クスッ
鈴「たまには、あたし達にヤキモキしなさいっての!」
シャル「あはは、そうだよね!」
箒「そうだな、いつも私達ばかりだしな!」
セシリア「きっと、わたくし達のありがたみを味わって居られるでしょう!」
ラウラ「…………」
ラウラ「……意外と」
ラウラ「他の女子と、楽しく食事を……」
鈴「……………………」
シャル「……………………」
箒「……………………」
セシリア「……………………」
ラウラ「……………………」
ラウラ「きゅ、急用を思い出した!」 バッ
シャル「ボ、ボクも!」 バッ
箒「私もだ!」 バッ
セシリア「み、みなさん! 抜け駆けは、許しませんわ!」 バッ
鈴「……ハァ、結局こうなるのね……」 バッ
鈴(ま、……これも楽しいよね) クスッ
……こうして、あたしの不思議な体験は、幕を閉じた。
まるで、本当に夢だったかのように。
でも……そうじゃない証拠がいくつか、あたしの手元にあった。
——夜——
——IS学園寮・鈴の部屋——
鈴「んふふ〜♪」 ピラ
鈴(モッピー人形にあの世界で撮ったプリクラ……)
鈴(どうして残っているのか、わかんないけど)
鈴(……これくらい、いいよね?)
鈴(一夏……) チュッ
鈴(〜〜〜〜〜!!) ジタバタ ジタバタ ///
鈴(……………………)
鈴(でも……)
鈴(いつか……)
鈴(あたしの好きな一夏と)
鈴(あんな体験、出来ます様に……) ///
それは、あたしだけの秘密のお守りになっていた。
おしまい
鈴編でした。
箒のほうも読んだよ!
凄く良かったです
>>81
ありがとう。流石に眠くなったので残りは明日にします。
このSSまとめへのコメント
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