八幡「(小町、お前に決めた!)」 (69)

前スレの続き

前スレ
八幡「(俺が…桃太郎…だと?)」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1382301758/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1385884561

八幡「んじゃぁ…小町で」

   「(どう考えてもこれが一番無難だろ)」

陽乃「(波風たてず、だなぁ)」

小町「え?」

八幡「これで物語は終わりだろ?」

   「(実際に結婚するわけでもないし、兄妹でもいいだろ別に)」

小町「(へ、へたれお兄ちゃんだ)」

   「(ま、まぁ恐らく小町を選ぶだろーなーとは思ってたというか)」

   「(だってお兄ちゃん選ぶのとか得意じゃないし)」

   「(…)」ドキドキ

結衣「(ヒッキー逃げた…)」

   「(でも陽乃さんとかゆきのんとデートされるよりはいっか)」

   「(シスコンだから予想はしてたけど)」

川崎「(…シスコン)」

大志「(うらやましい…)」

小町「(お兄ちゃんとデート)」

   「(で、でも普通に一緒に買い物とか行ってるし!)」

   「(手とかもつないでるし)」

   「(でもデートって意識すると少し恥ずかしいというか)」

 陽乃「じゃぁお開きにしよっか。これ以上粘っても何も進展はなさそうだし」

    「じゃ、比企谷君は小町ちゃんとデート?」

    「念を押しとくけど他の子じゃなくていいの?」

八幡「えぇ」

陽乃「つまんないの。もう解散!」

八幡「(どんな展開を期待してたんだよ)」

   「(なんにせよ無事に終わったのはいいことだ。ほんとにめでたしめでたし)」

   「(小町だったらデートも有耶無耶になるだろうし)」

   「(無論二人でお出かけ、程度なら別に普段から行っているわけだし)」

   「(べ、別にデートとか思ってないんだからね!…ふぅ)」

かぎカッコとかっこが重なってるからすげぇ見づらい

後日(現実)

小町「(お兄ちゃんがデートに誘ってこない)」

   「(もう一週間はたってるのに)」

   「(戸塚さんとはこの前お出かけしてたのに)」

   「(ふむぅ。少し小町も行動を起こさないとかな)」

   「(女の子にそんなことさせるなんてほんとごみいちゃんだ)」

「(ターゲットはリビングに潜伏中!)」トタトタ

「(ターゲットを発見、ラノベを読みながらソファでくつろいでいる模様)」

「(いざ突撃!)」

「おにーいちゃん」

八幡「どうした、勉強で行き詰ったか?」

   「ちなみに俺の懐事情は寒い」

小町「なんで二択なの」

   「そうじゃなくてだよ」

   「先週はいろんなことがあったねぇ」シミジミ

八幡「(…どうしたんだ急に)」

   「あったか?」

   「今週は戸塚とデートという特大イベントがあったが」

小町「…」

   「(デートって単語ではっとこないのかなー)」

   「ほら、変な世界に入ったり」

八幡「あぁ。陽乃さんの暇つぶしか」

   「あれは大変だったな。主に俺が」

小町「うんうん」

八幡「まぁ最終的には何事もなく済んでよかったが」

小町「…」コホン

   「特に最後が波乱万丈だったねー」

八幡「最後?」

   「ごちゃごちゃしててよく覚えてないな」

   「陽乃さんが恐ろしかったことは記憶に鮮明だけど」

小町「(本当に忘れてるのかふりなのか)」

   「(でもお金がないのは事実みたいだから…やっぱり忘れてるふりか!)」

   「(だとすると大問題)」

   「お兄ちゃん、大問題!」

八幡「…どうした。急に大声で」

   「問題?クイズか?」

小町「今小町は怒ってます。何故でしょう!」

八幡「(いつものことながら突飛だな)」

   「(この前はご褒美に関しての誘導尋問でしまいには千葉村にいたわけだが)」

   「楽しみにしてた番組でも見逃したか?」

小町「ちがう」

   「罰ゲームとして今度お兄ちゃんケーキおごって」

八幡「(間違ったら罰ゲームとか…いつの間にか陽乃さん化している)」

   「(これ以上陽乃さんに小町を接触させない方がいいな。俺のためにも)」

   「(なぜ小町がぷんすかしているのかはよくわからないがこれ以上機嫌を損ねない方がいいだろう)」

   「(親父に密告でもされたら俺即死だし)」

   「分かった。今度な」

小町「(んなっ!)」

   「(ヒント出したげたのに…)」

八幡「」ペラペラ

小町「(すべてが終わったかのように本読んでるし)」

   「(ケーキで解決しようなんて、甘すぎるよお兄ちゃん!ケーキだけに!)」

   「お兄ちゃん、まだ終わってない」

八幡「そうか」

   「(今日はやけに執着するな)」

   「んじゃお前がとっておいた菓子を俺が食べちゃった。身に覚えはないが」

小町「全然ちがう!」

   「服も買って」

八幡「ちょ、ちょっと待て」

   「(今のはもう少しかっこつければ国民的アイドルになれていたかもしれない…)」

   「(じゃなくてだ)」

   「服は高いだろ。俺バイトもしてないからお前と懐事情そんなに変わらないぞ?」

   「(甘やかされていない分むしろ俺の方がピンチだったりする)」

   「それにお前服はおととい買ってただろ」

小町「そ、それはだってお兄ちゃんのためじゃん!」

八幡「絶対違うだろ!」

   「俺に女装癖があるわけでもないし」

   「小さいころに幼馴染が川に転落してそのトラウマが…なんてこともない」

小町「(お兄ちゃんだって彼女さんは可愛いほうがいいでしょ、なんて)」

   「(ちょっと本音を漏らしちゃったけどなお気づかないお兄ちゃんって)」

   「(そのうちどんな爆弾発言があっても「なんだって?」とか言って誤魔化しそう)」

   「(でもお兄ちゃんはいつも小町の事大事って言ってる割には扱いがてきとーだし)」

   「(水着見せても反応薄いし。結衣さんのときはなんか青春の1ページ!みたいになってたのに)」

   「(そりゃ結衣さんは胸大きいけど。お兄ちゃんはやっぱり巨乳好き)」

   「お兄ちゃんの…バカ」

八幡「(な、なんなんだ今のは)」

   「(妙に可愛かった)」

   「(いや、小町が可愛いのはいつもの事なのだが今のはいつもと違うというか)」

   「(大体今の台詞はあれだろ、よく鈍感すぎる主人公に対してツンデレヒロインがいうやつだろ)」

   「(いつの間にか小町がツンデレに?)」

   「こ、小町。具合でも悪いのか?」

小町「(なんか方向が違う)」

   「(こうなったらもう…セクシーアタックしかない!)」

   「(小町の豊満なボディで…)」

   「(…)」コホン

「(将来有望なボディでお兄ちゃんを悩殺!)」

「(女の子に対しての免疫がないお兄ちゃんには効果抜群!)」

「(もしかしたら急所に当たるかも!)」

「(ちょっと頑張ればうぶなお兄ちゃんはちょちょいのちょいだよ)」

「(では…)」

「おにーいちゃん!」ダキッ

八幡「(振出しに戻った)」

   「だからどうした?」

小町「いやぁ、ただちょっとお兄ちゃんに甘えたくなっただけだよ」

   「お兄ちゃんの傍にいるだけで小町は幸せだから!今の小町的にポイント高い!」

八幡「はいはい」

   「」ペラッ

小町「(なっ!ちょー可愛い妹に抱き着かれても平然とラノベの続きを読むなんて)」

   「(お兄ちゃんどっか壊れてるんじゃないの?)」

   「(…壊れてなきゃそもそも今みたいなお兄ちゃんにはなってないか)」

   「(むぅ)」

   「」フゥ

八幡「おふっ」

   「(耳に生暖かい息が…)」

「(にしてもいつになく小町の絡み方が雑だ)」

   「お前、本当に風邪でもひいてるんじゃないか?」

小町「大丈夫。小町はただお兄ちゃんにサービスしてあげてるだけだから」

   「耳にふぅなんて彼女でもできないとやってもらえないよ?」

八幡「お前は知らないかもしれないが、二人でできることは大概一人でもできるんだよ」

   「テニスも神経衰弱もジェンガも」

   「俺なんてレベル高すぎて既に本来十八人を必要とする野球までできるからな」

   「いつものことながら俺万能すぎる」

てか()あるなら「」いらなくね?

小町「…お兄ちゃん、自分で言っててむなしくならないの?」

八幡「むなしくなるどころか楽しくなるだろ」

   「第一十八人を一人でこなすってことは経験値もリア充よりも十八倍ってことだろ?」

   「となると俺は一人でリア充を十八人相手にできるわけだ」

小町「よくわかんないけどお兄ちゃんが可哀そうなことはわかったよ」

八幡「何もわかってないだろ」

小町「っていうか大事なのはそんなお兄ちゃんのぼっち自慢じゃないの!」

「えっと、ほら。流石にキスとか出来ないじゃん」

八幡「はっ。小町、俺を誰だと思ってる」

   「目を閉じて人差し指と中指を唇に当ててみるとそれらしく感じる…」

小町「」ジーッ

八幡「…らしい」

小町「お兄ちゃん、それは流石に小町も二歩くらい引いちゃうよ」

八幡「だかららしい、だよ」

>>3 >>12

修正しときます

小町(ちょっとお兄ちゃんが動揺してる今がチャンス!)

   「じゃぁ小町とキスしてみる?」

八幡「は?」

   (こいつは急に何を言い出すんだ)

   (ラノベの常識の範疇を大きく外れた妹じゃあるまいし)

   (もしかして血が繋がってないとか言い出すのか?)

   「風邪ひいてるなら寝てろ」

小町(むむ、なびかない)

   (こ、こうなったら!)

   「あ、あついなー。上脱いじゃおっかなー」チラチラ

小町(こ、小町がここまで体張ってるのに!)

   (少しでも間があればラノベに戻ってる)

   (そんなラノベの中では妹のお着換えシーンでお兄ちゃんは赤面するはずなのに!)

   「お兄ちゃん、小町がここで急に着替えだしたらどうする?」

八幡「ん?別にどうもしないだろ。いつものことだし」

小町「」ガーン

   (そうだった)

   (いやー、いつも部屋まで戻るの面倒くさいときとかやっちゃうし)

   (お兄ちゃんに耐性がついちゃってた!)

   (し、下着では全く動じないとなると…え、裸?)

   (それともあの伝説の裸エプロンとかYシャツとかその他もろもろの)

   (読んでるラノベとかにそんなの出てきてそうだし)

   (お兄ちゃんにいつの間にかそんなフェチが出来てたなんて)

   (そういえばメイド喫茶もいったらしいし)

   (お兄ちゃんだんだんオタクになってるかも!)

   (そ、そしたらそのうちあのざいなんとかさんみたいになっちゃったり)

   (そ、それは小町が阻止しなきゃ!)

   「…」

   「お、お兄ちゃん。まさかそこまでだったなんて」

   「でも小町も頑張って阻止するから!」

八幡(また急に噴火した)

   「ど、どうした」

小町「どうせ小町は便利な逃げ道ですよーだ」

   「デートのことだってどうせとっくの昔に忘れてるんだろうし」

   (そりゃむかしむかしあるところにの桃太郎だけど!)

   「もうそんなテキトーお兄ちゃん大っ嫌い!」

八幡「ぐふぉぁっ!」

小町「普段も全然褒めてくれないし」

   「小町だって女の子だよ?」

   「いくら妹でも水着見せたら感情こめて褒めるのがフツーじゃん!」

   「変なときに小町の事大切だとか愛してるとかいうけど全然態度にあらわれてないじゃん!」

   「そんなお兄ちゃんはお兄ちゃん失格!」

八幡「ひでぶっ!」

小町「小町はこんなに頑張ってるのに…」

   「普通の妹以上だよ?」

   「なのにお兄ちゃん無関心だし…」ウルウル
   
「や、約束してたのに覚えてないし…」グスッ

「小町は、選ばれて、う、うれしかったのに…」

「お、お兄ちゃんはただお茶を濁すとかそんな感じだし」

「ず、ずるいよなんか…」ウゥッ

「お兄ちゃんのばかぁ」

八幡(お、お花畑が…)

  (あ、死んだばあちゃんだ)

  (鋼の心を持つ男、略して訳してアイアンマンとまるで英雄のように呼ばれたこの俺が瀕死状態にあるとは)

  (妹が唯一の弱点とかなんか悲劇の主人公みたいだ)

  (無論彼らは妹そのものに危害をくわえられるわけではなく妹が敵にわたったら無力)

  (的なことなんだろうけど)

  (…ん?)

  (こ、小町が泣いている…だと…)

  (非常事態だ)

  (ど、どこのどいつにやられたんだ!ちくしょう!親の顔が見てみたい!)

  (…混乱しているようだ)

  (なんにせよ小町を泣かせた奴は俺がやる…)

  (涙に呼応してよみがえるとか…俺はぐれ勇者かよ)

「こ、小町…」

小町「お兄ちゃんの…分からず屋…」グスッ

八幡「!」

   (ま、まさか俺が原因だったとは)

   (切腹か?切腹しか道はないのか…ハラキーリ)

   (などとふざけている場合ではない!)

   (ど、どうする俺。小町が泣くなんて相当なことだし…)

   (…会話を思い出せば出すほどに心に色々と突き刺さるな)

   (先ほど致命傷を与えられたばかりだというのに)

   (可愛い妹泣かせて…ほんと俺兄貴失格だろ。父親こと処刑人がくるほどに)

   「すまん」

   「お前の言ってることは全部事実だ。実際あの時はその場をしのぐために小町を選んだわけだし」

   「小町だからって甘えてた部分も大分あったから、その分小町にはつらいっつーか、嫌な思いさせてた」

   「観察得意なぼっちのくせして小町に関しては全くだった」

   「ほんとすまん」

小町「…」グスッ

   「反省してる?」

八幡「猛省してる」

小町「じゃぁ…」

   「キスして」

八幡「へ?」

小町「女の子を慰めるときはキス」

八幡「お、おい。それはなんだ。違わないか?」

小町「白雪姫なんてキスで生き返ったし」

八幡(そりゃ工房の魔女とかもキスが起爆剤だったりするけど)

   (そういや魔女が7人でてくるあの漫画ではキスが魔法の発動条件だし)

   (キスしまくって逆に有難味がなくなってた気もしたが)

鬼退治はどうなった

>>26

スレの序盤にて急速に鬼、つまり陽乃さんが飽きて終了

ご都合主義に鬼は退治されたとも言える

小町「…したくないの?」

八幡「そ、そういうわけでじゃないが。ほら、普通じゃないだろ?」

小町「小町が泣くのも普通じゃないもん」

八幡「それはそうだが」

   「なんというか…キスとか…響きさえも恥ずかしいだろ」

小町「指で練習してるのに?」

八幡「うっ」

   「(饒舌だ。いつにもまして痛いところを突いてくる)」

   「で、でもほら。それはゲームで運転を練習しても現実には全く関係がないのと同じでだな」

   「練習自体はあまり意味がないんだよ」

小町「別にそんな極められたキスされたいわけでもないし」

   「…なんか必死に逃げようとしてる」ムゥ

   「小町ショックかも」ジッ

八幡「んな…そんな潤った目で見つめられても…」

   「(困る。非常に困る)」

   「(まさか小町が陽乃さんに匹敵するほどの人を困らせる能力を手に入れていたとは)」

   「(末恐ろしいな。おそらく俺将来手玉に取られるな)」

   「(もうすでに、という説もあるが)」

>>28

そういうわけでじゃないが→そういうわけじゃないが

小町「…まだ?」

八幡(ここはもうどこかのイケメン主人公のように接吻するしかないんじゃないだろうか)

   (おそらくラノベの中には妹にキスをする主人公なんて多すぎるほどにいるだろう)

   (大概の妹が兄に好意を持っているわけだし)

   (き、キスなんてあれだろ、ただの皮膚の接触だろ?)

   (ふむ。焦りすぎてなんか駄目な奴のテンプレな台詞を思い浮かべてしまった)

   (落ち着け、平常心を保てば自然と答えは見えてくるはずだ)

エンジェル八幡(この接吻には何もやましい感情などこめられてません。目的は可愛い妹をなぐさめるためなのですから)

デビル八幡(ゲームじゃ妹ルートなんて当たり前みたいにあるじゃねぇか)

     (ゲームのシチュが現実に出現するなんてそうそうないんだからよ、やっちゃえよ)

A八幡(汚れた心で先を見据えてはいけません)

D八幡(第一あっちが要求してるんだぜ?)

八幡(これが他人ならまだしも小町だしなぁ。デビルには従えないだろ。倫理的に考えて)

A八幡(このようなイベントはさっさと済ませて戸塚さんとでも遊びに行けばどうですか?)

   (個人的には暗いところがおすすめですが)

八幡(…)

  (そうだった。エンジェル八幡はとっくの昔に堕ちてるんだった)

  (っつーか戸塚のこと好きすぎるだろ)

  (無論俺が小町に邪な感情を抱くわけがない)

  (だからといってキスがちょちょいのちょいと爽やかにできるわけでもないが)

  (も、もうこれはやるしかないだろ)

  (落ち着くんだ俺。これは兄妹間のスキンシップであってそれ以上でもそれ以下でもない)

  「ん、んじゃ…わかったよ」

小町「へ?」

  「…」

  「!!」

  (ま、まさかあのお兄ちゃんが本当に!)

  (なんかイライラしちゃったからちょっとんがーってなっただけで)

  (その…まさか本当にお兄ちゃんがキスを承諾するなんて思ってなかったし)

  (…どうしよ)

  (べべ、別に嫌とかそういうわけじゃないけどやっぱり恥ずかしいし)

小町(小町が言い出したんだから覚悟しなきゃ)

   (ちょ、ちょっとチュっとするだけだからそんなに大事でもないと思う。うむ)

   (ときどきドラマとかでもやってるの見たことある)

   (…)

   (…)

   (駄目だ。なんか顔が熱くなってきた)

   (ふぐぅ…お兄ちゃんにここまで追い詰められるなんて)

   (まさかだよ!)

八幡(いいのか俺)

   (この事実が外に漏れることはないだろうが)

   (しかしだ。やるとは言ったもののやはり難しいな)

   (したことないし)

   (キスするときって唇とがらせるの?タコみたいになるの?)

   (疑問符しか浮かばない)

八幡「い、行くぞ」

小町「ふぇっ」

   「…うん」

八幡(か、顔が近い)

   (妹といえどここまで顔を近づけたことはないわけで)

   (おでことおでこで熱を測る、なんてイベントを経験したこともないし)

   「いざ!」

小町「ふにゃ!」

   「ストップストップ!」

八幡「うぉ、す、すまん」

   (拒否られて思わず謝ってしまった)

小町(や、やっぱりすごい恥ずかしい)

   (お兄ちゃんの顔近いし)

   (お、落ち着かなきゃ)

   (めーきょーしすい)

八幡(すこし傷ついた)

八幡「やっぱやめとくか」

小町「え、えっと」

   「…やめない」

   「じゃ、じゃないとお兄ちゃん許せない」

八幡(まさかこのキスがそこまで重いとは)

   (小町が許してくれないとかで口をきいてくれなくなったら俺生きていけないよ?)

   (完遂するしかないのか)

   (いつの間にこんなリア充実っぽいルートに。そろそろ爆発するな俺)

   (しかし小町ルートをコンプリートして爆発…これも悪くない…か)

小町(なんかお兄ちゃんが大仏みたいな顔してる)

   (悟ったのかも)

   (こ、小町も悟らなきゃだ)

   (な、なむあみだぶつ?)

   (あ、数学のπを思い出せばいいんだっけ)

   (えと…3.14…えっと…2?)

八幡「い、いくぞ」

小町「…うん」

八幡(初心な俺にはなかなか気恥ずかしい試練だ)

   (おそらく握手会に行っても握手できないファンがいるとしたらその心情は分かった気がする。いるのかわからないけど)

   (しかし時には男を見せなければならない時もある。小町とか戸塚の前などで)

小町(うぅ。やっぱしお兄ちゃんの顔が近いと恥ずかしい…)

   (寝顔くらいしかこの距離じゃ見たことないし)

   (そ、そうだ。もぅ目を閉じちゃおう。うん、そうすれば恥ずかしくないはず)

   (だってドラマとかでもみんな目閉じてるし)

   (なるほど。ようやく小町にも女優さんたちの気持ちが理解できたよ)

八幡(んなっ。目を閉じるだと…)

   (は、破壊力がすさまじい。この技は早急にもあのゲームに追加するべき。フェアリータイプの威力150)

   (目を閉じるだけでこれなのに…おそらく小町にキスなんかしたら俺卒倒するな)

   (教会に金払うかジョーイさんにどうにかしてもらわないと)

小町(…)

   (お兄ちゃんももも、もしかして唇にキスしようとしてる?)

   (ぜ、絶対おでことかほっぺとかだと思ってたのに)

   (…まさかの唇)

   (小町のファーストキッスになっちゃうよ)

   (で、でもお兄ちゃんのはカウントされないというか。だから別に…)

八幡「やっぱやめるか?」

   「多分い亜の俺たちのテンションがおかしいんだ。慣れないことしてもどうにもならないだろ」

小町「お、お兄ちゃんが唇にしようとするからじゃん!」

   「普通おでことかなのに…」

八幡(な、なるほど)

   (キスという不慣れな響きに混乱していてそんな簡単な回避方法が思い浮かばなかった)

   (そうだ。ただおでこにキスをすればいいだけの話だろ)

   (それくらいならば恥ずかしいことに変わりはないが唇よりも数段ハードルが低い)

   (いままでもハードルを越えるどころかくぐってきた俺としたことが今の今まで気づかないなんて…)

   (パニックというのは恐ろしいな。たたいてもたたいても出てくるし。あれはワニだけど)

八幡(そんな俺に比べると小町は落ち着いてるように見えるな)

   (…ふむ)

   (…)

   (…!)

   (もしや!)

   (こ、小町はもしかするとキスとかしたことがあっちゃったりするんじゃないだろうか)

   (何を隠そう小町は可愛い。そりゃもう隠そうと思っても隠しきれないほどに)

   (小町の周りにはびこる思春期のガキがそんな小町に魅力を感じるのは当然のことだ)

   (普通はそこで小町に自分なぞが届くはずがないと諦めるはずなのだが)

   (川なんとかのガキの如く時折おつむの弱い奴らが自分でも小町に手が届くんじゃないかと思うやつがいる)

   (そんな一人が無駄に漫画で知識をつけて突然のキスってかっこいいよね、とか思っちゃったりして…)

   (自分の容姿および能力を確認することもなく無謀にもその稚拙な作戦を実行した場合…)

   (…俺が血で手を汚す日が来たようだ)

   (即急にもそいつも見つけ出して処刑してやらなければならない)

   (俺の可憐な小町に手を出す輩はアクタイオーンのように罰せなければ)

小町(なんかお兄ちゃんの目がいつにもまして淀んでる)

八幡「小町。俺にまかせとけ」

小町「え?…何を?」

八幡「ちょっと俺は出かけてくる」

   (おそらく犯人はすぐに見つかるだろう。馬鹿だし)

小町「ど、どこ行くの?」

   (急に方向転換が)

   (それにキスもまだしてないし…)

八幡「いや、小町の唇を強奪した下劣な悪漢をどうにかしにいく」

小町「…小町の唇をごーだつ…」

   「へ?何の話?」

八幡「いや、だから…」コレコレシカジカ

小町「…」

   「お兄ちゃん何考えてんの」

八幡(小町が呆れている)

小町「そんな事件起きてないよ」

八幡「…そうか」

   (信じたいことのみを信じる阿呆な男子の特性が出てしまったようだ)

   (冷静になってみればいったい何を考えていたんだ…)

   (小町ともなれば突如のキスをかわし、かがみこんでアッパーカットをくらわせるくらいは出来るか)

   (歌って戦えるらしいし)

小町「小町…キスとかしたことないし」モゴモゴ

八幡「…そうか」

小町「で…その…お兄ちゃんはキスするの?」

八幡(うぐっ)

   (今ので流れたかなーとも思っていたんだがやはり甘かったか)

   (まぁいい。唇どうしじゃなければ戸塚ともこんなイベント経験してるわけだし)

   (女子よりも先に男子とこんな特殊な経験値重ねるとか俺エリートすぎる)

   (そのうち裸の美男子が空から降ってくるかもしれない)

   (海老名さんしか喜ばないだろそれ)

   「その…なんだ。ちゃっちゃと終わらせるぞ」

小町「うん」

。。。長引かせすぎたからかおとし方が分からなくなった

八幡(落ち着くんだ俺)

   (さっさと終わらせて、ゲームでもやって、カマクラをからかえばもはや忘れているに違いない)

   (寝起きのキスなんてものがあるくらいだからやはりキスは朝飯前なんだろう)

   (欧米では挨拶代わりなんだし)

   (いざ)

小町(やっぱ緊張してきた)

   (勢いでここまで来ちゃったけど)

   (でも引き下がれないし、下がりたくもないというか)

   (最近のお兄ちゃんの周りには綺麗な人が続々と増えてきてるし)

   (ま、まぁそれは別に深く私に関係してるわけじゃないけど)

   (いや、私の義姉さん候補だから結構重要かも)

八幡(おでこに優しく触れるだけ)

   (かするだけでもいい)

   (し、慎重に…)

小町(完璧毒舌美少女、天然巨乳美少女、やさぐれツンデレ美少女。いろいろいるなぁ)

   (好意のほどはわかんないけど、ほかにも美人女教師とかふんわり生徒会長とかいるし)

   (お兄ちゃんいつの間にこんなハーレムに…)

   (お兄ちゃんもそのうち彼女とかつくって…)

   (そしたらクリスマスとかも彼女と過ごすようになって…)

   (お泊りとかもしちゃって…家でも話すことは彼女のことばかりで…)

   (…なんかちょっと。お兄ちゃんらしくなくてやな感じ)

   (嫉妬とかそういうのはないけど…)

   (可愛い妹だって捨てたもんじゃないと思います)

八幡(こういうところでばれちゃうんだろうな。俺の女への免疫)

   (会話したことのある女子が数えられちゃうくらいだしな)

   (拳を交わす、っつーか一方的に拳を食らう仲の人なら一人いるけど)

   (女よりも女らしい戸塚もいるけど)

八幡(さて、それよりも目前の任務を処理しなければ)

   (あとたかが20センチほどだ)

小町(あーもぅ)

   (中学生のころはお兄ちゃん本当に友達いなかったのに)

   (流石平塚先生…)

   (さびしくないわけじゃないけど…やっぱお兄ちゃんも一人のままじゃいけないと思うし…)

   (でも小町だってお兄ちゃんのこと…好きだし)

   (も、もちろん兄妹的な意味で)

   (だから…)

   (だってお兄ちゃんもしようとしてたし…)

   「お、お兄ちゃんも目閉じて」

八幡「お、おぉ」

   (なんか恋仲な会話で無駄にドキドキする。無論小町だから、というわけだが)

   (これが雪ノ下だったら多分二度と目を開けられないよ俺。おそらく死んでるから)

   (…あれだな。目を閉じると耳に神経が集中するからより一層緊迫感があるというか)

   (心拍数三百は軽く超えてる気がする)

   (それに三千カロリーくらい燃やしているに違いない)

   (初心におすすめなダイエットだな)

小町(どうせ軽く済ませてすぐ忘れようとか思ってるんだろうし)

   (さっき小町も一人の乙女だよって教えたばっかなのに)

   (流石はお兄ちゃんおーまいごっどだね)

   (ちなみに和訳すると私のカミサマー。…変なの)

   (なんにせよ印象は強くだよ)

   (いざ!)

チュッ

八幡「!!」

   (い、今。唇に何か柔らかい感触が…ふぇ?)

   (唇がかっさかさだったからその、あれだが。い、今のはあれじゃないだろうか。あれあれ)

   (…いや待て。うぬぼれるなよ俺)

   (勘違いを妄信して痛い目にあったことは今までに幾度もある。会話したことのある女子の人数よりも多い)

   (…それってどうなのよ俺。男として。俺が孤高の戦士であることしか裏づけられていない)

   (とりあえず冷静になろう。雪ノ下の顔を思い出せ。おそらく背筋が凍る)

   (…脳内で雪ノ下をツンデレキャラにすればものすごく、冷静になりすぎてほんと凍え死ぬかもしれない)

   (無論そんな魔法は使えないわけですが。妄想の中であれ)

八幡(整理しよう)

   (今の柔らかい感触は…その…唇ですか?)

   (駄目だ。無駄に動悸が激しくて正常状態には当分の間戻れそうにない)

   (目を開けるのが怖いし)

   (これでドッキリよろしく目の前に材木座とかいたら多分死ぬ)

   (材木座を始末してから死ぬ)

小町(しちゃった…)

   (あ、改めてじっくりゆっくり考えてみるとなんかすごい恥ずかしいかも)カァァ

   (だだ、だってお兄ちゃんとキスなんて…漫画じゃあるまいし)

八幡(もし俺が何らかの拍子で標準を外して唇にキスをしてしまったとなると…)

   (そろそろ覚醒とかするんじゃないだろうか。よくわからないけどラノベに出てきそうな設定だ)

   (両親を亡くした三姉妹を引き取るわけでも、黒歴史が刻まれたノートを人質に偽恋人関係を迫られるわけでもないが可愛い妹はいるわけだし)

   (その点でのみ俺もまたラノベの主人公の素質があるともいえる)

   (やっぱり降ってくるのか?裸のヒロイン)

   (無論ヒロインが降ってきても最終的には巨神兵とか天空の城とか出てくる展開もあるわけだが)

   (まぁこれだってワードだけ聞けばラノベっぽくもなくもない)

   (ラノベの場合は変なルビがつく確率大だが)

小町(お兄ちゃんはどう思ってるんだろう…)

   (目は閉じたまま難しい顔してるし)

   (小町大胆すぎたかも)

   (うがぁ。や、やっぱし恥ずかしい)

   「い、今のナシ!ノーカウント!」

八幡「」ビクッ

   「な、なんだ」

   (目は開くしかないな)

小町「…今のなし」

八幡(まだ顔が赤いし涙ぐんでいる)

   (怒りは収まってないのか)

小町(落ち着けば落ち着くほどに…あぁもぅっ!)

   (多分さっきの小町はなんかにとりつかれてた)

   (ひょーい?みたいな)

   (だってお兄ちゃんにキスなんて…)

   (…)カァァ

   (…)プシューッ

八幡(小町が薬缶を体現している)

八幡(色々と気になるところはあるが、追求するのはやめておこう)

   (追求して得したことなんて一度もない)

   (自分に気があるのかもしれないと追求してみれば彼氏がいることを知るか逆に気持ち悪がられるかのどちらかだ)

   (俺の経験則には厚みがあるから間違いない)

   (事実は知らない方が数倍楽だ)

   (目をそらすだけでは逃げたことにはならないというが、その通りだ)

   (無視しようと思って無視しても無視にはならないのと同じ。さがみん状態)

   (しかし俺は目をそらすどころか開きもしない)

   (そもそも何も始まってないのだ)

   (勝負に出なければ負けることもない)

   (だから今回のこれも…)

   「んだな。ノーカンだな」

小町(お兄ちゃん全然慌ててない)

   (むぅ)

   (小町はあんなに勇気振り絞って…ドキドキもしてたのに…)

   (なんかふこーへー)

   「お兄ちゃんは…何考えてんの?」


八幡「別に…」

   (はぐらかして勝負を避ける)

   (ぼっちに備わった本能だなこれは)

   (他者がどんな態度を取ろうが俺は変わらない。変わろうとも思わない)

   (お年頃の俺の周囲はアイデンティティがあーだこーだと叫びながらもそれを努力して薄める)

   (他者に倣い、波に乗り。変わることでしか、順応することでしか居場所を確保できない彼らは)

   (他人と同じことがしたくないとやさぐれてみる彼らだって型にはまっていることに変わりはない)

   (第一「他人と同じことはしたくない」という台詞だって他人と同じだろ)

   (本当に一人独走したいのならば語尾に「ござる」でもつけてみればいいと思う)

   (流石にこれは漫画の中にしか存在しないだろう)

   (その点ボッチである俺は中々濃密なアイデンティティがあると思う)

   (不変だし。このような状況においてもなお)

   (ぜ、全然ドキドキなんてしてないんだからね!)

   (…だが)

   (目の前で愛すべき妹が目を潤わせながら上目遣いをしてきたら)

   (俺だって多少はのろけてしまうかもしれない)

   (…言い訳を長々と述べるのもまたぼっちの本能)

八幡「その…なんだ」

小町「?」

八幡「受験勉強…頑張れよ」

   「お前の学力で俺の高校は微妙なところだしな」

   「俺もできる限りサポートはするから」

   (べ、別に一緒の高校にいきたいとかじゃないんだからね!)

   (…最近ツンデレすぎるだろ俺)

小町「…う、うん」

   (なんで急に勉強の話?)

   (…)

   (もしかしてだけど…)クスッ

   「お兄ちゃんは相変わらずヒネデレさんですなぁ」ニヤニヤ

八幡「なんだよそれ。人気が出そうにない属性だな」

小町「それじゃぁおんぶにだっこでお願いします」ガシッ

八幡「物理的にかよ。っつーか重い」

小町「うわーお兄ちゃんそれ女の子に行っちゃダメでしょ。ラノベで習わなかった?」

   「それにその重みは愛の重みだよ。あ、今のは小町的にポイント高い!」

八幡「あー高い高い。そろそろ景品でももらえるんじゃないか?」

小町「ほうほう。それじゃ期待しとくよお兄ちゃん♪」

八幡「…なんで俺が景品出すことにまとまったんだよ」

小町「可愛い妹のためだよ。ほら、小町もご褒美あげるから」チュッ

   (ほっぺなら…ね?)

   (少し恥ずかしいのには変わりはないけど)

   (女は強し!)

八幡「んな!」

小町「どお?ドキドキした?」

八幡「うぜぇ…」

小町「やっぱ素直じゃないなー」ニヤニヤ

   「男がそんなでもモテないよ?」

八幡「余計なお世話だっつーの」

   「小町がいるし」

小町「ふぇっ?」

   (きゅ、急にそんなこと…そ、そりゃ嬉しいけど…)カァァッ

八幡「ほれ、今の八幡的にポイント高い。お米とかもらえちゃうレベル」

   「小町?」

小町「…そっか、ポイント…そうだよね…」

   (…んなぁ!)ベシッ

八幡「いって。なんだ急に。右腕に封印されたなんかが目覚めちゃうのか?お前もう中三だろ?」

小町「お兄ちゃんの…バカ」モゴモゴ

八幡「あ?」

小町「なんでもない」フンッ

   「今の小町はツンモードだから」

八幡「それ自分で宣言するものでもないだろ」

小町「いーの」

   「だからお兄ちゃんのミッションは小町をデレモードに変えること」

   「分かった?」

八幡「分かったもなにも」

小町「…」ジーッ

八幡「…」ハァ

   「はいはい。んじゃどっか遊びにでも行くか」

小町「うん!」

   「本当はデートにはもっとかっこよく誘ってほしかったけど」

八幡「経験不足なんだ」

小町「まぁいいよ。お兄ちゃんに多くは期待してないしね」

八幡「んじゃ俺の財布にも期待しないでくれ」

小町「うわぁ。男らしくない。流石お兄ちゃん」

八幡「ちげぇよ。ほら、男女平等が叫ばれてるだろ?だからあえて男が全部負担、なんて恐ろしい風習を取っ払ったんだよ」

   「時代の一歩先を行く男だからな。俺は」

小町「だから周りになじめないんだね」

八幡「そうともいえる」

八幡「ほれ、行くぞ」

小町「ちょっと待って!着替えてくるっ」ドタバタ

―――――――――――――――――――――――――――…
数分後

小町「お待たせー。待った?」

   「ちなみにお兄ちゃんの台詞は「いや、今着いたばっかだよ」だよ?」

   「本当は一時間も前に来てたのにね」

八幡「使いどころが間違ってるだろ」

   「まだ出発もしてないし」

   「っつーかお前それこの前買った服か」

   「似合ってんな」

小町「そ、そりゃ小町は素材が良いからねー」

   (褒められた…)エヘヘ

八幡「自分で言うな」

   (事実だけども)

   「今度こそ出発するか」

小町「うん」

   「お兄ちゃんお兄ちゃん」

八幡「あ?」

小町「手つなご?」

八幡「お、おぅ」ギュッ

   (いつも普通にやっているだけに改めて言われるとなんか気恥ずかしい)

小町「よし、それじゃデートへレッツゴー!」ガチャッ

八幡(妹とデートか。間違っている気がしないでもないが…悪くはない)

END

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