私の名前はミーナ・カロライナ。
どこにでもいる普通の女の子。
訓練兵も今日で卒業し、エレンの演説の後押しもあって調査兵団に進むことにした。
あれだけ訓練してきたんだからきっと大丈夫。
皆だって死ぬわけはない。
私達が巨人を倒して人類を救うんだ。
そう信じてここまでやってきた。
「おいミーナ。ボーッとしてないで固定砲の整備しろよ」
エレンが私にそう呼びかけた。
「あ、ごめんごめん」
「おいおい。
今日で卒業だからって気を抜くなよ」
エレンは真面目だ。
駆逐駆逐と馬鹿みたいに言っていたが、やることはちゃんとやる。
本人曰く、どんな事でも全力でやらなきゃ巨人を駆逐することは出来ない。
一緒懸命生きていれば不思議な事に疲れない、だそうだ。
「そんな浮ついててどうすんだ!
お前、味のある人間って言われたことあるか?
中身のある人間って言われたことあるか?
イワナ見てみろよ!! イワナはなあ、余計な味付けいらねえんだよ 自分に中身がある。ダシが凄いついてるんだよ イワナ見習って生きろ!! 中身で勝負だ! これから!!ダシのある人間になれ!!」
何言ってんだこいつは。
相変わらず暑苦しい奴だ。
まぁ、そんなエレンに惹かれる人も少なくないんだけどね。
っていかイワナって何?
「シュッポシュッポ!ポッポー!!」
軽快に汽笛を鳴らしているのはトーマス。
今日も蒸気を吹かしてやる気満々。
たまに暴走したりするけど、皆を乗せてくれたり、荷物運びを率先してやってくれる優しい機関車だ。
「んめええええ!!ハムんめええええ!!!」
あそこでハムを丸かじりしているのはサシャ。
口いっぱいに頬張り過ぎてハムスターみたいだ。
あ、ハムじゃなくて豚を丸かじりしてた。
どっから獲ってきたんだろうね。
「こんにちわ!コニーだぜ!おはよう!」
あぁ、めんどくさい人が来た。
コニーだ。
「なぁ知っているか?」
「なぁに?」
「鎧の巨人っているじゃん。
あれの正体に気付いちまったんだよ」
「ふーん」
「驚くなよ。あれはな…」
キョロキョロと辺りを見回して誰も聞いていないことを確認している。
めんどくせぇ。
「…ライナーだ」
「それはなんで?」
「俺、見ちまったんだよ…。
風呂場でよ…あいつの鎧を被ったすげぇチ*ポをよ…」
「そいつぁすげぇや」
「多分な…巨人の正体ってのは人間のチ◯ポだと思う。
溜まりに溜まった性欲が形を成して出来たのが巨人だ」
「それは凄いね。
じゃあコニーはきっと3m級の巨人になれるよ」
「何をー!俺は超大型だぞ!
見てみろ!」
コニーがズボンを下ろすと現れた小人。
ポークビッツと呼ぶにも可哀想なイチモツであった。
っていうか半立ちしてるわ。
「ありがとう。
分かったからその立派な腹ペコ青虫さんはしまってあげてね」
「わかればいいんだよ!わかれば!」
「コニーの推測が正しいなら女型の巨人ってどうなるの?」
「え…」
コニーの表情が曇る。
「それは…えっと…あれだ」
「…あれ?」
突如背を向けて走り出すコニー。
「バーカバーカ!
ミーナのクサレマ◯コー!!」
誰がクサレだ。
短小エキノコックスが。
「コニー。ズボン履かないで走ると危ないよ」
と、言った時には盛大にズッコケて露わになったイチモツを抑えて転げ回っていた。
あとはあそこで地味に固定砲を弄っているのがサムエル。
多分、一生スポットライトを浴びることもないと思う。
私は軽く溜息をついて空を見上げた。
「今回のループも外れかなぁ…」
おい。はじめのシリアス感を見た私のワクワクを返せ。
>>7
こっからシリアスになるよ
突然だけど、あと2分と30秒後に超大型巨人が現れて壁が破壊されるの。
そして巨人が入ってしまい地獄が始まる。
私はエレンの班に所属して、巨人と交戦して死ぬ。
いとも簡単に。
何一つできずに。
壁に叩きつけられて顔を食われる。
それが一周目の死に方だった。
ドオン!
「あ…!」
巨人に打ち込んだワイヤーを引かれて壁に打ち付けられる。
「……う…あ」
痛い。
後頭部を強打して今にも気を失いそうだった。
体制を立て直して立体機動で建物上行かなきゃ。
そう考えても体が動かない。
嘘でしょ?
私の顔を覗き込む巨人と目が合う。
なんで?あんなに練習したのに。
あんなに頑張ったのに。
嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。
頭の中がその言葉で埋まった。
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ガリッ
「おいミーナ。
ボーッとしてないで固定砲の整備しろよ」
「…え?」
エレンだ。
目の前にエレンがいる。
足もある。
それどころか怪我一つしていない
おかしい。
F1でクラッシュした車みたいに派手にズッコケてたのに。
「エ、エレン…怪我は…?
巨人はどこに…」
「はぁ?寝ぼけてんのか?
立ちながら寝るなんて器用なやつだな」
夢…?
そんなバカな。
あれが夢なら何が現実なの?
痛みもあった。
記憶もはっきり残っている。
恐怖も、絶望さえも残っているのに。
「あ、ごめんごめん」
あれが夢ならそれに越したことはない。
あんなのおかしい。
私達があんな簡単に死ぬはずない。
あれはただの悪夢。
それでいい。
私は安堵して大きく溜息をついた。
カッ
「え?」
振り返ると超大型巨人がいる。
同じだ。
悪夢と一緒だ。
そして私は悪夢のリプレイをすることになった。
「おいミーナ。
ボーッとしてないで固定砲の整備しろよ」
なん…だと。
デジャヴなんかじゃない。
間違いなくさっきと同じだ。
なんで?さっきのも夢なの?
ならこれも夢?
ワケが分からない。
「寝ぼけてんならシャンとしろ!
壁から落ちちまうぞ!」
ダメだ!さっきと同じでこれが夢だとしてもこのままじゃまた…!
「逃げなきゃ!超大型巨人が来るんだよ!」
「はぁ!?おま、何言ってん…」
カッ
「あ、な…なんでこいつが…!」
エレンが呆気に取られている。
ダメ、このままじゃ蒸気で皆飛ばされちゃう…!
「皆、立体機動に移って!!!」
ここまで
私は一目散に立体機動を使い、壁内側の壁に張り付いた。
とりあえずここにいれば蒸気に当たる事もない。
「皆は…?」
「うあああっ!」
蒸気が壁上を一掃し、皆がこっち側に落ちてくる。
「サムエル!」
そうだ…。
サムエルは頭をぶつけて気を失っている…は…ず………え?
「馬鹿野郎ミーナ!何やってんだよ!!」
エレンの怒号が響く。
そして私に何が降ってきた。
突然の出来事に私はアンカーを誤って外してしまう。
いったい何が。
落ち行く中で落下物に目を向けた。
気を失ったサムエルだった。
「」
そこで私の記憶は途絶えた。
おそらくそのまま地面に叩きつけられて死んだのだろう。
想像するだけで身が震えた。
そしてエレンのあのセリフから再び始まりを迎える。
夢にしては実感があり過ぎる。
いつかは覚めるのであろうと思っていてもいつまでも覚めない。
私はこの後10回ほど死んで夢ではないと確信する。
10回のループで私はいくつか実験をしてみた。
エレン達に前もって超大型の襲撃を知らせてみたが、誰も信じることはなかった。
超大型の出現の後ではどう対処しようもなく、侵入してきた巨人に様々な殺され方をした。
丸呑みにされる。
上半身食い千切られる。
生きたまま引き裂かれたりもした。
逃げ出すこともした。
ループが始まると同時に壁内に向かって全力で逃げた。
だけと死んだ。
何故?
一回は何故か立体機動が上手く起動せずに建物から落ちて死んだ。
馬を使って逃げよとしたら飛んできた破壊された飛来物が直撃して死んだ。
偶然だろうと思い違うルートへ逃げても同じく飛来物で死んだ。
ループって、経験値はたまっていくと思うけど、筋力は鍛えても、又、元に戻るのかな?
たぶん立体機動による対巨人戦法は身体能力より身のこなしとかセンスのほうが重要じゃない?
訓練乗り越えたら身体能力の基礎は出来てて、そこから死なずに経験を積んで強くなるわけで
つまり死に覚えゲー状態でリトライできるミーナは強い
うんうん。
男の子は爽やかじゃなくっちゃね。
さて、お遊びはここまでみたい。
補給所は目の前。
まずはでかいの一匹削いでやろうかしら。
「エレン、先頭は私が行くよ。
エレンとジャンで他の人のサポートしてもらえるか」
「おうっ!」
いい返事ね。
若干ジャンが戸惑ってるけど。
「一点集中よ。
あの13m級をやるから、あそこの窓から突っ込んでね」
コクリと2人が頷くと後方の集団へと向かって行った。
「ハッ!」
ズバァン
よしっ。
上手い具合に倒せた。
後は皆がここの窓から入って行けば…。
「っ!?」
しまった!
人が集まりすぎてる!
塔にへばりついてた巨人がこっちに…!
「早く!!
他の巨人が来てるよ!!」
全速で皆が突っ込んでくる。
ダメだ!
これじゃ間に合わない…!
「残りの3体は私が引き付けるから行って!!」
私は立体機動を全速で動か群がるし巨人の前に躍り出た。
「くっ…!」
やっぱり大人数の方に…。
「んの…!
こっち向けええええええっ!!」
ズバァン
こっちに来ないから出向いて削いでやる!
私は残ったガスを精一杯吹かして巨人に向かった。
「はあああああっ!!」
「はぁっ…はぁっ…!」
あと一匹…!
この15m級さえ倒せば…
カスッ
…え?
カスッ カスッ
嘘…ガス…切れ…?
そんな…もう少しだったのに…
足下の私に気付いた15m級が迫ってくる。
まぁ…いいかな。
皆補給所に入れたみたいだし。
このループの皆、頑張って。
絶対に生き延びてね。
巨人の手に握られ徐々に体が潰れていく。
痛い…。
やっぱり痛いのには慣れない。
「くそっ」
「おいミーナ」
…ダメか。
またここからみたいね。
よし、次の作戦を練ろう。
前回のループの失敗はガス欠。
あとは…この目の前のエレン・イェーガーことボケナスが余計なことをし過ぎたことだ。
「なに笑ってんだよ?」
私はフフッと笑いながら左足を軸足に回転を効かせ、全体重を乗せたボディブローを非情なる角度から内臓目掛けて抉りこんだ。
エレンは泡吹いて気絶した。
よし、今回も頑張ろう。
絶対に皆死なせない。
私がトロスト区を奪還する。
そして生き延びて明日を迎えよう。
それがこのループの終わりと信じてーーーーー
完
ごめん、寝むくて適当に書いてちゃったよ
第一章が完でござる…
次回「とんでもねぇ強え奴!女型巨人の襲来!
私、ワクワクしねぇわ」
からスタート
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