ほむら「絶対にみんなを助けてみせる!」(332)
とある場所
ほむらは まじょを たおした!
ほむら(さすがに疲れてきたわ)
ほむら(それにしても、QBがあんなことをするとはね)
ほむら(完全に想定外だったわ)
ほむら(でも、大丈夫)
ほむら(これだけあれば、事足りるはずね)
ほむら(あなたの……あなたの為なら、私は永遠の迷路に閉じ込められても、構わない)
ほむら「絶対にみんなを助けてみせる!」
………………
…………
……
教室
ほむら(いつも美樹さやかはまどかの邪魔ばかりしてくる)
早乙女「昨夜は銀行強盗が現れたようですね」
ほむら(でも助けるのは諦めたい)
早乙女「お金は盗まれても、ハートは盗まれないよう注意しましょうね」
ほむら(うまくわたしの言いなりにできれば)
早乙女「では次に、転校生を紹介します」
ほむら「暁美ほむらです」ギロッ
さやか(あれ? なんでガン飛ばされてんのあたし)
まどか(なんだか真面目そうな人だなあ)
ほむら「毎日メールも電話もしているわ」
ほむら「入院していたからお見舞いにはいけなかったけれど」
さやか「あんた、本当に、恭介の幼馴染……?」
ほむら「ええ、もちろん」
ほむら「そうでないと、わたしがあなたと恭介くんのことを知っているわけないじゃない」
さやか(マジかよ)
ほむら「そこで交渉があるの」
さやか「な、何さ」
ほむら「あなたを恭介くんの彼女にしてあげるわ」
さやか「なっ///」
ほむら「手足も治してあげるわ」
さやか「そ、そんなこと出来ないでしょ、さすがに」
ほむら「実は恭介くん本人は知らないけど、外国の病院に行けば治るのよ」
さやか「本当に?」
ほむら「本当よ。ただし、それには多大なお金が必要となる」
さやか(いまいち信じられないな……)
さやか「で、金を出せってこと?」
ほむら「いいえ、お金ならわたしが払えるわ」
さやか「どうして?」
ほむら「父が社長なのよ」
さやか「本当に?」
ほむら「さっきからそればかりね、これを見なさい」ガバッ
さやか「うわ、諭吉がいっぱい!」
ほむら「信じてもらえたかしら?」
さやか「これ全部本物?」パラパラ
ほむら「当たり前じゃない」
さやか(……本当……なのか?)
さやか「じゃ、じゃあさっそく恭介に伝えてくる」
ほむら「待ちなさい、美樹さやか」
ほむら「そこで交渉よ」
ほむら「次のことを守れば、今言ったことを約束するわ」
さやか「本当に恭介の手足が治るんならなんでもするよ」
ほむら「ええ、本当に治せるわ」シマウ
ほむら「条件はまず、このことはわたしとあなただけの秘密にするってこと」
さやか「な、なんでさ」
ほむら「他の治療待ちの人間を飛ばして治療するから、あまり人様に言いたくないのよ」
さやか「そ、そうなんだ」マジカ
ほむら「そしてもう一つ」
ほむら「今から一年間、あなたとその友達のまどかは、とある部屋に泊まってもらうわ」
ほむら「その部屋は、合計五人集まる予定よ」
さやか「なんで……?」
ほむら「ずっと入院生活だったから、友達がいないのよ」
ほむら「せっかくだから友達が欲しくて」ウルウル
ほむら「お泊まりもしたくて……」ポロッポロッ
さやか「あ、いや、泣かないでよ」
ほむら「では交渉成立でいいの?」ウルウル
さやか「いや、でも一年間は長過ぎでしょ」
ほむら「じゃあ、一ヶ月だけでも……」
さやか「一ヶ月、ねえ」
ほむら「親には大丈夫よ、私がうまく言い訳をつくるわ」
さやか「分かった」
さやか「でも、まどかが拒否するかもよ」
ほむら「まどかにはわたしから直接言うわ」
ほむら「ありがとう……」ニヤッ
ほむら「では放課後に、この場所で会いましょう」カミヲワタス
ほむら「そのときはまどかも連れて来なさい」
さやか「うん、分かった」
ほむら「ただし、次にわたしと会うまではまどか以外と言葉を交わしてはダメよ」
さやか「それまたなんでさ」
ほむら「……」ウルウル
さやか「……」
ほむら「……」ポロッポロッ
さやか「分かった、分かったから泣かないでよ」
さやか「その代わり、絶対約束は守ってもらうよ」
ほむら「あなたが約束を守る限り、私も約束を守るわ」サッ
さやか「あれ? 消えた?」
外
ほむら(放課後までにみんなを集めないといけない)
ほむら(まずは佐倉杏子が狙いかしら)サッ
ほむら「あなた、また盗んだ食べ物を食べているの?」
杏子「なっ、いつの間に」
杏子「誰だよあんた、あんたには関係ないだろ」モグモグ
ほむら「それは確かにその通りね」
ほむら「でもわたしは、朝昼夕の食事全てが無料で食べられる宿を知っているのだけど」
杏子「はぁ? それがなんだってんだい」
杏子「金がありゃ、あたしだって宿に泊まってるさ」
ほむら「実はその宿、今なら無料で泊まれるのよ」
杏子「そんなうまい話があるわけないだろ」
ほむら「そうね。普通はないわ」
ほむら「でも今なら限定だけど無料なのよ」
ほむら「あなたが嫌だと言うのなら、他の人を当たるわ」
杏子「……なんであたしを誘うのさ」
杏子「あたしとあんたは初対面だろ?」
杏子「なんで知りもしないあたしを招待するのさ」
ほむら「魔法少女だからよ」
杏子「!?」
ほむら「実はわたしも魔法少女なのよ」
ほむら「だから、同じ魔法少女であるあなたは前々から気になっていた」
ほむら「そしてそれに見惚れた、それだけよ」
杏子「な、なんだよそれ///」
ほむら「無理強いはしないわ」
ほむら「時間を奪ってごめんなさい、その気がないなら失礼するわ」
杏子「ま、待て」アセアセ
ほむら「あら? 泊まりたいのかしら」
杏子「食い物が無料だから、だぞ」
ほむら「では、今日の夜この場所に来なさい」カミヲワタス
杏子「分かった」
ほむら「それと、この宿にいる金髪の巴マミという人には丁寧に話しなさい」
杏子「ん?」
ほむら「では失礼するわ」サッ
学校の教室
さやか「まどかまどか、ちょっといい?」
まどか「どうしたの、さやかちゃん」
さやか「ちょっと付いてきてほしいんだー」ハハハ
まどか「え? なになに?」
さやか「それは来てのお楽しみー」
まどか「えー、気になるよー」
さやか「ハハッ、転校生のところだって」
まどか「暁美さんのところ?」
さやか「一緒に遊ぼうってことになったんだ」
まどか「仲良くなれたんだね」
まどか「ガン飛ばされたって言ってたのに」ウェヒヒ
さやか「それは勘違いだったんだよー」
帰り道
さやか「えっと、こっちだね」
まどか「仲良くなれるかなぁ」
さやか「大丈夫だって、意外といい奴だったし」
?『たす……けて……』
まどか「え?」
さやか「なんだ今の声」
?『たす……けて……』
まどか「なんだろう」スタスタ
さやか「ま、待ってまどか」
まどか「え?」
さやか(まどか以外と喋ったら恭介の手足が……)
?『たす……けて……』
さやか「まどか、行くよ」スタスタ
まどか「え? でも」
?(チッ)
マミホーム
ほむら(次は巴マミね)
ほむら「すみません、いるかしら」コンコン
ガチャ
マミ「あなたが暁美さんね」
マミ「QBから話は聞いているわ」
マミ「あなた、魔法少女の素質がある娘にQBと喋らせないようにしたらしいわね」
ほむら「マミ先輩、誤解です」
マミ「せ、先輩!?」
ほむら「それはおそらくデマです」
マミ(先輩♪先輩♪)
ほむら「あの、聞いてますか?」
マミ「ハッ」
マミ「もちろん聞いているわよ」
マミ「でもQBが嘘をつくなんて信じられないわ」
ほむら「QBの勘違いという可能性もあります」
マミ「まあ、そうだけど」
ほむら「それよりも今日は頼みごとがあるんです」
マミ「頼みごと?」
ほむら「マミ先輩は知らないと思いますが、実は巴マミファンクラブというものがあるんです」
マミ「え?」
ほむら「そのファンクラブの一員がわたしです」
マミ「それで、頼みごとって?」
ほむら「はい。ファンクラブの人をマミ先輩の家に招いてもらえたらなと思いまして」
マミ「私の家に!?」
ほむら「もちろん、人数は絞ってあります」
ほむら「ファンクラブ全体の六分の一の人数、つまり四人だけです」
マミ「四人!?」
マミ(四人が全体の六分の一ってことは二十四人も私のファンが)
ほむら「やっぱりQBの言っていたことが気になりますか?」
マミ「いえ、あなたは悪そうな人間ではないわね」
マミ「ファンクラブの人、泊めてあげてもいいわよ」
ほむら「あ、ありがとうございます!」ニヤッ
マミ「でも、四人となると部屋が小さいし、魔法で大きくしておかないとね」ルンルン
ほむら「さっそく今日から泊まれたりしますか?」
マミ「もちろんよ!」
ほむら「あと、一つ意見を聞いていただけると助かるのですが」
マミ「何? なんでも言いなさい」
ほむら「魔法少女でない娘がいるので、QBを部屋に入れてもらえないと助かります」
マミ「ああ、それもそうね」
マミ「でも、QBは普通の人には見えないわよ?」
ほむら「わたしとしては、ファンクラブのみんな以外はマミ先輩と同じ部屋に入れたくないんです」
ほむら「あくまでも、マミ先輩とファンクラブのメンバーだけの空間にしたいんです」
ほむら「たとえ見えなくても、本当のマミ先輩とファンクラブのメンバーだけの空間をつくりたいんです」
マミ「暁見さん……」
マミ(そうよね。憧れの人とは少しでも密着したいものよね)
マミ(それに暁美さんが一人で泊めてと言うのではなく、ファンクラブのメンバーも一緒にというところに絆を感じるわ)
マミ「分かったわ」
マミ「みんなが泊まっている間だけはQBに出ていってもらいましょう」
ほむら「さすがマミ先輩です」
マミ「ところで、何日くらい泊まるのかしら?」
ほむら「出来るならば一生泊まりたいです」
マミ「え、いや、それはさすがに」
ほむら「そうですよね……」ショボーン
マミ(しまった。傷付けてしまったわ)
マミ「えっと、もう少し短ければ嬉しいなー、なんて」
ほむら「では、三ヶ月……いや、一ヶ月でどうですか?」ウルウル
マミ(まだ長いわね)
マミ(でも、かなり短くしてくれたのよね)
マミ(ここで断ったらファンクラブのみんなに見せる顔がないわ)
マミ「いいわよ。一ヶ月ね」
ほむら「ありがとうございます!」
ほむら「さっそくみんなを呼んで来ますね」
マミ「待ってるわ」
ほむら(さすがにこのキャラは疲れるわ)
さやか「おっ、転校生!」
まどか「暁見さん!」
ほむら「ほむらでいいわ」
さやか「ほむら、連れて来たよ」
ほむら(お前に言ったんじゃない)
まどか「あの、その、ほむらちゃん。よろしくね」
ほむら(まどか、笑顔が素敵よ)
ほむら「よろしく、まどか」
ほむら「さっそくだけど、今から一ヶ月お泊まりをするわ」
まどか「え、ええええ」アセアセ
まどか「聞いてないよ」
ほむら「大丈夫よ、まどか」
ほむら「家族にはしっかり伝えておいたわ」
まどか「いつの間に……」
さやか「あたしの両親はどうだったんだ?」
さやか「反対しなかった?」
ほむら「ええ、大丈夫だったわ」
さやか「そうか」
ほむら「では、家に向かうけど一つ注意点があるわ」
ほむら「今から行く家には金髪のお嬢様がいるの」
ほむら「くれぐれも無礼のないようにね」
まどか「お、お嬢様……」
さやか「分かった分かった、早く行こう」
マミホーム
ほむら「お邪魔します」
さやか「お邪魔しまーす」
まどか「お、お邪魔します」ガクガク
マミ「あら、いらっしゃい」
ほむら「わたしが暁美ほむら」
さやか「美樹さやかです」
まどか「か、鹿目、まどかです」ガクガク
マミ「そしてわたしが巴マミというわけね」
マミ「鹿目さん。そんなに緊張しなくていいのよ」
まどか「は、はい」
まどか(優しそうなお嬢様で良かった……)
マミ「あれ? 確か来るのは四人よね?」
ほむら「はい。あと一人も少ししたら来ると思います」
ガタガタ
マミ「あら、最後の一人かしら」
ほむら「まどかと美樹さやかは少し奥に行っててくれないかしら」
さやか「なんでさ」
ほむら「……」キッ
さやか「分かったよ。まどか、少し奥まで行こうか」
まどか「う、うん」
まどか(なんだろう。今の)
ガチャ
マミ「いらっしゃー……」
QB「やあ、マミ」
マミ「悪いけど帰ってくれる?」
QB「え?」
QB「どうしたんだい?」
QB「いつも部屋に入れてくれていたじゃないか」
QB「それにこの部屋には、いい魔法少女になれそうな人間がいる気配がする」
マミ「今から一ヶ月は特別なのよ」
マミ「悪いけど、契約はあとにしてね」
QB「え? 一ヶ月?」
QB「それだと間に合わな」
マミ「ごめんね」ポイッ
バタン
QB「わけがわからないよ」
ほむら(どうやらQBは去ったようね)
ほむら(とりあえずこれで契約の心配はいらないわ)
ほむら(夜までに魔女が出現しても佐倉杏子がいるから巴マミは外に出なくていい)
ほむら(完璧だわ)
ほむら(じゃあ私も少し仕事をしないといけないわね)
ほむら「まどかと美樹さやか」
ほむら「何かお泊まりに必要なものがあれば、わたしが取ってくるわ」
ほむら「何かないかしら?」
さやか「じゃあ衣類とか歯ブラシとか持って来てくれる?」
まどか「わたしも全然ないから……」
まどか「でも、わたし自分で取りに行くよ」
ほむら「わたしは生まれつき足が速くて力持ちだから遠慮する必要はないわ」
まどか(え?)
ほむら「二人はこの部屋を存分に楽しみなさい」
ほむら「あと、巴……いえ、マミ先輩」
マミ「あら、何?」
ほむら「最後の一人がいつ来るか分からないので、ずっと部屋にいてください」
ほむら「部屋に来たときマミ先輩がいないとがっかりしますから」
マミ「分かったわ♪」
まどかの家
ほむら「あの、すみません」
知久「あ、はい」
ほむら「まどかの友達の志筑仁美です」
知久(志筑仁美か。結構金持ちって言ってたっけ)
知久「あ、まどかならまだ帰って来て」
ほむら「今日からまどかはわたしの家に泊まることになりました」
知久「え?」
ほむら「実は一ヶ月わたしの家に泊まろうという計画が出来て、まどかさんも仲間にと」
知久「はあ」
ほむら「不安なら連れ戻してもいいですよ」
ほむら「ちなみに、おばさんはすでに了承しています」
ほむら「それに、ここで断ったら孤立してしまいそうですよね」
ほむら「仲良しグループがみんなこの企画に参加していますし」
ほむら「一人だけ不参加となると……」
知久(志筑仁美さんなら大丈夫だろうか)
知久「分かりました。泊めてやってください」
ほむら「安心してください」
ほむら「それでは」スッ
鹿目詢子の会社
ほむら「お仕事お疲れ様です」
詢子「ん? 誰だい」
ほむら「まどかさんの友達の志筑仁美です」
詢子(志筑仁美? あの金持ちのお嬢様か)
ほむら「今日から一ヶ月、まどかさんをわたしの家で泊まらせることになりました」
詢子「一ヶ月!?」
ほむら「泊まるのはまどかさんだけでなく、他にも多数います」
ほむら「一人だけ仲間はずれにするのもどうかと思いまして」
ほむら「夫さんは了承してくれました」
詢子(あの娘もそんな年頃か)
詢子(一ヶ月ってのは長過ぎる気がするけどな)
ほむら「無理なら連れ戻してもらっても」
詢子「いや、まどかを頼むよ」
ほむら「はい。安全は保証します」
まどか「では、失礼します」スッ
詢子(あの娘も成長したねえ)
同様に美樹さやかの両親にも承諾してもらう
ほむら(買い物までしたら、すっかり日が沈んでしまったわ)
ほむら(そろそろ佐倉杏子も来たかしら)
ほむら(うまくいってるといいけど)
ほむら(トラブルが起こらない内に帰りましょう)
?『暁美ほむら、君は一体何をたくらんでいるんだい?』
ほむら「!」
QB「君はどうやら、この時間軸の人間ではないようだね」
ほむら「消えなさい」
QB「君が何を考えているのか分からないけど、僕にとっては迷惑なんだ」
ほむら「知っているわ」
QB「君は一体何を考えているんだい?」
ほむら「あなたには関係のないことよ」
QB「どうやら君は僕に敵対心というものを持っているようだね」
QB「でも、君のその作戦はきっとうまくいかない」
ほむら「そう。話は聞いたわ」
ほむら「消えなさい」
QB「僕としては警告しに来たんだけどなあ」
ほむら「……」ギロッ
QB「……」
QB「……」サッ
ほむら(大丈夫、うまくいくわ)
マミホーム
ほむら「お邪魔します」
マミ「やっと帰ってきたわね」
まどか「遅いから心配しちゃったよ」
ほむら(やっぱりまどかは天使だわ)
さやか「だから大丈夫だって言ったでしょ」
ほむら(正直ウザいわ)
杏子「あ、あんたか」モグモグ
ほむら(無事佐倉杏子も来たわけね)
マミ「じゃあ夕食としましょうか」
ほむら「足りないと思ったので食材も買っておきました」ササッ
マミ「あら、ありがとう」
マミ(さすがわたしのファンなだけはあるわね)
………………
…………
……
まどか「おやすみなさい」
さやか「おやすみー」
ほむら「おやすみなさい」
杏子「お、おやすみ」
マミ「みんなおやすみー」
ほむら(とりあえず巴マミに……)
マミ(あ、暁美さんが……わたしの体を……)ドキドキ
ほむら(次はまどかの……)
マミ(暁美さんが、鹿目さんに……)ハァハァ
マミ(と思ったら鹿目さんの服を嗅いでいる……!?)
ほむら(さて、今から学校に仕掛けておかないと)サッ
マミ(もしかして、わたしたちの体がヤバい?)ハァハァ
しばらくしてまたマミホーム
ほむら(さすがにデカいだけあって大変だったわ)
ほむら(あら? 美樹さやかの姿がない)
さやか「ん? ほむら、どこ行ってたんだよ」
ほむら「え? えっと、眠れないから夜風に当たってたのよ」アセアセ
ほむら「それよりも、あなたは何しているの?」
さやか「え? あたし?」
さやか「途中で目が覚めちゃってさ」
さやか「ちょっと台所行って水を飲んでただけだよ」
ほむら(QB関係ではなさそうね)
さやか「いやー、やっぱり慣れない場所じゃあ落ち着きませんなあ」アハハ
ほむら「そうね、でも寝た方がいいわよ」
さやか「うん、分かってる。おやすみ」
ほむら「おやすみなさい」
翌日
テレビ「今日午前二時頃、見滝原中学校を爆破するという事件が起こりました」
テレビ「負傷者はおらず、犯人の目的も不明で……」
さやか「なんだよ爆破って」
まどか「一体誰が……」
マミ「酷いことをする人間もいるわね」
ほむら「全くだわ」キリッ
杏子「学校か……」モグモグ
ほむら「そういうわけで、非常に残念だけど今日は休みよ」
ほむら「せっかく休みになったのだから存分に楽しみましょう」
まどか(なんだかイキイキしてる気がするのは気のせいかな……?)
さやか「楽しむって何をするのさ」
杏子「とりあえず外行くか」
杏子「家の中だと体がなまっちまう」
さやか「そうだね、外行くかー」
マミ(佐倉さんと美樹さんはわたしと外で遊びたいのね)
ほむら「外はダメよ」
さやか「なんでさ」
ほむら「今日学校で爆破があったのだから危険でしょう?」
ほむら「いつどこで犯人と出会うか分からないのよ」
まどか「確かに、犯人は、怖いよね……」
さやか「まあ、確かにそうかもね」
杏子「あたしらは魔法少女だから大丈夫だろ?」コソコソ
ほむら「ええ、大丈夫ね」コソコソ
ほむら「だからわたしとあなただけは外に行きましょう」コソコソ
マミ「あれ? わたしは?」コソコソ
ほむら「マミ先輩がいないと二人が寂しがるので、部屋にいてください」コソコソ
マミ「し、仕方ないわね」コソコソ
ほむら「では、すみません、マミ先輩」
ほむら「佐倉杏子が歯ブラシを忘れたようなので取りに行ってきます」
まどか「え? 外は危険だって……」
マミ「彼女たちなら大丈夫よ」
マミ「それよりも今日は、お菓子を作りましょ」
ほむら「こっちよ」
杏子「なんだ? この先に何かあんのかよ」
ほむら「ここに魔女がいるわ」
杏子「なんで分かるんだよ」
ほむら「ただ、なんとなくよ」
ほむら(この先に巴マミが死んだことのある場所がある、とは言えないわね)
杏子「おお、マジで魔女がいるじゃねーか」
ほむら「気を付けて」
ほむら「ここの魔女は一筋縄ではいかないわ」
杏子「大丈夫、あたし一人でぶっ殺してくるさ」
ほむら「それは困るわ」
杏子「あたしに逆らおうってかい?」
ほむら「いえ、敵対する気はないわ」
ほむら「ただあなたのソウルジェムは、まだそれほど穢れていないはずよ」
杏子「確かに、昨日は楽に暮らしたしな」
ほむら「これからもこの生活をするのなら、今後もなかなか穢れないわ」
杏子「まあ、そうかもな」
ほむら「だから今、グリーフシードにそれほどの価値はない」
杏子「そう、なのか?」ポカーン
ほむら「だからこの魔女は私が狩らせてもらう」
ほむら「もちろんグリーフシードは分け合うわ」
ほむら「わたしとあなたと、巴マミで」
杏子「他人のグリーフシードを分けてもらうのは性に合わねえな」
ほむら「別に戦うのは常にわたしとは言ってないわ」
ほむら「今回はわたしが引き受けるだけ」
ほむら「他の日はあなたに戦ってもらうわ」
杏子「貸し借りなしってことか」
ほむら「不服かしら?」
杏子「あんたが何をたくらんでいるのか知らねえが」
杏子「タダ飯もらってるしな」
杏子「その提案に乗ってやるよ」
ほむら「助かるわ」
杏子「負けんじゃねーぞ」
ほむら「ええ、もちろん」サッ
同時刻 マミホーム
?『大変だ、マミ』
まどか「この声は……」
マミ「QB、どうしたの?」
QB「そこにいる美樹さやかに言うべきかと思って」
QB「上条恭介が大変なんだ」
さやか「恭介が!?」
QB「付いて来てくれ」
QB「もたもたしていたら、手遅れになるかもしれない」
さやか「マミさん、あたし行ってくる」
マミ(今は爆破をした犯人がうろついている)
マミ(でもわたしがいれば大丈夫よね)
マミ「美樹さん、私も行くわ」
まどか「えっと、それじゃあ私も」
マミ(これは、魔女……!?)
マミ「まさか病院に魔女が取り付かれていたとわね」
まどか(さっきの生き物といいなんなんだろう……)
さやか「早く中に入ろう、恭介が」
マミ「美樹さん。一人では危険だわ」
さやか「でも恭介がっ」
マミ「安心して、わたしが今から悪い魔女を退治してあげるから」
さやか「魔女って……何?」
マミ「見た方が早いわ」
マミ「結界に入るわよ」
……………………
まどか「何ここ……」ガクガク
さやか「なんだよこいつら」
マミ「ここが魔女のいる空間よ」
Charlotte(シャルロッテ)撃破後
ほむら「ふう」サッ
杏子「ずいぶんと早かったじゃねーか」
ほむら「まあね」
杏子「で、グリーフシードはちゃんと貸して貰えるんだろうな?」
ほむら「ええ、もちろんよ」ポイッ
杏子「案外素直だな、あんた」キャッチ
ほむら「あなたもね」
ほむら「さあ、魔女は倒したし、部屋に戻るわよ」
杏子「なんだ、もう戻るのかい?」
ほむら「今日はもう魔女は現れないはずだからね」
杏子「なんで、分かるのさ」
ほむら「統計よ」
杏子「?」
マミホーム
ほむら「いない……!?」
杏子「なっ、あいつら勝手に」
ほむら(巴マミには釘を打っておいた)
ほむら(自主的に外に出ようとするはずない)
ほむら(まどかも美樹さやかも、犯人を恐れているはず)
ほむら(となると、残りの可能性は……)
ほむら(QBに何か吹き込まれた?)
杏子「何考え込んでるのさ」
ほむら「まどかたちを探すわよ」
杏子「え? ただ遊びに行っただけじゃないのか?」
ほむら「まどかはそんな軽い気持ちで、犯人のうろつく町になんか出ない」
杏子「……」
杏子「そうかい」
魔女Elsa Maria(エルザ・マリア)
まどか「う、うわあ」
さやか「不気味だな……」
マミ「安心して」
マミ「速攻で倒しちゃうわよ」
マミサン ノ テーマ♪
まどか「変身した!?」
さやか「マミさん、何者だよ」
マミ「実はわたし、魔法少女だったのよ」
魔女「ウガアアアアアア」
マミ(思ったより使い魔がやっかいね)
マミ(一気にいくわよ)
マミ「ティロ・フィナーレ!」
魔女「ウボァァアアア」
魔女「ウガアアアアア」
マミ「なっ、効かない」
QB「まずいよ」
QB「鹿目まどか、美樹さやか。僕と契約するんだ!」
まどか「え?」
魔女「ウバァァァアア」
マミ「なっ」
まどか(マミさんが吸い込まれていく……)
さやか(マミ……さん……)
まどか「なんなの、マミさん、死んじゃったの?」
QB「今はそれどころじゃない」
QB「早く僕と契約しないと、君達も危ないよ」
QB「君たちの望む願いをなんでも一つ叶えてあげる」
QB「そして、魔法少女になってあの魔女を倒すんだ」
ほむら「その必要はないわ」サッ
まどか「ホムラチャン!」
さやか「まさか、あんたらも」
ほむら「ええ、魔法少女よ」
杏子(あいつ、魔女に食われちまったのか……)クソッ
杏子(すぐに殺せば吐き出すよな?)
魔女「ウガァァアアアアア」
ほむら(確かあれはもっとあとに出現するはずの魔女)
ほむら(本来は錯乱していた美樹さやかと戦うはずだった)
ほむら(それなのに、もう出現するなんて)
ほむら(さてはQB、奴の魔女化を早めた……?)
杏子「よし、あたしが仇を討つ」
ほむら「待ちなさい」
ほむら「あいつはかなり手強いわ」
杏子「は? 何言ってのさ」
杏子「順番的に考えても次はあたしだろ?」
杏子「それにあたしには、あいつに借りがある」
杏子「だからここはあたしが戦うのが普通だろ」
ほむら「ええ、その通りよ」
ほむら「でも、あなただけでは魔女は殺せない」
杏子「なに?」イラッ
まどか(何が、どうなってるの?)オドオド
さやか(マミさん……)
?(やっぱりわたしは噛ませ犬なのね)
杏子「あたしが実力不足とでも言いたいのか?」
ほむら「実力は十分よ」
ほむら「ただ、あなたは……白過ぎる」
杏子(え?)
ほむら「あなたは使い魔を頼むわ」
杏子(いやいや、それより白過ぎるってなんだよ)
ほむら(あの魔女は黒い苦痛を知らないと倒せないとされている)
ほむら(つまり、佐倉杏子には倒せないでしょうね)
ほむら(それならわたしが仕留めるしかない)
ほむら(あの狂った美樹さやかのように……)
戦闘中
ほむら(本当ね)
ほむら(その気になれば痛みを感じない)
ほむら(しかし、痛みを感じなくてもソウルジェムは穢れてしまう)
ほむら(さっさと仕留めないと)
杏子「お前、何やってんだ」
杏子「そんな諸刃の攻撃してたら、お前のソウルジェムが穢れきっちまうぞ」
杏子(言われた通り使い魔を潰してるが)
杏子(魔女が一向に死なないじゃねーか)
まどか「どういうことなの……?」
さやか「分からない」
さやか「でもヤバいってことだけは分かる」
QB「君たちは彼女を救いたいかい?」
ほむら(!?)
QB「君も彼女と同じように魔法少女になれば、彼女の力になれるはずさ」
QB「魔法少女になるのなら、なんでも一つ願いを叶えてあげるよ」
まどか(助け……られる)
さやか「なんでも一つ願いを……?」
ほむら「マドカァ! ソイツノ……」
ほむら(ダメだわ。声が出せない)
ほむら(早く、早く始末しないと)
時間停止
ほむら(とびっきりの爆弾を仕掛けて)
時間開始
ドカァァァァァン
Elsa Maria(エルザ・マリア)撃破後
まどか「世界が……戻った」
さやか「マミさんは……マミさんはどうなったんだよ!」
QB「君たちに説明していなかったね」
QB「魔法少女はソウルジェムに魂を移しているんだ」
QB「だから、ソウルジェムが無事なら絶対に死んだりしない」
杏子「なんだと、てめえ」
杏子「それじゃあ、あたしらはゾンビにされたようなもんじゃねーか」
QB「でも、逆に言えばソウルジェムを壊されたら死んでしまう」
杏子「じゃあ、あいつは死んじまったのかよ」
杏子「蘇ったりはしないのかよ!」
QB「前例はないね」
ほむら「QBに耳を向ける必要はないわ」
QB「それはどういうことだい?」
ほむら「さらに逆に言えば、ソウルジェムさえ守り通せば死なないってことよ」
ほむら「まどか。右のポケットから取り出しなさい」
まどか「え?」ワサワサ
まどか「あれ? 何かある……」
ほむら「それは、巴マミのソウルジェムよ」
QB「!」
さやか「あんた達の言ってることが正しいんなら……」
杏子「まだ死んでないってことか?」
まどか「これが、マミさんのソウルジェム……」トリダシタ
QB「そんなはずは……」
QB「確かにマミはソウルジェムを身に付けていたはず」
ほむら「気のせいじゃないかしら?」
QB(いや、確かにマミはソウルジェムを身に付けていた)
QB(近くにソウルジェムの反応もあった)
QB(勘違いのはずがない)
ほむら(昨日、念のため仕込みをしておいてよかったわ)
ほむら(みんなが寝た頃を見計らって、巴マミからソウルジェムを奪う)
ほむら(代わりに夕方に買った偽物を置いておく)
ほむら(本物のソウルジェムはまどかのポケットに隠す)
まどか「でも、いつの間にポケットにあったんだろう……」
さやか(まどかかっけー……)
QB(暁美ほむら……君は何者なんだ)
QB(なんだか雲行きが怪しいなあ)サッ
まどか「これがあれば、死なないんだよね?」
さやか「らしいね」
杏子「でもそれは、全くいい気がしねーな」
杏子「今回はよかったけどよ、今のあたしの体は魂の抜けてる脱け殻とか」
杏子「最悪さ……」
さやか(魔法少女って……そんなものなのかよ)
さやか(願いが一つ叶うとしても、代償が大きいな……)
まどか「杏子ちゃん、元気出して」
~しばらくして~
マミ「…………ハッ」
ほむら「どうやら無事だったようね」
マミ「わたしは、いったい……」
マミホーム
マミ「本当、助かったわ」
マミ「みんなには怖い思いをさせちゃったわね」
マミ「ごめんなさい」
まどか「いや、マミさんの謝ることじゃ」
さやか「そうだよ。マミさんはあたしらを救おうとしてくれたんだから」
マミ(やっぱりわたしのファンというのは本当だったんだわ)
マミ「佐倉さんと暁美さんもありがとうね」
マミ「わたし一人だったら負けていたわ」
杏子「いや、あたしは何も」
ほむら「それより、もっと深刻な問題が」
ほむら「わたしとマミ先輩のソウルジェムはかなり穢れてしまったわ」
杏子「さすがに余りのグリーフシードと、さっきのグリーフシードだけじゃ穢れが消えないな」
マミ「魔女を狩るしかないわね」
まどか「あの、その」
マミ「な~に、鹿目さん。遠慮しなくていいのよ」
まどか「また、あんなのと戦うんですか」
マミ「そうなるわね」
まどか「怖く……ないんですか?」
マミ「そりゃあ、ちょっとは怖いわ」
マミ「でも、今は仲間がいるから大丈夫よ」
マミ(もう何も怖くない)
ほむら(何か死亡フラグの音がしたのは気のせいかしら)
マミ「あなた達も魔法少女になりたい?」ルンルン
まどか「え? いや、ちょっと、怖い……かな」アハハ
さやか「あたしも、ちょっとね」
マミ「まあ、そうよね」
マミ「わたしがあんな不甲斐ない姿を見せてしまったのだから当然よね」
杏子「……」モグモグ
ほむら(今は巴マミに発狂の様子は見られない)
ほむら(QBが魂はソウルジェムに移ると言っていたとき)
ほむら(ちょうど肉体が食われていたから知らないのね)
ほむら(今注意すべき点は三つ)
ほむら(ソウルジェムの穢れ)
ほむら(美樹さやかとQBの契約)
ほむら(そして、巴マミの発狂ね)
ほむら(QBとの接触を避けるためにずっと部屋にいた場合、契約は避けられる)
ほむら(しかし、そうなればソウルジェムが穢れきってしまう)
ほむら(特に、今はわたしも巴マミもかなり穢れている)
ほむら(うまく魔女も狩ってグリーフシードを仕入れないといけないわね)
ほむら(もっとも、いざとなればアレを使うしかないけど)
ほむら(まどかと美樹さやかは魂がソウルジェムに移るのは聞いていた)
ほむら(だからそう簡単に契約することもないはず)
ほむら(それに、美樹さやかが願うはずの上条恭介の手足は回復出来ると吹き込んでおいた)
ほむら(でも美樹さやかの性格を考えると油断出来ないわ)
ほむら(そして一番の問題が巴マミの発狂)
ほむら(肉体に魂がないなんて知ったらどうなるか分からないわ)
ほむら(穢れきったら魔女になるというのはトップシークレットね)
杏子「……」モグモグ
杏子「なあ、えっと……」
ほむら「ほむらでいいわ」
杏子「ほむら、さ」
杏子「少し顔貸してくれないかな」
ほむら「いいわ。ただし、この部屋からあまり離れ過ぎないことが条件よ」
杏子「分かった、付いてきてくれ」スタスタ
ほむら「……」スタスタ
マミ(もしかして杏子さんは暁美を狙ってるのかしら?)
マミ(もしかして、お泊まりは恋の戦いなの?)
マミ(わたしを狙っているのは誰かしら?)
外
杏子「何深刻そうな顔してんだ」
ほむら「どういう意味かしら?」
杏子「あんた、誰も死ななかったのに喜んでねーじゃねーか」
杏子「それどころか、何か悩んでいるように見えたよ、あたしには」
ほむら「……」
ほむら「ええ、そうね」
ほむら「ちょうどいいわ」
ほむら「あなたにも、いえ、あなたにだけ言っておきたいことがあるの」
杏子「なんだい?」
ほむら「ここにもうすぐ」
QB「ワルプルギスの夜がやってくる、だろ? 暁美ほむら」
ほむら「!?」
杏子「出てきやがったか」
杏子「お前、あたしらを騙してくれただろ」
QB「騙す? 一体何の話だい?」
杏子「人を勝手にゾンビにしやがって、とぼけるとはどういうことだよ」
QB「勝手に契約なんてしてないじゃないか」
QB「僕と君たちが同意し、契約通り君たちの願いを叶えてあげているんだよ?」
QB「僕は一度だって騙すという行為をしていない」
QB「もしも納得のいかない部分があれば、それは単純に勘違いじゃないのかい? 佐倉杏子」
杏子「てめえ……、殺すぞ」
QB「それこそおかしくないかい?」
QB「君が契約の内容を把握していないだけで、僕に怒りの矛先を向ける」
QB「さらには殺すとまで言うなんて、僕にはそっちの方が理解出来ないね」
杏子「てっめぇ」
ほむら「やめなさい」
杏子「なんで止めるのさ?」
ほむら「今はやめなさい」
ほむら(ここにQBが来たということは巴マミの家には行っていないということ)
ほむら(これは逆に好都合だわ)
ほむら(QBをここに引き付けておきながら佐倉杏子に状況を話せる)
ほむら「QBの言い分にも一理あるわ」
杏子「はぁ?」
QB「暁美ほむら、君はどうやら僕達と似たような思考を持っているようだね」
ほむら(持っているわけないじゃない)
杏子「おい、ほむら」
杏子「あんたはどっちの味方なんだい」
ほむら「……」
ほむら「誰の味方かなんて、今は関係ないわ」
ほむら「それよりも、ワルプルギスの夜が問題よ」
杏子(話を変えやがって……)
杏子(あとで問いただしてやる)
QB「暁美ほむら。君はワルプルギスの夜について知っているようだね?」
ほむら「ええ」
杏子「そのワルプルギスの夜ってのはなんなんだい?」
ほむら「魔女よ」
QB「それも並大抵の魔女とは比べ物にならない」
QB「強力な魔女さ」
杏子「ふーん、なるほどね」
杏子「つまり、そのワルプルギスの夜を殺す手伝いをしてほしいってわけか」
杏子「妙にサービスしてくれて怪しいとは思ってたけどさ」
杏子「そういう理由だったわけかい」
ほむら「……」
QB「ワルプルギスの夜は強力だからね」
QB「今いる三人が戦っても、勝てる保証は出来ない」
QB「僕としては、鹿目まどかを魔法少女にするのが得策だと思うよ」
ほむら「QB、紛らわしい言い方はやめなさい」
QB「どういうことだい?」
ほむら「わたしと佐倉杏子、巴マミ」
ほむら「これだけで十分よ」
QB「万が一ということもあるよ」
ほむら「話は聞いたわ」
ほむら「消えなさい」
QB「僕は君がどこでその知識を得たのか知りたいけどなあ」
ほむら「…………」
QB「……」
QB「……」サッ
杏子「さて、聞かせてもらお」
ほむら「あなたの味方よ」
ほむら「わたしはQBに微塵も同意する気はないわ」
ほむら「ただあなたに情報を与えるために話していただけよ」
杏子「それは、本当か?」
ほむら「当たり前じゃない」
ほむら「そうでないと、いろいろと説明がつかないでしょう?」
杏子(タダ飯、住まい、グリーフシードの分け前、さっきの悩んだ顔、タダ飯)
杏子(確かに、味方と思っていいのか?)
ほむら「疑うのはとりあえずあとにして、まずは部屋に戻りましょう」
ほむら「またQBが何かするかもしれないわ」
杏子「そうだな」
外→マミホーム
ほむら「たどり着く前に言っておくわ」
ほむら「巴マミには、ソウルジェムに魂が入っていると言ってはダメよ」
杏子「一応理由を聞かせてくれよ」
ほむら「巴マミはとてもデリケートなのよ」
ほむら「些細なことでも理性を保てなくなる」
ほむら「分かってあげてくれないかしら?」
杏子「ああ、分かった」
杏子「それより大丈夫か? あんたのソウルジェム」
杏子「もうかなり穢れているんじゃねーか?」
ほむら「そうね。またすぐに魔女狩りに行くわ」
ほむら「もちろん、グリーフシードは……」
杏子「無理すんなよ」
杏子「一番穢れていないあたしが行くさ」
マミホーム
マミ「おかえりなさい、お二人さん」
マミ「美樹さんから聞いたんだけど」
ほむら(まさか、バレた……?)
マミ「佐倉さん。私がやられたとき、敵討ちをするなんて言ってくれたのね」
マミ「そんなこと言われるなんて思ってなかったから、凄く嬉しいわ」
杏子「え……///」
杏子「えっと、それは、食べ物もらってるし……」
マミ「ありがとう」ニコッ
杏子「…………///」
さやか「ひゅーひゅー見せてくれるねー」
ほむら「この様子だと、何もなかったみたいね」
マミ「そうね。ずっと恋ばなしてただけだし」
ほむら(恋ばな!? まさかまどかに好きな人が)
ほむら(そんなわけない、そんなわけない、そんなわけない)
マミ「美樹さんって、本当に乙女ね」
ほむら(そっちかああああああ)
さやか「言わないでくださいよ、マミさん」テレテレ
マミ「大胆なカミングアウトだったじゃない」
さやか「それは、そうかもしれないですけど」
さやか「まだ気になってるってだけですよ」アセアセ
マミ「愛があれば、どんな障害だって乗り越えられるものよ」
さやか「恥ずかしいですって」
まどか「あ、あれ? 二人ともおかえり」ポワワー
ほむら(なんだ、まどかは寝ていたのね)
ほむら(美樹さやかの恋ばななんて聞かなくて正解よ)
杏子「さて、じゃああたしは魔女狩りに行ってくる」
マミ「佐倉さん一人では心配だし、わたしも行くわ」
ほむら(いや、佐倉杏子は大丈夫でしょうし、むしろ巴マミが心配だわ)
杏子「あたしは一人で大丈夫だって」
ほむら(佐倉杏子はQBに騙されているという自覚があるから、一人にしても大丈夫なはず)
ほむら(それなら、巴マミがQBに何か吹き込まれないよう部屋に閉じ込める方がいいはず)
ほむら「佐倉杏子は大丈夫よ」
マミ「そうかしら?」
マミ「また強い魔女が出てくるかもしれないし、危険じゃない?」
てす
杏子「あたしは誰にも負けないさ」
ほむら(巴マミの意見にも一理ある)
ほむら(QBがなんらかの魔法少女をここに連れて来て魔女化させたら)
ほむら(まだわたしの知らない強力な魔女が出没する可能性がある……)
ほむら「佐倉杏子、少し待ちなさい」カキカキ
杏子「なんだ? あんたはあたしを信用してるんじゃないのか?」
ほむら「ええ、だからこそアドバイスをしたいのよ」カキカキ
杏子「アドバイス?」
ほむら「そう、あなたが戦ってもいい魔女はこいつらだけよ」ビシッ
杏子「魔女図鑑?」
ほむら「まあ図鑑と書いても、内容は薄っぺらいわ」
ほむら「今とっさに書いたものだから許してちょうだい」
杏子「ああ……、ん?」
ほむら「どうかしたの?」
杏子「なんであんたは今後出てくる魔女を知っているんだ?」
杏子(まさかQBの仲間なのか?)
杏子(いや、それだと助言してくる理由が分からねえ)
杏子(いや、そもそも助言が嘘なのか?)
ほむら「安心しなさい」
ほむら「ただの統計の結果よ」
杏子「前にも言ってたな」
杏子「その統計ってなんなのか、言ってくれる気はないのか?」
ほむら「この情報源を言うことはできないわ」
杏子「それはなんでなんだ?」
ほむら「言えば、わたしはここからいなくなってしまう」
杏子「どういう……ことだよ」
ほむら「魔法少女には秘密が多いのよ」
ほむら「あまり深く聞かないでもらえると助かるのだけど」
杏子(こいつのことは、今のところ信用できる)
杏子(しかし、なんだ?)
杏子(妙に謎が多く、逆にほむらはなんでも知っているみたいだ)
杏子(でも今はQBを信じるわけにもいかねぇ)
杏子(それに比べてほむらは、理由や根拠こそ言わないが頼りになるのは事実……)
杏子「分かった。何も言わずに行ってやる」
ほむら「助かるわ」
マミ「えっと、じゃあわたしは……」
ほむら「マミ先輩は部屋に残ってください」
ほむら「佐倉杏子なら一人で大丈夫ですし、マミさんの作ったケーキを食べたいです」
マミ「え? そ、そう?」
マミ「佐倉さん、本当に一人で大丈夫?」
杏子「あたしなら大丈夫さ」
マミ「じゃあ、わたしはここに残るわね」
杏子「じゃあ、行ってくる」
ほむら「QBには……気を付けなさい」ボソッ
杏子(分かってるさ)サッ
マミ「じゃあ、暁美さんのリクエストということで、ケーキを作りましょう」
まどか「マミさんは凄いなあ」
まどか「怖い魔女とも戦えるし、お菓子も作れちゃうし」
さやか「本当、本当」
さやか「あたしには魔女と戦うなんて無理だわ」
ほむら(そうね。全くもって同意だわ)
マミ「魔女は、確かに怖いけど、慣れよ慣れ」
マミ「それに比べて、お菓子作りは簡単よ?」
マミ「鹿目さんも一緒に作る?」
まどか「は、はい」アセアセ
さやか「マミさんに、まどか、頑張れー」
ほむら(美樹さやかは手伝わないのね)
ほむら(それよりもまどかの手作り……)ジュルリ
さやか「さて、まどかもマミさんも行ったね」
さやか「ほむら、話があるんだけどいいかな?」
ほむら「話? 美樹さやかがわたしに何の用かしら?」
さやか「えっと、あのさあ、その美樹さやかって呼び方やめない?」
さやか「あたしはほむらって名前で呼んでるんだし、ほむらもさやかでいいよ」
ほむら「……分かったわ、さやか」
ほむら「それで、話というのはこれだけかしら?」
さやか「違う違う、今のはおまけだって」
さやか「じゃあ、本題に入るよ」
さやか「恭介のことなんだけど……」
ほむら「恭介?」
さやか「そう、恭介」
ほむら「…………」
ほむら(ハッ)
ほむら(もしかして、本当に手足が治せるのか疑問になったのかしら?)
ほむら(誰かに聞いて嘘だってバレた?)
ほむら(それだけはマズい。マズいマズいマズい)
ほむら(バレたら何されるか分からないわ)
さやか「もしかして、恭介の手足ってさ……」
ほむら「……」ゴクリ
さやか「治らなかったり、する?」
ほむら(バレたああああああああああ)
ほむら(うまく、誤魔化さないと)
ほむら「ど、どうしてそう思うのかしら?」アセアセ
さやか「なんか、ほむらが深刻そうな顔してたからさ……」
ほむら(ん?)
さやか「何か思い詰めてるみたいっていうか」
さやか「ずっと様子が変だったから」
さやか「マミさんが助かったとき、ほむら一人だけ喜んでなかったよね」
さやか「その後もずっと、今だって何かを考え込んでいるみたい」
さやか「もしかして、病院に魔女が取り付いたせいで、恭介の体に異変があったのかなって」
ほむら(…………)
ほむら(ナイス誤解! グッチョブ誤解!)
ほむら「バ、バレてしまったようね」
さやか「じゃあ、やっぱり」
ほむら「本来は治せるはずだったのだけど、魔女が来たことによって状況が一変したのよ」
ほむら「詳しい理由は分からないけど、確実に恭介くんの体に悪影響を与えていったわ」
ほむら「今の彼の手は、もう、絶対に治せないでしょうね」
ほむら「ごめんなさい、さやか」ポロッポロッ
ほむら「約束したのに、守れなかった」ポロッポロッ
ほむら「なんて、なんて謝ったらいいか」ポロッポロッ
さやか「ほむら……」
てす
さやか「いいんだよ、泣かなくて」
ほむら「え?」ウルウル
さやか「確かに治らないのは悲しいけど、それはほむらも一緒だもんね」
ほむら(いや、別に)
さやか「もともと夢みたいな話だったんだよ」
さやか「転校生が恭介の幼馴染で、実は恭介の手足を治せて、費用は転校生の父が出してくれる」
さやか「そんなおいしい話、もともとおかしかったんだよ」
さやか「泣かないでよ、ほむら」
さやか「別にほむらのせいじゃないんだから」
さやか「あたしは、怒ってないよ」
ほむら「さやかぁ……」ウルウル
さやか「はい! じゃあこの話はおしまい」
さやか「あたしは大丈夫だから、ほむらも気落ちしないで」
ほむら「うん……うん……」ウルウル
ほむら(想像以上に優しいわね、このさやか)
ほむら(まさか、QBと契約するつもり……?)
ほむら「でも……恭介の手が治らないからって……」ウルウル
ほむら「QBとだけは契約しないで……」ウルウル
さやか「別にQBと契約するなんて言ってないじゃんか」
ほむら「じゃあ、どうして、そこまで平気なの?」ウルウル
ほむら「恭介のことが大好きなあなたなら、絶対に落ち込むと思ったのに……」ウルウル
さやか「実はね、恭介よりも、もっと大切に思える人ができたんだ」テヘヘ
ほむら(え?)
ほむら(ええええええええええ)
ほむら(一途じゃないの? 美樹さやかって一途じゃないの?)
さやか「だからといって、恭介のことが嫌いになったわけじゃないけどさ」
さやか「それによって、物事を客観的に見れるようになったんだ」
ほむら(美樹さやかってこんなキャラだっけ?)
さやか「そしたらさ、恭介の手足を治すために、他の治療待ちの人を飛ばすのはどうかなって思って」
さやか「手が動かなくたって、恭介は恭介だって気付けたんだ」
ほむら「それは、よかったわね」アハハ
さやか「だからもうそんな顔しないでよ、ほむら」
さやか「せっかくのお泊まりなんだから楽しもうよ」
ほむら「わたしはあなたを、いえ、さやかを誤解していたわ」
ほむら「あなたは思ったより、優しい心を持っていたのね」
さやか「思ったよりってなんだよー」
さやか「あたしはどこからどう見ても、優しいさやかちゃんですよ!」
ほむら「そうね」
ほむら(なにやら話は綺麗に片付いたようね)
ほむら(本気で焦ってしまったわ)
マミ「暁美さん、美樹さん、ケーキが出来たわよ」
さやか(うおっ、凄い甘い香りがする)
まどか「わたしも、少し手伝ってみたんだけど」
まどか「あんまり上手にできないや……」
ほむら(いえ、まどかの手作りってだけで大満足よ)
さやか「じゃあさっそくいただきますか」
まどか「ほむらちゃんはマミさんのケーキが食べたかったんだよね?」
まどか「じゃあわたしのはさやかちゃんとわたしで食べる?」
さやか「おうよ! まどかの手作りだったらいくらでも食べれるよ」
まどか「嬉しいなあ」
ほむら(ちょっと、え、なんでそうなるの?)
マミ「じゃあ暁美さん、わたしが作ったのを一緒に食べましょう」
ほむら「は、はい。喜んで……」
ほむら(グスン)
おれの村でも猿が発生してるよ
ほむら(まどかの手作りが食べたかったわ)モグモグ
ほむら(いや、普通においしいんだけどね)モグモグ
まどか「さやかちゃん、どうかな?」モジモジ
さやか「まどかの愛情たっぷりで最高だよ! まどか、ありがとう」モグモグ
まどか「て、照れるよ//」モグモグ
マミ「暁美さん、どうかしら? 甘めにしたんだけど」モグモグ
ほむら(巴マミ、あなたにも甘い匂いがこびり付いているわよ)モグモグ
ほむら「あ、はい。おいしいです」モグモグ
マミ「それはよかったわ」モグモグ
ほむら(まどかの手作りを逃すなんてショックだわ)モグ
ほむら(あまりのショックに目眩で倒れてしまいそう)モグ
ほむら(ああ、目の前が真っ白に……)
さやか「あ……あれ? おっかし」バタン
ほむら(!)
マミ「あれ? なんだか」バタン
まどか「みん……な……」バタン
ほむら(みんなが倒れた、どうして)
ほむら(わたしも、限界……)バタン
ガチャ
QB「全く、手間をかけさせてくれるよ」
QB(でも、素直に催眠薬の入った食べ物を食べてくれたね)
QB(暁美ほむらなら気付くかもしれないと思っていたけど、検討違いだった)
QB(さて、四人を運ばないといけないね)
QB(…………)スッ
あっ、QBさん手伝います
マミホーム
杏子「ただいま、グリーフシード調達してきたよー」
杏子(ってアレ? 誰もいねえ)
杏子(このシチュエーション、最近出会ったばかりじゃねーか)
杏子(ほむらの奴、何やってんだよ)
杏子(またどっか行っちまったんだろうが、場所が分からねえ)
杏子(何の書き置きもねーし、またヤバいことでも起きてんのか?)
杏子(あ、食べ掛けだけどケーキあんじゃん)
杏子(少し貰うか……)
杏子(……)モグモ
杏子「うぇ、なんだこの味!」ペッ
杏子「毒でも入れたのかよ……」ペッペッ
杏子(まさか……あいつら、これを食わされたのか?)
杏子(どこへ行ったか、何かヒントはねえのかよ)
謎の牢屋
ほむら(…………ん)
ほむら「!?」
ほむら(ここは、どこ?)
QB「どうやら目を覚ましたようだね、暁美ほむら」
ほむら「QB……」
ほむら(確か……そう、お菓子を食べていたら)
ほむら(これもQBの仕業となると、かなり悪質ね)
ほむら「今回の行動は度が過ぎているんじゃないかしら?」
QB「確かにね。僕自身もこんなことをしないといけないなんて、想定外だったよ」
ほむら「あなたは少なくとも、きちんと交渉するんじゃないのかしら?」
ほむら「やっぱり、詐欺師だったのね?」
猿「ちょっと通りますよー」
QB「暁美ほむら、僕に的外れな意見を言わないでくれるかな?」
QB「確かに眠らせて隔離しているのは事実だ」
QB「でもこれはイレギュラー故に必要な処置なのさ」
ほむら「どんな屁理屈を並べようと、あなたが悪質ということに変わりはないわ」
QB「暁美ほむら、よく考えてみてよ」
QB「人間は町に現れた猪や猿を放置しておくかい?」
QB「突然現れた毒蛇や毒蜘蛛を無視するかい?」
QB「被害を抑えようと何かしらの対処をしているじゃないか」
QB「それと同じ、これは当然とも言えることだよ」
ほむら(QBの話を聞いていても意味がない)
ほむら(今どうするべきか考えないと)
ほむら「QB、まどかと美樹さやか、巴マミはどこにいるの?」
QB「君と同じような状況だね」
ほむら「三人全員近くにいるのかしら?」
QB「近くという定義が曖昧だから正確には言えないけど、おそらく君の思う近くではないんじゃないかな」
ほむら「その三人はイレギュラーではないでしょう?」
ほむら「解放してあげてくれないかしら?」
QB「もちろん解放するつもりさ」
QB「契約が終わったら、ね」
ほむら「QB、そういうのを悪徳商法と言うのよ」
QB「暁美ほむら、覚えておいてよ」
QB「悪徳商法も、商法の一つってことを」サッ
猿「えっ」
ほむら(QBは行ったようね)
ほむら(とりあえず、この牢を壊して外に出ましょう)
ほむら「…………」
ほむら(ソウルジェムがないっ!)
キラキラキラキラ
ほむら(あ、牢屋の外にわたしのソウルジェムが)
ほむら(牢の隙間から手を伸ばしても全然届かないわ)
ほむら(ここまで距離があると変身が出来ない……)
ほむら(あれ? つまり、能力が使えない)
ほむら(過去に戻れない)
ほむら(やり直せない)
ほむら(う、嘘でしょ?)
ほむら(完全に詰んでるじゃない)
ほむら(まどか……約束……守れないよ……)
ほむら(何か、ないのかしら……)
猿「ここで僕の出番か…」
謎の牢屋 さやか側
さやか「…………うん?」
さやか「あれ? あたし……」
さやか(どうしてここにいるんだろう)
QB「美樹さやか、目が覚めたようだね」
さやか「あんたは!」
さやか(あ、思い出した)
さやか(お菓子を食べたら意識を失ってたんだった)
QB「僕と契約して、魔法少女になってよ」ニコッ
さやか「は?」イラッ
さやか「魔法少女ってつまり、魂を抜き取られてしまうってことでしょ?」
さやか「その上戦いを強要されるなんて、なりたくなんかない」
QB「でも、魔法少女になるのならなんでも一つ願いを叶えてあげるよ」
さやか「なんでも?」
QB「そう。どんな奇跡だって叶えてあげる」
さやか「そう言われてもなあ、願いなんてないし」
QB「いや、君にも何か叶ってほしい奇跡があるはずだよ」
さやか(奇跡って言われても、別に不自由なんてなかったしなあ)
さやか(最近はほむらも優しくていろいろしてくれたし)
さやか(新しく気になっちゃった人もいるけど……)
さやか(恋は自分で叶えたいし)
QB「何かあったかい?」
さやか「本当に、なんでもいいの?」
QB「もちろんだよ」
さる…
よけ…
さる… さる…
さやか「じゃあ、その願いを叶える回数を百回に増やしてよ」
QB「残念ながら君の持つ力では無理な願いだね」
さやか「なんでもって言ったじゃんか」
QB「一般常識を考えてほしいな」
さやか「じゃあ、今後の世界をあたしが描いた通りにしてほしい」
QB「さすがに無理だね」
さやか「誰一人不幸にならず、世界の全員が一生幸福に暮らせるようにしてほしい」
QB「必要な力が膨大過ぎるよ」
さやか「あたしが邪魔に思った生命体を消し去ってほしい」
QB「それも難しいなあ」
さやか「ポッキー食べたい」
QB「契約成立だ」
さやか「いやいや、冗談だって」
全ての眠気を生まれる前に消し去りたい。すべての宇宙、過去と未来の全ての眠気を、この手で
おめめがしゃばしゃばしてきた
QB「なんだい? ポッキーを食べたいんじゃないのかい?」
さやか「冗談に決まってるだろが」
QB「いいと思うけどな、ポッキー」
QB「魔法少女になったら、ポッキー・フィナーレを使えるよ?」
さやか「使いたくねえわ!」
QB「冷蔵庫の中にあった、ような……って言いながらポッキーを食べれるよ」
さやか「魔法少女にならなくても食べれるよ!」
QB「ポッキーはとっても美味しいなって再確認できるよ」
さやか「知らないわ!」
QB「ポッキーもプリッツもあるんだよ、って決め台詞もあるよ?」
さやか「いい加減ステマはやめろおおおおおおおお!」
QB「全く、わがままだなあ」
QB「じゃあ先にまどかのところへ行くよ」サッ
さやか「ちょっ、待っ……」
さやか(まどか、大丈夫だよね?)
わたしの、最高のお菓子
謎の牢屋 まどか側
まどか(どこだろう、ここ)ガクガク
まどか(突然意識を失ったまでは覚えてるけど……)ガクガク
まどか(なんだか怖いよ……)ガクガク
QB「やあ、鹿目まどか」
まどか「あなたは……」
QB「ずいぶんと怖がってるみたいだけど、大丈夫かい?」
まどか「ここって……」
QB「見るからに牢屋だね」
QB「鹿目まどか、君はなぜここにいるか覚えているかい?」
まどか「なんだか、意識を失っていって……」
QB「そう、何者かが食べ物に睡眠薬を仕込んでいたようだね」
まどか「あなたじゃ、ないの?」
QB「僕は君を助けに来たんだよ」
まどか「助けに……来た?」
QB「そう、優秀な人材を餓死させるわけにはいかないからね」
まどか「あなたの目的はなんなの?」
QB「僕は君に魔法少女になってほしいんだ」
まどか「魔法……少女……」
QB「もうすぐワルプルギスの夜が来るのは知ってるかい?」
まどか「え?」
QB「ワルプルギスの夜というのは、凶悪な魔女さ」
QB「それが通れば、その場所が吹き飛んでしまうくらいに強力」
QB「今いる魔法少女だけでは確実に勝てるという保証がない」
QB「でももし君が魔法少女になったなら、確実にワルプルギスの夜は倒せるだろうね」
目がティロティロしてきた... 朝日こわい。
>>162
流行らせないよ!
まどか「こんな、わたしでも、役に立てるの?」
QB「いや、鹿目まどか。君だからこそなのさ」
QB「君の持っている魔法少女の資質は計りしれない」
QB「君が魔法少女として戦う限り、その場所の治安は約束されたも同然さ」
QB「それほどに君の力は凄まじい」
まどか「わたしでも……わたしだからこそ……救える……」
QB「教えてごらん、君はどんな祈りでソウルジェムを輝かせるのかい?」
QB「どんな奇跡だって叶えてあげるよ」
まどか「わたしは……」
シュバババン
蜂の巣QB「…………」
まどか「……え?」
ほむら「全く、危ないところだったわ」
まどか「ほむらちゃん……」
まどか(頭から血が出てる……)
ほむら「まどか、お願いだから、QBと会話しないで」
まどか「え? え?」
QB「酷いなあ、暁美ほむら」モグモグ
QB(あそこからどうやって脱出したんだ?)
まどか(自分自身を食べてる……)
ほむら「酷いのはどっちかしら?」
QB「何が言いたいんだい?」
QB「僕は見ての通り、鹿目まどかを救いに来ただけじゃないか」
ほむら「ええ、確かにそうね」
ほむら「でも、牢屋に閉じ込めたのもQB、あなたじゃない」
QB「どうしてそう思うんだい?」
QB「僕はマミの部屋には入れてもらえないんだよ?」
ほむら「わたしたちが巴マミの蘇生を待っている間でしょう?」
ほむら「その間部屋を無防備にしていたのはわたしのミスね」
QB「なるほど。君はそう推測したのか」
ほむら「いいえ、あなたが自ら白状したじゃない」
QB「それで、君はどうするつもりだい?」
ほむら「あなたとまどかを、今後一切会わせないようにするわ」
QB「…………それは、迷惑だね」サッ
まどか「ほむらちゃん、無事だったんだね」
ほむら「杏子がいなかったら、危なかったわ」
ほむら(今ごろ彼女も、二人を救ってるかしら)
oh...
誰か保守頼む
おれは屁ぇこいてブレイクダンスして寝る!
少し前 マミホーム
杏子(ヒント……ヒント……)
杏子(ほむらなら何か手掛かりを残しそうなんだけどな)
杏子(とりあえず、勘に頼ってうろつくしかねーか)
外
杏子「くそ、何の手掛かりもなきゃ探しようがねーぞ」サッサッ
杏子(せめて、携帯とか、テレパシーとか使えたらな)スタスタ
杏子(神様頼むよ、あたしのことは救わなくていい)サッサッ
杏子(だからせめてあいつらを助けさせてくれよ)サッ
杏子(頼むよ……、神様)サッ
キラキラ
杏子(ん? ソウルジェムが……反応してる?)
またさるってたのか…
やっぱ時代はゴリラだな
同時刻 謎の牢屋 ほむら側
ほむら(このままじゃ、まどかを救えない)
ほむら(その上、時間を巻き戻すことすらできない)
ほむら(そうなればQBの一人勝ちになってしまう)
ほむら(なんとかして脱出しないと)
ほむら(でも、わたしの力では牢は壊せない)
ほむら(唯一捕まってない佐倉杏子が、最後に残った道しるべ……)
ほむら(どうにかして場所を伝えないと)
ほむら(しかし、携帯は使えないし、魔法も使えない)
ほむら(ああ、こんなネガティブになってはソウルジェムが穢れてしまうわ……)
ほむら(!)
>>171
ブレイクダンスは終わったのか
>>172
了解
んじゃ今のうちいっとくわ。お疲れさん
落ちたら途中からでも良いからまた立ててくれるとありがたい
>>173
それがなかなか屁が出なくてな…
ほむら(そうじゃない)
ほむら(ソウルジェムが離れていたら、変身も穢れの回復もできない)
ほむら(でも離れていても、ソウルジェムの穢れを増やすことはできる)
ほむら(ソウルジェムが穢れきったら魔女が生まれる)
ほむら(その膨大な魔力に反応するのがソウルジェム)
ほむら(だとすれば、わたしのソウルジェムをギリギリまで穢れさせれば)
ほむら(佐倉杏子が気付いてくれるかもしれない……)
ほむらの ずつき!
ほむら「うっ」バコーン
ほむら「今は信じるしかないわ」バコーン
バコーン バコーン バコーン
同時刻 外
杏子(魔女はあたしが倒し尽くしたはず)
杏子(だからソウルジェムが反応するなんてことはあり得ない)
杏子(それなのにソウルジェムが反応してるってことは)
杏子(今さっき新たな魔女が現れたのか、それとも)
杏子(ほむらたちのSOS……?)
杏子(分からねえ、分からねえけど)
杏子(今はそれに賭けるしかねーな)
杏子(待ってろよ、みんな)サッサッ
杏子(反応は……こっちか?)サッサッ
杏子(町からかなり外れてきたな)サッサッ
杏子(ここ、か?)
杏子(なんだよ、薄気味悪いな……)
バコーン バコーン バコーン
杏子(なんだこの音は? 何かいるのは確かだな)
杏子(十分に警戒して行かねーと)
バコーン バコーン
杏子(うわあ、牢屋がいっぱいある、ここ工場だよな?)
杏子(魔法で改造でもしたのか)
バコーン
杏子(近い……!)
バコーン!
杏子「誰だっ!」
ほむら「あ…………」フラッフラッ
杏子「ほ、ほむら」
杏子「大丈夫かよ、頭から血が出てるぞ」
杏子「今ここから出してやるからな」
バキーン
ほむら(佐倉杏子……来てくれたのね……)
杏子「お前のソウルジェムは……あれか」
杏子「っておい、ソウルジェム穢れまくってんぞ」
杏子「あたしのグリーフシードを使って」
キラキラキラ
杏子「これである程度は、大丈夫か?」
ほむら「助かっ……たわ。佐倉……杏子」ゲホッ
杏子「当たり前だろ!」
杏子「あたしたち、仲間だろ?」
杏子「ワルプルギスの夜を三人で倒すんだろ?」
ほむら「そうね、ありがとう、佐倉杏子」
杏子「だからさ、その、佐倉杏子って呼び方もやめろよ」
杏子「杏子でいい」
ほむら「…………ええ、杏子。ありがとう」
杏子「ああ」
…………
……
ほむら「だいぶ回復してきたわ」
杏子「そうか。他の奴らはどこだ?」
ほむら「どうやらわたしと同じように閉じ込められているようね」
杏子「くそっ、ひでえことしやがる」
杏子「統計とやらで位置は分からねえのか?」
ほむら「残念だけど、データがないわ」
杏子「そっか、じゃあ二手に別れて探すか」
ほむら「ええ、急がないとまどかがQBと契約してしまう」
杏子「もしもQBと接触してたら止めればいいんだな?」
ほむら「そうしてもらえるかしら?」
杏子「じゃああたしはこっちを探す」サッ
ほむら「わたしはこっちね」サッ
杏子(どこだ? どこだ?)スタスタスタ
さやか「テマはやめろおおおおおおおお!」
杏子(な、なんだ?)ビクッ
杏子(今の、さやかの声だよな?)
杏子(こっちの方にいるのか?)スタスタ
杏子(しかし、テマってなんだ?)スタスタ
さやか「…………どうすりゃいいのさ、あたし」ボソッ
杏子「さやか!」
さやか「あ、あんたは、杏子?」
杏子「助けに来てやったよ」
さやか「あ、ありがとう」
さやか「さすが魔法少女、頼りになるわ」
バキーン
杏子「さ、出てきな」
さやか「う、うん」
杏子「他の奴らの居場所を知らねえか?」
さやか「えっと、QBがまどかのところへ行くとは言ってたけど」
さやか「場所までは聞いていないよ」
杏子「そっか、まあそうだよな」
杏子「じゃあ他の奴らも救いたいから、移動するか」
さやか「うん、分かった」
杏子(今はただ闇雲に探すしかねーか)テクテク
杏子(ソウルジェムの反応もねーしな)テクテク
杏子「あれ?」
さやか「どうかした?」
杏子「なんかこっちから、すげえ甘い匂いがするんだけど」
さやか「え? そうかな」
杏子「するって、なんか知ってる匂いなんだよな」
杏子「あ、そうそう、家出る前に食べ掛けたケーキの匂いだ」
さやか「え? じゃああっちにマミさんが」
杏子「だろうな、行くぞ」
杏子「こっちからするぞ」サッサッ
さやか「ちょ、早いって」ハァハァ
さやか(あれ? 確かに甘い匂いがする)
杏子「おーいさやか!」
杏子「やっぱりここにいたぞ」
さやか「マジで?」
さやか(杏子の臭覚どうなってんの……)
さやか「マミさんの様子は?」
杏子「まだ眠ってるみたいだな」
マミ(ムニャムニャ)
杏子「よし、牢を壊すぞ」
マミの夢の中
マミ「ここは、どこかしら?」
マミ「ずいぶんと冷たいわね」
マミ「あれ? もしかして、閉じ込められてる?」
マミ「ど、どうして」
マミ「誰か、誰か助けてよ」
マミ「鹿目さん、美樹さん、暁美さん、佐倉さん」
マミ「わたしはもう一人じゃないはずなのに」
マミ「誰か……」
バキーン
現実世界
マミ「ハッ」
杏子「大丈夫か?」
マミ「佐倉……さん」
杏子「どうやらQBに閉じ込められてたらしい」
さやか「だからあたしと杏子で」
杏子「助けてに来てやったよ」
マミ「あ、ありがとう……」ウルウル
杏子「お、おい泣くなよ」アセアセ
さやか「ラブラブですな、お二人さん」
杏子「ちげえよ、ラブラブとかじゃねーよ」
マミ「うっ、うっ……」
杏子「ああ、もう泣くなよ」
ほむら「ここにいたのね、杏子」
まどか「みんな……」
杏子「おっ、無事だったか」
ほむら「ええ、すぐにQBの気配が分かったから行ってみると」
ほむら「案の定契約を迫っていたわ」
ほむら「あと一秒でも遅かったら危なかった……」
さやか「あれ? じゃああたしいい仕事した?」
杏子「ん? 何かしたのかよ」マミサンカカエテ
さやか「いやあ、ずいぶんQBと長話してたからね」
さやか「内容は空っぽなんだけどさ」
まどか「ありがとう、さやかちゃん」
ほむら(たまには役に立つようね)
ほむら「そろそろ帰りましょう」
マミホーム
ほむら「また何か仕掛けられてるかもしれない」
ほむら「十分に気をつけなさい」
ガチャ
杏子「見た感じ、何も変化はねーな」
ほむら「それでも何があるか分からない」
ほむら「食事は全て安全と分かっているもののみ、食器も同様」
ほむら「睡眠も当番制にしましょう」
まどか「あの、ちょっといいかな?」
ほむら「何かしら?」
まどか「なんでQBは、あんなに魔法少女にしようとするんだろう」
まどか「ほむらちゃんも、どうして会って間もないわたしたちを助けてくれるの?」
ほむら(まずいわね)
ほむら(真相を話せば魔法少女にはならないかもしれない)
ほむら(でもその場合、巴マミがどうなるか)
ほむら「……それは」
さやか「友達が欲しいんだよ、ほむらは」
まどか「友達……?」
さやか「転校する前、ずっと入院してたから友達がいないみたいなんだよ」
さやか「だからあたしらと親しくしてくれるんでしょ?」
ほむら「え、ええ。その通りよ」
ほむら(そういえば、美樹さやかにはそう言ったんだったかしら)
杏子「なんだ、そんな理由だったのかよ」
杏子「ほむらが本当に仲間か悩んだあたしがバカみたいじゃないか」
杏子「いいよ、友達って奴になってやんよ」
マミ「実はわたしも全然友達がいなくてね」
マミ「一人暮らしで忙しい上に魔女も狩らないといけなかったから」
マミ「今みたいな時間は、とっても嬉しいの」
マミ「暁美さん、あなたはわたしの友達よ」
さやか「もちろん、あたしもだよ」
さやか「ほむらにはいろいろ助けられちゃったからね」
さやか「ほむらとあたしは友達さ」
まどか「正直、最初はほむらちゃんが何考えてるのか分からなくて」
まどか「ちょっと戸惑っていたんだよね……」
まどか「でも、ああまでして助けに来てくれて、わたしとっても嬉しかったんだ」
まどか「ほむらちゃんは、わたしの最高の友達だよ!」
ほむら「みんな……」
ほむら(全員から好感を得られるなんて、今まで一度もなかった)ウルウル
ほむら(やったわ。わたし、ついに成し遂げたのね)ポロッポロッ
まどか「顔を上げてよ、ほむらちゃん」
まどか「涙、拭きにくくない?」
まどか「わたしが拭いてあげるからね」フキフキ
ほむら「ありがとう、まどか」ウルウル
まどか「お礼を言うのはわたしの方だよ」
マミ「さて、一段落着いたし、食事にしましょう」
マミ「とりあえず今日はお店で買ってくるわ」
杏子「じゃああたしも付いていくよ」
杏子「また何かあるといけないし」
ほむら「そうね。それがいいわ」
ほむら「ただし、魔女がいても、魔女図鑑に書いてない魔女とは戦ってはダメよ」
杏子「分かってるさ」
杏子「でも、できれば今は少しでも早くグリーフシードが欲しいな」
ほむら「そう……ね」
マミ「行ってくるわ」
ガチャ
ほむら「さて、今から状況を整理しましょうか」
ほむら「今はいろいろ疑問があるでしょう?」
まどか「そう、だね」
さやか「はいは~い、質問」
さやか「ずっと気になってたんだけど、ソウルシードとかグリーフジェムとかってつまり何?」
ほむら「ソウルジェムとグリーフシードね」
ほむら「ソウルジェムとはわたしの魂みたいなものよ」
ほむら「いつかQBが言っていたように、これが無事なら絶対に死なない」
ほむら「逆に、これが砕けたら肉体は健康でも死ぬわ」
まどか「えっと、その、色が濁っていくのはなんでなの?」
ほむら「魔力を消耗したり、肉体や精神がダメージを受けた場合に穢れていくの」
さやか「穢れきったら魔法が使えなくなったりするの?」
ほむら「穢れきった魔法少女は、魔女になるわ」
さやか「え?」
まどか「……え?」
さやか「ちょっと待ってよ」
さやか「魔法少女は魔女を倒す存在……でいいんだよね?」
さやか「魔法少女が魔女になったら本末転倒って言うか」
まどか「そうだよ、魔法少女として頑張った娘が魔女になるなんて、そんなの絶対おかしいよ」
ほむら「それがQBの狙いなのよ」
ほむら「難しい話は抜きにして、QBはわたしたち魔法少女が魔女になるときに出る力を欲しがっているの」
ほむら「QBと契約するってことは、すなわちいずれ魔女になるということよ」
さやか「じゃあ、ほむらや杏子、マミさんは」
ほむら「ええ、その通りよ」
まどか「そんなっ、そんなのってないよ」
まどか「魔女にならないで済む方法はないの?」
ほむら「もちろんあるわ」
さやか「な、なんだよ、あるのかよ」
ほむら「グリーフシードを使うことで、ソウルジェムの穢れが取れるのよ」
さやか「ああ、なるほど」
さやか「あれ? でも、グリーフシードって」
ほむら「魔女が持っているものよ」
まどか「魔女が持っているって、つまり」
さやか「もともと魔法少女だった奴が持っているってことかよ」
ほむら「だから、ソウルジェムを穢れさせないためには、常に誰かを魔法少女に契約」
ほむら「そして魔女にさせて仕留める必要があるわ」
ほむら「つまり、あなたたち二人を魔法少女にしないようにしているのはイレギュラーってことよ」
まどか「魔女にならないためには、誰かを犠牲にしないといけないなんて」
さやか「魔女にならない方法はそれだけなのかよ」
ほむら「もう一つだけあるわ」
ほむら「自分自身のソウルジェムを、穢れてしまう前に砕くことよ」
さやか「なっ……」
まどか「そんな……」
ほむら「悲しいけどこれが事実よ」
ほむら「これで分かったでしょう」
ほむら「いかにQBが悪質か」
ほむら「そして、絶対に魔法少女にはなってはならないということが」
さやか「それを、知ってて魔法少女になったの?」
ほむら「これを知ったのは……、契約したあとよ」
まどか「マミさんや杏子ちゃんは知ってるの?」
ほむら「いえ、まだ知らないわ」
ほむら「そこで約束してほしいの」
ほむら「ソウルジェムは、精神的に苦痛になるだけで穢れてしまう」
ほむら「だから、この話は絶対に二人に内緒よ」
さやか「……分かっ……た」
まどか「…………うん」
まどか「でも、それって、いつかほむらちゃんも魔女に……」
ほむら「ならないわ」
ほむら「……絶対に」
ガチャ
マミ「ただいま」
杏子「帰ったよ」
ほむら「おかえりなさい」
杏子「しかし、魔女は全然いなかったよ」
マミ「平和なのはいいことね」
杏子「でもそれじゃあグリーフシードが」
マミ「佐倉さん、そんなに急がなくたって大丈夫よ」
杏子「はあ……」
ほむら「…………」
まどか(つまり、今はソウルジェムが穢れた魔法少女はいないってことかな)
さやか(さっきの話を聞くと、なんか気まずい)
マミ「どうしたの? 三人共」
ほむら「いえ、なんでもありません」
杏子「じゃあ飯にしよーか」
翌日
ほむら「おはよう、杏子」
杏子「ああ、もう起きたのか」
ほむら「悪いわね、見張りを頼んじゃって」
杏子「いいってことさ」
杏子「今はあたしが一番元気なんだから」
マミ「ん……、あら、佐倉さん、暁美さん、おはよう」
マミ「暁美さん、早いのね」
ほむら「いえ、今起きたばかりです」
杏子「さて、二人起きたし、あたしは眠るかな」
マミ「佐倉さんお疲れ様。ゆっくり休んでね」
杏子「おやすみ~」
さやか「うーん、あ、おはよう」
マミ「おはよう、美樹さん」
まどか「ん……、お、おはよう」
ほむら「おはよう、まどか」
マミ「さて、みんな起きたし、朝食の準備をしましょうか」
ほむら「あの、わたしは少し、風に当たってきます」
マミ「そう? 一人だと危険だし、すぐ帰ってきてね」
ほむら「もちろん分かってます」サッ
外
ほむら(やっぱり、魔女は一人もいないわね)
QB「やあ、暁美ほむら」
ほむら「来たわね、QB」
QB「町の変化に気付いたかい?」
ほむら「ええ、魔女を消し去ったのでしょう」
QB「まあね。この町に今は魔女が現れない」
QB「かといって、他の町に行っても同じさ」
QB「君の行く町に先回りして、魔女には消えてもらう」
QB「暁美ほむら、君にはこの意味が理解できるかい?」
ほむら「さあ、全く分からないわ」
QB「やれやれ、本当は分かってると思うけどなあ」
QB「魔女がグリーフシードを落とすのは知ってるだろう?」
QB「その魔女がいなくなれば、当然君はソウルジェムを浄化できない」
QB「ソウルジェムが穢れきるとどうなるか、君なら知ってるんだろう?」
QB「だとしたら、これは一大事だよね?」
QB「ワルプルギスの夜が来るのを待つなんてことすらできない」
QB「なぜなら、暁美ほむら、巴マミ、佐倉杏子はその前に穢れきるからね」
ほむら「そうね」
QB「そこで君と、特例の契約をしたい」
ほむら「……」
QB「君が条件を飲んでくれるなら、魔女を消し去るという行為をやめてあげるよ」
ほむら「条件は何かしら?」
QB「鹿目まどかを僕に譲ってほしい」
ほむら「…………ふふ」
QB「ん? 何がおかしいんだい?」
ほむら「QB、あなたにとってまどかとは何?」
QB「最強の魔法少女になる逸材さ」
ほむら「それだけではないでしょう?」
QB「……そうだね」
QB「僕のノルマ達成に必要な人間、とも言えるかな」
ほむら「あなたにとってまどかがそんな存在でも、わたしにとっては違うのよ」
ほむら「QB、あなたに分かるかしら?」
ほむら「まどかがわたしにとっての何か?」
QB「そうだね。相利共生、といったところかな」
ほむら「いいえ、全く違うわ」
ほむら「まどかはわたしの、最高の友達よ」
QB「それは相利共生とは違うのかい?」
ほむら「ええ、違うわ」
ほむら「人間わね。自分のために友達を渡したりしないのよ」
QB「それほどに君は鹿目まどかを渡したくないのかい?」
ほむら「ええ」
QB「でも、その場合、君や巴マミ、佐倉杏子は命を失うよ?」
ほむら「なんとか策を考えて、穢れを最小限に抑え、ワルプルギスの夜に迎え撃つわ」
QB「ワルプルギスの夜と戦えば、確実にソウルジェムは穢れきるよ」
ほむら「方法は思い付かないけど、なんとかしてみせる」
QB「そう簡単にどうにかできる問題じゃあないんだけどなあ」
QB(ソウルジェムが完全じゃない三人が戦ってもワルプルギスの夜には勝てないだろう)
QB(そうなれば鹿目まどかは契約するだろうね)
ほむら「あなたにあげられる情報はこれだけよ」
QB「分かったよ、僕は身を引く」サッ
マミホーム
ほむら「ただいま」
まどか「おかえり、ほむらちゃん」
杏子「魔女はいたか?」
ほむら「いえ、全く」
マミ「そう……。でも穢れきる前には現れるでしょうね」
ほむら「それもないわ」
さやか「ほむら、なんなのさ。何か知ってるの?」
ほむら「QBはしばらくの間、わたしたちに魔女を会わせないようよ」
杏子「え?」
まどか「じゃあソウルジェムは」
さやか「穢れたまま?」
マミ「……」ピキピキ
マミ「それじゃあ、わたしたちはどうなるのよ!」
マミ「どうしてQBはわたしたちに酷いことをするのよ!」
マミ「なんでなの!!」
マミ「ソウルジェムが浄化できないなら、わたしたちは」
ほむら「落ち着いて」
マミ「でも、暁美さん!」
ほむら「お願い、落ち着いて、マミ」
マミ「うっ……」
ほむら「大丈夫だから、マミ」
杏子「でも、マジでどうするんだ?」
ほむら「わたしには、取って置きの秘策があるわ」
ほむら「ここまで守り通した、秘策が」
ワルプルギスの夜到来 前夜
QB(あれからしばらく経ったけど、暁美ほむらから申し出がこないな)
QB(まさか心中でもしたのか……)
QB(どちらにせよ、まどかが契約することに変わりはないね)
QB(まどかが契約して、魔法少女になり、そして魔女になれば)
QB(それだけで凄まじい力があるだろう)
QB(結局、暁美ほむらの正体が何なのか、正確には分からなかった)
QB(彼女はいったい何がしたかったのかな)
QB(まあ今となっては誰にも分からない)
QB(明日を待とう)
ワルプルギスの夜到来 当日
ほむら「さあ、戦いの時間よ」
杏子「ああ、まかせな」
マミ「絶対に油断はしないわ」
まどか「みんな、頑張って」
さやか「絶対、負けんなよ」
ほむら「では、行ってくるわ」サッ
杏子「二人は避難所に行っときな」サッ
マミ「じゃあ、速攻で倒してくるわ」サッ
さやか「あたしらも、避難所へ行こう」スタスタ
まどか「う、うん」スタスタ
QB(え?)
QB(なぜ、なぜソウルジェムがそんなにも、輝いているんだ?)
ほむら(ワルプルギスの夜が本気を出せば、勝つのは難しくなる)
ほむら(素早く仕留めないと)
ほむら「さあ、手を繋いで」
杏子「ああ」
マミ「うん」
時間停止
ほむら「奴にはわたしの攻撃だけでは通じない……でも」
ほむら「二人の魔法とならいける!」
マミ「ティロ・フィナーレ!」ドカーン
杏子「そのふざけた顔に、あたしの槍をぶち込んでやる!」シュッシュッ
ほむら「食らいなさい、爆弾を」ヒョイッ
時間開始
ドカァァァァン
ワル夜「イヒヒヒヒヒヒヒ」
杏子「くそっ、効いてねえ」
マミ「使い魔がくるわ」
バチン
ほむら「うっ」
杏子「大丈夫か、ほむ」
バチン
杏子「くっ」
マミ「使い魔の相手をしていては切りがないわね」
ほむら「次の攻撃に移りましょう」
QB(暁美ほむら、どうあがこうと無駄なのは目に見えてるじゃないか)
QB(この日までソウルジェムを保ったことは評価するけど)
QB(ワルプルギスの夜と戦っても、相当運が良くて相討ちさ)
時間停止
ほむら「鉄砲っ」バァン
杏子「次は巨大な槍だぜっ」シュバッ
マミ「セカンドティロ・フィナーレ!」ドカーン
時間開始
ワル夜「イヒ……イヒヒ……」
マミ「効いてる?」
杏子「でも、ソウルジェムが限界だ」
ほむら「本当ね」
QB(これで終わりだね)
QB(さて、そろそろ僕は鹿目まどかのところへ……)
QB「なっ!?」
ほむら「さあ、新しいグリーフシードよ」ヒョイヒョイ
マミ「ありがとう」
杏子「サンキュー」
ワル夜「イヒ……イヒヒヒヒ……」
QB(なぜ暁美ほむらが、あんなにグリーフシードを持っているんだ?)
QB(今、あの盾から出したように見えたけど)
QB(魔法少女にグリーフシードを創造する能力は前例がない)
QB(ならば、どうして?)
ほむら(これだけグリーフシードがあれば、ワルプルギスの夜だって倒せるわ)
ほむら「さあ、怯んでる間に攻撃するわよ」
一つ前の時間軸
QB「やあ、暁美ほむら」
ほむら「……QB」
QB「町の変化に気付いたかい?」
ほむら「魔女がいないようね」
QB「そう。この町に今は魔女が現れない」
QB「かといって、他の町に行っても同じさ」
QB「君の行く町に先回りして、魔女には消えてもらう」
QB「暁美ほむら、君にはこの意味が理解できるかい?」
ほむら「そ、それじゃあ……」
QB「特例として、僕と契約してくれないかな」
ほむら「それでも、まどかは渡せないわ」
QB「……そうなると、君も巴マミや美樹さやかと同じようになるよ?」
ほむら(くっ……)
ほむら(ソウルジェムが穢れきったら、詰み……か)
ほむら「分かっ……たわ」
QB「物分かりが良くて助かるよ」
ほむらは まどかを わたした!
ほむら(……狩る! ……狩る! ……狩る!)
ほむら(今のうちにグリーフシードを貯めて)
ほむら(次の時間軸で、絶対に)
ほむら(巴マミも、美樹さやかも)
ほむら(全員まとめて助けてみせる!)
現在
ドオォォォォ!
ワル夜「ウヒ……ウヒ……ヒ……」シュルルルル……
杏子「やった」
マミ「やった」
ほむら「ついに、倒せた」
ほむら(まどか、約束、守り通したよ)
QB(あり得ない、そんなこと)
QB(魔法少女は条理を覆す存在なのは確かだ)
QB(しかし、暁美ほむら、彼女はどうやって条理を覆したのかが分からない)
ほむら「出てきなさい、QB」
ほむら「どうせ近くにいるんでしょう?」
QB「…………」サッ
QB「……やあ」
ほむら「どうかしら、QB。なんとかなったでしょう?」
QB「君は、いったい何者なんだい?」
QB「なんとか策を考えて、穢れを最小限に抑え、ワルプルギスの夜に迎え撃つ」
QB「方法は思い付かないけど、なんとかしてみせる」
QB「そう言っておきながら、君はグリーフシードを、それも大量に所持していた」
QB「確実にワルプルギスの夜を仕留められる自信があったんじゃないのかい?」
ほむら「もちろん、確実に勝てると思っていたわ」
QB「じゃあ、どうして?」
QB「どうしてそんな偽情報を僕に話したんだい?」
ほむら「QB、覚えておきなさい」
ほむら「偽情報も、情報の一つってことを」
QB「…………」
QB「なるほどね」
QB「もう君に干渉することはやめるよ」
QB「どうにも割に合わない」
QB「もう二度と僕が君に何かをすることはないだろうね」
QB(しかし、暁美ほむら)
QB(ワルプルギスの夜を倒しても、まだ終わりじゃないんだよ)サッ
ほむら「行ったわね」
杏子「これは、ハッピーエンドで、いいのか?」
マミ「当たり前じゃない!」
まどか「ほむらちゃ~ん、マミさ~ん、杏子ちゃ~ん」
さやか「みんな~、大丈夫か?」
ほむら「ええ、見ての通りよ」
まどか「突然晴れたから、みんなびっくりしていたよ」
さやか「本当、本当」
ほむら(これでまどかを守った)
ほむら(みんなを守った)
ほむら(まどかともフラグが建ってるはずだし、完璧ね)
マミ「さて、これからどうしましょうか」
杏子「そうだな」
さやか「お泊まりは一ヶ月って言ってたっけ」
ほむら「ええ、ワルプルギスの夜が去ったなら、もう自由よ」
まどか「家に帰るの久しぶりだな~」
杏子「あたしは帰る場所がねーや」ハハハ
マミ「えっと、佐倉さん、良ければわたしの家に、ずっと泊まってもいいのよ?」モジモジ
杏子「え……」
マミ「その、独りぼっちだと、寂しいし」モジモジ
マミ「もっと佐倉さんと仲良くなりたいし」モジモジ
マミ「別に無理にとは言わないわよ?」アセアセ
杏子「独りぼっちは、寂しいもんな……」
杏子「いいよ、一緒にいてやるよ……」
ほむら(まさかこの二人がくっつくとはね)
ほむら(あとはわたしとまどかがくっつけば)
さやか「じゃあまどかはあたしの嫁ね」
ほむら「え?」
ほむら「さやか、冗談もほどほどにしなさい」
まどか「いや、ほむらちゃん」
まどか「実はね、避難所でさやかちゃんに告白されちゃったんだ」テヘヘ
ほむら(…………)
ほむら(ええええええええええ)
ほむら「その告白、返事は?」
まどか「オーケーしちゃった///」
ほむら(ええええええええええええええええええええ)
ほむら「まさか、さやか」
ほむら「気になる人ができたって言ってたのは……」
さやか「まどかの、ことだったんだ///」エヘヘ
ほむら(ちょ、え、どうなってんのよ、これ)
マミ「わたしもカミングアウトされたときはびっくりしたわ」
マミ「でも、愛があれば、性別という障害だって乗り越えられるって後押ししてあげたの」
さやか「あのときはありがとうございました」
ほむら(マミも絡んでんのかああああああああ)
ほむら「えっと、その、まどか」
まどか「何かな?」
ほむら「わたしは、どうかしら?」
まどか「どうって?」
ほむら「さやかに、劣ってるかしら?」
まどか「ほむらちゃんは、かっこいいし、強いし、感謝してるよ」
ほむら「だったら、さやかよりわたしと」
まどか「でも恋人にするならね、メガネしてない人がいいな」
ほむら「……え?」
まどか「髪の毛もくくってない方が好み」
ほむら「…………」
まどか「じゃあね、ほむらちゃん」
まどか「これからも最高の"友達"でいようね」
さやか「ほむら、じゃあな」
さやか「"恋人"のまどかと一緒に、あたしとも仲良くしてね」
マミ「じゃあ、わたしたちも行くわね、暁美さん」
杏子「あ、はい。ほむら、またよろしくな」
バイバーイ ジャアナ マタナ サヨウナラー
ほむら(…………)
ほむら(ええええええええええ)
ほむら(まどかの……まどかの為なら、私は永遠の迷路に閉じ込められても、構わない)
ほむら(また、まどかと過ごした時間軸がズレてしまうわね)
時間巻き戻し
QB「あれ?」
QB「ワルプルギスの夜を倒して、更に鹿目まどかも美樹さやかも魔法少女にならなかった」
QB「それなのに時間を巻き戻すなんて……」
QB「わけがわからないよ」
次の時間軸から、暁美ほむらはメガネを外し、髪をおろしたらしいが、それはまた別のお話
おしまい
というわけで終わり
支援したり、読んでくれた人ありがとう
設定やらに不満を感じたらすまんかった
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