佐久間まゆ「のあの事件簿・この町のテロリスト」 (96)

あらすじ

探偵高峯のあは助手2人と共に、静かな町に降って湧いた連続事件の解決に乗り出しました


高峯のあ「のあの事件簿・東郷邸の秘密」
高峯のあ「のあの事件簿・東郷邸の秘密」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396432268/)
の設定を受け継いでいます。未読でも問題はありません。

あくまでサスペンスドラマです、のあさんはとても頑張って演技しています

グロ注意

思ったより反応が良かったので、急遽書いた続編を投下していきます


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1397732897

メインキャスト

探偵・高峯のあ
助手1・木場真奈美
助手2・佐久間まゆ

刑事第一課・柊組

警部補・柊志乃
巡査部長・和久井留美
巡査・仙崎恵磨

交通課巡査部長・片桐早苗
交通課巡査・原田美世

科学捜査課・松山久美子
科学捜査課・一ノ瀬志希

署長・高橋礼子



某ビル屋上

古澤頼子「…ここにタブレットを置いて、よし、動画撮影スタート」ピッ

頼子「今日は4月5日です。雲の少ない穏やかな夜を迎えています」

頼子「星も綺麗……」

頼子「こんな日はいいことが起こりそうですね。ほら……」

ボカーン!

頼子「ふふ、綺麗な爆発でしたね」

ドン!

頼子「あら、続きがあったみたいです。アクシデントも人生の華と言います、楽しみましょうね」

頼子「ご満足いただけるものがご提供出来たでしょうか……」

頼子「今宵はこれまで。皆様、また明日……」ピッ

高峯探偵事務所

高峯探偵事務所
所長高峯のあの趣味で設立された探偵事務所。高峯ビルの3階。事務所のオフィスは高峯家のリビングを兼ねる。

木場真奈美「帰ったぞ、誰かいるか?」

木場真奈美
高峯のあの助手、兼高峯家の居候。海外生活で養った多様なスキル持ち。足のケガは完治し、今は全力疾走可能。

佐久間まゆ「あ、真奈美さん、おかえりなさい♪」

佐久間まゆ
高峯のあの助手その2。前の事件がきっかけで高峯家に住むことになった。料理と編み物がすきな優しい女の子。

真奈美「ただいま、佐久間君。ドックフードはこれでいいのか?」

まゆ「はい、ありがとうございます。アッキー、おいでー」

アッキー「くうん」

アッキー
太田優の飼い犬。大人しい室内犬。前の事件でご主人様に不幸があったため、まゆが引き取った。

まゆ「よしよし、今ご飯にしますからねぇ」

真奈美「のあはいるのか?」

まゆ「いますよぉ。のあさーん」

高峯のあ「……子猫じゃないのよ、にゃお!」

真奈美「……テレビの前で、ネコ耳付けて赤いサイリウム振ってるのがウチの所長か?」

まゆ「……そうです、いつの間にネコ耳を」

のあ「にゃー!にゃー!にゃー!」

高峯のあ
高峯探偵事務所所長。美貌と知性、更に財力を兼ね備えている。なお、それらのほとんどは前川みくと事件に費やされる。

真奈美「……止めていいのか、生放送じゃないな?」

まゆ「確かDVDだったような……」

真奈美「用事もあるし、止めるぞ。のあ!」

のあ「なによ、真奈美。忙しいから後にして」サイセイテイシ

真奈美「忙しいようには見えないのだが……」

のあ「あなたの目は節穴なの、真奈美?」

真奈美「突っ込みたいところは色々あるが、みくにゃん大大大好き愛してる、って書いてある法被を着始めるな」

のあ「真奈美、あなたは相変わらず考える事をしないのね。いいわ、教えてあげる」

まゆ「……法被は着るんですね」

のあ「人間とは、繰り返しによる経験により学習する生き物なのよ。灰色の脳細胞を持つ私だって例外ではないわ」

真奈美「自分で言うのか」

のあ「思考よりも行動の方が早いという研究結果が出るくらいに、いくら優れた頭脳を持とうとも、行動のためには反復学習が必要なのよ」

まゆ「言ってる事は間違ってないんですけど……」

のあ「みくにゃんのライブはやり直しが利かない一期一会。いついかなる時も準備を行ってはいけないの。経験、反復、学習、準備、わかるでしょう?」

真奈美「まともなこと言ってるとは思うんだが」

のあ「明日みくにゃんのゲリラライブがあっても、全力で応援できるようにこうやって体に刻みこんでるのよ。わかった?」

真奈美「こら、平然と戻ろうとするな。話があるんだ」

のあ「話?」

真奈美「事件だぞ、少し毛色が違う」

のあ「なるほど、話を聞くわ。真奈美はそこのソファーにでもかけなさい。まゆ」

まゆ「なんですかぁ?」

のあ「飲み物を頂戴、なにかある?」

まゆ「レモンティーとかどうですか?」

のあ「それでいいわ、お願い」

まゆ「はぁい♪」

真奈美「……ネコ耳と法被はそのままなのか」

真奈美「この写真の場所を知ってるか?」

のあ「店が多い通り、大きな十字路、左手に神社。まぁ、富士神社の周辺でしょう」

真奈美「正解。富士神社の近辺だ、次はこれを見てくれ」

のあ「文字に見えなくもないものがA4の用紙に3行書き。手では書いていない印刷物、しかし既存の外国語とは思えない」

真奈美「最近この近辺で貼られたものらしい。微妙にバージョンが違うのも全てコピーを貰って来た」

のあ「この丸い一群を一単語もしくは文節とすれば約10単語及び文節が3行、それが8パターン、お遊びの暗号ならこれぐらいで解ける自信があるわ」

真奈美「ほう。何かわかるか?」

のあ「製作者が日本人なら、仮名が48文字プラスアルファもしくはアルファベット26文字を特別な図形に当てはめる、ローマ字表記ならさらに絞られる、このあたりが簡単な暗号。そうではないようね」

真奈美「もっと高度だと?」

のあ「そこまでは言ってない。むしろ乱数、素数を用いて、データベースが必要な暗号なら数字の方が楽。2進数、10進数、16進数どれでもなさそうね。まゆ、その意味はわかるかしら?」

まゆ「えっと、それよりも文字の種類が多い?」

のあ「75点よ、まゆ。レモンティーをありがとう。残り25点は、本当に多いかは数えてないからわからない。けれど、数えなくてもわかる」

まゆ「それじゃあ、もっと増やせるとかですか?」

のあ「私の推測ではその通り。この丸い線達の集まりがどんなルールで動いているかはわからないけれど、あきらかに多数の線と長さで調整できる」

真奈美「もしかして、時間があれば解読できるのか?」

のあ「残念だけど、出来ない。例えば場所に制限をかけるとしたら丸い謎の文字ひとつを上下左右とか中心外側でわけるとかだけれど、そう単純ではなさそうね。長さもまちまち、太さもまちまち。でも、全て印刷物なのよ」

真奈美「太さ、長さ、場所、全てに意味があると?」

のあ「でしょうね。こんなものにはいくらでもルールは付けれると思うわ。解読表がないと無理でしょうね」

真奈美「それじゃ、これは」

のあ「知らない誰かに解読させる気なんてない。仲間内の連絡手段もしくは……真奈美、これはどこに貼られてたの?」

真奈美「さっき見せた富士神社周辺の、お店6軒、アパート1軒、あとは富士神社の石垣に貼られていたらしい」

のあ「人が出入りする場所に貼ることから仲間内での連絡手段も考えられるけれど、それならもっと住居が増えてもいい。ならもう一つ、何かの宣言文」

真奈美「宣言?」

のあ「自分の言葉で表明した何か。他人に読ませる気がないあたり、表明するだけが目的」

真奈美「……ふむ。ちょっとこの話は置いておこう。実はこの周辺ではこれ以外にも妙なことが続いている」

のあ「妙なこと?」

真奈美「妙は言いすぎかもしれないが、妖怪が出ると言った変なウワサとか」

のあ「妖怪ね……」

真奈美「まぁ、それはテンプレートな都市伝説レベルなんだが、妙にはやっているらしい」

のあ「例えば?」

真奈美「首なしライダー、口裂け女、テケテケとか」

のあ「それは、全国どこでも流行する時は流行するわ」

真奈美「私もそう思うよ。あとは細かい事件とかだな。あげるとキリがないんだが、ゴミが荒らされてるとか、変な文字が道路にチョークで書かれてる、という感じだ」

のあ「ふむ」

真奈美「あとは神社の娘さんが相当な神通力を持つ相当な美人らしくて、いつも集会してて、異様な雰囲気だとさ」

まゆ「まぁ……」

のあ「それは行ってみればわかるわ」

真奈美「それもそうだな」

のあ「それより、話を戻しなさい。貼り紙の話よ、何か言いかけたでしょう」

真奈美「ああ。おそらく立ち上がるから、最後にしようと思っていた。実は、そのひとつを貼られた場所が事件に巻き込まれた」

のあ「なるほど、詳しく聞かせなさい」

真奈美「端的に言うと、爆発した」

のあ「爆発?」

まゆ「今日のニュースでやってましたよ、ガス爆発じゃないかって」

のあ「そう。それで、真奈美は何が言いたいの?」

真奈美「脅迫文とか犯行予告、その類の可能性はあるのか」

のあ「……なるほど。いいわ、行こうじゃない」

真奈美「別に強制はしてないぞ。柊警部補から連絡が来たわけでもないし」

のあ「刑事一課の仕事を手伝うのが探偵の仕事じゃないわ。小さな事件含めて、解決してあげましょう。まゆは……」

まゆ「今日はお友達とお出かけなんです♪学校が変わって、初めての友達と」

のあ「そう、気を付けて。夕飯までには帰ってくるわ。行くわよ、真奈美」

真奈美「わかった。だが、一つだけ言っていいか」

のあ「なに?」

真奈美「法被は脱げ、サイリウムをポケットから出せ、ネコ耳を外せ」

のあ「……」

爆発現場横

のあ「志乃がいるわ」

真奈美「ん、なぜだ?」

のあ「お疲れ様です、柊警部補」

柊志乃「あら、高峯さん、木場さん」

柊志乃
刑事一課警部補。柊班班長。好きなものは酒。

のあ「ただの爆発事故では?」

志乃「どうも違うみたい。刑事事件として扱うことになるかもしれないから来たのよ」

和久井留美「柊警部補、お話が」

和久井留美
刑事一課巡査部長。柊班所属。みくにゃんファンクラブ会員番号がのあより若干遅く、そのことでケンカになったことがある。

志乃「和久井さん、お疲れ様。仙崎さんも」

仙崎恵磨「お疲れ様です!」

仙崎恵磨
刑事一課巡査。柊班臨時所属。ベリーショートが似合う溌剌とした警察官。普段は生活安全課少年班。

留美「さきほど科学課から回答を得ました。爆発の原因はプロパンガスや粉じん爆発ではありません、人為的な火薬、つまり爆弾です」

志乃「悪い勘は当たったようね。和久井さん、引き続き現場で他部署と連携して。仙崎さん」

恵磨「はい!」

志乃「こちら、高峯のあさんと木場真奈美さん」

恵磨「おお、高峯さんですか!噂は聞いています、仙崎恵磨です!」

のあ「よろしく」

志乃「仙崎さん、彼女達に今回の事件の説明をよろしく。良い意見が聞けると思うわ」

恵磨「了解しました!」

のあ「大和巡査は?」

大和亜季
刑事一課巡査。柊班所属。ショックなことがあったため、カラ元気だった。

志乃「休暇を取らせたわ。無理しても出てくるタイプだったから」

のあ「そう」

志乃「高峯さん、木場さん、ちょうど良かったわ。警察は縦割りすぎるわ、柔軟な捜査と意見を期待してるから」

のあ「わかったわ、志乃」

志乃「私はこれで」

留美「警部補はどちらに?」

志乃「署に戻るわ。刑事事件、しかも爆弾となると上が騒ぎ出す。署長含めて話を付けてくるから、現場はよろしく」

留美「了解です。それでは仙崎さん、私達も動きましょう」

恵磨「了解。高峯さん、木場さん、こちらへ」

爆発現場・佐藤被服・クリーニング店玄関前

恵磨「爆発は昨日午後11時ごろ、ここ佐藤被服・クリーニング店で発生しました。家はすぐに全焼。店主である佐藤心は一階の寝室で死亡しているのが確認されてます」

佐藤心
さとうしん。女性。佐藤被服・クリーニング店店主。裁縫とクリーニングのプロだった。

のあ「死因は?」

恵磨「爆発による衝撃と重度の火傷と思われます、特にそれ以外の外傷はありません」

のあ「他の住民は?」

恵磨「いません。先代の父親が死亡後、娘が一人で切り盛りしていたようです」

のあ「近所の評判は?」

恵磨「評判は良かったようです。近所地元優先で服の直しをやってくれていたそうです。もともとここ出身ですし、佐藤心を恨むような人はいない、とのことです」

のあ「ふむ」

恵磨「近所の住人は不幸な事故としても悲しんでおりましたが、爆弾を使った殺人となると、どう思うか……」

真奈美「そうだな。秘密の方がいいかもな」

のあ「いつかは漏れるわ、志乃に従いなさい。もちろん、言いふらす必要はないけど」

恵磨「了解です」

のあ「爆発の詳細を教えて」

恵磨「ちょっと待ってください。そろそろ、出てくるはずで」

松山久美子「あら、こんにちは。のあさん、真奈美さん」

松山久美子
科学捜査部所属。常に白衣着用の美人。のあ達が見る白衣はたいてい私物で、仕事用は署内。

恵磨「久美子、今時間はある?」

久美子「ええ。私の仕事は終わり。のあさん、聞きたいことある?」

のあ「わかったことすべて聞かせて」

久美子「そうね、まずは爆発の原因だけど」

のあ「爆弾?」

久美子「端的に言えばそうよ。さっきまではプロパンガス漏れによる爆発じゃないかと思われてたけど」

のあ「なんで違うと?」

久美子「大きな爆発が2回あった、そういう情報が得られたからよ。2度目の爆発は大きく家を燃焼したから、プロパンガスと断定。1回目の原因を探してたの」

のあ「それが爆弾?」

久美子「そう。粉塵爆発とかガソリンとかだと思ったけど、ニトロ系化合物の爆弾と推測」

のあ「そうなると、衝動殺人でも事故でもないわね」

久美子「でしょうね。どんな質の爆弾かは知らないけど、殺意を待った爆弾であることは間違いない」

のあ「爆心地は?」

久美子「寝室の床下。屋根がはがれたレベルの爆発が爆弾のものだけで予想される」

真奈美「ということは、被害者を狙った爆発……?」

久美子「おそらく。むしろ、2回目の爆発は想定外だった可能性がある」

のあ「つまり」

久美子「明らかな殺人事件よ、これは」

佐藤被服・クリーニング店前

恵磨「臨時とはいえ、本当に殺人事件となると身構えるなぁ」

のあ「普段はどこの所属なの?」

恵磨「少年班です。ケンカとか万引きとか血の気の荒いだけなら……」

のあ「仕方がないわ。ところで、真奈美、あれを見せて」

真奈美「佐藤さんのお店のは、これだな」

のあ「それ。仙崎巡査、この紙に見覚えはある?」

恵磨「うーん、ありません。でも、この壁はこちらですね」

のあ「そうね」

真奈美「いや、待て。これ、剥がされてないか」

のあ「確かに、テープが残っている。少し焦げている、両面共に」

恵磨「紙が燃えた炭もありませんし、剥がされた?」

のあ「その可能性は高い。剥がした意味でも推測する事にしましょう、だけれど情報が足りない」

真奈美「貼られていた他の場所はわかる」

のあ「真奈美が言っていた他も含めて精査しましょう。仙崎巡査」

恵磨「はい!」

のあ「警察の邪魔はしないわ。刑事事件としての調査をがんばって。志乃と留美にはよろしく」

恵磨「了解しました!ご健闘お祈りしてます」

のあ「ありがとう。行くわよ、真奈美」

真奈美「近いのは、っと、チョコレート屋からか」

輸入チョコレートショップ・ショコラティエパピオン

岸部彩華「昨日の夜ですかぁ~?」

岸部彩華
輸入したチョコレートと雑貨、ショコラティエパピオンの店主。派手だが、育ちの良さも感じさせる女性。

のあ「大きな爆発があったでしょう?」

彩華「ごめんなさぁい、お家はここじゃないの」

のあ「なるほど。では、今日ここに来た時に何か気付きましたか?」

彩華「う~ん、警察さんとかぁ、消防士さんが一杯いたから何事かなぁって思ってぇ。ハァトちゃんがぁ、死んじゃうなんて……」

のあ「ハァトちゃん?」

彩華「心だからハァトちゃん」

のあ「……そう。心さんについて聞かせて」

彩華「小さなクリーニング屋さんだと思ってたけどぉ、腕も良いし、目利きだったの。とっても良いお話を一杯した、なぁ……」

のあ「心さんの評判はどうだった?」

彩華「良かったよぉ~。海外のお店に紹介したい、って言ったらぁ、ここがはぁとの町だからここで仕事をするのが楽しいのよ、って。みんなのための服屋さん、それがハァトちゃんだった」

のあ「それは残念だったわね」

彩華「……悲しいな」

のあ「心さんのお店に出入りしてた人は?」

彩華「一杯いたよぉ。近所の人も、遠くの人も」

のあ「自宅には?」

彩華「あやかもよく行くし、誰がいてもおかしくないよ」

のあ「ありがとう。最後に聞きたいのだけれど、真奈美、出して」

真奈美「岸部さん、この紙はどうしました?」

彩華「それぇ?剥がすとまた貼られるからそのまま」

のあ「心あたりはある?」

彩華「ないなぁ~、意味もわからないしぃ」

のあ「参考になったわ、行くわよ、真奈美」

真奈美「待った、このチョコレート買っていいか?日本では扱ってる所がなかなかないんだが、美味しんだよ」

のあ「……いいわ」

真奈美「やった!岸部さん、これをひとつ」

彩華「まいどあり~」

ラーメン屋・麺洋

のあ「ブイヨンがベースのスープ」ズルズル

真奈美「中華麺らしくはないが、麦の味がする、良くスープが絡む縮れ麺」ズルズル

のあ「洋風、いや日本の洋食屋が作るラーメンという感じね」

真奈美「ご主人は元洋食屋らしいぞ」

のあ「なるほど、通りで美味しいわけだわ」

真奈美「ああ、美味しい」

のあ「この店については何かないの?」

真奈美「そうだな……スリーピングレディ・エリーゼみたいな生きてるとは思えないほどはっと息をのむ銀髪の美少女が、店名をブツブツ呟きながら、その細身の体に入るとは想像もできない量を平らげて帰ったらしい、なんてウワサがあるな」

のあ「……なにそれ」

真奈美「銀髪の美少女、まさか、のあ……」

のあ「そんな大食漢じゃないわ。それに」

真奈美「それに?」

のあ「私は美少女と言える年齢じゃないでしょう」

真奈美「それもそうだな」

のあ「私は、まぎれもない『美女』よ」

真奈美「結構ナルシストだよな、のあ」

真奈美「見づらいミラーだな」

のあ「下を向きすぎだわ」

真奈美「事故が起こるぞ、大きな十字路なんだから。えっと、次の店はここか。エスティーブイ?」

のあ「セント、Vかしらね」

喫茶・st.V

安部菜々「いらっしゃいませー、むっ、ピリリン♪」

安部菜々
喫茶st.Vの店員。主にフロア担当。童顔小柄で年齢不詳。メイド喫茶仕込みのサービス可能(無料・繁忙時不可)。

のあ「随分と可愛らしいウェイトレスさんね」

菜々「ありがとうございます♪あの銀髪のお姉さん」

のあ「なんでしょう」

菜々「菜々、ウサミン電波を受信しました♪ウサミンメイドでサービスしましょうか?」

のあ「ウサミンメイド?メイド喫茶のような感じかしら」

菜々「はい!ウサミン星人のラブリーさ満開でおもてなしします♪もちろん、普通でも大丈夫ですよ?」

のあ「……ふむ」

真奈美「待て、のあ。そんな真剣な表情をするな、目的を思い出せ」

のあ「確かにそうだわ。また今度の機会に。ウサミン星人のメイドさん」

菜々「わかりました。マスター、2名様ご来店でーす」

のあ「カウンターでいいわ。マスターと話は出来る?」

菜々「出来ますよ。マスター、カウンターに2名様ご案内しまーす」

相原雪乃「いらっしゃいませ。こちらへお座りくださいな」

相原雪乃
喫茶st.Vのマスター。キッチンカウンター担当。物腰等々柔らかな女性。

雪乃「お飲み物はいかがいたしましょう?」

のあ「オススメは?」

雪乃「紅茶は本日のブレンドをご用意しております」

のあ「では、紅茶を」

真奈美「私にもそれを」

雪乃「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」

のあ「紅茶の種類が多いわね」

真奈美「紅茶趣味が高じて始めた店らしい」

のあ「まだ若いのに凄いわね」

真奈美「のあも十分おかしいんだがな」

槙原志保「いらっしゃいませ!お水とおしぼりをお持ちしました」

槙原志保
喫茶st.Vのウェイトレス。キッチンホール共に担当。よく動きよく働く原動力はパフェ。

のあ「ありがとう」

志保「はじめまして。槙原志保です♪ところで、お二人はどんな関係なんですか?」

のあ「探偵と助手」

志保「ええ、本当ですか!?」

真奈美「言葉に直されると気恥ずかしいが、確かにその通りだな」

志保「へー、かっこいい。どんな事件を追ってるんですか?」

のあ「真奈美、貼り紙を見せてあげて」

真奈美「これだね」

わくわくさん(汗)
フルサワー(滝汗)
出オチシュガーハート(放心)

志保「あー、入口の近くに貼られてました。先月くらいかな」

のあ「意味とかわかるかしら?」

志保「うーん、わかりませんねぇ。ナナさーん」

菜々「はーい、志保ちゃん、なんですか?」

志保「この紙について何かわかりますか?」

菜々「うーん、ナナにはわかりません。はーい、ただいまー」

のあ「繁盛してるわね」

志保「マスターのおかげですよ♪今日はいつにもまして外の人が多いですけどね」

のあ「爆発事件があったから?」

志保「そうなんですよー。私、ビックリして、ここの様子を見に来ちゃいました」

のあ「爆発事件の時は、近くに?」

志保「私は近くのアパートに住んでるんです。昨日の爆発は聞きました、2回くらい大きなものがあったかな」

雪乃「お待たせしました。本日のブレンドティーです」

志保「マスター、お二人は探偵さんなんですって」

雪乃「まぁ……、何かご調査中ですか?」

のあ「いろいろと。昨日の爆発時はどちらに?」

雪乃「私ですか?ここの2階が私の自宅ですので、そちらに」

のあ「爆発は何回?」

雪乃「2回でしょうか。まだ煙と煤のニオイが残っている気がします」

真奈美「そうか?」

のあ「鼻が利くんでしょう。あと貼り紙については何か知っていることは?」

雪乃「貼り紙……」

志保「マスター、扉の所に貼られてたあれですよ」

雪乃「ああ、丸いのが書かれた紙ですか。私にはわかりかねます」

のあ「剥がしたことは?」

雪乃「あります。同じ物が貼られるので、おそらく印刷したものなんでしょうけど、イタチごっこです」

真奈美「ふむ、どこでも同じか」

のあ「最近、何か噂はある?」

志保「ウワサですか?うちに宇宙人がいるってウワサが……」

菜々「キャハ♡」

志保「それはほぼ事実ですね。他になにかありましたっけ、マスター?」

雪乃「そうですわね……、妖怪とか幽霊が出るとかお客さんがよく言いますね。たとえば、小人が出るとか」

のあ「小人?」

雪乃「物の位置を少しだけ動かして行くんですって」

志保「私も聞きました、でも最近物が良く無くなるような……」

雪乃「気のせいだとは思うんですけれど、私も物の位置が動いているような気がとてもします」

のあ「なるほど、他には?」

雪乃「小人の他には、子供達が妖怪が出るとか言ってますね。本でも流行ってるのでしょうか」

真奈美「そういう年頃だからな」

雪乃「それと本当に小さなことなんですが、この町で物が壊されたり、落書きが多いような」

のあ「イタズラ、それともそれ以上のもの?」

雪乃「どちらかと言えばイタズラ未満でしょうか。イタズラにしては、些細すぎるような」

のあ「……ふむ」

雪乃「小さな異変が大きな事故になった、なんて思うのは占いに影響されすぎでしょうか」

のあ「フォーカスしてたから、事件が大きく見えるだけよ」

雪乃「そうですね」

志保「マスター、コーヒーをお願いします!」

雪乃「かしこまりました。それではごゆるりと」

のあ「紙、ウワサ、小さな事件、そして爆発」

真奈美「関係してると思うか?」

のあ「わからない、もう少し話を聞いて回りましょう」

真奈美「了解した」

のあ「美味しいわ、この紅茶……」

Bar・Rebellion前

真奈美「入口はここだけか?」

のあ「雑居ビル2階の小さなバーみたいね。あの貼り紙も扉に貼ってあるわね」

真奈美「そうだな。剥がした形跡もないな」

のあ「営業時間は20時から5時まで、店主はまだいないみたいね」

真奈美「また20時過ぎてから来るか?」

のあ「まゆが寂しがるからやめましょう。今日の帰りにもう一回寄ってみましょう」

真奈美「わかった」

アパート・メゾンドシャルル

のあ「ここの貼り紙の位置は?」

真奈美「1階の102号室の扉だ」

のあ「あきらかにそこの住人向け。話を聞いてみましょう」

真奈美「名前は、ネームプレートは貼ってないのか」

のあ「聞けばわかるわ」ピンポーン

真奈美「……」

のあ「……不在かしら」

真奈美「仕方がない、出なおそう」

持田亜里沙「あの、なにかご用ですか?」

持田亜里沙
メゾンドシャルルの住人。近所の幼稚園勤務。

のあ「こんにちは。こちらの方?」

亜里沙「いいえ、私は103号室、隣です」

のあ「102号室の人はどんなかた?」

亜里沙「あれ、出ませんでした?」

のあ「ええ」

亜里沙「もー、愛結奈さんはまた昼過ぎまで寝てるのね。起こしちゃいましょう。愛結奈さーん、もうお昼過ぎてますよ!」ピンポンピンポン

ガチャ

浜川愛結奈「なに……?日が出てから寝始めたから、こんななりなんだけど」

浜川愛結奈
メゾンドシャルル102号室の住人。在宅ワーカー

亜里沙「スーツのまま寝てたんですか?」

愛結奈「そう言えばスーツだったわ」

亜里沙「もう皺だらけじゃないですか。クリーニング出してくださいね?」

愛結奈「はいはい。ところで、あなた方は?」

のあ「ちょっと玄関の貼り紙についてお聞きしたくて」

愛結奈「ああ、これ?なんとなく気にいったから最初からこのまま貼ってるのよ。特に実害ないみたいだし」

のあ「写真をとっても?」

愛結奈「いいけど。私の作品でもないし」

のあ「では、失礼して。昨日の爆発はどうでしたか?」パシャ

愛結奈「昨日、ああ、その時間出かけてたのよ。だからわからない」

のあ「近所の噂とか何か知っているかしら?」

愛結奈「そういうのはわからないわ。ふぁぁ、やっぱり眠いからここまでね」

亜里沙「ちゃんとご飯は食べてくださいね」

愛結奈「わかってる。じゃあね」バタン

亜里沙「もう!」

のあ「ありがとうございました」

亜里沙「どういたしまして。ところで、警察の方ですか?」

のあ「いいえ、探偵と」

真奈美「助手らしい」

亜里沙「まぁ」

のあ「はじめまして、高峯のあです。お名前をお聞きしても?」

亜里沙「持田亜里沙です」

のあ「さっきの方は?」

亜里沙「浜川愛結奈さんですよ」

のあ「彼女のお仕事は?」

亜里沙「詳しくは知らないですけど、ライターとかデザイナーをやってるみたいですね」

のあ「そう。あなたは爆発を聞いたの?」

亜里沙「この部屋にいたので聞きました」

のあ「2回とも?」

亜里沙「はい」

のあ「何か気づいたことはある?」

亜里沙「うーん、特には」

のあ「聞きたいのだけれど、最近話題になってる噂とかは知ってるかしら?」

亜里沙「そうですねぇ、あ、私の勤めてる幼稚園では妖怪が出るとか噂ですよ」

のあ「子供達の間で?」

亜里沙「はい。妖怪ブームです。こんなのでも本に興味を持ってくれると嬉しいですね、やっぱり」

のあ「そう。他にはある?」

亜里沙「子供達も小人を見たとか言ってますね。あと、神社の話とか」

のあ「神社、そこの富士神社ね」

亜里沙「ええ。最近霊験あらたかでパワースポット化してるらしいですよ」

真奈美「聞いた噂と同じだな」

亜里沙「あと、事故が多くて」

のあ「事故?」

亜里沙「ええ、サイドブレーキのかけ忘れで車が塀にぶつかったとか、自転車で転んだとか」

のあ「なるほど」

亜里沙「子供達が巻き込まれると大変なので、気をつかいますね」

のあ「ありがとう」

亜里沙「いえいえ、それでは」パタン

のあ「……」

真奈美「……」

のあ「近くに幼稚園があったわね?」

真奈美「ああ。殺人事件と知ったら彼女も大変だろうな」

のあ「……仕方がない、心の中で謝っておきましょう」

帽子屋・マッドハッター

並木芽衣子「昨日の夜?あっ、爆発事故の話?」

並木芽衣子
帽子屋・マッドハッターの店主。明るく陽気なマッドハッター。

芽衣子「ごめんね、家はここじゃないからわからないんだ」

のあ「それじゃ、この紙は?」

芽衣子「ああ、これ?レジの横に積んであるよ。毎朝剥がすけど、次の日の朝には別のが貼られてるんだ、見る?」

のあ「お願いするわ」

芽衣子「はい、どーぞ。それにしても探偵さん、なんでこんな所に?」

のあ「まあ、単純な興味かしら」

芽衣子「そうなんだー。探偵さん、帽子買ってかない、いや買わなくてもいいよ!ちょっと、何個か合わさせて、ね?」

のあ「構わないけれど」

芽衣子「やったー!ねえ、まずは探偵らしく鹿撃帽被ってみて」

のあ「紙は返すわ。何かこのお店で変わったことは?帽子はどう?」

芽衣子「うん、雰囲気は出るけど探偵さんには似合わないね。どうしようかなー。このお店自体では気になったことは、ひとつだけあるかな」

のあ「それは?」

芽衣子「毎朝来るたびに、ちょっと帽子の位置がずれてる。うん」

のあ「気のせいではないと?」

芽衣子「それはもちろん!このお店と帽子は子供みたいなものだし、小さなことでも気がつくんだ!」

のあ「そう」

真奈美「……ベクトルは違うがのあと似ているな」

芽衣子「次はこの帽子どうですか?ソンブレロです」

のあ「誰かが侵入した可能性は?」

芽衣子「あると思います。物を盗られてないので、小人さんだと思うことにしてます。はい、どうでしょう?」

のあ「レジは無事?」

芽衣子「うん、お金は閉じるときに必ず持って帰るから。うーん、やっぱりシックな方がいいですか?」

真奈美「のあにはそうだな」

芽衣子「そうですね!シンプルなハットがいいかな」

のあ「他にこの辺のウワサは聞く?」

芽衣子「ウワサですか?そうですねー、さっきも言いましたけど小人がいるとかは言いますね。あとは忍者とか」

のあ「忍者?」

芽衣子「忍者です、夜に家の屋根を跳び移っていく人影を見たとか言ってたお客さんがいましたよー。さ、どうでしょう?」

真奈美「なかなかいい感じだぞ」

のあ「帽子もいいものね」

芽衣子「もちろん!帽子をお求めなら、いつでも来てくださいね」

のあ「ええ。これをお返しするわ」

芽衣子「その紙はいりませんよ。明日にはまた一枚増えますから」

のあ「そう。頂いて行くわ。最後に確認するけど、心あたりはないのね?」

芽衣子「はい」

のあ「ありがとう。お邪魔したわ」

芽衣子「また来てくださいねー!」

書店・Heron

鷺沢文香「昨日の夜、ですか……?」

鷺沢文香
書店・Heronの店主。生粋の本好きで、現在は海外から輸入販売及び古書販売のお店を持つまでになった。

のあ「爆発があったでしょう?」

文香「はい、ありました。2回ほど大きな爆発音が聞こえたので、外へと出ました。音に気付いた人が多く道路に出ていました」

のあ「何か気づいたことは?」

文香「……いいえ、特にないです」

のあ「最近、この近辺で話題になっていることはある?」

文香「そうですね、妖怪と神社についてでしょうか」

のあ「妖怪の本は売れる?」

文香「ええ、古いムック本とか子供が買って行きます」

のあ「神社については?」

文香「美人な巫女さんがいるので、そのおかげでしょうか。私にはよくわかりませんが」

のあ「この店で盗難は?」

文香「盗難、ありませんね。ここは静かで人も優しいですから」

のあ「そう。じゃあ、小人の話は?」

文香「小人ですか、頼子ちゃんはそんな話をしていましたが、私は見たことがないから」

のあ「ふむ、事故とかは?」

文香「事故ですか、うーん……」

トントン

文香「お店の前で、幼稚園の子供が転んだぐらいしか」

のあ「ありがとう。ところで、上に誰かいるの?」

タンタン

文香「ええ、一緒にお店をやってる人がいます。降りてきたみたいですね」

古澤頼子「お客様、ですか?」

古澤頼子
書店・Heronの店員、居候。メガネと長髪が似合う知的な美人。美術品などにも精通。

文香「そう。探偵さんなんだって」

頼子「探偵さん……」

のあ「はじめまして」

頼子「はじめまして、古澤頼子です」

のあ「あなたにもお聞きして良い?」

頼子「いいですけれど、文香さんと一緒に住んでるので同じようなことしか知らないとは思いますよ」

のあ「それでもいいわ。昨日の爆発時は何を?」

頼子「2階で寝てました、ヘッドフォンを付けて寝るので、揺れたのはわかったんですが、爆発だとは思わなくて」

のあ「見ていないと?」

頼子「はい」

のあ「それじゃあ、この辺ではやっているウワサは聞いたことがある?」

頼子「妖怪、それと小人が出るって」

のあ「小人は見たことがある?」

頼子「いいえ、ないです。でも、ちょっとずつ部屋の物の位置が変わってたりするような」

のあ「そう。あと、事故とかは目撃したことはある?」

頼子「ない、ですね。ごめんなさい、探偵さん、お役に立てなくて……」

のあ「こちらこそ、時間をおかけてして。二人に聞きたいのだけれど、この貼り紙に見覚えは?」

頼子「それなら、扉を出てすぐに貼ってあります」

のあ「剥がしたことは?」

文香「あります。新しいのがまた貼られたのでそれからはこのままです」

のあ「見覚えは?」

文香「ないです。推理小説の暗号で似たようなのを見たことはありますが、昨日確認してみたら似ても似つかなかいものでした。頼子ちゃんは?」

頼子「私もないです。ヒエログリフとか、とっても原始的な文字じゃないかと思ったんですが、そうじゃないみたいですね」

のあ「ありがとう、参考になったわ。事故とか侵入の報告もあるから、お気をつけて」

文香「ありがとうございます」

富士神社境内

のあ「なるほど」

真奈美「なるほどな」

のあ「神通力があろうがなかろうが、あれなら気にならない」

真奈美「むしろ、あれならご利益あるだろう」

のあ「境内にいる男性も多い」

真奈美「女性も多いぞ。性別どころか年齢層すら幅広い」

のあ「話しかけてみましょうか」

真奈美「いいのか?遠目で見てるのがいいような……」

のあ「そんな遠慮はいらないでしょう。あなた」

鷹富士茄子「はい、なんでしょうか?」

鷹富士茄子
たかふじかこ。本名。富士神社の一人娘。境内でのお勤め時は必ず巫女服。

のあ「お話をお聞きしても?」

茄子「はい、なんでもどうぞ」

のあ「あなたはこちらの娘さん?」

茄子「はい。鷹富士茄子と申します。茄子じゃなくて茄子ですよ」

のあ「たかって、鳥の鷹?茄子でかこ?」

茄子「はい」

のあ「……本名なの?」

茄子「本名ですよー」

のあ「そう。珍しいけれど、いい名前ね」

茄子「ありがとうございます♪」

真奈美「平仮名でのあ、も相当……」

のあ「真奈美、何か言ったかしら?」

真奈美「いや、なんでもない」

茄子「お二人はなにかご用ですか?あ、私のお話をお聞きに?」

のあ「あなたが講演してるの?」

茄子「はい。最近からですけどね。簡単なお話ですので聞いて行かれますか?」

のあ「聞かせていただくわ」

茄子「そろそろ始まる時間ですね、私は準備に行きますね」

のあ「一つだけ聞かせてほしいのだけれど」

茄子「なんです?」

のあ「この紙の意味はわかる?」

茄子「貼ってあったやつですね。わかりません、子供が描いたのかな?」

のあ「ありがとう。法話はどこで?」

茄子「境内にある集会所ですよ。それでは失礼いたします」

Bar・Rebellion前

真奈美「とりあえず、聞ける人には話を聞いてみたが、何かあったか、のあ?」

のあ「神社以降は特に新しくも気になりもした情報はない」

真奈美「そうだな、ただ皆が何かしら感じてるとは思わないか?」

のあ「何も無くても何かは感じるわ。爆発なんてあった直後だから当然でしょう」

真奈美「ふむ、それもそうか」

のあ「最後はここ。整理するのは、帰ってから考えましょう。まゆも待っている」

真奈美「7時かそろそろ来そうな気もするが。のあ、この紙の意味わかったか?」

のあ「いいえ」

真奈美「まったくだな。そう言えば神社だが」

のあ「どうやら、ウワサは本当みたいね」

真奈美「あんな感じだとは思ってもみなかったが」

のあ「並みのアイドルでは、あの魅力に敵わない」

真奈美「不思議な空間だったな。脱力と心の漂白をする感じの」

のあ「ええ。しかし、変な熱狂は異常な行動を生む源泉でもある。来たようね」

兵頭レナ「あら、お客さん?開店にはまだ早いけど」

兵頭レナ
Bar・Rebellionのマスター。店に立つ時はたいていチョッキ。

のあ「客ではないわ」

レナ「あら残念。すぐに準備するから、一杯くらいはどう?」

のあ「遠慮しておくわ。ちょっと話を聞きにきただけよ」

レナ「話って?」

のあ「この貼り紙のこと」

レナ「ああ、それ。いきなり貼られてたのよね、なんとなくそのままにしてあるわ」

のあ「そう。昨日の爆発は聞いたかしら?」

レナ「ええ。何事かと思ったわ。お客さんと一緒に野次馬に行ったわよ」

のあ「なにか気になったことは?」

レナ「凄い数の野次馬が居たわよ。それぐらい」

のあ「なにかこの辺でウワサや事件は?」

レナ「ウワサねぇ、小人がいるとかは最近やたら聞くけど」

のあ「あなたの感想は?」

レナ「誰かが流したんでしょう。ああ、思い出したわ、忍者が出るらしいけど」

のあ「忍者?」

レナ「帽子屋の芽衣子ちゃんとか、他にも何人か言ってたわよ。屋根を跳び移ってるとか」

のあ「なるほど。他には?」

レナ「うーん、特にはないわ。他愛もない話ならいくらでも聞けるから、開いてる時に来て。少しはサービスするから」

のあ「またの機会に。真奈美、帰るわよ」

真奈美「了解」

高峯探偵事務所

のあ「ごちそうさま」

まゆ「どうでしたか?久しぶりにハンバーグを作ってみたんですけど……」

のあ「美味しかったわ。そうでしょう、真奈美?」

真奈美「そうだな、醤油ベースのソースも良かった」

まゆ「やったぁ♪」

のあ「真奈美の作ったのと違って優しい味がする、まゆらしいわ」

真奈美「まるで私がガサツみたいじゃないか」

のあ「方向性の違いを言ってるだけよ。肉の味がする日本風じゃないハンバーグでしょ、真奈美のは。あの牛肉どこで買ってるのよ」

真奈美「おお、気づいてたか。近くの肉屋に取り寄せてもらってる」

のあ「しかも、牛肉100%でしょう。まゆ、今日は牛肉だけじゃないわね?」

まゆ「はい。何が入ってたかわかりますか?」

のあ「そうねぇ、豚肉多めで合びき肉かしら。鳥肉も入ってるわね」

真奈美「違うな」

のあ「なんですって?」

真奈美「豆腐が入ってる。豚肉4、牛肉3、豆腐2、鳥肉1くらいだ」

まゆ「真奈美さん、すごーい!それくらいですねぇ」

のあ「くっ、豆腐が入ってるのを見抜けないとは。私としたことが……」

真奈美「そんなに悔しがることか?」

のあ「くやしいわ。みくにゃんが大好きなハンバーグ、私はみくにゃんが大好き、私はハンバーグに詳しくない、つまり私はみくにゃんに詳しくないということよ。それは許されない」

真奈美「はぁ?なに言ってるんだ、のあ」

のあ「片付けたら調査の整理をしましょう。手伝うわ、まゆ」

まゆ「はぁい」

真奈美「凄い不安なんだが……」

高峯探偵事務所

のあ「まずは爆発事件から。真奈美、地図を」

真奈美「了解」

まゆ「なにか飲みますか?」

のあ「緑茶をお願い」

まゆ「わかりました」

のあ「地図は机に広げて」

真奈美「富士神社、富士神社っと、このあたりか」

のあ「爆発事件が起こったのは、佐藤被服クリーニング店。通りに面して北側。壁に貼られていた、はずのものは?」

真奈美「あの貼り紙、しかし既に剥がされていた」

のあ「そうね。他に貼られていた所は、佐藤被服店から数十メートルほど西、通りに面して向かい側のショコラティエパピオン」

真奈美「更に東に行くと大きな十字路。北側に少し行って右側に富士神社」

のあ「南にしばらく行くと左側にメゾンドシャルル。貼られたのは浜川愛結奈が住んでる102号室」

真奈美「そのまま東に直進して2軒目右側に喫茶st.V」

のあ「さらに東へ行くと、小さな十字路。北に行って最初のT字路を左折で帽子屋マッドハッター」

真奈美「小さな十字路を南、左側3軒目がバーRebellionの入っている雑居ビル」

のあ「最後の一つが、書店Heron。佐藤被服店から400メートル程度同じ通りを直進して左側」

真奈美「こう見ると近いな」

のあ「近い。しかし爆弾の影響は少ない」

真奈美「本当に一軒全焼しただけだとはな」

のあ「狙い澄ましたのか、それとも」

まゆ「お茶が入りましたよー」

のあ「ありがとう」

まゆ「あの、のあさん、さっき爆弾って」

のあ「爆発の聞き間違いよ。ね、真奈美?」

真奈美「ああ」

まゆ「そうですか、まゆもお話を聞いていいですか?」

のあ「どうぞ」ポンポン

まゆ「えっと……」

のあ「ほら、おいでなさい」ポンポン

まゆ「じゃあ、えい♪」

のあ「ふふ、いい子ね、まゆ」ナデナデ

まゆ「くすぐったいですよぉ、のあさん」

真奈美「……」

のあ「睨んでもまゆは渡さないわよ」ギュー

まゆ「もう、のあさん」

真奈美「まぁ、膝に誰か乗せてても話は出来るだろう」

のあ「続けましょう。残念なことに、立てなくなったからホワイトボードに書いてちょうだい」

真奈美「はいはい、了解したよ」

のあ「噂の方から行きましょうか」

真奈美「妙な噂、というほどでもなかった、という印象だが、のあはどう思う?」

のあ「そうね。噂は主に、二つ。一つは妖怪や都市伝説の類、もう一つは」

真奈美「小人」

まゆ「小人?」

真奈美「気づくと物の位置が変わっているとか」

まゆ「まぁ、可愛らしい」

のあ「前半のウワサは、近くの子供の間で流行っているだけの気もする。多くの妖怪があの町にはあふれている。本当だったら、一日歩けば3匹はすれ違うはず」

まゆ「うふふ、それは面白そう」

真奈美「小人は違うのか?」

のあ「違う理由は3つ。話す人数が段違いに多かったこと、被害が具体的であること、そして目撃情報が少ないこと」

まゆ「目撃情報が少ないと、単なる噂じゃなくなるんですか?」

のあ「単に、小人じゃない可能性がある。たとえ小人だとしても見つからないこそ小人でしょう」

まゆ「なるほど」

のあ「現実に物が動いている、どんな可能性があるかしら?」

真奈美「物を動かす方法か……」

のあ「ほんの少し動けばいいのよ。そんなのは建物の揺れでいい」

真奈美「揺れか、揺れを発生する原因と言えば……」

まゆ「爆発?」

のあ「賢いわ、まゆ。そう、爆発。地震や道路の質次第では車もありうる」

真奈美「なるほど」

のあ「爆発が多かれ少なかれ起こっていた、と考えると……」

まゆ「なんですかぁ?」

のあ「……なんでもない。もっと単純な可能性がある、人が動かしたということ」

真奈美「実に単純だが、それはありうるな」

のあ「物は盗らないが侵入が目的の、侵入のプロがいるかもしれない」

まゆ「……不思議な泥棒さんですね」

真奈美「数は少ないが、忍者の目撃情報もあるな」

のあ「本当に忍者がいるのかもしれないわ。ただ侵入している以上、警察が動けば早いかもしれない」

真奈美「どれくらい、警察は増えるんだろうな」

のあ「それはわからない」

真奈美「あとは、事故の多発か」

のあ「一番危ない事故は、サイドブレーキ踏み忘れによる車と塀の衝突。それ以外も自転車等細かい事故が多発」

真奈美「これも警察に問い合わせてみるか?」

のあ「それが最適でしょう。もし、つながりがあるようなら私達もその事について考えましょう」

真奈美「あとは、神社か」

まゆ「あ、ご利益のある娘さんがいるって、所ですね。どうでしたか?」

真奈美「本当だった。美人で神通力はありそうだった」

のあ「あの魅力的な美人が講話してくれるなら、人も集まるのは当然よ」

まゆ「そうなんですかぁ。聞いてみたいですねぇ」

のあ「機会があったら一緒に、」

しっぽしっぽしっぽよ

のあ「ごめんなさい、電話だわ。仙崎巡査?はい、もしもし。ふむ、真奈美、テレビをつけて」

真奈美「テレビ?わかった」ピッ

のあ「地元ローカルにして」

真奈美「ん、会見か?柊警部補がいるな」

のあ「確認したわ。連絡ありがとう、仙崎巡査、お疲れ様」

まゆ「爆発事件についての会見、みたいですね」

高橋署長より昨日の爆発事件について説明がございます

真奈美「初めてみたぞ、高橋署長だな」

のあ「志乃と同期で、国一合格のキャリア組、だった」

署長の高橋です。昨日の爆発事件について概要から……

高橋礼子
警察署長。階級は警視正。貫禄漂う元警察官僚。

真奈美「出世コースからは外れて、こんな所の署長に収まったんだよな」

のあ「志乃曰く、あることに入れ込み過ぎたとか」

まゆ「あること?」

のあ「詳細は教えてくれなかったわ」

科学課の結果、最初の爆発はニトロ系の爆弾によるものと断定しました。

まゆ「爆弾……?」

のあ「……」

爆弾は寝室床下に設置されていたと推測され、被害者の殺害を狙ったもの。つまり殺人事件です。

まゆ「殺人……」

のあ「あなたには聞かせたくなかった。ごめんなさいね、まゆ」

まゆ「……大丈夫です」

のあ「もう心配はしなくていいのよ。私はあなたを守るわ」

本日付で刑事事件として捜査本部を設立……

真奈美「私もいるぞ、佐久間君。私がのあも危険な目にあわせはしないさ」

まゆ「……うん」

真奈美「それより、殺人事件として断定したな。明日は騒がしいぞ」

のあ「でしょうね。だけど、なぜ……」

利用された爆弾は昨月都心で起こった爆発事件と同型の物と考えられ……

真奈美「何か疑問でも?」

のあ「いいえ、なんでもないわ」

同一犯と言ってるわけではありません……

のあ「真奈美、今日の捜査で他に気づいたことは?」

真奈美「あとは、貼り紙か?」

まゆ「あの貼り紙ですね」

爆弾の設置犯の特定と同時に爆弾の調査を連携して行います……

のあ「その通り。得られた情報としては、1つ、殺害された佐藤心に向けられたであろう紙は爆発後に剥がされていた。2つ、それ以外の貼り紙は剥がしてもまた貼られる。3つ、割と気に入っている人物がいる」

真奈美「浜川愛結奈と兵頭レナの二人だな」

のあ「そして、もう一つ」

真奈美「……なんだ?」

のあ「4枚は真奈美が持っていたものと違ったわ」

真奈美「なに?」

のあ「貼り紙が違った場所は、st.V、マッドハッター、メゾンドシャルル、そしてHeron。比べてみなさい、私が撮った写真を出すわ」

まゆ「あらぁ。並べると似て非なるものだってわかりますね」

真奈美「本当だ、気がつかなかった」

のあ「マッドハッターの店主が全日分くれて助かったわ。貼り紙が変わったのは、昨日から」

真奈美「まさか、犯行予告……」

一刻も早い犯人の確保に……

真奈美「警察に連絡は?」

のあ「志乃に報告済み。爆弾は発見されず。今のところは犯行予告とは言い切れない」

真奈美「だが、あの町では何かが起こってる」

のあ「根拠は?」

真奈美「ない、勘だ」

のあ「私も同意するわ。調査の必要性を勘がそう告げている」

まゆ「意外」

のあ「何が意外なの、まゆ?」

まゆ「のあさんも勘とか信じるんですね」

のあ「勘は完全なランダムではなくて、経験と知識によって出された裏付けのない結果なの。論理的な帰結ではないけれど、馬鹿にはできない。特に私と真奈美のものは」

真奈美「私もか?」

のあ「普通の人間よりも経験も知識も多いでしょう」

真奈美「そうだな。確かに」

のあ「明日も調査を続けましょう。勘と言えば、そうね……」

まゆ「……?まゆのことじっと見てどうしましたか?」

のあ「えい」パコ

真奈美「ソファーの隙間からネコ耳が出てきたぞ」

のあ「まゆにネコ耳をつけると……」

まゆ「あらぁ。のあさん、にゃんにゃん♪」

のあ「ほら、私の勘は間違ってなかったわ」スリスリ

まゆ「もう、くすぐったいですよぉ、にゃん」

のあ「ふふ、うふふ」

真奈美「のあ、時々前川みくを見ながらするだらしない表情になってるぞ」

のあ「とっても可愛いわよ、まゆ」

まゆ「ありがとう、のあさん」

真奈美「……」

のあ「真奈美もつけなさい、あなたも似合うと前々から思っていたのよ」

真奈美「お断りする」

翌日

高峯探偵事務所

まゆ「真奈美さん、お弁当ありがとうございます」

真奈美「大したものは作ってないぞ。いってらっしゃい」

まゆ「いってきまーす」

真奈美「新生活にも慣れてくれたかな。なぁ、のあ」

のあ「……お弁当」

真奈美「なんだ、のあ?」

のあ「まゆには作ってくれるのに、私にはないの?真奈美は不公平だわ」

真奈美「あのなぁ……、というか、のあがさっき食べたのは弁当の残り物だ。それで許してくれ」

のあ「あら、そうだったの。美味しかったわ」

真奈美「簡単に機嫌が直るなぁ。ひとつ言っていいか?」

のあ「なに?」

真奈美「のあ、最近ワガママだよな。食い意地とヤキモチまみれだぞ」

のあ「気のせいよ。準備をしなさい、真奈美」

真奈美「りょーかい」

佐藤被服・クリーニング店付近

真奈美「メディアも警察も多いな」

のあ「刑事課以外の警察官もいるようね。あそことか」

真奈美「えっと、交通課か」

片桐早苗「もー!そこの車両、止まらないで!」

片桐早苗
交通課巡査部長。普段はバディと共にパトカーで交通安全巡視を担当。志乃の飲み仲間の一人。

のあ「こんにちは」

早苗「あ、お疲れ様。のあちゃんは志乃さんに頼まれて捜査中?」

のあ「そんな所よ。早苗は交通整理に駆り出されたの?」

早苗「本当は違うんだけど、この様子じゃあねぇ。もう、また!詳しい話は美世ちゃんから聞いて、神社の近くにいるから」

のあ「わかったわ。美世さんの苗字は?」

早苗「会ったことなかったっけ?原田よ。それじゃねー」

のあ「お疲れ様」

真奈美「大変そうだな」

のあ「やっぱり気になるわ」

真奈美「何が?」

のあ「今は緊急の課題ではない。原田美世さんに会いましょう」

富士神社境内

のあ「原田美世さん?」

原田美世「はい。どなたでしょうか?」

原田美世
交通課巡査。早苗さんのバディ。白バイ乗りとなることが当面の目標。

のあ「高峯のあ、探偵よ。これが名刺」

美世「みくにゃん親衛隊……?」

のあ「間違えたわ。こっちよ」

美世「ああ、高峯のあさん!話は聞いてます。原田美世巡査であります」

のあ「よろしく。こっちは真奈美、手伝ってもらってるわ」

真奈美「木場真奈美だ、よろしく」

美世「よろしくお願いします」

のあ「交通整理が目的ではないのよね?」

美世「はい。今日は不審車の検分に来ました。これですけど」

のあ「これのどこが問題だったの?」

美世「車自体は何の変哲もないけど、状況がおかしくて」

のあ「おかしい?」

美世「はい。狭い路地を塞いでいると、早朝に連絡を受けまして、駆けつけました。キーがついたままでしたので、検分後にこちらに移動して、更に調査中です」

のあ「なにか見つかった?」

美世「いえ、何も」

のあ「車の所有者は?」

美世「都内のレンタカー業者です。先月に盗難届けが出ていて、突然見つかりました」

のあ「そう。爆弾とか乗ってなかった?」

美世「乗ってなかった。もう意味がわかりません、ただでさえ変なことが多いのに」

のあ「変なこと?」

美世「最近、この近辺で軽微な交通事故が多いんですよ。不審車両の目撃もあって。ふらふらしてるとか」

のあ「これと同じ?」

美世「違います。青いセダンでした」

のあ「ふむ」

美世「付近の住民には交通安全のチラシを配ったりはしてるんだけど、イマイチ効果がないような」

のあ「あなたの見立ては?」

美世「正直わかりません。道に画鋲が置いてあったのは、イタズラ目的だと思います」

のあ「各々は関係してると思う?」

美世「つながりを意識はしてます、これだけ色々あると」

のあ「ありがとう。頑張って」

美世「こちらこそ、何かあったら教えてください」

喫茶st.V

のあ「月曜定休だったわ」

真奈美「誰もいないな」

のあ「貼り紙に変更はなし」

のあ「相原雪乃も自宅にいないようだし、出なおしましょう」

真奈美「そうだな」

メゾンドシャルル

愛結奈「何かあったか?何にもないわね」

のあ「報道陣は?」

愛結奈「来てないわね」

のあ「貼り紙が変わってることに気づいていたかしら?」

愛結奈「え?あら、ホントだ。若干、ソリッドな印象ね」

のあ「ソリッド?」

愛結奈「前のはなんていうか丸みがあったような。多少の変更でソリッドな感じが出てるわ、荒々しいというかなんというか」

のあ「そう」

愛結奈「うん、こっちの方が好きね。得したわ」

のあ「警察は来た?」

愛結奈「来たわよ。爆弾を探してたんでしょ。設置されてなくて良かったけど」

のあ「昨日聞き忘れたけど、佐藤心さんについてはどう思うかしら?」

愛結奈「心さんね、服のデザインもする時に試作品作ってもらったりしてたわ。残念よ」

のあ「殺される理由に心当たりは?」

愛結奈「まったくないわ」

のあ「そう。あなたもお気をつけて」

愛結奈「わかってるわ」

真奈美「ん、サイレン?」

のあ「パトカーだわ、嫌な予感がする。走るわよ、真奈美」

帽子屋・マッドハッター前

恵磨「下がってくださーい!」

のあ「キープアウト、何かあったわね」

真奈美「塀に衝突してるな。なぁ、あれ……」

のあ「青いセダン、原田巡査が言っていたものね。無人なのが気になるわ」

真奈美「違う、車の下……」

のあ「……並木芽衣子」

恵磨「下がって!あっ、高峯さん」

のあ「入ってもいいかしら」

恵磨「とりあえず警察が先です。お呼びしますから、無関係な人を下げてください!」

のあ「わかった」

真奈美「下がれ!ほら、邪魔だから!」

早苗「どいてくださーい、警察です!うわ、青いセダンだ。美世ちゃん、ナンバーは同じ?」

美世「同じです、署に報告しますか?」

早苗「どいてくださーい!」

のあ「ご健闘を」

早苗「ありがと、のあちゃん。どいてー!」

美世「無線の調子が悪いな……」

早苗「後にしましょう、車から見るわよ!」

美世「了解です!」

真奈美「慌ただしくなってきたな……」

志乃「あら、高峯さん、追いだされたの?」

のあ「ええ」

志乃「仕方がないわ。あとで来なさい」

のあ「わかったわ」

志乃「それでは」

真奈美「爆弾じゃなかったか」

のあ「でも、これで確定した。急ぐわよ」

書店・Heron

のあ「お邪魔するわ!」

文香「どうしましたか、探偵さん。そんなに慌てて……」

のあ「あなたは無事のようね。古澤頼子さんは?」

文香「さきほど帰って来まして、今は2階の倉庫に。もしかしたら屋上かも」

真奈美「見てくる」

のあ「お願い。文香さん、あの貼り紙は?」

文香「昨日と同じ場所にありますけど……」

のあ「ありがとう……、また変わってる」

文香「パトカーのサイレンも鳴ってましたけど、まさか……」

のあ「鷺沢さん、貼り紙のデザインが変わったことに気づいた?」

文香「いいえ、本当ですか?」

のあ「ええ」

真奈美「いたぞ、無事だ」

頼子「なにか、ありましたか?」

のあ「無事で良かった」

頼子「あの、話が読めなくて……」

のあ「また、殺人事件が起こったわ。あなた達が狙われる可能性がある」

文香「え?」

のあ「警戒なさい。出来れば、別の場所へ、人が多くて自由が利かない所と言えば」

真奈美「神社だ。見晴らしも良い」

のあ「グッド。警察に相談して、神社に行きなさい。決して、一人で行動しないように」

文香「そんな……」

頼子「文香さん……」

真奈美「辛いのはわかる、お願いだ」

文香「……わかりました。行きましょう、頼子ちゃん」

頼子「……はい」

のあ「急ぐわよ、真奈美!」

真奈美「わかってる!」

喫茶st.V

のあ「相原さん!」

真奈美「出ないな、まさか」

志保「あ、探偵さん!」

真奈美「ウェイトレスの……」

のあ「槙原志保、相原雪乃と連絡はとれる?」

志保「それが、電話がつながらなくて!」

のあ「電話が?」

志保「マスターにつながらないんじゃなくて、電波が入らないんです!」

のあ「真奈美、確認して」

真奈美「了解した」

志保「サイレンが鳴ったから出て来てみたら、その」

のあ「見たのね」

志保「芽衣子さんが……もう心配で心配で、マスターとナナさんが無事かどうかだけ、確認しようとしたら」

のあ「つながらなかった」

志保「だから、走って来たんです!」

のあ「中に入れる?」

志保「入れます、合いカギがありますから」

のあ「入りましょう」

志保「はい!マスター、無事ですか!」

真奈美「確認したぞ、電話はつながらない。ネットもだ」

志保「マスター!二階かな……」

のあ「電波障害、なんでこんな時に」

志保「いません、出かけてるだけかな……」

のあ「槙原さん、固定電話はある?」

志保「あっ、はい!」

のあ「電話がかかるか確認して」

志保「わかりました」

のあ「真奈美は2階を」

真奈美「わかった」

志保「ダイヤル、かかった、マスター出てください……」

のあ「1階に不審な様子はなし。人が隠れた気配もないわね」

志保「マスター!今はどこに?はい、はい、わかりました!すぐに帰ってこなくていいです!ゆっくりしてください!それでは!」

のあ「無事のようね」

志保「はい。業者と打ち合わせに行ってるそうで、夕方までは帰らないそうです」

のあ「良かった。そして明確になったわ、電波障害はこの近辺だけ」

真奈美「2階は何もない!」

のあ「ありがとう。相原雪乃は無事だわ」

真奈美「そうか」

志保「あとはナナさん、なんですが」

菜々「はぁはぁ、皆さん、無事ですか!」

志保「ナナさん!」

菜々「走って来たので、ぜぇぜぇ、疲れました、でも、志保ちゃんは大丈夫ですか!」

志保「私は平気です、マスターも!」

菜々「よかったぁ」

志保「ナナさん、こっちに座りましょう。お水を用意しますね!」

菜々「はぁはぁ、ありがとう、志保ちゃん」

のあ「あなたも無事だったのね」

菜々「探偵さん達もいたんですね」

のあ「どうしてここに?」

菜々「サイレンを聞いたので、頑張って走って来たんです。もしかして、お店に何かあったかもって」

のあ「そう」

菜々「ところで、何があったんですか……」

のあ「人が死んだわ」

菜々「殺人……、そんな、誰が」

のあ「帽子屋の並木芽衣子が殺されたわ。犯人はわからない」

菜々「そんな……」

のあ「あなたもお気をつけて」

志保「菜々さん、お水です」

菜々「ありがとう、志保ちゃん」

のあ「あなた方が狙われる可能性もあるわ。二人で神社に行きなさい、犯人もうかつには行動できなくなるでしょう」

志保「わかりました」

のあ「決して一人にならないように、いいわね?」

菜々「はい」

のあ「真奈美、浜川愛結奈の所にいくわよ」

メゾンドシャルル・102号室前

のあ「先客がいるわね、留美!」

留美「のあ、やられたわ」

のあ「まさか」

留美「入らないで、見るだけにして」

真奈美「信じられん……」

のあ「貼り紙の文字が書かれた紙、ひとつだけ書かれたものが散乱してる……」

真奈美「遺体は、その下か」

留美「浜川愛結奈が殺されたわ。凶器はおそらく刃物。死亡時刻は今日の、」

のあ「今日どころじゃないわ」

留美「どういうことかしら?」

のあ「パトカーのサイレンを鳴らしたのは?」

留美「交通課の二人よ。最初はただの事故だと思ってたから」

のあ「その時まで生きてたわよ」

留美「……本当?」

のあ「ええ。留美お願いがあるわ」

留美「次の被害者は増やしたくない、要望は保護でいいわね?」

のあ「ツーカーで助かるわ。神社にお願い。貼り紙がされた店主、あとは、岸部彩華、兵頭レナ、相原雪乃の保護を。こちらかも声はかけるわ」

留美「わかったわ」

のあ「私は私で調査をするわ。警察の調査が終わったら、呼んで頂戴」

留美「了解」

のあ「電波障害は確認した?」

留美「さっき復旧したわ。電波局の問題だと思うけど、原因については調査中」

のあ「そう」

留美「犯人をすぐに捕らえるわよ。いいわね、のあ」

のあ「わかってる」

留美「のあ、私からもお願いしていいかしら」

のあ「何を?」

留美「科学課の一ノ瀬志希に意見を聞いて。そのうち来るから」

富士神社

のあ「ご迷惑をおかけして」

茄子「いいんですよ、大変な時期は助けあいです」

真奈美「全員いるか?」

のあ「兵頭レナとは連絡が取れた。相原雪乃は出先の警察署で接待中」

真奈美「接待ねぇ。人は十分にいるな」

茄子「はい!みんなに助けてほしい、って言ったら平日昼間なのにこんなに来て頂いて」

真奈美「凄いな、この人」ボソボソ

のあ「ありがたいわ」

茄子「ええ!みんなこの町の仲間ですから」

真奈美「警察車両も境内にほとんどあるからな、一番安全だろう」

ピーポーピーポー

のあ「来たわね」

真奈美「科学課か」

のあ「久美子!」

久美子「私は急ぐから、話はあとで!志希ちゃん!」

一ノ瀬志希「はーい、なにー?」

一ノ瀬志希
科学捜査課所属。久美子の後輩らしく常時白衣。優秀な能力を持った問題児。

久美子「のあさんに、さっきの話をしてあげて」

志希「はーい、じゃあ、のあちゃん、どこで話す?」

茄子「お堂の方をお貸ししましょうか?」

のあ「そこにしましょう」

富士神社・堂

志希「聞きたいのは、プロファイリングだよねー?」

のあ「そうよ」

志希「じゃあ、事件の復習をしちゃおう。爆発、車、ナイフで3つの殺人事件」

のあ「今のところ詳細は不明」

志希「殺された3人には共通点があって、謎の貼り紙」

のあ「それだけ?」

志希「もっと重要なのは同じ町内なことだよね。貼り紙はこの辺近隣でしか見つかってないしー」

のあ「犯人の目星はついてるの?」

志希「ねぇ、のあちゃん、自分が抑圧されてるって思う?」

のあ「思わないわ」

志希「犯罪に走る理由はね、大抵不満が爆発するからなんだ。たとえば貧しかったり、差別されてたり」

真奈美「まあ、一般的だな。日本ですらそうだ」

志希「でもね、そういう人は重度の犯罪を犯さないんだ。なんでって、余裕がないから」

のあ「この犯人は違うと?」

志希「最初なんか爆弾だよ?2回目から使ってないことから見ると、簡単に作れないようなものだと思うんだよね」

のあ「なるほど。だから2回目以降は、諦めたの?」

志希「爆弾じゃ面白くなかったんじゃない?2回目は派手で目立つ方法、警察も人の注意もすべてそっちに引いて3回目の殺人。どー考えても、計画犯だよねー」

のあ「話を戻して。犯人はどんな人間なの?」

志希「そうだった、計画的犯行かつ連続殺人。シリアルキラーに高学歴が多いのと同じだよねー」

真奈美「イマイチわからんな」

志希「差別って、上と下で2パターンあるんだよ。他人から見下されるか、他人を見下すか、どっちか」

のあ「見下す方だと?」

志希「そう!こんな奴らとは生きてる世界が違うんだぜ、タイプ」

真奈美「それだと中二病に聞こえるぞ」

志希「違うよ、人とは違うじゃないよ。人より上に彼らは生きてんの。このタイプはやっかいなんだよ、なかなか爆発しないから」

のあ「どういうこと?」

志希「他人に差別されると感じる人間は小さく爆発とか癇癪するけど、このタイプは、理性的だからなかなか爆発しない。それに、もっと大切なポイントがあって、それは溶け込めること」

のあ「溶け込む?」

志希「現実には差別層ではないからねー。いじめっ子でもいじめられっ子でもないから、社会に普通に溶け込んでる。あとエリート意識があるから、お前らに合わせてあげてんだぜ、とか思ってたり」

のあ「普段は普通だと?」

志希「そう。犯人は町内になじんでると思うよ。でも、そろそろバカなフリをするのも飽きてきたのかな?」

真奈美「抑圧への反発か」

志希「だから、自分の言葉を使い始めた」

のあ「貼り紙ね」

志希「犯人からすれば読めないのがおかしいんじゃないかなー。読んだのに反応しないとなるとさらにムカついちゃうよね」

のあ「つまり?」

志希「早くしないと被害者が増えるよ」

真奈美「……なるほどな」

志希「あたしの考える犯人像は、普段は町内にとってもなじんだ人付き合いのいい人、内面はその人達よりエリート意識を持ってる人かな」

のあ「該当者は?」

志希「のあちゃんもおわかりの通り、いっぱいいるよね?」

のあ「……」

志希「プロファイラーのやることはここまでー。犯人はおそらく町内にいるよ」

帽子屋マッドハッター前・事件現場

のあ「仙崎巡査!」

恵磨「高峯さん!ちょうどいい所に」

のあ「何かあったの?」

恵磨「この紙に見覚えは?」

のあ「写真、どこの?」

恵磨「この車内であります。同じ物が何十枚もばら撒かれておりました」

のあ「一文字ね。浜川愛結奈の部屋で見たものと、似ているわ」

真奈美「この意味は?」

のあ「死、呪い、そんなものでしょう。貼り紙と共通したものはないことから、それらを含めたニュアンスの記号とも考えられる」

恵磨「犯人からのメッセージと捉えてもいいでしょうか?」

のあ「そうでしょう。何かしらの目的があるのは間違いない」

志乃「お疲れ様」

のあ「志乃、調査の進展は?」

志乃「殺人と断定。死因は、車と塀に挟まれたことではなかった」

のあ「では、なに?」

志乃「感電死よ」

のあ「感電死?」

志乃「車が衝突したのはそのあと」

のあ「店にお客は?」

志乃「一人。電話がかかって並木芽衣子は外に出て行った。しばらくして、衝突音がしたようね。これが唯一の目撃情報」

のあ「感電死の理由は?」

志乃「スタンガン、ちょっと防犯で持ってるとは考えずらいレベルの物を背中に。下手したら死ぬのはわかって使ってる」

のあ「スタンガンは?」

志乃「見つかっていない。犯人は、並木芽衣子に接触していたのは間違いないわ」

のあ「並木芽衣子の通話先は?」

志乃「現場に落ちていたケータイ電話。盗難品だったわ」

のあ「車は誰か運転してたの?」

志乃「無人よ。サイドブレーキはかかっていない」

のあ「だけれど、前の事故と違うわ。ここは坂道じゃない」

志乃「アクセルは何らかの機構で踏まれていた。装置は付いてたから検査中」

のあ「車はいつから停車していたの?」

志乃「片桐、原田両名によると、事件直前が濃厚。裏通りから来たという目撃情報あり。ただ」

のあ「ただ?」

志乃「運転席に誰もいなかった。ゴーストライダーらしいわ」

のあ「そんなウワサも聞いたわね。遠隔操作?」

志乃「原田巡査曰く、単に頭を出していないだけでは、とのこと」

のあ「ふむ。志乃は車を使ったことはどう思う?」

志乃「おそらく私達の注意をひきつけるため。刑事課交通課両方集まってしまった」

のあ「犯人はどうやって、ここから逃げたのかしら?」

志乃「土地勘に精通してるなら、平日に人目をつかずに移動くらいできるでしょう」

のあ「怪しい人物の目撃情報は?」

志乃「ないわ」

のあ「ふむ、浜川愛結奈の所にも行くわ。久美子は?」

志乃「松山さんなら、そっちにいるはずよ」

のあ「見てくるわ」

志乃「どう思う、高峯さん?」

のあ「追い詰められる。犯人はボロを出している」

志乃「わかったわ。警察はあなたの推理を立証してみせる」

のあ「犯人を刺激しないように」

志乃「わかっているわ」

のあ「行くわよ、真奈美」

真奈美「のあ、犯人の目星はついたのか?」

のあ「答えだけは。だが、証拠が足らない」

犯行現場・浜川愛結奈の自室

のあ「直後ね」

久美子「発見までが異様に早かったから、ほぼ正確だと思うわ。死亡時刻は、二人がサイレンの音に気づいて移動した直後」

真奈美「犯人は、見てたな」

のあ「少なくとも私達は見ていたでしょうね。サイレンがヒントになってしまった」

久美子「紙は散乱していたけど、部屋が荒らされた形跡はない。顔見知りの犯行でしょうね」

のあ「死因は?」

久美子「背中から左胸に振り下ろされた槍状の何か。おかげで返り血は浴びてなさそうだけど、どこでこんなもの買うのかしら」

のあ「効率はいいわね。指紋は?」

久美子「見つかってないわ。スタンガン使うくらいだから、厚いゴム手袋でもしてたんじゃないかしら」

のあ「スタンガンは使われてたのね?」

久美子「並木芽衣子に使われたものと同じと推定。並木芽衣子はショック死、浜川愛結奈は息があったみたいね。腰付近だったからかしら」

のあ「真奈美、貼り紙は?」

真奈美「室内にばらまかれたものと同じになってた」

のあ「犯行予告と見て間違いないわね」

久美子「ところで、志希ちゃんは?」

のあ「富士神社に置いてきたわ。それで良かったでしょう?」

久美子「ええ。彼女の目的はそれだから」

のあ「邪魔したわ」

久美子「いえ」

のあ「真奈美、経路を探すわよ」

真奈美「経路か、具体的には?」

のあ「地下よ」

真奈美「地下?」

のあ「忍者だろうが、地上にいたら見つかるわ。犯行時刻的に、人ごみに紛れて消えたとは思えない。可能性があるとしたら、地下よ」

真奈美「ふーん、ならマンホールか?」

のあ「上下水道通ってるらしいから、広い空間の可能性がある」

真奈美「おい、のあ、これ」

のあ「ずらした形跡があるわね」

真奈美「でも、これは私達じゃ通れないぞ?」

のあ「私も真奈美も女性としては大きいものね。無理にここから入る必要はないわ。助けを呼びましょう」

大十字路・地下

のあ「真奈美はどう見る?」

真奈美「どうって、少なくとも上下水道の配管と、なんだろうな洪水対策用の水路まで兼ねてるのか?」

のあ「そうみたいね。多くの配管が集まって大きな管へと移行してる」

真奈美「ちょうど処理施設につながる分岐路だったのか」

のあ「十分な空間と空洞。揺れの原因にはなりそうね」

真奈美「ご丁寧に焼けたあとがあるな」

のあ「小人に関しては、ここがすべてでしょう。点検用通路の出発点でもあるみたいね」

真奈美「浜川愛結奈のアパートからすぐに移動出来たからな」

のあ「おそらくマッドハッターまでも点検用通路でいけるんでしょう。いけなかったところで、犯人の障害ではない」

真奈美「だろうな。おっと、天井が低いな」

のあ「真奈美、それは?」

真奈美「貼り紙があるな」

のあ「意味のわかる犯人にとってはただの目印でしかない。犯人のアジトと考えていいでしょう」

真奈美「近づいてきたな」

のあ「それを剥がしておきなさい。真奈美、では質問」

真奈美「なんだ?」

のあ「この空間をもっとも使いやすいのは?」

真奈美「近くに入口があること」

のあ「そういうこと。あとは警察に任せましょう」

真奈美「十分か、のあ」

のあ「ええ、準備は出来た。行くわよ、富士神社へ」

富士神社・堂横廊下

恵磨「神社にいる人は全て、移動していただきました」

のあ「兵頭レナがいるわね」

真奈美「岸部彩華、槙原志保、安倍菜々、鷺沢文香、古澤頼子、兵頭レナ、鷹富士茄子と他大勢。相原雪乃は?」

恵磨「先ほど犯行時刻でのウラがとれました。一応保護してますが、手持無沙汰のため署内で臨時営業中だそうで」

のあ「あら、羨ましい」

志希「やっほー、のあちゃん」

のあ「志希、なにかわかったの?」

志希「不安、動揺、恐怖はみんな感じてるけど、極端に緊張をしている人が一人だけいるよー」

のあ「誰?」

志希「あの人。合ってる?」

のあ「合ってるわ」

志希「プロファイルは所詮プロファイルだもん、お願いね、のあちゃん」

のあ「立証は警察の仕事よ。私は犯人を止めるだけ。行ってくるわ」

志希「……あと、もう一人、いやなんでもない」

富士神社・堂

のあ「ごきげんよう」

真奈美「ごきげんようはないだろう」

志保「探偵さん!何か、わかったんですか?」

のあ「まどろっこしいのは嫌いだから、すぐに結論に入るわ。真奈美、さっきの紙を」

真奈美「見てくれ。暗号の一文字だけだ」

のあ「ありがとう。推測は正しかった。犯人はあなたよ。なぜ上を向いたのかしら、」

のあ「安部菜々」

志保「ナナさん……?」

菜々「な、何を言ってるんですか探偵さん!」

のあ「本当に自分の言葉にしてるとは、恐れいったわ。この紙は高さ150cm程度の位置にあるパイプに貼られていたもの」

真奈美「場所は地下だ」

のあ「あなたの身長でも頭上に気をつけなければいけない高さでしょうね」

菜々「そんなもの知りません!」

志保「そ、そうですよ!ナナさんが人殺しなんて!」

のあ「気持ちはわかるわ。だから、理で詰める。まずは第一の事件」

彩華「爆発ですか?」

のあ「そう。でも、これは置いておく。今日の事件から行きましょう。詳細は聞いてるかしら?」

レナ「さっきね」

のあ「並木芽衣子が路上で殺害され、直後に浜川愛結奈が殺された。どちらも同一の凶器が使われている、それがスタンガン」

真奈美「並木芽衣子に至っては、それが致死傷だった」

のあ「浜川愛結奈は生き延びたが、犯人にはどうでもいいことだった。槍状の刃物で浜川愛結奈は予定通り殺害された。並木芽衣子も無人車の下敷きになった」

恵磨「さきほど単純なクランク機構でアクセルペダルが踏まれたことを確認しました」

のあ「ありがとう。つまり、準備さえできれば十分でしょうね。では、並木芽衣子を路上におびき出した手段は?」

真奈美「携帯電話、盗難品だ」

のあ「あなたは並木芽衣子を呼び出し、スタンガンで一撃。背中、心臓付近に高電圧をうけてショック死。並木芽衣子を壁によりかけたまま、あとは車の機構を作動させるだけ」

菜々「それはナナじゃないです!そんなの誰だって!」

のあ「携帯電話と車は盗難品、何度かテストされた形跡があり、それが不審車情報につながった。随分と慎重なようね」

菜々「だから、なんですか」

のあ「話を戻すわ。では、犯人はどうして誰にも目撃されなかったのか。一つは車内に隠れられること、あなたなら簡単でしょうね。もう一つは地下」

文香「地下ですか?」

のあ「この町の地下には大きな空間があるわ」

文香「上下水道が交差してる、と聞いたことがあります」

のあ「その通り。真奈美がさっき見せた紙もそこに貼ってあったものよ。あなたはそこを移動し、浜川愛結奈のアパート近くに出てきた」

真奈美「サイレンを聞いた私達が去るのと同時に、素知らぬ顔で浜川愛結奈を訪ねた」

のあ「疑いもしない浜川愛結奈の背中にスタンガンを押し当てた。だけれど、生きていた。理由は簡単、並木芽衣子より心臓に遠かった」

真奈美「その原因も単純だ」

のあ「背が低いから、それだけよ」

菜々「背が低いだけでナナを犯人って決めつけるんですか」

のあ「違うわ。問題はどこから入ったかよ。仙崎巡査によると、隠れたのは並木芽衣子の遺体の隣の小さなマンホールから。浜川愛結奈のアパートへの出入りは、排水溝から。どちらも小さな入口よ。私では厳しかった」

菜々「そんなの妄想です!」

のあ「では、妄想から語らせてもらうわ。貼り紙の位置の共通点は、高さ。どれも見るには低い」

茄子「なるほど、だから子供が書いたかと思ったのかな?」

のあ「では、もう一つ。今日の事件の直後を思い出して。槙原志保」

志保「は、はい!」

のあ「あなたが喫茶に駆け付けた理由は?」

志保「サイレンを聞いて、芽衣子ちゃんが、その、見たからです!それで心配になって!」

のあ「ありがとう。でも違うわよ、思い出して。あなたはその前に何をした?」

志保「電話をかけて、かからなかった!」

のあ「その通り。事件の直後は電波障害が起きていた。人為的なものでしょうね、犯人は道具を集めるのは得意なようね。では、あなたは?」

菜々「ナ、ナナだって一緒です!」

のあ「あなたが走って来た方向で何が起こったかわかるの?それなのに電話すらしないで、駆けてきた理由は?」

菜々「う……」

のあ「更に一つ。私は並木芽衣子が死んだと、言ったのになんであなたは殺人と返したのかしら」

菜々「そんなの言葉のあやです!」

のあ「もちろん。そんなので立証しようとなんて思わないわ。妄想は終わりよ。志乃、いるかしら?」

志乃「いるわよ」

のあ「調査の次第は?」

志乃「火薬の一部は見つかったわよ」

のあ「ありがとう。地下はあなたのホームだった。主な侵入経路は喫茶st.Vの庭にあるマンホール」

志乃「ハシゴに一番多くの泥が付いていた、そんな証拠もあるわ」

のあ「自分の言語で説明された秘密基地、道具の扱いに関しては慎重なあなたは何度か爆発のテストを行った。小さな震動は、小さな町に小人というウワサを生み出すことになった。相原雪乃は火薬のニオイを感じ取ってもいたわ」

真奈美「あまりうまくは行かなかったようだな。きっちりと製造出来たのは、一つだけ」

のあ「それが第一の事件で使われた。同型のニトロ化合物が地下でも見つかったようね」

菜々「……それが何の証拠に」

のあ「安部菜々、日本の警察をなめない方が良かったわね」

志乃「はい、こちら柊」

のあ「そして、あなたは自分の体形が特殊であることを理解すべきだったわ」

志乃「見つかったわよ、小さいのにやたらに厚いゴム手袋」

のあ「スタンガンは?」

志乃「分解されてたけど、復元はすぐよ」

のあ「今日の凶器は見つかったわ。あなたへの関係も時期にわかるでしょう」

菜々「……」

のあ「あなたの部屋を調べれば、貼り紙の画像データが出てくるでしょう。爆弾の製造法も出てくるかもしれない。以上よ、なにかあるかしら、安部菜々?」

菜々「……」

志保「ナナさん、どっちなの……」

菜々「……ふふ。だって、あの3人がいけないんですよ」

志保「ナナさん……?」

菜々「どーして、わかってくれないんですか、この町を地球からウサミン星にしてあげる素晴らしさを!」

真奈美「……」

菜々「あの3人はちゃんと選ばれたウサミン電波を受信してると思ったのに!もー、貼り紙しても反応してくれないなんて、反逆罪ですよ、反逆罪!」

のあ「……」

菜々「あの3人がいれば、ナナがウサミン女王に即位した時の衣装でもなんでも作れると思ったのに、あんなに非協力的だなんて!」

のあ「だから、殺したの?」

菜々「そうです、ウサミン星人になれない下劣な地球人だってわかっちゃいましたから。死刑です」

のあ「……なるほどね。志希の言うことはドンピシャなのね」

菜々「もう許せませーん!この土地にウサミンの鉄槌を下す日です!」

のあ「そのリモコンは何?」

菜々「ふふふ!爆弾を作れたのが一個だけなわけがないじゃないですか!残り7つがこの町内にしかけてあります!」

真奈美「なんだと……」

頼子「7つ……」

のあ「慌てることではないわ。それは、全て」

茄子「この神社の中ですか?」

菜々「へっ?」

のあ「鷹富士さん、なんでわかるのかしら?」

茄子「その、なんとなく」

のあ「……あなたにとって一番頭が痛い問題は、ウサミン星人になれない普通の人だものね」

真奈美「そっちのけで講話を聞いてるわけだしな。格好の標的だな」

のあ「今すぐ爆発させるわけにもいかないのでしょう、なぜなら」

茄子「お堂、宿舎押入れ、講堂床下、倉庫、売店床下、電気メータの裏、裏庭の社」

菜々「えっ?ええ!?」

のあ「……少なくともここにあるから爆発させられないって言おうとしたのだけれど。聞いてた、志乃?」

志乃「もちろん。解体法も署長が伝達済、準備はオーケーよ」

のあ「鷹富士さんが言った通りに調べなさい。見つからなかったら……」

志乃「既に3つ見つかったらしいわ」

のあ「じゃあ、そのままで」

菜々「な、なんでわかるんですか、茄子ちゃん!」

茄子「なんとなくですよ」

菜々「く、もうナナは手段がありません!ウサミンワープ!」ボン!

のあ「ただの煙幕とダッシュとは。真奈美!」

真奈美「行ってくる!」

のあ「みんなは境内を抜けて避難を。安部菜々の性格からして、神社の外まで被害を生み出すようなことはないはずよ」

志乃「こちらへ」

頼子「……たった七つか、色々と失望したわ」ボソ

文香「頼子ちゃん、なにか言いました?」

頼子「いいえ、急ぎましょう」

菜々「う、あの人なんですか!早すぎです!」

真奈美「タッパが20cmは違うんだ!当然だろ!」

菜々「うう、警察もいるし、ナナは絶体絶命です、でも諦めません!ウサミン星人は諦めることをしないからウサミンなんです!」

真奈美「ちょこまか、と!」

菜々「爆弾、を使うのは美学に反します!せっかくあの御方が教えてくれたのに、無駄遣いはできません!こっち!」

真奈美「うお、スタンガンか!」

菜々「今です、石垣を抜けてっと」

真奈美「その隙間を通るのか」

菜々「あっかんべー!」

真奈美「よっと!」

菜々「ええ!なんでそんな高さ跳び越えられるんですか!」

真奈美「見てる世界が違うんだ!」

菜々「ダッシュ、ダッシュです、ウサミンパワーフルブーストです!」

真奈美「道は直線、腕の振りが小さい走り方。まぁ、余裕だろう。セット、ファイア」パン!

菜々「きゃあ!」

真奈美「右肩にヒット。リモコンは落ちた。爆発はなし」

菜々「い、痛いです!なんですか、これ!」

真奈美「ゴム弾だ」

菜々「ち、違う、ナナ、ナナのお腹が!」

真奈美「な、裂けて血が……」

ポン

菜々「こ、これ、爆弾、なんで、ナナのお腹に、こんな小さなの、が……」パタリ

のあ「真奈美!」

真奈美「のあ!救急を呼べ!」

のあ「何よ、これ……」

真奈美「見た、内側から破裂した」

のあ「内側が焼けてる……」

真奈美「何が、何があった?」

のあ「わからない。でも、これで終わりよ。すべて、消えた」

翌日・夕方

高峯探偵事務所

真奈美「ご連絡ありがとうございました、柊警部補。それでは」

まゆ「警部補さんかななんだったんですかぁ?」

真奈美「昨日の事件の事後報告だよ。のあ」

のあ「……なによ」

まゆ「昨日から不機嫌ですよね、のあさん」

真奈美「ちょっと慰めてくれ」

まゆ「はぁい。のあさん、隣いいですか」

のあ「どうぞ」

まゆ「何か気になることでも?」

のあ「あるわ。真奈美、志乃の話を聞かせなさい」

真奈美「爆弾の処理は終わり。地下から安部菜々の犯行証拠が大量に出てきた。自宅から、暗号のデータと犯行計画まで出てきた」

のあ「そう。他には?」

真奈美「安部菜々は搬送中に亡くなったらしい。やはり内部から小型の火薬が炸裂していた」

のあ「……」

真奈美「なにか言いたいことがあるなら言え」

のあ「聞くわ。妖怪のウワサの出所は?」

真奈美「ウワサを辿って行った結果、持田亜里沙だった。子供が本に興味を持つようにウワサを流したのは持田亜里沙」

のあ「次。交通事故は?」

真奈美「安部菜々が行った実験。安部菜々が自分のためにミラーの角度を変えていたことによる見通しの低下。道路の文字等も安部菜々の仕業だ」

のあ「直せば減るでしょう。次、富士神社の秘密は?」

真奈美「鷹富士茄子が独特の魅力を放っていただけ。なぁ、のあ、なんで爆弾の場所を鷹富士茄子はわかったんだ?」

のあ「あの人は天才なのよ。頭の中で何を考えてるか自分で理解しないまま、状況から結果を出す。傍から見ると神様が降りて来てるようにしか見えないでしょうけど」

まゆ「天才?」

のあ「結局、私も同じような結論は出してた。爆弾の場所は、安部菜々が侵入可能な狭いスペースを候補とし、全体を爆発させるために最適な配置を7つ選んだだけ」

真奈美「凄いな」

のあ「でも無自覚。仕事には出来ないでしょうね、彼女も興味がないようだし。あの環境が彼女には幸せなのよ」

真奈美「そうだな」

のあ「まゆ、おいでなさい」

まゆ「はぁい♪」

のあ「小人の正体は?」ナデナデ

真奈美「安部菜々が地下でやっていた爆発の実験による振動」

のあ「そう。では、最後に聞くわ」

真奈美「なにをだ?」

のあ「安部菜々はどこから爆弾の製造法を知った?」

真奈美「……柊警部補は何も言ってなかったぞ」

のあ「じゃあ、スタンガンは?盗難車は?携帯電話は?道具は、いつ、どこで手に入れたの?」

真奈美「わからない」

のあ「この事件はウラがある。たとえば犯罪組織」

真奈美「空想とも言い切れないのか」

のあ「そこまでではなくても、協力者がいる。どこかでのうのうとしている。だが、安部菜々が亡くなった以上闇に葬られた。いや、葬った」

まゆ「……なんだか、怖いですね」

のあ「大丈夫よ、まゆ、あなたは守ってみせるわ」

真奈美「ああ、負けない」

まゆ「……ありがとう、のあさん、真奈美さん。ずっとずっと、守ってくださいね」

のあ「もちろんよ」

真奈美「誓おう」

のあ「だけれど、誰が……」

しっぽしっぽしっぽよ

のあ「こちら高峯探偵事務所、なに?すぐ行くわ。真奈美!」

真奈美「なんだ?」

のあ「鷺沢文香の店まで車を、早く!」

>>73
4行目


まゆ「警部補さんかななんだったんですかぁ?」


まゆ「警部補さんからなんだったんですかぁ?」

書店・Heron

のあ「鷺沢文香!」

真奈美「おい、大丈夫か!?」

文香「はぁはぁ……」

のあ「救急は呼んであるわ」

文香「……ごめんな、さい、もう間に合わな、い」

真奈美「弱気なことを言うな!」

文香「探偵さん達、お願いがあるんです、きいて、くだ、さい」

真奈美「話すな、辛いだろ」

のあ「……毒物」

文香「私は知り、過ぎた、って、二階、タブレット、見てください」

真奈美「おい、大丈夫か!」

文香「お願い、二人で、私は大丈夫ですから」

のあ「行くわよ、真奈美」

真奈美「……ああ」

文香「私はここで、座ってますから、お願い……」

真奈美「な……」

のあ「もぬけの殻ね」

真奈美「古澤頼子がいた形跡すら残ってないぞ。あるのは床にあるタブレットだけ」

のあ「見てみろ、と言われたから見るわよ」

真奈美「電源はこれか」

のあ「映像ファイルが一つだけ。再生してみましょう」

頼子『今日は4月8日……』

真奈美「爆発時の映像だと……?」

のあ「爆発が起こることも想定済みで撮影してる」

真奈美「映像が変わった」

頼子『青い車にご注目くださいな。小さなウサギさんが出てきましたよ……』

真奈美「撮影場所は路上だろ、これ……」

のあ「安部菜々が地下に入るまで撮影してる。おそらく目撃者が少ないのも彼女のせいだわ……」

真奈美「なんで撮ってる?なんで黙ってたんだ……?」

のあ「変わった。今度はずいぶんとズームした映像」

真奈美「安部菜々が浜川愛結奈に部屋に招き入れられた、時刻までご丁寧についてる」

頼子『せっかちであわてんぼうなウサギさん……』

真奈美「何者だ、こいつ」

のあ「映像が変わった。音声だけ?」

菜々『すべて届きました!ありがとうございます!計画は……』

のあ「物資の提供者」

菜々『そうですね、計画を変えましょう。言われた通りに……』

真奈美「犯行の指南役でもあるのか」

のあ「なんてことを」

真奈美「最後の映像か」

頼子『以上でした。お楽しみ頂けました?』

のあ「なにを、楽しむっていうのよ!」

頼子『私を同居人として受け入れてくれた、鷺沢文香に感謝を。まるで少女の頃の私を思い出すような、人物でした。だけど、知り過ぎた。コーヒーは飲んでくれたかしら、さよなら、鷺沢文香さん』

のあ「……くっ」

頼子『助かりたいならあの探偵さんをお呼びなさい。この映像を見せれば、考えてあげる』

のあ「カメラ、動いてるわ」

頼子『あら、ご名答です』

真奈美「つながってるのか」

頼子『文香さんは無事に呼んでくれたようですね。では、ご褒美を』パーン!

真奈美「銃声!?」

のあ「まさか……」

真奈美「見てくる!」

頼子『安部菜々さんには失望しました。この町を吹き飛ばす程度には十分なモノを提供したのに』

のあ「だから、殺した」

頼子『だって、殺人犯ですよ。うふふ』

のあ「個人で裁いていいものではないわ。あなたは何者なの」

頼子『あなたの反対でしょう。犯罪を解き明かしてるのがあなた、犯罪を提供してるのが私。それだけです』

のあ「私は、あなたを認めない。許さないわ」

頼子『やはり探偵さんは楽しみを提供してくれそうですね。それではごきげんよう』

のあ「古澤頼子、あなたは!」

真奈美「……のあ」

のあ「切られたわ。鷺沢文香は?」

真奈美「撃たれてた。狙撃だろうな、まさか日本で狙撃殺人とか冗談としか思えない……」

のあ「……これですべて切られた。古澤頼子、そう呼ぶしかない人物は消えたわ」

真奈美「あいつは何者なんだ?」

のあ「私の影、よ」

Bar・Rebellion

レナ「ご注文は?」

志乃「ワインを。一番いいやつね」

レナ「かしこまりました」

志乃「小さなバーもいいものね、礼子」

礼子「そうね」

志乃「あら、いつにも増して機嫌が悪そうね。そんな強いのを飲んで」

礼子「これを見ればわかるわ」

レナ「赤にしておきました」

志乃「ありがとう。映像?」

礼子「爆発事件をきっかけとした事件の顛末よ」

志乃「……古澤頼子が黒幕。こんなところで見るようなものではないでしょう」

礼子「最初の映像、このビルの屋上よ。屋上の扉は最近開けた形跡がなかったから、外側から登って撮影してるのよ。このためだけに」

志乃「……忍者のようね」

礼子「志乃、古澤頼子に関して、本当に事件への関与は見つからなかったの?」

志乃「いいえ、そんな素振りすらなかった」

礼子「私が追っている事件の話はしたわね?」

志乃「ええ」

礼子「都内で起こった爆発事件も彼女の手がかかっているのは間違いない。いや、もっと多数の犯罪に彼女は関与してるわ。追い続けて、影すら踏ませなかったのに、どうしてこんなところで」

志乃「自分で会見にまで出たのはそのためだったのね」

礼子「そうよ。私は、古澤頼子を捕らえる」

志乃「……だけれど、どうして急に顔まで出したのかしら」

礼子「異常者の考えは、わからない。ただ、彼女の傾向からして、一つの推測はできる」

志乃「それは」

礼子「楽しんでるだけ」

高峯探偵事務所

真奈美「古澤頼子が黒幕だった」

のあ「そうね。最後の疑問まで解決された」

真奈美「結果的にそうなった」

のあ「真奈美、ひとつ質問をしていいかしら」

真奈美「なんだ?」

のあ「犯罪はどうして起こると思う?」

真奈美「また、難問だな。金がないとか強い動機があるから、とかどうだ?」

のあ「それも正しいわ。でも、もっと簡単よ、犯罪を起こせる状況にあるからよ」

真奈美「どういう意味だ?」

のあ「起こせない犯罪は起こしたくても起こせない。だが、起こせるとしたら?」

真奈美「強い動機がなくても起こす」

のあ「安部菜々は、道具をそろえられなかったら、どうだったかしら。考えてみなさい」

真奈美「……」

のあ「そもそも小柄で慎重な彼女がリスクまで負って殺人をするとは思えない。話すだけなら別の道もあった」

真奈美「古澤頼子が、そこまで落としこんだのか」

のあ「だから、私は許さない。犯罪に協力した、いや道具を提供して犯罪の道へと落としたかもしれない古澤頼子を、絶対に許さない」

エンディングテーマ

Sparking Outside

歌 木場真奈美

某ビル屋上

頼子「古澤頼子、やっぱりいい名前でした。自分を定義してくれる名前は、やはりこの名前です」

頼子「闇に溶け込むノーネームも飽きました。対なる光に照らされて、私が出てきてもおかしくはないでしょう。光とは、彼女」

頼子「探偵さんは、綺麗だし、お金と生活には困ってない、そして明晰な頭脳を持つ。だからこそ正義をなす」

頼子「私は、結論だけが逆」

頼子「あなたは私の世界には眩しすぎるの、だから」

頼子「次に会う時を楽しみにしてて、高峯のあ」


製作 テレビ朝○

次回予告

彼女の両手は血に濡れていた

佐久間まゆ「違うんです!殺したのはまゆじゃない、信じて、のあさん!」

主題歌 柊志乃

高峯のあ「真犯人を見つけ出す、必ず」

閉ざされた施設で起こった殺人

川島瑞樹「なんですって!車が入って来れない、って!殺人が起こってるのよ!私達を殺人犯と閉じ込めるってことなのよ!わかってるの!」

高峯のあは真実に辿り着き、佐久間まゆを救えるのか

高峯のあ「犯人は、あなたよ」

木場真奈美「のあの事件簿・佐久間まゆの殺人」

近日放映予定

PaP「スパーキンアウト!」

CoP「なんですか、いきなり」

PaP「やっぱり歌がいいな、さすが真奈美ちゃん」

CoP「ですね。タイアップ曲にして良かったです」

PaP「あと出番がなくて心ちゃんに怒られてんだよね、どうしたらいい?」

CoP「知りませんよ……」

PaP「頼子ちゃんも良かったね、まぁ役は最悪なんだけどさ」

CoP「変身は彼女のテーマですから。僕もチャレンジしてくれて嬉しいですよ」

PaP「あとさ」

CoP「なんです?」

PaP「のあちゃんにまゆちゃんを取られるんじゃないかって、無駄に心配してるCuPを安心させてくれ」

CoP「まゆちゃんがらみのCuPとか、難題ふらないでくださいよ……」

おしまい

担当プロデューサー各位、申し訳ございません。
特に頼子P各位、演技です、許してください。

嫁も出せないし、短めでいいか、と思いながら約3万6千文字かぁ。

せっかくデレマスSSなので、今回もプロフィールが地味なヒントです。色々と大きめです。
ちなみに、のあさん168cm、木場さん172cm、まゆ153cm。二人からしたら膝に乗せたくなるのもしかたないよね。

なんか次回予告あるけど、あと2話の予定です。
次もよろしくです。

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