梨穂子「上崎さんに監禁されちゃった…」(139)

梨穂子「……」

梨穂子「ん…むにゃ」

梨穂子「……」

梨穂子「はっ!ここは一体?」

上崎「気がついた?」

梨穂子「あなたは…たしか小学校で一緒だった…」

梨穂子「上島さん!」

上崎「上崎です」

梨穂子「そ、そうだよね!ごめんね上崎さん」

梨穂子「ところでここはどこなの?誰かの部屋みたいだけど」

上崎「私の部屋だよ」

梨穂子「そうなんだぁ。お部屋におこたがあるっていいよね」

上崎「あまり使ってないんだけどね」

梨穂子「私の部室にも置いてあるんだぁ。毎日ぬくぬくできて幸せだよー?」

上崎「そうなんだすごいね」

梨穂子「えへへ。じゃあ私この辺で失礼するね」

上崎「……」

梨穂子「またね。かみさk……えっ」ジャラジャラ

梨穂子「なに…この手錠…」

上崎「帰っちゃダメだよ桜井さん」

梨穂子「ほえ?な、なんで?!」

上崎「今日から桜井さんは私の部屋から出れませんから」

梨穂子「……」ポカーン

上崎「突然だからびっくりしちゃうよね?」

梨穂子「い、意味がわからないよ?!私そろそろ家に帰らないとお母さんが…!」

上崎「ごめんね?でも仕方ないよね」

梨穂子「早く手錠外してよぉ!」

上崎「外したら逃げますよね?ダメです」

梨穂子「なんでこんな事するの?私なにも悪い事してないよっ?」

上崎「あなたにその気がなくとも…」

梨穂子「へっ?」

上崎「ううん。なんでもない」

梨穂子「うぅ…だんだん思いだしてきた」

梨穂子「部室のおこたの上にシュークリームが置いてあって…
    我慢できなくて食べちゃったら急に眠気が襲ってきて…まさかそれって…」

上崎「きっとうまくいくと思ってました。桜井さんが相手なら」

梨穂子「これって監禁だと思いますよ…?やめておいた方がいいよ…」

上崎「……」

梨穂子「今手錠外してくれれば誰にも言わないよ…?ね?」

上崎「……」

上崎「……」プィ

梨穂子「あっ、ちょっと待って!」

バタン!

梨穂子「行っちゃったよ…」

……

梨穂子「……」

梨穂子「うぅ…寒いなぁ…寂しいなぁ…」

梨穂子「もう日が暮れちゃったよ…今何時だろう…」

梨穂子「まさか本当に私を監禁だなんて…そんなこと」

梨穂子「…きっと冗談だよね?本気な訳ないよ」

梨穂子「……」

梨穂子「……」グゥ

梨穂子「お腹減ったなぁ…」

ガチャ

梨穂子「!」

上崎「桜井さん。おまたせ」

梨穂子「も、もう!いきなりいなくなっちゃうなんて!」

上崎「不安だったよね。ごめんね?
   桜井さんの為にごはん作ってたの。お腹すいたでしょ?」

梨穂子「これ…上崎さんが作ったの?」

上崎「そうだよ。私料理は得意だから」

梨穂子「……」ゴクリ

上崎「遠慮しなくてもいいよ?」

梨穂子「…じゃあお言葉に甘えちゃおうかなぁ……」

梨穂子「(せっかくだしお夕飯ごちそうになってから帰ろう)」

上崎「じゃあ今手錠を外すから…」ジャラジャラ

梨穂子「いただきます♪」

上崎「召し上がれ♪」

梨穂子「んっ…おいひぃ…」モグモグ

梨穂子「とってもおいしいよ上崎さん!」

上崎「……」ニコニコ

梨穂子「本当に料理上手なんだね~羨ましいなぁ♪」

上崎「あっ、デザートもあるんだよ?」

梨穂子「!!」

梨穂子「シフォンケーキ!」

上崎「どうぞ?」

梨穂子「……」パクパク

梨穂子「幸せだよぉ…」

梨穂子「ふー♪とってもおいしかったぁ」

上崎「いっぱい食べてくれて嬉しいなぁ」

梨穂子「今度私に料理教えて欲しいくらいだよぉ」

上崎「私で良ければいつでも教えてあげるね」

梨穂子「本当に?ふつつかものですがよろしくお願いします♪」

上崎「はい。こちらこそ♪」

梨穂子「それじゃあ手錠も外れた事だし私は帰るね?」

ガチャ

上崎「……」ドン!

梨穂子「きゃっ!」

上崎「…つぎ」

梨穂子「な、なに?!(押し倒されて…!?)」

上崎「次私の許可無しにドアを開けたら…桜井さんにもっと酷い事するから……」

梨穂子「……」ゾクッ!

梨穂子「(なに…なに?!……上崎さん目が虚ろで怖いよぉ…!)」

……

上崎「じゃあ私はお風呂入ってくるね。いい子にしててね」

バタン!

梨穂子「結局また手錠されちゃった…」

梨穂子「……」

梨穂子「うぅ~。私バカだったよぉ…明らかに監禁されてるのにごはんに目がくらんじゃうから…」

梨穂子「せっかく手錠が外れたのにまたさっきと同じ状況に逆戻りだよ~…」

梨穂子「……」

梨穂子「はぁ…私もお風呂入りたいなぁ…」

梨穂子「はぁ…帰りたいなぁ……純一…シュナイダー…」

梨穂子「……」

梨穂子「はっ!大声で助けを呼んだら誰かきてくれるんじゃ!」

梨穂子「そうだよ!なんで気がつかなかったんだろう!よし…」

梨穂子「おーい」

梨穂子「おーい。誰かいませんかー?おーい」

梨穂子「聞こえてたら返事してくださーい。監禁されてまーす」

梨穂子「おーい」

ガチャ!ドタドタ!

梨穂子「ひぃ…!」

上崎「し、静かにして!」

上崎「そういう事するんなら…」シュルシュル

梨穂子「むぐっ???」

梨穂子「(口の中に詰められて…うそ…声出せないよぉ…)」

上崎「桜井さんが悪いんだよ?」

梨穂子「んー!んむ…」

上崎「(少し手荒だけど仕方ないよね…)」

上崎「(妹に聞かれるところだったよ。危なかったー…)」

……

上崎「それじゃあ私は学校に行ってくるから」

梨穂子「んーんー」

上崎「あっ、ごめんね?まだ口に詰めてたままだったね」シュルシュル

上崎「流石に夕方までその状態じゃあ可哀そうだから出してあげる」

梨穂子「ぷはっ」

上崎「そのかわり良い子にしててね?もし大声なんてだしたら…」

梨穂子「わ、私も学校いかないと!」

上崎「ダメだよ。何度も言わせないで。
   桜井さんはもう私の部屋から出られないの」

梨穂子「そ、そんなぁ…グスン」

上崎「私の言う事さえ聞いてれば毎日おいしいごはん食べられるんだよ?幸せでしょ?」

梨穂子「たしかに上崎さんのごはんはおいしいけどそんなの間違ってるよぉ…」

上崎「ううん。間違ってなんかないよ?ここに朝ごはん置いとくね?
   あと大事な事。用を足す時はそこにシートが敷いてあるからそこでしてね?」

梨穂子「そ、そんなっ!私はペットじゃないよぉ!」

上崎「じゃあ行ってくるね」

バタン!

梨穂子「……」

梨穂子「こんなの酷過ぎるよぉ…」

梨穂子「手錠外してくれなきゃ朝ごはんも食べれないし…」

梨穂子「うぅ…なんでこんな事になっちゃったんだろう…」

梨穂子「……」

梨穂子「……」

梨穂子「もしかして私ずっとこのままひとりぼっちなのかなぁ…」

梨穂子「…グスン」

……

ガチャ

梨穂子「…zzz」

上崎「起きて桜井さん」

梨穂子「んん…あれ…?(泣き寝入りしちゃった…もう夕方に…)」

上崎「桜井さんが寂しいと思ってお友達を連れてきてあげたわ」

ドサッ

絢辻「……」

梨穂子「!」

上崎「ふふ、っていうのは建前で別の理由があるんだけどね」

梨穂子「(この人は…純一と同じクラスの絢辻さん??)」

絢辻「んん…」

上崎「あれ?もう起きちゃうんだ。桜井さんはもっと眠っていたのに」

絢辻「…ここは」

梨穂子「絢辻さん。大丈夫?」

絢辻「あなたは…B組の桜井さんね」

上崎「気分はどうかな?絢辻さん」

絢辻「あなたは……誰かしら?輝日東校の制服着ているようだけれど」

上崎「……」

上崎「上崎です」

梨穂子「絢辻さん!大変だよ!大変なんだよぉ!」

絢辻「……」

梨穂子「上崎さんが昨日から私をかんk」

絢辻「大丈夫よ桜井さん。あなたがここでこうしていることで
   大体の状況は把握できたから」

梨穂子「へっ?そ、そうなの…?(あれ?絢辻さんってこんな人だったっけ?)」

絢辻「あなたは知らないでしょうけど学校も警察も今は大慌てよ?
   昨晩から輝日東校女生徒が失踪しているせいでね」

上崎「……」

梨穂子「そ、そんな事になってるんだ!」

絢辻「それで?上崎さん
   私をどこへ連れてきてくれたのかな?」

上崎「私の部屋よ」

絢辻「へぇ、わざわざ私の飲み物に薬を盛っておいてね。肝心な監禁場所は誰の目にもつきやすいような自宅…
   計画的犯行かと思いきやそうでもないみたいね」

上崎「……」

絢辻「それともあなたの脳ではこれが限界だったのかしら?ふふっ」

上崎「くっ…!」

梨穂子「(なんか絢辻さんが怖い…いや頼もしいって思った方がいいよねっ!)」

絢辻「同じ学校の生徒として同級生から犯罪者が出るなんてとても残念な事ね」

上崎「……」

絢辻「あなた捕まるわよ。確実に。こんな事長く続けられる筈がないわ」

上崎「こうするしかなかったの…」

梨穂子「な、なんでこんな事…」

上崎「こうするしかなかったの!橘くんをあなた達から守るには!」

梨穂子「純一を…ま、守るってどういう事なの?」

絢辻「それは罪を犯してまでするような事なのかしら」

上崎「あなた達にはきっと理解できないよ。でもそれでいいの
   橘くんが私に守られてるという事実が一番大事なんだから」

絢辻「異常ね。あなたがそうする事で橘くんが何か変わるとでも?」

上崎「なんとでも言えばいいよ。所詮今のあなたはそうやって私に口答えすることくらいしかできないんだから」

梨穂子「……」オロオロ

絢辻「……」

上崎「違う?そうでしょ?これ以上耳障りな事を言うと口に何か詰めこんじゃうからね」

梨穂子「もうやめようよ…こんなんこと」

上崎「やめないよ。あなた達が悪いんだよ?私の忠告も聞かないでそんな事するから」

梨穂子「絶対おかしいよ…こんなの」

上崎「そう悲しまないで。食事も三食だしてあげるし私が許す範囲なら何をしても構わないから」

絢辻「そうやってあなたの監視下で一生を終えろって言いたいわけね?こんな閉ざされた狭い空間で」

上崎「……」

絢辻「馬鹿馬鹿しい…異常者の考える事は理解できないわ」

上崎「……」

バタンッ

絢辻「ふふっ、怒らせちゃったみたいね」

梨穂子「あ、絢辻さん…」

絢辻「無事で良かったわね桜井さん。まぁこの状況を無事と呼ぶかどうかは別としてだけど」

梨穂子「あ、ありがとう…それよりも絢辻さん」

絢辻「ん?」

梨穂子「あんまり上崎さんを刺激しない方が良いんじゃ…」

絢辻「じゃあ怯えて言いなりになってた方が良かった?」

梨穂子「そうともいえないけど…」

絢辻「簡単よ。犯罪者に対して揺さぶりをかければ誰だって精神的に追い詰められる
   自覚してる以上後ろめたさは誰だって感じているんだから

梨穂子「えっと…言ってる事が難しくて…それってどういう意味があるの?」

絢辻「隙が生まれるんじゃない?確証はないけど、そうすればここから脱出できるかもしれないわ
   外部の人間が彼女の異変に気づいてくれるのであれば最上の成果ね」

梨穂子「なるほど~」

……

ガチャ

上崎「ごはんの時間だよ」

梨穂子「わぁ~♪」

絢辻「(よくもまぁこの状況でそんな眩しい笑顔が作れるわね…
    既に餌付けでもされてるのかしら…)」

上崎「今日はカレーライスだよ♪召し上がれ~」

梨穂子「あれ?ごはん一人分しか…」

絢辻「(ふーん。そう出る…か)」

上崎「絢辻さんのはないよ。自分の胸に聞けば分かるよね?」

上崎「私の前でごめんなさいが言えたらごはん食べさせてあげるね」

絢辻「……」

上崎「どうするの?絢辻さん」

絢辻「上崎さん」

上崎「はい?」

絢辻「最初から私の分を用意して欲しいとは一言も言ってないんだけど
   ひょっとして仕返しのつもりなのかしら?発想が幼すぎて憐れみの気持ちが芽生えてくるわね」

上崎「…くぅ!」

絢辻「わざわざ気を使って頂いて申し訳ございません。誘拐犯の方に気を使われる覚えはございませんので♪」

上崎「そうして強がってればいいよ!いつかあなただって…!」

バタンッ!

……

梨穂子「絢辻さん…」

絢辻「私に遠慮することないわ、あなたは食事を摂った方がいいわよ」

梨穂子「ううん。絢辻さんが食べないのなら私も食べれないよ」

絢辻「なぜ?」

梨穂子「絢辻さんがまだ眠ってた時上崎さんがお友達を連れてきたって私に言ったんだ」

絢辻「皮肉でしょ」

梨穂子「上崎さんはそのつもりで言ったのかもしれないけど…私ね?実は心の底では本当に嬉しかったんだ
    だって…すごく寂しくて…不安で……ひとりぼっちで…」

梨穂子「もちろん認めちゃいけない事なんだけど…私は絢辻さんが隣に来てくれて本当にほっとしてるよ?
    うまく言えないけど、私達は一心同体だもん。絢辻さんが食べないなら私だって食べるの我慢するよ」

絢辻「……」

絢辻「まぁ前提として手錠が外れないと食事も摂れないしね」

梨穂子「あっ、そうでした♪」

絢辻「なにはともあれここから脱出することね。二人で力を合わせて」

梨穂子「うん!そうだよねっ」

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