姫子「おばあちゃんになっちも一緒におろうね」 (83)

ID:rD4lIQPyO

煌「……明日は同窓会ですか」

煌(成人式は中学校の同窓会が多いから……)

煌(大学を卒業する年、その年に高校の同窓会をしようと……)

煌(提案したのは先生でしたっけ?)

煌「……」

煌「懐かしいですね……」

煌(……姫子……)


『戦力外:鶴田姫子』


煌「……今、何してるんでしょう……」

煌(そもそも、明日……彼女は来るんでしょうか……)

しえ

「――新道寺女子、元3-Bの皆さま、本日はお集まりいただきましてありがとうございます」

「――それでは……かんぱーい!!」

\かんぱーい/

煌「ふふ、お久しぶりです」

煌「え、そんなに変わってないですかね……?」

煌「進路ですか……?地元で公務員ですよ」ハハ

煌「あ、長野の方です」

煌「……」キョロキョロ

煌「え、あっ……分かっちゃいますか」

煌「そう……姫子は……今日……」

煌「え、一応来る予定?」

煌「あ、あの……ちょっと失礼しますね」

煌(姫子……っ)タタタッ

――私達が2年生の時、白水哩元部長がプロから指名を受けた。

姫子「おめでとうございます、先輩」

哩「ありがとう、ばってん、こっからが本当のスタートやけん……」

姫子「はいっ」

哩「なぁ、姫子……」

哩「来年、待っとるけんね」

姫子「……!」

哩「また、高校ん時みたく、追っかけて来てくれっか……?」

姫子「……もちろんです!ぶちょー!!」

煌「……」

ふんふむ

――翌年、姫子は先輩と同じチームから指名を受けた。

姫子「花田!!!やった!私、やったよ!」

煌「姫子、おめでとう」

姫子「ありがとう、花田」

prr

姫子「あ、先輩から電話……」

煌(……本当に……すごいな、二人とも……)

煌(私は競技麻雀はもう、終わりかな……)

姫子「はい、はい……先輩!また、また一緒に――」

しえ

――それから、新聞、雑誌、ネット……私は姫子の動向を追っていた。

『破られたことのない絆“まいひめ”降臨!』

『まいひめの“倍返し”で逆転!!』

煌(お二人とも、すごいです)

――でも、それは最初の1年くらいまでで……次の年、原村和や大星淡など新しい才能が入るころには“まいひめ”は下火になっていた。

煌(……)カチカチ

煌「これは……」

『それは絆か、足枷か……白水哩、不調の秘密は……』

 今春プロ5年目を迎える白水哩。期待ともに入団した彼女の1年目は、宮永照には劣るものの、ルーキーとしては上々であった。
2年目は、後輩、鶴田姫子の入団、そして“まいひめ”の再結成があり、高校時代プロにも破られなかったという絆は、最初はプロでも確かに通用した。
 それが今、壁にぶち当たっている。
 1年目、2年目の白水の戦い方の変化を見れば分かるが、2年目の白水は1年目の堅実さは影を潜め、無理に打っている印象が強い。
これは牌譜にも表れている(付録参照)。それは3年目、4年目でも変わらない。
 高校時代はその無茶が通用したかもしれない。だが、ここはプロだ。
高校でトップクラスの成績を残した者が集まる厳しい世界。そう簡単に通用するものではない。案の定2年目の後半から白水の成績は悪化した。
 この白水の成績の悪化は2年目のジンクスというものではなく、“まいひめ”の復活にある。
 白水は高校時代から個人戦と団体戦で打ち方が異なっていた。いや、高校2年生から団体戦の打ち方を変えたのである。
これはまさにプロ2年目と同じである。この理由はいわゆる“まいひめ砲”にある。
 二人の牌譜を並べたデータがある(付録参照)。同じ局において、鶴田の翻数が白水の倍になっている箇所が多くみられる。
これが“まいひめ”の力ではないか、というのがアナリストの見解なのである(詳しくは付録参照)。
 これはすなわち、鶴田の成績は白水に左右される、ということになる。それに伴い、白水の負担も増大する。その負担というのは打ち方ではないかと思われる。
無茶な打ち方をしなければ、“まいひめ砲”は発動しない。それが白水不調の原因なのだ。
 ここは才能が集まるプロの世界。“まいひめ”は絆であった。だが、同時に枷でもあった。
 白水のプロ人生はまだ5年目、いや、もう5年目である。
大星、原村をはじめとする新しい才能の活躍し、毎年新たな才能が入団する中で、絆と心中するか、枷を外すか、白水の動向に注目したい。
                      (▲▲スポーツ)

煌「姫子……」キョロキョロ

煌(やっぱ、来てない……かな)

煌(はぁ……)カラン

煌「夜風が気持ちいい」

姫子「そやねー」

煌「え?」

姫子「ん?」

煌「姫子?」

姫子「久しぶり、花田。遅うなった」

煌「……」

悲しいなあ

姫子「夜風は確かに気持ちよかけど、飲みたか~」

煌「……」

姫子「中、入らん?」

煌「う……うん」

姫子「行こ」

「わー鶴田やん!」

「久しかねー」

姫子「みんな元気そうやね~」カンパイ

煌(姫子……笑ってる……)

姫子「な、花田」コソコソ

煌「ん?」

姫子「花田って今日、ホテルとか?」

煌「そうだけど……」

姫子「やったら……」

姫子「二人で抜け出さん?」

煌「え……」ドキッ

姫子「ねっ?」

煌「うん……、いいよ」ドキドキ

煌(ずるい……姫子は、ずるい……)

煌(その顔は反則ですよ……)

 
姫子「タクシー……ここで呼ぶと目立つか」

煌「じゃあちょっと歩こうっか」

姫子「そやね」

煌「……」

姫子「……」

煌「……」

姫子「花田は……」

煌「え……」

姫子「何も聞かんね」

煌「……」

すばらの台詞に違和感

 
姫子「花田んことやし、知ってて何も言わんのやろ」

煌「……」

姫子「さっきな、やっぱ知らん人、たくさんおるし、普通に聞かれよったんよ」

姫子「プロはどう?ってさ……」

煌「……」

姫子「花田」

煌「ん」

姫子「花田は知っとるやろ」

姫子「私が戦力外になったこと」

煌「……うん」

姫子「やっぱり」

 
 

 
煌「……」

姫子「私、そげんショックやなかったんよ」

煌「え……」

姫子「2年目の終わりん方では、もうそげん予感あったし」

煌「……」

姫子「花田は知っとるやろ、私達の力んこと」

煌「……うん」

姫子「絆自体は、破られたことはなかよ、ばってん……」

姫子「無理が来とるって、分かっとったし」

煌「……」

姫子「タクシー、呼ぼっか」
 

 
煌「――ホテルまで……」

ブロロロロ

姫子「……先輩って強いやろ」

煌「うん」

姫子「私が、そいの足ば引っ張っとった」

姫子「先輩は私にそげんこと思わせたくなかやったらしかけど」

煌「……」

姫子「……」

煌「姫子……」

姫子「うん?」
 

 
煌「これからどうするの?」

姫子「そやね……」

姫子「職員として残らんかって言われたけど、断った」

姫子「地元にも帰りたくなか」

煌「……じゃ」

煌(じゃあ、私のところに来る?なんて……そんなこと……)

姫子「な、花田」

煌「うん?」

姫子「地元って佐賀ってだけやなかよ」

煌「え……」

姫子「ここも、そう」
 

>>27
原作漫画だとすばらは姫子にだけはタメ口だよ

 
姫子「さっきプロはどうって聞かれた言うたやろ?」

姫子「……やっぱそういうんは辛かよ」

煌(じゃあなんで同窓会なんて……)

姫子「やけど、今日来たんは……」

キキッ

「2170円です」

煌「……は、はい」アセアセ

姫子「はい」サッ

「……っと、330円のお釣りやね」

姫子「ありがとうございました」スタッ
 

 
煌「姫子」タタタッ

姫子「シングル?」

煌「え?あ、あぁホテル……そうだよ」

姫子「ま、シングルでも二人で寝れっか」

煌「ちゃんとフロントの人に言うよ」

姫子「花田は真面目やね」
 

 
煌「部屋開いててよかったね」

姫子「そやね」

煌(でも……ダブル……)

姫子「二人で寝っことは変わらんけどな」ニヤニヤ

煌「べ、別に普通でしょ」ドキドキ

姫子「ふふ、どうやろね」

煌(あぁ……もうっ、おさまれ私の心臓)

姫子「なぁ花田~」

煌「はい?」

姫子「飲み直さん?近くにコンビニあったやろ」

煌「うー」
 

 
姫子「ん?もしかして花田、お酒だめ?」

煌「だめってわけじゃないけど……」

姫子「そういえばさっきウーロン茶ばっかやったな」

煌「……」

姫子「買ってくる」

煌「一緒に行く」

姫子「一人で大丈夫」

煌「近くって言っても夜だし、物騒だもん」

姫子「仕方なかね、じゃあ行こっか」
 

うーろんてぃー

 
煌(タクシーの中で……姫子は何を言い掛けたんだろう)

煌(地元も学校も嫌なのに……)

姫子「花田ー、なんか食べたかおつまみある?」

煌「……なんでも」

姫子「じゃあてきとーに買ってっか」ポイポイッ

姫子「花田?」

煌「は、はい??」

姫子「さっきっからぼーっとしとっけど大丈夫?」

煌「え、あ、はい!!?」

姫子「なんそれ、面白」

煌「も、もう……」
 

 
煌「あ、さっきのタクシー分」

姫子「あんなんよかよ」

煌「私が嫌だから、払わせてください!」

姫子「ほ~んとに、花田は変わらんね」

煌「っ」ドキッ

姫子「真面目でやさしか」

煌「も、もう、褒めても何もでないから」

姫子「は~い」
 

 
姫子「じゃ、改めて……」

「かんぱ~い」

煌「んっ」ゴクゴク

姫子「あーあーあー、花田ー、無理して飲まんでよかけんね?」

煌「んー」

姫子「……花田は、こいからどうするん?」

煌「地元で公務員をしながらたまーに畑のお手伝いかな」

姫子「長野におるんか……」

煌「……」

姫子「遠いなぁ……」

煌「……」ドキッ
 

 
煌(あーもうっ……とっくの昔に封印したのに……)ドキドキドキドキ

姫子「私、こいからどげんしよ……」

煌「え……」

姫子「再就職いうてもそげん簡単やなかもん」

煌「まぁ、不況だしね……」

姫子「はぁー」ゴクゴクゴクゴク

煌「……」グビ

姫子「な、花田……」

煌「ん?」
 

しえ

 
姫子「花田は見たかわからんけど」

姫子「……私と先輩の間にあったんは、絆やなくて……枷やったんと思う」

煌「……!」

姫子「そげんことが何かん記事に載ってて、そいば見た時、あぁそやなーって心から思ったんよ」

煌「……」

姫子「やけん、戦力外って言われた時、なぁんも思わんかった」

姫子「そうやろなーって思った自分がおった」

姫子「……まぁ他の人になんか言われんのはちーっときつかとこあっけど」

煌「……先輩は?」

姫子「私のせいやって自分ば責めとった」

姫子「……そげんことなかのにね」

煌「……」
 

 
姫子「あん記事見たんが、春やったから、この1年はずーっと申し訳なか気持ちやったなぁ」

煌「え……」

姫子「先輩が自分ば責めて、努力して、でも通用せんで……」

姫子「そげん様子が……痛々しくて、苦しくて……もう見てられんかった」

煌「……そっか」

姫子「……やけん、今、先輩は自分ば責めて落ちこんどるけど、こいでよかったんよ」

姫子「もう……私という枷はなかけん」グビグビ

煌「……」

姫子「……本当は地元にも、学校の友達にも会いたくなかったんよ」

姫子「やけど……花田に会いたかったんよ」

煌「……え」
 

 
姫子「花田なら……花田なら分かってくれっと思ったから」

煌「姫子……」ギュッ

姫子「ずっと、ずっと苦しかった……先輩がもがいとるのに、私は何も出来んで……足ば引っ張って……」

姫子「私が、私のせいやのに、先輩は自分ば責めて……」

姫子「……こん絆……永遠やって……信じとったけど……」

煌「……姫子」

姫子「……私、最低な女やなぁ」

姫子「1番大切やった人、私、いっつも支えられん」

姫子「あげん弱っとっても、私はいっつも見とるだけ……なんもできんで、支えられてばっかり」

煌「……」
 

 
姫子「やっぱ、絆やなくて、枷やったんやなぁ……」

姫子「そげんこと、自覚しよったら、もう自分が恥ずかしかで、消えたかよ」

姫子「はぁ……」

煌「姫子……」

煌「姫子……私は……姫子が何もしてなかったって思わない」

煌「姫子自身、すごく頑張ってた」

煌「麻雀だけじゃない、実は抜けてる先輩をしっかり支えてたよ」

姫子「……」

煌「……私、見てたもん……ずっと、見てたもん……」

煌「……」ギュッ
 

 
姫子「……」

煌「……ずっと、姫子のこと、好きだった……」

煌「……だから消えたいなんて言わないで」

姫子「……」

煌「……」

姫子「……知っとった……」

煌「え?」

姫子「私、花田ん気持ち、知っとった」

姫子「知っとったけん、会いたかった」

煌「……」

姫子「……甘えたかった、こげん自分ば認めてくれっ人ば欲しかった」

姫子「花田ん気持ちに付け込んで……最低やろ、私」
 

 
煌「……どんな理由であれ……」

姫子「……」

煌「姫子に必要とされる……そんなすばらなことは、ないよ」

煌「最低でもいいよ」

姫子「……」

煌「……私も……こんな日が来ればいいなって、本当は思ってたんだ」

姫子「え……」

煌「私も、姫子が傷付いてるところに付け込んでる……だから……同じだよ」

姫子「……花田」
 

 
煌「ごめんね、姫子」チュッ

姫子「ん……」

煌「んちゅ……んっ……」

姫子「んんん……っ、はなだ……」

煌「……姫子……好き……」

姫子「……んっ……はな、だッ……」
 
煌「姫子……っ、姫子……」チュッ

 

 

 
 



煌「……ねぇ、姫子」

姫子「ん」

煌「一緒に長野に来ない?」

姫子「え……」

煌「長野だったら、姫子のこと知ってる人少ないし」

煌「麻雀だって、あの年が異常だっただけで、そんなに盛んじゃないし」

姫子「んー」

煌「いや?」

姫子「ううん、嬉しかよ」
 

 
煌「……」

姫子「花田は、優しかね」

煌「……優しくないよ」

姫子「ううん、優しか」ギュッ

煌「……」ギュッ

姫子「ありがとう……大好き……」

煌「……姫子」ギュッ

姫子「……」

煌「姫子、姫子……」
 

 
姫子「どげんしたん?そげん私ん名前ば呼んで」

煌「……消えないで、消えちゃ、やだよ……」

姫子「……花田には何でもお見通しやね」

煌「……姫子が消えたら、私も消えるよ」

姫子「そいはだめだよ、花田ば巻き込みたくなか」

煌「だったら……、私の為に生きてよ」

姫子「……また、誰かん重荷になるんは嫌」

姫子「好きな人ならなおさら嫌や」

煌「……好きな人だから背負いたいよ」

姫子「……」
 

しえ

 
煌「……」

姫子「ありがとう、荷物取りに行くけん、先に行って」

煌「……」

姫子「大丈夫、消えたりせんよ」

煌「姫子……」

姫子「やけん、待っとって」

姫子「お願いやけん、ね?」

煌「……うん、待ってるから!ずっと……ちゃんと……待ってるよ」
 

姫子ー姫子ー

 
煌(……あの時……手を放さなければよかった)

煌「はぁ……あれから3年か……」

煌(白水先輩は、半年以上落ち込んでいたらしいけど、今じゃしっかり第一線で活躍してる)

煌(その活躍っぷりはまいひめ足枷説が正しいと証明しているみたいだ)

煌(素直に喜べないのはなんででしょうね)

煌「はぁ……」

「花田ちゃん、ため息ばっかつかないの。今日は新入職員がくるんだからね」

煌「すいません」
 

 
煌(3年……か)

煌(姫子は来なかった……)

煌(学校にも、家にも、寮にも……姫子はいなかった)

煌(消えちゃった……?ううん、私は姫子を信じたい)

煌(だから……待ってる……)

「ほら、来たよ」パチパチ

煌「……っ!」

姫子「鶴田姫子です、右も左もわからないですが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」

煌「……姫子……」ポロポロ

 
 

すばらです

 

姫子「花田、久しぶり」

煌「……ばか」

姫子「花田にバカとか言われるん、なんか新鮮やね」

煌「何言ってるの、もう……」

姫子「花田、私ね……やっぱ支えられるだけやダメやって思ったんよ」

煌「……」

姫子「やっぱそいってどっかで壊れっと思ったんよ」

姫子「やけん、ちーっとでよかけん、花田と肩ば並べたか……」

姫子「いや、そげんとこまでせんと、一緒におられんって思ったんよ」

煌「そんなこと……ないのに」
 

 
姫子「……こいは自分ん中んケジメ」

姫子「3年間ばり勉強した」

姫子「高卒やし、勉強得意やなかやし、やけど……」

姫子「頑張れたんは、花田が待っとるって信じとったから」

煌「……姫子」

姫子「ありがとう、待っとってくれて」

煌「遅いよ、ばか……すっごく待ったんだからね」

姫子「ごめん」

煌「だけど、嬉しい」

姫子「花田……」
 

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