女「行ってしまうのね」 サンタ「ああ」 (25)
サンタ「俺を必要としている奴らがいる」
女「私も必要としているわ」
サンタ「今日以外なら俺はお前だけのものだ。 だが、今日は一人だけのものになるわけにはいかないのさ」
女「わかってる……なぜならあなたは」
サンタ「そう、俺は……サンタだからさ」
女「わがままを言ってごめんなさい。 」
サンタ「いいさ。 サンタと呼ばれるようになったその時から覚悟はできていた。」
女「サンタ……いってらっしゃい」
サンタ「ああ、いってくる」
大きな子ども「フウ…フウ…」コシコシ
大きな子ども「フウ…フウ…ッ!!」ドピュピュ!!
サンタ「邪魔するぜ」
大きな子ども「!? な、なんだお前!!」
サンタ「見てわからねえか?」
大きな子ども「赤い衣に白髪……そして大きな袋……お前、サンタか!!」
サンタ「ご明察。聖夜に自前のホワイトクリスマスを送っているお前にプレゼントのお届けに来たぜ」
大きな子ども「……!!」カア///
大きな子ども「余計なお世話だ!! だいたいお前に俺のほしいものなんかわかるもんか!!」
サンタ「ほらよ」ヒュッ、ゴトッ
大きな子ども「? 袋を投げるなよ。 随分でかいな、何が入ってるんだ?」
サンタ「開けてみな」
パサッ
大きな子ども「……ひっ!! 人!? あ、あれ?この子……」
サンタ「そう、おまえはよく知っているはずだ。 なんせ、今さっきまでその子と脳内デートしてたはずだからな」
サンタ「この子は……お前の好きな娘さ」
女の子「ンーッ!!」
大きな子ども「な、なんてことを!! こんなの誘拐じゃないか!!」
サンタ「俺はお前の望むものをプレゼントしただけだぜ。 意気地のないお前にはこんな機会でもない限り絶対に手に入らない代物だ」
大きな子ども「そ、それは……そうかもしれないが……」
サンタ「だろう? どうだ? 欲しいか?」
大きな子ども「ほ、欲しい……」
サンタ「そうか、ならくれてや」
大きな子ども「だけど」
大きな子ども「俺はその娘をこんな形で手入れたかったわけじゃない」
サンタ「ほう」
大きな子ども「俺は俺のやり方でその娘を手に入れる!! その娘を解放しろ!!」
サンタ「嫌だと言ったら?」
大きな子ども「こうしてやる!!」
ヒュッ、バキッ!!
サンタ「……ッツ!!」
大きな子ども「ハァ……ハァ……」
サンタ「おっかねえ、やられる前に退散するとするか」ガラッ!!バッ!!スタッ、タッタッタッ
ベリベリッ
大きな子ども「大丈夫ですか?」
女の子「ありがとう!! 本当になんて言ったらいいか……そうだわ、お礼に私の家に来ない?」
大きな子ども「え?」
女の子「お礼がしたいの!! ぜひ私の家に来て!! その……今夜は誰も居ないから……//」
大きな子ども「それって……///」
サンタ「やれやれ、世話のやける坊やだ。 せいぜい性夜を楽しみな」
さまよう女「こんな寒い中、どうして私はゴムなんかを探してるのかしら……」
サンタ「夜道の一人歩きは危ないぜ、お嬢さん」
さまよう女「!? だ、だれ……?」
サンタ「俺が誰かなんてどうでもいいことさ。 それよりも君のお探しの品はこれかな?」
さまよう女「あ、ゴム……そう、それよ……」
サンタ「それはよかった。 でも、君にはもうひとつ欲しいものがあるんじゃないか?」
さまよう女「?? 私には他にほしいものなんて……」
サンタ「結婚」
さまよう女「!?」
サンタ「彼氏と結婚したいんだろ?」
さまよう女「それは……」
誰か見てる?
おお、よかった
サンタ「隠さなくていい。 俺は君が望むものを届けに来た、それだけさ」
さまよう女「あなた……もしかして、サン」
サンタ「言ったろう? 俺が誰かなんてどうでもいい。 今、重要なのは……」
さまよう女「結婚……でも、彼は中々踏ん切りがつかないようだし……そんな急には無理よ」
サンタ「安心しな、今日に限って、俺にわからないことはない。」
サンタ「でなきゃ、迷えるやつらにプレゼントを渡すことなんてできないからな。君の彼氏に決心させるには……こうすればいいのさ」
さまよう女「!?」
プスッ
さまよう女「ゴムに……穴を……!! たしかに子どもができたらいくら彼でも……でも……」
サンタ「彼はこう思っている。いっそ子どもさえ出来ちまえば……」
さまよう女「うそよ……なら、穴を開けるなんてまどろっこしい真似をしないで直接だせば」
サンタ「彼女である君にこんなことは言いたくないんだが……君の彼氏は意気地がないのさ。 自分で決断したくないんだ。 いつだって言い訳を探している」
サンタ「いや、男は誰でも言い訳を探している。 仕方ないと思えるような言い訳を」
さまよう女「そんな……そんな後ろ向きな理由で結婚なんて……それに今日だけで子どもができるとは……」
サンタ「きっかけは後ろ向きでも踏ん切りさえついてしまえば、切り替えていけるのもまた男だよ。 後者についても安心していい。 それは俺が保証する」
さまよう女「不思議な人ね……ありがとう、使ってみるわ」
サンタ「そうかい、よい性夜を」
さまよう女「ふふ、もしも子どもが生まれたら名前はきっと『三太』にするわ」
サンタ「今夜は一段と冷えるな……ん? あれは……」
幼女サンタ「よいしょ、よいしょ……ふう」
サンタ「幼女の一人歩きは危ないぜ、お嬢ちゃん」
幼女サンタ「あー、さんたさん!!」
サンタ「よう、幼女ちゃんも配達か? 偉いな」
幼女サンタ「えへへ/// わたしだってさんたさんだもん!! でも……」
サンタ「?? 浮かない顔だな。 何かあったのか??」
幼女サンタ「まだいっこもはいたつできてないの…… みんなね、ぷれぜんとうけとってくれないの……」
サンタ「そいつは……なにがあった??」
幼女サンタ「わからないの……ただ、みんなおまたからしろいのぴゅっぴゅってしてわたしにかけて、『俺にさんたさんからプレゼントを受け取る資格はない……』っていってうけとってくれないの……」
サンタ「……」
幼女サンタ「でも、わたしあきらめないよ!! きっとわたしのプレゼントもらってくれるひとがいるもん!! そしたらわたしなんでもあげるんだ!!」
サンタ「そうか……やっぱり幼女ちゃんは偉いな。 そんな幼女ちゃんには俺からプレゼントをあげよう、ほら」
幼女サンタ「わあ、ありがとうさんたさん!! でもこれなあに??」
サンタ「お守りだ。 もしも、幼女ちゃんに触ってこようとする大きな子どもがいたら、この紐を思いっきり引っ張るんだ」
幼女サンタ「うん、わかった!!」
サンタ「あと、呪文も忘れないようにな。大きな声で『たすけてー!!』だぞ」
幼女サンタ「うん、ありがとうさんたのおじちゃん!!」
サンタ「どういたしまして。 約束だからな。忘れたらダメだぞ」
幼女サンタ「うん!! じゃあ、わたしもういくね!!」
サンタ「ああ、気をつけてな」
幼女サンタ「ばいばーい!!」
サンタ「大丈夫だろうか……」
ピーッピーッピーッ!!!!!!!!!!!!!!!!
幼女サンタ「たすけてー!!」
ブウゥゥゥゥンッ!!! 道を開けてください!!!!
サンタ「……」
父「誰のお陰で飯が食えると思ってるんだ!!」
母「あなたこそ、誰のお陰で楽できてると思ってるのよ!!」
ガシャーン、パリーン!!
無表情な子ども「……」
サンタ「よう」
無表情な子ども「……おじさん誰?」
サンタ「おじさんじゃねえ、お兄さんだ」
無表情な子ども「……おじいさん誰?」
サンタ「混ぜるな、ちゃんとお兄さんと呼べ」
無表情な子ども「……お兄さん誰?」
サンタ「それでいい。 まあ、俺が誰かなんてどうでもいいだろ」
無表情な子ども「一方的だなあ……お父さんとお母さんみたい」
サンタ「お前みたいなでかい子どももった覚えはねえよ。 それにおまえの両親ともちがう」
無表情な子ども「……そう」
サンタ「ああ、俺はクリスマスにまであんな醜い喧嘩するようなやつじゃない」
無表情な子ども「……」
無表情な子ども「……昔はあんなじゃなかったんだ」
サンタ「そうか」
無表情な子ども「今はあんなふうに怒鳴り合ってるけど、昔は一緒に御飯食べながら笑ったり、」
サンタ「ああ」
無表情な子ども「笑いながらゲームしたり、」
サンタ「うん」
無表情な子ども「仕事から帰ってきたお父さんは一番に僕のところに来て抱きついてきて、」
サンタ「はは」
無表情な子ども「それを見てお母さんは笑って、僕もなんだか嬉しくなって……笑うんだ」
サンタ「そうだったな」
無表情な子ども「?」
無表情な子ども「知ってるみたいなこと言うんだね」
サンタ「ああ、知ってるよ。 去年のお前たち家族はとても幸せそうだった。 おまえは表情豊かな奴だった」
無表情な子ども「そうだっけ? もうずっと前な気がして……忘れちゃったよ……」
サンタ「去年、お前がクリスマスに何を頼んだかも……忘れちまったか?」
無表情な子ども「……それは覚えてる。 忘れるわけがない。 だって、今がこうなったのは……僕のせいだから」
サンタ「そうだな」
無表情な子ども「僕はただ言いたかっただけなんだ。 本当の両親に、『僕のお父さんとお母さんはあなた達じゃありません』って……」
サンタ「それも……知ってるよ」
サンタ「お前はそれが言いたくて……だから、あの日……イヴの日に言ったんだよな。本当の両親に会いたいって」
無表情な子ども「言葉も悪かったし、タイミングも悪かったんだ。 その時期、僕の生みの親が名乗りでて、僕に会いたいって言ってたんだ。」
無表情な子ども「でも、お父さんとお母さんは僕をあの人たちに会わせたくなかったみたいで……それを知ったのは少ししてからだけど」
無表情な子ども「そんな微妙な時だって知らなくて、僕は無神経なことを言ってしまった。」
サンタ「子どもだからな。 仕方ないことだ」
無表情な子ども「後悔してる!! 仕方ないなんて言葉で済ませられない!!」
無表情な子ども「あの日から、些細な事で喧嘩するようになって!! 互いが互いにおまえの育て方が悪かったって、愛情が足りなかったんだってけなし合うようになって!!」
サンタ「……」
無表情な子ども「こんな風に……」
父「おまえが!!」
母「あなたが!!」
無表情な子ども「どうすればいいのかな……」
サンタ「その答を、お前はもうもっているだろ」
無表情な子ども「……」
サンタ「あのとき、何を思ってそんなことを頼んだのか、正直に話せばいい」
無表情な子ども「それで昔みたいに戻れるの?」
サンタ「無理だな」
無表情な子ども「じゃあ、意味ないじゃないか」
サンタ「意味が無いわけじゃない」
サンタ「お互いがお互いの醜いところを見せ合ってしまった。 ひどいことも言った。 昔みたいに無邪気には笑えない」
無表情な子ども「それじゃあ……」
サンタ「でも」
サンタ「昔とは違っても、違う形で今を楽しくすることはできる」
無表情な子ども「……」
サンタ「歪かもしれない。 綺麗な輪にはならないだろう。 でも、ある人にはそれが美しかったり、楽しそうに見えたりするかもしれない。 お前はその『ある人』になれ。」
サンタ「どうしても気に入らなきゃ自分で少しずつ形を整えていけ」
サンタ「まずは、本当のことを話して……歪な形から始めて行け」
無表情な子ども「……でも、怖いんだ。 二人に割って入って、二人が僕のことを嫌いになったら……」
サンタ「心配するな。」
サンタ「俺を誰だと思ってる」
無表情な子ども「そういえばお兄さん誰?」
サンタ「格好見て気づけよ。 俺はサンタだ」
サンタ「そして今日はクリスマスだ。 なんだってプレゼントできる。 勇気だってな」
サンタ「クリスマスの俺に届けられないプレゼントはない」
よみづれぇ
真剣な表情の子ども「お父さん、お母さん、あのね……」
――サンタ「俺がプレゼントできるのは子どもに対してだけだ」
サンタ「この分だとあいつにプレゼントを渡せる回数はそう多くはなさそうだな……」――
>>23
すんません
もう寝ます。
読んでくれた人ありがとう。
おやすみ
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません