後輩「え、先輩はお箸もまともに持てないんですか?」 (11)

男「え?」

後輩「さっきからお箸を突き刺したり、物をぽろぽろ落とすと思ったら……なんですかその持ち方?」

男「……べ、別に関係ないだろ」

後輩「そんな気持ち悪い食べ方されたら目障りで不愉快です」

男「な、なら一緒に食わなけりゃ良いだろ!?」

後輩「私じゃなくても誰でも目障りですよそんな汚らしいお箸の使い方」

後輩「ちょっとやれば直るのにその手間が惜しいんですか?」

後輩「今までの使い方を否定されてムカつきましたか?」

後輩「ばかにされてると思って抵抗したいんですか?」

後輩「そんな下らないゴミみたいなプライドさっさと捨てて直してくださいね?」

後輩「不愉快ですから」

男「……」

後輩「お返事はどうしましたか? お箸も使えない原始人には難しいですか?」

男「……わ、わかったよ」

後輩「どうしましたか先輩? さっき直すって言いましたよね?」

男「わ、分かってるよ……今直す」

後輩「普通は人に言われなくても自分で直すんですけれど、直せないんですか?」

男「……今やってるから黙ってろよ」

後輩「あーあ、そんな持ち方が正しいわけないですよー? ほらほらそれも違いますよー?」

男「う、うるせぇよ! 黙ってろって!」

後輩「お箸一つでそんなに怒鳴り散らして、情けない先輩ですね?」

男「……くそっ」

後輩「一人じゃ直せませんか?」

男「うるせぇ!」

後輩「はぁ、仕方のない先輩ですね」

後輩「はーい先輩、お箸は一旦預かりますねー」

男「ちょっ、いきなりなんだよ」

後輩「まずはペンを持つように一本持って下さいねー」

男「……」

後輩「あれあれー、やっぱり原始人さんでしたか?」

男「ああもう、はいはい持った持った!」

後輩「次にこの隙間にもう一本入れてー」

男「ああ」

後輩「こっちの下のお箸は動かしちゃダメですよ、上だけをこの三本の指で動かせば……」

男「……おっ」

後輩「はーい、よく出来ましたねー先輩、えらいえらーい」

なでなで

男「ばっ、馬鹿やめろって」

後輩「ちゃんと出来るのは良いことですから、偉い偉い」

なでなで

男「ところでなんでわざわざ俺の箸の持ち方なんて直したんだ?」

後輩「その方が見栄えが良いからですよ」

男「お前が俺の見栄えなんて気にする意味あるのか?」

後輩「ありますよ」

男「どんな意味があるんだ?」

後輩「親に紹介したとき作法がなってなかったら恥ずかしいじゃないですか」

男「……え?」

後輩「さあ先輩、次はそのクチャクチャ耳障りな音出さないようにしますよ、耳障りですし不愉快です」

おしまい

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