部長「何故に彼がモテるのか、調査の必要が有る!」(53)


~新聞部の部室にて ~



部長「部員諸君、定例会議に集まってくれてありがとう」

後輩「部員諸君なんて畏まっても、部長を含めて三人しか居ないんですけどね。
   しかもその三人目は幽霊部員で顔も見た事ないし」

部長「人数の少なさは部員各々のクオリティでカバー出来ているから問題ない。
   三人目の人もちゃんと頑張ってるよ。 さ、それより、本日の会議に早速入ろう」

後輩「また“広報誌の発行部数を増加に繋ぐためにどうするか”を話すんですか……。
   最近もうそればっかりで、新鮮味が全然ないですよ……」

部長「では、なぜ新鮮味がないのか。 それを君は考えた事があるのか?」

後輩「そりゃ同じ事ばかりを話し合うからでしょう」

部長「否。 それは、話し合いばかりで現状に進展が無いからだ。
   結果、それがマンネリを生むことになっている」

後輩「そこまで言うからには、何かマンネリを打破する方法を今回は考えてきたんですか」

部長「その通り! と、いうわけで、今回はゲストを呼んでいる!」

後輩「ゲスト?」


部長「ゲストの方、どうぞ入ってください!」

男友「あ、どうも。 会議中にお邪魔します」

後輩「?」

部長「 (誰やねんこのオール平均点のパッとしない男は……) 、なんて思っていそうな顔をしているね。
   そんな人の心境を鑑みないミセスKYにして朴念仁の君だからこそ、僕は部活にスカウトしたワケだ」

後輩「これはひどいブーメランを見た。とりあえず退部届の受理を願いますね」

部長「調子に乗って申し訳ありませんでした。言い過ぎたのは謝るんで辞めるとか言わないで……」

男友「来て早々、何故か美しい土下座を見させられた。 もう帰りたい」

部長「まぁまぁ、これも一つの部内スキンシップだよ」

男友「土下座したままの格好で言われると説得力とは何なのか考えさせられるな」


部長「では、改めて。彼は僕の友人で……」

男友「自己紹介がまだだったな。 2年5組、男友って言います」

後輩「あ、じゃあ先輩ですね。 初めまして。 1年1組、後輩って言います」

男友「おお、部長の知り合いにしてはえらく礼儀正しいな」

後輩「部長と類友に思われていたのなら心外です」

男友「ははっ、そりゃ申し訳ない」

部長「あれ? 僕なんか既に蚊帳の外の雰囲気?」


後輩「それで、男友さんは何故に新聞部の部室へ?」

男友「部長に頼まれていたんだよ、なんか記事に出来そうなネタは無いかって」

後輩「……」

部長「ん?」

後輩「……」

部長「またえらくもの言いたげな瞳だね?」

後輩「部長。入部当時に私に言ったこと覚えてます?」

部長「“記者たるもの、スクープとは自分の足で摘み取ってくるものだ!” かな」

後輩「そこまで覚えていながらも、スクープに足を運ばせてくる辺りは流石ですね」

部長「もっと褒めていいよ」

後輩「……」

部長「どうしたんだい、更に熱烈な視線を浴びせてきて?」

後輩「罵声を浴びせないよう気を使う後輩を1ミリでもいいので鑑みてください……」


男友「あー、話が進まないんで俺から話すよ」

後輩「お手数かけてすみません」

男友「気にするなって。今回俺が呼ばれたのは、その広報誌に書けそうなネタの事なんだ。
   ちょっと面白そうな事が身内で起こっていてな」

後輩「それで身内を売りに来た、と」

部長「こいつはとんでもないクズ野郎が来たもんだね」

男友「帰るわ」

部長・後輩「「大変申し訳ありませんでした」」

男友「……なんだかんだ似たもの同士か、お前らは」



男友「話を戻すぞ。 その俺の身内で起こっているのが、俗に言うラブコメ展開なんだ」

後輩「ラブコメですか?」

部長「豊作なのかい?」

男友「米の新種名じゃねぇよ。 なんだよ豊作展開って」

後輩「部長ちょっと10分だけ部室から出ていってくれませんか?」


男友「で、だ。 そのラブコメの中心人物が、俺の友人である 男 なんだ」

後輩「男さん、ですか」

男友「あいつは授業中によく寝ているような昼行灯だが、気がつけばいつの間にかハーレムが出来上がっていた」

後輩「 “草食系男子” なんて言葉が生まれるご時勢にハーレムとは景気の良い話ですね」

男友「こういうのは普段なら与太話って事で、くだらない色恋沙汰になるってのは重々承知さ。
   だがな、どうにもアイツの周りを見ると、剣呑としてる場合じゃないくらい女に囲まれてるんだよ」

後輩「まるでゲームや漫画の主人公を彷彿させますね」

男友「別段これといって目立つような奴でもないから、それが不思議を尚更かきたてるんだよなぁ」

後輩「ちなみにその男さんってどのくらいモテるんですか?」

男友「一概に言い表すのは難しいが……相当モテるとだけ言っておくわ」


後輩「私は男さんを知りませんので、外見的特徴などの情報を」

男友「身長は170cm前後。 前髪で顔の半分が隠れていて、体格は細身。
   口数は少ないほうではないが、率先して喋るほうでもない。 何故かいつも疲れていてよく眠っている」

後輩「趣味は?」

男友「見たところだと読書と音楽鑑賞。無趣味が趣味のような感じだな」

後輩「ちなみに先輩の趣味は?」

男友「最近は料理に凝っている。……って、俺は関係ないだろ」

後輩「ついインタビューのクセで。失礼しました。
   ちなみに男さんは何か部活動に所属しているんですか?」

男友「助っ人で弱小部活をハシゴしているのは見かけるが、どこか特定の場所に留まっている感じはないな。
   ただ、あいつが助っ人で行った部活は、必ず何かしらの表彰を受けている事だけは割と有名みたいだぞ」

後輩「へぇ、何かと万能なんですね。そういう所あたりがモテるんでしょう」

男友「まぁ万能なのは確かなんだよな。バスケやサッカー、吹奏楽に囲碁将棋、内外問わずでなんでもござれだ。
   アイツどこかの部活に所属しているとは行ってたけれど、これだけハシゴしてちゃ分からないわな」


後輩「その男さんって彼女とかいないんですか?」

男友「いたのなら事態も収束するんだがなぁ。これといった意中の相手がいなさそうだから、他の子が躍起になってんだよ」

後輩「ホモなんですかね」

男友「真顔で何か急に言い出したぞオイ」

後輩「冗談です。でもモテるのに特定の子がいないって聞くと、族に言うプレイボーイに位置づけられますね」

男友「いや、別にあいつは誰に対しても無頓着な態度を変えないぞ」

後輩「むぅ……」

男友「で、どうだ。何か人物像は捉えることが出来たか?」

後輩「捉えどころのない人というのがよく伝わってきました」



男友「自分で羅列しておきながら難だが、アイツの周りに女の子が寄ってくるのが理解できないな」

後輩「顔が良いからではなく?」

男友「それも要因なんだと思うが、それだけでは済まされないくらい異様にモテているんだよ」

後輩「私も新聞部として校内のイケメンは粗方メモしていた筈ですが、完全にノーマークの人物ですね」

男友「という事は、君は校内の美人も大体チェックしているのか?」

後輩「ええ、まぁ百位までくらいならランキングで番付していますよ」

男友「そのランキングの中に、例えば誰がいる?」

後輩「まぁ名前を挙げるとすれば、そうですね。
   上位陣だとランキング1位の女さん、続いてツンデレさん、幼馴染さん、委員長さん、転校生さん。
   他には音楽教師や女子バスケのキャプテン、私のクラスメイト、等等ですね」

男友「……」

後輩「それが何か?」

男友「……少なくとも今挙げたそいつら全員、男に惚れている」

後輩「……は?」


後輩「いやいや、流石に全員は言いすぎでは?」

男友「本当だ。 昼休みの弁当時間は、男目当てで1クラス人数相当の女子が来る」

後輩「凄い光景ですね」

男友「光景、とは絶妙な喩えだな。 光があれば闇だって深くなる。
   男がモテている眺めを、モテない男子たちが修羅の形相で見つめている様は、まさに社会のカーストだ」

後輩「血の涙を流しながら見つめているんでしょう」

男友「その様子を形成する男子生徒たちの顔は、アレに似ている」

後輩「アレ?」

男友「ベヘリット」


※存じない方はgoogleの画像検索で探してみてください



後輩「……壮絶すぎる」


男友「まぁ表向きの依頼としては、男のハーレム実態を探ってほしいって事なんだが。
   本当は男が他の男子生徒の恨みを買いすぎて闇討ちされないよう、
   対策の為にアイツの詳細くらいは知っておきたいんだ」

後輩「本人に聞けばいいじゃないですか」

男友「どうせ聞いても知らぬ存ぜぬの一点張りさ。それにアイツに気を使わせるのも何かアレだろ」

後輩「友情ですね」

男友「そんなんじゃねぇよ」

後輩「愛情ですか!?」

男友「そんなんじゃねぇよ!」

後輩「なんだ、ちょっとビビりましたよ」

男友「君の倍くらいは俺もビビったわ」



ガラガラッ


部長「あ、もう話は終わった?」

後輩「……本当に10分も外に出ている謎の律儀さにイラっとします」


部長「まぁまぁ。 詳細は僕自身、最初から男友くんに聞いて知っていたからね。
   それで、我が新聞部としては是非とも色々な子に取材をしてみたいんだけれど、どうかな?」

後輩「でも、こういうのって直接聞いても話してくれるものですか?」

部長「今回はあくまでも君のメモにある“話題の美人にインタビュー”という体で取材を敢行。
   その中で男くんの話題を上手いこと入れ込んで、真意を引き出すのが手段さ」

後輩「……プライバシーの侵害な気がして、ちょっと二の足を踏んじゃいますね」

部長「そこは記事にするかどうかを会議するんだよ。
   会議にしたくないような内容を聞いたら、君が胸に密やかに留めておけばいいだけの話さ」

後輩「無理に記事にしないのであれば、まぁ取材はし易いですね。
   お題目もあるし、もし駄目ならインタビューを学内新聞に載せればいいだけですか」

部長「飲み込みが早くて助かるね。 じゃ、宜しく頼んだよ」

後輩「先輩は?」

部長「僕はもう一人の部員と“学園地下に潜む謎の怪物”を取材しなくちゃならないから、君に一任するよ♪」

後輩「言ったからには絶対記事にしてくださいよ、それ」

男友「……俺もそれは正直読んでみたいわ」



~ それから数日後 ~



男友「これが俺の知り得る限りで作成した“男に惚れている女性”の一覧表だ」

後輩「ありがとうございます、先輩」

男友「礼を言うのはこっちだよ。忙しい中で時間を割いてくれてありがとな。
   暇なときにもでリサーチしてくれたら嬉しいよ」

後輩「…先輩って、なんかモテそうですね」

男友「そうか?」

後輩「まぁいいです。 もし上手く調べる事が出来たら、なんか奢ってくださいよ」

男友「ああ、いいぞ。 詳細がもし分からなかったら、労い兼ねて近場で甘い物でも奢ってやるよ」

後輩「……ちょっとだけ、楽しみにしておきます」


後輩「さて、じゃあ先輩から貰った一覧表でも見てみようかな」

後輩「けっこう人数多いみたいに言ってたから、流石に全員にインタビューは無理か」

後輩「……どれどれ。 何人くらいいるのかな?」


ペラッ



後輩「……」

後輩「……」

後輩「……」


後輩「校外まで含めると、150人を越えている、だと……!?」


後輩「……」

後輩「……」

後輩「これ男さんも凄いけれど、男友さんの情報収集力も相当すごいよね……」


後輩「とりあえず全員は無理。 私一人でやるには150人は多すぎる。
   学内の美人にインタビューという観点からも、これは相手をピックアップしておくべきかな」

後輩「労力を考えると、ざっとまとめてこんな感じ」




・女さん  ・ツンデレ
・幼馴染  ・委員長
・転校生  ・保健室登校の先輩
・ヤンキー 



後輩「濃いメンバーね……朝食にカツ丼食べたときの胸やけを思い出すわ」


後輩「さて、まず初日は誰にコンタクトを取ろうかしら」

後輩「……」

後輩「……」

後輩「……人数多いし、くじ引きで決めよう」


【インタビューの相手】

>>22

保健室登校の先輩


~ 昼休み ~


【保健室】


コンコン コンコン


後輩「失礼します」 ガラッ

保登「あら、体調不良ですか? 先生は留守にしているので、今だと職員室にいると思いますよ」

後輩「ご丁寧に有難うございます。 ただ、今回は先生に用事というものではありませんので」

保登「?」

後輩「貴方に用事があって伺いました。“保健室の深窓の令嬢”さん」

保登「え……?」


後輩「自己紹介が遅れました。 私は新聞部に所属する1年1組の後輩と申します」

保登「初めまして。 私は3年の保登といいます。 ちょっと体が弱いので、よく保健室にいるんです」

後輩「お噂はかねがね色々な生徒から伺っています」

保登「まぁ、あまり良い噂は無いでしょうね。我ながら一般的な高校生とは言い難いものがありますから」

後輩「いえいえ。むしろ良い噂ばかりが耳に届いていますよ。
   “保健室の深窓の令嬢”と呼ばれている所以は、きっと先輩ご自身の人柄から出ているんでしょう」

保登「あの、先ほどから気になっていたのですが」

後輩「どうされましたか?」

保登「その、“深窓の令嬢”とかいう方は……失礼ですが人違いでは?」

後輩「いいえ、間違いなく貴方です。ご確認ですが、3年2組に在籍している先輩ですよね?」

保登「はい。 確かにその通りですが、その……」

後輩「何か?」

保登「そ、そんな風に呼ばれたのは初めてで、その……なんですか、その大層な通り名は……?」

後輩「この学校の生徒は皆そういう風に貴方を呼んでいますが?」

保登「えええぇぇぇぇ!?」


保登「……いつから?」

後輩「私が入学したときには既に噂を聞いていたので、少なくとも半年以上は前からかと」

保登「……」

後輩「……」

保登「あ、なるほど。 そういうジョークですよね! だめですよ、初対面の人をからかっちゃ! めっ!」

後輩「いえいえ。本当なんですって」


後輩「ちなみに、怪我もしていないのに保健室に来る男子生徒ってどのくらいいますか?」

保登「そうですねぇ。 とっても多いです。 保険の先生がいつもヤキモキしてますよ」

後輩「一時期は保健室の外に行列が出来ていたとか」

保登「ありましたねぇ。 先生が『見世物じゃないから帰りな!しっしっ!』って頑張ってた時期も。
   きっと何か珍しいものでも保健室に飾ってあったんでしょう」

後輩「その頃って保険の先生は、貴方を見て溜息とかよくついてませんでした?」

保登「よくご存知ですね。 無自覚は怖い云々で、よくハァ~って溜息ついてました」

後輩「……はぁ」

保登(あれ? なんか当時の先生に似た溜息が後輩さんから漏れてる?)


保登「そういえば、後輩さんはどうして保健室へ?  私に用があると言ってましたが、どうされました?」

後輩「実はですね。 新聞部の企画で、“校内で話題の美人”の人にインタビューを録っているんです」

保登「……へ?」

後輩「校内でも指折りの美人として毎回必ず名前の上がる人を中心に回る予定です。
   その中でもトップバッターを先輩に飾って頂こうと思いまして」

保登「わたし、ですか?」

後輩「貴方の顔が見たいが故に保健室に行列を作らせたり、稀に教室に行けば見物に来る固定の男子生徒も多数いる美人。
   柔和にして妖艶。 “保健室の深窓の令嬢”にお話を伺いに参りました」


保登「……」

後輩「……」

保登「……みんなそう言ってるの?」

後輩「はい。女子からも人気が高くてそう呼ばれています。
   失礼ですが、不特定多数の生徒からの視線を感じたことは?」

保登「……ぜんぜん」

後輩「……」

保登「……冗談?」

後輩「マジです」

保登「……」


保登「うっはぁ……また教室に行きづらくなっちゃうよぅ……」

後輩(枕に顔をうずめてバタバタしてる。かわいい……)


後輩「すいません。ちょっとジョークが過ぎました。ただインタビューを受けて頂ける人を探していたんですよ」

保登「な、なんだ! ……ってやっぱりからかってたのねぇ! もう、悪い子! 」プンスカ

後輩「いえいえ、あまりにもノってくれるのでついつい可愛くて」


後輩(全部本当なんだけれど、こうでも言わないとインタビューしてくれそうにない方だなぁ……)


保登「全く……。 でも、こうして年下の人と話す機会って珍しいから、私でも良ければ請けますよ」

後輩「快諾ありがとうございます。 さほど時間はとらないので、いくつかのご質問に答えて頂ければ幸いです」

保登「はい。 なんでもお答えします♪」

後輩「なんでも……?」ピクッ


後輩「では、まず最初に好きな食べ物を教えてください」

保登「坦々麺。辛いものは全般的に好きですね」

後輩「ご趣味は?」

保登「最近は図書室から本を借りて色々と読んでいます。オカルト系に詳しくなりたくて」

後輩「?」

保登「まぁ、オカルトといっても大仰なものじゃなくて。 興味が湧いたから調べているだけなんですよ。
   現に今だって怖い話やホラー映画はとっても苦手ですから」

後輩「奇遇ですね。私も怖いのは苦手です。 では、次の質問ですが……」



…………

………

……


後輩「なるほど。 では高校入学してしばらく経ってから、保健室登校をされていたんですね」

保登「はい。昔は病弱な身を悲しんだりしましたが、今となってはこの体のおかげで得た出会いもあります」

後輩「なるほど」


後輩「その出会いというのが、 男さん ですか?」

保登「!?」


後輩「では、最後の質問です。 もし意中の人がいたとしたら、その人との出会うキッカケを教えてください」

保登「……」

後輩「……」

保登「……」

後輩「その場かぎりで嘘をつける内容に、真摯になって答えようとする事の無言。
   まだ出会って少しの間ですが、私は先輩のことが好きになりそうです」

保登「……」

後輩「……」

保登「……話をしても、いい。 けれど、一つだけ約束してほしいんです」

後輩「はい。出来る約束であれば」

保登「……笑わないでね」

後輩「承りました。 必ず笑わないと誓います」


保登「でも、よく考えたら笑うも何も、貴方も同じなのでしょうか?」

後輩「はい」

保登「貴方の口からあの人の名前が出たって事は、そういう事なんだと思う」

後輩「そうですね。貴方の想像どおりで宜しいかと」


後輩(まぁ、情報は男友先輩から借りているメモだけなので、軽いカマをかけてみたんですが)


保登「後輩さんも、そうだったのね……」

後輩「そうですね」


後輩(……?)



保登「男くんと同じ、 学園を守るゴーストバスター だったのね」

後輩「(´゚ω゚)・*;'.、ブッ 」


後輩「すいません、くしゃみです」

保登「び、ビックリしちゃった……」


後輩(聞き間違いかな? 突拍子もない言葉が聞こえてきたので思わず吹きそうになってしまった。)


後輩「改めて男さんとの出会いのキッカケを教えてくれると幸いです」

保登「そうですね。あれは桜の花びらが舞い散る春の頃でした」

後輩「ほぅほぅ」

保登「外の空気を吸おうと思い立ち、保健室から花壇へ向かう最中のこと」

保登「近くの理科準備室から物音が聞こえてきたんです」

保登「何事かな、って思って中を覗いてみると……」

後輩「みると?」

保登「男さんがお札を両手に構えて、お経らしきものを唱えながら魑魅魍魎と戦っている姿が見えたんです」


後輩( ゴーストバスターは聞き間違いじゃなかったのか……! )


保登「格好よかったんですよ、男さん。
   幽霊は怖かったけれど、まるで物語の主人公が現実の世界に現れたみたいで、なんだか素敵でした」

後輩「先輩もそろそろ現実に帰ってきて頂けると光栄なのですが」

保登「?」

後輩「いえ、お気になさらず続けてください」

保登「もう一息で全ての幽霊や妖怪を倒しきるところだったんですが、
   その中でも一際大きい怪物に私が見つかっちゃって……」

後輩「ほぅ」

保登「その怪物が私に捕り憑いてきたんです。そこの記憶は不鮮明なのですが、男さん曰く
   “1ヶ月内に学園七不思議に封印されている各々の化物を解放しないと女の命はない”と言われたとか」

後輩「私たちのようなミッション系学園にも七不思議ってあったんですね」

保登「もう私は死んじゃうんだって泣いてたら、男さんは優しく頭を撫でてくれて、こう言ったんです。
   “七不思議を解放しながら、それぞれ封印されている化物を退治していこう”って」

後輩「……」


保登「そこから男さんは授業そっちのけで私を連れて学園内を探索して、尽力してくれたんです。
   まさか玉藻前が七不思議の一角に封印されているって知ったのは、それから随分あとの事ですが」

後輩「日本最強クラスの妖怪じゃないですか、玉藻前って……」

保登「私と男さんが生きているという現状が事の顛末ですね。
   感謝してもしきれない。一人の人間として尊敬しており、一人の女性として彼の幸せを願っています」

後輩「……」

後輩「なるほど、よく分かりました。インタビューにご協力いただき有難うございます」


保登「男さん以外の人とこれだけ話したのは久しぶりでした。とっても楽しかったです。
   貴方のような美人さんとお近づきになれたのも嬉しいですね」

後輩「いえいえ。先輩とお話が出来て私も楽しかったです」

保登「もし良かったら、また遊びに来てくれると嬉しい」

後輩「勿論です。次は一個人として先輩に会いにきますよ」

保登「ふふっ……どうしよう、すごく楽しみ。お友達ができちゃった♪」

後輩(この人ホントちょいちょい可愛いから困るなぁ)


後輩「では、お邪魔しました」

保登「うん、またね」

【保健室の外にて】


後輩「……」

後輩「……」

後輩「……良い人だったなぁ」

後輩「とりあえず、男さんがあの“深窓の令嬢”をデレさせた理由は本人の口から聞けました」

後輩「……」



●学園に蔓延る魑魅魍魎を退治するゴーストバスターで、玉藻前を倒すほどの実力者



後輩「これをどうやって報告すればいいんだろう、私……」


後輩「気を取り直して、明日話を伺う人を考えよう」


□ 女さん
□ ツンデレ
□ 幼馴染
□ 委員長
□ 転校生
☑ 保健室登校の先輩
□ ヤンキー 


【インタビューの相手】

>>45

委員長

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