男「みんな魔法が使える世界」(162)
タッタッタッタ……
男「やべえっ!! 遅刻する!」
男「そうだ! ここからなら、あの "魔法" で……!」
男「『ルーラ』!!」
"魔法"の呪文を唱えた瞬間、男の身体は一直線に青い空に吸い込まれていった。
男「よっしゃwww 最初からこうしてればよかったなww」
男は空を猛スピードで飛行していく。はるか下界には見慣れた景色が通過していった。
男「おっと、そろそろ学校か。着地しないとな……」
欠伸を噛みしめ、着地体制に入った男は、その瞬間――
――絶命した。
ニュースキャスター「――警察の発表によると、通学途中の少年は
遅刻しそうになり、移動呪文『ルーラ』を使ったところ、
高度25000フィートを航行中の飛行機に衝突したものと見られています。」
ニュースキャスター「少年は全身を強く打って死亡しました。
なお、衝突した飛行機は、衝突時大きな揺れがあったものの、
けが人等は出ておりません。」
父親「最近ルーラ事故が多いなぁ」
母親「そうねぇ……。あんたも、気を付けなさいよね。」
母親「っていっても、あんたはてんで魔法が使えないんだったわねww」
男「うるせー。少しは責任ってもんを感じやがれ!」
父親・母親「wwww」
男「ったくよー。そろそろ学校行くぜ」
母親「はーい、いってらっしゃい。ちゃんと "歩いて" いくのよ^^」
男「」
そう。俺は生まれてこの方、"魔法" というものを使ったことがない。
いや、表現が間違っていた。魔法が一切 "使えない" のだ。
そこらの幼稚園児だって、『ホイミ』の1つや2つは使えるのに、だ。
この体質のせいで、小学校ではいじめられ、中学校ではむしろ同情された。
同級生「うっわ、マジで……? 『ホイミ』すら……?」
どん引きしていた同級生の顔は、今でも忘れる事ができない。
通学路をとぼとぼと歩く俺の後ろから、いつもの底抜けに明るい声が聞こえてきた。
友人「よーっす! なんだよ男。朝からテンション低いなー」
男「うっせ。朝からテンション高いやつなんていないだろ」
友人「いやー、俺ぐらいのレベルになると『ザメハ』で目覚め爽快なんだなー」
こいつは "使える" 側の人間だ。しかし、"使えない" 側の人間である俺にも
分け隔て無く接してくれる。性格が良いため交友関係も広く、そのおかげで
今のクラスでは俺も比較的浮くことなく馴染めていた。
友人「そういえば、今日はバレンタインだよな」
男「どうせ俺にチョコをくれる女子なんかいねーしな……」
友人「わかんねーだろ? 義理チョコぐらいはもらえるって」
友人は理解していない。
魔法が使えない男は、そもそも恋愛対象にすらならない。最初から眼中にないのだ。
この世界では魔法が全てだから。
魔法が上手ければ女にモテる。魔法が上手ければ高収入の職業に就ける。
魔法が上手ければ人生勝ち組。そして俺は完全なる負け組だった。
キーンコーンカーンコーン
女「おっはよ、友人君! ……男君。」
友人「おはよー。一時限目なんだっけ?」
女「現国だよ。宿題やってきた?」
友人「げっ! そういえばあったな! やっべ、プリントどこやったっけ……」
女「くすくすwww あ、私はやって――」
男「俺やってきたぜ。見るか?」
友人「おお! マジか! 持つべき物は親友だよなぁ!」
女「……よかったね^^」
友人「よっしゃ、じゃあ……『ピオラ』ッ!」
『ピオラ』で加速した友人の手は、瞬く間に俺のプリントの回答を写し終えた。
友人「オッケー サンキューナ!! ソレニシテモ ヤッパリ ピオラ ツカウト アトガコマルナ」
『ピオラ』の効果は1分間続く。その間、友人は早口でしゃべり続けた。
ちょうど動画を早送りしているような変な声なので、傍から聞いてると笑える。
チャイムが鳴り、担任の教師が教壇に立った。
担任「朝のニュースで見たと思うが、最近『ルーラ』を使った事故が多発している」
担任「改めて言うまでも無いと思うが、『ルーラ』での登下校は禁止だからな」
担任「っつーか、お前ら若いんだから、歩け! 走れ!」
頭髪の寂しくなってきた年代の担任は、そう言うとちらりと俺に視線を送り、
担任「男を見ろ。こいつは魔法が使えないが必死に生きてるだろ。
お前らも男を見習ってだな――」
クラスメイト「せんせー 男君に対するマジハラ(マジック・ハラスメント)でーすw」
担任「くっ! あー ゴホン。」
担任「それとだな、最近、この近所でモンスターがたびたび目撃されている。」
野次を飛ばしていたクラスメイトたちが、しんと静まりかえった。
担任「どうやら、ドラゴン属のようだが、幸いおとなしいモンスターのようだ。
今のところ、目撃した人たちは特に危害を加えられたという事はない。」
モンスターは存在する。存在はするが、普通は人間の住む人里には現れない。
山奥や、洞窟など、自然が濃い場所に生息する習性があるからだ。
とはいえ、モンスターパークなどで、実際のモンスターを見る事もできる。
人なつっこい小型モンスターをペットにする人もいる。
しかし、基本的には人間に危害を加える存在だ。
魔法があるとはいえ、力も強く、凶暴なモンスターは十分に脅威だった。
ましてや、魔法の使えない俺にとっては、何をか言わんやだ。
担任「登下校の時は、『トヘロス』を使える者は唱えておくように。
あとは、なるべく一人で行動するのはやめて、集団で行動するんだぞ」
担任はやはり俺を見てそう言った。
授業は、いつも通り退屈なものだった。
現国の教師が『インパス』を唱えて
友人が必死に写したプリントを赤色に光らせた時は笑ったが。
友人「すみませんっした!!」
教師「次やったら、『ぱふぱふ』な。」
友人「ぎゃああああああああ」
ちなみに教師は筋骨隆々のあらくれ者である。
昼休みに、便所に行って戻ってきたところ
女「友人君……、あのね、はいコレ!」
友人「おおっ! チョコ! くれんの? オレに? よっしゃあ!」
女「義理だよ~~www」
気合いの入ったラッピングをされたチョコを受け取った友人は
無邪気にハシャいでいた。
俺はいたたまれなくなって、その場を離れた。
『メガンテ』を唱えたい気分だった。
下校は、友人と女と一緒になった。
友人が俺に「一緒に帰ろうぜ」と声を掛けてきたのだ。
もしかしたら、朝、担任が言っていたことを気に掛けているかもしれない。
女は、友人と二人で帰りたそうにしていたが。
友人「でさー、親父の書斎に『アバカム』で忍び込んだら何があったと思う?」
友人「『エッチなほん』と『ガーターベルト』が引き出しに入っててよー」
女「www」
俺は会話には入らずに、ニヤニヤと笑いながら二人の後ろを追いかける。
近道である人通りの少ない路地裏を通りかかったところだった。
友人「親父を問い詰めたらよ――」
なぜか、辺りに "霧" がでてきたのだ。
友人「親父ガクガク震えちゃってさ――」
どうやら、二人は話に夢中でまだ気づいていないようだった。
ちょい離席
友人「で、親父が赤い洗面器をおもむろに――」
男「おい、なんかおかしくないか?」
友人「あ、なんだよ? いいところだったのに」
男「なんか霧がでてるんだけど」
女「ほんとだ」 友人「なんじゃこりゃあああ」
三人で辺りを見回してみるが、徐々に霧は濃くなっていき
あっという間に、お互いの姿すら見えなくなってしまった。
友人「おい! 女ちゃん、男、いるか?」
男「ああ! でも何にも見えないな」
女「うー、真っ白で怖いよー……」
二人がいた位置を手探りで探してみるが、空を切るばかりだった。
友人「ひょっとして、これ『マヌーサ』かもな」
男「ひょっとしなくてもそうだろ。こんな都会のど真ん中で、いきなり濃霧が出てたまるか」
その時である。耳を裂くような "悲鳴" が聞こえてきたのだ。
女「キャアアアアアアア!!!」
友人「!? お、おい! 女! 大丈夫か!?」
悲鳴が止んだと思ったら、今度はうってかわって野太い "うなり声" が聞こえてきた。
??「グルルルル……」
男「なんだ、このうなり声……?」
友人「……モンスターだ。」
モンスターが『マヌーサ』を使った。恐らく、女はモンスターの餌食となった。
突如、襲いかかってきた非現実にパニックになる俺。
しかし、友人は冷静だった。
友人「とりあえず、『スクルト』ォ!! んでもって『ピオリム』!」
姿の見えない友人は、グループ範囲の補助呪文を唱えた。
俺の身体がカチコチに固くなり、周りの時間の流れが遅くなる。
しかし、相変わらず視界は0の状況で、魔法も使えない俺は己の無力を呪うばかりだ。
友人「気を付けろ! いつ襲いかかってくるかわかんねーぞ!」
男「ああ、わかってるよ! でも、どうすりゃいいんだ……!」
うなり声は相変わらず聞こえているが、なぜか襲ってくる気配はない。
ジリジリと時間が経つと、徐々に霧が晴れていく。
そこには、黄金に輝くウロコを持つドラゴンの姿があった。
そのすぐ近くに友人の姿を見つける。
友人はドラゴンの姿を見てもひるまず、そちらから目を離さずに叫んだ。
友人「男!! お前は逃げて助けを呼べ! 俺が魔法で時間を稼ぐ!」
俺は、
俺は、
震える足を必死に動かして、言われた通り、逆方向に逃げだした。
最低な俺。
でも魔法が使えないんだから、仕方ないじゃないか。
し か し、 ま わ り こ ま れ て し ま っ た。
ドラゴンは巨体に似合わない俊敏な動きと、大きな翼で空を飛び、
逃げようとした俺の目の前に立ちはだかった。
俺は、目の前が真っ暗になる。
男「ちく・・・しょう・・・」
ドラゴンは鋭い牙を剥きだしにして、俺にかぶりつく。
走馬燈が走る。
中学生時代の同級生のどん引き顔。
小学生時代に「MP0」とあだ名をつけられ、いじめられた記憶。
幼稚園時代に「俺、大きくなったら魔法使いになるんだ!」と
『ホイミ』すら使えないくせに、粋がっていた事。
赤ちゃんの時の両親の顔。
そして、前世……。
前世!?
俺には、なぜか前世の記憶があった。
幼稚園の頃には、はっきりと覚えていたのに。
成長するにつれて、忘れていた。
こことは "違う世界" で、俺は魔法使いだったのだ。
そう、俺は『黒魔法』使い――
男「『ファイガ』ァァァァァァァァ!!!!!」
ドラゴンが俺の頭を一噛みしようとした瞬間
俺はありったけの大声で、呪文を唱えた。
そして、巨大な火球がドラゴンの頭上に現れ、その巨軀を押しつぶす。
あとは一方的だった。
俺は『バーサク』が掛かったように、MPが切れるまで"黒魔法"を唱え続けた。
友人は、俺が魔法を使っている様を呆然と見ているだけだった。
ドラゴンは、プスプスと音を立てて動かなくなる。
男「ハァ…… ハァ……」
友人「お、おい。大丈夫か?」
男「ああ……なんとか……」
俺がそう応えると、友人は少し安心したかのようにため息をつき、
あらためてドラゴンの巨体に目を向ける。
友人「それにしても驚いたぜ……。お前、魔法使えたんだな。」
男「自分でも驚いてるぜ。でも、どうも、皆が使ってる魔法と違うみたいだ。」
友人「だなぁ。『ファイガ』とか『ブリザガ』とか聞いた事ねーな。」
そこで、友人はハッと息を呑んだ。
友人「そうだ! 女ちゃんは!? 女ちゃんはどこだ!?」
そう言われて、俺も辺りを見回すが、女の姿は無い。
友人「くそっ……! やっぱり、このドラゴンの胃の中なのか……!」
すると、そのドラゴンが光を放ち、徐々に形を変えていく。
大きい身体がみるみるしぼんでいき、
そこには、倒れている女の姿があった。
友人「!? ……そうか! 『ドラゴラム』か!」
慌てて女に駆け寄る俺たち。女を揺さぶって起こそうとする。
へんじがない、ただのしかばねのようだ。
友人「ちっくしょお!! 俺は『ザオラル』や『ザオリク』は使えねーんだぞ!!」
俺も、思い出したのは "黒魔法"。人を生き返らせる術は持たない。
このままでは、殺人者になってしまう。正当防衛といっても過剰すぎる。
なにより、女の笑顔が見られなくなるのは悲しかった。
騒ぎを聞きつけた近隣住人や、野次馬が駆けつける。
しかし、誰も『ザオラル』や『ザオリク』は使えない。
これらの蘇生魔法は、倫理的な理由で、習得には国家資格が必要なのだ。
俺は、魔法が使えるようになったのに。相変わらず無力なままだった。
友人「何かないか何かないか……!!」
そして、友人は、"ある呪文" の存在を思い出す。
それは、けっして唱えてはならないとされている、禁忌の呪文。
人を生き返らせる事もあれば、自分が死ぬ事もある。
唱えてしまえば、何が起こるかわからない――
友人「 『パ ル プ ン テ』 」
.
..
...
あれから、数日がたった。
結果から言ってしまうと、友人の『パルプンテ』は
> しかし、MPがたりない!
で不発、というオチだった。
それにしても、この世界の蘇生呪文は強力すぎる。
死んでから数時間が経った後でも、原型さえ留めていれば、簡単に蘇ってしまうのだから――。
女は無事に蘇生され、経過観察のため入院する事になった。
パニックになって焦った俺たちが馬鹿みたいだった。
女「本当にごめんなさい……」
女「でもね、男君も悪いんだよ? 私が友人君を好きな事、気づいてたでしょ?」
女「それなのに、邪魔ばっかりして……」
そう。今回のドラゴン騒動は、すべて女の仕業だった。
こっそりと『マヌーサ』を唱え、自作自演で悲鳴をあげ、『ドラゴラム』で変身。
なんとも間抜けな事に、『マヌーサ』の対象である「グループ」には
自分自身も含まれていたため、霧に紛れて襲うつもりが、自分も何も見えなくなっていた。
霧が晴れた後、近くにいた友人を狙わず、俺の前に回り込んだのも当たり前である。
はじめからターゲットは俺一人だったのだから。
女「ほんのちょっと怖がらせるつもりだったの……」
近所で目撃されていたドラゴンというのも
女が『ドラゴラム』の練習中に目撃されていた、というオチだった。
友人は、この女の言い草に完全に呆れ果てていた。
友人「はぁー。女があんなやつだったなんて、思わなかったぜ……。」
男「まあ、そう言ってやるなよ。ほらよく言うだろ……
『ブライン』
恋は盲目 てさ。」
友人「ドヤ顔やめろwwww」
俺はと言えば、魔法が使えるようになったのに、相変わらずだった。
そもそも、既存の魔法とは魔法体系が全く異なるため
現在の「魔法の使用等に関する法律」(通称「魔法法」)では
一切認められていない、非公式な魔法なのだ。
もし、公衆の空間でみだりに使用した場合は
懲役5年以下、もしくは50万円以下の罰金である。
(今回の一件では緊急避難とやらで見逃してもらえた)
その上、俺が使えるのは "黒魔法"、つまり攻撃魔法だけである。
最下級の『ファイア』ですら、ガスバーナー並の威力があるのだ。
日常的に使うにはオーバースペックすぎて、ほとんど役に立たない。
結局、俺が魔法が "使えない" 事に変わりはない。
チョコは0個だった。
世の中うまくいかないものである。
~完~
DQ7やってたら思いついたので書いた。
SS初めてだったんだけど、分量少なかったかな?
うーん、じゃあアドリブで書き足すかな。遅筆だけど。
あれから、数週間が経ち、俺たちは1つ学年が上がった。
俺は相変わらず魔法が使えないものの、友人が武勇伝をクラスのみんなに広げたおかげで
「怒らせると怖いやつ」の称号をもらい、順風満帆な日々を送っていた。
女は、あの事件で警察の事情聴取を受けた。
俺たちが被害届を出さなかったので、逮捕は見送られた。
女「ありがとね! 友人君! それから俺君も」
友人「これにこりたら、もう『ドラゴラム』なんか使うんじゃねーぞ」
女「うふふww」
やっぱり、被害届を出すべきだったかもしれない。
そんなある日、クラスに転校生がやってくる事になった。
担任「みんなー 席に着けー」
担任「この度、家庭の事情でこの学校に転校してくる事になった、転校生君だ。
みんな、仲良くしてやれよ」
転校生「転校生です。みなさんよろしくお願いします。」
スラリとした長身でイケメンの彼は、あっという間にクラスのみんなから質問攻めにあった。
同級生「転校生君は、どんな魔法が使えるの?」
転校生「あはは、えっと、得意なのは回復系かな。『ベホマ』とか使えるよ」
同級生「すげえええええ」
『ベホマ』は回復系の中でもかなりの高等魔法で、
『ベホイミ』がやっとの俺たちにとっては、上級生以上の尊敬を集める。
友人「すげーな。『ベホマ』だってよ」
男「お前だって、色々魔法使えるじゃねーか。俺なんてなぁ……」
友人「あーうっせうっせ。『ファイガ』やら『ブリザガ』やら使うやつのセリフじゃねーぞそれ」
男「……」
転校生は、その後もイケメンっぷりを大いに発揮した。
魔法の授業では、まだクラスの誰も使えない『フバーハ』にも成功し、耳目を集めていた。
あれだけ友人を好きだった女も、あっさりと転校生に惚れ込み、空き時間をみては転校生を追いかけるようになった。
出る杭は打たれる。
世の常である。
注目を集めすぎた転校生は、上級生に目を付けられた。
魔法のあるこの世界では、一年の差というのはとても大きい。
魔法の授業で、使える魔法の数にそもそも違いがあるし、
歳をとるにつれ、MPも増えていくからである。
俺の祖母は、『ニフラム』を使う霊媒師として活躍していたが、
「『ニフラム』100回はいける」とは祖母の弁である。
ある日の休み時間、転校生は上級生から呼び出された。
いわゆる「体育館裏に来い」である。
たまたま、呼び出されている場面に遭遇した俺と友人は
こっそり、彼らのあとをつける事にした。
いくら、イケメンだからといって、同級生である。
いじめられるのを黙って見過ごすのは、やはり気分が重かった。
俺が小学校の頃、いじめられていたせいかもしれない。
もし暴力沙汰に発展しそうなら、先生を呼ぶ事にして、
俺たちは事の成り行きを見守った。
体育館裏には、上級生数人が集まっていた。
上級生「どうして呼ばれたか、わかってんだろーな?」
転校生「えーと……、あいにく、さっぱりなんですが……」
上級生「調子にのってんじゃねーぞ? あ? しばくぞ?」
時代を感じさせる脅し文句に、俺は吹き出しそうになったが、なんとかこらえた。
しかし、転校生は無表情のまま続けた。
転校生「調子になんかのってませんよ」
もはや一触即発。上級生たちが転校生を取り囲む。
その時、俺のそばで同じく様子を伺っていた友人が、小声で呪文を唱える。
友人「『レムオル』」
すると、友人の姿が、徐々に透けていき、ついに透明となって見えなくなった。
そして、走る足音が聞こえたと思った次の瞬間、上級生の一人が後ろに倒れる。
転校生もさすがに少し表情を崩し、驚いた顔をした。
さらに一人、また一人と、上級生たちが後ろに倒れていく。
しかし、それでおとなしくしている上級生たちではなかった。
リーダー格と思われる上級生は、倒されるとすぐに立ち上がり
リーダー格「『イオラ』ァァァァ!!」
と唱えたのだ。
爆音。
あたりに土煙が立ちこめた。どうやら、俺は爆発にまきこまれなかったらしい。
徐々に視界が晴れていくと、
そこには、相変わらず立ち続ける転校生の姿と
気絶した上級生たちがいた。
そう、『イオラ』は全体にむけた爆発呪文。
対象があまりに近かったため、唱えたリーダー格自身や、取り巻きの上級生たちも
爆発に巻き込まれていたのだ。
自爆である。
しかし、転校生は無傷だったようだ。
制服についた土埃を手で払うと、気絶した上級生たちを一瞥し、
その後、周りを見回した。
そして、同じく "土埃にまみれた" 友人に気がつく。
いくら透明になっても、自分についた土埃までは透明にならない。
転校生「『レムオル』とは面白い呪文を使えるね」
友人「!! ……ああ、わりい。危ねーと思って手助けに入ったんだが、余計だったか?」
転校生「そんなことないよ。ありがとう。」
転校生はニッコリとほほえむ。俺は男なのに惚れてしまいそうなキレイな笑顔だ。
友人「おーい、男も出てこいよ。 いるんだろ?」
友人に呼ばれて、俺も物陰から姿を現す。
男「大丈夫か? 結構な爆発だったけど」
友人「ああ、俺はとっさに上級生の身体を盾にしてよぉww」
なんたる所業。
俺は上級生が少し気の毒になった。
友人「ところで、転校生はなんでピンピンしてんだ? もろ至近距離だったろ?」
転校生「ああ。こんな事もあろうかと、事前に『マホカンタ』をかけておいたのさ」
そして、しばらく立ち話をしていると、
爆発音を聞きつけた教師たちと、野次馬の生徒たちが集まってきた。
教師「また、お前らかぁぁぁ! 『ぱふぱふ』してやろうか!」
友人「ぎゃああああああああ 体罰反対! 体罰反対!」
その後、上級生たちは保健室で手当を受けたようだ。軽い傷だったらしい。
あのリーダー格の上級生は、魔法が不得手だったと聞いた。
放課後、職員室に呼び出された俺たちは、こってりと絞られた。曰く「やりすぎだ」との事。
幸い、『ぱふぱふ』はかろうじて免れた。
友人「別に俺たちが魔法を使ったわけじゃ無いのになぁ」
転校生「あはは、仕方ないよ。それにしても、本当に助けてくれてありがとう」
友人「よせよ、結局ほとんどなんもしてないしなー」
男「俺なんか物陰でこそこそしてただけだしな」
友人「お前が出てきたら、それこそ、また死人がでるぞw」
それを聞いた転校生が、ぴくりと眉をひそめる。
転校生「へえ、男君は攻撃魔法が得意なのかい?」
男「んー、っていっても "使えない" んだけどな」
俺たちは転校生に、この前のドラゴン事件と、俺の "体質" について話した。
気軽に話した事が、次の "事件" のきっかけになるとも知らずに――
転校生「へぇ……。面白いね。"ほかの世界の記憶" か。興味あるな」
転校生「今度、詳しく聞かせてよ。俺君。」
下校中だった俺たちは、途中の分かれ道で転校生と別れた。
俺と友人は家がすぐ近所なので、帰り道は同じ方向である。
男「それにしても、驚いたな。転校生。『マホカンタ』も使えるなんて」
友人「ああ、そうだな……。大人が使ってるのを見た事はあるが、同年代で使ってるやつは初めて見た」
男「『ベホマ』といい『フバーハ』といい、才能があるやつはうらやましいぜ」
友人「そうしょげるなよ」
友人とも別れ、俺は帰宅した。
母親「おっかえりー。 あ、そうだ、ちょっと、あんたこっち来なさいよ!」
男「な、なんだよ急に」
母親「あんたの無駄な魔力を活かそうと思ってね。はいこれ、燃やしてちょうだい!」
目の前には瓦礫の山。
男「ちょ、ちょっとまてよ! 俺の魔法を、焼却炉かなんかと勘違いしてねーか!」
男「それに、いいのかよ、俺が逮捕されても。懲役5年だぞ! 5年!」
母親「大丈夫よーこのぐらい。バレなきゃ平気平気!」
男「この、子不幸もの~~~!!」
俺は、しかたなく、目の前の瓦礫に向かって呪文を唱える。
さすがに、危ないので、最下級の呪文でいいだろう。
男「『ファイア』!」
しかし、なにもおこらない。
男「あれ……? おっかしいな…… 『ファイア』ァァァ!」
瓦礫の山は へいきな かおを している!
母親「ちょっとちょっと、あんたやっぱり、魔法が使えるようになったって嘘だったのね!」
男「ちょ、ちょっと待ってくれ! あん時は確かに……」
母親「お母さんは、嘘をつくような子供に育てた覚えはありませんよ!」
男「」
結局、何度も挑戦してみたが、炎の "ほ" の字も出ないまま終わった。
試しに『メラ』や『バギ』を唱えてみたが、何も起こらない。
どうやら、俺はまた、魔法が "使えない" 身体になってしまったらしい。
母親にあらぬ罵倒をうけ、父親には呆れられ、俺は涙目になった。
男「おかしい…… あの時は、確かに使えたのに」
あのドラゴン事件のあと、誰もいないガード下で、他の呪文も色々試してみた事があった。
『ファイア』や『ブリザド』など、思い出した呪文は一通り使う事ができた。
男「やっぱり、俺は魔法が使えないダメなやつなんだ…… ううう」
その晩、俺は枕を濡らした。
翌日、いつにもまして、テンションの低い登校中、いつにもまして、テンションの高い声が聞こえてくる。
友人「おーっす!! どうしたどうした! 相変わらず暗いなーwww」
男「ほうっておいてくれ…… 俺はどうせダメなやつなんだ……」
俺の様子を見て、何か感じ取ったらしい友人は、一転、まじめな顔をして「どうした?」と聞いた。
俺は、昨日の顛末を友人に話した。
友人「魔法が使えなくなった――ねぇ。」
男「希望を持たせて落とすのが一番残酷だと思わないか……?」
友人「まあ、そうクヨクヨすんなってww どっちにしろ "使えない" んだから同じだろww」
友人の微妙にフォローになっていないフォローに励まされて、学校に着いた。
教室に入ると、相変わらず転校生は女子に囲まれて笑顔を振りまいている。
俺は、むなしさを覚えつつ、席についた。
友人「そうだ。そういう事なら、保健の先生に聞いてみるのはどうだ?」
友人「魔法が使えなくなる、って時々聞く話だし。病気かなにかかもしれないぜ?」
男「保健の先生ねぇ……」
休み時間。
俺はあまり期待せず、保健室に向かった。
友人は「わりい! 用があるから」といって、ついてはこなかった。薄情なやつめ。
保健室の扉を開くと、そこには机に向かう保健医の姿があった。
彼女は、学校の男子の人気が高く、道を歩けば二度見される美貌の持ち主だ。
わざわざ仮病を使って、彼女に会いにくる生徒もいるらしい。
保健医「あら、どうしたの?」
男「実は……」
俺は、保健医に事情を話した。ただし、俺の使う魔法が特殊である事は話さなかったが。
保健医「魔法が使えなくなった…… なるほどね。」
保健医「いいかしら? 人が魔法を使えなくなるには、いくつか考えられる理由があるわ。」
保健医の説明は明確だった。それによると
1. 精神的な理由
例えば、落ち込んでいる時や、無気力な状態だと魔法は使えない。
俺の場合、落ち込んでいるのは魔法が使えないせいなので、これだと逆だ。
2. 肉体的な理由
体調が悪い時や、疲れている時。MP を使いすぎると、この状態になる。
3. 魔法的な理由
例えば『マホトーン』などの魔法だ。
男「うーん、どれも思い当たる節はないですね。」
保健医「そうねぇ……。とりあえず、2,3日、様子を見たらどうかしら?」
保健医「精神的な理由や、肉体的な理由だったら、それで回復するかもしれないわ」
俺は、保健医に礼を告げて、保健室をあとにした。
教室に戻ると、友人はまだ帰ってきていないようだ。
俺は自分の席について、昨日の自分の行動を思い返していた。
あの時――
あの時、転校生に、俺の体質について話した時。
実は、かすかな違和感があったのだ。
転校生が俺の話に目を輝かせ、詳しく "黒魔法" について聞き出した。
俺が調子にのってペラペラと話していると、転校生は俺の両肩に手を載せて
転校生「すごいね! 驚いたよ!」
と言ったあと、何かをつぶやいたのだ。
その瞬間、妙な脱力感に襲われた。
あの時は気にしていなかったが、あれはなんだったのだろう。
転校生に話を聞こうと思ったが、あいにく、教室にはいないようだ。
ため息をついていると、チャイムが鳴った。
教師「チャイム鳴ったぞー 席に着けー」
時間に厳しい現国の教師は、教壇に立った。
廊下から生徒がなだれ込んでくる。その中には友人の姿もあった。
男「なにしてたんだ? こんなギリギリまで」
友人「……へへ、ちょっとな」
教師が教室を見回すと、ふと気がついて、
教師「おや、転校生はどうした? 今日は休みか?」
転校生は、その日、教室に現れる事はなかった。
下校時間になり、準備をしていた俺と友人のもとに、女が現れた。
女「ねぇねぇ、転校生君、どこいったか知らない?」
男「しらねーよ。こっちが聞きたいくらいだってのに」
女「そっかー…… あ、友人君、いっしょに帰ろーよっ」
こいつ、転校生がいないとみるや、友人に乗り換えるつもりか?
友人「あー、わりい。俺、今日ちょっと用事があってさ」
友人は別れをつげると、そそくさと教室を出て行った。
女「あやしい……」
男「は?」
女「友人君らしくない。なんかあったんだよ、きっと。」
女「ねぇ! 男君! 一緒に尾行しよっ!」
男「!?」
結局、押しに弱い俺は、女と二人で友人の後をつける事になってしまった。
後で、友人に謝らなくてはならない。
俺と女が尾行しているとはつゆしらず、友人はとことこと歩いていく。
男「ちょ! そんなにくっつくなって!」
女「しー! 静かに! バレちゃうよ!」
俺たちは、物陰に隠れながら、こそこそと友人の後をつけた。
友人のように、『レムオル』でも唱えられれば楽だったのだが。
曲がり角に隠れていると、不意に後ろから声を掛けられた。
???「あんたたち、何してんの?」
突然の声に驚いた俺たちが声を殺して慌てて振り向くと
そこには、俺の母親がいた。
男「母ちゃん! あー これはその……」
女「えー 男君のお母さんですか? 男君のクラスメイトの女です! いつも男君にお世話になってますー」
ちなみに、この前のドラゴン事件の首謀者が女であることを、母親は知らない。
母親「あらっ! まぁまぁ! デキた子ねー! うちのにも見習わせたいわ!」
見習っていいのか? 『ドラゴラム』を使って人を脅そうとする女だぞ?
母親「ちょっと、なによこの子! あんたにはもったいないわね!」
男「ちょっwww そんなんじゃねーからwww」
女「あっ! いっけない! 友人君を見失っちゃう!」
俺と女は慌てて、友人の足取りを追いかける。
母親は、「夕飯までには帰ってくるのよー」と言って、俺に親指を立てた。
もうやだこの母親。
幸い、友人はそこまで離れておらず、尾行を続けた。
どんどん、ひとけの無い場所に向かっている。
どうやら、目的地は無人の工場跡のようだ。
俺たちが、物陰に隠れていると、友人は工場跡の真ん中に立ち……
友人「…… くす あっはっははは!!」
笑い出した。
俺たちが、その異様な笑い声に息を呑んで見守っていると
不意に、友人の身体が光に包み込まれる。
友人は
徐々に形をかえ
なんと、転校生の姿になった!
おとこは こんらん している!
なにがなんだかわからない。
男「どういうことだ……!?」
女「……『モシャス』ね。きっと転校生君が、友人君の姿に変身していたのよ。」
男「!!」
それを聞いて、俺は我慢できずに物陰から飛び出した。
男「おい!! 友人をどこにやったんだ!」
転校生「あはっ 誰かと思えば、男君じゃないか」
転校生はこちらを振り向いて、ニヤニヤと笑っている。
転校生「……そうか、バレちゃったんだね。」
転校生「あはは、大丈夫だよ。友人君にはちょっと『ラリホー』で眠ってもらったんだ」
男「……!」
転校生「尾行してたのかな? ぜんぜん気がつかなかったよ。君も鋭いね。」
男「君 "も" ……?」
転校生「いやー、参ったよ。友人君に呼び出されてさ、何かと思ったら「返してやれ」ってさ」
転校生「なんで、わかったんだろうね?
君の "黒魔法" を、僕が盗っちゃったことに――さ。」
男「!!!」
転校生「おや、その顔は、気づいてなかったみたいだね。
てっきり、友人君が話したもんだと思ってたよ。」
うすうす、感づいてはいた。
"違和感" の正体は、やはり、転校生によるものだったのだ。
魔法が使えなくなったのは、こいつに奪われていたから。
しかし、そんな事、可能なんだろうか?
他人の魔法を "奪う" なんて、聞いた事がない。
転校生「さて、もういいかな? 悪いけど、君にも眠ってもらおうかな」
転校生が『ラリホー』を唱えるために、手を挙げた瞬間。
物陰から、女が飛び出した。
女「『メラミ』ィ!」
女の手から火球が飛び出し、転校生に飛びかかった。
転校生「ッ……!」
転校生は不意をつかれて、まともに食らってしまう。
転校生が顔を上げると
顔の一部が、ドロリと溶け落ちた。
転校生「……このアマがぁぁ!!!」
転校生「『ブリザガ』ァァァッァ!」
突如として空中に大きな氷の塊が現れ、鋭い氷柱となって女を襲う。
やばい。
とっさに、俺は、女をかばった。
女「男君!!!」
俺は、背中にもろに氷柱を受け止める。
――今度は、走馬燈も、走らない。
俺は、体中を貫かれ、絶命した。
- GAME OVER -
…
……
どこから ともなく こえがきこえる
??「おお ゆうしゃよ しんでしまうとは なさけない」
どこから ともなく こえがきこえる
??「クリスタルに みちびかれし せんしよ」
どこから ともなく こえがきこえる
??「……い! ……とこ! ……」
俺は、目を覚ました。
そこには、母親の顔があった。
母親「おきなさい! しっかりしなさいよ! 男!」
どうやら、寝ぼけているのかな。
男「……もう少しだけ寝かせて……」
母親「ばかねあんたは! ほら、女ちゃんが戦ってるのよ!」
男「え??」
母親に抱えられながら、横をみると
そこには黄金のドラゴンと戦う、転校生の姿があった。
よく見ると転校生の身体中はボロボロに溶け落ち、
下から、骨が見えている。
転校生「ちっ! 『フバーハ』が切れたか!」
ドラゴン「ブルァァァッァァァ」
ドラゴンは もえさかる かえんをはいた!
転校生は炎に包まれた。
炎が途切れると、転校生の姿は、完全に骨になっていた。
しかし、転校生の動きは止まらない。
転校生は しょうたいを あらわした!
どうやら、転校生は、モンスターだったようだ。人間に化けていたらしい。
転校生「くっそぉぉぉ!! 『ファイガ』ァァァ! 『ブリザガ』ァァァ! 『サンダガ』ァァァッ!!」
3つの魔法が、ドラゴンに襲いかかる。
しかし、ドラゴンの目の前に、光る壁が現れ、魔法をはじき飛ばした。
母親「『マホカンタ』をかけておいて、正解だったわね」
なにもんだこいつ。
母親「さてと、あんたも蘇生したし、そろそろ本業といきますかね」
唖然とする、俺を尻目に、母親は立ち上がると、両手を目の前にだし、集中して、呪文を唱えた。
母親「 『ニ フ ラ ム』 」
すると、母親の両手から光があふれだし、転校生をつつみこむ。
転校生「『ニフラム』だと……? 俺を何レベルだと思ってるんだ…… きかんn」
転校生「あびゃばばうdfbdfばいjfbd」
なんと、転校生の骨が溶け出した。
そして、完全に骨が溶けてなくなり、
辺りは静寂に包まれた。
母親「ふー、久々に使うと、やっぱり疲れるわね」
母親は肩をこきこきと鳴らすと、尻餅をついたままの俺に手をさしのべ、立ち上がらせた。
恐ろしいほどの力で、俺は楽に立ち上がる事ができた。
男「あ、あのー 母ちゃん……? ちなみに、レベルはいくつ?」
母親「あら、言ってなかったかしら。私、レベル80よ~。お婆ちゃんに昔っから仕込まれてね。」
レベル80。
もちろん、常人ならありえない数字である。
母親「特に『ニフラム』は鍛えたわねぇ。ほら、お婆ちゃん霊媒師だったでしょ?」
男「」
俺が言葉も無く立ち尽くしていると、ドラゴンから元の姿に戻った女が駆け寄ってきた。
女「よかった!! 男君、元気になったんだね!」
男「」
俺は呆然としたまま、何も言えずにいた。
友人は、体育倉庫で寝ているのを現国の教師に見つかったらしい。
『ぱふぱふ』されたのは言うまでもない。
俺は言葉なく帰宅して、母親の才能が自分に引き継がれなかった事に、こっそり泣いた。
数日後。
友人「ひどいめにあったぜ……」
そういいながら、友人はお尻をさすっていた。何があったのだろう。
俺はといえば、思いついて自分の部屋でこっそりと『ファイア』を使ってみたところ
あやうく小火をだしかけ、レベル80の母親にこっぴどく叱られた。
そう、俺はまた魔法が使えるようになった。
転校生はモンスターだった。それも知能が極端に高い。
俺の魔法の力は、どうにかして奪われたらしい。
どんな手段を使ったのかは、わからないままだった。
ただ、この世界には、確かに "認識されていない魔法" が存在する。
それは、俺自身の存在が証明だった。
モンスターが人間に化けて人里に下りてくる話は、あまり例が無い。
俺たちは、連日マスコミに追われる事になった。
女「わー、あたしたち有名人みたいだねっ! 友人君!」
女はあっという間に、また友人にくっつくようになった。
例によって、『レムオル』でマスコミをやりすごして、俺たちは帰路についた。
男「あーあ、今回は踏んだり蹴ったりだなぁ」
友人「俺は寝てたからよくわかんねーけど、お前の母ちゃんスゴいなぁ」
男「……それを言われると、俺はどんどん自信がなくなってくるわ……」
俺はため息をひとつつくと、友人と別れた。
帰宅すると、待ってましたとばかりに、母親が立ちふさがる。
母親「うふふ、今度こそ、ちゃんと燃やしてもらうわよ!」
そういって、俺をまた、瓦礫の山の前に引きずり出す。
レベル80の力に、抗えるわけがなかった。
瓦礫の山に立たされ、観念した俺は、あらためて呪文を唱えた。
男「『ファイア』ァァァ!」
しかし、なにも おこらない。
男「!?」
その時、俺の脳裏に、保健医の言葉がフラッシュバックした。
保健医「いいかしら? 人が魔法を使えなくなるには、いくつか考えられる理由があるわ。」
保健医「人は、落ち込んでいる時や、無気力な時には、魔法を使う事ができないわ。」
保健医「例えば、ものすごおおく、ショックを受けて、"自信を失ってる時" とかね」
俺はまた、魔法が使えなくなった――
失った自信を、回復する呪文はありますか?
俺は、あの時聞こえた声に、問いかけるのだった。
~今度こそ完~
えええええええええええええええ
最上級魔法をまだ使ってないしなんでBADENDやねん!
いや、こういうのも好きだけどせっかくちまちまと下級魔法使ってきたんだから
せめて上級魔法使おうよ!主人公に華持たそうよ!ね?ね?
というわけで、今度こそ終わりですよ。
支援ありがとうございました!
思いつきで書き殴ったから、一部の伏線とかほったらかしですまんこってす。
>>142
また、機会があれば続きを書くという事で許して…… ねむい……
精神的な理由からなので、魔法が使えないのは一時的だと思うよ! たぶん!
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