麻子「ふあぁ~……ここは……格納庫か?」
麻子「何故私はこんなところで寝てたんだ……?」
麻子「思い出せない…」
優花里「あれ? 猫?」
麻子「ん?」
優花里「危ないですよー。こんな所で寝てちゃ」
麻子「あ、ああ。だが私にも何で寝てたのかが……」
優花里「寝るならあっちの日向の方が気持ちいいですよ」
麻子「……は?」
優花里「あ、Ⅳ号の上はダメですよ。今から洗車するんで」
優花里「戦車を洗車ーなんちゃって」
優花里「それにしても、ウチの制服着ちゃって可愛いですね。細かいとこも良く出来てますよ」
麻子「すまない。言ってる意味が…」
優花里「飼い主さんに作って貰ったんですか?」
麻子(飼い主……? 私に言ってるんじゃないのか?)
優花里「よっと……今からⅣ号を外に出すんで、大きい音しますけどびっくりしないでくださいね」
グオン……
麻子(だが、私と優花里以外はなにも居ないぞ……どういうことだ?)
優花里「さて、後はブラシとバケツ……おお、微動だにしないとは中々肝が据わってますね」
麻子「優花里? さっきから何を言っているんだ?」
みほ「優花里さーん」
華「お待たせしました」
優花里「西住殿に五十鈴殿!」
みほ「ごめんね、遅れちゃって」
華「すみません」
優花里「いえいえ、私も今来たところですので」
みほ「Ⅳ号出しといてくれたんだ、ありがとう」ニコ
優花里「えへへ」
麻子「お、おい。聞いているのか?」
華「あら? 猫さんですか?」
みほ「ほんとだ」
麻子(猫……? なんで私を見て言うんだ)
優花里「そうなんですよ。私が来たときにはⅣ号の隣で寝てたんです」
優花里「戦車を動かした時に逃げちゃうかなって思ったんですけど、平気みたいで」
みほ「へぇ……エンジン音結構うるさいのに、慣れてるのかな?」
華「可愛いですわぁ」
麻子(猫って私のことなのか? 何の冗談だまったく……)
みほ「大洗の制服着てるけど、飼い主さんの手作りかな?」
華「すごいですねぇ。細かい所まで」
みほ「大丈夫、怖くないよぉ」ソ~
麻子「なっ……」
みほ「可愛いぃ//」ナデナデ
華「わ、私にも触らせてください」ナデナデ
麻子「い、一体何のつもりだ!?」
みほ「わっごめん、怒っちゃった?」
麻子「当たり前だ! 冗談にも程がある」
優花里「西住殿も五十鈴殿も、早く始めますよー」
みほ「あ、ごめんなさい。すぐ行くね」
華「私ブラシ取ってきます」
みほ「それじゃあ、水汲んでくる」
麻子「まだ話は終わってな――おいどこに……何で無視するんだ」
麻子「待て……みほ、こんな良くわからないこと……」
みほ「優花里さん、お待たせ」
麻子「は、華も、もし私がなにかしたんなら謝まるから――」
華「みほさん、これ使ってください」
みほ「ありがと」
麻子「優花里、な、何か言ってくれ……」
優花里「では、張り切っていきましょう!」
みほ華「おー!」
麻子「なんで……」
沙織「ごめ~ん! 遅れちゃった!」
麻子(私、知らぬ間にみんなを怒らせるようなことをしたのか?)
麻子(なら、すぐに謝って……でもなにをしたんだ…)
みほ「大丈夫だよ。いま始めたところだから」
沙織「ほんとごめんね。麻子のこと探してたんだけどいなくて……」
優花里「冷泉殿ですか?」
華「ここにはまだ来てませんね」
沙織「そう……どこ行っちゃったんだろ」
麻子(試合の時遅刻しそうになったからか……)
麻子(でもあれは聖グロリアーナとの練習試合のときだけだし)
麻子(何ヶ月も前の話だ……それ以外の練習や試合にはちゃんと出てる)
みほ「携帯には連絡した?」
沙織「それが、家に忘れてるみたいで」
優花里「困りましたね」
華「もう少しすればいらっしゃるのでは」
沙織「う~ん、そうだね。それじゃ、道具取ってくる」
麻子(おばぁが倒れた時には焦ってみんなに迷惑を掛けてしまったが……でも)
麻子(ぁああ! 分からない……何がいけないんだ)
みほ「そうだ、今格納庫に凄い可愛い猫ちゃんがいるんだよ」
沙織「猫?」
華「そうなんです。大洗の制服を着てちょこんと座って」
みほ「すっごい可愛いの」
優花里「こっちですよ」
麻子(みんな……沙織もいるのか……沙織なら)
沙織「え、麻子?」
麻子「っ!」ピク
みほ「麻子さん?」
華「見当たりませんが…」
麻子「……」シュン
沙織「え? だって目の――」
優花里「えへへ~」ナデナデ
沙織「えっ」
みほ「あ! 優花里さんずるい!」
優花里「実はさっきお二人が撫でてたとき、ちょっと羨ましかったんですよね」
華「可愛いですよねぇ」
麻子「沙織……?」
沙織「わっ」ビク
優花里「どうしたんですか?」
沙織「う、ううん、なんでもない」
麻子(沙織も……私を無視するのか)グス
亜美「あら、今週は戦車道お休みって言ってなかったかしら?」
麻子(っ! 教官なら、こんなこと絶対にしないはず)
優花里「教官、お疲れ様です」
亜美「せっかく優勝したんだから、少しくらい羽を伸ばさなきゃ」
みほ「そうなんですけど、何もないとかえって落ち着かなくて」
華「自習ということでしたから、洗車をしようと」
亜美「そう、あなた達らしいわね」
みほ「亜美さんはどうしてこちらに?」
亜美「まぁ、仕事で授業受け持ってるし、お休みでもとりあえず来なきゃいけないのよね」
亜美「そもそも、私の独断で自習にしたんだし」
優花里「い、いいんですか?」
亜美「All right! あんなに頑張ったんだから、誰も文句言わないわよ。結果も残したしね」
沙織「あ、あの!」
亜美「どうしたの? まあ、キュートな猫じゃない」
麻子「……」チーン
亜美「ここの制服着てるわね。なんかデジャヴな感じがするけど、気のせいかしら……?」
亜美「もしかして誰かの飼い猫?」
沙織「……」
沙織「じ、実は友だちの猫を預かってて」
麻子「沙織……いったい何を……」
みほ「そうだったの?」
沙織「うん……」
優花里「名前はなんていうんですか?」
沙織「名前!? え、えっと……まっ」
華「ま?」
沙織「ま……マリー?」
みほ「マリーちゃんっていうんだ?」
沙織「う、うん。あはは……」
麻子(そうか……沙織もそうやって私を虐めるのか)グス
亜美「可愛い名前ね。それじゃ、私は校舎に戻ってるから」
優花里「はい」
亜美「頑張ってねー」
みほ「じゃあ、作業に戻ろっか」
華「はい」
沙織「う、うん……」
麻子「さ、沙織、待って……聞こえてるんだろ?」
沙織「……」
麻子「沙織……」
優花里「西住殿、槊杖とって貰えますか?」
みほ「はい、どうぞ。う~ん、この汚れ落ちにくいなぁ」ゴシゴシ
華「一旦流しますね」ジャバ
沙織「今のうちに……」サッ
麻子「……っうぅ……」グス
沙織「麻子?」
麻子「沙織!? 沙織……沙織ぃ」ギュウ
沙織「ほらほら、泣かないの」ナデナデ
麻子「あうっ……だって…みんなが…」
沙織「うん、大丈夫だから。落ち着いて」ギュ
麻子「……」
沙織「落ち着いた?」
麻子「……」コクン
沙織「良かった」
沙織「でも、なんでこんなことになってるの??」
麻子「……やっぱり私がなにかしてしまったのか?」
沙織「それはないと思うけど」
沙織「というより、みんな本気で麻子のこと猫だって思い込んでるみたいだし」
麻子「……」
沙織「さすがに教官まで意地悪するとは思えないでしょ?」
麻子「それは、そうだが……」
麻子「記憶にないんだ……目が覚めたらⅣ号の隣にいて…」
沙織「麻子、ここで寝てたの?」
麻子「いや、いつもの所にいたと思うんだが……」
沙織「う~ん……って授業サボっちゃだめでしょ」
優花里「武部殿ー!」
沙織「っ!」ビク
優花里「ここにいたんですか。心配しましたよ、急にいなくなるんですから」
沙織「ご、ごめん。麻子……じゃなかった、マリーが心配で」
優花里「大丈夫ですよ。その子はしっかりしてそうですし」
沙織「うん……」
みほ「優花里さーん、沙織さんもこっち手伝ってくださーい!」
優花里「今行きます!」
沙織「ごめん、少し待っててね」ヒソヒソ
麻子「ああ…」
沙織「大丈夫、私が預かってるってことになってるから、ちょくちょく様子見に来るよ」
みほ「終わったー」
華「お疲れ様でした」
優花里「Ⅳ号中に戻しますね」
沙織「じゃ、じゃあ誘導するよ」
優花里「お願いします」
沙織「オーライ…オーライ……ストップ!」
優花里「エンジン止めてっと……」
優花里「これでお終いですね」
華「この後どうしましょうか?」
みほ「私、マリーちゃんと遊んでみたいな」
優花里「私もです!」
麻子「なに……」ビク
沙織「それは……」
華「いいですわねぇ」
麻子「おい、待て……」
みほ「可愛いー」ナデナデ
麻子「……//」
優花里「猫はのど元を撫でると喜ぶんですよね」ナデナデ
麻子「なっやめろ……くすぐったい」バッ
優花里「あぅ……」シュン
麻子「あっ…すまない……」
華「この子は好きじゃないみたいですね」
麻子「さ、沙織、何とかしてくれ」
沙織「え、えと……ごめんみんな。この子、触られるのあんまり好きじゃないみたいなの」
みほ「え、そうだったの? ごめんねマリーちゃん」
麻子「マリー……」
沙織「あはは……」
優花里「すみません」
華「でも、少し残念ですわ」
沙織「な、懐いた人だと大丈夫なんだけど、ごめんね」アハハ
みほ「仕方ないよ」
沙織「そ、それじゃあ、もう暗くなってきたし、私はもう帰るね」
華「沙織さん、もし宜しければ明日沙織さんの家に伺ってもいいですか?」
沙織「えっ」
みほ「私も行ってみたい」
優花里「というより、マリーちゃんと遊びたいんですよね」
みほ「えへへ」
沙織「ど、どうしよう麻子」
麻子「あんまり不自然だと怪しまれる」
沙織「だよね」
沙織「うん、大歓迎だよ!」
華「ありがとうございます!」
沙織「そ、それじゃ、また明日ね。行こ、ま…マリー」
麻子「あ、ああ」スッ
みほ「えっ?」
優花里「凄いです!」
華「まぁ、芸も出来るんですか?」
沙織「へ? っ! 麻子、立っちゃダメ」ヒソヒソ
麻子「え、あ、ああ」
麻子(四つん這いで進めということか)
麻子(確かに猫が立って歩いたりはしないが……)
麻子(恥ずかしいだろう、人として)
華「歩けたりもするんですか?」
沙織「い、いやぁそこまでは……あはは」
沙織「それじゃ!」
優花里「あ、その前に」
沙織「ま、まだおかしなとこあった!?」
優花里「え? いえ、ただ冷泉殿が来なかったので、武部殿に連絡来てないかと」
みほ「麻子さん、なにかあったのかな」
華「心配ですわ」
沙織「あ、そのこと…えっと、体調が優れないから家で休むってさっきメールが」
みほ「風邪かな…お見舞い行った方が」
沙織「ううん、たいしたことないから心配するなって」
優花里「そうですか、とにかく無事で良かったですよ」
華「早く良くなってくれればよいのですけど」
沙織「後で伝えとくね。みんな心配してるって」
沙織「じゃ、じゃあまたね!」
みほ「また明日」
沙織「はぁ……みんなにたくさん嘘ついちゃった」
麻子「すまない……私のせいだ」
沙織「ううん。それより良かったじゃん」
麻子「良かった?」
沙織「麻子のこと、誰も嫌ってなんかないよ。みんな心配してくれてた」
麻子「……ああ、そうだな」
沙織「今日は私の部屋に泊るってことでいいよね?」
麻子「出来ればそうしてほしい」
沙織「麻子ならいつでも泊めて上げるよ」
麻子「ありがとう、沙織」
沙織「いえいえ。行く先も決まったし、帰ろうっか」
・
・
・
麻子「待って! この体勢だときついんだ!」ゼエゼエ
麻子「沙織……もっとゆっくり歩いてくれ」
沙織「だ、大丈夫?」
麻子「四つん這いで歩くのは疲れる……進まない…だるい」
沙織「我慢して。猫が2本脚で歩いたら大変でしょ?」
麻子「それは、そうだが……っはぁ……」ヨタヨタ
麻子「こんなっ…人通りの多い場所で……恥ずかしい」
沙織「みんな麻子のこと気にしてないから、やっぱり私以外には猫に見えてるって」
麻子「それでも恥ずかしいんだ……はぁ…はぁ…」
沙織「頑張って、もう少しだから」
麻子「はぁ……っ…はぁ……はぁ」ヨロヨロ
沙織「ま、麻子、ほんとに大丈夫?」
麻子「…はぁ……もう、むり……水をくれ……喉が痛い」
沙織「待ってて、その自販機で買ってくる」
沙織「はい、お水」
麻子「すまない……」
沙織「あ、やっぱりダメ」サッ
麻子「え」ウルウル
沙織「じゃなくて、猫がペットボトル開けて水飲むって変でしょ」
麻子「そうだけど……」
沙織「ここ人多いし、騒がれたらまずいよ」
麻子「だがほんとに喉がからからんだ……沙織ぃ」ウルウル
沙織「だからさ」トポトポ
沙織「はい」
麻子「……何のつもりだ?」
沙織「え? 猫っぽいじゃん」
麻子「何でおまえの手から水を飲まなければっ…けほっ…」
沙織「ほら、無理しないで」
麻子「それに、恥ずかしいだろ……こんな//」
沙織「私だって恥ずかしいよ! だからさっさと飲む」
通行人「ね、見て見て、あの女子高生猫と話してる」
通行人「やだー可愛い」
沙織「うぅ///」
麻子「し、しかたない……」
麻子(ひ、人前でこんな恥ずかしいことを…)
麻子(沙織の手からなんて///……だがもう限界だ)
麻子「……」ドキドキ
沙織「////」
麻子「……」ペロ
沙織「ぁっ//」ピク
麻子「へ、変な声を出すな!」ドキドキ
沙織「ごめん、くすぐったくて」
麻子「まったく///」ピチャピチャ
沙織「あははは……くすぐったい」
麻子(くそ…上手く飲めない)ペロペロ
麻子「すまない……ほとんどこぼしてしまった」シュン
沙織「焦るからだよー。今の麻子は猫なんだから、自然に自然に」
麻子(私は猫…猫…ただの猫……)
沙織「ま、まだいっぱいあるから、ゆっくり飲んで?」トポトポ
麻子「ん…」ペロ
麻子「////」ピチャピチャ
麻子「……」ペロペロ
沙織「も、もういい?」
麻子「あ、ああ。ありがと///」
沙織「ど、どういたしまして//」
沙織「さ、あとちょっとだから頑張ろ」
麻子「…分かった」
沙織「着いたー!」
麻子「疲れた……」
沙織「お風呂沸かすからちょっと待ってね」
麻子「すまん」
沙織「ホントどうしたんだろうね、みんな」
麻子「沙織……町中の人間が私を猫だと認識してるだ」
麻子「わ、私に原因があるんじゃないか?」
沙織「原因って言われても……」
麻子「……」
沙織「まぁなんとかなるよ」
麻子「そんな適当な…」
ピーピー
沙織「あ、沸いたよ。麻子、一緒に入ろ」
麻子「あ、ああ……」
チャポン
沙織「久しぶりだねー2人で入るの」
麻子「そうだな」
沙織「麻子ってさ、髪綺麗だよね」
沙織「肌も白くて綺麗だし……」
沙織「私が男の子なら放っておかないのになぁ」
麻子「ど、どうしたいきなり」
沙織「え? なんとなく思っただけ」
麻子「そうか…」
麻子(人の気も知らないで…)
沙織「晩ご飯なにがいい?」
麻子「なんでもいい」
沙織「それが一番困るんだよね……」
麻子「なら肉じゃが」
沙織「さっすが、わかってるね麻子」
麻子「なにがだ?」
沙織「私の得意料理」
麻子「そりゃあな」
沙織「ではでは、腕によりを掛けて作っちゃうね」ジャバ
麻子「なら、私も出る」
沙織「パジャマ、私のでもいいよね」
麻子「ああ」
沙織「あぁ、あと歯ブラシも新しいのあるからそれ使って」
麻子「すまない、何から何まで」
沙織「麻子、今日は謝りすぎ」
沙織「これでも幼なじみなんだからもっと頼ってよね」
麻子「……ありがとう」
沙織「よっし、完成。麻子、お皿出してー」
麻子「分かった」
沙織「いただきまーす」
麻子「いただきます」
沙織「うん、美味しい」
麻子「自分で言うことか」
沙織「美味しくないの?」
麻子「う…お、美味しい…」
沙織「良かった」ニコ
麻子「……っ//」
沙織「どうしたの?」
麻子「い、いや、なんでもない。お替わりもらえるか」
沙織「え、麻子がそんなに食べるなんて珍しいね」
麻子「お、美味しいからな」
沙織「食べ過ぎてお腹壊さないでね」
麻子「ああ」
・
・
・
麻子「ごちそうさま」
沙織「お粗末様でした」
沙織「えへへ、私も料理上手になったでしょ?」
沙織「これでいつ彼氏が出来ても大丈夫だよね!」
麻子「出来ればな」
沙織「ひどーい! 絶対出来るもん!」
麻子「しかし、こうして優勝したのに、一向に出来る気配がないじゃないか」
沙織「それは……ここ女子校だし、出会いがないの! 出会いが!」
麻子「なら諦めろ」
沙織「ちょっとそれ酷い!」
麻子「そんなに彼氏が欲しいのか?」
沙織「だって2人でいちゃいちゃしたり、あーんてしたり憧れるじゃん!」
麻子「分からんな」
沙織「麻子が興味なさすぎなだけだよ」
麻子「事実興味がない」
沙織「はぁ……それでも女の子かっての」
麻子「女だが?」
沙織「はいはい……」
沙織「それじゃ、私は後片付けするから」
麻子「手伝おう」
沙織「お願い」
沙織「麻子ーお皿拭いて」
麻子「分かった」フキフキ
麻子「……」ウトウト
沙織「麻子?」
麻子「は……だ、大丈夫だ、寝てない」フキフキ
沙織「先に休んでていいよ。今日はいろいろありすぎて疲れたでしょ?」
麻子「だが……」
沙織「落として怪我でもしたら大変だから」
麻子「分かった。後は頼む」
沙織「すぐ戻るよ」
麻子「……待ってる」
麻子(眠い…疲れた……)ヘタ
麻子(だが……沙織を……)ウトウト
麻子(寝るなぁ……)ペチペチ
沙織「お待たせー」
麻子「……おかえり…」ウトウト
沙織「麻子……待っててくれたんだ」
麻子「ああ…」
沙織「ほら、おいで」
麻子「しかし、沙織のベッドだから……」
沙織「今更そんなこと気にする間でもないじゃん」
麻子「分かった……」ポフ
麻子(沙織と一緒に寝るのなんていつ振りだろうな…)
沙織「ほら、もっとこっちおいで」グイ
麻子「ん……お休み」
沙織「はいお休み」
麻子(沙織の匂い……落ち着く)
・
・
・
沙織「…んぅ……ふぁ…」
沙織「朝……」
麻子「すぅ……」Zzz
沙織「休みだし、起こさないであげよう」ソッ
沙織「さて、朝ご飯でも作りますか」
沙織「ごちそうさま」
麻子「ん……すぅ…」Zzz
沙織「しっかし、麻子ったら全然起きる気配がないなぁ……」
沙織「まぁ、休みだしいっか。さて、着替えて食器片付けよう」
沙織「そろそろ10時かあ」
沙織「……いい加減起こそうかな」
沙織「ほら、麻子起きて。朝だよ」ユサユサ
麻子「んー……」Zzz
沙織「起きなさい」バサ
麻子「んぁ……なんだ沙織……今日は休みだから…」
沙織「もう10時なるから」
麻子「もうちょっとだけ……」
沙織「だーめ。そのかき集めてる布団干したいから」
麻子「やー……」
沙織「やじゃない。それに、今干しておけば夜に気持ちよく寝られるよ」
麻子「……わかった。起きる」モソモソ
沙織「朝ご飯は?」
麻子「いい」
沙織「そう。なら顔洗って歯を磨いて、シャキッとする」
麻子「行ってくる」ポー
沙織「まったく、朝は私が居ないと何も出来ないんだから」
麻子「おはよう沙織」
沙織「おはよ。目、覚めた?」
麻子「ああ」
沙織「じゃあ着替えて……そうか、着替え持ってきてないもんね」
麻子「制服ならあるぞ」
沙織「シャツを洗濯して今乾かしてるとこ」
麻子「そうか…」
沙織「まぁそのままでもいいよね。別に誰か来るわけでも――」
麻子「昨日約束しただろ」
沙織「あ、そういえば」
ピンポーン
麻子「来たみたいだな」
沙織「だね。ちょっと待ってて」
沙織「はーい」
ガチャ
優花里「こんにちはー」
みほ「こんにちは、沙織さん」
華「こんにちは」
沙織「い、いらっしゃい」
沙織「ちょ、ちょっと待っててね」サッ
沙織「麻子! どうしよう……やっぱり断る?」
麻子「いや、もしかしたら戻ってるかも知れない」
麻子「確かめるには、どのみち沙織以外の誰かに会わないといけないから」
麻子「ダメだったらまた猫の振りでもしている」
沙織「分かった」
沙織「みんな、お待たせ。どうぞ上がって」
優花里「はい、お邪魔します」
みほ「お邪魔します」
華「お邪魔致します」
麻子「……」ドキドキ
沙織「……」ドキドキ
3人「可愛いぃ!」
麻子「……」ズーン
沙織「あはは……」
優花里「おいでー」
みほ「マリーちゃーん」
華「うふふ」
麻子「にゃ、にゃあ……」
沙織「ぷはっ! くくく……あははは」
みほ「ど、どうしたの沙織さん」
沙織「う、ううん、何でもない……くは」
麻子(みんなが帰ったら覚えておけ……)
優花里「触りたいですけど……引っ掻かれたりしないでしょうか」
沙織「それは大丈夫、その子引っ掻いたりはしないから」
華「でも、昨日触られるのは苦手と…」
沙織「大丈夫だよ。みんなにはもう慣れてるはず」ニヤニヤ
麻子「沙織!」
優花里「そうですか、なら……」
みほ「私も」
華「わ、私もいいでしょうか」ワクワク
麻子「ちょ、ちょっと落ち着いてくれ……」
優花里「あぁ~癒やされます」ナデナデ
麻子「おい……あんまり撫で回すな///」
華「可愛いです」ワシャワシャ
みほ「いいなぁ、私も猫飼いたい」ナデナデ
麻子「こらぁ!」グシグシ
優花里「そういえば武部殿」
沙織「なに?」
優花里「さっきから気になってたんですけど、なんでパジャマなんですか?」
沙織「え?」
麻子「え?」
みほ「それ、私も気になってた」
華「可愛いですけどねぇ」
優花里「さっきから可愛いしか言ってないですよ五十鈴殿」
華「本当のことですもの」
みほ「私、猫にとって服は邪魔なだけって聞いたことがあるなぁ」
優花里「あ、それ私もです」
華「私も」
麻子「沙織、まずい空気だぞ…・・」
沙織「そ、それはほら……この子の飼い主の趣味っていうか」
優花里「それなら、武部殿の所にいる間だけでも」
みほ「自由にさせてあげようよ」
華「お願い致しますわ!」
沙織「えっと、あの……」
麻子「私は脱がないからな」
沙織「だよねー……」
沙織「こ、この子は服着るの好きみたい……だし?」
優花里「そんなのは人間のエゴですよ!」
みほ「うんうん」
沙織「麻子ぉ~……」ウルウル
麻子「断る」
沙織「うぅ…」
沙織「……」グッ
沙織「え? なになに? 私はこのお洋服気に入ってるよ……だって」
優花里「え……」
みほ「……」
華「……」
麻子「……」
沙織「……///」カァ
沙織「ちょっと来て」グイ
麻子「うわっ…」ズルズル
沙織「わ、私、絶対に痛い子って思われたじゃん!」
麻子「なんというか……ご愁傷様」
沙織「脱いで」
麻子「な、なんでそうなる!」
沙織「さすがに痛い子キャラはやだ」
麻子「私だって、脱ぐのは……」
沙織「ならもう面倒見てあげない」
麻子「なっ……それは卑怯だ」
沙織「私だって今後の高校生活かかってるし」
麻子「うぐ…」
沙織「みんなといつもお風呂入ってるんだから、そんなに気にしなくても」
麻子「しかしだな……風呂と部屋とでは全然…」
沙織「それに猫にしか見えてないからさ」
沙織「ね?」
麻子「うぅ……分かった」ヌギヌギ
優花里「あ、武部殿! すみません無理強いして」
みほ「嫌なら別にそのままでも……」
沙織「ごめんごめん、さっきの冗談だって」テヘ
華「そ、そうだったんですか」
沙織「さすがに本気であの発言はしないって」
優花里「それでマリーちゃんは……」
麻子(この程度の恥……沙織に見放されるよりは……///)
みほ「脱がしたんだ」
沙織「う、うん…まぁ」
麻子(やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい)フルフル
麻子(裸で四つん這いなんて、人としてやってはいけないことだろ…)
沙織「……ごめんね麻子」ヒソヒソ
みほ「あ、あのね、マリーちゃんと遊ぼうと思っていろいろ玩具持ってきたんだ」
優花里「猫じゃらしとか、ボールとか」
沙織「そ、そうなんだ」
優花里「ほらほら~……」ワサワサ
麻子(猫としては何かしらしてやるべきなんだろうが……何かを失う気がする)
みほ「反応しないね、猫じゃらしに」
麻子(しかし怪しまれるのもな……)
華「もっと大きく振ってみたらどうですか?」
優花里「こうですか?」フリフリ
麻子(仕方ない……)チョン
優花里「おっ」
みほ「華さんすごい」
華「いえ、なんとなく言ってみただけなんですけど」
麻子(……)バシッシュバッ
麻子(……何が面白いんだ?)
みほ「可愛い…」ホワン
麻子(……飽きた)ピタ
みほ「あ…」シュン
華「次はボールですね」コロコロ
麻子(今度はなんだ……取ってくるあれか。まったく猫だと思って好き勝手……)クル
沙織「あっ///」
麻子(はっ!)ピタ
麻子(今……この格好で後ろを見せたら……あそこ…丸み…え////)カアァ
麻子「み、見るなぁ!!///」サッ
みほ「あれ?」
華「どうしたんでしょうか?」
優花里「さあ?」
麻子(くっ……動けない…////)
麻子(今更恥ずかしくなってきた…///)
優花里「具合でも悪いのかな?」ナデナデ
麻子「な…なにをする!」ビク
麻子(せ、背中を撫でるなぁ……///)
麻子「沙織、助けてくれ!」フルフル
沙織「……あれ」ドキドキ
みほ「優花里さん、私にもやらせて」
優花里「どうぞ」
みほ「あぅ~可愛いよぉ」ナデナデ
麻子「ま、待て!」
麻子(手を動かしたら見えてしまうし……2人に囲まれて逃げられない…)
沙織「……」
麻子(沙織も当てにならない……)
華「私にも撫でさせてください」
みほ「いいよ」
華「うふふ」スッ
麻子「えっ」コロン
麻子(ど、どうして私は仰向けに……)サーッ
麻子「ま、待て、華! それは本当にまずい」
華「どうですかぁ?」ナデナデ
沙織「……」ギリ
麻子「あっ……ちょっ…やめろ//」
優花里「犬じゃないんですからお腹は」
華「ダメでしょうか?」
みほ「ダメっていうか嫌がってるみたいだし」
華「あ……すみません」シュン
麻子「はぁ…はぁ…//」クター
優花里「そろそろお昼ですね」
みほ「みんなでどこか食べに行こうか」
華「いいですわね」
沙織「……」
みほ「沙織さん?」
沙織「えっ…あ、なに?」
華「一緒にお昼ご飯食べに行きませんか?」
沙織「そ、そうだな~」
麻子「……行ってくればいい」
沙織「わ、私は遠慮しとくよ。この子の面倒見なきゃいけないし」
麻子「沙織……」
優花里「そうですか……」
みほ「慣れないところに置いていくと可哀想だもんね」
華「それではこれを」ゴソゴソ
沙織「これは……」
麻子「……」
優花里「首輪です。昨日してなかったみたいなので」
みほ「お友達の猫って言ってたからどうかとは思ったけど」
華「つい、可愛くて」
沙織「あ、ありがとう」
優花里「では、私達はこれで」
みほ「お邪魔しました」
華「失礼致します」
沙織「うん、またねー」
麻子「……はぁ」ホッ
沙織「大丈夫?」
麻子「……とりあえずは」
沙織「麻子なんか汗かいてない?」
麻子「そ、そりゃあんなに撫で回されれば……」
沙織「だよねー……」
麻子「じゃあ私は服を着てくる」
沙織「待って!」
麻子「なんだ? その……これでも恥ずかしいんだが」
沙織「これどうしよう」
麻子「みんなには悪いが、その辺に置いておけ」
沙織「じゃなくて、その……付けてみない?」
麻子「……なに?」
沙織「あのね、麻子なら似合うかなって」
麻子「断る! 何で私がそんなこと……」
麻子「だいたい、首輪が似合ってたまるか」
沙織「そこをなんとか」
麻子「……理由を言え」
沙織「言ったらしてくれる?」
麻子「考えてやる」
沙織「……分かった」
沙織「わ、私…麻子のこと好きかも知れない」
麻子「えっ////」ドキ
沙織「ごめん、私変なこと言ってるよね……」
沙織「いつも彼氏彼氏言ってるのに……」
沙織「麻子のこと好きだなんて……」
麻子「っ……おかしくなんてない」
沙織「麻子……引かないの?」
麻子「引くわけないだろう」
麻子「だって、わ、私も沙織が好きだったから。ずっと前から……///」
沙織「麻子……麻子!」ダキ
麻子「お、おい///」
カチャカチャ
麻子「……」
沙織「やった」
麻子「……世の中には、していいことと悪いことがあるぞ」
麻子「外してくれ」
沙織「えー似合ってるのに」
麻子「嬉しくない」
沙織「せっかく両想いなのに?///」
麻子「……そっちは嬉しい//」
沙織「なら」
麻子「それとこれとは話が――」
麻子(いや……まてよ。これは沙織の遊びに付き合う体で甘えられる)
麻子(いつもなら恥ずかしくて出来るわけがないが)
麻子(今日の痴態を考えれば、これ以上なにを失うというのか……)
沙織「麻子?」
麻子「きょ、今日だけならこのままでいてやる///」プイ
沙織「麻子ぉ!」ギュウ
麻子「く、苦しいから……//」
沙織「あ、ごめん」パッ
麻子「ん」スリスリ
沙織「ま、まま麻子?///」ドキ
麻子「わ、私は猫なんだろ?」
沙織「もう、しょうがないなぁ」ナデナデ
麻子「……にゃん」ギュ
沙織「ふふっ…ごめん…やっぱそれは」プルプル
麻子「なっ…そ、そういえばさっきも笑ってくれたな!」
沙織「だって…麻子がにゃんって」プルプル
麻子「もういい! 服着てくる」
沙織「ああ待って! ごめんってもう笑わないから」
麻子「まったく……」ポフ
沙織「そう言っても寄りかかってはくるんだ」
麻子「うるさい///」
グウゥ~
麻子「あっ///」
沙織「あはは、そういえば麻子は朝も食べてなかったしね」
沙織「お昼にしよっか」スッ
麻子「あ……」ギュ
沙織「ちょっ……袖掴まない。どこにも行かないから」
沙織「急に甘えんぼさんになった?」
麻子「……」
麻子「……べつに」
沙織「一緒に作ろう」
麻子「服着てくる」
沙織「あ、待って」
麻子「……これは?」
沙織「首輪つき裸エプロン」
麻子「こ、ここんな格好……///」カァ
麻子「こ、ここんな格好……///」カァ
沙織「可愛いよ?」
麻子「うっ……こんなの、沙織の前でしかやらないからな///」
沙織「えっ//」
沙織「う、うん…ありがと///」カァ
麻子(一矢報いたり)
・
・
・
沙織「ご馳走さまー」
麻子「ご馳走様」
沙織「このあとどうする?」
麻子「私は沙織と居られれば」
沙織「な、なんか妙に素直だね///」
麻子「今までは自分の気持ちを隠してきたからな」
麻子「今日くらいは//」
沙織「私ね、謝らなきゃいけないことがあるんだ」
麻子「え…」
沙織「実は……さ」
沙織「さっき勢いで告白しちゃったけど、まだこの気持ちがなんなのか分からないの」
麻子「どういう……」
沙織「そのまま」
沙織「みんなが麻子を撫でてたときはすごく嫌だった」
沙織「麻子を好き勝手されるのがすごいむかついた……」
沙織「麻子に好きって言われたときすごい嬉しかった……」
麻子「……」
沙織「麻子、これって好きなのかな?」
麻子「私は……そうであってほしい」
沙織「そう、だよね……人の気持ちなんて分からないよね」
麻子「……すまない」
沙織「私、ずっと格好いい王子様みたいな人に告白されるのに憧れてたけど」
沙織「自分から誰かを好きになるなんて考えてなかった」
沙織「もし好きになっても、それは男の子なんだろうなって思ってた」
沙織「だから……正直、混乱してる」
麻子「私は好きだ」
沙織「麻子…」
麻子「沙織からどう思われようと、私は沙織が好きだ!」
沙織「……」
麻子「……」
沙織「っ……うん。今分かった」グス
麻子「沙織?」
沙織「私も、麻子が好きだよ」
麻子「……」
沙織「だって、麻子に好きって言われるの、泣いちゃうくらい嬉しいんだもん」ポロポロ
麻子「沙織……!」ギュウ
沙織「麻子……」ギュ
麻子「……くしゅんっ」
沙織「だ、大丈夫? 寒かった?」
麻子「さすがにそろそろきつい」フルフル
麻子「服着てくる」
沙織「あ、うん」
麻子「お待たせ」
沙織「首輪……外したんだ」
麻子「なにかまずかったか?」
沙織「ううん、似合ってたのになぁって」
麻子「それだけのために付けさせたのか」
沙織「ち、違う違う! まぁ、最初はそうだったけどさ」
沙織「なんていうか……自分の気持ちも分からないのに告白して、受け入れて貰って」
沙織「怖かったっていうか、空気壊して自分をごまかしたかった」
沙織「それに、首輪付けてる麻子は素直だったし、ずっと私に甘えてくれるのかなって」
麻子「…首輪なんてなくても私は甘えるぞ?」
沙織「え?」
麻子「なんかもう色々と吹っ切れた」
麻子「せ、せっかくその……恋人同士になれたんだ」ギュウ
沙織「うん」ギュ
麻子「沙織……」ペロ
沙織「ひゃっ////」ドキ
麻子「ん……」スンスン
沙織「そ、それは吹っ切れすぎじゃ…」
麻子「問題ない」スリスリ
麻子「猫設定は生きてるから」
沙織「むっ……」
沙織「なら首輪もして」
麻子「分かった。今日の私に羞恥心などもうない」
沙織「確かにあれだけすればねぇ……」
麻子「これでいいか?」
沙織「……服まで脱ぐ必要なかったのに」
麻子「猫だから」
沙織「麻子、もしかしてはまった?」
麻子「……うるさい//」
沙織「そっかぁ、麻子は猫さんだもんね」
沙織「おいでー」
麻子「にゃ、にゃあ//」ノソノソ
麻子「……」スリスリ
沙織「くっ……」プルプル
麻子「……」ガブッ
沙織「痛ったぁ! ごめん麻子、笑わないから! 手噛まないで!」
麻子「まったく……」ペロペロ
沙織「ごめんたっら」ナデナデ
麻子「ん」ペロペロ
沙織「だ、大丈夫、もう痛くないから///」
麻子「……」ペロペロ
沙織「……麻子、それ楽しい?」
麻子「別に、なんとなくつい」ペロペロ
沙織「そう、まぁ悪い気はしないけど」
・
・
・
沙織「かぶれた……」カリカリ
麻子「いや、その…すまん」
沙織「それはいいんだけどね……まさかこれで夜になるとは」
麻子「すまん……」
さるさん…
いけた
ゆっくり目に投下する
沙織「さて、は夕飯作るから、大人しく待っててねー」ナデナデ
麻子「沙織が居ないと寒い」
沙織「じゃあ布団にくるまってなさい」
麻子「分かった」
麻子「……」ポフ
麻子(沙織の匂いだ……)
麻子「はぁ…」
麻子(やっぱり落ち着くな)
麻子(……)
麻子(今、私裸で沙織のベッドにいるんだな…)ドキドキ
麻子(まずい、変な気持ちになってきた)
麻子(落ち着け……し、深呼吸だ)
麻子「すぅ……はぁ……」
麻子(沙織の匂いだ……)
麻子(そして逆効果だった……)
麻子(……)ドキドキ
麻子(ちょっとくらいなら……)
沙織「麻子ー。出来たよー」ペラ
麻子「ぬわっ! きゅ、急にめくるな!」バクバク
沙織「え? ごめん」
麻子「いや、私こそすまん」
沙織「まあいいや。ご飯出来たよ」
麻子「ありがと」
沙織「あ~ん…」
麻子「あ、あ~ん」パク
沙織「どう?」
麻子「美味しい」
沙織「次私ね、あ~ん」
麻子「あ~ん」
沙織「あむっ//」パク
沙織「うん、我ながら美味しい」
・
・
・
沙織「さて、食器も洗い終わったし、お風呂入ろっ」
麻子「わかった」
チャポン…
沙織「麻子、洗いっこしよ」
麻子「にゃあ」コクン
沙織「…突然思い出したように猫化するね」
沙織「夕飯の時は普通だったのに」
麻子「沙織は普通の方がいいのか?」
沙織「私? 私はどっちの麻子も可愛いと思うよ」
麻子「にゃ」
沙織「やっぱ気に入ってるんだ」
麻子「…なんのことだろうか」
沙織「ふふっまぁいいや。髪洗うよ」
麻子「ん//」
沙織「昨日も言った気がするけど、髪質いいよね」ワシャワシャ
麻子「そうか?」
沙織「そうだって」シャコシャコ
沙織「あ、これから他の人に髪触らせるの禁止ね」
麻子「……沙織って束縛するほうだったのか」
沙織「そ、束縛じゃないもん……ただ、なんというか私だけの宝物って感じ?」
麻子「世間じゃそれを束縛という」
沙織「え……私って面倒な女ってこと?」
麻子「どうしてそうなる」
沙織「だって、雑誌に束縛しすぎる彼女は面倒って……」
麻子「いや、髪なんて人にほいほいと触らせるものじゃないし、それくらいなら」
沙織「ほんと!?」
麻子「本当だ。そういうのはメールを強制したり、他人との付き合いに口を出したりする女だろう」
沙織「そっか、なら大丈夫だよ。私、麻子のこと信じてるから」
麻子「…///そうか///」
沙織「流すよー」ジャー
いいや桂利奈だね
麻子「次は私が洗う」
沙織「お願いします」
沙織「逆にさ、麻子は私にこうして欲しいとかある?」
麻子「そうだな……ずっと一緒に居て欲しい」ワシャワシャ
沙織「なっ///よくそんな恥ずかしいセリフを」
麻子「それから、朝はもう少し寝かせてくれ」
沙織「それはダメ。麻子のためなんだからね。それに、麻子ったらいつまでも寝ようとするじゃん」
麻子「うぅ……じゃあ猫の時は飼い主っぽく」ワシャワシャ
沙織「そ、それはそれでレベル高い…」
沙織「この短時間でよくそこまで極めたよ……」
麻子「流すぞ」ジャァァ
沙織「ふぅ~……」
麻子「やはり2人では狭いな」
沙織「いいじゃん。密着できるし」
麻子「……変態」
沙織「ま、麻子がそれを言うの!?」
麻子「……やっぱり変態か? 私…」」
沙織「まぁ……世間から見ればそうなるのかな」
麻子「沙織は嫌?」
沙織「全然」
麻子「にゃぁ~」ギュウ
沙織「はいはい」ナデナデ
麻子「ふにゃ」ペロペロ
沙織「人前でそういうことをしなければ……」
麻子「で、出来るわけないだろ! 沙織にだけだ!!」
沙織「ちょっと安心した」
麻子「ふんっ」ツン
沙織「ごめんって、すごく嬉しかった」
麻子「にゃあ」ニコ
沙織「ほ、ほら、もう上がるよ。のぼせちゃう//」
麻子「にゃ」
沙織「麻子、さすがにパジャマ着たほうがいいって」
麻子「問題ない」
沙織「湯冷めするから」
麻子「ならベッドにいる」ポフ
沙織「仕方ない、私も」ポフ
麻子「ん//」コシコシ
沙織「なんか今までの麻子じゃ考えられないね」ナデナデ
麻子「自分でもそう思う」スリスリ
沙織「ねぇ麻子」
麻子「ん?」
沙織「なにもしなくても、一緒にぼーっとしてるだけで幸せってあるんだね」
麻子「ほんとにな」
沙織「そろそろ寝ようか」
麻子「ああ」
沙織「結局、一日中その格好だったね」
麻子「そうなるな」
沙織「というより、寝るときくらいパジャマ着たら?」
麻子「いい」
沙織「飼い主命令」
麻子「猫は気まぐれ」
沙織「こらこら」
麻子「……」ギュッ
沙織「はぁ……寒くない?」
麻子「大丈夫」
沙織「そう、お休み」
麻子「……お休み」
沙織「……」ギュウ
わっふる?
沙織「麻子……」スッ
麻子「あっ…さ、沙織?///」
沙織「ま、麻子のせいだよ」サス
麻子「んっ……ちょ…待って…」
沙織「麻子がずっと裸なのが悪いの。ベッドでまで裸なんだから、そのつもりだったんでしょ?」
麻子「い、いや…その……別に私は///」
沙織「猫はこれでも舐めてなさい」ユビ
麻子「……ん」ペロ
麻子「ん……っ…ぁ…」
沙織「麻子だってこんなにしちゃってるじゃん」サス
麻子「んぁっ…う…んっ……」ペロペロ
沙織「すごい濡れてるよ? 麻子も意識してたんだよね?」クチュ
麻子「ぁあっ…だって、沙織の…匂いがぁ…っ」ピクン
沙織「匂いって…ホントに猫ちゃんになっちゃったの?」スリスリ
麻子「んぅ……ふっ…ん…」フルフル
沙織「声出しちゃってもいいよ」
麻子「はぅん…んっ……あ…」
沙織「なら一緒に、ね?」
麻子「はぁ……はぁ」コクン
沙織「えっと、こうかな……?」
麻子「わ、私だって初めてなんだ…///」
沙織「ふふっ麻子の初めてもらっちゃうね///」ピト
麻子「あ……//」
沙織「と、とりあず動いてみるよ?」クチュ
麻子「んっ……あ…っ…」
沙織「ど、どう…っんぁ……っ」ピクン
麻子「んっ……ふぁっ……いい、かも…」
沙織「じゃあ…続けるっ…ぁっ……よ?」
麻子「ぁあっ…んぅ…っ…んぁあっ」ビク
沙織「ひぁぅっ……ぁっああ……んっ」
麻子「沙織ぃ……私…っぁああ…んぁあっ…っ!」
沙織「私っ……私も…っ…いっ! あっぁああっ…んんんっぁっ!」ビクビク
麻子「あっくっ…ぁああっ……っ…っ! …っあ…ぁああんっ」ビクン
沙織「っはぁ……はぁ…」
麻子「はぁ……っ…はぁっ…」
沙織「これで、ほんとに恋人同士だね」
麻子「沙織……」ギュ
沙織「ほんと甘えんぼさんになっちゃって」ナデナデ
麻子「くぅ……すぅ……」Zzz
沙織「寝るの早っ……片付けは……いっか、明日で」
沙織「私も寝よう、お休み麻子」
ピンポーン
沙織「ん……誰だろ……こんな朝から…」
麻子「ふあぁ~……誰か来たのか?」ポー
沙織「みたい……んぅ…あれ、もう11時か……」
麻子「出ないのか~……」
沙織「今出る……」
麻子「服、着ていけよ…」
沙織「あ、ああ、そうだね」
沙織「これでよし……」
麻子「……やっぱり私も行く」
沙織「何? 玄関行くだけなのに寂しいの?」ニヤニヤ
麻子「そ、そんなことはない//」
沙織「いいけど、猫の振りね」
麻子「分かってる」スリスリ
沙織「歩きにくい……」
沙織「どちら様ですかー?」
みほ「あ、沙織さん? 西住みほです」
沙織「みぽりん? どうしたの?」ガチャ
みほ「それが、麻子さんと連絡がつかなくて」
みほ「優花里さんに見に行ってもらったんだ……けど…」
麻子「……」コシコシ
みほ「誰も出てこないみたいで……えっと…具合悪いって聞いてたから心配で…」
沙織「だ、大丈夫だよ」
みほ「う、うん。そうみたいだね……」
沙織「みたい?」
麻子「っ…」ギク
みほ「な、なんでもないよ!」
優花里「西住殿ー! やっぱり冷泉殿はいらっしゃらないみ…たい……でした」
みほ「そ、そんなことないんじゃないかなー」
優花里「えっ? あ、やっぱり具合悪いのに接客とか出来ませんしね。あはは…」
みほ「も、もう一回見てこようかー」
優花里「そうですねー」
みほ「そ、それじゃ、沙織さんまたね」ダッ
優花里「あっ! ずるいですよ! で、では」シュタッ
沙織「……変なみぽりんとゆかりん」
麻子「……」サーッ
沙織「ふぁ~眠い……麻子、今日はお昼くらいまでもう少し寝よう?」
麻子「いい」
沙織「え?」
麻子「絶対バレた」
沙織「やだもーバレてたら今頃大変だよ」
麻子「お前は寝ぼけて気づいてないだけだ!」
沙織「麻子に寝ぼけてるなんて言われるのは心外だなぁ」
麻子「完全に目が合った……絶対気づいてた」
沙織「考えすぎだって」
麻子「……沙織」
沙織「んー?」
麻子「もう私には沙織しかいない」ギュウ
沙織「あはは、そんな大げさな」
麻子「そういうわけだから一生よろしく」
沙織「だ、だからそういう恥ずかしいことをサラッと言わない///」
優花里「置いてくなんて酷いじゃないですか~」
みほ「ご、ごめんなさい、つい」
優花里「それにしてもお2人があんな関係だったとは」
みほ「首輪してたね///」
優花里「レベル高すぎますよぉ///」
みほ「優花里さんもしてみたい?」
優花里「わ、私はそんな……//」
みほ「ウッドランド柄で」
優花里「……//」
みほ「リード付き」
優花里「あうぅ///」
みほ「絶対可愛い!」
みほ「うん、早速買いに行こう!」グイ
優花里「ちょっ西住殿! 引っ張らないでくださいよ~」
華「あら? ペットグッズ店にお2人が……」
華「ふふっ」ニコ
おわり
保守してくれた人ありがとう
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