/::::::::::::::::::::::::::: \::::::\::::::::::::::::::::::::::}ヽ. ∧
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::、::\::::::\::::ヽー==='⌒:. /_:, いい加減きずけよ
. /::::::::::::::::::::::::\ー―'^ヽ:::::\:::::ヽ:::::゚。::::::::::::::::. { }
. //::::::::|::::::::::::::::::::::::\{ ̄⌒ヽ:::::::ヽ::::゚。::::}:::::|::::::::::}{_⌒_} 悔い新ためろ、出来損ない。
/ /ー―|::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::::::\::::::::::::\::::::|i:::::::::} |二|
. /~ ̄⌒|::::::::::::|\:::::::}:::::::'. ::::::::::::::‘i:i::::::::::::}\}i :::::::| |二|
/ イ:::::::::::|::::::::::::| 丶:、:::::::::::::}i:::::::::}i:i:i::::::ト、:i:i:i:i::::i:i゚ |二| 「心理を言ったまでだ、よく考えろ」
. / |:::::::::: ト:::::::::::| ,, -‐ヾ:::::::}:i::::::::}i:i:i::::::| :,:i:i:i:i:i:/ .l二|
|::|:::|::::|_V:::::::ハ,/ ,.斗 =ァV::}:i::::::::ト、i|v :| } }:i:i:i:i:!′|二|
|::|:::゚。∧__v:::ゝ} / トィ} |::ハi::::::::| リ ∨ /:i:i:i:i:/ |二|
|八::::::。‘ ヒト:::小、 __ゞ'′|/ ‘。:::::| {:i:i:i:i:/ .|二|
ノ }\{\}ソ \} ゚。::| r―f:i:i:ij/ |二|
く \ リ / }i:i:{ |二| 「意味を」
} / ノV:{ |二|
、ー ― ´ / --==ニニニニ=-、:―┴;
\ ,. ´「ニニニニニニニニニニニニヽ_|__
/ヽ.__,. イヽ |ニニニニニニニニニニニ二/ /
/ニニニニ二二∧ ニニニニニニニニニニニニ/、 / この記事は朝の五時で消すからな
黒子「こ、こここんな屈辱は初めてですの…!」
上条「…中々恥ずかしいなこれは」
土御門「いやあ、おもしろかったぜい?かみやん」
青ピ「くうう~常盤台のお嬢様と恋人ごっことか羨ましすぎるでえ!」
姫神「わたしが。やりたかった。」
黒子「さあ!次っ!次ですの!!次こそお姉さまとの熱いヴェーゼを!!!」
佐天「うわあ…白井さん、それ女の子のする顔じゃないですよ…」
初春「欲望が溢れでてますねー」
美琴(次こそあいつと…!)
「「「王様だーーーれだっっ!!!」」」
こうですか?わかりません><
黒子「……うぅ、……ん」
黒子(……眩しい。……蛍光灯?)
医者「おや、気がついたかね」
黒子(誰、ですの? ――い゛っ)
黒子「あ゛……がっ……ぅっ!」ギリッ
黒子(……の、喉が、焼けるようですのっ)ギュウ
医者「まだ起き上がらない方がいい。水、飲むかい?」
黒子「…………」コクン
黒子「んっ、んっ、んぐっ、――ぷぁっ」
医者「人心地ついたみたいだね。あぁ、そこに置いてあるタオルは使ってもらって構わないからね」
黒子「……お、お気遣い感謝します」
医者「気分はどうだね?」
黒子「……まだ少しばかり、頭がぼーっとしてますの」フキフキ
医者「ふむ、喉の痛みは?」
黒子「ええ、先ほどよりは大分楽に……それより、ここはどこなんですの?」キョロキョロ
医者「第七学区のはずれにある病院だ。君たちのようなお嬢さん方を診る縁には、あまり恵まれてないんだがね」チラ
黒子「……お嬢さん方? ……って、初春!?」
初春「……すぅ……すぅ」
黒子「そ、そんな! なぜあなたまで!」
医者「病院で大声を出すのは、あまり好ましくないね。お友達も夢の中だしね?」
黒子「お、教えてくださいまし! 初春は大丈夫ですの!?」
医者「いいから、落ち着きなさい」
黒子「おっ、落ち着いてなどっ」
医者「よほど心配だったのか、処置後も君の傍を離れようとしなくてね」
黒子「……え」
医者「まぁ、それでも明け方には眠っていたんでね? そちらの空きベッドに移させてもらった」
黒子「――あ、あの。……わたくしは、いったい?」
医者「うん? 覚えていないのかい? 何も?」
黒子「……ええと」
医者「ショックで少し記憶が飛んでるのかな。廃ビルで爆発に巻き込まれたんだよ」
黒子「……廃ビル……爆発?」
医者「その現場にたまたま僕と顔見知りの少年が居合わせたようでね。アンチスキルの救護車を急遽こちらに誘導したんだね」
黒子「……アンチスキル。……そういえばわたくし、任務に」
医者「まぁまぁ、今は余計なことを考えずに休むことだ。とりあえず、包帯を換えさせてもらっていいかな?」
黒子(……手足の反応が、鈍いですの。……触られてる感じも、ほとんど)モゾ
医者「まだ麻酔が抜け切っていないようだね。右腕、もう少し前に出せるかな」シュルシュル
黒子「……これで、よろしいですの?」スッ
医者「ありがとう。――うん、火傷の経過は良好だね」
黒子「…………醜いですの」ポツリ
黒子(これでは、長袖のものしか着られないですわね。水着などもっての――もって、の)
医者「見た目ほど酷くはないから、そんな顔をする必要はないよ」
黒子「……え。……あ」ジワ
医者「中の組織は無事だったし傷痕は残らない。なんなら、誓約書でも書くかね?」ニヤ
黒子「……い、いえ。べ、別に、心配してなど、ないですのに」ゴシゴシゴシ
医者「腕の処置は終わり。もういいよ」
黒子「あの、左手の方は……ぐるぐる巻きですけど」
医者「あぁ、そっちは尺骨が折れていてね」
黒子「こ、骨折ですの?」
医者「不幸中の幸い、ズレはないに等しかったから骨接ぎは楽だったし、痛みもそんなに感じないだろう」
黒子「……はぁ。……我ながら、ひどい有様でしたのね」
医者「運び込まれた君を一目見て、一瞬ヒヤリとしたのは確かだね」
黒子「でも、治るんですのね?」
医者「うむ。精密検査でも特に異常は認められなかった」
黒子「……で、では」
医者「まだ何か疑問が?」
黒子「その……能力の行使に支障は」
医者「AIM拡散力場の値は近似値に留まっていたから、問題はないだろう」
黒子「……よかった」
医者「とはいえ、脳震盪を起こしていたようだし、絶対安静に変わりはないからね?」ジロ
黒子「は、はいですの。……ご迷惑を、おかけしました」ペコ
医者「いやいや、誰かが迷惑をかけてくれなきゃ僕たちも食べていけないからね」
黒子「あぁ、ふふ、それもそうですわね」
医者「ところで君、風紀委員(ジャッジメント)なんだってね。その年で第一線に立つとは大したものだね?」
黒子「い、いえ。それほどでも――」
医者「ただまぁ、あまり無茶をするのも考えものだね。隣のベッドの娘、何と言ったか」
黒子「……初春ですの?」
医者「そう、初春さん。彼女、救護車で運ばれてきた君にずっと縋り付いて、泣いていたんだよ」
黒子「……っ。……彼女はわたくしの、一番の親友ですの」
医者「うん、彼女もそのようなことを言っていたね」
黒子「……みっともない姿を、見られてしまいましたの」
黒子(さすがに今回ばかりは、きちんと謝らないといけませんわね)
医者「今後はもう少しうまく立ち回ることだね。お友達を悲しませたくないなら、なおさらね」スクッ
黒子「肝に銘じておきますの。あの、もう一つだけお尋ねしたいことが」
医者「うん?」クルッ
黒子「先ほど、わたくしが爆発に巻き込まれたと仰いましたけど」
医者「あぁ、居合わせた彼の説明によれば、そのようだね」
黒子(――居合わせた、って、爆発の瞬間にですの? ――いえ、それよりも)
黒子「で、でしたらどうして」
黒子(どうしてわたくしは、この程度の怪我で済んでるんですの?)
医者「……あぁ、なるほど。至極もっともな疑問だね?」
――第七学区通学路
土御門「ん、カミやん。そんなにキョロキョロしてどないしたん?」
上条「……どうも最近、誰かに見られてる気がすんだよな」ポリ
土御門「おんやぁ、鈍感カミやんもついに第六感に目覚めたかにゃー?」
上条「残念ながら、至って平常運行だ」
土御門「ええことやないのー。人間平凡がいっちゃんやでー」
上条「はぁ、えせくさかったおまえの関西弁もいよいよ極まってきたな」
土御門「おおきに。これでも日々精進してるんやでー」
おい青ピとつっちー逆やで
>>25
指摘thx、普通に気づかんかったww
>>24は以下に切り替えで
――第七学区通学路
土御門「カミやん、ほがーにキョロキョロしてどうした?」
上条「……どうも最近、誰かに見られてる気がすんだよな」ポリ
土御門「ほほー、鈍感カミやんもよーよー第六感に目覚めたかにゃー?」
上条「残念ながら、至って平常運行だ」
土御門「いいことやか。人間平凡が一番だぜい?」
上条「はぁ、えせくさかったおまえの土佐弁もいよいよ極まってきたな」
土御門「はは、これでも日々精進してるんぜよ」
上条「んでさ、一応おまえも魔術師の端くれだろ。敵意とか害意とか、察知できないか?」
土御門「んー、特に感じられんな」クルーリ
上条「……先に聞くべきだった、そもそもおまえの直感って信用できるのか?」
土御門「自慢じゃないけどそれなりに修羅場くぐっちゅうし、そういうのには敏感な方やでー」
上条「そっか。じゃあやっぱり、気のせいなのかな」
土御門「いや、そう決めるのは早いぜい? カミやん一人に狙いを絞ってる可能性もある」
上条「さらりと怖いこと言いやがって」
土御門「いやいや、いまいち自覚がないみたいやけどカミやんえっらい人気者なんやでー?」
上条「え、そ、そうなのか?」
土御門「ほれ、魔術、科学両サイドからきっついマークされちゅうわけやし?」
上条「……ふ、不幸だ」
――ビルの屋上
黒子「…………ふぅ」スクッ
黒子(今日も目立った動きはありませんの)
黒子(あのカエル面のお医者様の話……にわかには信じがたいものでしたけど)
黒子(わたくしは能力を発動できる状況になかった。それも確たる事実)
黒子(その場に居合わせたという、あの類人猿が何かをしたのは間違いないですの)
黒子「……気に、入りませんの」プルプル
黒子(助けられたことはまだ許せますの。でも、あまつさえ口止めをして自分が関わったことを隠すなんて)
黒子(~~~~~~っ)ムカァ
黒子「わたくしは、そういうキザったらしい行為が、大っ嫌いですのっ!」ガッガッ
――回想
医者「しかし困ったね。当人には伏せておくよう頼まれてるんだけどね?」
黒子「やはり、どなたかがわたくしを助けたんですのね?」
医者「そのようだね、僕も状況を詳しく聞いたわけじゃないけど」
黒子「伝聞でも構わないですの。先ほど少年とおっしゃっていましたけど、どういった方ですの?」
医者「やはり気になるかね」
黒子「当然ですの」
医者「たまたまその場に居合わせただけで、恩を着せるつもりもないみたいなんだけどね?」
黒子「その御方にも言い分はあるのでしょうけれど、それでは」
医者「不満が残る?」
黒子「ええ、助けられたわたくしの気持ちの置き場がありませんの」
医者「まぁ、そうだろうね」
黒子「何より、借りを作りっぱなしというのはジャッジメントの矜持に反しますし」
医者「それも、理解できるけどね」
黒子「お医者様にだって、いえ、お医者様であればこそ、そういった譲れない一線がおありでしょう?」
医者「うん、君はなかなか弁が立つようだ。いささか、口げんかでは分が悪そうだね?」
黒子「ということは、教えていただけるんですの?」
医者「気は進まないが、僕が口を滑らしたことを内密にしてくれるなら」
黒子「もちろん、それくらいの配慮は致しますの」
医者「商談成立だね」
黒子「って、ここまで要求してなんですけど問題ありませんの? 守秘義務に反するとか」
医者「一方的に頼まれただけで約束した覚えはないしね。――それに」
黒子「……それに?」
医者「言い訳がましいことを言うと、今回に限って彼は僕の患者じゃない」
黒子「……まるで、その方が四六時中怪我をなさっているような物言いですわね」
医者「それが当たらずとも遠からず、なんだね。まったく、彼ほど医者泣かせの患者はいないだろうね?」
黒子(……あの時のこと、薄らと思い出しましたの)
黒子(爆風で壁に叩きつけられて、意識が朦朧として。――そして)
黒子(う、腕の感触が残って――――はっ)
黒子(わ、わたくしったら何を考えてますの!)ブンブンブン
黒子「……はぁ……はぁ……はぁ」
黒子「……上条、当麻」ポツリ
黒子(あの類人猿にも人並みの名前がおありだったのですね。……当たり前ですけど)
黒子(わたくしは常盤台中学一年、ジャッジメントにしてレベル4の能力者。白井黒子)
黒子(そのわたくしがどこの馬の骨とも知れぬ凡夫に助けられるなんて、あるまじきこと)
黒子「今日こそは……」ギリッ
――Prrrr
黒子「……って、初春?」
黒子(………………ま、まぁ、人生得てしてこういうものですわね)ピッ
黒子「はい、こちら黒子」
初春『あっ、白井さん? 今どちらにいらっしゃいますか?』
黒子「第七学区にある高校の近くですの」
初春『高校? なんでそんなところに』
黒子「そ、そんなことはどうでもいいですのっ! それより、事件ですのね?」
初春『あ、すみません! 第三学区でバイクによるひったくりです! 二人組です!』
黒子「了解ですの。至急現場に向かいますからナビをお願いしますの」
初春『はい。……あっ、あの、怪我の方はもう大丈夫なんですか?』
黒子「ええ。入院生活でなまった体に活を入れるためにも、少しは運動しなくてはね」
初春『は、はいっ』
黒子(働かずして弱者から金品を奪うなど、言語道断の輩ですの)ピッ
黒子「…………」チラ
黒子「んま、そうそう尻尾を出すとも思えませんし、今日のところは引き上げましょう」
黒子「……ですがいずれは必ず、このわたくしの手で」
黒子(化けの皮を剥がして差し上げますのっ)ヒュン
美琴「……うーん、どーも気になるのよね」チュー
佐天「なにがです? なんか心配事ですか?」パクッ
美琴「最近、黒子が絡んでくる回数が少なくなってきたのよ」コト
佐天「え゛っ! それって一大事じゃないですか!」
美琴「い、いや、そう言われるのもこっちとしては複雑なんだけど?」
佐天「あ、そうですよね。……というか、御坂さんって」
美琴「ん?」
佐天「白井さんが絡んでくるの、まんざらでもなかったんですか?」ヒク
美琴「ばっ! ちっ、違うわよ! そういう意味じゃなくてっ!」
佐天「いや、でも、どこか寂しそうに見えましたし」
美琴「それは気のせいっ! ただ心境の変化でもあったのかなーって気になっただけよっ」ズイッ
美琴「他意はなしっ、微塵もなしっ! そこんところ勘違いしないでよねっ」ズイッ
佐天「じょ、冗談ですってぇ」タジタジ
美琴「……ま、まぁ? 慕われていることにのみ関して、そんなに悪い気はしていないけどね」
佐天「わかりますわかります。白井さんは、ちょっと過激(オーバー)なだけですよね」
美琴「ちょっと、と言うには抵抗が残るけどね」ヒク
佐天「じゃあ、別の人の意見も聞いてみましょうか」
美琴「……別の人?」
佐天「身近にいるじゃないですか。御坂さん以上に彼女を知っていそうな人が」パチッ
――ジャッジメント本部
初春「うーん、わたしには別段いつもと変わらないように見えましたけれど」
美琴「そっかぁ。初春さんがそう言うんだったら、まず間違いないわね」
初春「……ただ」
佐天「なになに? 心当たりあるの?」
初春「あ、いえ、心当たりってほどのものでもないんですけど」
初春「つい昨日のことなんですけど、PCに見た覚えのないサイトの閲覧履歴が残ってたんです」
美琴「サイト?」
佐天「……いかがわしいやつ?」
初春「ち、違いますよっ」
美琴「詳しく教えてもらってもいいかしら?」
初春「いいですけど、本人には隠しておかなきゃだめなんですよね」
佐天「時期がきたらわたしたちからちゃんと謝るからさ、お願いっ、この通り」パシッ
初春「もう、佐天さんったらいつもそうやって」プゥ
初春「まぁ、別に不名誉なサイトでもないですから、構わないですけど」
美琴「どんなサイトなの?」
初春「大手食品メーカーのレシピサイトです」
美琴「へぇ、レシピねぇ? ……確かにあの子も料理をすることはあるけど」
佐天「……ねぇ初春。 白井さんがそのサイトのどの項目を見たか辿れる?」
初春「ええ、まだ履歴が残ってますから。ちょっと待ってくださいね」カチャカチャ
美琴「……どうも、あまり関係なさそうだけど」
佐天「そうですが、なんとなく気になるんですよね」
初春「――出ました、これです」
美琴「――トップページね。ごく普通の」
佐天「初春、見たページを一括で表示できる?」
初春「はい。――できました」ポチ
美琴「――あっ、佐天さんっ! これっ」
佐天「……男性に好まれるおかずランキング。……ビンゴですね」
――調理場
黒子「ふむ、味付けはこんなところでしょうか」ペロ
黒子「お料理を苦手と思ったことは一度もないですが」
黒子「やはりお弁当を作るとなると、勝手が違うものなんですのね」フゥ
――tin
黒子(っと、あちらも焼き上がりましたわね)イソイソ
黒子(ふふふ、チーズもほどよく焦げてますの。ん~~、いい匂いですの)バタン
黒子「先に冷まして、次のおかずに取り掛かりますの」
黒子(焼き物に煮物にお吸い物にサラダ。肉と野菜のバランスも申し分ありませんわね)
黒子(類人猿に与えるにはいささか以上にもったいない気もしますが)
黒子(わたくし一度手を付けたら、手を抜けない性分なんですの)ハリキリッ
黒子「……どうやって渡しましょう」
黒子(わたくしとしたことが、肝心なポイントを失念していましたの)ズーン
黒子「やはり、道端でばったり会った風を装うのが」
黒子(って、それじゃあ無傷のお弁当を持っていたことを怪しまれますの!)ブンブン
黒子「ならば家に直接届けて……って」
黒子(付けていたことがバレたら元も子もないですの!)ブンブンブン
黒子「……欲を言えばお腹が一番空いていそうな時間帯に渡したいところですが」
黒子(はぁ、こんなくだらないことで悩んでいる自分が腹立たしいですの)
黒子(でも、ま、あの慎ましやかな食生活の日々を見せつけられたら)
黒子(情がわくのも致し方なきこと、ですわよねぇ)ハハ
黒子(……時間通り。目標捕捉ですの)
黒子(しかし、こうも行動パターンが固定されてると、尾行のし甲斐がありませんわね)
青ピ「カミやん、今日は昼どないする?」
土御門「またいつものコンビニかにゃー?」
黒子(ふっ、聞くまでもないですの。どうせ、今日もペットボトルのお茶+オニギリのコンボですの)
上条「ふ……ふっふっふ」
黒子(……って、あら?)
青ピー「なんやー、けったいな笑い方やな」
土御門「おいおい、暑さにやられたか?」
上条「……控えい、控えい者ども! これが目に入らぬか!」バッ
青ピ「……な、なんやて! そ、そないなことが」
土御門「まさか……まさかあのカミやんが」
黒子(し、しかし手に握られているのはまさしく……紙幣っ!)
上条「おまえら聞いて喜べ! この間紛失したキャッシュカードがやっと再発行されたんだ!」
青ピ&土御門「…………」
青ピ「……ということはぁ」チラ
土御門「……そういうことだにゃー」ニンマリ
上条「……な、なんだよおまえら」タジ
青ピ「そのカードの中には、使ってなかった分の金がたんまり、というわけやねぇ」
土御門「いやぁ、僥倖僥倖! 今日はリッチな食事にありつけそうぜよ!」
黒子(…………ぁ)
上条「て、てめえらたかる気かよ!」
青ピ「いやぁ、わいらも鬼やないし手心はちゃんとわきまえてるでー。んで、どないする?」
土御門「んまぁ、ここは無難にファミレスってとこかにゃー」
青ピ「異議なしや、な、カミやん?」
上条「大有りだ! 勝手に話を進めるんじゃねえ!」
土御門「まぁまぁ、話ならクーラーの効いたところで、いくらでも聞くきぃ」ガシ
青ピ「ほんじゃま、カミやん一行様、ご案なーい」ガシ
上条「は、放せっ! 放しやがれぇっ!」ジタバタ
黒子「…………」
黒子(…………日が悪かった、ようですわね)トボ
いきなり席外してすみません、戻りました
黒子「……帰りましょう」
黒子(いつまでこうしていてもしょうがありませんものね)
黒子(……これ、捨てることはないですわよね)
黒子(夕食代が浮いたと思えば、もったいないですし、それに、結構頑張って――)
黒子「……っ、あ、あーあ、とんだ取り越し苦労でしたわ」ヒュン
黒子(――って、やばっ)サッ
上条「くっそ、どこにもねーなぁ。土御門、そっちはどうだ?」
土御門「いや、残念ながら見当たらないぜぃ」
青ピ「こっちもや。ほんまにこの辺にあるんかいな」
黒子(あ、呆れた。あの方々ったらまだウロウロしていたんですの?)
黒子(と、わたくしも人のことは言えないですわね)ペロ
黒子(……あら? あの子は)
上条「なぁ、本当に落としたの、この辺りなのか?」
女の子「う、うん。そこでバスを降りたときは持ってて、あっちのおっきなお店に入って、しばらくしてから気づいたの」グス
上条「デバートの中には、なかったんだよな? お店の人にも聞いたか?」
女の子「うん、ちゃんと聞いたよ。聞いたけど……それでもなくて、……ふぇ」
上条「わ、わかったから泣くなって」
黒子(なるほど、事情は呑み込めましたわ)
土御門「しっかしなぁ、聞けばその子の縫いぐるみ、それなりに大きいぜよ?」
上条「そこなんだよなぁ。今日はそれなりに人通り多いし」ポリッ
土御門「ああ、普通に考えれば誰かが気づきそうなもんだにゃー」
青ピ「とすると、もう誰かに拾われちまってんのと違うか?」
女の子「……う……うぅ」グスッグス
上条「あ……バカ」
青ピ「あ、いや……ちょい待ち」
女の子「びっ、びええぇぇぇっ!!」
――ざわざわ
青ピ「あ、あかんて! ほらほら、そない泣かんといて? そうや、交番にいこ、交番! な?」
警官「残念ながら、届いてないねぇ」
上条「そ、そうですか」
警官「ゲコ太の縫いぐるみは隠れファンが多いから、誰かに持っていかれちゃった可能性もあるね」
女の子「うぅ、ぐすっ、ぐすっ」
上条「……あの、お巡りさんは、縫いぐるみとかに詳しいんですか?」
警官「あぁいや、詳しいってほどでもないが、末の娘がはまっていてね。誕生日になんだかんだと買っているうちに、少しはね」
上条「そ、それじゃあ」
上条「…………」チラ
ポケット「…………」シーン
上条「…………」チラ
女の子「ぐすっ、ふぇ……ぐすんっ」メソメソ
上条「……こっ、この子の落とした縫いぐるみが売っていそうな店、心当たりありますか?」
女店員「ありがとうございましたー!」
上条「……まったく同じのはなかったみたいだけど」
女の子「ううん! これも前のと同じくらい可愛いよっ!」
上条「そっか、そりゃあ、よかった。……本当に」
女の子「どうもありがと、お兄ちゃん!」
上条「いや、いいよ。それより、もう絶対になくさないようにな」
女の子「うん! じゃあまたね! ばいばいっ!」ブンブン
上条「はは、あんまりはしゃいで転ぶなよー――――――…………」
上条(……残金200円也、か)チャリ
上条「……不幸だ」
上条「さてと、これからどうすっかな」
上条(代返はあいつらに頼んだから問題ないとして)
――グウウウ
上条(……だめだ、ブラつく気力も残ってねえ)フラ
上条(しゃあねえ、スナック菓子でも買って腹を満たすか)
――ドン
上条「っと、悪ぃ」
???「――まったく。いい年をした殿方が往来でみっともない顔を晒して、少しは恥ずかしいと思いませんの?」
上条「う、うるせえっ! 半月ぶりにまともな昼飯にありつけるはずだった俺の気持ちがおまえに――って」
黒子「……ご、ごきげんよう」
上条「……あれ、おまえどこかで」
黒子「レディに対して、おまえ呼ばわりはいただけないですの」
上条「あ、わ、悪ぃ」
黒子「わたくしにも白井黒子という名前がありますのよ。――上条、当麻さん?」
上条「……へ、なんで俺の名前知ってるんだ?」
黒子「ま、まぁそんな細かいことはどうでもよろしいじゃありませんの」
黒子「それよりも、あなた」ビシ
上条「お、おぅ?」
黒子「もしやわたくしのこと、覚えていませんの?」
上条「い、いや、ちゃんと覚えてるぜ? ビリビリのルームメイトで」
黒子「そうじゃなくてっ! ごく最近に会ったばかりじゃありませんの!」
上条「……へ、最近?」
黒子(あぁいえ、会ったという言葉も的確ではありませんわね。こちらは気絶してたわけですし)
黒子「で、ですから、解体作業中のビルの爆発で」
上条「――あっ、あーーっ、あの時の!」
黒子「……やっと思い出しましたの?」パサッ
上条「あぁ、そういやそんなこともあったっけなぁ」
黒子「そ、そんなことぉ?」
黒子(あれは、十分大事だったと思うのですけれど)ジト
黒子「そ、それで」
上条「うん?」
黒子「いえ、どうしてそのように落ち込んでいらっしゃったのか、少し気になりまして」
黒子(……わ、我ながら白々しい言い草ですの)
上条「いや、まぁ、色々あってな」グゥゥゥ
黒子「…………」チラッ
上条「あぁ、はは。そういやすっかり飯食いそびれてたな」サスサス
黒子「……あ、あらっ。お腹空かせていらっしゃるんですの?」パァッ
上条「いや、まぁ、少しは」グゥゥゥゥ
黒子「……お腹の方は、随分と訴えていらっしゃるようですけれど」ソワソワ
上条「そ、そうみたいだな。まぁどうしても我慢できなくなったら、その辺でハンバーグでも」
黒子「ハ――」クルーリ
上条「ん、どうした? 知り合いでもいたのか?」
黒子「い、いえ、お気になさらず」フルフル
黒子(わ、わたくしが一部始終を見届けていたとも知らず)
黒子(なんと涙ぐましいプライドっ)
黒子「…………上条さん」ポツ
上条「ん?」
黒子「もし、差支えなければ、ですけれども」チラ
19:30まで離席します
――公園
上条「おぉ……おぉおおぉおぉっ!」
手作り弁当「」キラキラ
上条「ほ、本当にこれ、食べていいのか!?」
黒子「ええ、まぁ。お口に合うかはわかりませんけれど」
上条「じゃ、じゃあまず、このから揚げから」ハシッ
上条「」パクッ
黒子「ど、どうですの? その、お味の方は」
上条「」モクモク
黒子「……上条さん?」
上条「……うまいっ、うまいよこれ」ジーン
黒子「そ、それなら、何よりですの」ホッ
上条「……じゃあ、今度はこの厚焼き玉子を」
黒子(そ、それは、今日一番の自信作ですの)ピクッ
黒子「ええ、召し上がってくださいな」ニコ
上条「……いただきます」パクッ
黒子「……」ゴクリ
上条「……あぁ」ホゥ
黒子(あ、甘すぎましたかしら?)
上条「……生きてて、よかった」ジーン
黒子「い、いくらなんでも大袈裟すぎですの!」
黒子(ま、まぁ? 悪い気は致しませんけれど)ポリ
上条「」ガツガツモグモグ
黒子「あの、そんなに急いで食べてると、喉に――」
上条「う――うんが、ぐ」ドンドンドン
黒子「……はぁ、言ってる傍から」カチャ
黒子(……いくら空腹とはいえ、ものすごい食べっぷりですの)コポコポ
黒子「――さ、どうぞ。冷たい麦茶ですの」
上条「うっ、んぐ、んぐっ――ぷはぁっ、さ、さんきゅ」
黒子「上条さんは、いつもこういう忙しない食べ方なんですの?」
上条「いやぁ、お世辞抜きで箸が止まらないんだ」ヒョイパク
黒子「そ、そうですのね。そこまで喜んでくださるのなら――また作っても」
上条「ん、何か言ったか?」ムグムグ
黒子「な、何でもないですのっ」
上条「ふぅ、食った食った」ポンポン
黒子「それなりに、堪能していただけたようですわね」シュルン
上条「それなりどころか、文句なしにうまかった」
黒子(……おっけーですの)グッ
上条「ありがとな、白井さん」
黒子「あら、呼び捨てていただいても構いませんのに」テキパキ
上条「え、いや、それはさすがにさ」ポリ
黒子「あなたは高等部、わたくしは中等部。むしろ呼び捨ての方が自然かと」
上条「じゃあ、白井」
黒子「まぁ、それでも構いませんが、下の名前の方が呼ばれ慣れていますわね」
上条「あぁ、黒子?」
黒子(……う゛)カッ
黒子(ってぇ、何を照れてますのっ、自分で要請しておきながらっ)
上条「あ、やっぱりしっくりこないか?」
黒子「い、いえっ、そんなことはっ」ブンブン
上条「そっか、じゃあ遠慮なく。――ところでさ」
黒子「あ、はい、なんですの?」
上条「この後、少し時間作れるか?」
黒子「ははぁ、こちらが上条さんのお宅ですのね」
黒子(なんて、尾行でとっくに把握済みなのですけど)
黒子(知らないフリをするのもなかなか後ろめたいですわね)
上条「常盤台の寮に比べたら月とすっぽんだろ」
黒子「まぁ、正直言って差があるのは否めませんわね」
黒子(……以前はあまり気にしなかったことですけれど)
黒子(学園都市って、つくづく格差社会ですのねぇ)シミジミ
上条「ん、カーテン閉まってんな。あいつまだ帰ってないのか」
黒子「あら、どなたか同居者がいますの?」
上条「同居者というか、居候というか」
上条「ただいまー」ガチャ
黒子(七階の角部屋ですのね。これなら覚えるのも簡単――)
黒子(って、何言ってますのっ。覚える必要性がこれっぽっちもありませんのっ)ブンブン
上条「あれ、どうした? 上がらないのか?」
黒子「い、いえ。……あの、いきなり入ってしまってもいいんですの?」
上条「へ? どういうことだ?」
黒子(……はぁ。こういったことに免疫がないのか、自覚がないのか)
黒子「ですから、隠すものとかないんですの? 年頃の殿方が見る、い、いかがわしい本とか」
上条「あー、なるほど、そういうことか」
黒子「納得されても反応に困るのですけれど」
上条「まぁなんつうか、そういうの見れる環境じゃないからさ」
黒子「……???」
黒子「お、お邪魔しますの」ペコ
黒子(な、なんだか緊張しますの。殿方の部屋に足を踏み入れるなんて、小学生のとき以来ですの)
黒子(……って、あら。意外に整頓されていますわね)
上条「今茶ぁ出すから、その辺に座っててくれな」
黒子「お、お構いなく」チョコン
黒子(……日常的に使いそうな物は目の届く所に収まっている。生活感に溢れていますわね)
上条「紅茶、紅茶っと」ガラ
黒子(それにこの手際のよさ。一人暮らしも慣れているご様子)
黒子(って、感心ばかりしていられませんわね)
黒子(まずは、助けていただいたお礼をきっちりしませんと)ピシッ
上条「ええと、白井さん」
黒子「…………」
上条「……じゃなかった、黒子」
黒子「なんですの?」チラ
上条「紅茶に砂糖は入れるか? ミルクは?」コポコポ
黒子「ええと、ミルクだけお願いしますの」
上条「あぁ、わかった」トクトク
黒子「…………」ジー
上条「お待ちど。カップも熱くなってるから気をつけてくれ」カチャ
黒子「ええ、いただきます」フー
黒子(……美味しい。あらかじめティーカップを湯煎していたんですのね)コク
上条「……ふぅ」
黒子「あの、お代わりはありますの?」
上条「あ、あぁ。すぐに入れてくる」
黒子「お願いします」
上条「あぁ、そうだ。暇だったらテレビでも見ててくれ――」パチ
男『い、いけません奥さん! 僕は、僕はそんなつもりで』
上条&黒子「」
女『またそんなこと仰って、少しは期待していたんじゃありま――』パチ
キャスター『では、次のニュースです』
上条&黒子「…………」
上条「…………」チラ
黒子「…………」チラ
黒子(うう、こ、このままでは間が持ちませんの)
上条「え、ええっと、そういえば黒子に聞きたいことがあったんだけどさー」
黒子(……上条さんて、演技は致命的ですのね)
黒子「なんですの?」
上条「いや、彼氏とかいるのかなーって」
黒子「」ブーーッ
上条「」ビッショリ
黒子「あぁあぁ、ごごめんなさい! ハンカチ、ハンカチはどこに仕舞いましたっけ!」ゴソゴソ
黒子(こ、この程度の不意打ちで、なんたる不覚っ!)
上条「あまり気にすんなよ、すぐ洗剤につければ色素沈着しないし」
黒子「も、申し訳ないですの」
上条「いや、いきなり変なこと聞いた俺も悪かったし」
黒子「……あの」
上条「なんだ?」
黒子「いえ、さきほどの質問には、どのような意図があったのかと」
上条「んー、意図もなにも、素朴な疑問なんだけど」
黒子「ですが、なにゆえ彼氏の有無など?」
上条「だって、おまえってパッと見可愛らしいし」
黒子「……っ」ボ
黒子「――って、パッと見とはどういう了見ですの!」ガタ
上条「い、いや、じっと見てももちろん可愛い――」
黒子「――わたくしをからかってますのっ!?」
上条「と、とんでもない! つまり、俺が言いたいのはさ」
黒子「…………続きは?」
上条「その、黒子が初見でもわかるくらい目を引く容姿ってことでさ」
黒子「そ、そういうことですの」ストン
黒子(し、しかし、そのようなことを言われた覚えは……)
黒子(って、性格に難ありと思われてる? ですが、淑女たるわたくしのいったいどこがっ!)
美琴「ひっくしゅっ!」
佐天「あれ、御坂さん風邪ですか?」
美琴「それはないわね。わたしってば菌類にとことん嫌われてるから」
佐天「あぁ、なーるほど。毎度電気流されたら住み心地悪そうですもんねー」
美琴「少し引っかかる言い方だけど、まぁそういうことね」
初春「あ、じゃあ誰かが噂してるんじゃないですかー?」
佐天「だとしても、御坂さんは人気あるから犯人を突き止めるのは至難の業ねー」
美琴「さぁ、どうかしらね。それより初春さん、ジャッジメントの方は大丈夫なの?」
初春「ええ、今日明日と177支部はお休みなんです。緊急招集がかかれば、別ですけどね」
上条「へえ、空間移動能力か。いいな、便利そうで」
黒子「ええ、使い勝手だけならお姉様の能力にも引けを取りませんわよ」
上条「あれ待てよ? それだったら、どうしてあの時その瞬間移動で逃げなかったんだ?」
黒子「あぁ、廃ビルの時は、逃げなかったんじゃないですのよ。逃げられなかったんですの」
上条「逃げられなかった?」
黒子「上条さんもある程度は存じているかと思いますが、基本的には能力が強くなればなるほど制御が難しくなりますの」
黒子「たとえば転移一つとっても、二つ以上の場所を同時にイメージしなければ能力の発動はできません。空間移動が特に難しいと言われる所以ですの」
上条「他の能力以上に集中力を要するってことか」
黒子「ですの。詳しく説明すると長くなるんですけれど」
上条「折角だから聞かせてくれよ。能力者とそういう話することって滅多にないからさ」
支援感謝
黒子「まず、一つの物を三次元空間、A点からB点へ移動させると仮定しましょうか」
上条「XYZ座標だな」
黒子「ですの。空間移動をするには3次元から11次元への特殊変換を行って位相を定め」
黒子「平行して11次元から3次元への位相を逆算しますの」
黒子「Aから11次元のOを経由してBへ送り込む。これがテレポートの原理」
黒子「つまるところ、一度の能力発動に対して二重の計算が必要になりますの」
上条「ええっと、余分に計算しなきゃならないから発動に時間がかかるってことだな?」
黒子「ま、平たく言えばそういうことですわね。細かいところでは、他にも色々と制約がありますの」
黒子「例えば建物の外と中を行き来するには外から外、中から中よりも難解な計算が必要となりますし」
黒子「デパートのように上下階のフロアの作りが似通った建物と、そうでない建物とでは、転移に相当な時間差が生じますの」
上条「じゃあ、あの時は条件ないし、集中力が足りなかったと」
黒子「いーえ、それ以前の問題ですわね」
上条「と、いうと?」
黒子「弱点を晒すようなものですからあまり気が進まないのですが」
黒子「わたくしの能力は痛みなどで集中力が乱れると、まず発動できませんのよ」
上条「あー、そんな単純な理屈か」
黒子「あの時わたくしは敵能力者の攻撃を受けて意識が朦朧としていましたから」
黒子「運よく転移できたとして、どこぞの壁の中に埋まってしまったり空に投げ出されるのが関の山だったでしょうね」
上条「なるほどな、自分の能力と付き合うってのも結構大変なんだな」
黒子「まぁ、これでも人並み以上は努力しているつもりですの」
黒子「学園の能力開発は啓蒙ができてこそ。こと自分の能力に関しては誰より自分が一番理解していなくてはなりませんの」
上条「話を聞いてるだけでも、それはひしひしと感じてるよ」
黒子「――というわけでぇ」ズイ
上条「な、なんだ? いきなり」
黒子「こちらも手の内を明かしたのですから、あなたの能力についても尋ねてよろしいですわよね?」
上条「ああ、幻想殺し(イマジンブレーカー)のことか。別にいいぜ」
黒子(え゛……そんなあっさり?)
黒子「…………」アングリ
上条「――以上が俺の能力、というか、右手についての説明だな」
黒子「……に、にわかには信じがたいですわね。超能力と名のつくすべてを、無効化するなんて」
上条「すべてかはわかんねえけど、今のところ掻き消せなかった能力はないな」
上条「炎に電気に物理干渉。あぁ、あとは反射能力もか」
黒子「そんな能力、聞いたこともないですの。あったらまず忘れそうにないですし」
黒子(……そういえば、成り行きで上条さんを寮に入れたことがありましたわね)
黒子(確かあの時は寮長が来て……)
黒子「……ちょっと失礼」ギュ
上条「お、おい黒子!?」タジ
黒子(……玄関へ!)
上条「い、いきなり手ぇ握ったりなんかして、どうしたんだよ?」
黒子「……なるほど」
黒子(いつかの疑問が、氷解しましたの)
上条「く、黒子。手、放してもらってもいいか?」
黒子「え……あっ!? ご、ごめんあそばせっ」バッ
上条「い、いや、全然」
黒子(こっ、これじゃあまるで意識していたみたいじゃないですのっ! 少しはしていましたけれどもっ)
上条「もしかして、今能力使おうとしたか?」
黒子「……え、ええ、無理でしたけれど。というか、よくわかりましたわね?」
上条「ああ、能力を打ち消したときには妙な感触が残るんだ」
黒子(……彼がこう言っている以上、やはり何らかの力に阻害されたと考えた方がいいですわね)
上条「例えばさ。能力を無効化する超能力を簡単に説明できそうな現象って、あるのかな」
黒子「そうですわね。以前アンチスキルの一団と戦った時、妙な音の出る機械で演算能力を乱されたことはありますの」
黒子「ですが、上条さんの能力は具現化した能力に対しても有効だそうですから、そういったものとは根本的に異なるでしょう」
黒子「あとは、AIM拡散力場に対する強制的な干渉能力とか」
上条「あぁ、原理を紐解けばそれで説明がつきそうだな」
黒子(そう、上条さんの右手の周りに存在するAIM拡散力場の異常値を通常値に書き換える能力。それなら)
黒子(いや、ですけど、そんなとんでもない能力がレベル0などということは)コテン
黒子(さすがに他人のAIM拡散力場に干渉すれば、計測器にだって反応しそうなものですし)コテン
上条「さっきのおまえほどうまく説明できないのが口惜しいってか、悔しいな」
黒子「……ま、ひとつくらい未知の能力があってもよろしいんじゃありませんの」
上条「つうか、つくづく思ったんだけど、おまえってすごいやつだな」
黒子「あらあら、またワンパターンな褒め殺しですの?」
上条「本心だよ。うまい料理は作れるし気配りもできる。しかもジャッジメントで活躍する能力者だろ?」
黒子「いくら褒めても何も出ませんわよ」プイッ
上条「俺の勝手な印象も入ってるかもしれないけどさ。おまえに憧れる男子だっているんじゃないかな」
黒子「生憎、特別な付き合いをしている殿方はいませんの」
上条「あれ、そうなのか? 意外だなぁ」
黒子「……意外とは、遊んでいるように見えたということですの?」ジト
上条「い、いや、違うって!」
黒子「…………」ジトー
上条「ち、中学生にしてはませ――大人びてる雰囲気だからさ。ほ、ほんとだぜ?」アセアセ
黒子「……ま、別にどちらでもいいですけど」プイ
黒子「……これは、意趣返しというわけではないのですが」
上条「な、なんだよ?」タジ
黒子「前々から気になっていることがありますの」
上条「……前々」
黒子「って、ああああ、ち、違いますの! 今のは言葉のあやですの!」
上条「お、おぅ。――それで、気になっていることって?」
黒子「……聞きたいんですのね?」
上条「そ、そりゃあもちろん」
黒子「こう言うのもなんですけれど、少々失礼な物言いになりますわよ?」
上条「…………」グビ
黒子「……こほん。上条さんは」
上条「……お、俺は?」ゴク
黒子「――ファッションセンスに難がありまくりですの!」ビシィッ
上条「……なっ!」ガーン
黒子「わたくしの目は誤魔化せませんの。あなたのそのヒヨコ髪、天然ではありませんね」
上条「ヒ、ヒヨコ……」
黒子「質問には素早くお答えなさいなっ!」ビッ
上条「はいっ、整髪剤で立たせてますっ!」ビシッ
黒子「まったく、そのざっくばらんな髪形に方向性を持たせるだけでも見違えるようになりますのに」
上条「そ、そういうもんなのか」
黒子「まぁ大方? 夜更かしした挙句に遅刻ギリギリまで寝過ごし」
上条「うっ」グサ
黒子「時計と睨めっこしながらワックスを手櫛でさっさと塗りたくる。そんなずぼらな生活を送っているのでしょう」
上条「」グサッグサッ
黒子「体の一部である髪すら気遣えない人が、服装にこだわることなどできるはずがないですの」
上条「わ、わかった。これから気をつけてみるよ」
黒子「んー、靴のセンスもいまいちですのー」
上条「は、はぁ」ポリ
黒子「スポーツ系のスニーカーしか持っていませんの? しかも、ほとんど同じメーカーじゃありませんの」
上条「それはその、常日頃から走ってばかりなもんでさ。普通の靴だとすぐに駄目になっちまうんだよ」
黒子「……呆れた事情もあったものですわね。少しはゆとりを持って行動なさいな」
上条「俺だってそうしたいのはやまやまだけど、神様ってやつがのんびり歩くことを許してくれないんだ」
黒子「あらあら、ずいぶんと気取った物言いをなさるのですね」
黒子「ただ、そういう台詞はちゃんと靴の手入れを怠らない方に言って欲しいですわねぇ」スッ
上条「……革靴?」
黒子「ろくに靴クリームを塗った跡がないですの」
上条「……あ、あははは」タラー
上条「はぁ、これで一通りチェックは終わりか」
上条(かなりダメ出し食らったな。さすがに少しへこむぜ)
黒子「まだ終わりだとは一言も言っていませんの――ちょっと失礼」スッ
上条「おわっ」
黒子「ちょっと、あまり動かないでくださいな」ピト
上条「で、でもこれは、健全な男子には色々きついものがあると言いますかですねっ!」
黒子「……この香水は、メンズ製品ですの?」クンクン
上条「へ、……香水?」
黒子「男性がつけるにしては少し匂いが強めですし、コロンになさった方がよろしいかと」
上条「えっ。香水とコロンって、なにか違うの?」
黒子「そこの説明からですの? 上条さん、仮にも高校生ですわよね?」ジト
上条「も、申し訳ない」
黒子「呼び名が違うからには、当然それなりの理由がありますの」
上条「……それは、どういったものなんでせう」
黒子「コロンは香水よりもアルコール分が多いですの。その代わりに匂いの成分、香料が薄められてますの」
上条「……し、知らなかった」
黒子「ご存知の通り、アルコールには殺菌成分がありますの」
黒子「言い換えれば、発汗の不快な臭いを抑える効力もある。動き回る殿方がつけるのに向いているんですのよ?」
黒子「まぁ、こんなところですわね。少しは参考になりまして?」
上条「…………」ホゥ
黒子「あ、あの、なにか?」
上条「いや、なんだかすごい新鮮でさ。俺の周りには身嗜みについて語れるやつなんててんでいないから」
黒子「ど、どんな非日常的な世界で暮らしていますのよ」
上条「はは、学園都市外の一般人にとっては超能力だって大概だぜ?」
黒子「まぁ、それは認めますけども、何事にも関心を持たねば向上心は廃れていく一方ですのよ?」
上条「はは、耳が痛いな」ポリ
黒子「……あ。も、もしかして怒りましたの?」オズ
上条「いや、全然? おまえと話してるとほんと面白いよ」
黒子「……そ、それなら、いいのですけれど」
上条「というか、何で怒ったと思ったんだ?」
黒子「それはその……」
黒子「わたくし誰に対してもはっきりと言ってしまう性格ですから、敵も多いんですの」
上条「ふーん、そんなもんか」
黒子「改めねばならないとは、常々思っているのですけどね」
上条「直す必要なんてないだろ。おまえの持ち味なんだから」
黒子「持ち味……ですの?」
上条「ストレートな分、黒子の言葉にはちゃんと気持ちが含まれてる気がすんだ。俺は好きだぜ、そういうの」
黒子「」トクン
上条「あれ、そういえば門限大丈夫なのか?」
黒子「……え。……あ、あぁ、門限ですの。――――――――門、限?」チラ
時計「19時50分」
黒子「」ゾワ
――常盤台女子学生寮
美琴「あら、おかえり黒子ー」クルッ
黒子「た、ただいまですの」チラ
黒子(さ、三分前。辛うじて、間に合い、ましたの)ゼーゼー
美琴「今日はジャッジメント休みだったんだって? それにしてはかなりぎりぎりだったわね」
黒子「え、ええ。少し話し込んでしまいまして」
黒子(ま、まさかこんなに時間が経っていたなんて)
美琴「まぁ、何にしても間に合ってよかったわ。んじゃあ、わたしはお風呂入る」
黒子「お供しますのっ!」ズズズズイ
美琴「そ、そぉ」タジ
――チャポン
美琴「はぁー、やっぱり一日の終わりはこれよねー」チャプ
黒子「同感ですの」シャワー
黒子(あぁ、お姉様のピチピチのお肌がこんな近くに……)ウットリ
黒子(……これで外傷と筋肉痛がなければ、最高なんですのにぃ)ジクジク
美琴「黒子、大丈夫? まだ、どこか痛むわけ?」
黒子「あ、いえ。大したことはないんですのよ」
美琴「そんなこと言って、あんたって結構痩せ我慢するからねー」クス
黒子「も、もぅ。お姉様にだけは言われたくありませんの」プン
美琴「それよりさ、お風呂上がりにマッサージしてあげよっか?」
黒子「え……」
黒子(お、お姉、様が、自らマッサージを申し出るなんて!?)
黒子(ついに、ついに黒子の愛が通じたんですのっ)ヒュン
美琴「怪我してるときに長湯は禁物だしね。少しは筋肉痛も和らぐだろうし――てっ」
黒子「おーねーえーさーまーぁっ!」パッ
美琴「く、黒子っ!?」
黒子「お風呂上りと言わずに今すぐっ! 黒子の方はいつでもどんなプレイもOKですのっ!」キラキラキラ
黒子「お姉さまの手、おみ足っ、慎ましやかな胸――あばばばばば」ビリビリビリ
――バチバチバチン
黒子「――――」キュウウ
美琴「たしかにっ、それだけ元気があるなら心配ないわねっ」ガラガラガラ
――ピシャン
明日はやいけど気にせず支援
――寝室
黒子(……はぁ、疲れているはずなのに眠れませんの)モゾ
黒子(変な時間(夕方)に紅茶なんて飲んだせいですわね)ガバッ
黒子(ま、目を瞑っていればそのうちに……)
上条『黒子の言葉にはちゃんと気持ちが含まれてる気がすんだ。俺は好きだぜ、そういうの』モヤモヤ
黒子(あ、あれはわたくしの性格に対しての理解であって)カァ
上条『俺は好きだぜ、そういうの』
黒子(…………き、聞こえない聞こえない)
上条『好きだぜ』
黒子(~~~っ! ~~~~~~っ!!///)ジタバタドタバタ
黒子(う、うぅ……なんてザマですのっ!)ガジガジガジ
黒子(る、類人猿ごときに優しい言葉をかけられただけで)ゴロゴロゴロ
黒子(あぁあぁ、違いますのっ、わたくしは誓ってお姉さま一筋ですのー!)ガンガンガン
美琴「……黒子ー、下に響くわよー」ガバ
黒子「あ、お、お姉様! ご、ごめんなさい!」
美琴「わたしは構わないけどさ。寮長が乗り込んで来たらあんただってちゃんと休めないでしょー」
黒子「そ、そうですわね」
美琴「まだ病み上がりなんだから、しばらくは大人しくしときなさい。んじゃ、おやすみ」
黒子「……ありがとうございます。おやすみなさいまし」
黒子(ああ、お姉様っ。素っ気なくも隠し切れぬその優しさが、黒子は……黒子は……!)
黒子「その胸の中で傷だらけの黒子を癒してくださいまし――ぐべっ!?」
美琴「とっとと寝ろっ!」
黒子「お、置きパンチは、あんまりですの――ぅ」ズルズル
とりまここまでです、支援感謝
多分明日の夕方以降まで無理なので落としちまってください
嬉し恥ずかしデート編はそのうちに
乙
続きまつわ~実質寝ないで待つわ~
ん
も
子
条
も
偽物です
21時15分頃から投下します
昨夜からの支援感謝です
――ファミレス
美琴「そんなわけで、特に変化は見られなかったんだけど」
佐天「……そのやり取りがいつも通りというところに、まず突っ込みたくなるんですけど」
初春「あはは、そうですね」
美琴「もう慣れたわ……不本意にもね」
美琴「ただ、誰かと会ったのは確かみたいよ。話し込んだみたいなこと言ってたし」
佐天「十中八九、その人にお弁当を作ったってことで間違いなさそうですね」
初春「でもぉ、必ずしもそれが男性とは限らないんじゃないですか?」
美琴「そうね、まだ断定はできないわ。サイトにしたってたまたまそのページを見ただけかも知れないし」
佐天「ま、まだ焦る必要はありませんね。こういうのは地道に粘り強くやらないと」
初春(佐天さん、いきいきしてますねー)
佐天「それで、ご本人は今日どちらに?」
美琴「わたしが起きたときにはもうベッドは空だったわよ。休日だしどっかに出かけたんじゃない?」
佐天「……ま、まさかデートとか」
美琴「いやいや、まさかあの子に限って、ねぇ? 初春さん?」
初春「わわ、わたしに振らないでくださいよー」アタフタ
初春「でも、そうですね。白井さんが男の人とデートする姿ってあまり想像できないかも」
佐天「まー、そこは同感かな」チラ
美琴「ん、どうしたの? わたしの顔に何かついてる?」キョトン
佐天「いえいえ、なんでもないです」フリフリ
佐天(無理もないか。御坂さんより頼りがいのある人って、そうそういなそうだもんね)
黒子「くしゅんっ」
黒子「……はぁ。悩みつつも結局近くまで来てしまいましたの」フキフキ
黒子(部屋にまで上がっておいて肝心なことを言いそびれてしまうとは)
黒子(どーも、いつものようにいかないんですのよねぇ)
黒子(あの方の持つ独特の、そう、砕けた雰囲気と言いましょうか)
黒子(……ま、いいですわ。言うべきことだけきちんと伝えて、とっとと退散しましょう)
???「じゃあ行ってくるんだよ!」
???「ああ、ちゃんと小萌先生の言うことよく聞くんだぞ?」
黒子「あら、今の声……もしかして」
???「子供扱いしないで欲しいんだよ! 当麻こそわたしがいない間に無茶したらダメなんだよ!」
黒子(――当麻……やっぱり上条さんですの? ……お相手の方はいったい)ヒュン
上条「わかってるって。せっかくの機会だし、無料なんだから思いきり楽しんで来い」
インデックス「インデックスは、とうまとも一緒に行きたかったんだよ」
上条「当たったチケットが女性限定だっつんだから仕方ないだろ。俺もエスティックサロンなんかにゃ興味ないし」
黒子「……な、なんですの、あのみょうちくりんな格好は」
黒子(銀髪に青い目……外国の方、ですわよね)
インデックス「はぁ、わかったんだよ」
上条「……ったくしゃあねえな」
上条「わかった、じゃあ明日の夕飯は奮発して廻る寿司にでもいくか」
インデックス「ほ、ほんとっ? とうま、絶対なんだよっ?」
上条「おぅ、男に二言はねえよ」キリッ
お寿司をたべたいんだよ!
インデックス「お寿司っ、お寿司っ、お寿司っ――……」
上条「あ、相変わらず食意地張ってんなぁ。……ま、資金の方は大丈夫だよな」ポリ
黒子「……なるほど、彼女があなたの言っていた居候ですのね」
上条「ああ、まぁな――って」
上条「くっ、黒子っ!? い、いったいいつからそこに」
黒子「つい先ほどですの。というか、よもやあなたにあのような高尚なご趣味があったとは存じませんでした」ヒヤ
上条「秘密って、なんのことだよ?」
黒子「外国人の少女を密かに囲って、あまつさえコスプレなど……非常識も甚だしいですの」フイ
上条「ちょ、待て待て! おまえ何か勘違いしてるだろ!」
黒子「どこがですの?」
黒子「安全ピンで止めただけの布を着せて外へ放り出すような真似、よく出来ますわね」
秘密?
>>631
直前で文変えてミスた
秘密→趣味
黒子「少しは骨のある殿方だと思っていましたのに、幻滅ですの」プイ
上条「ちょ、だからそれは誤解だって!」ガシッ
黒子「生憎ですけど、外道の話を聞く耳は持ち合わせていませんの」
黒子「さ、放してくださいな。その手で掴まれてるとテレポートができませんの」
上条「た、頼むから話を聞いてくれよ! なんでも説明すっから!」
黒子「説明、ねぇ? あのけったいな格好について、何をどうすれば弁明できるんですの?」チラ
上条「あいつが着ているのは、布じゃない。法衣なんだよ」
黒子「……ほうい? なんですのそれ?」クルッ
上条「だからさ、あいつはれっきとしたイギリス清教のシスターなんだよ」
黒子「シスター……あぁ、妹じゃない方の」
上条「そう、神に仕える方のだ」
上条「――ってなわけで、留学してきたはいいけど泊まる場所がないってんで、住む場所が見つかるまで住まわせることになったんだ」
上条「一応、学園の先生の許可(非公式)ももらってる。月詠小萌って名前、おまえも聞いたことくらいあるだろ?」
黒子「……あぁ、確か、学園の七不思議のひとつでしたわね」
上条「それそれ。な、だからおまえが疑っているようなことは、何もないんだよ」
黒子「…………」
黒子「……わかりましたの。わたくしを救ってくださった行為に免じて、信じてさしあげますわ」
上条「そ、そっか。ありがとな」
黒子「別に、お礼を言われる筋合いはないですの」ツン
黒子(…………はぁ)
黒子(……一言お礼を口にするだけのはずが、なぜこのような)
上条「ところで、おまえはこんなとこで何やってんだ?」
黒子「あぁ、わたくしは……その」
黒子(……せっかく向こうから聞いてくれてるのですから、このチャンスを逃す手はないですわね)
黒子「…………」グッ
黒子「は、廃ビルの爆発の件で、上条さんに改めてお礼を言いたくて」
上条「なんだ、そんなことでわざわざ?」
黒子「そんなことって流せるほど、わたくしにとって軽い出来事ではありませんの」
黒子「あの場から助け出されなければ、よほど運が良くて重度の火傷は免れない状況だったんですのよ?」
黒子「で、ですからっ」
黒子(……い、言うんですのっ、こういうのは勢いですのっ)
黒子「た、助け出してくださって、本当に感謝していますのっ」ペコ
上条「あ、いや、その、ど、どういたしまして、って言えばいいのかな、はは」アセアセ
黒子「…………」
上条「と、とりあえず頭を上げてくれよ。……その、ご近所の目もあるしさ」チラチラ
黒子「……はい、ですの」オズ
上条「……そうだよな。大事に至らなかったのは本当、何よりだよな」
上条「おまえを助けられたこと、今になってやっと実感できた気がする」
黒子「……な、なんですの、それ。……遅すぎですの」
上条「そ、そう言わないでくれって。それよかさ、昨日くれた弁当ってもしかして」
黒子「え……あ、いえ、それは」カァ
黒子(……ま、まぁ、そういう気持ちがまったく含まれていなかったというわけでも、ないですわよね)モジモジ
うっ…ふぅ
黒子「……お礼の言葉だけというのもなんですし、せめて感謝の気持ちだけでも、と」
上条「へへ、そっか。道理で、あれだけ美味いわけだよな」ニッ
黒子「」ドキ
黒子(……き、気恥ずかしくて、お顔がまともに見れませんの)
黒子(うぅうぅ、耳が変に熱いですの~)
黒子(……あら? これは)
上条「ん、胸元になんかついてる?」
黒子「……いえ、Tシャツの柄が、随分と」
上条「お、さっそく気づいてくれたんだな。昨日黒子が帰ったあと、ネットで勉強したんだぜ?」
――回想 上条宅
黒子「まぁ、学生服がメインになるのは仕方ないですわね」
上条「」ホッ
黒子「ですけど、その下にオレンジや赤系のTシャツなどを着ているのは、かなり許しがたいですの」
上条「……え」ギク
黒子「コントラストにケチをつける以前の問題ですわね。今の季節にその色は見ているだけで暑苦しいですの」
上条「うぐっ」グサッ
黒子「これは、お姉様の受け売りなんですけれど」
上条「ビリビリの?」
黒子「――っ、その呼び方は無礼千万ですのっ。いい加減に名前でお呼びなさいなっ」
上条「わ、わかったわかった。それでビリ……御坂の受け売りがどうしたんでせう」
黒子「いいですこと? 人には共感覚性というものがありますの」
黒子「青系の色を見れば涼やかさを感じますし、緑系であれば落ち着きを、色がまだらですと不安を煽ったりするんですの」
上条「あー、わかるわかる。なんでかうまく説明できないけどそんな感じだよな」
黒子「いわゆるシーズン物も、そういった無意識の選り好みを考慮しているのでしょうね。赤い風鈴なんて見たことありませんし」
黒子「夏場であれば水色や白系。秋になるとシックな色合いやからし色」
黒子「冬なら上条さんが今着ているような暖色系もアリですわね」
上条「……おまえさ、そういう知識とかネタ、どこで仕入れてくるんだ?」
黒子「今言ったようにひとづての話もありますし、今どきはインターネットで大概のことは調べられますから」
黒子「気になったら図書館に出かけることも、もちろんありますわよ」
上条「なるほどな、そういう行動力は見習いたいな」
黒子「あとは、ひたすら目を養うことですわね」
上条「目を養う?」
黒子「TV番組でも、通りがかりの人でも、お洒落な着こなしを覚えておくんですの」
黒子「アウトレットモールなどでウィンドウショッピングするだけでも、自然とセンスは向上するはずですわよ」
上条「んー、結構道のりは遠そうだな。まぁ、せめて制服の着こなしくらいはできるように――うおっ!」ビク
黒子「あーまーいーでーすーのっ!」ズイズイズイ
上条「か、顔! 近いってっ!」タジタジ
黒子「断っておきますけど、制服の着こなしというのは難度が高いことなんですのよ」
上条「え、そうなの?」
黒子「あれは上下でデザインが確立しているファッションですから、手を入れられる箇所が非常に少ないんですの」
黒子「ゆえに、主張しすぎる色やアクセサリーを合わせて着こなすのは至難の業ですの」
黒子「加えて、シンプルなだけに普段着よりも襟や裾の乱れが目につきやすいですの」
上条「……言われてみれば、崩してると変にだらしない感じがするな」
黒子「逆に言えば、制服をうまく着こなしている人って、大抵普段着もうまく着こなせますわね」
上条「しょ、精進します」
黒子「よろしい。では、お話はこれくらいにして」スク
上条「…………」ホッ
黒子「下駄箱に移動しますわよ」シズシズ
上条「…………お、お手柔らかに頼んます」
ほほう
そういう流れか黒子さすが可愛い
上条「ってな感じでさ」
黒子「そ、そこまでボロクソに言いましたかしら)ウーン
上条「女子の後輩にあれだけ説教されれば、上条さんだって少しはビッとしなきゃと思うわけですよ」
黒子(Yシャツの白を殺さないように、紺とベージュの格子模様。まぁ、少しは考えたようですけど)
黒子「……ぎりぎり、赤点は免れているようですわね」
上条「え゛。きゅ、及第点ももらえないのか」
黒子「努力の痕跡は認められますが、注意力が足りませんの。ほらここ、後ろの襟が立っていますわよ」スッ
上条「あ、わ、とと」
黒子「まったく、ちゃんと鏡を見ながら着なさったんですの? はい、終わりましたの」ピッピ
上条「さ、さんきゅ」ポリポリ
黒子「ネクタイがまがってますわよダーリン」クイクイ
俺「ありがとうハニー、愛してるよ(^^」
蛇足みたいだけど実は伏線なんだ、すまない
黒子「……では、目的は果たしたことですし、今日のところは帰りますわね」
上条「――なぁ、黒子」
黒子「ん、どうかしましたの?」
上条「もし面倒じゃなければだけど。今度買い物に付き合ってくれないか」
黒子「……え、と」
黒子(今のお誘いは、つまり、常識的に考えますと、二人で、ということですわよね)
上条「ちょうど新しい服が欲しいと思ってたんだ。おまえが一緒なら目利きはバッチリだし」
上条「別に急ぎじゃないし、ジャッジメントの仕事も忙しいだろうから、よほど暇を持て余してる時で構わないぜ」
黒子「……そ、そうですわねぇ。別に、それくらいなら……」
黒子(ふ、服のレクチャーをした手前、放置するのも可哀想ですものね)ウンウン
黒子(休日に二人で買い物に出かける。ただそれだけのことなんですの。変に構える必要はありませんの)ドキドキ
上条「そういえば携帯の番号、交換してなかったな」
黒子「あぁ、うっかりしていましたわね。ちょっと待ってくださいな」ゴソゴソ
上条「……おー、最新機種か」
黒子「私物ではなく、ジャッジメントの支給品ですけどね。無線は大丈夫ですの?」
上条「ああ、問題ない」
黒子「では、まずはこちらから送信しますわね」カチカチ
上条「――――登録完了。んじゃ、折り返すぜ」
黒子「はいですの」
――Prrr
黒子(ん、来ましたわね)
黒子「ふぅ、やっと肩の荷が下りましたの」ヒュン
黒子(とはいえ。いくらなんでも状況に流されすぎですわね)パッ
黒子(番号まで交換する気などまったくなかったのに)
黒子(しかも確約でないとはいえ、一緒にお出かけする約束までしてしまう始末)ヒュン
黒子(なんか、調子が狂いますの)パッ
Prrr――
黒子(……あ、お姉様からっ)ピッ
黒子「もしもしっ?」トン
美琴「あぁ黒子? 今から初春さんたちとクレープ食べに行くんだけど、よかったらアンタも一緒にどお?」
黒子「もちろんっ、お姉様とでしたらどこにでもついて行きますのっ!」
黒子(ま、心配するほどのことでもないですの。お姉さまたちと一緒にいれば、そのうちに調子も戻りますわよね)ヒュン
一瞬気を失ってたので寝ます
続きは明日、完結も明日の予定
落ちたら落ちたで構わないです
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