勇者「俺が世界救ったのに扱い悪くね?」 (43)

勇者「いくら独り身だからって城下町に家一軒と一生分の生活費だけとかひどすぎるだろ」

勇者「世界一つの対価が家一軒と数億G・・・」

勇者「ちょっと王様に直談判してくるか」

●玉座の間

勇者「という訳で待遇の改善とかいろいろ要求する」

王様「いや、俺もちょっと安過ぎるかな?って思ったんだけどさ・・・」

勇者「ちょっと?」

王様「いや、その・・な、なぁ、宰相よ。ここは一つ・・・」

宰相「いいえ、なりません。ただでさえ我が国の予算は先の大戦で困窮しているのです」

宰相「勇者様もこの国を思うのでしたら、今のもので我慢していただきたい」

勇者「我慢できないからこうしてきてるんだよ」

宰相「我慢してください。これから軍の再編などでまた予算が・・・」

勇者「いらないだろ、軍とか」

宰相「は?」

勇者「この国のミジンコみたいな雑魚い兵隊なんていらねぇっての」

勇者「俺一人いればいいだろ」

宰相「ご冗談を。軍なくしてこの時代に国家などありえませぬ」

勇者「大戦の時さぁ、軍隊にできた事って何があったっけ?」

勇者「国内の人間に睨みきかせるしか能のない連中ばっかりで、前に出て戦ってたの俺一人だったじゃん」

勇者「そりゃあ俺の体が普通じゃないけどさ。それでも偵察とかいろいろ俺の援護してくれりゃまだよかったけどさ」

勇者「戦争に必要なこと、俺が全部自分でやってたぞ」

勇者「いらねぇだろ、そんな軍隊」

宰相「・・・」

勇者「せいぜい国内の紛争制圧できるくらいの規模でいいよ。余った金は俺に回してくれ」

勇者「つー訳で、よろしく王様!」

王様「あ、あぁ・・・」

勇者「そんじゃな~♪」 テクテクテク

宰相「・・・・・」

王様「さ、宰相・・・・」

●数日後

勇者「うぅん、諸国回りながら買い食いしてたら大分散財してしまった」

勇者「来月分のお小遣い前借するか・・?いやでも、冠婚葬祭が突然あるとも知れないし・・」

勇者「・・・王様、まだ俺に金出すの渋ってるし、もう一度行くしかねぇかな」

ゴメンクダサイーイ

勇者「うん?」

――――
―――
――

兵士「勇者様、王様より夕食のお誘いです」

勇者「へぇ、いいタイミングだ。しかし、将大樹を読むと、格好は普段着でいいのか?」

兵士「そのようです」

勇者「まぁ戦争も終わったし、余り仰々しい格好も必要ないもんな」

勇者「行くって伝えておいてくれ」

兵士「承りました」

勇者「招かれた席で金をせびるのもあれだが、まぁ雑談の中で軽く交えるくらいならいいだろ」

●会食

王様「どうだ、勇者。B国の南海岸で取れた海老はうまいだろう」

勇者「うん!おいしい!!」ハムハムムシャムシャモグモグ

王様「それもこれも、戦争が終わって、B国との輸送路の整備が進んだおかげだ」

勇者「あそこはでっかいのが特に荒らしてたからな。大変だったろう」

王様「それがそうでもない。宰相がB国と綿密な打ち合わせをして、スムーズに対応してくれたからな」

勇者「へぇ・・」チラッ

宰相「・・・」

勇者「・・・・それじゃ、もう一杯もらっていいかな、この海老のスープ」

王様「あ、あぁ・・・」チラッ

宰相「・・・」

勇者「?」

>>8
将大樹ってなんだ・・・

招待状の間違いだわ

――――
―――
――

ウッ・・・・・・バタン

王様「っ・・・・・」

兵士「ゆ、勇者様!?」

宰相「騒ぐな」

兵士「は?しかし・・・」

勇者「う・・・がっ・・・・あ・・・あ・・・」 ジタバタ

兵士「これは、そんな・・・料理に毒が!?」

宰相「ふぅん。あの化け物染みた勇者には、この程度スパイスにしかならないと思ったが」

宰相「存外、効くものだな」

兵士「宰相様・・!」

宰相「黙れ。王の許可は得ている。黙らねば反逆罪で貴様も殺すぞ」

兵士「っ、わ、わかりました・・・」

王様「・・・勇者、すまぬ」

勇者「ぎ・・・が・・・っ!」 ジタバタジタバタ

宰相「流石にしぶといな」

王様「・・・宰相、見るに耐えぬ。私は先に帰らせてもらう」

宰相「はっ。お気をつけて」

王様「・・・・」 カツン、カツン、カツン

宰相「王も、戦争が終わって随分と丸くなってしまったな」

宰相「さて、兵士よ。いい加減に死なぬそこの蛆にとどめを刺せ」

兵士「・・・・はい」 スチャッ

勇者「■■■」

宰相「・・・?」

*勇者の体から毒が抜け去った。

宰相「なんだ・・・?」

勇者「あのさぁ」 ムクリ

兵士「ゆ、勇者様!」

勇者「宰相様さ、毒の沼に沈んだ町から人質を連れ帰れって命令したの、忘れたの?」

宰相「なっ・・・」

勇者「毒くらいじゃもう死なないんだわ」

勇者「麻痺とかになって数ターン殴られ続けたりしたら結構やばいかも知れないけど」

宰相「くっ」 スチャ

*宰相は炎の呪文を唱えた。

勇者「・・・」 メラメラメラ

勇者「あぁ、せっかく一番いい服着てきたのに、燃えちゃったよ」

勇者「兵士さん、替えの服持ってきてもらえる?」

兵士「は、はいっ!」 ダダダッ

宰相「お、おい!!」

勇者「それで宰相様さ。俺、前から気になってた事があるんだけどさ」

宰相「・・・・」

勇者「宰相様って、実は女だって噂、マジ?」

●五日後、勇者の家

勇者「あれから王様、ちゃんと俺にお金回してくれるようになった。よかったー」

*王宮では急な人事異動があり、ちょっとした騒ぎになっていたが、この頃にはやや落ち着き始めていた。

勇者「王様への風通しもよくなったし、これで俺ものんびりできるよ」

勇者「ありがとね、宰相ちゃん」

宰相「ふぁい・・・」

*かつて女だてらにこの国の政治の世界を渡りきり、一時は国の舵を取る宰相にまで上り詰めた彼女は

勇者「そんな情けない声出さないでよ。またシたくなっちゃうじゃん」

宰相「どうぞ、ご自由になさってください・・・」

*――― 今や、一人の男にその全てを左右される、ただの奴隷へ堕ちてしまっている。

勇者「それじゃ、宰相ちゃん、また俺のを気持ちよくしてくれる?」

勇者「その間に次の冒険先、探しとくから♪」

*女はゆっくりと身を起こし、今や自分の全てとなった男の上にまたがった。

*その瞳に、かつてのギラギラとした瞳の輝きは・・・

●街道を走る馬車の中

元宰相(以下モサ子)「勇者様・・・、勇者様は一瞬にして遠方へと渡る魔法をお持ちのはずでは」

モサ子「何ゆえ、わざわざ馬車での移動など・・・あんっ♪」

*ガラガラという馬車の振動に、モサ子の言葉が遮られる。
*馬車の荷車の中で、たくさんの品物と一組の男女が身を小さくして
  ―――正確には可能な限り繋がることで結果的に小さくなっているだけなのだが―――
 目的地までの短くない道程を耐え忍んでいた。

勇者「せっかく冒険に行くんだから、道中も楽しまないとね」

勇者「それにあの魔法、一度行った事のある場所にしかいけないから、最初はこうやって方々に自分の足で赴いてたんだよ」

モサ子「んんっ・・・そ、そうだったんですか・・・」

*勇者の体以外に自分を支える物のない女は必死での体にしがみついているが、
 持ち前の身体能力で揺れる荷車の中に悠々と仁王立ちする勇者は、空いている両手で女の体をいじり続けている。

*堪え難い快感によって漏れるあえぎ声に、御者も期が気ではないだろう。

*目的地まで、まだ半刻はあった。

眠い

シオニーちゃんprprしながら寝たい

●復興の始まらない街

勇者「やぁ、ここは戦争中と変わらないなぁ」

モサ子「ひどい・・・。大通りなのに、まだ壊れたり焼けたままの家がある」

勇者「前線に近かったから、何度も襲われたらしい。俺はその頃、魔王城の喉笛に差し掛かってたから、助けにはこれなかった」

勇者「というか、前線近くにいつまでも残ってる住民がいるとも思ってなかった」

モサ子「住民、残ってたんですか?」

勇者「どこにも行けなかったらしいよ。ここ、落ちこぼれの街だから」

*一瞬、周囲から刺すような視線が集まった気がした。

モサ子「・・・そういうのは、人通りのあるところで言わないでください」

勇者「じゃあ、人気のない所に行こう」

*言葉選びを間違えた、と思いつつ、引っ張られる自分の手を見て、どことなく暖かい気持ちが浮かび、
 慌ててそれを否定した。

モサ子(こんな男に!)

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