貴音「一夜寝物語」 (175)

一夜

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1403534983

P「なぁ、貴音」

貴音「なんでしょう、あなた様」

貴音「何か、話を聞かせてくれよ」

貴音「話…ですか?」

P「そうそう。こう…聞いてる内に、眠たくなってくる様な…」

貴音「…ふむ。ならば、このような話は、いかがでしょう」

―――
――

貴音「むかしむかし。それこそ、何百年と昔のお話です」

貴音「とある海辺の村に、一人の漁師が住んでおりました」

貴音「漁師には、娘がおりました」

P「母親は?」

貴音「ふふっ。あなた様?ちゃあんと、わたくしの話を聞いてくださいませ」クスクス

P「…悪かったよ。続きを聞かせてくれ」

P「素直に謝る事の出来るあなた様は、良い子ですね」ナデナデ

P「…撫でるのはいいから、続き」

貴音「ふふっ。はいはい」クスクス

貴音「…漁師には、娘がおりました。母親は、娘を産んだ後、出産の影響で亡くなったのだそうです」

P「…」

貴音「ある日、その村の、別の漁師が珍しい魚を捕ったという事で、それを食してみようという事になり、村の大人たちが宴会を開いたのだそうです」

P「魚かぁ。俺は、煮魚がいいなぁ。カレイの煮付けなんか、冷酒によく合うんだ」

貴音「ふふっ。わたくしは、焼魚も好きですよ?ところで、話の続きをしても?」ジィッ

P「…ごめんなさい」

貴音「ふふっ」ナデナデ

「…」

貴音「…そして、皆の酔いが回った頃、その『珍しい魚』が村の大人たちの前に出されたのだそうです」

貴音「その、『珍しい魚』」

貴音「その姿は、長年、海で生きてきた漁師たちにとっても初めてみる、不気味な姿だったそうで」

貴音「ですが、食す為に開いた宴。誰も食べずに帰るなど、出来る筈はありません」

貴音「臆病者と、笑われてしまうからです」

貴音「しかし、初めてみる得体の知れぬ『珍しい魚』」

貴音「誰も彼もやはり不気味に思い、誰一人として先に食べようとしません」

貴音「結局はみな、食べるふりをして懐に隠し、帰り際に捨てたりしたのだそうで」

貴音「当然、漁師の男も食べず、懐に隠し、家路に向かったそうです」

P「…」

貴音「道端には、捨てずに」

P「えっ?」

貴音「家に帰ると、寝ているはずの娘が起きていて」

『おっとう!おみやげはー?』ガバッ

P「!」ビクッ

貴音「と、抱き着き、おみやげをせがんできたそうです」クスクス

P「…驚かすなよ…」

貴音「吃驚するあなた様も、かわいいものです」ナデナデ

P「…知るか」

貴音「ふふっ。しかし今夜は酒の席。当然、こどもに渡せるおみやげなどあるはずもありません」

『おみやげ!おみやげ!』

貴音「尚もせがむ娘に困った男は、」

P「…」

貴音「あの『珍しい魚』を、娘に与えてしまったそうです」

貴音「与えた後になって慌てた男。しかし、娘の身体に何の変化もありません」

P「…」

貴音「そして、娘が成長し、父が死期を迎えて少し経ったある時、」

貴音「娘は、あることに気が付きました」

貴音「何年経っても、自分の身は変わらず、若いままな事に」

P「…それって」

貴音「そうです」

―不老長寿

貴音「あの『珍しい魚』を食べたその日に、娘は、不老長寿となってしまったのだそうです」

貴音「結局その娘は、時の流れるまま、何百年の時を生きた…」

貴音「という、遠い遠いむかしのお話です」

―――
――


P「…」

貴音「如何でした?」クスッ

P「次は、もっと優しい話にしてくれ…」

貴音「はいはい」クスクス

貴音「では、あなた様。今宵もいいお時間」

貴音「おやすみなさいませ」

P「あぁ、おやすみ」

貴音「続きは、また別の夜に―」

ここまでありがとうございました

続きは、また別の夜に

こんな感じの昔話やらなんやらを、いくつかちょくちょく書いていきたいと思います

それでは、今度もよろしくお願いします

あ、あとこれだけは最初に言わせてください

一応、元ネタはあります

自分が神話とか民間伝承とか好きなんで、それらを知ってもらえたらなって感じです

二夜

P「…」ソワソワ、ソワソワ

貴音「ふふっ。あなた様?どうされたのです?そんなソワソワして」クスクス

P「いや、今夜も貴音の話聞けるかなーって」

貴音「ほんと、あなた様は甘えん坊なのですから」ナデナデ

P「貴音の話は面白いからなぁ。聞いたことのない話ばかりだし」

貴音「ならば今夜は、このようなお話はいかがでしょう」

―――
――

貴音「むかぁしむかしの事」

貴音「その時代は、未だ『妖怪』や『物ノ怪』といった存在が、大衆に信じられていたそんな時代のお話でございます」

P「『妖怪』と『物ノ怪』って、同じ意味じゃないのか?」

貴音「そうですね。確かにそれらは似た意味を持ち、それらの存在を纏めて『妖(あやかし)』と呼ぶことも多々あります」

貴音「ですが、わたくしとしては、人に仇なす存在を、」

貴音「『物ノ怪』」

貴音「そう呼んでおります」

P「なんで?」

貴音「ふふっ。一言で云うならば、」

貴音「人それぞれ、でしょうか」

P「あー、そんなもんなんだ?」

貴音「そんなものなのですよ。不確かな存在というモノは」

貴音「眼に見えぬモノは、人の心の内の有り様で、如何様にも変わってくるものなのですから」クスクス

P「ふーん」

貴音「さて、話が逸れてしまいましたね」

貴音「兎にも角にも、それら不確かな存在が信じられていた、そんな時代の事だったそうです」

貴音「ある暑い時期、とある旅人が宿場町に向かう旅の道中の事。何やら、牛が一頭、道中にへたりこんでいたそうな」

貴音「当時は『水』は貴重なもの。今の時代の様に、そこかしこに『水』がある訳もなし」

『この暑い中、ましてや周りに水源も無いこのような道中へたりこんでいたら、この牛は死んでしまうだろう』

貴音「そう思った旅人は、自らの竹筒に残った、ほんの僅かな水を与えようと、その牛に近寄ったそうです」

P「…」

貴音「…ところで、」チラッ

P「うん?」

貴音「人面を持ち、人の言葉を発する動物が存在する―」

貴音「そう言われたら、あなた様は信じますでしょうか」クスッ

P「…あー、俺のガキの頃よく流行ったよ。人面犬だの人面魚だの。でも、あんなの眉唾だろ?」

貴音「…ふふっ」クスクス

P「何だよ?」ムッ

貴音「ふふっ。いえいえ。それで良いのです」クスクス

P「…?」

貴音「兎に角、その旅人が牛に近寄り、水を与えようと顔を覗いた旅人が見たもの」

貴音「それは」

貴音「人面の牛」

P「…」ゾッ

貴音「だったそうです」

貴音「ですが、人面であろうと、命の灯火が消えかかっている事実は変わりません。多少、驚きはしたものの、水をその牛に与えたそうです」

貴音「水を与えられた人面の牛は、むくりと起き上がると、」

『この先に、宿場町がある』

P「…」

『そこの長者に蜜柑を渡せ』

P「…」

貴音「と、低く、低く、どこまでもひくぅい声でそう言い残し、何処へと去っていったそうです」

貴音「不気味に思った旅人は、人面の牛が去っていく姿をいついつまでも見送ったそうな」

『蜜柑など、私が持っている筈がないじゃないか』

貴音「その時代、蜜柑は高級品だったそうです。当然、一介の旅人が、その様な高級品を持っている筈がない―」

貴音「ふと、そう思った旅人は」

貴音「人面の牛が去っていった道に、何かが落ちているのを見つけました」

P「…」

貴音「そう。蜜柑です」

貴音「その蜜柑を拾い、宿場町に着いた旅人。さっそく長者の屋敷に迎い、人面の牛に言われた通り蜜柑を渡したところ」

貴音「どういう訳か長者に気に入られ、娘婿として迎え入れられたという、お話」

貴音「おしまい」クスッ

P「なんだか、ずいぶんとおざなりな最後だなぁ…」

貴音「ふふっ。語ったわたくしでさえそう思うのです。それを聞いているあなた様がそう思うのも、無理はないでしょう」クスクス

貴音「ですが、」

貴音「不可思議な事柄というものは、そういうものなのですよ。きっと」ナデナデ

P「ふーん」

貴音「では、あなた様。今宵もいいお時間」

貴音「おやすみなさいませ」

P「あぁ、おやすみ」

貴音「続きは、また別の夜に―」

はい。ここまでありがとうございました

今夜は、こんな感じで終わりたいと思います

日付が変わる頃には、投下したいと思います

三夜

P「今夜も何か、話を聞かせてくれよ」

貴音「ふふっ。昔語をねだるなんて、子どもみたいですね」クスクス

P「あー、貴音の話が聞けるなら、もういっそ子どもでもいいかも」

貴音「ほんと、あなた様は甘えん坊なのですから」ナデナデ

P「そういう風にしたのは、貴音だろ?」

貴音「はいはい。あなた様を甘えん坊にしてまった私のせい…と、言う事にしておきましょうか」クスクス

P「…納得いかない」ムスッ

貴音「ふふっ。では、おっきな赤ちゃんに、ひとつ語ってあげましょうか」クスッ

―――
――

貴音「とんと昔の事」

貴音「ある山中の小屋に、女房は糸を紡ぎ、旦那は竹取をして生計を立てている、貧しい夫婦がおりました」

貴音「ある夜の事だったそうです。女房が、里へ売る為の絹を作るため、夜通し糸車をからからと廻している時の事」

貴音「どこからともなく」

ポンポコポン

ポンポコポン

貴音「と、狸の腹太鼓の音が聞こえてきたそうです。女房が、ちらり、と縁側を向くと、何処から集まってきたのか狸たちが集まってきて、女房が糸を紡いでる様子を見ていたのだそうで」

貴音「しかもその狸たち。女房が糸を紡ぐ様子を真似っこしたり、ちいさな糸車をからからと空廻ししたりしていたのだそうです」

P「ははっ。狸はイタズラをするイメージがあるけど、可愛いところもあるじゃないか」

貴音「…ふふっ。はてさて、本当にそうでしょうか」クスクス

P「?」

貴音「仕事も一段落し、さて眠ろうと女房が寝床に入った後も、」

貴音「狸たちはさぞ楽しそうに、楽しそうに、」

ポンポコポン

ポンポコポン

貴音「と、いついつまでも腹太鼓を打っていたそうです」

貴音「さて、その狸たち、その晩以降もその夫婦の家の周りに集まっては、ぽんぽこぽんぽこと、腹太鼓を打ったり女房の真似っこをしていたそうです」

貴音「狸の腹太鼓など、月夜の晩などは、特に賑やかだったのだそうで」クスッ

P「…」

P「やっぱり迷惑だったわ…」

貴音「…」クスクス

貴音「さて、これに困った夫婦。最初は可愛げのあった狸たちも、こうも毎夜毎夜の事だと迷惑千万」

貴音「事もあろうに、今度は昼間にも現れる様になり…」

貴音「おひつをひっくり返し、ごはんを食べられなくしたり」

貴音「残菜を食い散らかしたり」

貴音「どんどんと悪戯が酷くなっていったそうな」

貴音「その余りにも度が過ぎる悪戯にたまりかねた旦那は、庭先に罠を仕掛けたそうです」

貴音「さて、罠を仕掛けた晩の事。女房がからからと糸を紡いでいると、」

―パシッ

貴音「と、」

貴音「罠が跳ねる音がしたそうです。女房が、眠っている旦那を起こすまいと、そろぅりと外へ出て、罠を見てみると…」

P「…」

貴音「なんともなんとも大きな図体をした古狸が逆さ吊りになり、ぽろぽろぽろぽろ涙を流していたそうな」

貴音「可哀想に思った女房が、『罠には気を付けるんだよ』と、ぽつり一言呟き、縄を解いて逃したんだそうな」

貴音「縄を解かれた狸は、しきりにぺこりぺこりと頭を垂れ、嬉しそうに森の中へ走って行ったのだそうです」

貴音「さて次の朝、旦那が罠の様子を見、『罠にかかっていなかった』と、残念にしていたが、女房は知らんぷりをしていたそうな」

P「まぁ、自分が逃がしたーなんて言えねぇよな」

貴音「さて、冬場も近付き、山にさくりさくりと雪が積もり始めた頃、夫婦は里に降り、山の雪解けを待ったのだそうです」

貴音「冬も去り、山の雪が解け始めた頃、夫婦は山の小屋に戻りました」

貴音「さて、その山の小屋。どこかがおかしいと、何やら違和感を覚えました」

貴音「何故ならば、」

貴音「小屋を出る際にしっかりと閉じていた雨戸が一枚外れており、辺りには沢山の狸の足跡が残っていたのだそうな」

貴音「夫婦は、『また狸の悪戯か』と呟き、恐る恐る小屋の中へ入ると、驚きを隠せなかったのだそうです」

P「うん?また狸の悪戯か?」

貴音「ふふっ。いえいえ」クスクス

貴音「そうです。小屋の中には、それはそれは大層美しい糸で紡がれた絹が、山の様に積みあがっていたのだそうです」

P「鶴の恩返しならぬ、狸の恩返し…って訳か」

貴音「未だ驚いている旦那に、女房は、以前罠にかかっていた古狸を助けてやった事を告白しました」

貴音「旦那は、さっそく里へその絹を売りに行くと、飛ぶ様にその絹は売れました」

貴音「その噂は、里の長者の耳にも入り、有り得ない程の高値で売れたのだそうです」

貴音「その事もあって、夫婦の暮らしは随分と楽になったのだそうです」

P「で、狸はいなくなったんだろ?俺でもそれぐらいのオチは分かる」ニヤニヤ

貴音「いえ?いなくなってなどおりませんよ?」クスッ

P「へっ?」

貴音「春先になり、夜風も幾分と暖かくなった頃、またまた狸たちが集まり、女房が糸を紡ぐ様子の真似っこをしたり、ぽんぽこぽんぽこ腹太鼓を打ったりしていたのだそうですよ?」クスクス

P「ははっ。狸たちも懲りないなぁ。また罠にかかっちまうぞー?」クスッ

貴音「けれど、」

P「うん?」

貴音「ぽんぽこぽんぽこ腹太鼓を打ったり、おひつを引っくり返しはするけれど、」

貴音「旦那はもうワナを仕掛けようとは思わなかったそうな」

貴音「おしまい」クスッ

貴音「さて、以前あなた様が『優しい話を聞きたい』と仰有っていたので、優しい話などを語らせていただきましたが、如何でした?」

P「うん。こういう人情…?」

P「…まぁ、いいや。人情モノはいいな。聞いててほんわかしてくる」

貴音「今、語らせて頂いた昔語以外にも、人成らざるモノの恩返しを伝えた話は、狸が紡いだ美しい絹ではありませんが、それこそ山の様に伝わっています」

P「興味深いよなぁ。傘地蔵とか鶴の恩返しとか、細部は違っても、似たような話だもんなー」

貴音「ふふっ。ところで、あなた様?」ナデナデ

P「うん?」

貴音「たとえ人成らざるモノであったとしても、あなた様は、その優しい…暖かい心を以て、接してくださいますか?」クスッ

P「…急に何を言い出すんだ?」ハァ...

貴音「では、あなた様」ナデナデ

P「…話を聞けって」

貴音「今宵もいいお時間」

貴音「おやすみなさいませ」クスクス

P「あ、あぁ…。おやすみ…」

貴音「続きは、また別の夜に―」

はい。ここまでありがとうございました

今夜は、こんな感じで終わりたいと思います

四夜

P「いやー、あの狐は可愛かったな」

貴音「ふふっ。北の大地に住む狐は、何処か特別可愛く思えてしまいますね」

P「狐ってさ、人を化かすイメージがあるけれど、何処か憎めないんだよなぁ。尻尾とかもふもふしたい」

貴音「今度は、てれびの中ではなく、本物の狐を見てみたいものです」クスクス

P「だな!今度、動物園にでも行こうか」

貴音「ふふっ。それは良い考え。その日が、今から待ち遠しいです」クスッ

貴音「では、」スゥ...

貴音「今夜は、その狐に纏わる昔語を語らさせていただきましょうか」

―――
――

貴音「それはそれは遠い、遠い、遥か遠い昔の事」

貴音「とある村に、一人の若者がおったそうな」

貴音「若者は、身寄りがなく天涯孤独の身。家族と呼べるのは、若者が飼っている子犬一匹だけだったそうです」

P「天涯孤独ってのも、寂しいよな。俺だったら耐えられないかも」

貴音「人は、一人だけでは生きてはいけませんからね」

貴音「さて、ある日の事です。若者が畑仕事を終えた帰り道、花畑に座り込む一人の娘と出逢いました」

貴音「若者は、その娘に語りかけます」

『もしもしお嬢さん。旅の途中ですか?』

貴音「その問いに、娘は答えます」

『ふふっ。目的地などがあれば、良かったのですが』

貴音「と」チラッ

P「…」

貴音「若者は、寝る場所も無いと言う娘を、家に迎え入れました」

―ぐるる…

貴音「娘が家に入る際、飼っている子犬の様子が何やらおかしな事に気付かぬまま…」

貴音「そして、若者は言います」

『お嬢さん。私は天涯孤独の身。家族と呼べるのは、飼っている子犬だけ』

『私はもう寂しさに耐えられそうにありません』

『目的地の無い旅だと云うのなら、どうか私と、夫婦の契りを交わしてはいただけませんか?』

P「おぉ。情熱的だ」

貴音「娘は答えます」

『喜んで、あなた様の妻となりましょう』

貴音「そして、若者と娘は、一夜を過ごしたそうです」

貴音「夜が明け、若者と娘が戸外に出た時、それは起こりました」

―ぎゃんぎゃん!

貴音「若者が飼っている子犬が、娘に向かって吠えたのです」

貴音「それに驚いた娘は、」

貴音「どろんと、今で云う狐の姿になり、垣根の上に逃げたそうな」

P「おぉ、娘は狐っ娘だったのか」

貴音「狐の姿となった娘は、若者に涙ながらに言います」

『わたくしの正体を知られてしまったからには、あなた様と共に夫婦として生きていく事は出来ませぬ…』

貴音「そう言い、何処へと去って行きそうになった時、若者が言いました」

『お嬢さん。たった一夜。たった一夜だけの逢瀬でしたが、貴女は私の妻なのです』

『私は貴女を愛しています。忘れる事など、出来る筈がありません』

『せめて夜だけでいいのです。夜だけでいいから、毎夜、私の寝床に来て、一緒に寝てはくれないでしょうか』

P「うぅん。男としては、完全に同意だな」

貴音「それからというものの、娘は毎夜、その若者の寝床にやってきては一緒に寝、朝になると何処へと去っていったのだそうです」

貴音「そこから、」

貴音「来つ寝→きつね→狐」

貴音「と、呼ばれる様になったのだそうです」

貴音「おしまい」クスッ

貴音「如何でした?狐が、狐と呼ばれる由来のお話」

P「うん。こういう話はロマンがあっていいな!けもの娘というのは、実に素晴らしい」

P「猫耳とかたまんねぇもん」ニヤニヤ

貴音「…」ジィッ

貴音「…ふふっ。ところで、あなた様?」クスクス

P「うん?」

貴音「けもの娘という生き物は…それはそれは大きな愛故に、嫉妬深ぁい一面も、あるそうですよ?」クスクス

P「…はい?」

貴音「ふふっ」クスッ

貴音「では、あなた様。今宵もいいお時間」

貴音「おやすみなさいませ」

P「あぁ。おやすみ。今夜は、けもの娘の夢でも見れたらいいなぁ」

貴音「はぁ…やれやれ。あなた様には、困ったものです」クスクス

貴音「…」チラッ

P「ぐぅ…」Zzz...

貴音「…ばーか」ムスッ

貴音「続きは、また別の夜に―」

はい。ここまでありがとうございました

今夜は、こんな感じで終わりたいと思います

五夜

P「なぁ、貴音?」

貴音「はい?どうされました?」

P「貴音は今、幸せか?」

貴音「…」キョトン

貴音「ふぅ…」ハァ...

P「…」

貴音「ふふっ。あなた様?今のわたくしを見て、わかりませんか?」クスクス

P「外面と内面は、違うだろ?」

貴音「人は、言葉にしないと安心出来ぬ生き物でもありますからね」

P「で、どうなんだ?」

貴音「ならば、このような昔語をひとつ」

P「おい。答えてくれって…」

貴音「…いいからいいから」クスクス

P「むぅ…」

―――
――

貴音「とんと昔の事」

貴音「鳥やけものを狩って暮らす、鉄砲撃ちのじい様が、いつもの様に山の中へ狩りへと向かった時の事」

貴音「その日は、中々思うように狩りが出来ず、石に座り込み、途方に暮れ、ぼうっと鉄砲を眺めていた時の事だそうです」

貴音「じい様が、ふと空を見上げると、それまで見たことも無い、それはそれは美しい金色の鳥が優雅に翔んでいたそうです」

『なんと美しい鳥じゃ…。あの鳥は、もしかすると神様の鳥なのかもしれん…』

貴音「じい様が、金色の鳥に見惚れていると、ふぁさりとその美しい羽を羽ばたかせ、じい様の傍の宿り木へと留まりました」

貴音「じい様が、なおも見惚れていると、なんという事でしょうか。人語を話し、じい様に語り掛けたのです」

『じい様よ、何故、私を撃たないのです?私を撃たなければ、生活が出来ぬのでは?』

貴音「じい様は、その事に驚きつつも、首を振って答えます」

『わしは、ばあ様と二人暮らしなんじゃ。なぁに、お前一羽を撃たずとも、なんとか暮らしていけるさ』

『それにな?』

『お前の様な、美しい金色の鳥を撃つ事など、わしには出来んよ』

P「おぉ、漢じゃないか」

貴音「ふふっ。いかな平民であろうとも、優雅なモノを愛でる事の出来る、旧き良き時代のお話ですから」クスクス

貴音「美しい金色の鳥は、じい様をじぃっと見つめ、ぴゅいっとひとつ鳴くと、ばさりばさりと翼を羽ばたかせ、じい様に言いました」

『そうですか。ならば、心の美しいじい様に、何かひとつ、良いことをしてあげよう』

貴音「尚も、鳥は続けます」

『じい様よ、そなたら二人の暮らしを楽にしてあげるから、これからはもう私たち鳥やけものたちを撃つ事をやめてあげてくださいね』

貴音「金色の鳥は、そういうとまたひとつ、ぴゅいっと鳴いて、何処で知ったかじい様の家の方へと飛んでいきました」

『…ふぅむ。やはりあの鳥は、神様の鳥だったのかもしれないな』

貴音「じい様は、金色の鳥が飛び去った方角へ手を合わせると、約束通りその日はもう鳥やけものを狩らず、自分の家へと帰って行ったのだそうです」

貴音「すると、どうした事でしょうか」

貴音「ボロボロだった小屋が、それはそれは大層立派なお屋敷へと変わっていたのです」

『こりゃあたまげた』

P「ホントに神様の鳥だった訳だ」

貴音「じい様が屋敷の前で驚いていると、屋敷の中からボロボロの着物などではなく、美しい着物を着たばあ様が出てきて、言いました」

『じい様よ、さっきな?それはそれは立派な身なりのお方がやってきて、あっという間に小屋を、こんな立派なお屋敷に変えてくれたのです』

『ほうほう』

『しかし、それだけではありません。わしの着物を見てくだされ。美しい着物でしょう?このような美しい着物や、お金や、お米などもどっさり運んでくれたのです』

『わしには、もう何がなにやらわかりません』

貴音「そう言うばあ様に、じい様は先程の出来事―美しい金色の鳥の話をしました」

『すると、これは山の神様のお恵みなのかもしれませんね。じい様、これからはもう鳥やけものを撃つ事をやめてあげてくださいね』

貴音「じい様は、にっこりと笑うと」

『あぁ。もちろんじゃ。鉄砲撃ちはもう止めじゃ。これからは、二人でのんびり暮らそう』

貴音「それからというものの、鉄砲撃ちを止めたじい様とばあ様は、のんびりのんびり静かに、穏やかに、暮らしたそうです」

P「めでたしめでたし?」

貴音「…ふふっ」クスッ

P「うん?」

貴音「さて、それから数日の事」

P「あ、まだ続くんだ?」

貴音「働かなくても暮らしていけるようになったじい様とばあ様は、何をして時間を潰せばよいのか、分からなくなってしまいました」

P「まぁ…今までしてきた仕事をしなくていいようになったんだもんな。そうなってもおかしくないよなぁ」

貴音「ある日、ばあ様がぽつりと言いました」

『あぁ、退屈で死んでしまいそう。もしも、鳥みたいに大空を飛ぶ事が出来たら、どんなに楽しい事でしょう』

貴音「ばあ様は、じい様にお願いをしました」

『じい様よ、一度でいいから空を飛べるように、あの金色の神様の鳥にお願いをしてはくれませんか?』

貴音「じい様は、そんなばあ様を可哀想に思い、」

『空をか。それはそれは楽しそうじゃ。よし、山へ行って、神様の鳥を探してみよう』

貴音「じい様が山へ出掛けると、神様の鳥は、あっという間に見付かりました」

貴音「じい様は、金色の神様の鳥に言いました」

『金色の鳥さんよ。おかげでわしとばあ様は、穏やかな暮らしをしているよ』

貴音「金色の神様の鳥は、そんなじい様の様子を見、満足そうにぴゅいっとひとつ鳴きました」

貴音「じい様は、ばあ様の『空を飛びたい』というお願いを、金色の鳥に話しました」

貴音「すると、」

『わかりました。ならば、ばあ様が今すぐに空を飛べるようにしてあげましょう』

貴音「そう言って、やはりぴゅいっとひとつ鳴くと、じい様の屋敷の方角へと飛んでいきました」

『今頃、ばあ様は一時の空の旅を楽しんでいるのだろうか』

貴音「そう思いながら、じい様が屋敷へと帰ると…」

貴音「どうした事か、鳥になったばあ様が、屋敷の屋根の上に止まっているではありませんか」

『なんという事じゃ…』

貴音「じい様が呆然としていると、鳥となったばあ様が、じい様の肩に止まり、言いました」

『じい様よ、ついさっきの事です。それはそれは立派な身なりのお方がやってきて、私を鳥に変えてしまったのです』

『なんと…』

貴音「ばあ様は、ぴゅいっと鳴くと、」

『いくら空を飛びたいと言っても、鳥になるのはまっぴらごめんです』

『そうじゃろうなぁ…』

『じい様よ、今すぐに金色の神様の鳥にお願いをして、元の姿に戻してくだされ』

『わかったわかった』

貴音「じい様は、慌てて山へ出掛け、必死になって金色の神様の鳥を探しました」

P「…」

貴音「けれども、探しても探しても金色の神様の鳥は見付かりません」

貴音「結局、」

貴音「金色の神様の鳥は、二度とじい様たちの前に姿を現す事はなく、」

貴音「鳥になったままのばあ様と、暮らしたそうです」

貴音「おしまい」クスッ

貴音「如何でした?今宵の昔語は」

P「行き過ぎた幸せっていうのも、考え物だなぁと思ったよ」

貴音「何事も、程々が良いのかもしれませんね」

P「そうだなぁ」」

貴音「えぇ」クスクス

P「…」

P「で、だ」チラッ

貴音「はい?」

P「貴音は、幸せか?」

貴音「…やれやれ。またそのお話ですか?」クスクス

P「気になるんだよ」

貴音「ふふっ。さぁ?」クスクス

P「さぁって…なんだそりゃ」

貴音「幸せかどうかは置いておいて、」

P「いや、置いておいちゃダメなんじゃ…」

貴音「今、この瞬間が、」

P「うん?」

貴音「今、この瞬間が、わたくしにとって何物にも変え難い、大切な時間だという事には変わりありませんよ」

貴音「それこそ、立派な屋敷や綺麗な着物など要りません」

貴音「あなた様と過ごす、この瞬間が、大切なのですよ」クスクス

P「…そっか」

貴音「さて、あなた様。今宵もいいお時間」

貴音「おやすみなさいませ」

P「…あぁ。おやすみ」

P「なぁ、貴音?」

貴音「はいはい。なんでしょう」クスクス

P「今夜は、手を繋いで寝ようか」

貴音「…」キョトン

貴音「…ふふっ」クスッ

貴音「これで、よろしいでしょうか」ギュッ

P「あぁ」ギュッ

貴音「では、改めて」

貴音「おやすみなさいませ」

P「あぁ。おやすみ」

貴音「…」チラッ

P「…ぐぅ…」Zzz...

貴音「…ふふっ」ナデナデ

貴音「続きは、また別の夜に―」

はい。ここまでありがとうございました

今夜は、こんな感じで終わりたいと思います

書き溜めをしようかと思うので、一週間ぐらい間が開いてしまいます

失踪は絶対にしないので、生暖かい目で見てくれたら幸いです

六夜

貴音「あなた様」

P「うん?どうした?」

貴音「わたくしにとって、あなた様との出逢いは、特別なものなのです」

P「どうした?いきなりそんなこと言い出して」

貴音「いえ、先程まで、此度のどらまの台本を読んでいて、改めてそう思ったものですから」クスクス

P「あー、あのドラマな。あれ、結構ドロドロしてるからなぁ…」

貴音「一期一会の、あなた様とのこの出逢い。いついつまでも、大切にしていきたいものです」

P「今夜は、いつにも増して情熱的じゃないか」ナデナデ

貴音「さて、この想いを忘れぬためにも、ひとつ、昔語を語らさせていただきましょうか」

―――
――

貴音「現在よりも、もっと婿入りが当たり前であった時代の事です」

P「例えば、どれくらい昔?」

貴音「…そうですね。江戸時代辺りでしょうか」

貴音「その時代、長者の娘に婿入りをするという事は、極々当たり前の事でしたから」

P「ふぅん」

貴音「兎に角、そういった時代の事です」

貴音「とある長者の娘に、一人の若者が婿入りをしたそうです」

貴音「初めのうちは、それはそれは夫婦仲が良く、近所でも評判のおしどり夫婦であったそうです」

P「俺と貴音みたいだな」

貴音「ふふっ」クスクス

P「…なんだよ?」

貴音「いえいえ。さも、当たり前に言ってくださるものですから」クスクス

P「…いいから、続きは?」

貴音「はいはい」クスッ

貴音「ですが、五年…十年と…時が過ぎていくに連れ、妻は夫の事が何となく…そう、何気無しに、嫌に思えてしまったのです」

P「…」

貴音「そう。それこそ、顔を見るのも、嫌になるぐらいに」

P「……」

貴音「そこで、妻は町外れに住む易者に、相談に行きました」

『易者さん、お恥ずかしい話なのですが、私は夫の事が嫌で嫌で仕方がないのです』

『毎朝、毎昼、毎夕、夫の顔を見るのでさえ嫌で困っているのです。夫の顔を見ない様にするには、どうしたらいいでしょうか』

貴音「と」

P「ひでぇ女もいるもんだなー。旦那、何も悪いことしてねぇんだろ?」

貴音「もちろんですとも。夫は、妻を大事に大事にしていたそうです」

P「可哀想になぁ…」

貴音「そこで、易者はちらと妻の顔を見ると、」

貴音「じゃらじゃらと筮竹を鳴らし、答えました」

P「ぜいちく?なんだ、それ?」

貴音「易者が持っている、あのお箸を長くしたようか棒の束の事ですよ。あれを、筮竹と呼ぶのです」

P「へー」

貴音「易者は答えます」

『それはそれは容易い事ですよ』

『良いですか?まず、』

『月の良い晩に糸を紡ぎ』

『紡いだ糸を月の良い晩に織り』

『月の良い晩にその織を晒し』

『月の良い晩にそれを着物として縫い』

『月の良い晩にそれを御亭主に着せなさい』

P「…」

貴音「妻は、易者の話を聞いて大喜びで屋敷へ帰り、幾夜も掛け、その通りにやってみたそうです」

P「女って、怖い」

貴音「ふふっ」クスクス

貴音「さて、するとどうした事か」

貴音「その着物を着たまま、夫がふらりふらりと姿を消して、それきり帰ってこなくなってしまったのだそうです」

貴音「不気味に思った妻は、またも易者の元へと相談に行きました」

貴音「易者は、じゃらじゃらと筮竹を鳴らし、こう答えたそうです」

『ならば、』

じゃらりじゃらり

『月の良い晩丑満ツ時に』

じゃらりじゃらり

『六道辻へと向かい』

じゃらりじゃらり

『其処でしばし立っておいでなさい』

じゃらりじゃらり

P「六道辻?」

貴音「大まかには、あの世とこの世…此方彼方の境だとされていますが、この場合はどうなのでしょうね」

貴音「わたくしにも、地名なのか、意味通りなのか、はっきりとは分かりません」

P「こういうとこ、何気に曖昧で面白いよな。昔話って」

貴音「えぇ。言葉の意味を考える、それも昔語の良さの一つなのかもしれません」

貴音「さて、妻が易者に教えられた通りにしていると」

貴音「あたりは、しん、と静まり返り、月の光が蒼白く照っていたそうです」

貴音「妻が、辺りをちらりちらりと見ていると、道の向こうから」

ふらり、ふらり、

貴音「と、浮き立つ様に、妻の方へと近付いてきたそうです」

P「…」

貴音「妻が、じぃっと見つめると、それは紛れもない自分の夫が」

貴音「月の良い晩に着せてやった着物を着て」

貴音「何やら囁きながら、」

貴音「驚き、立ち尽くしている自分を透かし追い抜き、」

ふらり、ふらり、

貴音「月夜の晩に、消えていったそうです」

貴音「おしまい」クスッ

P「う~ん。後味わりぃ話だったなぁ…」

貴音「愛というものは、時の流れの中で如何様にも変わってしまうものなのでしょうか」

P「どうだろうなぁ…変わらないって信じたいけど、そうも言えないものなのかも」

貴音「…ふふっ」クスッ

P「うん?貴音?」

貴音「えぃっ」ムギュッ

P「わっ。いきなり抱き着いてくるなんて、珍しいな」

貴音「わたくしとて、女、なのですよ?」

貴音「愛する殿方に抱き着かずして、何に抱き着きましょうや」クスッ

P「そんなもんなのかね」ナデナデ

貴音「ふふっ。そんなもん、なのです。『旦那さま』」クスクス

P「…ん?いま…」

貴音「さて、旦那さま。今宵もいいお時間」クスッ

P「…」

貴音「おやすみなさいませ」

P「あぁ。おやすみ」

貴音「…」

貴音「…ところで、」チラッ

P「うん?どうした?」

貴音「わたくし、今宵はこのまま旦那さまに抱き着いて寝てしまいたい気分なのです」ムギュッ

貴音「よろしいですね?」クスクス

P「…仰せのままに。お姫さま」ナデナデ

貴音「ふふっ。良きに計らえ」クスクス

貴音「続きは、また別の夜に―」

はい。ここまでありがとうございました。

今夜は、こんな感じで終わりたいと思います。

七夜

貴音「あなた様。あなた様に語らさせて頂いた昔語、今宵で七夜めでございます」

貴音「今までの昔語は、如何でしたでしょうか?」

P「知ってる話もあったり、知らない話もあったりで面白かったよ」

P「今夜も聞かせてくれるんだろ?」

貴音「あなた様」

P「うん?」

貴音「わたくしが語る昔語、今宵で七夜」

P「や、それはさっき聞いたけど…」

貴音「ふふっ。七日七夜なのです」サスサス

P「…自分で自分のお腹撫でながら笑われると、ヤンデレみたいでちょっと怖いな」

貴音「さて、あなた様」

貴音「今宵で最後の」

貴音「『御話』」

―――
――

「遥か遥か昔の御話」

「遠い遠い異国の御話」

「異国の王は、女を信じることが出来ませんでした」

「何故ならば、信じた女に裏切られてしまったから」

「其れからというもの、異国の王は国の女一人ひとり共に一夜を過ごすと、明くる日その女を処刑するという非道を働いていたそうです」

「そして、ある夜、一人の女が王に宛がわれます」

「その姿は、王が統治する国の者ではなく、旅人ですら見たことの無い姿であったといいます」

「女は、王に言いました」

『此れから語るのは、一夜の御話』

「女は、王にぽつりぽつりと語ります」

一夜

二夜

三夜

四夜

五夜

六夜

「女は、一夜語り終えると、必ずこう締めたそうです」

『続きは、また明日』

「王は、続きが聴きたくて聴きたくてたまらず、その女を処刑せず、」

「一夜、また一夜と語らせたのだそうです」

「そうして、幾つ夜を迎えたでしょう」

「女が語る一夜の物語」

「それは、千夜とも」

「千と一夜とも…」

「そうして王は、国の女を処刑する事などすっかり忘れてしまったそうです」

―――
――

P「…」

P「オチは?」

貴音「ありませんよ?そのようなもの」

貴音「ただの、御話なのですから」クスクス

P「?」

貴音「さて、あなた様に伝えねばならないことがひとつ」

P「…なんだ?」

貴音「わたくし、実はその女なのです!」

P「…」

貴音「なのです!!」

P「……」

貴音「なので…P「や、もういいから」

貴音「…」

貴音「…ふっ。ふふっ。いいですともいいですとも。あなた様の仰有りたい事はよくよく分かりました」

貴音「あなた様が満足するまで、わたくしは語らさせていただきましょう」

貴音「それこそ、千夜などではなく!」

P「おー、ムキになる貴音って久々に見た気がする」

貴音「…」

貴音「そ、それではあなた様!」

P「うん?」

貴音「こ、今宵もいいお時間。おっ、おやすみなさいませ」

P「何だか締まらないシェヘラザードだなぁ」ククッ

貴音「…何か、仰有いました?」ムスッ

P「いいや?なにも?ただ、明日の夜も楽しみだなって」ニヤニヤ

貴音「むぅ…おやすみなさいませったらおやすみなさいませ!」プイッ

P「はいはい」クスクス

貴音「…もう知りません」グスッ

「…」

「女は、ある夜いつも通り王に語り終え、共に夜を明かしました」

「しかし、王が目覚めた時には、女の姿が消えていたのだそうです」

「女は、何者だったのでしょうか」

「王に語った千夜とも、千夜と一夜とも云われる寝物語」

「昔語とは、いつの時代も色褪せぬものなのでしょう」

『続きは、また明日』

はい。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

これで終わりです。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

またいつか、よろしくお願いします。

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