P「メリークリスマス、ちひろさん」 ちひろ「今日22日ですけど」 (86)


ーー事務所

P「ぴんぽんぱんぽーん。今事務所に残ってる総勢2名の皆さんにお知らせがありまーす」

ちひろ「わーい。なんですか?おやすみ?おやすみですよね?やったー」

P「今日も昨日に引き続き終電が行っちゃいましたー。俺と二人で強制朝帰りでーす。やったー」

ちひろ「うわキツ、何の罰ゲームですかそれ。無能Pは帰れー」

P「無能だから帰れないんだよなぁ。みつを」

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ちひろ「……まさか、本当に今日も終電行っちゃったんですか。二日続けて嬉しくない朝帰りしなくちゃいけないんですか」

P「行っちゃいましたよ。時計を見てごらん机の上に書類山積みのちひろさん」

ちひろ「………………はぁ」

P「さぁお仕事だ。楽しい楽しいクリスマスに向けてお仕事だ!365日死ぬまで働きましょうね、ちひろさん!」

ちひろ「キリストが生まれなければクリスマスなんて無かったのに……」

P「悲しい事言うなよ」


P「クーリスーマースが今年もやってくるー♪」

ちひろ「楽しかった」

P「お休みを」

ちひろ「消し去るようにー♪」

ちひろ・P「「……ハァ」」

P「ニュージェネの年末ライブ、CD組のイベント、にゃんにゃんにゃんのクリスマスライブ、ひっきりなしの特番の収録」

ちひろ「後新しく入って来た静岡の子達の歓迎イベントに、それに付随する諸手続き。盛りだくさんですね」


P「なんでこんなイベントばっかりあるんですかねクリスマス付近って」

ちひろ「逆です。クリスマス付近だからイベントばっかりなんですよ」

P「正直聖夜にアイドルのイベントに行くってどうなの?彼女同伴なの?ばかなの?」

ちひろ「それ以上いけない。ていうかそれでご飯食べてる私達が言えた義理じゃありませんよ」

P「ちひろさん、イブの予定は?」

ちひろ「私イケてる女子なんでデスク君と約束があるんです。ごめんなさーい」

P「奇遇ですね、俺も担当アイドルのタスクちゃんが構えって五月蠅くてね!モテる男は困っちゃうよ!ハッハッハ!」


ちひろ「……ちょっとテンションがおかしくなってますね、私達」

P「ですね」

ちひろ「しばらく黙りましょうか、お互い」

P「寂しくて死んじゃう」

ちひろ「訂正します。しばらく黙ってて下さい」

P「……ハイ」






P「サンタさんサンタさん、寝る時間をください」

ちひろ「サンタさんはいい子の所にしか来てくれないんですよ、プロデューサーさん」

P「俺今年いい子にしてたもん!お仕事頑張ったもん!」

ちひろ「いい子になる前にいい大人になりましょうねー。もう若くないんですから」

P「でーすーよーねー」


P「……」

ちひろ「……」

P「……よーしパパコンビニに夜食と炭酸買いに行っちゃうぞー」

ちひろ「あ、私も行きます。ちょっと待っててください」

P「30秒で仕度しな!」

ちひろ「古い。20点」

P「手厳しい」


ーーローソン

P「くっ、ローソンの店内にまでクリスマスムードが浸食してやがる!当日でもない深夜にバイトがサンタ帽を被るなんて!」

ちひろ「ここはもう駄目です!独り身の私達じゃ精神を保つことが……あぁプロデューサーさん、あなただけでも逃げて!」

P「馬鹿言うなよちひろ、俺達にだって仕事という名の恋人がいるじゃないか!」

ちひろ「プロデューサーさん……!私、今キュン☆ってしちゃいました……」

P「ちひろ……」

ちひろ「プロデューサーさん……」

バイト(何やってんだあの人達……)


ちひろ「私のお仕事、手伝ってくれますよね……?」

P「嫌です」

ちひろ「えー。今の流れは『俺に任せろ!ドン!』って言うところじゃないんですかー?」

P「そんなデキる男ならこんな日にこんな所居ませんよ」

ちひろ「ですよね。知ってました、所詮プロデューサーさんですもんね。けっ、甲斐性なしめ」

P「うわっ、冷たく言い放たれたらそれはそれでムカつく」


ちひろ「見てくださいプロデューサーさん!果汁グミがありますよ、果汁グミ」

P「好きなんですか?」

ちひろ「温州みかんとブドウ以外認めません」

P「こだわり派だ」

ちひろ「ライチとかマジ顧客舐めてんのかって感じですね」

P「ほらいつまでもお菓子コーナーに留まってないで。現実見て足を前に進めましょうよ。デスク君が貴女の帰りを待ってますよ」

ちひろ「2秒で忘れちゃいました、そんな男なんて。私は果汁グミと結婚します」

P「酷い女もいたもんですね。あんなに一緒だったのに」

ちひろ「女心と秋の空。夕暮れはもう違う色なんですよ」

P「夕暮れどころか深夜ですけどね、今」


バイト「限定チキン販売してまーす。いかがですかー」

ちひろ(わぁ、クリスマス限定チキン美味しそう……一つ買って行こうかな)

P「ヘイヘイちっひー!油!カロリー!体脂肪ー!」

ちひろ「宣戦布告と受け取りますよ?」

P「一発だけなら誤射かもしれない」

ちひろ「三発撃ちましたよね?」

P「人工衛星だからセーフ」


ちひろ「事実上の弾道ミサイルなのでアウト。国際ちひろ連合としては賠償措置としてこのコンビニの代金の全額負担を命じます」

P「何その真っ黒そうな連合。脱退していいですか?」

ちひろ「その場合あらゆる仕事上の物流を停止した上アイドルの皆さんにあなたの悪評を流し続ける制裁措置をとります」

P「ひいい!IMFも真っ青!」

ちひろ「じゃ、ここはプロデューサーさん持ちって事で。私は色々物色してきますね」

P「……夜食と飲み物買いに来ただけですよね?」

ちひろ「さっきまではそうだったかもしれませんねー」

P(樋口……いやまさか諭吉……?持ってくれよ、俺の財布っ……!)






バイト「ありがとうございましたー」

P「……」

ちひろ「プロデューサーさん、どうしたんですか?」

P「案外安く済んだので驚いてます。1800円って」


ちひろ「コンビニなら欲しいもの全部買ったってそんなものですよ。いくら使うと思ってたんですか?」

P「5000は固いとばっかり」

ちひろ「使っていいんですね?」

P「やめて下さい俺の財布の中の諭吉まで独りぼっちにする気ですか!」

ちひろ「冗談ですよ。……そろそろ行きましょうか」

P「……ですね」


ーー街中

『クーリスマスが今年もやってくるー♪』

ちひろ「夜も遅いのに都心はカップルでいっぱいですね」

P「ですねぇ」

ちひろ「仕事もせずにいちゃいちゃしてますね」

P「ですねぇ」

ちひろ「異常な光景ですよねこれって」

P「この時期なら普通だと思いますよ。世間的にはこんな時間帯まで仕事してる方がマイノリティです」


ちひろ「全員爆発しませんかね」

P「しないでしょう。というか爆発したら俺達も巻き込まれますよ」

ちひろ「もしそうなったらもちろん守ってくれるんですよね?」

P「俺で良ければ地獄にお供しますよ」

ちひろ「爆死前提とかいつものプロデューサーさんらしくないですね」

P「ちひろさんは俺と一緒は嫌ですか?」

ちひろ「別に嫌じゃないですよ」

P「え」


ちひろ「……なーんちゃって!プロデューサーさんと二人で地獄行きなんてうわキツに決まってるじゃないですか!」

ちひろ「あ、もしかして本気にしちゃいました?顔真っ赤ー!カワイイとこあるんですねー」

P「ちょっ……!鬼!悪魔!ちひろ!顔赤いのは寒いからですって!」

ちひろ「あははは!早く帰りましょう!デスク君とタスクちゃんが私達の帰りを待ってますよっ。事務所まで競争ですっ」

P「俺が負けたら?」

ちひろ「諭吉」

P「全力出します」

ちひろ「これを冗談と思わなくなった辺りプロデューサーさんも分かってきましたね」


ーー事務所





P「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛終わらないいいいいいいいいいいいいいいいいい」

ちひろ「……眠い……」

P「こういう時にさー、有能なプロデューサー兼アイドルみたいなのがやって来て仕事手伝ってくれたりしないかなー!」

ちひろ「もしそうなったらプロデューサーさんの役割無くなっちゃいますね。私が社長なら真っ先に切ります」

P「粉骨砕身頑張りまーす」


ちひろ「……私そろそろ眠気限界なんですけど、ソファーで仮眠とってもいいですかね?」

P「いいですけどパンツ見ますよ」

ちひろ「3枚1000円の安物でよければどーぞどーぞ……ふぁぁ」

P「……ホントに限界なんですね」

ちひろ「だからそう言ってるじゃないですか……ああ、目がしぱしぱする。1時間経ったら起こしてください……」

P「へーい」


ちひろ「Zzz……」

P(最忙期とはいえ女性をこんなになるまで働かせる会社ってどうなのよ)

P(マジで限界だったっぽいしなー……)

P「……」

P「仕方ない……いっちょ甲斐性見せますか!」




~~1時間後

ちひろ「ん……」

ちひろ(いけない、ちょっと寝すぎちゃったかも)

P「キッチリ1時間。流石ですね」

ちひろ「そうですか……よかった……ふぁぁ」

P「さぁデスク君の所に行ってあげてください。ちひろさんの事を待ってますよ」

ちひろ「分かってますよ。うぅ……気が重い」


ちひろ「って……あれ?」

ちひろ(書類の山がちょっと減ってる……?)

P「……」

ちひろ「……ドヤ顔してなければ過去最高にかっこいいですよ、今のプロデューサーさん」

P「ちっ、バレたか。出来そうなヤツをちょっと引き受けさせてもらいました……といってもこっちの机に持ってきただけですけど」

ちひろ「きゃー濡れるー。全部請け負ってくれたら抱いていいですよ」

P「勘弁してください」

ちひろ「どっちの意味で?」

P「ノーコメント」

ちひろ「はいセクハラ言質頂きましたー。精神的に深いダメージを負ったので慰謝料2億請求しますね」

P「今ので!?規制厳しすぎやしませんかちひろさんや!」

ちひろ「性犯罪はいつだって男に厳しく作られるものですよ」


P「はぁ……」

ちひろ「……」

P「……」

ちひろ「……あの」

P「はい?」

ちひろ「ありがとうございます」

P「どういたしまして」


ちひろ「チキン食べません?コンビニのですけど」

P「しかも俺の金で買った物ですよね、それ」

ちひろ「もうっ……余計な事言わなくてもいいじゃないですか。二つあるんでお一つどうぞ」

P「え、二つ買ってあるってちひろさんまさかそのサイズのチキンを一人で」

ちひろ「いらないんですね?わっかりましたー」

P「二人分買っておいてくれた女神ちひろ様の慈悲の心のために祈らせて頂きたい所存です」


ちひろ「うむ、今後とも寄付を怠らない様に。コーヒー淹れてきますね」

P「おなーしゃーす」

ちひろ「ブラックでいいですかー?」

P「カフェオレがいいー」

ちひろ「うわ女々しっ」

P「うわ酷っ」






P「頂きます」

ちひろ「頂きます」

P「あーコンビニチキン美味しい。ヤバイ。恥も外聞もなく齧り付いちゃう」

ちひろ「疲れた体に油という名の不健康な甘露が染み渡りますね……」


P「今の発言にちょっとだけウサミンの匂いがしました。具体的にはあの夏の日に寝転がったおばあちゃん家の畳の匂いが」

ちひろ「そんなにいい匂いがするんならもっと嗅いでもらってもいいですよ?」

P「勘弁してください。過酷な労役で濁りきった汗の匂いなんて嗅いだら生理現象で涙が出ちゃう」

ちひろ「家ではいつもこのくらいの清潔度ですけどね私」

P「……ちひろさん、案外私生活ではずぼらだったりします?」

ちひろ「休日はもっぱら高校時代のジャージ装備で家から一歩も出ずに過ごしてますが何か?」

P「いえ何も。悲しくなってきたのでさっさと食べて仕事に戻ろうと思います、まる」


ちひろ「今晩中に終わりそうですか?」

P「なにもわからない。わかりたくもない」

ちひろ「あー」

P「ただ一つ、お天道様がやってくるまでに終わらせないと首が飛ぶって事だけはよく理解できてしまっています。そっちは?」

ちひろ「家事手伝いにもどりたい。生まれ変わったら杏ちゃんになりたい」

P「あー」

ちひろ「……頑張りますか」

P「……頑張りましょう」






ちひろ「……」

P「……」

ちひろ「……」

P「……」


ちひろ「……つかれきった じむいん の ちひろ が あらわれた! コマンド?」

P「仕事しましょうよ」

ちひろ「ちひろ は うるんだめ で プロデューサーさん を みている! コマンド?」

P「……なぐさめる」

ちひろ「プロデューサーさん は ちひろ を なぐさめた! あん! あん! ちひろ は けがされてしまった!」

P「慰めるってそういう意味じゃないですよ」


ちひろ「ちひろ の つうほう! ざんねん!プロデューサーさん の じんせい は おわってしまった!」

P「即死っ!?」

ちひろ「プロデューサーさん、あそこは『いっしょうやしなう』か『しごとをぜんぶひきうける』が正解ですよ。分かってませんねぇ」

P「知らんがな。大体俺が出来る分はさっき貰っていってますから、そこに残ってるのはちひろさんにしか出来ない仕事ですよ。やりがいありますねー」

ちひろ「やりがいなんていらない。潤いが欲しい」

P「ここの流し台って実は体洗うのにもギリギリ使えるサイズでしてね。俺も昔」

ちひろ「いやー、聞きたくない、そこまで堕ちたくないぃぃ……」


P「冗談はこのくらいにしてやらないとそろそろ本気で間に合いませんよ」

ちひろ「だってデスク君の求めが激しすぎて私の身体がもたないですもん。いやんっ」

P「……」

ちひろ「ツッコミくらいしてくれてもいいじゃないですかぁ」

P「コストカットです。体力がもったいないんで」

ちひろ「はぁ……」


P「……」

ちひろ「……」

P「……」

ちひろ「プロデューサーさん。何か目の覚める話してくれませんか」

P「あと4時間で日の出です」

ちひろ「覚めました。頑張ります」









ちひろ「う゛ーーーーーーーあ゛ーーーーーーーー」

P「ちひろさんが輝子もかくやという勢いでヘッドバンキングをしている。まさか彼女はあの歳でロックに目覚めたのかっ」

ちひろ「違います。今の私は事務員ではなく『眠くて仕事終わらないゾンビ』です」

ちひろ「女神な事務員ちひろに戻るためにはプロデューサーさんによる目の覚めるような一発芸が必要です」


P「なんで俺がそんな事しなくちゃいけないんですか」

ちひろ「しなかったら私は一生『眠くて仕事終わらないゾンビ』ですよ、いいんですか。プロデューサーさんのお仕事にも悪影響でますよー」

P「仕事の手を止めて一発芸やらなきゃいけない時点で悪影響なんですが」

ちひろ「お願いします。ほんとお願い」

P「もう小学生並みのだだっ子ですね」

ちひろ「おーねーがーいーしーまーすーぅー」

P「分かりましたよ……じゃあ新年会用の『担当アイドルの細かすぎて伝わらないモノマネ』で。お題下さい」


ちひろ「好きな音楽のジャンルを質問されてアーティストっぽく答えようと努める渋谷 凛ちゃん」

P「……音楽?私は”蒼”が好きかな」

ちひろ「一日警察署長に任命されて張り切るあまり自分に手錠をかけてしまい涙目になる龍崎 薫ちゃん」

P「せんせぇ!かおるたいほされちゃった!かおるわるいことしてないのにてじょうでたいほされちゃった!どうしよう、かおるしけい!?」

ちひろ「橘 ありすがいちご園でタブレットを操りながら一言」

P「ペロ……やはりまろやかで果実の大きいスカイベリーはパスタソースにするのが一番のようですね」

ちひろ「今の全部隠し撮りしてあるって言ったらどうします?」

P「ホント悪魔みたいな人ですねあなたって」


ちひろ「悪魔に失礼ですよ」

P「自覚あるんなら治してください」

ちひろ「ふふ……ちょっと元気出ました」

P「人に意地悪して元気を取り戻すのはよくないと思います。まる」

ちひろ「大の男が裏声で『せんせぇ』って……うふふっ……」

P「一人時間差でツボに嵌らないで下さいよ。顔から火が出そうだ」

ちひろ「よーし、やるぞーっ!」

P「おー……」






P「……よし、後ちょっとか。ちひろさん、そっちはどうですか?」

ちひろ「Zzz……」

P「ちょっ」

P(ちひろさんのマジ寝顔とかレア度5ってレベルじゃねーぞ。写メ写メ)


ちひろ「Zzz……」

P(あ、これ破壊力ヤバい。なんかこの無防備な顔見てるとこっちまで頭おかしくなりそうだ。頬つんつんしたい)

P「……ちひろさん。起きてください。そっちも残り少しじゃないですか」

ちひろ「んぅ……ぷろでゅーさーさん……ごめんなさい……わたし、もう……」

P「気持ちは分かりますけど、あなたにしか出来ないんですよ、この仕事」

ちひろ「そんなこと……言われても……もう、ほんと、まぶた開けるのすら……」


P「スタミナドリンク飲んでいいですよ。あと一本冷やしてありますから」

ちひろ「そんな……スタドリは……アイドルの子達やプロデューサーさん向けに作られたものであって……私なんかが飲むわけには……」

P「飲んでください。別に怒ったりしませんから」

ちひろ「だめ、です……プロデューサーさんが飲まなきゃ、だめぇ」

P「あーーーーーーーーーもう!……ったく、変なところで頭硬いんだから」

P「じゃあ、俺が飲んだ物ならちひろさんも飲んでくれるんですね?」

ちひろ「…………………………え」

P「これから起こる事は事故です。なんの意図もなく起こり得るただの事故です」

ちひろ「ちょ、プロデューサーさっ……!?」


ちひろ「~~~~~~~~~~~~~~~~っ!」

P「おお、凄い処理速度ですね。当社比20倍?」

ちひろ「私は何も覚えてません!何もされてません!たまたまスタドリが口に入ってたまたま目が覚めただけです!」

P「奇遇ですね。俺も何したか覚えてませんし、過労で神経が衰弱してるので責任能力もあいまいです」

ちひろ「裁判になったらそんなの言い訳になりませんからねっ!」

P「覚えてないんじゃなかったんですか?」

ちひろ「知りませんっ!プロデューサーさんの馬鹿っ!たらしっ!」

P「記憶にございません。全く記憶にございません。それより、折角たまたま目が覚めたんだし早く仕事終わらせちゃいましょうよ」

ちひろ「言われなくてもそのつもりです!……もう」

ちひろ「………………ばかっ」

P「~~♪」






ちひろ「……ぉ」

P「ぉ……」

ちひろ・P「「終わったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」」


P「ちひろさんっ!」

ちひろ「プロデューサーさんっ!」

P・ちひろ「「イェイ!イェイ!いえーいっ!」」

P「やりましたねちひろさん!頑張った甲斐があったじゃないですか!」

ちひろ「ええ、ええ!後悔なんてあるわけないです!だってこんなに晴れやかな気持ち生まれて初めて!」

ちひろ「ああ、生きてるってこんなに素晴らしいことなんですね!神様ありがとう!」

ちひろ「ハグしましょうハグ!ぎゅーっ!」

P「いいですとも!ぎゅーっ!」


ちひろ「……」

P「……」

ちひろ「汗臭いですね……私達。今一気に現実に引き戻されました」

P「……頑張った証ですよ」

ちひろ「……帰る準備しましょうか」

P「……ですね」


ーー玄関

ちひろ「鍵閉めました?」

P「ばっちりです」

ちひろ「ああ、やっと家に帰れる……」

P「でもちひろさん。始発が来るまでもう少しありますね?」

ちひろ「……そうですが、それが何か?」

P「ちょっと裏通りのイルミネーション見て行きませんか。綺麗ですよ」


ちひろ「えぇー……正直勘弁してほしいです。マジしんどいんで」

P「そこはノッて下さいよ」

ちひろ「……あったかい飲み物」

P「もちろん、奢りますよ」

ちひろ「チキン」

P「何ピースでもお申し付けください、ちひろ様。……太らない程度で」

ちひろ「一言余計です。だからモテないんですよあなたは」

P「相変わらず手厳しい。……じゃあ、行きましょうか」

ちひろ「……はいっ」






ーー裏通り

P「……ここです。この前見つけたんですよ」

ちひろ「わぁ……」

ちひろ(……きれい)

P「……」


ちひろ「何ニヤニヤしてるんですか。職質されますよ」

P「いえ、イルミネーションを見つめるちひろさんは魅力的だなぁと思って。アイドルになる気ありません?」

ちひろ「プロデューサーさん、かなり頭おかしくなってますね」

P「ええ。度重なる重労働で俺の頭はボロボロです。なので……これを」

ちひろ「……何ですかこの箱」

P「クリスマスプレゼントですよ。こんな時にしか渡せない気がするんで」

P「メリークリスマス、ちひろさん」

ちひろ「……今日、22日ですけど」


P「明日も明後日もその次の日もどうせ仕事ですから。渡せるときに渡しておきます」

ちひろ「……開けてみても、いいですか?」

P「もちろん」

ちひろ「お財布……ですか」

P「大したものじゃないですけどね」

ちひろ「……」

P「あ、あれ?ちひろさん?気に入りませんでした?」


ちひろ「……プロデューサーさん」

P「はいっ、何でしょうか!ま、まさか現ナマ!?プレゼントに現ナマ要求とかいう新しいカツアゲのスタイルを提案する気ですかっ」

ちひろ「記憶がありませんが、さっきの事故と。このプレゼントのお返しを纏めてさせて貰います」

P「お返しって、え、そんなにダメでしたかちひろさっ……!?」

ちひろ「んっ…………」

P「…………」

ちひろ「…………」

P「…………」

ちひろ「……ぷはっ」


P「ぁ…………」

ちひろ「……私も、かなりおかしくなってますね。頭」

P「……ホントですよ。早く帰って寝てください」

ちひろ「ええ。明日、っていうか今日も7時出社ですもんね。今から家帰って1時間仮眠とってシャワー浴びて出社準備して即突撃ですもんね」

P「気が重くなりますね」

ちひろ「でも、好きなんですよね?プロデューサー稼業」

P「でなきゃ続けてられませんよ、こんなの」


ちひろ「ふふっ……それじゃあプロデューサーさん。また今日、事務所で。遅刻しちゃだめですよ?」

ちひろ「私……あなたが来るまで、仕事が手に付きそうにありませんから」

ちひろ「いつもの場所でいつものように、いつだってあなたの事、待ってますから」

ちひろ「だから…………いつまでも、会いに来て下さいね?」

P「……ええ。そこにあなたが居てくれるなら」





ーー同日正午、起床した千川 ちひろは自身が人生初の寝坊をした事を悟り一人頭を抱える羽目になるのだが、それはまた別のお話……

おしまい。

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