拓海「機甲創世記ウサミンロボ」 (38)
もしくは「電人ウサミンロボ」
【モバマスSS】です
ウサちゃんロボをウサミン科学で改造するとウサミンロボになる。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1391523973
「よぉ。プロデューサー」
「拓海、今日もバイクで来てるのか?」
「当たり前だろ、アタシからバイクを取るなよ?」
「そりゃあ好きなのは知ってるが、万が一の事故を考えるとやっぱり怖いんだよ」
「大丈夫だって。それに、こう見えてもアイドルになる前よりは乗る機会も減らしてるんだぜ?」
「それは認めるけどな……」
「アタシの腕は知ってるだろ? それに、他人様に迷惑かけるような走りだってしねえ」
「珍走の類と違って、他人様に迷惑かけるような走りはしないってな」
「当然だ、そんな半端なやつぁ、許さねえ。特攻隊長の名にかけて、シメる」
「迷惑かけてる連中シメてる内に、いつの間にか特攻隊長と呼ばれるようになったって、早苗さんに聞いてるぞ」
「……あー、早苗ね。うん、あいつは強かった、うん。今でも強いけど」
「とにかく、乗るなとは言わないが、本当に事故だけは気をつけてくれよ」
「わかってるよ」
実は、拓海はアイドルになったときにモバPと約束しています。
「アタシからバイクを取ったら、アイドルも辞める」
そう言い切るのが、そして実行するのが向井拓海なのです。元特攻隊長、泣く子も笑うたくみんスマイルです。
だから拓海は、今日もバイクで事務所へ向かいます。
そしていつものように、事務所横の駐車場へ入ろうと曲がったところで、
「うおっ!?」
うさ!?
なんと、そこにはウサちゃんロボとウサミンロボがいました。合わせて六台。
ウサちゃんロボとは、池袋晶葉が安部菜々の依頼で作ったバックダンサーロボであり、お月見団子も作る優れものです。
その後、ウサちゃんロボの数台が、ウサミン科学によるAIを搭載したウサミンロボにバージョンアップされました。
自律活動が出来るウサミンロボたちは、それぞれウサちゃんロボを数台率いて、事務所の警備やお掃除に従事しているのです。
因みに、二つのロボに外見差異はほとんどありません。一見で区別が出来るのは菜々と晶葉、なぜかきらりだけです。
だから、アイドル達にはウサミンロボが固まって動いているようにしか見えません。
大和亜季などは、それらをウサミン分隊(スクワッド)と呼んで、勝手にコードネームを付けているようです。
とにかく、突然現れたロボ軍団を避けようとした拓海は、バイクを強引に滑らせました。
うさ!?
慌てたのは拓海だけではありません。ウサちゃんロボを率いて駐車場の掃除をしようとしていたウサミンロボもです。
心優しきウサミン科学の子、ウサミンロボは自分たちの仕事を愛しています。そしてアイドル達のことが大好きです。
そもそも、バイクにぶつかったぐらいでどうにかなるようなロボではないのです。むしろバイクが壊れてしまいます。
ぶつかっても大丈夫なのです。拓海もそれを知っているはずです。
だけど、拓海はウサミンロボを避けるためにわざと転倒しました。
だからウサミンロボは、全力で拓海を救うために飛びついたのです。
結果として、こけたバイクは損壊。ウサミンロボに抱えられた拓海は無傷ということになりました。
「大丈夫か、拓海」
念のため医者で診断を受けた拓海が事務所に戻ってくると、出迎えたのはモバPでした。
「ああ、なんともねえよ。でも、ま、バイクのほうはさすがに修理に出さないとな」
「そのことなんだが」
「どうかしたのか?」
「ウサミンロボが是非謝罪をしたいと」
「……」
謝罪はいらない、と拓海は思いました。
勝手知ったる駐車場とはいえ、前方不注意であることには間違い無かったのです。
これがロボ達だったから良かったものの、もし仁奈や薫達だったらと思うと怖くて仕方ありません。
「そんなもん、いらねえよ」
「待て、拓海」
「ん?」
「ちょっと考えてみてくれ」
「なんだよ?」
「お前の弟分や妹分が、誰かに迷惑をかけたとする」
「……」
「お前は……いや、お前なら謝るだろう?」
「当たり前だ」
「ウサミンロボも同じだ」
「!!」
「ウサちゃんロボは、ウサミンロボ達にとっては弟分妹分みたいなモンなんだ。その不始末を詫びたいと言ってるんだ」
「……」
「それを受け入れないほど、向井拓海ってのは器が小さかったのか?」
「はぁ……ったく、あんたのその説得ってやつには敵わねえな。お陰でこっちは、何の因果かアイドル稼業だ」
「天職だろ?」
「……バカヤロー」
「お前スカウトしてからこっち、何回それ言われたと思ってんだ、とっくに聞き飽きたよ」
「何度でも言ってやるさ。それで、ロボは何処にいるんだ?」
「地下の晶葉ラボだよ」
「わかった」
拓海は、地下の晶葉ラボへ向かいます。
晶葉ラボ、それはCGプロの魔窟とまで呼ばれたアンタッチャブルです。安易に触れることは許されないのです。
だけど、拓海はラボのドアを普通に開けました。
そこには修理に出したはずの拓海のバイク……いや、良く見るとレプリカです。
但しこのバイク、タイヤがありません。タイヤがあるべき位置にはウサミンロボがいます。
頭の上にバイクのフレームを載せたウサミンロボが二台。前と後ろに。
よくみると、ウサミンロボの身体にはいつもの「USA」がありません。二台のロボにはそれぞれ「前輪」「後輪」と書かれています。
うさ! うさ!
ウサ前輪とウサ後輪が拓海に気付きました。
「……何やってんだ、お前ら」
うさ! うさ!
「ロボは、バイクの修理が終わるまで代わりになると言っている」
晶葉が説明します。
「これに、乗れと?」
「以前のバイクとスペック的には変わらない、いや、スペックはより以上のはずだ。原田美世にも協力して貰ったぞ」
「美世の奴……余計なことを」
まあとりあえず乗ってみろ、と晶葉はヘルメットを差し出しました。
全体が真っ赤、シルバーの帯が二本入ったデザインで、耳当てからインカムのようなものが伸びています。
「変わったヘルメットだな」
「フルフェイスじゃないが、安全性は保証するぞ、さ、乗った乗った」
ウサミンロボは期待の眼差しで拓海を見つめています。
拓海は、プロデューサーの言葉を思い出しました。
「これがお前らなりの詫びなんだな」
うさ、うさ
「わかった。とりあえず跨らせてもらう」
拓海はヘルメットを被り、バイクに跨りました。
そして、ハンドルを握ります。
ぶろろん、ぶろろん
「…………」
ぶろろん、ぶろろん
「なあ、晶葉」
「どうした?」
「こいつら、『ぶろろん』って言ってないか?」
「効果音だな」
「なんでわざわざ……」
「ウサミンロボの動力は無公害無騒音のウサミンエンジンだからな」
「すごいな、ウサミン科学……」
ぶろろん、ぶろろろろぉー
ぶろろろろ、ぶろろろろ、ぶろろろろぉー
まっはろっどで、ぶろろろろ、ぶろろろろ、ぶろろろろぉー
「……おい」
「どうした?」
「なんか言ったぞ、今」
「演技指導は南条光だ」
「何教えてんだ、あいつ」
「ところで、エンジンをかけるのはいいが、走ってみないのか?」
「タイヤがないんだが」
「タイヤ代わりのウサミンロボだと言っただろう」
「本当に走るのか?」
「走る」
「ウサミンロボがバイクと人間を担いで走ってるだけじゃないのか」
「そうとも言う」
「おい」
「とにかく走ってみてくれ。ロボ達もそれを望んでいるし、そのためにトレーニングも積んでいたんだ」
「トレーニング?」
「ああ、しばらく、ブリッツェンに教えを請うていたようだ」
「あのトナカイに?」
「そうだ。そりを引くプロフェッショナルにだ。バイクのタイヤとして働くためにだ!」
「……そうか……そこまでして……」
うさ、うさ
「わかった。今度こそわかった。ロボ、俺はお前らを信じる、行こうぜ」
バイクが走り出します。
というか、バイクを担いだウサミンロボ達が走り出します。
だけど、その動きは拓海の握るハンドルに連動しています。ウサミンロボはタイヤの気持ちになるですよ。
(早え!)
拓海は驚いていました。正直なところ、ウサミンロボのバイクにはさほど期待していなかったのです。
だけど、乗り心地は確かに自分のバイクとそっくりです。
そのうえ、拓海のハンドル捌きにもしっかりと対応しています。
(いや、これ、もしかすると、前のバイクより凄いんじゃねえか?)
ぶろろん、ぶろろん
(しかし、この「排気音」だけは何とかして欲しいなぁ……)
ぶろろろぉー、ぶろろろぉー
ばろむくろすは、ぶろろろろ、ぶろろろろ、ぶろろろろぉー
(光ぅうううううっ!!!)
と、そこへ、必要以上の排気音を響かせた近所迷惑なバイクがやってきます。
「おいおいおいおい、拓海ちゃんじゃねえかよっ!!」
「てめぇっ!?」
それは、拓海がアイドルになる前に何度か退治した珍走族のリーダーです。
名を、多田野雑魚太郎と言います。
「バイク壊したって聞いたぜ。ひゃははは、特攻隊長様の腕も落ちたもんだねぇ」
「……はっ、今なら勝てるってか?」
「ひゃっはー!! それがそんな妙ちくりんなオモチャに乗りやがってよぉ!」
雑魚太郎は戦意満々で、今にも襲いかかってきそうな怖い顔をしています。
そのとき、ウサミンロボ(前輪)が一枚の手紙を拓海に渡しました。
(これは……光からの手紙?)
『拓海さんへ、もし危険なことがあったら、ヘルメットにつけておいたインカムからこう叫ぶんだ』
拓海はヘルメットの耳あて部分から伸びていたインカムを伸ばします。
「ウサミンロボ! チェーンパンチ!」
うさ!
ぎゅいんぎゅいん、がちゃん
ウサミンロボの拳が飛んでいきます。因みに拳と手首は鎖で繋がれています。
「なんだ!?」
拓海は慌てて手紙の続きを読みました。
『あと、ブーメランカッターと速射破壊銃もお願いしてつけてもらった』
「なんだよそれ!?」
拓海は「電人ザボーガー」を知らないようです。
つまり、電人ウサボーガーです。ウルトラレイナ様砲と合体すると、ストロングウサボーガーになるようです。
ウサミンロボのチェーンパンチが雑魚太郎のバイクに命中しました。
吹っ飛ばされた雑魚太郎のバイク、爆破炎上。
単なるバイクの癖に派手に爆破炎上していますが、これはお約束というものです。
「……すげぇな……晶葉とウサミン科学……あと、光」
うさ?
「うん、ロボもすげぇよ、うん」
うさぁ♪
ウサミンロボもニッコリ笑っています。
「帰ろうか、ロボ」
うさ
バイクの残骸を背後に、拓海は事務所へと走りました。
因みに雑魚太郎はチェーンパンチが当たったと同時にバイクから転げ落ちて気絶しているだけです。
「なあ、ロボ」
ぶろろん、ぶろろん
「アタシにはこのバイク……いや、ウサミンロボのスペックはちょっと荷が重すぎる」
ぶろろ……うさ?
「普通のバイクがいいんだ」
うさ……
「だから、チェーンパンチとかは全部無しだ、おめえは普通のバイクでいてくれ。しばらくの間、よろしくな」
うさ!!
ぶろろん! ぶろろん!!
嬉しそうにウサミンロボは排気音を唸ります。
ぶろろん、ぶろろん!!
ずばばばばーん!!
「効果音が増えた!?」
ウサミンロボバイクは無事事務所に到着しました。
「ん?」
「よっ」
木村夏樹が事務所前に立っています。
「何やってんだ、こんなところで」
拓海はバイクを止めて降ります。ウサミンロボバイクを見た夏樹が面白そうな表情になりました。
「妙なバイク乗ってるな」
「なかなか悪くないぜ」
うさ、うさ
「そっか。ウサミンロボだしな」
「で、こんな所で何つっ立ってんだ? 李衣菜待ちか?」
「……こっちのバイクも故障してさ」
「……故障、ねえ……?」
ぶもっ
「」
そこへ姿を見せたのは、バイクのシートを背負ったブリッツェンでした。
「……夏樹……ブリッツェンにぶつけたのか」
「……ああ」
うさうさ
ぶもっぶもっ
うさ
ぶもっ
幸いなことに、バイク同士は仲良しのようです。
終われ
以上お粗末様でした
前に、
モバP「超攻速ウサミンロボ」
を書いたときの没タイトルなんだ。タイトルだけ復活させたんだ
後悔はしていない
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません