小鳥「だぁれもいない事務所」 (19)
――765プロ事務所
――20:30
「こんなに、好きなのに」
分かって、もらえない。
「こんなに、愛してるのに」
知って、もらえない。
「はぁ…難しいなぁ…」
ほんと、恋愛って、難しい。
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どうしたら、分かってもらえるのかな。知ってもらえるのかな。
「好き」
言葉にするのは簡単。だって、今はいないから。
「はぁ…」ハァ...
私が、好きになった人。
好きに、なっちゃった、人。
「この歳になって…」
この歳になって、また、恋をするなんて思いもしなかった。
これでも、人並みの恋愛はしてきた。けれど、けれど。
…。
「あーぁ…馬鹿みたい」
事務所の外はもう真っ暗。だぁれもいない事務所。
昼間の喧騒が嘘みたいに、静か。
何だか、少し、寂しい。こんなの、よくあることなのに。
今夜は、特に寂しい。
「…」
窓の外を見ながら思うのは、あの人。
年下の、男の子。
…ふふっ。男の子って言ったら、怒るかしら。
…。
……。
「ふふっ」クスクス
うん、怒らないかな。ただ、ちょっと困った様に笑ってそう。
「…」
なぁんて。
年甲斐もなく、妄想なんか、してみたり。
…。
「ばか」
ばかばか。
元はといえば、あの人が悪い。私を、ここまで好きにさせて。
こんなに、悩ませて。
…好きになったのは、私の責任なんだけど。
でも、仕方ないじゃない。好きになっちゃったんだから。
一緒に仕事してる内に、
一緒に飲んでる内に、
あんなに真面目で、
あんなに笑顔な、
顔を見て、おしゃべりをして過ごしていたら、好きになっちゃっても仕方がないと思うの。
「…」チラッ
今は20時50分。だぁれもいない、夜の事務所。私しかいない事務所。
今だって、あの人の仕事はもう終わってる筈なのに…
―ガチャッ、
「小鳥さん!一緒に夕食食べません?ほら、お弁当も買ってきましたよ!」
小鳥「ほら、こうやって」クスクス
来てくれる。
だから、ずるい。
「どうしたんです?いきなり。あ、もしかしてあのまま直帰したと思いました?」
私のこんな気持ちも知らないで、ずかずかと、私の内に入ってくる。
小鳥「いえいえ、何でも。お弁当、ありがとうございます」
小鳥「…それとですね?プロデューサーさん」
「はい?」
小鳥「仕事、一区切りつきましたから、付き合ってくれません?」クスッ
「…あー、明日の朝、起きれなくなっても知りませんよ?」
小鳥「ふふっ。そう言ってくれるって事は?」
「もちろん、付き合いますよ?一人で飲ませたら小鳥さん、何するかわかりませんし」
付き合う。
小鳥「…」
だから、いつか、
「小鳥さん?どうしました?急にだんまりしちゃって」
小鳥「付き合って、くださいね?」
「だから、付き合いますって」
小鳥「ふふっ。ありがとうございます」
短いですが、終わりです。
それでは、ここまでありがとうございました。
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