千早「春香と喧嘩してしまった」 (24)

地の文有り、読みづらかったらごめん

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「千早ちゃんの、ばかあああああ!!!!!」

春香が、叫びながら事務所を出て行った。
私は、俯いて肩を震わすしか出来なかった。

―――

「千早ちゃん、おはよう!ドーナツ作ってきたんだけど、食べる?」

「…ごめんなさい、春香。そろそろレッスンの時間だから…後でもらってもいいかしら?」

「そっか、うん、いいよ!じゃあ事務所に置いとくね。」

朝、春香と短いやり取りをして私はレッスンに行った。
春香の作ってくれるお菓子はとても美味しくて、全く食に興味のなかった私を虜にしてしまう程。
美味しい物を食べると幸せになる、と言うけど…まさにその通りだったわ。
その春香の作るドーナツが事務所で待っていると思うと、レッスンを終わらすのが楽しみで仕方なかった。

「ただいま戻りました。」

「お帰りなさい、千早ちゃん。」

昼頃、事務所に戻ると、音無さんへの挨拶もそこそこに早速ドーナツを探す。程なく、テレビの前の机に置いてあるのを見つけた。
きっとこれね。綺麗な箱に入っていて、とても美味しそう。私は、ソファーに座ると、ドーナツに手を付けた。

「…んっ、…今日は甘めの味付けなのね。」

いつもより甘いドーナツを一つ食べ、もう一つ、と齧っていると、ただいまと元気な声が聞こえた。
春香が帰ってきた。入り口を顔を向けて、ドーナツを食べていると言うアピールをする。

「あ、千早ちゃん、ドーナツ食べてくれたん………。」

春香の顔がみるみる曇っていく。何があったのだろう、と食べているドーナツを飲み込んで、口を開こうとすると。

「そ、それ…っ、プロデューサーさんに、って…作ったのに……。」

「えっ…?机の上に置いてあったから、てっきり朝言っていたものだと思って…。」

「ちゃんとプロデューサーさんの机に、置いたんだよ……千早ちゃん、なんで食べちゃったの!」

春香が、目に涙を溜めながら私に対して怒っている。でも、このドーナツは確かにテレビの前の机にあって…。
とにかく、弁解をしなければいけない。

「は、春香。だから、このドーナツはここの机に置いてあったもので、プロデューサーの机から持ってきた訳じゃ―――」

「私ちゃんと置いたのに!!」

「話を聞いてよ、春―――」

「千早ちゃんの、ばかあああああ!!!!!」

―――

ソファーで先ほどの会話を思い返して、もっと言いようがあったのではないかと後悔していると、
ぽつり、膝に置いた手に涙が当たる。 一粒の涙は、やがて雨に変わり、喉からは嗚咽が漏れ出す。

「千早ちゃん…ええと、元気、出して、ね?春香ちゃんには私からもここに置いてあった、って説明するから。」

「私もプロデューサーさんの机のドーナツは知らなかったけど、でも、私からも言えば、きっと春香ちゃんも納得してくれるわよ。」

音無さんの慰める声が聞こえる。聞こえるだけで、私には届かない。
だって、知らなかったとは言え、親友を怒らせ、そして悲しませてしまったと言う事実が、私にはとてつもなく重く感じられたから。

暫く泣いていると、肩をとんとん、と叩かれる。顔を上げると、律子が立っていた。

「千早、そろそろレコーディングの……。千早?どうしたの?」

「…律子…。春香と、喧嘩をしてしまって…。」

「え?あんた達が喧嘩って…何があったのよ?」

律子は、心配そうな声色で私に問いかける。
私は、首を振って立ち上がる。

「後で…後で話すわ。レコーディング、行きましょう。」

レコーディングは良い出来とは言えなかった。
今日は新曲のデモテープの収録だったとは言え、私は全く納得がいかなかった。
それも春香との一件があってから、だろう。歌っているときも思い浮かぶのは春香の泣き顔。
どうしようもなく悲しかった。とぼとぼと律子の後に着いていき、車に乗り込む。

「千早。昼の件、聞かせてもらうわよ。」

「ええ…分かったわ…。」

かいつまんで今朝のやり取りと、昼の春香とのやり取りを話す。
律子は、聞き終わると、深く頷きながら、ゆっくり話し始める。

「そう、ね…。まずはしっかり謝る事。謝ったら、ちゃんと説明すればきっと分かってくれるわよ。」

「それと、…お詫びにドーナツを春香に作ってあげたら?」

「…え?」

「物で釣る、じゃないけど…千早が心を込めて作れば、きっと許してくれるわよ。」

「…なるほど、そうね。そうしてみる。ありがと…っ、律子…っ、ううっ…。」

律子は、私にそっとハンカチを手渡してくれた。そしてそのまま車を走らせ始める。

「千早っっ!!すまん、本当に!!」

事務所に戻るなり、プロデューサーが手を合わせて謝ってきた。
律子と顔を見合わせた私は、何があったのかと問いかける。

「いや、音無さんから聞いたんだ、ドーナツの話。俺、先にテレビの前のドーナツ食べちゃってさ。」

「そうなんですか…。」

「後で机の上のドーナツに気が付いて、食べちゃった代わりにって、そっちに置いたら…。本当にすまん、千早…。」

「いえ…それは、いいです。プロデューサーもわざとではないのでしょうし。」

「面目ない…。」

「それより…プロデューサーは、ドーナツの作り方をご存じでしょうか?」

「へっ?あー…いや。俺はお菓子作りはさっぱりで。音無さんなら知っているんじゃないか?」

プロデューサーは、音無さんに助けを求めるように顔をそちらに向ける。
音無さんは…苦笑いをして。

「私も、お菓子作りはあまりしないんです…。せいぜいチョコですかね。」

そう言って事務の仕事に戻る音無さんだった。

帰り際、音無さんに料理のレシピを検索できるホームページを教えて貰った。
ここならきっとドーナツの作り方も乗っている…だろう。検索してみると、ドーナツ一つでも沢山あるようだ。

「ホットケーキミックスでも作れるのね…。」

料理は春香や我那覇さんや高槻さんに教わりながら出来るようになってきたけど、お菓子作りの経験は全くない。
でも、ここに書いてあるレシピなら、きっと私にも出来るだろう。

「…よし。」

指定された材料を購入し、家に帰ると、早速ドーナツ作りに取りかかる。
一々携帯を開くのは面倒だから、紙にレシピを書く。携帯は、充電しておきましょう。
材料を混ぜ合わせる。とても力がいる作業だった。

「これをいっつも春香はやっているのね…。」

暫く練ると、次は寝かせる時間。待ち時間の間に、私の夕食を作る事にした。
と言っても、今日は野菜炒めだからそんなに時間が掛からない。
程なく、私の夕食が出来た。先にドーナツを作るから、ラップをかけておく事にする。
寝かせた生地を丸めて、次は油を熱する。暫く熱してから生地を投入して揚げる。
やがて、ドーナツが完成した。熱々だから少し冷ます為に台所で置いておく。
私は、作った夕食を食べる事にした。

翌日、朝早く事務所に向かうと、鍵が掛かっていた。
時計を見ると、まだ7時半。音無さんもまだ出勤していないようだ。
ぼんやりと扉の前で立っていると、誰かが階段を上る音が聞こえる。
音のした方へ顔を向けると、階段を上っている春香と顔があった。

「春香……。」

声を掛けると、春香の顔が、驚きから、泣き顔へと変わる。
そのまま階段を駆け上がって、私に飛びついてきた。

「ど、どうしたの?」

「千早ちゃああああん、ごめん、ごめんなさい!!」

飛びつくなり謝ってくる春香の頭を、撫でる。

「こちらこそ、ごめんなさい。春香が帰ってくるのを待つべきだったわ。」

「千早ちゃんはっ、悪くないよ…!私が早とちりして、勝手に決めつけて…うううっ…。」

ごめんね、ごめんね、と泣いてすがりながら謝ってくる春香を見ていたら、目尻が熱くなる。
気が付けば、私も泣いていた。それを見た春香が更に泣き、私もそれを見て更に泣く。
お互いわんわん泣いていると、いつの間にか側で立っていた音無さんが困ったような声で、

「鍵開けても、いいかしら…?」

と、言った。

「千早ちゃんのドーナツ、美味しいね。」

「初めて作ったから難しかったけれど…ありがとう。」

事務所の鍵が開いてからすぐ私たちはソファーに座り込む。
音無さんは仲直りできて良かった、と安心したように言ってくれた。
ようやく泣き止むと、私は持ってきたドーナツを取り出した。
春香に、と作ったドーナツは、少しパサパサしていたけど、とても美味しかった。

「春香…あの。」

「なあに、千早ちゃん。」

「今度は…一緒にドーナツ、作りましょう。」

「いいよ、作ろう!千早ちゃんとなら美味しいドーナツ、作れるよ!」

「そうね。美味しいの、作りましょうか。」

そう言って、二人で笑い合う。
春香の口元には、食べかすがついていた。

おわり

寝てたらティンと来てね
ここまで見事にはるちはしか書いてないけど俺は響が一番好きなんや

今回からトリップつけることにしました
まだまだ駆け出しですが近いうちに書くと思うのでよろしくお願いします
見てくれてありがとう

あっ、まじですか?
訂正してきます。

訂正してきました、指摘ありがとう
間違えて出して申し訳ない

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