―放課後―

三浦「やっと終わったわー」

由比ヶ浜「おつかれさま」

海老名「でも優美子、ほとんど寝てたでしょ？」

三浦「だってやってらんないっしょ」

由比ヶ浜「まぁそーだよねー」

葉山「おつかれ」

戸部「おつかれっすー」

三浦「んー」

葉山「俺は一回戸部と部室に行くからさ、先に行っててくれ」

由比ヶ浜「あっ、あたしもゆきのん…じゃなかった、奉仕部の部室行って雪ノ下さんに声掛けてから行くよ」

三浦「わかった、じゃあ姫菜、行くよ」

海老名「うん、じゃあ校門でねー」

葉山「わかった」

戸部「マッハで行くから！」

―部室―

由比ヶ浜「ゆきのーん！」

雪ノ下「あら、由比ヶ浜さん、今日は用事があったのでは？」

由比ヶ浜「そうだけどね？一応ゆきのんに会っておこうかなって」

雪ノ下「そう、面倒なだけでしょう」

由比ヶ浜「ううん、大丈夫だよ」

雪ノ下「悪かったわね」

由比ヶ浜「全然！！だってゆきのん友達じゃん！」

雪ノ下「そ…そう…ね」

由比ヶ浜「そうだよ、だから普通だよ」

雪ノ下「そう、ありがとう」

由比ヶ浜「だからお礼とかいらないって！それより明日はちゃんと来るからね！」

雪ノ下「わかったわ」

由比ヶ浜「それじゃ、もう行かないと、優美子と姫菜が待ってるからさ」

雪ノ下「それじゃあ」

由比ヶ浜「うん、また明日ね」

雪ノ下「また…明日」

由比ヶ浜「ばいばーい！」

―校門―

由比ヶ浜「おまたせー！」

三浦「あ、遅いし！」

由比ヶ浜「ごめんね？ちょっと話しちゃって」

三浦「ったく…まぁ別にいいけど」

由比ヶ浜「ありがとうね、優美子」

三浦「ふん」

海老名「まぁまぁ」

葉山「よし、そろったし、行こうか」

三浦「んー」

戸部「今日はなににしようかなー」

三浦「はぁ？チョコとショコラに決まってるっしょ」

戸部「でたー！」

由比ヶ浜「優美子ホントそれ好きだよねー」

三浦「当たり前っしょ、つーかそれ以外になくなくない？」

戸部「わかるわー」

葉山「でも同じじゃないか」

三浦「違うっしょ？全然」

葉山「そうか？」

三浦「隼人ぜんっぜんわかってないわー」

葉山「わかるようになるよ」

三浦「じゃあ隼人も同じの頼めし」

葉山「えぇ？」

ﾊｯﾊｯﾊｯ

―教室―

八幡「…」

俺「…」

八幡「…」

俺「…」

八幡「な、なぁ」

俺「…え？」

八幡「これ」

俺「あ、おう」

八幡「…」

俺「…」

八幡「あー、悪い」

俺「…？」

八幡「そろそろ、部活行くわ」

俺「おう、手伝ってくれて、ありがとな」

八幡「いや、平塚先生が言ったから」

俺「そ…そうか」

八幡「…」

俺「…」

八幡「じゃ、じゃあ」

俺「…お、おつかれさま」

八幡「お…おう」

俺「…」

俺（比企谷、美女に囲まれて羨ましいな）

俺「…」

俺（もうちょい、終わらせて帰ろっかな）

八幡「うぃーす」

雪ノ下「あら、こんにちわ」

八幡「ん」

雪ノ下「今日は少し遅かったのね」

八幡「ちょっと雑用を」

雪ノ下「そう」

八幡「…」

雪ノ下「…」

八幡「な、なぁ」

雪ノ下「なにかしら」

八幡「いや、悪い、忘れてくれ」

雪ノ下「…そう、気味が悪いわね」

八幡「すまんな」

雪ノ下「別に謝れと言ったわけじゃないわ」

八幡「そうか」

雪ノ下「ええ」

八幡「…」

八幡（アイツはまだ教室で作業してんのか、一人で）

八幡（あいつに比べたら、俺は案外ボッチじゃないのかもしれん）

八幡（友達はいないが）

雪ノ下「…？なにを見ているの？私の顔になにかついてるかしら」

八幡「あ、いや」

雪ノ下「本当に意味がわからないわね、顔でも洗ってきたらどうかしら」

八幡「あぁ、そうする」

雪ノ下「そう」

―教室―

俺「…」

俺（終わんねない）

俺「…」

俺（まぁ、別に帰ってもやることないし、いいけど）

俺「…」

俺（あ、そういやまだ先生いるのか？）

俺「…」

俺（ま、まぁいいか、別に明日渡せば）

俺「…」

俺（そういや、さっきの比企谷の会話、もしかして小学校以来じゃないか）

俺（親が死んで、一人暮らし初めてからもうずっと会話らしい会話してないし）

俺「…」

俺（…無駄なこと考えてないで、とっとと終わらすか）

平塚「失礼」

俺「あ、どうも」

平塚「なんだ、比企谷の姿が見えないが、君一人かね？」

俺「あ、はい」

平塚「まったく、あいつは…」

俺「いえ、か…彼は手伝ってくれましたし…た、助かりました」

平塚「そうか、比企谷にも君くらい素直さがあればいいのだがな」

俺「いえ、別に俺はそういうんでもないんで…」

平塚「…私も手伝おうか？」

俺「だ、大丈夫ですよ…もう少しで終わりますし…」

平塚「そうかね」

俺「はい…なんで、はい」

平塚「…うむ、わかった」

俺「終わったら…届けに…行きますんで」

平塚「うむ、すまんな」

俺「い、いえ、仕事ですから」

平塚「それじゃ、私は職員室に戻るぞ」

俺「はい、おつかれさま、でした」

平塚「うむ」

俺「…」

俺（また会話してしまった、今日は珍しいな）

俺「…」

俺（五時半…か）

俺「…」

俺（あと三、四十分で終わるかな）

俺「…」

俺（ま、暇つぶしだし、いっか）

俺「…」

俺（夕飯、なににすっかなぁ…）

―職員室―

俺「失礼、します」

平塚「お、君か」

俺「あの、これ」

平塚「ん、確かに受け取った」

俺「それじゃ」

平塚「少しと言った割には時間がかかっていたようだが」

俺「あ、少しトイレに行ったりしてたんで」

平塚「そうか、それじゃあご苦労」

俺「あ、はい」

平塚「気をつけて帰りたまえ」

俺「失礼しました」

平塚「うむ」

俺「…」

俺「…」

俺（自炊すんのめんどくさいけど、今月はちょっと貯金したいしな…）

俺「…」

俺（しょうがない、スーパー寄るか）

―校門―

八幡「あ…」

俺「ん？あ…」

八幡「お、おう」

俺「うん、さ、さっきはありがとう」

八幡「いや、俺途中で抜けたし」

俺「いや、助かったよ、ホント」

八幡「そうか」

雪ノ下「…？誰かしら」

八幡「あぁ、同じクラスの」

雪ノ下「そう、あなたにも気にかけるような人間がいたのね」

八幡「それどういう意味だよ」

雪ノ下「深い意味はないわ」

八幡「そうか」

俺「あ、俺行くわ」

八幡「そうか」

俺「じゃ」

八幡「おう」

俺「えーっと…そっちの」

雪ノ下「そっちではないわ、雪ノ下よ」

俺「あ、失礼、それじゃあ雪ノ下さんも」

雪ノ下「別にあなたに挨拶されるいわれはないのだけれど」

俺「す…すまん」

雪ノ下「別にいいわ」

俺「それじゃあ」

俺「…」

俺（比企谷マジで羨ましいぜ、まぁアイツはイケメンで、俺は顔も普通だし、しょうがないか）

俺「…」

八幡「…」

雪ノ下「なにを立ち止まっているのかしら」

八幡「あ、いやぁ」

雪ノ下「私やあなたよりも孤独な人を目の当たりにして驚いているのかしら」

八幡「いや、別に」

雪ノ下「隠さなくていいわ」

八幡「…」

雪ノ下「あなたは私と話せるのだから、もう少し幸せだということに自覚を持ちなさい」

八幡「…そうかもな」

雪ノ下「珍しく、認めるのね」

八幡「あぁ」

雪ノ下「…」

八幡「…」

雪ノ下「行きましょう」

八幡「え、一緒にか」

雪ノ下「同じ方向なのだからいいでしょう」

八幡「それならアイツも居てよかったんじゃ」

雪ノ下「…それもそうね」

八幡（アイツは気を使ったんだろうな、それは多分コイツもわかってるんだ）

八幡「…」

―自宅―

俺「ただいまー」

俺（と言っても、誰もいないんだが）

俺「…」

俺（ネギ切って、湯豆腐にしよう）

俺「…」

俺（人と飯食ったのも、もうあの日が最後か）

俺「…」

俺（まぁしょうがないよ、死んじゃったのは）

俺「…」

俺（挨拶しないと）

ﾁｰﾝ

俺「ただいま、お父さん、お母さん」

俺「…」

俺「今日な、久しぶりに人と喋ったんだ」

俺「比企谷って奴が居てな、少しだったけど、嬉しかったよ」

俺「イケメンなんだよ、羨ましいよね」

俺「でも、俺はお父さんとお母さんにもらったこの顔、大好きだからさ」

俺「…ほんと、なんで死んじまったんだよ……」

俺「会いたいなぁ…」

俺「…」

俺（じゃあ、飯にしよっかな）

俺「いただきます」

俺「…」

俺（うまいな、ポン酢っていいよね）

俺「…」

俺「…」

俺「…」

俺（ベランダ、出てみようか）

俺「…」

猫「なお」

俺「お、またきたのか」

猫「にゃぁ」

俺「待ってみ、缶詰もってきちゃっから」

猫「…」ｶﾘｶﾘ

俺「待て待て…ほい」

猫「…」

俺（よく食ってんな）

俺（コイツも一人なのか？いっつも一人で来るし）

猫「……にゃお」

俺「なんだ」

猫「…」

俺「いちいち俺の顔見なくていいよ」

猫「…」

俺（まだ小さいのに、こいつも一人なのかな）

猫「にゃん」

俺「おう、食ったか」

猫「…」

俺「あっ…」

俺（行っちゃったよ）

俺「…」

俺（寝ようかな）