俺「アゲハチョウみたいな羽はやした優男にゴリマッチョ・・・
猫耳にクソダサいヘルメットしたチビ・・・」
俺「コスプレ?・・・痛々しすぎだろあいつら・・・」
ナレーション「高みにいるものだからこそ分かる圧倒的な"差"・・・
平地に住む者には山々は皆ただの高いものにしか映らぬように
山々の差は山に登ってこそ判る
念能力者として凡・・・いや凡にすら足らぬ俺が
王達の怪物性に気付けなかったのは無理もない結果であった」
同僚「なんかこっち来るな・・・」
俺「あーいいっすいいっす俺が対応します」
同僚「ほんと?悪いね」
ピトー「んにゃ?」
プフ「・・・王」
王「分かっておる・・・(一応)レア物だな」
プフ「はい。しかし・・・(しかしあれはあまりに・・・)」
ピトー「(雑魚いにゃ・・・(--;))」
俺「ちょっとちょって、あんた達」
俺「こっちね、今関係者以外がか・・・」
俺「・・・・・・?」
王「大分加減をしたのだがな・・・これでも反応が追い付かなかったか」
俺「う・・・ぐぼぁっ・・・」
ピトー「あーあーあっけにゃい」
プフ「・・・それだけのこと」
同僚「!!おいおい・・・」
ユピー「王、ほんとにこいつを食うんですかい?」
王「雑魚中の雑魚とは言え曲がりなりにもレア物だ、足しにはなろう。それに・・・」
ピトー「?」
王「不味いものに口寂しさを感ずる時もあろう」ニヤァ
プフ「(やれやれ・・・)」
ピトー「(お腹壊さなきゃいいけどにゃあ・・・(´ω`))」
王「首から下は貴様にくれてやる」ブチィ
俺「」
ユピー「はっ!有り難き幸せ・・・(いらねぇ・・・(´Д`))」
ピトー、プフ「((笑))」
王「ふむ・・・・・・思っていたよりはマシな味だな」
ピトー「なんと」
プフ「そういうこともあるだけのこと・・・」
ユピー「(あ、ほんとだ身体だけだがうめぇ・・・)」ガツガツ
王「正直虚を突かれた気分だ・・・分からぬものだな」
ピトー「見てくれも相当酷い人間だったのににゃー」
プフ「食はゲテモノほど美味いとも言いますからね」
同僚「・・・食いやがったよ・・・・・・」
王「・・・・・・さて」チラッ
同僚「・・・っ」ゾクッ
王「あれはどうだろうな」ニヤァ
同僚「おいおい冗談じゃねぇっ!」バッ
王「逃げる気か?果たして叶うかな、その願い」
同僚「使いきり高飛び券(フリー・パッセンジャー)!!」
バシュッ!!
王、護衛軍「!!」
キィィィィーン・・・
ユピー「・・・・・・どっか飛んで行きやがったぁ」
王「・・・ピトー」
ピトー「・・・残念ながら・・・」
プフ「驚きましたね・・・」
王「離脱系の能力か・・・・・・しかし速かったな」
プフ「恐らく・・・何かしら制約があるのかと・・・」
王「ふむ・・・やはり奥が深いな念能力は・・・」
キィィィィーン
同僚(空中)「あっぶねぇっ・・・暫く使うことの無かったこの力だが・・・
なけりゃ確実にやられてたぜ・・・・・・」
同僚「しかしなんだったんだありゃあ・・・化け物じゃねーか・・・」
キィィィィーン
同僚「・・・つか、なげえ・・・最後に"設定"したの何処だったっけか・・・・・・」
ナレーション「使いきり高飛び券(フリー・パッセンジャー)はその名と能力が示した通り即効性の離脱能力である
発動すると、予め設定した指定場所へ向け即座に"飛ぶ"ことが出来る
その能力発動速度は、いくら距離があったとはいえ
王等に阻止の機会を与えなかったことからも相当なものであることが窺える」
ナレーション「ただし当然ながら幾つかの制(誓)約が存在する」
―――某樹海奥地
ナレーション「歪な"瘤"を宿した大樹・・・その瘤が激しく成長し蠢く・・・」
・・・ズリュ・・・ボコボコボコ・・・グポォア・・・・・・
・・・・・・ドシャッ!
俺「・・・・・・・・・ふぅ・・・」
俺「いやぁー参ったね・・・・・・・・・久々の"更新"だったな・・・」
ナレーション「瘤より吐き出されたのは、先ほど王に食われた筈の俺っ!」
俺「暫く見ない内にまたでかくなったか?この樹・・・」
ナレーション「樹を一瞥の後、俺が取った行動はまず近くの小池にて身体を洗うことだった
瘤由来の付着物と出でた際に付着した泥を落とすためである」
俺「冷たい冷たい冷たい」
ナレーション「身体を洗った後、次に樹の側に置かれたダイヤル式金庫を回す」
ギイギイギイガチャ
ナレーション「中には衣類一式、靴、ある程度のお金が入っている」
俺「はぁ・・・さて、どうしたもんかね・・・こりゃ・・・」
俺「こっからかなり"離れて"たし俺自身フィジカルとかは全然高くないわけだが・・・」
俺「それでも攻撃食らって判るさっきの連中のただものじゃない感・・・」
俺「なんか尻尾みたいなのでぶっさされたしなぁ・・・・あれがもし、操作系でないとしたら生えてたってことだよな・・・」
俺「コスプレした痛い人間じゃなくマジモンの化けモンだった・・・のか・・・?」
俺「・・・取り敢えず下山して通報か・・・」
ナレーション「少し前、とある国のとある街のはずれ」
同僚「・・・・・・はぁ」ゲンナリ
同僚「こんなとこに設定してたか・・・・・・」
同僚「こりゃ次は当分使えないな・・・・・・」
同僚「っつっても普通に暮らしてりゃあ場所忘れるくらい、使う機会なんざねーわけだが・・・」
同僚「・・・いや、普通に生きてても今日みたいなこと起こったわけか・・・」
同僚「はぁぁぁ~~~何してようがこの世は予期せぬ危険で一杯だな!ほんとに!」
ナレーション「同僚は、取り敢えず酒場で飲むことにした」
ナレーション「下山した俺はすぐに最寄りの連絡手段にてその方面の機関に連絡を入れた」
ナレーション「最初は、こんな話を信じてくれるのか?という事や
通報場所と発生場所が全く異なる事など、あれこれ考えていたが
それらは完全に杞憂であった」
俺「まあそうだよな・・・白昼堂々あんな真似する連中なら・・・」
ナレーション「俺がするまでもなく、既に当局には凄まじい数の通報が寄せられていた」
俺「さて、これからどうしようか・・・なんか情報的に進行方向こっち臭いんだよなぁ・・・」
俺「キメラアントっつーらしいけど・・・あの樹海に拠を据えるとか・・・まぁないとは思うけど・・・」
俺「されるとやだからなぁ・・・」
俺「せめて方向だけでも変えてどっか行って貰わなきゃならん」
ナレーション「俺捕食後も残虐を繰り返しながら進む王一団」
王「つまらん」
プフ「レア物は先程の人間達以来ぱったりになりましたね」
ピトー「今や見えるは逃げ惑うハズレと道を遮るハズレのみ」
王「それすら先刻から勢いがない。まぁ、それについては目障りが減り問題などないのだがな」
ピトー「円で探るとレア物はみな遠方に位置するばかり」
王「明らかにレア物だけ我等を警戒しているな」
プフ「少し派手に動き過ぎましたかね・・・」
ピトー「捕らえられない距離では御座いませんが・・・」
王「よい。完全に失せないところを察するに何かしら考えを巡らせているのだろう」
王「小賢しい」
プフ「ならばここはいったん・・・」
王「構わん。レア物だろうと連中の抵抗力など高が知れている案ずるには及ばん」
プフ「しかし」
王「二度言わすな」
プフ「・・・はっ」
王「余興だ・・・全てはな」
ピトー「んにゃ?」ピクッ
プフ「どうしました?ピトー」
ピトー「ん~~~~~」
プフ「?」
王「どうした。申せ」
ピトー「はい・・・それがどうも妙なことが・・・」
王「だから何がだ。はっきりと言え」
ピトー「先程王がお召し上がりになられた人間と瓜二つのオーラが」
ピトー「こちらに近づいて参ります・・・」
王「なんだと?」
プフ「それは・・・勘違いではないのですか?」
ピトー「んんん~」
ユピー「他人のそら似ってこともあんじゃねーのか?」
ピトー「けどにゃ~」
王「どいつのだ」
ピトー「!」
王「その瓜二つとやらのオーラは、我が食したどのレア物と似通うておるのだ」
ピトー「はい、先程片方を念能力にて取り逃がした際の者でございます」
王「あれか・・・」
ユピー「なんだっけか」
プフ「覚えてないんですか?あなたが首から下を頂いたやつですよ」
ユピー「?どの下から頂いたやつだぁ?」
プフ「私が悪かったですごめんなさい」
ピトー「私が先行し様子を・・・」
王「よい」
王「そいつはこちらに向かって来ているのだろう?ならばこのまま進んでおれば自ず相対する」
王「それで答えも自ずと出よう。よいではないか・・・一つ楽しみが出来た」
ナレーション「両者の距離が詰まるほど、ピトーの中でこれが勘違いではないという気持ちが強まった
能力者としては下の下のオーラであったが、今にして思えば様態は特徴的ではあり
故にこれが他人のそら似では無いことを理解する
しかし、そうだとするならば一体どういうことなのか・・・ピトーの中で言い知れぬ不安が芽吹く」
王「あとどれくらいだ?」
ピトー「はい、このまま行けば、あと数分で視界に入ります」
王「そうか。いよいよ種明かしの時だな。何が出るやら」
ピトー「あの角を曲がってきます」
王「止まれ。ならばこちらはここに構えようぞ」
ナレーション「建築物の立地の都合、相手のルート選択
それらにより両者が視界に入るタイミングはギリギリにまで詰められた
王達は道の最中で曲がり来る相手を待つ」
ピトー「・・・来ます」
俺「うわぁ・・・まさに仁王立ち・・・」
ピトー、プフ「!!」
王「ほぅ・・・」
ピトー「(間違いない・・・オーラだけじゃなく・・・)」
プフ「(容姿も全く同一・・・差違は着衣くらいのもの・・・一体)」
王「面白いな・・・それが貴様の念能力と言うわけか」
プフ「王・・・」
王「要は複製、コピーと言うものであろう?我が食った"あれ"はいわば貴様のダミー」
ピトー「コピー・・・(確かに・・・)」
プフ「(それ以外説明がつかない・・・しかし・・・)」
ナレーション「二人が納得しかねた理由はピトーの念能力が根拠にある」
ナレーション「念は、死体を木偶人形にまで蘇生させるだけでも相当なエネルギーを要する
その上、可能な行動も予め設定する必要があり、複雑なものは困難
どうしても機械的になり、何よりも当然ながら"精気"の類いがない」
ピトー「(あの時のあの人間は確かに"ただの人間"だったはず・・・)」
プフ「(百歩譲ってコピーは可能だとしよう・・・
しかし術者が不在で果たしてあれだけ自然な振る舞わせが可能なのか?)」
ナレーション「"生"に関する念が如何に至難であるかを理解していた二人には
これが"ただのコピー"と言う結論にはあまりにも違和感があった
何よりそれを一個の人間が容易く成立させるということに」
王「さすがに纏っているオーラの量は先刻よりも上がっているな」
王「まぁそれでも雑魚の部類だがな。・・・それとも貴様もダミーか?」
ピトー「・・・」(円)
プフ「・・・(どうです?)」ヒソヒソ
ピトー「(感知出来る範囲に同一オーラはないにゃ・・・)」
王「・・・」
ナレーション「王は、ピトーの円発動が他にもコピーが潜んでいるのか
あるいは術者が潜んでいるのかを探ったものだと解釈した
そしてピトーが何も報告を寄せないことは、それらの類いが存在しないということなのだと判断した
結果はその通りだが、言うまでもなく王はピトーの動機をはかり切れていない」
俺「・・・・・・」
王「まあよい・・・仮にコピーだとして、それ一体で足りるのか?」ニヤリ
王「それとも貴様はオリジナルか?だとすれば戻ってきた・・・
いや、"表に出てきた"以上、何か策があるということなのだろうな」ニヤリ
ピトー「(王・・・)」
プフ「(余興好き故・・・相手の返答などハナから求めてない質疑)」
俺「・・・さっ」
一同「!」
俺「さっきみたいに尻尾で即刺してこないんだな・・・」
王「さっきみたく刺されたいのか貴様は?」
俺「いや、嫌だけどさ・・・刺せば普通に刺せるのになんでかなと」
プフ「(挑発?攻撃を促しているのか?)」
王「わざわざ再度出向いてきた貴様が何をするのか興味が湧いただけだ
つまらぬようなら即座に消すまでよ」
俺「なにもないよただ一つ聞きに来ただけ」
王「ほぅ・・・何をだ?」
俺「さっき俺を刺した後、俺の死体どうしたのかなって」
王「なんだそれは。あのダミーの末路が知りたくて態々出向いてきたと言うのか?」
俺「そうだよ。なんらかの処理がされたのは確かだから、あの後どうしたか知ってるかな、と」
プフ「(なんなんだこいつは・・・これが本心?嘘は言っていないようだが・・・)」
王「あれならば食ったわ。我と、そこのモントゥトゥユピーとでな」
王「まあ思っていたよりは悪くはなかったぞ?」ニヤリ
俺「げぇぇ・・・」
俺「本当に食べたのか?」
王「二度言わすな。第一嘘をつく必要がないわ」
俺「まあ・・・そうなんだけど・・・」
王「満足したか?」
俺「あぁ大満足だ来たかいがあった。可能性でしかなかったけど確認するもんだわ」
俺「死体を食っといてくれたこと」
プフ、ピトー「!?」
王「・・・何?」
ユピー「なんだぁ!?これはぁっ!?」
ズゾゾゾゾゾゾゾゾ
俺「陶血芋禍草(ブラッドラバー)」
ナレーション「突如、ユピーの全身から夥しい量の赤黒く奇怪なものが発生した」
プフ「なっ!?」
ナレーション「一同驚愕。が、間髪入れる間もなく更なる驚愕が襲う」
ズゾゾゾゾゾ
王「ぐっ・・・!」
護衛軍「王っっっ!!!?」
ユピー「くそっ!このっ!」ブチブチブチブチ
ナレーション「ユピーが、自身の身体に生じた異常をも省みず
我先にと王の身体から発生したそれをちぎり捨てにかかる、が」
ズゾゾゾゾゾ
ユピー「うぉぉ・・・っ!」
ナレーション「引きちぎっても引きちぎっても止めどなくそれは発生する」
ユピー「くそっ!くそっ!」ブチブチブチブチ
プフ、ピトー「王っ!」ブチブチブチブチ
王「なんだ・・・これは・・・」ブチブチブチブチ
ナレーション「片膝を地につけ自身の腕から生え続けるそれを引き千切る王
それを囲うように左右と後ろから王の全身に生え続けるそれを引き千切る護衛軍三名
事の重大さとは裏腹に、なんとも滑稽で無様な様子がそこにはあった」
ユピー「(千切っても千切ってもっ)」
プフ「(生えてくるっ)」
王「(発生が・・・止まらない・・・っ!)」
ナレーション「この奇怪な、胞子体に類似した物体の発生と同時に
間違いなくこの現象の原因である俺の速やかな排除を行わなかったのは
異常がユピーだけでなく王にも発生したためである
王の身の安全が最優先事項である護衛軍三名が
この異常事態に際し反射的に王に意識を集中したのは無理もない」
ナレーション「が、直ぐにプフが気づく」
プフ「貴様がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
俺「」
プフ「っ!」ピタッ
ナレーション「そして刹那の後、またある可能性も頭を過る」
プフ「あれは・・・なんだ・・・っ」
ナレーション「愚問中の愚問である
が、俺の首寸でにある自身の手を収めながらそう聞くのがプフの限界であった」
俺「言うわけないだろう」
プフ「・・・」
俺「ただ俺を殺さなかったのは正解だったね」
プフ「(やはり・・・だからこの余裕なのか・・・)」
ナレーション「俺のその一言はプフの抗いの気力を完全に失せさせた
術者への加害がアウトでは、ピトーによって吐かせる手段も恐らく不可
聞き出した時にはもう、王は事切れていたでは本末転倒どころではない
問題外である
何よりも俺の落ち着き加減が、プフに
これがハッタリである可能性がないことを痛感させた」
ユピー「ぐぉ・・・ぉぉ・・・」
ナレーション「自身の状態異常への対処を無視していたユピーについに限界が来る
今やユピーの外観は文字通り化物のような有り様であった」
王「ユピー」
ユピー「王・・・すみますん・・・」
ピトー「・・・っ」ブチブチブチブチブチブチブチブチ
王「もうよい・・・」
ピトー「しかしっ」
王「二度、言わすな」
ピトー「・・・・・・っ!」
ナレーション「怒りの微塵も窺えぬその諌めにピトーは言葉を失う」
ズゾゾゾゾゾ
ナレーション「ユピー同様、全身を胞子体で包まれる王
脱力し、遂に両膝を地についた」
王「ふ・・・ふはは・・・ははは!・・・・・・やるな・・・人間っ!
・・・軽んじておったわ・・・・・・念の奥深さ・・・・含めてなぁっ」
プフ「王・・・」
王「ふっ・・・(倒れるならば・・・せめて前のめりに)」
ドサッ・・・
プフ「・・・・・・・・・・・・・・・っ!」
ピトー「・・・・・・・・・・・・・・・っ!」
俺「」
プフ「王ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!」
ナレーション「王・・・及びユピー・・・・・・」
ナレーション「◎☆×街〇〇通り中央にて」
ナレーション「気絶」
しおしおしおしおしおしお・・・・・・
プフ「へ?」
ピトー「にゃ?」
ユピー「」
王「」
ピトー「生えてたものが・・・消えた・・・?」
プフ「いや・・・これは正しくは・・・枯れたと言うべきかと・・・」
俺「時間かかったなぁ・・・内蔵オーラどんだけだよマジで化物じゃんキメラアント・・・」
ピトー「王・・・生きてるにゃ・・・」
プフ「死ぬんじゃ・・・ないのですか・・・?」
俺「死ぬなんて言ってないよ俺」
プフ「しっ、しかし・・・っ!」
俺「俺に危害加えたらヤバくなるとは言ったけど加えなきゃどうなるかは言ってない」
プフ「」
俺「まあ死後の念の"転び方"は俺にだって分からんから、死なれたくなかったんならあんたの判断は結局正しいよ」
俺「殺す能力なら脳ミソから生やせば一発だろ?第一そんな楽々致死らせられやしないよ念は」
プフ「で・・・では、王は助かるのですね!?」
俺「俺のこの能力で死ぬことは無いよ。ただ、今のが"再発"する条件はいくつかある」
ナレーション「プフが王をピトーがユピーを担ぎ王の一行は俺と相対した街を離れた
俺から聞かされた条件を元に、適した土地を求め・・・」
俺「植物が豊富な場所、つまり植生豊かな土地や年中湿度の高い場所
特に後者
そのような土地で一定以上の念能力を発動すると俺の存在に関わらず再発すると思えばいい
今回と同様の現象が起こる」
ナレーション「彼らは求める・・・周囲が荒れた、比較的乾燥な地帯を・・・そのような国を」
ナレーション「そして彼等は後に行き着く・・・東ゴルトーへ
俺との遭遇の後、目を醒ました王がどのような心境であり
またその後どのように変遷したかは定かではない
個の命や価値をどのように見るに至ったか
至るにどれくらい要したか
自身に内包された念への枷をどうしたか
どのような者達と戦ったのか
定かでは無いが、程度の差こそあれおおよそは皆の知る通りであろう・・・
なぜならそれが彼等の運命だからである」
俺「上手いこと行ったぁ・・・なんとか樹海に向かわせず追っ払えたぜ」
ナレーション
死後の念はどう転ぶか分からない
これはまさに俺の実体験である
彼は人生に疲れ遥か以前にあの樹海で自殺している
自殺した場所があの大木の位置していた場所であった
自殺の後、気付けば彼はあの場所に全裸で寝転がっていた
何がどうしてこのような能力を得られるに至ったかは本人未だに理解していない
ただ能力の条件と制約らしきものは活動するうち自ずと見えて来た
幾つか挙げるならば
まず、この大木と自身の遺骨は重要らしかった
初の再生後、分けも分からず森をふらつき大木から一定離れると身体が重い
さらに離れると身体が灰のように粉砕四散した(みたいだった)
記憶は継がれていたので再復活した際にまたトライ
四散した
さすがになんとなく分かった
次に大木の根元の自身の頭蓋を引っこ抜いてみようとしたが
これはもうやろう手をかけ直ぐに直感がヤバイと告げた
では、なぜ彼が普通に市街地にいられたのか?という話になるが
結論から言えば大木由来の植物体を一定間隔で地道に植え拡げて行ったのである
大木が自身の活動範囲を決めるならば
その樹由来の樹が範囲拡張に繋がらないか?とある日思い至ったのだ
馬鹿げた推論も暇で仕方なかったので暇潰しには最適であった
結果この推論はドンピシャであった
つまり彼の今の行動範囲の広さはとんでもなく地道な植林活動の賜物なのである
無論、ギリギリの活動範囲において活動中に
その命綱である樹が死滅する何かが生じれば俺は灰になって空を舞うことになる
実際、苗木で横着な拡張を行った際にやらかした
ともかくそうして俺は活動範囲を拡げていった
しかし、単純にもとの大木から離れるだけでも復活体のスペックは落ちた
ある程度の近場でないと念能力も色々制限された
そして便宜上復活体という言葉を用いるが、厳密には"自殺した俺の復活体"とは言えないのである
何故ならオリジナルの生前の念能力は使えなかったからだ
また、復活体が丸丸再生体であるならば、死に場所如何ではそこにおいて再度
この死後の念が発動してもおかしくないと考えたからである
単に厳密に条件が揃っていないだけかもしれないが
長年色々試した結果今のところそのような事が無いことから
一応の結論として復活体は模造品留まり
大木は模造品工事でしかなく我は模造品だと俺は考えてる
言い忘れたが模造品が死ぬまで次の模造品は生成されない
俺を殺す(模造品の生成を潰す)方法は大元の大木の始末、あるいは遺骨の引き離しと粉砕である
いわばこの能力は大木と俺の遺骨が俺の念を糧に成した協同能力と言える
どちらかが欠ければ成立しなくなる
だから俺は樹海に害悪がもたらされる事を阻止する
そして今回それに役立ったのが陶血芋禍草である
陶血芋禍草は俺の模造品を食した動物において発動する寄生能力である
模造品に含まれる極微細胞子が発動と同時に発芽、宿主のオーラをエネルギーに血液を貪り爆発的な植生をみせる
細胞レベルのこの能力、ユピーならば寧ろ抵抗出来そうなものであるが実際は真逆であった
免疫に異物として認識されることがない仕様
発動するまではいわば絶に等しく個々が微細で気付きようがない
そして単純に、細胞レベルではユピーの変容力よりこの念能力の爆発力が勝った
その結果、変容性の良さは寧ろ能力の手助けになってしまったのだ
身体丸々食したのも大きかった(王は結局脳ミソしか食べなかったので)かもしれない
最初から知っていて警戒しながら捕食するのとでは訳が違ったのが敗因である
斯くして王が摂食を行ってくれたお陰で俺は幸運にも王等を退ける快挙をなせた
因みにプフに助言した条件の中には嘘がある
俺の目的を察すれば大体どれがそれに当たるかは分かるであろう
勿論言っていない再発条件や解除方法もあるのである
が、あの時のプフらにそれらまで引き出し求める優位性が無かったのは言うまでもない・・・
もし王が摂食していなかったら?その時はその時だと言うだけの話プフ
同僚「俺の身代わりと言っても過言ではない・・・今は亡き俺に・・・献杯っ!」カラン
最後に、飲んだくれてる同僚の能力であるが
まあ、高飛びの距離で次に使える日取りが変わったりとか
実際に行って踏みしめ滞在した場所でなきゃとか
同じ場所から半径~kmは無理とか
発動は野外でなきゃ不可とか
そんなありきたりな制約である
お粗末でした
完
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