藤岡「オレは南カナが好きだ!」保坂「それでは想いは届かない!」(240)

夏奈「それじゃあな、藤岡ー」

藤岡「う、うん」

千秋「またなー」

内田「バイバーイ!」

藤岡「うん。またね!」

夏奈「おー」

藤岡「……はぁ」

藤岡(今日もダメだった……。何もできなかったなぁ。いや、チアキちゃんたちもいたんだし、当然じゃないか。そういうことは二人きりのときにするべきなんだし)

藤岡(また次の機会に頑張ればいいじゃないか)

保坂「ダメだ。全く、ダメだ。それでは何も伝わらない。自分に対する甘えで力量の無さを正当化しているに過ぎないわけだ」

藤岡「え……?」

保坂「何もできない。それは自身にそれだけの力が無かったからだ。できなかったからと明日に甘えて、己の目指すものが、願いが叶うはずもない」

藤岡(誰だ、あの人は……。何を独り言を……)

保坂「では、どうすればいいのか。今から叶えるだけの実力を身に付けるのか? バカな。そんなことでは間に合わない」

藤岡「……」

保坂「だが、間に合わないからと指を咥えて現実と向き合っていいのか。よくはない!! それでは結果は同じなんだ!!!」

保坂「故に目指す。己の願いを掴み取るまで、歩み続けるわけだ。その先に報いがなくても、指差し笑われようとも進むしかない!!」

保坂「それが、自分の選んだ道ならばっ!!! 当然ではないかぁ!!!」

藤岡「……!!」

藤岡(た、確かにその通りだ。オレは何を甘いことを考えていたんだ。次の機会なんてないのかもしれないのに!!)

保坂「さて。そろそろタイムセールの時間だな。明日もオレの愛を必要としている人のために行かねばならない」

藤岡(あの人もオレと同じように悩んでいるのかもしれない)

保坂「急ごう。明日の弁当は、久しぶりにフランス風にしてみよう」

藤岡(でも、オレよりも前向きで、強い人だってことは分かる。ああいう人をオレは見習わないとダメだ)

別の日

夏奈「それじゃあな、藤岡」

藤岡「ああ、うん。気をつけて」

リコ「ふ、藤岡くんも!! き、気をつけて!!」

ケイコ「また明日ね」

藤岡「うん!! また明日!!」

夏奈「おー。藤岡は元気いっぱいだなぁ」

リコ「サッカー部だし、当然じゃない!!」

夏奈「関係あるのか?」

藤岡「……」

藤岡「はぁ……」

藤岡(今日もダメだった。いや……。だって今日は前回と状況が違う。クラスメイトが二人もいたんだ。変な噂だって流れるだろうし、カナにも迷惑がかかるし……)

保坂「果たして、それは優しさなのだろうか?」

藤岡「……!?」

藤岡(ま、またいる……!!)

保坂「身を引くことも時には大事だ。相手を想い気遣うことも重要だろう。だが、それは優しさか? 愛なのか?」

藤岡(まさか、オレの心が読まれているのか?)

保坂「例えばこの弁当。今日も彼女は自作の弁当を用意していたわけだ。それを見たオレは必要がないと判断し、踵を返した」

保坂「だが、それは彼女からの試練なのだとしたら? 愛の試練だとしたらどうだ?」

藤岡(愛の試練……?)

保坂「愛する相手が設けた愛の試練。オレの愛を試しているのかもしれない。茨の道を歩けるだけの心力があるのかどうか、見ようとしている」

藤岡(そ、そうか……!! オレはいつも一歩引いていた。カナはもしかしたら、オレを試していたのかもしれない)

保坂「愛の試練を突破できないようでは、相応しくないとそう考えているのかもしれない。その試練を超えた先に本当の幸せがあるのかもしれないわけだ!!」バッ!!

藤岡(脱いだ!?)

保坂「オレは思う。今まで経験してきた数々の苦行は、彼女なりの愛であったのではないか、と」

藤岡「……」

保坂「だからこそ!! 越えてみせよう!!! オレの愛がどれほどのものなのかを!!! 見せてやらねばっ!!!」

藤岡(オレはその道を進むだけの覚悟がなかった。そんなことで想いが届かないと嘆くなんて……。ただの自業自得だったのに……。自分が恥ずかしい)

保坂「さぁ、明日のためにオレは進もう。今日はタマゴが安い」

藤岡(オレも進みます。ありがとうございました)

別の日

春香「それじゃあね、藤岡くん。ここまででいいから」

藤岡「そ、そうですか」

夏奈「いつも悪いねー。藤岡」

千秋「ありがとう。また今度、家に寄ってくれ」

藤岡「あ……うん……」

藤岡(ダメだ!! ここで逃げるな!! 背を向けるな!! あの人だって言っていたじゃないか!!)

藤岡(ハルカさんとチアキちゃんがいるからってなんだ!! ここで!! ここでオレは想いを伝えなきゃいけないんだ!!!)

夏奈「あー、お腹すいたー。今日はカレーだねっ!」

千秋「うどんだ、バカ野郎」

春香「カレーうどんにしましょうね」

藤岡「カ、カナ!!! 待ってくれ!!!」

夏奈「ん? どうした?」

藤岡「オ、オレ……オレ……!!」

夏奈「なんだ。腹減ってるのか? それならうちで食っていけ。私が許可してやろう」

藤岡「ご馳走様でした!」

春香「いいのよ。またいらっしゃいね」

藤岡「はいっ!!」

千秋「またこいよ、藤岡」

夏奈「それじゃあ、風邪引くなよ。藤岡」

藤岡「ありがとう、南。また来るから」

夏奈「おう。また誘ってやる」

藤岡「おやすみ」

夏奈「おやすみー」

藤岡「……」

藤岡「はぁ……」

藤岡(急に夕食に誘われたら、もう告白するような空気じゃなくなった)

藤岡(場に呑まれたオレの負けだ……)

藤岡(オレは弱い……。弱すぎる……。どうしたら……カナともっと仲良くなれるんだ……)

藤岡「……はぁ」

別の日

保坂「今日も渡せなかった。このままでは腐ってしまう。ならば、今日も帰り道の公園で夕食といこう」

保坂「今日の苦を明日の糧へと変換すればいいだけだ」

保坂「いただきます」

藤岡「こんにちは」

保坂「ん? こんにちは」

藤岡「少し前から貴方のことを見ていました」

保坂「そうか。それでどうした?」

藤岡「……オレ、貴方のようになりたい」

保坂「オレのように?」

藤岡「はい。貴方のように強くなりたいんです」

保坂「それは無理だ」

藤岡「ど、どうして!!」

保坂「君はオレか? 違うだろ? 君はオレではなく、またオレは君ではない。君がオレを目指すということは、自分を殺すということだ。君はそれでいいのか?」

藤岡「そ、それは……」

保坂「オレに憧れを持つのは自由だ」バッ!!

藤岡「……」

保坂「だが、オレのようになるということは、恐らく君が目指しているところへは辿り着けない。それだけは断言しておこう」

藤岡「流石です……。確かにその通りです……」

保坂「何を悩んでいる?」

藤岡「聞いて、くれますか……?」

保坂「オレでよければ」

藤岡「ありがとうございます……」

保坂「何があった?」

藤岡「オレには好きな人がいます」

保坂「奇遇だな。オレにもいる。いや、好きという感情では説明ができない。言うなれば、そう、愛だ」

藤岡「愛ですか」

保坂「この弁当もオレの愛が詰まっている」

藤岡「そうなんですか。そのお弁当はどうして手元に?」

保坂「オレの力が及ばなかった。ただそれだけだ」

藤岡「貴方でも叶わない恋があるんですか?」

保坂「星はどんなに美しくても手は届かないだろう?」

藤岡「……!!」

保坂「だからといって地上から眺めているだけでは何も進展しない。まずは手を伸ばす。そして空へ飛ぶ。それでも無理なら、考える。星を掴む手段を」

藤岡「オレにはその手段がわからないんです」

保坂「何を試してきた?」

藤岡「毎日できるだけ多くの会話をしてみたり、荷物を持っていたらさりげなくもってあげようとしたり、それから彼女が喜びそうなものをプレゼントしたり……色々です」

保坂「そうか。なるほど」メモメモ

藤岡「そ、そんな、メモをするようなことは……」

保坂「忘れると困るからな。細かいところに明日を掴むヒントがあるかもしれない」

藤岡(この人、すごい……!!)

保坂「他にはないのか?」

藤岡「いえ、できることと言えば……これぐらいで……」

保坂「好きなものをプレゼントしたと言ったな? そのプレゼントは本当に正しい物だったのか?」

藤岡「え、えっと。初めは手袋とか腕時計とかそういうのをプレゼントしていたんですけど、それよりも食べ物のほうが喜んでくれることに気付いて、食べ物をよく贈りますね」

保坂「プレゼントを繰り返すうちに好みを知ったというわけか」

藤岡「ええ。そうなんです」

保坂「やはり、そうか。それしかないか……」メモメモ

藤岡「貴方はどんなことを? 参考までに聞かせてもらえますか?」

保坂「オレか? オレはそうだな……。彼女のために弁当を毎日作っている」

藤岡「す、すごいじゃないですか!!! そんなこと普通はできませんよ!!!」

保坂「突然の雨で彼女が空を見て陰鬱となっているときに、傘をそっと用意しておいた」

藤岡「そこまでして……。その人から感謝されるでしょう?」

保坂「いや。オレが用意したことを彼女は知らないはずだ」

藤岡「どうして!? そんなことじゃ想いは伝わらないんじゃ!!」

保坂「ならば、君はどうだ。そこまでして伝えきれていないのだろう」

藤岡「あ……」

保坂「これがオレのやり方だ。間違っていると思うのも自由だ」

藤岡「でも、どうしてそんな……。その人は感謝もしてくれなかったんじゃないですか?」

保坂「無論だ。だが、そのときのオレは愛が欲しかったんじゃない。笑顔がほしかっただけだ。彼女が笑っていればオレはそれでよかった」

藤岡「わ、笑っていれば……!?」

保坂「相手の愛を欲しがることはしない。オレの愛で笑ってくれるなら、それだけで構わない」

藤岡「でも、星を掴むって……」

保坂「無理に掴むことで星を潰してしまうかもしれない。そんな行為を愛を呼べるのか? いや、呼んでいいはずがない!!」

藤岡「なっ……!!」

藤岡(こ、この人は……本当の愛を知っている……!!)

藤岡(そうだ。オレはどこかでカナの愛を欲しがっていた。そんなことじゃダメだったんだ)

保坂「愛とは贈るものだ。貰うものではない。与えるものでもない」

藤岡「……オレはどうしたらいいんでしょうか?」

保坂「それはオレにも分からない」

藤岡「え……」

保坂「君が愛する女性がどんな人なのか、オレには分からないからな」

藤岡「そうですね……すいません……」

保坂「気にするな。だが、君に愛を説けただけも良かった。……今度、その女性の話を聞かせてくれ。オレは行かねばならない。今日はいい魚が手に入るからな」

藤岡「は、はい!! 必ず!!」

翌日 中学校

夏奈「おはよう、ケイコー」

ケイコ「おはよう。カナ、課題提出今日までだよ?」

夏奈「なんのことだ?」

藤岡「み、南。おはよう」

夏奈「おう。藤岡。聞いてくれ。ケイコが課題提出がどうのこうの言ってくるんだ。なんとかしてくれないか?」

ケイコ「なんとかって……」

藤岡「オレのでよければ、見る?」

夏奈「いいの!?」

藤岡「うん。カナに贈るよ」

夏奈「藤岡! ありがとう!! やっぱりお前、いい奴だな!!」

藤岡「いや、オレは南が笑顔でいてくれたらそれでいいんだ」

夏奈「え?」

ケイコ「藤岡くん?」

藤岡「今日も笑顔でいてくれるなら、オレは満足だから」

藤岡(これでいい。見返りなんて求めちゃいけないんだ……)

ケイコ「……カナ? 自分でやらないと意味ないよ?」

夏奈「でも、藤岡が見てもいいって」

ケイコ「ダメ。私が教えてあげるから」

夏奈「ケイコがそこまでいうなら」

ケイコ「じゃあ、これは返してきて」

夏奈「はぁーい」

藤岡(カナの幸せはオレの幸せ。どうしてそんな当たり前のことに気がつかなかったんだろう)

夏奈「藤岡」

藤岡「ど、どうしたの?」

夏奈「これ、返すよ」

藤岡「え? ど、どうして?」

夏奈「やっぱり、自分の力でやらないとね。藤岡、ありがとう」

藤岡「な……」

藤岡(オレの愛を返されてしまったぁ!!)

昼休み

夏奈「あー。これだけじゃ物足りないなぁ」

ケイコ「私のおかずまで食べたのにぃ……?」

藤岡「南。お腹がすいているなら、オレのパン食べる?」

夏奈「いいの!?」

藤岡「うん。南が笑顔になるなら、構わない」

夏奈「ありがとー!!」

藤岡「いいんだ」

夏奈「えへへ。いただきまー」

ケイコ「カナ!! ダメよ」

夏奈「どうして?」

ケイコ「それ、いつも藤岡くんが部活前に食べている奴だよ? 運動前にいつも食べてるみたいだから」

夏奈「そ、そうなのか……。なら、これは藤岡にとって貴重なエネルギー源なのか」

ケイコ「返してきたほうがいいよ?」

夏奈「……そうするか。藤岡に悪いし」

公園

保坂「む? どうした?」

藤岡「……あ」

保坂「愛が届かなかったのか。それぐらいで嘆くなら、諦めたほうが君のためだ」

藤岡「違うんです……。届けはしました」

保坂「そのとき、どのように近づいた?」

藤岡「自然に話しかけました。いつものように」

保坂「そうか、いつものように……」メモメモ

藤岡「でも、課題もパンも返されてしまったんです。その場で」

保坂「そうなのか」

藤岡「オレの愛は……いらないってことなんでしょうか……」

保坂「まて。悲観することはない。君は確かに相手の手に渡したんだろう?」

藤岡「は、はい」

保坂「唐突に触れたものが熱かった場合、誰でも反射的に手を離すものだ。違うか?」

藤岡「オ、オレの愛が熱すぎたってことですか!?」

保坂「君がそう言うこと行動に出たのは初めてだったのだろう?」

藤岡「は、はい」

保坂「ならば、突然の愛の変化に戸惑い、思わず返してしまった。そう思ったほうがいいっ」バッ!!!

藤岡「そ、そうだったのかぁ……!!! オレは……オレはなんてことを……!!」

保坂「焦ってもいい結果にはならない。もっとゆっくりと、落ち着いていかなければならない」

藤岡「た、例えば……?」

保坂「課題を見せるのではなく、教える。パンは与えるのではなく、分けるんだ」

藤岡「わける?」

保坂「そうだ。課題を慣れていない相手から見せられても、嬉しくない。むしろ、自分の力でやってみようと冷静な考えになってしまうものだ」

藤岡「そ、そうか……!!」

保坂「パンも自分の分を差し出してしまったら、清き心を持つ者なら遠慮し、パンを返してしまう。差し出すときは自分の分もあると説明してからでなければならない」

藤岡「そうか……確かに……!!」メモメモ

保坂「だが、これで一つはっきりしたな。君の選んだ女性は素晴らしい女性だ。オレが保障する」

藤岡「あ、ありがとうございます!!」

保坂「オレの愛する女性もきっと同じ行動をとるだろう。そう、きっと」

翌日 中学校

藤岡(昨日はオレが間違っていたんだ。全て。あんなものは愛の押し付けでしかなかったのに……)

藤岡(反省しよう)

夏奈「あれ? ハンカチ忘れてきちゃったよ……。どうしよう。まぁ、いいか」

藤岡「……南」スッ

夏奈「お?」

藤岡「オレのでよければ使ってくれ。南にあげるよ」

夏奈「そ、そう? 悪いね」

藤岡「いいんだ。カナが笑顔でいてくれるなら」

夏奈「……」

ケイコ「カナ、トイレ行くんじゃなかったの?」

夏奈「ああ、いや。藤岡が昨日から妙に優しいから……」

ケイコ「そういえば……。今も何かしてくれたの?」

夏奈「ハンカチくれた」

ケイコ「くれたって。また、カナは。ちゃんと洗って返したほうがいいよ?」

昼休み

夏奈「ケイコー、おかずちょーだい」

ケイコ「やだよ」

夏奈「逃げられると思っているのかぁー!!」

ケイコ「いやぁー」

藤岡「南、これあげるよ」スッ

夏奈「え?」

ケイコ「藤岡くん。このパン、部活前に食べているやつでしょ?」

夏奈「そうだよぉ。腹へるぞ」

藤岡「自分の分もあるから、心配はいらないよ」

夏奈「そうなの?」

藤岡「うん。南に食べて欲しいんだ。笑顔で居て欲しいから」

夏奈「そ、そういうことならもらっとくよ……」

ケイコ「藤岡くん……?」

藤岡「それじゃあ」

夏奈「ケイコ、どうおもう? 藤岡のやつ、なんか変じゃないか?」

ケイコ(藤岡くんなりの優しさだとは思うけど、こんな露骨に……)

夏奈「なぁ、なぁ。ケイコ。これはどういうことだ? 私、藤岡に狙われているのか?」

ケイコ「いや、ある意味そうだろうけど……」

夏奈「食べられちゃうのか、私は……藤岡に……」

ケイコ(でも、もしカナの気を惹こうと……いや、確実にカナの気を惹こうとしているんだろうけど、今までパンをあげたりとかしてこなかったのに)

夏奈「本当に食べてもいいのか……。これ食べたら、私は藤岡に食べられるんじゃないか?」

ケイコ(カナが全然応えてくれないから、もうなりふり構ってられなくなったのかなぁ……?)

夏奈「でも、もらったしなぁ……。食べるか」パクッ

ケイコ「ねえ、カナ?」

夏奈「どーした?」

ケイコ「最近、藤岡くんに何か言われなかった?」

夏奈「何かって?」

ケイコ「えーと……。二人きりになったときとかに」

夏奈「別になにもないけど?」

ケイコ「そう……」

夏奈「あー、美味しかった。満足だー」

ケイコ「きちんとお礼言っておいたほうがいいよ?」

夏奈「分かってるよぉ」

ケイコ(こんなことしたってカナが気付かないことは、藤岡くんが一番身をもって知っているはずなのに……)

夏奈「藤岡ー」

藤岡「なに、南」

夏奈「美味しかった!! ありがとう!!」

藤岡「うん。よかった」

夏奈「で、お前の目的はなんだ? 私を太らせて食べる気か?」

藤岡「違うよ。オレは南に笑っていて欲しいだけなんだ」

夏奈「そうか」

藤岡「南が笑顔なら、オレはそれでいいんだ」

夏奈「ふぅん。変な奴だな」

ケイコ(もしかして、報われなさすぎて悟りを開いちゃったとか……?)

放課後

夏奈「それじゃあな!! ケイコー!!」

ケイコ「うん。また明日ね」

藤岡(カナが笑顔でいてくれる。オレはそれだけでいいんだ。それ以上をもとめちゃいけない)

ケイコ「藤岡くん?」

藤岡「なにかな?」

ケイコ「どうしたの? いつもの藤岡くんじゃないみたいだけど……」

藤岡「そんなことはないよ。オレは気がついただけなんだ」

ケイコ「気がついたって?」

藤岡「愛は求めるものじゃないってことに!!」

ケイコ(藤岡くんがなんだかきもちわるいこと言ってる……!!)

藤岡「それじゃあ、オレは部活があるから。言ってくるよ」

ケイコ「う、うん……。がんばってね……」

藤岡「ああ。明日を掴むんだ。オレは」キリッ

リコ(藤岡くんのレア顔!!)

公園

保坂「速水め。オレの弁当を……。まぁ、いい。今日の弁当はそれほど完成度の高いものではなかった」

保坂「また明日だ。明日、オレは夢を叶えるんだ!!!」

藤岡「師匠!!」

保坂「君か。今日はいいことがあったようだな。男の顔になった」

藤岡「師匠のおかげです。オレは今日、愛を渡すことが出来ました」

保坂「なに? そうか……。それはよかった。で、どのようにして渡した? 参考までに聞いておこう」

藤岡「彼女は今日、ハンカチを忘れたといいました。だからオレはすかさずハンカチを出しました。それだけです」

保坂「そうか。ハンカチか……なるほど……ハンカチか……」メモメモ

藤岡「今日は本当に嬉しかったです。愛を届けることができて」

保坂「そうか。君は次の段階に進むべきかもしれないな」

藤岡「次の段階?」

保坂「そうだ。愛を伝えたのなら、次は想いを届けなくてはならない」

藤岡「想い……ですか?」

保坂「危険が伴うことだが、覚悟はあるか? 愛する者へ想いを届けるだけの覚悟が」

藤岡「どういうことですか?」

保坂「愛を届けても想いは伝わらない。それは分かっているだろう?」

藤岡「ですが、愛とは献身だったはずでは!?」

保坂「愚かな。君はまだ勘違いしているようだな」

藤岡「勘違い!?」

保坂「そうだ。愛とは決して献身にあらず。愛は優しさのエゴでしかない」

藤岡「エ、エゴ……」

保坂「相手の幸せを願うことも所詮は自分のエゴだ。そのエゴを受け取り続ける相手も辛いだけなのだ」

藤岡「そ、そうなんですか」

保坂「そうだ。何故、そんな愛を贈ってくれるのか。相手はそれを気にしだす」

藤岡「……」

保坂「そのとき、ただ君の幸せを願っていると言っても相手はただ困惑する。場合によっては無償の愛に恐怖し、距離をとるかもしれないわけだ」

藤岡「な……!! そうだ……。そんなのただのストーカー……!!」

保坂「だからこそ!!! 想いは届けなければならない!! 無論、今まで贈った愛を盾にしてはならない!! 己の想いをただ届けるだけだ!!! それ以上でも以下でもないっ!!!」

藤岡「た、ただ……想いを届けるだけ……!! そうだ。今まで捧げた愛はただの自己満足。相手の愛が欲しいから捧げたんじゃないんだ……!!」

保坂「君は想いを届けるべきだ。愛を伝えることができたのであればな」

藤岡「どうすればいいんでしょうか!?」

保坂「君はどう考える?」

藤岡「それは……。好きだといいます」

保坂「よし。やってみろ」

藤岡「オレは南カナが好きだ!!」

保坂「それでは想いは届かない!!!」バッ!!!

藤岡(そうか。上着を脱がないといけないのか!!)

藤岡「オレは南カナが好きだ!!!」バッ!!!

保坂「ダメだ!! そうではない!!! もっと心の内に燻っている炎を燃え上がらせるんだぁ!!!」

藤岡「オレはぁ!!! 南カナが好きです!!!!」

保坂「そうだ!! もっと!! もっとだぁ!!!」

藤岡「オレは南カナがぁ!!! 大好きですっ!!!」

保坂「お前はその南カナに何をしてほしいんだ!!」

藤岡「デートしてほしいぃ!!!」

保坂「素晴らしい……。かん、ぺきだ……」

藤岡「はぁ……はぁ……。あ、ありがとうございます……」

保坂「しかし、これも不思議な因縁だな」

藤岡「え……?」

保坂「オレの愛する女性もまた、南という」

藤岡「そ、そうだったんですか!?」

保坂「やはり、南という名には天から授かった何かがあるのだろう」

藤岡「同感です。師匠の愛する人もきっと……カナに似ていると思います」

保坂「そうか。礼をいう」

藤岡「いえ」

保坂「それでは今日はここまでにするか」

藤岡「あ、あの」

保坂「どうした?」

藤岡「実は教えてほしいことがまだ……」

保坂「乗りかかった船だ。言ってみろ」

南家

夏奈「藤岡が変なんだよ」

春香「また、カナは。藤岡くんに失礼でしょ?」

千秋「藤岡が変なら、カナは大バカ野郎だな」

冬馬「あははは」

夏奈「何笑ってんだ!!! トウマ!!」

冬馬「いや、その通りだなって思って」

夏奈「なんだとぉー!?」

千秋「で、何か様子でも変なのか?」

夏奈「そうなんだよ。なんかね、妙に優しいんだよね。私に」

春香「それはカナだからでしょ?」

夏奈「え? でも、私に優しくする理由が見当たらないんだけど」

千秋「……」

冬馬「なぁ、カナ。いつも思ってたんだけどさ、それ本気で言ってるのか?」

夏奈「なんだよぉ? 言いたいことがあるならいいなさいよ」

春香「いや……。言ってもいいけど……」

夏奈「なんだよぉー。おしえなさいよぉー」

千秋「カナ。藤岡はな……」

冬馬「まて、チアキ。言ってもいいことなのか?」

千秋「何も真実を言うつもりはない。藤岡だってそれは不本意だろうからな」

冬馬「そ、そうか?」

千秋「うむ」

夏奈「なんだよ、チアキ。藤岡がどうしたって?」

千秋「藤岡がお前に優しくするのは、この家にできるだけ多く呼んで欲しいからに決まっているだろう」

夏奈「え? そんなことしなくても勝手に来たらいいのに」

千秋「それができないから、回りくどい方法をとっている。それぐらい察してあげなさいよ」

夏奈「そうだったのか……」

千秋「優しくしておけば、カナから何か声がかかるかもしれない。藤岡は毎日それを期待しているんだよ」

夏奈「なるほどな。藤岡め、中々可愛いところもあるじゃないか」

春香「はぁ……」

翌日 中学校

藤岡(想いを届ける……。でも、果たしてオレの愛はカナに届いているんだろうか……)

藤岡(もし、届いていないなら、想いを届けるのは早計だ。愛が伝わっていないなら、カナは恐怖するだけだ)

ケイコ「おはよう、カナ」

夏奈「おはよう、ケイコ」

藤岡(よし、まだオレは愛を伝え続けよう。きっとまだ伝え切れていないはずだ)

夏奈「おい、藤岡」

藤岡「南。おはよう」

夏奈「今日、暇か? よければうちにきてもいいぞ」

藤岡「え? いいの?」

夏奈「おう」

藤岡「行くよ。部活が終わってからになるから、少し遅くなるけど」

夏奈「いーよ、いーよ。待ってるからな」

藤岡「うんっ」

藤岡(これはオレの愛が伝わったのか。それとも、カナの優しさなんだろうか……。オレには判断がつかない)

ケイコ「カナ、藤岡くんと遊ぶの?」

夏奈「うん。なんかさ、藤岡が私の家に来たがってるみたいだから」

ケイコ「ああ、そうなんだ」

リコ「ねえ、カナぁ……? 今、藤岡くんを誘ったでしょ……?」

夏奈「リコも来る?」

ケイコ「え!?」

リコ「もっちろん!!」

ケイコ「……はぁ」

夏奈「ケイコはどうする?」

ケイコ「わ、私? うーん……」

ケイコ(藤岡くんとカナを意図的に二人きりにさせることができるのは私だけ……だけど……)

夏奈「よーし! なにしよっか!?」

リコ「何も考えてないの!?」

藤岡(オレの愛は三分の一も伝わってないだろうな……)

ケイコ(そういうことするの、なんだか恥ずかしいから、ヤダ……)

南家

夏奈「といっても、何もやることないね」

リコ「なら、どこか行く?」

夏奈「それはダメだ。今日は私の家で遊ぶんだ」

リコ「でも、やることないんでしょ?」

リコ(藤岡くんと色んなところいきたいなぁ……。肝心の藤岡くんはまだだし……)

ケイコ(藤岡くん、今頃こっちに向かってるのかなぁ。もう練習は終わってると思うけど)

夏奈「にしても、藤岡の奴遅いな。折角誘ってやったのに」

リコ「ねえ、カナ。どうして藤岡くんを誘ったの? 何か理由でもあったの?」

夏奈「藤岡のやつがね、私の家に来たがってたんだよ」

リコ「どうして?」

夏奈「それは知らないけど」

リコ「どうして……?」

ケイコ「私に聞かれても……」

リコ「なんでぇ……?」

ピンポーン

夏奈「お」

リコ「藤岡くんっ!! 藤岡くんでしょ!!」

ケイコ「リコ、落ち着いて……」

夏奈「やっと来たか。女を待たせるとはいい度胸だな。懲らしめてやろう」

藤岡「――南。遅くなってごめん。買い物していたら、遅くなっちゃった」

夏奈「買い物? なに買って来たの?」

藤岡「食材。晩御飯、まだだろ?」

夏奈「う、うん。ハルカがまだだからね」

藤岡「オレが作ってもいいかな?」

夏奈「え? お前、料理できるのか?」

藤岡「できるようになったんだ。カナに食べて欲しい」

夏奈「えーと……。ケイコとリコもいるけど……」

藤岡「大丈夫。量ならあるから!」

夏奈「そ、そう? なら、お願いしようかな。チアキも呼んで来よう」

千秋「藤岡、料理するのか。初耳だな」

藤岡「オレも初めて言ったから」

千秋「ふぅん。大丈夫なのか? 何を作るんだ?」

藤岡「フランス料理だ」

千秋「レベル高くないか?」

藤岡「心配ない。オレには師匠の想いと、鴨肉がある」

千秋「師匠か。私にできることはあるか?」

藤岡「なら、野菜を切ってもらえるかな?」

千秋「いいぞー」

夏奈「と、いうわけで、二人も今晩はうちで食べていけ」

ケイコ「そ、それはいいけど……。でも、どうして急に藤岡くん……」

リコ「藤岡くんの手料理ぃ!? ああ!! 今日はきてよかったぁ!! ありがとう、カナ!! 誘ってくれて!!」

夏奈「ああ、うん。まぁ、私も予想外なんだけどね」

ケイコ(藤岡くん……。こんなことまでしないとカナは振り向いてくれないと思っちゃったのかな?)

藤岡「ソースも作らないと……。鴨フィレ肉のカシスソースヴァルサミコビネガー風味、これでオレの愛を表現するんだ」

藤岡「――できたよ」

春香「藤岡くん、お料理できるのね……。帰ってきたら、藤岡くんがキッチンにいて驚いちゃったわ」

藤岡「すいません、ハルカさん。キッチンを汚してしまって」

春香「ううん!! 気にしないで!! そんなつもりで言ったんじゃないから!!」

夏奈「う、うまそうだ……!!」

ケイコ「フランス料理なんて……」

リコ「あぁ……食べずに飾っておきたい……」

千秋「藤岡は師匠に教わったそうです」

春香「師匠?」

藤岡「はい。オレの尊敬する人です」

ケイコ「……」

夏奈「なんでもいいよー。さ、食べよ!!」

藤岡「どうぞ」

春香「いただきます」

リコ「あぁん。食べるの勿体無いよぉ……」

夏奈「うまい!! うまいぞー、藤岡!!」

藤岡「そう。ありがとう。嬉しいよ」

夏奈「おかわり!!」

藤岡「少し待ってて」

春香「本当に美味しい……。藤岡くん……カナのために……?」

千秋「そうなんでしょうね。食い意地の張っている女を悦ばせるには打ってつけですし」

夏奈「よーし、チアキ。喧嘩だな。喧嘩なんだな?」

千秋「やるか?」

春香「ふぅん。食事中にケンカするんだ?」

夏奈「あ……じょ、冗談だよ……ハルカ……」

千秋「そ、そんなこといたしません……」

リコ「あーん! 藤岡くんの味がするぅ!」

ケイコ「……」

夏奈「ケイコ、どうしたの? 食べないなら食べてあげるけど」

ケイコ「え? いや、藤岡くんの師匠っていうのが気になって」

千秋「藤岡の師匠はよく公園にいるらしい」

ケイコ「公園?」

千秋「うむ。そういってた。そして大事なことを料理のほかにも色々と教わったそうだ。何でも愛がどうとか言っていた」

ケイコ「愛……」

リコ「恋愛マスター?」

夏奈「あの藤岡が恋愛マスターに教えを乞うってどういう状況だ。料理マスターでしょ」

春香「こんなに美味しい料理を作れる人になら、是非色々教えて欲しいわ」

千秋「いいですね。カナも教えてもらえばいいんじゃないか?」

夏奈「なんだと!?」

藤岡「その必要はないよ」

夏奈「え?」

藤岡「カナの料理はオレが作るから」

夏奈「……そう。ありがとう」

ケイコ(聞き様によってはプロポーズじゃぁ……)

リコ「藤岡くんの手料理ぃ、さいこぉ……」

夏奈「あー、美味しかったぁ!! 藤岡、お前は本当にいいやつだなっ!!」

藤岡「ありがとう。その笑顔が見たかったんだ」

夏奈「ああ、そうなの?」

リコ「藤岡くん!! とっても!! とーってもおいしかったぁ!! ご馳走様!!」

藤岡「そういってくれると、嬉しいよ」

ケイコ「藤岡くん、ごちそうさまでした」

春香「ねえ、藤岡くん。レシピとかあるなら、教えてくれないかしら?」

藤岡「ええ。いいですよ」

春香「やったぁ。また、その師匠さんから何か教えてもらったら、私にも教えて欲しいな」

藤岡「はい。師匠もきっと喜んでくれます。自分の愛が少しでも愛する人に近づくのなら、いくらでも教えると言っていましたから」

春香「あい……?」

千秋「藤岡、私にも教えてくれ」

藤岡「勿論だよ」

夏奈「……」

ケイコ(藤岡くんがおかしくなったのは、その師匠って人の所為なのかな……?)

藤岡「それじゃあ、今日はこれで。お邪魔しました」

リコ「お邪魔しました」

ケイコ「また来るね、カナ」

夏奈「うん。いつでも来ていいからな、リコも藤岡も」

リコ「ありがと」

藤岡「それじゃあ、また来るよ。おやすみ」

夏奈「おやすみー」

春香「へぇ……。これが隠し味になってたのね……。気付かなかった……」

千秋「藤岡の師匠のレシピは凝ってますね」

春香「うん。レシピ本には載ってないようなことまで……」

夏奈「……」

春香「カナ? どうしたの?」

夏奈「ああ、いや……」

千秋「藤岡の料理の腕前が高いから、少しショックなんだろ?」

夏奈「そ、そんなわけないだろ!! 何を言っている!!」

住宅街

リコ「今日は、本当にありがとう。藤岡くん」

藤岡「いや。オレの料理を食べてくれたことにお礼を言いたいぐらいだから」

リコ「そんなこと!!」

ケイコ「でも、男の子があれだけ料理上手だと、やっぱりちょっとショックだよね」

リコ「それは……」

藤岡「そうなの?」

ケイコ「なんていうか、自信を無くすっていうか……」

藤岡「そうなんだ。オレ、悪いことしたかな?」

ケイコ「そんなことないよ!! 全然!!」

リコ「そうよ!! 藤岡くんは気にしなくていいから!!」

藤岡「そう……」

ケイコ「あの、藤岡くん――」

藤岡「それじゃあ、ここで。今日はありがとう、本当に!」

ケイコ「あ、藤岡くん!!」

公園

保坂「……来たか」

藤岡「師匠!! 聞いてください!! 師匠に教えてもらった料理を作り、食べてもらいました!!!」

保坂「なんだと!? どうやってそこまでの状況を作り出した!? 参考までに聞いておこう!!!」

藤岡「はい。今日は偶然、相手から家に来るように誘われて、それで部活帰りに食材を買って家に行きました。そこで料理を振舞いました」

保坂「そうか……誘われたのか……なるほど……」メモメモ

藤岡「師匠の料理はみんな美味しいといってくれました」

保坂「そうか。ところで、どうして家に誘われた? 参考までに聞いておかなければならない」

藤岡「それはオレと南カナが友達だからです」

保坂「そうか……いや、そんなことだろうとは思っていた。あまりにも上手く行き過ぎている。なるほど、友達だからか……」メモメモ

藤岡「師匠。また新しい料理を――」

保坂「それは出来ない」

藤岡「な、何故ですか!?」

保坂「君はオレになりたいのか? 君が愛している女性はオレが愛している女性と同じなのか?」

藤岡「え……」

保坂「オレはこのレシピを考えたのは、オレの愛する人のためだ。つまり、この料理にはオレの愛がつまっているが、君の愛はどこにもない」

藤岡「な……」

保坂「君がここで叫んだ想いは本物なのだろう? 何故、それを料理にも込めないんだ?」

藤岡「あ……そうだ……。オレはまた……間違いを……」

保坂「この料理が何故美味いか。それはオレの愛があるからだ!!」バッ!!!

藤岡「は、はい」

保坂「故に、このままオレの料理を教えても君の愛は届かないわけだ」

藤岡「確かに……」

保坂「ただ……。オレの愛を広めてほしいのも確かだ。だから……」

藤岡「え?」

保坂「何かのきっかけになればいい。ここにオレが考案した100のレシピがある」

藤岡「師匠……!!!」

保坂「あくまでも参考にするんだ。そして君だけの愛の形を、南カナに捧げるんだ。オレの愛ではなく、君の愛が重要だ」

藤岡「はい!!!」

保坂「それでいい。君に幸あれ」

ケイコ「確か、こっちのほうに藤岡くん向かっていったけど……。そうだ、あの角に公園があった。行ってみよう」

「オレは南カナが好きだ!!!」

「まだだ!! もう一度ぉ!!!」

ケイコ「……な、なに?」

藤岡「オレはぁ!!! 南カナが大好きです!!!」

保坂「ワンモアっん!!!!」

藤岡「オレは南カナを愛している!!!!」

保坂「そうだ!!! それが君の想いだ!! 魂だ!!!」

藤岡「はいっ!!!」

ケイコ「な……な……」

保坂「君の想いはそれだけ強い!! その想いを届けるためにはまだまだ愛が足らない!!!」

藤岡「はいっ!!」

保坂「だが、いつか報われるときがくる!! 君の想いはオレをも凌駕しているのだから!!!」

藤岡「そんなことはありませんっ!!!」

ケイコ(藤岡くんが……きもちわるいことになってる……!!! ど、どうしよう……!!)

翌日 中学校

ケイコ(昨日、思わず逃げちゃったけど……。どうしよう。見ちゃった以上、放ってもおけないし……)

リコ「あ、ケイコ、おはよう」

ケイコ「お、おはよう……。藤岡くんは来てるの?」

リコ「いるけど。藤岡くんに何か用なの?」

ケイコ「べ、別にそんなことないから」

リコ「そう……。ならいいんだけど」

ケイコ「ふぅ……」

藤岡(今日もカナに愛を伝えよう。今日はどうやって、オレの愛をカナに届けようか……)

ケイコ(きもちわるい……企みを感じる……)

夏奈「おーっす、ケイコ」

ケイコ「カナ!?」

藤岡(カナ!?)

ケイコ「ちょっと、こっちに来て!!」

夏奈「な、なに?」

ケイコ「ねえ、カナ。藤岡くんのことなんだけど……」

夏奈「藤岡がどうしたの?」

ケイコ「様子がおかしいって思わない?」

夏奈「え? そうだね。まぁ、色々とおかしいとは思う。昨日は私の料理を作ってくれる宣言には驚いたね。私をお嫁にもらってくれるのかと思ってしまったぐらいだ」

ケイコ「そういうことは気がつくんだ……」

夏奈「え?」

ケイコ「ねえ、カナ? 藤岡くんがああいうことになったのは、昨日言っていた師匠って人の所為なの」

夏奈「そうなの? 料理マスターの影響を受けて、料理好きになったってこと?」

ケイコ「そうじゃなくて。とにかく、今のままだと藤岡くん、大変なことになると思う」

夏奈「大変ってどんな?」

ケイコ「なんていうか……その……。女の子からは勿論、男の子からも変な目で見られるかもしれない」

夏奈「なんでそうなる?」

ケイコ「それは……」

夏奈「ケイコ?」

ケイコ「……カナ、今日の夜、時間ある?」

放課後

藤岡「南、また明日」

夏奈「おう。また明日ー」

リコ「カナー。今日は藤岡くんと遊ばないの?」

夏奈「今日はないよ」

リコ「なんだぁ……」

夏奈「ケイコー。何時ぐらいにする?」

ケイコ「えっと、8時ぐらいにしようか。昨日もそれぐらいだったし」

夏奈「で、そこで藤岡と師匠が特訓してるんだね?」

ケイコ「まぁ……うん……」

夏奈「ふぅーん。あの藤岡が球を蹴る以外の特訓をしているのは是非とも見たいね」

リコ「……カナ? 藤岡くんって言った?」

夏奈「え?」

リコ「いったよね?」

夏奈「言ったけど……」

公園

保坂「来たか」

藤岡「師匠。こんばんは」

保坂「こんばんは。今日の成果はあったのか?」

藤岡「はい。今日は落とした消しゴムを拾ってあげました」

保坂「相手の反応は?」

藤岡「ありがとうと笑ってくれました」

保坂「そうか。書き留めておこう」メモメモ

藤岡「師匠。オレの考えたレシピ、見てもらえますか」

保坂「どれ、見せてみろ」

藤岡「これです」

保坂「……」

藤岡「まだ完全オリジナルのレシピは考えられなくて、師匠のレシピにアレンジを加えました」

保坂「そうか……。なるほど……。これでは、少し辛味が強くなる。ダメだな」

藤岡「そ、そうですか……」

ケイコ「……いる。二人で何か話しているみたいだけど」

夏奈「ケイコ」

ケイコ「きゃぁ!? カ、カナ! 驚かせないで」

夏奈「そんなつもりは微塵もなかったんだけど……。で、あれか? 確かに藤岡だね。ベンチに座っているほうが師匠か」

ケイコ「そう。何を話しているのかはわからないけど」

夏奈「それは料理の話でしょう」

リコ「見つけた……」

ケイコ「リコ、本当に来ちゃったの?」

リコ「だって、藤岡くんがあれだけ料理上手になった理由、ききたいもん」

夏奈「そうだよね。私だって……」

ケイコ「そうなの?」

夏奈「いや、まぁ……。藤岡ごときに負けているのが許せないんだよ」

ケイコ「そうなんだ……」

リコ「藤岡くんのところに行こうよ」

ケイコ「あ、待って。もう少し様子を見よう」

リコ「どうして?」

ケイコ「藤岡くんはきっと、あの人に洗脳されているだけだから」

夏奈「洗脳?」

ケイコ「今日はカナにその瞬間を見て欲しいの。それでカナがどうするか決めて」

夏奈「なんで……?」

ケイコ「カナじゃなきゃ、きっと藤岡くんは目を覚ましてくれないと思うから……」

夏奈「どういうことだ?」

リコ「ねえ、何の話ぃ?」ギュゥゥ

ケイコ「スカートをつかまないでぇ……」

保坂「――では、今日もやっておくか!!」

藤岡「はい!!!」

夏奈「お、動きがあったぞ」

ケイコ「は、始まる……」

リコ「始まるってなにが?」

ケイコ「リコは耳を塞いでいたほうがいいかも……」

リコ「なんで――」

保坂「君の想いを滾らせろ!!!!」

藤岡「オレは南カナが好きだ!!!!」

夏奈「なっ!?」

リコ「え……?」

ケイコ「……」

保坂「聞こえない!!! 君の想いはその程度かっ!!!」

藤岡「オレはぁ!!! 南カナが大好きだぁぁ!!!!」

保坂「まだまだ足りない!! 君の愛はそれだけかぁ!!!」

藤岡「オレは南カナを愛している!!!」

保坂「アゲインっ!!!」バッ!!!

藤岡「オレはぁ!!! 南カナを世界で一番愛しているんだぁぁぁ!!!!!」バッ!!!!!

リコ「カナ……なにあれ……」

夏奈「わ、わたしにいわれても……」

リコ「カナぁ!!! どういうことなの!!!」

保坂「誰だ!?」バッ!!!

藤岡「誰かいるの!?」バッ!!!

ケイコ「ああ!! 見つかった!!」

リコ「あぁ!? カナ!! どうするの!? ねえ!!」

夏奈「私にいうなよぉ!! 見つかったのはリコの所為でしょう!?」

リコ「だってぇ!!」

保坂「誰だ? 君たちは?」

ケイコ「あぁ……ぁ……」

リコ「ひぃ……」

夏奈「ちょっと、止まれ!! 不審者め!!」

ケイコ「カ、カナ!! 危ないよ!!」

保坂「不審者……? どこにそんな輩が居る?」

夏奈「お前、藤岡に何をしたんだ!!」

保坂「なに? 君は藤岡と言うのか?」

藤岡「カ、カナ……どうして……」

夏奈「藤岡、お前、こいつに何を言われたんだ!?」

藤岡「カナ……。オレは師匠に大事なことを教わったんだ。恩人なんだ」

夏奈「何を言ってるんだ!! きもちわるいだけだぞ!! お前!!」

藤岡「え……!?」

保坂「気持ち悪い? 君は藤岡の想い人である、南カナか?」

夏奈「そ、そうだ!」

保坂「今の想いを聞いても、お前は気持ち悪いというのか?」

夏奈「いや、きもちわるいだろ!!」

保坂「何故だ?」

夏奈「あんなことを大声で言われても困るんだよぉ!!」

保坂「そうか……。なるほど……そうなのか……。参考までに書き留めておこう」メモメモ

藤岡「カナ……あの……」

夏奈「藤岡。こっちにこい」

藤岡「なに?」

夏奈「いいから、私の目の前までこい」

ケイコ「カナ……?」

夏奈「……」

藤岡「な、なにかな……」

夏奈「ていっ!」パシンッ!!

藤岡「……っ!?」

ケイコ(叩いちゃった……!!)

リコ「カ、カナ!! 藤岡くんになんてことをするのよぉ!!」

藤岡「……え?」

夏奈「目は覚めたか?」

藤岡「……」

夏奈「どうなんだ!?」

藤岡「あ、えっと……」

夏奈「お前!! 自分がどれだけきもちわるいことをしているのか分かっているのか!?」

藤岡「ご、ごめん……南……」

夏奈「お前はそんなやつじゃないだろう!! 何をやってるんだ!!」

藤岡「南……」

夏奈「帰るぞ。上着を着ろ」

藤岡「う、うん……」

夏奈「おい。そこの」

保坂「なんだ?」

夏奈「藤岡にはもう近づくな。いいな!!」

保坂「ふっ。いいだろう。オレの役目は終わったということか」

藤岡「師匠……!!」

保坂「オレのことをもうそう呼ぶな。そして、オレとはもう会うことはないだろう」

藤岡「……はい」

夏奈「ほら、いくぞ!!」

藤岡「あ、うん……」

ケイコ「カ、カナ?」

リコ「どこに行くの?」

夏奈「私の家だ!!」

南家

春香「で、何があったの?」

夏奈「こいつが公園で上半身裸になって私のことを好きだとかなんだと叫んでいた」

千秋「新手の告白か」

夏奈「新手過ぎて、流石の私も許容できなかったけどね」

春香「そうなの?」

藤岡「はい……」

ケイコ「カナ、どうするの? 藤岡くん小さくなってるけど……」

リコ「藤岡くんはあの人に洗脳されていただけでしょ!? もういいじゃない!!」

夏奈「ダメだ、リコ。ここは色々とはっきりとさせておかないと」

リコ「でも……」

夏奈「藤岡」

藤岡「は、はい」

夏奈「自分のやっていたことをどう思う?」

藤岡「えっと……あの……とても気持ち悪いことでした……」

夏奈「そうでしょう。そうでしょうとも」

藤岡「ごめん……。オレが間違っていたよ……」

夏奈「認めるんだね?」

藤岡「うん。オレがきもちわるかった」

夏奈「よし。自覚できたなら、いいんだ。もうあんなことはするなよ」

藤岡「み、南……許してくれるのか……?」

夏奈「許す許さないじゃなくて、お前が変な道に進もうとしていたから私はそれを止めたんだ」

藤岡「南……!! ありがとう!!」

夏奈「ああいう道はさすがになぁ……」

ケイコ「はぁ……よかった……。嫌いになったとかじゃないんだ」

夏奈「何で私が藤岡を嫌いにならないといけないんだ」

リコ「藤岡くん、ほっぺた痛くない? カナったら力いっぱい引っぱたいたし……」

藤岡「うん。平気、ありがとう……」

リコ「あの、私は洗脳されていただけなんだよね?」

藤岡「うん。オレはいつの間にか師匠……いや、あのきもちわるい人の言う通りに動いていたんだ……」

リコ「よかったぁ……」

藤岡「南……」

夏奈「よし。帰っていいぞ」

藤岡「え?」

夏奈「今日はもう遅いしな」

藤岡「……そうだね」

ケイコ「リコ、帰ろうか」

リコ「うん」

藤岡「二人はオレが送っていくよ」

リコ「わぁーい!!」

ケイコ「それじゃあ、失礼します」

春香「ええ。今度はゆっくりしていってね」

千秋「藤岡、またなー」

藤岡「お邪魔しました」

夏奈「おう」

春香「藤岡くんがおかしな宗教に嵌りそうになっていたことでいいの?」

夏奈「そう思ってもいいと思う」

春香「藤岡くんも大変ね」

千秋「しかし、大声で告白の練習とはな。その内、実行するつもりだったのか」

夏奈「あんなことされたら、顔から火が出るって!!」

千秋「それぐらい派手なほうがいいんじゃないのか?」

夏奈「いいわけないでしょぉー!!」

春香「でもでも、そんなに力強く告白されるのって意外といいかもしれないわよ?」

夏奈「上半身裸で迫れてもか!? 本当にそういえるの!? ハルカ!!」

春香「あ、それは……うーん……微妙かな……」

夏奈「そうでしょう!?」

千秋「それでもカナは藤岡を嫌いになってないんだろ?」

夏奈「別に嫌う要素はないからね」

春香「ふぅん……」

夏奈「なんだよぉー!!」

翌日 中学校

藤岡(オレは大変なことをしてしまったな……。もうカナとは友達としてもいられないかもしれない……)

夏奈「藤岡」

藤岡「え!? 南!?」

夏奈「……今日、いや、週末のほうがいいんだけど。1日暇な日はあるか?」

藤岡「え……。ああ、来週の日曜日は部活が休みだけど……」

夏奈「そうか。自主練習か?」

藤岡「まぁ、うん。そうなってる」

夏奈「なら、家にこい。いいな?」

藤岡「ど、どうして? オレ……」

夏奈「……料理だ」

藤岡「え?」

夏奈「お前の料理、美味かった。だから、もう一度作りにこい。ついでに私にも教えろよ」

藤岡「……うんっ。任せてくれ」

夏奈「ふんっ」

高校

保坂「さて、今日は多めにハンカチを持ってきた。これで南ハルカがハンカチを忘れていても、オレがすかさず差し出すわけだ」

保坂「そして、すかさず弁当を差し出すわけだ」

保坂「するとどうだ!! オレと南ハルカは友達になるわけだ!! そうなればオレが南ハルカの家でフランス料理を振舞うわけだ!!!」

保坂「そして南ハルカの家庭は笑顔で包まれるわけだ……。完璧だ」

保坂「さぁ、行くか……。オレも藤岡に後れを取るわけにはいかない。そう、師匠として!!」バッ!!!

春香「あ、あれ? あれ……?」

マキ「どうしたの?」

春香「ハンカチ……忘れちゃったみたい……」

マキ「そうなの?」

春香「どうしよう……」

アツコ「ハルカ、私のでよければ」

春香「ありがとう、アツコ。洗って返すね」

アツコ「いいよ」

保坂(そうか……。なるほど。ハンカチは必要ないということか……。そうか……。なるほど……。では次だな。次は南ハルカが消しゴムを落としたときにすかさずオレが――)

日曜日 南家

藤岡「お邪魔します」

千秋「来たか。今日はまた料理を作ってくれるらしいな」

藤岡「うん。いっぱい買ってきたよ」

春香「ごめんね、気を遣わせちゃって」

藤岡「そんなことありません!!」

夏奈「藤岡ー。早く、こっちに来なさいよ」

藤岡「う、うん」

千秋「おい、カナ。藤岡がいるからいいけど、食えるものにするんだぞー。隠し味はちゃんと隠せよー」

夏奈「わかってるよ」

春香「藤岡くん、なんだかカナもやる気みたいだし、お願いね」

藤岡「はい。できる範囲でがんばります」

春香「よろしく」

夏奈「はやくしろってー」

藤岡「い、今行く!」

藤岡「えっと、それじゃあ、野菜から切ってくれる?」

夏奈「野菜だね!! 任せなさい!!」ダンッ!!

藤岡「カ、カナ!! 危ないよ!! そんな乱暴な切りかたじゃあ!!」

夏奈「でも、硬いし、勢いつけて切っているところをテレビで見たぞ」

藤岡「指を切ったらどうするんだよ。こうもって」ギュッ

夏奈「……おい」

藤岡「あ、ご、ごめん!! ついっ!!」

夏奈「いや、別にいいぞ。握って教えてくれ」

藤岡「あ、うん……それじゃあ……」

夏奈「藤岡……私も好きだ」

藤岡「え?!」

夏奈「フランス料理」

藤岡「あ、そ、そう……」

夏奈「……こら、きちんと教えろ。何をうろたえている」

藤岡「ああ、うん……えっと、これはこうやって……」

夏奈「なるほどな。こうするのか」

藤岡「そうそう。カナもできるじゃないか」

夏奈「なんだと?」

藤岡「あ、いや、そう言う意味じゃないんだ」

夏奈「ならどういう意味だ」

藤岡「えーと……」

夏奈「……私ははっきり言われるのは嫌いじゃないから」

藤岡「そうなんだ」

夏奈「うん、そうだぞ」


春香「うーん……。いい感じなのかどうか、わからないわね」

千秋「そうですね」

冬馬「おーい!! 藤岡の飯が食えるってきいてきたぞー!!」

内田「おじゃましまーす!!」

吉野「およばれしましたー」

千秋「おう、来たか」

夏奈「なぁ、藤岡?」

藤岡「なに?」

夏奈「大声で言う必要はないから。きちんと聞こえる声で言ってくれればな」

藤岡「な……」

夏奈「……さぁ、お客さんが多いんだ!! しっかり作るぞ!!」

藤岡「……カナ」

夏奈「なんだよ……」

藤岡「オレ……カナのこと――」

冬馬「藤岡ー!! まだかぁー!!」

藤岡「あ、ト、トウマ……。うん、もう少しだから」

冬馬「待ってるからな!! チアキー、マコちゃんも来るんだろー?」

夏奈「……」

藤岡「あ、作ろう。南、うん……」

夏奈「本当にもう少しだな、お前。もう一度、公園行くか?」

藤岡「こ、今度こそ自分の力でなんとかするから!! 絶対!! もう少し待っててくれ!!」

公園

マコト「はぁ……。また、オレはマコちゃんにならなきゃいけないのか……。いつまでこんなことをしなきゃいけないんだ……」

マコト「オレの中の男らしさが号泣しているぞ……」

保坂「男が泣いていいのは、親と愛する人を亡くしたときだけだ」

マコト「……!?」

保坂「そう!! だから、オレは泣く事は許されない!! まだ愛する人がいるのだから!!!」

マコト(あの人、何してるんだ……?)

保坂「嘆くことはいつでもできる。置かれている現実を恨むことは誰にもできる。しかし、そこから光を見出すのは限られた人間にしかできない!!」

保坂「オレはその限られた人間でありたい」

マコト(そうだよ。自分の不幸を悲しむことはいつでもできるんだ。それよりも今、オレがどうするかじゃないか!!!)

保坂「己のやれることにベストを尽くさずして、何を得られてるというか!!! オレはまだまだ甘い!!!」

マコト(オレもあの人を見習わないと。オレもあの人みたいな男になるんだ!!)

マコ「――さぁ!! いくぞ!! 藤岡さんの手料理を食べにチアキの家へ!!!」

保坂「さぁ、行こう。明日こそ、想いを届けるぞ。あーっはっはっはっは!!」


おしまい。

>>186
リコ「あの、私は洗脳されていただけなんだよね?」

リコ「あの、藤岡くんは洗脳されていただけなんだよね?」

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