お嬢様「ちょっと、そこの貴方」男「え?」(656)

嬢「ちょっと職員室まで案内して頂けるかしら?」

男「(だ、誰だろうこの子……美人だな)」

嬢「聞いてますの?」

男「えっと、ごめん何だっけ」

嬢「まったく、頭の悪そうな顔してるかと思えば耳まで悪いんですのね」

男「げ……」

嬢「もう一度いいます、この私を職員室まで案内なさい」

男「(な、なんて性格の悪い女なんだ)」

嬢「はぁ……どうして私がこんな庶民の学校に」ブツブツ

男「(転校生……か?)」

男「……はい、ここが職員室」

嬢「まぁ、ここが?」

男「うん?そうだけど……」

嬢「先生方が控えるにしてはあまりにもみすぼらしいのではなくて?」

男「いや、普通だと思うんだけど」

嬢「……まぁ、公立なんてこんなものなんでしょうね」

男「(今までどんな学校に通ってたんだろ)」

嬢「それではごきげんよう。私はここに用事がありますので」

男「はいはい……ふぅ……」

幼馴染「男くーん」

男「お」

幼「おはよ」

男「おぅ、おはよ」

幼「なーに、朝からまたなんかやらかしたの?」

男「その発想はなんなんだ」

幼「あはは、なんか男君と職員室だとそういうイメージしかなくって」

男「違うって。人を案内してきただけだよ」

幼「ふぅん、来賓?」

男「さぁ、俺たちと同じ制服着てたけど……」

幼「転校生かなぁ」

男「っぽかったけどな」

幼「ふーん、そっかぁ」

男「何?」

幼「じゃあその人が、うちのクラスに来る転校生さんなんだね」

男「えっマジで」

幼「そうだよ……って知らなかったの?」

男「全然」

幼「女子の間では噂になってたんだよー」

男「ふーん……」

幼「ねえねえ、男の子だった?女の子だった?」

男「女の子だったけどな」

幼「そっかー、男子が喜ぶね」

男「いや、どうかな……あれはちょっと」

幼「なんで?かわいくなかったの?」

男「可愛い可愛くないの問題じゃない。性格が最悪だ」

幼「ちょっと会っただけなのに、そんなこと言うの良くないよ」

男「ちょっと会っただけで、まがまがしいオーラと言葉を発していったよ」

幼「タイプじゃないとか?」

男「やけに突っ込んでくるなぁ……」

幼「だって……」

男「ん?」

幼「な、なんでもないっ!先に教室行ってるねっ」タタタ

男「なんなんだ一体」

先生「……という訳で、今日から皆さんと一緒に勉強することになりました」

男「(ほんとに来ちゃったよ……あの女)」

嬢「よろしくお願い致しますわ」ペコリ

男「(なんで貴族風にスカートの裾を……)」

ざわざわざわ

友「うひょーwかわええww」

幼「わぁ、なんかどこかのお嬢様みたいな人だね」ヒソヒソ

男「(みんな見た目で騙されてるなぁ……)」

先生「席は男くんの隣が空いてますね」

嬢「はい」

男「えっ」

嬢「あら?あなたは……」

男「……ど、どうも」

嬢「奇遇ですわね、同じクラスだなんて」

男「そ、そうだね」

友「なんだなんだ知り合いかよ」ヒソヒソ

男「いや、そういう訳じゃなくて……」ヒソヒソ

友「先生ー!彼女への質問タイムをぜひー!」

先生「小学校じゃないんだから却下。休み時間にしなさい。授業をはじめますよー」

友「ちっ」

嬢「くすくす、面白い方ですわね」

男「……」

男「(まさか席まで隣になるとは……)」

嬢「ちょっと」

男「(まぁいいか……極力関わらないようにすればいいだけだし)」

嬢「ちょっと貴方」

男「え?」

嬢「まったく、耳鼻科に行ったほうがいいのではなくて?」

男「くうっ……な、何か用?」

嬢「教科書がまだ届いて無いの。見せてくださらない?」

男「あ、あぁ……それはいいよ」

嬢「そう。助かりますわ」ニコ

男「う……(わ、笑うとかわいいじゃないか)」

男「えーとじゃあこれ(かわいいは正義ともいうしな……)」パサ

嬢「……貴方、やっぱりバカですの?」

男「は?」

嬢「そんなところに置かれても見える訳ないでしょう」

男「あ、あぁ……じゃ机を寄せてくれ」

嬢「……私が?この私が机を動かすんですの?」

男「えっ」

嬢「レディファーストという言葉もご存じないのかしら……これだから田舎者は」

男「(くっ……やっぱりこいつはダメだ、無しだ無し)」ズズズ←机を寄せている音

嬢「これならよく見えますわ」

男「ふん……」

嬢「……」カキカキカキ

男「……」

嬢「……」

男「……(席を寄せると、なんというか顔も近いし……)」

嬢「……」カキカキカキ

男「……(くんくん、なんかすごくいい匂いがするな……)」クンクン

嬢「…ちょっと」カキカキカキ

男「……(黙ってれば、やっぱりすごく可愛いな、この子)」

嬢「ちょっと貴方」

男「はい?」

嬢「さっさとページをめくってくださらない?もう次のページに進んでますわ」

男「うぐっ……(なぜ自分でやらんのだ、このアマ)」ペラッ

~昼休み~

男「ふぅ……やっと昼飯だ」

嬢「ちょっと」

男「今日は学食にするか、購買か悩むなぁ」

嬢「ちょっと、そこの貴方」

男「え?俺?」

嬢「あなた、恐竜なみに反応が鈍いですわね」

男「あのさ、『ちょっと』だけで主語がないんだからすぐ気づくわけないだろ」カチン

嬢「まぁ、口答えなんて生意気ですわね……」

男「何の用だよ、飯食いに行きたいんだけど」

嬢「それなら好都合ですわ」

男「ん?どういうこと?」

嬢「私もちょうど昼食にしようと思ってましたから。同伴なさい」

男「え、ちょ、ちょっとま」

嬢「この学校では、どこで食事を摂るんですの?」

男「……購買か、学食だけど。弁当無いのか?」

嬢「学食……あぁ、カフェテリアね」

男「ハイソな言葉が出てきたな……」

嬢「そこでいいでしょう。案内なさい」

男「なんで俺が」

嬢「嫌なんですの?」

男「御免こうむる」

嬢「……なんでも好きなものを食べていいですわよ。お代は私が持ちます」

男「えっマジで!」

嬢「マ、マジですわ……なんでそんなに食いつきがいいのかしら……」

男「よし行こう」

~学食~

男「ここが学食なんだけど」

嬢「……ずいぶん雑多な雰囲気ですわね。前の学校とは大違いですわ」

男「(ただ飯につい食いついてしまったけど、ストレスが溜まりそうだな……)」

嬢「まぁ、仕方ありませんわね。席に案内してくださいな」

男「この辺でいいだろ」ガタ

嬢「窓際で眺めはいいですわね」

男「さ、注文しにいこうぜ」

嬢「給仕はおりませんの?」

男「そんなのいるわけないだろ!セルフだよ」

男「A定食にしようかな」

嬢「イタリアンが食べたいですわ」

男「壁のメニュー表、よく見てくれ。そんなもの無いから」

嬢「その『A定食』というのは?」

男「日替わりランチだな。今日はミックスフライのようだ」

嬢「『みっくすふらい』とは何ですか?」

男「えーと……マジで聞いてるの?」

嬢「あまりこういう場所で食事をしたことがありませんから」

男「(もしかして半端ないお嬢様なのでわ)」

嬢「……まぁいいですわ。その『みっくすふらい』とやらを食してみます」

男「了解」

嬢「支払いはこのカードでお願いしますわ」

男「えっ」

嬢「えっ」

男「あのさ、学食でそんなの使えるわけないだろ」

嬢「不便ですわね……このカフェテリアは」

男「前の学校では使えたの?」

嬢「いえ、授業料に含まれてましたから必要ありませんでした」

男「なんと……」

嬢「困りましたわね、現金は持ち合わせてないし」

男「くそお、結局俺が二人分払うしかないのか」チャリン

男「ガツガツガツガツ」ハグハグ

嬢「お、落ち着いて食べなさい。はしたないですわよ」

男「昨日の昼から何も食ってなかったんだ。仕方ないだろ」ガツガツ

嬢「……?意味がわかりませんわね」

男「意味も何も、そういうこと」

嬢「ダイエットもほどほどにしないと体に良くありませんわよ」

男「ダイエットって言うか……まぁいいや」

嬢「……っ!!な、何ですかこれはっ!」

男「うぉっ!何事かっ」

嬢「……美味しいですわ。これが『みっくすふらい』なんですね」

男「うんうん、美味しいよな」

嬢「♪」サク

男「(ほんとに美味しそうに食べてるなぁ)」

男「ふー食った食った」

嬢「……まぁまぁの食事でしたわね」

男「ごはんお代わりしてたくせに(しかも人に行かせて)」

嬢「んなっ!余計なことは言わなくていいですわっ!」

男「はいはい……ていうかさ」

嬢「何です?」

男「何でこの学校に来たのかなぁって」

嬢「あら、私に興味があるんですの?」ニコ

男「きょ、興味っていうか」

嬢「こちらに引っ越してきたのは単純な理由です。お父様の仕事の都合ですわ」

男「ふーん……左遷とか?」

嬢「社長を左遷させられる会社がどこにあるのです?」

男「しゃ、社長?」

嬢「何か?」

男「いや、なるほど」

嬢「本社の移転に伴い、父もこちらで指揮を執ることになったのです。それで私たち家族も」

男「もしかして、本当にすごいお嬢様なのかな?」

嬢「……そういう呼ばれ方は好きじゃありませんわ」

男「(だったらそういう振る舞いをするなよ……)」

男「でも、いいじゃないか。お金があるっていうことは」

嬢「お金だけで、幸せを手に入れることはできなくてよ?」

男「な、なんかそのセリフがなおさら金持ちの余裕に溢れてるな……」

嬢「おかげさまで日々の生活には不自由しませんけど」

男「ふーん……」

嬢「さ、午後の授業までまだ時間がありますわね」

男「そろそろ戻るか」

嬢「何を言ってるんですか?私に校舎を案内なさい」

男「げっ……」

嬢「光栄に思いなさい、ふふ」

男「ほんとうにいるんだなぁ、自分中心に世界が回ってると思ってる人」

~放課後~

男「うぅ、今日はなんか疲れたなぁ……」

嬢「それでは皆様、御機嫌よう」

男「(外面はなぜかいいんだよなぁ)」

友「帰っちゃったなぁ、あの子」

男「そうか……」ホッ

友「なんで疲れてるんだ?」

男「いやぁ……」

友「いいなー……お前今日一日つきっきりだったじゃん。くーーーっうらやましい」

男「ちっとも良くないから」

友「なんかわからないけど、気に入られたんじゃねーの」

男「ないわー(気に入られても困るし)」

友「ま、ちょっと高嶺の花って感じだけどな」

男「すげー金持ちの家みたいだからなぁ……」

幼「男くーん」

男「んー?」

幼「なんだかすっごく仲良くなってたみたいだね」

男「ま、周りからはそう見えるのか」

幼「だって校舎案内してあげたり、移動教室も一緒だったし」

男「いっとくけど多分、下働きの男かなんかと同様の扱いだと思うぞ」

友「おぉ、なるほどなぁ」

幼「あ、車で帰るんだねあの子」

男「うぉ……あんな車テレビでしかみたことないぞ」

友「住む世界が違うな、だがそれがいい」

男「……」

幼「それよりさぁ、良かったら放課後どっかいかない?」

男「え……」

友「さんせーい」

男「お前もくんのかい」

友「いいだろ別に」

幼「あはは、私は別にいいよーぅ」

男「ん……悪いけど、俺バイトがあるから」

幼「え……そっかぁ。なら仕方ないね」

友「……あんまり無理すんなよ」

男「っとと、遅刻しちまう……じゃ、悪いなっ!また今度」タタッ

幼「うんっ!またねーっ!」

友「じゃ、二人で遊びに行こうか」

幼「じゃ、友くんもまた明日ね?ばいばい」タタタ

友「ですよねー……」

~バイト後~

男「じゃ、お疲れ様でしたー」

男「うー、腹減ったなぁ」ぎゅるるる

男「財布の中は……何度見てもほぼ残金ゼロ」

男「昼間二人分の食事代払ったのが痛かったな……」

男「帰って水でも飲んで、腹を膨らませよう」

男「くそー、あの金持ち女め」

男「世の中には一食一食の食事代をねん出するのも苦労してる人間だっているんだっつーの」

男「……」

男「なんて言っても虚しいだけだ……帰って寝よう」グギュルル

~男・自宅アパート~

男「ただいまー」

男「……」

男「と言っても、誰もいないけど……はは」

男「飯はなくとも、風呂くらいは浴びて寝たいな」

♪ピリリリリ

男「ん……電話か。もしもーし」

男「あぁ叔母さん。うん、元気でやってるよ」

男「うんうん、大丈夫……ちゃんと食べてるから」

男「え……いいよ。そんなの」

男「送ってくれてる分だけで十分すぎるほどだから増やさなくても」

男「そうそう……バイトだってしてるんだから」

男「うん……うん……こっちで頑張るつもりだよ」

男「じゃあ……」ピ

男「……(仕送り増やされると、返す時大変だからな)」

男「(返せなんて言わないだろうけど……)」

男「さて、風呂沸かすか」

~数日後~

嬢「ちょっと」

男「……うぅ、腹減った……」グギュルル

嬢「ちょっと、そこの貴方」

男「もう少し……もう少しで給料日……」グギュルル

嬢「あーもう!いい加減にしなさいな!」

男「うわッ!な、何?」

嬢「いい加減呼ばれたら一度で返事をしなさい」

男「名前で呼んでくれればいいのに……」

嬢「今日一日、机に突っ伏してますけど……どこか具合が悪いんですの?」

男「いや、ちょっと腹が減ってるだけだから」

嬢「お腹がすいたくらいで情けないですわね……しゃきっとしなさい」

男「(好き勝手言ってくれちゃってるなぁ)」

嬢「昨日もずっとお腹を鳴らしてましたわね」

男「うん、うるさかった?」

嬢「寛容な私だから良かったものの、他の人でしたら怒鳴りつけられてますわ」

男「はは……」

嬢「なぜ食べないんですの?昼も食べてなかったようですけど」

男「単純に金がないから」

嬢「はぁ?」

男「……」

嬢「お金がないから食べない……意味がわかりませんわ」

男「そのままの意味過ぎて説明が難しいな……」

嬢「いいこと?今日のお昼は何か食べなさいな。ダイエットもいいですけどやりすぎは毒です」

男「(だからダイエットじゃないってば)」

キーンコーン

嬢「さ、お食事の時間ですわ」

男「さてと、購買にでも行くか」

嬢「待ちなさい」

男「何だよ、もう」

嬢「ちゃんと食べるんですのよ。午後もお腹を鳴らされてたら迷惑です」

男「はいはい……じゃあな」

嬢「……」

幼「ねぇねぇ」

嬢「あら、幼馴染さん」

幼「良かったら、お昼一緒に食べない?」

嬢「カフェテリアでよろしければ、ご一緒いたしますわ」

~学食~

嬢「『A定食』くださいます?」

おばちゃん「あいよー、ごはんは大盛りね」

嬢「こ、声が大きいですわっ」

幼「な、なんかなじんでるね……私もA定食にしようっと」

嬢「ふふ、ここの『みっくすふらい』は絶品ですわ」

幼「美味しいよね、今日はA定食は肉じゃがだけど」

嬢「な、なんですってぇっ!」

幼「きゃっ!そ、そんなに好きなの……?」

嬢「……」ツーン

幼「いつまでも拗ねてないで、食べようよ」

嬢「『みっくすふらい』のないカフェテリアなんて……」ブツブツ

幼「ここの肉じゃがも美味しいんだよ。たくさん煮るから」

嬢「なんですか?この茶色く似た食べ物は……とてもおいしそうに見えませんわ」

幼「わー……肉じゃがも食べたことないんだ」

嬢「こんなもの……ッッッ!!!えっ……」パクッ

幼「美味しいでしょ」

嬢「そ、そんな……これからは選択肢に『にくじゃが』も入れないといけませんわね」

幼「気に入ってくれてよかったぁ」パクパク

嬢「ふふ、否定はしません」パクパク

幼「ところでさ、男くんの事なんだけど」モグモグ

嬢「何かしら……」

幼「うぅん、あんまり怒らないであげてね」

嬢「……あんなに情けない姿を晒してる殿方は、初めてです。まったく」パクパク

幼「お腹減って仕方ないんだよ」

嬢「なぜ食べないのですか?私には理解できません」パクパク

幼「だって……作ってくれる人もいないし」

嬢「………え?」

幼「男くん、一人暮らしなんだよ」

嬢「ひ、一人暮らしって……御両親は……」

幼「事故で死んじゃった」

嬢「……っ」

幼「だからね、自分で生活費とか稼がなきゃいけない人なの」

嬢「そんな……でも」

幼「親戚の人にいくらかはお金援助してもらってるみたいだけど……ほとんど使わないでとってあるみたい」

嬢「な……どうして?」

幼「いずれ返すなら、少ないほうが気が楽だって」

嬢「……」

幼「と、こういう訳だから、ね?」

嬢「……」

幼「たまーに食いついてくるけど、基本的にご飯おごってもらったりするの嫌いな人だから」

嬢「……」

幼「奢るよっていっても滅多に乗ってこないんだ」

嬢「難しい人ですね……私、この間食事をおごらせてしまいました……」

幼「あはは、貧乏だけど、別にドケチってわけじゃないからね」

嬢「バカな男の人ですわね」

幼「そう、男くんってすごくバカなの」

嬢「ふふふ」

幼「あはは」

~校舎裏~

男「よし、つくしがいっぱい生えてるな……例年通りだ」ブチブチ

男「今夜はこれを炒めて食うぞー!」ゴクリ

男「……」

男「いかんいかん、さすがに火を通さずには食わないほうが……」

男「ぐふふ、今夜が楽しみだ」

?「……このへんでいいかぁ」

?「へい」

男「おっと、だれか来たな」コソコソ

男「つくし採集なんて見つかったらちょっぴり恥ずかしいから隠れてよう」

男「(……あ、あいつら二人……と誰だ、アレ)」

女「なぁなぁ、お前ってすっごい金持ちなんだってー?」

嬢「否定はしませんわ」

女2「ケ、『何がしませんわ』だよぉムカつく」

嬢「……」

幼「な、何ですか一体……こんなとこに連れてきたりして」

女「別にー。このお嬢様にちょっと恵んでもらおうと思ってさぁ」

幼「なっ……!それって」

女2「なぁーいいだろぉ?貧乏な私たちにさぁー」

嬢「ふ、ふんっ……あななたちに恵んであげる義理などありませんわっ!」

女「んだとコラッ!」ダァンッ

男「(あぁあああああっ!俺のつくしがぁああああっ!)」

女「ん?お前なんか言ったか?」

女2「何にもー」

嬢「耳の悪い人ばかりですのね、この学校は」

男「(明らかに俺の事だな……)」

女「かーっ!ムカつくなぁこの女……」

女2「やっちまおうぜ、姉貴」

幼「わ、私先生呼んでくるっ!」タタタ グシャ

男「(あぁあぁあああつくしがぁああああ)」

女「へへ、先公が来る前に終わらせてやるよ」

女2「そこに痺れる憧れるぅ」

嬢「や、やれるものならやってみなさいなっ!」

女「なぁいいだろ?ちょろっとでいいからさぁ」

女2「あんたからしたらはした金だろぉ?」

嬢「な、なんて情けない……人として誇りはないのですかっ」

女「あぁ?誇りで金が増殖するんかよ」

女2「ギルが無限増殖するバグなんて現実にはおこらねぇんだよっ」

嬢「な、何を言ってるのかわかりませんわ」

女「いいから痛い目みないうちに出しなよ、なぁ」

女2「このつくしみてぇになりてぇのか?」ブチブチブチ

嬢「……くぅっ……」

男「(あぁあああああ)」

女「さぁさぁ」

女2「O・KA・NE!O・KA・NE!」

嬢「……」

男「(どうするんだろ……学食で食べてるから現金持ってるみたいだし)」

嬢「……申し訳ないですけど、できませんわ」

女「なんだとコラー」

女2「貧乏人のハングリー精神なめんなよぉ?」

嬢「あなた方のような誇りのない人たちとこれ以上お話することはありません。さようなら」

女「って、そのまま帰れると思うなよ!」グイッ

嬢「きゃっ……」ドスン グシャ

男「(つくしいぃぃいいっ)」

嬢「恥を知りなさいっ!人として……あなたがたは」

女「るせーなー……金持ちにうちらの気持ちが分かるかよっ」

女2「貧乏人のいる学校に来たことを恨むんだなぁっ」

嬢「び、貧乏でも誇り高い人を私は知っていますわっ!」

女「あぁ?なんだそりゃ」

嬢「そのひとと比べて、なんて愚かなんですの、あなたたちは」

女「……あーもうめんどくせぇ。脱がせ脱がせ」

嬢「えっ……」

嬢「脱がすって……や、やめなさいっ」

女「大丈夫、ちゃんと服は校門に置いといてやっから」

女2「エゲツねぇ…エゲツねぇよアネキ」

女「校門まで、素っ裸で歩いていきなよ……教室から良く見えるだろうなぁ」

女2「うひょー!アムロいっきまーす」ヌガシヌガシ

嬢「ちょ、ちょっと……や、やぁっ!!……ちょっと……やめっ……」

男「呼んだ?」ニュ

嬢「あ、あなた……どうして」

男「いや、『ちょっと』って呼ばれたから……」

嬢「ぷっ……何ですの、それは」

女「なんだテメー」

女2「犯すぞコラ」

男「まぁまぁ落ち着いて場所を移そうじゃないか(これ以上つくしが荒らされるのはごめんだし)」

嬢「……わ、私を助けに来てくれたの……ですわね……」

男「これ以上、この(つくしが群生している)場所での無法は許さない」

女「くっ……」

女2「やべぇよアネキ、そろそろ先公が来ちまう……」

男「ふふん、退散したほうがいいぞ?」

女「ちっ……わかったよ」

男「分かってくれたか」

女2「あ、アネキ……」

女「っと見せかけてグーパンッ!」バキッ

男「ぐわっ……」ドタ

嬢「きゃーーーっ!」

女「覚えてやがれっ!行くぞっ」タタタ

女2「はいっ」タタタ

男「きゅう……」

嬢「な、なんて弱いんですの……」

幼「おーーーーーいっ!!」

~保健室~

男「うーん……」

嬢「気が付きましたわね」

男「こ、こは……」

嬢「保健室です。もう放課後ですわ」

男「あれ、俺は……」

嬢「覚えてないんですか?殴られて、気を失ったんです」

男「えーっと、あぁそうだっけ……」

嬢「まったく、意気揚々と来たと思ったらいきなり倒されるだなんて」

男「ちょっといい角度でもらってしまったので」

嬢「……」

男「あの後、大丈夫だったのか?」

嬢「えぇ、幼馴染さんが先生を連れてきてくれたので」

男「これで懲りてくれりゃいいけどな……」

嬢「本当ですわ。せっかく助けに来てくれた人も一撃で倒されてしまいますし」

男「そこは面目ない」

嬢「……でも、恰好良かったですわ」

男「そ、そうかな」

嬢「はい……とっても」

男「そ、そっか……」

嬢「……はい」モジモジ

男「……」

男「さ、さて、じゃあ帰ろうかな……」

嬢「今日もアルバイトですか?」

男「あ、今日は無いな……ってなんでそれを」

嬢「幼馴染さんに聞きました。貴方の事、少しだけ」

男「え、そうなの?」

嬢「えぇ……貧乏だとか御両親が居られないとか一人暮らしだとか仕送りを節約してるとか」

男「ほぼ全部じゃん」

嬢「アルバイトがないのなら、もう少し休みなさい」

男「いや、つくしの調理は手間がかかるから早く帰らないと……」

嬢「……私、食べ物買ってきたので一緒に食べませんか?」

男「え?」

嬢「べ、別に貴方の為に買ってきたわけじゃないですわ」

男「まだ何にも言ってないけど……」

嬢「私がお腹すいたから、買ってきたんです」

男「ずいぶん量が多いけど」

嬢「ふふ、意外と私は大食いなんですのよ」

男「知ってる知ってる」

嬢「……」ピキ

男「嘘、ごめん」

嬢「じゃあ、はい。あーん」

男「え?」

嬢「え?じゃないですわ。口を開けなさい」

男「自分ひとりで食べられるよ」

嬢「……あーーーーーーん」グイ

男「わぷぷ……わ、わかったから顔に押し付けないで」

嬢「私が食べさせてあげようというのですわ。おとなしく食べなさい!」

男「は、はいはい……」パク

嬢「美味しいですか?あーーーん」

男「久々にまともなものを食ったから美味い」モグモグ

嬢「あーーん……はい、もう一口」ニコニコ

男「あ、あーーーん……(な、なんだこの流れ)」

男「……」モグモグ

嬢「あーん……」

男「ん……」モグモグ

嬢「……ん……まだ、ありますわよ……」

男「あ、うん……」

嬢「貴方にも、色々考えがあっての事でしょうけど……」

男「え?」

嬢「食事だけはちゃんとしなさい。女に一撃で倒されるなど言語道断です」

男「はは……ほんとだな。以後気をつける」

嬢「分かればよろしいです。ほら、あーん……ですわよ」

男「あーん」

幼「男くん、起きたー?」ガララ

男「うげ」

嬢「ひぃ」

~完?~

ちょっとつくしとって来ます

美味しくないから店でも売ってないのかな

ベタなものしか書けませんがそれでも良ければ2話に

~朝・通学路~

男「あー、くそ眠い……」テクテク

嬢「……」サササッ

男「ん?」

嬢「……」

男「気のせいか」テクテク

嬢「(周りは……誰もいませんわね)」

嬢「あーあー……ごほんっ…あー…」

嬢「ご、御機嫌よう。今日もいい天気ですわね……」

幼「男くん、おっはよー」

男「おう、おはよー」

嬢「うっ……」ガクッ

幼「あれ?あそこにいるのは」

男「何してるんだ?」

嬢「な、何でもないですわ……ごきげんよう」

男「おはよう。今日はリムジンじゃないの?」

嬢「私だって、たまには歩きます」

男「殊勝な心がけだな」

幼「じゃ、一緒に学校行こうよ」

嬢「えぇ、そうしましょう!」

男「ええー……」

嬢「なぜか嫌そうな顔をしてますわね……何か文句でも?」

男「文句はないけど」

幼「きっと照れてるんだよ」

幼「日差しが気持ちいいねー」

男「春だからな」

嬢「……お二人は、いつも一緒に登校してるんですか?」

男「一緒っていうか、まぁ方向同じだからこうなるというか」

幼「アパートに引っ越してから前より家近くなったしね」

嬢「ふぅん……」

男「そういえば君の家ってどこなの?」

嬢「私の家は、学校から車で5分くらいのところですわ」

男「歩くと結構かかるな」

幼「ふーん、見てみたいなぁ」

嬢「えっ?」

幼「どんなところに住んでるのかなって、ちょっと前から気になってたから」

嬢「そんな……普通の屋敷です。大したことありませんわ」

男「『屋敷』って言葉が自然に出てくる時点で普通さを感じない」

嬢「あなたはちょっと僻み根性が身に染みてるんじゃありませんこと?」

男「な、なんだと」

幼「まーまー……(仲いいなぁ)」

幼「じゃあ、今度遊びに行ってもいい?」

嬢「えぇ、お待ちしていますわ」

幼「やった!男くんも一緒に行こうね」

男「え、俺?」

嬢「……え」

幼「どんなとこに住んでるのか、気にならない?」

男「気にならないといえばまぁ、嘘になるけど」

幼「じゃあ、いいよね」

嬢「……」チラ

男「行ってもいいもんなのか?」

嬢「べ、別にそんな……来たければ勝手に来ればいいですわっ」

男「」ムカ

幼「じゃ、じゃあ……次のお休みに行こうね」

~次の休み~

男「で、なんでお前までいるんだ」

友「いやぁだって……やっぱり少し興味あるし」

幼「大勢のほうが楽しいよ」

男「まぁ、それもそうか……しかし」

幼「まだつかないのかなぁ」

男「このあたりだって聞いてたけどなぁ」

友「もしかして実はド貧乏だったりして」

男「ド貧乏な家でリムジン乗り回すのかよ」

友「わからんぞ、ニコイチかもしれないし」

幼「バカなこと言ってないでほら、探そうよ」

男「探すって言われてもな……」

友「○丁目××番っていったらこの辺なんだけど」

幼「うーん……家らしきものはないね」

男「だな、なんかずっと塀が続いてるし」

友「さっきからずっと続いてるけど、この向こうってどうなってんんかな」

幼「………」

男「………」

友「………」

幼「ま、まさか……」

~お嬢様宅・門~

男「で、でけぇえええ!」

幼「うわー……」

友「これは予想以上だったでござる」

男「お、おいインターフォン頼むぞ……」

幼「な、なんで私がっ!こういうのは男の子の仕事でしょ」

『……当家に何かご用でございましょうか?』ジジジ

友「門がしゃべったでござる!」

男「お、落ち着けよ少し」

『……お嬢様のご学友でいらっしゃいますか?』

幼「は、はい……私たち、約束してまして……」

『……どうぞ、お入りください……』

ガガガガガ

男「自動で開いた……すげぇ」

嬢「ようこそいらっしゃいました」

幼「こ、こんにちわ」

男「すごいところに住んでるな……」

嬢「ふふ、去年建てたばかりなんですのよ」

男「英国風の邸宅って感じだな」

嬢「お父様の趣味です」

幼「すごーい!かっこいいね」

友「うひょーーっ!庭がこんなに広いっ」ダダダ

男「あいつは放っておこう」

嬢「さ、どうぞ中に」

~お嬢様・部屋~

嬢「今お茶を持ってこさせますから、ソファでくつろいで下さい」

男「お、おぅ……」カチン

幼「う、うん……」コチン

嬢「? どうしてそんなに硬くなってるんですか?」

幼「えっと、えへへ……」

男「なんていうか……住む世界が違うなぁって」

嬢「……私とあなたは、別の次元に住んでるとでも言うんですか?」

男「えっと、いや……気分悪くしたのなら悪かった」

メイド「お茶をお持ちいたしました」

幼「……わぁ、メイドさんだよー!写真撮っていいかな?いいかな?」

嬢「はい、どうぞ」

男「こいつは素直に楽しんでるな……(というか、空気読んでくれたのかな)」

幼「……でもいいなぁ。私もこんなところに住んでみたい」

嬢「ふふ、部屋ならたくさんありますからどうぞ」

男「俺も住んでみたいな」

嬢「……え?」ドキ

男「今いるアパートなんて6畳一間だからさぁ」

嬢「あ、貴方が住むとなると、セキュリティを一人増やさなくてはなりませんね」

男「どーいう意味だよ……」

嬢「むろん、私の身を護るためです。若い男なんて何をするかわかったものではありませんから」

男「ちぇっ、信用ないんだな」

幼「くすくす……」

嬢「さぁ、紅茶のお代わりをどうぞ」

幼「うーん、ちょっとトイレに行きたくなっちゃった」

男「この屋敷って広いから、途中で迷ったら漏らすんじゃないか?」

嬢「げ、下品な……執事をついて行かせますからちょっと我慢してください」

幼「わあ、執事だってー!」

男「そりゃ、一人くらいいるだろう。いちいち驚かない」

嬢「もしもし、客人を一人、洗面所まで……そう、じゃあ誰でも手が空いてるものでいいわ」

男「何人いるんだよ……」

男「行ったか……」

嬢「実際広いですから……私も越した時には迷いそうになりましたわ」

男「ふーん」

嬢「……ずいぶん、顔色が良くなりましたわ」

男「え、俺?」

嬢「他に誰がいるんですか?」

男「自分じゃ良くわからないけど……うーん」

嬢「ちゃんと食べてますか?」

男「食べてるよ」

嬢「夜はぐっすり寝てまして?」

男「寝てる……ってかお母さんか、君は」

嬢「あら、心配されるのは嫌ですか……?」

男「嫌じゃ無いけど……なんだかな」

嬢「事故で、ご両親を亡くされたんでしたわね」

男「うん。残念ながら」

嬢「そう……本当に残念ですわね」

男「まぁ、仕方ないよ……死んじゃったものは」

嬢「えぇ、本当に……」

男「お父さんとお母さん、大事にしたほうがいいよホント」

嬢「あら、私にご忠告ですか?くすくす……」

男「いやほんと。言うこと聞いとけばよかったなぁって後悔するもん」

嬢「お母様の言うことは聞けませんわ、残念ながら」

男「なんだよ、反抗期?」

嬢「お母様、亡くなってしまいましたから」

男「…………そ、そう」

嬢「だから、少しはあなたの気持ちもわかる気持ちでいるんですのよ?」

男「えーと、なんていうか……ごめん」

嬢「どうして謝るんですか?」

男「いや、なんでだろ……パターンかな」

嬢「パターンですわね、くす」

男「でも、なんでそんなこと教えてくれるの?」

嬢「隠すことでもないでしょう?それに、私の事もいろいろ知ってほしいですから……」

男「えっ……」ドキ

嬢「……」

男「そ、そうだなぁ……友達だもんな」ドキドキ

嬢「友達……」

嬢「……友達……」

男「(う……なんか露骨に機嫌悪くなったような)」

嬢「そうですわね、友達ですからっ」

男「あ、あのー」

嬢「なんですか?友達っ」

男「い、その呼び方変じゃね?」

嬢「変じゃありませんっ!」

男「ちょ、ちょっとトイレに行きたいから執事さんを……」

嬢「勝手に行けばいいでしょう」

男「迷ったらどうすんだよ」

嬢「その辺に漏らしなさい」

男「すごいこと言うな……」

~屋敷・廊下~

男「おいおいおい、案の定迷ったじゃねーか」

男「明らかにトイレってわかるドアとかねーし、どうなってんだこの屋敷は」

男「や、やばい……マジでやばいんじゃないかこれ」ヨロロ

男「もはやまっすぐ歩くこともままならないほど膀胱が……」

男「メイドとか執事さんどっかにいないかな……うぅ」

男「って、中庭にいるじゃないか、おーいおーい」

男「あのー、ちょっとすみません」

庭師「ん?なんだお前は」

男「えっと……ここのお嬢様の友達なんですが……」

庭師「ほぉ……」

男「トイレの場所がわからなくて困ってるんです」

庭師「トイレ?」

男「えぇ、ちょっと迅速な対応をお願いしたいんですが」

庭師「ふむ、ついて来い」

男「た、助かった……」

~裏庭~

庭師「さぁ、ここで思う存分するがいい」

男「ちょっと、ここ裏庭じゃないですか」

庭師「構わん、儂はいつもここでしておるぞ?」

男「いや、怒られますって」

庭師「気の小さい奴だ……儂も一緒にしてやるから気にするな」ボロン

男「うは」

庭師「ほら、はやくせんか!」ジョロロロロ

男「くぅ……仕方ないか」ジョロロロロ

庭師「小便が2ウェイになってるぞ。包茎か?」ジョボボボボ

男「見ないでくださいよ……」

男「ふぅ……すっきりした」

庭師「ははは、なかなかいいだろう」

男「まぁ、否定はしませんが……」

庭師「お、つくしが生えてるな。少し持っていくか」ブチブチ

男「へぇ、おじさん食べるんですか?」

庭師「小さいころはよく食べてたがな。お前も食うか?」

男「いや、ていうかおじさんのトイレなんですよねここ……」

庭師「しかし、お嬢様の友達だと?」

男「えぇまぁ」

庭師「それで今朝からそわそわしておったのか……」

男「え?そうなんですか?」

庭師「はっは、あちこち家の掃除をさせたり、良い紅茶を取り寄せたり頑張ってたな」

男「へぇー……」

庭師「お嬢様を小さい頃から見てきたが、友達の少ない子だったからな」

男「あ、そうなんですか(なんとなく納得)」

庭師「ちょっと気難しいところがあるからな……」

男「え、えーとでも……とってもいい子だと思いますよ?」

庭師「なんだ、君はああいうのが好みか?」

男「そ、そういう訳じゃないですけど」

庭師「しかし、この屋敷は広すぎてかなわん」

男「ちょっと広すぎますね」

庭師「金持ちっていうのはどうしてこうなのかと思わんかね?」

男「まぁ、ちょっぴり」

庭師「クレイジーな金持ちのやることはわからんなぁ」

男「ははは、まったくイカれてますよ、この家を建てた人は」

嬢「お父様?また庭いじりですか?」

庭師「なんだ、娘よ」

男「がちょーん」



嬢「……二人で何を話していたんですの?」

父「いや、お前の噂話をちょっとな」

男「どうもすんませんしたーっ!」ドゲザァ

父「うぉ」ビク

嬢「な、何してらっしゃいますのっ」

男「いや、その、だって」

父「ちょっとからかってみただけだ、そんなに気にすることはない」

男「はぁ……」

嬢「もう……本当に何を話してたのかしら」

父「はっはっは」

男「(か、変わったお父さんだな……)」

嬢「幼馴染さんが戻ってますから、はやく部屋に戻ってきてくださいな」

男「わ、わかった。今行くから」

男「そ、それじゃあまた……」

父「まぁ、少し待ちなさい」

男「えっあの、庭におしっこしてすみませんでした……」

父「そりゃどうでもいいが、娘の事でな」

男「えっ……」

父「最近、娘が変わってきたような気がしてな」

男「そうなんですか」

父「うまく言えんが、前より柔らかくなった気がする」

男「(しょっぱなの発言からすると……とっつきやすくなったかな?)」

父「もしかしたら、君たちのおかげかもしれんと思ってな……ありがとう」ペコ

男「や、そんな……恐縮です……」ペコ

父「アレも早くに母親を亡くしているからか、甘やかして育ててしまった」

男「えーっと、はい。聞いてます」

父「ほー……随分信用されとるな」

男「でも、すごくしっかりしていると思いますよ」

父「無理に公立の学校にやってよかったかも知れんな」

男「本当は違うところに行く予定だったんですか?」

父「自分と同じような人間ばかりが集まるところに行っても、成長できんからな」

男「はぁ……」

父「まぁ、今後も娘をよろしく頼むぞ」

男「は、はい……こちらこそ」

父「……で、もうやったか?」

男「はい?」

父「正直に言え、もうやったのか」

男「やった、とは」

父「ほぅ、とぼけるのがうまいな。末は大物になるんじゃないか?」シュッシュ

男「どうして鎌を素振りしてるんです?」

父「質問に質問で返すなと教わらなかったか?」シュッシュ

男「いやちょっと待って……くださいっ」ダッ

父「なぜ逃げる!まさかやったのかっ!貴様ーーッ!」

男「アッー!」

嬢「遅いですわね……」

幼「遅いねー」

嬢「お父様と一体何を話してるのかしら……」

幼「ふふ、何だろうねー」

嬢「何ですの?」

幼「『お嬢さんを僕にください!』とかだったり」

嬢「なっ……!そ、そんな……」

幼「顔真っ赤だよ、ふふ」

嬢「か、風邪気味で……ごほごほ」

嬢「紅茶でも飲んで待ってましょう」ズズ

幼「ひとつ聞いていい?」

嬢「何ですか?」ズズズ

幼「男くんのこと……好き」

嬢「ぶはっ!」

幼「あ、噴いた」

嬢「い、いきなり変なこというから……げほげほ」

幼「それで、好きなの?」

嬢「……」

幼「そうなのかなぁって最近思って見てたんだけど」

嬢「……よく……わかりませんわ」

幼「そっか……」

嬢「今まで、だれかを好きになったこともないですし……」

幼「……」

嬢「だからまだ……よくわかりませんわ」

幼「じゃあ、私とおんなじだね」

嬢「……同じ?」

幼「そう……同じ」

嬢「……あなたも、物好きな人なんですわ……」

幼「えへへ」

友「やっとたどり着いたぜー!」ガチャッ

嬢「きゃっ!」

嬢「ちょっと、レディの部屋にノックもなしに入るなんて、失礼ですわよっ」

友「oh……」

嬢「肩をすくめてなんとなく納得させようとしてもダメですわ」

幼「外人さんが良くやるよね、その技」

友「いろいろ徘徊してようやくたどりついたんだから、もっと暖かく迎えてくれ」

嬢「正直今の今まであなたが来ていることすら忘れていましたわ」

幼「私も」

友「まぁまぁ、面白いもの見せるからさ」

幼「面白いもの?」

友「うむ、屋敷を徘徊中にちょっとしたスキャンダルを激写した」

嬢「人の家に来て何をしてるんですか、貴方という人はっ」

幼「メイドさんと執事さんのオフィスラブとか?」

嬢「そ、それはちょっと興味ありますわ……」

幼「えっちー」

友「これなんだけど、はい」

嬢「……」ドキドキ

幼「ん……これは男くんと……」

嬢「お、お父様っ……な、何してるんですかっ!!」

男「いやー……迷った迷った」ガチャ

嬢「……」

幼「……」

友「よ」

男「なんだ、来てたのか」

友「お前もかい」

嬢「……」

幼「……」

男「……なんでこんなに空気が悪いんだ?」

幼「まぁ、私は慣れてるからいいけどねー」

男「え?」

嬢「これは一体どういうことですのっ!」バァン

友「買ったばかりのスマフォが」

男「……げっ……さっきの立ちションシーン(しかもほぼ正面)」

友「すまん……悪気はなかったんだ」

男「ウソだ、絶対ウソだ」

嬢「ちょっとそこに正座なさいっ!人の庭で放尿する性根を叩き直してあげますわっ!」

幼「ここまでお父さんの作戦です」

嬢「……もしもし、私です。今すぐ私の部屋に薙刀を持ってきなさい」ピ

男「アッー!」

~完!?~

残してもらってたとは、ありがとう!

じゃあ、もうちょっとだけ続くんじゃよ

~朝・通学路~

友「おはよー」

男「ん、おはよ」

友「なんか久しぶりだな」

男「まぁ、ゴールデンウィークだったしな……」

友「何してたんだ?休み中」

男「バイトかな、いつもと変わらないよ」

友「ふーん、相変わらずさびしい奴だなぁお前は」

男「なんだよ、お前こそどうせ寝てばっかだったんだろ」

友「フフフ……」

男「?」

友「……」ニヨニヨ

男「なんだよ、ニタニタして気持ち悪い」

友「いや、G・W前に実は彼女ができちゃってさ」

男「……ごめん、耳垢が詰まったみたいだもう一回」

友「彼女が出来た」

男「彼女……人代名詞のこと?」

友「ちげー!恋人、ステディ、付き合ってる人がいるって言ってんだよ」

男「……ぇえええええええええええっ!!」

友「うわっ」ビクッ

男「だ、だだ誰とっ……!」

男「まさか、俺の知ってるやつ?」

友「いんや、年下の子だからお前はしらないと思うぜー」

男「そ、そうか……」

友「ふふん、写真あるんだけど見たい?」

男「見たい見たい」

友「しょーがねぇーなぁ、ほら」ピラ

男「……」

友「ウヒヒ見ろ……超可愛いだろw」

男「(……めっちゃめちゃ微妙……)」

男「ふーん、でもよかったな、おめでとう」

友「おう、ありがとう」

男「(顔が微妙なのは差し引いても)うらやましいな……」

友「だろだろ。今度紹介してやるよ」

男「くそ、なんかリア充くさくなりやがって」

友「自分ではそういうつもりはないんだけどな」

男「うっすら漂ってくるんだよ、彼女出来立ての奴からはそういう臭気が」

男「でもさぁ」

友「ん?」

男「……あの子はもういいのか?なんか狙ってたような感じだったけど」

友「あ、あー……あのお嬢様はなぁ」

男「何だ?」

友「この前みんなで家に遊びに行ったの覚えてる?」

男「行ったけど、それがどうしたんだよ」

友「どうしたんだよってお前、あの屋敷見てなんとも思わなかったの?」

男「……まぁ、でかい家だなぁと思ったけど」

友「実際、距離を感じたっていうかさ」

男「……」

友「俺たちみたいのとは結局、住む世界が違うんだなぁって思って」

男「そうかなぁ……」

友「そうかなぁってお前な」

男「あそこのお父さんも気さくで面白い人だったし、あんまりそういう風に思わなかったよ」

友「あの屋敷を見てそう思うなんて、お前バカ?」

男「……」

友「ま、でも綺麗だからな、入れ込むのもわかるけど」

男「待て、どうしてそうなる」

友「あれ、違った?」

男「そういう話じゃないよ」

友「ふーん……」

女の子「……せんぱーいっ」

友「お、マイハニーが」

男「まじで」

友「悪いけど、先行ってるぜ。じゃ」

男「おう……」

男「(あ、あの女の子だな……ひとつ下の学年か)」

男「(……実物も微妙だけど……)」

男「(うらやましくなくはないな……いいなぁ彼女)」

友「……彼女欲しくなったら、言えよー!誰か紹介して貰ってやるよー」

男「お前いい奴だなぁ」

~学校~

男「……」

嬢「ちょっと」

男「……」

嬢「ちょっと、そこの貴方」

男「お、俺?」

嬢「他に誰がいらっしゃいまして?」

男「ご、ごめん聞いてなかった」

嬢「何をぼーっとしていますの?口が半開きになって見苦しいですわよ」

男「毒舌は相変わらずだなぁ……」

嬢「くすくす……で、来ていただけますわね?」

男「何の話?」

嬢「……本当に聞いてなかったんですのね。ムカつきますわ」

嬢「今度のお休みなんですけど、また私のうちにいらして頂けません?」

男「……え、君の家?」

嬢「これが招待状です」ピラ

男「むむむ、なんだこの封筒は……」

嬢「どうぞ、開けてみてください」

男「えーと、誕生日パーティ……へぇ、誕生日なんだ」

嬢「えぇ、幼馴染さんもお誘いしたのですけど」

男「あいつはこういうの好きだから行くだろうな」

嬢「はい、その場で快く返事をして頂けましたわ」

男「だろうね」

嬢「……もちろん、貴方も来て頂けますわよね」

男「……この日は……あ、バイトが」

嬢「来て頂けますわよね」

男「いや、バイト……」

嬢「……来て、頂けないんですか……?」

男「……」

嬢「……そう……」

男「(……一日くらい休んでも、別にいいか)」

嬢「……」

男「行くよ、迷惑じゃなかったら」

嬢「……来るんですのねっ!もう取り消せないですわよ!」

男「そんな、行くと行ったら行くよ」

嬢「いいですわね?絶対絶対来るんですのよ?」

男「分かったってば」

嬢「突然キャンセルなんて無しですからね」

男「なんだよ、そんなに来て欲しいの?」

嬢「べ、別に……人数を計算してますから、突然キャンセルされると食材なんかが余って無駄になりますから」

男「金持ちの癖にケチだな」

嬢「こういうところから無駄をなくさないと、お金持ちにはなれませんわ」

男「そういうもんかね」

嬢「それでは御機嫌よう♪」ガララ

男「……はは、上機嫌でいっちまった」

男「えーと、招待状は……」ガサゴソ

男「『当日、プレゼントは受付へお預けください』」

男「プレゼント持ってくの前提かよ……」

男「財布のなかは……」チャリン

男「くそぉ、ちょっと心もとないな」

幼「やっほー」

男「うん?」

幼「お誕生日パーティ、誘われたんだ」

男「そういうお前もだろ」

幼「うん、楽しみだね」

男「プレゼントがちょっと悩みのタネなんだが……」

幼「別に、なんだっていいじゃん」

男「いや、そういう訳にはいかないだろ」

幼「なんで?」

男「だって、お嬢さまだし」

幼「またそんなこと言ってー」ピシッ

男「いてっ」

幼「男くんのできる範囲ですればいいと思うよ」

男「……」

幼「それに……男くんならきっと何をあげても喜んでくれるよ」

男「熊の木彫りでもか?」

幼「ぷぷぷ、それもいいかもね」

男「じゃあ、それにするかなぁ」

幼「でもあれ結構高いよ」

男「うーんそうか、残念だ」

幼「ま、まさか本当にあげるつもりだったのかなぁ……」

男「(とはいえ、できるだけ頑張りたいとは思うけども……)」チャリン

男「(……いかんせん手持ちが寂しい)」

男「(……)」

男「ちっ……バイト先に前借り頼んでみるか」

幼「わぁ、そこまでするんだ」

男「しまった、つい口にしてしまった」

幼「いいなぁ……」

男「何だよ」

幼「さぁねーっだ。じゃあねっ」

~次の休み~

ガヤガヤガヤ

男「うわぁ……」

幼「す、すごい人だね」

男「何だこれ、誕生日パーティってレベルじゃねーぞ」

幼「100人くらいいるかな?」

男「まさか家族兄弟……って訳じゃないよな、この人数」

幼「な訳ないでしょう」

男「と、とりあえず受付すませるか」

幼「なんだか結婚式会場みたい……」

男「それが一番イメージに近いな」

受付「こちらに名前のご記入をお願い致します」

男「は、はい」

受付「……はい、プレゼントはこちらのほうでお預かりいたします」

幼「うっわーーーーー……もしかして、後ろのは全部、プレゼントなのかな……」

男「山のように積みあがってる……しかも一個一個が結構でかい」

幼「私のはお洋服だから、大きさではそんなに見劣りしないかも」

男「……」

幼「……どうしたの?」

男「いや……俺のプレゼント、小さいなぁと思って」



幼「お、大きさで決まるわけじゃないから大丈夫だよ」

受付「……これは、随分小さいプレゼントですね」

男「うっ……」ガク

幼「ちょ、ちょっと……」

受付「これはなくならないように細心の注意が必要ですね。面倒くさい」

男「態度の悪い受付だなぁ……」

受付「……はい、確かにお預かりしました。それではバースデーカードにご記入を」

男「そんなものまであるのか」

幼「早く書いて、中に入ろうよ」

男「……ん、書いた。行こう」

幼「えーと……会場は大ホールだって」

嬢『……皆様、本日はわたくしのためにお集まり頂き、誠にありがとうございます』

男「うぉ……」

幼「すごーい、綺麗……」

男「う、うん……」ドキドキ

幼「あぁいうドレス、どこで売ってるんだろう」

男「う、うん……」

幼「ねぇ聞いてる?」

男「う、うん……」

幼「あーあ、完全に魅入っちゃってる……もう」

男「……(すごいなぁ……やっぱり、可愛いな)」

嬢『ささやかなものですが、お食事と飲み物をご用意しております、どうぞお楽しみ下さい……』

幼「食べ物だって、良かったね」

男「ウホッ!」

男「立食形式か、落ち着いて食えないじゃないか」ガツガツ

幼「食べてるじゃん。ていうか、本来食べるのはおまけなんだから」

男「あぁ?ひたすら食って飲むのが誕生日の過ごし方だろ?」

幼「男くんのそういうとこ面白くて好きだけどさ」

男「ほら、いいからお前も食え。できるだけ高価なものから取るんだ」

幼「一生懸命食べてる人、男くんしかいないよ」

男「だったらなお好都合じゃないか」グァッグァッグァッ

嬢「ふふ、はしたないですわよ」

幼「あ、お誕生日おめでとう」

男「おめめふぉう」ガツガツ

嬢「食べるか話すかどちらかにしなさいな」

嬢「楽しんでいただけてまして?」

男「楽しいかどうかはともかく、飯は美味い」モグモグ

幼「こらっ」

嬢「くすくす……正直ですわね」

男「そう?」

嬢「えぇ……窮屈な思いをさせてるんじゃないかと思って、心配してましたわ」

男「……」

嬢「本当はね、私、こういうパーティよりも……」

男「よりも?」ボロボロ

嬢「もうっ!口元が汚れてますわよ」フキフキ

男「あ、ありがとう」

嬢「反対側もお見せなさい、ほら」フキフキ

男「……」

嬢「本当はもう少しお話したいんですけど……」

幼「あちこちに呼ばれてるみたいで、忙しそうだね」

嬢「えぇ、本当に……」

男「……落ち着いたら、また後で話そうよ」

嬢「待っててくれますの?」

男「うん、待ってる」

嬢「……えぇ!……必ず来ますから、おとなしくしてるんですのよっ?」

幼「うぅートイレに行きたい……」

男「お前そればっかりだな」

嬢「執事を呼びましょう」

男「(幼馴染がトイレに行って、一人になってしまった……)」

男「(なんか、ダンスが始まってる……)」

男「(……)」

男「(本当、俺たちとは違うんだな)」

男「(友にはああ言ったけど、本当……違う世界で生きてるんだ)」

男「(……ダンス、上手なんだなぁ……)」

男「(……華やかだな……)」

父「男くん、楽しんでもらえてるかね?」

男「あ、お父さん」ビク

父「何をビクビクしておる」

男「えーと、楽しいかはともかく飯は美味かったです」

父「正直な男だな、君は。鎌を持って来よう」

男「すみません。めっちゃ楽しいっす」

父「いいさ、儂もあの子も分かってる」

男「え?」

父「これは単なる社交の場だ。あの子の誕生パーティにかこつけただけのな」

男「どうしてそんなことを?」

父「わからんか?」

父「ここにいるのは儂の仕事づきあいのある人間がほとんどだ」

男「そうなんですか」

父「よそでこういうことが催されると、ウチでやらんという訳にもいかなくなる」

男「……」

父「まぁ、義理みたいなものだな」

男「そんな……」

父「それに、こう派手にパーティを開いて、会社の景気が良いことのアピールにもなる」

男「見栄ってやつですか?」

父「有体にいってしまえばそうだな。あとはさっきも言った、親睦の場だ」

男「……」

父「はっはっは、娘が窮屈だと言った理由が分かっただろう」

男「いろいろ面倒な世界なんですね」

父「あぁ、儂も昔はよくわからんかったがな」

男「(お父さんが言って、また退屈になってしまった)」

男「(社交の場……と言われても、交流するひとがいないな)」

男「(うーん、居場所がない)」

嬢「ちょっと」

男「(腹いっぱいで、眠くなってきたな)」

嬢「ちょっと貴方」

男「ふぁああああ……」

嬢「退屈そうですわね」

男「うわっ!いつのまに」

嬢「さっきから居ましてよ」

男「そうなんだ」

嬢「ふふ、ようやく時間が空きましたわ」

男「ダンスはもう終わったの?」

嬢「いえ、まだ約束してる相手がいますわ」

男「そうなんだ……今日の主役だもんな」

嬢「私、その次のダンスの相手が見つかっておりませんの」

男「え……?」

嬢「あなた、ダンスの嗜みは?」

男「えーと、授業で創作ダンスならやったけど」

嬢「聞くだけ無駄だったようですわね……まぁいいですわ」

男「悪かったな」

嬢「じゃあ、私と踊りなさい」

男「なんでそうなるんだ。話を聞けよ」

嬢「別に難しいことはありませんわ。体を動かすだけなんですもの」

男「それは出来るやつのセリフだ」

嬢「まったく、男のくせに消極的ですわね……それでも日本男児ですの?」

男「だって、なぁ」

嬢「……手を貸しなさい。こして、私の腰を抱くの」

男「うわわわわっちょっと」

嬢「こっちの手はこうして私の……そう、お上手ですわ」

男「(ち、近い……顔近いよ)」

嬢「もっと体を寄せて……離れたら美しくありませんから」

男「(む、胸をと下半身がくっついて……や、柔らかい……)」

嬢「こういう調子でいいんですのよ?簡単でしょう?」

男「う、うん……」ドキドキ

嬢「どうして、緊張してるんですの……?リラックスしないと楽しく踊れませんわ」

男「だ、だってさぁ……」

嬢「何ですの?」

男「今日の君、すごく綺麗だし……」

嬢「まぁ……」

男「あ、いや……普段から綺麗だと思ってるんだけども」

嬢「……っ!」ボッ

男「あ、その……(やべぇ、何言ってるんだ俺)」

嬢「……」

男「……」

嬢「……嬉しいです」ギュ

男「あ……」

嬢「なら、綺麗にした甲斐がありましたわ……」ギュ

男「あー、その……」

嬢「ダンスのお誘いは、男性からと決まってるんですのよ?」

男「……じゃあ、あの、俺と踊ってくれないか……」

嬢「ようやく言わせましたわっ!」

男「はは……」

嬢「じゃあ、少しここで待っててくださいな。私、まだ」

男「あぁ、待ってるよ」

嬢「すぐ、戻ってきますわ……」

紳士「こんなところにいたのですかお嬢さん。さぁこっちへ」

男「え?」

紳士「何だ君は」

男「何だ君はって……(変なおじさんかよ)」

嬢「この方は私の大切な友達です」

紳士「……ふむ」

男「えーと、こちらの方は……あんまり歳も変わらなそうだけど」

嬢「えっと、この方は……そうですね、同い年ですわ」

男「ふぅん」

嬢「父の会社と付き合いのある方のご子息で……」

紳士「そして婚約者ですが何か?」

男「えっ……」

嬢「ちょっと……!その話は」

男「こ、この紳士が?」

紳士「ふむ、もう少ししっくりくるように『若様』に表記を変えよう」

男「……婚約者って……」

若「何かおかしいか?」

嬢「その話は親同士で話してる、戯言ですわ」

若「私は異論はありませんよ。ゆえに何の問題もありません」

男「そ、そんな……」

嬢「勝手に決めないで頂けます?私にはその気はありませんから」ギュッ

男「(ど、どうしてくっつくんだろう)」

若「ふむ……」チラ

男「ん?」

若「見たところ、単なる学生のようだが」

若「少し、お借りしますよ」

嬢「え……あ、はい」

男「……うわっとっと……」

若「悪いようにはしない、少し話をするだけだ」

男「はぁ」

若「この辺でいいだろう……で、」

男「何です?」

若「君は彼女の恋人か?」

男「ぶっ」

若「汚いな……まったく育ちの悪い人間は」フキフキ

若「もし彼女に好意を持っているなら、やめておけ」

男「……なんでそんなことあんたに言われなくちゃいけないんだ?」

若「君のような雑種が彼女に近づくのは良くないからだ」

男「ざ、雑種って……」

若「見たところ、ずいぶん安っぽいスーツだが」

男「(悪かったな)」

若「君と僕たちは住む世界が違うんだ。わかるな?」

男「お前は二次元に住んでるとでもいうのかよ」

若「頭の悪い例えを……」

若「いずれにせよ、彼女にもう近づかないでほしいものだ」

男「……別に、そんなの聞く義理はない」

若「もし君がちょろちょろ面倒なことをすると、彼女のお父さんまで不利益を被る」

男「んなっ……なんだよそれっ!」

若「可能性の話だがな、あくまで」

男「……いくら会社の付き合いがあるからって、そんな上手くいくもんか」

若「この家は新興で、財界のコネクションも薄いが、僕の家は違う。それがどう作用するか……」

男「……こ、こいつ」

若「それに、誰かの手垢のついた女は御免だからな」

男「て、てめぇっなんてことを」

若「ふんっ……」

若「……話はこれで終わりだ」

男「そうかい、じゃあな」

若「おっと、まだわかってないようだな」

男「なんだよ、これ以上話すことないんだろ」

若「君が行く道はこっち。出口だ」

男「……!」

若「そして僕はこっちでパーティの続きだ。わかるか?」

男「う……うぅ」

若「さっきの話、もう忘れたのか?」

男「……くそっ!!」ダッ

若「お利口さんだ」

男「くそ……くそぉッ…」タタタ

受付「プレゼントを運ぶのです。前が見えないのです。面倒くさい」

男「あいたっ」ドンッ

受付「ひぃやっ!危ないのです。面倒くさい」

男「あ、さっきの受付の女の人……」

受付「おや、また会いましたね」

コロコロコロコロ……ポチャン

男「あ?」

受付「プレゼントがひとつ、側溝に落ちてしまったのです」

男「あらら……」

受付「多分大きさからして、貴方のだと思われます」

男「ええええええええええっ」

男「ひ、拾わなきゃ……」

受付「そこはすごく流れが速いですから、無理です」

男「そ、そんなぁ」

受付「もう多分軽く200メートルは先まで行ってることと思われます」

男「何でそんなに冷静なんですか」

受付「別にプレゼントがひとつなくっても問題ないですから。他にたくさんあります」

男「……」

受付「何か問題でも?」

男「……いえ、そうですね……」

受付「何か適当に見繕って貴方からのプレゼントということにしますから」

男「……さようなら」

なぜか眠くなってきた

受付「……」ガサゴソ

受付「なかなか手ごろなものが無いです」ガサゴソ

受付「うーん……どうしましょう」

受付「……」

受付「もうこれでいいです、面倒くさい」

受付「買ったばかりで新品のパンツです」

受付「どうせたくさんあるし、誰が誰をくれたかなんて確認しないはずです」

受付「……あ、バースデーカードもあるから、確認するかな……書き直さなきゃ」

受付「……男より、マル。はぴばー……これでいいです。面倒くさい」

受付「これですべて元通りです」

~翌日・学校~

嬢「ちょっと」

男「……」ボーッ

嬢「ちょっと、そこの貴方ッ!」ダァン

男「う、うわっ……どうしたの」

嬢「……どうしたの、とは随分ご挨拶ですわね」ビキビキ

男「えーっと……」

嬢「なぜ昨日、途中で帰ったのですか?どこか具合でも?」

男「いや……そういう訳じゃないんだけど」

嬢「おかげであの方と最後、2曲続けて踊る羽目になりましたわっ!」

男「ご、ごめんよ……」

嬢「どういうことです!約束したじゃありませんかっ」

男「……」

嬢「何も弁解は無くて?まっとうな理由なら許して差し上げても宜しくてよ?」

男「……別にないよ」

嬢「……!じゃあ、これは何ですかっ」ファサ

男「パ、パンツ?これは一体」

嬢「貴方からの素敵な贈り物でしょう」

男「(あの受付、本っ当に適当に見繕いやがった)」

嬢「ウソつきで、軽薄で、スケベで、貧乏で……あなたって人は最低ですわね」

男「」ムカ

男「まぁ、あの若様はそうじゃないだろうからなぁ」

嬢「な、何ですの……」

男「お金持ちはやっぱり、お金持ち同士でつるんでるのがいいと思うよ」

嬢「……っ!」

男「あぁ、飯は美味かったよ、昨日たらふく食えて助かった」

嬢「……」

男「またなんか食わしてくれよな。俺貧乏だし……お金持ちの知り合いがいると助かるなぁ」

嬢「……っ」パァンッ

男「いって……」

嬢「見下げた男ですわ……本当に、最低ッ!」ダッ

男「ケッ……」

~校舎裏~

嬢「うっ……うぅ……ぐす……」

嬢「……ひっく……ばか……どうして……」

幼「やっほ」ニュッ

嬢「ひぃッ!お、幼馴染さん……」ゴシゴシ

幼「泣いてるの?」

嬢「か、花粉ですわ……今の時期は辛いんです」

幼「さっき見てたから、うそつかなくてもいいよ」ゴシゴシ

嬢「……う……恥ずかしいですわ……」

幼「昨日ね、トイレに行った帰りに見ちゃったんだけど」

嬢「……何ですの……」

幼「えーっとね、落ち着いて聞いてほしいんだけど……」

嬢「……そう……そうだったんですの」

幼「……うん、そうなの」

嬢「そんな脅しを受けてたなんて……なんて人なのかしら」

幼「だから、誤解なんだよ」

嬢「で、でもそこは……もっと毅然とした態度を取って欲しいですわっ」

幼「仕方ないよ、男くん優しいから」

嬢「……」

幼「分かるよね?」

嬢「分かってますわ、そんなこと……でも」

嬢「あのパンツは何なんですかっ!」

幼「うーん、おかしいなぁ……」

嬢「何がですの?」

幼「プレゼント、私も一緒に買いに行ったんだよ」

嬢「……それがどうかしましたか?」

幼「ピアス買ってたんだけどな」

嬢「……ピアス?」

幼「隣の席で、いつもよく見えるんだって」

嬢「……」

幼「それで、思いついたんじゃないかなぁ……毎日、よく見られてるね」

嬢「う……」ポッ

幼「これで、私が知ってる全部だけど……」

嬢「ピアスがどうして、パンツになるんでしょう……」

幼「それはちょっと分かんないけど」

嬢「バースデーカードも、いい加減に書いてましたけど。『はぴば』って」

幼「えぇー……結構長く書いてあったけど」

嬢「そ、そうなんですの!?」

幼「うん」

嬢「……これは、調べてみる必要がありますわね」

~お嬢様宅・倉庫~

受付「はぁ……面倒くさい面倒くさい」

受付「プレゼント、多すぎるのです……」ガタゴト

受付「みんなあの男の子くらいの大きさのプレゼントでちょうどいいのです……」ガタゴト

受付「……」

受付「あ、この服かわいいです」

受付「……貰っちゃいましょう。昨日の私のパンツと交換ということで」

嬢「あまりにもあっけなさ過ぎて拍子抜けですわ」

受付「……これは面倒くさいことになりそうです」

嬢「そうね、あなたにとってはね」

嬢「ここの側溝から流れていったのね」

受付「はい……間違いないのです」

嬢「それは何時ころかしら?」

受付「はぁ、昨日の今頃だと思いますです」

嬢「そう、わかったわ」

受付「どうされるんです?」

嬢「水理学の専門家を呼びなさい。あと県下すべての下水動業者に連絡して」

執事「かしこまりました」

嬢「今の情報をもとに探すようにして。いくらかかっても構わないから絶対に見つけなさい!」

執事「必ずや」








嬢「屋敷の人間も全員です。金属探知機を持って町中探すよう伝えなさい」

執事「ははっ」

受付「街中でそんなことしたら探知しまくりなのでは?」

嬢「探知できないより何倍もましではなくて?」

受付「ところで……私は見つかったら無罪放免で?」

嬢「そうね、見つかったらそれでもいいわね」

受付「見つからなかったら」

嬢「……こうですわ」スッ

受付「ふぇええ……首ですかぁ。面倒くさい」

~男・アパート~

男「くそぉ、やっぱ腹減ったなぁ」グギュルルル

男「食いだめできないって本当なんだよな……うぅ」グルルルル

男「ちっくしょー、給料前借りしちゃってるしな……」

男「……寝るかもう、面白くねぇ……」

バラバラバラバラ

男「……なんだ?ヘリの音……?」

男「……静かになったな……何だったんだろ……」

男「……ぐぅ」

バラバラババババババ

男「またか……うる……さいな……」

男「ぐぅ……」

嬢「ちょっと」

男「すやすや……すぴぴぴ」

嬢「ちょっとそこの貴方」

男「うるさいなぁ……腹減ってんだからもう寝かせてくれよぉ」

嬢「いいから起きなさい」

男「って、おい……何で……」

嬢「いくら殿方でも、鍵くらいかけないと不用心ですわよ?」

男「あれれ、えーっと……どうなってるんだ」

嬢「灯り、つけて下さらない?」

男「あ、うん……」パチ

嬢「ご機嫌いかが?」

男「ど、どうして君がここに」

嬢「しかし、狭い部屋ですわね」

男「(全然聞いてないし)」

嬢「うちの物置小屋より汚いですわ、きちんと掃除しなさい」

男「う、うん」

嬢「寝てらしたの?」

男「まぁね……」

嬢「ふぅん……シーツ、たまには変えたほうが宜しくってよ」

男「あ、あんまり見ないでくれ」

嬢「くすくす……」

男「(な、なんか最後にあった時と全然違うな)」

男「あのさぁ」

嬢「何ですの?」

男「怒ってないの?」

嬢「私がですか?どうして?」

男「人の顔叩くくらい怒ってた気がするんだけど」

嬢「こんどは一撃で倒れませんでしたわね」

男「あー……そういうこともあったな」

嬢「ふふふ……」

男「あっはっは……で、一体君は」

嬢「誕生パーティーのやり直しをしに来ました」

男「え?」

嬢「幼馴染さんに、話を聞きました」

男「話って、どんな?」

嬢「貴方があの方に何を言われたのか……」

男「聞いてたのか、あいつ……」

嬢「こじれる前にお父様に話をしておきました……きっと力になってくれます」

男「そう……」

嬢「ふふ、それにしてももっと周りに注意を払ったほうがよろしいんではなくて?」

男「だなぁ、反省する。前もおしっこしてるとこ激写されたしな……」

嬢「そんなことだから、プレゼントが側溝に落ちてしまったりするのです」

男「あらま……」

嬢「はい、これ」

男「な、なにこのゴミクズ」

嬢「ちょっと、貴方が私に買ってくれたんでしょう?」

男「あ、もしかして……」

嬢「街中の下水道を探したんですよ?ヘリまで使って移動して」

男「なんと……さすが金持ち」

嬢「お金はこういう時に使うものです」

男「なんか深いな」

嬢「じゃあ……はい。どうぞ」

男「な、なにさ」

嬢「付けてくださらない?そのピアス」

「嗚呼、射精寸前」男悶絶。「口内発射可?」「不可」女曰。
「貴殿射精場所即我膣内」 女舌技停止。萎縮物即硬直、聳立。先端、先走汁有。
「騎乗可?」女訊。男頷了解。 女、硬直物添手、潤滑繁茂地帯誘導。
「嗚呼」女悶。「我膣内、巨大硬直物挿入完了」 女下半身躍動開始。
一、二、三・・・「嗚呼」男短声。「謝罪」 女呆然、運動停止。
「貴殿既射精!?」「汝舌技巧妙故。御免」「最低!! 三擦半男!!」女絶叫。
「亀頭鍛錬不足!! 貴殿包茎手術経験者!?」「何故汝知其事実??」 男墓穴。
以後、男、性交時避妊具二重着用

男「つ、つけるって……俺が?」

嬢「一度開けて確認してます……中は汚れてませんでした」

男「いやでも、そういう問題では」

嬢「あぁもう、男がグダグダと情けないですわよっ!」

男「くっ……!」モゾモゾ

嬢「んっ……くすぐったいですわ……んっ」

男「(み、耳……可愛い)」モゾモゾ

嬢「手つきが……いやらしいですわ……」

男「変なこというなって……はい、つけた」

嬢「ありがとうございます、どうですか?」

男「どうって」

嬢「……似合いますか?貴方が買ってくれた、ピアス」

男「うん、似合うと思う……」

嬢「そう……ですか……嬉しい」

男「う、うん……」

嬢「明日から、これをつけて行きますからねっ!」

男「でも、もっといい奴もってただろ。別に毎日つけなくても」

嬢「……貴方は本当にバカなんですわね」

男「なにおう」

嬢「それよりほら、ケーキを食べましょう。さっき買ってきました」

男「ウホッ」

男「じゃ、いただきまーす」

嬢「召し上がれ」

男「うん、普通に美味いな」

嬢「ショートケーキが一番好きですわ」

男「あぁ一日遅れたけど、改めて誕生日おめでとう」

嬢「え?」

男「昨日だったんでしょ?」

嬢「今日ですわ、私の誕生日は」

男「え?」

嬢「昨日はただの誕生パーティです。人が集まりやすいように休日に行っただけです」

男「な、なるほど……」

男「そうか、今日が誕生日だったのか」

嬢「そうですわ……」

男「だったら、悪いなぁ……こんなところでケーキ食べさせて」

嬢「え?」

男「いや、だってさ」

嬢「私はすごく楽しいですけど」

男「こ、こんなのでいいの?」

嬢「祝ってほしい人が一緒にいてくれないと、意味がないでしょう?」

男「えっ……」

嬢「ね?」ニコ

男「……」ドキドキ

嬢「じゃあ、あまり遅くなると、お父様が心配しますから」

男「そ、そうか……また」ドキドキ

嬢「あら、引き留めないんですの?」

男「!」ドキッ

嬢「……冗談ですわ」

男「な、なんだ冗談か……」

嬢「……」

男「……」

嬢「……まったく、意気地なしですわねッ……」チュッ

男「んっ!」

嬢「んっ……んんっ……」

男「(キ、キス……?)」

嬢「ぷはぁ……っ…んぅっ……」チュ

男「(な、なんだろこの何とも言えない柔らかさ……)」

嬢「んっ……ちゅっ……」

男「(か、顔がちけぇえええっ……目、閉じてる……)」

嬢「んっ……ぷはぁ……」

男「あ、あの」

嬢「……おやすみなさい……」

男「……お、おやすみ……」

~翌日~

男「……」ボーッ

嬢「ちょっと」

男「は、はいっ!」

嬢「きゃっ!や、やけにレスポンスがいいですわ」

男「な、何かな……」

嬢「あの……昨日の事ですわ」

男「え……昨日の……」

嬢「はい」

男「(も、もしかしてなかったことにして欲しいとか)」

男「どうぞ、覚悟は出来てるから」

嬢「まぁ……」

男「(なんだかんだ言って、そんな美味しい話があるわけない)」

嬢「潔いですわね、貴方にしては」

男「(こんな可愛い子が俺の彼女になんて……)」

嬢「じゃあ……言わせてもらいますけど」

男「うん……」

嬢「あなた……私の家に来なさい」

男「えっ」

嬢「キスまでしたんですわ。もうそれしかないのではなくて?」

男「キスまでって……キスしかしてないのに……えっ」

嬢「キス『まで』したのです。責任を取りなさい」

男「い、家に来いって、住めってこと?」

嬢「そうですわね」

男「でも、あそこからだとバイト遠いし、そもそも……」

嬢「屋敷で働けばいいでしょう?」

男「そんな無茶な」

嬢「使用人の給料でも、今のアルバイトより稼げましてよ?」

男「うぉ、心が揺れる……」

嬢「ふふふ、決まりですわね」

男「そ、そんなのでも君のお父さんが許すわけがないよ」

嬢「こじれる前に話をしたと言ったでしょう」

男「そっちかい」

嬢「さぁ、さっそく挨拶に行きましょう。少々忙しくなりましてよ?」グイイ

男「アッー!」

次章「お嬢様宅へのお引越し」

こうご期待ください(大嘘)

いや、これから夜勤なのです。面倒くさい

受付の存在がちょっと気になるから、使用人編も書きたいが申し訳ない

お嬢様「ちょっと、そこの使用人」男「え?」

みたいな感じで、夜か明日建てるかもしれないので
目にとまってお気に召したら読んでつかーさい
保守ありがとう!

http://www.youtube.com/watch?v=DGb76SWy0r0

>>620
歌がひどいぞ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年11月29日 (土) 21:25:26   ID: x4ZgTpZn

お嬢様宅へのお引越し・・・

いつになったら始めるんですか?待ってるんですよ!

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