妹「お兄ちゃんには、絶対教えない」(136)
男 「ただいまー」
妹 「………」コタツヌクヌク
男 「うーさぶ。――っていたのかお前」
妹 「…何よ。いちゃ悪い?」
男 「いや悪くねえけど…なんだ? 機嫌悪いのか?」
妹 「別に」
男 (別に、って顔じゃねえぞ)
男 「まあいいや。あ、お前もなんか飲むか?」
妹 「…お兄ちゃんは?」
男 「ココア」
妹 「あたしも、それでいい」
男 「ほい」
妹 「ん」
男 「…なあ」
妹 「ん?」チラッ
男 「熱いか?」
妹 「んーんー」フルフル
男 「そっか」
妹 「ん」コクリ
男 「………」ズズッ
妹 「………」フーフー…ズッ
男 「…ふう」
妹 「…お兄ちゃん」
男 「なに?」
妹 「少し、お話があります」
男 「はい」
妹 「お兄ちゃんに、好きな人ができたと聞きました」
男 「ほう」
妹 「そこんとこ、どうなんですか?」
男 「んー…」
妹 「……………」
男 「…そうなのか?」
妹 「聞いてるのはこっち!」
妹 「誤魔化さないで! さあどうなの!?」
男 「あー…」
妹 「………」ジーッ
男 「心当たりない」
妹 「うそ」
男 「嘘じゃねえよ」
妹 「じゃあ『田中さん』って誰なの?」
男 「田中さんはあれだ、俺の大事な存在だ」
妹 「ほらぁ! やっぱりいるじゃん!」
男 「あー、ひとつ言っとくがな」
妹 「なにさ」
男 「田中さんは人間じゃない」
妹 「それが一体…え?」
男 「田中さんはな、これだ」スチャッ、パカッ
妹 「…なにこれ?」
男 「見ての通りだ」
妹 「…ブタさん?」
男 「うむ。これが我が愛しの四足歩行・田中クレオパトラさんだ」
妹 「…エジプト出身?」
男 「いやバリバリの日本生まれ」
妹 「クレオパトラなのに?」
男 「生まれの問題じゃない。顔を見てみろ」
妹 「うん」
男 「似てるだろ?」
妹 「…何に?」
男 「クレオパトラに」
妹 「お兄ちゃんは一回、蛇に噛まれて死んだ方がいいと思う」
男 「今クラスで飼っててな。今週の世話は俺がすることになってんだ」
妹 「…かわいいね」
男 「そうだろう、そうだろう」
妹 「けど、なんでブタさん?」
男 「飼う動物はクラスごとで話し合って決めるんだよ」
妹 「ふーん。クラスごとで違うんだ」
男 「おう」
妹 「じゃあ、他のクラスは?」
男 「吉田さん、井上さん、田所さん」
妹 「…名前で言われてもわからないよ」
男 「まあそんな感じだ。生憎だが、浮いた話なんてねえよ」
妹 「そっか」
男 「しかし、お前なんでそんなこと聞きたがったんだ?」
妹 「…別に。ただお兄ちゃんに好かれるなんて、その人可哀想だなーって思っただけ」
男 「はっはっは。それはどういう意味だ、我が妹よ」
妹 「べっつにー。深い意味なんてないですよーだ」
男 「けっ。つーか、マジで俺にそういう相手がいたら、お前どうする気だったんだ?」
妹 「?」
男 「だから俺に好きな相手できたら、お前なんかしてくれるのか、ってこと」
妹 「…………」
妹 「…本当に、お兄ちゃんに好きな相手ができたら?」
男 「そうそう。応援とかしてくれんのか?」
妹 「…して欲しいの?」
男 「少しはな。俺も女子のことは疎いし、たまに相談とか乗ってくれると助かる」
妹 「…………」
男 「あ、もちろん報酬ははずむぞ。一回相談ごとにプリン1個でどうだ?」
妹 「…………」
男 「おーい。聞いてるかー?」
妹 「…悪口」
男 「は?」
妹 「お兄ちゃんの悪口、いっぱい言う」
男 「悪口って、誰に?」
妹 「お兄ちゃんの、好きな相手に」
男 「…はあ?」
妹 「いっつもヘラヘラしてて」
妹 「デリカシーの欠片もなくて」
妹 「ギャグもお洒落もネーミングもセンス皆無で」
妹 「しかも人の気持ちなんて全然わかってくれない鈍感で」
妹 「だから癇に障ることばっか口に出して来て」
妹 「バカでアホで間抜けの」
妹 「救いようのない男だって、その人に言ってやる」
妹 「言いまくってやる」
男 「…お前さ」
男 「俺のこと嫌いだからって、それやり過ぎじゃね?」
妹 「…………」
男 「わーかったよ。とりあえずお前の負担には…」
妹 「……逆」
男 「ん?」
妹 「…逆」
男 「何が?」
妹 「嫌いだから、じゃない」
妹 「…その、逆」
男 「嫌いの、逆?」
妹 「…うん」
男 「じゃあ…え? なに? 俺のこと好きだから、悪口言うってこと?」
妹 「………………………」コクリ
男 「好き、だから?」
妹 「……………」
男 「ふーん…」
妹 「…………」
男 「変なやつ」
妹 「…それだけ?」
男 「へ? なにが?」
妹 「今の私の……を聞いて、言うこと、それだけなの?」
男 「えええ? 他に何か言わなくちゃ駄目なのか?」
妹 「当たり前だよ!」
男 「そ、そうか」
男 「えっと、それじゃあな…」
妹 「……………」
男 「…悪口は、やめてくれ」
妹 「…なんでよ」
男 「だって、それじゃあ俺がフラれちまうじゃん」
妹 「…それが、何よ」
男 「何って…お前さ、妹なんだから兄貴の恋路くらい応援してくれてもいいだろ」
妹 「……………」
男 「お前が俺のこと好きだってんなら、尚更さ」
妹 「……………そうだね」
妹 「それが、普通のこと、なんだよね」
男 「だな。俺も、お前に好きな相手ができたら応援するつもりだし」
妹 「…そう」
男 「そういや、お前はどうなんだ? 好きなやつ、いんの?」
妹 「…いるよ」
男 「まあ俺らはそんな話とは無縁…っているのか!?」
妹 「…うん」
男 「マジか。おいおい、で、そいつどんなやつだ?」
妹 「…言いたくない」
男 「そう言うなって」
妹 「……………」
男 「応援してやる、って言ったろ?」
妹 「………っ!」
男 「だから、名前だけでも…」
バン!
男 「…っ」ビクッ
妹 「…お兄ちゃんには」
男 「…………」
妹 「お兄ちゃんには、絶対教えない」
おわり
…の予定だったけど、なんかキリ悪いのでもうちょい続けます。
ちょっとどころか沢山続けてくれても良いのよ?
>>27
ちょっと他のSSやってるから、あんまり沢山は無理だ。すまん。
母 「たっだいまー! いやぁ、今日寒いね~」
男 「…………」ミカンムキムキ
妹 「…………」コタツゴロゴロ
母 「ね、ね、ね! ほら、ほら、ほら! 見てみて、この大荷物!」
母 「なんと今日はお鍋です! しかもす・き・や・き!」
男 「…………」ムキムキ
妹 「…………」ゴロゴロ
母 「ほらこの牛肉見て見て! お母さん奮発しちゃったわよ、すっごいでしょ?」
母 「食べたら口の中でとろけちゃいそー! きゃー!」
男 「…………」ムキムキ
妹 「…………」ゴロゴロ
母 「? 二人とも、どうかしたの?」
妹 「…別に」
母 「ケンカ? 駄目よぉ、お兄ちゃん。妹をいじめちゃ」
男 「俺のせい確定かよ!」
母 「はい、男はごちゃごちゃ言わな~い。かっこ悪いぞ~」
男 「その何でもかんでも男を悪者にすればいいって風潮こそ、どうかと思うわ」
母 「じゃあ違うの?」
男 「……………」
母 「あらあら」クスッ
母 「早く仲直りなさいね」
母 「それじゃあ夕飯の準備してくるから、少し待っててね~」
男 「…………」
妹 『お兄ちゃんには、絶対教えない』
男 (…自分から話題ふっといて、あの返しはねえだろ)
男 (しかも勝手にむくれて、あれから一回も口きかねえし)
男 (俺が一体何したってんだよ)
男 (…………)
男 (…何かしたんだろうなぁ、俺)
男 (つっても身に覚えないから困る)
男 (謝った方がいいんだろうが、原因わからねえまあじゃ逆効果になりかねねえし…)
男 (…………)
男 「…なあ」
妹 「…なに?」
男 「みかん、食う?」
妹 「あ?」ギロッ
男 「すまん。…ちょっとヘタレた」
妹 「で、何よ?」
男 「てっとり早く言うと、仲直りがしたい」
妹 「…直球だね」
男 「こういう空気は嫌なんだよ。言いたいことがあるなら、はっきり言ってくれ」
男 「俺バカだからさ、お前が怒ってる理由が全然わかんねえんだ」
男 「だからさ、はっきり言ってくれ。そしたら、俺もきちっと謝れるから」
男 「頼む」
妹 「…もういいよ」ハア…
男 「仲直りしてくれるか?」
妹 「うん。ってか、お兄ちゃん別に悪くないし」
妹 「ちょっと…他のことでイライラしてたの。ごめん」
男 「…妹」
妹 「うん」
男 「ダウト」
妹 「…なにが」
男 「今の言葉」
妹 「なにを根拠に」
男 「目線と声、指や唇の動きエトセトラ」
妹 「…………」
男 「他にもあるが、全部言うか?」
妹 「…この変態」
男 「俺が悪いのに『俺は悪くないよ』なんてフォローはいらん」
妹 「…ウソじゃないよ」
妹 「あたしが、勝手に怒ってるだけだよ」
男 「けど俺がお前の気に障ること言ったんだろ?」
妹 「それは…あたしがわがままだからだよ」
男 「わがまま?」
妹 「もう、いいでしょ。いいかげん空気読んでよ、お兄ちゃんのバカ」
男 「えー」
妹 「…イラつくなぁ、その返し」
男 「だってお前のわがままなら何でも聞くぞ、俺?」
妹 「何でも?」
男 「何でも」
妹 「軽く言うなぁ」
男 「逆だろ。お前のわがままなんて、そんな重いもんじゃねーって」
妹 「…あたし的には悩みの種で、むっちゃ重荷なんですけど」
男 「一人で抱えてるから重いんだろ」
妹 「うー…」
妹 「…バカ」
男 「さっきからバカバカ言い過ぎじゃね?」
妹 「バカって先に言い出したの、お兄ちゃんだもん」
男 「そこはお前、『そんなことないよ』ってフォローするのが妹の務めってもんじゃないか」
妹 「うっさい」
男 「…素直じゃねえなぁ」
妹 「バーカ、バーカ、バーーカ」
妹 「………」プイッ
男 「…えーっとな」
男 「さっきの繰り返しになるけど」
男 「妹はさ、もっとわがままでいいと思うぞ?」
男 「自分に厳しくできるってのはいいことだけど」
男 「お兄ちゃん的には…やっぱもうちょい甘えてくれる嬉しいっていうか」
男 「…なあ、聞いてる?」
妹 「……………」
男 「妹ー。妹ー」
妹 「……………」
男 「愛してるぞー。愛してるぞー」
妹 「……………」
男 「ふーとーもも。ふーとーもも」
妹 「……………」
男 「すーりーすり。すーりーすり」
妹 「…したら怒るよ」
男 「えー」
妹 「はあ…」
妹 「…それじゃあさ、一つわがまま言っていい?」
男 「くくく。ついに根負けしたか」ニヤリ
妹 「キモい」
男 「すんません調子に乗りました。だからそんな目でお兄ちゃんを見ないで」
妹 「…あのさぁ」
男 「おう」
妹 「あたし、お兄ちゃんと一緒におフロ入りたい」
男 「了解。それなら今日にでも…」
男 「………………」
男 「…は?」
妹 「今日は駄目。…また、今度ね」
男 「え、お前なに言ってんの?」
妹 「わがまま」
男 「え、うん。そうか。…え?」
妹 「じゃあ、あたしお母さん手伝ってくるから」
男 「ちょ、ちょっと待って。なんか急展開すぎて俺の頭がついていかないんだけど」
妹 「…お兄ちゃん?」
男 「お、おう」
妹 「バーカ」
ガラガラ―――ピシャン
男 「……………」
男 「…なんだぁ冗談か」
男 「……………」
男 「…冗談だよな?」
男 「……………」
男 「冗談じゃなかったら…」
男 「……………」
男 「…いや、冗談に決まってる!」
男 「つーか有り得ねえし。だって何歳になるよ、あいつ」
男 「そもそもあいつ、俺のこと嫌って…」
『嫌いだから、じゃない』
『…その、逆』
男 「……………」
男 「…冗談だよな?」
とりあえず今回は終わり。
閑話
妹 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」※カラオケ中
妹友A「イヤー♪」
妹友B「…………」シャカシャカ
妹友C「……」ピッピッ
妹 「うどぅぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」※カラオケ中
A 「ウダー♪」
B 「…………」シャカシャカ
C 「……」ピッ、ヒピッ
妹 「ばがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」※カラオケ中
A 「バカー♪」
B 「…………」シャカシャカ
C (…また何かやらかしたのか。あのツンデレ)
A 「これでいいのだぁあー♪」
B 「…………」シャカシャカ
妹 「…………」グダー
C 「歌い終わるなり死体にならないでよ」
妹 「…死んでないし。エネルギー切れただけだし」
C 「ドリンクで補給したら?」
妹 「飲む気力ない」
C 「…ところで」
妹 「んー?」
C 「悩み事あるなら聞くけど?」
妹 「…そんなんじゃない」
A 「高められた、しあわっせぇ♪」
B 「…………」シャカシャカ
C 「なによー、つれない。ちょっと聞かせなさいよぉ」
妹 「野次馬に聞かせる話なんてないから」
C 「そんなひどい! 私、妹のこと本当に心配してるんだよ!」
妹 「…シイ」
C 「うん」
妹 「目、キラキラしてるわよ」
C 「え?」キラキラ
妹 「……………」
C 「……………」
C 「…私、妹のこと本当に心配してるんだよ!」
妹 「黙れよ、そこのロクデナシ」
C 「だってぇ、他人の恋バナほど無責任に盛り上がれる話題ってないしー」
妹 「…ほんと清々しいまでに最悪だよね、アンタ」
C 「てへっ☆」ペロッ
妹 「あははは何その顔。―――そのまま舌噛み切りなさいよ」
C 「妹、今日はいつになくツッコミ厳しくない?」
妹 「そもそもアンタに優しくしたこと、あったっけ?」
C 「ううう。妹が冷たいよぉ。私、悲しくて泣いちゃうかも」
妹 「…それでマジに泣いちゃうくらいの可愛げがアンタにあれば、あたしも少しは優しくするんだけどね」
C 「えーん。えーん。…ところでさぁ」
妹 「なによ」
C 「恋バナってのは否定しないんだ」ニヤリ
妹 「…アンタのそうゆうとこ、ほんとうざい」
C 「エーイー! ビーイー! ちょっと聞いてー!」
A 「?」
B 「……なに」
C 「妹ね、いま恋しちゃってるんだってー!」
A 「…わあ」
B 「……へえ」
妹 「違うし。そんなんじゃな―――」
A 「ねえねえ、それって相手はだれなの?」
B 「詳細プリーズ」
妹 「…ひとの話を聞け」
C 「むふふふ。それは当人に直接聞いてみたら?」
A 「ねえ妹、話きいていい?」
妹 「…聞くも何も、相手いないから。シイが勝手に言ってるだけ」
C 「まったまた~。そんな照れなくたっていいじゃん」
妹 「照れてるんじゃなくて呆れてるの、このボケ!」
B 「……はい。海老からペッパーとプチピザ、あと…」
妹 「って、なんでそっちは注文はじめてるかな…」
B 「……祭の準備」
妹 「い、ら、な、い! っていうか祭って何よ、祭って!」
C 「やだなぁ妹。そんなの、適当な口実で馬鹿騒ぎするって意味に決まってるじゃん」
妹 「適当な口実で、アンタを血祭りにあげてやろうか?」
B 「……レッツ・パーリィ」
A 「けど妹がかぁ。あ、おまもりいる?」
妹 「…いんない。神さまとか、あたし信じてないし」
妹 「あとこれ全部シイのデタラメなんだからね! 勘違いしないでよね!」
A 「デタラメ、なの?」
C 「いやいや。妹が素直じゃないのは、いつものことでしょw」
妹 「それ言うなら、アンタがデタラメ言うのも毎度のことだけどね…」
C 「妹、ムキになってる?」
妹 「はあ!? 誰がよこのアンポンタン! ノリと思いつきだけで会話してんじゃないわよ、このたわけ!」
B 「……ビー・クール」
C 「というか失礼ねぇ。それじゃあ私が随分いい加減な人間みたいじゃない」
B 「……え?」
C 「え?」
B 「……何を今更」
C 「え、ごめん。その返し、ちょっとマジでへこむんだけど」
妹 「ったく…」
A 「―――」クスクス
妹 「で、何笑ってんのよ。そっちは」
A 「うん。いつもどおりだな、って思って」
妹 「まあ…確かにね。いつも通り過ぎて、嫌になるわほんと」
A 「…あのさぁ」
妹 「なによ」
A 「応援、するから」
妹 「……………何をよ」
A 「んー…」
A 「妹が、すなおになれるようにかな」
妹 「…意味わかんない」
A 「うまくいったら教えて」
妹 「…だから意味わかんないっての、このバカ」
A 「だいじょうぶだよ。妹、きれいだし」
妹 「同性にそんなこと言われても―――」
C 「――――」ニヤニヤ
B 「…………」ジィー
妹 「…何見てんのよ」
C 「いやぁ。私のときと違って、妹ずいぶん可愛い対応してるなぁ~と思って」
B 「……エイ、ほんとデレさせ上手」
C 「はっ。もしかして妹の好きな人って、エイ!?」
妹 「…んな訳あるか」
A 「私も、妹のこと好きだよ」
妹 「おいこらそこのJKY!?」
B 「……レズビアン?」
妹 「そっちの未成年も何口走ってるのか!? ってかアンタらまじ黙れ!」
C 「くくく。こんなおいしいネタ投下されて、私が黙ってられるとでも?」
妹 「お願いじゃなくて、あたしは命令してるんだけ―――」
トキニアイハフタリヲタメシテルー ビコーズアーイラービュー
妹 「…ちょっと待って」
C 「誰から?」
妹 「お母さん」
妹 「しゃーないわねぇ…」
C 「じゃあ一時休戦ってことで」
妹 「すぐ戻るから、覚悟してなさい」ガチャ
C 「オッケー」ノシ
バタン
A 「…あの二人さ」
B 「……なに?」
A 「ほんと仲いいよね」
B 「……トムとジェリー」
A 「? 見てておもしろい、ってこと?」
B 「」b
C 「よーし、カラオケ再開するよー♪」
妹 「もしもし? …うん、今カラオケ」
妹 「それで―――え?」
妹 「…今夜、出掛けるの?」
妹 「わかった。…大丈夫。二人で何とかするから」
妹 「うん。それじゃ」ピッ
妹 「…………」
妹 「チャンス、なのかな?」
妹 「……」
妹 「…………」
妹 「………………」
妹 「……………………」
妹 「…………………………」
妹 「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
妹 「――――…」ピッピッピッ…
妹 「……………」
妹 (お母さん…)
妹 (…ごめんなさい)…ピッ
妹 「………」トゥルルル…トゥルルル…
妹 トゥル―――「あ」
妹 「お兄、ちゃん?」
妹 「どうせあたしが帰らなかったらカップラーメンで済ます気でしょ?」
妹 「…素直でよろしい。冷蔵庫は―――うん」
妹 「なら、夕飯は中華でいい?」
妹 「―――あははは。任してといて」
妹 「うん―――うん…ねえ?」
妹 「この間の〝わがまま”覚えてる?」
妹 「……………」
妹 「…うそつき」
妹 「あれ、今日やるから」
妹 「じゃ」ピッ
妹 「―――――」
妹 「―――――…っ」カアァ
妹 「…言っちゃった」ウズクマリ
妹 「……………」
妹 「…バカ」
妹 「バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ…」
妹 「…あたしの、ばかぁ」
妹 「あたし、情けないなぁ…」
B 「……そう?」
妹 「そうよ。だって―――」
B 「…………?」
妹 「――――――っ!? び、ビイ!?」
B 「……うん」
妹 「い、いつからそこに」
B 「……お夕飯のところから」
妹 「なんで声かけなかったのよ!?」
B 「……取り込み中だったし」
妹 「だからって盗み聞きしないでよ!」
B 「……ごめんなさい」
妹 「…あの、さ」
B 「……うん」
妹 「あたしにはね…」
B 「……………」
妹 「す、好きなやつとか、本当にいないの!」
B 「……………」
妹 「さっきの電話もね、えっと、ちょっと喧嘩しちゃって、それで自己嫌悪しちゃってさ、でなんか落ち込んでるところに、ビイが話しかけて来て、それで驚いちゃっただけで…」
B 「……妹?」
妹 「な、なに?」
B 「……顔、真っ赤」
妹 「…………うっさい、言うなぁ」
そろそろ風呂に入ります。
うp主が。
日曜までには区切りつけたいなぁ。
B 「……料理が来たけど」
B 「……戻る?」
妹 「」フルフル
B 「……支度が、あるから?」
妹 「」コクン
B 「……そっか」
B 「……残念」
B 「……それで」
B 「……さっきの電話の相手は」
B 「……妹の、好きな人?」
妹 「…………」
妹 「…」コクン
B 「……妹は」
B 「……好きな人と、一緒に住んでるの?」
妹 「………」コクン
B 「……………」
B 「……わたしは」
B 「……妹が好きな人の心当たりは、ない」
B 「……けど」
B 「……妹と一緒に住んでる人なら、知ってる」
B 「……その人に、会ったこともある」
B 「……もしかして」
B 「……相手って、その人?」
妹 「……………………………」コクン
B 「……わお」
妹 「…何よ、その反応は」
B 「……すごい驚いた」
妹 「全然ポーカーフェイスじゃない…」
B 「……今日、告白する?」
妹 「また唐突な」
B 「……する?」
妹 「…しない」
B 「……する気は?」
妹 「それもない」
B 「……どうして?」
妹 「……怖いからよ」
B 「……………」
B 「……話」
B 「……聞いて、いい?」
妹 「…そんなの、聞くまでもないでしょ」
B 「……妹がヘタレだから、とか?」
妹 「そうよ」
B 「……………」
妹 「なによ」
B 「……言い返されると思った」
妹 「何なら、もっとひどいこと言ってもいいわよ…」
B 「……マゾヒスト?」
妹 「なんでそうなるのよ! じゃなくて…気持ち悪いでしょ、あたし?」
B 「……しおらしい妹、気持ち悪い」
妹 「そこなの!? いや、アンタね…。あたしを一体何だと思ってるのよ」
B 「……唯我独尊系毒舌JKブラック」
妹 「…もういっそその評価で妥協すべきなのかしら」
B 「……ド級マゾヒスト?」
妹 「だーかーらー!」
妹 「調子狂うわねぇ…」
B 「……一般論が欲しいの?」
妹 「え?」
B 「……怖いのは、それ?」
妹 「まあ…そうよ。だって、普通じゃないでしょ? 妹が実の兄が好きとか」
B 「……さっき黙ってた理由も、それ?」
妹 「そうだけど…」
B 「…………」ハア
妹 「な、何よ、その反応は」
B 「……普通じゃないから、何?」
B 「……妹が、わたし達と一緒にいるのはなんで?」
妹 「なんでって、別に大した理由は―――」
B 「……一緒にいる理由に〝普通”はいるの?」
妹 「」
B 「……普通も大事だけど」
B 「……安易な回答で我慢してると、きっと後悔する」
妹 「我慢してるつもりはないんだけど」
B 「……そう?」
妹 「むしろ、最近は我慢できなくて困ってるくらい…」
B 「……よかった」
妹 「良くないわよ」
B 「……我慢してると、後悔する」
妹 「…その逆なら、後悔しないの?」
B 「……さあ?」
B 「無責任ねえ…」
>>89ミス
× B 「無責任ねえ…」
○ 妹 「無責任ねえ…」
B 「……責任、とった方がいい?」
妹 「―――まさか」
B 「……妹?」
妹 「そこまで甘えちゃ、私らしくないでしょ?」
B 「……今更?」
妹 「うっさい。今更で悪いか」
B 「……ううん」
妹 「あのさ」
B 「……?」
妹 「ちなみに、ビイが私と一緒にいる理由って何?」
B 「……友達だから」
妹 「―――」
B 「……妹はわたしが、自分自身で選んだ友達、だから」
妹 「―――そっか。…ちょっと重いね、それ」
B 「……そう?」
妹 「うん。けど、ビイらしい」
妹 「色々ありがとう。あとは…ひとりで考えてみる」
B 「……部屋に戻る」
妹 「そうね。荷物、置きっぱだし」
B 「……ねえ」
妹 「ん?」
B 「……また、ね」
妹 「…ん」コクリ
閑話終わり
先週の日曜には終わせる予定だったのにすんません。
次回からやっと風呂編です。では。
家
男 「ごちそうさんでした」
妹 「おそまつさまでした」
男 「あー食った食った。いや、麻婆ナスいいわぁ。マジうめえ」
妹 「ナス好きなんだ、お兄ちゃん」フキフキ
男 「油と肉汁がな、こう染み込んでジューシーになってるのが堪らん」
妹 「むかしは嫌いだったのにね」フキフキ
男 「なー。変われば変わるもんだな、ほんと」
男 「お前、最近ティッシュで皿ふくよな。エコ?」
妹 「…洗剤とかの節約もあるから、エコノミーかも」
男 「へー。エコノミーって庶民的とかそういう意味だっけ?」
妹 「お兄ちゃん、それ適当に言ってるでしょ」
男 「おう」
妹 「…経済。あと節約って意味もあるみたい」
男 「妹はかしこいなぁ」
妹 「お兄ちゃんはもっと勉強がんばってください」
男 「はーい」
妹 「お兄ちゃんのお皿もかして」
男 「あいよ。俺もなんかしよか?」
妹 「別にいいよ。あとは私がやるから」
男 「遠慮するなってー」
妹 「邪魔」
男 「ヒマ!」
妹 「…今、なんとなく一人で洗い物したい気分なの」
男 「ふーん?」
男 「じゃあ他に手伝うことは?」
妹 「んー……―――じゃあさ」
男 「おう」
妹 「お風呂そうじ、いい?」
男 「―――へ?」
妹 「駄目、かな…?」
男 「あー…」
妹 「……………」
男 「…りょーかい」
男 「お前さ」
妹 「なに?」
男 「あれ、マジでやるの?」
妹 「マジだよ」
男 「…マジになる理由がわからないんだが」
妹 「」ムッ
妹 「…わかれよ、バカ兄」ボソッ
男 「? 今なんか言ったか?」
妹 「べつに。…ってか、お兄ちゃんは嫌なの?」
男 「いや俺がどうこうじゃなくて、お前がだな…」
妹 「だから、私はマジだって言ってるでしょ!」
男 「意地になってないか、お前?」
妹 「なって悪いの!」
男 「は、裸になるんだぞ?」
妹 「それくらいとっくの昔にわかって覚悟してるわよ、このクソバカ兄貴!」
男 「…一体なにがお前にそうさせるんだよ、マジで」
妹 「そんなの―――」
『いやいや。妹が素直じゃないのは、いつものことでしょw』
『妹が、すなおになれるようにかな』
『……我慢してると、後悔する』
妹 「そんなの…」
妹 「…お兄ちゃんって、ほんとバカ」
男 「待て。この会話の流れで、その評価は納得いかんぞ」
妹 「もういいよ。お風呂場、さっさと行って」
男 「いや、まだ話は終わって―――」
妹 「お兄ちゃんが何を言っても、何も変わらないよ」
男 「」
妹 「…お風呂、お願いね」
十分後、こたつ
男 「……」
妹 「……」
TV<ナンデェ? ナンデアンタ、イキテルン?
男 「……………………」
妹 「……………………」
TV<マテ! Gニソレハマz
男 「……………………………………」
妹 「……………………………………」
TV<ヤメロヤメロヤメロヤメロヤメr <キヒャァァァァァァァァァァァァッ!!!
男 「…なあ」
妹 「んー」
男 「テレビつまんないな」
妹 「そう?」
男 「だってほら、虫一匹に大騒ぎしすぎっていうか」
妹 「お笑い番組だし」
男 「…面白いか?」
妹 「ふつう」
男 「そ、そっか」
妹 「…………」
男 「…………」
妹 「…何年ぶり」
男 「」ピクッ
妹 「だっけ?」
男 「なに、がだ?」
妹 「一緒にお風呂入るの」
男 「ああ、な。うん、えっと…」
妹 「………」
男 「最後は、お前が小学生のころじゃなかったっけ?」
妹 「私が低学年のころだね」
男 「あの頃、お前の髪はいつも俺が洗ってたんだよなぁ」
妹 「私、シャンプー苦手だったもんね」
男 「風呂でシャボン玉を作って遊んだりもしたなぁ。覚えてるか?」
妹 「覚えてるよ。喧嘩もしたよね」
男 「ああ、やった、やった」
男 「たしかお前の作ったでっかいシャボン玉を俺が壊してそれで、だよな?」
妹 「…うん」
男 「いや、あの時はまいったぜ、ほんと」
妹 「…あの頃と、同じだね」
男 「なにが?」
妹 「だってお兄ちゃん、今も私のことで困ってる」
男 「お前な…」
男 「まさか今回のことは、俺を困らせたいからやるって訳じゃないよな?」
妹 「…どうだろう」
男 「あのなぁ…」
妹 「――せる、から」
男 「?」
妹 「…お風呂で、お兄ちゃんのこと、もっと困らせるから」
妹 「だから、その…」
妹 「か、覚悟してね」
男 「」
ピー-…
このあと無茶苦茶ry
次回は土日かなー。
風呂場
男 (どうしてこうなった…)シャー
男 (俺はただ、もう少しあいつと仲良くやれたらいいなって)
男 (そう思っただけなのに…)
男 (さっきの表情とかなんだよ、あんなあいつの顔見たことねえ…)
男 (…………)
シャー…キュッ
男 (深く考えるの、もうやめよ)
男 (兄妹で間違いなんて起こる訳ねえんだ)
男 (頭は充分冷やした)
男 (あとはもう、何も考えるな、俺)
男 (…………)
男 (あいつそろそろ来るかな?)
男 (…タオルの下でも、今の内に洗っておくか)
脱衣所
妹 (きっと、これが最後のチャンスだ)
妹 (こんなこと二度もする勇気、あたしにはない)
妹 (冷静になるな、あたし)
妹 (大事なのは勢い)
妹 (所詮、相手はどうt…)
妹 (…女と付き合ったこともないやつ)
妹 (余裕よ、余裕)
妹 (もう入った瞬間に襲われる可能性だって…)
妹 (…………)
妹 (あのお兄ちゃんが、あたしを…)
妹 「―――ッ」ブンブン
妹 (び、ビビるな馬鹿)
妹 (だ、大事なのは)スッ
妹 (勢い!)ガラッ!
妹 「お兄ちゃん、あた―――」
パオーン
男 「」
妹 「」
男 (声かけくらいしろよ、馬鹿…)
男 「うわ」
妹 「………」
男 「お前急に入ってくるなよ、恥ずかしい」
妹 「………」
男 「とりあえず俺まだ体洗ってるから、お前は先に湯船に―――」
妹 「………――か」
男 「ん?」
妹 「お兄ちゃん、はだか」
男 「えーっと…」
男 「言っておくが、俺は謝らんぞ?」
妹 「…うん」
男 「大体いきなり入ってきた、お前にだって落ち度は―――え?」
妹 「わかってる。あたしが、悪かった」
男 (…なんか、今回は妙に素直だな)
妹 「あたしが、馬鹿だった」
男 「いや、そんな気にすることもないが…」
妹 「」バサッ
男 「? 今、なに―――」
妹 「…お風呂、だもんね」
男 「」
妹 「お風呂ではだかになるのは…当然、だよね」
男 「なに、してんの、お前?」
妹 「…お兄ちゃん、変な顔」クスッ
男 「いやいや! お前なんでタオルとってんの!?」
妹 「お風呂で裸になるのに理由がいるの?」
男 「いや、そりゃ確かに普通かもしらんが、でも…」
妹 「座って。体、洗ってあげる」
男 「いや、そんなことよりも」
妹 「座って」
男 「だから、俺が座るよりもお前は」
妹 「前から洗ってあげる?」
男 「…わかった。わかったから、それは勘弁してくれ」
妹 「―――ねえ」
男 「…なんだよ」
妹 「からだ、綺麗にしてあげるね」
妹 「…アカ」ゴシゴシ
男 「………」
妹 「…けっこう出るね」ゴシゴシ
男 「………なあ」
妹 「…なに?」
男 「さっきから、その…」
妹 「…」ゴシゴシ
男 「胸が、やたらと当たってるんだが…」
妹 「…気のせいだよ」ゴシゴシ
妹 「あたし、当たるほど大きい胸してないし」
男 「いや、けど、実際に…」
妹 「…」ムニュ
男 「! ちょ、おま!?」
妹 「…どう?」
男 「なにが!?」
妹 「…胸の大きさ」
男 「わっかるか、んなもん!?」
妹 「…そう」ギュー
男 「なぜ更に腕に力を込める!?」
妹 「…わからない、って言うから」
男 「わかった! もう全部わかったから離れろ!」
妹 「…やだ」
男 「なんで!?」
妹 「…お兄ちゃんの背中、すごくあったかい」
男 「寒いなら湯船につかればいいだろぉがぁぁぁ!」
妹 「…お兄ちゃん、意外と筋肉あるんだ」サワッ
男 「ばばばばばか!」
妹 「…体つき、あたしと全然ちがう」サワサワ
男 「胸や腹をなでまわすな!」
妹 「…どうして?」
男 「だからなでるな、動くな! さっきから色々と当たってんだよ!」
妹 「…いいじゃん。どうせ、次はあたしの番だし」
男 「つ、次って何だよ」
妹 「…次は」
妹 「お兄ちゃんが、あたしの体を洗ってよ」
男 「」
妹 「―――」サワサワ
男 「背中だけか?」
妹 「…全部」
男 「無理」
妹 「…無理じゃないよ」
男 「できねーよ、そんなこと…」
妹 「…できるよ、それくらい」
男 「お前な、俺らの歳を考えろ。ガキの頃とは違うんだぞ」
妹 「…ねえ」
男 「んだよ」
妹 「…あたしの体、子どもの頃とどう違う?」
男 「そんなの、随分とその、いろいろ違うだろ」
妹 「…じゃあ、もう大人?」
男 「そういう感じでもないが…」
妹 「…なら、いいじゃん」
男 「よくねえよ。お前がよくても、俺はよくねえんだよ」
妹 「お母さんはいないよ」
男 「」
妹 「今日は、あたしとお兄ちゃんの他に誰もいないよ」
男 「だから、何だよ」
妹 「…別に」
妹 「…兄妹なんだから、そんな気にすることないよ」
男 「普通の兄妹はこんなことしないだろ」
妹 「…あたしの友達は、結構してるよ」
男 「それは嘘だろ…」
妹 「…ほんとだよ」
男 「けど…」
妹 「…意識することないよ。こんなの普通のことだし」
男 「意識なんか、してねえよ」
妹 「…じゃあ、問題ないよね」
男 「―――――」
妹 「…ねえ。大丈夫だよ。だってあたしたちは」
妹 「兄妹、なんだから」
このSSまとめへのコメント
やべぇ!
久々にいいのみつけたわ