やえ「にわか高校」 玄・池田・亦野「麻雀部!」(161)

長野・にわか高校

やえ「結局、今年は部員が一人も入らなかったか」

亦野「小走先輩は最後の夏だというのに……」

池田「キャプテン! 個人戦があるし! 元気だすし!」

やえ「いや、私は個人戦にも出んよ。結果がわかってる大会なんて出る意味が無いだろう?」ニヤリ

玄「さすが小走さんです! でも団体戦の部員くらい数あわせで誘えますけど……」

やえ「ふっ、にわかがいるチームなど全国では通じんよ」

やえ「じゃあそろそろ今日の部活動を始めよう」

玄「はい!」

亦野「今日もあの雀荘に行くんですか?」

やえ「ああ、私らは顧問がいないからな。同好会として認められて部室はあるが、部費は出ない」

やえ「つまり雀卓がないということだ。なら雀卓がある場所に行くしかないだろう?」

池田「だし!」


やえ「じゃあ行こうか!」

まこの雀荘

まこ「おー、いらっしゃい。いつものでええんか?」

やえ「あぁ、頼む」


ザワザワ   麻雀の王者が来た……!   ザワザワ      ザワザワ
あの高校生集団すげー強いよな   ザワザワ   あいつらが負けたとこ見たことねーぜ……


玄「わっ、店内に入っただけですごい騒がれてるのですっ」

亦野「さすが小走先輩というべきか」

やえ「今日は玄と……そこのにわかじゃなさそうなお二人、打たないか?」

若者「はい」

幼女「ふぇぇ……」

玄「では練習開始!」

東一局

やえ「私が親だな」パシッ

…………

玄(よし! 三暗刻ドラ8張った!)

玄「リーチです!!」パシッ

やえ「ロン! 玄、やはりアンタの打ちしゅじはワンパターンだな」

玄「おお! やられたのです!」


池田「さすがキャプテンだし!」

亦野「池田、余所見しないで早くツモって」

東一局・一本場

若者「良いあがりです! さすがこの雀荘で負けなしの王者!」パシッ

やえ「まあな」パシッ

玄「私も小走さんに勝ったのは最初のほうの何回かだけで、今はまったく勝てませんです」パシッ

やえ「玄の打ちしゅじは特別だからな。特別なのがわかればどうということはない」

幼女「……」パシッ

やえ「ロン。4200」

そのころ池田・亦野の卓では

池田「ツモ! 2600オール!」


亦野「ポン ポン ポン ツモ! 1000・2000」


おじさん「いやー、お嬢ちゃんたちやっぱ強いねー」

池田「毎日この雀荘に通って練習してるからな!」

亦野「現役の麻雀部員なので」

おじさん「この雀荘では毎日負けなしだけど、他の雀荘には行ったことないの?」

亦野「そういえばこの雀荘以外には行ったことないですね。他校とも試合したこともないし」

池田「どうせ華奈ちゃんたちに勝てるやつなんていないし!」

やえ・玄の卓

玄「門前ツモ、ドラ7で4000・8000。これでまくったのです!」

やえ「ほう、やはり一発がでかいな」

若者「この二人は強すぎる……!」

幼女「ふぇぇ……」

やえ「まあこれで南入。勝負はここからさ」

玄「今日こそ勝たせていただくのです!」

玄「通らばリーチです!」パシッ

若者「ロン、7700です」

玄「はうっ!」


やえ「ツモ、3900」


やえ「おっと、またツモだ。2900」


玄(ドラ8聴牌……。ツモればトップ……!)パシッ

やえ「終わりだ……!」ニヤリ

やえ「ロン。1000点」

やえ「諸君、お疲れ様だ」

玄「結局トップにはなれなかったのです……」

やえ「はっはっはっ。私を越えるにはまだまだマメが足りんよ!」

やえ「それに王者には『王者のプレッシャー』というものがある。王者にならないほうが玄の身のためでもあるさ」

玄「ふぅ~む、なるほどなるほどなるほどー」

亦野「小走先輩、終わったんですか?」

やえ「ああ、もちろん勝った。そっちは?」

亦野「私がトップ、続いて池田です。」

池田「どっちともプラス収支だし!」

まこ「おー、おつかれさん」

やえ「うむ、あいかわらず肩ならしにはちょうどいい雀荘だな、ワカメ」

まこ「それはほめとんのか……」

若者「店長の娘さんは打たないんですか? 確か王者と打ったことないですよね?」

まこ「あー、わしはのぉ……」

やえ「なんだ、ワカメも麻雀打てるのか?」

若者「そりゃあ、もう。この雀荘では多分王者たち以外敵無しのレベルですよ」

やえ「ほう。にわかな顔してるのに意外とできるのか」

まこ「まあ店の手伝いがなかったら打ちたいんじゃが、店のこと優先させなあかんけえのぉ」

やえ「そうか。王者と打つのはいい経験になるはず、時間が空いたらいつでも声をかけてくれ」

まこ「おう、そうするわ」


やえ「……今日は時間も遅いしそろそろ練習終了かな」

3人「はい!」


やえ「よし、解散!!」

バタンッ!


まこ「んー、明日ダメもとで頼んでみるか……」

次の日・清澄高校

まこ「……っちゅーことなんじゃ。今日だけ店の手伝いしてくれんか?」

和「染谷先輩が強敵と打ちたいからお手伝いですか……」

咲「カツ丼さんは来ないんですよね?」

まこ「うん、やっぱあかんかの?」

和「いえ、私は大丈夫ですよ。あの服はもう一度着てみたかったですし。宮永さんはどうします?」

咲「……あの服をまた着るのはさすがに────」

久「3人とも、何の話をしてるの?」

優希「私たちも混ぜるじぇ!」

まこ「かくかくしかじか」

久「強敵? もう、そんなおもしろそうな話は私を通してよ」

まこ「なんじゃ、あんたが手伝ってくれるんか?」

久「いや、ギャラリーとして行くわ。あなたたちも行くわよ、咲、和、優希」

咲「ええ!? 私もですか?」

和「わかりました」

まこ「……まぁ、手伝わんでも客として来るならええか」

久「優希も来るわよね?」

優希「もちろん! ……と言いたいとこだが京太郎が日直だ。あとであいつが部室に来てから一緒に行くじょ」

久「そう。じゃあ後でね」

優希「部活に来たのに誰もいなかったら寂しいからな。世話のかかる犬だじぇ」

まこの雀荘

久「さて、例の王者はどの人かしら?」

まこ「そう急ぎなさんな。にわか高校からここに来るんはもうちょい時間かかるわ」

和「やっぱりいいですね、この服」

咲「は……恥ず……」


ガチャッ!


やえ「どしたー? なんか今日は空気が違うな」


ザワザワ    来たぜ……王者たちが……    ザワザワ      ザワザワ
今日はまこちゃんと打つらしいぜ  ザワザワ   まじかよ! これは見ものだ……!


久「あれが……王者の軍勢……!」

和「ってあれ? 玄さんじゃないですか」

玄「あっ! そのおもちは和ちゃん!」

和「なぜ長野に……?」

玄「奈良のおもちはもう味わいつくしたからね」

玄「新たなおもちを探しに一人暮らしをしているのです!」

和「はあ……そうですか」

玄「でもまた和ちゃんと会えるなんて思ってなかったよー。またいっぱい遊ぼうね!」

和「ですね」

やえ「ワカメ、そこのにわか顔のやつらは新人か?」

まこ「ああ、わしの高校の麻雀部じゃ。手伝いやらギャラリーじゃけえ気にすんな」

やえ「王者の打ちしゅじを見たかったのか。なら仕方ないな」

まこ「で、今日は手伝いがおるから一緒に打とうや」

やえ「ほう、いいだろう」ニヤリ


池田「はあ? そこの店員何ずっと華奈ちゃんのこと見てんだし?」

咲「い、いえ……すみません……」ナミダメ

池田「あんま調子のんなし!」

咲(怖い人たちが来たよぉ……)グスッ


やえ「華奈はお取り込み中みたいだし、面子は私、ワカメ、玄、誠子でいこう」

和「玄さんが王者の仲間……?」

東一局

まこ(店が忙しくてこいつらの打ち筋はまだ見たことない……)

まこ(王者の打ち筋っちゅーもんに似た打ち筋がわしの記憶にありゃいいんじゃが)パシッ

亦野「それチーです」パシッ

まこ(一巡目からドラも役満も関係なさそうな牌を? こんなん記憶にない……)

やえ「どうした、ワカメ。そんなニワカ顔晒して」パシッ

亦野「すみません、小走先輩。それポンです」パシッ

やえ「では、これはどうだ?」パシッ

亦野「それもポンです」パシッ

やえ「えっ」

まこ(一巡目から3副露ってなんじゃ。そんなん知らんわ)

…………

亦野「ツモ! 1300・2600」

やえ「やるじゃないか、誠子」

亦野「小走先輩、わざと私が鳴ける牌を捨てなくてもいいですよ」

やえ「いや、私はそんなことしな────」

玄「まさか小走さんは私たちにハンデを!?」

やえ「だからそんなこと────」

亦野「そのまさかだ、玄。でないと小走先輩が私に3副露させるはずがない」

やえ「もうそういうことでいいよ」


池田「さすがキャプテンだし!」

東二局

亦野「ポン!」パシッ

まこ(鳴きマーなら記憶にはあるんじゃが、この短髪はわけわからん鳴きしすぎじゃ……)

やえ(九萬をポン。ということはチャンタ、混一色、対々和のどれか)

やえ(誠子は最速で鳴きたいから、あまり危険牌は考えずいらない牌はすぐに捨ててくるはず)

やえ(まあ役牌を暗刻で持ってる線もあるが、それはどうしようもないし考えても仕方ないな)パシッ

玄「……」パシッ

まこ「なんじゃこの麻雀は……」パシッ

亦野(……鳴けないか)パシッ

やえ「誠子、ロンだ。5200」

亦野「くっ……」

東三局

やえ「流局だな。テンパイ」

亦野「テンパイ」

玄「ノーテンです」

まこ「テンパイじゃ」

まこ(流局までいったゆーのに、なんで他家の手牌含めて1枚もドラが見えてないねん)


久(見たところ和の友達はおもしろいものを持ってるわね)

久(そしてこの短髪の子も変な鳴きをすることがあるから多分特別な打ち手なのでしょうね)

久(王者はまだ特別なものはない。さて、何を見せてくれるのかしら)ワクワク

玄「ロンです! タンヤオドラ6、12300」

まこ「なんじゃその役は」


やえ「玄、ロンだ。7700。防御が薄いな」ニヤリ

玄「小走さんはおもちが薄いのです」


まこ「王者、ロンじゃ。8000」

まこ(王者以外からあがれる気せんわ)

玄「小走さんから出あがり!?」

観客「オオーーーー!!!」

…………

やえ「これで終わりだ! ツモ! 300・500!」

まこ「結局、王者がトップかい」

観客「まこちゃんがラス!? さすが王者の軍勢だ!!」

久(ドラが集まったり、鳴きまくったらツモあがりできたり、ほんとオカルトね)

久(でも王者だけは最後まで仲間のオカルトの弱点をついた打ち方をしただけ。特に変なところはない)

池田「キャプテン! さすがのトップだし!」

やえ「はっはっはっ。そんなの当たり前さ」


久(まさか!)

久(王者は奥の手を隠して打ってたというの!?)

久(そういえば東一局でハンデがどうとか言ってた気がするわね……)

久「これはおもしろくなってきたわ!」

久「咲ー! 次はあなたが王者たちと打ってみなさい」

久(咲が相手ならこの王者も本当の力を見せなければいけないはず……)

咲「わ、私ですか!」

池田「おーなんだー? お前が打つのか? なら華奈ちゃんが相手してやるし」

玄「じゃあ私抜けるね。和ちゃん遊ぼー」ワキワキ

和「仕事中なので」

やえ「じゃあ次は私、誠子、華奈、えーと……名前は……」

咲「あ、み、宮永です……」

やえ「おっけー。じゃあ宮永、一緒に打とうか」

咲(ふぇぇ……こんな怖い人たちと打つことになるなんて……)

ガチャッ!

優希「ただいま参上だじぇ! 染谷先輩、タコスをくれ!」

京太郎(和のメイド姿!)

まこ「はいはい、落ちつきんさい」

玄「憧ちゃんまで!」

優希「ん? お姉さんは誰だ?」

和「玄さん、その子はゆーきといって憧じゃないですよ」

玄「え?」

やえ、池田、亦野、咲卓・東一局

咲(私が勝っちゃったら、やっぱりこの人たち怒るのかな……)

咲(けど、負けるのは嫌だし……ごめんね、原村さん……今回だけ……)パシッ

やえ「……親リーだ!」パシッ

咲(よーし、次の私の番が来たら差し込もう……)

池田「これだし!」パシッ

亦野「……」パシッ

やえ「誠子、ロンだ」

咲「……え?」

やえ「リーチ一発タンピン三色ドラ3 裏が1つで24000だな」

亦野「えっ」

東一局・一本場

…………

咲(短髪さんが残り1000点……。この局は池田さんだけ聴牌してる気がするけど私か王者さんからロンあがり以外は不可……)

咲(じゃあ王者さんに3順後槓材つかませて、それをカンして責任払いさせるかな)パシッ

やえ「……」パシッ

亦野(私は小走先輩にだけ気をつけて手を進める……)パシッ

池田「ローン! 8300! これで亦野はトビ終了だし!」

咲「え?」

やえ「え?」

亦野「え? い、池田。それじゃ小走先輩をまくれないぞ……」

池田「え? あっ」

池田(忘れてたし! 考慮してなかったし!)

池田「ま、まあキャプテンには勝てる気がしないから……と、いうことにしててくれ……」ゴニョゴニョ

やえ「何はともあれまた私がトップだな」

咲(予想外のことが起こったとはいえプラマイゼロできなかった……)

久「咲ですら王者に本気を出させることはできないというの……?」


やえ「おっともうこんな時間か。6時半までには帰るようママに言われてるからな」

やえ「みんな、今日の練習は終わりだ」

3人「はい!」


まこ「どうじゃった部長? なんかおもしろい奴らじゃろ?」

久「ええ。明日もここに来たいくらいだけど、明日は県予選の説明会があるのよね。残念だわ」

次の日・にわか高校麻雀部部室

亦野「先輩、今日はあの雀荘行くのはやめにしませんか?」

やえ「というと?」

亦野「前、あの雀荘で他のところにも行ってみればと言われたので。他のところに行くのもいい経験になるかと」

池田「でも、他の雀荘なんてにわかしかいない可能性もあるし!」

やえ「ならにわかじゃないやつらが集まる場所に行けばいいさ」

玄「?」

やえ「誠子、この辺で一番大会で結果を残してる高校はどこだ?」

亦野「え? 確か風越女子……だったかと」

やえ「では今日はそこに乗り込むぞ!」

風越女子

西田「あー、そういえば今日は部長と監督は説明会にいってるのよね。またミスったわ……」

未春「はい、でも名門として取材にはしっかりお応えさせていただきます!」

西田「うん、じゃあまずは────」


ガチャッ!!


やえ「やあ! 名門風越女子の諸君! 王者の乗り込みだ!!」

玄「がおー」

未春「え?」

西田「ん? 何? サプライズ?」

未春「え、えーと……あなたたちは……?」

池田「こいつキャプテンを知らないし! にわかだし!」

やえ「私はにわか高校麻雀部小走やえだ。今日はよろしく頼む」

未春「今日はって……事前にアポイントメントを────」

未春(いや……もしかしてコーチが私たちに伝え忘れたのかも)

未春「いえ、今日はよろしくお願いします」

未春「ということで西田さん、今日は合同練習なので自由に取材していってくださいね」

西田「え、あ、はい」

西田(名門でもにわか高校なんて無名校と合同練習するのね)

…………

池田「ロン! 12000だし!」

未春「くっ、なんて強さ!」


玄「ツモ、ドラ7! 8000オール!」

文堂「うわあああああ!!!」


亦野「ポン ポン ポン ツモ! 1300・2600!」

深堀「……」ドムッ


やえ「ロン! 1000点!」

モブ「きゃああああああ!!」


西田「風越女子のレギュラーと同等……いやそれ以上!」

やえ「にわかは相手にならんよ!」

未春「くっ、風越でエース張れそうな実力の人たちが集まる高校がこのへんにあるなんて……」


西田「小走さん、すごく強いみたいだけど……」

やえ「ん? 王者の打ちしゅじに興味があると。まあ私らににわかは相手にならんよ」

西田「王者……? 高校生で王者というと宮永選手ですけど、目標にしてるんですか?」

やえ「宮永? あいつそんなに強かったのか。私と一度打ったがにわかまるだしでダメダメだったぞ」

西田「宮永選手がダメダメ!? もしかしてあのチャンピオンに勝ったのですか!?」

やえ「当然だ。2万点以上差をつけて勝ったさ」

西田「僅差でもない!? これはスクープだわ! すぐに出版社に帰らないと!」

一週間後、『WEEKLY麻雀TODAY』が発売。
麻雀界で小走やえという選手を知らぬものはいなくなるほどとなった。
ただにわか高校麻雀部員を除いては……

風越高校

久保「なんだこの記事はぁ!!」

未春「す、すいません……」

久保「名門に泥塗ってんじゃねーぞ池田ァ!」

美穂子「落ち着いてくださいコーチ。うちの部に池田という部員はいません」

久保「これに懲りたら今年こそは全国行くぞ池田ァ!」

にわか高校

やえ「うーん、なんか学校でいつもより目立ってる気がするなあ」

池田「マスコミも出入りしてるらしいし!」

亦野「クラスの人から小走先輩にサインを貰ってきてって頼まれた」

玄「あと、麻雀部にいれてとも言われたのです!」

やえ「おっと、わかってると思うがにわかは部員にいれてはダメだぞ」

やえ「あとマスコミっぽいのが練習風景を見せてって言ってきても断るんだ。そいつらは王者の打ちしゅじを盗もうとしてる」

玄「はい!」

やえ「今日はもう解散にするか。今の状況は落ち着かん」

帰り道

玄「うーん、練習がなくなって暇ができちゃったよ」

玄「夏らしくおもちウォッチングでもしようかな……」


?「……」トコトコトコ


玄「あの後ろ姿……どこかで……」

玄「うーん……。…………はっ!」

玄「もしかして赤土さん!!」

赤土「え?」クルッ

玄「やっぱり!」

赤土「玄!? ど、どうして……」

玄「かくかくしかじか」

赤土「なるほど、一人暮らしね……」

玄「赤土さんはどうして長野に?」

赤土「仕事やめたあと阿知賀に行ったんだけど、やっぱり麻雀部がなくてね。自分探しの旅してるんだ」

玄「なるほどなるほどなるほど~、ニートですかー。じゃあ私の高校の麻雀部の顧問してくれませんか」

赤土「再就職先! 玄の高校どこ!?」

玄「じゃあ今から案内しますっ」フンスッ

なんやかんやあって

赤土「今日から麻雀部の顧問となった赤土晴絵です、よろしく」

玄「受かったんですか! おめでとうございます!」

赤土「うん、なんかね、学校側が麻雀部の顧問欲しかったらしくて。教職は来年からで顧問だけは今からやってくれって」

やえ「玄から聞いたよ、レジェンドというらしいな。部長の小走やえだ。よろしく頼む」

池田「レジェンド! かっこいいし!」

亦野「私たちと同じ雰囲気を醸しだしている方ですね」

赤土「王者の風格ってやつ? あちゃー、隠しててもにじみでちゃうかー」アハハ

とある場所

西田「小鍛治プロ、今日はお時間をとらせていただいてすみません」

健夜「いえいえ、大丈夫ですよ」

西田「さっそく聞きたいことがあるのですが」

西田「今、高校生の麻雀界でうわさになってるにわか高校、ご存知ですか」

健夜「ええ、あの宮永照さんをトバした美少女選手たちが集まってる高校ですよね」

西田「……えっ、今そんなことになってるの?」

健夜「?」

西田「あ、失礼。で、その高校の麻雀部は赤土晴絵という方が顧問になったそうで」

西田「その人は学生時代に小鍛治プロと戦った経験があるので、お話を聞かせてもらえないでしょうか」

健夜「赤土さん……って最近まで実業団にいたあの?」

西田「そうですね」

健夜「あの人は本当にすごい打ち手ですね。今でもあのハネ満は記憶に残ってます」

西田「そんなにすごい方なんですか」

健夜「はい。でも私、振り込んだ後ムキになっちゃって……あの後のことはあまり記憶にないんですよね」

健夜「機会があれば是非もう一度戦ってみたい選手です」ゴッ!

西田(小鍛治プロがこんなに闘志をむき出しにするなんて……)

西田(多分小鍛治プロと同等の実力をもつライバル。これはスクープだわ!)

後日・にわか高校麻雀部

赤土「皆、麻雀部宛てに手紙が来たよ」

やえ「ん? なになに?」

…………

亦野「つまり私たちの実力を見込んで、この手紙の主のいとこと麻雀してほしいとのことですね」

玄「あんな難しい文章を読めちゃうなんて……」

池田「どうしますキャプテン? どうせ私たちに比べるとにわかな打ち手だし!」

やえ「いや、せっかく手紙を送ってくれたんだ。練習に付き合ってやろうじゃないか!」

龍門渕高校

やえ「やあ! 龍門渕高校の諸君! 王者の乗り込みだ!!」

池田「にゃー!」

透華「いらっしゃいまし。にわか高校の方たちですわね」

やえ「部長の小走やえだ、よろしく」

透華「龍門渕透華、忙しいところご足労頂き感謝しますわ」

やえ「して、私たちでないと相手にならないという打ち手はどいつだ?」

透華「衣なら裏の扉から出てまっすぐの別館にいますわ」

透華「頼んだ私が言うのもおかしいですけど、衣に潰されそうならその前に途中で帰っていただいて構いませんわよ」

やえ「ふっ、誰にものを言ってるんだ?」ニヤリ

一(去年のインハイMVPの衣を相手にするのにこの自信。この人……バカなのか、それとも────)

赤土「まあ、潰れそうになったら私がやめさせるし大丈夫だよ」

赤土「私も一度潰れかけたことがあるからね。部員にまでそんな体験はしてほしくないしさ」

透華「頼みますわ。私たちは衣の練習中は館には行きませんので、衣が自分からやめることはありません」

透華(この方があの小鍛治健夜と同じ実力を持つ赤土晴絵……。さすが、頼りになりますわね)


池田「華奈ちゃんと打って壊れるのはどっちかな」

玄(おもち大きい人だといいなあ)

亦野(私より格上の相手なんてそうそういないはず)

やえ「にわかは相手にならんよ!」

衣のいる別館

ガチャッ!

やえ「やあ! 天江衣とやら! 王者の乗り込みだ!!」

亦野「が、がおーだにゃー……」

衣「な、なんだいきなりっ! お前たちはっ!」

玄(がっかりおもち! 将来性もなさそう!)

赤土「私たちはにわか高校麻雀部だけど……龍門渕さんから聞いてない?」

衣「あっ、お前らが衣の遊び相手とやらか?」

衣「そこの短髪とおもちの二人は微弱ながら異質のものを感じるが、その程度で衣の相手が務まるのか?」

池田「はあ? お前何キャプテンバカにしてんだし!」

衣「ひぃっ! なぜ怒鳴るのだっ。こ、衣は悪いことしてないぞ……!」

赤土「じゃあ早速練習始めよっか。そのためにここまで来たんだし」

衣「お前たちと衣じゃ実力の差が有りすぎると思うが……」

池田「まだ私らの実力わかってないし!」

やえ「まあそう怒りなさんな。今から麻雀でどちらが正しいか証明できるさ」

池田「じゃあまずは私が相手になるし」

衣「何故お前たちはそんなに自信満々なんだ」

やえ「面子は私、華奈、衣、玄でいこう」

東一局

池田「華奈ちゃんが親だし!」

衣「池田とやら。さっきから上から目線だが、お前は本当に強いのか?」

池田「ふっ、私が本気を出せばそこらのにわかは麻雀ができない体にさせれるし」

衣「えっ……麻雀ができない体……?」

池田「ああ、(精神的に)もうズタボロになって牌が握れなくなるな」

衣「(肉体的に)ズタボロにして、牌を握れなくするのか!?」ビビルッ

池田「そういえばお前は、華奈ちゃんの実力を見誤ってるにわかだったな。なら牌が握れなくなるかもしれないし」

衣「…………」ガクガクブルブル

衣(化物のようなやつが来てしまった……。助けてぇ……トーカァ……)グスンッ

衣「お、お前たち!」

やえ玄「?」

衣「こ、こんなやつと同じチームで、なな何ともないのか!? こいつはやばいぞ!」

池田「やっと華奈ちゃんのすごさがわかったか」

やえ「まあ確かに華奈は普通の打ち手ではない、優秀な後輩だな」

衣「なんだその余裕は……! もしやお前たちも池田と同じ系譜のものなのか……?」

玄「よくぞ聞いてくれました! 私はドラゴンロードと呼ばれているのです!」

衣「どらごんろおど?」

やえ「かっこよくいうと、『龍を統べる者』という意味だな」

玄「へー」

衣「龍!? それは伝説上の生き物ではないのか!? しかもそれを統べる!?」ガクガクガクガク

やえ「そして私がこの部員たちを統べる者だ。部長だし」

衣「こ、このような化物たちをまとめあげているだと……」

衣(だ……だだだ、だめだ……。こんな奴らと勝負すると龍に喰われて死んでしまうではないか……)

池田「どうしたし、天江の番だ。早くツモれよ」

衣「こ……」

玄「?」

衣「こ、降参だ! 衣はまだ死にたくないぞっ!」

池田「え、まだ一局もしてないけど」

衣「降参ったら降参なのだ!」


やえ「ふっ、また勝ってしまったか……」

やえ「やはりにわかは相手にならんよ!」

龍門渕家・本館

やえ「すまんな、あまり練習にならなかったよ」

透華「いえ、お気になさらずですわ」

衣「とーかぁ……」ダキッ

透華(衣がこんなに怯えるなんて……。少しかわいそうですけど、これで大会で慢心することが無くなれば……)

透華(それにしても、衣を降参させるほどの実力。この高校が大会に出ていたらと思うとぞっとしますわ)


ピンポーン


ハギヨシ「透華お嬢様、『WEEKLY麻雀TODAY』の西田様がお越しになられました」

透華「マスコミ? そんな約束はしていませんけど……いいですわ、通しなさい」

西田「急に押しかけてすみません。今日にわか高校がここで練習すると聞いたもので……」

やえ「なんだ、私たちに用か?」

西田「龍門渕と練習したということは、やはり天江衣選手とも?」

透華「そのために呼んだのですわ。まあさすが小鍛治健夜の跡継ぎが4人集まった高校でしたわね」

赤土「」ビクッ

西田「それはもしかしてあの天江選手が負けたとでも?」

池田「東一局の時点で降参させてやったし!」

西田「東一局!?」

…………

やえ「おっと、6時半だ。もう帰らなくてはならない」

西田「そうですか。もう少し話を聞かせてほしかったのですが……」

衣「では続きは衣が話そう。誰かに話さねば怖くて夜寝れないぞ……」

西田「ほんとですか! ありがとうございます」

やえ「私たちは解散する。あとは頼んだぞ、衣」

衣「ああ」


衣「あ、あと、玄とやら!」

玄「?」

衣「りゅ、龍を今度見せてくれるか……? 恥ずかしながら、衣はまだ龍を見たことがないのだ……」

玄「りゅう……? う、うん。わかったよ」

玄(何の話なんだろう)

一ヵ月後・にわか高校

赤土「みんなー、今日から雀卓を注文できるよー」

やえ「やっとか」

亦野「あれ? 自腹で買うんですか?」

やえ「いや、なんか部費が出た。顧問がついたからかな」

玄「今年はインハイにも出ないのに、不思議だね」

池田「学校側もやっと麻雀部の重要性がわかったか」

赤土「まあそんな感じかな。学校が来年この部に新入部員がたくさん入るだろうから、これからも精進するようにって」

やえ「これ以上精進すると、高校生だけでなくプロでも敵なしになってしまうな」

赤土「あと突然だけどテレビ局の人が来てるよ。この麻雀部に突撃取材だって」

亦野「テレビ?」


ガチャッ!!

恒子「どうもー! ふくよかじゃないスーパーアナウンサー、福与恒子でーす!!」

やえ「どうも。にわか高校麻雀部の部長、小走やえだ」

恒子「いやー、急な取材なのに受けてくれてありがとう! カメラあるけど気にせずありのままの姿を見せてください!」

やえ「まあ、最近西田という輩がよく取材に来るからな。緊張などせんよ」

恒子「さっすが今話題のスーパールーキー! じゃあ早速取材にとりかかろうかな」

赤土「すみませんが私は雀卓を注文しにいかなければならないので、今日は席を外させてもらいます」

恒子「あららららそうですか。残念ですねー、監督さんにも話を聞きたかったのですが」

赤土「私も数々のレジェンドコーチングを話したかったんですけどね。ま、私のことなら部員にでも聞いてください」

亦野「赤土先生って私たちに教えてくれたこと何かありましたっけ」

赤土「じゃああとは頼んだよ。やえ、玄、誠子、池田」

バタンッ

恒子「行ってしまいましたか。あの監督はやはり大物の匂いがしますよ!」

玄「赤土さんは阿知賀のレジェンドだからね」

恒子「過去にあのすこや……小鍛治健夜と同等の力を持ち、惜しくも敗れた赤土晴絵かぁ」

玄「えっ」

恒子「うん、さすがレジェンドと呼ばれることだけはあるね!」

玄「いや、あの……」

亦野「赤土先生にそんな過去が!?」

やえ「小鍛治健夜って誰だ」

池田「過去最強のプロ雀士ですよ、キャプテン!」

やえ「なんだと! レジェンドはそんなに強かったのか! 伝説という名に恥じぬ戦績……」

玄「」

恒子「なーに驚いてるんですかあ! あなたたちはそのレジェンドより強い集団なんでしょ!」

やえ「え?」

恒子「世界中のプロを倒してきたにわか高校麻雀部! その4人の力を合わせれば世界征服も夢じゃない!」

恒子「その中でもキャプテンの小走やえは、世界チャンプをトバしたことがあるほどの実力の持ち主といううわさ!!」

恒子「確かにこの部員たちなら、レジェンドという呼び名がないと監督が務まらないよね」

やえ「えっ……。……え?」

玄「……」

恒子「おっとどうしたんですか王者たち?」

やえ「い、いや……常々、私は麻雀の王者……高校生で一番強く、実力はプロのレベルだと自負していたが」

やえ「そんな世界で通用するとは思えn────」

池田「やっぱりキャプテンはすごいし!」

亦野「前から謎の多い人だとは思っていましたが、これほどとは……」

玄「赤土さんはともかく、小走さんなら世界に通用しててもおかしくないのです!」

やえ「お前たち……」

やえ(まさか私は、私の知らないうちに世界チャンプを倒していたのだろうか)

やえ(そして高校生の王者ではなく、世界の王者になっていたのかもしれん)

  「キャプテン!」 「小走さん!」 「小走先輩!」

やえ(それなら最近の取材依頼の連続も納得がいく……!)

やえ「はっはっはっ! 私は小走やえ! 世界チャンプなんてにわかは相手にならんよ!」

恒子「おお! やはりあのうわさはマジ情報だったようです!!」

恒子「では次はにわかのドラゴンロード、松実玄さんに話を聞きたいのですが」

玄「なんですかな?」ドヤァ

恒子「あなたは龍を操るといううわさが回っているのだけど、ほんとう?」

玄(龍を操る? ドラのことかな)

玄「ええ、にわか高校麻雀部員としては当然です!」

恒子「聞きましたか、視聴者の皆さん! にわか高校麻雀部としては当然ですよ! なら他の部員もすごいの?」

玄「もちのろんです! ここはにわかじゃない人のすくつですから!」ドドドドヤァ

恒子「すくつ? まあいいや。では次は池田さんに話を伺いましょう!」

池田「おうおう、なんだし?」

恒子「あなたはあの天江衣さんに本物の化物といわれてたけど、今はヒトの姿と変わらないね」

池田「化物? まあ(麻雀のレベルは)化物なんだろうけど、華奈ちゃんはいつも人の姿だし」

恒子「本当に化物だったんですか!? 天江選手の妄想だと思ったのに……」

池田「まあキャプテンレベルの化物ではないけどな」


恒子「じゃあ最後に亦野さん。あなたは特にすごいうわさは無いんだよね」

亦野「一応、自分ではそこらの高校でならエースを張れると思っています」

恒子「……えーと、それだけ?」

亦野「はい」

恒子「あ、うん、そっか。ありがと」

…………

恒子「今日はお疲れ! 放送は再来週の全国大会の中継で、尺が余ったら流れるからね!」

二週間後・にわか高校

やえ「そういえば明後日から全国大会が始まるな」

亦野「気になるんですか?」

玄「そういえば和ちゃんが全国大会出場したって言ってたから見なきゃ」

やえ「まあ……気にはなるかな」

赤土「おーっと、ならいい提案がきてるよ」

やえ「なんだ?」

赤土「遠出になるからやめようと思ったんだけどね、練習試合の申し込みがきてるんだ」

やえ「ほう。どこから?」

赤土「高校生チャンプのいる……白糸台高校!」

亦野「全国一位のところですか……」

やえ「知っているのか、誠子」

亦野「ええ、中学のときは白糸台に行くつもりでしたから。引越しがあったので無理でしたけど」

赤土「知り合いから白糸台が麻雀打ってるビデオ借りたんだけど、やっぱ強いんだよね」

池田「どうせ華奈ちゃんほどじゃないし!」

赤土「でも、白糸台ナンバーワンの人はともかく、ナンバーツーの人は弱点がありそうだよ」

やえ「ほう」

赤土「……で、その弘世さんの弱点……っていうかクセが……」

4日後・白糸台高校

やえ「やあ! チーム虎姫の諸君! 王者の乗り込みだ!!」

赤土「がおーだにゃー!」

菫「よく来てくれた。私が部長の弘世菫だ」

やえ「麻雀の王者、小走やえだ」

淡「えー! この人が王者ー? 全然弱そうだよー」

池田「はー、キャプテンのすごさが分からないなんて超にわかだし!」

菫「どうだ、照。この人に見覚えはあるか?」

照「うーんやっぱりないかな……。でも長野の人だし小さい頃に打ったことあるのかも」

菫「そうか」

菫「王者とやら」

やえ「どしたー?」

淡「ぷぷー。菫先輩が『王者』なんて中二ワード使っちゃってるよ」プクク

照「シャープシューターって呼ばれて天狗になってるし、意外と中二病なのかも」

菫「……ゴホン!」

菫「小走さん、あなたが照に勝ったというのは本当ですか?」

やえ「照? 誰だそれは」

照「え、えーと、私です」

やえ「誰だおまえ」

菫「……! やっぱりお前は嘘をついていたというのか」

やえ「何のこと?」

菫「この雑誌に載っていた。おまえが照より強いという記事が」 つWEEKLY麻雀TODAY

やえ「まあ王者の打ちしゅじの前では、誰であろうとにわか同然だな」

菫「この雑誌のせいでマスコミが照が弱いとか言い出した、許されない」ゴッ

照「菫、私は別に気にしてないから怒らなくても……」

菫「お前はもっとチャンピオンとしての自覚を持て」

やえ「まあとりあえず私が悪いのかどうかは一度おいといて」

菫「おくな」

やえ「今からそこの照と勝負して勝てば、その記事は真実となって何も問題はないな」ニヤリ

菫「よくわかっている。明日準決勝を控えて忙しいのに、今日は呼んだのはそのためだ」

菫「ということだ、お前のほうが強いということを教えてやれ、照」

照「えー。私どっちが強いとかあんまり興味ないよ。菫が勝負すればいいんじゃないかな」

菫「私が? まあナンバーツーの私が勝てば、ナンバーワンの照は王者より強いということにはなるが」

淡「今の菫先輩はナンバースリーだよ」アハハー

菫「……」

菫「と、とにかく、王者。話が変わった。私が卓に入る」

菫「世界チャンプだかなんだか知らんが、そっちから3人選んでいいぞ」

菫「3人まとめて蹴散らしてやる」

やえ「ふっ、いいのかな、そんな大きくでて。ではこっちは私、玄、誠子でいこう」

東一局

ザワザワ   麻雀の王者と白糸台の弘世が勝負!?   ザワザワ
な、なんだってー   ザワザワ       今から始まるぜ!   ザワザワ


やえ「ん? なんか騒がしいな」パシッ

菫「ああ。王者は白糸台とすぐにでも知らしめるために、マスコミを呼んでおいた」パシッ

玄「ほへー」パシッ

亦野「……」パシッ

やえ「マスコミにも見せてやろう、王者の打ちしゅじを!」パシッ

菫(全国一位の威厳を保つためにさっきは大きくでたが、相手は王者。東風は様子見でSSなしでいくか……)パシッ

玄(やっとおもちがある人と打てるのです!)パシッ

菫「ロン。5200」

玄「はぅっ!」


亦野「ポン ポン ポン ツモ。700・1300」


菫「ツモ! 2000・3900!」


やえ「ぐぬぬ」

菫(なんだ、まだ私は本気も出していないのに、弱すぎる……)

菫(やはり麻雀が強いというのも照に勝ったというのも嘘だろうな)

菫(これ以上は時間の無駄だ。狙い撃ちして一気に終わらせる!)

東四局

菫(まずは王者を射貫く!)パシュン!

玄(あ、右手がクイッってなった!)パシッ

亦野(小走先輩狙いか……)パシッ

やえ(王者の打ちしゅじで回避!)パシッ

菫「なに! 避けられた!?」

やえ「どうした、対局中に叫んで。にわか臭がにじみでてるぞ」

菫「ぐぬぬ」

菫(もう一度だ! 二射目を発射!)パシッ

玄「あ、ロンです。タンヤオドラ7、16000」

菫「ぐぬぬぬぬ」

南一局

菫(まずい……。たった一度の放銃でラス転落……) 

菫(トップになるために標的変更! ドラゴンロードを射貫く!)パシュン!

玄(また動いたのです。不要牌は切っちゃいけないから……これだね!)パシッ

菫「なぜ当たらない……!」

亦野「……」パシッ

やえ「……」ニヤリッ

やえ「王者のツモ! 4000オール!」

菫「ぐぬぬぬぬぬぬ」

南一局・一本場

菫(まだだ! 王者に矢を射出!)パシュン!

亦野「それロンです。5200の一本場は5500」

亦野(ロンとか久しぶりにしたなあ)

菫「…………」


淡「うわー菫先輩だめだめじゃん」

照「矢が3回もかわされた」

尭深「あれって、かわせるものなんですか?」

淡「かわせないと思うけど。調子悪いのかな」

尭深「調子悪いなら、普通の打ち方に戻せばいいかと」

照「まあ菫は変に意地っ張りだから、いまさら戻さないんじゃないかな」

淡「菫先輩って結構ポンコツだよねー」アハハー

照「ねー」

やえ34300  菫11100  玄29100  亦野25300

南二局

菫(一人沈み……。この最後の親番、絶対にあがってみせる! 王者にシャープシュート!)パシュン!

玄(また小走さんかぁ……)パシッ

やえ「玄、ロン。2000点」

玄「なんとっ」


菫(くそっ、まだだ! 王者から出和了ればチャンスはある!)パシュン!

亦野「ツモ。1000・2000」


菫(オーラス……。だが倍満まで一向聴の好配牌!)

菫(王者から出和了りで、まくってトップだ!)パシッ

やえ「あ、その『中』ポン」パシッ

…………

やえ「誠子、ロン。1000点」

ギャラリー「うおー! あの弘世菫が一人沈みで負けたぞ!」

ギャラリー「さすが王者だー!」


菫「ぐぬぬ」

やえ「はっはっはっ。高校生のトップといえど最初の勢いだけだったな!」

やえ「にわかは」

亦野「相手に」

玄「ならんよ!」


池田「所詮白糸台も人レベル。王者には程遠いし!」

菫「す、すまん……」

照「一番強いとかそういうのは取材がいっぱい来てやだったから、私はこれでも良かったよ」

照「私のために怒ってくれてありがとう、菫」

菫「まあお前がそう言うならいいが……」


マスコミ「王者! 質問よろしいですか!?」

マスコミ2「王者ー! 王者ー!」

やえ「もう7時だ。夜の出歩きはいけないことだから、迅速に頼む」

玄「どうもどうも、おもちマイスターこと松実玄ですよ」

亦野「ドラゴンロードだろ」

池田「華奈ちゃんに聞きたいことがある奴は前に出てくるし!」

赤土「まあにわか高校は私の指導あってのもの、みたいな?」アハハハ

華奈ちゃんは、華菜ちゃん?

次の日・東京のホテル自室

やえ「レジェンド、今日長野に帰るんだったっけ」

赤土「うん、そのつもり。一応お金は多めに持ってきてるから、インハイ見たいならまだ東京にいれるけど」

池田「インターハイなんかにわかの出る大会だし!」

玄「巫女さんのチームが負けてた、つらい」

亦野「仲がいいやつでもいたのか?」

玄「いないよ。でも仲良くはなりたいね!」


TELLLLLLLLLLLLLL


赤土「ん、電話? …………はいもしもし」

…………

赤土「やえ、お客さんだって。ロビーに来てとのこと」

やえ「私か? やれやれ、人気者はつらいな」

>>125
ごめん、素で間違えてた


ロビー

咏「やーやー小走ちゃん。はじめまして」

やえ「誰だ」

咏「あーそだね。私は三尋木咏。いちお、プロでインハイの解説もやってるんだけど」

やえ「プロとな。にわか高校麻雀部部長、小走やえだ」

咏「どうもご丁寧に。……で、早速頼みがあるんだけどさ」

やえ「この王者に任せろ」

咏「明後日にインターハイの団体戦決勝があるの知ってるかい?」

やえ「ああ」

咏「その団体戦の表彰式の後にイベント戦をしようと思ってんだよねぇ」

咏「メンバーは小鍛治プロと……あ、小鍛治プロは知ってる?」

やえ「ああ、私ほどではないが強い人と聞いている」

咏「うん。で、昨日までメンバーが小鍛治プロ、私、優勝校のエース、の3人までは決まってて、あとどうしようって思ってたら」

咏「なんか白糸台の宿舎におもしろい面子がいるじゃんって」

やえ「つまり、私にそのイベント戦に出てほしいと」

咏「単刀直入に言うとそゆこと。東京の滞在費もうちらが出すよん」

やえ「ふむ。……一つ聞くが、それにイベント戦は私が出ないとダメか?」

咏「というと? チームメイトの誰かがって意味なら、まあいいけどできたら小走ちゃん自身がいいかな」

やえ「そうか……、だが、────だから、────って」

咏「あーそれはそれでおもしろそうだねぃ! うん、それでもいいよっ」

やえ「よし、そういうことで頼んだぞ。ではまた三日後に」

咏「やー、協力感謝感謝! じゃあ三日後にね、知らんけど」

自室

やえ「ただいまー」

玄「あ、小走さん。誰が来てたんですか?」

やえ「んー、なんか三尋木っていうプロの人」

亦野「三尋木プロ!?」

池田「スカウトですか? さすがキャプテンだし!」

やえ「いや、なんか団体戦決勝の後にプロと優勝校のイベント戦があるから、それに出てくれって」

赤土「おお、すごいじゃん。それで出るの?」

やえ「ああ。三日後みんな予定空けといてくれ」

亦野「はい」

三日後・試合会場

アナウンサー「大将戦終了ぉぉぉおおお!!! 優勝は清澄高校!」

咲「やったー」

淡「くやしー」


表彰式

健夜「優勝おめでとう」 つ優勝カップ

久「ありがとうございます」

…………

アナウンサー「これにて表彰式を終わります」

アナウンサー「そして……イベント戦の始まりです!」

咲「イベント戦?」

アナウンサー「プロvs高校生勝つのはどっちだ! というわけで今からある方々に半荘戦をしていただきます」

アナウンサー「まずはプロ側から登場!」

アナウンサー「日本最強のアラフォー! Grandmaster、小鍛治健夜!」

健夜「アラサーだよ!」

アナウンサー「プロ二人目は迫りくる怒涛の火力! Cat Chamber、三尋木咏!」

咏「いぇい、どもどもー」

アナウンサー「そして高校生側からは清澄の嶺上使い、宮永咲!」

咲「えぇ!? わたし!?」

久「ふふっ、呼ばれてるわよ。行ってきなさい」

咲「は……はいぃ……」

アナウンサー「そして最後の一人はこの人から紹介していただきます!」

アナウンサー「拍手で出迎えてください、にわか高校麻雀部のみなさんです!」

   パチパチパチパチパチパチパチ

やえ「どうも、にわか高校麻雀部部長、小走やえだ」

赤土「どーもどーも……って紹介? やえが出るんじゃないの?」

やえ「あぁ、私が出ても勝ってしまうからな。出るのは別のやつだ」

やえ「それよりレジェンド。あいつを見てどう思う?」ユビサシ

赤土「?」

健夜「……」ジーー

赤土「」ガクガクブルブル

やえ「ふっ、武者震いか。さすがライバルといったところ……」

アナウンサー「では小走選手。最後の一人の紹介を」

やえ「うむ」

やえ「諸君! 私は王者だ! だが、私一人の力で王者となったわけではない」

やえ「4日前の弘世菫との練習試合。あれは『ある者』の助けがなければ危ない試合だった」

やえ「ではその『ある者』とはいったい誰なのか」

やえ「それはこの伝説のレジェンド、赤土晴絵だ!」

やえ「レジェンドは私の師。この師の助言により私は勝利を得た」

やえ「私は高校三年生。最後の夏、その師に、今私は恩を返そうと思う」

やえ「レジェンドの永遠のライバル、小鍛治健夜との試合という形で!」

観客「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」」

赤土「…………」

赤土「……え?」

やえ「さあ、レジェンド! 今度こそ、10年越しに、小鍛治健夜に勝つんだ!」

健夜「……」ジーー

赤土「い、いやむりむりむり! 勝てない勝てない無理だって!」

やえ「レジェンド、お前は確かに10年前に小鍛治健夜負けた」

やえ「だが今なら勝てるはずだ」

やえ「私たち、にわか高校麻雀部の王者の打ちしゅじを見慣れた今なら!」

赤土「で、でも……」

玄「赤土さん! 赤土さんは一度恐怖を乗り越えました。それは勇気がいることだったはずです!」

玄「今ここで、もう一度勇気を振り絞ってみてください! 赤土さんはとても強いかたですから!」

赤土「玄……」

池田「レジェンドならきっとやれるし!」

亦野「赤土先生より格上な選手なんて、そうそういません!」

赤土「誠子……池田……」

赤土「……うん、なんか勝てる気がしてきた」

アナウンサー「さあ、始まりました! 頂上決戦! はたして誰が勝つのか!」

健夜「このときを心待ちにしていました」

赤土「今日は、勝てる気が、します……。 む、昔の私とは……違う……」

咏「なんか二人だけの勝負みたいになってるねぃ。私もいるってこと、思い知らせてやろうか」ゴォォッ!

咲「あの怖い人たちと勝負じゃなくてよかった……。これなら本気を出せます!」ゴォッ!

健夜「今日は麻雀を楽しみましょうね、赤土さん」ゴォォォォッ!!

赤土「あっ……(察し)」ガクガク


玄「赤土さん、大丈夫でしょうか」

やえ「大丈夫だ、レジェンドは王者と同じ類のもの。それに対してプロはにわか……」

やえ「レジェンドににわかは相手にならんよ!」


レジェンドがすこやんに勝てると信じて! カン!

終わり。オチ違うのが思い浮かばずごめんなさい
読んでくれた方ありがとうございました

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