「世界は美しくなんてない…」
銀髪の幼女は、夜の闇に拳をかかげて
「…だから、私が美しくする!!」
その旅人と、物言うモトラドに演説を朗々と、
そして自慢げに一席ぶつのであった。
クロス要素あり、メタあり、やや崩壊
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そんなご機嫌な毎日の中、女の子はある日、ピクニックに出かけました。
近くの原っぱまで、ぺぺぺぺぺぺぺ、とちっちゃなモトラドを走らせて
紅茶と焼き菓子を堪能しながら、この日は自分の趣味のための写真を撮りました。
「いぇーぃ!チョウチョいいよーモンシロチョウ!」
草木、花、虫に鳥
太陽と空と雲と…蝶々
色々と写真を撮っていた途中、
彼女は不意に、ハッとしました。
あることに気がつきました。
「………ぅ」
彼女は最近、たくさんの銃の写真を撮りました。
それ自体は、なんら罪のないことなのでしょう
けれど、その写真の出来が良ければ良いほど、その銃がたくさん売れます。
たくさん売れればその分だけ、たくさん世の中に銃が溢れることになります。
それが、なんだかとても悪いことのように、女の子には思えました。
「……ぅぅ」
彼女は、カメラを下ろしてしまいました。
さっきまで、あんなに明るかった青空が
今では少し暗く、赤く見えてしまうのでした。
そんなお人好しを乗せて、皮肉屋が行く
ぺぺぺぺぺぺぺ
ぺぺぺぺぺ
「まあ、あくまでこれは希望ということなので…」
「…ですよね」
「達成できるように、せいぜい頑張ってください」
即座に、男に責任を丸投げにしました。
「えぇ…」
トランクは空なのに、荷が重くなったとため息をもらしていると、男の目に一つの影が映りました。
「…ん?」
眼下の荒野を横切る小さな影、子供のようでした。
子供がモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)のようなものを運転して、土煙を巻き上げていた。
「…師匠、あれって」
「ええ、見えてますよ」
男が声をかけたときには、師匠と呼ばれたその女性もまた同じように、自分の双眼鏡を覗いていました。
「子供のようですね、まああれくらいの年齢ならモトラドを運転してても不思議ではないですけど」
「えぇ?そうですかね」
どうやら2人には価値観の相違があるようです。
「………」
「あの国に向かってるんですが、だとするとだいぶ危ないですよね」
「そうですね」
その後、予言が当たったのかどうなのか
動乱に狂った国の情勢は
どういうわけか静かにおさまってしまい。
ここに至って食うもののない2人は、その国で
結構割高な値段で買い物をする羽目になりました。
「別にいいですけど…私は許しませんよ、あの銀髪を」
もちろん、思惑が潰れた(あるいは潰された)師匠はしばらくの間、軽くなった財布を握るたびに不機嫌となり
「…さいですか」
その間、男の人は相方の不機嫌にさらされて
不安な日々を送ることになったのでした。
時間は遡って入国時
そのときの騒動は、ある意味でだが、それは酷いものだった。
直前に、入国審査官がどこかへと電話していたのだか、恐らくはどこぞの"新聞社へのタレコミ"というやつだったのだろう。
城門を抜けて見えた景色は、町並みでも畑でもなく
空も見えないほどの、押し合いへし合い駆けつけた人の群れだった。
「どうも!アルファルファ新聞社です!!」「ビーツー新聞です!お話聞かせていただけませんか?!」「シトレス新聞に!一言!一言お願いします!」
「ジャネーノ新聞ですけど!今回はどういった目的で!!」「いやらしい目的なんじゃないんですか?ゲスニック新聞ですぅ!」「NSKです!国家新聞協会です!」
「なにこれ」「なにこれ」
予想外の人々の注目度に、流石のキノも面食らう形になった。
ぎゅうぎゅうに詰め寄る人の群れがそれぞれメモ帳や録音機、フラッシュのついたカメラを手にキノにはよく分からない何かを求めてきた。
「あの、よく分かりませんが、特に言うことはないので…」
「「特に言うことはない!!」」「特に言うことはない?」
「そんなこと言わず!!」「そんなこと言わないで!!」「何かあるでしょ?!」「後ろ暗いことでもあるんですか?」「後ろの積荷はなんですか?!」「下着の色は!?」「今朝は何を食べましたか!!」
「…えぇぇ」
「モテモテだね、キノ」
モテモテ、とはよく分からないが、多分これはそういうのとは違うだろうということだけはキノにも分かった。
この人達が求めているのはもっとこう、得体の知れないもののように思えたからだ。
買い物袋が落ちそうになるのを庇いなら、つい反射的に
「ぐえっ!?」
そいつの腕をひねりあげ、身体を地面に叩きつけていた。
投げつけた後で、キノは流石にマズい、と直感した。
この町のことはよく知らないが、この状況でこんなことをすれば、それこそいっそう騒ぎ立てられるのは明白だった。
「ああっ!なんてことを!!」「暴力だ!暴力行為!!」「おまわりさーん!ここに犯罪者がいますよ!!」「現行犯だ!スクープだあっ!!」
「この人殺し!恥を知れ!」「遺憾だ!遺憾だ!」「ちまたの女性に大人気だ!」「加害者の権利を!被害者の権利を!!」「不謹慎!不謹慎!」
思ったとおり、しかし想像よりも支離滅裂な罵声が飛び交う中で、キノは咄嗟に人々の合間に出来た裂け目に飛び込んで
その場から脱出をはかった。
「あ!逃げるぞ!!」「まてーっ!犯罪者が!!」「新聞は正義!マスメディアは正義!」
「そんな勝手な…確かに人を投げたのは悪かったけど」
買い物袋を落とさぬよう気をつけながら、裏路地の向こうの入り組んだ道をひた走った。
足腰は鍛えてあるので走りには自信があったが、地の利も知らず荷重であるが故、全員をまくことはできないように思えた。
「どうしようかな…っ」
コーベツ新聞社、かすれた字だが、看板には確かにそう書かれていた。
「あなたたちも、新聞記者だったんですか」
「まあの、だがまあ心配するな、何もとって食ったりはせんから」
キノから見て1番手前に座った男がそう答えた。恐らくはこの中で1番偉いのだろうと、その所作から見受けられた。
「でも、新聞なら取材とかしなくていいんですか?」
「今更取材したところで、もうどうしようもないわい」
「もう印刷に出しちまったからな、次の次の次の号くらいまで」
「天変地異が起きたって、記事の差し替えはできねえくらいだもんな」
ここにいる皆は記者なのだろうが、誰も彼もあっけらかんとしていて、さっきまで追い立ててきた人達の鬼気迫るようなものは感じられなかった。
「あなた達は、いったい」
ここまでで受けた仕打ちに比べると、こうも無関心を貫かれては、逆に面食らうというものであった。
「まあ座っとけ、どうせしばらくは外に出られないんだろ?手が離せないでお茶も出せんが」
「いいえそんな、構いません、匿ってもらえただけでも充分です」
「ああ、それは一等賞だからねえ、運が良くないと当たらないよ」
「…?」
よく見ると、ティーが指差した商品の脇にはデカデカと"一等賞"と書かれた紙も置かれていました。
どういうことか、と言いたげにティーが首を傾げていると、店主が自分の足元から別の箱を取り出しました。
その箱には、片手が入るくらいの穴が空いていて、覗き込むと大量の紙片が入っているようでした。
「この中のクジを引いて、一番いい当たりが出ないと、その商品は貰えないんだよ」
「!?」
ティーは愕然としました。まさかこんなことに阻まれるとは思ってもいなかったからです。
一瞬、ティーの中で躊躇する気持ちが湧き上がりました。
でも、疾走するバギーからミサイルを撃ち出す自分の姿を想像したら、そんな考えは消し飛んだのでした。
「へいまいど!」
気がついたときには、手に持ったお金をありったけ全部、大小さまざまな小銭と小さいお札も大きなお札も、店主の男に差し出していました。
店主も、品のあるティーの姿から育ちのいい、最低でも中の上くらいの家の子だと思っていたので、
金額としてはそこそこ大金でしたが、そこまで不思議に思うこともなく受け取りました。
「はいよ、この金額ならクジは三十回は引けるかな」
「…ふっ!」
ティーはすぐさま箱に手を突っ込むと、その小さな手で掴めるだけありったけ、中の紙片を握りしめました。
657:VIPにかわりましてWRITERがお送りします
くぅ疲w
今回はかなりの大長編となってしまいましたが、自分としてはかなりの自信作です。
掛け合いなんかもいいですけど、自分としては特にストーリーとかは傑作だと思いますね!
とくに中盤あたりの伏線なんかはw
では最後に、登場してくれたアイドルのみんなからの言葉を聞いてみましょうか!
ち「ここまで読んでくれて、どうもありがとう、私の歌声、皆にも届いたかな?」
は「どうもどうもー!みんな誤解しないで欲しいけど、私はあんな転んでばっかじゃありませんからね!(迫真)」
や「うるるーん!それじゃあみなさんまた会う日まで~」
みんな「「ばいばーい!」」
終わり
658:VIPにかわりましてREADERがお送りします
臭っ!しかもパクリ乙
土に埋まってしね
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