加蓮「2:00AM」 (36)


・モバマス、北条加蓮のSS
・リハビリのため、ゆっくり投下
・短い予定


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クルー「お持ち帰りでお待ちのお客様ー」

加蓮「あ。はーい」

クルー「お待たせいたしました。ありがとうございましたー」

 ベーコンオムレツバーガーとスパムバーガー、フレッシュレモネードが、ふたつ。

加蓮「うん、よし」

 袋を手に、事務所へ。
 あったかいなー。

加蓮「あ」

 夜の闇に雪、はらはらと。ちょっとロマンチック。
 Pさんと一緒ならなあ、なーんて。

加蓮「ぜいたく、かなあ」

 Pさんが待ってるし。早く戻らなきゃ。


 深夜2時。
 ほんとなら、もうすっかりおやすみ、の時間。
 今日はちょっとだけ、いけないわたし。

 夜遅くっても、どこかお店は営業してるし。コンビニだってあるし。
 でも、今日の気分は『愛 LIKE ハンバーガー』。

加蓮「わたしは恋を夢見るアメリカンガール」

加蓮「大好きな食べ物はハンバーガー」

加蓮「あ~ 愛しのダーリンどこにいるの……」

 事務所にいるけどね。
 ふと、口ずさんでみる。

 さあ、冷めないうちに。お届けお届け。

 がちゃり。

加蓮「Pさーん、買ってきたよー」


P「おう、加蓮……ありがとな」

 Pさんは、絶賛残業中。
 って言うか。
 いっつも遅くまで仕事してない?

加蓮「スパムバーガーと、レモネード、っと。はい」

P「ありがと。……なあ、加蓮」

加蓮「ん? なに?」

P「やっぱり家に帰った方がよくないか? 俺が送るし」

 えー。
 乙女に帰れって言うの? こんな時間に。

加蓮「もう家に電話しちゃったし。それに」

加蓮「わたしがPさんの仕事、手伝いたいって言ったんだもん」

 帰らないよ。だって。
 Pさんが心配だもん。


 このところPさんががんばってくれたおかげで。凛や奈緒と離れ、ソロの仕事も増えた。
 今日も、ソロでテレビの収録。押しまくって遅くなったけど。
 なんかね。ぴんと来たの。

 Pさんの力になれないかなあって。そう思って。

 なーんてね。ただのわがまま。
 なんだかんだ理由つけて、一緒にいたいだけ。

 気づくはず、ないよね。

加蓮「さ。冷めないうちに召し上がれ!」

P「お、おう。そうだな」

加蓮「早く届けたくて、走って戻ってきたんだから」

P「加蓮……あんまり無理、するなよ?」

 Pさん、ありがと。心配してくれるんだ。
 でも。
 あんまり、心配かけたくない、かな。


 来たばかりのころの、身体の弱いわたしじゃないって思ってるけど。
 相変わらず、Pさんは心配性。

加蓮「大丈夫大丈夫。もう昔のわたしじゃないもん」

P「そうは言ってもなあ」

加蓮「ねえ、食べよ食べよ。ほら」

 Pさんとわたし。ふたりがさがさと、包み紙を開けた。

 Pさんにスカウトされて今まで、二人三脚で歩んできた。
 体も弱くて根性なしだったわたしを、Pさんは。
 あきれもせず、怒りもせず。導いてくれた。

 暑苦しい熱血もないし、ただ優しいだけの甘やかしもない。
 でも、わたしのことを最初からサポートしてくれた。
 大人の、ひと。

 好きになっちゃったんだなあ。いつの間にか。
 決して、凛と彼女のプロデューサーのいい関係に影響されてとか、そういうことはない……って思う。
 うん。
 たぶん。


P「ん。いつものスパム味だな」

加蓮「スパム味って?」

P「ん? そうだなあ。ちょっと説明は難しいけど」

P「けっこうしょっぱいソーセージ、つか、ハムっつか」

加蓮「えー? わかんないよ、そんなんじゃ」

加蓮「じゃあ、さ。ほ・ら」

 わたしはPさんに向かって、口を開けて。

加蓮「あーん」

P「おい加蓮」

加蓮「あーん!」


 わたしはおなかがすいた雛鳥なの。Pさんがくれないと死んじゃうの。
 ほら。はやく。

P「仕方ないな、ほれ」

 Pさんが差し出すそれを、わたしはかじる。
 Pさんが口つけたところを。

加蓮「あむ!」

P「あ! おい」

加蓮「ん。んー……これもおいしいね」

 Pさんはちょっとあきれてる、けど。
 わたしは満足。


加蓮「じゃあ、お礼に。わたしのもどーぞ」

P「いや、まあ」

加蓮「いいから遠慮しないで?」

 自分でもとびっきりの笑顔じゃないかな、今。

加蓮「はい、あーん」

P「……」

加蓮「あーん」

P「……」

 Pさん、しぶといなあ。

加蓮「こ、こ!」

 わたしは、自分が口を付けたところを指さす。
 さあ。
 さあ。


 Pさんは観念して、わたしの指さしたとこをがぶり、と。

P「……ん。うまいな」

加蓮「でしょ?」

 Pさんのほころぶ顔を見るだけで、幸せな気持ちになれる。
 うれしい。

加蓮「なんか、オムレツのまろやかなのもいいよね」

P「そうだなあ。でも、あれだな」

加蓮「ん?」

P「加蓮はほんと、うまそうに食うよな」

加蓮「……そりゃ、好きだもん。ハンバーガー」

 ジャンクなものを、イレギュラーな時間に食べるなんて。
 ちょっと気持ちがいい。

 Pさんと一緒だから、もっといい。


P「デビュー前のころなんか、すぐねだってきたけどな」

加蓮「あはは。そんなこともあったね」

加蓮「でも、ちゃんと自分のからだのこと、考えてるから」

P「いいことだ。それだけプロらしくなったってことさ」

加蓮「でも、たまーに欲しくなるよね?」

P「いいんじゃないか? それに」

P「たまにありつけるから、うれしいもんさ」

P「しょっちゅう食ってたら、感慨も何もないさ。むしろむなしい」

加蓮「……説得力あるね。Pさん」

P「男の独り暮らしなんて、コンビニとファストフードで支えられてるようなもんさ」

P「いかんなーとは、思うけどなあ」

 なら。


加蓮「じゃあ」

 お約束のことを言ってみたり。

加蓮「わたしがPさんのご飯、作りに行ってあげる!」

P「ん? 加蓮が?」

 Pさんの目が、優しげに映る。

加蓮「うん」

P「……ありがとうな。でも、やめとけ」

加蓮「え? どうして?」

P「……わかるだろ?」

 わかるよ、Pさんの言う意味は。
 女子が、男の一人暮らしのとこに行くこと。

加蓮「わたしは、気にしないよ?」

 わかってて、言ってるんだけどな。
 だって、Pさんなら。

P「……とにかく、明日もあるから。仮眠室で寝ておけよ」

加蓮「あー、話そらしたー」

P「まあ、そのうちな。そのうち」

 右手をひらひらとさせて、Pさんが話を打ち切った。
 ざんねん。

 子どもと思われてるのかなあ。
 それとも、世間知らずとか。

 もぐもぐと。深夜の食事。


※ とりあえずここまで ※

では次回 ノシ

投下します

↓ ↓ ↓


P「ん。ごちそうさん。加蓮、ありがとな」

加蓮「ううん。わたしこそ付き合ってくれてありがと」

加蓮「あ、Pさん。お茶かなんか入れる?」

P「そうだなあ。コーヒーもらうか。もう少しがんばりたいから」

加蓮「インスタントでいい?」

P「いいぞー。ブラックで頼む」

加蓮「はーい」

 Pさんの机からマグカップを持って。
 給湯室の棚をごそごそ。うん、あった。
 わたしもなんか飲もうかな。

加蓮「あ、ハイビスカス」

 鮮やかな赤もいいかな。これにしよっと。


加蓮「Pさん、お待たせー。はい、これ」

 ことり。

P「さんきゅ」

 Pさんはパソコンに向かってる。かたかたとキーボードの音。

加蓮「Pさん、なにか手伝えることない?」

P「ん? ああ、この文書作って終わりだから、特にないな」

加蓮「そっか。ざんねん」

P「いや、加蓮が手伝ってくれるって言ってくれるのが、ありがたいさ。それだけでがんばれる」

加蓮「そう?」

P「ああ」

 ならよかった。
 Pさんは饒舌じゃない。でも欲しい気持ちを、くれる。
 ふふっ。

 わたしはPさんの隣に座る。

加蓮「ねえ。なに作ってるの?」


P「ん? これか?」

 わたしは画面をのぞきこむ。それは、企画書。

加蓮「わたしの、ソロライブ……」

 営業先のミニライブとかじゃなく、ホールでのペイライブ、って。
 しかもツアー。

加蓮「え? ちょっと」

P「そろそろいい頃合いだと思ってな」

加蓮「むりむり! わたしにはまだ無理だって!」

P「そうか?」

 Pさんはこともなげに言うけど。
 だってまだソロデビューして間もないし、曲だってひとつしかないよ?
 なのに、ツアーって。


P「勢いのあるうちに、さ。こういう企画を出さないとな」

加蓮「んー、でもさー」

P「まあ不安なのはわかる。持ち曲も少ない。経験もない」

加蓮「……うん」

 Pさんがわたしのために、って。
 わたしを一番に考えて、こうしていろんな仕事を企画してくれてる。
 わかってるけど、やっぱり不安。はじめてのことは。

 そういえば、初めてPさんにスカウトされた時もそうだった。
 うれしいけど、不安ばかりがつのって。
 ついつい、ネガティブなこと言っちゃって。


P「でもな。こういう企画はできたからすぐやる、ってもんじゃない」

P「企画を通しても準備に時間がかかるし。ヘタすれば1年後ってのもある」

加蓮「え? そうなんだ……」

P「今のこれも、ステージに加蓮が立つのは、半年先だ」

 半年先。
 Pさんはわたしの半年先、一年先……それ以上。
 そんなずっと先のことを考えてるんだ。

加蓮「ねえPさん」

P「ん?」

加蓮「わたしが今、こうしてソロデビューしたのも」

加蓮「前から、決まっていたことなの?」


P「そりゃそうさ。加蓮のようにユニットからはじめることはあっても」

P「俺たちは、ソロでアイドルさせるためにスカウトしてる」

 Pさんはわたしを見て。
 そして、ふわっと笑って。

P「プロデューサーとして当然じゃないか?」

 そっか。そうだよね。
 凛はソロからスタートしてる。
 奈緒も、わたしと同じタイミングでソロデビューした。
 みんなにそれぞれプロデューサーがついてるんだから、ソロで活動することが前提なんだよね。
 たぶん。

 凛や奈緒と一緒に過ごすことが気持ちよくて、それが当たり前のことのように感じて。
 そんな関係が続くもんだって。思ってた。

加蓮「ねえPさん」

加蓮「どうして、わたしだったの?」


※ とりあえずここまで ※

踏切の人ってなんじゃろ?と思ってぐぐったら、クッソワロタw

では次回 ノシ

生存報告

お待たせしてますが、膝に受けた副業が悪化しております
しばらくずっとお待ちください(←

生存報告

膝に受けた副業が悪化しております
しばらくずっとお待ちください(←

やっぱり書けてたかorz

早く書けってことですね。がんばります!

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