憧ちゃんが援交少女だという風潮
夜
菫の部屋
仁美「ふー。やーっと落ち着いたばい。やっぱ風呂はよかね。気持ちリフレッシュ」ゴシゴシ
仁美「おー。ドライヤーで急速に髪が巻き戻るー」ゴーーーー
仁美「…ふう」
仁美「…」チラッ
仁美「…お、そうだ。冷蔵庫にカフェオレ入れてたんやった」ガチャッ
仁美「うしうし、冷えとる冷えとる」
仁美「…」チラッ
仁美「…いただきます」プスッ
仁美「チュー…」
仁美「…」チラッ
菫「…」イライラ
仁美(めんどくさ。まーだ引きずってるんかいあいつは)
菫「あの石戸霞とかいうババア。いつか殺す。あっさり殺す。絶対殺す…」ブツブツ
仁美(しかも自分の目指す正義の味方像にあるまじき呪詛吐いとるし)
キラキラシャラーン
仁美「ん?」
キラキラシャラーン
仁美「な、何の音だ!?」ビクッ
キラキラシャラーン キラキラシャラーン キラキラシャラーン
仁美「あわわ、ま、まさかかすみんが何か仕掛けて!?ば、馬鹿な。昼にやっとこさ逃げたのに…」
菫「…はい、もしもし。弘世ですが」ピッ
仁美(着信音だとぉおお!?)メェー!?
菫「…あ」
『こんばんわー☆菫ちゃん!それに、仁美ちゃんもっ!』
仁美「おおう。その声」
菫「瑞原プロ…」ホッ
仁美(…なんだはやりんか)ホッ
菫「…一体どうされたんですか?」
はやり『んー?あはは。聞いたよ、仁美ちゃんから。こっぴどくやられたんだって?』
菫「…」チラッ
仁美「ん。うちが連絡した」
菫「…はあ」ガクッ
仁美「チュー…」
菫(…まあ、あれだけ好き放題されて、師匠に報告しない訳にもいかないよな。くっそ。格好悪い…)ズーーン
はやり『あれ?菫ちゃん?』
菫(あれもこれも全部あの奇乳のせいだ。糞。糞。舐められっぱなしで終われるか。絶対復讐してやる。畜生…!)
はやり『おーい』
菫(…仕方ない。ここは正直に話すか…)
はやり『菫ちゃーーーん』
菫「…すみません」
はやり『ん?』
菫「聞いてくださいよ!瑞原プローーーー!!」ガーーーー!!
はやり『うわっ!?』
前回までの魔法少女菫は!
「おまえには魔法少女の才能がある」
「魔法少女?」
『メェー』
「『風潮』被害」
「ネトウヨだこいつ!?」
「ふはははー!全てはヒトラー総裁の為にーーーー!!」
「いえーっす☆はやりんだよー☆」
「ふふ…面白い子、見ぃつけたぁ♪」
「あ、あの…どうしたの菫…怖い顔…」
「ポリポリ」
「あの野郎逃げやがったああああああああああああああああああああああ!!!」
「次は…殺すわ…」
菫「いいだろう。なってやるよ、魔法少女!!」
菫「いいだろう。なってやるよ、魔法少女!!」 - SSまとめ速報
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十数分後
仁美「チュー…」コクコク
菫「ええ…ええ…で、それで、情けないことに全然歯が立たなくて…」
はやり『そうだったんだ。ごめんね。朝までの段階では、まさかかすみんが帰って来てるなんて思わなかったんだ。昨日の夜に大阪で風潮被害を追いかけてるって情報があって、それで問題ないと考えちゃって』
菫「悔しいです…仁美から聞きましたよ。奴も私とそれほど変わらない時期に魔法少女になったんでしょう?なのにあそこまで実力の差があるだなんて」
はやり『あの子は特別だからねー。私だってあの子相手には多分結構手こずるんじゃないかな』
菫「けど、一矢だって報いることが出来なかった。こんな屈辱は生まれて始めてです。…くっ!」
はやり『随分落ち込んでたみたいだね。もっと早く電話してあげられれば良かったんだけど、本業の方が忙しくて電話にも出られなくって。…私のミスだね』
菫「…」チラッ
はやり『今やっとプライベート携帯確認出来たくらいなんだ』
仁美「」ゴソゴソ (←本棚の少女漫画漁ってる)
菫《カフェオレで汚すなよ。殺すぞ》(念話)
仁美「」ビクッ
はやり『菫ちゃん?』
菫「あ、すみません。少々しつけを」
はやり『はあ…』
菫「あ、あと、電話の件。仕方ないですよ。瑞原プロの落ち度では無いのでお気になさらず。念話も離れすぎていると出来ないようですし」
はやり『念話は精々1kmってところかな。そうだねー…。…ねえ、菫ちゃん。かすみんの事、どう思う?』
菫「ある意味、暴走風潮被害よりも許せません。魔法少女の力をあんな風に使う奴が居るなんて。それも強大な力の持ち主が」
はやり『うーん…普段は意外に結構真面目に魔法少女してる子なんだけどね?』
菫「そうなんですか!?」
はやり『うん。実際ね。あの子一人で九州の南部の風潮被害の大半を抑えられてるし。お陰で九州の魔法少女はみんな随分楽が出来てるって聞くし。ちょっと怖がってるけど」
菫「それほどの奴なんですか」
はやり「どころか、最近は暇を持て余してるのか強大な風潮被害者が多い大阪とかまでよく出張してるくらいだもん』
菫「それって私が鹿児島まで行く必要なかったんじゃ…」
はやり『それは菫ちゃんに経験値を積んで貰う意図も有ったからだよ。それにあの子、さっきも行ったけど前日の夜に大阪に居たしね。…結果的に私の判断ミスだったし、そのせいで菫ちゃんを危ない目に合わせちゃったけどね」
菫「…」
はやり「けど、かすみんだって目に付いた魔法少女全部襲うような子でもないし、凶暴性を唆られるような強い子以外だったら他の魔法少女と協力する事さえあるんだよ?』
菫「…俄には信じられません。あいつ、私を大阪で見かけた時から目を付けていたと言っていましたし」
はやり『普通の新人さんに目を付けるような子じゃないんだけどね。あ、あと、私と再会した時も意外と礼儀正しかったな。「あの時は暴走する前に助けて下さってありがとうございました」って』
はやり『きっと、菫ちゃんのどこかにあの子のお気に入り成り得る、何か光る才能を見つけたんだよ。そこは誇っていいんじゃないかと…』
菫「あまり嬉しくないです。それに私はあいつ大嫌いですしね」
はやり『まあまあ。きっと、いつか和解出来る日も来るって』
菫「少なくとも、それは私が一回はあいつを叩きのめしてからですが」
はやり「もぉー」
菫「今度あったらギッタンギッタンに…」イライラ
仁美「やめとけやめとけ。されんのがオチたい」
菫「…」ポカッ!
仁美「メ゙ッ!?」
はやり『菫ちゃーん。どうしたのー』
菫「いえ、あはは。なんでも…」
仁美「いたたた…凶暴性だけならほぼ互角だって保証してやるよ」サスサス
菫「しかし、憧れの瑞原プロとこうして電話出来るようになったっていうだけでも魔法少女になった価値があったなぁ」ギリギリ
仁美「ヒールホールドはガチ過ぎるからラメェェエエエエエ!!」ジタバタ
はやり『じゃ、じゃれ合いもほどほどにねー…☆』
仁美「」ピクピク
菫「っと、いけない。話の腰を折ってしまった。申し訳ありません」
はやり『う、ううん…。仲いいねー』
菫「そんな事は無いと思いますが…ところで、今回電話して下さったのには、どんな用件が?仁美の事です。報告なんて私がかすみんにやられたっていう話くらいでしょう?」
はやり『うん。メールで菫ちゃんがギッタンギタンのケッチョンケッチョンのボロッカスにやられて、仁美ちゃんのとっさの機転でギリギリ紙一重切り抜けたって書いてあったから、心配で…』
菫「へえ…」ギロッ
仁美「」ダラダラ
菫(…ま、あながち間違ってもいないんだが)
菫「…まあ、当たらずとも遠からずと言ったところです。さっきも言ったようにまるで手も足も出なかった」
はやり『そっか…』
菫「…」ギリッ
はやり『…ちょっと安心したな』
菫「へ?」
はやり『気持ちまで折られてない感じで』
菫「…まあ、これでも曲者ぞろいの白糸台麻雀部で1年間部長をしてきた人間ですので。多少の挫折如きで一々折れていられませんから」
はやり『ふふ。頼りになるなぁ~』
菫「や、止めて下さい。なんか照れくさい…」
はやり『そんな菫ちゃんに、私からのプレゼント☆』
菫「は…はあ」
はやり『魔法少女としての特訓方法教えちゃいますっ!』
菫「!!」
はやり『ついでに、軽く魔法少女と風潮被害についておさらいしておこうか』
菫「よろしくお願いします!」
はやり『お~。ヤル気ある良い返事だね~☆』
菫「それで強くなれるなら!」
はやり『よしよし。それでは~』
菫「…」ドキドキ
はやり『まず、私達魔法少女について!』
菫「はい!」
はやり『はい。また良い返事。えっとね。多分粗方のお話は仁美ちゃんから聞いてると思うんだけど…うーん。どこから話そうか』
菫「…」チラッ
仁美「チュー…」ペラッ
菫(頼むから本汚してくれるなよ)ハラハラ
はやり『うん。よし、それじゃあ、魔法少女とは何なのかっていうところから!』
菫「なんなのか…ですか?」
はやり『そうでーす☆魔法少女とは、何者か!実はよくわかっていません!』
菫「え?」
はやり『魔法少女がいつから現れ、何故存在するのか!その正体を知ってる人はゼロです☆』
菫「ぜ、ゼロって…」
はやり『わかってるのは、マスコットって言われる子達が先に存在して、その子達に導かれるようにして私達魔法少女が生まれるっていうこと』
菫「そうなんですか…」
はやり『だから、よく魔法少女の仲間内でも色々議論あるんだよね。私達は一体どこから来てどこへ行くのかー!って』
菫「…」
はやり『でもまあ、一応目下の目的があるからみんなそんなに悩まないでやってられるんだけどね』
菫「風潮被害」
はやり『そう。風潮被害』
菫「…私には、こっちのほうがわからない。風潮被害とは一体なんなんですか?一体何故そんなものが」
はやり『それもあんまり良くわかってないの』
菫「…」
はやり『風潮被害って言うのは、読んで字の如く人々の間で広がる虚偽の風潮がそうであるように世の中を書き換えてしまう事象。それはもはや強制力をすら持って発動し、やがて暴走する』
菫「…」
はやり『酷い話だよね。例えば、一人の女の子が居るでしょ?その子が本当は心優しい文学少女だったとして、その子が驚くぐらい凶悪な人間だってっていう風潮が出来たら、その子は本当に凶悪な人間になってしまう』
菫「ええ。私も何人かと対峙しましたので、わかっているつもりです」
はやり『風潮によっては性格どころかポンコツになったり、体格まで変わったり、ひょっとしたらもっと凄い、私達も知らないような風潮もまだまだあるかも…』
菫「…」
はやり『けど、それで不幸になる人が現れないように、被害を未然に防ぐのが私達魔法少女でもあるんですっ☆』
菫「…ふふ。ですよね」
はやり『魔法少女とはこの世の法則より解放されしモノ。魔を操り、超常の力を行使する…常套句だけどね』
菫「ああ。それは仁美からも聞いたことがあります」
はやり『まあ、ようは超人的な力を持っていろんな事が出来るんだよー☆っていうのが趣旨なんだけど…』
菫「ええ」
はやり『そういう超常的な力、その中に風潮被害を浄化する力も備わっている私たちは、清く正しく有りましょうって事で。ようは…』
菫「ええ」
はやり『魔法少女の本質は愛と希望の象徴なのです☆』
菫「ですよねっ!」
はやり『うんっ!それだけ覚えてれば十分!』
菫「やあ、やはり瑞原プロの講義は勉強になるなぁ!」ウキウキ
はやり『いえー☆』
仁美(アホらし)チュー
菫「よーし!俄然ヤル気が上がってきたぞ!瑞原プロ!次の講義を!」
はやり『おまかせあれ!それじゃあ、次はマスコットについて』
菫「はい!」
はやり『マスコットはね。人を、魔法少女に導く者』
はやり『そして、人をマスコットへと導くものは、『声』。…らしいね』
はやり『ちなみにここで『らしい』って言うのは、私達魔法少女にはその声って言うのが聞こえないからなんだけど』
はやり『マスコットたちの話によると、ある日突然、『声』が聞こえてきて、使命に目覚めるらしいよ』
菫「…なのか?」
仁美「ん」ペラペラ
菫「…」
仁美「まあ、どっかからな。聞こえてくるんよ」
仁美「『パートナーを探せ』。『魔法少女を生み出せ』。『共に戦い、風潮被害を倒せ』。…で、こうムラムラと行動しなきゃいかん気になって…」
菫「…」
はやり『…私たちは自分自身に関して余りにも色々わからない事だらけだけど…まあ、これが一番の謎…かもね』
仁美「…」チュー…
菫「謎の声…か」
はやり『で、その声とともにその子は強制的にマスコットとなって、パートナーとなる魔法少女になる才能のある人間を探すの』
はやり『普通手がかりなしでそんな出会いは出来ないと思うんだけど、まるで引かれ合うように巡り合う…らしいよ』
菫「…それが、仁美には、私だったと」
はやり『素敵な縁だよね☆』
はやり『あとね。マスコットが出来る事は、念話、契約、風潮被害の感知。他にはその個人個人による簡単な固有魔法とかかな☆』
菫「…結構多彩ですね」チラッ
仁美「…」シャカシャカ
菫(歯磨いてるし。もう寝る気だコイツ)ハァ
はやり『だよねー。特に風潮被害の感知に関しては普通の魔法少女とは比べ物にならないくらい凄く優秀だから、凄く助かるよ!』
菫「へえ…」
はやり『マスコットに関してはこれくらいかな?えーっと、あとは…何話そうか。何か質問ある?』
菫「そうですね…」
はやり『私に分かることだったら、なんでも答えるよー』
菫「なら、一点」
はやり『はい!』
菫「その…魔法少女っていうのは、何か組織だったものとかはあるんですか?」
はやり『うーん…』
菫「?」
はやり『有るって言えばあるし、無いって言えば無いって言うか…』
菫「?どういう意味でしょう」
はやり『基本的にみんな自由にやってるんだけど、連絡網だけはしっかりしてる。みたいな』
菫「なんですかそれ」
はやり『風潮被害が凶悪で自分一人の力で手に負えない時は助けを求めるのも簡単だし、協力もしようって思ったら出来るけど、なんかやり辛いと言うか…』
菫「…ますますわかりません」
はやり『…つまりね』
菫「…ええ」
はやり『魔法少女って、みんな成る前から大体知り合いなんだよね』
菫「…」
はやり『…』
仁美「くー…かー…」
菫「…はい?」
はやり『知り合い』
菫「…」
はやり『もっと言うと、麻雀部』
菫「」パクパク
はやり『びっくりしたでしょー』
菫「…ええ」
はやり『ちなみに風潮被害者もそうだよー☆』
菫「…確かに、今まで出会った風潮被害者は…」
はやり『なんでなんだろうねぇ~』
菫「…」
はやり『麻雀をやってる人間の中に特別な才能を持ってる人間が多いのか、才能持ちが麻雀に惹かれるのか、はたまた偶々なのか。わかんないけど』
菫「はあ…」
はやり『知らない街で魔法少女に会った!って言ったら、大体知り合い』
菫「ははは…」
はやり『まあ、最近は若い子も増えてきて、私は知らないけど私の番組見てましたーって子も多いけど』
菫(マジか!)
はやり『あははは~☆』
菫(こんな狭い業界だったのか!)
はやり『そのお陰で魔法少女や風潮被害は、未だ世間に隠蔽出来てるんだけどね』
菫「…ああ」
はやり『がっかりした?』
菫「え?」
はやり『思ったよりスケール小さくって』
菫「いや…そんな事はないと思いますけど…一歩間違えたら被害事態は甚大じゃなくなりそうですし」
はやり『…ま、なんにせよだけど』
菫「…ええ」
はやり『わからないことが多過ぎるんだ。今は。だから深く考えてもしょうがないよ』
菫「…」
はやり『私達に出来ることは、風潮被害を未然に防いで、不幸になる人を一人でも減らすことだけ』
菫「…そうですね。それが一番大切です」
はやり『うんっ☆』
菫「…ふふ」
はやり『それじゃあ、次に、菫ちゃんが魔法少女として強くなる方法!』
菫「…!」
はやり『まずは、変身前』
菫「はい!」
はやり『筋トレ。単純に変身した時の身体能力も上がります。スタイルも良くなって一石二鳥』
菫「…はい。地味ですが、説得力があります」
はやり『格闘技…も、習った方が有利に成るだろうけど、そこまでは難しいか』
菫「うーん…まあ、DVDで勉強くらいはしてみます」
はやり『それでも効果はあるよ。変身したら単純な身体能力以外にも運動神経とか反射神経諸々向上するから。やろうと思えばどんな技でも出来ちゃう』
菫「はあ…」
菫(肉弾重視だなぁ…まあ、プリキュアも結構格闘してるし良いんだが、もっとこう…魔法的な…)
はやり『あとは、魔法だね』
菫「!!はい!!」
はやり『魔法は、沢山戦闘経験を重ねて、今使える魔法を実戦で沢山使って、徐々に慣らしてくしか無いかな』
菫「…」
はやり『ちなみに私は最初からなんでも使えちゃいました。ごめんなさい…』
菫(才能の差…か)ホロリ
はやり『ご、ごめんね…』
菫「いえ、いいんです。才能という壁に立ち塞がられた経験なんて、それこそこの3年間何度でも…」
はやり『あわわわ!菫ちゃん!ご、ごめん!ごめんなさいって!落ち込まないで~』
菫「はあ…まあ、なんとか工夫してみますよ」
はやり『う、うん…協力は惜しまないから…』
菫「それよりも」
はやり『うん?』
菫「私なんかのために色々とお手を煩わせてしまって、申し訳ありません」
はやり『へ?』
菫「だって。基本、魔法少女は群れないんでしょう?」
はやり『…』
菫「それなのに、私みたいな唯の新人を最強の魔法少女たる瑞原プロが目をかけてくださり…」
はやり『ああ…それなんだけどね』
菫「はあ」
はやり『魔法少女は基本一人って言う風潮…』
菫「?」
はやり『…勿論これは風潮被害じゃなくて、実際に形成されてきた風潮だし、暴走とかはしないけど』
菫「…ええ」
はやり『私、寂しいなって』
菫「…」
はやり『常々思ってたんだけどね。ただ、なんとなく慣例的な物があって誰も異議を唱えてこなかったし、そうする必要性も今まで無かったし、それで上手く回ってたんだけど』
菫「…」
はやり『…でも、なんとなく、ね。この風潮も、打破…してみようかなって』
菫「…」
はやり『ねえ、菫ちゃん』
菫『…はい』
はやり『だから』
はやり『私と』
はやり『魔法少女隊、結成してみない?』
菫「…」
はやり『…どう?そしたら、その…危ない時に助け合ったり、師匠みたいな事も、沢山してあげれるし…』ゴニョゴニョ
菫「喜んで」
はやり『やた!』
菫「…ふふ」
はやり『やった!やった!ありがとう!ありがとう!』
菫「ふふふ…いえ。こちらこそ。憧れの人の傍で戦えるなんて、こんなに素晴らしいことはありません」
はやり『ありがとうねー!それじゃあ、今この瞬間に、魔法少女隊結成だ!』
菫「ええ。初代プリキュアのような最高のタッグを目指して行きましょう」
はやり『え?』
菫「…ん?」
はやり『…』
菫「…」
はやり『…あ、そっか』
菫「…へ?」
はやり『ごめんごめん。言い忘れてた』
菫「…何を…ですか?」
はやり『うんとねー。確かに今はまだ二人なんだけど』
菫「…ええ」
はやり『最終的には、もっと…初代セーラームーンみたいに5人は欲しいかなーって』
菫「…おお」
はやり『それでね。勿論前口上とか決めポーズとかも格好良いの付けたりなんかして』
菫「うんうん。それは必須ですね」
はやり『で、最終的には、合体技なんかも作っちゃったりして』
菫「いいですねぇ」
はやり『それでね!それでね!お揃いのコスチュームとかも揃えて!』
菫「おおー!あ、でも衣装は変わらないんじゃ…」
はやり『魔法で瞬間着替えするのあるよ!頑張って覚えて!』
菫「やった!頑張ります!」
はやり『あと、イルミネーション魔法も!』
菫「イルミネーション魔法!そうだ、石戸霞が使ってて羨ましかった!」
はやり『おお!わかってるねあの子!』
菫「いけ好かないやつですが、口上も有ったし、美学には共感出来るところが多々…」
はやり『うむむむむ!欲しい!』
菫「えー…」
はやり『いいじゃない!反発する者同士、共通の目的の為に共に戦う的な!』
菫「それは確かに王道ですが、実際にやるとなるとどうしても心情が…」
はやり『うー…じゃあ、仲直りしたらねっ!絶対だからねっ!』
菫「無いとは思いますが…」
はやり『いえ~い☆』
菫「…で、話を戻しましょう!」
はやり『ん?』
菫「ここはやはり、取り敢えず二人でもキメれるような口上を…」
はやり『うん!うん!そうだねー!それじゃあ…~~~!』
菫「いやいや、ここは…~~~!」
はやり『で、ポーズを取ったら~~~』
菫「いいですね。そうしたらまず瑞原プロが~~~~」
はやり『もうっ!水臭いぞ!はやり☆って呼んで!』
菫「わかりました!はやりん!」
はやり『変身後はマジカル☆はやりんだよっ!』
菫「あっ!そういえば私まだ決めて無かった…!」
はやり『なに~!それじゃあ今から考えるよー!』
菫「わかりました!はやりん!」
仁美「…」モゾッ
はやり『~~~~~』
菫「~~~~~」
仁美「…」チラッ
はやり『~~~~~~~~~~!!』
菫「~~~~~~~~~~~~~~!!!」
はやり『~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!』
仁美「…」モゾモゾ
菫「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!」
はやり『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!』
仁美「…」
仁美(うるせーーー…)ゴロン
菫「それじゃあ、私は魔法少女シャープシューター☆スミレを名乗るということで!!」
仁美(決まったんかい)
はやり『オッケー☆じゃあ、前口上、一回合わせてみようか!』
仁美(今やるんかい)
菫「人々の小さな幸せを踏みにじる風潮被害は許さない!純潔なる一輪の花!魔法少女シャープシューター☆スミレ!」
仁美(何が一輪の花だ。ってかスミレの花言葉並べただけやろがそれ。お前毒持ちのニオイスミレだろが)ゴロゴロ
はやり『お星様に変わって、お仕置きよ!キラキラ光るみんなのアイドル!魔法少女マジカル☆はやりん!』
仁美(表現が一々古いな!)
菫はやり「『二人は!シューティグ☆スター魔法少女隊!!』」バーーーン!!
仁美(だっせえええええええええええええええ!!!)メエエエエエエエエ!!!
菫「…」
仁美(…静かになりおった)
菫「…マズイです。はやりん」
はやり『…うん』
仁美(ようやく我に返ったか。恥じれ恥じれ)ゴロゴローン
菫「テンション上って来た!!」
はやり『私も!!』
仁美(マジで!?)メェ!?
菫「これは…!今晩は眠れないかもしれない…!!」
はやり『私も!!』
菫「もう一個!もう一個考えましょう!」
はやり『わかった!!』
菫「それじゃあ、今度は敵が悪さしてるところに割り込むシチュエーションで…」
はやり『絶対許さない!って言う台詞はどっかに欲しいよね…!それとそれと…』
仁美「…」
仁美「…」ゴロン
仁美「…せからしかぁ…」ハァ
仁美「メェ~…」
第六話
「シャープシューター☆スミレとグダグダ前口上」 終わり
某テレビ局スタジオ観覧席
ガチャッ
菫「お、お邪魔します…」コソコソ
仁美「ちーっす」テクテク
「ん?おや、君は白糸台高校の…」
菫「ど、どうも…弘世です」カチコチ
「これは珍しいお客さんも来たもんだ。…ああ、もしかしてお目当ては瑞原プロかい?」
菫「ええ。彼女とはその…多少親交がありまして。本日、公開収録のご招待を預かりました」
「ははは。今は、牌のおねえさんとして子供達に麻雀の指導をするコーナーの収録中だよ」
菫「そうですか…」
「そう。そしてここは、子供達の保護者の皆様方がその様子を見届けられる観覧席って訳さ」
菫「はあ…」
仁美「チュー」ゴクゴク
「あ、ちょっと君。ここは飲食は禁止だよ」
仁美「チッ」
菫「おい」
仁美「…分かった分かった。今飲み終わったから捨ててくるばい」スタスタ
「…」
菫「あ、すみません。連れがとんだ無礼を…」ペコリ
「あ、いや…構わないさ」
菫「どうも今日はあいつ機嫌が悪くて」
「ははは…」
菫「しかし凄いご父兄の人数ですね」
「ふふふ。まあね。なんて言ったって、この番組は超人気番組だから」
菫「…」
「この、『麻雀で遊ぼう!』は」
菫(そう。私は今、仁美と二人、瑞原プロに呼び出されて東京の収録スタジオに来ている)
菫(某局教育テレビの超人気番組『麻雀であそぼう!』)
菫(牌のおねえさん演じるはやりん…瑞原はやりプロは、この生放送番組で子供達相手の授業方式という形で、麻雀の基礎を教えている)
菫(基本的なルールから点の計算方法、麻雀の楽しさ、トレーニング方法などをコミカルな歌や遊びで誰にでも分かりやすく説明する、麻雀への入門番組だ。広く若年層への麻雀普及への貢献度は、テレビ史上でも白眉に値する)
菫(どころか、毎年状況判断や河の見極めなどについても最新の理論を取り入れて再構成が為され、何年経っても新鮮さが薄れず、その視聴層は若年者に留まらず、プロにも参考にされる程だという)
菫(…かく云う私も、そのファンの一人だ。毎回勉強になるし、なにより難解な筈の最新の理論をプロの解釈で噛み砕いたものを分かりやすく勉強できるという点で、非常に勉強になる)
菫(それと、衣装とか可愛い)
菫(…こほん)
菫(…ところで、何故そんな番組に私達が今日招待されているのかと言うとだが…)
仁美「…」テクテク
菫「戻ってきたか」
仁美「…けったくそ悪いわーここ」
菫「ふふ…まあ、そう言うな」クスッ
仁美「なんで善良なる一般市民たるうちが売国奴のマスゴミの連中共と同じ空気を…」ブツブツ
菫(マジカル☆はやりんから、風潮被害の微かな反応を感じ取ったと連絡が有ったからだ)
菫(事の次第は、昨日の夜…)
菫の部屋
菫「テレビ局に…ですか?」
はやり『うん。どうも、最近教育テレビのスタジオに出入りしてる子の中に、風潮被害者が居るみたいで』
菫「ええ」
はやり『まだ反応が微弱で誰かっていうのは特定できないんだけどね。たまにスタジオや帰り道の廊下で、気配の残渣を感じるんだ』
菫「大変ですね。もしも万が一、生放送中にでも暴走なんてされたら」
はやり『うん。最悪だね。日本中に風潮被害の事がバレてしまう。そこまでなっちゃったら、魔法で被害者の記憶を消すとかももう追いつかないだろうし…』
菫「そうしたら、どうなるんです?」
はやり『風潮被害のキャリアってバレたら、きっと迫害されるよ。石持て追われる、ってやつだね。いつ暴走されるかわからない隣人なんて、たまったものじゃない』
菫「…」
はやり「勿論一般人には簡単に特定は出来ないだろうけど…でもだからこそちょっといつもと様子が変だぞってなったら、どんどん疑心暗鬼が広がっていっちゃう」
菫「…想像するだに恐ろしいですね」
はやり『それに、私達魔法少女だって同じ。特定だってされやすいしね。人間を超えた力を持ってる者は、ただの人間には怖がられる』
菫「やれやれです。お約束とは言え、現実は厳しい」ハァ
はやり『かすみんどころじゃなく、明確に力を悪用しようとした魔法少女だって過去に居なかった訳じゃないんだよ。そういう子は…同じ魔法少女に滅ぼされもした』
菫「聞いたか羊。お前いつか言ってたが、新聞社なんて襲撃したら歴史に残る大悪人として魔法少女に滅ぼされるってよ」
仁美「どーせ力奪うために魔法少女に集団レイプされるだけやろ。おまえが。うちに関係なか」メッヘッヘ
菫「あ?」スッ
仁美「なんでもなか!」
はやり『…ま、それはともかく。私はこれから数日の間に暴走するであろう風潮被害者を未然に特定して、浄化しようと思ってます』
菫「なるほど。まだはっきりと特定出来ないような段階でも、風潮被害者に最接近すれば特定して浄化出来るんでしたっけ」
はやり『そーそー』
菫「となると、必要なのは調査力…」
はやり『あと、人手だね!』
菫「…うん?」
はやり『ところで菫ちゃん。明日のお休み、夕方って暇じゃないかな~』
菫「…ええ、そうですね。その時間は私はいつも家で『麻雀であそぼう!』を見ているので…」
はやり『おっ!視聴者様でしたか!いつもありがとうございます☆』
菫「いや…あの…はい。…それで?」
はやり『あ、そうそう!それでねそれでね!』
菫「ええ」
はやり『その日公開収録があるから、その時間に教育テレビのスタジオにおいでよ!話は通しておくから☆』
菫「な!い、いいんですか!?」
はやり『もちもち♪私を誰だと思ってるの!牌のおねえさんだよ~☆』
菫「それは…確かにそうですが…」
菫(だからと言って、いいのか?番組に参加する子供だけでも競争率何十倍、大友入れれば何百倍の超人気番組の公開放送に、コネで入らせて貰うなんて!)
はやり『勿論タダだとは言わないよ?ちゃーんと、菫ちゃんにも働いてもらいます!』
菫「…それは勿論構いませんが…と、言うと」
はやり『放送終わった後に番組の責任者の人達と番組に関して何十分かの打ち合わせがあるんだけど、その前にスタジオの撤収があって、いっつも私は1時間の休憩を貰っているの』
菫「…はい」
はやり『その間に一緒に風潮被害者を探して欲しいなって』
菫「!!」
はやり『私あんまり探しものは得意じゃないし、時間も少ないし、菫ちゃんと仁美ちゃんが一緒に探してくれるとすっごく助かるんだ』
菫「~~っ!なっ!なるほど!」プルプル
はやり『だから、もし菫ちゃんの都合さえ付くなら、お願いしたいんだけど…』
菫「っ!っ!っ!」ピョンピョン
はやり『駄目…かな?』
菫「万難を排して行きます!!」
はやり「そ、そっかー。それじゃあよろしくね。詳細は後でメールで送るから…」
菫(ついに…)
菫「はい!!」
菫(ついにはやりんと一緒に戦える!!)
仁美「…」
仁美「…ふぅ」
戻ってテレビ局
菫「ふふふ…楽しみだ…」ニヤニヤ
仁美「だらしない顔しおってからにこの女は…」
菫「はやりん…すみすみ…二人は魔法少女…」ブツブツ
仁美「おい。おい。菫」ユサユサ
菫「…おっと、なんだ仁美。急に揺するな」
仁美「やかましい。変な妄想に浸ってるな怪しまれるぞ」
菫「…むう」
仁美「しっかりせーよ?ったく…ここは日本人の敵の総本山ばい。気を抜いたら何されるかわからん」
菫「お前はまだそんな…」
仁美「それと」
菫「ん?」
仁美「収録終わったっぽい」
撮影スタジオ
はやり「みんなー!今日もありがとうねー!それじゃあ、またあしたー!ばいばーい☆」フリフリ
子供達「「ばいばーーーい!」」
はやり「…」ニコニコ
「…はい、カットでーす」
はやり「…ふう」
はやり「君たちも、ありがとうねー☆」
子供A「わーい!」
子供B「はやりおねえさん、ありがとー!」
子供C「ありがとうございましたー!」
子供D「楽しかったー!」
はやり「うふふふふー。はやりも楽しかったよー☆」
子供E「わーい!」
はやり「さあ、みんな。パパとママがあっちのお部屋で待ってるから、はやりおねえさんと一緒にスタジオに出ようねー」
子供F「はーい!!」
AD「それじゃあセット片付けてー」
はやり「あ、ADさん!すみません。私はこのまま子供達を親御さん達に引き渡してきますので、その後は…」
AD「はい、わかってます。明日の打ち合わせの前に1時間ほど休憩ですよね?もうDからは承諾得てますので」
はやり「すみません。すぐにするべきだとは思ってるんですが…」
AD「仕方ありませんよ。子供たちの相手は体力を使いますし」
はやり「ふふ。なんだかんだ年ですかねー」
AD「えー?瑞原プロ全然お若いですってー。羨ましいくらい」
はやり「あはは。お世辞はよして下さいよ。褒め殺しなんて、怒りますよ?もうっ!」
AD「ははははは」
子供G「はやりおねえさーん!早く行こうよー」
はやり「おっと。ごめんねー?キミ。それじゃあ、行こうか」ナデナデ
子供G「うんっ!」
はやり「では、失礼します」ペコリ
AD「…立派な人だなぁ。あの若さでプロとしての地位も確立して、テレビの仕事すら卒なくこなすとは…」
AD「あの人になら、親御さんも安心して、子供達を任せられるな」ウンウン
「…」
「…」キョロキョロ
「…ここじゃ…ない」ボソッ
「…」コソコソ
バタン
観覧席
はやり「お疲れ様でしたー」ガチャッ
菫(あ、はやりん!)
子供A「わーい!おかあさーん!」タタタタ
母親A「おかえり~。どうだった?」
子供A「楽しかったー!」
母親A「そっかー。よかったねー。おねえさん、優しかった?」
子供A「うん!」
はやり「ふふふ。ありがとう。はやりも楽しかったよ~☆」ナデナデ
子供A「おねえさん!」
はやり「また遊びに来てねー?」ニコニコ
子供A「うん!」
菫「いいなぁ…」
仁美「ほー」
ワイワイガヤガヤ
仁美「あんなに子供にも保護者にも好かれて…なんだかんだ人気者なんやねー」
菫「素晴らしい。やはり憧れのはやりんは人格者だった」
仁美「メェー」
菫「その羊の鳴きマネして茶化す癖止めろ…って、瑞原プロ来た」
はやり「ごめんねー。お待たせっ☆」
菫「いえ。お構いなく。…大変ですね」
はやり「そう?子供達の相手、楽しいよっ!」
菫「ふふ…羨ましいです。私は子供や動物に怖がられるから」
はやり「そうなの?」
仁美「やはり本能的な危険を察知し…いたたた!こら!止めい!穏やかな会話のままの表情で首引っ掴むな!」
はやり「本当、短期間で随分仲良しになったねー。それじゃあ衣装の着替えもしたいし、まずは楽屋に一緒に行こっ☆」
菫「ははははは。ええ、よろしくお願いします」スタスタ
仁美「メェヘエエエエ!?」ズルズル
楽屋
菫「…で、風潮被害者を見つける手段なんですが」
はやり「うん。ごめんね。私だけだとどうしても反応が追いきれなくて」
菫「まあ、我々は魔法少女ですので」
仁美「…ん?」
はやり「うん。そこで、マスコットの仁美ちゃんに…」
仁美「タンマ」
菫「仁美?」
仁美「…」ジー
はやり「…どうしたの?」
仁美「いや、どうしたのっち言うか…」
はやり「…」
菫「…あ」
仁美「はやりんのマスコットは?」
はやり「…」
菫「言われてみれば」
はやり「あー…」
仁美「思えば、今までの会話に一回も名前すら出とらん」
菫「確かに。今どちらに?遅ればせながらも、はやりんと魔法少女隊を結成したからには、御挨拶をしなくては」
はやり「…」
仁美「…ん?」
菫「…あの」
はやり「…」
仁美「…?」
菫「えっと…」
はやり「ま、まあ、その辺の話は追々って事で」
仁美「はぁ~?」
菫「え…」
はやり「う、うん!そうだ!今ちょっと遠くに行っててね!皆に会わせてあげられないんだ!だから、帰ってきたら!帰ってきたら改めて紹介するから…」
菫「は、はあ…」
はやり「それより、時間があんまりないよ!それに私がこれだけ近くにいて風潮被害を特定しきれなかった理由もわかったでしょ?仁美ちゃん、早速風潮被害者を探知して…」
仁美「んー…」ジトー
はやり「うわーん!お、お願いだからそんな目で見ないでよー!」ギュー
仁美「…なんやこれ」
菫「仁美」
仁美「ええの?」
菫「はやりんが口を濁したという事は、私達に伝えられない事情でもあるんだろ。余計な詮索は好きじゃない」
仁美「…まあ、ええけど」ブツブツ
はやり「ご、ごめんねぇ…」
仁美「貸一個…」
菫「いやいや。協力体制にそんなの要らんから」
はやり「ううう…本当にごめんね」
仁美「ま、それじゃあパパっと探してみますかねー」
仁美「……すー……はー……すー…」
仁美「…んーーーー」
菫「わかるか?」
仁美「何人か怪しいなーってのの気配はおるけど…」
仁美「…ん。こん人かいな?」
菫「この人?」
はやり「…」
仁美「…うん。近か。3部屋隣の楽屋たいね。そこに居る人、なんかそれっぽい気配感じる」
はやり「!!」
菫「随分精度が高いな…って、3部屋隣の楽屋?」
仁美「ん…多分やが…あんま確信は持てんっちゅーか…」ブツブツ
菫「煮え切らないなぁ…」
仁美「仕方なかろう。なんつーか、反応がまだ微弱たい」
菫「…まあ、とにかく近くに行ってみないことには始まらないか。どんな人物がそこに居るのかも気にな…」
はやり「小鍛治プロ」
菫「…」
はやり「…その部屋は、小鍛治健夜プロの楽屋…だね」
あかん。眠すぎる
まだなんも話動いてないのにすまん。ちと寝かして…
健夜の楽屋
健夜「…」ペラ…ペラ…
健夜「ズズ…」
健夜「…コクン」ペラ…
健夜「…ふう。ちょっと目が疲れちゃった。休憩」パサッ
『スイート婚活女子応援特集 30代の輝ける貴女へ 年収1000万以上のイケメン高身長爽やか男子と結婚するための方法』
健夜「ふふ…なんだか、この雑誌読んでたら私も今年中に結婚出来る気がしてきた。結構簡単なんだね」
健夜「早速この本に載ってる事を実行して、近所でやってるお見合いパーティーに行こう」
健夜「どんなパーティ-が良いかな。雑誌で紹介してるやつだと…あ、これなんか良さそう。参加費1000円。お持ち帰り自由。一緒に爽やかな汗を流しましょう」
健夜「新じゃが芋掘り大会」
健夜「えーっと、連絡受付の電話番号は…」
コンコン
健夜「…ん?」
コンコンコン
健夜「誰だろう?」
コンコンコンコン
健夜「こーこちゃんかな?さっきオフだから遊びに来るって言ってたし。…はーい。開いてますよー。どうぞー」
ガチャッ
健夜「いらっしゃい。今コーヒーでも…」
健夜「…」
健夜「…え」
菫(青のミニスカメイド服+黒ニーハイ)「どうだ?」ヒソヒソ
はやり(白の同上+白ニーハイ)「ここまで近づいたらわかると思うけど…」ヒソヒソ
健夜「瑞原…プロ…?」
仁美「うん。間違いなさげやね」ヒソヒソ
はやり「よし。それじゃあ、本人はまだ自覚無さそうだけど、やっちゃうよ。記憶操作は後でなんとでもなるから」ヒソヒソ
菫「しかし、まだ唯の一般人みたいなものなのに、大丈夫なんでしょうか…」ヒソヒソ
仁美「面倒なる前にやっちまったほうが楽ばい」ヒソヒソ
健夜「あ、あのぉ…その格好は…それに、一体何の話を…」
はやり「それじゃあいくよ。せーの…」ボソッ
仁美「マジでやるんかい…」ハァ
菫「変身!」シャランラ
はやり「変身☆」キラリン☆
健夜「え…」
菫「人々の小さな幸せを踏みにじる風潮被害は許さない!純潔なる一輪の花!魔法少女シャープシューター☆スミレ!」
健夜「…」
はやり「お星様に変わって、お仕置きよ!キラキラ光るみんなのアイドル!魔法少女マジカル☆はやりん!」
健夜「…」
菫はやり「「二人は!シューティグ☆スター魔法少女隊!!」」
健夜「…」
菫はやり「「悪い風潮被害は、ポイポイのポイー!」」ビシッ
健夜「…」
菫はやり「「…」」ドヤァ
健夜「いや、特に姿変わってないよね!?むしろ最初っから変身後みたいな格好してきたよね!?」ビクッ
健夜「っていうか、何しに来たんですか貴女達は!!」
菫「…どうだった?仁美」
はやり「私としては、もうちょっと口上までに溜めを作った方が…」
仁美「帰りたい」
健夜「しかも速攻で反省会もみたいなのしてるし!?」
菫「…っと、そうでした。今はこんなことをしている場面ではなかった」スッ
はやり「あ、うん。そうだよね。てへぺろ」
健夜「もういい加減そろそろきついです!瑞原プロ!」
菫「…」パタン…ガチャガチャ
健夜「なんでさり気なく入り口のドアの鍵かけてるの!?」
菫「仁美。人が近くに来たら声かけろ」
はやり「一応防音の結界と人払いの魔法はかけておくから…」
健夜「な、なに…何が始まるの…」カタカタ
菫「小鍛治プロ。これより浄化作業に入ります。なるべく苦しまないように努力いたしますので、抵抗はされない方が懸命かと」ジリジリ
はやり「大丈夫。ちょっと苦しかったり痛かったりするけど、目が覚めた後にはもう記憶とか抜け落ちてるから…」
健夜「怖いよ!?不安だらけだよ!?」
菫「さて…まずは何をどうするべきか」ボキボキ
健夜(なんか拳鳴らしてるし)
はやり「菫ちゃん、一人でやってみる?」
菫「そうですね」
健夜「何を!?」
菫「では、申し訳ありませんが…」スタスタ
健夜「ちょ…ちょっと…ホント、なんなの…」オロオロ
菫「んー…効率良く且つ格好良く相手を無力化する技は…」ブツブツ
健夜「や…ちょ、やだ、やめて、来ないで…」ブルブル
菫「よし、決めた。マジカル☆ボーアンドアローで」 ※参考画像 ttp://i.imgur.com/iH7pK.jpg
健夜「超地味かつ肉体派!?」
菫「すみません。これも仕事なんです。被害は未然に防げるに越したことがありませんし」ジリッ
健夜「ちょ…」タジッ
菫「本当はこんな事やりたくないんですが」ウキウキ
健夜「だったらなんでそんな嬉しそうなの!」
菫「たあーーー!」
健夜「や、やめて!今日私服のワンピースなんだからそんな技かけられたら…」
菫「引っ掴んで引きずり倒すっ!」ブンッ
健夜「いやああ!?」ドサッ
菫「ふんっ!」メキメキッ
健夜「いたああああああああああ!!?」ボキグキグキッ
菫「はっはっはー」ユサユサ
健夜「あががが」メシメシメシ
仁美「おーおー。効いとる効いとる」
はやり「頑張れ菫ちゃーん!」キャッキャ
菫「がんばりますよー!」ユッサユッサ
健夜「あ、あふ…ケホ…」
はやり「そういえば」チラッ
仁美「うん?」
はやり「あの子の風潮被害ってなんだったの?」
菫「ふん!ふんっ!ふんっ!」ユッサユッサ
健夜「は…あ…あう…たすけ…こー…ちゃ…」
仁美「ああ」
菫「んー。なかなか落ちませんね。小鍛治プロ、早く落ちないと大変な目に合いますよ」ギシギシ
健夜「こ…ちゃ…」ビクッビクッ
仁美「あれは」
菫「まあ…その、突如降って湧いた理不尽な暴力に対する怒りと絶望と諦観に満ちた怯えた小動物の目も…嫌いじゃないですがっ!」ギチッ!
健夜「はぐっ!?」
はやり「うん」
菫「けど…可愛すぎて、私、歯止めが効かなくなってしまいそうです」ギチギチ…
健夜「…」ビクビクビクッ!
仁美「未然に防げたからまだ兆候くらいしか見えてなかったけど」
菫「…ん?」
はやり「うん」
健夜「…」ガクガクガク
仁美「小鍛治健夜はアラフォーだっていう風潮…」
健夜「…」ドサリ
菫「…調子に乗ってやり過ぎてしまった。一応退治、完了…です」
はやり「…お疲れ。それは…なんていうか、私達の年代にとっては究極に恐ろしい風潮の1つ…だね」
菫「…も、申し訳ありません小鍛治プロ…って、気絶してるよな…」
仁美「よくやった。では誰かに見つかる前にさっさとずらかるばい」
はやり「お疲れ様。今後も今回みたいに早期解決できれば楽なんだけどね。…そろそろ時間も無いし、アフターケアは勘弁してもらおうか。一旦私の楽屋に戻ろう」
楽屋
菫「…ふう」
仁美「チュー…」
菫「何飲んで…ああ、自販機の紙パックか。好きだな。カフェオレ」
仁美「ん」チュー
菫「はやりんも仕事に行ってしまったし」
仁美「仕事終わりにファミレスば行くんだっけか?」
菫「ああ。祝勝記念に奢ってくれるらしいぞ」
仁美「よっしゃ」
菫「ふふ…なんだか、好き放題暴れてそのご褒美っていうのも、なんだか妙な感じもするが…」
仁美「…チュー…」
菫「…そういえばお前、あれだけ嫌がってた割に今回意外とおとなしかったな。なんだかんだ弁えてるしサポートとしては…」
仁美「…」ビクッ
菫「有能…ん?」
仁美「…」サッ
菫「何故目を逸らす」ジーッ
仁美「メ、メヘ…」ダラダラ
菫「何故冷や汗をかく」ジーーーー
仁美「え、えっと…」ダラダラダラ
菫「…」
ダダダダ
はやり「大変だよ二人共!!」
菫「はやりん!?」
仁美「…」
はやり「大変大変大変なんだから!」
菫「お、落ち着いて下さい!一体に何が…」
仁美「…」ソーッ
はやり「さっき、なんだかスタジオをこそこそ見回ってるスタッフの人が居てね!」
菫「…はあ」
はやり「怪しいんで声掛けて事情をこっそり聞いてみたら、なんとさっきテレビ局に爆弾を仕掛けたって言う犯行声明が!!」
はやり「いつの間にか新聞で切り取った文字の犯行文書が、プロデューサーのところに届いてたらしくって」ブルブル
菫「…」チラッ
仁美「…」カサカサ
はやり「なんでも、『コノ国ノ腐敗ノ根源タル貴様等マスゴミニ天誅ヲ下ス』って…」
菫「…」ガシッ
仁美「!?」ジタバタ
菫(まさか、最初にジュースを見咎められてどっか行った時か…まさかまさか、あそこで見咎められたのすらコイツ、計算ずくか)
はやり「怖いよねー…私達魔法少女も、風潮被害が噛んでないと流石に手を出しにくいし…」
菫「…悪戯なのでは?」ハァ
はやり「私もそうだとは思うけど…けど、最近ほら、マスコミに対する嫌がらせとかも多いし、みんなこういうのにピリピリしてるんだ」
仁美「ククク…ザマア反日組織め。怯えるが良い。貴様らが敵に回した救国レジスタンス、我ら『ネトウヨ』の見えざる影に…」ボソボソ
菫(こいつは…)
はやり「と、とにかく!万が一の事があったら事だし、閲覧の人達はもう大体帰ってたけど、関係者以外は早急に避難を…」
菫「…」
仁美「メッヒヒヒ…ざまあ。ざまあ。帰った後の2chが楽しみばい…」ニヤニヤ
はやり「だから、申し訳ないんだけど、安全が確認されるまでは危ないから菫ちゃん達もテレビ局を出て…」
菫《おい羊》 (←念話)
仁美《し、知らんし!うち何のことだかさっぱりわからんたい!》
菫《本当に仕掛けてはいないんだな?あ?答えろよ殺すぞ》
仁美《…お、おう。仕掛けてません》
菫「…」
仁美《…あ、あの…》
菫「…はあ」
はやり「ね、だから二人共。申し訳ないんだけど、祝勝会はまた今度にして…」
菫《お前なぁ…》
仁美《れ、連帯責任…》
菫《脅すな。…くっそ…だが、ここでお前突き出したら公開収録に招待したはやりんまで責任追及されるだろうし…》
仁美《まあ、それは考えた》
菫《悪魔の知恵かお前は!》
菫《あああああ!もうっ!分かったよ!今回だけは知らなかったことにしてやる!!》
菫(コイツが普通に正義の味方だと一瞬でも思ってた私が馬鹿だった!)
仁美「…ふひ」
菫(寧ろやっぱ悪だコイツ!)
菫(ああああああああ!!!)
菫(勝ったのに大負けした気分だ!!)
第七話
「アラフォーと読んでる時点でもう色々終わってる婚活雑誌」 終わり
ちょい休憩
土曜日
奈良・阿知賀
菫「…ふう。やっと着いたか」
仁美「メエー…」
菫「朝に出て、もう昼近くだ。宿に行く前に、どこかで昼食でも摂るか?」
仁美「そーだなー。腹減ったばい」
菫「ん。それじゃあ適当にファミレスでも…って、何もないな、ここ」
仁美「この間の鹿児島よりど田舎…」
菫「どうする?」
仁美「仕方なか…やっぱ宿まで行って、近所で食事できるとこ聞こうか」
菫「ん…」
仁美「なんだっけか?宿の名前」
菫「ああ、ちょっと待て。今住所書いた手帳を確認するから…」
仁美「…」
菫「ああ。あったあった」
菫「松実館だ」
テクテク
仁美「松実館かー。なんか高そうな名前やね」
菫「そうだな。向こうで調べたが、ネットでも評判は上々だった」
仁美「そりゃあ楽しみばい」
菫「しかし、幾ら複数の風潮被害が確認されたとは言え、土日を利用するために宿まで手配してくれるなんて…」
仁美「またはやりんが金出してくれたんだって?魔法少女になって良かったことの1つは、ただで色んな土地に行けることやね」
菫「遊びでやってるんじゃないんだぞ。はやりんはついでに楽しむのも大事と言ってくれたが…」
仁美「まあええやんええやん。…はやりんは遅れてくるんやったっけ?」
菫「軽いなぁ…お前は。…ああ。今日の夜にこっちに着くそうだ。…はあ」
仁美「またそうやって溜息吐いて…仕方なかろう。うちら学生やもん」
菫「うう…心苦しい。早く稼げるようになって恩返しをしなくては…」
仁美「あの人に返せるくらいっち言うたら、相当稼げるようにならんとな」メッヘッヘ
菫「…まあ、精進するさ。大学に行ったら、バイトだって出来るし…」
仁美「進学かー。何処受けるかもう決めてるん?」
菫「ああ。もう秋だしな。だが、幾つか貰ってる推薦のお誘いのうち、実はまだ数校のうちで悩んでるんだ…」
仁美「ふーん」
菫「そういえば、お前はどうするんだ?進学とか、就職とか…」
仁美「ん?んー。そうやねー」
菫「ああ」
仁美「どーすっかねぇ」
菫「おい…」
仁美「メハハハハ」
菫「笑い事じゃないぞ?もし推薦無いなら進学するなら早めに準備も必要だろうし、就職するにしてもだな…」
仁美「…っと」ピタッ
菫「…なんだよ。どうしたいきなり立ち止まって」
仁美「ほれ、横見てみ」
菫「ん?」チラッ
仁美「いつの間にか着いとるばい」
菫「…おお」
菫「ここが松実館か」
松実館
玄「いらっしゃいませ!ようこそ松実館へ!」
菫「…へ?」
仁美「おおう」
玄「え?あっ!うわわ」
菫「君は…」
仁美「確か、阿知賀女子の…」
玄「ま、松実玄です!お久しぶりです!」ペコリン
菫「驚いたな…そういえば、ここは阿知賀で君は実家が旅館だと実況が言っていたものな。今思い出したよ」
玄「ま、まさかお客様として白糸台の弘世さんと新道寺の江崎さんがお越しになられるとは…」
菫「なんだ?私達の名前は聞いてなかったのか?」
玄「はい。お父さんに、私と同年代のお客様がお目見えになられるのでご挨拶するようにとしか…」
菫「へえ…実家の手伝い、しっかりやってるんだな。尊敬するよ」
玄「えへへ…」
菫「ところで、ちょっと早いがチェックインはもう大丈夫かな?」
玄「あ、すいません!はい、もう大丈夫です!」
菫「いや、別に謝らなくても…」
玄「えーっと…二名様でしたっけ?」
菫「ああ。取り敢えずはね。今晩遅くにもう一人。その人だけは外で食べてくるので夕飯は要らないよ」
玄「かこまりました!」ビシッ
仁美「敬礼っち…」
菫「ははは…」
玄「それではお部屋にご案内しますね。お荷物お預かりしますが」
菫「いや、大丈夫だよ。結構重いし、自分で持っていくさ」
仁美「うちも」
玄「あ、そ、そうですか…」シュン
菫「…」
玄「みゅー…」ショボーン
仁美「…」
菫「…気が変わった。じゃあ、このボストンバッグの半分だけ持ってくれるかな」
玄「!」パアアア
玄「はい!おまかせあれ!」
菫(一生懸命で素直な子だなぁ…)
菫「あ、そうだ」
玄「それじゃあ私こっち持ちますねー…はい?」
菫「そういえば」
玄「よいっしょ…はい!なんでしょう!」ヒョイッ
菫「君のお姉さんは今どちらに?」
仁美「プッ」
玄「?」キョトン
菫(…なんて言うか)
仁美「ククク…」
菫「…いや、もし此方に居るのなら、後で挨拶にでもと」ゴチン
仁美「メッヘ!?」
菫(あの子は…インターハイで中々痛い目合わされてるんでちょっと苦手なんだが)
玄「ああ、そういう事だったんですか!」
菫「あ、ああ…」
玄「おねえ…姉は、今日は学校で赤土…うちの顧問とちょっとお話をしていまして」
菫「そうなのか」
玄「はい。なんでも、進路についてちょっと相談したいことがあるらしくって」
菫「ふーん…」
玄「後で帰ってきたら、姉からご挨拶に伺わせますので」
菫「ああ、ありがとう。お構いなく…すまない。それと質問ついでにもう一つ」
玄「はい?」
菫「この辺で、どこか手頃な食堂は無いかな」
玄「ああ、それでしたら…」
玄「いってらっしゃーい!」
玄「…」
玄「…あっ!またお客さんだ!」
玄「いらっしゃいませ!ようこそ松実館…!!!?」
玄「…」ポヘー
玄「…あ、ああ。すみません。大丈夫です。ちょっとボーっとしちゃっただけですので…」
玄「えっと、二名様でよろしいですね?」
玄「はい!もうチェックインは大丈夫ですよ。この名簿に名前を書いていただいて…はい!」
玄「…え?どうしました?」
玄「…?なんだか嬉しそうですけど…」
玄「…あ、はい!ご案内します!」
玄「どうぞごゆっくりー」パタン
玄「…ほえー」キラキラ
玄「ものすっごいおもち…」ワキワキ
食堂
仁美「ふー。美味かった美味かった」
菫「…」
仁美「ジンギスカン定食」
菫「だから何故そのチョイスを…」ゲンナリ
仁美「メヘ?」
菫「…なんでもない」
仁美「お、おう。さってー。それじゃあ、これからどーすっかねー」
菫「そうだな…荷物も置いてきたし、このまま風潮被害者の探索に出るとしようか。まだ反応が薄くてお前でも察知し切れないんだろう?」
仁美「ん」
菫「そこで前回のように事前に当たりを付けて、あわよくば未然に防げるように、まずは一番可能性の高い麻雀部のある所を探してみようと思っているのだが…」
仁美「ん?」
菫「この辺、麻雀部のある学校は二つあるらしい」
仁美「ほう。調べてきとるねぇ」
菫「当たり前だ。こういう時、時間は有意義に使わねば。…話を続けるぞ」
仁美「ん」
菫「一つは、松実姉妹も属す阿知賀女子。但しこちらは部員数も少なく、部の中心人物の一角であろう姉妹の妹が家に居た事からも今日は休みの可能性が高い」
仁美「おう」
菫「もう一つは、奈良一番の名門、晩成高校。調べたところによると、この辺で麻雀をやる人間はほとんどここに行くらしい」
仁美「ほー」
菫「当然、部員数も圧倒的に多く、確率的にも風潮被害者に当たる確率は高い」
仁美「なら」
菫「ああ。流石に全員と会うことは不可能かもしれないが…それでも、訪ねて見る価値があるのはこっちだろう」
仁美「よっし。そうと決まったら…」
菫「早速行こう」
仁美「…待った」
菫「ん?」
仁美「…その前にちょっと」
菫「どうした?」
仁美「…やっべ。今、なんか感じた。もうすぐ誰か一人暴走するぞ」
菫「何!?」
仁美「反応が小さすぎて今まで気付けんかった。そんなに強い奴じゃなかぞ。それにここから近い。こげん感知から暴走までん間の短かとは…」
菫「くっ…!どこだ!?」
仁美「あっちたい!!」
菫「変身!人々の小さな幸せを踏みにじる風潮被害は…」シャランラ
仁美「うるさい!急げ!」
菫「…わかったよ」ショボン
仁美「えーっと、こん感じだとここから1~2kmくらいだっち思うばってん…」
菫「じゃあお前背負ってくからナビしろ!」ヒョイッ
仁美「うおっ!?わーかったわかった!じゃあまずあっち!」
菫「応!!」ダッ
仁美「この反応は…うーん…」
菫「どんな風潮被害だ!」
仁美「…んー?なんだこれ、わけわからん」
菫「何だ!」
仁美「…ハイカラなお洋服はおばあちゃんが買ってくれてるという風潮?」
菫「…は?」
仁美「…あと、Tシャツの胸のアライグマが意思を持ってるっち風潮」
菫「…」
仁美「…」
菫「訳わからん」
仁美「うん」
菫「…とにかく、現場行くか」
仁美「ん」
タタタタタ…
鷺森レーン
灼「…誰?」
菫「…君か」ハァ
仁美「きっ!貴様はーーー!」キシャーー!!
灼「あ…白糸台と真道寺の…」
菫「弘世菫だ」
仁美「グルルルル」
菫「そして、こちらが三年生なのに準決勝で君に稼ぎ負けた戦犯の九州羊」
仁美「おい!おまえもマイナスやったろうが!!」
菫「な…!なんだやる気かお前!」
灼「えーっと…」
菫「おっと、すまない」
仁美「くっ…!この暴君魔法少女め…」
灼「その、なんで二人がうちに…来てるのかがよくわからない…です」
菫「…」チラッ
灼「?」
菫(本当にTシャツの柄がアライグマだ…)
仁美《おい。もうこいつ暴走しとるぞ》
菫《何!?》
灼「…何しに来たの」
菫《どういう事だ?彼女、一見何の変哲もない感じだが…》
菫「…ちょっと聞いても良いかな?」
灼「え?あ…はあ。答えれることなら」
菫「そのシャツ、いつどこで買ったか覚えているかい?」
灼「あ、このシャツ…ですか?ふふ…可愛いでしょ。今年の夏おばあちゃんがジャスコで買ってきてくれたんです。ハイカラで灼にピッタリだって…」
仁美《おい!風潮被害に虚飾有りだぞ!こいつハイカラの意味わかっとらん!》
菫《そもそもこれは…なんだろう。うーん…被害って言うか…被害なんだろうけど…》
仁美《どうする?ボコるか?いつもみたく、さながら有言実行の北朝鮮のように》
菫《お前後で無慈悲な制裁な》
灼「えへへ…けど、なんだか嬉しいな。都会に住んでてしかもこんな美人な人に着てるものをどこで売ってかって聞かれるだなんて…」
灼「私みたいに何にもわかってない子が、なんだか分不相応にお洒落になれたみたいで…。ふふ。ありがとう、おばあちゃん」ニコッ
菫「…」キュン
仁美《穢れとらんなー。お前と違って》
菫《…ぐ、浄化されるところだった》
仁美《さて、どうしたもんか…》
菫《放っておいて良いじゃないか?これは》
仁美《んー…》
菫《特に実害も無さそうだし…》
仁美《けど、どげんかして退治しとうしなー》
菫《なあ、いいだろ?なんだか流石にこの子を傷付けるのは、人としてやってはいけないような…》
仁美「…」
灼「…ね、たぬタンもそう思うでしょ?」
菫「…へ?」
仁美「…メ?」
狸「ソウデスネ。アラタサン」
菫「喋ったぁああああああ!!?」
仁美「メエエエエエエエエエ!!?」
灼「あ、いけない…つい」
アライグマ「ドンマイデス。アラタサン。間違ッテ上デ狸ッテ書イチャッタノモ、ドンマイ」
菫「ど根性ガエルのラスカルバージョンかお前は!!」
仁美「よく見たら目が怖い!?当然たい!奴は凶暴にして残虐な雑食獣!日本生態学会によって日本の侵略的外来種ワースト100のひとつに選定されとる凶悪な生物ばい!!」
アライグマ「アラタサン、オハダツルツルスベスベ、アッタカイ…」
灼「ふふ…たぬタンも。綿100%で生地厚なのに柔らかく、ゆったりした着心地。こういった暖かい緩やかなオフの日には、日中なら秋でもたぬタン一枚で過ごせちゃうよ…」
アライグマ「アラタサン…アラタサン…アラタサン…ハァ…ハァ…ハァ…」
灼「あん…くすぐったい…衣擦れ…やだ…えっち…」モジモジ
アライグマ「フヒヒヒ…アラタサンノ、乳臭イ体臭クンカクンカスーハースーハー」
菫「しかも淫獣だった!!」
仁美「流石外道よ…毎年日本だけで3億近い農業被害を出しているだけはある」
菫「これは…やはり滅ぼすべきだな。主にシャツの方を」
仁美「異議なし」
菫「と、言うわけで」ズイッ
灼「…え?」ビクッ
菫「すまないね、君」ジリッ
灼「え…」
菫「そのシャツ…大切なものなんだろうが、破壊させてもらう」
灼「あ、あの…」
アライグマ「スーハースーハースーハー」
菫「この期に及んでまだ深呼吸してるし…」
灼「ちょ…やめ…誰か、あ、あれ…もがっ?」
菫「ちょっと二人で誰も居ないところに行こうか…」
仁美「ククク…催眠術による隠蔽は任せろー。客少ないし楽勝ばい」
灼「もがー!」
菫「大丈夫…苦しいのは一瞬だから」
灼「もがっ!もぐー!」ジタバタ
菫「力も大した強くないな。これなら簡単に退治できそうだ」
鷺森レーン裏
菫「さて…」ドサッ
灼「や、やだ…助けてたぬタン…」
菫「そのシャツ、ビリビリに破かせてもらおうか!!」ビリビリー
アライグマ「ア、アラタサーーーーン!!」ビリビリー
灼「いやああああああああああああああああああ!!!?」
仁美(おお、流石魔法少女。素手で半紙破るが如くシャツ引き裂いとる)
灼「たぬターーーーーン!!」
菫「この淫獣が!!可愛い見た目笠に着て主人の肌に密着して好き放題やりやがって!キモいんだよ!死ね!!」ビリビリー
アライグマ「ヌワアアアアアアアアアアアアアア!!!」
菫「細切れにしてやるー!!」ビリビリビリー
灼「たぬターーーーーーーーーーン!!!」
アライグマ「モットノノシッテエエエエエエエエ!!」
灼「…」シクシク
菫「…」
仁美「…ノーブラだったか。周りにシャツの残骸散らばって、なんかレイプされた後みたくなっとる」
灼「ううう…たぬ…たぬタン…」シクシク
菫「…と、取り敢えず、ついでだし絞め落としとくか?」
仁美「やっとけやっとけ。暴走した後の記憶消しとけ」
菫「なんか、どんどん取り返しのつかないことしてるような気がしてきた…」ミシッ
灼「あうっ!?」
菫「…」ギリギリ
仁美「今回はシンプルにスリーパーやね」
灼「かは…うう…」ジタバタ
菫「早く落ちろ…」ギリギリ
灼「うううう…う…あう…けほっ…」
菫「…ここ最近ずっと後味悪いなぁ…」ギリギリ
灼「あ…あああ…た、たすけ…」
灼「…」カクン
菫「…」
仁美「ご苦労」
菫「…自宅の裏とは言え、半裸で気絶したまま放置はヤバイ。絶対にヤバイ」
仁美「ならどうする?」
菫「…はあ」
仁美「…」
菫「…ちょっと頑張ってみる」
仁美「ん?」
夕方
灼「…ん」ムクッ
灼「…あれ?ここ…」キョロキョロ
灼「家の裏?いつのまに出たっけ…しかも寝ちゃってたし」
灼「…」ブルッ
灼「…さむ」
灼「流石に秋風は冷えるなぁ」
灼「シャツ一枚じゃ、もう限界だね…」スタスタ
灼「…あれ?」
灼「なんか、このアライグマ、ちょっといつもと表情違うような…」
灼「…馬鹿らし。そんなわけないか」
ヒューー
灼「…早く中に入ろう。店番の続きしなきゃ」スタスタ
菫「…疲れた。魔法使いたい…」グダーー
仁美「…力技やね。ビリビリに破いたシャツ、魔法少女の身体能力と集中力で自力で縫合とか…」
菫「今日はもう駄目だ。限界だ。帰って風呂入ってご飯食べて寝よう」
仁美「メエー」
菫「…で、はやりんが来た頃に起きてまた魔法少女談義するんだ」
仁美「…げっ」
菫「松美館戻るぞー」
松実館
宥「ただいま玄ちゃん」ブルブル
玄「うん。お帰り、お姉ちゃん…」ユラリ
宥「?」ブルブル
玄「お姉ちゃん、後でお客さんに挨拶行ってあげて。白糸台の弘世菫さんが泊まりに来てるの。今出かけてるけど」
宥「え?そうなの?インハイで対戦した…うん、わかった。じゃあ後で挨拶してくるね」
玄「…おもち」ボソッ
宥「え?」ブルブル
玄「じゃあ、私はこれで…」スタスタ
宥「…」
宥「…玄ちゃん?」
バタン
玄「…」
玄「おもち…」
第八話
「こけし灼と淫獣アライグマ」 終わり
ちょっと席外します。休憩がてらお出かけ。3時までには戻る
松実館温泉
菫「…ふう。あったまる…」チャポン
仁美「…」ワシワシワシワシ
菫「大変そうだな仁美。その…なんだ。巻き毛」
仁美「くせっ毛たい。ストパー掛けても3日で戻る」
菫「本当、羊毛みたいだ…」
仁美「くぬくぬ…」ワッシャワッシャ
菫「あんまり乱暴に扱うなよ。痛むぞ…」
仁美「ぐぬぬぬ…」ワシワシワシ
菫「それにしても…ふぅ~…」
仁美「なんぞ婆臭い」ワッシャワッシャ
菫「いや…広い風呂は久しぶりだなと…」
仁美「ん。まあ、おまえの寮の風呂に比べたらな」ワシワシワシ
菫「あ~…いいなぁ。広い風呂。東京でもたまには照達誘ってスーパー銭湯とか行くかー」ノビーー
仁美「好きにせー」ザバーーー
菫「お、やっと髪洗い終わったか」
仁美「おまえの髪質羨ましかー!うちより長いのに余裕で早く洗い終わっとるし!」ケッ
菫「ははは…」グテー
仁美「随分緩んどるなぁ」チャプッ
菫「ああー…身体が暖まるー」
仁美「おまえいっつも張り詰めとうからなあ。こういうとこでやっと緊張緩むタイプか」
菫「ん…まあ、ここのところ色々ストレスも溜まってたし。…主にお前のせいで」ジトッ
仁美「メッヘッヘ」
菫「風呂上がったら食事か。楽しみだ…」
仁美「うちも腹減ったばーい」グテー
菫「おー」グテー
仁美「他に人おらんち、貸切状態ええねー」
菫「そうだなぁ。今はシーズンも微妙にズレてるらしく、客が全然居ないらしいし」
仁美「今泊まっとるの、他に一組だけやったっけ?」
菫「ああ、らしいなー。まだ会ってないけど」
仁美「しかしこう広いと…」
菫「ん?」
仁美「泳ぎたくなるばいね」
菫「やめい」
仁美「メッヘヘヘ…」バシャバシャ
菫「あっ!こら!行儀の悪い…ぶっ!おい!顔にお湯がかか…おい!!」
仁美「」バシャバシャ
菫「ぶふっ!?この…!しかも犬かきか!羊のくせに!」
仁美「メハハハハハ!!」バシャバシャバシャ
菫「うがっ!?お前わざとバタ足で私に飛沫浴びせてるな!?いい加減に…」ザバッ
「あら、広くて素敵ねぇ。ここの温泉」ガラガラッ
「…」
菫「…っ!おい、人来たぞ!マジで止めろ!」ヒソヒソ
仁美「…おっととと」チャポン
菫「…ったくこいつは…」
「あら、先客がいたのね」
「…」
菫「…ん?」
菫(この声…何処かで聞いたことがあるような)
「うふふ…そう。いやねぇ。まさかこのタイミングで会っちゃうなんて…」
菫(なんて言うか、物凄くムカツク声…)
仁美「…おい、菫」タラリ
「失敗したわぁ。着替えが何処に置いてあったのか気付かなかったんだもの。知ってればゴミ箱にぶち込んでおいてあげたのに」クスクス
菫(それと、湯けむりで姿が隠れてるが、それでも分かる糞特徴的なボディライン…)
仁美「これちょっとヤバくなかとか」
菫(うるさい。わかってる)
「…え?…何?流石にやり過ぎ?」
仁美「おい。菫。ここは戦略的撤退をだな…」グイグイ
菫「…」
「…も、勿論冗談よ…冗談ですから…」
「ご、ごめんなさい。ねえ美子ちゃん。そんな目で見ないで…信用してよぉ…」
仁美「おい!菫!」ヒソヒソ
菫「うるさい。女にはな。分かってても退けない事ってあるんだ」
仁美「こんの阿呆…」ハァ
菫「第一、今更どうやって逃げんだよ」
仁美「…ブクブク」
菫(潜水しやがったこいつ)
霞「うふふふふ。相変わらず性格悪そうな顔してるわね?お久しぶり。弘世菫」
菫「…そっちこそ、婆臭さが相変わらずで何よりだ。石戸霞」
霞「うふ♪」ニコッ
菫「…ちっ」ギロッ
霞「お風呂ご一緒しても良いかしら?必然色んな所比べちゃうことになるし申し訳ないのだけど」ニコニコ
菫「ちゃんとその加齢臭漂う身体洗浄してから湯船入れよ」
霞「…」ゴゴゴゴゴ
菫「…」ドドドドド
美子「…」パシャパシャパシャ
霞「…」ゴシゴシゴシ
菫「…」グテー
仁美「…」プカー
菫(連中が身体洗いに行ったら浮上してきやがった)
仁美「おい。菫」ヒソヒソ
菫「なんだ羊」グテー
仁美「大物ぶって緩んどる場合か。今の内にあがるぞ」
菫「やだ」ツーーン
仁美「このアホ…」ワナワナ
菫「なんで私が逃げるように出ていかなきゃならないんだ。私は長風呂なんだ」グテー
仁美「強情っぱりも大概にせーよと…」ハァ
霞「あら。いいのよ?別に。どの道こんな素敵なリラックス出来る空間で弱い者いじめなんてするつもり無いし」クスクス
菫「へえ…」ビキッ!
仁美(お前ら来た時点でここはもう極上のストレス空間ばい…)ガックリ
美子「…」パシャパシャパシャ
菫「大体なんでお前らが居るんだ」
霞「あら、それはこっちの台詞だわ。なんで東京者が奈良くんだりまで」
菫「…分かってるくせに」
霞「そっちこそ」クスクス
菫「…はー」
霞「くすくす…」
菫「…潮被害だよ。はやりんも夜中には来る」
霞「あら、瑞原プロも?だったら挨拶しておかなきゃ。以前は危ない所で風潮被害から救って頂いた恩もあるし」
菫「…ああ。そういえばお前そうだったらしいな」
霞「…」
菫「…暴走ねえ」
霞「…」
菫「ま、大変だったんだろうから、ご苦労さんって言っておいてやるよ」
霞「…」
美子「…」パシャパシャパシャ
菫「ま、私はする前に魔法少女になったけどな」フフン
霞「…」
菫「…んーーーーっ!」ノビーーー
霞「…」
菫「…ふう」グテー
仁美「…ブクブクブク」
菫(何潜水と浮上繰り返してんだこいつ)
霞「そうね。暴走、しんどかったわね」
菫「あ?」
霞「…いっそ死んでしまいたかったほどに」ボソッ
菫「…」
霞「…」
美子「…」
仁美「…」プカーーッ
美子「…」パシャパシャパシャ
霞「それにしても、瑞原プロも大変ねぇ」
菫「ん?」
霞「育成枠だか知らないけど、わざわざこんな才能無しのために色々動いたりして」クスクス
菫「ああ?」ギロッ
霞「才能ないんだから、危ない目に合う前に自分でバイブでも突っ込んでさっさと引退しちゃえばいいのに」バシャァ
菫「なんだと?」ザバァ
霞「…ふう。美子ちゃん、先に湯船行ってますからね」
美子「」コクコク
菫「やっぱり喧嘩売ってるだろお前」
霞「何が?」
菫「傲慢な糞女が」
霞「ふふ…身の程知らずの馬鹿女に言われたくないわね」チャプッ
霞「…ふう。いいお湯」
仁美「…」ビクビク
菫「…」
霞「…何よ。全裸で湯船に仁王立ちなんかしちゃって。はしたない」
菫「っ!」チャプンッ!!
菫「…ブクブク」
霞「…呆れるわ。今度は口元まで浸かるのね」
菫「…」
霞「子供っぽいわぁ。…餓鬼」クスクス
菫「…」スッ…
霞「?」
菫「喰らえ」ピューーーッ
霞「きゃっ!?」
仁美(やりおった。水鉄砲とか…)
霞「ちょ、やめなさ…わぷぷっ!?」ワタワタ
菫「ほらほらほら。口開けたらお湯入るぞー」ピューーーーッ
霞「はぷっ!んぐっ!こ、この糞餓鬼…きゃっ!?」コケッ
バッシャーーーン
霞「ガボガボ」
霞「何するの!!」ザバーーーン!!
菫「やっぱり思ったとおりだ。お前、あれだな。変身したら強いが、変身前は運動音痴だ。それを確認したかったんだよ」フフン
霞「この…!!人が下手に出てれば!調子に乗るのも大概になさいよ!?」
菫「何処が下手だった!なんだ!?やるか!!?」
霞「変身さえすれば貴女なんか…!」ワナワナ
仁美「ちょ…!こら!おい菫!」
菫「上等だ!なんなら文字通り今ここでお前を風呂に沈めてやろうか!」
霞「あはははは!!言ったわね!?良いわ!それじゃあここでこの間の続きしましょうか!『阿知賀松実館拷問殺人事件 羊は見た!湯船に沈む菫の花は最初から枯れていた』今から2時間たっぷりロードショーしてやるわよ!!」
菫「なんだとこの奇乳がコラァ!!」
霞「目付き悪いのよ貴女!!」
仁美「ちょ…!お、おい…!!」
菫霞「「ぶっころ…!!」」
仁美(いかんいかんいかん!?こうなったらもう巻き込まれる前に逃げるしか…)
美子「…」バッシャーーーン
仁美「!?」
仁美(美子!?狂犬共に洗面器に汲んだお湯ぶっかけた!?)
菫霞「「…」」
美子「…」スッ
菫「…」ポコン
霞「…」ポコン
仁美(しかも追撃に洗面器の腹で頭殴っただとぉ!!?)
美子「…」チャプン
菫「…」ビショビショ
霞「…」ビショビショ
美子「…」キュー…
菫「…」ポタポタ
霞「…」ポタポタ
美子「…マナー違反」ボソッ
美子「…」ユッタリ
菫「…」
霞「…」
仁美「あわわわ」オロオロ
菫霞「「…すみませんでした」」ブクブク
仁美(収まった!!)
菫達の部屋
仁美「~ったく、お前はだなぁ…どうしてこう、喧嘩っ早いっていうか、肝心なところで我慢をしないっていうか…」グチグチ
菫「…はい。はい。反省してます」
仁美「あそこで万が一バトルファイトになってたらどう考えてもなぶり殺しばい。どうせ戦うにしても、もっとこう、搦め手をだなぁ。例えば寝込みを襲うとか」
菫「それじゃあ勝った気にならないから却下だ。それに私のプライドが許さないし」プイッ
仁美「はぁ~…」
菫「…悪かったよ。久しぶりに奴の顔見てつい頭に血が昇ってしまったんだ」
仁美「ホントに勘弁してくれ。どうせバンザイアタックするにしても、うち居ないところで頼むわ…」
菫「…以後気を付ける」
仁美「いまいち信用ならんなぁ…」
菫「…今回ばかりは返す口もない」
仁美「それって約束破る気満々って事じゃ…いや、まあええわ。向こうこそ美子にがっつり絞られとるやろうし」
菫「なんか変な迫力有って逆らえなかったなぁ」
仁美「昔からあいつ、怒ったら部で一番怖かったばい」
菫「そうか。お前あの子とチームメイトだったな」
仁美「ん。まあ」
菫「なのにお前この間彼女人質に…」
仁美「ま、まああれは緊急事態だったし!?」
菫「…」
仁美「そ、それより夕飯たい!いい加減腹減って仕方なか~!」
菫「…まあ、私も確かに空腹ではあるが」
仁美「…食堂でアイツらと4人で食うのは気まずかな~」
菫「私は別に」
仁美「うちと美子が気まずかな~」
菫「…分かったよ。確か、部屋まで配膳してくれるんだっけ?松実さんに頼んでくるから」スクッ
仁美「んー」
コンコン
菫「ん?」
仁美「お。誰か来たか?はやりんにしては早すぎる気がするが…」
菫「はいー。開いてますがー」
「では、失礼しまして…」
スーーッ
菫「!」
宥「こ、こんばんわ~」カタカタ
菫「君は…」
宥「本日は当松実館をご利用頂きありがとうございます~」カタカタカタ
仁美「相変わらず寒そうな…」
宥「お久しぶりです。松実宥です~…カタカタ
菫「あ、ああ。お久しぶりです。弘世菫です…」
仁美「江崎仁美たい」
宥「先程妹からお二人がお越しくださったと聞き及んだものですから~」カタカタ
菫「あ、ああ…取り敢えず中に入ったらどうだい?この季節の夜は廊下も冷えるだろうし…」
仁美「なんか今にも凍死しそうばい。冬どうやって生きとるん?」
宥「なんだかすみません…」カタカタ
菫「え、エアコン入れようか。暖房で…」ピッピッ
宥「すみません…」カタカタ
菫「いや。その…。まあ、こっちも寒かったからな。気にしないでおくれ」
仁美「ところで、なんか用事でもあったんと?」
宥「あ、そうでした」ポン
宥「一つはお二人へのご挨拶のつもりだったんですけど、もう一つは、お食事をどちらで召し上がられるのかを伺おうかと」カタカタ
菫「それは助かるよ。ちょうど今からそれを伝えに行こうかと思っていたところなんだ」
宥「そうだったんですか?」
菫「ああ。部屋で食事をさせて貰えないかと…」
宥「畏まりました~」ニコッ
菫「ありがとう」
宥「では、もう一組のお客様のところにもご挨拶と、同じ要件がありますので失礼しますね」スクッ
菫「わかったよ」
仁美「どーもね~」
宥「それでは~」トテトテ
スーーーッ…パタン
廊下
宥「…あ、いけない。忘れてた。混ぜご飯と白いご飯があるけど、どっちが良いか聞くように言われてたんだった」
宥「申し訳ないけど、もう一回…」スッ
「…さて、それじゃあ食事まで暇だし明日の風潮被害者捜索の話でもしていようか…」ボソボソ
宥「…え?」
「メェー?お前とことん真面目やな~。そんなのはやりん来てからでええやろ」ボソボソ
宥「風潮被害…?」
宥「…」ソッ
宥(盗み聞きみたいで申し訳ないけど…)ピトッ
「何言ってるんだ不真面目羊。いいか?私達は魔法少女とそのマスコットして一刻でも早く風潮被害者をだな…」
宥「…」
「わーかったわかった。それじゃあちょっとだけなちょっとだけ。メェー…早くご飯来ないかな」
「こら!」
宥「…」
菫達の部屋
菫「…で、私はやはり明日こそ晩成高校にだな…って、おい羊」
仁美「…?」ジーッ
菫「…どうした?入口の方見たりして」
仁美「いや…なんか」
菫「誰かの気配でも感じたか?…はっ!まさかあの霞ババア私達の作戦の盗み聞きを…!!」タタタタ
菫「こらぁ!」ガラッ
菫「…」
菫「…」キョロキョロ
菫「…誰も居ないじゃないか」
仁美「…」
菫「…お前の勘違いだったんじゃないか?」パタン
仁美「…」
菫「さあ、話を続けるぞ。で、明日の午前中ははやりんと晩成高校に行って…」
仁美「…菫。話があるたい」
菫「ん?」
仁美「夕方こっちに帰ってきてから気付いたんやけど…」
菫「ああ」
仁美「松実姉妹」
菫「?」
仁美「あいつら、どっちか風潮被害者やぞ」
菫「!?」
第九話
「あったか温泉と狂犬魔法少女達」 終わり
休憩ー
玄「お料理お待たせいたしましたー」
宥「お待たせしましたー」ブルブル
菫「…」チラッ
仁美「…」フルフル
菫「…」
玄「…弘世さん?」
菫「ん?…ああ、すまない。ありがとう。ちょと考え事をしていてね」
玄「はえー」
宥「あったかいうちにどうぞ~」
仁美「おお、混ぜご飯!」
菫「…と、白いご飯もかい?ありがたいが、食べきれるかな…どちらかで良かったのに」
宥「…」
玄「おねーちゃん?」チラッ
宥「あ、え、えっと、う、うちはどっちも自慢ですので、お二人に両方味見してもらいたくて~」
玄「おお、なるほど!そういう事なのです!」
菫「そういう事か。素敵なサービスだ」
仁美「うち、どっちも食べきれるばい」
玄「おお~」
菫「食べ過ぎで腹壊すなよ?」
玄「万が一食べ過ぎてしまっても、お腹壊してもお薬ありますよー」
仁美「メヘッ!?」
菫「はははは…」
宥「…く、玄ちゃん!」
玄「?はいなのです?」
宥「つ、次!」
玄「んにゅ?」
宥「次、石戸さん達待たせてるから、行こ?」
玄「おお!そうでした!すみませんお二方!我々はお仕事の最中でしたので、これにて失礼をば!」
菫「あいつらか。ああ、あの石戸霞ってやつは今ダイエット中らしいからご飯減らしてやってくれ」
玄「そうだったんですか!ではそうしておきますね」ニコッ
パタン
菫「…駄目か?」
仁美「んん~…なんか、よくわからん」
菫「結構進行しているんだろう?」
仁美「もう暴走一歩手前やね。なんやけど…なんっつーか、二人がボヤけて見えるっつーか…」
菫「ボヤけて見える?」
仁美「二人が姉妹で近くに居るせいなんかね?まるでこう、風潮被害の気配が3D映画を肉眼で見たみたくダブってる感じばいね」
菫「それで、正体が掴めないと?」
仁美「こんなケース初めてよ…」
菫「うーん…困ったな。どちらかはほぼ確実だというのに、このままでは手を出せないのか」
仁美「いっそまとめてやっちまうか?」
菫「馬鹿。風潮被害者は感染時の記憶が消えるから良いかもしれないが、違う方はがっつり記憶に残るんだろう?」
仁美「ちっ…面倒な…」
菫「参ったな…霞の奴の方は大丈夫だろうな?多少の被害は目を瞑ってやったりしそうな女だし」
仁美「んな事しようとしたら美子がブチ切れるやろ」
菫「…随分信頼してるのな」
仁美「それよりも、たい。うむむむ…さあ、どうするか…」
菫「…ふう。まあ、仕方ないか」
仁美「ん?」
菫「確実な方法は一個しか無いだろ」
仁美「…?っつーと?」
菫「簡単な事だよ」
仁美「??」
菫「暴走したら流石にわかるだろ」
仁美「…おおう。力でねじ伏せに来たか」
菫「気配ちゃんと探っておけよ。霞の奴に先んじて私が獲る。必ずな」
仁美「猟犬かお前は」
菫「…話はここまで。食べよう。…いただきます」ペコッ
菫「…モグモグ」
仁美「…はぁ~…なんでお前白糸台の部長やってこれたん?その脳筋で」
仁美「…まあええわ。頼むよ。相棒」
菫「ん」モグモグ
仁美「…いただきます」ペコッ
午後9時
菫達の部屋
シーーーーン
菫「…」
仁美「…」
菫「…」
仁美「…」モゾッ
菫《動くな》
仁美「…」
菫「…」
仁美《…なあ》
菫《…なんだ》
仁美《…なんていうか、これでええんか?》
菫《何がだ》
仁美《何っち…結局やることと言うたら、電気消して布団潜って、寝たふりして待ち伏せ?》
菫「…」
菫「…」
仁美《さっきあんだけ威勢よく狩人みたいな事言っといて待ち伏せ型ハンティングかい》
菫《…どこかで反応があったら飛び起きて向かうさ》
仁美《じゃあなんでこんな事してんのうちら》
菫《ここは風潮被害者の、文字通りホームだろう?》
仁美「…」
菫《もしかしたら、どこかでこっそりこちらの様子を伺っているかもしれない》
仁美「…」
菫《もし私が風潮被害者なら、このタイミングで泊まりに来た若い女…魔法少女になりうる人間は、魔法少女だと疑うに決まってる》
仁美《…ふむ》
菫《だとしたら…暴走して力を得たら、勘付かれる前に直ぐに潰すのが上等だろう》
仁美《…つまり、隙を見せて炙り出すと?》
菫《上手くいくかはわからないがな。それでも何もしないよりは良いだろうさ》
仁美《布団気持良か~…》
菫《おい、寝るなよ。飽くまでもお前の感知が最良の手段なんだからな》
仁美《ん~…ムニャムニャ》
菫《おい。叩き起こすぞ》
仁美《五分だけ休憩…》
菫《こいつ…いい加減に…!》
菫「…」
菫《…いや。やっぱ寝てて良いぞ》
仁美《んぁ~?》
菫《そのまま寝たふりしてろ》
菫《どうやら掛かったみたいだ》
仁美《うそん》
スス…
「…」チラッ
「…」キョロキョロ
スス…スーーーーッ…
「…」コソコソ
菫「…」
仁美「…」
「…」ジーーッ
菫「…」
仁美「…」
「…」ゴクリ
菫《…用心してるな》
仁美「…」
菫《仁美?》
仁美「…」
菫《おーい》
仁美「…」
菫《仁美ーー》
仁美「…くぅ」
菫(この羊、マジで寝やがった…)
菫(…まあいいか。ここまで来たって事は既に暴走してるって事だろう?後はとっちめて終了だな)
菫(ふふふ…霞の奴悔しがるだろうな。私の頭脳プレイが風潮被害者をここへ向かわせたんだ。1杯食わせてやったって訳だ)
菫(後は、奴がこちらが完全に寝入ってると確信して近づいてきたタイミングを見計らって、奇襲をかけてやれば…)
「…」
菫(完璧だな)
「…寝てる…よね?」ボソッ
菫「…」
「…新道寺の人も寝息立ててるし…うん」
菫「…」
「…この人達、魔法少女らしいし…」
菫(…ふっ…私の作戦、完璧だったな)
「…ごめんなさい」
菫(なに。謝る事は無いさ)
「私…」
菫(こっちこそ、今から君を気絶させなくてはいけないんだからね)
宥「玄ちゃんを守らなきゃいけないから」
菫(…へ?)
宥「変身っ!」
菫「…」
菫「…はああ!!?」ガバッ
宥「っ!!起きてた!?」シャランラ
菫「な…!」
宥「…ごめんなさいっ!えいっ!」ブンッ
菫「くっ…うおっ!?」
宥「あっ!」スカッ
菫(っ!危なっ!身を引いた場所をフックが掠めてった!)
菫(このっ!反撃だ!蹴り飛ばしてやる!)
菫「ふっ!」ブンッ
宥「きゃっ!?」サッ
菫(かわされた!?くっそ!コイツに攻撃かわされるとインハイの準決勝思い出す…って、それより確認しなくてはいけないことがっ!)
宥「あ、危なかったぁ…」ドキドキ
菫「おい!」
宥「ひっ!?」
菫「き、君!どう言うことだ!?答えろ!」
宥「あ、あううう…この人怖い…」ブルブル
菫「なんで君が魔法少女に!?」
宥「え、えっと…」オロオロ
菫「他にもだ!なんで私を襲った!それに、妹さんを守るだと!?なら彼女が風潮被害者なんだな!?」
宥「っ!」ギュッ
菫「それにさっきの口ぶり…君はそれを知っていて放置してたのか!!」
宥「…っ!」
菫「どうなんだ!答え…」
宥「えいっ!」ブンッ
菫「ろおおお!?」サッ
菫(大振りストレート!?危なっ!)
宥「く、玄ちゃんを傷付ける人は…ゆ、許さないんだから…!」ブルブル
菫「くっ…問答無用か君は」
宥「絶対に…絶対に…私お姉ちゃんだし…」ジリジリ
菫「馬鹿言うな!妹さん、風潮被害者だぞ!?早いとこ浄化してやらないと周囲にエラい被害が…」
宥「それでもっ!」ダッ
菫「…っ!」グッ
宥「私には玄ちゃんが一番大切だもん!」ドカッ
菫「がふっ…!」
菫(ぐえ…体当たり…衝撃受け止め切れなかった…)
菫「…ちっ!」ドサッ
宥「玄ちゃんは私が守るんだから~!!」ピョンッ
菫「くっ!?」トスン
菫(マズい、マウント取られて腕も抑えられた!ぐ…!動か…ない…!)グググ
宥「そ、そのためには、あ、貴女のしょ、処女だって…奪うんですから…ご、ごめんなさい…」カタカタ
菫(この子、性格と裏腹にかなり力あるぞ…!)
宥「ごめんなさい、ごめんなさい…!」グググ
菫「ぐぎぎぎ…!」ググググ
菫(駄目だ…力じゃ向こうが上だ…)
宥「ううううう~~~!!」ギチギチ
菫(第一、処女奪うって言いながらずっと腕抑えたまんまだし…!何する気だ?)
宥「えいっ!」
菫「くあっ!?」ビキッ
宥「はぁはぁ…!うううう~~~!!!」
菫(抑え付けられた腕が攣りそうだ…!どんな力だよ!)
宥「やっつける!やっつけるもん!」ギチギチ
菫「この…いい加減に…」
菫「離れろ!」バッ
宥「え…あれ…?え…脚…?なんで…」
菫「首捕ったぞ!この野郎!」グイッ
宥「きゃ!?」ドサッ
菫「ぜぇー!はぁー!け、形勢逆転だこのっ!くっそ。マフラー邪魔だな。首四の字上手くかからない…」ギギギギ
宥「うううううう~~!!」ジタバタ
菫「け、けど、はぁ…こ、これで完全に極まったぞ。もう逃げられると思うなよ」ギチギチ
宥「かふっ…!」ビクビクッ
菫「ふぅ…ふぅ…っ!よ、よし!それじゃあ答えろ!何のつもりだ魔法少女!」
宥「く、玄ちゃんを守るためだもん!」ジタバタ
菫「ああ!?風潮被害者暴走したの魔法少女が止めないでどうするんだよ馬鹿野郎!」ギシッ
宥「ぐっ!だ、だけどっ!玄ちゃん、大事なんだもん!たった一人の妹なんだも…あああっ!」メシメシ
菫「ふざけるな!だったら尚更だろう!早いとこ浄化してやらないと悪戯に罪を増やすだけだ!姉だって言うならむしろお前こそが…」ギチギチ
宥「やだ!絶対にやだ!!」ポロポロ
菫「泣くほど嫌か!このわからず屋!」
宥「わからず屋でも…!暴走風潮被害でも…!!」
菫「だったらまずお前を絞め落として…」グググ
宥「あぐ…っ!かっ…!け、けどっ!負けないっ!」
宥「絶対に玄ちゃんは殺させないもん!」
菫「…へ?」
菫「…え?ころ…」
宥「たあ!」コロン
菫(あ、抜けられ…って、待て待て。なんか双方重大な勘違いしてないか?)
宥「はぁ…はぁ…うう~…く、苦しかったよぉ…」ヨロヨロ
菫「えーっと…君、なんか勘違いしてないか?魔法少女は別に…」
宥「とぼけないで!魔法少女は風潮被害者を殺すために現れるんでしょう!?」キッ
菫「いやいや、幾らなんでもそこまでバイオレンスな世界観じゃないが…」
菫(えー…そこから勘違い?)
菫「っていうか、どこからの情報でそんな勘違いを…」
宥「…え?だって、マスコットの穏ちゃんが、風潮被害をやっつけるのが魔法少女の使命って…」
菫(穏って…もしかしてあの阿知賀の大将の子か?)
仁美「あの大将か?あいつアホっぽそうやったからな~。説明じゃんじゃん端折ってる内に勘違いさせてそうたいね~」ムクリ
菫「仁美…」
仁美「ちなみに、お前さん魔法少女初めてどんくらいよ?」メェー
宥「え?私?えっと…今日のお昼からだけど…」
菫「超タイムリーだなぁ!」
仁美「ほーほーほー」
宥「赤土先生に進路相談して、その後校舎で遊んでる穏ちゃんに会ってお話して、そしたら『なんかきたー!』って穏ちゃんが突然叫びだして…」ブルブル
菫「マジか」
宥「それから私と穏ちゃんがパートナー?っていうのらしいからキスしようってなって…」
菫「アバウトだな!」
仁美「風潮被害とか魔法少女について知ってることは?」
宥「風潮被害は、悪い噂に従わなきゃいけなくなることで、魔法少女はそのかかった人をやっつける専門の人って…」
菫「おお…」
仁美「…まあ、勘違いしてもおかしくない説明たいね」
菫「はぁ~…」シオシオ
宥「え?ええ!?」オロオロ
菫「羊。説明任せた」
仁美「仕方なかね~…」
十数分後
仁美「以上。魔法少女に関する講義終了」
宥「そ、そんな…それじゃあ、私勘違い?」
菫「あ~…どうやらそのようだね」
宥「ごっ!ごめんなさい!私そうとは知らずお客様にとんだ失礼を!」ペコリン!!
仁美「メェ~…」
菫「…まあ、妹さんを守ろうとした気概は立派だと思うよ」
宥「うううう…」シュン
菫「しかし…そのマスコットの子…ええと…」
宥「高鴨穏乃ちゃん」
菫「なんて言うか、ちょっと説明力が無さ過ぎるというか…」
仁美「アホたい」
宥「ほ、本当はいい子なんです!ただちょっと落ち着きが足りないというか…」オロオロ
菫「まあ、今度会って話しようか。明日にでも」
仁美「…と言うことは」
菫「ん?」
宥「え?」
仁美「…おお。暴走しとる暴走しとる」
菫「ああ!」
宥「え…ああっ!」
仁美「妹さんド派手に暴走しとるね~。これは…アホの子という風潮に腹黒い犯罪者という風潮に…おもちマイスターだという風潮?トリプルやね」
菫「げっ!」
宥「えっと…それって」
仁美「初陣で菫が手も足も出なかったタイプ」
菫「くっ…け、けど今ならあの頃とは違うしなんとか…」
宥「大変!玄ちゃんを止めなきゃ!」
菫「松実宥さん。だったら、私も手伝うよ。さっきはああ言ったが新人一人じゃ手に余るだろう」
宥「すみません。恩に着ます。早く玄ちゃんを助けてあげなきゃ…」
仁美「ん?あ~…れ~…?」
菫「どうした?」
仁美「…」
菫「仁美?」
宥「?」
仁美「…や、ええよ。行かんでも」
菫「は?」
宥「駄目!」
仁美「いや。駄目ち言うても…」
宥「玄ちゃんきっと苦しんでる!私が助けてあげなきゃ!」
仁美「ん~…」
菫「どうした羊。なんだか煮え切らないが」
仁美「…うん。もう終わったわ」
宥「へ?」
菫「…」ピクッ
宥「え…?それは…つまり?」
仁美「解決。お疲れ。おめでとう」
宥「はい?」
菫「おい、羊。まさか…」
仁美「ん」
宥「????」
仁美「かすみんが一晩でやってくれました」
遡って菫と宥が争ってる頃
霞達の部屋
スス…
玄「…」チラッ
玄「…」キョロキョロ
スス…スーーーーッ…
玄「…」コソコソ
玄「…くふふふ」
霞「…すー…すー…」
玄「ふふふ…よく眠っているのです」ニヤニヤ
霞「…すー…すー…」
玄「これから私に手篭めにされ、調教され、骨抜きにされ…己の意思すら持たぬ哀れなおもち人形として一生を終えるとも知らずに」クフフフフ
霞「…すー…すー…」
玄「可哀想なギニーピッグよ…恨むなら、己の呑気さと神すら恐れる至高のおもちに育ってしまった自分を恨むのですね」ジリジリ
霞「…すー…すー…」
玄「貴女のそのおもちは、この瞬間よりこのクロチャー様の所有物なのです…」ジリジリ
霞「…すー…すー…」
玄「ふふふ…素晴らしい…寝息で呼吸するだけで大山鳴動…もはや我慢できません」
霞「…くす…すー…」
玄「さあ、いざ霊峰へ我が魔手にて征服をせんや…!」スッ
霞「はい♪」バサッ
玄「へ?」
霞「一名様ご案な~い♪」グイッ
玄「むきゅっ!!?」
ボフッ
霞の布団「ドタンバタン!!」
霞の布団「ドタバタ!!」
霞の布団「ドタ…」
霞の布団「…」
シーーーーン
…
美子「…」パチッ
美子「…」ボーー
美子「…」キョロキョロ
美子「…」ジーー
霞「…すー…すー…」
美子「…?」キョトン
霞「…すー…すー…」
美子「…」ポリポリ
霞「…すー…すー…」
美子「…」ポケー
美子「クアー…」
美子「…」コシコシ
美子「…」コロン
美子「…すー…すー…」
玄「 」ピクピク
菫「…宥さん」
宥「はい?」
菫「妹さんは、その…」
宥「はあ」
菫「…まあ、野良犬にでも噛まれたと思って…」サッ
仁美(あ。目逸らした)
宥「何があったんですか!?」ガーーーン
第十話
「松実姉妹と恐怖のおもち」 終わり
疲れたのでちょっと風呂に入ってくるという風潮
午後11時
菫達の部屋
はやり「みんなー☆お待たせこんばんわ~…てぇ…」
菫「…」ゴツッゴツッ
霞「…」ゴチンゴチン
宥「あわわ」オロオロ
仁美「チューチュー」
美子「すやすや…」
玄「 」チーーーーン
はやり「何この状況」タラリ
菫「あ、はやりん。お疲れ様です。お待ちしていました」ゴツンゴツン
霞「あら瑞原プロ。いつぞやはお世話になりまして、大変感謝しております」ゴッ!ゴッ!
はやり「ふ、二人はまずその激しい頭突きのし合いっこを止めてからお話しようね…」タジタジ
玄「新たなおもちの気配!?」ガバッ
仁美「おい。こいつ風潮被害消えとらんのじゃなかか」
宥「玄ちゃんいつもこんな感じだよ~」ブルブル
菫「以上で我々が阿知賀に来てから先程までの報告を終わらせて頂きます」
はやり「はぁ~…まさか、この局面で新しい魔法少女に出会うとはねー」
宥「あ…ま、松実宥です…瑞原プロですよね?」ペコリン
はやり「ども~。はやりんだよ~☆」
玄「みなさん!お茶を淹れてきたのです!」ガラッ
仁美「おお、気が利くね」
美子「…」ペコペコ
霞「あら…確かにあんまり変わってないわねこの子」
菫「…と、まあ、こんな感じなんですが…」
はやり「暴走風潮被害、今日だけで2人かぁ~…」
仁美「ついでに言えば、マスコットと魔法少女も一人ずつ出来とる」
はやり「なるほどねぇ…って事は、やっぱり…」ブツブツ
菫「?」
霞「あら。と言うことはやはり、瑞原プロも?」
はやり「霞ちゃんも?…うん。多分、間違いないんじゃないかな」コクン
霞「あらあら」クスクス
はやり「面倒臭いなぁ…」ヤレヤレ
菫「あの…」
はやり「ん?…ああ、たはは…ごめんごめん」
菫「あの…申し訳ありません。話の腰を折るようで。けど…」
はやり「うん。わかってるわかってる。説明だよね?」
菫「ええ…何やら、わかって無いのは私と宥さんだけのようですので…」
宥「…?」キョトン
美子「…」
玄「私もわかってないのです!」ビシッ
仁美「はいはい」
霞「くすくす…」
菫「むっ…なんだよ。ちょっと知ってるからって古参気取りか」
霞「いえいえ…そんなつもりではないのだけど…」
菫「ああ?」
はやり「まあまあ抑えて抑えて」
菫「ぐぬぬ…」
はやり「霞ちゃんもね?あんまり喧嘩しないでね?」
霞「…ぷう」
はやり「はい、それでは今から、私達…って言っても霞ちゃん達はたまたま合流しただけなんだけど、目的同じっぽいから良いよね?」
霞「ええ♪」ニコッ
美子「…」コクン
はやり「…私達が何故宿泊までしてここ、阿知賀にやってくることにしたのかのネタばらしをしようとおもいま~す☆」
菫「ネタばらしって…風潮被害が多く発生する前兆を感じたからでは?」
はやり「それもそうなんだけどね~。けど、そっちはどっちかって言うと、オードブルって感じ」
菫「…はあ」
はやり「メインディッシュは、その後に控えています」
菫「…?」
はやり「今回のメインディッシュの名前はー…大風潮被害」
菫「大風潮被害?」
はやり「うん。…まあ、名前はなんでもいいよ。みんな適当に呼称してるだけだし」
菫「それは…一体?」
はやり「うん。ぶっちゃけて言うとね。超々強力な風潮被害の事」
菫「…はあ」
はやり「どれくらい強力かって言うと、その感染者のイメージを全て、真っ白から真っ黒にまで塗り替えるといっても過言ではないくらいの強力なもの」
はやり「まるで風潮被害自身が意思を持ち、人格を形成し、一人歩きし、元の人格を完全に乗っ取るかの如く。しかも、それがあっという間に広がっていく。まさに風のような速さでね」
菫「それは…恐ろしいですね」
はやり「あまりに強力なその風潮被害は、感染者本人だけに留まらず周囲の人間にまで風潮被害汚染を引き起こすと言われているよ」
菫「っ!まさか、それで今回も!」
はやり「うん。ここ阿知賀で数多くの風潮被害者が急に発生しているのは、大風潮被害者が生まれようとしているからじゃないかな」
菫「やっぱり…」
はやり「そんな状況で魔法少女とマスコットが急に生まれたっていうのも、過去に結構事例があるね。まるでウィルスに対して身体が免疫が作り出すかのように、大風潮被害者の周囲には魔法少女が発生し易くなるらしいの」
宥「それが、私と穏ちゃん…?」
はやり「多分ね。そういうケースで発生した魔法少女は強大な才能を持ってる事が多いって言うけど…どう?君。私達と一緒に魔法少女隊やってみる気ない?☆」
宥「え?え?」オロオロ
菫「こんな時にいきなりスカウトしないであげて下さい。困ってますよ彼女」
はやり「あはは…ごめんごめん。でも、良かったら真剣に検討して欲しいな」
霞「へえ…面白そうなことやってるのね貴女達」
菫「なんだよ。お前も入れて欲しいのか?」
霞「まさかぁ?確かに瑞原プロとチーム組むのはとても魅力的だけど…貴女と一緒じゃ…ほら…ねえ?」クスクス
菫「…」ビキビキ
はやり「喧嘩駄目だヨー」
菫「…コホン。では、先ほどの話の続きを。その、大風潮被害に関してですが。それほどまでに強力なケースなら、感知も容易で暴走前に未然に止めることも簡単なのでは?」
はやり「それが、そうもいかないんだよねぇ~…」
菫「…というと?」
はやり「…大風潮被害者は、完全暴走前から私達魔法少女に敵意を剥き出しにするの」
はやり「風潮に従った行動をするのは暴走後なんだけど…大風潮被害はその強大さ故に暴走までの期間が凄く長くて、それまでに自己防衛みたいな機能を働かせるようなの」
はやり「暴走前から通常の風潮被害体を遥かに超える能力を有し、狡猾に身を隠し、羽化の時を待つ」
はやり「察知するには、その強大な波動を一瞬でも感知するより他にない。だから、こうやって近くまでは特定できてもその先、個人の特定が難しい」
はやり「…ねえ?霞ちゃん」
菫「!」
霞「…ふふふ。ええ、そうですね。私もその大風潮被害者だった一人」
菫「お前が…」
霞「本当に辛いのよ?自分が自分でなくなる感覚…やりたくないことをやりたいと考えている自分。やらなきゃいけないという使命感に必死に抗う孤独」
霞「…誰かに必死に助けって!って叫んでも、喉元にすら言葉は上がってこない」
霞「あの時暴走前に瑞原プロに見つかっていなかったら…ふふ。考えるだけで虫酸が走るわ」
菫「そうだったのか…」
霞「兎に角、今この瞬間にでも同じ思いをしている子が居るのなら救ってあげたい…」
霞「…」
霞「…なんて、冗談。ただ歯ごたえのある遊び道具があるから遊びに来ただけ」
霞「…それだけだわ。それだけで十分」
はやり「…うん。それでもいいと思うよ。私は」
霞「…」
はやり「大事なのは、救うこと。理由なんて二の次」
はやり「だから、そのためにみんな。今この瞬間から、その時まで…力と知恵を私に貸してね」
菫「勿論です」
霞「当然ですね♪」
宥「わ、私で力になれるなら…!」
美子「…」コクン
玄「わ、私だって力になれることが有ったら言って下さい!」
はやり「みんな…ありがとう…」
仁美「…」
菫「…仁美?」
仁美「…面倒くさ」ボソッ
菫「…お前なぁ」ハァ
仁美「あーめんどくさめんどくさめんどくさ…っ!」ガリガリガリ
はやり「ふふふ…」ニコニコ
菫「はやりん?ちょっとはやりんからもこの羊になんか説教の一つでも…」
はやり「大丈夫☆」
菫「…」
仁美「面倒臭いから…」
仁美「なるったけ早く終わる手段考えるばい…!」
翌朝
はやり「それじゃあ、手筈通りに☆」
菫「ええ。お互いの健闘を祈りましょう」
霞「みなさん、お気を付けてくださいね。口だけの3流魔法少女以外」
菫「ああ!?なんか言ったか垂れ乳!」
霞「何!?図星突かれてトサカにきちゃった!?」
はやり「もー!こら二人とも!」
菫「ちっ…!」
霞「くっ…!」
はやり「…本当に大丈夫?」
菫「…ええ。頭を冷やしました。これからは白糸台の部長やっていた時のモードです。冷静沈着に行きますよ」
霞「なら私も永水女子モードで…」
菫「2回戦ガール(笑)がなんだって?」
霞「!!」ビキビキッ
はやり「…あー。これこれ。仲いいのはわかったから、お姉さんだって怒る時は起こりますぞ」
はやり「…なんか不安だから作戦行動の確認するね?まず、チームを3つに分けます。菫ちゃん、チーム分けの編成は?」
菫「Aチーム:はやりん、宥さん、玄さん。Bチーム:霞、美子さん。Cチーム:私、仁美 の編成です」
はやり「よろしい。じゃあ次。宥ちゃん、仁美ちゃん、霞ちゃん。それぞれの所属チームの行動目的言える?」
宥「Aチームは、まず私のマスコットである高鴨穏乃ちゃんと合流します。その後瑞原プロが彼女に事態の説明。使用可能な魔法等の確認。私と穏ちゃんの総合的な戦力を瑞原プロが分析し、決戦に参加可能と判断すれば参戦します」
霞「Bチームは晩成高校の調査です。大風潮被害者として疑わしき人物が居ないかを観察及び近日行動の変わった人物が居ないかを聞き込み。随時各チームに報告も行い、最終的な判断は瑞原プロに任せます」
仁美「Cも大体おんなじ。ただしこっちは阿知賀女子の調査。当該人物が少ないんで問題ないと判断したら速攻晩成に移動」
はやり「オッケー。あとは、玄ちゃんだけど…」
玄「はい!なんでもします!」フンスッ!
はやり「あ~…」
はやり「…私とお姉ちゃんから離れないように」
玄「了解なのです!」ビシッ
はやり「…そ、それじゃあ、行動に移りましょうかー。みんな。各チームでの行動はいいけど、深追いはしないように!確信を得たら、すぐに他のチームに連絡すること!1対1で戦おうなんて考えちゃ駄目だよ!」
はやり「特に二人は!!」
菫「こ、心得ています…」
霞「わ、わかりましたから…」
はやり「よーし…信じたからねー。…けど、最終的にバレちゃったりして戦わざるを得なくなったら頑張るんだよ」
菫「それは勿論」
霞「当然よね」
はやり「…」
はやり「…じゃあ…」
はやり「みんな、行くよっ!」
チームA
はやり「…ふぃ~。BとCは行ったね~?…不安だぁ~」ガクー
宥「あ、あのあの…」
はやり「…おっとぉ。ごめんごめん。はやり、一番お姉さんだもんね。ごめんね?みんなに心配かけるような事言っちゃって…」
宥「いえ、そんなことないですけど…」
玄「携帯準備出来ましたよー」
はやり「…ああ。そっか。ありがとうね~」
宥「まず穏ちゃんの携帯に掛けてみます」プルルルル…
はやり「…これで繋がってくれれば話は早いんだけどねぇ~」
玄「穏乃ちゃん、すぐに携帯置いてっちゃうから…」
宥「…やっぱり駄目です」
はやり「あう…」ガックリ
宥「次、お宅の方に電話してみます…」プルルルル…
はやり「何処に行ったのかな?」
玄「休日は顧問の先生が監督していないと部活出来ないのです。で、顧問の赤土先生が先生の方のお仕事で出張中なので、それに合わせて部活もお休み。一日休みだから山の方に行ってるかも…」
はやり「山って…」
宥「…あ、高鴨穏乃さんのお宅ですか?いつもお世話になっています。私、穏乃さんの麻雀部の友人で、松実宥と申しまして…」
はやり「…山だったら時間かかるなぁ…」
宥「…ええ、ええ。そうです。玄の姉です。…あの…穏乃さんは今どちらに居らっしゃるかご存じないでしょうか…」
はやり「…」
宥「…はあ…山が呼んでいると…はあ…」
はやり「…」
宥「…わかりました。ありがとうございます」
宥「…」ピッ
宥「…」
はやり「…」
玄「…」
宥「…山です」
チームB
テクテク…
霞「晩成高校か…ねえ、美子ちゃん」
美子「?」キョトン
霞「そこに居ると思う?」
美子「…」
霞「…ふふ。そうよねぇ?わからないわよねぇ?」
霞「けど」
霞「…鷺森灼」ボソッ
美子「?」
霞「松実玄」
美子「…」
霞「松実宥」
霞「…そして、高鴨穏乃」
霞「…全部、何かしら成ってるのよねぇ…」クスクス
美子「…」
霞「…阿知賀女子は、今日部活休みなんだっけ?」
美子「…」コクコク
霞「だったら阿知賀なんか行っても無駄骨だと思うんだけど」
美子「…」
霞「…羊が提案したチーム分け…晩成はここから一番遠い…」
美子「…!!」
霞「…まあ、良いけどね。面白いから真面目に役割こなしてあげましょうか。何か考えがあるんでしょう」
美子「…」
霞「…けど、あの子、何企んでるのかしらね?」
霞「ふふ♪」
チームC
菫「…ん?どうした仁美。そっちは阿知賀女子じゃないぞ」
仁美「いや…その前にちょっとな」
菫「寄り道は許さんぞ」
仁美「ちょっとだけいいだろ?」
菫「は?」
仁美「大勝負前の神頼みたい」
菫「神頼みって…」
仁美「ちょっと神様に一参り。必勝祈願にお祈りしてくるくらい良かろ」
菫「お前信心深かったっけ?」
仁美「…ま、そこそこな。駄目か?」
菫「…まあ、それくらいなら」
仁美「助かるわ~」
菫「…で、肝心の神社って何処だよ。あまり時間は取れないぞ」
仁美「大丈夫大丈夫」メッヘッヘッヘ
仁美「近所に新子神社てのがあるち、さっき調べたら有ったから」
仁美「偶然、な」
第十一話
「大風潮被害と魔法少女達」 終わり
仁美「近所に吉水神社てのがあるち、さっき調べたら有ったから」
仁美「偶然、な」
第十一話
「大風潮被害と魔法少女達」 終わり
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