麻倉葉「魔法少女・・・・・・?」(761)

 

マミ「よし、と……今日の魔女退治はここまでかしらね」

マミ(少し遅くなっちゃったかしら、家まで近道していったほうがよさそうね)

マミ「確か……この墓地の辺りを通り抜けるとすぐに……」

葉「なあ、何をそんなに急いでるんだ?」

マミ「!」

マミ(何……この人、こんな墓地で何してるの?)

葉「ん、ああ……すまん。何だかすげぇ急いでたから気になってつい呼び止めちまったんよ」

マミ「……もう夜も遅いから、早く家へ帰ろうと思ってただけよ」

葉「そっか、悪いことしたな」

マミ「あなたこそ、こんな時間にこんなところでなにをしているのかしら?」

葉「オイラは……んー、何もしてねえ。ぼーっと星を眺めてた」

マミ「ほ、星……?」

葉「お前も見てったらどうだ?慌てて走ってもいいことねえぞ」

マミ「……ごめんなさい、ちょっと急いでるの」

マミ(変な人……あんまり関わるべきじゃないわね)

翌日、学校

マミ(何だったのかしら……昨日の人)

教師「今日は皆さんにお知らせです、前々から言っていたこの学校に体験入学してくる人のことですが……」

教師「一人が私たちのクラスに入ることになりました、私から紹介しますね」

マミ(あんな人、今まで見たことなかったし……年は私と同じくらいだったけれど……)

教師「じゃあ麻倉くん、入ってください」

葉「…………」

マミ「え…………?」

教師「出雲出身の麻倉葉くんです、体験入学なので短い期間ですが仲良くしてくださいね」

マミ「あ、あなた!」

教師「どうしました、巴さん?もしかして知り合いですか?」

マミ「昨日の夜に家の近くにある墓地で……」

葉「…………」

葉「そんなとこ、オイラ行ったことねえ、多分初めましてだと思うぞ」

マミ「なっ……!?」

放課後

マミ「…………」

マミ(あの転校生、転校初日から全部寝てたわね……にしても)

マミ「昨日会ったのは間違いなく彼なはず……見間違いなわけもないし」

マミ「…………」

マミ「…………よし」

CD屋

マミ「…………」

マミ(よし……って、何で後を尾行してるの?これじゃ完全にストーカーじゃない……)

葉「ああ……やっぱりボブはいいな……」

マミ「…………」

マミ(何やってるのかしら私……もういいわ、早く帰っ……)

『助けて、マミ!』

マミ「!」

マミ(キュゥべえの声……?)

・・・

葉「この新曲欲しいなぁ……けど無駄遣いしたら……いや、でもCD一枚くらいなら……」

「ダメよ」

少年は、自分の背後から聞こえてきたその声に、全身が凍りつくのを実感した。

葉「…………」

葉「ア……アンナ…………!」

アンナ「アンタ、正門前で落ち合うって言ってたのに何勝手に帰ってるのかしら?」

葉「……すまん」

アンナ「謝りなさい」

葉「…………すまん」

アンナ「挙句の果てにはあたしの許可なしで無駄遣いをしようとしてたわね?」

葉「…………心から、すまん」

アンナ「アンタ、これから二週間おやつ抜きよ」

葉「…………うい」

「さて……じゃ、行くわよ」

葉「やっぱ、感じるか……」

アンナ「当たり前でしょ、この妙な気配……気づかないほうがどうかしてるわ」

アンナ「……まったく、面倒なことになったわね」

葉「心配すんな、なんとかなるって」

・・・

魔女結界内

マミ「キュゥべえを助けてくれたのね、ありがとう」

まどか「いえ……でも、これって一体どうなってるんですか?私たち、急に変な所へ……」

マミ「そうね、色々と訊きたいことはあるでしょうけれど……ちょっと一仕事片付けていいかしら」

さやか(へ、変身した……!?)

マミ「さあ、行くわよ」

・・・

マミ「……よし、終わったわ」

まどか「あ……元の場所に戻った……!」

さやか「助けてくれてありがとうございます、えと……」

マミ「私は巴マミ、見滝原中学校の三年生よ。ちょっと待ってね、キュゥべえの治療を……」

ほむら「そいつから離れて」

さやか「あっ……!」

まどか「ほ、ほむらちゃん!」

マミ「……なるほど、キュゥべえにけがを負わせたのはあなたね?」

ほむら「…………」

マミ「事情は分からないけれど退きなさい、無駄な争いはしたくないでしょう?」

ほむら「…………」


葉「あれ、何かもう終わっちまってるみてぇだな」

マミ・ほむら「!?」

マミ「あ、あなた……!」

葉「よっ、また会ったな」

マミ「また会ったな、って……あなた、学校じゃ初めて会ったみたいなことを……」

葉「だって何か気味悪いだろ?夜中に墓地でぼーっとしてる奴なんて……オイラ、面倒事が嫌いなんよ」

マミ「……そっちの人は?」

アンナ「…………」

葉「ああ、オイラと一緒にこっちに来てるアンナだ」

マミ(二人の転校生のもう一人ってことね)

ほむら「あなたたちが誰かは知らないけれど、この場から立ち去りなさい。ここはあなたたちがいていい場所じゃないわ」

アンナ「あたしに命令しないで、暁美ほむら」

ほむら「!」

ほむら(どうして私のフルネームを……!?)

葉「よくわかんねえけど、喧嘩はよくねえぞ。オイラ達は別にここで何かしようってわけじゃねえさ」

葉「とりあえず、今ここで何があったか教えてほしいんよ」

マミ「あなたたちは部外者だけれど……状況が状況だから仕方ないわね」

マミ「場所を変えましょうか……暁美さん、もう一度言うけれどここは退きなさい」

ほむら「…………」

・・・
マミ宅

マミ「さて、それじゃあ色々と話すけれど……信じるかどうかはあなたたちに任せるわ」

マミは魔法少女のこと、魔女のこと、契約のこと、キュゥべえのこと、それらを端的に説明する。

一通りの説明が終わった後

まどか「信じられないけれど……本当なんですね、今の話」

マミ「ごめんなさい、やっぱり信じられないわね」

さやか「でも、あたしたち実際に見ちゃったし……」

まどかとさやかは信じられない気持ちもあるが実体験のあるため信じざるを得ないと言った反応。

これはマミが予想していたものからそう遠くないものであった。

が、マミが気になっていたのは残る二人。

葉「…………」

アンナ「…………」

麻倉葉はいつものユルイ笑顔が若干引き締まり、アンナの表情も険しさを増していた。

マミ「二人はどうかしら?その反応を見るからには信用できないと思っているみたいだけれど」

アンナ「……さっきアンタの言ってたソウルジェムっていうの、見せなさい」

マミ「え、ええ……いいけれど」

壊さないようにね、と付け加えて彼女はソウルジェムを手渡した。

葉はマミから受け取ったソウルジェムを手に取るなり

葉「……やっぱ、そういうことなんか」

アンナ「…………想像以上に面倒なことになったわね」

マミ「…………?」

まどか「あの……私はマミさんの話、信じます!」

さやか「あたしも、まだちょっと驚いてるけど……助けてもらったのは事実だし」

マミ「そう、ありがとう……えっと、葉くんとアンナさんは……」

葉「ああ、オイラ達も何というか……」

アンナ「信じるわ」

マミ「え?」

アンナ「アンタの言うことは信じるって言ってるの」

マミ「ど、どうも……」

さやか(な、何かこのアンナって人……ずっと思ってたけどすげー怖い)

まどか(一緒にいる葉さんはすごく人当たりが良さそうなのに……)

時系列何時ぐらいだろう?

アンナは確かに怖い
葉はゆるいゆる過ぎるww

キュゥべえ「そういえば、まどかとさやかには助けてもらったお礼をちゃんと言えてなかったね」

キュゥべえ「改めてお礼を言わせてよ、二人とも助けてくれてありがとう!」

まどか「い、いいよお礼なんか……!」

キュゥべえ「そして……君たち二人、いや……そっちの彼女を含めれば三人かな」

アンナ「…………」

キュゥべえ「三人とも魔法少女になれるだけの素質があるみたいだ」

キュゥべえ「契約すればどんな願いでも一つだけ叶えてあげられるよ、だから」

キュゥべえ「僕と契約して魔法少女になってよ!」

今覚えばアンナに普通にツッコミを入れてたまんたって凄いな

まどか「え、えっと……」

さやか「急に言われても……ねえ?」

アンナ「嫌よ、めんどくさい」

さやか(一人だけ刹那で断った!?)

アンナ「アンタ、あたしの話を聞いてなかったの?」

キュゥべえ「?」

アンナ「あたしたちはそこの金髪の話は概ね信じるけれど、アンタを信用するとは言ってないわ」

マミ「きょ……恐山さん、キュゥべえは良い子よ?それに私の話もほとんどキュゥべえから教えてもらったものだし」

アンナ「…………」

アンナ「見えないのよ、ソイツ……覆われてるとかぼやけるとかそういう次元でなく」

マミ「え……?」

アンナ「まるで、心なんか存在してないみたいに……」

マミ「……恐山さん?」

アンナ「それに」

マミ「?」

アンナ「そんな耳から生えてる毛が伸びてるウサギ、気持ち悪いじゃない」

キュゥべえ「…………」

マミ「…………」

さやか(よくわからないけど色々と間違ってると思う)

まどか(それ……単純にキュゥべえが嫌いなだけな気もするけど)

葉(まん太がここにいたらアイツ何て突っ込むかな)

キュゥべえ「やれやれ、僕はずいぶんと君には嫌われてしまったようだね」

キュゥべえ「何か気に障ることをしたかい?だったら心から謝るよ」

アンナ「心から……そうやって今まで、どれだけの人間を騙してきたのかしら」

キュゥべえ「君がなぜ僕を嫌っているかはわからないけれど、契約したくないのなら僕はそれを強いるつもりはない」

キュゥべえ「ただ忘れないで、君たち三人には魔法少女になる才能があることを」

キュゥべえ「そしていつでも僕と契約して魔法少女になれることを」

マミ「男の子の麻倉さんはやっぱりなれないのね?」

キュゥべえ「素質はとても感じるんだけれど……根底となる性別が不適合だからね」

葉「別にオイラはそんなのしようとも思わねえさ」

霊の見えない人相手にどう動くのかなあ

マミ「とりあえず……私の話はこれでお終い、何か聞きたいことはあるかしら?」

まどか「もし……魔女を見つけたらどうすればいいんですか?」

マミ「近づかないことね、そして私にすぐ連絡すること」

さやか「キュゥべえの願いって言うのは……ホントに何でも叶うんですか?」

キュゥべえ「もちろんだよ、それは僕が保証する」

さやか「自分じゃなくて、他人に何かしてあげることでも?」

キュゥべえ「容易いことさ!」

さやか「そっか……」

葉「んー、オイラもちょっと聞いとくかな」

マミ「何かしら?」

葉「いや、その魔女ってのは必ず魔法少女が倒さなきゃいけねえのかなって」

マミ「どういうことかしら?」

アンナ「魔法少女とかいう契約を結んでない人間が魔女を倒したら何か不都合があるかっていうことよ」

葉「うん、まあそういうことだな」

マミ「……危険すぎるし、素人に魔女を倒すことなんてまず不可能よ。絶対にそんなことは…」

アンナ「不都合があるか聞いたのよ、倒せるかどうかなんて聞いてないわ」

マミ「それは別段……倒した後に出てくるグリーフシードの扱いくらいじゃないかしら」

キュゥべえ「グリーフシードは魔法少女にとっては重要だからね」

マミ「そうね、そこまでたくさんは必要ないけれど最低限は……」

葉「おお!じゃあそのグリーフシードってのをあとでちゃんとマミに渡せばいいんだろ?」

マミ「……分かってると思うけれど絶対に戦おうなんて思わないことね」

アンナ「それはあたしたちが決めることよ」

マミ「…………大丈夫かしら、ホントに」

まどか(ダメだと思う)

さやか(うん、絶対ダメだと思う)

支援

黄金の右、伝説の左だったっけ?

黄金の右なんてあったっけ?

黄金の右、幻の左じゃなかったけ

翌日、屋上

葉「はー……世界にはよくわからんことがまだまだあるんだなあ」

アンナ「アンタは学校で習う数式も分かってないでしょ」

葉「それを言うなよ」

アンナ「それより、これからどうすんの」

葉「状況は思ってたよりも結構ヤバそうだ、オイラ達で何とかするしかねえ」

アンナ「あの耳毛ウサギ、ヤバいわよ」

葉(耳毛ウサギ……)

アンナ「力がどうとかじゃない、生き物でも霊でもないみたいな……よくわからない何かよ」

葉「……ああ、それもなんとなくわかる」

葉「あ、それとアンナ」

アンナ「何よ」

葉「耳毛ウサギってセンスはさすがにどうかと思うぞ」

パーンッッッ!!

ビンタキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

>>54
アンナとハオが合った時
一発目のビンタが止められて、もう片方の手で二発目を打った時
まん太が実況してたシーン

>>55
ありがと

ほむら「一体何の相談をしているのかしら?」

葉「おお!確か昨日会った……マミとかと仲直りできたか?」ヒリヒリ

ほむら「むしろあなたのほうが誰かと喧嘩してひっぱたかれた跡があるけれど!?」

葉「ウェッヘッヘッ、これくらいいつものことだから気にすんな」

アンナ「何の用かしら、世間話をするために来たわけじゃないんでしょ?」

ほむら「少し、あなたたちに釘を刺しにね」

葉「どうしよう……やっぱすげえ痛ぇ」ヒリヒリ

ほむら(ユルイ……緊張感が……)

このゆるさにちょっと感化されるべきだな

ほむら「正直、あなたたちが何者で何を考えているのかも全く分からないわ」

ほむら「そして、なぜあなたが私のことを知っていたのかもね」

アンナ「…………」

ほむら「でも……これ以上、この問題に関わってきてほしくないのよ」

アンナ「あら、心配してくれてるのかしら?」

ほむら「勘違いしないで、余計なイレギュラーが入ってくることを望んでいないだけよ」

ほむら「あなたたちはすべて忘れるべきよ、魔法少女のことも、魔女のことも……全てね」

葉「なあ阿弥陀丸……さっき、オイラそんな本気でぶっ叩かれるようなこと言ったか?」

阿弥陀丸『アンナ殿の幻の左……久々でござったな』

ほむら(後ろのほうで何か独り言を言ってるみたいだけれど気にしない、緊張感が切れる)

アンナ「残念だけど、そういうわけにもいかないのよ」

ほむら「……何故かしら?」

アンナ「あたしのダンナがアンタたちを助けるって言ってるから」

ほむら「……ダンナ?」

アンナ「アンタの後ろでほっぺた擦ってたそいつよ」

葉「ん?おお、オイラか」

ほむら「え……え?」

ほむら(そ、そういう関係なんだ……でもダンナ……って?)

アンナ「それに、あたしたちは元々これが目的でここに来たのだしね」

ほむら「これが目的?それはどういうことかしら……?」

アンナ「…………」

葉「なあ、ほむらだったか?オイラもちょっと聞きたいんよ」

ほむら「……何?」

葉「お前、何で魔法少女なんかやってんだ?」

ほむら「……どういう意味かしら?」

葉「いや、だって普通嫌だろ?毎日死ぬかもしれねえ戦いをするなんて」

葉「マミは仕方ねえ事情があったみてぇだけど」

アンナ「交通事故よ」

葉「細けえなぁ」

ほむら「…………」

>>59
単行本12巻見返したけど黄金の右はなかったな
完全版だと変更されてるとか?

アンナって葉と会ってから霊視能力消えたんじゃなかったっけ?

葉「まあ、なんとなくその辺が気になったんだ」ヒリヒリ

ほむら「私としては腫れ上がったあなたの左頬のほうが気になるんだけれど」

葉「おお、大丈夫だぞ。気にするな」

ほむら「…………」

葉「いつ死ぬかわからねえ戦いを続けるなんてのは本当におっかねえことだ」

葉「オイラは楽に生きたいから、よっぽどの理由がない限りそんなことはしたくねえ」

葉「……お前はなんでそんな戦いをすることを選んだんよ?」

ほむら「…………」

葉「言いたくねえなら別に無理せんでもいいぞ、オイラもなんとなく気になっただけだからな」

>>69
それなら記憶違いだ
確認thx

ほむら「……とりあえず、もう忠告はした。あとはあなたたちの裁量に任せるわ」

葉「そっか、わざわざありがとうな」

ほむら「麻倉葉……恐山アンナ……お願いだから、場を乱すようなことだけはしないで」

アンナ「…………」

支援

放課後

葉「分からん」

アンナ「数式がでしょ」

葉「いや、アイツが契約した理由ってのが」

アンナ「……あんまり男が女の秘密を覗き見ようとするものじゃないわ」

葉「じゃあアンナ、お前からそれとなく聞い……」

アンナ「嫌よ、そんな面倒なこと」

葉「……だよなぁ」

アンナ「それより……まだなの?」

葉「……おっ、噂をすりゃ来たみてえだ」

阿弥陀丸『葉殿!動きがあったでござる!どうやら魔女とやらは病院に現れたとか!』

葉「病院……阿弥陀丸、案内頼むぞ」

阿弥陀丸『御意!』

・・・
病院

マミ「ここね、確かに魔女の気配がするわ」

まどか「結界の中にいるさやかちゃんとキュゥべえ……大丈夫かな……」

マミ『キュゥべえ聞こえる?そっちはどんな状況?』

キュゥべえ『まだ卵は孵化しそうにないけれど、刺激を与えるとマズイかもね』

マミ『そう……なら、魔力は控えめにしてそっちへ向かうわ』

マミ「さあ、じゃあ行きましょう」

まどか「はい!」

ほむら「待って」

まどか「あ……ほ、ほむらちゃん……!」

マミ「……ここに来て、一体何の用かしら?」

ほむら「この先にいる魔女は私が倒す、危険だからあなたたちは下がっていて」

マミ「この先には美樹さんとキュゥべえが待っているのよ?」

ほむら「彼女たちの安全は保障する、だから……」

マミ「つい先日、キュゥべえを傷つけていたあなたが今度はそのキュゥべえを守るですって?」

マミ「悪いけれど、信用できないわね」

ほむら「!」

ほむら(しまった……これは拘束の……!)

マミ「これで少し大人しくしててもらうわ、魔女を倒したらその拘束は解いてあげる」

ほむら「待って!この先の魔女は本当に……!」

マミ「……行きましょう、鹿目さん」

まどか「は、はい……」

ほむら「っ……!」

ほむら(解けない……このままじゃまた巴マミが……!)

アンナ「なんで忠告をよこしたアンタがこんな風に拘束されてるのよ」

ほむら「あ、あなたたち……!」

葉「せっかく忠告をくれたのにすまん、けど……やっぱオイラたちもほっとくわけにはいかねえんだ」

ほむら「私のことはいい、先へ行った巴マミを止めて!そして私の拘束を解除するように要請して!」

アンナ「……行きなさい、葉。こっちはあたしがやっておくから」

葉「やれそうなのか?」

アンナ「あんた、あたしを誰だと思ってるの」

葉「……だな」

アンナ「ほら、早く行きなさい」

葉「すまん、ここは任せた」

キュゥべえ「間に合って良かったよマミ!もういつ魔女が出てきてもおかしくない!」

さやか「に、人形みたいだけど……あれが魔女?」

マミ「そうね。悪いけれど一気に決めさせてもらうわよ……」

マミ「ティロ・フィナーレ!」

さやか「やった!さっすがマミさん!」

まどか「良かった……!」

まどか(すごいなマミさん……私もマミさんみたいに誰かを守れるようになれれば……!)

最強の攻撃で魔女を撃ちぬいたことで、マミを含むその場の全員が確信する。

悲劇など起こりうるはずがなかった。

シャルロッテ「!」

マミ「っ……!?」

撃ち抜かれた魔女の口から今までとはまるで違う何かが現れる。

ピエロのように滑稽な顔をした芋虫とも呼ぶべきそれは牙を剥き出しに巴マミへ襲いかかった。

マミ「あっ……!!」

マミは動かなかった、いや動くことが出来なかった。

湧き上がる死のイメージと恐怖が彼女の体を固めていた。

――――真空仏陀斬りッッ!!

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

まどか「今……何が……?」

さやか「どこからか……何かが飛んできて……!」

マミ「…………!」

何かが飛んできた方向へその場の全員が目をやる、そこには

葉「よっ」

刀を構えてユルイ笑顔を浮かべ佇む一人の少年の姿があった。

まどか「よ、葉さん……!?」

葉「良かった、まだ誰も死んでねえ」

さやか「今一体何をして……その前に何でここにいるの!?」

葉「すまん、何か今日一悶着あると思ってたからマミに張り憑かせといたんよ」

マミ「な、何を?全然気づかなかったけど……」

葉「そしたら病院で何かあったって聞いて……まあそんな感じでな」

まどか「そんな感じって……」

葉「それと、マミを止めてくれって頼まれたからな」

マミ「頼まれた……?」

葉「マミを止めてくれって、さっきそこで会ったほむらから」

マミ「あ、暁美さんが……?」

葉「多分、分かってたんじゃねえかな。そのまま戦わせたらヤバいって」

葉「そうだ、アイツの拘束解除を頼む。どう見ても悪いやつじゃなさそうだ」

マミ「わ、分かったわ……」

葉「よし、じゃあマミの奴が色々とやってる間……」

葉「こっちはこっちでふんばるとするか……阿弥陀丸!」

阿弥陀丸『応ッ!』

葉「ウェッヘッヘッ……何か久々だな、こっちは」

阿弥陀丸『それだけに拙者も昂るでござるよ』

葉「よし……行くぞ!憑依合体!阿弥陀丸!!」

まどか「憑依……」

さやか「合体……?」

葉『ふむ……自らが葉殿の刀となるのも良いが、やはり自分で刀を握るも良し』

葉『いざ参る!』

魔女は未だ死んではおらず、自らに傷を負わせた標的めがけて何度も攻撃を仕掛けてくる。

が、それを少年はすべて紙一重の所で回避していく。

葉『ふむ……この感覚、まるで巨大な大蛇と戦っているかのようでござるな。だが……』

葉『既にここは拙者の間合い!』

身にサムライの魂を宿らせた少年は既に大きく鈍っている魔女の動きを見切り

『阿弥陀流!大後光刃!!』

その必殺奥義により、勝負を終わらせた。

マミ「す、すごい……!」

アンナ「何を惚けてるのよ、あんた」

ほむら「これは……どういうこと……!」

マミ「暁美さ……どうして!あなたの拘束はまだ解いてなかったのに……」

アンナ「あたしがやったのよ、あんたが遅いから」

マミ「あ……あの拘束は強大な力を持つ魔女でさえ完全に封じるのに?」

アンナ「あたしを舐めないで、あんなの巫力を使った甲縛とほとんど変わらないわ」

アンナ「巫術とは少し勝手が違ったけれど、まあそこまで問題じゃなかったわね」

マミ「……本当に、何者なの……あなたたちは」

大後光刃は充分凄い技だと想うけどなあ

葉「すまんアンナ、遅くなった」

アンナ「いいわよ、どうせどこぞの侍が久しぶりの憑依合体で調子に乗ってたんでしょ」

阿弥陀丸『せ、拙者そのようなことは決して……!』

葉「ああ、阿弥陀丸すっげえ嬉しそうだったなあ」

阿弥陀丸『葉殿ォォォォォ!?』

葉「と、まあ良かったな。誰も怪我しねえですんだ」

マミ「……ありがとう、あなたたちがいなかったら今頃どうなってたか分からないわ」

まどか「本当にどうも……助かりました」

さやか「ていうか……刀であの魔女と戦って勝っちゃうってどんだけ凄いの?」

葉「いや、それはオイラが凄いんじゃねえんだ」

さやか「?」

アンナ「あんたたち、言っとくけどこれは貸し一つよ」

葉「いやアンナ、別にオイラはそんなつもりで助けたわけじゃ……」

アンナ「あんた、ただのボランティア精神で今の世の中で温泉宿なんか経営していけると思ってるの?」

葉「……すまん」

さやか「あの、借りを返すとかそんなんじゃないけど……何か奢るくらいのことは」

葉「オイラ、団子が食いてえなぁ」

まどか「お団子……ですか?」

葉「おお、団子はみんなで食うと旨いんよ」

ほむら「…………」

マミ「…………」

ほむら(魔女を倒したかと思えば直後にこのユルさ……分からない、この麻倉葉が)

マミ(何よりもまず、私は今日のことを反省して感謝しなきゃ……)

それぞれの思いを胸に、この一日は終わりを迎えることとなる。

彼らの胸にある思いは違えど、帰り道に手に握られていたのは等しく同じ団子であった。

ごめん、何かめちゃくちゃ目が痛くてヤバいから抜ける
もし落ちても立て直して完結させる

待ってるから
ずっと、待ってるから

翌日、昼休み、屋上

葉「……やっぱ言うべき、だよなぁ」

アンナ「何を」

葉「あのソウルジェムってのが何なのか」

アンナ「……どうなるか、分からないわよ」

葉「?」

アンナ「あの子たち、そこまで精神が強いわけじゃないわ……あの金髪の子は特にね」

アンナ「ついこの前、死ぬような戦いをして今そんなことを言われたら……壊れるわよ、確実に」

葉「……だよなぁ」

さやか「葉さん……それにアンナさんも」

葉「おお、昨日ぶりだな」

さやか「昼休みに屋上で何やってるんですか?」

葉「えーっと……なあアンナ、オイラ達なにしてるんだ?」

アンナ「アンタが風とお日様が気持ちいいところに行きたいって言うからでしょ」

葉「うん、なんかそんな感じだったみてえだ」

さやか「は、はあ……」

さやか(あの怖いアンナさんも葉さんのお願いとかは聞くんだ……)

葉「で、お前は何しに来たんよ?弁当ならもうねえぞ?」

さやか「あたしはその……何ていうか考え事をしてて」

葉「考え事?」

さやか「……二人は、もしも魔法みたいに自分の夢が叶うとしたらどうする?」

葉「…………」

さやか「自分の大切な人を、それで助けられるとしたら……二人ならどうする?」

葉「お前……それって」

アンナ「まどろっこしい言い方は止めなさい、あんたはあの耳毛ウサギと契約したいんでしょ」

さやか「…………」

さやか「本当に望んでいる人にはこういう機会は巡ってこなくて……苦しんでる人が救われない」

さやか「でも、あたしみたいな人間がそういう人たちの力になれるなら、それってすごく良いことでしょ?」

葉「けど、ただで願いが叶うわけじゃねえぞ。でっかい代償がついてくる」

葉「やったらやり返される、それと似たような感じじゃねえか?」

さやか「それでも……こんなあたしでも誰かの役に立てるなら……」

アンナ「話にならないわね」

アンナ「あんたみたいなの、あたしは心底好きになれないわ」

さやか「え……?」

アンナ「あたしは『オレが世界を救う』なんて奴はもちろん信用しないし」

アンナ「『やってやるぜ』ってガツガツした熱血マンが大キライ」

アンナ「ましてや誰かのために無償で自分を犠牲に、なんて軽口を叩くような輩なんか言うまでもない」

アンナ「だってそんな奴らに限って己の欲望むき出しで、しかも口先ばっかり」

アンナ「オレが、私がって普段調子の良いこと言ってる割には困難にぶつかるとすぐへこたれる」

さやか「…………」

アンナ「なぜかわかる?そういう奴らは結局、自意識と己の欲でしか目的を持たないからよ」

さやか「あたしは……あたしはそんなこと!」

アンナ「あんた、本当に無償で他人のために何かをするつもりでいるの?本当に、何の見返りも求めてないのかしら?」

さやか「あ……アンナさんだって、葉さんが大変な状態になれば絶対にあたしと同じことを……」

アンナ「しないわ」

さやか「!」

アンナ「仮に葉が危機的状況になったとして、あたしがそれを助けられるとしても、無理に手を伸ばすことはしないわ」

アンナ「だって、葉なら必ずそれを乗り越えられるって信じてるもの」

さやか「…………」

葉「いやぁ……何か照れるな」

阿弥陀丸『愛でござるなぁ』

さやか「あたしは……アンナさんが言ったような奴らとは違う!」

アンナ「そうね、確かにそうかもしれない。だったらあんたは自分の思うままに行動したらいいわ」

葉「元々オイラ達には無理に止めることなんかできねえしな」

さやか「葉さん……」

葉「ただ何というか、お節介かもしれんが言っておくと……あんま無理しねえほうがいいぞ」

葉「自分の容量を超える無理をしちまったら、自分が自分じゃなくなっちまう……無理ってのは本当によくねえ」

葉「オイラは無理した経験があるからよくわかるんよ」

さやか「…………」

さやか「……もう少し、色々と考えてみる」

葉「おお、それがいいと思うぞ」

・・・
病院

さやか「CD……ここに置いとくね」

恭介「…………」

さやか「あの、恭介……」

恭介「さやかは僕を虐めているのかい?」

さやか「え……?」

恭介「何で……指が動かなくなった僕にこんなものを聞かせるんだ!」

さやか「だ、大丈夫だよ!リハビリとかいろいろ頑張れば必ず……!」

恭介「治らないって言われたんだ……バイオリンはもう諦めろって……!」

さやか「!」

恭介「無理なんだ……僕の指はもう……!」

恭介「もう……魔法とか奇跡でも存在しない限り僕の指は……!」

さやか「…………」

さやか「あるよ」

恭介「え……?」

さやか「魔法も、奇跡もあるんだよ!」

・・・


葉「やっぱ、無理にでも止めておくべきだったかもしれねえな」

アンナ「アンタ、自分で無理はよくないって言ってたでしょ」

葉「うっ……」

アンナ「それに、ここからはもうあの子個人の問題よ……あたしたちが首を突っ込めることじゃない」

葉「……だな、じゃあオイラ達はオイラ達に出来ることでふんばるとするか」

阿弥陀丸『葉殿!』

葉「どうした阿弥陀丸?」

阿弥陀丸『一大事でござる!このままでは多くの者が!!』

アンナ「……ふんばらなきゃいけないこと、出来たみたいね」

葉「みてえだな」

工場

まどか「や、やめて仁美ちゃん!こんなことしないで!」

仁美「あら、どうかなさいました?」

まどか「だって……止めないと!あんなの混ぜちゃ危ないよ!」

仁美「あれは神聖な儀式、素晴らしいところへ旅立つために肉体から離れる儀式ですわ」

まどか「…………!」

まどか(い、いつもの仁美ちゃんじゃない……私が止めさせなきゃ!)

まどかは危険物となったバケツを奪い取ると、それを自分の持てる力すべてを使って表へと放り投げた。

まどか「よ…よかった……!」

仁美「…………」

まどか「ひ、仁美ちゃん……!」

その瞬間、仁美を含む工場に集まっていた人間が一斉にまどかへ襲いかかった。

狂気と呼ぶにふさわしい表情を浮かべながら。

まどか「ひっ…!」

まどか(どうして……どうして…こんなことになって……!)

そして、気が付けば彼女がいた空間はすでに魔女の結界と化していた。

まどか(こんなことになっちゃったのも……仁美ちゃんがおかしくなっちゃったことも……)

まどか「……私への罰、なのかな」

『みんなを救いたいかい?』

まどか「!」

『君だったら友達を助けられる、魔女の毒気に当てられてしまった多くの人を救うことができる』

まどか「…………」

『君がよければ、僕はいつでも君を魔法少女にしてあげられる……まどか』

まどか「…………」

まどか「……私、魔法少女に…」

その刹那、青い何かが目の前にいる魔女を斬り伏せた。

それはいつも自分が見ている人、自分の大切な友人の姿だった。

まどか「さ……さやか、ちゃん?」

・・・

さやか「あははは、いやー間一髪だったね。間に合ってよかったよかった!」

まどか「さ、さやかちゃん…それって……」

さやか「ん…どう、似合ってる?……なんてね」

まどか「やっぱり契約…しちゃったの……?」

さやか「うん…すっごく悩んで…それでも最後は自分で決めたの、強制されたわけじゃないよ」

ほむら「美樹さやか……!」

まどか「ほ、ほむらちゃん!」

さやか「遅かったじゃない、転校生」

さやか「それと……二人もね」

葉「…………」

アンナ「…………」

ほむら「麻倉葉……恐山アンナ……!」

葉「……やっぱ、そうなっちまうよな」

さやか「私なりに考えた結論、後悔なんて全然ないよ」

アンナ「…………」

・・・
某所

杏子「なによ、あんなのがいるなんて聞いてないんだけど」

キュゥべえ「ついさっき魔法少女になったばかりだからね、君は知らなくて当然さ」

杏子「せっかくこんな良い狩場だってのに……それをあんな新人に渡すのも癪だよね」

キュゥべえ「どうするつもりだい?」

杏子「邪魔なやつがいるなら…そいつを消しちゃえばいいんでしょ?」

キュゥべえ「うまくいくかな?」

杏子「何だよ、私があんな初心者に負けるとでも思ってんのか?」

キュゥべえ「確かに君は実力がある、経験においても美樹さやかより上だ」

キュゥべえ「ただ、君の障害になるのは美樹さやかだけじゃないってことさ」

杏子「誰だ……それ?」

キュゥべえ「暁美ほむらさ」

杏子「……聞いたことねーな、それも魔法少女なんだろ?」

キュゥべえ「おそらくね」

杏子「おそらくって何だよ。お前、そいつと契約したんだろ?」

キュゥべえ「彼女の存在は本当に不明確なんだ、僕にもわからないことが多い」

杏子「妙な言い方だな、どういうことだよ……」

キュゥべえ「それと……麻倉葉、恐山アンナという二人にも気を付けることだね」

杏子「アサクラヨウ?キョウヤマアンナ?」

キュゥべえ「この二人は魔法少女じゃない、それでも……確実に君にとっては邪魔になるよ」

杏子「はっ、契約もしてないような奴があたしの障害になるって?」

キュゥべえ「ただの人間と思わないほうがいいよ」

杏子「ふーん、まあでも……全員退場してもらえば、結局は問題ないんだろ」

・・・

葉「……契約、しちまったな」

アンナ「そうね、あたしは知らないけど」

葉「嘘つけよ、アンナも結構気にかけてたじゃねえか」

アンナ「気のせいよ」

葉「けど……言っとくべきだったよな、やっぱ」

葉「ソウルジェムってのがオイラたち人間の魂だってことは」

・・・
翌日

さやか「ここだ、ここに使い魔がいる……いくよ、まどか」

まどか「うん……」

杏子「馬鹿じゃねーの?」

さやか「!」

杏子「あれ使い魔だから、グリーフシードは持ってないよ。だから倒す意味もない」

さやか「何よあんた、どいて!使い魔に逃げられるでしょ!」

杏子「だから倒す意味がないって言ってんだろ、卵産む前の鶏締めてどうすんのさ」

さやか「……!」

さやか(コイツ……使い魔のせいで人が死んでも関係ないって考えてるの……?)

さやか「どかないなら……無理やりにでも押し通るよ?」

杏子「新人のあんたにできると思ってるの?ていうか、先輩への礼儀がなってないんじゃない?」

さやか「お前みたいなやつ……同じ魔法少女として認めない!」

杏子「はあ……中途半端な気持ちで首突っ込まれるの、ホントにむかつくんだ」

さやか「うあっ!」

まどか「さやかちゃん!キュゥべえ、やめさせて!こんなの絶対おかしいよ!」

キュゥべえ「無理さ、あの二人は互いに相容れない道を歩んでいる」

キュゥべえ「生物は自分の領域を侵すものを許しはしないんだ」

まどか「そんな……そんなのって……!」

キュゥべえ「でも、止める方法がないわけじゃない……まどか、君の力を借りればね」

まどか「私の……力?」

キュゥべえ「君の魔法少女としての才能はずば抜けている、もし君が魔法少女になれば絶対にこの場は治められるよ」

まどか「私が……契約をすれば……」

葉「お前ら、喧嘩はよくねえぞ」

さやか「あっ……!」

杏子「……何だよ、お前」

葉「初めましてだな、オイラは麻倉葉。まどかとさやかの友達だ」

杏子「アサクラ?……へえ、お前がアサクラヨウか……じゃあそっちの女がキョウヤマアンナだな」

アンナ「…………」

葉「あれ、オイラたちのこと知ってんのか?」

杏子「ちょうどいいや、お前も色々と邪魔くさいらしいんだ」

杏子「別に恨みはないんだけどさ、そこの青い奴を片付けたら次はお前らの番だ」

葉「……オイラ、喧嘩する気はねえのになあ」

さやか「葉さん……そいつ、グリーフシードが手に入りさえすれば人が死んでもいいって思ってるんだよ?」

さやか「あたしはそいつを認めない、止めないで!」

杏子「ごちゃごちゃ言ってんじゃねーよ!背中ががら空きだ!」

まどか「危ない!」

キィンッ!

杏子「!?」

杏子(止められた……?後ろを見もしないで……コイツ、後ろにも目があるのかよ!?)

まどか「な、なんで……?」

アンナ「葉には阿弥陀丸の目もついてるのよ、だから後ろからの攻撃もちゃんと止められる」

まどか「あ、あみだまる……?」

アンナ「それより、あの杏子って小娘……生意気よ」

まどか「…………」

まどか(どうしよう、正直アンナさんが一番怖い)

ほむら「何を騒いでいるのかしら」

まどか「ほむらちゃん!」

さやか「転校生……それに……!」

マミ「こんにちは、鹿目さんに美樹さん……そして」

杏子「暁美ほむら、ついでにマミも一緒か……」

マミ「お久しぶりね、佐倉さん」

ほむら「……また、あなたたちもいるのね」

葉「ウェッヘッヘ、まあな」

杏子「今さら何しに来たんだよマミ、その新人のおもりでもしに来たか?」

マミ「魔法少女同士が争っているのに、それを黙ってみているなんて私には出来ないの」

ほむら「それで、二人ともどうするつもりかしら?」

ほむら「もしもこれ以上戦うというのなら、私と巴マミで止めさせるけれど」

葉「オイラも多分、一緒に止めに入るだろうなぁ」

さやか「うっ……わ、分かったよ……今はもう止める」

ほむら「あなたはどうするの?佐倉杏子」

杏子「テメー、何であたしの名前を……どこかで会ったか?」

ほむら「さあ、どうかしら……ただ」

杏子「!」

ほむら「いざという時、私は決して容赦はしない」

杏子(消えたと思ったら一瞬で後ろに……!?)

杏子「……分かったよ、敵の手札がまるで見えないしね」

杏子「今日のところは降りさせてもらうよ」

ほむら「賢明ね」

杏子「ただ、お前らの顔はちゃんと覚えたからな……次は覚悟しとけよ」

葉「おお、また会おうな」

杏子「…………」

杏子「……なんか、すげー調子狂うな」

・・・

マミ「美樹さん……魔法少女になったのね」

さやか「はい、でも全然後悔はしてません」

マミ「どんな願いをしたのかは聞かないけれど……魔法少女になるって、すごく辛いことよ?」

さやか「覚悟してますから……」

マミ「そう、なら何も言うことはないわ」

さやか「……そういうことだから、あたしは絶対に最後までやり抜いて見せる」

アンナ「…………」

ほむら「少し、話をしてもいいかしら」

マミ「何かしら?」

ほむら「すごく重要な話、美樹さやかは私を敵視しているようだけれど、出来れば聞いてほしいわね」

さやか「…………」

ほむら「そして、あなたたちも」

葉「ん?」

アンナ「…………」

ほむら「……近い将来、ワルプルギスの夜が来るわ」

マミ「!」

葉「ワルプルギス……ってなんだ?」

阿弥陀丸『拙者、英語とやらはよくわからんでござる』

マミ「……それ、本当なの?」

ほむら「確かよ、冗談で言っているわけでも不確定なわけでもないわ」

ほむら「私は美樹さやかの契約を良しとするつもりはないけれど……契約をすればもう戻れないもの」

さやか「つまり、そのワルプルギスの夜ってのを倒すのに力を貸せってこと?」

ほむら「そうよ、むしろ嫌でも戦うしかないわ……魔法少女になったのならね」

アンナ「その変な名前の魔女、相当手強いのかしら?」

葉(変な名前……)

ほむら「超大型の魔女よ、一人ひとりの魔法少女じゃ太刀打ちできないわ」

マミ「もし仮にワルプルギスの夜が来るのなら……争っている場合じゃないわね」

ほむら「そう、だから……これからは協力しましょう。美樹さやか」

さやか「…………協力できればいいわね」

葉「…………」

葉(女の喧嘩ってすげぇ怖え)

・・・
翌日、教会

杏子「まさか、そっちから来るなんてな」

葉「ウェッヘッヘ、ちょっと色々と話したくてな」

杏子「なんであたしがここにいるって分かった?」

葉「おお、大変だったぞ!その辺の浮遊霊に聞いたりとか色々と」

杏子「??……まあいいや、で……話ってのは?」

葉「んー、回りくどく聞くのはあんま得意じゃねえし……いいや、そのまま聞く」

葉「杏子、なんでお前は魔法少女になったんよ?」

杏子「なんだよ、そんなことを聞くためにわざわざきやがったのか?」

葉「話を聞く限り、お前は『誰か他人のために』って感じの性格じゃなさそうだ」

杏子「間違っちゃいないな、今のあたしは自分のためだけに生きてるから」

葉「そんなお前がどんな契約で魔法少女になったのか、なんとなくすげえ気になった」

杏子「…………」

杏子「……はあ、なーんかホントに調子狂うな。昨日、あたしはあんたに斬りかかったんだぞ?」

葉「あれはびっくりしたぞ、あん時は本気の太刀筋だったもんな」

杏子「それを笑いながら言うかよ……もういいや」

杏子「ちょっと長い話になるよ……聞きながら、食うかい?」

葉「おお、ありがとう」

・・・

杏子「まあ、そういうことさ……別にそれがどうしたってことだけどね」

葉「……お前も何というか、色々あったんだな」

杏子「そう、最初はあたしも他人のために願ったんだよ。でも、結局それが全部裏目に出ちまった」

杏子「でもそれをあたしは恨んだりはしない、いい教訓になったと思えばいいのさ」

杏子「だから今のあたしはちゃんと自分のためだけに生きることが出来てるわけだしね」

葉「…………」

杏子「あたしの考え方、何か間違ってるかい?」

葉「お前の考えが正しいかどうかはオイラには分からんし、別に否定しようとも思わん」

葉「けど、オイラとはちょっと違うみてえだ」

杏子「……じゃああんたはどう思ってるんだ?誰か他人のために身を削りたいって?」

葉「オイラは…………」

葉「楽に暮らしてえ」

杏子「……………………」

杏子「…………はい?」

杏子「ぷっ……何だよそれ、結局は自分が一番楽できればそれでいいんだろ?」

葉「オイラだけじゃねえ、みんなが楽に生きられる世界が作れたらいいと思ってる」

杏子「……みんなが?本気で言ってんのかよ、それ」

葉「おお、本気だぞ」

杏子「…………」

葉「だから、オイラは楽に生きられてねえお前を放っておけねえ」

杏子「は……?何言ってんだよ、あたしはもう十分、自分の好き勝手に生きて……」

葉「お前はその親父さんとの事件があってから無理やり自分を変えてるんよ、多分」

葉「本当の杏子は他人にお節介を焼くのが好きなあったけえ人間なんじゃねえかな」

杏子「勝手に決めつけんなよ、まだ会って二回目だってのにさ」

葉「本当に自分の好きに生きてるならオイラに身の上話なんかわざわざしねぇだろ?」

杏子「…………」

葉「それに、お前をオイラよりもよく知ってる奴も泣きながら言ってるしな。杏子は優しいって」

杏子「あたしを……よく知ってる……?」


葉「そこにいるんよ、お前の親父さん」

年季が違うな。

杏子「は?あんた、一体なに言って……」

葉「いるんよ、地縛霊になってずっとこの教会にいたみてえだ……心中なんてすげえ死に方なのにまだ悪霊になってねえ」

葉「けど……気持ちがヘンな方向へ動けばいつ悪霊になるかも分からん」

葉「こういうのを何とかするのはオイラの仕事だ」

杏子「あんた……一体……!」

葉「この親父さんの未練を晴らすには……杏子の協力が必要だな」

葉「親父さんの話、聞いてやってくれ」

杏子「――――!」

葉「憑依合体!」

懐かしいな、初期の展開。一巻は人情物だったな。

その日、佐倉杏子は確かに見た。麻倉葉の後ろのかつての父の面影を。

父の後悔、苦悩、愛情、それらすべてをシャーマンである葉を通じて知ることとなる。

彼は死後、自分が激情に身を任せて娘を追いこんだことを後悔していた。

生前とはまるで変わってしまった杏子を見てその思いはさらに強くなり、ただ涙を流す日々が続いていたという。

佐倉杏子はそれらすべてを知った。

かつての自分の願いは確かに悲劇を生んでしまったが

それでも、それでも父は理解してくれた。謝ってくれた。

それは本当に遅い、遅すぎるものであったけれど

少女である佐倉杏子の心に大きな影響を与えるものとなったに違いない。

・・・

葉「親父さん、ちゃんと成仏出来たぞ」

杏子「……そっか、ありがとな」

葉「さっきも言ったけど、これがオイラの仕事だからな」

杏子「シャーマン、っていったっけ。霊ってのも本当にいるんだね」

葉「おお、その辺にたくさんいるぞ。ほとんど悪さなんかしないけどな」

杏子「何か……あんたの後ろにも何かいるようか気がしてきたよ、何だろ……侍、かな?」

阿弥陀丸『!』

杏子「いや、何かはっきりとは見えないけどさ。なんとなく感じるんだよね」

葉「霊と対話したことで、ちょっぴりお前にもシャーマンとしての資質が開花したのかもな」

杏子「昨日、後ろからの攻撃を受け止められたのも……」

葉「ああ、阿弥陀丸がちゃんと見ててくれたんよ」

杏子「けどさ、正直言って侍の霊って戦う時以外にあんまり役に立たなそうじゃないか?」

阿弥陀丸『むっ……!』

葉「そんなことねえぞ、道に迷った時は上からナビゲートしてくれるし」

杏子「ああ、それは確かに便利かも」

葉「チンピラに絡まれても全然怖くねえし」

杏子「ああ、まあ侍だからな……」

葉「朝なんか金縛りで絶対に起こしてくれるしな」

杏子「それは何かおかしいだろ」

葉「最悪、夜のトイレにもちゃんとついてきてくれるんだぞ」

杏子「なんであんたが夜のトイレを怖がってんだよ」

葉「あ……もう一つだけ言うことがあったの忘れちまってた」

杏子「?」

葉「何か近いうちにワルプルギスの夜ってのがこの町に来るんだと」

杏子「ワルプルギスって……超ド級の大型魔女だろ!そんなやつがこの町に!?」

葉「おお、どうも本当みてえだ」

杏子「……なんであんたがそれを知ってるんだ?」

葉「ほむらから伝言を頼まれたんよ、すげえ強いやつが相手だから協力したいんだと」

杏子「暁美ほむらか……正直、あいつならまあ協力するものやぶさかじゃないさ」

杏子「けど……美樹さやかもいるんだろ、きっと」

葉「うん、いるな」

杏子「絶対あたし恨まれてんだろ、急に仲良しこよしは出来ないぞ。多分」

葉「大丈夫、何とかなるって」

杏子「本当かよ……頼むからそのユルい笑い、どうにかしてくれ」

アンナは姉御肌っていうか、極道の女って感じだよね。

・・・
ほむら宅

アンナ「…………遅い」

アンナ「何やってるのよ葉は!」

ほむら「いきなり家に押しかけてきたあなたが言えるセリフじゃないわね、それは」

アンナ「仕方ないじゃない、あんたに話があったのよ」

ほむら「何かしら」

アンナ「あんたの正体、能力、そして……目的についてね」

ほむら「…………今はまだ、答えるときじゃないわ」

アンナ「……魂なんでしょ、ソウルジェムって」

ほむら「!」

魂・幽霊ネタはこういう時に強いよなあ。

ほむら「どうして……それを?」

アンナ「あたしはイタコよ、魂を扱うのは日常茶飯事……分からないわけがないでしょ」

ほむら「イタコ……?」

アンナ「詳しい説明は面倒だからしないけど、それが分かるくらいの力はあるってことよ」

ほむら「…………」

ほむら(初対面の時に私の本名を知っていたのも……まさかそれに関係が……?)

アンナ「で、質問に答えなさい。あんたはいったい何者なのか」

ほむら「…………」

アンナ「…………どうしても言わないなら、『読む』わよ」

ほむら「!」

アンナ「この力をあたしに使わせないで、制御は出来るけれどあまり使いたいものじゃないわ」

ほむら(……やっぱり、彼女には隠す必要もないし隠すこともできない、か)

あれ、制御出来たっけ?

・・・

アンナ「ふーん……時間を遡行して、ね」

ほむら「一度ですべてを理解してくれてありがたいわ」

アンナ「転生の概念に近いもの、これくらい当り前よ」

ほむら「私は今度こそワルプルギスの夜を倒したい……できれば、あなたたちの力も貸してくれると嬉しいけれど」

アンナ「嫌よ、めんどくさい」

アンナ「……っていうところだけど、今回は協力してあげるわ。あたしたちにとっても必要なことだから」

ほむら「…………?」

アンナ「……にしても」

ほむら「?」

アンナ「あのユルユル馬鹿は一体どこで道草食ってんの!!」

ほむら「…………」

この手のクロスオーバーでマミさんは生き残っても空気だよね。

・・・
数十分後

葉「ち、違うぞアンナ!伝言だけじゃなくて、オイラはちゃんとシャーマンとしての仕事を……」

アンナ「あら、シャーマンとしての仕事をするだけなのにどうして服に四本もあの小娘の長髪が付くのかしら?」

葉「ああ!それは(親父さんが成仏する)別れの時に杏子が抱き着いてきて……」

アンナ「仲がいいのねー!!」

ギャ――――ッ!

ほむら「…………」

ほむら(聞こえない知らない何も見てない、目の前で惨劇なんか起こってるはずがない)

ほむほむの性格がおかしい

アンナは(かわ)いい女だなあ。

アンナ「じゃああんた!除霊が終わった後にどんな会話してたか言ってみなさい!」

葉「何も言ってねえって!例えば……」

葉(はっ……夜のトイレの話とかしたらまた変な誤解をされるのでは……)

葉「あの……あれだ……」

アンナ「……ふーん、すぐには言えないんだ」

葉「いや、だから違うぞアンナ!?」

アンナ「ふーん、そうなんだ……」

アンナ「この浮気者ー!!」

ギィィイヤアアアアァァァァ!!

ほむら「…………」ガタガタ

ほむら(私の体が揺れてるのはそうきっと地震のせい、恐怖の惨劇に震えてるわけじゃなくて地震のせい)

ごめん、ちょっと晩御飯作ってくる

>>286
ごめん、マンキンっぽい空気にしたかったから

コミュ障には修羅場はきついかしら。

・・・

葉「……で、そっちは結局どうなったんよ」

アンナ「大体のことは理解したわ、予想以上にヤバい相手だってこともね」

葉「少なくとも、仲間内で喧嘩してるようじゃ勝てねえよな」

ほむら「全員が協力し合っても勝てるか分からないほどの敵よ……」

葉「一番の問題点は……」

ほむら「美樹さやかと佐倉杏子の関係、ね」

葉「…………」

ほむら「佐倉杏子はあなたの話を聞く限り、幾分か融通は利くでしょうけど……」

ほむら「意地になっている美樹さやかを説得するのはかなり難しいでしょうね」

アンナ「…………どうするの、葉」

葉「……どうしような、ホント」

・・・
翌日、上條宅前

さやか「…………」

さやか(中からバイオリンの音が聞こえる……良かった、ちゃんと治ったんだ)

さやか「それが分かっただけでも……良かった」

杏子「会いもしないで帰るのかい?ずっと追い掛け回してたくせに」

さやか「お前は……!」

杏子「知ってるよ、この家の坊やなんだろ?アンタが契約した理由って」

さやか「……だったら、何だっていうの」

杏子「別に……ただ、一度の奇跡のチャンスを他人のために使っちまうなんてと思ってさ」

杏子「ホント、馬鹿だよ……あんた」

さやか「お前なんかに何が!」

杏子「分かってないのはそっちだ馬鹿、魔法を他人のために使ったってろくなことにはならないよ」

杏子(あたしは葉のおかげで後から救われた……けど、誰もがそうなるとは限らないんだよ)

杏子「他人のために契約して、他人のために魔法少女として戦う……確かに正しい目標かもしれないけどさ」

杏子「正しすぎてそれに潰されるお前があたしには目に見えてるんだよ」

さやか「あんたとあたしは違う!」

杏子「…………!」

杏子(何だよ……他人のために願うってことがどんなことか分かってるから……)

杏子(お前と同じような願いをして今まで苦しんできたから、言ってやってるんだぞ……!)

杏子「やりあうなら……場所を変えようか、ここじゃ人目に付きそうだ」

・・・
鉄橋

杏子「ここなら遠慮なくやれるよね?」

杏子(言って分からないなら……力づくでも分からせてやる……!)

さやか「今度こそ決着を……!」

まどか「待って、さやかちゃん!」

さやか「ま、まどか……どうしてここに!?」

まどか「キュゥべえが……さやかちゃんが危ないっていうから!」

さやか「……危なくないよ、必ず勝つから」

杏子「はっ、誰があたしに勝てるって?」

さやか「くっ……!」

杏子さんそれ悪手や…。ほむらレベルで墓穴掘りおったでこの赤。

ほむら「何をやっているのかしら、あなたたち」

まどか「ほ、ほむらちゃん……それに葉さんたちも」

葉「んー……やっぱ喧嘩になっちまうか」

杏子「あたしから仕掛けるつもりはないんだよ、ただコイツが聞き分けないんだ」

さやか「…………!」

杏子「悪いこと言わないから止めとけって、あたしからお前に手を出すつもりはないんだって」

さやか「どっちにしたってあたしとあんたは相いれないでしょ!」

杏子「……そうかよ、じゃあもう怪我してもしらねーからな!」

まどか「!」

まどか(ダメだ……このままじゃさやかちゃん、絶対に怪我しちゃう!)

まどか(さやかちゃんが手を出さないなら攻撃しない……なら)

まどか「ごめん、さやかちゃん!」

親友を守ると意を決した鹿目まどかは

さやかの手からソウルジェムを掴みとると鉄橋から道路へ投げ捨てた。

まどかって、ほんとバカ

ほむら「!!」

さやか「まどか!アンタなんてこと……」

まどか「さ、さやかちゃん……?」

さやか「…………」

杏子「何だ……?」

キュゥべえ「今のはまずかったよ、まどか」

まどか「どういうことキュゥべえ、さやかちゃんが……さやかちゃんが急に!」

キュゥべえ「それはさやかじゃなくて唯の抜け殻だよ」

キュゥべえ「さやかは今、君が投げて捨てちゃったじゃないか」

杏子「どういうことだ……オイ!」

ぶっちゃけ原作で一番共感できないパートだよね…。
それよりもさやか達は20・30代になっても魔法少女にならなきゃいけない事に焦ろうよ。

アンナ「取り乱してんじゃないわよ」

まどか「えっ……?」

杏子「取り乱すなってったって……!」

葉「すまん。ちょっと、オイラ達に見せてくれ」

まどか「は、はい……」

葉「…………」

葉(なくちゃならねえはずの魂が……ねえ……これじゃ……)

アンナ「キョンシー、まるで」

キュゥべえ「……なるほど、君たちは最初から理解していたわけだ」

キュゥべえ「その理解が、どういう能力に依るものだったのかはわからないけれどね」

まどか「さ……さやかちゃんは……さやかちゃんは大丈夫なんですか?」

キュゥべえ「だからまどか、それはさやかじゃなくてただの……!?」

アンナ「くどいし耳障りよ」

ほむら「はぁ……はぁ……」

アンナ「戻ってきたみたいね」

ほむら「キュゥべえは……?」

アンナ「踏みつぶしたわ、鬱陶しかったから」

葉「…………」

葉(こういうアンナの躊躇ねえところがたまにおっかねえ)

まどか「さやかちゃんは……?」

ほむら「これを手に握らせて……」

さやか「…………」

さやか「………っ」

さやか「えっ……あれ……?」

アンナさんマジぱねぇっす。BINTAはまだか。

さやか「あたし……なんで……?」

キュゥべえ「やれやれ……いきなり踏み潰すなんてとんでもないことをしてくれたね」

まどか「きゅ、キュゥべえ……?」

アンナ「何よ、また踏みつぶされに来たの?」

キュゥべえ「代えはあるけれど無駄に消費はしたくないんだ、勿体ないじゃないか」

杏子「説明しやがれ……これはどういうことだ!テメー、あたしたちの体に何しやがった!」

キュゥべえ「酷いなあ、僕は君たち魔法少女が魔力をコンパクトに運用できるようにしてあげているのに」

まどか「……どういうこと?」

キュゥべえ「魔法少女との契約を取り結ぶ僕の役目は……」

キュゥべえ「君たちの魂を抜き取ってソウルジェムに変えることなんだ」

マンキンの世界は死んでもある程度融通が聞くけど、ソウルジェムはどう対処出来んだろうか。

杏子「ふざけんじゃねぇよ!それじゃ私たち、ゾンビにされたようなモンじゃないか!」

さやか「そんな……!!」

キュゥべえ「君たちにとっても便利じゃないか、ソウルジェムさえ壊れなければ君たちは無敵なんだ」

キュゥべえ「たとえ心臓が破れても、どれだけ骨を砕かれようと……不死の体を手に入れたんだよ?」

まどか「そんなのひどいよ…こんなのってないよ」

キュゥべえ「君たち人間はいつもそうだ、事実を伝えるといつもきまって同じ反応をする」

キュゥべえ「わけがわからないよ」

アンナ「…………」

グシャ!


葉「…………アンナ」

アンナ「イラッとしたのよ、しょうがないでしょ」

マミられたときってソウルジェムごともってかれたの?

らしいよ。
アンナ△

>>363
ソウルジェムは髪留めになってたからね
ガブガブしたときに一緒に砕けたんじゃないかな

・・・
翌日、さやか宅

さやか「…………」

さやか「私……こんな体になっちゃって…どんな顔して恭介に会えばいいのよ」

『いつまでもしょぼくれてんじゃねぇぞ、ボンクラ』

さやか「!」

さやか(今の声……!)

杏子「ちょっと面かしな」

杏子さんのフォローに期待。

・・・

杏子「やっぱり後悔してるの?こんな体にされちゃったこと」

さやか「…………」

杏子「あたしはさぁ…まあいっかなって思ってる、この力のおかげで色々好き勝手出来たわけだし」

さやか「あんたは自業自得なだけでしょ」

杏子「そうだよ自業自得なのさ、誰のせいでもない自分のせい」

杏子「そう割り切れれば誰か恨むこともないし、後悔なんてあるわけがない」

杏子「そう思えば大抵のことは背負えるもんさ」

さやか「で……こんな教会にまで連れてきて、一体何のつもり?」

杏子「……話しておこうと思ってさ、あたしのこと……それと、葉のことも」

やったらやり返されるどころの騒ぎじゃねーぞ

スピリットオブファイア
巴マミ

杏子「実はあたしたち…結婚するんだ…」

なんか見たようなレスが多いな?どういうこと?

アンナ「取り乱してんじゃないわよ」

まどか「えっ……?」

杏子「取り乱すなってったって……!」

葉「すまん。ちょっと、オイラ達に見せてくれ」

まどか「は、はい……」

葉「…………」

葉(なくちゃならねえはずの魂が……ねえ……これじゃ……)

アンナ「キョンシー、まるで」

キュゥべえ「……なるほど、君たちは最初から理解していたわけだ」

キュゥべえ「その理解が、どういう能力に依るものだったのかはわからないけれどね」

まどか「さ……さやかちゃんは……さやかちゃんは大丈夫なんですか?」

キュゥべえ「だからまどか、それはさやかじゃなくてただの……!?」

アンナ「くどいし耳障りよ」

杏子「ふざけんじゃねぇよ!それじゃ私たち、ゾンビにされたようなモンじゃないか!」

さやか「そんな……!!」

キュゥべえ「君たちにとっても便利じゃないか、ソウルジェムさえ壊れなければ君たちは無敵なんだ」

キュゥべえ「たとえ心臓が破れても、どれだけ骨を砕かれようと……不死の体を手に入れたんだよ?」

まどか「そんなのひどいよ…こんなのってないよ」

キュゥべえ「君たち人間はいつもそうだ、事実を伝えるといつもきまって同じ反応をする」

キュゥべえ「わけがわからないよ」

アンナ「…………」

グシャ!


葉「…………アンナ」

アンナ「イラッとしたのよ、しょうがないでしょ」

>>382
イザナミだ

>>363
ソウルジェムは髪留めになってたからね
ガブガブしたときに一緒に砕けたんじゃないかな

さやかDISッテンジャネーゾ!!ァァン///

杏子「ふざけんじゃねぇよ!それじゃ私たち、ゾンビにされたようなモンじゃないか!」

さやか「そんな……!!」

キュゥべえ「君たちにとっても便利じゃないか、ソウルジェムさえ壊れなければ君たちは無敵なんだ」

キュゥべえ「たとえ心臓が破れても、どれだけ骨を砕かれようと……不死の体を手に入れたんだよ?」

まどか「そんなのひどいよ…こんなのってないよ」

キュゥべえ「君たち人間はいつもそうだ、事実を伝えるといつもきまって同じ反応をする」

キュゥべえ「わけがわからないよ」

アンナ「…………」

グシャ!


葉「…………アンナ」

アンナ「イラッとしたのよ、しょうがないでしょ」

70歳 魔法少女

杏子「実はあたしたち…結婚するんだ…」

翌日、学校

マミ(何だったのかしら……昨日の人)

教師「今日は皆さんにお知らせです、前々から言っていたこの学校に体験入学してくる人のことですが……」

教師「一人が私たちのクラスに入ることになりました、私から紹介しますね」

マミ(あんな人、今まで見たことなかったし……年は私と同じくらいだったけれど……)

教師「じゃあ麻倉くん、入ってください」

葉「…………」

>>363
ソウルジェムは髪留めになってたからね
ガブガブしたときに一緒に砕けたんじゃないかな

・・・

杏子「まあ…そんなわけさ、長々と話したけど大体はこんな感じ」

さやか「あんたに……そんな過去が……」

杏子「別にあたしは悲劇のヒロインを気取るつもりはないし、そんな資格もない」

杏子「人とはちょっと違う過去があるからって誰かに偉そうに説教をするつもりもないよ」

さやか「…………」

杏子「あんたも私と同じ間違いから始まった、そして今も苦しみ続けてる…見てられないんだよ、そんなの」

杏子「あたしは葉のおかげで無理をしてたことも含めて色々と吹っ切ることが出来た」

杏子「一言でいうと、楽になれたんだ」

さやか「…………」

杏子「あのお節介、『楽が好きだから、楽じゃないお前は放っておけない』とか言ってさ」

杏子「だから、あたしも……似たような願いをして……今、楽じゃないあんたを放っておけないんだよ」

支援

支援

おいバカ共SSスレをイザナミの対象にすんなよ
よそでやれ

イザナミスレって面白いとでも思ってんのかな

頭の悪い奴ばっかりなんだろうな。。。

イザナミやめてくれ…

イザナミって何?こわい…

なんか見たようなレスが多いな?どういうこと?

>>365
今考えると無防備だよな

またここのスレか
つまらんことするんじゃねえよ荒らすならしっかり荒らせ

イザナミだ

さやか「アンタのこと、色々と誤解してた…それは謝るよ、ごめん」

さやか「でも……私は自分の願いに後悔なんてしないよ、絶対に……これからもね」

杏子「……それ、本気で言ってるのかよ」

さやか「うん、私が気に入らないなら……そのときはまた殺しに来ればいい」

杏子「そういう問題じゃねえ、このままじゃあんた……壊れちまうぞ、本当に」

さやか「大丈夫……私は口先だけじゃない、最後まで口にしたことは守り抜いて見せる」

杏子「…………馬鹿だよ、本当に」

さやかは自分を可愛がらなさすぎる。
他人を可愛がることはもっと苦手なのに。

・・・
翌日

さやか「今……なんて……?」

仁美「明日の放課後、私は上條恭介さんに告白します」

さやか「なんで……そんな急に!」

仁美「ずっとお慕いしていました……でも、幼馴染である美樹さんも彼に好意があるのなら」

さやか「…………!」

さやか(こんな……こんな体で恭介に、こんな口で好きだなんていえるわけ……!)

仁美「明日の放課後まで待ちます……では」

アンナさん早く来てくれー!

・・・
数日後

さやか「…………」

まどか「さやかちゃん…今日も私、魔女退治に付いていって……」

さやか「……来ないで」

まどか「え……?」

さやか「戦いもしないアンタが付いてきたって…何にもならないでしょ」

まどか「でも……私……!」

さやか「何?私のことを思ってくれてるつもり?私と同じ立場でもないくせに」

まどか「そんな……さやかちゃん……」

さやか「本当に私のことを思ってくれてるんなら…私と同じ体になってみせてよ」

さやか「……出来るわけないよね、同情なんかでそこまでのこと」

まどか「ど、同情なんかじゃ……!」

さやか「だったら……アンタが戦ってよ」

さやか「それ以前に……戦い以外にもう、あたしに存在価値なんかないんだから」

やっぱり青か。アンナさんはよう伝家の宝刀を。

・・・

さやか「馬鹿……馬鹿……あたしったら友達になんてこと言ってんのよ!」

・・・


まどか「さやかちゃんが…帰ってない!?」

まどか母「うちに来ていないかって聞かれたんだけど……その様子じゃまどかも知らないみたいだね」

まどか「私……探してくる!」

・・・

ほむら「美樹さやかの行方が分からないらしいわ……」

マミ「み、美樹さんが……?」

葉「!」

アンナ「…………」

杏子「あの馬鹿……手分けして探すぞ!」

ここでルート分岐すれば

・・・
某所

さやか「…………」

杏子「やっと見つけた……まったく、手間かけさせんなよ」

さやか「悪いね……面倒かけて」

杏子「……なんだよ、そんなこと言うなんてらしくないじゃん」

杏子「いつものさやかだったら突っかかってくるところだろ」

さやか「もう…どうでもよくなっちゃったからね」

杏子「…………!」

杏子「お前……このソウルジェム……!」

さやか「……何やってるんだろうね、あたしは」

さやか「親友にひどいこと言って……憧れた先輩みたいに戦うことも出来なくて……」

さやか「差し出された忠告に耳を貸さずに意固地になって……最後まで協力できなくて……」

杏子「お前……まさか……!」


さやか「あたしって…ホント馬鹿」

杏子「さやかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

・・・

葉・アンナ「!」

葉「この霊力の感じ……!」

アンナ「…………」

・・・

キュゥべえ「この国では成長途中の女性のことを少女って言うんだろう?」

キュゥべえ「だったらいずれ魔女になる君たちのことは、魔法少女って呼ぶべきだよね」

もう富竹とタメ張れる安定っぷり。

結界内

杏子「どうなってんだよこれ……!」

杏子(いつの間に魔女の結界内に入った?そもそもこの魔女はどこから現れた!?)

ほむら「……遅かったようね」

杏子「ほむら!これはどうなってやがる!」

ほむら「黙って、いったん脱出するわ……あなたは美樹さやかを離さないで」

杏子「逃げるのかよ……?」

ほむら「今の状況じゃ戦うわけにはいかないわ……美樹さやかの体も傷つくことになる」

杏子「チッ……」

人間らしいを免罪符にするに魔女化は重いよ。
人を死なせる存在なんだから。ごめんじゃすまない。

杏子「結界は……抜けたか」

ほむら「…………」

葉「……すまん、間に合わんかったな」

アンナ「…………」

まどか「さやかちゃんは、さやかちゃんは大丈夫なの!?」

マミ「あ、暁美さん……説明してくれるかしら……?」

ほむら「…………」

ほむら「美樹さやかのソウルジェムはグリーフシードに変化した後、魔女を生み出して砕け散ったわ」

まどか「っ!」

マミ「え……!」

たまおに対しては余裕を見せてたけどマミさんは…

マミ「み、美樹さんのソウルジェムが魔女を生み出したって……」

マミ「それって…つまり美樹さんが…魔女になったってことじゃ……!!」

ほむら「……ソウルジェムに穢れが溜まり切ってしまえば…私たちも魔女になる」

ほむら「それが私魔法少女について隠された最後の秘密よ」

マミ「!」

マミ「じゃあ……私たちも、穢れが溜まったらいずれは……」

ほむら「そういうことよ」

マミ「そんな……ま、魔法少女が魔女になるのなら……」

マミ「私たちがみんな死ぬしかないじゃない!」

パーンッ!

マミ「!?」

アンナ「取り乱さないで」

こっちもこっちでまさにマミさん。ここは豆腐屋か。

葉「…………」

葉(……右もすげぇ痛えんだよな)

アンナ「あんた、魔法少女の先輩なんでしょ?それなのにみっともなく狼狽えるんじゃないわよ」

マミ「で、でも……!」

まどか「さやかちゃんは……さやかちゃんはもう!」

葉「手はある」

まどか「えっ……?」

杏子「どういうことだよ……?」

葉「お前らがちゃんとさやかの体を持ってきて良かった、だったら……まだ何とかなる」

ほむら「説明……してくれるかしら?」

アンナ「今、この体は魂が抜けた状態で……肉体的には無傷」

アンナ「要するに……入れてやればいいのよ、この体にもう一度……魂をね」

杏子「そうか、葉はシャーマン……だったらそれくらいのこと簡単に……!」

葉「いや、そう簡単にもいかん。魂ってのは肉体から離れすぎちまうと蘇生できなくなっちまうんだ」

葉「まあ……魂があの世に行っても蘇生できるシャーマンもいなくはねえけどな」

アンナ「ガンダーラみたいな連中は特殊よ、それに今のあたしには神クラスの持ち霊もいないしね」

杏子「つまり……どういうことなんだ?」

葉「時間がねえ、早くしねえと蘇生は出来なくなる」

マミ「じゃ、じゃあ……!」

アンナ「言ったでしょ、取り乱さないでって……こうやっておしゃべりしてる時間も惜しいのよ」

ほむら「……今、あの魔女になった美樹さやかを倒せば間に合うのね」

葉「ああ、百パーセントじゃねえけどな」

ほむら「なら……行きましょう、可能性があるのなら」

ほむら(魔女と化してもまだ、生き返ることができる……今までになかったそんな可能性があるのなら!)

だってあいつ友達いねえだろ。

・・・
結界内

魔女「――――――!」

マミ「そんな……これが美樹さん!?」

杏子「すぐに目覚ませてやるからな……さやかぁ!」

葉「じゃあまどか、オイラ達が戦ってる間……ずっとあいつに呼びかけ続けてくれ」

まどか「は、はい!」

葉「悪い方向に行っちまった魂をあるべき姿へ戻すには色々な方法があるんよ」

葉「お前の言霊で、あいつ自身をしっかり認識させてやってくれ」

まどか「さやかちゃんを……私の言葉で!」

ほむら「……行きましょう」

アンナ「へまをしないようね」

葉「うし、じゃあ少し……ふんばるとするか」

葉「行くぞ!阿弥陀丸!!」

阿弥陀丸『応ッ!』

葉「オーバーソウル!阿弥陀丸イン春雨!」

アンナ「あんたは呼びかけ続けなさい、攻撃は前の連中が全部撃ち落としてくれるわ」

まどか「は、はい!」

杏子「くっそ……さやかめ、ちっとは手加減しろってんだ……!」

魔女「!」

マミ「来てるわよ!佐倉さん!」

杏子「しまっ……」

さやかにとっては願いを叶えたいかどうかが分岐点だろうから、
契約自体はマミさんが生きててもしそう。
問題はマミさんが空気なところだ。

葉「真空仏陀斬り!」

杏子「っ……と、ありがとな葉!」

葉「来るぞ!」

杏子「分かってる、次は食らわない!」

ほむら「私たちも行きましょう、巴マミ」

マミ「え、ええ……!」

ほむら「……まだ、迷いがあるのかしら?」

マミ「…………」

ほむら「もしそうなら……あなたは戦うべきじゃないわ」

葉「くっ……」

葉(あんまりデカい攻撃を仕掛けて倒しちまったら元も子もねえ……!)

葉(けど……あの投げつけてくる木の車輪は撃ち落とさねえとまどかに当たっちまう)

ほむら「下がって、麻倉葉、佐倉杏子……あの車輪を爆砕するわ」

葉「!」

ほむらの言葉を受け、葉と杏子は後ろへ回避する。

直後、迫りくる多くの車輪は爆散しすべて焼失した。

葉「おお、すげえ」

ほむら「でも、あまり何度も使える攻撃ではないから……もう少しは二人で粘ってもらえるかしら?」

杏子「ああ、任せな!」

マミ「…………」

マミ(私はいったい何をしているの?年下の暁美さんや佐倉さんも戦っていて……)

マミ(麻倉さんと恐山さんも前線に立っている……)

マミ(そして魔法少女ですらない鹿目さんまで、美樹さんを助けようと必死になっているのに)

マミ(……私が、美樹さんのために出来ること)

マミ(少なくとも、それは狼狽えることでもなければ最初から諦めて勝負を放棄することでもないはず)

マミ(まして……みんなを道連れにして死ぬことなんかじゃ絶対にない!)


――――少女の、心は決まった。

そういやオーバーソウルの修行の初期の頃に
巫力が高くなれば阿弥陀丸をこの世に完全に具現化できるってことか!
って話でてたけど特に阿弥陀丸が具現化されるなんてことはなかったな

>>570
それじゃあただの400年前の侍だぜ。

マミ「……私も、戦うわ」

ほむら「迷いは……もうないのかしら?」

マミ「もう大丈夫よ、みんなが戦っているのに……私だけ希望を捨てたりはしないわ」

マミ「それに、私はみんなの先輩だからね……!」

葉「オイラとアンナとは同級生だけどな」

マミ「フフ……そうだったわね」

杏子「ったく、遅かったな……マミ!」

葉「……さあ、もうひとふんばり行くとするか!」

遠距離から狙撃できるマミの戦線復帰により、魔女の繰り出す車輪による攻撃は完全に無力化された。

投げられるその車輪を巴マミは自らのマスケット銃で次々と撃ちぬいていく。

車輪の攻撃の防御においてはまさに最高の存在だった。

魔女「!!」

ほむら(車輪での攻撃が効かないとみて今度は剣で攻撃を……!)

杏子「はっ、近接系武器での攻撃なら!」

葉「オイラ達で何とかする」

マミ(これで……完全に敵の攻撃は封じられたわね)


アンナ「あの赤髪の小娘、あたしの許可もなくちょっと葉に近づきすぎじゃないかしら」

マミ(むしろ怖いのは味方からの攻撃な気もするけれど……)

ちょっとだけ風呂行ってくる、すぐ戻る

・・・

杏子「なあ!だいぶ時間経ってるけど、まだ間に合うんだよな!」

葉「分からん、けど急ぐに越したことはねえ!」

まどか「さやかちゃん!お願いだから私の声を聴いて!」

魔女「――!」

葉「くっ……」

葉(何か変だ……ここまで呼びかければ何かしらの反応があってもおかしくねえ)

葉「違う……使い魔だ!後ろで曲を演奏してるあの使い魔を先に止めるんだ!」

ほむら「マミ!」

マミ「私ならここからでも撃ちぬける……でも……!」

葉「車輪はオイラ達が何とかする!」

杏子「思いっきり撃て!」

マミ「信じるしかないわね……任せたわよ、二人とも!」

ほむら「私はまどかのフォローに回るわ!」

杏子「車輪は……全部撃ち落とす!」

葉「行くぞ……阿弥陀流!大後光刃!!」

マミ(視界が開けた……撃つのは……今!)

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

杏子「演奏が……止まった!」

アンナ「今よ、あんたの思いのすべてを言葉に乗せてあいつにぶつけなさい」

まどか「さやかちゃん!戻ってきて!」

魔女「…………」

・・・

声が、聞こえた気がする。

あれ、おかしいな……今まで確か演奏を聴いてたんじゃ……

でも、今の声……大切な、あたしの友達の声……

あたしは……何やってるんだろ……あたしって、こんな感じだったっけ?

違う……元のあたしは……!

魔女「――――!!」

杏子「オイ!アイツの攻撃、激しくなってないか!?」

葉「違う……これは……あいつの魂が元の形を思い出そうとしてるんだ」

葉「アンナ!」

アンナ「よくもまあ、呼びかけで魂の形を思い出すなんて方法を成功させたわね」

アンナ「ずいぶんと非効率だけど、全員を救おうとするあんたらしいやり方だわ」

アンナ(ま、そういう性格のあんただからこそ……あたしもホレたのだしね)

アンナ「じゃあ……そろそろあたしも手を貸さなきゃね」

葉「形を取り戻したあいつの魂を魔女から何とか引きはがしてくれ!」

アンナ「はいはい……引きはがした後の魔女は責任もってあんたたちでやりなさいよ」

葉「おお、任せとけ」

アンナ「行くわよ……超・占事略決!禁人呪殺!」

魔女「!」

アンナ「今よ!」

杏子「大丈夫なのか……仕留めても?」

葉「さやかの魂がなくなった後のコイツは……もう負の霊力の塊みてえなもんだ」

葉「嫉妬、後悔、憎悪、憤怒……確かに、ちょっとくらいはあってもいいかもしれん」

葉「けど……こいつらは生み出したら、ちゃんと自分で受け止めなきゃならねえ」

葉「デカくなりすぎれば自分で受け止めきれずに、無理をしちまう」

葉「無理は、何か自分でいられなくなるからイヤなんよ……やっぱ」

葉「生きるなら、楽しく生きねえとな」

葉「阿弥陀丸イン春雨!イン!フツノミタマノツルギ!」

スピリット・オブ・ソード・白鵠

葉「阿弥陀流――――」



――――無無明亦無

・・・

まどか「さやかちゃん……まだ間に合うよね」

杏子「ここまでやって間に合いませんでした、じゃシャレにならないからな……」

マミ「信じましょう……美樹さんを、それにこの二人を」

ほむら「じゃあ……いいかしら、二人とも」

葉「うし、じゃあやるか。アンナ」

アンナ「言われなくても分かってるわよ……行くわよ」

アンナ「イタコ流・シャーマン術!クチヨセ!」

まどか「く、クチヨセって……」

葉「本当は死んじまった霊を体に憑依させる術だけどな、今回はそれを応用してるんよ」

葉「体に魂を入れるって点では同じだからな」

さやか「…………」

さやか「…………」

さやか「…………」

さやか「っ………」

まどか「あっ……!」

さやか「……おはよ、まどか」

まどか「さやかちゃん!」

マミ「み、美樹さん……良かった、本当に良かった……!」

杏子「ったく、本当に面倒かけてくれやがって……馬鹿さやか」

ほむら「本当に……魔女から復帰できた……!」

まどか「さやかちゃん……さやかちゃん……!」

葉「うし、ひとまずはめでたしめでたし……」

アンナ「……なわけないでしょ、このおバカ。まだあたしには仕事が残ってるんだから」

葉「う、うん?そんなのあったか?」

アンナ「……ちょっとそこの青いの、こっち来なさい」

さやか「あ、あの……何か色々と迷惑かけたみたいで……」

パーンッッッ!!

さやか「っ!!」

阿弥陀丸『ま……』

葉「ま、幻の左……!!」

アンナ「あんた、自分がどれだけのことをしでかしたか自覚してるの?」

さやか「う……」

アンナ「自分で自分を過信して暴走して、ここにいる全員に面倒掛けさせて」

アンナ「最悪、あんたは無関係の一般人の命を奪う可能性だってあった」

アンナ「事前に言ったわよね、調子のいいこと言ってるやつほどすぐにへこたれるって」

さやか「……正直、アンナさんに大見得切ったからつい意固地になって」

アンナ「なに馬鹿言ってるの、あんたの器量が小さかっただけでしょ」

さやか「……はい」

アンナ「それともう一つ……あんた、慕ってた男を別の女に取られたらしいわね」

アンナ「というより、あんたが魔女になった原因の大半がそれでしょ」

さやか「…………返す言葉、ないです」

パーンッッッ!!

さやか「っ!?」

葉「ま、幻の左……」

阿弥陀丸『二連撃!?』

葉(反対側じゃなくてあえて同じほっぺをぶっ叩いてる辺り、アンナスピリット全開だな)

さやか「い、痛い……!」

アンナ「あんた、好きな男を取られたくらいでいちいち絶望してんじゃないわよ」

アンナ「そもそも、別に好きだなんだのと伝えてあったわけでもないくせに」

さやか「きょ、距離が近すぎて……幼馴染だったから……なんというか」

アンナ「あたしが言いたいのはそういうことじゃないのよ」

さやか「…………?」

アンナ「本当にあんたがその男に惚れてたんだったら……」

アンナ「仮に他の女に取られたとしても、もう一度自分に振り向かせるくらいの根性見せなさい」

さやか「あ……!」

葉「…………」

葉(アンナスピリット、もうメーター振り切ってるぞ)

葉「ま、まあまあ……もうその辺にしとけ、アンナ」

アンナ「フン……じゃ、さっさと帰るわよ。もう夜も遅くて眠いし」

まどか「さ、さやかちゃん……大丈夫?」

さやか「痛たた……でも、胸にジーンと染みたかな」

葉(ジーンとしてんのは頬だと思うぞ)

さやか「でも、もし葉さんが他の女の子に口説かれたりしたらアンナさんどうするんだろ?」

葉「少なくともオイラは閻魔さんのところへ三回くらい行くと思うぞ」

マミ「……なんだか、どっと疲れたわ」

杏子「だな……なあマミ、よければ今日マミの家に泊めてくれないか?」

マミ「フフ、良いわよ……」

ほむら「…………」

ほむら(魔法少女が団結して……加えて二人のシャーマンが訪れた)

ほむら(そして……まさか魔女になってから人間に戻ることができるなんて、ね)

ほむら(今までの時間軸とは……何もかもが明らかに違う……!)

・・・

キュゥべえ「なるほど、彼らの正体はシャーマン……あの世とこの世を結ぶ者、か」

キュゥべえ「それなら彼らが僕のことを不審に思ったのも、ソウルジェムが魂と気づいていたのも納得がいく」

キュゥべえ「そして暁美ほむら……彼女の能力は時間操作系のようだね」

キュゥべえ「なるほど、だから真っ先に僕という個体を彼女は潰しにかかってきたわけだ」

キュゥべえ「時間遡行者……暁美ほむら、そしてシャーマンの麻倉葉、恐山アンナ……か」

キュゥべえ「まさか美樹さやかを魔女から人間に復帰させてしまうとは驚いた」

キュゥべえ「出来るわけがないと思っていたけれど、僕としても認識を改めておく必要がありそうだ」

キュゥべえ「でも……それでも……」

キュゥべえ「彼らではワルプルギスの夜は止められない」

・・・
数日後

ほむら「ワルプルギスの夜が訪れる日はもうすぐ……ね」

キュゥべえ「ずいぶんと期待しているようだね、暁美ほむら」

ほむら「!」

キュゥべえ「襲来するワルプルギスの夜を倒す算段でも付いたのかな?」

ほむら「…………お前には関係のないことよ」

キュゥべえ「ふむ、君はこう考えているようだ。魔法少女全員で戦えて、シャーマンである二人の力も借りられる」

キュゥべえ「もしこれがダメだとしても、次の世界に繋げられる……と」

ほむら「…………!」

キュゥべえ「君が時間遡行者であることはもうわかっているんだ、だから僕は君にお礼を言いに来たんだよ」

ほむら「何ですって……?」

・・・

ほむら「そんな……それじゃ……!」

キュゥべえ「そう、君が何度も時間遡行をしているうちに鹿目まどかに因果の係数が繋がってしまったんだ」

ほむら「…………!」

キュゥべえ「それともう一つ……さっきまでまどかの家に行っていてね」

キュゥべえ「ワルプルギスの夜に君たちが勝てる確率は限りなくゼロだと伝えておいたよ」

ほむら「なっ……!」

キュゥべえ「もちろん、まどかが契約をしてくれれば勝てるということも含めて……ね」

ほむら「どこまで腐っているの……インキュベーター!」

キュゥべえ「酷い言い方だなぁ、僕はあくまで個人的な意見を述べたにすぎないよ」

キュゥべえ「まどかが契約してくれれば君たち魔法少女が生存する確率も大きく上昇する」

キュゥべえ「そう、これは君たちのためになる行動なんだ」

ほむら「……お前の思い通りには、絶対に行かせないわ」

・・・

アンナ「……難儀なことね」

葉「ああ、けど……オイラ達で何とか出来なきゃ、な」

アンナ「明日ね、とうとう……ワルプルギスが来るのは」

葉「みてえだな」

アンナ「…………」

葉「…………」

アンナ「……ねえ、葉」

葉「ん?」

アンナ「たまには、一緒に寝てもいいよね?」

葉「…………おお」

翌日

ほむら「…………来る」

マミ「何だか、分かってはいたけれどやっぱり緊張するわね」

杏子「何だよマミ、ビビってるのか?」

さやか「あたしは正直怖いけどね」

杏子「ていうかさやか、お前戦えるのかよ……?」

さやか「何ていうか、今のあたし……ちょっと色々と複雑な感じでね」

さやか「普通の人間なんだけど、魔法少女でもある……みたいな」

杏子「なんだよそれ」

さやか「魔法少女に変身することはできるけど……ほら、もうソウルジェムがないからさ」

さやか「生身の体だから、傷つけられれば普通に骨も折れるし、心臓も止まっちゃうってこと」

杏子「……じゃあ、一発でも貰ったら」

さやか「一応魔力で身体強化はしてるけど……結構キツイかもね」

杏子「……さやか、ヤバそうだったら無理に戦わなくてもいいんだぞ」

さやか「大丈夫、確かに不死身の体じゃないってのは大きなデメリットだけど……」

さやか「今のあたしはソウルジェムがないから、穢れが溜まらないって利点もあるんだから」

マミ「……美樹さん、本当に無茶だけはしないでね」

ほむら「……そういえば、あの二人は?」

杏子「もう来るんじゃないか……って、噂をすればだ」

葉「すまん、遅くなった」

アンナ「…………」

ほむら「来るわ!」


⑤、④、③、②、①…………

ワルプルギス「キャハハハハハハ!」

さやか「うっ……想像してたのよりずっとでかい……」

マミ「必ず、ここで倒しましょう」

ほむら「ええ……必ず、仕留める!」

葉「あれが……ワルプルギスの夜、か」

アンナ「何よあの笑い声、憎たらしい」

ほむら「全員、油断しないで!様子見なんてしなくていい、最初から全力で!」

葉「あのデカさじゃ……やっぱこっちか、行くぞ阿弥陀丸!」

阿弥陀丸『応ッ!!』

葉「阿弥陀丸イン春雨!イン!フツノミタマノツルギ!」

葉「スピリット・オブ・ソード!!」

さやか「うわっ!でっかい刀!」

葉「あれ、さやかも見えるようになったんか?」

さやか「何ていうか、クチヨセしてもらってから見えるようになっちゃって……」

杏子「おしゃべりしてる暇はねーぞ!」

葉「ん、じゃあオイラ達も行くか!」

さやか「了解っと!」

杏子「あたしは本体を叩く!さやか!使い魔は任せた!」

さやか「分かった!って……この使い魔、まるで……!」

杏子「食らえっ!!」

ガキィン!!

魔女「キャハハハハハハッ」

杏子「……嘘だろって、全力で仕掛けたんだぞ?」

葉「はっ!!」

キィン!

葉(固え……やっぱ白鵠の密度までいかねえとダメか……!)

ほむら「離れて!三人とも!」

葉・杏子・さやか「!!」

さやかが魔女化したときとは比べものにならないレベルの爆撃がワルプルギスの夜に直撃する。

それは近代兵器を極限にまで利用したほむらによる連続攻撃。

ほむら「爆発が途切れたら遠距離から撃って!」

マミ「様子見なんてことはしない……ティロ・フィナーレ!」

葉「阿弥陀流!真空仏陀斬り!!」

魔女「キャハハハハハハ!!」

マミ「そんな……無傷だなんて!」

葉「もっと畳み掛けねえとダメか」

ほむら「怯まないで!休まずに仕掛け続けて!!」

杏子「っていっても、これ効いてる気がしないぞ!」

さやか「右に同じ……どこか弱点とかないの!?」

魔女「キャハハハハハ八!!」

マミ「に、逃げて二人とも!攻撃が来るわ!」

杏子「しまっ……!」

葉「スピリット・オブ・ソード!白鵠!!」

ほむら「!」

葉「阿弥陀流!無無明亦無!!」

マミ(ワルプルギスの夜の攻撃が……打ち消された……!?)

杏子「悪いな葉!」

さやか「ありがとう!」

葉「それよか、また来るぞ!気を付けろ!」

杏子「おっと……!」

葉(無無明亦無……あの魔女の本体も削れれば……!)

葉「阿弥陀流!無無明亦無!!」

ガキィン!

葉「!」

葉(通らねえ……ってことは、コイツはオイラが打ち消せる以上の強さを持ってるってことか……!)

葉「……ふんばりどころだな、ここは」

・・・

ほむら「はあっ……はあっ……!」

杏子「くっそ……攻撃の一発もデカいし、固すぎだろ……!」

マミ「どこを攻撃しても……まるで通用しないなんて……」

さやか「こんなの、一体どうしろってのよ……」

葉「……大丈夫だ」

ほむら「えっ」


葉「なんとかなる」

杏子「何とかなるって……どんな根拠だよ、それ」

葉「根拠なんかねえさ、けど……あいつ、実はもうへばってるかもしれねえぞ」

マミ「あれだけ笑い声をあげてるのに……?」

葉「おお、痛ぇのに無理してるのかもしれん」

さやか「いやー、それはないな……」

葉「何にしても、ここで休んじまったら元も子もねえ……何とかなる」

ほむら「…………」

ほむら(そう、この言葉……何とかなる。今までも何度か聞いていたけれど……)

ほむら(彼が言えば、本当に何とかなりそうな気になってくる……)

ほむら「大丈夫……まだ、戦える……!」

・・・

キュゥべえ「終わりだね、よく粘っていると言いたいところだけれど……戦力差は明らかだ」

まどか「そんな……ほむらちゃん……みんな……!」

キュゥべえ「もう僕は君に無理やり契約を進めたりはしないよ」

キュゥべえ「でも、必死に戦っている彼女たちを見て何か考えが変わったら」

キュゥべえ「僕はいつでも君と契約をしてあげられるよ」

まどか「…………!!」

・・・

葉「ぐっ!!」

阿弥陀丸『葉殿!!』

葉「ああ、大丈夫だ……」

阿弥陀丸『むぅ……葉王のスピリット・オブ・ファイアも大概でござったが……』

阿弥陀丸『こやつはそれに勝るとも劣らぬでござるな』

葉「ああ、すげえ密度だ……攻撃が全然通ってねえ」

葉「このままやりあってたんじゃ最後はオイラの巫力が切れちまいそうだ」

阿弥陀丸『活路はあるのでござるか……?』

葉「正直まだわからん、とりあえず……特別にここが弱点、みてえな場所はなさそうだ」

杏子「ぐあっ……!」

さやか「ぐっ……!」

マミ「うあ……!」

ほむら「くっ………!!」

・・・

まどか「…………」

まどか(みんな押されてる……このままじゃみんなが死んじゃう……!)

キュゥべえ「どうかしたかい、まどか?」

まどか「キュゥべえ……私……」

ほむら「っ……!」

ほむら(そんな……足が、動かない……!!)

葉「無理すんな、動けねえなら……あとはオイラがやる」

ほむら「ダメよ、あなた一人だけで勝てるわけが……!」

葉「なんとかなる」

杏子「もう……気合や精神論の問題じゃねえ、一人でまともにやりあって勝ち目なんか……」

葉「ごまかしで言ってるわけじゃねえんだ、オイラは本気でなんとかなると思ってるんよ」

マミ「ど、どうして……!」

さやか「こんな……ボロボロにされてるのに……?」

まどか「ほむらちゃん……みんな……」

ほむら「ま、まどか……?」

さやか「なんでこんなところに……ここは危ないから早く……」

まどか「みんな……ごめんね」

まどか「私、魔法少女になる」

ほむら「えっ……!?」

葉「…………」

ほむら「だ、ダメよまどか!それだけは絶対にダメ!」

まどか「……やるしかないんだよ、ほむらちゃん」

ほむら「そんな……それじゃあ私は……何のために……!」

まどか「ありがとうほむらちゃん、でも……またすぐに会えるよ」

まどか「必ず、なんとかなる」

葉「!」

キュゥべえ「いいんだね、まどか」

まどか「うん、大丈夫だよ」

キュゥべえ「それじゃあ鹿目まどか、君は一体どんな願いでソウルジェムを輝かせるんだい?」

まどか「私の願いは……」

ほむら「葉!止めさせて!お願い!」

葉「オイラは……まどかを信じる」

まどか「私の願いは……『過去と未来全ての魔女を生まれる前に消し去りたい』」

キュゥべえ「!」

まどか「さあ、叶えてキュゥべえ!」

キュゥべえ「そんな……それは因果律そのものを改変する神にも等しい願いだ」

キュゥべえ「鹿目まどか、君はまさか本当の神になるつもりなのかい!」

インキュベーターの驚愕の声が響くも、まどかの願いは叶うこととなる。

神にも等しい強さとなった鹿目まどかは、自らの弓を引き絞り……ワルプルギスの夜へと撃ち放った。

一撃―――あれだけ暁美ほむらたちを苦しめたワルプルギスの夜は、ただの一撃で撃滅した。

まどか「終わった……!」

鹿目まどかは安堵した、同時に魔力を使いすぎたことで自らのソウルジェムも黒く染まっていく。

それでも彼女は安心していた。

自らの願いの効果で仮に自分が魔女になったとしても消滅すると確信していたから。

そう、これですべてが終わるはずだった。


キュゥべえ「残念だったね、まどか」

まどか「…………?」

キュゥべえ「全く驚いたよ、因果律さえも超越した願いをしてそれを叶えてしまうんだからね」

キュゥべえ「しかも自分が魔女になっても、即座に消滅するような願いにしているとは……恐れ入ったよ」

キュゥべえ「それでも……君の背負った因果律は莫大すぎた」

まどか「…………」

キュゥべえ「君は魔女になった後、消滅することはない」

まどか「!」

キュゥべえ「君は過去におけるすべての魔法少女と魔女を救った」

キュゥべえ「そして今現在、世界に存在する魔法少女たちのこともね」

キュゥべえ「でも、君が救ったこの世界を破壊するのもどうやら君自身になりそうだ」

キュゥべえ「全てを救おうとするなんて無茶が過ぎたようだね、鹿目まどか」

まどか「…………」

まどか「……なんとかなる」

キュゥべえ「……?」

まどか「私たちはまだ、負けてないよ……まだ、この後を任せられる仲間がいるから」


ほむらちゃん、葉さん、みんな……お願い

――――私を、止めて

・・・

魔女「――――!」

キュゥべえ「すごいね、これがまどかが魔女になった姿か」

ほむら「あ……あ……!!」

杏子「嘘だろ……こんな……!」

さやか「まどか……まどかぁ!」

マミ「どうすれば……こんなの……!」

葉「うっし、じゃあ最後のひとふんばりだな」

ほむら「…………!」

葉「頼むぞ!アンナ!」

アンナ「……コイツとんでもないわよ、そう長くは縛っておけないわね」

葉「それでも、頼む」

アンナ「……葉、必ず何とかしなさいよ」

ほむら「あなた……この状況でもまだ……?」

葉「後はこのまどかだけを止められれば全員救えるだろ、過去も未来の魔法少女も」

葉「まさに、あとひとふんばりじゃねえか」

さやか「そうだけど……けど……!」

マミ「ワルプルギスの夜を一撃で吹き飛ばす鹿目さんの魔女なんて……」

杏子「諦めたくねえけど……もう、どうしようも……!」

「何だなんだオイ、なんかもうすげー諦めムードになってるぞ?」

ほむら「え……?」

「フン、貴様のような頭のねじの足りない能天気バカとは違うのだろう」

「何だとテメー!もう一回言ってみろ!」

さやか「こ、この人たち……って……?」

「なんでお前らはこういう状況でも喧嘩すんのかねェ」

杏子「誰なんだ……一体……!」

「何とかなる、そうやって葉くんから教わらなかったかい?」

マミ「…………!」

葉「来てくれたんか、みんな!」

ホロホロ「何だよ葉!お前もボロボロじゃねーか!」

リゼルグ「久しぶり!って言うほど久しぶりじゃあないかな」

チョコラブ「俺は嬉しいけどな、裁判始まって刑務所へ入る前にもう一回会えて」

蓮「で、どういう状況だこれは……時間もないだろう、端的に説明しろ」

ほむら「…………!」

ほむら(彼らも……全員……シャーマン?)

・・・

リゼルグ「なるほど、それで今はこの最悪の魔女をアンナさんが抑えていると」

葉「オイラ達がワルプルギスってのと戦ってる間中、ずっと仕込んでた1080を呪縛結界だ」

葉「そう簡単には破られねえが……そこまで長くも持たねえらしい」

チョコラブ「じゃ、さっさとやらなきゃダメってわけだな」

ホロホロ「しっかしアレだ、これだけデカいと逆に当てやすくていいぜ!」

蓮「馬鹿か貴様、この魔女とやらはあの魔法少女の片割れの変身したものだ」

蓮「派手な技を放ってまるごと消滅させでもしたらどうする、馬鹿」

ホロホロ「テッメ!今、二回も馬鹿って言いやがったな!」

マミ「…………」

さやか「……大丈夫なの、ホントに?」

葉「……無無明亦無しかねえよなぁ、やっぱ」

リゼルグ「そうだね、僕もそれが一番いいと思っていたよ」

チョコラブ「確かに、俺のオーバーソウルじゃちょっと相性がよくなさそうだ」

ホロホロ「俺は……基本的に氷しかねえから、今回はちょっと分野が違うか」

ホロホロ「オイ蓮!お前も基本、雷なんだから今回の所は……」

蓮「武神魚翅!」

ホロホロ「は……?」

蓮「九天応元雷声普化天尊!!」

魔女「――――」

蓮「…………」

蓮「……フン、やむを得んな」

ホロホロ「お前さっき俺に派手な技使うなっつったよな!どんだけ目立ちたいんだクソトンガリ!」

杏子「…………これは」

ほむら「……ダメかもしれないわね、色々と」

キュゥべえ「新しいお仲間みたいだけれど、まさかあの魔女を倒すつもりかい?」

葉「倒すんじゃねえさ、元のまどかの魂の形に戻さねえと」

キュゥべえ「不可能だね、あの魔女は『救済』の魔女」

キュゥべえ「あの魔女を倒したくば、世界中の不幸を取り除く以外に方法は無いよ」

葉「え…………?」

蓮「……まさか」

リゼルグ「こんなことが……?」

チョコラブ「ちょっと出来すぎじゃねえか?」

ホロホロ「ああ、まったく嫌になるぜ」

キュゥべえ「…………?」

葉「世界中の不幸を取り除く……?」

葉「何だ、世界中のみんなが楽に暮らせる世界を作りてえっていうオイラの目標と同じだな」

蓮「葉、やはり貴様が撃て……俺たちの巫力を貴様に上乗せする」

ホロホロ「ここまで打ってつけの人材がいるかってんだ」

チョコラブ「この戦いが終わったら俺の考えた最新爆笑ギャグを披露するからな」

リゼルグ「はは、チョコラブ君のギャグが爆笑だなんて面白い冗談だね」

葉「お前らも手伝ってくれ!」

さやか「……ほむら、動ける?」

ほむら「なんとか、ね」

杏子「……あたしは大丈夫だ、一人で歩けるよ」

マミ「そう……それならいいけれど」

アンナ「ちんたらしすぎよ葉!もうあと少ししか持たないわ!」

葉「すまんアンナ!あとちょい堪えてくれ!」

ホロホロ「ははっ!葉の奴、アンナに怒られてやがんの!」

蓮「小学生か貴さ」

チョコラブ「小学生かよっ!」

蓮「…………」プルプル

チョコラブ「秘技第三者ツッコみ!捻りも角度もパワーアップしてるだろ?」

リゼルグ「チョコラブ君、あとで血の海に沈まないように気を付けてね」

葉「よしっ……と、じゃあみんなこれでほんとに最後だ」

杏子「これでもしダメだったら……お終いだな、ホントに」

さやか「縁起でもないこと言うなっての」

マミ「私たちで力になれるなら……!」

ほむら「ねえ、一つだけ聞いてもいいかしら」

葉「おお、いいぞ」

ほむら「どうして、あなたはそんなに私たちを助けてくれたの?」

葉「どうしてって……決まってるだろ」

ほむら「…………?」


友達だから、助けるんだろ?

ほむら「……ありがとう、麻倉葉」

葉「おし……じゃあみんな、最後のひとふんばりだ!」

葉「行くぞ!阿弥陀流!!」






――――『無無明亦無』!!

・・・

まどか「…………」

まどか「んっ……!」

葉「よっ」

まどか「葉さん……ありがとう、ちゃんと止めてくれて」

葉「オイラは大したことしてねえさ、例だったらほむらたちに言っといたほうがいいぞ」

ほむら「まどか……!」

まどか「ありがとう、ほむらちゃん……!」

チョコラブ「あーあー、みんな泣いちゃってまあ」

ホロホロ「まあいいんじゃねえか?泣かないおっかねー女よりは泣く可愛い女のほうが」

リゼルグ「ホロホロ君、後ろうしろ」

ホロホロ「あん、後ろ?」

アンナ「…………」

ホロホロ「いや待てよ!今のはアンナのことを言ったわけじゃ……」

パーンッッッ!!

蓮「チョコラブ……貴様もだ」

チョコラブ「え?」

サクッ

チョコラブ「ギャー!?は、鼻が!?マジで刺しやがったコイツ!!」

葉「……はー、なんとかなったな」

アンナ「そうね、最後はだいぶ手間取ってたけど」

葉「ウェッヘッヘ、まあそういうなよ」

アンナ「でも、これでとりあえずはあんたの馬鹿兄貴の無茶振りも終わったわね」

葉「ひでえよなあ、いきなり」

『世界をよくするんだろう?じゃあ、まずは日本にいる魔法少女たちを救ってみせろ』

葉「……だもんな」

アンナ「まあ、それでも思ったよりは楽しめたわね」

葉「だな」

アンナ「…………」

アンナ「……カッコよかったわよ、葉」

・・・

マミ「えっ……もうここから……?」

葉「元々は体験入学って名目で入ってきてたからな」

杏子「じゃあ……もう行っちまうってことか」

葉「おお、今までありがとうなみんな」

さやか「あの……ホントに色々と迷惑かけちゃって……」

アンナ「ホントにいろいろ迷惑かけてくれたわね、あんた」

アンナ「いい女でありたいなら、あの時にあたしが言ったこと、忘れるんじゃないわよ」

ほむら「……ありがとう、私からはそうとしか言えないわ」

まどか「本当に……最後まで助けてくれて……!」

葉「次にまどかと会う時には、もし万が一まどかが魔女になっても大丈夫な世界になってるといいなあ」

まどか「…………?」

葉「世界中のみんなが楽に暮らせてる世界になってるよう、オイラも楽しながら頑張るからな」

まどか「あはは……私も、また会える日を待ってます」

さやか「最後に……ホントにありがとう、あたしを助けてくれて」

マミ「もう少し、あなたたちとは触れ合いたかったけれど……またいつでも見滝原に来てね」

杏子「父親と話させてくれてありがとうな、それと……なんていうか楽しかった!」

ほむら「……さよならとは言わないわ。また、必ず会いましょう」

葉「おお、またな!」

アンナ「…………クスッ」

『フン、葉のやつめ……意外とやるじゃないか』

『まあ……最後は僕がアイツの所へ五人の戦士を向かわせなければお終いだったかもしれないけれどね』

『でも、一応合格点にはしておくよ』

『次に僕が地上に転生するまでには、今よりもっとましな世界になってるよう祈るよ』

・・・

葉「さーて、とりあえずこの後はどうするかな」

アンナ「どうもこうも、帰るんでしょ。ふんばり温泉に」

葉「ふんばり温泉に帰ってからは……んー、何も思いつかねえや」

アンナ「あら、修行でもしたいのかしら?」

葉「きょ、今日だけは勘弁……!」

アンナ「じゃあもう今日は早く寝ることね、疲れてるんだろうし」

葉「んー……そうだな、今日はいろいろと疲れたし……帰って風呂入ったら、とりあえず……」

葉「寝るぞーっ!!」


アンナ「……あたしも、一緒にね」


(未)完

終わった、長々と付き合ってくれてありがとう。
(未)完なのはアフター的な何か書こうかと思ったけど、眠くてやっぱ無理だったみたいな。
一応切りも良かったからここまででとりあえず、勘弁してください。
というわけでもう寝ます。

葉「ウェッヘッヘ」
まどか「ウェヒヒヒ」
葉「ウェッヘッヘ」
まどか「ウェヒヒヒ」
葉「ウェッヘッヘ」
まどか「ウェヒヒヒ」

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