ジン「どうしたんだ急に?一昔前に流行った『スイーツ男子』にでもなろうってのか?」
ウォッカ「そ、そんなんじゃないですぜ!」プンスカ
ジン「ならいったいどういう風の吹き回しだ?」
ウォッカ「もうすぐバレンタインじゃないですか、それでたまには姉御達に手作りお菓子でもあげようかなって」
ジン「逆チョコってやつか、喜ぶかもしれんな」
ジン「けどまだ1ヶ月以上先だ、気が早いんじゃないのか?」クビカシゲ
ウォッカ「それが、俺は料理が点でダメで、しっかり練習積んで1人でも作れるようになりたいんです!」
ジン「そうか…(熱心なことじゃねぇか)」フムフム
ジン「教えるのは構わんが、具体的に何を作るのかは決めてるのか?」
ウォッカ「全くです!」キッパリ
ジン「…。」
ジン「一概に"お菓子"と言っても、種類は様々だ。」
ジン「オーソドックスなもので挙げるならケーキ、タルト、マフィン、クッキー等か」
ウォッカ「兄貴、バレンタインはチョコ系じゃなきゃダメなんじゃないんですかい?」
ジン「ああ、主流はチョコレート類だが、最近はもはやジャンルを問わなくなってきているな」
ジン「だがやはりチョコレート類は基本的に簡単なものが多いな」
ウォッカ「溶かして固めるだけですもんね!」
ジン「馬鹿、それじゃ形の変わった板チョコだ!」
ウォッカ「え、チョコのお菓子ってみんなそうじゃないんですか?」
ジン「…。」
ジン「まぁ確かに今時の若い女は市販のチョコレートを湯煎して冷やしたものを手作りお菓子と呼ぶようなやつも多いからな…」
ジン「俺の個人的な意見だが手作りお菓子を名乗るからには粉から自分で作るべきだと思う」
ウォッカ「粉から…それってプロみたいなやつですかい?」ウルウル
ジン「まさか。粉から作ると言っても基本的な工程は計量と混ぜる、焼く、冷す。これだけだ」
ウォッカ「ほんとですかい?それなら俺にも出来る気がしてきやしたぜ!」ウキウキ
ジン「フッ(喜怒哀楽の激しいやつだ)」
ジン「よし、今回はチョコレート菓子の中でも簡単な部類の、『ブラウニー』を作ろうと思う」
ウォッカ「ブラウニー?何ですかいそりゃ?」クビカシゲ
ジン「簡単に言えばチョコレートのケーキだ。ガトーショコラとかと似てるかも知れん」
ウォッカ「あ、俺そっちは聞いたことありますぜ!」
ジン「確かにガトーショコラはチョコレート菓子の中では王道だ。だが王道であるが故に難易度も中級者から上級者向けだ」
ジン「ガトーショコラにはメレンゲを使うからな」
ウォッカ「メレンゲってのは卵の白身のことですよね!」
ジン「お、博識じゃないか。まぁ正確には白身を泡立てたもののことだがな」
ジン「このメレンゲが意外に大変で、しかも素早く作業しないと泡が戻っちまう」
ジン「まぁメレンゲの有無以外はブラウニーもガトーショコラもほとんど変わらんからな」
ウォッカ「そうと決まれば早く材料を買いに行きやしょうぜ!」ルンルン
ジン「あぁ、そうだな」
某イオン
ウォッカ「着きやしたぜ兄貴!まずは何から買いやしょう?」
ジン「そうだな…まずはレジの近くにあるお菓子売り場でチョコレートの調達か」
ウォッカ「了解ですぜ!」スタコラサッサ
ジン「やれやれ…」カゴトリー
ウォッカ「兄貴~!」
ウォッカ「チョコレートたんまり持ってきやした!こんだけあれば十分ですよね?」
ジン「…。」
ウォッカ「…兄貴?」
ジン「ウォッカ、これはミルクチョコレートじゃないか?」
ウォッカ「そうですぜ?」クビカシゲ
ジン「お菓子作りではな、基本的に使うチョコレートはビターと相場が決まってるんだ」
ウォッカ「え、そうなんですか?」
ジン「あぁ、お菓子のレシピはチョコレートとは別に砂糖も入れることが多い。だからミルクチョコレートだと完成したときに変に甘ったるい味になっちまうんだ」
ウォッカ「な、なるほどですぜ」
ジン「そして数も闇雲に買うんじゃなくきちんと事前に必要や量を把握しておく。基本お菓子作りは材料は前日か当日調達だ」
ウォッカ「勉強になりやす!」
ジン「さて次は…粉類か」
ジン「ウォッカ、ケーキは何の粉で作ってるか分かるか?」
ウォッカ「兄貴、さすがの俺でもそんくらい分かりますぜ。小麦粉ですよね?」
ジン「まぁ半分正解だな。小麦粉の中でも使うのは薄力粉だ。」
ジン「ちなみに中力粉はうどんやピザに、強力粉はパン等に使う」
ジン「っと、この辺だな。ついでにウォッカ、そこのベーキングパウダーをとってくれ」
ウォッカ「へい兄貴」
ジン「あとは…ウォッカ、砂糖と胡桃をとってきてくれないか。俺は牛乳売り場らへんにいる」
ウォッカ「お安い御用です!」スタコラサッサ
ジン「さて、卵は家にあるからいいとして、生クリームとバターか」
ジン「たいていバターも生クリームも同じゾーンにあることが多いから探す手間が省けるな」
ジン「お、あったあったここだ。生クリームと、バター…」
ジン「ここでバターについても一つ豆知識。普通のバターはなかなかの値段だから手を出さない。それにバターには塩分が含まれているからな。買うのは無塩と記載されているものだ。」
ジン「だがそれよりもリーズナブルなケーキマーガリンというのもある。頻繁に作るようならこっちのほうが手頃だな。」
幼女「まま~、あのひとさっきからひとりでぶつぶついってる~」
母「しっ 見ちゃいけません!」
ウォッカ「へへっ、兄貴におつかい頼まれちゃったぜ!」
ウォッカ「さて、砂糖砂糖~っと…お、あったあった」
ウォッカ「あとは胡桃か、胡桃って…何コーナーにあるんだ?」
ウォッカ「胡桃って確か木の実だよな?だから…野菜コーナー!」ヒラメキ
30分後
ウォッカ「兄貴~、胡桃探したけどどこにも何です~;;」
ジン「胡桃は難しかったな、一緒に探すか」
ウォッカ「へい兄貴!」
ジン「胡桃はお菓子売り場にもあるが、あれはつまみ用に加工されてるからあまりお勧めできん」
ジン「それとは別に製菓材料コーナーというところには何も味付けされていないものがあるからそっちを買うのがいい」
ウォッカ「げ、こんな少ないのに意外にしますね」
ジン「あぁ、胡桃に限らず製菓材料は量の割に値段の張るものが多い。こればかりは目をつぶるしかないな」
ジン「何はともあれ、これで材料は全て揃った。」
ウォッカ「早く帰って作りましょうぜ兄貴!」
ジン「まぁもう少しの辛抱だ」レジナラビー
黒の組織 キッチン
ジン「やはり年末年始は混むな。まぁ以前から貯めてたポイントカードも満タンになったしいいか」
ウォッカ「兄貴~、手洗って来ましたぜ!」
ジン「よし、そしたら早速作業に取り掛かるか」
ウォッカ「おぉ、いよいよ…」
ジン「っと、その前にウォッカ、適当に大きめの広告をとってくれ」
ウォッカ「へい兄貴、でも広告なんて何に使うんですぜ?」
ジン「粉類は広範囲に散らばる上に掃除が面倒だからな、作業は全て広告の上でやると楽なんだ」
ウォッカ「なるほどですぜ!」
ジン「ウォッカ、俺が最初に言ったお菓子作りの手順を覚えているか?」
ウォッカ「えっと、計量と、混ぜて、焼いて、冷やしますぜ!」
ジン「その通りだ。まずはその"計量"の作業だ。お菓子作りは少しの分量ミスが命取りだ。レシピ本に忠実につくるのが大切だ」
ウォッカ「なるほどですぜ!」
~ブラウニーの材料~
・ビターチョコレート 220g
・無塩バター 80g
・生クリーム 70cc
・薄力粉 80g
・ベーキングパウダー 小さじ2
・溶き卵 120g
・胡桃 120g
・ラム酒 適量
・砂糖 50g
ウォッカ「量り終わりましたぜ!」
ジン「まず最初に、薄力粉は一度ふるいにかけておく。一見意味のない作業のようだが、これをやるのとやらないのとじゃ大違いなんだ。」
ウォッカ「兄貴、これ楽しいですね!」フルイサッサッ
ジン「調子に乗ってこぼさんようにな。ふるいおわったら次はチョコレートとバターを湯煎で溶かす。」
ジン「時々チョコレートを溶かすと言うとお湯にチョコレートそのものを入れると勘違いするやつがいるが、決してそんなことはないので注意」
ウォッカ「(違うんだ…)」
ジン「溶け切ったらお湯からボウルを出して、生クリームを少しずつ加える」タラー
ジン「次に砂糖を3回ぐらいに入れてその都度よくかき混ぜる。1度に全部入れるとなかなか混ざらないことがあるからな」ザッザッ
ウォッカ「なるほどですぜ~」マゼー
ジン「砂糖を入れたら次は…っと、その前にウォッカ、オーブンを170℃30分に余熱してくれ」
ウォッカ「予熱、ですかい?」
ジン「あぁ、いきなり加熱すると最初はオーブン内が低いから十分に熱が行き渡らないんだ。」
ウォッカ「えっと予熱予熱っと」ピッピッ
ジン「オーブンの機種にもよるが、これで生地を入れて扉を閉めてスタートを押せばすぐ加熱が始まるから楽っていうのもメリットだな」
ジン「言い忘れていたが、お菓子作りはスピードが命だ。手早く、かつ正確に作ることが大切だ。だからオーブンの予熱と作業は同時にやるのが効率良いんだ」
ウォッカ「なるほどなるほど」
ジン「っと、無駄口を叩いていると予熱が終わっちまう。砂糖を混ぜ終わったら次は溶き卵を少しずつ入れてかき混ぜる」
ウォッカ「~~♪」マゼマゼ
ジン「そしたら次にさっきウォッカがふるっておいてくれた薄力粉とベーキングパウダーを入れて、ゴムベラで切るように混ぜる」
ウォッカ「切るように、ですかい?」
ジン「これがなかなか難しいところだが、なるべくぐるぐるかき回さないように、ザッザッと線を入れるイメージだ」
ウォッカ「こいつは難しいですぜ~」ザッザッ
ジン「あまり混ぜ過ぎるとかえって膨らまなくなるからな、粉っぽさがなくなったらやめていいぞ」
ウォッカ「へい兄貴!」ザッザッ
ウォッカ「こんなもんですかね?」
ジン「十分だ。あとは胡桃を適当な大きさに砕いたものを混ぜて焼くだけだ」
ウォッカ「え、もう終わりですか?」
ジン「あぁ、まぁ焼けた後仕上げが少しだけあるがな」
ジン「胡桃を砕く時だが、ジプロックに入れてから砕くと飛び散ることがないから楽だぞ」
ウォッカ「おぉ、ほんとだ!」ガッガッ
ジン「よし、あとはそいつを生地に入れて」
ウォッカ「へい」ザザー
ジン「軽くかき混ぜる」
ウォッカ「軽くですね!」カルクマゼー
ジン「よし、生地を型にいれるか」
ウォッカ「型はどんな形でもいいんですぜ?」
ジン「まぁ必ずこの形というのは無いが、ブラウニーはセルクル型(正方形)が一般的だな」ナガシイレー
ジン「型に入れたら型を少し持ち上げて落とすのを2回ほどする。こうすることで生地の中の空気が抜けるんだ」トントン
ジン「ウォッカ、オーブンの扉を開けてくれ」
ウォッカ「へい兄貴!」アケー
ウォッカ「うおぉ、中めっちゃ暑そうですぜ!」
ジン「予熱がちゃんとできてる証拠さ」イレー
ウォッカ「あとは扉を閉めてスタートっと」バタンッ ポチッ
ジン「焼き上がるまでしばらくかかる。少し休憩してていいぞ」
ウォッカ「兄貴は休憩しなくていいんですかい?」
ジン「俺は焼いている間に洗い物をする。なに、大した量もない、すぐに終わるさ」
ウォッカ「兄貴…!」ウルウル
30分後
ピロリロリロロピロロロリロー
ウォッカ「お、焼き上がったんですかい?」タタタッ
ジン「あぁ、開けていいぞ」
ウォッカ「いざ、ご開帳!」アケー
ウォッカ「おぉ!…おぉ?」
ジン「どうした?」
ウォッカ「兄貴、表面がひび割れちまってますぜ、もしかして失敗ですかい?」ウルウル
ジン「いや、ブラウニーはこれでいいんだ。表面のひび割れはちゃんと熱が通った証拠だからな。それに冷蔵庫で冷やせば多少しぼんで目立たなくなる」
ウォッカ「ほんとですかい?よかった~」ホッ
ジン「だが念のため竹串で中まで固まってるか確認しとこう。生っぽい生地がついてこなければ大丈夫だ」
ウォッカ「…。」ソーッ
ウォッカ「兄貴、大丈夫みたいですぜ!」
ジン「そいつは良かった。」
ジン「あとは粗熱をとって、上からラム酒を刷毛で適量塗る」
ウォッカ「適量ってどんくらいですぜ?」
ジン「表面全体に塗り渡ればそれでいい。ラム酒を塗ることでほのかに香る大人のお菓子になるんだ」
ウォッカ「大人の、お菓子…」ゴクリ
ジン「さて、あとはこいつを冷蔵庫で一晩寝かせれば完成だ」
ウォッカ「結構簡単なんですね!」
ジン「あぁ、ブラウニーは基本的に分量と工程をレシピ通りにすれば初心者でも比較的簡単に作れる。かく言う俺も初めて作ったお菓子はこのブラウニーだからな」
ウォッカ「えぇ、兄貴の手作りお菓子第一号ってことですか?」
ジン「そういうことになるな」
ウォッカ「初めて作ったお菓子が兄貴と一緒って…なんか嬉しいですぜ!」
ジン「これでバレンタインは大丈夫なんだろうな?」
ウォッカ「任せてくだせい!」
後日
ベルモット「ねぇジン~」
ジン「どうした、ベルモット?」
ベルモット「今度バレンタインじゃない?それで私もたまには手作りで何か作ろっかな~って」
ベルモット「だから私にお菓子作り教えてちょーだい?」
ジン「…。」
おしまい
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