ほたるちゃん14歳、及川さん14歳、桃華ちゃま13歳って設定でお願いします。
あと及川さんの酪農設定どっかに吹っ飛びました。
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■■序章
梅雨入り前の六月。一年でもっとも長い陽も地上に長い影を落とすようになった時刻、
湿度の高い外気に引けを取らない熱い吐息が黒髪艶やかな少女の頬を撫でた。
真っ白なシーツに横たえられた彼女は既に一糸もまとわぬ姿で、上に覆い被さる相手の鼓動を肌で感じている。
これから行われる愛の行為への大きな期待と一抹の畏怖で潤みがかったまなじりが、吐息のくすぐったさに閉じられた。
黒髪少女がわずかに肩をすくめると、それだけで恋人の華奢な胸板に挟まれた、年齢不相応な胸丘がたわむ。
「雫ちゃん、……入れてもいい?」
伺いをたてるのはまだ声変わりをしていない少年のような声。緊張からか念願の時を迎えた感動からか、にわかに震えを伴っており、ひ弱で華奢な印象を与える。
雫と呼ばれた少女よりも背丈は低く、本来の年齢よりひとつふたつ年下に見られることも少なくなかった。
しかし下腹部に携える砲身は、それらのイメージをひと目で塗り変えるほどの強烈な肉槍であった。
先端は自身のヘソに届きそうなほど。胴回りにおいては標準的か長身のせいで若干細身な印象を与えるものの、突槍と評するにふさわしい亀頭の返しが、肉茎一回り以上の径で少女の虎口を狙っていた。
鈴口から漏れる透明液はまるで獲物を目の前に涎を滴らせる野獣のよう。
シーツに背中を預ける少女はあまりにも直接的な問いに頬を朱に染めながらも、ゆっくりと首を縦に振った。
「うん……。ほたるちゃんとひとつになりたい」
雫はほたると呼んだ人物の首に腕を回し、唇を寄せた。唇同士が触れ合うだけの子供っぽいキスは一瞬だけ。
すぐさまわずかに開いた歯の隙間を割って、雫の味覚器官が挿入された。
重力によって滴るほたるの唾液を自身のそれとカクテルしながら喉を鳴らす。
舌をこすり合わせるたび、口内に溜まった甘露を嚥下するたび、雫のまなじりはうっとりと下がっていく。
ほたるも負けじと雫の口腔で舌をかき回す。泳ぎを覚えたての子供のようなめちゃくちゃなバタ足でも雫に幸福を与えるには十分だった。
「ほたるちゃんってキスは結構乱暴だね」
「雫ちゃんが上手すぎるの……」
挿入を目前に生じていた緊張感はそれでいくらか解消されたようで、二人の表情から堅さが抜けていた。額をくっつけあって、お互いの瞳を瞳の中に見る。
「私は大丈夫だから、……きて」
ほたるが彼女の下腹部に目を向けると、十分な前戯はしていないはずのそこは意外にもほたるの砲身を受け入れるだけの準備はできているようで、シーツに淫密の染みを作っていた。
キスだけでこんなに? 問おうとしたほたるの唇が再度塞がれる。
舌をくゆらせるたび彼女の部分から愛液が漏れ出るのが、触れ合ったほたるの肉茎から伝わってきた。
「ちゅ、ちゅるる……。くちゅ、れろれろれろ……。ね、ほたるちゃん……、このまま、して?」
唇をほとんど離さないまま雫がつぶやく。
このまま、ということは目視なしで挿入を果たすということになるのだが、まだ経験のないほたるには難易度の高い提案だった。
それでも彼女のお願いとあれば叶えないわけにはいかない。
口唇愛撫を享受しながら腕を伸ばしオトコノコの角度を調整する。
幸い、雫も片手を添えてくれて入り口へのナビゲートをしてくれた。
ほどなく、ぎこちないながらもなんとか亀頭の三分の一ほどが埋まる、入り口らしき場所を見つけることができた。
それまでほたるの口内でいたずらを続けていた侵入者も宿主の方へ引っ込み、唇だけを合わせた神妙な状態になっている。
あとはこのまま腰を押し進めるだけ。初めてであるはずの雫に負担をかけないよう、ゆっくり慎重に身体に体重を載せていく。
亀頭の一番太い部分が彼女の胎内に収まったとき、合わせっぱなしの雫の口からかすかな呻き声が伝わってきた。
苦痛を感じているのかと腰を止めると、それに気がついた雫が舌を伸ばしてほたるのそれを子供の頭を撫でるようにあやした。
『気にせず入ってきて』そんな意思が感じられる。キスしたままの挿入は悲鳴を抑えるためのものなのかもしれない。キスさえしていれば意味のある言葉は紡げなくなるから。
それならば、彼女が痛みに苦しむ時間を少しでも短くしたほうがいいのではないか。
そう判断したほたるはベロを雫の口内に押し込み味蕾同士をこすりあわせ、そちらに意識が向いている瞬間を狙って一息に最奥への挿入を果たした。
かすかに繊維状のなにかを押し破る感覚があったのとほぼ同時に子宮口へ接吻を施した。
「うぅっ……くっ……!」
雫の口内が窄まりほたるの舌に前歯が突き立てられる。
そのまま噛み切られてしまうかもしれない痛圧に一瞬ヒヤリとしたが、雫が感じているはずの痛みを共有できると信じて呻き声を漏らさまいと必死にこらえた。
腰同士をぴったりとくっつけあったまま、雫が落ち着くのを待つ。
十数秒ほどたってようやく舌への噛みつきがおさまり、幾分おだやかな呼気が感じられるようになった。
前歯での拘束から解放されたため、一度自分の口内に引っ込めて新たに唾液をまぶす。
幸い裂傷は発生していないようだった。出血ざたになると返って雫に気を負わせてしまいそうなので、これはありがたかった。
ひくひくと腹筋を悶えさせて侵入者を受け入れようとしている雫の意識をこちらに向け直すため、ベロを伸ばして彼女のそれを絡めとる。
子供同士が手をつなぐように、きゅっきゅ、と揉んであげると軽い錯乱状態も落ち着いてきたようだった。
「雫ちゃん……。まだ、痛い……?」
「少しだけ……。でも、大好きなほたるちゃんとひとつになれたことが嬉しいから……」
負担は決して軽くないはずなのに、健気な言葉を与えてくれる彼女の笑みに、胸が締めつけられる。こうしてひとつになれたことを心から幸せに思う。
今日の今日までコンプレックスの塊だった自分の身体が、こんなにも素晴らしいものだと教えてくれた彼女には感謝の言葉もつきない。
ほたるは改めて自分の身体に視線を移した。すこしばかり膨らんだ、なだらかな双丘。ほっそりとしたメリハリのない胴体と下腹部に異質な存在感を放つ男性器。
その下部には女性器もあつらえられていた。男と女の両方の生殖器を持つ、異形の身体がほたるのコンプレックスであった。
「雫ちゃん、私ね……。私、なんでふたなりなんて身体に生まれてきたんだろうって、ずっと悩んでたの」
今も雫の胎内で脈打つ男性器。これさえなければ、普通の女の子で済んでいたのに。
そう普段から悩み続けていた。けれど、こうして雫が受け入れてくれたことでようやく自分の身体の存在意義を見つけることができた。
「もしかしたら、ほたるちゃんは女の子と幸せになるために生まれてきたのかもしれないね」
冗談めかした顔で雫が囁いた。
「それが私で本当に良かった」
ぎゅっと頭を抱きしめられ、無上の安心感に涙腺が役割を放棄してしまう。
「でも、ほたるちゃんにひとつだけ伝えなくちゃいけないことがあるの」
「なぁに?」
これからどんな難題を与えられたって乗り越えていけるだろう。そんな確信のままに、雫の言葉の続きを待つ。
「これ、夢なんだ」
「え?」
次の瞬間。ほたるは真っ暗な空間へ放り出された。
■■1章
「う……んん……」
本来心地よいはずの睡眠は、下腹部の違和感で強制的に中断された。
違和感の原因を探ろうと腰を動かすと、ヘソの下あたりにべったりとはりついた粘度高めの液体がパジャマの裏地に触れたのが分かった。そしてほんのり漂う、栗の花の香り。
「うわ……」
その感触でなにが起こったかを理解できた。睡眠中にエッチな夢を見ていたことによる、夢精だ。
下着から身を完全にせり出したオトコノコの部分は目標を定めずにところかまわず欲望をまき散らしていた。
主に自分の下腹部とパジャマの裏地、あとおそらくシーツへ。掛け布団代わりのタオルケットまで被害は及んでいないようだが、むしろシーツの交換の方が面倒くさい。
これだけ遠慮なく出したのならその快楽や夢の内容ぐらい覚えていてもいいものなのだが、これから処理をしなければならない手間を考えているうちに、あいにくとそれらは霧散してしまっていた。
諦めムードを携えながら、枕元の時計を見やる。デジタル表記は学園に登校するために普段セッティングしているアラームの時間より三十分ほど前を示していた。
「はぁ……。何度目だろう、これで」
小学校を卒業して、今の学園に入学して。そのころから自分だけについているオトコノコの部分の成長も進んで。
ひとつ学年があがった時期を境に、月に一、二度ほどこうして朝から陰鬱な気持ちになるようになった。
「ひとまず、着替えよう……」
シャワーを浴びてしっかりとニオイを消さないと学園で自分のヒミツがバレてしまう可能性がある。
ベッドのシーツをはがして着替えを片手に脱衣所へと向かうだけの時間があるのは不幸中の幸いだろうか。
@
浴室で十分に泡立てたボディソープでお腹のあたりをしっかりと洗い流し、朝の失敗の証拠隠滅を済ませる。
ついでに洗顔なども済ませてしまって、せめて表面上だけでもさっぱりしておくことにする。
身体に浮かぶ水滴をタオルで拭き取りながら、脱衣所の姿見に映ったつくづく面倒な自分の姿を眺める。
同学年の友人と比較して、どちらかというと低い方に該当する身長。没個性な首筋に触れない程度のショートヘア。
下手をすれば小学校高学年の子たちに負けてしまうかもしれない、薄っぺらな胸の膨らみ。メリハリのほとんどない腰元。
活動的とは言えない日常のためあまり陽に焼けず、ともすれば病弱にも見える白い肌。
唯一自慢できるのは、すらっとした細身の脚だろうか。運動不得意な棒きれのような肉付きの薄い脚、と言えるかもしれない。
レディと称するにはほど遠く、子供と少女の中間のような体つき。
これから成長することを切に願ってしまう、貧相でちんちくりんで、ロリコンの人にしか魅力が見つけられないような私の身体には一カ所だけ、嫌でも人目を引いてしまう誰にも言えないヒミツがあった。
それが、下腹部に君臨する……いわゆる、オトコノコの部分。
半陰陽とかふたなりとか両性具有とか、そんな言い方をされる身体なのは理解している。
おっぱいは大きくないし陰唇の発達もまだまだだけれどベースはれっきとしたオンナノコで、下腹部にだけオトコノコの部分がある身体。
睾丸はなく、ちょうど陰核の真上あたりからにょっきりと肉茎が生えている。産まれた頃からずっとついているもの。私自身の不幸体質を具現化したような存在。
インターネットで見た画像や男の人の体験談によれば、形状や機能は男性器のそれとほとんど変わらないらしい。
エッチなことを考えるとそこに血液が集まってしまうのも一緒だし、今朝のように射精することもできる。
おしっこだけはオンナノコの方から出る理由が自分でもよく分からないけど、生まれつきそうなのだから今更疑問に思うこともでもない。
ただ、ひとつ不便なのは。
「んん……っ」
腰元を拭くためにタオルで触れたぐらいでも快楽が発生してしまうほど、敏感なこと。
普通の男の人でもこうなのだろうか。私に兄弟はいないから、具体的な比較ができない。
このふたなりの部分は平時であれば五センチほどのサイズなので女性用の下着に納めておくことができるのだが、膨張を始めてしまうと三倍以上のサイズに膨れ上がり、下着を押し破らんばかりに自己主張をする。
そうなってしまうと、手で撫でさするなどして射精まで導くか、二、三十分ほどかけて心を落ち着かせるかしないと元には戻らない。全く持って不便な身体だと思う。
私がこんな中途半端な身体であること知っているのは、一緒に住む両親と、お隣さんの同い年で幼なじみのクラスメイトぐらい。
地方で暮らしている祖父母は知っているんだったっけ?
もしも他人にこのことがバレたら、びっくり人間ショーで見せ物にされて最後には謎の実験施設で実験台にされちゃうぞ、とお父さんから冗談めかして伝えられたことはあるけれど、こんな異質な身体のヒミツを他人に知られたら現実にどうなるかぐらいはもう理解できている年齢のつもりだ。
友達が私を避けるとか、イジメの対象になるぐらいならまだぬるい。
家族まとめて迫害されたり、下手に注目が集まって拉致誘拐、陵辱なんてこともあるかもしれない。
どこかのエッチな小説本みたいに。
ぶるり、と背筋が震えた。
いくら夏を目前とした六月の陽気であっても、気温が上がりきっていない朝にシャワーの水滴が残ったまま棒立ちしていては風邪を引いてしまう。
妙な被害妄想はやめにして早く着替えてしまおう。精液のついたパジャマとシーツは一応その部分だけ別にして手洗いをしておく。
それにしても夢精をしてしまうなんて、よっぽど溜まっているのだろうか。週に数回は自分で自分を慰めて、吐精させているはずなのに。
@
制服に袖を通し、朝食を済ませてすこしばかりダイニングでくつろいでいると、玄関の呼び鈴が鳴った。
戸の開かれていない玄関の向こうから声が聞こえてくる。
「ほたるちゃん、おはよー」
「おはよう。今行くね」
少々声を張って訪問者に返事をし、ダイニングに用意しておいた通学鞄を手に掴んで玄関のドアを開ける。
声の主をわざわざ確認するまでもなく誰が誰に用事で訪ねてきたかは分かる。もう七年以上もこのやりとりを続けているのだから。
「おまたせ、雫ちゃん」
扉を開けた先で私を待っていてくれたのは、幼なじみでクラスメイトの及川雫ちゃん。
私の身体のヒミツを知っている、唯一の友人でもある。家がお隣りで両親同士も仲がよく、物心つく前から一緒に遊んでいた間柄。
小学校の頃からはこうして雫ちゃんが朝迎えに来てくれて一緒に登校するのが常となっていた。
何事にも消極的でネガティブな私と違って、雫ちゃんは優しくて行動力があって朗らかで、なにもかも私と正反対というか、ずっとお姉さんというか。
隣で並んでいて姉妹とか先輩後輩の間柄だと認識されることも少なくない。
通学路を二人並んで歩きながら、車道側の彼女に視線を向ける。
女の子のわりには短くまとめられている黒い頭髪。
私自身もショートに揃えているつもりだが、雫ちゃんのそれは耳がはっきり露出するほど。
ほのかにシャンプーの香りがする。しゃんと背筋を伸ばして歩く胸元で、学年一とか学園一と噂されるほどの膨らみが歩調にあわせてわずかに震えている。
スカートから伸びる脚は健康的な肉付きで、膝上の黒ソックスに包まれていた。
それでいて成績は上から数えたほうが早い。こんなにも非の打ち所がない人物の隣を、私なんかが歩いていていいのだろうか。
学校中の誰もが憧れる美少女に密かな恋心を抱いている人間は校内に少なくないと聞く。実のところ私もその一人であった。
物心ついたときから一緒に過ごしてほんわかとしたぬくもりに触れ続けていて、いつからその友達感覚が恋愛感情に発展したかはもう覚えていない。
幼なじみだから好きになったのかもしれない。仮に今の学園で唐突に出会ったとしても、きっと彼女のことが好きになっていただろう。
とは言えその気持ちを打ち明けたことはなく、雫ちゃんにとってはたくさんいるファンの中の一人としてしか認識してくれていないかもしれないが。
片想いのままいられるのが幸せなのだと思う。
幼なじみという関係を壊してしまうのは私の身体の秘密を共有してもらっていることもあり、非常にリスクが高い。
雫ちゃんにとっても私は気のおけない友人として捉えてくれているようだから、ファンの一人であるとバレてしまわないよう、この恋心はずっと胸に秘めておかなくてはいけない。
「私の顔になにかついてる?」
「あ、や。ううん、そうじゃないけど」
まじまじと見つめすぎてしまったらしい。
普段から彼女のことを意識することは多いが、今日はどうしてか目が離せなかった。
どうしてだろうと記憶を掘り返してみると、わずかに今朝の夢の断片が得られた。
「今日、雫ちゃんが夢に出てきたなぁって思って」
「へぇー。私、何してたの?」
「ううん……。そこまで覚えてない……」
「えぇー、気になる」
「どうして夢ってすぐ忘れちゃうんだろうね。私も雫ちゃんが出てきた夢ならずっと覚えていたいのに」
本当に心からそう思う。雫ちゃんと寝ているときにも逢えるなんてどれだけ幸せだろう。それを覚えていない自分が悔しい。
「今度私の夢にほたるちゃん出てきたら教えてあげるね」
「うん」
そのときはぜひとも恋人同士結ばれた二人でありますように。
@
今日の授業の話とか、隣のクラスの誰々と誰々がつき合っているらしいとか、二学期に行う生徒会長選挙に雫ちゃんが推薦されているとか、そんな他愛もない話を続けながら三十分ほど歩くと私たちの通う学園が見えてくる。
下駄箱で靴を上履きに履き替えていると、妙に校内が騒がしいように感じられた。
どうやら昇降口の近くにある学内掲示板のあたりに人が集まっているらしい。
「なんだろう?」
「掲示板ってことはー……アレかな」
「アレなのかなぁ」
雫ちゃんは嬉しそうに声を弾ませている。
興味あるなしを別にしてもその掲示板の前を通過しないと私たちの二年生の教室がある三階にはたどり着けないので、そちらに足を向ける。
案の定、学内掲示板の前には十数人の生徒たちが集まって、掲示板に大きく貼られたB2サイズほどの張り紙に注目していた。
普通の掲示が大きくてもせいぜいA3用紙であることを考えると、その二倍以上の用紙が使われていることになる。一体どこから調達しているのだろう。
人だかりの向こうに書かれている内容は用紙のサイズと見出しの大きさもあって、身長の低い私でも読み取ることができた。
「3―Aの鈴木と1―Dの佐藤の交際が発覚。姐さんカップルのなれそめに直撃……。愛の学内新聞」
「おー。剣道部主将の鈴木先輩、彼氏できたんだぁー」
鈴木先輩といえば、身長が高く鋭い目つきが特徴で剣道のことになると自分を含め後輩にもとても厳しいと噂の、お堅い印象のある先輩だったはずだけど、そんな彼女に年下の恋人ができたらしい。
お相手の一年生は草食系男子を絵に描いたような男の子だけど、家どうしが近いこともあり幼い頃から仲がよく、彼がこの学園に入学したことをきっかけに鈴木先輩の方から告白……。
と、そのような経緯が紙面に書かれていた。記者名は『桜愛』とだけ記されていた。
私たちが先程アレと呼んだ、この愛の学内新聞は今年度になってこの学園に貼られるようになった非公認の学内新聞だった。
どこかの誰かが校内に散らばる愛を取り上げ、こうしてスクープのように非定期に紙上掲載をしている。
もちろん非公認なので教師の目に留まると剥がされてしまい、それ以降読むことができなくなる短命な新聞のため、注目度は意外と高い。
というよりも隣で目を爛々と輝かせて紙面を読んでいる雫ちゃんが読者の一人であった。
取り上げられたカップルにとっては迷惑なゴシップではないかと思うのだけど、この新聞に取り上げられることは校内公認カップルとなるのと同義なため、できたてほやほやのカップルにとっては幸せのおすそ分けとか、高タイミングでの宣伝といった感覚らしい。
どこかの新婚さんをいらっしゃいする番組に出る人たちの心境に似たものなのだろうか。
加えて、取材はしっかりしているらしく、これまで誤報が掲載されたことはなく、突然発行され始めた新聞であるが徐々に信頼度と知名度を獲得しているようだ。
色恋沙汰に興味津々な私たちの年頃の需要も人気の一つなのだと思う。
記事を眺めている制服の後ろ姿を見るとほとんどが女の子で、男子は一人二人いるぐらい。
その男子も女の子の付き添いで連れて来られただけのようだ。
ときたま電子音が鳴っているのは、おそらく紙面を携帯電話のカメラで撮影してあとで読んだり、友達に内容を伝えるたりするのに使うのだろう。
過去に私の携帯電話にもその画像がメールで回ってきたことがある。
「やっぱり桜愛って記者さんは、一年の子なのかな」
あらかた内容を読んだらしい雫ちゃんが、こちらに語りかけてきた。
「そうなんじゃないかなぁ」
愛の学内新聞が貼りだされるようになったのは今年度の四月を迎えてから。つまりバーーーローー年生が入学してからの話だ。
で、その新入生の中に『櫻井』という苗字の一年生がいるという話を聞いたことがある。新聞記事の記者名は桜愛という人物。
サクライとサクラアイ。イコールでつなげるには少々安直すぎるかもしれないが、推理小説でもないのだから現実はこんなものなのかもしれない。
「なんにしても、お幸せになってほしいね」
言われてもう一度紙面に目を向ける。ギャップのあるもの同士の幼なじみカップル。どこか私と雫ちゃんにつながるものがあるように見える。
「うん、本当に」
幼なじみという共通点だけで親近感を覚えてしまう私はすこしばかり単純なのかもしれない。
@
「それでは先週のミニテスト返しますよー」
お昼ごはんが終わって午後の授業が始まり、教壇の上で数学の先生がプリントの束をまとめて出席番号順に名前を呼んでいた。
はっきり言って数学は苦手だ。数学に限った話ではないのだけれど、特に数学と英語の成績はよろしくない。
かと言って体育や美術の成績がいいかと問われればそうでもない。学業全般が低成績なのである。
勉強することを放棄しているわけではないのだけれど、この学園に入ったころから急激に成長し始めた私のオトコノコの部分が頻繁にうずくのがよろしくない。
そのせいで勉強に手がつかず、元々成績の良くなかった私はさらに下の方へと落ちて行っているのだ。
ここしばらくで向上したのは握力だけではないだろうか。しかも利き手限定で。
「白菊さん、白菊ほたるさん。取りに来てくださーい」
「あ、はいっ!」
ミニテストの返却が嫌でうじうじしていたらいつの間にか自分の名前が呼ばれていた。
せめて現実を受け入れて苦手の克服ぐらいしなければいけない。
今のところなんとか赤点は免れているけれど、その程度で満足しているわけにはいかない事情があった。
「次はもうちょっと頑張りましょうね」
「はい……」
プリントを受け取って点数を確認する。十点満点のミニテストで、五点。
授業の内容を復習するだけの、解けてある意味当然の問題で五点はかなり低い方に属する。
教壇から自分の席に戻る途中、雫ちゃんの席の隣を通る。
すまし顔な雫ちゃんの表情を見るに、おそらくは満点か、せいぜい一問落としたぐらいだろう。成績優秀な彼女を見ると自分が情けなくなる。
そんな私の心境を察してくれたのか、雫ちゃんが小さく声をかけてくれた。
「また今度一緒に勉強会しようね」
「うん……」
雫ちゃんの気遣いがありがたい。でも、ごめんね。
私いつも勉強会のとき、雫ちゃんのおっぱいしか見てなくてほとんど勉強が頭に入らないんだ。
それでいて夜になればその記憶を頼りに自慰にふけってしまう。我ながら見事な悪循環だ。
苦手な数学が終わったあとは、これまた苦手な体育。来週からは水泳が始まるんだったっけ。
性欲盛んなオトコノコの部分が反応してしまわないように、雫ちゃんから視線を逸らさなければならない時期がやってくる。
「憂鬱だよぅ……」
小さなつぶやきは誰に聞こえるでもなく教室の中で消えていった。
@
一日の最後の授業は体育館でバスケットボールの体育だったけれど、あんな重くて大きいボールを投げ合う球技に私がついていけるわけがなかった。
それに雫ちゃんの大きなお胸が上下左右に弾むのが目に毒すぎて。
六月の梅雨に入ろうかとしているジメジメした時期の体育は本当に辛い。
陽の下で運動しないだけ幾分マシなのだろうけれど、湿度が高いために少し走っただけで汗が止まらなくなる。
短距離のダッシュが多くなる球技は体操服に汗を吸わせるには十分すぎる種目だった。
放課後に運動系の部活に参加する人もいると思うとそれだけでげんなりしてしまう。
どこからそんな体力が湧き出てくるのだろうか。少しぐらい分けてくれてもいいと思う。
ちなみにそういう生徒の何人かは体操服のままホームルームの時間を過ごしている。
汗をかいた体操服をもう一度着直すのに不快感を伴うのはよく分かるので、担任の先生も止めようとはしなかった。
文化部に所属していたり、私のようにとくに部活動に参加していないクラスメイトは既に制服に着替えて体育のあとの気だるさに耐えながら担任の先生からの連絡事項などを聞いていた。
ふと、雫ちゃんの席を見ると彼女の机の上に畳んだままの体操着が置かれていた。
汗をじっとり含んだ体操着をそのまま通学カバンにしまうのを嫌って、少しぐらい乾かそうと休み時間に畳んで放置しておく生徒は少なくない。
雫ちゃんもその一人だった。
私はそもそも途中から雫ちゃんのお胸や太ももばっかりを見つめてしまったために下腹部が疼痛を覚えてしまい、途中から見学になっていたためそんなに汗をかいていなかったから、既にカバンの中にしまってある。
ひと通りの連絡が終わって、号令。ようやく放課後になった。
「雫ちゃん、帰ろう」
「うん。ちょっと待ってね。支度しちゃうから」
私はいわゆる帰宅部。雫ちゃんは生徒会に所属しているため部活動はやっていない。
そのため雫ちゃんに用事がなければ一緒に帰宅するのが日課になっていた。
教科書やノートをカバンに詰める雫ちゃんを待っていると、教室の入口から人の呼ぶ声が聞こえた。
「及川さん。及川さん、います? 生徒会でちょっと仕事ができちゃったから、急ぎで手伝ってもらいたいんだけど」
「あ、はい。……ごめんね、ほたるちゃん」
生徒会の先輩が雫ちゃんを呼びに来てしまったようだ。
入り口まで要件を聞きに行った雫ちゃんがいったんこちらに引き返してきた。
「一時間ぐらいで終わる用事みたいだから……、どうしよう。待っててもらうにはちょっと長いと思うから、もし待ちくたびれそうだったら先に帰っちゃってて」
顔の前で両手を合わせて申し訳なさそうな表情をする雫ちゃん。
本人がやりたいから所属している生徒会の仕事なのだから、わざわざ謝る必要もないのに。
「ううん、それぐらいなら待ってる」
学校から家までの道のりを一人で帰るのはわりと寂しい。
一時間ぐらいなら図書室などで時間を潰して雫ちゃんを待っていた方がいい。
私が生徒会の手伝いをして仕事自体を早く終わらせる方法もあるにはあるのだろうけれど、あいにくそれだけの体力は残っていなかった。
仮に体力が残っていたところで部外者が首を突っ込んでいいものでもないだろう。
「そっか。じゃあなるべく早く終わらせるね。でも、長引かない保証はないから……暗くなる前には帰ってね?」
「わかった」
そう言って雫ちゃんは、呼び出しにきた生徒会の先輩と一緒に教室を出て行った。
「……あれ、カバン置きっぱなしでいいのかな」
急な用事で、と緊急で呼び出されたためか、彼女が先ほど帰り支度をしていた荷物がそっくりそのまま机の上に置かれている。
カバンの口は閉じているし、出しっぱなしになっているのは汗濡れの体操服ぐらいだから、これを盗んでいく人はいないだろうけどいささか不用心には見える。
この学園は平和だから窃盗の被害なんて今まで聞いたことはないし、お財布は基本的に制服のポケットにしまって肌身離さず持ち歩くのが校内のルールになっているから、生徒会所属の雫ちゃんがそうしていないことはないだろう。
「んー……。生徒会室に届けに行けばいいのかな」
生徒会室は確か一階の端の方にあったはずだから、そこまで届けに行こう。
もしかしたらカバンの中の荷物を生徒会で使うかもしれないし。
@
「雫ちゃん、居なかったなぁ」
二人分の荷物を持って生徒会室まで出向いてみたものの、その教室には鍵がかけられていた。
どこか別の場所での用事だったらしい。そうなると、雫ちゃんと連絡の取りようがない。
学校内では緊急の用事を除いて携帯電話の使用は禁じられているため、電源を切っておかなければならないことになっている。
もちろんそれを無視して授業中とか、それこそ朝の校内新聞の写真撮影のようにこっそりと校内で使う人は多いのだけれど。
雫ちゃんは真面目な子だし生徒会の人だしで学校内ではきちんと携帯電話の電源を切っている優等生だった。
「まぁ、このまま教室で待っていようかな」
自分の教室と生徒会室を往復して約十分。
その間だけでクラスメイトはみんな帰路についたり部活へ向かったりで教室の中は私一人しかいない状態になっていた。
当初は図書室で本でも読むつもりだったけれど、雫ちゃんの荷物を勝手にどこかに持っていくわけにもいかないし、教室に置きっぱなしにしておくわけにもいかない。
雫ちゃんの机の上に、最初あったように荷物を並べなおす。
そしてなんとなく、雫ちゃんの席に座ってみることにした。
私の席は窓際の後列、雫ちゃんの席はちょうど教室の真ん中あたり。
黒板からの距離がちょっと違うだけで新鮮さを感じられる。
「雫ちゃんが見てる景色ってこんな感じなんだ」
席順は春先にくじ引きで決めたランダムな席だから、雫ちゃんと隣同士になることは叶わなかった。
けれど、私の席が彼女の斜め後ろ側になったおかげで授業中に勉強に真剣に取り組む雫ちゃんの横顔を眺められるのでかなりいい場所を引いたと思う。
……勉強、もうちょっと真面目に取り組まないとダメだなぁ。黒板を見る時間を削って雫ちゃんを目視しているから成績がよろしくないのかもしれない。
時計を眺めてみてもまだ雫ちゃんと別れてから二十分も経っていない。
このままあと四十分近く時間を潰すのはさすがにしんどい。
ついさっき不真面目な勉強態度を反省したのだから、今から数学のミニテストの復習をするのはどうだろう。
こっそり雫ちゃんの席を借りて勉強するのならば、雫ちゃんパワーを借りて勉強が捗るかもしれない。
これならきっと楽しく勉強ができるに違いない。
そうと決まれば善は急げで自分のカバンから今日のプリントを取り出して、雫ちゃんの机の上に広げようとする。
「ちょっとだけ、どかさせてね」
雫ちゃんのカバンを机の横のフックに引っ掛けて、卓上のスペースを広げる。
体操服はどうしようかな。もう既に汗濡れは乾いているようだから、カバンの中にしまっておいても問題はないだろう。
でも、人の洋服を勝手にいじるのはあまりよくない気もするので、机の中に一時退避させておこうか。
カバンにしまうか、机にしまうか。体操服の脇の部分を両手で持ってしばし悩む。
『及川』と雫ちゃんの苗字が記されたゼッケンが縫いつけられていて、誰の所有物かが非常に分かりやすい。
私の体操服よりもツーサイズ大きいのは身長のせいか、お胸のせいか。
汗濡れはあらかた乾いたはずだけれど、梅雨の湿気も吸ってしまっているためか、若干しっとりしているような手触りだ。
(……そういえば、これ。雫ちゃんの体操服なんだよね……)
当たり前だ。本人が着ていたところも見ているし、着替えの瞬間だってばっちり覗いていたではないか。
開け放たれたままの教室の入口からわずかに風が吹き込んできて、目の前の体操服からほんのりと他人の体臭が感じられた。
「今の……雫ちゃんの、ニオイ……?」
準備体操で柔軟をするときなど、ごくまれに感じられる彼女の香りを私の鼻はしっかりと覚えていたらしい。
風に乗ってわずかに感じられた、その香り。
もしもその発生源に鼻を近づけて嗅ぐことができれば、どれだけの幸せを得ることができるだろうか。
それを実行に移すための材料は目の前にある。教室の中に人はいない。教室と廊下を隔てる壁に窓はない。
教室の出入口の戸を閉めてしまえば鍵はかけられないながらも、背の高い場所にあるガラス窓からしか教室を覗きこむことはできなくなる。
二年生のクラスのある階は、被服室や茶道教室などの部活で使う特別教室があるぐらいで、もう部活動の時間が始まってそれなりの時間が経っているから人の出入りもほとんどない。
現に、私が雫ちゃんの荷物を持って教室に戻ってきてから既に十分ほど経過しているが、教室に人が入ってくるどころか、廊下を誰かが歩いた気配すらしていない。
改めて教室に掲げられている時計を確認してみる。雫ちゃんと別れてからだいたい三十分ほどが経過していた。
生徒会の仕事が終わるのに一時間ほどかかると言っていたから、まだ三十分ほど時間があることなる。
(三十分もあるって考えは、間違っているんじゃ……?)
ニオイを嗅ぐのが前提になっているのにツッコミを入れられるぐらいには脳内の正常な部分は冷静な判断をしている。
けれど、身体の方はどうだ。いそいそと教室の戸締まりを確認しだしているのは誰の身体だ。
ついつい教室から頭だけ出して、廊下に人が居ないか確認。そして戸を閉じる。
教室後方にある扉も同じように戸締まり。遠くで運動部の掛け声などが聞こえる静かな教室には戸締まりの重い音がガラガラと大きく響いた。
「や、やってしまった……」
これで教室内の視界は遮られた。
窓ガラスは無防備ではあるけれど、三階の教室を外から覗く方法など、棒高跳びで教室に飛び込んでくるか、ヘリコプターで同じ高度を維持するかのどちらかぐらいだ。
どちらも現実的ではない。つまり、ニオイを嗅いでしまっても誰かにバレるようなことはない。
今日の授業の復習をしよう、なんて真面目な思考はもう既にどこかへ飛んでしまっていた。
今考えられることは、体操服に顔を近づけるか、そうせずカバンにしまうかのどちらか。
校内中のあこがれの的で、私の片想いの相手の雫ちゃん。その名残りが目の前にある。バレる心配は皆無に等しい。
「……私、悪い子でごめんなさい」
ゆるゆると、息を吐き。懺悔は済ませた。
(すうううううううーーーーーーーーーっっ!!)
朝の洗顔を済ませたあとタオルで顔を拭うように。
皆の目の前で大きな失敗をしてしまった子が赤い頬を両手で覆って隠すかのように。
両方の手のひらを頬に押しつける、その隙間に、雫ちゃんの体操服があった。
おそらく彼女が一番汗をかくであろう、胸元の膨らみがあったあたりに鼻の頂点をくっつけて、思いっきり深呼吸をしている私がそこにはいた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……。ふううぅぅぅぅ……。すううううぅぅぅーーーーー!!」
息を吸い込むばっかりで肺が辛くなってきたら短い呼吸を数回繰り返したのち、また限界まで息を吐き出して雫ちゃんの体操服をフィルター代わりにして外気を取り込む。
今朝感じた、髪から香るシャンプーのそれとも異なる、少しばかり酸っぱさのある香り。
汗臭さなんてものは感じられなかった。鼻孔に伝わってくるのは至近距離の雫ちゃんの幻影。
それこそ柔軟体操のときに感じられるような、肌と肌が合わさったときの優しくも、どこか刺激的な香り。
それが濃度百パーセントで顔面に貼りついているのだから、まるで雫ちゃんに真正面から抱擁されたかのよう。
こんな風に抱きしめてもらったのっていつ以来だろう。
過去、それこそ小学校に上る前に何かの拍子に泣きだした私を抱きしめてくれたような記憶はある。それ以来?
私の身体が普通の人とは違うことを実感してオトコノコの部分が大きくなってしまうことを恥と捉え、雫ちゃんに触れて自分のソコが膨張してしまうことを嫌った私が、ほんの少し雫ちゃんと距離を取ろうとしたことを、彼女は敏感に察してくれた。
だから久しく手をつなぐようなことはしていないし、二人で抱きしめ合うようなこともしたことはない。
長年忘れていた、雫ちゃんの香りがそこにはあった。
「あう、あうぅぅ……。雫ちゃん、しずくちゃぁん……」
急に雫ちゃんの姿が恋しくなってしまう。
一緒に帰れると思っていたのに一時間も待たされる寂しさが、自分と一緒に帰ることより生徒会の仕事を優先されてしまった切なさが、胸の奥から溢れてしまった。
体操服を机の上に敷いて、そこに鼻先をこすりつける。
左手で布地をズラして様々なニオイを楽しもうと模索する。
フリーになった右手は知らぬの内に勃起してしまっていたオトコノコの部分を這おうとしていた。
人に目撃される心配が少ないとはいえ、放課後の教室でいつ雫ちゃんが戻ってくるかも分からないスリルに私の脳は焼かれてしまっていたのだろう。
雫ちゃんの名を何度も呼び、わずかに涙を流しながら、上半身を倒して鼻を彼女の洋服に押し当てて自慰を開始してしまっていた。
明らかな異常事態にも関わらず、オトコノコの部分は普段以上の膨張を見せていた。
イスに座っているおかげで机の天板から頭を覗かせるようなことはないけれど、仮にあと二センチほどサイズが大きくなっていたら、天板の裏面に鈴口が擦りつけられるぐらいにはなっていただろう。
日頃、夜中に自分を慰める際は記憶の中の雫ちゃんを頼りにしていたけれど、今日は違う。
妄想ではなくリアルな彼女のニオイが鼻孔を通過し、肺に収まるたび背筋から腰にかけてがガクガクと震えた。
肉茎をこすりたてる右手になけなしの力がこめられる。
亀頭の先端と机の天板との隙間が少なくて自由に手のひらをピストンさせることができない。
仕方なしに先端をニギニギと絞りたてるように動かしてみると、普段自室でする行為とは異なる、歯ぎしりしてしまうような快楽が生じた。
自分の先走り液のニオイと雫ちゃんの汗の香りが混ざって、いやらしさが倍増していく。
もしも自分のニオイが彼女の体操服に染みついてしまったらどうしよう。
雫ちゃんをオカズにしていることが、本人にバレてしまったらどうしよう。
背徳感と危機感を放棄して右手を動かす己の浅ましさが理性を焦がし、愉悦に溺れさせていく。
ブルリ、と一度腰が大きく震えた。
「あっ……! はぁ……、い、イキそうぅ……」
まさかこんな場所で精液を出してしまうわけにはいかない。
放出される精液を受け止めるだけの用意は何もしていない。
自室であれば手の届く場所にあるティッシュペーパーだってどこにもない。
いつもと違って雫ちゃんのニオイで普段の数倍の興奮状態にあるのだから、手のひらの中に収まるだけの量で済むわけがない。
少なくとも制服のスカートの裏地はベトベトになってしまうし、教室内にニオイが残ってしまう。
このあと雫ちゃんと一緒に帰る約束をしているから、彼女に気づかれずに水洗いすることも難しい。
止めなくてはならない。今はこの気持ちよさだけで満足をして、家に帰ってから存分に興じればいい。
ニオイはもう完璧に覚えた。自室でだって十分思い出して、使うことができる。だから、ここで出してしまうわけにはいかない。
そのはずなのに。
「雫ちゃん、イく、イッくぅぅぅ……!」
止められない。それどころか彼女の洋服に撒き散らしてしまってもいいかもしれない、と危険な思考が渦巻いている。
片想いの女の子の洋服にたっぷりと射精して、汚れた自分のモノをその体操服で拭って―――。
「ごめんね、私。わたしっ、もう……!」
いざ、立ち上がって机の上の洋服に矛先を向けようかとイスを鳴らした瞬間。
バシャッ―――!
教室前方の入口から閃光が発せられた。
「あぇ、へ……?」
悦楽の中に落ちていた私の意識をそちらに引き戻すほどには、存在感のある閃光。
光の反射や飛行機の影が通過したのとは全く別物の違和感。
「スクープ、いただきですわ」
呆然としている私に向けて、さらになんどか機械の駆動音が聞こえた。
それがカメラのフラッシュの音だと気がついたときには、カメラの持ち主は肩ほどまで伸ばした髪を翻して教室を去り、廊下を駆けていく音が聞こえるだけだった。
見られた。撮られた。逃げられた。
「ちょ、え。えええええ!?」
何が起こったか理解できた頃には全身から血の気が引き、あれだけ血液を集めていたはずの隆起も、なりを潜めてしまう。
「待って。待ってよ!」
追いかけなくては。教室前方の入り口から撮影したのならば、机の下に隠れていた私の秘密はかろうじてバレていない可能性がある。
しかし、それよりも重篤なのは雫ちゃんの席で雫ちゃんの体操服のニオイを嗅ぎながら、「イく」なんて言葉を連発していたのを写真に収められてしまったことだ。
写真を取り返さなくては。
自分の荷物とか雫ちゃんの荷物はもうこの際教室に置きっぱなしでいい。
慌てて廊下に飛び出して、さきほどのカメラの持ち主の行方を探る。廊下を駆けていく音が聞こえた方向にまずは向かおう。
廊下を駆けながら、一瞬だけ見えたパパラッチの特徴を思い出す。
声は女の子のものだった。身長は私よりもさらに低いぐらいだろうか。
上履きの色で学年が分かるようになっているのだが、それは目視できなかった。
体格からすればおそらくは下級生。
廊下を駆けていくと、廊下の端、階段に突き当たった。
上階が上級生の教室、下に降りれば一年生の教室や昇降口に向かうことができる。
手に持っていたのはカメラひとつのみ。通学用のカバンは視界には入らなかった。
手ぶらで帰宅するわけには行かないだろうから、荷物を確保する必要がある。
そう考えると、一年生の教室を端から確認していけばあの子を見つけられるかもしれない。
ただ、あの写真撮影を終えて、即帰宅、なんてことがあるだろうか。
私が追ってくることは承知のうえでの逃走のはず。ひとまずどこかに身を隠して、私が諦めた頃にこっそり帰宅する方が確実ではないか。
とすれば、上!
階段を一段飛ばしで駆け上がって、手すりを掴んで踊り場でクイックターン。
今までこんなに急いで校内を走ったことなんてなかったように思う。
階段を上がれば真横に伸びた廊下がある。
上級生の教室を端から確認していくも、放課を迎えてからすでに三十分以上が経過していて人の気配は少ない。
一般の教室は全て目を通したけれど、先ほどの女生徒の姿は見つけられなかった。
それでも逃げこむとするなら上階しかないはず。残るは、同じ階にある特別教室。
そのどれもが外側から南京錠で締め切られており、人の行き来があったようには見えない。
もしかしたら、私の判断が間違っていて逃げ切られてしまったのだろうか。どうしようもない不安がよぎる。
それでも廊下を進んでいくと、唯一、鍵のかけられていない特別教室を見つけることができた。
『情報準備室』と表札の貼られた扉。普段はパソコンの授業で使う教材などが保管されている部屋のはずだ。
部活動のための教室として使われているという話は聞いたことがない。
ただ単に明日以降の授業の準備をしている先生がいるだけかもしれない。
この扉を開けて、例の女の子が見つけられなかったときはどうしたらいいのだろう。
意を決して、扉に手をかけた。ノックなどはなしに、一息に戸を開け放つ。
「いた!」
先ほど強烈に目に焼きつけられた女子生徒の椅子に座った後ろ姿が見えた。
鼻歌まじりに余裕綽々といった様子でカメラのディスプレイで撮影した画像の確認をしているようだった。
私の叫びが耳に入ったらしく、こちらを振り返った下級生は目を丸くさせていた。
「なっ。どうしてこっちだと分かりましたの!?」
後ろ手に扉を閉めて、逃げ場をなくす。
この準備室は他の教室と違って入り口がひとつしかないから、こうしてしまえば脇をすり抜けられない限り逃げ場はない。
校舎の最上階だから窓から逃げるということも不可能だろう。
「それ、返して……」
全力疾走をしたせいで上がりきった息を深呼吸で抑えながら、なるべく冷静に声をかけた。
「ふ……ふん。嫌ですわ。こんな特ダネ、滅多に見つけられるものではありませんもの。ねぇ、白菊ほたるさん?」
椅子ごとこちらに向き直って脚を組み、強気の態度を取る女生徒。
その上履きの色から想像通り下級生であることが判明した。
学年がひとつ下なのだから当然かも知れないが、学年で背が低い方に属する私よりも身長が低い。
そのわりに脚が長く、椅子に腰掛けているせいでさらに小柄に見える。
あどけなさというよりは幼さを残した頬の丸みと、それにギャップを生じさせるつり目気味な眉目。
胸の膨らみは皆無に等しく、胴回りはすらりと細い。
腰元で大事そうに抱えている一眼のカメラが相対的に大きく見えてしまうほどだ。
学園の制服を着ていなければ、近所の小学生が迷子になったのかと勘違いしてしまいそうな容姿に相反した、鋭い眼差しをこちらに向けている。
「……私の名前、知ってるの?」
「トーゼンですわ。記者たるもの、取材対象となる可能性のある全校生徒の顔と名前ぐらい一致していましてよ」
ケラケラと笑う下級生は頬に手を当て、さらに挑発的な笑みを浮かべた。
「もちろん、クラスの座席も把握していますわ。先ほどあなたが座っていたのは、及川雫さんの席、でしたわよね。そこで彼女の名を呼びながら……身を悶えさせる。なんと熱烈な愛なのでしょう」
完全に事態を把握されていた。言い訳などできるはずもなかった。おそらくは彼女の手中にあるカメラにもその様子がしっかりと収められている。
「っぅ、く……」
漏れてはいけない秘密が、こともあろうに証拠画像付きでバレてしまったことに胃が締め付けられる。
「返して……」
なんとか絞り出せたのは小さな懇願だった。
「もしそれがバレたら、私、生きていけない……。クラス中、学校中からのけ者にされて、学校に居られなくなる……」
ふたなりであること、親友で幼なじみの相手を性的な目で捉えていたこと。どちらか片方がバレるだけでも私の居場所はなくなってしまう。
「そこまで思いつめることならば、どうして教室であんなことをしていたのかしら」
「ぅ……」
なにも言い返せない。バレなければ問題ないと思っていた。
なんて、事態が露呈した以上言い訳にもならない。
言葉に詰まり、下級生の視線に耐えられず床を見つめて視線を逸らすしかない。
「全く。質問が意地悪でしたわね。誰しも愛の衝動にかられてヤンチャをしてしまうのは……愛たるゆえ。しかたのないことですわ」
黙ったままでいる私に、ぶっきらぼうな言葉が投げかけられた。
「安心なさいな。掲載許可なしに記事にすることはありませんわ」
その言葉に一条の光が見えた。話が通じない相手ではないらしい。
「だったら、許可しない。するわけない」
「その代わりに、他のスクープを寄越してもらうのが条件ですけどね」
その希望を断ち切るがごとく、少女は口端を歪めた。私よりも身長の低い下級生の小さな身体から、どうやったらこんなに圧力を発せられるのだろう。
「スクープって……。あなたは何者なの?」
どんどん話を先に進めようとする彼女の正体すら、私は知らない。
「はぁ……。イチから説明しなければなりませんの? あなた、わたくしが発行している新聞、読んだことあるでしょう?」
言われて記憶を振り返ってみる。ここまで愛という言葉を連呼する目の前の少女が作っているような新聞といえば、思い当たるのはひとつしかない。
「愛の学内新聞?」
「それを発行しているのが、このわたくし、櫻井桃華ですわ」
フフン、と桃華は髪をかきあげた。
「そもそも、あなたは今日のことをそのまま記事にするとお思いでしょうけれど。愛に生きるわたくしを小馬鹿にしているのではなくて?」
若干苛立ちがかった声とともに、人差し指をつきつけられた。
「原則、わたくしが取り扱うのは成就した愛に限りますの。その過程を取材させてもらうことはあれど、口は堅いですわよ」
「それじゃあ、黙っててくれるの?」
「他人の洋服のニオイを嗅いで楽しむような犯罪行為を黙認することはできませんけれど、ね」
あっさりと希望を打ち消すこの少女は、持ち上げて落とすことが趣味なのだろうか。
「このことを黙ってさしあげることを条件に、わたくしの取材をお受けになりなさいな。あなたの秘密、同性の女の子が好きということなのでしょう?」
「え……」
「もちろん人の恋路を邪魔するようなことはしませんし、お望みとあらばむしろ応援してさしあげますわ。愛の形は人それぞれ。
同性同士だって愛し合えます。先日の歳の差カップルもわたくしが応援してあげた賜物でしてよ。そして、恋が成就したならばわたくしの新聞に掲載させていただく。悪くない提案でしょう」
つらつらと語る桃華の言葉の後半は耳に入っていなかった。私の秘密について、桃華はどう捉えていた?
女の子同士の恋愛、と彼女は言った。
もし本当の私の秘密―――ふたなりを目撃していたならば、そんな言い方をするわけがない。
さきほどカメラの画像を確認していてそれに気がつかなかったということは、データとしても残っていない可能性が高い。
まだ、私の秘密はバレていない。
「さ、あなたの犯罪行為を黙認してあげる代わりにわたくしの取材を受けるか、もしくは何か別の取材対象を寄越すか、お選びなさいな。もちろん釣り合うほどの取材対象でなければ、願いは聞けませんけれど」
桃華の取材を受けて恋を成就させてもらう選択肢もある。
けれど、男の子でも女の子でもない私の場合、恋が叶う可能性などゼロに等しい。
それならば放っておいてもらう方が雫ちゃんにも迷惑をかけないだろう。取材を受けるわけにはいかない。
まだ彼女が気がついていない、私の最大の秘密。
「それなら……。スクープ、あるよ」
決してバラしてはいけない私の秘密だけど、それで雫ちゃんを守ることができるのなら、安いものだ。
「……あら。大した自信ですこと。クラスの恋愛事情に詳しいようには見えませんけれど」
取引を飲んで取材を受けるものとばっかり思っていたのだろう。桃華の笑顔が消えて、値踏みするような目つきへと変わった。
「これで釣り合うか分からないけど……。私が持ってる一番の秘密。教える代わりに雫ちゃんのことは忘れて」
口の中に溜まったツバを飲み下し、制服のスカートのホックに手をかける。
ファスナーを下ろす音が狭い室内に反射してようやく、桃華が慌てたように席を立った。
「ちょ、ちょっとお待ちなさいな。別に脱げなんて言ってませんわよ」
「いいから!」
それを遮って、スカートを脚から引き抜く。女性もののショーツの中にあるのは私のオトコノコの部分。
下着から片足を抜いてしまえば、その部分があらわになる。
「これが、私の秘密……」
首を横にむけて視界に入れないようにしていた桃華の視線が、こちらを向いた。
「な……」
そこに何があるかを捉えたあとは、桃華の視線も私の下腹部に釘付けになっていた。
それまでの自信に満ちた振る舞いはどこかに消え、口を半分ほど開けて呆然としている。
「あ、あなた……男性でしたの?」
桃華のもっともな問いに黙って首を振る。
「女の子の部分も、あるよ。そのかわり……なのかわからないけど、睾丸はなくて、胸はちょっとだけ」
「うそ……」
口を両手で覆ってすっかり絶句してしまった桃華は、先ほどと比べていくらか青ざめた表情をしているように見える。
両親や雫ちゃん以外の人に見せたのはこれが初めてだけど、おおよそ想像通りの反応だった。
気色の悪い異端児。そんな風に彼女の目には映っているのだろう。
「ほ、本物ですの……?」
「気が済むまで調べていいよ。その代わり、今回のことはどこにも漏らさないで」
「……た、対価としては、十分すぎる特ダネですわね……。こっち、お座りなさいな」
桃華が先ほどまで自分が座っていたイスを示した。言われるまま腰掛けると、木製の材質が地肌に直接触れて少々肌寒い。
桃華は出入口のドアノブに内側からカギをかけると、おそるおそるとか、こわごわと、という言葉が似合いそうな様子で私の脚の間に割って入り、床に膝をつけた。
既に遮るものは何もない。萎縮したままの肉突起が他人の眼前に晒されている状況など、過去に体験したことがない。
ともすれば吐息がかかりそうな距離で、桃華がまじまじと下腹部を見つめていた。
視線を少しずらせば女性器も健在なのが分かるはずだ。
「触っても、よろしくて?」
「……どうぞ」
軽く握った指先がゆっくりと近づいてくる。小柄な体躯に見合った、小さく細い指だと認識できた直後。
「んくっ!」
「わぁあ! な、なんですの。まだほんの少し触れただけでしてよ」
人に触られる経験があるわけのない私のソコは、外部からの感触に敏感に反応してしまっていた。
一度大きく腰が跳ねたのを警戒しつつ、それでも好奇心のほうが上回ったらしく、桃華の手のひらが肉棒の胴の部分を掴んだ。
「わ……、熱を持ってる……。これ、作り物とかドッキリではありませんの?」
もしそうなら、どれだけ歓迎したことか。フィクションでないからこそ、私のコンプレックスとなっているのに。
しかし上目遣いでこちらに問うてこられると、桃華の身体の小ささもあって幼女にイケナイ遊びを教えているような気分になってしまう。
「ちょ、ちょっと!? だんだん大きくなってきましてよ!?」
桃華の手のひらの感触のせいか、視線に晒されているせいか、下腹部に血液が集まりだしてしまっていた。
こうなってくると自分の意思では止めることができない。
「わ、わ、わ……」
それでも男性器の膨張に驚きの声を上げつつも、握ったまま離そうとしない桃華の手のひらの感触が硬度をさらに上昇させる。
程なくして、先ほど雫ちゃんの体操服で自慰にふけっていたときとほとんど変わらないサイズにまで成長した。
一度収まったとはいえ、雫ちゃんの体操服で自慰をしていたときの性衝動は未消化のままだ。切ない欲望が下腹部をくすぐり、自分でシゴいてしまいたくなる。
「実物……と言って良いのか分かりませんけれど、男の人のモノを実際に見るのは初めてですが、予想以上に大きくなりますのね……」
肉茎を掴む桃華の手のひらが上下左右に動いて、様々な角度からモノを観察される。
「ここが、ウラスジという部分ですの?」
「くひぃぃっ!」
もう片方の指先がふいに亀頭の中心の内側を擦り上げた。
剥きだしになった急所に熱小手でも押し当てられたかのような衝撃が患部から背中までを突き抜けた。
「え、え。そんなに痛い場所でしたの?」
「い……痛いわけじゃ、ないけど……」
快楽として受け止めるには少々刺激が強すぎる。
「先端の部分は触っても構いませんの? ああ、もちろん爪を立てるようなことはしませんから」
「大丈夫だと思うけど……できれば、手のひらで包み込むように触って欲しい、かな」
言われたまま、桃華が鈴口を覆うように手のひらを押しつけてきた。
そのまま、ゴムボールの弾力を確かめるようにムニムニと指先に圧力がかけられる。
先ほどのような鋭い刺激がないため、声が漏れるのはすんででこらえることができた。
「ほたるさん、汗の量が尋常じゃ……。わわ、先端からなにか出てきましてよ!?」
自分でするのと人にされるのとでは与えられる快楽が全く異なることを知った。
自分でするときは少なからず次に行われることがシミュレートできているから、それに身体が備えることができる。
しかし他人にされる場合、その予測が全く立たない。決して激しい動きをされているわけではないのに、既に快楽係数が跳ね上がってしまっていた。
「これ、セーエキ……? それにしては聞いていたものよりも色が薄いような……。そもそも、精液が出るんですの?」
亀頭の揉み込みを続けたまま、桃華は矢継ぎ早に質問を続けてくる。
それらに答える義務が私にはあるはずなのだが、口を開けば甘い声が漏れでてしまいそうで、奥歯を噛みしめるより他なかった。
「最後、までいけば……出る、から……」
「出てしまいますのね。それでしたら、そこまで見せていただきたいですわ。……確か、コレを上下に撫でればいいのですよね」
肉茎を握っていた手が根本と先端部分を往復し始めた。
親指と人差し指を懸命に伸ばしてなんとかリングを作ることのできるぐらいの手の大きさのため、自分でするのと比べてどこかぎこちなく感じられる。
けれど、自分でする場合は腰が引けてしまう裏スジやカリ首の部分を容赦なくこすり上げる指の動きに太ももがわななく。
「精液とは、別の液体……? 男の人って、ここが気持ちよくなると精液が出てくるのでしたよね」
「そう、うっく……、だけど…!」
「気持ちよくなると出てくる液体、ということでよいのかしら。ただ撫でさするだけでそんなに気持ちよくなるものですの?」
先走り液を亀頭を覆った手のひらにまぶして、ビンの蓋を開けるように手首をひねる動作を覚えたせいで、こちらは既に限界が近づいているというのに。
歯を食いしばって快楽を耐えている私に不思議そうな視線を投げかける桃華。
下腹部に凝縮されつつある愉悦で視界に火花が飛んでいるようにすら見える。
このまま射精まで達してしまえば快楽の波から開放されるはずなのに、腰元を甘くとろけさせる刺激を手放してしまうのがもったいなくて、一分一秒でも長く味わいたいという矛盾した感情が芽生えていた。
時折、腰が跳ねるのにも慣れたらしい桃華が、今度はそれを気持ちいいのサインと認識して、指技のバリエーションを増やしていく。
「裏スジ、柔らかく揉みしだくのはどうです?」
「はぁぅううぅぅッ……!」
言葉にならない返事の意味を理解して、気を良くしているのが伝わってきた。
「そういえば、あなたには、ええと……金の玉はないのですよね。そこをいじってあげる愛し方もあると、聞いたことがあるのですが……」
肉槍の根本、ちょうど女性器との境目の部分には、当然、女の子にしかついていない部位も存在する。
「こちらの方も、機能しているんですの?」
垂れ流しになっていた先走り液でヌメヌメと濡れたクリトリスに桃華の中指が這わされた。
「ひっぎいぃぃぃ!」
「あら。いい声。こちらの扱い方は少しは心得ておりますから、気持ちよさで存分に喘ぎなさいな。
普段お一人でするには寂しかったでしょう? わたしくがこれからたくさん愛してあげますわ」
オトコノコの部分の根本に位置する快楽スイッチは、肉棒が萎縮しているときはそれが防護壁の役割をしてくれてほとんど外気に触れることがない。
勃起してしまったときだけ、その部分が無防備になるのだった。
両方を同時にいじるのは、自分自身で覚悟を決めてから触れたとしても刺激が強すぎて、そこに伝わる衝撃を快楽として理解できないというのに、そんな事情を知る由もない桃華は惨忍にも見える極上の微笑みを携えて、肉竿を扱きながらのクリトリス責めを行ってくる。
「ああっ、ああーっ、あー!」
仮に桃華が私の膝を抑えこんでいなければ、おとがいを反らしたまま、イスごと背中側に倒れこんでいただろう。
太ももの内側の筋肉が収縮して、血液を肉突起へと送り込んでいく。
二点責めの効果は凄まじく、射精までの快楽の道のりをあっという間に駆け抜けようとしていた。
「お願いっ、お願い、ひとつだけ聞いてっ」
その責めに耐え切れず、桃華の手首を掴んで動きを抑制させてしまう。
とはいえ手首を抑えているだけなので指技はそのまま続けられてしまう。
それが射精直前の一番気持ちいい瞬間を継続させる事態へとつながってしまう。
「な、なんですの、唐突に」
「クチ、おクチに出したいのっ。桃華ちゃんの口の中、いっぱい、どぷどぷってぇ!」
「はい?」
せっかく人に射精まで導いてもらうのならば、もっとも気持ちよさそうな射精の仕方を経験したい。
やけに丁寧な言葉づかいを強調する、その小さな唇を押し分けて、内容量が少ないであろう口内へたっぷりと白濁液をぶちまけたい。
「あ、あの。本気でおっしゃってますの?」
このまま放出してしまって、顔や制服を汚すのもひとつの趣としては良いかもしれない。
けれど初めて人にシてもらうときは、粘膜の中へ放出したいと日々夢描いていたのだ。
「受け止めて、っつ、くぅぅ……、出る、出るうううっっ!」
限界が訪れた瞬間、桃華の手首を引いて、彼女の肩を腰元に近づける。
当然、彼女の目の前にオトコノコの部分が迫ることになる。
いきなり乱暴にされたことに動揺をしつつも、一瞬の逡巡の末に、わずかに唇を開いてくれた。
その隙間を見逃さず、肉槍を突きこむ。
開ききっていない唇を割って頭頂部を押しこみ、前歯がカリ首を引っ掻くことすら快楽へと変換し、亀頭全体を頬張らせることに成功した。
そして、目を白黒させている下級生の熱い口内へ―――
どぷっ、どぶどぷぷぷっ、びゅるるるるぅぅっ!
「んんんんーーーーーーーー!?」
雫ちゃんの体操服の香りと、初めての他人にしてもらう手淫のふたつの材料からなる愉悦が生じさせた精液の量は、一人で雫ちゃんの妄想だけを便りに興じていたのと比べてゆうに三倍は超えていたと思う。
まず、一回に吐き出す量が異なっていた。
精液が通るオトコノコの管の部分が普段よりも大きく膨れ上がって、これまでに体験したことのないような圧迫感を伴いながらの吐精。
脈打つ回数だっていつもは七、八回ビクビクしたらそれで終わりなのに、気がつけば既に二十回近くは下腹部が震えている。
裏スジや鈴口を優しく包んでくれる桃華の口内の気持ちよさもひとつの要因だっただろう。
時間にしておそらくは一分以上射精を続けて、ようやく下腹部の痙攣が治まったころ、精液の受け皿となっていた桃華の頬はぷっくりと膨らんでしまっていた。
射精を終えてゆっくりと硬度を減らしていく肉棒が桃華の口内から抜け落ちて、ようやくまともに桃華を気遣う余裕ができた。
「あの……。大丈夫?」
「んんー!」
大丈夫なわけがあるか、と口を閉じたままの瞳が訴えている。
吐き出すにしたって量が多すぎて床や制服を汚すことになるだろう。
どこかにティッシュなりでもあればいいのだけれど、初めて訪れた部屋なだけに物品の配置がわからない。
軽く辺りを見渡してみてもそれらしいものを見つけることができなかった。
とすれば、現状を脱却する方法はひとつしかない。
「それ……。ごっくん、してくれる?」
「んんん!?」
自分の精液の味を確かめたことはないので、信じられない、という表情をしている彼女の口内にどのような味のハーモニーが繰り広げられているのかは存じあげないが、おそらくは甘いとか美味しいとかからはかけ離れているのだと思う。
白濁液だけで頬をふくらませた彼女は、そのまま立ち上がって歩こうものならおそらく中身を吹き出してしまうだろう。
床も制服も汚さずに処理する方法としてはそれしかない。……と、射精の気だるさで頭が正常に回らない私は考える。
このまま抗議の視線を送り続けていても現状の改善が見込めないと判断したらしい桃華は、まぶたを閉じて眉をハの字にさせ、こくり、こくりと喉を動かした。
わずかに喉が上下するたびに頬の膨らみが解消されていき、五回ほどの嚥下ののち。
「あなたには常識ってものがありませんの!? ちり紙がないのでしたら、ハンカチのひとつやふたつ、差し出したってよいでしょうに!?」
怒りを爆発させていた。
「うう……、喉がイガイガしますわ……」
顎の下や喉のあたりをしきりに気にしている。そうとうお気に召さなかったらしい。
「飲み物でも買ってくる?」
「あなた……なかなかいい度胸してますわね……」
気を遣ったつもりだったけれど、恨めしそうな視線が返ってくるだけだった。
「しかし……やっぱり本物なんですのね、それ。イミテーションにしては作りが精巧すぎますもの」
欲望を吐き出してなりを潜めたソコを見やる桃華。
思考を巡らせるように少し首を傾げた彼女は教材棚に置いていた例の一眼カメラを手に取り、こちらにフラッシュを放った。
「ひぇっ」
「物的証拠はこれでいただき……と」
流れるような動作に大切な部分を隠すのも追いつかず、今度こそ彼女の手元に私の秘密が握られてしまった。
「容姿も、そのいやらしい部分もばっちり……ああ、これでは端から見ると中性的な男性が女装をしているだけのようにも見えてしまいますわね……。
ほたるさんもう一度ソコを大きくさせて、両方の性器が見えるようにしてもらえます?」
「や、やらないよそんなのっ」
雫ちゃんのことを黙殺してもらうかわりに自分の身を差し出したつもりではあるが、さすがに写真撮影までされるとなると話は変わってくる。
「許可なく口に出した代償は大きいですわよ」
「納得して口開いてくれたんじゃなかったの!?」
再度レンズが向けられるが、さすがに何度も撮影されるわけにはいかない。両手で前を覆ってオトコノコの部分を隠す。
「……こうして見る分には、きちんと女の子ですのにね」
残念そうにカメラを片づける桃華の言葉がチクリと刺さる。異形の身なのは理解しているつもりだけど、改めて指摘されると言い返す言葉がない。
「たっぷりお口に出されたお礼を、たーっぷりしてさしあげますわ」
スカートについたホコリを払いながら立ち上がった桃華がイスにかけたままの私の身を引き寄せ、ほんのわずか腰が浮いた瞬間を狙ってその脚を蹴飛ばした。
体重を乗せる部分を失った私は教室の床に尻餅をつく形になる。
「いったたた……。な、なにをするつもり?」
「愛の報道記者としては、男性のモノの扱い方ぐらい、把握していて当然ですもの……」
譫言のように言葉を漏らしながら、肩を押され仰向けになった私のお腹の上に馬乗りになる桃華。
まだスカートを着用していなかったオトコノコの部分に桃華の下着が押しつけられる。
「えええっ。ま、待って、桃華ちゃん!」
「一応確認しておきますが……。あなた、ドーテーでして?」
床に手をつき腰をグラインドさせる桃華。あからさまな性的アピールに、不覚にも下腹部が反応してしまう。
「んっ……、大きくなってきましたわね。この堅い感触、悪くはありませんのよ」
「桃華ちゃん……本気なの?」
「本気もなにも、あなたひとりだけが気持ちよくなろうなんて、不公平だと思いませんこと?」
スカートで隠れて正確に把握ができないが、裏スジに桃華の秘裂が下着越しに押しつけられた感触があった。
そこに精液のなごりや桃華の唾液だけではない、別の水気を感じられた。
「怖じ気付いているわりには大きくさせちゃって。おませさんですわね」
肉茎に秘所をこすりつけているうちに気持ちいい部分を見つけたらしく、桃華の腰使いがだんだん細やかなものへと変わっていく。
それは同時に、私のオトコノコの部分が刺激されることも意味する。
程なくして桃華がスカートの中に手を差し込み、クロッチ部をズラしたのがわかった。
秘裂から漏れ出ているであろう淫蜜が滴って亀頭部を濡らす。
「今回はあまり暴れないでいただきたいものですわ」
桃華の手によって砲身の角度が固定され、鈴口に淫唇が張り付けられる。
「ほ、ホントに入れちゃうの……?」
「同じ質問を繰り返さないでもらいたいですわね……っ!」
桃華の太ももから力が抜けて、数ミリ、腰が降下した。
二、三ヶ月前までランドセルを背負っていたはずの、さらにその中でも発育が遅れている彼女の入り口は劇的に狭い。
スカートも向こう側で詳細は把握できないものの、指の一本二本が入るのがやっとだろう。その窮所を二倍以上の径の亀頭が押し破ろうとしている。
女性優位でペースを維持できる体勢ではあれど、想像以上の負担が彼女を襲っているようだ。
そもそも私のモノを締め付ける力が尋常ではない。それにあらがって押し返すことで奥へ進むことができるのだ。
「く、うぅううぅぅぅぅ……」
ようやっと亀頭部分を挿入し終えた桃華だったが、そこで動きが完全に停止してしまった。
その瞳には大粒の涙をこしらえていて、まばたきをすればすぐにこぼれてしまいそうなほど。
ヒクつく入り口が先端部分を包み込んで離そうとしない。
口内粘膜と比較してぎゅうぎゅうと全方向から襞々が吸いつく感触と、カリ首の段差から裏スジにかけてのリング部分を入り口が締め付ける圧迫感だけで果ててしまいそうだ。
「どうしてこんなに巨大なモノになっているんですの……!?」
雫ちゃんの体操服のせいか、始めての挿入の興奮のせいか、海面体の膨張率が高い。
自室でしているときよりも一回りほど大きくなっている印象がある。
それでも一番太い部分は挿入できたのだから、あとは腰を落とすだけで最奥部までたどり着くことができる。
それを桃華は理解できていないのか少々パニックに陥っているようだった。キツく腹筋を締めて、それ以上の侵攻を防ごうとしてしまっているようだ。
「桃華ちゃん。大丈夫だから、おなかの力、抜いて……」
「力を抜くって、どうやって……!」
「ゆっくり、ゆっくり息を吐いて、深呼吸するように」
「こ……、こうですの……? ふうぅぅー……、ふぅーーー……」
私の助言を受け入れてくれて呼吸をゆっくり繰り返す桃華ちゃんのお腹からすこしだけ緊張がほぐれて、キツキツだった膣道がだんだんとまろやかなものへと変わっていく。
「桃華ちゃんも初めてなんだよね……?」
「ふ……ふん。だとしたらどうだと言うんですの」
いっぱいいっぱいになっている様子から見るに答えは明白だった。
「愛の報道記者たるもの、男女の営みについての知識ぐらいは頭に入っていましてよ……。これぐらいのモノなんて……!」
そう言ってまた下腹部に力を込めてしまう桃華。そんな状態ではいっこうに進んでいくわけがない。
「深呼吸深呼吸。ね? はい、ゆっくりと吸って、吐いて」
促されて腹筋の締め付けを緩めていく桃華。おそらくは腰を沈める際の痛みに無意識のうちに身体が反応してしまっているのだろう。
そもそもこのサイズのモノを受け入れようとするのが無理をしているわけなのだが、彼女の意志は尊重してあげたい。
一度受け入れることさえできれば後は身体が慣れていってくれるだろう。
「桃華ちゃん、痛いの一瞬だけガマンしてね」
「ふぅぅ、ふぅぅーー……。え、っと、ほたるさん? 今なんとおっしゃいましたの?」
聞こえるか聞こえないかの声量でつぶやいたため、案の定桃華の耳には届かなかったらしく彼女の意識がこちらに向けられた。
その、下腹部がもっとも弛緩した瞬間を狙って。
グプンッッーーー!
「いっ、っくっっーーー!」
脚の付け根に手をかけて、一息に彼女の腰を押し下げた。
桃華の体重のほとんどが結合部にかかり、一点突破の圧力で未開の地を切り開く。
パツンとなにかが弾ける感触が亀頭部を包んだ直後、膣道の最奥部までの侵攻を果たした。
「あ……ああっ、ううぅううう……」
およそ言葉にならないうめき声を上げる桃華。堅く閉じられたまぶたからは大粒の涙がこぼれていた。
これ以上の負担をかけてしまわないように、身体を硬直させるのに努める。下腹部を襲う痛みに身体が反応してしまうらしく、膣内も小刻みに痙攣を繰り返した。
首を垂らした桃華の息苦しそうな呼吸が数分続いてようやく、長距離走を終えた後のような深い息づかいに変わってきた。
「……こ、殺されるかと思いましたわ……」
下を向いたままだから桃華の表情は伺えないけれど、知り合ってからもっとも低い声が聞こえてきた。
「マヌケか、頓珍漢か、KYか……好きな呼び名を選びなさいな……」
「ごめんね、でも桃華ちゃんが一人で苦しそうだったから……」
「あなたも女の子ならば処女を奪われる瞬間の痛みが想像できないことはないでしょう!? この大馬鹿者!」
烈火のごとく怒られてしまった。ただしその大声が下腹部に響いたらしく、すぐに眉をしかめていた。
「っつ、たた……」
苦悶に喘ぐ桃華には悪いが、小さい身体にそれこそ突き刺さる肉槍の感触が凄まじい。
根本から先端部までを均一に締め付ける膣道と、それにアクセントを与える襞々の収縮。
やはりサイズが少し合わないようで、最奥部を押し込む形になっている鈴口の部分が彼女のリング状の部分、子宮口だろうか――に押し返されている。
それでいてカリ首の段差を埋めるように一生懸命に内壁が押し寄せてくるので歓迎されていないわけではないようだ。
それから数分して桃華の肌の粟立ちも収まってきた。痛みも引いただろうか。
動いても大丈夫かと問おうとして太ももに添えたままの指先に力をかけると、即座に桃華の睨みがこちらを射抜いた。
「お待ちなさい。動くときは、その。わたくしがやりますから……」
最初に私の上で腰を前後させていたときのように、床に手を置いてこわごわと腰を持ち上げる桃華。
動かすとまだ多少痛みが走るようだったが、眉をヒクつかせながらもカリ首の手前まで腰を持ち上げられたということは、それなりに我慢できるまでには収まったらしい。
スカートの裾に隠れて結合部を覗くことができないが、おそらくは処女血に濡れたオトコノコの部分があるのだろう。
桃華が瞼を閉じて、息をゆるゆると吐きながら再度腰を落とす。一度目とは段違いのスムーズさで亀頭が膣壁をかき分けていく。
先端部がシコりのある部分に触れた直後、桃華の腰が私のそれとぶつかり合った。
「いずれ気持ちよくなるとは聞いておりますが……本当なんでしょうね……?」
誰に問うでもないつぶやきに、私は返事をするべきだろうか。
パチュン、ペチン、とへっぴり腰なままの桃華のピストンが続けられる。
最奥部を貫かれる瞬間が一番キくらしく、そこにぶつかる目前で桃華が減速をかけるためいまいち迫力に欠ける音が室内に反響していた。
「桃華ちゃん、辛くない……?」
「辛いわけ、ありませんわっ……! 愛を知るためには必要なことですもの……!」
彼女なりの強がりに見えるのはおそらく私の見間違いではないだろう。
襞々がきゅうきゅう吸いついてくる感触も最奥部に亀頭が押しつぶされる感触も、どちらも素晴らしく気持ちいいものなのに、まだ彼女はそれを受け入れるだけの余裕がないのだ。
愛のため、と自らの意志を明確にしている彼女を助けるためにはどうすればいいだろう。私にしてあげられることとは。
「桃華ちゃんも……一緒に気持ちよくなろう?」
上半身を起こし、彼女の背中をさする。
正面から抱きしめられる体勢になって腰元の角度が急に変わったことでバランスを崩し気味の桃華は後ろ手で床を支え、なんとか体勢を保っている。
いわゆる女の子座りをしている桃華の臀部に手を這わせ、腕の力で腰元に引き寄せた。
先ほどまでの女性が上になる体勢より結合感は薄まるが膣壁をこすりあげる感触は増したように思える。
「勝手に動こうとしないでくださいな!」
「辛くないようにするから」
「返事になってな――、あっ、あっああっ!」
最奥部を貫かれるのが辛いのなら、それを緩和させてかわりに別の部分で気持ちよくなってもらえればいい。
元の体勢に戻そうと肩を押し返していた桃華も膣壁の摩擦に負けて、やがて私の背中に腕を回して肩をくっつけ合うようになった。
頬をすり寄せお互いの熱い吐息を耳に感じる。
腕の力だけで桃華の体重を移動させるのはなかなかに重労働であったが、繰り返していくうち、その負担が急に和らいだ。
「だから、一人で気持ちよくなろうなんて許しませんわ、よ」
腰元を引き寄せるのに併せて背中に回されている桃華の腕が、引き離すのに従って女の子座りの彼女の膝が、私の動きをサポートしてくれていた。
「うん……。一緒に気持ちよく、なろう……ねっ」
クチュン、グチュンとピストンのペースは決して速くないものの、お互いの気持ちいい部分をすり付けあって下腹部をわななかせる。
一度桃華の口内に射精していたおかげでなんとか膣圧にも耐えていたものの、やがて限界が訪れる。
「桃華ちゃん……私、そろそろ……イきそ……」
か細い声でのささやきであったが、今度はしっかりと彼女の耳に届いた。
「わかりますわよ……。さっき手でシてあげたのと同じように、おバカみたいに震えてますもの」
「ま……また、お口に出してもいい?」
「お断りしますわ」
「え……」
先ほどの衝撃的な射精感が忘れられず、もう一度味わいたかったのだが、ピシャリと拒絶されてしまった。
私の残念そうな表情がはっきり伝わったのだろう、桃華が苦笑しながら頭を撫でた。
「わたくしの……中にお出しなさい。愛の報道記者たるもの、愛の営みを最後まで体験することは義務なのですわ」
「え……でも、それじゃあ……」
中に出すということは、精液が子宮に染み渡るということ。
……私のこの異形の部分が生殖機能まで持っているかは定かではないが、可能性が完全に否定できない以上、中に出すのは子を孕む危険性がある。
「構いませんわ。わたくし、あちらの初めてはまだですし」
「……へっ?」
何かとんでもないカミングアウトを聞かされた気がする。桃華が示唆させたもう一つの初めては、半陰陽の私にすら数年前に訪れているというのに。
「だから、あなたの精液がいくら百発百中で子を成すものだったとしても、そもそもその畑がありませんもの。種だけで実は成りませんわ」
「……すごいね、桃華ちゃん」
「人を犯しておいてなにを今更」
私はどちらかと言えば犯された側だと思うのだけど。そう言った文句は受け入れてくれなさそうだ。
「初めてが来ていない今のうちに、中に出される幸せというのをわたくしに味わわせてくださいな」
およそ年下とは思えないような慈愛に満ちた微笑みを携え、一段と強く背中に腕を回す桃華。
ぴったりとくっついた腰同士が小刻みに震える。
細やかなピストンは互いの結合を深め、桃華が苦手としていた子宮口への振動にも繋がっていくが、彼女の声からは苦痛は聞き取れなかった。
甘く熱い息づかいが耳朶に響く。
きゅうきゅうと締め付けるだけだった内壁の動きが、外から内へ搾り取るような動きへと変わっていく。
桃華の絶頂も近いらしく、小刻みな痙攣も次第に感じられるようになってくる。
対面での結合の場合わずかに長さが届かないはずだった子宮口に先端が触れる実感があった。
陰茎が精液を蓄えて、またサイズが増したのだろうか。赤ちゃんの部屋の入り口を押し返されるのが感じすぎて眉をしかめていたはずの桃華も、今となっては構わず腰をぶつけてくる。
「ここ……、ももかのここに、いっぱいかけてくださいまし」
お互いに胸の隆起はほとんどないおかげで、腰から肩までぴったりと二人の身体をくっつけ合うことができる。
いつもは女の子らしくない貧相な身体つきが恨めしかったが、今日ばかりは歓迎できた。
「あっ、あ、あ、ああ……っ! イっく、イくからね、桃華ちゃん……!」
「宣言していただかなくても、もう弾けそうなことぐらい、わかりましてよ」
女の子座りにしていた桃華の脚が、私の胴を回してあぐらをかくような体勢に変わり、体重のほとんどを結合部に乗せる体勢となった。
それまで桃華のサポートを受けるのが当たり前になっていた私の腕力では桃華の体重を受け止めることができず、重力に従うままにもっとも深い結合となる。
挿入直後のような締め付けが肉槍を襲い、精液の逃げ道がふさがれる。
最後の力を振り絞って桃華の身体を一度だけ上下させたのち、精液をせき止めていた理性がガラガラと崩れさった。
「出る、出るぅ! 出ちゃう……!」
どぷぷぷっ! びゅくびゅくびゅくんっ!
「あっ、はぁぁぁっ……! これが、これが愛なのですね……!」
本来の出口を見つけた、とばかりに精液がこぞって先端の出口からほとばしる。
一分の隙間も許さない膣壁の締め付けにより、鈴口から吐き出された子種はリング状の入り口をあっさりと乗り越えていく。
奥の部屋にびしゃびしゃと熱液を浴びせられる桃華は身体全体を震えさせて悦びを噛みしめていた。
一射一射を受け止めるたびに膣壁が締まり、更なる射精を促してくる。
私の砲身が十数発の脈動を終え、空射ちをなんどか繰り返したあとも、もっともっとと子供のようにおねだりを続けている。
射精を終えてしばらくすると、次第に硬度を失っていく肉茎が桃華の膣圧に負けてゆっくりと抜け落ちた。
そのあとを追うように、ありったけを放出した白濁液が漏れ出てくる。
ズラしただけだったショーツは白濁に汚れてしまい、もう一度吐き直すことは難しそうだ。
「すっごい、気持ちよかった……」
「はぁっ、はぁ……。それは、光栄ですわね……」
お互いに息が上がってしまっていて、多くを語ることができない。しかし不思議と心が繋がっているように感じられた。
「あなたの至上の愛、確かに受け止めさせていただきましたわ」
「うん……。ありがと……」
お互いの身体を離すのがもったいなくて、そのまましばらく二人で抱きしめ合っていた。
@
エッチを済ませたあとの余韻に浸るのも悪くはなかったのだが、いつまでもそうしていてはいずれ下校時刻となってしまい、先生の見回りが来てしまうので、名残惜しいながらも身支度を整えていた。
小さな部屋なので壁掛け時計はないものの、教材棚の脇に置き時計が立てかけられていて、時計の針は雫ちゃんと帰宅を約束した時間を一時間近くすぎてしまっていた。
待ちくたびれたら先に帰ってて、と言われていたが、これでは完全に逆の立場になってしまっていた。
教室にカバンなどは置きっぱはなしだったから雫ちゃんも私が校内に残っていることに気がついてはいるだろうけれど、まさかこんな時間まで雫ちゃんが教室で待っているようなことがあるだろうか。
「あら、雫さんでしたらもう帰宅していましてよ」
「え、なんで分かるの?」
時計を見つめて思案していた内容は桃華には筒抜けだったらしい。
とはいえ桃華も私がこの部屋を訪れてから一歩も部屋から出ていないというのにどうしてそんなことが把握できるのだろう。
「この愛の新聞部備え付けのPCには最新鋭の設備が取りそろえてありますもの。
特に下駄箱はラブレターの宝庫。下駄箱の中身管理システムで全生徒の出席情報は過去のログまでばっちり把握できますわ。
……まぁもちろん上履きから靴に履き替えて校門のあたりであなたを待っている可能性は否定できませんけれど」
汚れた下着を丸めてハンカチで包み、カバンにしまいながら桃華は得意げに鼻を鳴らした。持ち帰って何かに使うのだろうか。ってそうじゃなくて。
「そんなものすごい仕組みがいつのまに仕掛けられてたの?」
「もちろん、わたくしが入学するのが決まったときに、ですわ。櫻井家の財力を持ってすればそれぐらい朝飯前ですもの」
「いやでも先生たちにバレたらすぐに対策されるんじゃ……」
「あら、この学園の理事は誰と心得て?」
「理事長先生?」
普段学園生活で理事の名前など意識したことはなかったので、思い出すのに時間がかかる。ええっと、確か四月の始業式に壇上にあがった人の名は……。
「サクライ、だったっけ」
「人のお爺様の名字を呼び捨てにするとは、なかなか度胸がおありなこと」
「ええええっ。じゃあ、理事長先生のお孫さん……なの?」
どうりで非公認のはずの学内新聞の取り締まりが緩いわけだ。誰が編集して掲示板に貼りつけているかぐらい、校内の防犯カメラで確認することができただろうから。
「ま、そういう身の丈話なんてどうでもいいんですの。これから必要なのは、あなたへの取材。そうでしょう、ほたるさん?」
「え。いやちょっと待ってよ。確かに秘密を明かすとは言ったけど……」
「わたくしは代わりになるような取材対象を寄越しなさい、と申したはずですわ。……もちろん取材を断るようでしたら話は振り出しに戻させてもらいますけど」
「き、聞いてないよそんなの!」
記事にするまでは口が堅い、と豪語する桃華のことだから取材中はきちんと箝口令が効くのだろうけれど、最終的に記事にされてしまうのならば話は別だ。
大慌てで詰め寄る私の表情を見るや、桃華は肩を上下させて吹き出した。
「ぷっ、あははは。冗談ですのよ。わたくしだって他言していいことといけないことの区別ぐらいつきますわ。
あなたの、そのエッチな秘密については触れないであげましょう。その代わりに取材させていただくのは、あなたの秘めたる恋心。
及川雫さんとの恋愛事情についての取材ですわ」
「……体操服でしてたことは、触れない?」
「ナニをしていたこと、ですの?」
自らが発した下ネタのジョークにケラケラと笑って疑念を否定する桃華。お嬢様な口調でそういうのはあまりよくないと思う。
「もちろん見逃してさしあげますわ。純粋に、女の子と女の子の恋愛、という取材をさせていただければそれで結構。
ああ、なんて幸運なのでしょう。この学園の在籍中に取り扱うのが夢だった、百合ップルについてのネタが、在籍二ヶ月と少しにして向こうから転がり込んでくるなんて」
「じゃあ、それはそれでいいんだけど……。邪魔とか協力とか、お節介はいらないからね」
「恋愛を成就させるもさせないも当人の意志の元に、と最初に申し上げたではありませんの。恋愛相談でしたらいくらでも乗ってあげましてよ」
「はぁ……分かった……」
結局、弱みを握られるような形にはなるらしい。向こうから干渉してくることはないと、言質がとれただけいくらかマシだろうか。
「ああ、それと」
「なぁに?」
下着とスカートを身につけ終えて、ようやく帰り支度が済んだころ、桃華がカメラを構えながら呼びかけた。
「ふたなり体質についての取材は、個人的に続けさせてもらいますからお覚悟を」
パシャリ。目の前でフラッシュが焚かれ、真正面からの写真が撮影された。
「え……?」
「新聞に載せることはありませんけれど……。愛の追求のため、ご協力お願いしますわね。ああもちろん拒否権なんてございませんわよ。
ケーホーに触れる年齢の幼子、しかも学園理事長の孫娘にありったけ中出しをしておいて、責任の一つもとらないなんて、オトコノコじゃありませんもの、ねぇ?」
思わず眉をしかめ、目を開いた先に悪魔の微笑みが存在していた。
「えええええええええええええええ!!???」
> と、ここまででだいたい書きためた分の4割ほどでございます。
> 出力してみると、ほたるさんの口調全然トレスできてなさすぎで恥ずかしい通り越して申し訳ないぐらいなんですけど
> しばらく時間もらって修正してきてもいいですかね?
> どうにか直そうとしたんですけどいじったらいじっただけかけ離れてく感じなので
> もう半分やけっぱちで初稿のをぶっこむことにしました。
> 及川さんもだいぶ別キャラチックになっててゴメンね。お胸の大きさだけ参考にしてください。
> 14歳当時の彼女ってどれぐらいのお胸だったんでしょうね。
■■二章
「おはよ、ほたるちゃん。昨日は一緒に帰れなくてごめんなさいー」
あれから一日明けて。何事もなかったような朝が訪れていた。
雫ちゃんは昨日のすれ違いをしきりに気にしてくれていて、その優しさが心にしみる。
同時にそんな雫ちゃんの体操服を自分の欲望のままに使ってしまったことを激しく後悔していた。
己の心の弱さがなければ桃華にパパラッチされることもなく、今日も平穏な日常を過ごすことができたはずなのに。
「ううん、気にしてないよ。カバン、教室に忘れたままだったけど、何か盗まれたりとかはしてなかった?」
「特にそういうのはなかったかな。心配してくれてありがとう。
帰るときにほたるちゃんの荷物も置きっぱなしだったから少し待ってたんだけど……。
あんまり戻ってくる感じがしなかったから、先に帰っちゃった。もう、待たせるだけ待たせてごめんね。何か用事だったの?」
ちょうど桃華を追いかけて情報準備室にこもっていた時間のことだ。
あの当時に起こった出来事のどれ一つをとっても雫ちゃんに説明できる内容はない。
「あー……。ほら、数学のミニテストの成績がよくなかったから、ちょっと先生に呼び出し食らっちゃってて」
「大変だ。次までには一緒に勉強しようね」
「うん……」
とっさにウソでごまかしたけれど、テストの結果が芳しくなくて追試、というのはあながち冗談では済まないので質が悪い。雫ちゃんもあっさり信じてくれてるし。
@
梅雨入り目前の曇天の空を眺めながら、下駄箱の前で靴を脱ぐ。
……そういえばこの下駄箱ひとつひとつが監視されているんだっけ。
見た目にはなんの変哲のない木製の靴入れに見えるのだけど。
雫ちゃんは既に上履きに履き替え終わり、私のことを待ってくれている。
「どうしたの?」
「あ、ううん。なんでもない」
まぁ下駄箱の中に靴が入っているか上履きが入っているかの違いなんて知られたところで、情報の流出としては大したことではないと思い直し、自分の名前の書かれている下駄箱の蓋を開けた。
「……え?」
扉を開けた先には当たり前のように私の上履きが入っている。ただし、オマケが一緒についてきていた。
年賀はがきよりも一回り小さいサイズの白い封筒が郵便受けの中身のように、私の下駄箱に投函されていた。
学園に登校してくれば必ず目に入る場所に設置しておくのは、必読を希望する心の現れだろうか。
上履きを取り出すのと一緒に封筒を手に取り、裏表を確認してみる。
『白菊ほたるさま』とだけ書かれて差出人の名前が書いていない手紙。
ピンク色のハートマークのシールで封をされたそれは、まるで。
「ラブレターもらっちゃたの、ほたるちゃん!?」
封筒に気を取られていて、真横からの大きな声量に一瞬首が傾いた。
声のする方に視線を向けると、満面の笑み……というには少し口元がだらしない感じの雫ちゃんが、両頬に手のひらを当てて顔を真っ赤にしていた。
「うわぁー。うわあー。進んでるよう、ほたるちゃん……。春の再来だよう……。誰から? 誰から誰から?」
私よりもよっぽど興味津々な雫ちゃん。
雫ちゃんは命の営みを(桃華ちゃんとは異なる意味で)神聖視しているらしく、そのきっかけとなる色恋沙汰にも興味をもつ人だった。
「んー……。名前が書いてないみたいで、開けてみないと分からない……」
ラブレターなんてものをもらったのは当然初めてなのだけど、私の心のなかには雫ちゃんという伴侶がいるので誰からのお誘いであってもお断りするしかないし、そもそも私のことを好きになるような酔狂な人間がいるとは思えない。
イタズラかなにかの線の方が濃いだろう。そう思ってその場で封を切ろうとした。
「ま、待って! こんなところで開けたら手紙を差し出した人がかわいそうだよう。
ね、ここは一度教室まで大事に持って行って、それで、こっそり中身を確認しよう?」
封筒のシールに手をかけたところで、雫ちゃんの両手がそれを押さえ込んだ。
鼻息荒くラブレターの受け取り方のイロハを教えてくれる彼女は、私の何倍も楽しそうに見える。
「そこまで言うなら……」
ひとまずここでの開封は止めにして、テンション覚めやらぬ雫ちゃんの背中を押しながら私たちの教室へと向かった。
「最初はやっぱりほたるちゃんが一人で中身を確認しなくちゃいけないと思う」
と、引っ張るだけ引っ張らせた雫ちゃんは手紙を私の両手に握らせて、自らの席へと戻っていった。
「うーん……」
正直、こういった手紙は迷惑だな、と思う。
本人の意志を確認せず一方的に意見を押し付けてくるものとしか認識ができそうにない。
あまりにも雫ちゃんの関心を集めているから、手紙に嫉妬しているのかもしれない。
とにかく中身を確認して、もしも告白の呼び出しとかの内容が記されているのなら、さっさと断ってしまおう。
そんなことを考えながら、ハートマークの封を解いて、中身の便せんを取り出す。
先ほどから痛いぐらいに雫ちゃんの視線を横から感じているが、ひとまず中身を読み終えない限り、雫ちゃんが許してくれなさそうなので、意を決して手紙を開く。
『白菊ほたるさま 始業のチャイムが鳴る前に情報準備室へおいでくださいまし 愛の報道記者より』
誰か仕込んだイタズラかは即座に理解できた。
ガバリと顔を上げて教室前方の壁掛け時計を確認する。
普段から余裕を持って登校するようにしていたから、指定された時間まではあと十五分ほどの余裕がある。
が、昨日の今日で純粋な呼び出しであるわけがない。
「ちょ、ちょっとごめんね、私行かなくちゃ!」
いつの間にか近くに寄って来ていた雫ちゃんの脇をすり抜けて廊下へと飛び出す。
「ええっ、そんなに大切な用事?」
「すっごく重要!」
詳細を語る時間も惜しいのでそれだけ伝えておく。出席確認の時間までに戻ってこれるか怪しいが、雫ちゃんが事情を説明しておいてくれるだろう。
「結果、どうなったか教えてねー!」
背後から雫ちゃんの声が聞こえてきたが、内容は頭に入ってこなかった。
「桃華ちゃん、これどういうイタズラなの!」
廊下の全力疾走を幸いにも先生に見咎められることもなく、情報準備室にたどり着くことができた。
カギのかかっていない戸を開け放つと、パソコンのモニターを眺めている桃華が脚を組んで椅子にかけていた。
「あら、受け取ってからこちらに到着するまでに妙にラグがありましたのね」
その机まで歩いて行って、受け取ったばかりの書面を突き返した。
「ただの呼び出しに変な手を加えるからだよ! 雫ちゃんがしきりにそわそわしてたから絶対誤解されてるよ!」
「嫉妬心を煽ってあげただけのことですわ」
悪びれるでもなく言い放つ桃華の我路猛突っぷりにはもう閉口するしかないのだろうか。
ため息とともに要件を訊ねると、桃華は昨日とは別の手のひらサイズのコンパクトデジタルカメラを制服のポケットにしまいながら、椅子から立ち上がった。
「昨日、申したでしょう。あなたの身体を調べさせてもらうって。今日からよろしくお願いしますわね」
桃華が隣に立つと、身長の低さがより際立つ。
私の顎の先と彼女の目線の高さが同じぐらいだから、おそらく百四十センチなかばぐらいと推測できる。
そんな小さな身体が昨日、私の怒張を受け入れていたのだ。
「フフ……いやらしいこと、考えていらっしゃるのでしょう?」
言いながら桃華がスカートの中、正確にはショーツの中へ手を差し入れた。
十数時間前の出来事を想起してすこしばかり硬直を始めていたオトコノコの部分が、外部からの刺激に敏感に反応して血液を集めだす。
昨日一日でだいぶ手慣れた桃華は逆手で肉棒を握り、手のひらのヘコみの部分で亀頭をこするように握力を加えてくる。
未だ人にされるのに慣れない私は、敏感すぎる甘い痺れから腰を引いてしまい、情けないへっぴり腰を作ってしまう。
完全に勃起した逸物は元に戻るのに三十分ほどの時間を要する。
視界の隅で捉えた時計は既に始業開始五分前を示していて、このままではまともに授業を受けられなくなってしまう。
年下の女の子の肩にすがる体勢となって、それでも彼女の手の届く範囲から離れようとしない私は、きっと快楽の檻から逃げられなくなってしまっているのだ。
先走り液が幼い手のひらを汚し始めたころ、ようやく桃華の手が肉槍から離れた。
完全に上向きになってしまっている私の恥ずかしい部分がスカートの裏地を押し上げて、女の子にはありえないはずのテントを形成してしまっていた。
「記念撮影でもしましょうか」
そう言って桃華は汚れていない方の手で制服から先ほどのカメラを取り出し、片手でシャッターを切った。
「フフ、さすが昨日新しく用意した最新型ですわね。スカートについたシミも、わたくしの手のひらを汚すぬめりもバッチリ撮影できていますわ」
カメラのモニターで写り具合を確認してひと通り満足したらしい桃華が先走り液の汚れをちり紙で処理して、カメラをポケットにしまった。
「さて、授業に遅れてしまいますわよ。それをさっさと元に戻しなさいな。
カギをかけなければならないのですから、部屋から出ていただかないと」
快楽信号をピタリと止められて中途半端に高まった私の欲望を前に、死刑宣告にも似た物言いをされた。
「そんなぁ……。無理だよう……」
「無理、って……」
「ここまでなったら、出しちゃわないと元にもどんないのに……。桃華ちゃんが勝手に大きくしたんだから、桃華ちゃんが最後まで責任、とってよ」
スカートの裾をまくりあげて、肉突起を晒す。桃華が塗り伸ばしたカウパー腺液でテラテラと怪しい輝きを放っていた。
「お願い……、手かお口ででいいから……!」
昨夕の行為を済ませたあと、どうしても自分でするだけでは満足ができなくなってしまっていた。
帰宅してから夜更けまで、どんなに自分を慰めていても、絶頂に達することができずに悶々としたまま朝を迎えてしまったのだ。
そのためようやく訪れたエッチな刺激に我慢を続けることができなくなってしまっていた。
「はぁ……。分かりましたわよ。わたくしも授業を放っては置けませんから、手伝ってあげればすぐに済みまして?」
「うん! すぐにいっぱい出ると思うから!」
「それ、誇ることではありませんのよ……」
呆れた表情をしながら私の足元に桃華が床に膝をついた。
元々身長が低いせいもあって、私の脚のつけ根が桃華のおデコと同じぐらいの高さになる。
むんずと男性器の根本を掴まれて角度を調整される。
おヘソの下辺りの皮膚が引っ張られる感覚すら、性技を待ちわびている心にはご褒美だった。
数回、桃華の手が胴回りを往復する。
浮き出た血管を半ば押しつぶすことになるのだが、それが返って血液のめぐりを活発にさせ、肉槍全体の硬度が増していく。
ぷっくりと膨らんだ亀頭はさらなる刺激を求めて先端から先汁を漏らし続けている。
吐き出し口を桃華が親指の腹でこすって、潤滑油の量を増やそうとした時、一時間目の開始時刻を告げるチャイムが廊下のスピーカーから聞こえてきた。
「あ……っ。もう、理事長の孫だから授業を放棄してワガママ放題でも平気、なんて噂されたくはありませんのよ」
途端に不機嫌そうな表情になった桃華が短く息を吐いて、でろりと舌を伸ばした。その味覚器官がためらいなく裏スジに押し当てられる。
「くひにおひこんらあろ、するにらしあありゃひゃのころれうから、こひらろほうらよろひいれしょう?」
「桃華ちゃん、何言ってるか分かんない……」
「黙ってさっさと出すもの出してこれをしまいなさいと申しましたの!」
いったん口を離して一言文句を放った桃華は、さらに大きく口を開けて一息に亀頭全体を口内に収めた。
カリ首を越えて一回り細くなっている部分を唇では捕らえ、舌の腹から先端までをたっぷり使って鈴口から裏スジまでを舐めあげられると、太ももの震えが止まらなくなる。
暴れようとする先端部分をあやすように、桃華の舌腹が裏スジを中心に旋回して唾液をまぶしていく。味蕾のざらつきが亀頭を撫でるたびに快楽のパルスが腰元を駆け抜けていく。
昨日の口内射精のときはほんの一瞬口唇を割っただけだったから気がつかなかったが、限界まで口を大きく開けて精一杯に逸物を頬張る、幼子にも見える容姿は視覚には犯罪級の倒錯具合に映る。
不機嫌そうな眉根すら無理矢理感を演出しているようで、彼女の口を犯す衝動が膨れ上がってくる。
桃華はなんとか早く放出をさせようと思ってくれているらしく、舌腹を押し上げて上顎とのサンドイッチで亀頭部分を刺激してくれている。
これはこれで気持ちが良いのだけれど、先端部分しか口に含んでもらえていないため竿への刺激がほとんどなく、少々物足りない。
「……桃華ちゃん、苦しかったらごめんね」
口唇愛撫に気を取られていた桃華の耳にははっきりと届かなかったらしく、上目遣いで言葉を聞き返してきたが、私はそれに答えず、彼女の後頭部を両手でホールドして、顎を引き上げた。
同時に脚を一歩ほど踏み込んで、彼女の顔をまたぐような体勢を取る。
趣旨が把握できずに眉を潜める彼女の、一直線に近くなった喉を狙って、腰を落とした。
「んんぐむぅぅぅ!?」
悲痛な呻き声とともに、桃華の腰が床に落ちる。
少しでも侵略者から距離を取ろうとした防衛行動なのだろうけれど、それは返って私の腰元から逃げ道を失う結果となった。
肉茎の先端が粘膜の壁に触れたのち、さらに垂直に近い角度存在していた抜け道へ方向が修正され、ゴポッとかいう音を立ててそちらに亀頭部分が埋まった。
何が起こったか理解しきれておらず、目を白黒させるお嬢様の口からグロテクスな肉棒が全長の四分の一ほどを残して沈んでいる状況は、傍目にも痛々しく映る。
ずりずりとあえて時間をかけて陰茎を引きずり出すと、唇の隙間から唾液が溢れて、女の子座りになった桃華のスカートに滴って布地に吸い込まれていく。
舌のつけ根のあたりの一番狭くなっている部分を、肉槍の最太部であるカリ首が脱出してきたのを合図に再度膝を曲げる。
ターゲットが明確だったからか一回目と比べてすんなり腰が下がり、桃華の下唇が私の女陰に触れるところまでの挿入を果たした。
暴虐をつくされる少女の肩や腹筋が痙攣しているのが分かる。
おそらくは異物を吐き出そうと咳き込んでいるのだろうが、気管支の出口をを極太が占領してしまっているためにそれすらも叶わない状態にある。
その咳込みによって喉が収縮し肉竿を心地よく刺激してくれていた。
喉奥を犯すコツを掴んだ私は、裏スジに桃華の舌根を感じるところまで引き抜き、下腹部と鼻頭がぶつかるまで打ち下ろすピストン運動を繰り返していく。
ときおり、だらしなく口唇からはみ出た舌腹にも鈴口をなすりつけて、先汁と唾液とのカクテルを作っておく。
特に喉を越える瞬間の、窮屈な部分を亀頭で押し分ける圧迫感がたまらない。
そこを重点的に往復していると一気に快楽曲線が限界を迎えてしまう。
「桃華ちゃん、ベロの上にいっぱい射精されるのと、喉の奥のほうにびゅーびゅーってされるのと、どっちがいい?」
自分では甲乙がつけがたい二択にアドバイスを貰おうと問いかけるも、咳払いすら許されない状態の桃華から回答を得られるわけもなかった。
「じゃ、じゃあ、昨日は舌の上だったから、今日は喉の奥の方にするねっ」
桃華の返事を待たず、腰を口唇に押し付ける。なんども喉奥を往復されて口からはみ出してしまっていた桃華の舌が偶然にも私の陰核に触れ、射精を促した。
根本から先端まで血液が凝縮され、経が増したように思える。次の瞬間、精液を抑えこんでいた根本の筋肉が緩み、オトコノコの中の管を濁流が突き進む。
喉の一番狭い部分はすでに肉竿が通過してしまっているため、何者にも邪魔されることなく精液が食道まで辿り着く。
胃袋に直接ぶちまけるかのような勢いで男精がほとばしり、喉を鳴らす暇もなく体内へ流し込まれていく。
吐精のために男根が律動するのに合わせて、桃華の黒目が上を向いていくのがわかった。
「っは、ああぁぁ……」
一夜越しの白濁を一滴も余すことなく桃華の中に放ち、ようやく硬度を失っていく男性器の変化を感じ取り、本来の目的を思い出すことができた。
「わ、ごめん。出すだけなら別に、手でしてもらうだけでも良かったんだけど……」
桃華が自ら口奉仕をしてくれたことで少々調子に乗ってしまった。
ひとまずは気道を確保しなくてはならないため、ゆっくりと肉茎を桃華の口唇から引き抜いていく。
まだ少々形を保ったままの矛は彼女の唾液でベトベトになっていた。
全てを引きずり出して後頭部の拘束を解放させると、だらりと彼女の頭が垂れた。
首を支える力すら残っていないらしい。
上半身はかろうじてバランスを保っているので前かがみに倒れこむことはなさそうだが、半開きの口元から唾液が溢れっぱなしになってしまっている。
ゼェゼェという重々しい呼吸音が正常に戻るまでに、彼女のハンカチを借りて自分と桃華の身だしなみを整えておく。
よだれが垂れてくる分はスカートの上に折りたたんだハンカチを置いておくことで対処した。
「……す」
オトコノコの部分が下着の中に収まるようになってから十分ほどして、桃華の口から何か言葉が発せられた。なんとか意識が正常になったようだ。
「おはよう、気がついた?」
「ぶっ殺しますわよ、あなた!」
ただでさえつり目気味な眉目をうんと釣り上げての猛抗議が起こった。
本来ならこちらに詰め寄ってきて胸ぐらでも掴み上げそうな勢いだけれど、まだそこまで体力が回復していないようで、人差し指を突きつける程度で済んでいる。
「この準備室はわたくしの居城ですから監視カメラも何も準備してありませんけれどっ、
もしも今の出来事を物証にきちんと残せていたのなら、即刻学内掲示にしているところですわ!」
「え、ええと……」
「それに、なんですのっ。『喉の奥の方にするねっ』ってのは! わたくしきちんと首を振って拒否しましてよ!」
そんな意思疎通があったとは。食道を犯すのに夢中で全く気がつかなかった。
「文句は山ほどありますけれど……。ひとまず、ここに呼び出してあなたのソレをいたずらに硬くさせた責は果たしましてよ。
これでチャラ……いえ、貸し一つにしておきますわね」
スカートの上に置いておいたハンカチで口元のよだれのあとを拭いながら桃華はそっぽを向いた。
なんだかんだで率先して私の処理を手伝ってくれていたらしい。
「ありがと、桃華ちゃん」
「お礼を言う暇があるなら貸しの返し方でも考えておきなさいな……。
そうですわ、ではお昼休みにもわたくしのところにおいでなさいな。
チャイムが鳴ったら西階段の屋上へ出る扉の前でお待ちなさい」
「え、でも私お昼は雫ちゃんと一緒に……」
「やかましい。一日ぐらい我慢なさい」
お昼ご飯の時間は授業中に席が少し離れている雫ちゃんと正面を向き合ってお話のできる数少ない機会なのでそれを剥奪されるのはなかなか厳しい。
けれどもう桃華の中でそれは決定事項になってしまったらしく、私がいくら撤回を求めても聞き入れてはもらえなかった。
@
結局、桃華との密会がお開きになったのは一時間目の授業がほとんど終わってしまった時刻だったので、自分の教室に戻るのは二時間目との間の休み時間になった。
次の授業こそは真面目に取り組もうと、自分の席で教科書の準備をしていると、瞳を爛々に輝かせた雫ちゃんが私の席へやってきた。
「ほたるちゃん、いきなり授業放棄で秘密のアバンチュール? ラブレター開いた瞬間に飛び出していっちゃうんだから、相手の人も差出人冥利に尽きるよねぇ。
あ、大丈夫だよ。先生には体調不良だってちゃんとごまかしておいたから。でもほたるちゃんの病名が恋の病ならウソじゃなくなっちゃうのかなぁ」
机の上に乗り出してくる勢いの彼女は、数々の憶測を並べたのちにうっとりとした表情になって未来に何かを馳せていた。
「え、えっと……雫ちゃん、何の話? 今私が会ってきたのは……」
「いやいやいや。一時間も延長してたんでしょう? みなまで聞かなくても私には分かるよ。
分かるけど、すっごく詳しく聞きたいから、お昼休みにじっくりお話聞かせて?
今ここでかい摘んでお話されちゃうと、楽しみがものすごーく減っちゃうから」
「はぁ……。あ、ゴメン。今日お昼はちょっと用事があるんだ。今まで会ってた人ともう一度会う約束してて」
桃華の名を出してもよかったのだが、『サクライ』という名前は雫ちゃんもよく知っているだろうし、彼女とエッチにまで至ってしまったことを知られるのも困るので名前は伏せておくことにした。
「ええええぇ!? ……あ、でもそうだよね。普通そうだよね。
ラブレターで呼び出されて一時間もお話してたんだもんね。そっち優先になっちゃうよね。
……もしかしてほたるちゃんが例の学内新聞に載っちゃう日も近いのかな」
「例の、って。愛の学内新聞?」
私の秘密については他言しないと約束してくれた桃華だったが、私と雫ちゃんの仲にはちょっかいをかけるつもりでいそうだし、個人的にとは言えふたなりの件について調べさせろと命令されている立場だ。
「……あながち、載っちゃうのかも」
苦笑交じりにボヤくと、雫ちゃんの目がまんまるに見開かれた。
妙にテンションが高まっているためかさきほどから少々表情が豊かすぎる気がしないでもない。
「ひ……ひどいネタバレをされた……。ううう、それ絶対にオチで、結末だよう」
がっくりとうなだれて今にも涙を流しそうな雫ちゃん。なにか悪いことを言ってしまったのだろうか。
「ひとまず、今日の帰りでも放課後でも夜でも明日の朝でもいいから、時間あるときにお話、じっくり聞かせてね」
雫ちゃんが私に念を押すと同時に二時間目開始を告げるチャイムが鳴った。
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昼休み。授業中もしきりにそわそわしていた雫ちゃんに、別行動をとることを告げて、お弁当を片手に西階段へと向かう。
「桃華ちゃんは屋上へ続く扉の前で待ってろって言ってたけど……」
そもそも屋上へは用事がない限り立ち入り禁止になっていたはず。
待ち合わせ場所に到着して、試しにドアノブに手をかけてみたが当然ロックされていた。
桃華がなにか適当な理由作って鍵を借りてきてくれるのだろうか。それとも屋上には出ずに階段の踊り場で用事を済ませるのだろうか。
「あら、お早いこと」
ドアの前で少々待ちぼうけていると、購買のレジ袋を片手に桃華が現れた。
「鍵借りてこれたの?」
見たところ、そのようなものは持っていないようだ。そうすると踊り場で用を済ませるということだろうか。
「わざわざそんなもの用意する必要はありませんのよ」
購買の袋を私に押しつけて、制服の胸ポケットから細いヘアピンを二本取り出した桃華はそれを屋上への扉の鍵穴に突っ込んだ。
なんどか上下にピンを揺さぶったのち、ぐるりと半回転させる。
「さ、行きましょう」
先ほどまで鍵がかかっていたはずの扉は、それが当然であるかのようにその口を開けた。
「……準備室の鍵もそうやって開け閉めしてたの?」
「失礼ですわね。あの部屋は正式に借りているものでしてよ」
正式じゃないルートで拝借しているものがあるかのような物言いだった。
屋上に足を踏み出してみると、曇り空のわりにはむき出しのコンクリートからの照りつけがあって蒸し暑い。
普段立ち入りを禁止しているだけあってベンチの類は置かれていないため、直接腰を下ろすにはしんどそうに見えた。
「あちらの日陰にいきますわよ」
桃華も同感だったらしく、屋上の出入り口がついている建物の側面へと私を引き連れた。
日陰に移動すると照り返しはほとんどなく、風通しもよいため快適に過ごすことができそうだった。
桃華はハンカチをコンクリートに敷いてその上に腰を下ろしていた。
「そのハンカチって、朝使ったやつ?」
「きちんと洗いましてよ」
さすがによだれがたっぷり染み込んだまま持ち歩いていたわけではなかったらしい。
私も隣に腰を下ろしてお弁当の包みを解く。
桃華は購買で買ってきたらしいサンドイッチひとつとコーヒー牛乳ひとつだけのようだ。
「購買派なんだ。一流シェフの作ったお弁当みたいなの想像してた」
「そういったものは家に帰ればいくらでもありますもの」
「量、少なくない? 私のお弁当すこし分けっこする?」
「自分の身体に必要な量ぐらい熟知していましてよ。燃費のいい身体とおっしゃってもらいたいものですわ」
「でもちゃんと食べないと大きくなれな……」
「やかましい。あなただってちんちくりんな身体していますくせして」
桃華にそれを言われるとなかなか傷つく。が、否定しきれないのもまた事実だった。量が量だけに桃華の食事はすぐに終わり、私を待つ体勢になる。
「あなたのそのヤンチャ様、ご両親はご存じですの?」
「……ヤンチャ様?」
聞き慣れない単語に首を傾げると、桃華は私の脚のつけ根を指さした。
それで言わんとすることは一応理解できたけど、ヤンチャ様って。
「親は知ってる。あとおじいちゃんおばあちゃんも知ってたと思う」
「雫さんも知りませんの?」
「雫ちゃんは知ってるよ。昔から一緒だったから。……そういえば雫ちゃんのお父さんとお母さんは私のこと知ってるのかな」
「厳重に秘密を守っているのか、なあなあに広まっているのか、よく分かりませんわね……。
ひとまず、この校内でそれを知っているのは、雫さんとわたくしだけ、ということでよろしいんですの?」
「そうなるかな。先生にも言ってないし、他の人は知らないはず」
まさか雫ちゃんが他の人に話しているとも思えないし。
「童貞を卒業したことは雫さん、ご存じ?」
唐突な猥談にお弁当を吹き出しそうになる。
「い、言うわけないよっ」
「あら。女の味を知って見境なく他の子を襲うものだとばっかり」
「……桃華ちゃん、怒るよ。私がどれだけ我慢してるか知らないのに」
そりゃあエッチな目で見たことがないかと問われれば、回答に詰まるより他ないけど。
少しばかりムッとして咎めたのに桃華はいつものケラケラ笑いをして意に介さない様子だった。
「ため込んでいた量なら身を持って知っていましてよ。……やはり男の人はおっぱいの大きい方が好みなのです?」
「知らないよ、そんなの。私は雫ちゃんだから好きなだけで、体格とか顔の作りなんて興味ない」
それに男の人の感覚なんてものも知る由がない。男の子としゃべることはほとんどないし、私はどっちでもない身なのだから。
「一途ですのね。そのわりには昨日、今朝と浮気し放題でしたけど」
お弁当を食べ終わったころを狙って、桃華が私の腰にまたがってきた。額同士がくっつくほどの距離で年下の少女の唇がなまめかしく動く。
「今度はわたくしが気持ちよくしてもらう番ですわよ」
「……ここで?」
「一年以上校内で生活していて、昼休みの屋上に一度でも興味を持ったことがありまして? 先輩」
「ないけど……」
基本的に人が上がってくることがほぼないとはいえ、昼休みのまっただ中で多くの生徒が校内にいる時間帯だ。
誰かに見つからない保証はまったくない。大丈夫と決め込んでバレたのが昨日の私なのだ。
「わたくしはあなたの身体に興味がありましてよ。たとえば、こっちの女の子の部分はどういう反応をするのか、とか」
スカートの中に桃華の指が伸ばされるのは、これで何度目だろう。既に手慣れた様子で下着の間に人差し指と中指が差し込まれる。
「あ、やっ、そっちは……」
「性欲多望なほたるさんはおひとりですることも多いでしょうけれど、普段はどっちを使ってしていらっしゃいますの?」
「……知らないよ、そんなの」
「あら。それでは身体に直接聞かせていただきますわね」
オヤジくさい台詞を紡ぎながら、桃華の指が秘裂に進入してくる。
「ま、待って……! ホントにそっちはダメ……!」
「もしかして処女なんですの? わたくしですら経験済みというのに。まぁ、自分で自分のものを入れるような芸当ができるわけでもありませんし、仕方ありませんわね」
ほんの少しだけ指先が手加減をしてくれたように感じた。指の先から関節ひとつ分の挿入だけで勘弁してくれているようだ。
「……仮に雫さんと交際することになったとして、あなたはどちらの役割を果たしますの?」
二指を膣内に納めたまま親指と小指でリングを作り、血液の集まり始めた肉茎を器用に刺激する桃華。
彼女の質問はいちいち私の悩みを突っついてくれる。
同性ともとるにとれない立場の私が雫ちゃんと身体を重ねられるかすら怪しいのに。
雫ちゃんの処女を奪ったり、私の処女を捧げたり。そんな将来が実現することがあるだろうか。
「あなたにしかない、このヤンチャ様で彼女を喘がせるのか、それとも張り型かなにかで雫さんに処女を奪ってもらうのか……。
ぜひとも取材、させてもらいたいですわ」
少しだけ深めに指が挿入されると同時、指の付け根の関節が陰核を押しつぶしてくる。
先端部を除いた三点を同時に責められると桃華の皮肉めいた物言いにも反論ができなくなってしまう。
眉根を寄せて肩を震わせる私の耳を甘噛みしながら、桃華がささやく。
「心底、あなたは両方の性質を兼ね揃えていますのね。オトコノコとオンナノコ。それにドSとドM。
今朝はあんなに容赦なくわたくしをいじめてくださいましたのに、今は童女のように身を悶えさせるだけ」
先走りが幹を伝って幼い手のひらを汚し始めたとき、桃華は身体を離して屋上のフェンスに手をついた。
「オンナノコの方の感度も良好でしたわよ。少なくともちょっといじられただけでだらしなくヨダレを垂らす程度には。
さ、こちらにおいでなさい。今度はわたくしにいじめられるのか、わたくしをいじめてくれるのか、どちらかしらね」
小降りのお尻をこちらに見せつけ、猫が背筋を伸ばすように腰を曲げ、背を反らす桃華。
ツンと持ち上がった腰元はそれでも私の腰より低い。ふらふらと歩み寄って、彼女の尻にかかっているスカートを捲って、下着に手をかける。
蒸し暑さによる汗のせいか、わずかに肌に貼りついている布地を膝上まで引き下げると、およそ日光に触れていないであろう、陶磁器のような輝きを放つかわいらしげなお尻が現れた。
ほんの少しだけ色味が違う尻の中心はキツく口をすぼめていて、とても排泄物が出ていくところとは思えない神秘さを醸していた。
すこし視線を下げると、ひとすじのぴっちりとした割れ目が一直線に走っただけの幼い淫裂が視界に入った。
割れ目の左右の肉はぷっくりと膨らんでいて弾力と張りを兼ね揃えた芸術的な造りをしている。
昨日はスカートの影に隠れて結合部が見えなかったが、こんな小さな場所に私のものが飲み込まれていたというのが信じられない。
モノをあてがってみると、亀頭の直径と割れ目の長さがほぼほぼ一緒に見える。
瑞々しい張りを持つ尻たぶに手をかけ、親指で秘肉を分け開いてみると、人差し指一本が通るのかすらも怪しい小穴を見つけることができた。
その下に見える針穴のような場所は尿道のはずなので、消去法で考えても正しい入り口はここになる。
「なにを今更戸惑うことがありますの?」
「女の子の部分なんて、自分で見たことないよう……」
自己主張の激しい隆起の方はまじまじと観察したことがあるが、淫裂についてはそれこそ保健体育の知識と同等レベルにしかない。
桃華のシンプルすぎる造りはその答え合わせにはちょうどいい教材のように思えるが、雄々しい私の突端とのコントラストは目に毒すぎる。
「い、入れても……いいんだよね……?」
「あまり怖じ気付いたままでいらっしゃるのでしたら、またわたくしが上になってもよろしいですわよ?」
桃華が膝を伸ばし腰を下げたせいで、肉唇が亀頭の三分の一ほどをくわえこんだ。
挿入口に間違いはない。あとは腰を突き込むか、桃華の胴ををたぐり寄せるだけ。
「あ……、あとで泣いても知らないからねっ」
ばちゅん、と私の下腹部と桃華の尻がぶつかり合う音が屋上の床に反射した。
@
「ううーん。ほたるちゃん生殺しすぎるよう……」
今朝、幼なじみの下駄箱に差出人不明のラブレターが入っていたと思ったら、すぐにほたるちゃんはその差出人のところへ駆けて行ってしまった。
運動があまり得意ではないはずの彼女の全力疾走なんて、物心ついたころから一緒に過ごしてきた自分ですら滅多に見たことがないというのに。
そしてそのまま彼女は一時間目の授業に出席しなかった。
というよりは差出人との密会を優先したという方が正しいか。
告白を受けるだけなら相手の決意のほどにもよるだろうけど、十分とか十五分ぐらいで終わるものだと想像できるので、それ以上の進展があったものだと考えられる。
ほたるちゃんは自分の目から見てもキュートで可憐でプリティな女の子だから密かに男の子にも人気があると聞く。
彼女が抱える秘密は決して些細なことではないけれど、愛の力を持ってすればきっとその障害も乗り越えられるだろう。
どちらかと言えば引っ込み思案な彼女の心を一撃でしとめてしまうようなお相手がどんな人なのか、気になる。すっごく気になる。
だから授業中に悶々と想像を重ねていて、ようやくほたるちゃんが戻ってきたときに話を聞きたかったのだが、当のほたるちゃんは昼休みにもうそのお相手の人と会う約束をしてしまっていた。
朝にも会ってお昼にも会うなんて、相思相愛にもほどがある。そして追い打ちをかけるようなほたるちゃんの、愛の新聞掲載宣言。
あの学内新聞は校内カップルがおつき合いをしだしたことを宣言するためのようなものだから、いずれそこに載るというのは二人が末永く幸せになる一歩を踏み出すようなものだ。
ほたるちゃんに恋愛っけはほとんどなかったように思えるけれど、そんな彼女を付き合いだした相手が誰なのか。
気になりすぎてお昼ご飯もろくにのどを通らなかった。
「お弁当持って出てったってことは、どこかでお昼ご飯を一緒にしているはずなんだけど……」
通らなかった結果、する事は一つ。デバガメである。
愛の新聞掲載宣言でほぼほぼネタバレだったからもう怖いものなどない。
それよりも放課後や明日の朝まで待つ方がしんどいし、もしかしたらその時間すらもほたるちゃんの恋人に独占されてしまって話を聞けなくなるかもしれない。
生殺しにもほどがある。なので、こっそりほたるちゃんを発見して相手の人がどんな人物なのかを知っておきたかった。
すべての普通教室を廊下から眺めて歩いてみたが、ほたるちゃんの姿は見つからなかった。
校庭に出ている可能性もあったが、げた箱に靴が入ったままになっていたため、その線は薄そうだ。
と、すると特別教室のどこかで密会、というのも考えられるがお昼休みに特別教室を使っているのは文化系の部活動の人たちとせいぜい図書室ぐらいで、生徒会の視察と称して教室を覗かせてもらったがついに彼女の姿は見つけられなかった。
まだ短い人生だが既に十年以上のつきあいだ。後ろ姿でも横顔でも、視界に入りさえすれば認識できるはずなのだけど。
「あと探してないところってどこだろう……。もしかしたら校内をずっと移動し続けてるってこともあるけど……」
学内の歩き回った場所を整理していく。普通教室、特別教室、廊下、上履きで行けそうな校舎周辺、トイレの個室……。
内側からカギのかけられた部屋に籠もっていられたら探しようがないので、外に居てもらいたいが。
「……外?」
そういえば、まだ探していない場所があった。校舎の中で上履きで歩くことのできる、外といえば。
「屋上って簡単に出入りできたっけ」
西階段を上がったところの出入り口は常に鍵がかけられていた気がする。が、ダメもとでも向かってみる価値はあるだろう。
@
「ふぅっ、くぅんっ、あああっ、くぅぅぅんんっ!」
「と、桃華ちゃん。声、おっきい……!」
「ズンッ、ズンッてヤンチャ様に奥を突かれるたび、息が漏れてしまいますのぉ!」
子宮口を激しく打ちつける、遠慮のないピストン運動にもすっかり甘い声を鳴かせるようになった桃華は、私の腰の動きにあわせてお尻を下げてくることを覚えていた。
自分で予想しているよりも早い段階で最奥部にぶつかるため、勢いを余らせた怒張は彼女の内壁を奥へと押しやろうと、身体全体を揺り動かす。
一突きするたびに子宮口より向こうの彼女の内蔵がぐちゃぐちゃにかき回されているような錯覚すら覚えてしまう。
桃華の尻は私のそれよりも低い位置にあるため、肉棒が斜め下を向いて彼女の襞々をかき分けて進んでいく。
彼女のおヘソの側の肉襞を陰茎の裏スジが腹ばいに滑っていくような突き込みになるため、襞のひとつひとつが男根のもっとも敏感な部分を舐めるように迎え入れ、最深部では膣道のすぼまりが亀頭全体を抱きしめるように包み込んでくれる。
復路ではカリ首の返しが桃華の膣壁にかんなをかけるが如く刺激を与え、潤滑油の分泌を促して次の突き込みを今か今かと待ちわびる。
ときおり、愉悦に負けて姿勢を崩す桃華。
ピストンの目測がズレて肉槍が抜け落ちそうになるも、彼女の秘唇は決して陰茎を抜けさせまいと懸命に食らいついてくる。
へっぴり腰になりつつある彼女の背を正してあげようと、身体の中心部に埋め込んだ指示棒で腰を持ち上げてやると、桃華は悲鳴を上げながらおとがいを反らした。
少しだけ腰の高さが増して往復運動のしやすくなった淫襞へ体重の乗った一撃を見舞ってやると膝から腹筋から背筋からをぶるぶると痙攣させ、幼い秘裂から甘露をほとばしらせた。
@
西階段の上からかすかにほたるちゃんの声が聞こえてきたとき、彼女の居場所を確信した。
屋上へ続く扉がうっすら開いたままとなっていたから推理がドンぴしゃだったことに頬をゆるませ、きっと彼女は例の恋人と甘いひとときを過ごしているのだろうと思った。
だから邪魔をしないように、その相手の姿をこっそりと眺めさせてもらって、それで満足しようと考えていた。それなのに。
「桃華ちゃん、桃華ちゃんっ、中、出してもいい!?」
「構いませんわぁっ。赤ちゃんのお部屋、いっぱい口付けしてどぷどぷって出してくださいまし……!」
肉と肉のぶつかり合う音。風向きの都合でこちらにまで漂ってくる淫蜜の香り。他の誰でもないほたるちゃんの後ろ姿と、その相手とみられる……女の子。
「あっ、あっ、ああっ! 出るぅ、出ちゃう、よぉ……!」
これまで以上に激しく肌を打ち鳴らし、下級生の腰を抱えるほたるちゃん。
二人の肌がぴったりと密着したのち、幼なじみの動きが止まる。
……いや、太ももがかすかに脈打ち、やがて結合部からボタボタと大量の白濁液が滴り落ち、屋上のコンクリートを汚した。
結合部の栓が抜かれると、その白濁がほんの一部でしかなかったことをまざまざと見せつけられる。
コップ一杯の水をこぼしたらあれぐらいに水たまりが広がるだろうか。
膝から崩れ落ちる少女の身体をほたるちゃんが支え、精液で汚れた床から距離をとって座らせた。
そのあとも彼女の秘所からは二人の混合液が漏れ出ているらしく、ハンカチでそこを押さえている様子が伺えた。
一方的にも見える性交であったため下級生の容態が気にはなったが、ほたるちゃんが一言二言声をかけると、すこしばかり口をとがらせつつも満ち足りた微笑みで返事をする少女の姿を見た。
その幸せそうな笑顔で、食い入るように情事を鑑賞してしまった自分に気がつき扉の影に身を隠す。
―――信じられない光景を見てしまった。
ほたるちゃんに恋人ができたと知って、ぼんやりと頭に浮かんでいた幼なじみの相手は年上の男の人だった。
健気でかわいらしい幼なじみよりもずっと背が高く勉強もスポーツも万能なカッコイイ男の人が、通学途中や部活動で汗を流しているときにほたるちゃんの姿を見つけ、手紙に想いをしたためたのだと思いこんでいた。
お互いに愛をささやき手と手を触れ合わせ、キスシーンのひとつぐらいはもしかしたら見れてしまうのではないか。
そんな気軽さでほたるちゃんを探し回っていたはずなのに。
私が見たものは、ほたるちゃんの絶対の秘密でもある男性器をぐっぷりとくわえ込み、昼休みの学校内でまぐわりあう、一瞥では小学生にも見えてしまう幼い体つきの女の子。
手をつないだりキスをしたりなんて初々しい妄想をはるかに凌駕する肉々しい光景。
信じたくなかった。けれど、自分の目ではっきりと見てしまった。二人の嬌声が耳にも届いた。
体液のニオイすら嗅いでしまった。否定できる要素はどこにもなかった。心を滅多打ちにされたような気分になる。
せめてこんな自分が二人に見つかってしまわないように、ふらふらとおぼつかない足取りで屋上へと続く階段を下っていく。
手すりに体重をかけなければ膝から崩れてしまいそうだった。
どうして、こんなにも衝撃を受けているのだろう。心が打ちひしがれた理由を探っていく。
幼なじみが先に恋人を作ったから? ……違う。
空想よりもはるかに卑猥な行為にふけっていたから? ……これも違う。
親友が学内で自分しか知らないはずの秘密を他の人に打ち明けていたから? ……もっと的確な理由があるはず。
ほたるちゃんの恋人が女の子だったから―――。女の子をそういう目で見られると知っていたのなら、私にも。
私にも? 私にも、なんだ。なにがあったと言えるんだ。ほたるちゃんの心の悩みの解決になることをひとつもしてこなかった、私が。
幼い頃から一緒に時間を過ごしてきておいて、その秘密を見て見ぬ振りし続けてきたのは自分ではないか。
小さな身体で一生懸命にほたるちゃんを受け入れている、桃華と呼ばれた女の子。
彼女がほたるちゃんの精を受け止めたときの、とろけきった顔が網膜にこびりついて離れなかった。
■■三章
桃華に偽物のラブレターで呼び出され、昼休みに屋上で過ごした日の放課後。
「雫ちゃん、一緒に帰ろう? 今朝の話、したいし」
昼休みは時間いっぱいまで桃華と情事を過ごしていたために、雫ちゃんが望んでいた朝の話をすることができなかった。
時間のあるときにいつでもいいから話してくれ、と頼まれていたのをそろそろ解決しなければならないと思って、下校を誘った。
「あ……、ごめんね、私今日も生徒会に行かなくちゃいけなくて……」
「そうなんだ。昨日と同じ時間ぐらいで終わるなら待ってようと思うけど」
放課後については桃華から呼び出しを受けているわけではないし、昨日のようなハプニングが再度発生するようなことはさすがにないだろうから、今日はきちんと待っていられるだろう。
けれど、雫ちゃんの反応は芳しくなかった。
「ううん! 今日はすっごく時間かかりそう。二時間とか、三時間とか。だからあんまり待たせちゃうのもよくないから、ほたるちゃんは先に帰ってて」
その時間帯まで校内で時間を潰すのは少々辛い気もする。
基本的に用事のない生徒は放課後に校内に残っていてはいけない決まりなので、居残りの理由が生徒会所属の雫ちゃんを待つため、というのは彼女にも迷惑がかかりそうだ。
ここは雫ちゃんの言うとおりに先に帰宅してしまうのがいいだろう。
「わかった。それじゃまた明日ね」
今日の放課後以外にも雫ちゃんとお話をできる時間はいくらでもある。
次の機会を楽しみにしていればいいだろう。生徒会室に向かう彼女に手を振って、今日はまっすぐに自宅へ帰ることができた。
@
翌朝。下駄箱で靴を履き替えていると、学内掲示板にまた人だかりができていた。
先日の姐さんカップルの続報、とやらが掲載されているらしい。
遠目にその見出しに目を通しながら教室へ向かおうとすると、人だかりから離れた場所で廊下の壁に背を預ける桃華の姿があった。
新聞記事に目を通す生徒たちの横顔を眺めているらしい。
「おはよ。やっぱり自分の書いた新聞の評判って気になるもの?」
「もちろんですわ。生徒たちにどれだけ認知されているか、どれだけの需要があるか、どれぐらいのタイミングで掲示が剥がされるか、どれもわたくしの新聞を構成する重要な要素ですもの。
わたくしが報道したということは理事長が認めたということと同義。
愛し愛され結ばれた二人を他人が邪魔することなど、あってはなりませんもの。たとえどれだけ身分が違えども、ですわ」
普段外見のわりには大人ぶった態度を見せている桃華だが、自分の書いた記事についての説明はえらく熱がこもっていた。
そんな語りをしてしまった自分に照れくささを感じたようで、桃華は一度咳払いをして空気を変えようとした。
「……あら、そういえば今日はほたるさんひとりですの?」
いつも一緒に登校している雫ちゃんの姿を見つけられないことに疑問を持ったようだ。
「うん。なんか、生徒会の用事があるから朝は一緒に登校できそうにないってメールが届いてて」
「ふぅん……? あなた、雫さんのことを好いているのですよね?」
「ちょ、あんまり廊下でそう言うのは……」
自分の身体のことも重大な秘密だが、雫ちゃんへの想いも秘密のひとつなのであわてて辺りを見渡す。
近くを通る人はおらず、幸い会話は聞かれていないようだった。桃華もその点は汲んでくれたらしく、固有名詞をボカして言葉を続けた。
「生徒会の仕事で朝が一緒になれないと残念そうな顔をするのでしたら、なぜ生徒会に一緒に入らないのです?」
「私、ほら、体力ないから。雫ちゃんに迷惑かけちゃう」
もっと言うなら一緒に生徒会の仕事をするとして、魅力的すぎる彼女に触発されてオトコノコの部分が反応してしまうのが怖かった。
秘密を共有してくれている彼女だからこそ、自分の醜く浅ましい姿は見せたくない。
「わたくしの支援を受けないというのでしたら、少しはあなたから距離を踏み寄ってもらいたいものですわね。幸いにも、需要には事欠きませんのよ」
頻繁に見せる皮肉めいた口調で桃華は学内掲示板を見やった。
今も十名ほどの生徒がその掲示板を見つめていた。校内のだれからも祝福されるような、そんな立場に私は居るだろうか。
異性同士の恋愛なら、こんなにも簡単なことはないというのに。
その日の昼休みも放課後も、雫ちゃんは生徒会の仕事に向かうと私に告げて、ひとり教室を出て行った。
@
「最近わたくしとばかり会っているみたいですけど、雫さんとの仲は少しでも進展しましたの?」
「なんか、この頃生徒会が忙しいみたいで、雫ちゃんと一緒にいられる時間がほとんどなくて。
もう二週間ぐらい、朝も帰りも一人で登下校してるし」
お昼休みすらも雫ちゃんは生徒会の仕事に駆り出されているため、近頃は情報準備室でお昼ごはんを食べることが多くなっていた。
「生徒会が? もうすぐテスト期間に入るような時期に、生徒会が仕事をするような行事はなかったように思いますけれど」
「え?」
「あなた、避けられているのでは?」
パソコンのモニターを見つめながらブラインドタッチで次号の新聞の記事を制作していく桃華。
「でも、雫ちゃんが私にウソをつく理由なんて……」
「想い人があなたに正直でなくてはいけない理由こそありませんのよ。
第一あなただって、わたくしとの関係を雫さんに話してはいないのでしょう?」
椅子に私を座らせて、その太ももの上に小さなお尻を載せている桃華は、こちらに視線をくれることなくデジカメの画像を選別して新聞記事の紙面に貼り付け、レイアウトを確認していく。
「それは……そうだけど……」
「なら、雫さんがなにかを隠していたって文句は言えませんわよね。
よしんば、あなたのいう『ウソをつく理由がない』というのが本当だとしましょう。
けれど、現にあなたは彼女に避けられているのですから、隠し事をするだけの理由ができてしまった、ということですわ」
「そんな……」
見出しの配置は確定できたようだが、いまいちピンとくる一文が思いつかなかったらしく、桃華は途中経過を保存して紙面制作ソフトを終了させた。
そのまま私に背中を預け、一時停止していた腰振りを再開させる。
「それにしてもあなたのヤンチャ様は長持ちしますわね。お昼休みの食事を終えてから三十分もずっと硬度を保っていられるなんて」
桃華が私を椅子に見立てて上に座り、そのまま下着をズラして挿入させたときは何の罰ゲームだろうと思ったが、いわゆる実験の一つであるらしい。
「んっ……。最初のころは少し手でしごいてあげただけで泣き言と精液を漏らしていましたのに、ずいぶん丈夫になりましたわね」
「桃華ちゃんが何度もこんなことするからだよう……。それに、今だってギリギリで我慢してるのに」
桃華が半刻ほど作業をしている間、タイピングの邪魔になるからと抽挿することは禁止されていたが、腰をぴったりくっつけあったままの状態でも桃華の内部はぐにぐにと動きをつけて精を搾り取ろうとしてくるのだから質が悪い。
腰の上下運動こそはされなかったものの、時折桃華が腹筋に力を入れて膣圧を高めたり軽く前後に揺すったりといたずらを繰り返していたから、萎えるどころか精液の蓄積もあり挿入直後よりも硬度を増してしまっていた。
「まぁ、わたくしにも一定の非はありますわね。あなたが雫さんのところに駆けつけられるはずの時間を、こうして絞りとってしまっているのですから」
「うああぁぁぁ……ッ! と、桃華ちゃんそんなキツく、締めないで……」
「ピストン運動をしないままの射精、というのもオツな気がしますわね。ドーナツの部分にぴったりと身を寄せたまま、たっぷり吐き出しなさいな」
桃華が床につけていた足裏を離して、全ての体重を結合部に乗せた。
あまり奥行きのない膣道の最奥部にある子宮頸部が亀頭に押されてひしゃげているのが、オトコノコの部分を通して伝わってくる。
それは私自身を締めつけることとも同義だった。
「不安や不信感、心の引っかかり。全部わたくしが受け止めて差し上げますわ。
そうして余計なもの、吐き出せるものを全て吐き出して、心に愛だけ宿しなさいな。
オトコノコにもオンナノコにもなれるのがあなたの武器なのですから、どちらにだって転べますわ。
愛のもとに行動すれば、きっと良い結果が返ってきますわよ」
性別の壁を越えられるだけの愛を私は宿しているだろうか。
どっちつかずの私を、雫ちゃんは受け入れてくれるだろうか。
それらの不安を下半身の快楽がゆっくり溶かしてくれていた。
桃華の言葉のひとつひとつが心にしみる。
「そろそろ、こちらも限界でしてよ……。わたくしの愛も一緒に受け取りなさいな……!」
桃華がパソコン机に突っ伏すようにして上半身を預け、肘と肩に体重を乗せた。
十センチほど腰を浮かせたのち、肩肘を脱力させて自由落下をするように腰を打ちつけた。
「んっ、くぅううぅぅ……!」
長時間じらされ続け、射精に至る快楽の境界線があやふやになっていた私は、その一撃で臨界点を三割り増しで突破してしまっていた。
それまで執拗にノックを続けられていたドーナツリングが少しだけ径を広げた感触があった。
必然的に肉槍の先端が頭を埋める形となり、鈴口が子宮の内側へ照準を定め、溜まりに溜まっていた精を打ちつける。
「桃華ちゃんっ、受け止めて、受け止めて……! 私のヤなところ、全部……!」
桃華と繋がっている部分だけが世界を構成しているような途方もない開放感がまぶたの裏に広がり、気持ちいいこと以外すべて気にならなくなってしまうほどの性衝動の津波が私を飲み込んでいく。
子宮に直接吐精しているためか、射精量のわりには膣内から逆流してくる精液の量が少ないように思えた。
それを確かめようと桃華のおへその下に手を伸ばすと、すでに桃華がそこに手のひらを当てていた。
「わかりますわよ、あなたの熱い血潮がここにたっぷり吐き出されていますもの。煮えたぎるような想いの現れなのですわね」
桃華が場所を譲るように手をどけてくれたので、そこに触れてみる。
たしかに桃華の体温よりも熱いものがお腹の奥の方で感じられた。私のモノが脈動するたびに、下腹部が釣られてヒクヒクするのが当たり前のことなのに新鮮に感じられた。
「雫さんのこと、少し調べて差し上げますわね。放課後、またここにおいでなさいな」
@
一週間ほど前に梅雨入り宣言がされて、しとしとと雨が降り続く外の様子を眺めながら、今日もぼんやりと生徒会室でひとり時間をつぶしていた。
今月の生徒会の仕事はそれこそ二週間ほど前に先輩から呼び出しがあったあの一件だけで、ここしばらくは集まりがあるわけでもなく、ほたるちゃんには偽りの理由を告げてあった。
あの日以来、どうしても彼女の顔をまともに見ることができずにいて、こうして生徒会室で時間をつぶし、登下校の時間をずらしていた。
梅雨入り直前の屋上で、下級生の女の子と性の営みに励んでいたほたるちゃんは、今日もあの子と顔を会わせているのだろうか。
生徒会の会議をするぐらいにしか使われない室内には、昔の行事の資料と長机に折りたたみイスぐらいしか用意がなく、時間つぶしにも苦労をする。
校内では携帯電話使用禁止という校則のおかげで誰かとメールをするわけにもいかない。
そろそろテスト期間になるけれど授業の復習や予習もする気になれず、必然的に頭をよぎるのはほたるちゃんのこととなる。
こうやって毎日ひとりで二週間も彼女のことを想い描いていれば、次第に自分の気持ちの整理がついてくる。
ほたるちゃんが抱えていた身体の悩みを聞いてあげられなかった自分が情けなくて、それをあっさり受け止めている下級生に敗北を感じてしまって、その子に夢中になっているほたるちゃんに嫉妬して。
行動しなかったのは自分だからこそ、自分自身にフラストレーションが溜まる。
「失っちゃってから、気がつくなんて遅すぎるよね……」
ひとりつぶやいて机に突っ伏す。腕を枕にして視界を覆い、真っ暗な世界の中で可能な限り情報を遮断しようとしていた。
―――コンコン。
どれぐらいそうしていただろう。部屋の入り口をノックする音が聞こえてきて、そちらに顔を向けた。
扉は背の高い位置に小さなはめ込みガラスがあるだけで、扉の向こう側にいる人物の姿は伺えない。
生徒会室をこっそり借りていることは他のメンバーには伝えていないし、そもそも生徒会の人間ならノックもなにもせずに扉を開けるのが普通だったから、おそらくは部外者が訪れたのだろうと予想した。
しばらく口を閉じっぱなしだったからすぐには声を出せずまごついていると、扉の向こうの人物が身じろぎする気配を察した。
「雫ちゃん、いる……よね?」
「っ……!」
先ほどまで想い描いていた人物の声。姿を見なくても判別は容易だった。
慌てて身を潜まそうにも行方をくらまそうにも、隠れる場所はないし出入り口は一カ所しかない。
返事をできず扉から視線を逸らすこともできずにいると、やがてドアノブがゆっくりと回り、幼なじみが姿を覗かせた。
「……ひとり?」
「うん……」
自分がでっちあげた生徒会の用事が実際に行われているのなら、二週間にもわたって毎日二、三時間も仕事をしていなければいけない状況だ。
この部屋に自分一人しかいないわけがない。その矛盾を承知の上での問いかけだと察することができた。
今更なにを取り繕ったって、ほたるちゃんには伝わってしまうだろうから、その疑問を肯定するしかなかった。
「……よかった。拒絶されちゃったらどうしようって思ってた」
出入り口の扉を後ろ手に閉じながら、ほたるちゃんが教室に収まる。
「話があって来たの」
二週間も問題を先延ばしにしてきた自分にとって、耳を塞いでしまいたい言葉だった。
どこから話そうか、と思案しているらしいほたるちゃんが死刑宣告を告げる判事のように見えてしまい、口を開きかけた彼女を思わず遮ってしまった。
「桃華ちゃんって子と、付き合ってるっていう話でしょう?」
「え……? 違うよ。私が言いたいのは、雫ちゃんと」
「ごめんね。私、見ちゃったんだ。ほたるちゃんが下級生の子と屋上にいたの」
正確にはその一度しか目撃はしていないのだけれど、その話を出しただけでほたるちゃんの表情が凍ったのが嫌でも伝わってきてしまった。
「あの日のラブレターの差出人が桃華ちゃんって子なんだよね。それで、ほたるちゃんはその子と付き合うことになって……」
「違う……、違うの。聞いて、お願い」
うろたえた様子のほたるちゃんは、それでも私の言葉を否定した。何か正す部分があるのだろうか。
ほたるちゃんが語るであろう内容が予測できず、口をつぐんでしまう。それを認めた幼なじみは短く息を吸い込んだ。
「私は、雫ちゃんのことが好きで……」
視線を逸し、喉から絞り出すような声で言葉を紡ぐほたるちゃん。
自分が求めていたはずのその言葉が、デマカセに聞こえてしまうことが、とてつもなく悲しかった。
「だったら、どうしてあんなに気持ちよさそうに、桃華ちゃんとエッチしてたの……?」
「…………」
ほたるちゃんを責めるつもりはなかった。それなのに私は、幼なじみの口から「違う」を聞きたくて、攻撃的な言葉を選んでしまう。
そうして、その問いを否定をすることなく黙りこくってしまう彼女の姿を見ていることは、私にはできなかった。
言葉を切りうつむくほたるちゃんに、一言なにかを告げようと口を開きかけた瞬間。
「あー、はいはいはいはい。やり直し。やり直しですわ」
緊迫した空気にそぐわない不機嫌そうな声が扉の向こうから聞こえた。
聞き覚えのない声の主が、扉を足蹴にしてパンパンと手を打ちつつ生徒会室へと入り込んできた。
声こそ聞き覚えはなかったが、下級生にしても小さすぎる身長と独特の口調には覚えがあった。
「愛の報道記者、櫻井桃華。ここに推参ですわ」
「と、桃華ちゃん?」
「ほたるさん、いったいなにをやっていますの。愛のままに突き進むとご自分でおっしゃったでしょう」
首から大きな一眼カメラを下げた、桃華と名乗った幼なじみの恋人は、ほたるちゃんに厳しい視線を投げつけたのち。こちらにも人差し指を突きつけてきた。
「雫さん。あなたも疑心暗鬼になりすぎですわ。想い人が想いを告げてくれた。この事実になにか疑うことがありまして?」
「あなたは……だって、ほたるちゃんの恋人さんでしょう?」
「まさか。わたくしは愛に殉じ愛に生きる、一介の報道記者でしかありませんわ。
ほたるさんはただの取材対象で、せいぜいいいお友達。……まあ、セックスフレンドという呼び方もあるかもしれませんわね」
「ブッ、ちょ、ちょっと桃華ちゃん!?」
あけすけな物言いに困惑する私と、噴き出すほたるちゃんを無視して桃華は言葉を続ける。
「ほたるさんの愛の大きさはわたくしが保証しますわよ」
そこで一度言葉を切った乱入者は首に下げているカメラに手をかけた。
「それこそ、このわたくしの前で愛の告白ができるほどに」
一眼のレンズがこちらを捉え、ほたるちゃんと私を画角に収める。
「コイバナ大好きな雫さんなら、愛の報道記者『桜愛』の名はご存じでしょうから、この意味はお分かりですわね?」
それを告げられて、ようやく正常な思考が戻ってきた。
下級生の女の子は櫻井という姓と、もう一つの苗字を名乗った。
この学内で、『桜愛』の名前を知らない女の子がいるはずがない。
「いっさいの不安や不信はほたるさんの愛がきっとかき消してくれますわ。
まずは、心を空にして想い人の言葉に耳を傾けて差し上げなさい」
そう言って桃華はカメラをほたるちゃんの方に注目させた。釣られて私もほたるちゃんの瞳を見つめることになる。
ほたるちゃんも突然の乱入者によって、いくらか心の整理ができたらしい。
先ほどと違って、まっすぐこちらを見つめている。
それでようやく今までのほたるちゃんの言葉に嘘がないことに気がつけた。
「桃華ちゃんと仲良くしてたこと……黙っててごめんなさい。
エッチなことに歯止めが利かなくて雫ちゃんを苦しめてたと思う。
……でも、私が一番好きなのは雫ちゃんだから」
そこまで言って、ほたるちゃんは一度大きく息を吸い込んだ。
「私と……恋人として、お付き合いしてください」
決意のこもった言葉が、私の心を揺さぶる。かすかに潤んだ瞳がこちらを捉えていた。
桃華はカメラを構えたままシャッターを降ろさない。
私が返事をするまで、この部屋の時間は進まないのではないか。
そう錯覚させるほどの沈黙が室内に満ちていた。
気持ちの整理をつけたはずの私の心は、ほたるちゃんの告白で一度ぐちゃぐちゃに散らかってしまった。
なにか返事をしなくては。言葉を発さなければと焦って、結局、散らかったままの心に浮かんだ内容をそのまま口にすることを選んだ。
「私、ほたるちゃんといつまでも一緒にいられるものだって、ずっと思ってた。
でもほたるちゃんに恋人ができたって知ったとき、初めて気がついたの。
ほたるちゃんがいなくなるとこんなにも心にぽっかりと穴が空くんだって。
もう手が届かなくなっちゃったって知ってからようやく、私がほたるちゃんを好きだっていう想いに気がついたの……」
好き。そう心に浮かんだ言葉に、嘘偽りはない。
「こんな私でも、ほたるちゃんのことを好きになってもいいですか……?」
ようやく口にすることができた自分の本当の言葉と一緒に、頬を涙が伝ったのが分かった。
それを拭おうと手のひらを眼尻にあてようとした瞬間。
「雫ちゃんっ!」
ほたるちゃんが駆け寄ってきて私を抱きしめた。
身長差からどうしても抱きつく、という表現の方が正しくなってしまうけれど、それでも私にとってはほたるちゃんからの抱擁に違いなかった。
胸元に自分のものではない水滴が染みこむ感触に気がついて、先に恋人の涙を拭ってあげることにした。
二人見つめ合って微笑みを交わしたところで、カメラのフラッシュを感じた。
「さて。わたくしはこれでお暇させていただきますわ。明日の記事を書かなくてはなりませんもの」
カメラのモニターで画像の写りを確認し終えたらしい桃華は、そう一言残して退出していった。
「……写真、撮られちゃったね」
「イヤだった?」
ほたるちゃんが少し不安そうに問いかけてくる。
「ううん。ぜんぜん」
今がこんなに幸せだから、恐れるものなど何もなかった。
@
教室の外では雨が地面を叩く音が聞こえている。
運動部の部活動がほどんど行われていないためか、雨音に人の声が吸収されているためか、二人きりの生徒会室の外にすら人の気配がしないように思えた。
キツく抱き寄せた幼なじみの身体は、昔に感じたそれと変わらないニオイをしていて、二週間前の恥ずかしい記憶も掘り起こしてくれる。
「雫ちゃん……。キス、してもいい?」
私よりも背の高い幼なじみを、少しだけ見上げる体勢になる。
ちょうど目線の高さに雫ちゃんの唇があった。リップクリームも塗っていないはずなのに、艶があるのが羨ましい。
「うん、いいよ」
目の前でわずかに動いた唇から、肯定の言葉が聞こえてくる。
数センチも離れていない距離だからこそ雨音にも負けずに聞こえる囁きだった。
私の腰に回している雫ちゃんんの腕に力が込められる。
そっと近づいてくる雫ちゃんの唇に、自分のそれを触れさせるため、背伸びをしやすくしてくれているのだと分かった。
つま先立ちになればすぐに口づけのできる距離。今まで我慢をしていた十年来の時間がこの一瞬に集約されているのだと感じた。
一秒だけ、時間を作ってこれまでの思い出を振り返り、ゆっくりとかかとを上げた。
「ふむっ……!」
ヒトの器官の中で熱に最も敏感な部分の一つである唇に、自分の体温とは別の熱を感じた。
雫ちゃんの方が体温が低く感じられるのは、それだけ私が高揚しているからだろうか。
閉じた口唇を触れさせ合うだけの一番シンプルなキスなのに、とびきりの幸福感を全身に巡らせてくれる。
唇の隙間から雫ちゃんの唾液の味をほんのりと感じ始めてようやく顔を離した。
「初めてのキスがこんなに幸せでよかった」
「私も。じゃあ、……桃華ちゃんとはキス、しなかったの?」
「一番好きなのは雫ちゃんだから。するつもりはなかったよ」
桃華から迫られていたら断りきれたか定かではないけれど、今まで初めてを守ってこれたのだから何も問題はない。……と思う。
「唇、触れさせるだけですごく幸せだったの。それなのに、もしもっと激しいチューしたらどうなっちゃうんだろう」
「足腰、立たなくなっちゃうかも」
相手の吐息を肌に感じられる距離で、次の行為の相談をするなんてなんだか滑稽な気がするけれど、お互いの気持ちが一緒の方角を向いていることが確認できて、私は安心してもう一度唇を寄せることができる。
薄く口を開いたままの接吻。口呼吸の空気の流動がわずかに感じられたあと、その隙間に舌先を伸ばした。
粘膜器官が幼なじみの唇に触れると、雫ちゃんが一瞬身体を固くした。
私が桃華に触れられたときもこんな反応をしていたっけ。
この先には気持ちいいことしか待っていない、と伝えようと唇同士の合わせ目をゆっくり往復する。
雫ちゃんのリップを私の唾液の味で上書きし終えたあたりで、入り口にわずかな隙間ができたことをベロが敏感に察した。
「入れるね」
雫ちゃんの口内に息を吹き込むように宣言して、舌を挿入させる。
外気に触れて若干温度の下がった舌先が彼女の唇を割ると、ぬるま湯のような優しい暖かさが私を迎え入れてくれた。
身長差のせいで雫ちゃんの顎が下を向いているため奥から染み出てくる唾液がすべてこちらに流れてきているように錯覚させてくれた。
その唾液でできた海に舌を触れさせてみる。ほのかに甘く、ハチミツを水で薄めたような舌触り。
彼女の性格を表すような優しい味だった。主成分が同じだからか、私の唾液と触れるとすぐに混ざり合って新しい味のカクテルが生まれる。
雫ちゃんの口の中に残っていた空気が唾液に溶けて気泡となって味覚にアクセントを加えてくれた。
私と雫ちゃんで身体の作りは大きく変わらないはずなのに、どうしてか新しい発見が見つかっていく。
考えてみれば自分以外の口の中の感触なんて、今まではオトコノコの部分でしか知らなかったのだ。
そう広くない口内に舌を彷徨わせていると、お目当ての部位を見つけることができた。私が侵入させているものと同じ器官。
味を知るためのその場所に、今度は雫ちゃんの許可かを得ることなく、べったりと舌表を擦りつけた。
「うみゅ、ふっ、ううん……」
声を発する際にも用いる器官を自分以外の意思で動かされて、言葉にならない声が雫ちゃんの口内から聞こえた。
ざらざらとした味蕾がこすれ合うたびに甘い痺れが脳内を駆け巡って、私の頬を上気させていく。
それは雫ちゃんにも言えることのようで、触れ合っている唇の熱が増してきているように思えた。
舌先で雫ちゃんのそれをノックして、少しだけ距離をとると、触れ合いが続かなくなったことに気がついた雫ちゃんがおずおずと私のベロを追って、自身のそれを伸ばしてくれる。
ちょうど先端が雫ちゃんの前歯を乗り越えたところで、こちらの舌を引っ込め唇を突き出し、彼女のベロを口内に吸い寄せた。
「んんんっ、んんんうぅぅぅんんっ!」
驚いて引っ込めようとしたところを、吸引力で押さえつける。味覚器官が身を張って唾液が染み出す。
自分のところに引き寄せた雫ちゃんのベロを、上顎と舌腹で挟むようにしてちゅるちゅるとツバを啜った。
口内に引き込まれる感覚にやがて慣れた様子の雫ちゃんは、自ら舌を伸ばして唾液の交換を楽しんでくれる。
お互いの口内を五、六往復ほどしていると、どちらともなく本当に膝から力が抜けてきて、それでも唇は離したくなくて、二人して生徒会室の床に腰を下ろしてしまっていた。
もともとの自分の唾液の味が分からなくなるぐらい、丹念に舌を擦りつけあって、ようやく顔を離すと、二人の唇から一筋のアーチがこぼれて、私の一部分が大きく持ち上がってしまっているスカートのてっぺんに水痕をつけた。
雫ちゃんを抱きしめたそのときから、すでにソコに血液が充填されてしまっていて、キスの最中にもおそらくは雫ちゃんの身体に服越しで触れていただろう。
二人してその頂点を見つめ合ってしまい、目が離せなくなる。
「あのね……。私、この身体がずっと好きじゃなかったの……。
オトコノコでもない、オンナノコでもない、どっちつかずな身体。
この秘密を雫ちゃんは知っていてくれてたけど、でも、雫ちゃんの身体に触れるだけでココを大きくしちゃうような、節操のない心までさらけ出してしまったら、きっと嫌われるって思ってた。
女の子同士ならスキンシップをとってもヘンな目で見られないし、もしも私が男の子だったら何の障害もなく雫ちゃんと付き合うことができたはずなのに、って。
どっちでもない自分がすごく嫌だったの。こんなものが私についていなければいいのに、ってずっと思ってた。
……でもね。もしも、雫ちゃんがこんな私を受け入れてくれるんなら、たぶん、どっちでもない私じゃなくて、どっちも持ってる私になれるんじゃないかなって、思う。
男の子の気持ちよさも女の子の気持ちよさも、両方手に入れられる……、この身体は素晴らしい身体なんだ、って考えられるようになると思うの……」
だから。
「雫ちゃんの初めてを、私にください」
心臓の鼓動が耳に響くほどの緊張感を、雫ちゃんの口づけがあっさりと解いてくれた。
@
今度は間違っても人が入ってこないようにと生徒会室の入り口に内側から鍵をかけ、カーテンを閉めた室内の床に雫ちゃんを押し倒す。
彼女の黒髪にホコリがついてしまいそうなのは懸念事項だったけれど、これからすることを考えると長机の上に寝かせるというのも不安定極まりなくて、悩んだ末にこちらを選んだ。
「制服、脱がすね」
夏服の時期だから、服を脱がす手間はほとんどない。
胸元のリボンを解いてブラウスのボタンを外せば、それだけで雫ちゃんのたわわに実った双丘が視界に飛び出してくる。
校内一と噂される圧倒的なボリュームに思わず息を飲んでしまう。
そもそも作りのしっかりしているブラジャー自体、手にとったことがなかった。
私自身は子供っぽいハーフトップのもので事足りてしまっているし、桃華ちゃんについてはそもそも下着を身につけておらず、制服の下に一枚シャツを着て済ませていたはずだ。
以前はなるべく意識の外に追いやるようにしていた膨らみを、しげしげと眺めても問題なくなったことに心の中で感涙しながら、幼なじみの背中に手を回しホックを外す。
さすがに構造自体は把握しているので我ながらいい手際だったと思う。
カップをズラすと、窮屈に身を寄せていた双乳が抑制から解放され、ブラの上から見ていた印象よりも一割増になって素肌を晒した。
仰向けに寝かされているにもかかわらずほとんど型くずれをしない張りの強さと、作り物のような造形美。
女の子ですら羨んでしまうような重量感とサイズとインパクトと大きさと質量感。
おそるおそる指で触れてみると、押し込んだだけ跳ね返りのある適度な弾力感と彼女の体温、心臓の鼓動が感じられ、目の前にあるものが虚像ではないことを教えてくれた。
それだけの大きさにも関わらず、先端は小さくまとまっていて清楚さを醸し出しているのが、なんだかズルく思えてしまう。
けれど、外気に晒されたことでわずかに身を固くしているのが可愛らしい。その突起に吸い付いて弄びたい衝動が下半身を貫いた。
「雫ちゃん……。ごめんね、あんな告白した後だから本当は最初のエッチが終わるまで我慢しなくちゃいけないんだろうけど……。その」
自分でも言い訳になっていないと自覚できる言い訳をつぶやきながら、いそいそと下着を下ろして彼女の胴をまたぎ、過去最大のサイズまでに膨らんでいるだろう屹立を幼なじみの胸の谷間のラインに沿わせる。
「おっぱい、使わせて……」
雫ちゃんの返事を待たずに目の前の双丘を寄せて深い合わせ目を作り、鳩尾の方から亀頭を埋めていく。
しっとり汗ばんでいる谷間はオトコノコの部分に吸いつくように迎え入れてくれるが、並外れた巨乳のおかげで触れあう面積が広がるにつれてスムーズな侵攻が難しくなり、谷間のちょうど中央で停止させられてしまった。
両サイドから胸を支えているせいもあるだろうけれど、信じられない乳圧だった。
手を離して圧迫を緩めれば侵攻は容易になるだろうけれど、いつも私の視界で大きく揺れ動いていた大鞠を初めて堪能できるのだから、一番気持ちのいい方法で楽しみたかった。
挟み込んでいるだけでも気持ちよさを証明する腺液が溢れて止まらない。
いったん腰を引いて再度挿入を試みる。
雫ちゃんの胸の間に残してきた先汁が潤滑油の役割を果たし、一度目よりも深いところまで挿入ができた。
攻略の糸口を見つけて三度四度と往復をし、ようやく鈴口が胸の谷間から顔を覗かせた。
亀頭を侵入させる位置とルートを微妙に変化させながら谷間を先汁のぬるぬるで満たすようにしていく。
粘質の高い液体のため亀頭を挿入させるたび腰元まで挿入を果たすたび、ニチニチクチュクチャと淫媚な水音が教室に反響する。
ピストンが容易になり、雫ちゃんのおっぱいの柔らかさと弾力を満足に味わえるようになると、動きに変化がつけやすくなってくる。
互い違いに胸を揺さぶって亀頭と根本側での乳圧の違いを堪能したり、胸の中心で亀頭ひとつ分だけの細かい往復を繰り返してカリ首や裏スジと言った一番腰砕けになりやすい部分を丹念に奉仕してもらったり。
至高の弾力に指を沈ませて、類稀な密着感に夢中になって腰を動かしていると、次第に抑えが効かなくなってくる。
「し……、雫ちゃん。おっぱいの中で、出してもいい? 気持ちよすぎて、このまま、イっちゃいそう……!」
射精を求めて腰が勝手に暴れ回る。胸の中に出すか、雫ちゃんの顔を汚すか、舌の上に出すか。一番気持ちいいところを探して視線がさまよう。
だから胸奉仕を強要させてから雫ちゃんが一言も声を発していないことに、今まで気がつくことができなかった。
「そんなの、ヤだよほたるちゃん……。一番最初の射精は、私の中でしてほしい……」
「え……?」
無条件で欲望を受け止めてくれると思っていた雫ちゃんが視線を逸らしているのにようやく気づかされる。
胸の谷間を強調してくれていると思っていた二の腕の先、雫ちゃんの十指は彼女のスカートの中をまさぐっていた。
「胸よりも、こっちの方がいい……」
視線を逸らしていた理由は胸奉仕の拒否感からではなく、挿入を自ら望む恥ずかしさからだと察した私は、即座に肉棒を魅惑の谷間から脱出させ、必死に射精感を押し殺す。
放出寸前だった精液が突然の進行停止を命じられ困惑したように下半身にわだかまり、腰振りを続けよと抗議をあげてくる。
「ん……。わ、わかった。そうする、ね……」
気を抜けばもう新たな刺激なしでも吐精できるほどには気持ちが高まっていたため、心をなんとか落ち着けようと額に脂汗がにじんだ。
一度堪えきってしまえば暴発は避けられるが、寸止めに近い状況のため二度目の限界はそうそうに訪れそうだ。
代わりに二倍以上の量の精が放たれるだろうけれど。
どうにか射精衝動のピークを乗り越え、名残惜しいながらも雫ちゃんの下半身へ手を伸ばした。
床に横たわらせているためスカートを脱がしてしまうと身体が汚れてしまうだろうと考え、下着だけ脱がしてしまおうと、ショーツのふちに指を差し込んだ。
雫ちゃんはそれで私のしたいことを察してくれたようで、下着を抜き取りやすいように腰を浮かせてくれた。
夏直前の気温のせいか先ほどまでのキスのせいか、布がお尻とふとももに張り付いてしまっていて、少々苦労しながら膝のあたりまで脱がせた頃には無地の下着はよじりヒモの様になってしまった。
足首から下着を抜き取りスカートを捲りあげると、薄い茂みとわずかに花唇を晒した、まだ発達しきっていない秘部が見て取れた。
十代前半最後の年と考えれば年齢相応な作りだ。
桃華と比較すれば十分にオトコノコを受け入れるだけの余裕はあるように見えるけれど、そもそも比較対象が間違っている。
先程までのキスと胸愛撫のおかげか、秘裂からは淫猥な反射をする腺液が漏れ出ていた。
挿入口を探るために指を触れてみると、指先がたやすくぬかるみに沈んだ。入口がこれだけくつろいでいるのなら挿入には問題ないだろう。
雫ちゃんの脚を胸元へと押しやり、膣口を上向きに固定させた。
すこし窮屈な体勢かもしれないけれど、この向きならば汚れやホコリが入り込むことも少ないだろう。
蛍光灯に晒され把握しやすくなった入口に亀頭をあてがい、雫ちゃんに声をかける。
「怖い?」
「ううん、全然。ほたるちゃんならきっと優しくしてくれると思うから」
優しく……できるだろうか。桃華の処女を奪ったときはむしろ乱暴にしてしまったはずだが。
けれど不安が大きいのはどう考えても雫ちゃんの方なので、私がその気配を出すわけにはいかなかった。
「目、閉じてて」
亀頭の半分を埋めて雫ちゃんに声をかける。
比較対象が極端すぎるけれど、桃華よりはずっと楽に挿入できそうな締め付けだった。
痛みを長引かせるよりは一息に奪ってしまった方がいいだろうと、雫ちゃんが指示通りに瞼を閉じた瞬間を狙って垂直に腰を落とした。
亀頭が最奥にたどり着くまでに、わずかに挿入口よりも狭い部分を通り抜けた感触があった。
そこを通り抜けた直後に雫ちゃんの眉がしかめられたのが分かった。
腰同士がぶつかり、これ以上の挿入ができないところで制止する。
きゅうきゅうとまろやかな締め付けをしてくる内壁の様子からは、桃華のときのような苦痛に喘ぐヒクつきは感じられない。
「は……、入ってる、よね……?」
「痛くない?」
「急に押し込められたからびっくりしたけど、想像してたよりも全然痛くなかった……。
でも、ちょっとおなかの真ん中がジーンって痺れてるような感じがする、かな」
「よかった」
誰かみたいに処女を奪われた痛みで死ぬ、なんて言われたらどうしようかと不安で仕方がなかった。
それほど苦痛を感じていないということなので、最奥に鈴口を触れさせたまま軽く前後に身体を揺らしてみる。
「んっ……あふ……っ」
身体の中心を突かれることで漏れ出る息づかいの中に、わずかに甘い吐息が含まれている。
早々に雫ちゃんの膣は私のモノに対応できているようだ。
そろそろ律動しても大丈夫だろうかとゆっくり陰茎を引き抜いた途端、カリ首がカァっと焼けたように熱を帯びた。
「うひゃっ」
思わず腰の動きを止めて、中の感触を確かめる。
もちろん何かに噛みつかれたわけでも異物が入っていたわけでもない。
勢いに任せて差し込んだときには気がつかなかったが、さらに低速で肉棒を抜いていくとその理由が分かった。
雫ちゃんの内壁の襞の多さによって、強大に生じた快楽のせいでヤケドにも似た刺激と感じたらしい。
「雫ちゃん、私たち、相性良すぎるのかも」
正確には雫ちゃんの襞の量が多いのではなくて、狭い膣内に押し込んでいたせいで内壁がアコーディオンのように伸びていた桃華の襞が少なすぎることが、そう感じさせた原因……と後から知ることなるのだけど。
肉棒を引き抜くたびに膝から力が抜けてしまいそうになるのを、懸命にこらえてピストンを開始する。
抜くときに生じるヤケドにも似た刺激は、子宮口まで押し込んだ際に雫ちゃんの最奥部の柔らかさで包んで癒してもらう。
必然的に高速ピストンを避けて一回一回を奥底まで突き込む形になり、一突きするたびに雫ちゃんの早熟なお胸が大きく震えた。
引き戻す回数をなるべく少なくしているにも関わらず、快楽曲線が累乗で釣り上がっていく。
できることなら雫ちゃんにも気持ちよくなってもらいたいが、先程の谷間ズリで一度射精近くまで性感が高まっていたことがたたり、回数を打ち込めないことを察した。
「雫ちゃんの中……気持ちよすぎて、腰、止まんない……!」
どちらにせよ残された時間が短いのであれば、と、膣奥に挿入したまま小刻みなピストンをすることを選んだ。
女性の象徴の入口を連続あんまされ、雫ちゃんの悲鳴が高くなっていく。
「やっ、あっ、し、ほたるちゃ、あっあっあっ、んん、んっ、くぅんんんっ!」
長い間一緒に過ごしてきた幼なじみから、一度も発したことのないような声を自分の持っている器官で引き出せていることに、大きな充足感を得られた。
私しか聞くことができず、私にしか奏でることのできない声があることが嬉しくてたまらなかった。
雫ちゃんの膣は奥の方ほど襞々が深く緻密なっているために、その近辺を短いストロークで往復するのはそれだけで腰が砕けそうになるほどの快楽を生む上に、運動が苦手な私にはスタミナがあまりないために、既に肉槍を入口まで引き戻すことは困難になっていた。
「中、なかっ、中に、中に出しても、いい……!?」
初潮が来ていないなどという特異体質であるわけがない雫ちゃんに確認を取る意志だけは見せたが、自分自身でこれが建前なことは理解していた。
桃華が私の身体について調べていたけれど、今のところ私の精液に生殖能力があるかは不明のままだ。
絶対に妊娠しない証拠はどこにもない。雫ちゃんがが首を横に振らないことだけを祈っての問いかけだった。
彼女は細かいピストンに身体を揺すられて、首を縦に振っているようにも横に振っているようにも見える。
短い嬌声を繰り返していて意味の理解できる言葉も発しにくいようだった。
幼なじみの返事を待っている間に私の限界が訪れてしまった。未回答。外に出さなければならない。
奥歯を食いしばり最後の力を振り絞って、カリ首が小陰唇に引っかかるほどまで引き戻したところで、膝から力が抜けていくのが分かった。
重力に引かれるまま、雫ちゃんの最深部に亀頭を打ちつけ、せき止め能力が失われた下腹部がありったけの精を吐き出してしまう。
下半身が麻痺したかのような強烈な痺れが私を襲い、その痺れすらも快楽信号へ変換した脳が、もっとたくさんの精液を注げと命令している。
雫ちゃんの鎖骨の部分に頬を押しつけたまま何分間経過しただろうか。
身体中の水分が精液に変わってしまったかのような、いつまでも続く男性器の脈動に呆然と身を任せていた。
雫ちゃんの身体に体重を預けたまま体力の回復を待たなければ、結合を解くことすらできそうにないだろう。
結合部が解け合ってそれこそ一体になってしまったかのような心地よさに身をふるわせていると、私よりも先に意識が明瞭になったらしい雫ちゃんが鼻をすする音が聞こえた。
そちらの方に視線を向けて、雫ちゃんの頬に涙が伝っているのを目撃してしまった瞬間。
自分の短絡的な行動の恐ろしさを悟った。
「ごめんなさい……、中……わたし……」
下腹部が一体になったような感覚の答えは、結合部から溢れ出す精液と愛液の混合物による温もりのため。
挿入口が上向きにしてあるということは、重力に従った精液は子宮口へ流れ込むということ。
それにも関わらず溢れ出すほどの量を注ぎ込んでしまっていた。もしも異常な身体の私の精液が異常な精液だったら。
恋人が望まない妊娠を押しつけてしまったらどうしよう。その不安と後悔ばっかりが頭の中を巡って私の涙をも溢れさせる。
だから雫ちゃんが私の頭を抱きかかえてくれた瞬間、ついに幻覚でも見るようになってしまったのかと本気で感じてしまった。
「嬉しい、よ……。ほたるちゃんに、中に出してもらえて嬉しくてしかたないんだから、謝らないで……」
まだ呼吸が落ち着かない雫ちゃんがなんとか絞り出した言葉の意味が理解できたとき、私はそれこそ赤ちゃんのように声を上げて泣いた。
@
翌朝、なんとなくお互いに気恥ずかしさを覚えながら学校に向かうと、今日もまた学内掲示板に人が集まっていた。
朝からそこに人が集まる理由はひとつしかない。上履きに履き替えながら、雫ちゃんと顔を見合わせ、遠巻きにその記事を覗いた。
『白菊、及川、二年生同士の百合ップル誕生 続報は次号にて 愛の学内新聞』
見覚えのありすぎる顔の人物が抱きしめあっている構図と、写真に添えられた撮影時間について身に覚えがありすぎる画像が、でかでかと紙面の四分の一を占めていた。
「ブフッ、ほ、ホントに記事にしちゃったのぉ!?」
「わあ……。載っちゃったね、ほたるちゃん」
私たちのリアクションを耳にした、それまで記事に注目していた生徒たちがこちらに振り返った。
直後、記事の画像と本物とを見比べる人が半分。突然の本人登場の驚きに身を硬くする人がその半分。
残りは顔見知りということもあり、黄色い悲鳴を上げて事の詳細を迫ってきた。
「書いてあることは事実ですけど、一切の質問にはノーコメントでお願いしまーす。次号をお楽しみにー」
観衆を驚かせる爆弾発言を投下した雫ちゃんは、周りを取り囲まれる前に、私の手をとって廊下を駆けていく。
その手に引っ張られ、足を動かしてなんとか雫ちゃんの後ろに着いて行く。
「雫ちゃん、まだ記事の内容ほとんど読んでないのに全肯定しちゃってよかったの?」
「大丈夫大丈夫。『桜愛』さんは事実じゃないことを書いたことはないし、仮に一歩進んだ内容が書かれてたとしたら、それそのままホントのことにしちゃえばいいんだもの」
ゴシップ記者でも芸能ライターでもないと胸を張る桃華の姿が思い浮かぶ。
確かにあの子が恋人たちの障害になるようなことをわざわざ作りはないと思うけれど。
「雫ちゃん、桃華ちゃんのこといきなり信頼しすぎじゃない?」
桃華を貶めるわけではないけれど、私ですらまだ二週間程度の付き合いしかしていないから人物を完全に把握しているわけではないのに。
雫ちゃんにとっては昨日初めて出会ったばっかりな人物のはずだ。
「コイバナ好きにはあの子の人の良さが分かるから大丈夫」
「うーん?」
お構いなし、という様子で雫ちゃんが微笑んでいた。私ももう少し恋愛について勉強したほうがいいのだろうか。
今まで桃華に誘惑されたことはあれど、好きな人としては雫ちゃんのことしか見てきていなかったため、そのあたりの感覚に疎い。
私たちが恋人同士となったことを報告する新聞記事はその日の昼休みには剥がされていた。
けれど周知徹底するには十分すぎる広報期間だったようで、翌日からは幼なじみカップルだとか禁断の愛カップルだとか、そんな呼ばれ方で校内中の生徒たちに親しまれるようになった私たちだった。
■■終章
7月に入ってテスト期間が終わり、夏休みまであとすこしという時期のある休日。ちょうどこの日は私達がつきあい初めてから1ヶ月の日だった。
そのため、朝から二人でデートをする約束をして、映画を見たり駅前でショッピングをしたりカラオケを楽しんだりと、充実した一日を過ごしていた。
そして、その日の夕方。本日一番重要なタイミングが迫ってきていた。他にどこへ遊びに行こうか、と誘う雫ちゃんに言わなければならない台詞があった。
「今夜、ウチのお父さんとお母さんが二人で旅行に行ってて……。よかったら、夜、家に遊びにこない……?」
事前に桃華に頼んで練習をさせてもらっていたシチュエーションで、タイミングで、表情で。
一度告白のやり直しをさせられた私にしてはバッチリなお誘いができたと自負していたところ。
「あ、うん。ほたるちゃんのお母さんから聞いてるよ? お夕飯作りに来てねって頼まれてたし」
すごくあっさりと目論見は達成したけれど、異常にフランクな展開に書き換えをされてしまった。
「材料は冷蔵庫に入れておいてくれてるらしいから、そろそろ帰ろっか」
「う、うん……」
私の手を取って、それこそ恋人同士みたいに隣を歩くことができるのは嬉しいのだけれど、すごく複雑な気持ちが渦巻いてしまうのは、仕方ないことだろうか。
@
夕食に使った食器を二人で洗い終えて、リビングでソファに二人で並び、テレビを眺めてくつろいでいた。
ちら、と部屋の時計を見ると時刻はもうすぐ夜の八時を回ろうかというところ。
そろそろ、ここ一週間ほど作戦を練ってきた例の話を、雫ちゃんにぶつけないと、もしかしたら自分の家に帰ってしまうかもしれない。
けれど、内容が内容だけに言い出すきっかけを見つけることができず、いたずらに時間が流れてしまっていた。
どうしようどうしよう、と思考をぐるぐるさせていると、ちょうど今までテレビで放送されていた番組が終了して、次の番組が始まるまでのCMの時間になっていた。
切り出すならこのタイミングだろう。
「あの、えっと。雫ちゃん」
「なぁに?」
「その、良かったら……だけど」
「うん」
「私の部屋……行く前に一緒にお風呂入らない?」
今日の目標のひとつがこれだった。
子供みたいなお願いしだし、何度か身体を合わせた今に至っても、ひどく淫靡なお願いにも感じてしまう。
頼み事をする私自身がそう思っているのだから、頼みを聞く側の雫ちゃんにとっては私が想像する何倍にもなって伝わっているだろう。
部屋に誘う―――私の部屋に泊まるための道具を雫ちゃんが用意しているかは分からない。
仮に必要ならば雫ちゃんの家はお隣だから取りに行けば済む話。
恋人同士の私たちならば断られる理由は何もないはず。……そのはず。
「それって、いっぱいエッチなことするって意味……だよね?」
雫ちゃんがストレートに聞き返してきたということは、つまり彼女の耳にそう伝わったということで。
赤面しながらそれを肯定すると、雫ちゃんは穏やかに微笑んだ。
「それじゃ、部屋から着替え取ってくるね。その間にお風呂沸かしておいてくれる?」
言ってソファから立ち上がる雫ちゃんの顔を、もう直視できなかった。
いろいろ言葉を濁して伝えたつもりの言葉の真意を当たり前のように汲み取られていたのが恥ずかしすぎる。
それに太ももの間に自分の両手を置いておくことで、期待に身を膨らませる自己主張の激しすぎる隆起を抑えておくのに必死にならなければならなかった。
玄関のドアが開け閉めされた音が聞こえた。早いところお風呂の準備をしなくては。
着替えを持って戻ってきた雫ちゃんとお風呂にお湯がたまるのをじっと待つなんて、恥ずかしさに耐えられる気がしない。
下腹部の膨らみを無視してソファから立ち上がると、リビングの出入口に雫ちゃんの姿があった。
「え、もう着替え持ってきたの?」
「ううん。ちょうど玄関開けたら、お客さんが」
言って、雫ちゃんが出入口の向こう側を見やって、お客さんとやらの入室を促した。
「おはようございます、ですわ。首尾の方はいかがでございまして?」
独特の口調と、胸に下げた一眼のカメラ。休日にも関わらずなぜか制服に袖を通した桃華が現れた。
「桃華ちゃん? あれ、私の家の住所とかって教えたっけ」
「調べればすぐに分かりますわよ」
当然のことのような発言だけど、開示していない個人情報を勝手に調べるのはどうなんだろう。
「本日は例の記事の続報の取材に参りましたわ」
「取材って……」
私と雫ちゃんの写真が大写しになっていた例の記事のことだろうか。たしか、見出しには『続報は次号以降で』なんて書かれていたような気がする。
「もしくは本日のデートプランの立案代金の徴収と受け取って頂いてもよろしいですわよ。くだんのプレゼントはもう渡してあるのでしょう?」
「わわ、桃華ちゃんそれはまだナイショ……!」
「……はぁ? せっかくこのわたくしが用意してあげた例のもの、今日一日まるまる使ってまだ渡していませんの!?」
ひと通り大声を出してから、隣にいる雫ちゃんの存在を思い出して慌てて口をつぐむ桃華ちゃん。雫ちゃんは若干バツの悪そうな表情で頬に指を当てていた。
「もしかして、聞かないほうがいいこと、聞いちゃった?」
「あう……」
「え、ええと……。もうこの際ですから、今渡してしまえばよろしいのでは?」
実のところ、もうすこしムードが高まってから渡そうと考えていたプレゼントなのだけど。
桃華の来訪によって先ほど以上の雰囲気を作るのは難しいだろうと、半ばあきらめてしまった私は、自室に用意していた雫ちゃんへのプレゼントを取りに行くことにした。
五百ミリリットルのペットボトルを一回り大きくしたような角柱状の包み。中身が中身だけに、ラッピングは自分で施した。
「あの、これ……。ちょっとしたプレゼントなんだけど……。受け取ってくれる、かな」
遠慮がちに包装箱を差し出す私を見て、雫ちゃんは不思議そうな表情をしている。
その理由は、受け取って中身を知ってもらえればわかると思います。
中身を知っている桃華は、今度は余分な口出しをしないでくれるようだった。
「? 開けてもいいの?」
ラブレターを直接渡すわけでもなく、たんなるプレゼントを渡す人間が、異常にもじもじしているのに首を傾げながら、雫ちゃんが包みを解いていく。
ラッピング用紙を丁寧に剥がしながら、透明な箱の中身を認識した雫ちゃんの頬が、一瞬にして赤くなった。
「ほ、ほたるちゃん……。こ、こういうのはもうちょっとムードがあるときに渡してくれたほうが……」
「分かってるの、分かってるんだけど……」
「大体想像つくんだけど……。これ、どうやって使えばいいの、かな」
雫ちゃんの露骨な質問に、彼女の顔を見ていられなくなった私が視線を切ると、その先にいた桃華が半眼でこちらを睨んでいた。
「ほたるさん、例の用意してた台詞、あるでしょう」
「い、言わないと……ダメ……?」
「もちろん。そういう約束で用意してさしあげた品物のはずですわよ」
片眉を上げて腕を組んだ桃華は、まるで体育会系の鬼監督のように見える。
「うぐ……。じゃ、じゃあ、言うね……。言うよ……。
雫ちゃん、その、それを使って……、私の、私の処女、もらってください……。
それが本当のプレゼントです……」
雫ちゃんの手の中に収まっている物体は、いわゆるエッチな雑誌で紹介される名前で説明するならば、『ペニバン(双頭タイプ)』というものであった。
@
私がベッドに横になって雫ちゃんや桃華が上になることは今まで何度かあったけれど、開脚して膝裏を自分の手で抱え、秘部をさらす経験など今まであるわけがなかった。
「い……いつも、こんな恥ずかしい体勢させてたんだ、私……」
洋服はすでに自室の床に散らかっている。下着もすでに片方の脚から抜かれて、左の太ももに引っかかったままになっている。
「そうだよー。それで、ほたるちゃんの体重が太ももに載っかって、身体がぎゅううって締め付けられるようになるの。でも大丈夫。すぐに気持ちよくなるから」
「正常位は女性が男性に全幅の信頼を寄せるときに用いられる、愛の象徴のような体位ですから、ビビりなほたるさんには適していると思いますわよ」
クスクス笑いをしながら、二人が感想を告げてくる。……って。
「な、なんで桃華ちゃんもいるの!?」
膝裏から手を離して脚を閉じようとしたところを雫ちゃんの手のひらに太ももを押さえつけられ、それが叶わない。
「取材の一環ですわ」
「と、撮るの? これ撮るの?」
「載せはしませんわ」
「撮るんじゃん!」
「桃華ちゃんあとでデータ分けてねー」
桃華がカメラを構えてこちらにレンズを向けていることに雫ちゃんは全く意に介さない様子で私の脚の付け根へ顔を寄せてきた。
オトコノコの根本に彼女の吐息が当たる。服を脱いで膝裏を抱えたときから、もうヘソに先走り液を垂らすぐらいにはできあがってしまっている。
けれど、今日の主役はこちらではない。男性器のほぼ真下に秘裂がある私の身体は、その根本近くに淫核が存在している。
そこに雫ちゃんの唇の先端が触れた。
「くひぃっ!」
唇の先で周りの皮膚ごと摘むように引っ張られ、雫ちゃんの口内でむき出しになったソコが、ぬめりけと弾力のある物体に押しつぶされる。
覚悟はできていたはずなのにそれでも息が漏れるのは押さえきれず、腹筋がへこんだために陰茎が跳ねて先端がお腹に触れた。
女性の身体の部位でもっとも敏感な場所とされるクリトリスは、私の身体でも同様に、一歩踏み込めば痛覚にもなるような鋭い愉悦を下腹部の中心へ届けてくれる。
これまで刺激が強すぎるからと自慰でもほとんど触れずにいた場所だから、快楽の受け止め方の理解が追いつかない。
これならば陰茎をはげしく握られる方がまだ穏やかだ。
急ペースで余裕が失われていく私の様子を知ってか知らずか、雫ちゃんは舌の裏表両方で肉突起の感触を楽しもうとストロークの大きい往復運動を仕掛けてくる。
下から上に味蕾のあるざらざらしている側をすりつけ、上から下にこんどはつるつるした味覚器官の裏側を滑らせる。
敏感すぎる突起は裏表の起伏を鮮明に読みとり、ミリ以下の単位での段差ですら快楽に変換した。
性衝動に突き動かされ腰が跳ねようとするも、それは雫ちゃんの口に下腹部を押しつけるだけの行為になってしまう。
先汁を垂れ流しヘソに水たまりをつくりだす肉棒を、雫ちゃんの手のひらが包んで優しく上下にしごかれる。
片方の刺激だけでいっぱいいっぱいなのに、雫ちゃんは二点責めのリズムをズラして休みのない快楽を与え続けてくれる。
たまらずおとがいを反らすと、視界に閃光が走ったような錯覚さえ起こる。
「あ。設定間違えましたわ。次からはフラッシュ焚かないようにしますので、お二人はお気になさらず」
その閃光をきっかけに淫核中心の舌愛撫が中止されると、雫ちゃんの照準がさらに下部の淫裂へと向けられた。
既にクリ責めでしとどに溢れている淫蜜を舐め取ると両方の親指で割れ目を広げ、未開拓の湿地へと熱い粘膜を挿入していく。
過去に一度桃華の指が侵入しただけの膣道を押し分けて、届く範囲の襞々のひとつひとつに接見をされる。
桃華の指先とほぼ同じぐらいの肉厚で、よっぽど幅広な口内器官が全周に触れることで、しだいに入り口のキツさがゆるんでいくのを感じた。
その間も肉槍に這わせられた指の動きは止まることがなく、ときおり一番根本まで降りてきた指先が淫核に触れていくため、下半身の痺れが尽きることがない。
「雫ちゃん……、私、もう出そう……」
うわごとのようにつぶやくと、雫ちゃんが屹立から手を離してしまった。
女性の味をいくらか知ってしまった今では、淫裂への刺激だけでは絶頂に達するのにあと一歩が足りない。
雫ちゃんもそれは知っているはずなのに、あえて生殺しにする理由はなんだろうと回らない頭を思考させていると、雫ちゃんが自分の腰元に手をやっているのに気がついた。
「イク前に、一緒に気持ちよくなろうね」
私の下腹部に隠れていた雫ちゃんの上半身が、身を乗り出して私の正面を覆った。
下向きになったお胸がボリュームを三割増しぐらいに見せてくれる。
その肌色のカーテンの向こう側を首を傾けて覗き込むと、彼女の腰元に私がプレゼントしたばっかりのシリコンゴムのおもちゃが装着されていた。
「上になるのって、結構身体のバランス必要なんだねえ」
雫ちゃんは腰元にあつらえられた張り型の距離感に戸惑いながらも、やがて私の入り口にディルドーの先端を押し当てた。
「これ……、サイズ合ってるのかな」
幼なじみが疑問に不安に思うのも当然で、正直私も実物を見せられたときはどうして桃華はこんな大きなものを用意したんだろう、と頭を抱えた。
体内にこんなものが埋まるとは想像できなかった。いまさらな苦言の視線を受けて意に介せず、桃華はこう回答したのだった。
「合ってますわよ。ほたるさんのモノとほとんど同じ大きさのモノを取り寄せましたもの」
「……そうなんだ」
「わたくしに挿入できたのですから、わたくしより発育の進んでるほたるさんなら楽勝ですわ」
親切なことに桃華が雫ちゃんに解説してくれていた。本当に親切すぎて涙が出そうだった。桃華ちゃん、あとで覚えててね。
「……入れるよ?」
「うん……」
雫ちゃんが最後の意思確認をしてくれる。拒否する理由はどこにもなかった。
二人に挿入したものと同じモノを受け入れる。それが私なりの一つのセキニンの取り方だと思っているから。
「っつつ……!」
雫ちゃんが私の鎖骨に自身の大きな双球を押しつけるようにしているため視界ではどこまで挿入が進んでいるか把握できないが、亀頭が膣口を乗り越えたことは把握できた。一番太い部分が意外とあっさり通過していったのは雫ちゃんの舌技が巧みだったからか、女性器でオナニーをするときに入り口だけをいじっていた私が無意識のうちに開発していたからか。
「こ、これ、入ってるの?」
ペニバンの反対側が挿入されているはずの雫ちゃんは戸惑いの声を上げて一度腰を止めた。
ホンモノではないから先端の感覚などは当然伝わらないため、どこまで進んでいるかが把握できないらしい。
雫ちゃんほどのおっぱいの大きさだと腰元を黙視するのも一苦労だろう。
「ええ、大丈夫ですわよ。まだ出血はありませんから、処女膜には到達していないみたいですけれど。
そのまま腰を落とすだけですわ。……それにしても意外に平気そうなのが癪ですわね。わたくしのときはあんなに苦しかったというのに……」
桃華の実況と皮肉のあとに、シャッターが切られる音が聞こえた。
「シャッター音気になります? ……動画モードにしてさしあげますわ」
「ほたるちゃん、痛かったら教えてね」
桃華がもう一言なにかつけ加えたように聞こえたが、雫ちゃんの突入宣言でそちらの方に意識が取られて内容を理解することができなかった。
太ももと結合部に徐々に雫ちゃんの重みが加わっていく。
圧を一点に受けている矛先がじりじりと身を進めてきて、やがて膣道の内壁がひきつる感触があった。
まだ最奥部にはたどり着いていない。
つまりここが処女膜なのだと認識できたときには、雫ちゃんの張り型がその場所を突き抜けていた。
「っぅくーーー!」
注射針を刺される痛みと皮膚を引きちぎられる痛みが混ざりあった衝撃が胎内で発生した。
耐えきれない痛みではないものの、予告なしに与えられる衝撃としては少々辛いものがあった。
「ほたるちゃん?」
「……だ、大丈夫……。チクって来ただけだから……」
おそらくは膜を通過した感覚も雫ちゃんには伝わらなかったはずだ。
胎内で身体の一部が失われる感覚は初めて経験するものだけに驚きが大きかったけれど、通り過ぎてしまえば一瞬の衝撃だけだった。
ほどなくして雫ちゃんの樹茎が私の奥底にたどり着いた。
「どの瞬間で初めてもらえたのかが分からなかったのが残念だけど……、私たち、ひとつになれたんだよね」
「うん。一緒に、なれた……」
雫ちゃんを抱いたときと同じ体勢で雫ちゃんに抱かれる。
いつも一緒に暮らしてきた私たちだから、初めての経験もなるべく同じように迎えたかった。
その願いが叶った嬉しさで心が満たされていく。
> ちょっと呼び出し食らったのでしばらくした後に再開します。日付変わる手前ぐらいの予定。
「ええと、それじゃあ……。動くね。んんっ、……っは。こ、これ意外と難しい……」
私の中に沈んでいるものよりも少々丈の短い張り型が雫ちゃんの膣内にも埋まっている。
角度を固定するためか短い方は装着者のおヘソの側を抉るように反っているため、Gスポット周辺を刺激するデザインになっている。
そもそもタチ側となって腰振りをするのが初めての経験なのにそのような追加攻撃もあるのだから、すんなりできる方が異常だ。
「ほたるちゃんの奥にぶつかると、私の中のがクンって角度変えてきて、頭の後ろの方がカァって熱くなって……!」
腰を下ろすたびに肩を震わせていた雫ちゃんが、次第にコツを掴んできたようだ。
張り型が打ちつけられると、雫ちゃんの身体に押されて背骨がベッドに沈み、太ももが圧迫される。
窮屈な体勢を強要されることは雫ちゃんに身体を支配されているような錯覚を与えてくれる。
作り物のオチンチンが私の身体を揺らすたび、腰元の肉茎も上下して雫ちゃんと私のお腹の間で身を弾ませ、カウパー腺液をまき散らしていた。
ときおり雫ちゃんが腰から胸元までぴったりと身体を貼り付けて、そのきめ細やかな肌で私の陰茎もをあやしてくれる。
このまま手で握られたりしたら即座に暴発してしまいそうなほどの射精感がこみ上げてくるが、あと一歩を越えることができずにいた。
射精に至るまでに力を蓄える必要があるが、オンナノコの方を愛されているために快楽が局部に集中せず、全身に分散してしまう。
雫ちゃんはその腰元を抱きしめる体勢が気に入ったようで、最奥まで埋没させたまま偽枝の角度を変えるように前後に振りたくる。
挿入側の角度が変わるということは装着者の中の角度も変わるということなので、互いに急所を揺さぶり合う形となる。
基本的に一定のリズムを刻んでいる雫ちゃんの身体が不規則に震えるタイミングは、きっと彼女が軽い絶頂に達している瞬間なのだろう。
眉をハの字にし、快楽に身悶えしながらも小刻みな抽挿を続ける雫ちゃんの表情がひどく淫猥に見えた。
「この手のモノはGスポットと前立腺が同じ役割を果たしていて、Gスポットを弄られると精液出しっぱなしになると、いくつかの創作物で読みましたけれど、あなたの場合は違うようですわね」
私たちの身体の間でカウパーが糸を引いている状況をつぶさに観察していた桃華が持論を展開しながら小型のデジカメで撮影を続けていた。
「え、な、なに?」
桃華が急に話を割りこませてくるときは、何か重要な用事があるときが多いためその言葉の続きを待つ。
「ほたるさん、オンナノコの部分だけではイケないのではなくて?」
「やっぱりそうなの?」
「え、え、え」
桃華の素っ頓狂な指摘に雫ちゃんが同意を示した。
確かに絶頂まではまだ時間がかかりそうだと思ってはいたけれど、それは初めての体験に身体が戸惑っているだけではないのだろうか。
「ほたるさんの大きさのもので身体を貫かれているのに、くたくたにならないわけがありませんわ」
「私のシかたが悪いのかもしれないけど、でも、一回もイかないのはちょっと変かなぁって」
二人の言葉を聞くに、今までの行為ですでに数回ほど達していないのは異常かもしれないとのことだ。
そう言われて過去を振り返ってみると、自慰をするときも二人とエッチをするときも、絶頂には射精を伴っていたような気がする。
というよりも、女陰や陰核をいじるのは精液を放出させるためのサポートの意味合いが強かったように思う。
「それじゃあ、私……、オンナノコの方で気持よくなれない、の……?」
男性と女性の両方の良いところを持った身体であると、この頃になって自信が持ててきたというのに、こんなところに欠点があるとは今まで気が付かなかった。
「うーん……。たぶんほたるちゃんは、女の子が気持ちよくなる方法を知らないだけなんじゃないかな」
「本当に射精でしかイケないのか調べてみればいいのですわ」
桃華の提案になにを理解したかは分からないが、雫ちゃんは結合を解かないままに身体を起こした。
腹部が蛍光灯に晒されて、お互いの体温で茹だったような肉茎がヒクヒクと脈を打っている。
「んしょ……。この体勢は久しぶりですわね」
その淫棒を覆うように、桃華が私の上に跨ってきた。
裏スジに触れるスカートの内部には下着の存在が認められない。
それでようやく雫ちゃんが私との間にスペースを作った理由を理解できた。
「ヤンチャ様が気持ちよくなるのに合わせて、きっとほたるさんの女性の官能も高まるだろうと思いますわ」
手慣れた様子で亀頭を入り口にあてがいながら、桃華が身体を倒して私に覆いかぶさった。
雫ちゃんがストロークを取りやすくするための措置だろう。
「わわ……。ほたるちゃんの、本当に入っちゃうの……?」
雫ちゃんの驚嘆する声が聞こえたのと同時に、桃華が腰をスライドさせて私の肉竿を飲み込んだ。
「ふぅわああぁぁぁっっ!」
手で握られただけで暴発するだろうと予測されていた射精衝動は、桃華の横槍によって多少の落ち着きを見せていたけれど、幼女の如き締めつけを与えられればすぐさま同じところまで引き上げられる。
「ほたるちゃん、中すごい波打ってる……。このまま、動くね」
ゆっくりと張り型が引き戻され全長が抜け落ちるギリギリのところから、雫ちゃんの造茎が推し進められていく。
先ほどまでの装着者が快楽に夢中になる挿入ではなく、一突きずつ角度を微妙に変えて私の性感を開発しようとする抽挿に変わっていることに気がついた。
おなかの中をかき回されるたびに私の肉棒も悦びを露わにする。
その直撃を受けることになる桃華は、しばらくぶりに私のモノを迎え入れたこともあってなかなか辛そうな表情をしていた。
それでも雫ちゃんが身体を動かすのに合わせて腰を滑らせて精液を吐き出させようとしてくる。
「ほたるさん、また大きくなりましたでしょう……!」
エッチをしている最中に恨み節を放つ桃華に苦笑しながら、少しでも負担を減らしてあげようと彼女の身体を抱きしめた。
「まあ……こういう風にギュッとされるのはキライではありませんけど……」
「うん、安心して。自分で身体を動かすのはしんどいだろうから、私がかわりにしてあげるね」
「はい?」
脇の下に腕を回し肩の後ろで交差させた両手を桃華の肩に乗せて、彼女の腰の動きを補助することにした。
もともと体重が四十キログラムもないという軽さであり、身体全体を持ち上げるのではなく前後に往復させるだけなので、私のひ弱な腕力でも十分に桃華の身体を動かすことができた。
「やっ、ちょ、しのぶ、さ、あああっ。お待ち、お待ちなさいな、あっ、あっあああ!」
グプグプグチュグチュと音の漏れる音はいったいどこの穴から聞こえているものだろうか。
バラバラに打ち合わせている肌のリズムは、やがて私のオトコノコが大きく震えることで一定にまとまっていく。
私の吐精を受けたことのある二人だから、脈動のパターンで残時間を把握できるようで、桃華の内部の締めつけも雫ちゃんの腰の動きも私を気持ちよくさせるためだけに変化していた。
「も……、もう出る、出すよ……!」
雫ちゃんの造樹が子宮口を捉えて体重の載った突撃を放った。
造りものであるから体内へ吐精の実感こそないものの、雫ちゃんが絶頂を迎えているおかげで子宮口にバイブレーションが伝わる。
同時に溜めに溜め込んだ性衝動の放出を悟り、桃華の身体を腰元までたぐり寄せる。
蛇口をいっぱいに捻ったような水圧の高さの放出が桃華の最奥部に吐き出され、ドーナツリングの狭い入り口をやすやすと通り抜けていく。
普段以上の放出感に全身が気だるさを覚え始めたころ、下腹部に違和感が生じた。
射精をしているオトコノコの部分だけではなく、もう少し身体の中心に近い、子宮のあたり。
そこに発生したじんわりと響くようなわずかな痺れを、気持ちいいものだと理解できた直後。
「イ……!? やああっ、なに、何これ、なんで、私、わた、こんな、来る、来ちゃうぅぅ!」
息を吐き出すのと吸うのを同時に行おうとしているような矛盾した呼吸が生まれ、ついでその横隔膜の痙攣に合わせるようにお腹に甘い電流が走る。
自分で制御ができなくなりつつある呼吸をどうにか抑えようと口を閉じた瞬間、舌腹が上顎にくっついて喉と腹筋が急激に締まり上半身を縮こまらせた。
腹部収縮の余波は太ももから足の指先までを伝達して全身をめぐり、腰元へ戻る際に小さな衝撃波を生み出す。
終わりのないような快楽の波が、次第に穏やかに身体中へ溶けこんでいくのを感じ、これが女の子の絶頂なのだとようやく理解が追いついた。
「っは……、はぁっ……、はぁ……」
気がつけば三人とも同じような呼吸で、重力に体重を任せたままになっていた。このまましばらく動けそうにもない。
「気持ちよくなれた?」
「うん……。今日のこと一生、忘れられないと思う。桃華ちゃんも、ありがとう」
「ふ、ふん……。単なる取材の一環ですわ。これからもいろいろ取材させていただきますから、覚悟しておきなさいな」
桃華が強がったのを聞いて、雫ちゃんが噴き出す。釣られて私も破顔し、結局三人で笑いあいながら、私を救ってくれた二人に感謝をする。
これからもずっとこんな関係が続いていけばいいと心から感じて、二人の手を握った。
言葉もなく握り返してくれる二人の暖かさがあれば、私の願いはきっと叶うだろう。
■■ おわりだよー。
普段、Pに対して敬語使ってるアイドルたちの日常会話作るのすごく難しかったです。
というよりも全然出来てなかったですね。精進します。
ドラマCDとかあると言葉のニュアンスが掴めて、噛み砕きやすいので早い所、このお三方にCVつけてくださいお願いします。
長々とお付き合いいただきましてありがとうございました。過労死Pでした。
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