響「貴音ー!」
P「ん?」クルッ
響「あ、あれ? プロデューサー?」
P「おう響、いったいどうしたんだ?」
響「ごめん、貴音に用事があったんだけど……間違えちゃった」
P「おいおい、うっかりしてるなぁ」
響「でも、本当に……貴音とプロデューサーって後ろから見るとよく似てるよ?」
P「そうかな? まぁ、髪の色はそうかもしれないが……」
響「そうそう、その銀髪とか!」
貴音「どうしたのですか、響?」
響「あ、貴音」
響「ちょうどよかった、ねぇ貴音?」
貴音「なんでしょう?」
響「どうして貴音とプロデューサーは後ろ姿が瓜二つなんだ?」
P「え? それは……その」
貴音「……プロデューサー、もうよいのではないでしょうか?」
P「そうか? ……まぁ秘密にしといても仕方ないかな」
貴音「えぇ」
響「え? どういうこと?」
P「実は貴音は俺の従妹なんだ」
響「あー、なるほど」
響「……」
響「えっ?」
貴音「お兄ちゃああああん!たかちゃんのあいすおちちゃったあああ!」
P「あー、ほらほら。たかちゃん泣かないで。また買ってあげるから」
響「え、従兄妹?」
貴音「はい、実はそうなのです」
響「か、髪の毛は……色はともかく長さが似てるのは?」
P「髪の毛の長さはおしゃれ……じゃなくて、切ってもこの長さまで凄い勢いで伸びるんだよ」
響「そ、そうだったの? いや、でもこまめに切ればいいんじゃないの?」
P「いや、そうじゃなくて……そうだな、ハサミで、こう」ジョキッ
響「あ……」
P「それでも……」シュルシュルッ
P「な?」ファサッ
響「なんだか今見てはいけないものを見た気分だぞ……」
響「た、貴音は?」
貴音「わたくしは切ってしまえばそのままです。この性質はお兄様だけですね」
P「あぁ、懐かしい呼び方だなぁ」
貴音「ふふっ、えぇ。まことに」
響「あぁ、よくわかんないけどいい雰囲気が!?」
P「まぁ、そういうわけなんだよ。響」
響「うーん、納得したようなできないような……腑に落ちないぞ……」
P「貴音が芸能界にでるって聞いた時は驚いたなあ」
貴音「わたくしも、導になれるようにと思っていたのです。それならばお兄様のいるところへ、と」
P「昔はよく遊んだなぁ……」
響「貴音の昔のこと、かぁ……プロデューサーのことも併せて教えて欲しいかも」
P「うん? 俺は構わないけど……」
貴音「響にならば、いいでしょう。といっても、いたって普通な日常ばかりでしたが」
響「髪の毛が凄い速度で伸びるのは普通じゃないと思うぞ」
P「貴音が赤ん坊のころから見てるから、従妹っていうよりも妹みたいなものだったな」
貴音「その頃のことはあまり覚えていないのです。やめてください……お恥ずかしい限りで……」
響「へぇー、貴音の赤ん坊のころってどんな感じだったの?」
P「んーと……最近データ化して持ち歩いてるんだよ。携帯で見れるぞ、ほら」
貴音「なんと」
響「そうか、プロデューサーはすごいなぁ」
P「まぁプロデューサーだからなぁ」
響「それじゃあみせてもらおうかな? ……これは」
P「赤ん坊のころの貴音はハイハイをなかなかしなくてなぁ」
貴音「そ、それはっ……」
P「でもうちわであおいでやると両手両足を上げて滑空するみたいなポーズをして、すごく可愛かったんだよ」
貴音「あぁっ、響! やめるのです! それは」
響「あはは、確かに可愛い写真だなぁ」
響(ばっちりカメラ目線でピースまで作ってるし、髪の毛が肩まであるけど……)
P「どうだ、赤ん坊の貴音も可愛いだろう?」
貴音「……まったく、プロデューサーもいじわるですね」
P「あ、プロデューサーに戻った……」
貴音「知りません」
P「ごめんな、貴音」
貴音「では、ひざを」
P「……あぁ、はいはい」
響「ひざ?」
P「いやな、昔から貴音はすねると」
貴音「……」ドスンッ
P「おっと……こうやって俺の膝の上に座るんだよ」
響「あぁ、うん」
貴音「……」プイッ
P「小学校の頃ぐらいからのクセかなぁ、あの頃の貴音も可愛いぞー」
貴音「ふーんだ」
響(そっぽ向いてるけどプロデューサーの膝の上だからなぁ……)
P「あぁ、もちろん今の貴音も可愛いんだけどさ」
響「うん、そうだね」
貴音「調子のいいことを言ったからといって、わたくしがそう簡単に機嫌を直すと思ったら大間違いです」
P「あぁ、ごめんな。許してくれよ」
貴音「しばらくこのままでいてください」
P「はいはい……うん、それでな」
響「あぁ、うん?」
P「その頃の貴音といえばこういう写真もあるな」
響「これって……貴音がプロデューサーに乗っかってる?」
P「うん、このころの貴音はやたらおんぶが好きでなぁ。久しぶりに会った時なんか飛びついてきたりなんかしてさ」
貴音「一月も会っていなければ、寂しく思うのも当然でしょう」
響「従兄妹って1ヵ月以内に何度も会うようなものだったっけ?」
P「うちではそうだったなぁ」
貴音「いろいろありましたから」
響「そっかぁ、いろいろあったんだなぁ」
貴音「えぇ。いろいろと」
P「その時困ったのは夏場かなぁ」
響「夏場? どうして?」
P「子供って体温高いだろ?」
響「あぁ、そうだね。でもおんぶしたままでいるわけじゃないんでしょ?」
P「そうじゃなくてさ……ほら、居間でゴロゴロしてたとするじゃないか」
響「うんうん」
P「そうすると貴音が遊びに来てさ」
響「うん……? うん」
P「で、背中に乗っかるだろ」
響「……?」
P「そのまま親亀の上に子亀、みたいな体制でだらだら本読んだりしてさ」
響「ごめんプロデューサーちょっとわかんない」
P「ほら……えーっと、はい」
響「……あぁ、寝てるプロデューサーの上に貴音が寝そべってるね」
P「こんな感じになるだろ?」
響「なるのかな?」
P「なってるじゃないか」
響「それもそうか、うん。そうだね」
貴音「響の家ではならなかったのですか?」
響「あぁ、うん。兄貴はいたけど暑かったからなー。暑かったから仕方ないよなー」
P「そうそう、それだよ」
響「え?」
P「冬場は子供の体温と重さがかかるのってむしろ心地いいけど夏場は暑くてなー」
貴音「わたくしは暑くありませんでした」
P「こういうけど汗かいてじっとりするしで大変だったんだよ」
響「うん、そっか」
P「まぁ、暑くてもやっぱり適度な重さがかかるのって気持ちがいいんだよ」
響「そうなんだ」
P「そうなんだよ。貴音は軽かったしな……まぁ、今も軽いが」
貴音「……」モゾモゾ
P「ははは、大丈夫だってば」
響「貴音、重さとかポジションよりももっと確認すべきことがあると思うぞ」
貴音「そうでしょうか?」
響「うん。まぁ、貴音がそれでいいならいいと思うんだけど」
P「まぁ妹みたいなものだからなー」
貴音「わたくしもこれに慣れてしまっていますから」
響「そっかー、慣れてるなら仕方ないなー」
P「そうそう、そういえば反抗期とかも大変でさ」
響「あぁ、やっぱりそういうのあったんだよね?」
P「お父様と喧嘩しました、なんて言ってうちに来てさ」
響「うん?」
P「あの頃の貴音はワルだったなー」
貴音「そ、それはよいではありませんか!」
響「ねぇ、プロデューサーが貴音に嫌われたりとかは?」
P「……うーん?」
貴音「はて……」
響「うん、そっか。仲がいいっていいことだよね。そうだね」
P「あ、でもさ」
響「あぁ、あるよね? 身近な人のこと、嫌っちゃうみたいな」
P「さっきも言ったけどその時期の貴音はワルでな……」
貴音「お、お兄様っ!」
響「貴音、大丈夫。自分は口堅いし、何をしてたって友達だぞ」
貴音「響……」
P「あぁ、大丈夫だよ。法律とかに触れてるわけじゃないからさ」
響「でも貴音が悪いことしてた時期があるなんて意外だなぁ、どんなこと?」
P「それはな……貴音、いいか?」
貴音「うぅ……響、他の皆には言ってはいけませんよ?」
響「わかってるってば。えへへ、貴音の秘密知れて嬉しいぐらいなんだから」
P「その頃の貴音はさ、家に遊びに来るといつも――」
響「うんうん」
P「俺のズボンを脱がせようとしてきたんだ」
響「うん?」
貴音「うぅ、やはり恥ずかしいですね……」
P「他意はないんだろうけどなー。お兄様、ぱんつでございます! っていいながらズボン下ろされるのは焦ったなー」
響「あぁ、そう」
貴音「あの頃は、焦るお兄様を見るのが楽しくてつい……」
響「そうか、仲良しだなぁ」
貴音「響、どうかこれは内密に……」
響「大丈夫、誰にもいわないから」
P「中学に入ってからは一旦疎遠になったな」
貴音「月に1度しか会えぬ日々をすごしていましたね」
響「そっかぁ、それまでは?」
P「週に1回は来てたかな……休日は泊まってくことも少なくなかったけど」
貴音「あれは日々を過ごす活力を溜めるため必要だったのです」
響「うん。貴音、プロデューサーに座ったままだと会話しづらくないか?」
貴音「問題ありませんよ。慣れておりますから」
響「そっかー、慣れてるならいいんだ」
P「それからもまぁいろいろと……そうだ、制服着てる貴音可愛いぞ? 見るか?」
響「あぁ、確かにすごくよく似合ってるね。うん」
貴音「ふふっ、ありがとうございます」
P「ただこのころの貴音は難しい年頃だったからなぁ」
響「あ、プロデューサーが嫌われたりとか?」
P「いや、恋の相談とかやたらに持ちかけられてた」
貴音「……」
響「貴音もやっぱりモテモテだったんだね……貴音?」
貴音「いえ、お兄様は真剣に相談に乗ってくださり大変助かりました」ムスッ
P「それほどでもないさ、お兄ちゃんみたいなものだからな」
響「あー、なるほど。貴音も貴音で苦労してるんだなぁ」
貴音「えぇ。わたくしもその方向では無理だと悟りました」
P「?」
P「昔はよくお嫁さんになるーなんて言ってくれてたっけなぁ……」
貴音「そうでしたね……」
響「うん、そっか。プロデューサーはどう思ってたんだ?」
P「子供のいうことだからなぁ。お兄ちゃん嬉しいなぁ、みたいな感じかな」
響「そうか……最近は?」
P「流石に言われないさ。ははは」
貴音「そういった『とっておき』はいざという時に切るべきだと学びましたからね」
響「うん。プロデューサーは幸せな人だな」
P「そうだろ? こんなに可愛いアイドルに兄のように慕われてるんだからな! あ、他の皆にプロデューサーとして慕われてるのも当然嬉しいけどな?」
響「本当にハッピーだと思うよ。お幸せに」
貴音「ところで、お兄様」
P「うん? どうした貴音」
貴音「従兄妹同士というのは、結婚できるというのはご存知ですか?」
P「あぁ、そうだな。それが?」
貴音「いえ、確認したかったのです」
P「……そうか?」
響「ねぇ、自分そろそろ帰っていいかな」
P「おいおい、もうすぐ収録なんだから待っていろよ」
響「スタッフの人が呼びに来る前に貴音がプロデューサーの膝から降りるべきだと思うぞ」
貴音「……ではこちら側に」
響「背中にのしかかるのもどうかと思う」
響「……ねぇ貴音?」コソコソ
貴音「なんでしょう?」ボソボソ
響「貴音はプロデューサーのことどう思ってるの?」
貴音「それは……トップシークレットです」
響「そっかぁ。トップシークレットかぁ。仕方ないなぁ」
貴音「えぇ。いくら響とはいえばこれは明かせません」
響「うん。じゃあ自分がプロデューサーとっちゃおうかなぁ?」
貴音「なんと!」ガタッ
P「ん? どうした?」
貴音「にゃんでもごじゃじゃませぬ!」
P「そうか?」
響「あはは、まぁ……謎は解けたなぁ……」
貴音「響、響! いくら響きとはいえ、プロデューサーを、いえ、その、これは妹のように慕ってきたわたくしの、その」
響「あぁー、今日はいい天気だなぁ」
おわり
従兄妹ってこういうもんだと思ってました
違うんですね、最近知りました
保守支援ありがとうございました
うちの従妹はこんなんだぞ
>>56
うちの従妹もこんなんです
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