魔王「この女の子、すごく可愛いな…」(158)
魔王城
しもべA「魔王様は毎日、水晶玉を見ながらニヤニヤしてらっしゃる…」
しもべB「フッ、もうすぐ世界が我が物になるのだ、思わず笑いたくなる気持ちもわかる」
しもべA「だが…ああ毎日だと少し不気味だな…」
しもべB「…それは確かに」
魔王「…ウフフゥ(可愛いなぁ…この子)」
勇者「…何者かの視線を感じる」
剣士「どうした?勇者」
勇者「いや、さっきから凄いいやらしい目で見られてる気がするの…」
剣士「フッ、その答えならば簡単だ、勇者、お前は美しい、街行く人々がお前を見ているのだ」
勇者「またそれか…」
僧侶「でもでも、女性の私から見ても勇者様は美しいお方ですよぉ!」
勇者「はぁ、女になんか産まれてこなければこういう目にも遭わずに済んだってのに…」
魔法使い「フォフォフォ、安心せい!不逞の輩はこのワシが全て焼き払ってくれるわ!」
勇者「焼き払うのはやめてくれ…」
勇者「さて、そろそろ行こうか…」
剣士「む、いよいよか…?」
勇者「ああ、魔王城はもはや眼前、一気に進むよ」
僧侶「ドキドキします…」
魔法使い「待っておれ魔王!真の「魔」法使いの「王」は誰かをこのワシが教えてやろう!」
勇者「ちょっと意味違うんだけどな…」
魔法使い「何か言ったかの?」
勇者「いや、なんでも…」
勇者「よし、皆これを装備してくれ」
剣士「精霊の加護を受けた武器か…」
僧侶「これなら魔王にだってきっと!」
魔法使い「こういうのって普通は勇者しか装備出来ないんじゃがの」
勇者「何か言った??」
魔法使い「ゴホゴホ、あー老いぼれにはこの旅はちときついのう…」
勇者「先に言っておく、もし自分が死にそうになったときは逃げること」
剣士・僧侶・魔法使い「…」
勇者「いざ、魔王討伐へ!」
魔王城
しもべA「魔王様!勇者一行がこちらへ進軍中との知らせが入りました!」
魔王「うおっ!お、驚かすな馬鹿者!!」
しもべA「はっ、申し訳ございません!」
魔王「ククク、ついに来るか勇者よ…して、勇者とはどのような格好なのだ?」
しもべA「えっ」
魔王「えっ」
しもべA「魔王様、水晶玉で確認出来るのでは…」
魔王「うーん、世界は覗けるけどどれが誰とかわからんのだよこれ」
しもべA「マジすか」
魔王「マジ」
しもべA「ところでさっきは何故ニヤついていたのです?」
魔王「娘だよ」
しもべA「は、娘…なんていましたか?」
魔王「いや、お前も見てみろ!魔族の我々でも生つばを飲み込んでしまうほど美しいぞ!」
しもべA「に、人間じゃないですか!」
魔王「うむ、だが我らが滅ぼすべき存在である人間の中にこのような者がいるとは…」
しもべA「つーかあの、この格好って」
魔王「うむ?」
しもべA「勇者じゃないですか?」
魔王「えっ」
しもべA「だってほら、4人組ですし、装備品凄い強そうですしっていうかこいつらが歩いてるところって魔王城の庭じゃないですか!」
魔王「うおおおお!!マジかよ!えっ、つまり今からこの娘は私に我に会いに来るってこと!?」
しもべA「ま、まあ、そういうことになりますが…」
魔王「風呂入ってくる!!」
しもべA「えぇえええええ…」
魔王「いいか!丁重にもてなせ!わかったな!!あと我の部屋を片付けといて!」
しもべA「…世界はどうなるんです」
一方、勇者一行
勇者「ハッ!だぁっ!」
ズバァッ
剣士「脆いな…これが魔王直属の奴らだと言うのか?」
僧侶「私が杖で殴っても倒せます!」
魔法使い「魔法を使うまでもないわい!」
勇者「ついたぞ、これが魔王城だ…」
僧侶「あれ、何か見えますよ!旗?」
剣士「何か書いてるな、ゆ…う…しゃ…勇者旅団大歓迎」
勇者「は?」
剣士「いや、だから、勇者旅団大歓迎…ようこそ魔王城へ」
勇者「見間違いじゃないのか?」
剣士「確かにそう書いてある…近づけばわかるはずだ」
しもべAが現れた!
勇者「っ!」
ジャキッ
魔法使い「ちと手強そうじゃのう…」
しもべA「ようこそ魔王城へ!」
勇者「はえ…?」
しもべA「え、えーと、歓迎いたします!」
勇者「ポカーン…」
剣士「待て、俺たちを油断させる作戦かもしれん」
勇者「そ、そういうことか!おのれ!どこまでも卑怯な!」
ジャキッ!
しもべA「待て待て!俺は武器を持っていない!」
魔法使い「ふぅーむ…確かに敵意は感じられんのう」
?「ようこそ勇者ー!!!」
ダッダッダッダッ!
勇者「うわぁ!何か頭から角が生えた筋骨隆々の青白いオッサンが両腕広げて走ってきた!!!」
魔王「ふふふ、歓迎しよう!我がこの城の主!そしてちょっと前まで世界征服を企んでいた魔王だ!」
勇者「き、貴様が魔王…!」
魔王「だがもはや我の夢はそんなことではなぁい!」
勇者「!?」
魔王「率直に言おう、勇者よ…我と…いや、僕と結婚を前提にお付き合いしてください!」
勇者「ふ、ふざけているのか…!?」
魔王「僕は本気だ!」
剣士「何やってるんだ…」
剣士「…む、殺意?そこか!!」
ガキィン!
しもべBが現れた!
しもべB「ほう、私の剣を受け止めるとは」
剣士「お前はまともな魔物のようだな」
しもべB「ふん、私は世界征服には興味が無い」
ガキィンッ!ガンッ!ガンッ!
剣士「というと?」
しもべB「私を超える剣の使い手を探しているだけさ…」
剣士「なるほど、魔王の下にいれば向かってくる者がわんさか、ということか」
ガキィン!ガキィン!
しもべB「飲み込みが早くて助かるな、ハッ!」
剣士「フッ!」
僧侶「えと、えと…」
魔王「僕は君が好きだー!」
勇者「やめろ!私は貴様を倒しに…!」
魔法使い「うぅーむ…」
しもべB「ハァッ!」
剣士「ダァッ!」
ギィン!ガキィン!
僧侶「一体…」
魔法使い「何が起きてるんじゃ…」
しもべA「皆さん!続きは食事をしながらゆっくりと話しましょう!」
魔王城 食事の間
魔王「勇者よ…僕はもう世界はいらないんだ、ただ君が欲しいんだ…」
勇者「私は結婚するなら若くてイケメンでお金持ちがいいんだ!」
魔王「…僕では駄目なのか…」
勇者「青白くて筋骨隆々で頭から角が生えた旦那なんか嫌だ!」
魔王「うぅぅぅおおおおおおぉぉぉぉん」
勇者「…泣くほどのことなのか」
魔法使い「あ、泣かしたー!いーけないんだいけないんだ」
勇者「入れ歯抜くぞ」
魔法使い「はい、しゅみましぇん」
魔王「よし!勇者よ!僕とデートしよう!場所は君が決めて良い!」
勇者「だから私は…」
僧侶「一度くらい良いじゃないですか」
勇者「えぇ…」
僧侶「魔王とデートなんて中々出来ませんよ、というか人間初じゃないですか」
勇者「うぅ…まぁ、僧侶がそう言うなら」
魔王「ほ、本当なのかい!!」
勇者「あぁ…良いよ」
魔王「やったぞぉぉぉぉ!うぉぉぉぉおおお!我が世の春が来たぁぁ~!!」
魔法使い「にしても勇者よ、あっちも中々良い感じじゃぞ」
勇者「あっち?」
しもべB「いや、お前の太刀筋も魔族ではそうそういないぞ…フフ」
剣士「俺もお前ほどの剣士と出会ったのは初めてだ」
しもべB「それにお前、中々男前じゃないか…///」
剣士「む…お前こそ人間の俺が見ても美しいぞ」
しもべB「そんな…人間の男から褒められたって何も出ないぞ…」
剣士「ふっ…なぁ、良かったら二人で旅をしないか、世界を巡りながら剣の歴史を学びたいと俺は思っていたんだ」
しもべB「ほう、良いなそれは…お前と一緒なら私は構わない」
剣士「というわけで、俺はこいつと旅に出る」
しもべB「ぴかちゅー」
僧侶「ありゃりゃ、勇者様は人間で2人目になっちゃいましたね」
勇者「お前ら何でそんなに馴染めてるんだよおかしいだろおおお!!」
魔王「なぁ勇者よ!デートはどこへ行くのだ!!」
勇者「…そうだな、私が個人的に行きたい場所でいいか?」
魔王「勇者と一緒なら僕はどこでも構わないよ」
勇者「そ、そうか…」
勇者「じゃあ、私の故郷で良いかな」
魔王「いきなりご両親にご挨拶なのかい!?そ、それは気が早すぎるんじゃ…」
勇者「お前はいないものと考えていく」
魔王「…しゅん」
勇者「というかお前、魔王なんだから乗り物くらいあるんだろうな?」
魔王「あぁ、ドラゴンならいるが…」
勇者「じゃあそれに乗って行こう」
魔王「餌のやりすぎで太ってるから飛べないぞ」
勇者「ペットの生活管理は飼い主のマナーだろう!!」
魔王「いやぁ、可愛くてなぁ…」
勇者「じゃあ徒歩だな」
しもべA「あの魔王様、魔王様がいない間の城には誰が…?」
魔王「そうだなぁ…」
しもべA「…(まさか私が!?私めが!?)」
魔王「そこの爺さんでいいや」
魔法使い「ワシ!?ワシなの!?」
しもべA「…(ガーン)」
魔王「うん、ヒゲ生やしてるし魔王っぽいじゃん、ミルド○ース変身前に似てるし」
魔法使い「フフフ、ワシがついに魔王となったのだな…フハハハハ!」
勇者「僧侶、魔法使いがあまりバカをやらないようにしっかりついていてくれ」
僧侶「はぁい、もし変なことしたら入れ歯抜けばいいんですね」
勇者「そうだ、よくわかってるな」
魔法使い「よし、しもべよ、寝床の用意をせぇい!」
しもべA「は、はい…」
>>45
なるほどww
しもべは女なのか?
そして朝が来た
勇者「剣士たちはもう行ったのか?」
しもべA「えぇ、何か手つないでました」
勇者「そ、そうか…」
魔王「んごごごごごご…んごごごごごご…」
勇者「おい、起きろ!起きろってば!」
魔王「我の眠りを妨げるものは誰だ…んごごごごご」
僧侶「勇者様勇者様」
勇者「ん?」
僧侶「ゴニョゴニョ」
勇者「えぇえ!?」
僧侶「でも多分一発で起きますよ!」
勇者「わ、わかった…」
勇者「起きて、ア・ナ・タ」
魔王「ひゃ!勇者ひゃん!」
>>46
Aはゴブリンみたいな♂で、Bは比較的人間に近い見た目の魔族♀って感じです。
しもべA「ぶふっwっw」
魔王「はっ!?」
勇者「ほら、行くぞ」
魔王「気のせいかな、勇者が僕をあなたと…」
勇者「夢だな」
勇者「行く前に魔法使いにも挨拶していくか」
僧侶「行ってらっしゃーい」
玉座の間
勇者「じゃ、行ってくるから」
魔王「後のことは頼むぞ爺さん」
魔法使い「ファファファ!ワシを誰だと思っておる!世界をこの手に…」
シュバァッ!
魔法使い「ふがが!ふがふがふがががふ!」
僧侶「ニコッ」
しもべA「み、見えなかった…」
勇者「私よりも入れ歯を抜くのが早いなんて…」
魔王「あれは僧侶なのか?武闘家の方が向いてるんじゃないか?」
僧侶「それでは二人とも、行ってらっしゃい!」
僧侶「はぁ、よくよくかんがえたら私が暇なんですねぇ…」
魔法使い「ファファファ!ワシは魔王!魔王なのじゃぁ!」
僧侶「そうだ!お城の中を回ってみましょう!」
魔法使い「ファファファ!ひれふせい!人間どもぉ!」
ガチャッ バタン
魔法使い「ファファ…爺のごっこ遊びくらい付き合ってくれてもええじゃないかい…」
僧侶「あ、しもべAさん!」
しもべA「これは僧侶さん」
僧侶「なにしてるんです?」
しもべA「掃除だよ」
僧侶「お一人ですか…?」
しもべA「ああ、他の者はやらないからな」
僧侶「えー、でもお城凄い広いですよ?」
しもべA「自分が住んでいるところくらい清潔に保ちたいだろう」
僧侶「あ、それわかります!特にトイレが綺麗だとポイント高いですよー!」
しもべA「ポイント?よくわからんが、綺麗な方が使っている側も気持ちが良いだろう」
ゴシゴシ
しもべA「む?」
僧侶「私もお手伝いますね」
しもべA「良いのか…?」
僧侶「しばらくお世話になるんですから当然です」
しもべA「…そうか、では頼むよ」
僧侶「不思議ですね」
しもべA「む?」
僧侶「私達は貴方達を滅ぼすために旅をしていて、遂に目的地へ辿り着いたのに」
しもべA「…こちらもお前達を迎え撃つ気で待機していた」
僧侶「でも今はこうして一緒に掃除してる、フフ、不思議です」
しもべA「本当は…」
僧侶「え?」
しもべA「本当は誰も争いなんてしたくないんだ」
僧侶「…フフ、そうですね」
しもべA「俺は世界征服なんて興味が無いし」
僧侶「…」
しもべA「本当は人間も魔族も笑って過ごせる世界が良いと思っていた」
僧侶「…」
しもべA「でも魔族には角や鋭い爪がある、口から火を吹ける者もいる」
しもべA「そんなのは人間から見たらきっと化物だ」
僧侶「…」
しもべA「だから…うっ」
ポタッポタッ
しもべA「俺は今…嬉しいんだ」
僧侶「しもべAさん…」
魔法使い「なんじゃなんじゃ…若いもんはどいつもこいつも…ワシも婆さんに会いたいのう」
魔法使い「むむ、なんじゃこれは?水晶玉か?」
魔法使い「ファファ、調度良い、勇者たちを覗き見するとしようかの!」
魔法使い「んふふ、あんなことやこんなことになっていたらどうしようかのう…どれどれ」
その頃、勇者たちは
魔王「勇者よー!待って…待ってくれぇ…ぜぇぜぇ」
勇者「なんだぁ?その筋肉はハリボテなのか?」
魔王「違う、太陽が眩しくて…しばらく城にいたもんだから」
勇者「やれやれ、ほら水だ」
魔王「あ、ありがとう…ゴクゴク」
キャー!!!
勇者「っ!?なんだ!?」
魔王「おい!あれ、山賊か!?」
勇者「本当だ、助けないと!!」
ダッダッダッダッ
山賊頭「親は殺せ!子供は奴隷として売り飛ばすぞ!」
山賊A「へいっ!」
山賊B「あいあいさ!」
女性「た、助けて…!」
子供「ママ…」
山賊A「オラァッ!!」
女性「ヒッ!!」
ズバッ!!
山賊A「な、なんだぁこいつは!?」
魔王「死ねぃっ!漆黒の迅雷――ブラックサンダー!!」
ズガァッズガァンズガガァン!!!
山賊頭・A・B「ギャアアアアア!!!」
勇者「…さすが魔王」
女性「あ、ありがとうござ…ヒッ!?」
魔王「あ…」
勇者「大丈夫です、彼は私の知り合いなので」
女性「そ、そうなんですか…」
子供「おっちゃん大丈夫?血が出てるよ?」
魔王「ふははは!おっちゃんは世界最強だから大丈夫さ!」
子供「本当?魔王も倒してくれる?」
勇者「っ!」
魔王「む?魔王?そんな奴はおっちゃんがぶっ飛ばしてやるぞ!ハハハ!」
勇者「…(魔王…)」
女性「あの、ところで二人は何をしているんですか?」
勇者「旅です。彼の病気を治すために」
魔王「…?僕は病気なんむぐぐ」
勇者「見てわかる通り頭から角が生えていて、肌も青白い、これを治療できる人を探しているんです」
女性「そうだったんですか、先ほどはすみません…。あの、良ければ今日はうちに泊まって行きませんか?」
勇者「いいんですか?」
女性「えぇ、子供もきっと喜びます」
子供「おっちゃん泊まるの?やったー!」
母子の家
女性「街から帰る途中だったんです。貴方達がいなかったらきっと今頃…。本当に助かりました」
魔王「街の中に住まないのか?」
女性「えぇ、街の中の土地は高くてとても…」
勇者「なるほど、確かにそれはありますね」
子供「でも僕この家好き!周りが広いし!」
女性「この子ったら…」
女性「さ、お二人ともお疲れでしょう。もう今日はお休みになってくださいな」
魔王「おう、そうさせてもらおう」
そして早朝
勇者「おい、起きろ魔王」
魔王「なんだぁ、もう行くのか?」
勇者「あぁ、ずっといるわけにいかないからな」
魔王「そうか、よし、では行こう」
勇者「…」
ジャラッ
魔王「ん?その袋は?」
勇者「気にするな、さ、行くぞ
ガチャッ バタン
女性「…あら?」
女性「あの二人もう行ったのかしら…」
女性「あら、これは…?お金?…こんなに」
魔王「なぁ、勇者」
勇者「ん?」
魔王「城は大丈夫だろうか?」
勇者「大丈夫だと思うが…」
魔王城、玉座の間
魔法使い「へーっくしょい!」
魔法使い「ファファファ、誰かがこの魔王の噂をしているようじゃな…」
魔法使い「うーむ、僧侶もどこへ行ったのやら暇じゃのう」
魔法使い「魔王っぽいポーズでも考えておくかのう…」
魔王城、厨房
しもべA「ほう、これが人間の料理か…見た目に気を使うのだな」
僧侶「はい、そのほうが美味しくみえないですか?」
しもべA「うむ、確かに…腹で混ざるものだからときにかけていなかったがそうだな」
僧侶「じゃあ今度から私が作りますね。このお城の皆様に振る舞います」
しもべA「俺にも教えてもらえないか?」
僧侶「…はい!喜んで!」
魔王城、玉座の間
魔法使い「ファファファ、よくぞ来た勇者よ!…ちとじじくさいのう」
魔法使い「フフフ、よく来たな勇者!…小物っぽいのう」
魔法使い「よくぞここまで来た!お、それっぽいのう…」
そして時は流れ、1か月後
勇者「ついたぞ、ここが私の生まれ育った城下町だ」
魔王「おお!ここが!花で溢れかえっておる美しい街だ、まるで勇者のようだな!」
勇者「バッ、バカ…何言ってるんだ」
魔王「それにしても人の気配がしないようだが…」
勇者「変だな、私が住んでいた頃はもっと人で賑わっていたはずだが…」
魔王「おい、あそこ!誰かいるようだ」
勇者「ん、あれは、何か叫んでる?」
街人「…て!」
街人「…げて!」
勇者「ん?なんて叫んでるんだ?」
街人「逃げて!!」
勇者「にげ…え?」
魔王「勇者っ!!」
ズドォッ!!
魔王「がっ…ふっ…」
勇者「魔王!!」
魔王「ぐっ…」
?「これはこれは失礼、旅の方だったかな?」
勇者「あ、あなたは隣国の王…!」
隣国の王「ほう、どこかでお会いしたかな?」
勇者「これはどういうつもりだ、何故こちらの国にいる!?」
隣国の王「おや、知らなかったのかな?この城、国は我々隣国のものなのだ」
勇者「なっ!?」
隣国の王「魔王討伐などとくだらんことに人員を割いているこの国は隙だらけであったぞ」
勇者「貴様ッ!父さんや母さんをどうした!?」
隣国の王「さあ、死んでいるか奴隷やっているか、どちらかだな、ハッハッハ!」
魔王「おい」
隣国の王「なんだ?青白い姿でまるで魔物だな、気持ちの悪い大男が俺に何の用だ?」
魔王「魔王討伐はくだらないことなんだな?」
隣国の王「言うまでもないわ、魔王などとデカイ城を構えて結局は何もして来ぬ」
魔王「そうか…」
隣国の王「そしてあまり調子づくなよ、貴様らは俺の国の奴隷になるか、ここで死ぬかしか選択肢はないのだからな」
魔王「もう一つ、選択肢をくれないかな?」
隣国の王「どうした?傷の治療でも…っ!?傷が…ない?」
魔王「お前をこの世から消すっていう選択肢だよ」
隣国の王「なっ、それは国家反逆か?兵士どもよかかれ!」
ザッザッザッザッ
ザッザッザッザッ
魔王「貴様らには死すら生ぬるい…」
ザッザッザッザッ
魔王「はあああああ!」
隣国の王「なんだ…風が…」
魔王「我は魔族の王、魔王である!!」
兵士「!?!?!?」
兵士「う、うそだろ!?」
兵士「ひいいいいい!!」
隣国の王「なっ、魔王が何故こんなところに…」
隣国の王「ま、待て…ひっ」
ズグシャアアッ
兵士「た、助けてぇ!!」
勇者「待て!」
兵士「ひっ!?」
勇者「奴隷を解放しろ!!全員だ!」
兵士「は、はいいいいい!!」
ダッダッダッダッ!!
勇者「魔王…」
魔王「フッ、どうだ?これが魔王の力よ」
場所、???
隣国の王「こ、ここはどこだ!?」
魔物「ウェアアァアアアァァアアア~」
隣国の王「や、やめろ!やめ、やめて!ひぎやああああああああああああ!!!!」
場所、主人公の故郷
魔王「ということになっておるはずだ」
勇者「なるほど…」
魔王「だから、もう大丈夫…だ…」
ドサッ
勇者「魔王!?」
魔王「ぐっふ…」
勇者「ち、血が!傷は塞いだんじゃ!」
魔王「ハッハッ…割と大きな穴だったからな、表面は塞げても中はグシャグシャのようだ」
勇者「おい、死ぬな!!」
魔王「勇者よ…我はお前のような美しい人間と旅ができてよかっ…」
勇者「まおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
そして月日は流れ…
しもべA「勇者様、こんなところに」
勇者「ああ、しもべAか」
しもべA「お墓参り、ですか?」
勇者「うん、最後まで頑張ってくれた」
しもべA「あまり外にいると身体を壊しますよ」
勇者「あぁ、もう戻るよ。魔王に怒られてしまうからな、ははは」
勇者「それにしても、僧侶のお腹の子はどうなんだ?」
しもべA「そ、それはおそらく順調なのでは…と」
勇者「自分の子供だろう」
しもべA「もし俺に似ていたらいじめられるかなと思いまして…」
勇者「あっはっはっは」
僧侶「あ、勇者様」
勇者「随分とお腹が大きくなったなぁ」
僧侶「魔族の子ですからねー、お腹突き破って出てくるかも、なんて」
しもべA「おいおい、勘弁してくれよ…」
勇者「しもべAは僧侶にだけは普通に話すんだなぁ」
僧侶「私の旦那様ですからね、あ、あげませんよ!」
勇者「ふふ、いらないよ、私には魔王がいるからさ」
僧侶「勇者様…」
しもべA「そうそう!今日は剣士達が来るって言う話ですよ」
勇者「久しいなぁ、ていうか剣の歴史についてはもう終わったのかな?」
しもべA「それが、しもべBに子供が出来たから安静にさせるとかで…」
勇者・僧侶「ブーーーー!!!」
僧侶「さすがクールな剣士様もやることやってんですねぇ」
勇者「そうだなぁ…」
しもべC「みなさーん!!剣士さんたちが見えられたッスよー!!」
しもべA「迎えにいきましょう」
剣士「久しいな、みんな」
勇者「おかえり!」
僧侶「おかえりなさいませー」
しもべB「ただいま」
しもべA「おかえり」
しもべC「初めましてッス!おいらしもべCッス!」
しもべB「時間が経てば仲間も増えるか…」
魔王「時は出会いと別れを作り出すのだ…」
勇者「あれ、魔王一緒だったの?」
魔王「ハッハッハ、途中で会ったのでな」
剣士「でかいからすぐわかった」
魔王「ハッハッハ!」
しもべB「そういえば、あのうるさい爺さんはどうしたのだ?」
僧侶「死にました…」
しもべB「そうなのか…」
剣士「一応聞いておくが死因は?」
僧侶「孤独死です」
剣士「…」
勇者「お墓があるから後で何か備えてあげてよ」
魔王「なぁ、勇者よ」
勇者「ん?」
魔王「我はお前と旅をして、人間同士の争いを見た」
勇者「…つまらないものを見せてしまったな」
魔王「いや、だが魔族も数が多い、人間のように内部で反発するものもいる」
魔王「我は最初、そういうしがらみを全て取っ払いたくて、世界を思いのままにしたかった」
勇者「魔王…」
魔王「だが、お前という存在が我を正しい方向へと導いてくれた」
勇者「…」
魔王「そう信じている」
勇者「私も」
魔王「ん?」
勇者「あなたのおかげで、種族の壁が関係なく親密になることも出来るのだと知れた」
魔王「勇者…」
勇者「私たちの出来る範囲で世界を変えていこう、産まれてくる僧侶の子や剣士の子、そしてこの子の為にも…」
Fin
エピローグ
魔法使い「ここはどこじゃ…?」
老婆「爺さん…!」
魔法使い「ば、婆さんじゃないか!」
老婆「待っていたよ」
魔法使い「おぉ、ワシも…ワシもじゃ…」
老婆「今までお疲れ様でした」
魔法使い「そうか…ワシは死んだのじゃな」
老婆「えぇ、そうよ」
魔法使い「後の世界は若いもんに任せるとするかの」
老婆「私達はゆっくりと見守りましょう」
魔法使い「そうじゃのう、ファファファ」
今度こそおしまい
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