にこ「3年生看病」 (25)

絵里「はい、今日の練習はここまで。下校時間になったし、帰りましょうか」

にこ「はぁ……はぁ……」

花陽「に、にこちゃん、大丈夫?」

にこ「え、えぇ……平気よ」

海未「顔が真っ赤ですよ? 平気そうにはとても見えないんですが……」

穂乃果「そんなに今日の練習つらかったかな?」

真姫「にこちゃん、体力落ちたんじゃないの?」

にこ「そ、それはない! ……と、思う」

ことり「自信ないんだ……」


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にこ「そりゃそうよ。にこももう三年。18歳から人の体力は衰えて、しまいにはおばさんになってるんだから」

凛「えぇ!? そんな早くから落ちて行っちゃうの!?」

希「あくまで一説やから、あんまり気にせんでええと思うよ」

絵里「そう、それにトレーニング次第では、50過ぎてもライブやれるんだからね?」

にこ「むぅ……」

花陽「まあ、今日はもう終わりなんだし……にこちゃんも平気って言ってるし、たまたまにこちゃんがよく動いただけなんじゃない?」

真姫「あー、そっか、にこちゃん背丈小さいからね」

にこ「そうそう、背丈小さいからその分いっぱい動いて目立たないと……ってうぉおい!!」

真姫「見ての通りノリツッコミできる元気はあるみたいだし、いいんじゃない?」

穂乃果「じゃあ、明日のにこちゃんに期待大ってことで!」

にこ「う……そんな無邪気な目で見つめるんじゃないわよ……」

凛「じゃあ、また明日にゃ!」



―翌日―

絵里「みんな揃った?」

ことり「あれ? にこちゃんは?」

希「……来てないね」

海未「やはり、昨日のあれが少し心に来たんでしょうか?」

絵里「……メール、にこから……」

『風邪ひいちゃったみたい。証拠の写真』

絵里「……うわ、38度も熱が出たの?」

穂乃果「ええ!? もしかして、昨日から?」

凛「そんな状態で、あの練習についてこれてたってことかにゃ?」

真姫「やっぱりあの子、ただものじゃないわね……」

ことり「でも、風邪だなんて心配だね……お見舞いとか行ったほうがいいのかな?」

希「お見舞い? そんな程度のものじゃすまさへんで……絵里ち、行くで」

絵里「行くって……どこに?」

希「にこにーのおうち」

絵里「あー……わかったわ」

穂乃果「ちょっと待ってよ! 今日の練習は?」

絵里「3年生はパスね」

真姫「うえぇ? それはそれで急じゃない?」

希「そんだけにこちゃんがやばい状態ってことなんよ」

海未「どうしてそんなことがわかるんですか?」

絵里「うーん……同じ学年だからかも……?」

希「ほら、絵里ち! 急ぐで!!」

絵里「あ、ちょっ! 希、引っ張らないでってば!!」

―にこにー宅前―

希「ここやね」

絵里「……ねぇ、私まだ納得してないわよ?」

希「んー? 何に?」

絵里「なんで練習すっぽかしてまで、にこの面倒見ることにしたのよ。しかも二人もいる?」

希「じゃあ逆に聞くけど、なんで絵里ちはついてきてくれたん?」

絵里「う……それは……」

希「みんなの態度を見たとき、絵里ちはわかっとるって思ったから連れて行こうって思ったんよ」

絵里「……希はどうして気づいたの?」

希「んー、直感……かな?」

絵里「ふふ、私も。じゃあ、突撃するわよ」

ピンポーン……

ガチャッ

にこ「ああ……え、なんであんたたちが? ……熱だってメールはしておいたはz「看病するわ」……は?」

絵里「聞こえなかった? 今日一日看病してあげるって言ってるの」

希「うちと賢いかわいいエリーチカに見て貰えるんや。ラッキーなことなんよ?」

にこ「…………はぁ」

―にこの部屋―

にこ「つっても、にこが寝てるの眺めるだけだからね?」

絵里「ええ、わかってるわ。看病ですもの」●REC

にこ「ちょ、何してんのよ」

希「ほら、どうしたん? 寝るなら、早く寝たらええやん」●PEC

にこ「寝れるか!!つーか、希!!PECってなによ!?」

希「気にしたら負けや」

にこ「く……あんたのそんないい笑顔、なかなか見ないわよ」

絵里「さて……じゃあ私、にこのためにご飯作ってあげるわね」

にこ「え? そんな、いいのに……」

希「ええからええから。にこちゃんは寝とき」●REC

にこ「カメラを降ろせぇ!! そしてしまえぇ!!」

希「あれあれー? おかしいなぁ……にこちゃん、病気やのに思いっきりツッコんでくれるやん」

にこ「二人しかいないんだから、必然的にこうなるでしょ……とにかく寝るからね。ほら、カメラしまって。しまうところまで私に見せて」

希「はいはい……ほい、閉まったよ」

にこ「ふぅ……」

希(まあ、にこちゃんが寝てからまたカメラ取り出せばええよね)

―30分後―

絵里「あとは炊飯器が終わるのを待つだけね」

希「お、さすがやな絵里ち」

絵里「それほどでもないわよ。あ……三脚まで持ってきてたのね。希は何してたの?」

希「ここに置いてあるアイドルマガジン読んでた。ほら、絵里ちも見てみて」

絵里「ん? ……これ、すごい量マーカー引いてあるわね」

希「うん。『ここでカメラに対して斜めに』とか、にこちゃんなりの分析メモも書いてあるなぁ……」

絵里「やっぱり、めちゃくちゃ勉強してるのよね……」

希「正直、初心者用のDVD教材よりためになるよ」

絵里「私も読んでみようかしら?」

にこ「すぅ……すぅ……」

―さらに1時間後―

絵里「できました! エリチカ特性、おかゆでーす!」

希「スプーン、準備完了や!」

絵里「カメラしまった?」

希「……絵里ち、ウチがそんなに忘れっぽいとおもっとるん?」

絵里「ハラショーよ希……にこ、起きて、ほら、起きて……」」

にこ「ん……ママ?」

絵里(かわいい)

希(カメラまわしとけばよかった)

絵里「ママじゃなくて絵里よ。ほら……おかゆ作ったから」

希「ウチが食べさせてあげる。はい、あーん♪」

にこ「あー……へぶぼぉっ!!」

絵里「希!? なんでスプーン喉の奥に突っ込んだの!?」

希「やってもうた」

絵里「わざとよね!? 知ってるわよ、そういう顔はわざとの顔よ!!」

にこ「お、おえっ……うぷっ……」

絵里「にこ、大丈夫!? お願い生きて!! にこ!!」

にこ「もう何も食べてやんない! なんも信用しない!!」

希「あらまあ、それはちょっと言い過ぎちゃう?」

絵里「当然の反応よ!!

希「えー? でも……」



希「にこちゃん、風邪引いてないし?」

にこ「……やっぱり気づいてたのね」

絵里「気づいたのは私と希だけよ」

希「体温計なんて、日にち書いてないからいつの日にはかったんかわからんからな」

にこ「ごまかせないわねあんたたちは……」

希「それだけやないで」

絵里「わざわざ送ってくることが、おかしいと思ったのよ」

にこ「……え?」

絵里「風邪ひいちゃったから休むね、だけだったら、私もおかしいとは思わなかったわ。証拠写真って書いて送ってくるのって、なんだか私たちがそうしないと信用してくれないみたいじゃない」

希「実際何度か、ほかの子が病気とか用事とかで休んだ時、写真なんて張られたことなかったけど、にこちゃんは信じたやろ? 違うん?」

にこ「……ちがくないわ」

希「じゃあ、なんで休んだのか聞かせてくれる?」

にこ「……みんなにとって軽いはずのダンス、にこはいっつもへとへとになっちゃってて……それがやっぱり、みんなにとっては戦力としても邪魔かなって……思っちゃって……」

絵里「それ、本気で言ってるの?」

にこ「……え?」

絵里「にこができないだけで、みんなの邪魔になるって、本気で思ってるの?」

にこ「…………」

絵里「そんな風に思うような子が、μ’sの中にいると思うの?」

にこ「思わない……けど……」

絵里「じゃあいいじゃない」

にこ「で、でも……」

希「でも、やないやろ? にこにーは自分ができてないことが、ただ悔しかっただけや」

にこ「……うん、そう」

希「それを仲間がどうの、っていう理由でいかなくなるのは、ウチはちょっといただけへんなあ」

絵里「ね? にこが一番知ってるでしょ? あの子たちがどんな子か」

にこ「……わかってる」

絵里「じゃあ、やることは一つ。どんな逆風でも、根性持ってやりなさい。ほら、雑誌にこれだけマーカーひいてるし」

にこ「あ、み、見たの!?」

希「てへっ」

にこ「も、もーっ!!」

絵里「まあ、明日からきて全力で頑張るって言うなら、この話はほかの子たちには黙っといてあげる」

にこ「え?」

希「じゃあ、明日から頑張ろうね。ばいばーい」

にこ「あ、ちょ…………」

にこ「……おかゆ……絵里ちゃんの……」

にこ「はむっ」

にこ「……おいしい♪」

―翌日―

にこ「にっこにっこにー! 矢澤にこ復活にこー!」

穂乃果「ふわぁ! これ、本当ににこちゃんなの!?」

希「ふふふ、最高のお宝よ」

花陽「この寝顔……たとえるなら、天使ですね!!」

にこ「あんたたち何してんのよー!!!」

絵里「ふふっ♪ ちょっとした罰よ!」

真姫(…………)

真姫「ちょっと、希?」

希「ん? どうしたん?」

真姫「これ、DVDに焼いてくれない?」

希「え」

―END―

3年生がマジでかわいくて2作目。

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