男「モテる代わりに難聴で鈍感になった結果」(1000)

続き


男「モテる代わりに難聴で鈍感になるんですか?」
男「モテる代わりに難聴で鈍感になるんですか?」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1379798915/)

男「モテる代わりに鈍感で難聴になりましたが」
男「モテる代わりに鈍感で難聴になりましたが」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1380372236/)

男(後輩は猫を捕まえることに夢中なのか、こちらへ向かってくる足音に気づいていない。何やら嫌な予感がして堪らんが、やむを得ない)

後輩「そんなに警戒しなくても平気だよ。暖かいところに連れて行って……!?」

男「口塞いでろ、後輩。今はダメだ……だ、誰かこっちに近づいて来てる」

後輩「えっ!? わ、わかりました……けど」

後輩「先輩……どこ触ってるんですか……///」

男「は? えっ、す、すまん!? 別にドサクサに紛れて良い思いしようなんて事は」サワ

男「やぁ……薄っぺらいな」

後輩「っ~~~……/// 人が気にしてることを…それにいつまで手置いてるつもりですかっ!?」

「誰かいるんか? いま声したよなぁー……気のせいかの?」

男(騒ぐ後輩の口を手で塞ぎ、倉庫の奥に重ねられたダンボールの山の影へ俺たちは身を隠した。これ以上ない緊張感が襲ってくる)

男(ついに外の男は倉庫の戸を開け、頭を入れて中の様子を窺い始めた。後輩の話が真実味を帯び始める、彼の顔つきはどうみてもカタギの物じゃない。眼光だけで殺されそうである)

後輩「先輩、ちょっと近いです……か、顔…はずかしい…っ///」

男「我慢してくれよ。見つかるよりマシだろ……!」

男(大袈裟に言うが、まさに生死がかかったこの状況においても、美少女はいつも隣に。これがイベントだと?前代未聞すぎるだろう)

男(だがしかし、この腕の中には美少女後輩ちゃん。いつもの小生意気さなど今は微塵も感じず、脅え震える体をぎゅうぎゅうとこの俺へ押しつけてくるのであった。守りたい、この娘を)

男(俺も後輩も、遂には口を閉じて、男が立ち去るのを今か今かと待つばかり。どれだけ疑えば気が済むのか、かなりの警戒だ)

「絶対何か聞こえた思ったんだけど。家の外かぁ?」

男「ひー…ようやく諦めてくれそうだぜ。もう少しだけの辛抱だからな、後輩」

後輩「そういえばあの子……あっ! せ、せんぱい~……あ、あそこ」

男(後輩の視線を辿っていくと、そこには棚の上に登った例の野良猫の姿。 幸い、男は猫に気づいてはいないようだが)

男(もし男が気づけば、あの猫の犠牲によって俺たちは一先ず安心を得られるだろう。だが、そんな事は後輩が許さない。 見れば、今にも飛び出していそうな態勢を取っていた)

男「落ち着け、お前が今飛び出したところでどうにもならん。猫だってじーっとしてるだろ? このまま、待つんだ……頼むから待て」

後輩「でも、あの子が……」

男(全ては俺のために、都合が良い方へ動き始めるのだ。 猫は棚から飛び降りると、あっけなく男の目の前へ。 一気に俺たちの顔は真っ青に染められてしまった)

男(これからあの猫は想像するもおぞましい残酷な目にあってしまうのだろうか。恐怖した後輩は涙を浮かべ、俺の胸の中で一そう震えた。…だが、これで俺たちは隙を見て逃げられるわけだ。猫には申し訳ないがな)

「だぁー……ビビった。にゃんこかい? ずっとこの中いたんか。はぁ、鍵開けっぱなしにするもんじゃないねぇ」

男・後輩「……?」

「お前、中で糞とかしてねーだろうなぁ。ネズミとか獲った? よっこいしょ~……結構重いな、デブ猫だなお前」

「せめて雨宿りなら家主の目の届くところにいてよ。ここらで爪とぎなんぞされちゃ困るんよー」

「にゃー」  「何が『にゃー』じゃアホぅ。懐っこい猫だな、こうやっていつもどっかで餌貰い歩いてんかー? よしよしよし~……」

男・後輩「…………」

男「……少なくともバラバラに惨殺されることはないんだろうな」

後輩「私よりすぐ懐かれてました、あの人……はぁ、でも良かった。酷い目に合わなくて」

男「バカ、心配ならまず自分にかけろ! 今回は助かったが、本当にヤバい奴だったら俺たち揃ってミンチになってた」

後輩「ふふ、しっかり反省してます。…でも、そういう台詞って全部終わってから言うべきだと思いますよ、先輩」

後輩「あの人が家に入ったらすぐにここを出て行きましょう。 結局無駄足になっちゃいましたね、すみません、変なことに付き合わせてしまって」

男「やれやれ、まったくだ。この落とし前はどうつけてくれる? 何でも俺の言うことでも聞いてくれるか?」

後輩「えっと…そうですね…………先輩のためなら、なんでも」

男「えー?何だって!?」

後輩「な、何でもありません…一々訊き返さないで…///」

男(緊張が一気にほぐれた反動か、今は後輩で存分に楽しみたい気分である。 しかし、このイベントなんだったのだろう。後輩と汗まみれ密着、ちっぱいタッチ。十分といえば、十分だが、何か物足りないような)

男(……なるほど、ようやく気づけた)

男(初めから違和感を感じていたのだ。なぜ、後輩と一緒にとはいえ、このような家に、しかも倉庫の中にまで入らなければならないことを)

男(猫の為? 違う、全ては俺の為にである。予期しない展開の連続に冷静を失っていた。これは)

男(これから始まるイベントの為の、予定調和だったのだ)

男「そろそろ外に出るか……あれ?」

後輩「先輩、どうかしました?」

男「いや、戸が開かなくて。立て付けが悪いとかじゃねーよな? ん?」ガタガタ、ガタ

後輩「……あの、もしかしてなんですけど……というか、もしかしなくてもなんですけど」

男「ああ、外から鍵をかけられたみたいだな (OK、体育館倉庫でないことを除けば、夢にまで見たシチュエーション)」

後輩「やっぱり。そうなるかなって思ってました。 遅刻は免れないとして、どうしましょうか?」

男(ふーむ、流石というかである。閉じ込められ、二人きりといえど、後輩は動揺することなく、いたって冷静に振る舞う)

男「とりあえず一緒に戸を思い切り引っ張ってみようぜ。鍵を壊せるかも……じゃあいくぞ? いち、にの、さんっ」

後輩「ん、んんぅ~~~……っはぁ……ダメみたいですね、ビクともしない」

男(当然だろう。この程度で突破できるようなイベントではない。とりあえずはテンプレートに従い、順序良く段階を済ませていこうか)

男「このままだと遅刻どころじゃ済みそうにないな、言い訳もできん。なぁ、優等生?」

後輩「助けを呼びましょうか? 電話なら通じそうだし……警察?」

男「悪魔かお前は? あらぬ濡れ衣をさっきの人に着せる羽目になるぞ」

後輩「そうですね、猫も助けてもらったし。 じゃあ、やっぱり何とかして気づいて貰うしか」

男「わぁ、そいつはナイスアイディア。怒られて済めば良いんだが、その前にいつ気づいてくれるのかね」

後輩「また外に来たタイミングで声を出すしかありませんね……本当にすみません。私のせいでこんなことにまでなっちゃうなんて。今回ばかりは謝るしかないですね…」

男「気にすんなよ(と、頭へ気安く手を置いて撫でてやっても、今回ばかりは素直にされるがままの後輩。 下を俯き、はにかむ表情を口に手を当て、誤魔化している。 ああ、妹にはない良さがここに)」

後輩「や、やだ…どうしてそんなこと平気でできちゃうんですか……///」

男(難聴フィルターが無い。こんなに素晴らしいことがあるのか? これも前週までの俺の頑張りがあったからこそ。俺という犠牲のために、この幸福を噛み締め、味わおう。ご褒美だコレ)

男「しかしまぁ、体育館倉庫を舞台にしたかったな。おまけに後輩のブルマ姿を拝んだりして……ぶふぅ…っ」

後輩「先輩? あの、鼻血出てませんか? 暗いからよくわからないですけど……まさかいやらしい想像とかしてませんよね」

男「バカを言うな!! 俺は真面目にこれからどうするか考えてたところだ。お前こそどうなんだ? 言いだしっぺが一番怪しいぜ?」

後輩「えっ……わ、わたしは別に……先輩ともう少しこのままでいたい、とかなんて思ってなんか……!」

男「ん? よく聴こえたけど、今何て?」

後輩「あっ、うぅー……///」

男「閉じ込められた記念に一枚、どうだ?」

後輩「興味ありませんっ……先輩はバカです」

男「ストレートに来やがる。バカで結構。変態がプラスされたところでもう痛くも痒くもねーぞ」

後輩「バカ……バカだけど、でもどうして……」

後輩「さっきみたいな頼りになるところ見せられたら、ドキドキしちゃうじゃないですか……ばか」

男(全身を壁に打ち付けて、この沸き上がる感情を止めてやろうかと。先程から涎が零れて仕方がない。ゲスな妄想も止まらない)

男「寒いのか? 震えてるじゃないか。今日は冷えるからな」

後輩「へ、平気です。知ってますか? 女性は男性より冷えにくい体質なんです。だから」

男「理屈じゃねーだろ。女子は体冷やしちゃダメだってうちの母さんもよく言ってた」

男(制服の上着を脱ぎ、後輩に被せてやれば、嫌がることもなく素直に包まってくれた。彼女には大きいのかブカブカになっている。だが、それが良い)

男「少しはましになってくれただろ?」

後輩「なんだか、人肌で暖まったぬくもりがあって……ちょっと」

男「人が親切に貸してやったのにそういう態度取るか普通!?」

後輩「ふふっ、冗談です。 あったかい……先輩のにおいがする。汗臭い、かも」

男「よぉ、なんならパンツも貸してやってもいいんだぜ!?」

後輩「私は暖かくなって嬉しいんですが、これだと先輩が寒いんじゃ」

男「俺のことなら問題ない。最悪、そこにあるダンボールを拝借して抱いてりゃいい」

後輩「それはさすがにちょっと……先輩、隣に来てください」

男(多少は気を使って距離を離していたものの、そう言われてはしようがない。美少女の頼みである)

男(後輩の隣へ遠慮なく腰かけてやれば、彼女は俺へ近づき、自分が被った上着を広げて 俺ごと包み、密着してくれたのだ)

後輩「……こうすれば、二人が暖かくなれますから///」

男(抱きしめたいな、後輩。学校へも行かずにこんな良い思いをして、本当に大丈夫か? 転校生や男の娘が心配してるのでは)

後輩「先輩? ……こうしていると、何だかあの時ことを思い出しますね」

男「え? あの時って……まさか、俺とお前が付き合っているとかって時の」

後輩「あっ! ち、違います! あれはたぶん夢の話ですから……私たちがそんな関係になるわけないじゃないですか」

後輩「でも、おかしいですよね。写真も残ってた。まるであの時記憶だけすっぽり抜かれちゃったみたいですよ」

男「周りの環境は? そもそも俺たちが付き合ってるってことを誰か知ってる奴はいなかったのか?」

後輩「そう言われても……でも、お兄ちゃんは何となく気づいてたような……本当かは分かりませんけれど」

男(男の娘が気づいていた? 確かにそれらしき話を彼が言っていた覚えがあったことを思い出す)

男(個別ルートへ入った後、もし周りへ影響を及ぼす行動を取れた場合、他のキャラの記憶は消されることはないのだろうか)

男(そもそも、俺は後輩ルートへ入った後、何かできていたのだろうか)

男「なぁ、前に写真を見せてもらっただろ? 空とか写ってる奴で、最後に俺の顔を写してある奴を」

後輩「ええ、見せました。もしかして何かまだ気掛かりが?」

男「あの最後の写真以降で、俺と一緒に撮った写真とかはなかったのか? 俺たちが、その、付き合った後の写真だ」

後輩「あ~……/// と、とくには……見せたので全部です。あの後はありません。それからはいつもの風景を撮ったものしか」

男(ということは、である。 週を跨ぐタイミングは、告白成功後、正式に恋人の関係が築かれた瞬間と考えて良いのかもしれない。……そこからが重要だというに)

男(しかし、もし事実だとすれば、なぜ神はそんな薄っぺらいシステムを構築したのだろう。神は俺へハーレムを作れとは言っていない。ただ、モテるようになるとだけしか伝えなかった)

男(神が俺へ現在の環境を与えた真意は一体何なのだ? 契約によって神が得るものは? 俺が幸せな日々を送り続けるのを見て、悦に浸っている? まさか、では何か)

男(……全てを疑ってみた。もし、神が俺へ与えたこの世界には裏があるのではないかと。とてつもない、この幸福を覆してしまうほどの、裏が)

男(このループもどきには意味がある。けしてハーレムのために都合良くそうなるわけではなく、他の、別の[ピーーーーーーーーー])

男「俺はこの世界に閉じ込められているみたいじゃないか」

後輩「え?」

男「永遠に終わりが見えない、幸せって檻の中ではしゃいでるだけじゃないか……?」

男(俺が「チャンスを与えてもらえた」と都合良く解釈しているだけで、本当はいま凄くまずい状況にある。そんな悪い考えが頭の中をめぐり始めた)

男(全ては神の陰謀によって仕組まれていたことで、こうして俺をハーレム主人公(仮)で、モテモテの世界へ閉じ込めているのでは)

男(目的はわからない。だが、引っ掛かるのは先程幼馴染たちと一緒に登校していたときの奇妙な感覚。実は、それこそが全ての謎を解明する鍵だったのではないか?)

男(だが、鍵となれど、鍵穴へ合致しなければ開くことは不可能。 この世界へ俺が存在する最後の謎、解く術は俺自身の中にあったのである)

男(謎を解明するのも、しないのも俺の自由。陰謀なんてただの思いつきの身勝手な仮説だ。心配なんて無用かもしれない)

男(神が最初に伝えなかったのだ、今の俺にとっては不要な情報であることは間違いない。触れずにいるのが、一番なのかも)

男(しかし、委員長を救うために必要だったとすれば。 考えは変わる。俺は彼女を助け出す。 ならば、もうしばらく時間はかかりそうだが)

男(突き止めようか。あなたを攻略させてもらうぞ、神よ)

男「で、何の話だったっけ?」

後輩「先輩が……写真の話をして、それで……なかったって」

男「だったよな。悪い、癖で人の話まったく聞いてなかった。忘れてくれ!」

後輩「えっ、そんなのありですか? もう……先輩と私が付き合う、か……っ///」

男(今回もまた、以前攻略済みの後輩や先生を落とした場合、どうなるのだろう。ループが待っている? それとも先へ…)

男(そのような事を思いながら、後輩の顔へ視線を向ければ、彼女と目が合う。合ってしばらく、互いにぼうっと眺めていたが、気恥ずかしくなり、彼女は頬を紅潮させて伏せ目になり、俺は咳払いして)

後輩「……先輩は、私と先輩がそういう関係だったかもしれないって知ったとき、どう、思いましたか///」

男「どうって、別に悪い気はしなかった。そうだったんだな、と」

後輩「それだけ?」

男「それ以上があって欲しいのか? まぁ、お世辞でもお前は可愛い。くそ生意気だけどな!」

男「じゃあ、やっぱりそうなると嬉しいじゃないか。顔だけで言ってるんじゃねーぞ、お前といると俺も楽しいからな」

後輩「……そ、そうですか…そうだったんだ…ふふっ///」

男(ここで注意すべきことは、あまり彼女を調子づかせない事。最悪、「じゃあもう一度付き合ってみませんか、私たち」なんて台詞が来られたら、難聴が働かないのも手伝って、押し殺されてしまいかねない)

男(だからこそ「お前はどう思ったんだ?」といった台詞を吐くわけにはいかないのだ。別の話題で話をすり変え続け、このイベントを最大限に楽しめる瞬間を狙う、のみよ)

男「今何時だろうな? そろそろ1限目が終わった頃か?」

後輩「結構長い時間ここにいますからね、どうでしょう?」

男「待ってろ、携帯で確かめてみる……おおぅ」

後輩「ん、どうかしました。先輩?」

男「いや……俺はかなり愛されてるんだと気づかされて……」

男(携帯電話には複数の着信履歴とメールが確認できる。上級生の二人から、先生までも。……思い出した、今朝は男の娘の『質問』へ答えてない。幼馴染のことで頭がいっぱいになりすぎていた)

男(思った通りである。着信のほとんどは男の娘から。メールもあるが内容はどれも)

男の娘「『メール本文:忘れた?』」

火曜に続きかもしれない

男「自分から頼んどいて何やらかしちゃってるんだよ。これじゃあ先が思いやられるぞ…とりあえず無事って返しておかなきゃ」

男(他の美少女には後で学校で言い訳すれば良しとして、委員長が心配なところ。最近は人格交代の頻度が上がってきている)

男「……ああ、いつまでもこんな所でのんびりしてる場合じゃないのか」

後輩「それ、今さら言います?」

男「お前だってずっと余裕こいてただろうが。俺たちには危機感ってのが足りてないらしい」

後輩「本当ですよね。でも、先輩と一緒だからこそ私はこうして落ち着いていられるのかも」

後輩「だって他人の家の倉庫に閉じ込められるなんてこと、普通はありえないし、パニックになっちゃいますよ?」

男「俺と一緒だからじゃなくて、あまりの展開に呆れちまってるだけだろ?」

後輩「そうかもしれませんけど……でも、先輩の傍にいると不思議と落ち着けて」

後輩「……お、おにいちゃん?」

男「は?」

後輩「やっ……な、なんでもありませんっ!? 何も言ってませんからっ…///」

男(男の娘、お前の可愛い妹は俺へ譲ってもらおう。お兄ちゃん様様ですな)

男「なぁ、唐突に訊かせてもらうんだが兄貴とは仲良くやってるのか?」

後輩「くうっ……やっぱり聞こえてたんじゃないですか…///」

後輩「……それなりに兄妹やれてると思ってます。前にも言いましたけど、先輩たちみたいにあまりベタベタはしてないんです」

男「だから俺たちを見て羨ましいなんて言葉が出たと。でも、兄貴は悪い奴じゃないだろ? 可愛いしね…」

後輩「ええ、本当に良い人ですよ。私の兄として勿体ないぐらい」

男「謙遜することはないだろう。同じ母ちゃんの腹の中にいた家族だぜ?」

後輩「そういうわけじゃないんです、謙遜とかじゃ……というか、こういう話になると私と兄がまるで関係悪いみたく聞こえるんですが」

後輩「あのですね。普通の兄妹なんです。先輩と妹の関係が特別なだけで、私たちが一般的に見て普通」

男「いや、ちょっと待て。その特別ってのは妙な意味込めちゃいないだろうな!?」

後輩「一緒にふざけ合ってるところ見てると恋人みたいですかね。あはっ」クス

男(みたい、を実現させることも可能なわけだが)

後輩「そういうじゃれ合いがとても羨ましい。最近だと兄も前より大人しくなってしまって、あまり私に声をかけることも少なくなっちゃって」

男(おそらくは俺絡みで縺れ、後輩へ対して嫉妬心ができてしまったからと推理できる。知らないところにまで影響を与えるこの俺の存在、実に罪深い。ろくな死に方は期待できない)

男(さて、そんな美兄妹を救う手っ取り早い方法がある。ハーレムというのだが。皆、ハッピーになれてしまうのだが?)

男「思春期なんだろ。可愛い妹の顔を直視できないってなー」

後輩「先輩も妹ちゃんとそういう時がありました……?」

男「俺は (こちらの世界では特に。元の世界では妹からこの俺を避けてきた。彼女曰く、あまりにも見るに堪えない顔面で直視できないそうな。3秒も顔が合えば奇跡の域である)

男「なかったと思う。あんなお子ちゃまなんぞに緊張させられるものかよ」

後輩「私と同い歳なんですけれど」

男「お前の方が大人びて見える……一部除き」

後輩「うっ! 最低ですね、出るとこ出ますよ……!」

男「いやぁ、お前のそこはしばらく出てこなくて構わん。結構需要あるからなぁー!」

後輩「先輩の変態……ん、先輩はちっちゃい方が好みなのかな…」

男「ふぎぎっ……そ、そろそろさっきの人が来てくれる頃かもしれない!!」

後輩「それは、どうでしょうか。見たところお休みしてたみたいですし、外も雨だから」

男(俺が望めば、否、アクションを起こせば脱出も可能なのをご存じない? これ以上悶えさせられると襲いかかってしまう。適当にラッキースケベを起こし、てという時にかかる電話である)

後輩「携帯鳴ってますよ。皆さん、心配してくれてるんじゃ」

男「まぁ、かなり心配されてるだろうよ。……男の娘からか」

男の娘『もしもし、男。その、問題ないって……あああ! それより今何処にいるの!?』

男「フッ、話したらきっと驚くと思うぞ。大丈夫、心配することはない。昼までには学校にいるさ」

後輩「先生や妹ちゃんたちへ何て言い訳したらいいのか……もしかして電話の相手、兄ですか?」

男「うむ、よく気づいたな? 大当たりだ。景品はあいにく出ない」

後輩「結構大きな声が聞こえましたから。それより先輩と兄って知り合いだったんですね、初めて知りました」

男(意外そうな後輩である。だが、同じクラスの同級生なのだぞ。まさか本当に男の娘とあまり会話をしていないのか?)

男(とりあえず男の娘には、「いまお前の妹と二人きりでイチャイチャ」とは間違っても教えられない。かならず面倒が起こる、現在も、後でも)

男の娘『記憶の方は本当に大丈夫でいいんだよね…? でも、今はそんなことより居場所なんだけど』

男「腹を壊して病院で見てもらっていたんだよ。先生にお前からそう伝えておいてくれないか? タイミング逃して言いそびれちまった」

男の娘『うん、わかった。電話済んだら伝えてくるよ! ……ねぇ、いまも病院?』

男の娘『もしかして誰かと一緒にいたりしない?』

男「んん~……いや? どうしてそう思った?」

男の娘『だって男はいつも[ピーーーーーーーーーーー]……だから今回もかと思っちゃって』

男(この俺をよく理解しているじゃないか、男の娘)

男(中々どうして俺の周りには鋭い女、男も含む、が多いという。本当に一歩間違えば、修羅場が発生して、空鍋、首チョンパなんてこともあり得そうで恐ろしいかな)

男(彼女たちの優しさに甘え過ぎな傾向が強くなってきた。これは次週が非常に面倒になるかも……俺はかなり仕事をしたのだ。まぁ許せよ)

男「そういえば今日もクッキー焼いてきてくれたのか? (話題を彼好みの方向へ、ずらす。今はこれで回避できる)」

男の娘『えっ、ああ! う、うん! 実は今日は別のものを……えへへ』

男「別のだと……そ、そうか……期待させてもらう。いますごく腹が減ってるんだ、待ち遠しいよ」

男の娘『空腹は最高のスパイスだよ、男っ! もう少しで学校に着くんだよね。お昼ご飯食べたあとに渡すね!』

男「結局食ってから出されるんじゃねーか!」

男(何事もなく男の娘との会話は打ち切られる。この調子で美少女や謎へ追われる生活を続けていれば、1年以内には毛根バイバイだろうか)

後輩「兄が最近家でお菓子作ってたのって、先輩へあげるためだったんですか?」

男「えっ? ……ちょっと、あいつの菓子作りの腕を上げてやろうと思ってね」

後輩「あー、なるほど。兄は昔からドジで何か作ると失敗してばかりいましたからね、良いと思います」

男「いいのかよ!? ……あ、何でもないですよ」

後輩「え?」

男(確かに、まず自分の兄が男へ恋愛感情を抱いていると普通疑わないだろうが。なんというか、後輩は思った以上に素直である)

男(これは魅かれてしまうだろう。先生を攻略していたマニアックな自分には驚きはしたが、なるほど、後輩を選んだその時の俺の気持ちがよく分かった)

男(さぁ、男の娘たちが今か今かと主人公を待っている。行かねば、あるべき所へ)

男(「開かないかもう一度試してみる」と後輩へ声をかけ、立ち上がる俺。もちろん、狙いはラッキースケベの発動である)

男(発動し、俺たちが色んな意味で盛り上がっていれば、高確率でさきほどの男がそこの戸を開いてくれるだろう。開かなければそのままイチャこけ)

男「おーっと!しばらく座っていたからバランスが!」

後輩「せ、先輩? わ、わ、あっ……!?」ドンっ

男(華麗に決まる俺の転倒芸、そこからの展開はもはや想定内。なぜだか、この手が後輩のブラウスのボタンを上から全て引き千切り、露わになるは咲き掛けた蕾を覆い隠す桜色の鎧。だから気に入った)

後輩「うそ……っー……///」

男「す、すまん!! 転んだ勢いで手が、ワザとじゃないぞ!?」

後輩「い、いいからこっち見ないでくださいっ!///」バッ

男「上着は学校に着くまで貸しておくから、それで隠しておいてくれ! ……へへへ」

後輩「…見ないでくださいって言いましたよね? 本当に先輩はスケベの変態ですっ」

男「い、いやー? 別に、偶然目がそっちへ泳いじゃってなー……どうしてかな?」

後輩「えっち。最低です……ううっ……///」

男「怨むならこのゴッドハンドを怨んでくれ、俺に罪はなかったんだ……」

後輩「あとで替えのやつもらってこなきゃ……先輩のせいですよ。襲われたと話していいですか」

男「冗談じゃねーよ! 俺はお前のことを信じてるからなっ!?」

後輩「はぁー……妹ちゃんが苦労するわけだ。大体、いつも先輩は変な場面でそそっかし過ぎます」

男「さっきは落ち着くとか言ってたくせに……悪かったよ、それなりには反省してる」

後輩「全然反省してませんよね。 じゃあ罰として私の言う事を一つ聞いてください。それぐらいしても大丈夫でしょう?」

男「……内容によるからな (ストレートに「付き合って下さい」とかくれば、どう回避したものか。さすがにこの流れではあり得ないとは思うけれど)」

後輩「今週末に一緒にカメラ見に行きましょう。私とデートしてください、以上」

男(ストレートと言えばストレートで間違いない内容だった)

後輩「前に遊びに連れて行ってくださいって言いましたよね? この分だと私から言わなきゃ、先輩も動いてくれなさそうですし」

男「あ、ああ。そんなことでいいのなら構わないが……デートって」

後輩「あっ……わわ、私たち過去にお付き合いしてた事があったのかもしれないんでしょう!?」

後輩「だ、だから……何か思い出せる切っ掛けになれたら良いかなと……その…///」

男(いじらしい、涎が止まらぬのだよ。ここで積極性を見せてくるか)

男(だが、後輩よ。了解したにも関わらず、その願いを叶えるのは俺であって俺ではない。他の俺だ。 そこだけは許して欲しい)

男(約束の日が近付けば、向こうから俺へ接触してくるだろう。とくにメモしておく必要はないと見た。せいぜい楽しめよ、次の俺)

男「なるほどな。だけど、それを知ってどうするつもりなんだ?」

後輩「えっ、ど、どうするって……いや……!」

後輩「…………言わせないでくれませんか///」

男(ああ、このままエンジョイしてしまってよろしいだろうか。脱出なんて後回しで構わん。後輩をいま押し倒しても、彼女は受け入れてくれる筈)

男(なんて甘い罠へ引っ掛かるマヌケは一生主人公にはなれない。これまで幾多の壁を越えてきた俺がこの程度で堕ちるものか。目的を達成するまで、性欲なんぞ捨てちまえよ)

男(……でも、転校生と結ばれたら、どうだろう。我慢できる自信がない。これはギャルゲーではない、半現実。エロゲーならば告白成功からの……その時は、その時。ケースバイケースである)

後輩「…………」

男「後輩? すまん、さっきより寒がらせちまってるよな」

後輩「だ、大丈夫です……先輩の上着もありますから……」

男「……仕方がない。最終手段だ、今着てるYシャツも貸してやる!」

男(シャツも脱ぎ、遂には肌着のみとなればさすがにこちらも冷える。後輩も申し訳なさそうだが、構うことはない)

男(俺の脱出口を開くための策なのだから)

後輩「これでは先輩の体が冷えちゃうじゃないですか、風邪を引かれたら…」

男「大丈夫、バカだから。ほら、さっさと重ねとけって」

後輩「そういう問題じゃないかと…」

男「遠慮はいらん。やれやれ、そこまで言うなら無理にでも着せてや……お、おぉ!?」

後輩「えぇ? せ、先輩…ちょっと……え、え……きゃっ!?」

男(嫌がっているわけでもないが、戸惑う彼女へシャツをかけてやろうとすればである。やはり発動するラッキースケベ)

男(驚きの二段構え。重ねていた制服の上着も脱げ、上半身半裸となった後輩を俺が押し倒す形ができあがった)

男「……たびたび、すまん」

後輩「ぁ、わ……っ……かお、ちか……///」

男(拳二つ分空く距離で後輩の可愛らしい顔がそこにあった。みるみる内に今までにないほどに頬を紅潮させてゆき、息を荒げる)

男(またも照れ隠しのつもりか手で口元を覆うが、それが更に彼女へ色気を纏わせる。顔を必死に逸らそうとするも、チラリと一瞬こちらへ視線を戻したがるのがこれまた)

後輩「先輩……手、どけませんか」

男「は!?」

後輩「あの、下……スカート……さげちゃってますから……」

男(言われて初めて気づいた。左手が後輩のスカートを下へずり下げている。完全では無いにしも、上と同じく桜色の下着の一部が外へ現われていた)

後輩「というか、退いてもらえるのが一番かな、と……///」

男「待て……何か誤解しているようだが、俺はそんなつもりじゃなかった。まただ」

男「また偶然の悪戯がぶぎゃんっっっ!!」

男(突然頭部へ走る重い痛みである。仰け反るも、背後から体を強い力で引っ張られて、転がる俺。 …よかったよ、無事に昼までには学校へ)

「なぁ……われ何してるんじゃボケエエエェェェーーーーーーッ!!!」

男「無事……無事で終わればいいんだが……」

男(いつのまに現われたのか、家主の男が戸を開けて俺たち二人を発見。だがしかし、その光景は人の倉庫で朝から一発おっぱじめようと盛る男女の姿にしか見えなかったわけである)

男(家主、俺を引っ叩く引っ叩く。後輩、唖然となり家主の迫力へ脅える。俺、泣いて言い訳するも家主へ通じず.。猫、ニャーとあざけ笑うかの如く鳴く)

男(結果、3針は縫う傷を顔面へ受け、病院へ。男の娘へついた嘘が半分事実へ変わってくれた)

男(家主へは後輩が必死へワケを説明し、これ以上の大事へは至らなかったし、見なかったことにすると治療費まで頂けた。 終わり良ければ全て良し、無事ではないが、ようやく席へ着席できた俺がここにいる)

男の娘「お昼すぎちゃってるんだけど…」

男「……知ってる」

また明日

男の娘「ねぇ、お腹を壊して病院に行ったんだよね。その顔の怪我は何なの? す、すごい腫れちゃってる…」

男「階段で転げ落ちた。先生と全く同じこと訊くんだな、心配しなくても大丈夫だよ」

転校生「そりゃあ誰でも普通訊くわよ。気になるじゃない……[ピーーーーーーー]」

幼馴染「ごめんね、男くん……あたしが放って置いて先に学校に行ったからこんなことに……」

男「お前のせいじゃない。単なる俺の不注意が原因だ。……ていうか、死ぬほどでも無いし、済んだことだろ。気にするなって」

男の娘「き、気にするよ! だって遅刻はするけど、絶対に学校には来るはずの男がこんな時間までいなかったんだよ!?」

男の娘「それに来てみたら、怪我は作ってくるし……」

男(ここまで思われているとは俺も幸せ者である。今まで家族以外に心配されたことなどあるか? 無いに決まっているだろう。涙が出てきそうになる)

不良女「お、男ぉーーー!! こ、このやろぉ……!」ガシッ

男「ぐえぇっ!?」ギュゥゥ…

不良女「おおお、お前怪我したって聞いたから、駆けつけてきた!! 何してんだよぉぉー!?」

男「く、首…首絞めっ……ギブ、ギブっ……」

男(同学年美少女たちがここに集結。委員長は、どうやらまた人格が乗っ取られているらしい。見つけて手を上げれば、一瞬驚くも、すぐにいつもの冷めた目で一瞥された)

男(不良女の参戦から更に俺の周りが喧しく賑わい、てんてこまい。……忘れられない俺の最後の仕事がまだ一つ残されている)

男(いつまでもこうして彼女らと戯れていたいところだが、昼も過ぎた。放課後までそう時間も残されていない)

幼馴染「じゃあ、あたしたちそろそろ教室戻るけど……何か手伝えることあったら遠慮なく言ってね?」

男「両腕、両足、おまけに指も。どこも折れちゃいないんだが」

男「たかが顔の傷程度にどうしてそうお前ら騒ぎ立てる? 大したもんじゃねーよ」

不良女「逆にどうしてあんたはそんなに平然としてられんだよ。もう、こっちが冷や冷やすんぜ……」

幼馴染「本当だよ! これからは気を付けようね、男くんいつものんびりしてるから危なっかしくて……」

男「だぁーっ、さっさと自分らの教室に帰れ! いい加減、うっおとしいぜお前らっ!」

幼馴染・不良女「むぅ~……」トボトボ

男の娘「心配かけてるのにああいう態度は良くないと思うよ、男」

男「ふん、ドが過ぎてればさすがに怒鳴ってやりたくもなる。気持ちは嬉しいけど、こっちは何度も大丈夫だって言ってんだ」

男の娘「あはは……お菓子、帰るときに渡すよ。せっかく作ったんだし」

男(ようやく俺という大陸から嵐が過ぎ去ってゆくわけだった。先程のイベントもあってか、今日はやたら疲れて参る)

男(が、ここでバテているわけにもいかない。体に鞭を打ってでもである。今できることを…机へうつ伏せになりながらも、ペンを片手に机へ文字を書き出す俺)

男(他人から見ても、自分から見ても 胡散臭いただの落書き。だが、希望を見出す道を切り開いてくれる、かもしれない)

男(問題はこれを次週の俺がどう受け取るか。ただの落書き如き、と相手にもしない……なんてことは絶対にない。そのための工夫が落書きへ施された)

男(落書きに気付かない可能性がある? ない。記憶がリセットされた俺は、まず席を探す。元世界と異なる机に、位置だ。席へ着けば、かならず俺は寝心地を確かめるため、机を見て、触る)

男(予めカッターで落書き周辺へ傷をつけておかせてもらった。絶妙な手触りとなる。これで間違いなく、一度は目に入るだろうかな、と)

男(もし、落書きを読む前にイレギュラーが現われた場合は? ここではイレギュラーは現われないケースを想定しない。初めから賭けなのだ、無ければ今以上の突破法もなきに等しい)

男(想定してみよう。イレギュラーが登校中に接触、あるいは教室へ辿りつくまでの過程で接触。そして『隣の女子』として現われない)

男(落書きを見ていない状態で現われるのが一番面倒である。後者は落書きさえあれば、どうにか対処可能……男の娘、委員長の助っ人合ってこそなせる技だが)

男(つまり、いま対策を練らなければならないのは前者のケース…と、いっても、対策なんてこれ以上はない。ではどうするか? ギャルゲー的に考えてみよう。登校時、いつものように俺は幼馴染と揃って学校へ向かうだろう)

男(初日、幼馴染系美少女と共に登校。いわばチュートリアル。ここで自分が抱えるメリット、デメリットを確認させられ、この世界へ引き込まれていく)

男(時折、転校生といった他の美少女が出現し、唐突なアタックが起きる可能性もある。俺がそうだったように。……もし俺がゲームを作る立場の人間ならば、ここでゲーム進行に重要な報せをプレイヤーへ伝える説明は、いれない)

男(イレギュラーはそもそも攻略キャラではない。モブと同等。ならば、イベントの邪魔になるタイミングで出現することは考えられない。意表を突いてきたときは? 例えば……もしも、をこれ以上増やせばキリがない。考えられる範囲で留めるべきである)

男(登校時、出現確率は最低。学校へ到着してから……幼馴染や他の美少女たちと別れ、一人で教室へ向かう。その際、また他の美少女キャラたちが次々と行く手を阻むように登場。ラッキースケベ、適当な会話、2,3人と済ませてようやく教室へ)

男(男の娘や転校生が一緒にいたとすれば、横道逸れず、まっすぐ教室へ辿りつける可能性が上がる。まだ、教室へ辿り着くまでがチュートリアル、キャラやその設定の紹介とか、そんな感じ)

男(やはり、一番ここぞというタイミングは、俺が教室へ着いて一息ついた時と思われる。それに、後になればなるほど、イレギュラーが俺へ接触してくるのは不自然となる。この世界は俺と美少女たちの会話劇で成り立っているのだから)

男(神がここまで凝った設定で進めてくるかなんて分からない。相手は神だ、人外相手なのだ。予想を大きく裏切ってくるかもしれない。もしかすれば、今俺が考えてることなど見抜かれていたり、とか)

男(だが、神からして俺へ妨害する理由があるのか。それも分からない。……だから、これで十分。あとは……もしもの時の、保険の保険、さらに保険をかけておくとしよう)

委員長「……男? また私に何か用事でも」

男「時間は取らせん。なに、すぐ済むことさ」

委員長「授業があともう少しで始まります。それより、こんなに遅れた時間で登校ってどういうことですか…」

男「何だ? 珍しく心配してくれてるのか、委員長」

委員長「べ、べつに……私はただ、風紀委員としてあなたのような不真面目な生徒を……勘違いしないでっ///」

男(まずい。試しにそれらしい台詞で煽ってみれば、彼女が寄越した反応は……俺に気があるぞ)

男(完全に元の委員長の人格が消滅すれば、今目の前にいる委員長を完全に攻略可能となる。あきらかにである)

委員長「それで用事は何ですか。手短にお願いしますよ?」

男「漫画、貸してやろうかと思って」

委員長「……は?」

男「だから漫画だよ。真面目な風紀委員長さんは漫画もご存じない?」

委員長「し、知ってます! そうではなくて、どうして今私があなたへそれを貸されなければならないのかと…!」

男「ん、まぁ変に思わず受け取ってくれよ。委員長の好きそうな話だったからさ、気に入るかなって持ってきたんだ」

男「どうせ空いた時間にパパッと読めるもんだ。読んでくれなくてもいい。俺の勝手で貸したもんだからな」

委員長「意味がさっぱりわかりません……あなたの頭の中はどうなってるのですか」

男(完全に疑った眼差しを向けてくる委員長。当然だ、あまりにも突拍子がなさすぎる)

男「で、何だかんだ言っても受け取ってくれるんだろ? 騙されたと思って読んでみろよ、俺のお墨付きだぜ」

委員長「漫画を読むなら別のことをします。……でも、どうしてもというのなら」

男(そう言うと、渋々といった感じか、それとも意識し始めた俺からの贈り物に内心喜んでいるか、どちらでも良い。受け取って鞄へ漫画をしまってくれた)

男「読むにしても、読まないにしても、明日には返して貰うぞ 委員長。ホームルーム前には渡してくれ」

委員長「明日!? はぁ…[ピーーーーーー]…あなたって本当に勝手な人ですね。意味不明です……[ピーーーーー]」

男「かもな、へへっ!」

委員長「っ……は、早く自分の席に戻ってください!///」

男(全ての準備は整った、とは思う。これで俺ができる事は、ない筈。ここまで苦労させられたのだ、どうか上手く活用して欲しい)

男(委員長を後にし、自分の席へ戻る途中、男の娘と目が合えば俺は何とも言い表せられない罪悪感へ襲われた。だから、意味など伝わってくれなくても良い。言ってやったのだ)

男「男の娘、ごめんな」

男の娘「えっ?」

男「いや……悪い、やっぱり何でもなかった。頭打って俺イカちゃったのかも」

男の娘「ん、んー?」

すげー!まさか絵描いてくれるとは思わなかった。すげー
これからも頑張りますわ

遅れたけど今日の夜から書く

男(席へ戻って授業の用意をするでもなく、自然と隣の転校生へ目が行った。彼女との他愛のない会話を期待していたのだ)

男(約束の日である。俺でさえ落ち着かないというのに、彼女は別段気にした様子もなく、澄まし顔でいた)

男(ようやくこちらに気付くと、ゆとりある笑顔で見つめ返してくる。途端に俺がなんだか気恥ずかしなり、咳払いで場を誤魔化そうとすれば)

転校生「あんたって本当にマイペースよね。羨ましいわ」

男「今さらそれがどうかしたのか?」

転校生「ううん、言ってみただけ。……[ピーーーーーーーーーーー]」

男(安心している様子から察するに、今日、ここに俺が来てくれたことにほっとしているというところだろう)

男(返事は明日、なんて言っておきながら昼まで姿を現さずにいたのだ。彼女としては不安だし、俺が逃げたのではないかと思ってしまいかねない)

転校生「その怪我、階段から転んで作ったって言ってたわよね?」

男「……疑ってる?」

転校生「別に。理由なんてどうでもいいわ。 でも本当だったとしたら、ボーッとしすぎ」

転校生「幼馴染ちゃんの言う通り あんたってどこか危なっかしい」クス

男「今日は、その…アレだ……考え事しながら歩いてたからな、他に余裕がなかったというか」

転校生「そ、そそそ…! それってもしかして……私のことを……っ!///」

男「さぁ、どうだろうな。自意識過剰じゃないか?」

転校生「うるさい…さっきみたいに言われたら誰だって普通そう思っちゃうじゃない!」

男「ほう、そいつはどうして?」

転校生「あああ、当たり前でしょう!? だって、今日……!」

転校生「今日………きょ、今日…その~…………///」

男「続けてどうぞ」

転校生「うぅ~……もうっ! あんたのせいでせっかく落ち着いてたのに、また緊張してきたじゃないのよっ!!///」

男(確かに俺のせいで一気に平然を崩させてしまったかもしれない。まぁ、よく保っていられたものである)

男「今さらクールなキャラ気取ろうとしても似合わんぞ。ギャーギャー喚いてる方がお前らしい」

転校生「はぁ!? 意味分かんないっ」

男「大体、緊張する意味が俺には分からないな。ストレス溜める生き方してるぜ、転校生」

転校生「だ、誰のせいで……どうしてあんたはいつも通りなのよ。私と話してて何も[ピーーーーーー]…」

男「意識してるに決まってんだろ。お前が昨日俺にしたこと、衝撃的すぎてしばらく忘れられそうにない」

転校生「いやっ、あっ、あ、ああ! あ、あの時は……ち、ちがうのよ……あの…えっと……///」

転校生「や……やっぱりあんた変態だわ! この変態っ!」

男「ようやく俺の知ってる転校生になってきたじゃないか。変態の転校生」

転校生「ちょっとそれどういう意味よ!?」

転校生「あ、あんたと話してると無駄に疲れてくるわ……!」

男「その代わり緊張もどっかに行っちまっただろ? 気が効く奴だな、俺ってば」

転校生「呆れた……ふふっ」

転校生「悩んでた自分がバカみたいに思えてきた。そうよね、いつも通りで別に良いのよね」

男「ありがとうございました、は?」

転校生「ウザい」

男「砕けた日本語を覚えるのは早いよな、お前」

男「いいか? 今日はみっちり、キチンとこの男先生が正しい日本語の使い方から何まで叩き込んでやろう」

男「覚悟しろよ、俺の個人レッスンはかなり厳しいとの評価をいただいたこともある!」

転校生「……変態っぽいわ」

男「まずはその変態の定義から正さなきゃならんようだな?」

転校生「あっそ。何でもいいわ。[ピーーーーーーー]、[ピーーーーーーーーーーーーー]」

転校生「…………えへへっ///」

男(転校生も、俺も、お互いいつもの調子を取り戻せられただろう。とは言っても、長続きはしない。放課後までだ)

男(ハーレムハーレムとしつこくやってきたこの俺が、まさか個人ルートへ進むとは思ってもみなかった。しかも相手は転校生ときたものだ)

男(彼女からは色々と学ばせて貰ったかもしれない。ある意味で、転校生が今の俺を作ったといっても過言ではなかろう)

男(転校生のお陰で、無駄に自信を持てるようになった。美少女相手に尻込むことなく、向かって行けた。以前の俺からすれば、とてつもない変化)

男(さて、終わりの時は刻々と近づいてくる。今回は逃げることなんて微塵も考えられない。逃げる必要なんて、一切ない)

オカルト研「…………」

男「知ってるか? ここって男子トイレっていうんだぞ」

オカルト研「ん」コクコク

男「女子禁制なんだが!? 後ろに立たれると出るもん出せないんだが!?」

オカルト研「えっ……そうね……///」

男「そうね、じゃねーよ!! 今俺しかいないから良いものを、他の奴が来たらどうする!?」

オカルト研「なんとか別のところに行って貰えるよう、頼む」

男「あらぬ誤解されるぞ……もしかしなくても、何か俺に用か」

オカルト研「用がなくても会いに行っていいって、男くんが言ったわ…!///」

男「場所を弁えて、と付け足すべきだったらしいな」

男(一先ず、通行人を警戒しながらオカルト研とトイレを出る。彼女は聊か周りの目を気にしなさすぎる)

男「いいか? 会いに来ても構わん。だがな、よく考えてからにしてくれ」

男「男女がトイレという名の空間に二人きり、それってまずいとか思ないのか?」

オカルト研「反省してる……」

オカルト研「でも、あなたの後ろ姿を見たら自分を止められなくて……[ピーーーーーーーー]///」

男「俺の? 俺の中の悪霊に釣られたんじゃないのか?」

オカルト研「悪霊に釣られてまんまと罠に嵌められてしまったわ」

男「ああ、そいつは性質の悪い悪霊さまで……ほら、教室に戻れよ。あと1限で終わりだ、お互い頑張ろうぜ」

オカルト研「も、もう行ってしてしまうの……?」

男(制服の袖を引っ張って、寂しそうに俺を見上げるオカルト研である。計算して動いたとすれば、とんでもない悪女だよ)

男「もうって、またいつでも会えるだろ?」

男(彼女は、で、俺は違う。おそらくこれで最後となろう会話だ。そう思うと、こちらも別れが惜しくなってくる)

男(その時、俺の背後から喧しい足音が接近。足音の主は勢いに任せて俺の背中へ跳びかかり、両手で視界を塞いできて)

先輩「はい、だーれでしょーう!? わたしですっ」

男「だろうなっ!!」

男「ていうか、どうして2年の教室の前にいるんですか? …ちょっと、どこ触って」

先輩「ん~? どうしてかって? 聞きたいー? きーきーたーいー?」ツンツン

オカルト研「お、男くんが妖怪に襲われている…!」アタフタ

男(今までにない組み合わせだが、一言で表せば、まさにカオス。胃がもたれてしまいそう)

男(いつまでも負ぶさっている先輩は背中に置いたまま、オカルト研の相手を務める。どちらが上級生か判断に困るな)

男「いや、この人は見ての通り人間だからな。言うまでもないが…」

オカルト研「[ピーーーーーーーーー]……!」

男「(ああ、怒っていらっしゃる) はぁ? それより、先輩そろそろ離れましょうよ!」

先輩「ん、重たい?///」

男「いや、重いとか軽いとかじゃなくて、単純にこっちが恥ずかしい……で、どうしてここにいるんです」

先輩「よくぞ訊いてくれたぁ!! 男くんに伝言。今日は生徒会のお仕事もなしだからって生徒会長ちゃんが~」

男「ああ、そういうことか……じゃあ今日は問題なく向こうに専念できるわけだ」

オカルト研「男くん、私を見てほしい……っ」グイッ

先輩「おおっ、なにその子は!? 男くんは可愛い女の子見つけるの上手いねぇー!」

男「なぁ、俺もう帰っていいだろうか!?」

男(ようやくカオス組を撒けた俺は教室へ戻ろうとする。つまり、まだ到達していないということが文面から読み取れるだろう)

先生「噂をすれば現われたなぁ、問題児くん」

幼馴染「男くん……」

男「問題児って言い方は気に食わないんですけど」

先生「先生だってそういう風に呼ぶのは嬉しくないよ。でも、遅刻にも限度があるよね」

先生「次に遅れそうなときはかならず私に事前連絡いれること。いい? 約束だぞ?」

男「連絡できない状況もあるじゃないですか。今回がそうだったみたいにさ」

先生「できるときはかならず、ね。いまご両親もいなくて大変だろうけど、もういい歳なんだし、しっかりしてね」

幼馴染「でも、先生……あ、あたしが男くんについてますから大丈夫です!」

先生「うん、君はしっかりしてるし、良い子だけど、それとこれとは別なの。……なんなら私が男くんを預かっても良かったのに」

男「やれやれって感じだな。二人して俺の話して、そうとう退屈なんですか?」

先生「君の話をしてたのはちょっと横道逸れただけよ。本当は彼女に用があって話をしてたの」

男「幼馴染に? 何だ、先生に料理でも教えようってか。まさかねぇ」

幼馴染「あの、そうじゃなくて……何でもないよ! 気にしないで。[ピーーーーーー]」

男(それで気にするなというのはかなり無理があるだろうが)

先生「この際、こっちにも相談しておいた方がいいんじゃない? 家が隣同士なんでしょ。だったら」

幼馴染「男くんにこれ以上迷惑かけられないし……」

男「迷惑上等。聞くぐらいはお安いご用だぞ。言ってみろって」

幼馴染「いい、本当に大丈夫だよ……[ピーーーーーー]」

男(一体彼女は俺へ何を隠している? これへの追求が幼馴染イベントへ繋がりそうだが、今は良くない)

男(しかし見逃していいものか……悩みどころではある。幼馴染の表情はどこか、暗い。シリアスな展開か? どうするべきかな)

先生「とりあえず、帰りは気を付けて。そこの男くんもいざとなれば一緒にいてくれるだろうし、頼るのも手だからね。頼りないけれど」

男「最後が余計だって突っこむべきですかね。って、もう行っちゃってるし……」

男「なぁ……本当に何なんだよ?」

幼馴染「何でもない。平気、平気! ほら、チャイム鳴っちゃうし、そろそろ教室行った方がいいよ」

男「あ、ああ。でも悩みがあるなら遠慮しないで話せよ? 俺も協力するから」

幼馴染「うん、ありがとう 男くん。……[ピーーーーーー]」

男(嫌なフラグが立った、なんてことになっていない事をただ祈るのみ。彼女の悩みとやらは気になるが、俺もいい加減前に進まなければならない)

男(思い残したことがないなんて、完全には言い切れない。それでも約束の時はやって来るのである)

男(一日の授業が終わり、遂に放課後が訪れた)

転校生「……図書館だと、周りに人がいて集中できないわよね」

男「それなら心配は要らん。部室の鍵をさっきの休み時間の内に開けてきておいた」

男「先輩さんも自由に使っていいって言ってくれたしな、さっそく活用させてもらおうぜ」

男「そこなら、邪魔が入らないからな。誰の邪魔も」

転校生「……う、うん」

転校生「わ……私 さきに部室に行ってるわね!?」

転校生「……その……[ピーーーーーーー]……じゃ、じゃあまた後でっ///」

男「いや、待て」ガシッ

転校生「ひゃうっ!!?///」ビクン

男「別に一緒に行ってもいいだろ? 先に行って何しようってんだ。特別な準備でも?」

転校生「ななななっ、ないわよぉーっ!! そんなのっ……」

男「じゃあ問題ないよな、転校生。行こうぜ。ずっとしてきた約束ともう一つ、今日果たしてやる」

転校生「うぅ……っ///」

ここまで。続きは木曜日に

男「今日のここはやけに静かに感じるな。俺とお前だけだからかなぁー」

転校生「……」

男「転校生?」トン

転校生「いっ!? いやああああぁぁぁ~~~~~~痴漢っ!!」

男「変態より痴漢の方がこう、胸にグサッとくる……落ち着けって、ここにいるのは変態と暴力女だ」

転校生「あああ…それでどう落ち着けって!?」

男「いつもの組合せだろ (部室へ無事入れたは良かった。しっかり鍵も閉めて何者の侵入も許さない)」

男(俺たち以外の部員がいないだけで、ここまで静かなのは……いや、単に転校生が緊張のため自分から一言も話そうとしないから)

男(本当のところ、彼女だけがそういうわけではない。この俺もである)

転校生「ていうか、いつまでもその『暴力女』って呼び方やめなさいよ。私はあんたと違ってまともなの! 暴力も振ってない!」

男「そうか? つい昨日殴られたのは俺の気のせいだったか」

転校生「そ、そうよ……それか天狗の仕業とか……」

男「お前本当にどうでもいい事は知ってるんだよな」

転校生「はっ。まさかその顔の傷って本当は私が殴ったせいでできたとかじゃ…!」

男「今日できたてって話したよな。何一人でさっきからパニくってんだよ?」

男「昼間の時といい、どうかしてるぜ。……さて、そこで気が効く俺が良いモンを出してやろうか」

転校生「え? ……って、何そのグチャグチャの黒いやつ」

男「男の娘が作ってきたスイートポテト」

男(らしいもの。少なくとも俺が過去に見てきたソレとは色形、全てが似ても似つかない。全てというのは味も、なわけで)

転校生「うそ。日本のスイートポテトってこんな風なの……イギリスにあるのと全然違う」

転校生「ね、ねぇ? 男の娘くんが作ってくれてるお菓子って、その……実はしっぱ」

男「いやぁーこういう時の糖分って助かるよな、ほんと。摘まみながら勉強しようか!」

転校生「な、なんかあんた今誤魔化さなかった……!?」

男(良い感じで場の空気が解れ、落ち着いてきたところで、ようやく転校生の勉強が始まった。本当にようやくな)

男(机には彼女のノートと参考書、ペンケース。そして男の娘のスイートポテト)

男「なぁ、お前の持ってるそのペン」

転校生「ペン? ……あっ///」

男「偶然だなぁ、俺と同じやつじゃないか」

転校生「そそそ、そうね!? そ、そうかも…」

男「でも、どうしていつも使ってる方を使わないんだ?」

転校生「きっ、気分転換に決まってるじゃない! 別に深い意味なんてないわよっ!?」

転校生「[ピーーーーー]……///」 ピク、ピク

男「え?何だって?」

転校生「何でも、ないから……一々気にしないで……」

転校生「そ、それより私に色々教えてくれるって約束でしょ。正しい日本語の使い方から何でもって!」

男「ああ、それはそうだけど。ぶっちゃけ何をどう教えてやっていいのか分からないというか…困るな…」

転校生「困るのはこっちの方よ。先生は男でしょ。しっかり教えてくれなきゃ」

男(……おや)

転校生「……ちょっと私の話聞いてるの? 何ニヤけてんのよ、気持ち悪い」

男「いやっ、お前が俺のことを名前で呼ぶのって珍しいなって…!」

転校生「っ!! ///」

男「ん? どうした転校生、急に?」

男(突然、転校生がノートへ走らせていたペンを放り投げて、机に突っ伏したのだ)

転校生「[ピーーーーーーーーー]…[ピーーーーーーーーー]……!」

転校生「[ピーーーーーーーーーガーーーーーーーーーーーーーーーー]///」

男「おい、大丈夫か。もしかして腹でも痛くなったのか? まだ男の娘の菓子も食ってないのに」

転校生「ああああ、あんたって!!」ガバァ

男(耳まで真っ赤に染まった転校生が面を上げれば、大きな声をあげた。 転校生よ、俺はあくまでお前にとって難聴で鈍感な男を演じさせてもらう)

転校生「……ずるいわ、ムカつくぐらい///」

男「はぁ? ほら、勉強はどうした。意味がわからないところがあれば遠慮なく言え。教えてやるから」

転校生「[ピーーー]、[ピーー]……うぅー///」

男(やきもきしながら恥じらっているな、転校生。もはや俺の手の上で踊らされているのに気づかないまま)

男(これが、正真正銘俺にとって最後の戦いとなる。出来レースのようなものだが、形だけの勝負だ。いわゆるイベント戦という名の)

男(ならば、素晴らしい感動の甘々なラストを迎えるために最初からフルスロットで振り切ろう。熱も冷め止まぬうちに、である)

転校生「……それ、美味しいの? さっきから食べてるけど」

男「美味いよ? まさに素材の味が生きたままって感じの味がする」

転校生「ちょっと待って。じゃがいもの味がそのままって何よ…それ本当にスイートポテト?」

転校生「あっ、最初に言っておくけれど! またイギリスから来たからお前は舌が変だとかバカにしないでよ。結構傷つくんだから」

男「ありゃ軽いジョークみたいなもんだろうが。真に受けるか? フツー」

転校生「知らないわよ、そんなの!! ……んー」ジー

男「何だよ。結局これ気になってるんじゃねーか」

転校生「き、気にならないわけないじゃない……だってそれの見た目、明らかに私の知ってるお菓子と違うんだもの」

男「じゃあ食えば」

転校生「い、いいわよぉっ!! だ、だって、男の娘くんの作ってくる物って……悪いけど、私の口に合わなくて……」

男「ふーん。そうかそうか、まぁ別にいいんじゃないか? ただ、それをあいつが知ったら悲しむだろうなぁー」

転校生「うっ……一口だけ、食べる」

男(と、誰が見ても嫌々にした表情でスイートポテトを一つ手にとった転校生は、それをちょっぴり齧ったところで、フリーズを起こす。ウィルスでも混入されているのだろうか)

男「感想は?」

転校生「ひゃいこう(最高)……っ」 うるうる

男「ところでだけど、スイートポテトで思い出した。外人って一番苦戦するのはカタカナだって聞いたことあるんだが」

転校生「私は外人じゃないわよ。まぁ、長くいたからほとんど同じみたいなものだけど…」

転校生「確かにあんたの言う通りカタカナって覚えづらいわ。何度読み書きしても慣れないっていうか」

男「ひらがなとか漢字は問題なかったのか? そっちの方が苦労させられそうだけど」

転校生「んー……苦労はしたけれど、必死に書いて読んで、意味を覚えようとしてたら自然に」

転校生「毎日何度も同じ言葉書いたりして覚えたのよ。頑張ったんだから!」ニコニコ

男「……」ポン

転校生「  」ボンッ

男(胸を張って誇らしげにしている彼女がとても可愛らしくて、つい手が頭へ伸びてしまった)

男(そのまま撫でてやれば、転校生は再び茹でダコの如く染まり、限界突破の小爆発を起こしたのである)

転校生「ち、ちょちょちょちょぉっ……!?///」

男「え?」

転校生「こ、ここっ、この手は何よぉ!!?///」

男「ああ……何だろうな……偉いなって?」

転校生「っ~~~……///」

男(しばらく転校生の頭、髪の肌さわりを掌で存分に堪能していたら、その手の上に彼女の小さな手が重なった。否、重ねてきた)

転校生「[ピーーーーーーーーー]…」

男「どうした?」

転校生「どうしたはこっちの台詞よ…い、いつまでこうしてるつもり…」

男「俺が飽きるまでって言ったら怒ります? 怒るだろうなぁ、悪い。 続きしようぜ」パッ

転校生「あっ……」

男(そう残念そうにしてくれるな。転校生さえ良ければ、これからだってずっと撫でてやる。今はそれだけが目的ではないだろう。俺もお前も)

男「で、カタカナだったっけな。そうだなぁ、海外から入ってきた言葉を日本流に発音したのがカタカナだろ。英単語に直してやれば」

転校生「それでも中々難しいのよ。なんていうか、イメージできないというか……何て伝えたらいいのかしら」

男「カタカナに苦戦するなら、レストランとかのメニューも上手く読めないんだろうな」

転校生「そう! それなのよ! だから前に男に町の案内してって頼んだでしょ? あの時、本当は外食に付き合ってもらおうかと思って」

転校生「……」

男「ん?」

転校生「…へへへ、変態に町の案内してって頼んだでしょ!?///」

男「わざわざ言い直す必要があるほどなのか!?」

転校生「もうっ、あんたの名前『変態』に変えてきなさいよぉー!!」

男「役所が受け付けないと思うけどな……っ!」

男「もしかしてお前、さっき俺に言われたから照れてるのか? 人の名前呼ぶぐらいなんだっていうんだよ」

転校生「[ピーーーーーーー]……別に、恥ずかしがってなんか」

転校生「ただ、あんたを呼ぶときはやっぱり変態が一番相応しいから…!」

男「悪いが俺はさほど真の変態の域まで達しちゃいない。散々言うから乗ってやったが、俺はノーマルだ!」

転校生「自分から普通って言うのが一番それっぽいのよ。変態」

男「勘弁してくれよな……切りがない、話を戻す」

男「カタカナは一旦放って置けばいいんじゃないか。どうせ日常的に耳にしたり、目にする機会は山ほどある」

転校生「だから、慣れるって? 無茶よ」

男「無茶は無理で通す! なに、大丈夫だろうさ。お前は覚えが早いらしいし、自然に言葉を吸収してく筈だ」

転校生「そうは言うけど、あんた自分のことじゃないからって適当に言ってない?」

男「当たり前、しょせん他人事……だけど、せっかく俺がわざわざお前の先生してやってるんだ。わからなければ俺にすぐ訊け」

男「自然に覚えられていたってぐらい何度でも教えてやるし、付き合ってやる。それで良いだろ」

転校生「あ……ありがと……///」

男(今の言葉の意味を彼女がどう捉えるか、なんて分かりきったこと。そろそろ詰めに取り掛かっていこう)

男(何度も体を捩らせて、転校生の落ち着きは失われた。こちらを直視できずにいた、いたが)

転校生「ねぇ……さっきのって、あの……///」

男「え?」

転校生「私とずっと一緒[ピーーーーーーーーーー]……///」

男(難聴よ、邪魔をするな。難聴よ、どこかへ消え去ってしまえ。……もし、予想が正しければ)

男(この難聴フィルターを取り去れるのはこの俺である。転校生を攻略するという形で)

男(だが、もし成功したとしても難聴スキルによって隠された台詞を聴き取れるようになるのはこの俺ではない。それだけがもどかしかった)

男(それだけ、転校生を愛しく思えていたのだ)

男「……何て言ったんだ?」

転校生「……」

男(訊き返されるのは彼女も慣れてしまったに違いない。それで毎度ながら誤魔化しの台詞を言わされるのも面倒だろう。だが、彼女は、言い続けてくれた)

男(今、それが無い。 転校生は大きな溜息をして、どこか意を決した表情でペンを持ち直し、俺の言葉を無視して再びノートを睨み始めた)

男「転校生?」

転校生「……やっと約束叶ったのよね、ずっと前にした約束が」

転校生「最初はあんたのせいでダメになっちゃったし、その次も何だかんだで」

男「俺だけのせいにするのかよ。お前に非は無いのか?」

転校生「さぁ。どう思ってくれてたっていいわ。私も勝手にあんたのせいだって思ってるんだし…」

転校生「…たった、私の勉強に付き合ってってことだけなのに、これだけ長引いちゃったのってどうしてかしら。変だわ」クス

男「わ、悪かったよ。ていうか、さっきからお前何書いてるんだ。参考書の文章写したって意味ないだろ?」

転校生「ううん、写してるんじゃないの。私が覚えたことで、私が書けること書いてるだけ……」

転校生「……あぁ~~~!! もうっ!!」

男「は、えっ!?」

男(もどかしそうに足をジタバタとさせたと思えば、ペンを止め、文章を書き込んでいたページをノートから切り離して)

男(くしゃくしゃにして丸め込んでしまった)

転校生「こんなの自分で書いてて訳分からないし、恥ずかしいのよっ!!///」

男「お、おい……なにが……」

転校生「っ!」

男(恥じらいながらも俺を睨むようにして一眼すれば、ノートを手に取ってなにかを殴り書く転校生である)

男(たった数秒の出来事でも、その迫力によって感覚は狂う。たったの4文字を書くだけに)

男(ペンが机に放り投げられた、と同時に俺の目の前へ転校生がノートを叩き付けた。見開かれたページには)

転校生「んっ!!」バンッ

男「……お、おう?」

転校生「…んーっ!!///」バンッバンッ

男「ついには言葉まで喋れなくなっちまったのか…」

転校生「違うっ!! ……これ、読んで」

男「……すきです」

転校生「っ……///」

男「おいおい、恥ずかしい台詞 俺に喋らせて何考えてんだ?」

転校生「こ、このぉ~[ピーーーーー]っ……ちょっと貸して!!」

男(ノートを取り上げると、転校生はそのページへ言葉を付け足しだした。 さすがにいじわるだっただろうか)

転校生「書けたわ……もう一回、読んで。声に出さなくていいから///」

男「わたしは男のことがすきです。おつきあいしてください…」

転校生「わあぁぁ~~~!? わあぁぁ~~~っ!?///」ボカボカ

ここまで。明日も続きいける

男「いてっ、痛い!痛いって! やっぱり暴力女で違いねーだろ!」

転校生「読むなって言ってるのに読んだからでしょ!? ああ、もうっ しね!!///」ボカボカ

男「わかったよ! もう読まないから、それでいいんだろ?」

転校生「そ、そういう問題じゃなくて……[ピーーーーーーー]」

男・転校生「……」

男「つきあってください…」

転校生「きゃあああぁぁぁ~~~!!?///」

男(子どものようにガムシャラに両手を振り回して転校生は取り乱す。どう調理してやっても美味しい。それが転校生)

男(さて、意地悪もここまでにしておこう。前座は十分である。ここからは)

男「そんなに騒ぐな。お前のせいで部室が滅茶苦茶だぞ」

転校生「…はぁはぁ、あー……せっかく雰囲気[ピーーーーーーーー]……!」

男「ん? それで話は戻すけれど、転校生。これって」

転校生「……もう、わかってくれたわよね。私の気持ち///」

転校生「あっ! も、もしかして文法間違ってる……?」

男「いや、何も間違ってないよ」

男(間違っていない。だが、鈍感的にはどう反応するのが正解か。その行動を今取る必要があるのか)

男「一つ聞いておきたいんだが、これは例文に俺の名前を単に当てはめたもので、それが正しいのか俺に見て貰おうという…」

転校生「私の[ピーーーーー]って言ったわ……何でもない、本物の」

転校生「勉強は一旦止めて、もう一つの約束…昨日の返事が聞きたいの、あんたから」

男「欲しがり屋さんだなぁ、転校生」

転校生「ごめん、今だけは茶化さないで真面目に聞いて」

男「ああ、仕方がない。約束したもんな、わかってる…」

転校生「…[ピーーーーー]///」

転校生「あんたは……お…男は……わたしのこと、まだ」

男「思っていた」

転校生「え……えぇ?」

男「友達としてお前のことを考えていた。いた、だ」

男「今はお前をそんな風に思えなくなっちまった。昨日から、いいや、その前からかもしれない」

男(鈍感よ、さようなら。 そしてようこそ、我が世の真なる春よ)

男「俺は、転校生! お前のことがry 転校生「ま、待ってぇ!!」

男(告白キャンセル。予想だにしなかった転校生の行動だった。彼女は俺の口を全力で塞ぎ、恥じらいのあまり生れたてな小鹿の如く、震えている)

男「…………もが」

転校生「待って……ちょっと、待って……!」

男「ふー……ペロリ」

転校生「っ!? にひゃあぁあああぁぁ~~~!!?」ドタッ

男(思わず彼女の掌を舐めたのは一体何を考えてのことか。決まっている。俺が言うのは許されないが、じれったいのだ)

転校生「なななっ何すんのよ、この変態バカぁー!!」

男「何をするはこっちの台詞だろうが。今のはどういうつもりだ?」

転校生「どうって……ああ、あの……こ、心の準備……[ピーーーー]……///」

男「俺は転校生のことが大好きだ。大好きだ! 大好きだ!!」

転校生「ひゃうーっ!!?///」

男「大好きだ、転校生!! お前が好きで堪らない!!」

男「ずっと、ずっとこれが言いたかった! だから何度でも俺の気が済むまで言い続けてやる、俺はお前が…!」

男「……いや、その前に尻餅つかせたままじゃ俺の恰好もつかん。ほら、立てよ。手貸してやるから」

転校生「っー……///」

男(手を伸ばせば、転校生は黙ってそれを取って立ち上がる。それは良いものの、腰に力が入らないのか上手く立ち上がれず)

転校生「あわわわわ……!」ガクガク

男「床に置いたままの方が良かったかもしれない。…その必要はないか」

転校生「え!?」

男(そのまま片手を使って彼女の腰へ手を回せば、繋いだ汗に塗れた手が解かれる。だから、両手で転校生を、俺は抱きしめることができたのである)

転校生「あっ……あ……///」

男「大好きだ、転校生。そしてさっきの奴、言い直させて欲しい。笑わないで真面目に聞いてくれよな」

転校生「! ……///」コクコクッ

男「俺は転校生のことが好きです。お付き合いしてください」

男「……こんな変態で解消無しのどうしようもないので良ければな、返事をくれ」

転校生「あ、あ……ぁ///」

転校生「……嫌いなやつに……キス、するわけないじゃない」

男「は? ……おうふっ―――――」

男(ここで二度目のキスがあった。またも彼女の方からという点は、男としてこちらが情けなかったかもしれない)

男(どうでもいい。俺は今この瞬間、日本一幸せ者であった)

男(長い、長い幸せだったのかもしれない。だが、もっと、もっと欲しい。これからずっと。彼女と、もっと)

男(ただ何も考えもせず、頭の中が空っぽになってしまった。唇と唇が触れ合うだけが何だという。互いの菌と菌の交換だ)

男(そんな、くだらなく斜に構えてきた自分が音を立てて崩れた気がする)

転校生「ふぁ……っん…はぅ……んー……」

男(転校生、転校生。さぁ、五感で感じてみるが良い。お前の目の前にいるのは美少女だ。そう思えば、思うほど)

転校生「い、痛い! 痛いわよ!」

男「えっ!? あ、あぁー……悪い、つい腕に余計な力が」

転校生「最低。もう、せっかく[ピーーーーー]になってたのに…」

転校生「……あの……今のが、返事だから…///」

男「知ってるか。返事ってのは言葉にしなくちゃ相手に伝わらないもんだ」

転校生「つ、伝わらなかったの……?」

男「……死ぬほど伝わったと思うぞ。俺じゃなきゃ気づけなかっただろうな」

転校生「ウソよ。あんた何しても気づかない変態鈍感男なんだから、ふふっ」

男「じゃあ気づかなかったことにしていいよな。その方がお前の中の俺にハマってるんだろ」

転校生「……じゃあ、気づいてくれるまで、何回でもしてあげるわよ…///」

男(俺たちはその後も、誰かに見られれば鬱陶しく感じるほどに抱きしめ合って、キスをした)

男(まさか自分にこのような日が訪れるとは思いもしなかった。神には感謝しきれ……待て、本能が訴えている)

男(今ここで神へこれ以上ないほど自分が幸福の最中にあると思わせるべきではない。もっと貪欲になれ。俺の目的を思い出すのだ)

男(……今だけは、忘れても罰は当たらないでほしい。転校生だけを感じさせてくれ)

転校生「ずっと、あんたのこと……好きだったんだから……///」

転校生「でも、あんたが気づいてくれなかったから…それにどんどん離れていっちゃいそうだったから、怖かったの…」

男「今はどうなんだ。まだ不安なままか?」

転校生「ふふっ、やっぱりあんたって鈍感よね……男。 えへへっ」

男「て、転校生……ごくりっ」

転校生「ま、待ってよ……さすがに誰も来なくても、いいいっ、今はっ……///」

男「自分でよくわかってるじゃねーか! そうだ、ここに誰も来ない! つまりは今からあんなことやこんなことをしようとぉー…!」

男(間が悪いとはこういうのを指す言葉だと思う。突然、部室のドアを誰かが動かす音がした)

男(この状況を見られては非常にまずい。俺たちは揃って大慌てしながら、ロッカーの中へ無理矢理隠れたのである)

転校生(あああ…ねぇ、誰も来ないんじゃなかったの!?)

男(俺が知るかよっ! ていうか、冷静に考えてみれば二人で堂々としてりゃ良かったよな……)

転校生(今さらもう遅いじゃない! うっ、鍵開けて入ってきちゃってる……今二人で外に出たら、ううっ)

男(間違いなく色々ヤバい展開になるのは簡単に想像できるわな。出て行くまでじっとしてろよ)

転校生(あ、あんたもよ……って! ちょっとどこ触ってんのよ!?///)

男(仕方がないだろ!! ただでさえ狭いのに二人で入ってんだ、少し我慢してろ……ぐへへ)

転校生(絶対故意で触ってるでしょ!? ばっ、ばか…!)

先生「ん……誰か、いるの?」

男(先生……さすがに無断で部室の鍵を借りてきたのはまずかったかなぁー?)

転校生(あんたが原因じゃないのよ!! ひっ……こ、こっちに来るわ……)

先生「音がしたような気がするんだけど……んー?」

男(デジャブだろうか、つい最近も似たような状況が)

転校生(はぁ? ……だからまた触ってる! もうっ///)

男(……触ったらダメか?)

転校生(だ、ダメに決まって……う、ううん……ダメ、じゃない)

先生「まぁ……どうでもいっか別に。にしても誰が鍵勝手に持って行ったのかなぁー?」

先生「鍵、鍵……おっ、こんなところに。犯人誰よー? ていうか、鍵閉まってたのにどうやって外に……窓か。きっちり開いてるし」

先生「こういう悪ふざけに男くんだって相場は決まってるのよねぇ。何考えてるのかなぁ、あの子」

男(疑うどころか真っ先に決めつけるとは酷い話だろう。まさかの大当たりだが)

男(先生は鍵を回収すると、窓を閉めて、面倒臭そうに欠伸しながら部室を後にしたのである。数秒後、俺と転校生がロッカーから飛び出すわけだ)

男・転校生「はぁ~~~……はぁ」

転校生「何はともあれ、無事に帰ってくれて良かったわね。誰かさんのお陰で無駄に緊張させられた。無駄に!」

男「結構楽しめただろ。良い刺激だ」

転校生「ばっっっかじゃないの!? ……///」

男「どうした、急にそんな顔しだして。まぁ、ロッカーの中結構暑かったからな」

転校生「ばか、違うわよ……その、さっきの…えっと…///」

男「さっきの?」

転校生「あ、あんたが私の体に…好きに、触ってもいいかって…」

転校生「べ、べべべ! べつに、さ、触れば!? でも時間と場所を考えてよね!?///」

男(とてつもないことを言い出すではないか)

男「お前はもしかしなくても変態の素質があるんじゃないかな」

転校生「どうしてそうなるのよぉー!?」

男「いや……だけど、そんなことどうして一々答えるんだ? 恥ずかしい」

転校生「そ、そうよ! 今すっごく恥ずかしいんだからねっ!?///」

転校生「でも……男のことだから、言わなきゃわからないかと思って……鈍いし!」

男「お前……あのなぁ、言っておくが」

転校生「わたしたち……えっと、あ、あの……もう、友達じゃないし」

転校生「こ、恋人同士になっちゃったから……だから……うぅ///」

男(胸が熱いぞ、異常に高まる、滾る。 紹介しよう、彼女が俺の彼女である。可愛いくてどうしようもない)

男(そうだ、俺はついに美少女を手に入れた。転校生という名の自慢の美少女を。誇って良い)

男「わかった……今日はもう日も暮れそうだし、帰ろうぜ」

転校生「そそ、そうねっ!? う、うん! 帰った方がいいかも……あー 窓から」

転校生「……ほんとに良かった。私も大好きよ、ずっと」

男「…え? 何だって?」

男(転校生、完全攻略完了。……まさか、後にあって後悔することになるのだと誰が思えただろう?)

ここまで。続きは金曜日に

急変更。土曜日に続きちくしょー

男(その日から当たり前になった生活は一転する。良くいえば、転校生中心の個別ルートへ。つまり、毎日が彼女との日々であった)

男(悪くいえば、他の美少女たちとのイベントが消えた。日常での絡みそのものの機会が減ってゆき、会えばそれはもう友人として。攻略可が彼女たち全員から外れたのだ)

男(……とはいうものの、俺の周りだけはやはり変わりなく明るい。彼女がいて、多種多様な美少女たちの知り合いがいて。充実に充実が重なって行く)

男(この週での俺は もうハーレム主人公を達成できない。だが、こうした苦労の連続が最終的に成功を生む、と、思いたい)

男(とにかく今は転校生という存在が前以上に近くなって、それだけで良かった)

男(と、思いたい)

転校生「ん……」

男「言いたいことがあるならさっさと言え。ハッキリと」

転校生「な、何よ いきなり!?」

男「だって、お前さっきからずーっと隣でウズウズしてるぞ。言い出すタイミングでも計ってただろ」

男「何だよ。俺の社会の窓でも開いてるのか? それとも嫌で早く帰りたくて仕方がない?」

転校生「どっちでもない!! ……せっかくの男との初デート、嫌なわけないじゃない」

転校生「ず、ずっと楽しみにしてたんだから…待ち切れなかったし…っ」

男「じゃあ何だっていうんだよ。遠慮なく言ってみろ、彼氏として何でも聞いてやらんでもないぞ」

転校生「……手、つなぎたい///」ス

転校生「せ、せっかくのデート、だし……あの」

転校生「こここ、恋人なら、手繋いでも……い、いいじゃないの!!///」

男「良いんじゃないか?」

転校生「え、あっ……ちょ、まっ……!///」

男「へへっ……ちょっと……おい、お前の手 汗でビショ濡れじゃねーか!」

転校生「待ってって言おうとしてたのに! だからまだ言いたくなかったのよっ、このバカぁー!!」

転校生「うっ、最低よぉー……! ばか、ばかばかばか、アホ、ばかぁ!」

男「何度言われんでも自覚はある。手汗ぐらい気にしねーよ、少し驚いてみただけだ」

転校生「気にしないなら一々怖い反応しないでよ!」

男「毎回想像通りのリアクションが返ってきて面白いからな。今回もだった」

男「悪かったよ。少しふざけてみただけだって……手、もう一度しっかり繋ぎ直そう」

男「恋人同士なら手を繋いだって良いんだろ、転校生」

転校生「わわわ……うぅ~~~…///」

転校生「……ばか、大ばかぁ…!///」ギュ

男「バカと一緒だといつまでも飽きないだろ? 最高だな」

転校生「私たち、もう今の関係になって もう1週間経っちゃってるのよね」

男「すぐに俺に嫌気が刺して別れるとでも思ってたか?」

転校生「むぅ、どうしていつもそうやって意地悪言うのよ……そんなこと思って好きになるわけないじゃない」

転校生「早いなって思ってただけ。あんたはそういう風に感じない?」

男「俺って鈍感じゃん?」

転校生「それ全然言い訳になってないわよ……」

男「不思議とな、あんまり俺たちが付き合っているって感覚にならないというか」

男「言っておくが悪い意味でじゃないからな!! 前からずっとお前とはよく一緒にいたから、いたのが当然じゃないかってほど」

男「んー、自分で何言ってるか意味不明だ…どう伝えていいのか―――」

男(俺の言葉を転校生の唇が塞ぐ。手持ち沙汰になっても、いつものように彼女の頬を撫でてやれば良いとすぐ気づいた)

男「……ここだと人目があるんだが」

転校生「ま…前だったら、こんな風にキスもできなかったわ……っ///」

転校生「それでも、変わらないって感じる? 前と同じだって。私も、あんたも…」

男「もう一回すれば考えが変わるかもしれないなっ…さぁ、転校生!!」

転校生「あほぉっ!! や、やらないっ!///」

男(そう、俺の日常は微かでも変化していた。あの頃から比べれば、一転、二転、考えられない。夢でも永遠に覚めないままが良い)

男(毎日こうして転校生と一緒に過ごすのだ。くだらない会話をしたり、共に何かへ夢中になってはしゃいでみたり、触り合ったり、抱きしめ合ったり)

男(家に初めて猫が来たときを思い出す。あの時も、俺の日常の何かが変わったような気がする。……猫と転校生が同じとは言っていないぞ)

男(かつての自分はこうした甘ったるい事とは疎遠であった。だが、今は違う。俺はこうして幸せを……しあわせを)

男([ピーーーーーーーーーーーーーーーー]!)

男(もう、全てに満足ではないか。他に俺は何を求めている? 何がしたい? これ以上楽しいと思えることなどあるか? ないない、転校生最高)

男(ゆっくり、今を楽しめば良い。きっと俺は満たされている。神に感謝しなければ、心の底から…アレ、と…あの)

男([ピーーーーーーーーーーーーーーー]! [ピーーーーーーーーガーーーーーーーーーーーーーーー]!)

先輩「えっ、やっぱし男くんと転校生ちゃんデキちゃってたの~? おめでとっ」パチパチパチ

転校生「や、やっぱし?」

不良女「何となくあたしらも気づいてたんだよ。怪しいってさぁー…」

生徒会長「……ううっ! うぅーっ!!」パチ、パチ

男「えっ……そんな、あっさり……」

不良女「はぁ? 何だよ、祝ってやってんのにその反応!」

男「だ、だって……!」

生徒会長「だっ、だって何だと言うんだぁ!! うぇっ、っぐー……ぐすっ!」

男(生徒会長の反応は予想していた通りだとして、先輩と不良女がやけにアッサリしていたことに驚きを隠せない)

男(いや、落ち着くのだ。彼女たちは既に俺たちの関係を怪しんでいた。だから、事実の告白を受け止める覚悟を持つことができたのかもしれない)

男(この世界は俺に都合が良い。都合が良いが、彼女たちは単なるゲームのキャラじゃない。感情もある。だから、転校生と俺が関係を持てば、相応の反応が返ってくる)

男(……よく見てみろ。どちらの表情もどこか、影が見える。声だって無理して張っているような)

先輩「…おめでとー。 …あ、でも部活動中は二人でイチャイチャ禁止! 破ったらわたしも混ざるよっ!! ……も、もう、生徒会ちゃんは泣き虫だなぁ~!つんっ」つん

生徒会長「ううっ!!」ブンブン

不良女「いいねそれ。つーか、転校生泣かせたらあたしがあんたのこと許さねーからな? 覚悟しとけよ…マジで…」

男「あ、ああ……うん」

男(美少女たちの好意に気づいていながら、である。 俺はとても残酷なことをしている自覚もある)

男(だが、このまま隠し通したって俺にも、転校生にも、彼女たちにとっても良くない。だからいつかは言わなければならなかった。酷でも、ケジメは着けなければ)

男(後輩、オカルト研、男の娘、先生。それ以外にもクラス中にも、転校生との関係が知れ渡るまで時間はかからなかった。反応は様々。戸惑ったり、祝福してくれたり、からかわれたり)

男(始めは胸が苦しくて堪らなかった。罪悪感が一気に体へ圧し掛かり、何を言われるか一々ビクビクだ)

男(俺が今まで彼女たちを騙し通してきた、重い。 が、吹っ切れてしまえば気は楽になってゆく。 むしろ、もう無理に立ち振舞う必要はなくなってラッキー、と)

男(こうして着々と俺の[ピーーーーーーーーーーーーーーーガーーーーーーーーーーー]!)

妹「お兄ちゃん、突然ですが真面目な話があります」

妹「ううん、聞かせてほしいことがあります…!!」

男「代わりに俺の誕生から現在へ至るノンフィクション感動秘話はどうだろう?」

妹「お兄ちゃんって誰かと付き合ってやるよね?」

男「無視……あぁ、ついに我が妹の耳まで届くとは。侮れんな、人の繋がりって奴は」

妹「……マジ? マジで付き合ってるの!? えぇ!?」

男「そこまで驚くことか? だって俺だぞ。俺ならいずれそうなると誰もが想像できた筈」

妹「ありえないんですけど……えぇー……」

妹「[ピーーーーー]……」

男「どうした?」

妹「う、ううんっ! 別に! ていうか彼女今度紹介してよ、家に連れてきて」

妹「早くその彼女さんにお兄ちゃんの非常識さ諸々教えて、逃げてもらわないとね!」

男「ふん、そいつは俺の全部丸々気に入って、好きになってくれたんだ。今さら必要ないね!」

妹「必要だよ!… だって、お…おにーちゃん…っぐ…ぜーんぜん、ダメダメなんだもん…あぅっ…は、早くおにいちゃんみたいな変なのと別れなきゃ…っ…」

妹「[ピーーーーーー]…う、うぅぅ~…っ!」ポロポロ

幼馴染「妹ちゃん、今日はすごい暗かったけど。何かあったの?」

男「何かあったのかもな」

幼馴染「ご飯食べてすぐ部屋に行っちゃったし……少し心配だね」

幼馴染「男くんが原因なら早めに謝った方がいいと思うよ? いつも言ってるけど」

男「今回は……俺が謝ることじゃないと思ってる。あいつ自身の問題じゃないかって」

幼馴染「そっか。じゃあ明日までは様子見だね」

男「ん、冷たいとか、勝手だとか言わないのか?」

幼馴染「もう[ピーーーーーーーーーーーーーーーーー]」

男「え、何だって……」

幼馴染「何でもない。 それから男くん、おめでとう。やっと好きな人が見つかったんだね」

幼馴染「本当に、おめでとう。それしか言葉見つからないよ、ごめんね…[ピーーーー]」

男「し、知ってたのか。お前も……!?」

幼馴染「学校中でもう噂だよ? 知らない人なんていないぐらいかも? ふふっ」

幼馴染「相手は転校生ちゃんでしょ? 良いと思うよー、結構お似合いだし。[ピーーーーーー]」

男(同時に、幼馴染は知ってしまったのだろうか。俺が彼女へ誓った約束の裏切りを)

男(俺が言った意味と、彼女がその言葉を捉えた意味は異なる。だが、俺の事情など知ったことではない。話すつもりもない。だから、俺は幼馴染を裏切った。間違いなかった)

男(真実を伝えてケジメはつける。だが、幼馴染に対してはどうしても踏ん切りが付かずでいたのである)

男(知って、彼女はこれからどうなるのか。これまでのように家に来て、俺たち兄妹へ世話を焼いてくれるか。一緒に朝、登校してくれるか)

男「というのは俺のワガママで、単なる甘えか。 幼馴染、聞いてくれ」

男「お前の知った通りだよ、幼馴染。 俺は転校生と……理屈じゃない」

男「好きになった。これからもあいつと長く付き合っていくつもりでいる。向こうが冷めなきゃ…」

幼馴染「大丈夫だよ、男くんは優しいから。 あたしも応援してるよ」

幼馴染「さてさて、洗い物済ませちゃうね。お風呂沸いてるし、先に入ったら?」

男「何も言わないのか」

幼馴染「ん、もう言ったじゃない。おめでとう、応援するよって。これだけじゃ足りない? ダメ?」

幼馴染「……[ピーーーーーーーーーー]」

男「え?」

幼馴染「これからも……あたし、ここに来ていい? 男くんと妹ちゃんと一緒にいていい…?」

男「……ふむ、ダメって言う奴がどこにいるかな。お前がいないと たぶん飢え死になるぜ、俺ら」

幼馴染「そう? そっか……じゃあ仕方ないよね……仕方ないから、くるよ」

男(幼馴染にとってこの家はもう居心地悪い場所へなってしまったのだろうか。俺にはよく分からない)

男(あまり他へ心配をかけるのはそろそろ止すべきだろうか? 俺は既に[ピーーーーー]ではなくなった。転校生という彼女を持ってしまった、結末を迎えた主人公である)

男(これからは美少女相手に悪戦苦闘する毎日を過ごすことも、難聴に困らせられる心配も要らない。転校生ただ一人を見ていればそれで良いのだ)

男(事実、それがどれだけ嬉しいことか。あの日から俺の頭の中には彼女しかない。夢中でしようがなくて、いやぁ、困ってしまうぞ)

男(この世界ですべきことは彼女を幸せにするだけだ。それこそ俺の。俺の[ピーーーーガーーーーーーーー]!)

男(というか、俺は今まで何のために苦労してきた。ん? もうどうでもいいのか?)

男(本当に、何だったっけ? [ピーーーーーーーーーーーーーー]、[ピーーーーーー]!)

転校生「男、聞いてる? もしもし? もしもーし?」

男「ああ、全然聞いてなかったかもしれん」

転校生「豆腐の角に頭ぶつけてしねっ!」

転校生「むー…これ何て読むのか教えてって言ったの。彼氏兼先生なんだからしっかりしてよね?」

男「ドラえもん」

転校生「何それ? 日本の昔の偉人?」

男「逆だ、逆! 未来から来たロボット! ……ま、まさか知らない? 冗談だろ?」

転校生「えぇ……?」

男「いやー、お前といると本当に飽きないかもしれないな。色々と教え甲斐もある! ある意味で」

転校生「なんかとってもバカにされてるように聞こえるんだけど…」

転校生「あっ! ねぇねぇ、それよりあんたの誕生日が知りたいわ!」

男「誕生日? 今年のはもう終わってるぞ。来年の6月」

転校生「6月、6月のいつ?」

男「どうしてそんなにウキウキしてんだお前……怖い」

転校生「怖くないわよ!! ただ今まで聞いたことなかったから気になっただけ。それで?」

男「22日だけど……何だよ、もしかして今から誕生日祝いのプレゼントでも考えてくれるってか」

転校生「うっ……///」

転校生「べ、別にそんなんじゃないわよ!? さすがに気が早すぎっていうか…」

男「お前は? ついでに訊いておいてやるよ、ありがたく思え」

転校生「私も来年。1月2日、年が明けてすぐね」

男「親としてはお年玉で誤魔化せるから都合良さそうだな」

男「…わかった。その日には何かくれてやるし、何処か連れて行ってやるよ」

転校生「うん! あっ、でも変な所だけは嫌よ?」

男「帰りにホテルでも連れて行ってやろうかと考えたんだがー」

転校生「……変態」

男「べ、別にいいだろ、恋人同士なんだし!! 何か問題あるか!?」

転校生「あ、あるに決まってるじゃないのっ! その、そういうのは…あー……うー……」

転校生「……う~っ///」

男「おやおやおやぁー? 何変な想像しちゃってるかな、えぇー? 転校生ちゃーん?」

転校生「こ、このっ…ああ、アホ、バカ、ド変態しねぇーっ!!!///」ドスンッ

男「アホはどっちだ…本気で殴ることないだろ……うえぇぇー……」

転校生「あんたが悪いの! もう……私、ちょっとトイレ行ってくるわ」

男「あは、トイレで何しようって……ぶっっっ」

転校生「し・ね・っ!! ふん……!」

男「いやぁ 痛い愛情だな、受け止め切れるだろうか。容易い、ていうか俺しか受けられないに違いない」

男(今日は部活動がない。放課後、二人でどこへ行こう? どこだっていい。転校生と一緒ならば、何であろうと楽しめる)

男(生きていて楽しい。これを[ピーーー]と言わずして、何だと言うのか。[ピーーーーーーーー])

男「……どうしてだ、最近頭の中が変にごちゃついている」

男「何か忘れてないか」

男「……何も? 何言ってるんだ俺は」

男(いや、待て。勝手に、何も無かった、だなんて決めつけるな。これまでだって、こうしてふと疑問に思うことから始めてきて、自分一人でどうにかしてきたじゃないか)

男「だから、何をだろうか」

男(机に肘を立てて、重い頭を乗せても何も浮かびはしなかった。忘れてはいけなかったことを、忘れかけている)

男(気がするような、しないような。脳内がモヤで埋め尽くされる。とにかく転校生の顔しか浮かばない)

男(転校生の存在が俺の中で大きくなっていく。彼女を思うだけで[ピーーーーー]。[ピーーー]な気持ちで胸がいっぱいになる。ああ、なんて気分が良いのだろう)

男(……[ピーーー]、[ピーーー]ってさきほどからしつこい。最近、時折 俺の脳内で誰かが俺へ語りかける。だが、それの言葉は一切聴き取れやしない)

男(では、なぜ言葉を言っているとわかるのか。それへ答えるのは難しい。しいていえば感覚だろうか。この感覚とはもうかれこれ長い付き合いになる。体験した者にしか理解できないだろう)

男(何かが俺を説得したがっている、必死に呼び止めている。だから鬱陶しい。誰だ? 俺の[ピーーー]を邪魔しようとする奴は?)

男(俺はずっとこうなりたかった。転校生が欲しかった。それが実現した。 誰にも俺の夢を邪魔させたくはない)

男([ピーーーーーーーーーー]! ええい、何を言われているかさっぱりだがいい加減 消えてくれ。俺の頭の中だ、俺だけのものだ)

男([ピーーーーーーーーーーーーーー]![ピーーーーーーーーーーーー]! [ピーーーーーーーーーーーーー]!)

男「うるせぇ!! ……あっ」

男の娘「男……どうしたの?」

また明日

男(男の娘。以前より積極的に接する頻度が激減したのは言わずとも、である)

男(手作りのお菓子も作ってきてくれない。声をかければ、複雑そうに表情を曇らせる)

男(言うまでもなくあの頃の関係を崩したのは、この俺。 環境に一つの変化も無いわけがなかった)

男「い、いや! 別にー?」

男の娘「そう……急に大きな声出すからビックリしちゃったよ」

男「俺もあれだけデカい声出せるなんて思ってもなかった」

男の娘「あは、新発見だね。そういえば転校生さんは? いないみたいだけど」

男「どこか遠くの国へお花摘みに行ったらしい。5分もあれば帰って来るだろ」

男の娘「……どう? 転校生さんとは上手くやってる? 楽しい?」

男「何だ 藪から棒に? ほう、さては男の娘。嫉妬かぁー? ……なんて」

男の娘「もし[ピーーーーーーーーーーー]」

男「うっ……えー!? 何だってー!? えへぇー!?」

男(聞こえなくても大体想像はつく。後輩からの情報を元に、彼の性格を自分なりに考察すれば)

男(男の娘は、引きづり易いタイプというか。最悪、知らずに嫉妬心が積もりにつもって、どこかで爆発してしまいかねない)

男(と、いうのも俺の勝手なイメージである。実際にそうだとはけして言い切れない。だから、悪く思わないで欲しい)

男(男の娘を傷つけず、彼がいて、転校生がいて、俺がいる そんないつもが返ってきて欲しい。そう思うのは贅沢か。今以上の[ピーーーー]を求めたら罰当たりか)

男(違う。求めて何が悪いというのだ。これまでだってそうしてきた。俺が最大限楽しめるものを掴もうとした)

男(そうして今があるのだ。……おかしい。これがずっと思い描いてきた理想郷?)

男「男の娘、おかしなこと訊いていいかな」

男の娘「えっ!? ど、どうぞ……?」

男「お前……今が楽しいか……」

男の娘「あの、どういう意味かよくわからないんだけど」

男「楽しいか、楽しくないかを訊いただけなんだ。おかしいが、簡単な質問だろう」

男の娘「え、えっと……たの、しいよ。 男がいて、転校生さんもいて、いつも通りの楽しい学校」

男の娘「ずっとこの時間が続けばいいなって。えへへ、うん、やっぱり楽しいよぉ……[ピーーーー]」

男「胸張ってまでそう答えられるか。俺の目をしっかり見たまま、楽しいと言えるか?」

男(俺は、今も前も、楽しいままだ。そして始めから全て独りよがりである)

男(だが、何かが違う。何かが俺の中で引っ掛かっている。途中から、いつだっただろう)

男の娘「ねぇ、授業も始まっちゃうし、そろそろ席に戻っていいかな」

男「待て……俺、お前に何か頼んでなかったっけ」

男(質問に付き合いきれなくなったか、虫の居所が悪くなった男の娘を俺は掴む。逃がすか。俺はお前に……)

男「頼んでた覚えがある。お前に大事なことを。俺はお前に全部話して、それで」

男「それで……毎日の……」

男の娘「忘れた?」

男(そう言った彼の顔が、どこか嬉しそうに見えたのは俺の見間違いだと思う)

男の娘「もしかして忘れた? 何も覚えてない? 覚えてないの?」ガシッ

男「お、おい……!?」

転校生「今度は男の娘くんに変なこと言って怒らせたって感じかしら」

男(割り込むようにここで登場、俺の自慢の転校生。 その瞬間、俺の手を握った男の娘の手が離れたのである)

男「これのどこがそんな風に見えた! 俺はただ、男の娘と話を……おい、どこ行くんだ。まだ何か聞けて」

男の娘「もう必要な[ピーーーーーーーーーーーーーーーーー]。だって今の男には」

男の娘「……頼りになる人、いるもんっ」

男「ちょっと……あぁ、どうしたんだよ。あいつ」

転校生「ねぇ、さっきの男の娘くん。なんか泣いてなかったかしら」

男「えっ」

転校生「やっぱり怒らせてたんじゃないの? もしそうだったら早くあやまってきなさいよ…」

男「怒らせて……な、ないだろ? だって俺は頼んだことを訊こうとしただけで…!」

転校生「頼んだこと? んー…私にはよくわからないけれど、訊き方がいけなかったんじゃないの」

転校生「それか元々そんなこと頼んでなかったとか。あんたの思い違いだったり」

男「いや、そんな筈はないんだ!! 確かによく覚えちゃいない…だけど頭の中になんか、残っていて…」

男「何か、あるんだよ……たぶん」

男「…………いや、絶対だ。絶対 俺は何かを頼んだぞ」

転校生「た、たぶんって言ったり、絶対だったり、どっちなのよ? 意味不明だわ」

男(意味不明のはこちらもである。自分で一体何をしようとしているのか分からない。なぜ突然男の娘へあんな話を振った?)

男(意味があるからに決まっているだろう。思い出せ、思い出せ、思い出せ)

男(俺はまだ、何か、を頭の何処かで覚えているのだ。 それが今の俺にとって邪魔だということも分かる。だが)

男(受け入れなければ。受け入れて、前に進まなければ。 ここが終着点なわけがあるものか)

男「お、俺いま何面白いこと考え始めてんだ? 俺さっきお前に何て言った? あ、あれ……」

転校生「男? ちょっと、大丈夫……具合悪いの?」

男「そ、そんなんじゃない。頭が変なんだ。いつもとか言うなよ……あの、自分の意思と関係なしというか…別の誰かが俺を使って、話したり、考えたり……何ですか、これ」

男(何でもない。俺だけの思考だろう。自分で自分を否定してどうする。[ピーーーーガーーーーーーーー])

男「え? 何だって……」

転校生「え? 何も言ってないけど……具合悪いなら保健室行ってきたら? 無理しないでよ…」

男「無理……ああ、そうしようかな。無理して放課後にお前と遊べなくなったら、嫌だから」

転校生「むぅ…/// わ、私のことはいいから、まず自分の心配しなさいよ。ほら!」

男(差し伸ばされた手を掴み、妙な感覚に包まれた俺の体は立ち上がった。転校生の手は柔らかくて、暖かくて、触れているだけで気持ちがいい)

男(いつもは俺からリードするのに。何だか今の自分がとても情けなくてしようがない)

男(放課後は汚名返上だ。まだお前が行ったことも、体験したこともない、そういうのを楽しもう。嫌がっても俺が無理矢理引っ張ってやろう)

男(きっと、最後には笑って楽しんでくれる。俺は転校生が喜ぶ顔を見たい。それが俺の[ピーーー]である)

転校生「私が連れて行ってあげるから感謝しなさいよ? 途中で倒れられても困るから」

男「……いや、大丈夫だ。お前は授業受けてろよ。代わりに」

男(転校生の手を自ら手離し、俺は一人でぽつんと自分の席で本を読む彼女へ近づいた)

男「ちょっと来いよ……男くん直々の指名だ……」

委員長「……は?」

男「立て……俺はどうやら気分が優れないらしいぞ」

委員長「……そうみたいですね。というか、むしろ いつもと変わりないかも?」

男「風紀委員長なんだろ。ここに今すぐぶっ倒れて泡吹きそうな生徒がいるぜ」

委員長「保険委員に頼んでくれませんか。あいにく本を読んでいますので」

男「誰かさんが前に貸した漫画の続きだけどな。真面目な委員長もとうとう漫画を本と認めたわけか」

委員長「うっ…うるさいですね!! 別に私が何を読もうと自由でしょう!?///」

男「もうすぐ授業が始まるってのに漫画出してるのは、風紀委員として如何ほどなものかぁ~」

委員長「っー! あぁ、わかりましたよっ! 保険室に連れて行けばいいんでしょうっ、連れて行けば!」

男「さすが俺たちの風紀委員長さまって感じだな!」

委員長「全然気分悪そうに見えないじゃない……ほら、早く行きますよ。男のせいで授業に遅れるなんて不本意ですが」

男「まぁまぁ。……ん? 平気だよ、転校生。放課後までちょっと昼寝の時間だ」

転校生「ばか……委員長さんに頼らなくたって、私がいるじゃない…」

男「ふ、ふふ…俺の転校生はめちゃくちゃ可愛いなぁ!! おい、知ってるか? あいつ俺の彼女なんだって!」

「きゃー! きゃー!」

転校生「あぁぁぁ~~~……ばかぁっ!!///」バタバタ

委員長「惚気る元気があるなら自分の席に戻ってくださいっ!!」

男「悪かったって。本当に具合悪いんだよ。見てわからないか? ほら、千鳥足だ」

委員長「知りません。……で、私にあなたを運ばせたのはどうして」

男「何の用があるってか。察しが良い」

男「……委員長、俺は委員長をどうにかしなければならない。そんな気がする」

委員長「ど、どういう意味で……///」

男「真面目な話。俺は君に何か不思議な話をしたことはなかったか。それか、頼みとか」

委員長「はぁ? いえ、別に特には……それがどうしたんです」

男(なぜ俺が委員長を教室から連れ出したのか、意図が自分でも不明である。ただ、気づいた時には行動していた)

男(男の娘に続いて、委員長。きっと彼女らは、何か、を取り戻すキッカケになってくれる。そんな気がしてならない)

男(待て、委員長をどうにかするというのは? どうにか、とは何のことを)

男「あ、何でもいい。最近俺について知ってることを全部話してくれないか? 些細なことでも」

委員長「いきなりそんな……ん、男のことといえば、最近転校生さんと」

男「知ってる」

委員長「じゃあ何を! ……私に漫画を貸してくれてます。つい一昨日も」

男「知ってる……何で漫画を貸した?」

委員長「え? 何でって、あなたが突然私に渡してきたのが始まりでしょう?」

男「俺が突然……」

男(思い出せ。俺はたしかに彼女へ適当に選んだ漫画を貸した。それはどうして。だって、どうしてというのは)

男「委員長は漫画なんて読みたがらないタイプだ。そんな物読むなら参考書を読むようなやつだ、よな?」

委員長「……」

男「そうなんだよな……俺が突然渡してきたってのは、何かその前に興味があるとか、そういう話を俺にしたから?」

委員長「いいえ。本当に突然、何も話していないのに男が渡してきましたよ」

委員長「いきなりすぎてあの時戸惑ったんですから……まぁ、読んでみたら…それなりに面白かったけれど…///」

男(なぜだ。なぜ、俺は委員長へそんなことを。気があったから? いや、確かに彼女も美少女だが、それではあまりにも回りくどい)

男(意味があるから、渡した? 彼女を、利用していたとしたら?)

委員長「あっ、思い出した。結局あの時どうして教えてくれなかったんですか?」

男「え? 何をだ?」

委員長「何をって……あの漫画の1巻、それに挟まってたメモの内容」

男「メモ……」

委員長「このあいだも訊いたじゃないですか。あれ、男が書いたものでしょう?」

委員長「勝手に読んだのは悪いとは今でも思ってますけど、あれだけ荒唐無稽なことを書かれてたら誰だって気になります!」

男「え、訊かれたっけ?」

委員長「はい、しっかり。でもあなたといえば、適当に返してすぐ転校生さんのところに行っちゃったけど…[ピーーーー]」

男「……あー、そんなことがあったような」

男(数週間前、委員長は俺へ約束通り貸した次の日に、漫画を俺へ返しにきた。その時に何か訊かれたのだろう)

男(俺といえば碌に耳も貸さず、教室へやって来た転校生の元へ。委員長にはその後も何となく続きの漫画を貸し続けている)

男(何となくというのは、1巻を返しに来たとき、楽しげに感想を述べる彼女が微笑ましく感じたからだろう。感想のあとだ、メモとやらについて尋ねられたのは)

男「俺って転校生に夢中だと思うか……」

委員長「痛いほど夢中だと思います。周りからすれば!」

委員長「それで? あのメモについて教えてくれないんですか。別に私もそこまでして聞きたいわけじゃないし、いいですけど…」

男「でも気になると。そこまで委員長を引き付けるものが書かれてたか?」

委員長「そりゃあ……一部に私の名前、とか書かれてましたし……」

男「委員長の名前? どうして?」

委員長「いえ、それこっちの台詞なんですけれど…っ!」

委員長「正直怪しく思えましたよ。小説でも書いてるんですか? あれはそういう設定?」

男「じゃあ……そういうことにしておいてくれないか」

男(手掛かりはあった。否、返ってきていた。俺が既に持っていたらしい)

男(自分が何を忘れているか。ひょっとしたら、どうでもいい、ちょっとした事かもしれない。そうは思えない。俺は重大な何かを忘れている。そういう気にしかなれない)

男(何か、が俺を突き動かすのだ。そして俺の中にいる何者かが。 どこかで否定したい自分が居ながら、俺は走り出した衝動を止められずにいる)

男(たった一つ、シンプルな、思い出すという目的を抱えて)

男「俺は何一つまだ、満足できちゃいないぞ……物足りなくて仕方がない……」

男「それから、君を助けなければ。かならず」

委員長「……ん?」

男「すまん、委員長。ここまで連れて来てもらって悪いが、調子良くなってきた」

委員長「あの……怒ってもいいですよね。それって」

男「おいおい、そこは気分が良くなってなによりです、ぐらいの言葉がすぐ出なきゃだろ? 気が効かないっ」

委員長「怒ります」ムスッ

男(頬を膨らませて、怒りを露わにする彼女の姿は珍しい。今まで淡々としているイメージがあっただけ、化けたな。さすが委員長系美少女。胸高まるぞ)

男(このトキメキを、俺は忘れてはならない。美少女を、美少女を俺は欲すのだ。……転校生、転校生に会えば良い)

明後日に続く。もしかしたら明日かもだけど、とりあえず明後日に続く

転校生「別に無理しなくていいんだからね?」

男「無理って何ですか? ほら、今日はどこに行きたいんだ。遠慮なしでリクエストに受けて答えてやる」

転校生「どこでも。って、いつも同じ返事よね。たまにはあんたの好きなところに行きましょうよ」

転校生「あんたのこと、もっと色々いっぱい知りたいわ! もっともっと!」ニコニコ

男「あざといな、お前……好き! 愛してる!」

転校生「あーあ、そういうところが無かったらいいのに。ねぇ、好きって言ってくれるのは嬉しいけど…」

転校生「……さすがに学校の中じゃやめてよ。死ぬほど恥ずかしいんだから…」

男「ふん、口ではそう言っても本音じゃ嬉しくて仕方ないんだろー? 愛い奴め」

転校生「あ、アホ変態っ!! そそそ、そんなわけない…じゃないっ…」

男(そんな転校生を下からまじまじと遠慮無しに覗いてやれば、臨界突破寸前、赤面涙目で口をパクつかせている)

転校生「あ、あ……あ……ぅ……っ~~~……///」

男「お前はわかりやす、んふっっっ」

男(俺の世界には転校生のみ。夢中で周りのことなど見えちゃいなかった。だから、いつのまに背後へ彼女がいたことすら気づけないわけで)

不良女「見せつけてくれるよなぁー。楽しそうなぁー…なぁ!?」

男「ふふ……俺の尻に何の怨みがある? 結構本気で蹴ってるよな、悪くないけど、痛いんだが?」

不良女「かもなぁー!!」ズンッ

男「いいいっ、痛いんだが!? (散々と無抵抗な俺を痛めつけ、満足を得たのか不良女の顔は清々しかった。これぐらいでお前の気が晴れるならば安い。いつでも尻を貸そう)

男「(お互い気持ち良くてWin-Winである) ……一つ訊かせて欲しいんだが、今の何」

不良女「個人的に腹が立ったのと、周りの男子どもの嫉妬を汲んで、あたしが代表でボコった!」

男子たち「グッジョブ」

男「野郎の嫉妬は醜いぜ……よせ、俺を囲むな。悪かった。頼む」

転校生「わ、私も悪いわよね? だって結局こいつのこと止められずにいたし…」

男「だから私のお尻も一緒に蹴って!? まさか変態か、転校生!」

転校生「言ってないわよアホぉっ!!///」

不良女「まぁ、もう言わなくたっていいと思うけどさ。 ちゃんと弁えなよ? 浮かれるのもわかるけど」

男「だろう?」

不良女「夜道、気をつけた方が良くなるんじゃねー? あたしもう知らない」

男子たち「ブツブツブツ……ブツコロブツス……」

男(このような美少女との絡みに嫉妬される立場というのも中々つらい。だが、疎まれるわけでもなし。むしろこの状況を楽しむのも乙なものか)

男(モテモテハーレム主人公として……あれ、そうじゃないだろう。面白いことを考えるな、俺は)

男(ともかく、殺気立つ哀れな男子生徒たちを宥め、モブはとっととご退場願おうか)

男「ある意味野郎にもモテてつらいな、俺は……モテる。モテる? モテる……んむぅ」

不良女「どうしたの? 頭叩いた覚えはあたしにはねーぞ」

転校生「もしかしてまたさっきみたいに調子悪くなった?」

男「し、心配すんなよ。別に何ともない! ほら、この通り!」

転校生「だったら良いんだけど……なんか今日のあんたって変なのよね。普通じゃないみたい」

男(普通とは何だろう。俺は今日まで転校生とどう過ごしてきた。変わりないのでは? 変わり、ある)

男(不思議だ。 言葉では言い表せない。 実に奇妙奇怪、だって俺の頭の中に)

男(……今の俺は、どうかしているのか)

不良女「で、これから二人でデートって感じ?」

転校生「そ、そそ! そんなわけじゃっ…///」

男「そうだろ。別にもう関係は知られてんだ、一々誤魔化す必要もないって」

不良女「そうそう! 堂々としてればいいじゃん。……[ピーーーーーーーー]」

男「ん? どうかし (という台詞も、不良女を見て途切れる。彼女は俺は好いていた。気丈に振る舞うも、その気持ちは残っていたのだろう)」

男(執着しているわけではない。だから、早く彼女には俺以外の誰かと結ばれて、幸せに)

男(なって欲しくなかった。むしろこう思えた、不良女は俺のもの)

男「そ、そうだ! 良かったらお前も一緒に……!」

不良女「は?」

男「あっ……いや、何でもない。気にするなよ」

男(あやうく転校生を放って、不良女を同行させそうになる。阿呆か俺は。転校生より大切なものは無いだろうが)

男(屑、極まりしか。彼女に飽きて他の美少女へ目移りする気があった? 酷過ぎる)

不良女「……あー、さてと! あたしは家帰るわ! バイトまで昼寝!」

男「あ、ああ」

不良女「いやぁ~ちょっと寝とかないと仕事中に眠くなって困るからさ。そうしなくてもタルくて眠くなるけどっ」

不良女「じゃっ、今日もデート二人で楽しんできなよ。 お土産期待してるからねー!」

転校生「え? ああっ、食べ物でいいのかしら!? 何がいい!?」

不良女「うぇ。じょーだんよ、じょーだん……結構天然キャラか?」

男「実は密かにそのポジション狙ってんだぜ、こいつ」

不良女「あ、言わない方がよかったかも?」

転校生「ちょー!? もうっ、何なのよ……」

不良女「へへ、じゃあほんとにこれであたし行くわ。また明日、学校でね…」

不良女「ん……」チラ

男「どうした? まだ何か言い足りないことでもあったか?」

不良女「……気づいて、ないよな。ズルいか[ピーーーー]って」

不良女「ズルいよな…こんなんで……[ピーーーーーー]」

男「不良女? お……ああ、行っちまった。 俺たちもそろそろ行こうぜ。時間が惜しい」

転校生「うん、そうね。……どうしたの?」

男「いやー、たぶん何でもない……」

転校生「ふふっ、何それ? じゃあ今日は男が好きな所に行きましょ。仕方ないから付き合ってあげるわ!」

男「おう、仕方ないから連れて行ってやるよ。大人のホテルって奴に」

転校生「ぜっっったい却下よっ!! まだ早いって言ってるじゃない…///」

男(俺は、不良女が首から下げていたネックレスに見覚えがあった。いつも身に付けていたわけではないのに、なぜ)

男「入らないのか? それとも俺の家じゃあ不満で?」

転校生「ううん……入ってもいいの?」

男「悪いならまず連れて来ねーよ、遠慮するなって」

男(どうやら妹たちはまだ帰宅していないらしい。別に邪な考えから自宅へ連れて来たわけではないぞ)

男「お前、前にウチに来損ねただろう。だから丁度良い機会だと思ってな。妹も喜ぶさ」

転校生「覚えてたんだ……へー」

男「俺が住む家にしちゃまともだってか? それもこれも幼馴染の…ゲフンゲフンっ」

男「まぁ、意外と片付いたところだろ! 何の変哲もないフツーの家!」

転校生「難癖つけるつもりないわよ。ただ、あんたが覚えてたっていうか…気づいてたのが嬉しくて…えへへ」

転校生「……えっと、家に妹さんとあんた以外いないのよね。それって大変そうかもー…///」

男(さきほどから随分と余所余所しいではないか。一体何を緊張して、まさか)

男「今日は妹の帰りも遅いかもなぁ~~~?」

転校生「っ!!」

男「帰ってきたらすぐ風呂に入るかもしれないし、ここは気が効くお兄ちゃんが湯船を張っておいてやろうかなぁ~~~?」

男(益々見て取れるほど緊張し、硬直してゆく転校生。肩でも揉んでやろうと手を置けば、ビクンと跳ね上がる。頭の中がピンクへ染まりつつあるな。けしからん)

転校生「こここここっ、この手は何よぉー!!?」

男「んー? 緊張でも解してやろうかとね」

転校生「オヤジくさいわよっ、へんたい……っ」

男「お前本当にイギリスの暮らし長いのか。それともどこのオヤジも同じか?」

男「バーカ、なに変な期待しちゃってるんだよ。何もしやしないって」

転校生「……本当に?」

男「ああ、妹だってそのうちすぐ帰って来る。それに幼馴染も来るかもしれない」

男「ヤバいだろう?」

転校生「じゃあ、もし……二人が帰って来なかったら……どうしてた?」

転校生「……その……わ…私は、あああっ、あの~……っー…///」

男(もし今すぐ手を出せるなら、是非ともである。だが、俺が17年間守り抜いてきた純潔がまだ別れたくないと泣いている)

男(だから、仕方がないだろう。別に勇気が無いというわけではない。勘違いするなよ)

男「部屋に行こうぜ。別にリビングがいいなら~」

転校生「いくっ!! あっ…///」

転校生「あ、あんたの部屋 見てみたい、かも……///」

男(もうこの部屋に美少女を通すのは慣れた。そのお陰もあって、否、幼馴染あって荒れに荒れて、床も見えなかったここは)

転校生「……」

男「もっと散らかってると思ってたよな? 絶対そうだろ?」

転校生「何でわかったのよ?」

男「エスパーだからな、俺って」

転校生「あ、あんたが言うとそれ洒落にならないわよ…!」

転校生「にしても漫画とかいっぱいね。男の子の部屋ってみんなこんな感じなのかしら」

男「そうだとしたら男友達にも困らなかったかもなぁ……へっ (漫画、そうだ。委員長へ貸した1巻を探さなければ。こうして転校生を連れて来たのも意味がないわけではない、と思う)」

男(本当ならば家に連れて来ることなんて今日でなくても良い。だが、正気を保っていられる内に[ピーーーガーーーーーーー])

男(……滅茶苦茶。なぜ俺が自分に振り回されなければ、ん、別におかしい事ではないのか?)

転校生「……ん」ふかふか

男「……」

転校生「えへへ……はっ!?」

転校生「お、お布団触ってるだけじゃない!? 何よぉーっ!?///」

男(これ以上俺を興奮させてみろ、押し倒して…ど、どうなってもしらんぞ…転校生よ)

男「男の部屋が珍しいのか? 向こうでどうだったんだよ、お前」

転校生「お、男友達ぐらいはいたわよ。だけど家にまでは行ったことなかったし」

男(事実ならシャイボーイしか彼女の周りに集まらなかったのか。これほどの美少女を放っておける神経が理解できん。とはいっても、転校生は俺の物となる運命だったのだろう)

転校生「だから、こうして部屋に来るのも初めてだし…か、彼氏なんてのも…」

転校生「全部……男が私のはじめてなんだから……!」

男「俺がおかしいのか。いやらしい台詞にしか聞こえんぞ」

男「でも、嬉しいよ。それだけお前にとって思い出深い奴になれるってことだよな、俺」

男「これからもずっと一緒にいてくれよ、転校生…なんて、へへっ」

男(止せ、何だかよく分からないが、これ以上転校生へ余計な言葉をかけるべきではない)

男(それこそバカを言うなである。何が余計な言葉か、彼女を大切に思って何が悪い? 畜生、どうすれば自分を思い切り殴れるか誰か教えてくれないか)

転校生「あんたのことが一番好きだもん。言われなくてもよ」

転校生「ねぇ、覚えてる? 転校して私があんたに言ったこと」

男「え?」

転校生「『一番嫌い』なんて言ったのよ。ふふっ!」

男「あー、今となっちゃアレも良い思い出なんだろうなぁ」

ちょっと風呂入るから遅れる
ナウシカ見ながらだったからスローペースだった? あれ、いつもと変わんなくね

男「それで今は一番好きな奴になった。どういう心境の変化だよ」

転校生「あ、あんたが隣にいると楽しかったのよ…苦しくなった時もいっぱいあったけど」

転校生「何だかんだで落ち付けたし、こんなワガママでどうしようもない私の相手してくれたし」

転校生「……好きになるのに、理由ってよくわからないわ///」

男(俺はどう思って転校生へ好意を抱いたか。可愛らしい容姿から入って、ときめいちゃったりして、引かれて)

男(それで間違いはない。だが、他の美少女にだって似たような感情を持った)

男(その中でも転校生が一番だったのかもしれない。そうでなければ今はない。だから、これが[ピーーーー]。それで良かった)

男(良かったのに)

男「……こんなところに投げてたのか」

転校生「え?」

男「漫画。ちょっと探してたんだよ、急に読みたい衝動に駆られて」

男(ただし、読むのは中身の方ではない。この中に隠された真実である。何を持って真実たるかは意味不明だが、自信を持っていえる)

男(ソレへ触れたとき、俺は俺でなくなる。だから躊躇する。だから、思わず転校生を抱きしめたくなったのである)

男「なぁ、とりあえず抱きしめていいだろうか」

転校生「はぁ? あんたちょっと何言って… 男「いいから、頼むよ」

転校生「べ、別に良いけど? ……き、来なさいよっ!!///」

男「突進かますわけじゃねーんだから、身構えんなって……ん」ギュウ

男(美少女の、転校生の温もりがここにある。何度抱きしめた事か。それでも良いものは良い)

男(この可愛い彼女を独占したと実感を得るため、いつもこうしてきた。だが、今回はわけが違うらしい)

男(落ち着くというか、優しい気持ちになれるというか、ほっとするのだ。今だけは命一杯甘えても構わない筈、許せよ転校生)

転校生「どうしたのよ急に…子どもみたい…」

男「頭も撫でてもらえれば言うことなしでちゅね」

転校生「うっ、キモいっ!! もう……こ、こう?」

男「あ~良い感じ。最高の気分だなぁー」

転校生「今日だけなんだからね……?///」

男「わかってるよ。いや、それにしても転校生は柔らかくて気持ちいいな。ふかふかだぁ」

転校生「だぁーっ、変な感想いらない!! むぅ、気持ち悪いわね…」

男(いつまでもこうして[ピーーー]に浸っていたい。だが、これで満足するには早いのだろう)

男(乗り越えなければいけないのだろう。その先に何が待つかわからない。けれど、俺には越えなければならない理由が存在する)

男(向き合わないと。戦わなきゃ、己自身と)

男「ありがとう、転校生。もう十分だよ……ありがとう」

男(静かに彼女の腕の中から離れる。たぶん今までで一番真剣な俺が出来上がったのではないか)

転校生「結局何なのよー……あっ、ところでさっき下から」

男「俺はこれからどうにかなっちまうかもしれん! 転校生、だけどお前のお陰で勇気が沸いた!」

転校生「はぁ!?」

男「転校生、好きだ。大好きだ。愛してる! ……よーし」

男(例の漫画を手に取り、ページをぱらぱら捲っていけば、下に落ちる一枚のメモである)

男「もう後に引く気はない。い、いくぞ……」

転校生「ちょ、ちょっと何なの? え? えぇ……?」

妹「お兄ちゃんのアホったれぇ~~~!!!」

男「……は?」

男(バンッ、と勢い良く開かれた戸。そこには白い箱を片手にぶら下げて立つ、怒る妹の姿があったわけで)

男(その背後には冷めた視線ビームをこちらへ向ける幼馴染のおまけ付き。……聞かずとも誤解されているのが分かる)

幼馴染「……転校生ちゃん、いらっしゃい」

転校生「え、あっ……はい……?」

妹「う~~~……!」

男(帰りに幼馴染と一緒に買ってきたケーキを口いっぱい頬張り俺を睨む妹。結論からすれば、やはり俺は誤解されていたらしい)

男「そんなに見つめられても俺の分くれてやるきはない事は言っておく」

妹「ひはふほんっ!…んぐっ、違うもん! そんな意地汚くないし!」

幼馴染「でも、ビックリしちゃったよね。鍵開いてたから、男くんもう帰ってると思ったら」

転校生「ち、違うってさっき説明したじゃない!? べべべ、べつに私たちは何も!!」

妹「ふん。いいですよー、勘違いさせるようなこと大きな声で言ってたお兄ちゃんが悪いんだから…」

男「じゃあ勝手に勘違いした方に非はないんですかねぇー……」

妹「ないんです」

男「しまいにはさすがの俺でも泣くからな?」

幼馴染「もういいじゃん。一応あやまったことだし、こうしてケーキのお土産もあるんだから。ね?」

転校生「ねぇ、私までご馳走になっちゃって本当に良かったの? やっぱりいきなり悪いわよ」

幼馴染「大丈夫。遠慮なんてしてたら美味しくなくなっちゃうよ。もし良ければ、夕ご飯も一緒に」

男(無理はしていないらしい。この俺にとって美少女の心を読み取るなど朝飯前である。だが、本当にそれで平気なのか)

男(妹の方といえば……転校生を凝視して、やはりケーキを頬張る。いつのまにか俺の皿へ手が出ていた事については触れないでおきたい)

転校生「……ね、ねぇ。さっきからあの子が凄いこっち見てるんだけど」

妹「じーーーーっ、じ~~~~~~っ…!」

男「知らないのか? 擬音が口に漏れてるのはツッコミ待ちの合図だ。転校生、お前の」

転校生「わ、私!? えー……初めまして。私は転校生っていうんだけれど」

妹「違う、初めましてじゃないし! 前に一回会ったことあるし!」

転校生「あ、あぁー…そういえば……じゃあ、久しぶりなのかしら」

妹「どうも! 兄がいつもご迷惑おかけしてきょーしゅくの限りでございますっ!」

転校生「こ、こちらこそ……? これで合ってるのかしら」

男「聞いてるこっちの方がムズ痒くなってくる……転校生、前にも紹介したがそのちっこいのが俺の妹」

妹「ちっこい言うなぁーっ!!」

幼馴染「もう知り合いだったんだね。転校生ちゃん、妹ちゃんとも良かったら仲良くしたげて。とっても良い子だから」

転校生「えっ、そんなの勿論よー! よ、よろしくねっ…えっと、私も仲良くできたら…!」

妹「」プイ

転校生「あ、あれ?」

転校生「……あれは、どういう意味? OKって合図!?」

男(真面目に天然を今さら目指そうとしているのか、転校生。どう考えてもである)

男(いわゆるツンデレ属性持ち、中々素直になれない妹。兄の彼女へいきなり握手を交わすことはないだろう)

妹「[ピーーーーーーーー]……!」

男「は? 今な……何でもない (この場で俺が下手に出れば、逆に面倒が起こる)」

男(申し訳ないが俺は黙って、彼女たちを見ていることしかできない。実にもどかしいではないか)

男(もどかしい。そして悔しい。もし、いや、もしではない。こうなってしまった原因は全て俺にある)

妹「[ピーーーーーーー]……[ピッ]、[ピーーーーーーーーー]……っ」

男(この間だって、今日だって、俺は妹や美少女たちを悲しませた)

男(俺が目指していたものは何だった。俺の理想とは。俺の[ピーーーー]とは)

男(気は進まないが、断言しよう。俺にとって今は……今は……ああ、ダメだ、転校生が好きすぎる)

男(だが、これだけは言えるぞ。俺が求めていたのはドロドロとした胃が痛んでくる展開でも、シリアスでもない)

男(俺の、俺たちの[ピーーーー]だろうが。俺と、美少女たちの)

男「あいつ、結構照れ屋なところあるからさ。まぁ、仲良くしてやってくれよ。可愛いから、俺の妹」

妹「う、うっさい……[ピーーーー]…」

幼馴染「本当にご飯食べてかなくて良かったの?」

転校生「うん、ケーキご馳走になれただけで嬉しかったわ。ありがとう」

転校生「じゃあまた明日学校で会いましょ」

男「ああ、それじゃあな。気をつけて帰れよ」

幼馴染「送ってかなくていいの? 大事な彼女でしょ」

男「あいつが平気だって言ったんだ。あんまり強引にしてやると怒られるしな」

幼馴染「それでも最後まで一緒にいてあげた方がいいと思うよ。[ピーーーーーー]」

男「だって、もう夕飯の時間だぜ。転校生も大切だけど、お前たちとの約束も大切だと思ってる」

男「今だけは家族三人で食卓囲んで、だろ? 今日は美味い飯が出てくるといいねぇー」

幼馴染「あー、もうっ! ……男くん[ピーーーーーーーーー]」

男(幼馴染よ、俺はもう迷わないぞ。妥協は無しだと自分で決めた筈じゃないか。なぁ、自分を曲げてまで手に入れた[ピーーーー]は美味いか?)

男(美味いけれど、より一層美味を楽しめるらしい。その方法を俺は知っていた)

男「そいつを今から思い出してやろうと思うんだが、俺の中にいる何か。お前はどう思う?」

男「最終的に俺がゲスということに変わりなくなるのか。いいぜ、俺は最初からゴミだ」

男「どうせ気持ち良くなるなら、もっと気持ち良いのを目指そうぜ。それが男の子の野望ってもんだろうがさ……!」

男(メモには記されている。委員長の言う通り、実に荒唐無稽な内容が)

男(それも俺から俺への最後の贈り物だという。正確にはそう書かれてはいない。俺がそう解釈しただけ)

男(俺の中にいる何か。それの言葉は俺に届くことはなかった。そう、難聴スキルによって)

男(なぜスキルが自分自身へ発動したのかは不明。俺に都合が悪いことでも囁いていたか? 俺の『幸福』を邪魔することを)

男(それの正体は、言うまでもないだろうか。俺自身で間違いなかった)

男「俺は誰だ。俺はこの世界でモテモテ学園生活を日々送る、難聴で鈍感なハーレム主人公…」

男「その目的は、美少女たちの園を作る。俺も美少女もみんなハッピー……ハーレムだ!」

男「ハーレムじゃないか!!」

男(口に出した瞬間、一気に俺の頭の中で、これまで、がフラッシュバックする。全てだ、始まりから現在まで)

男(とはいうものの、始まりというのは後輩や先生と付き合う前というわけではない。両親が突然海外へ揃って出張し、妹や幼馴染の変化に驚き)

男(転校生と出会って、さっそくのラッキースケベを体験した。そんな今の俺の始まりをである)

男「俺はあの日、転校生へ告白した! それから今日までずっとただひたすら転校生との日々を楽しんできた」

男「い、いつのまにか自分を忘れて、転校生以外がどうでも良くなって……その幸福に呑まれかけていた?」

男「永遠に転校生ルートを歩み続けようとしていたんだ。終わりなんて死ぬまでないかもしれないのに」

男「……このまま何も気づこうともしないで、幸福だと完全に満足してたらどうなってた。俺?」

男「そうだ……委員長、委員長に電話しないと。あいつまだ生きてるのか!?」

男(ゆっくり思考する暇はない。今日も、昨日も、彼女は美少女としての委員長のまま過ごしていた覚えがある)

男(もし、彼女が元の委員長へ学校にいるときに一度でも戻っていれば、俺へ「覚えてる?」と声をかけてくる筈。ない、一度もない)

男(転校生と付き合えたその日から、委員長は一度もそれらしい言葉をかけてきてはいない。たったの一度も!)

男(恐らくだ。俺と同じように彼女が、今、に完全に満足したとき、委員長は!)

委員長『もしもし、男ですか? 何か?』

男「何かじゃないだろう! 委員長、俺だ! 気を確かに持って! 君だけはまだ現実に向き直らないと!」

委員長『……あの、切ってもいいですか?』

男「悪戯じゃない!! 俺に助けてくれって言っただろ? 思い出せよ、やっぱりどうでもいいってのか?」

男「ちょっと諦めるには早すぎるんじゃねーか? なぁ?」

委員長『さっきから変なことばっかり…冗談になら明日学校で付き合いますから』

男「委員長、じゃあ最後に一つだけ言わせてくれよ。お、俺はたぶん君に変態野郎だと思われてる」

男「どうしてかわかる? 俺は君に俺の全てを告白した。委員長なら覚えてるよな。思い出せるよな……」

委員長『あの……本当に、そろそろ』

男「思い出そうとしてくれるだけでいい。過去にそんなことがあった筈だ、君は知ってるんだそれを」

男「正確に言わせてもらうと、今の君じゃないけれど、知ってるはずなんだ」

男(自分で無茶を言っているのは理解している。だが、これ意外で、俺と委員長の深い繋がりは皆無である)

男(きっと彼女にとっても印象に残った話だった。あの話をしたからこそ協力関係を結べた…かは分からない)

男(元の委員長へ戻るキッカケなんぞ知らない。彼女が、元の自分を思い出そうとすれば、戻ってきてくれるかもしれない)

男「(完全に意識が消えていなければ) ……委員長?」

委員長『……もう、気持ち良くなっちゃってたのかな。毎日幸せで楽しかったから』

委員長『ごめんなさい。変態の男くん』

男「お……驚かせんなよ」

男(無事とは言い難い状態だが、とにかく委員長は生きていた。その後話を訊けば、彼女はやはりこの世界への抵抗を失いつつあることに気付く)

男(つまり、現状を自然に受け入れてしまおうとしていた。意思と関係なしではないのだろう。心の奥底では充実した自分の環境を楽しんでいたに違いない)

男「それでもやっぱり帰りたい? 本当はこのままここにいたかったりしない?」

委員長『はい……って言っても信じてくれる?』

男「正直満足できたならもうこの世界で生きた方が最高だと思う。自分の意識はなくなって、結局は死ぬみたいなもんだけど」

男「向こうでまた嫌なことと付き合って生きて行くよりはマシなんじゃないか?」

委員長「またそうやって決断揺るがそうとする…」

男「自分が消えるのが怖いって感覚はなんとなくわかる。さっきもそう感じたし…」

男「ただ、それさえ受け入れちまえば」

委員長『男くん、それじゃあどうして私のことまた助けてくれたんですか。どうして放っておこうとしなかったの?』

委員長『男くんは私がそうなれば幸せかもって思ってくれてる。だけど、また呼び戻しちゃった。それって私に考える時間あげたかったから?』

男「いや、素直に約束守ろうとしてただけだろうよ。だって帰りたいって聞いちゃったから」

委員長『変わりません。私を元の世界に帰れるように手伝って』

委員長『お願いします。何でも言う通りにするから……!』

男「なぁ、どうしてそこまで帰りたいんだよ。あらためてやり直すって言っても簡単じゃないし、上手くいくなんて思えないぞ」

委員長『それでも……何とか信じてみたくて』

男「えっ、何だって?」

委員長『う、ううん! 何でもない! とにかくお願い』

男(返事をする前には電話は彼女から切られてしまった。何か触れられて困る話題へ近づいたのだろうか、焦りがあった)

男(とにかく委員長との約束は継続だ。そのためにも、どうにか転校生ルートを抜けて、次週へ回さなければならない)

男(思い返せば、いくつものミスを犯している。一番大きいのが転校生と俺が付き合っていることを公言した事だろうか)

男(だが今まで集めた情報からよく考えろ。次週にさえ入れば、付き合っていた痕跡も消え、周りの認識もそれ以前の状態へ戻るのだ)

男(後輩と先生がそのケース。先生からはとくに何も聞き出せなかったが、後輩からは写真という証拠も揃って色々と話を聞けた)

男(問題ない。今の俺が消えれば、全ては転校生と付き合う以前か、はたまた無かった事となり次の日の朝から始まる、かもしれない)

男(すれば、男の娘からのサポートも復活し、もし委員長が美少女化していようとメモを挟んだ漫画が俺の元へ返ってくる)

男(……委員長は俺の周跨ぎの影響を受けるのか疑問だ。もし予想外な事態が発生しても、記憶のない俺にそれを対処する力はないだろう)

男(ハーレム計画についてはほぼ万全だし、次の俺が順調にバトンを渡して、それを繰り返せば、難聴に悩まされない10人の美少女たちに囲まれる幸せが訪れる)

男(先は長いがやり遂げたいではないか。俺の終点はハーレムENDただ一つである)

男(委員長に関しての問題は、もう神の悪戯が起こることを祈るしかない。神の力にただの人間が敵うわけもない、しかし)

男(神へ交渉することならば可能だろう。ここまでされておいて話が通じない相手とは思えない。そのためにもイレギュラーとパイプを持つ必要がある)

男「じゃあ、これで俺がすることはないって考えて大丈夫だよな?」

男「それにしても考えが甘かった。安心しきって横道へ逸れたのが悪いのか? 悪いわけないだろう…」

男「転校生とは、確かに毎日が楽しかった。生まれて初めての最高に可愛い彼女だったと思う…よかったほんとに」

男(次週へ行くためにどうすべきか? きっと前の俺も、その前も俺も悩みに悩んだことだろう。その方法は感情的にさえならなければ、きっと容易なことだと思う)

男「短い夢だったなぁ、やれやれ……」

続き遅くなってすまんかった。ちなみに明日も予定
で、明日以降は少し実家に帰省しちゃうんで三日ごろまで休む

男(翌日、今日も男の娘からの定期確認はない。それを除けばいつもと変わらない俺の日常が始まった)

男(だが、それも今回で本当の本当に最後。終止符を打つ決断は済んだ、決着は放課後。部活動を終えて、帰路に立ったとき。それまでは精々残る僅かな時間をエンジョイである)

男「それまでに何も起こらないといいんだが」

幼馴染「たとえば?」

男「ただの一人言に余計な詮索はいらんって」

幼馴染「男くんだっていつも[ピーーーーーーーー]。それよりいいの? 転校生ちゃんと登校しなくて」

男「今日ぐらいはいいかと思って。ちょっと甘いかね?」

幼馴染「そう思うよー。神経質な子なら怒られてるかも、転校生ちゃんはどうだろうね」

幼馴染「[ピーーーー]……へへへ」

男「どうした? 俺の顔にバカとでも書いてあったか。行くとき鏡は覗いたつもりなんだけど?」

幼馴染「正解! なんて……ううん、ちょっと嬉しいなーって思っちゃって」

男「そんなに俺と久しぶりに登校できたのが嬉しいか? へへっ」

幼馴染「うん、そうだよ。とっても嬉しい…」

男「おほっ…えー? 何だってー!?」

幼馴染「あー! 意地悪だなぁー男くんは……ふふっ///」ニコニコ

幼馴染「あたし、ちょっと部室に用あるからここでお別れ。……あっ、そうだ」

男(校門を過ぎ、あっというまに昇降口へ到着。これで終わりだと思うと、見慣れた彼女と歩いて来た道すら恋しい。と、惜しんでいる場面ではないのだ)

男「何だ? 頼みでもあるか」

幼馴染「頼みというか、まぁ、そうなんですけど。えへへ…」

幼馴染「もし、良かったらだよ? 今日は一緒に……ていうか、みんなでお昼食べない?」

男(鞄ともう一つ、何か手下げていたとは思っていたが、ドンピシャ。蓋をちょっぴり可愛らしい仕草で彼女が開くと、そこには大きな弁当箱が)

幼馴染「じゃ、じゃーん……///」

男「デカいッ!! 俺のかソレ!?」

男(ここ最近は気を使ってくれていたのか、幼馴染は家で事前に弁当を手渡してくれていたのである)

幼馴染「えーっと、みんなで摘まるぐらいって一杯入れようとしたら……こんな感じに、でした……///」

幼馴染「ほ、ほら! ずっと転校生ちゃんと二人きりでお昼だったじゃない。だからたまには、こういうのも悪くないかなぁー……って」

男(抱きしめたいぐらい素晴らしい幼馴染。良妻すぎる。たとえ病んでいようが愛せるとも。しかも、だって、美少女だぜ)

男「ああ、悪くないと思う。転校生もきっと喜ぶ。変態とばかり付き合っていても気疲れ起こしちまいそうだしな」

幼馴染「自分でとうとう言っちゃうんだぁ……ふふ、良かった!」

男(第一印象、容姿でも男を鷲掴み。次はすかさず胃袋を鷲掴む。思い返せばパーフェクトだな、幼馴染。最高のダメ男製造機じゃないか)

男(しかし、どうして変わらず彼女は俺と一緒にいてくれるのか。裏切られようと、信じて俺を待ち続けるのか)

男「一図すぎる……生まれて来てくれてありがとう、幼馴染! 神に、お前の両親に感謝だよ!」ガシッ

幼馴染「ひぇ!? あ、ありがとう……?」

男「ああ、こちらこそだとも」グッ

幼馴染「なんか調子狂っちゃうよ。じゃあ昼休みになったら今日は不良女ちゃんも連れて そっち行くね」

男「それは構わんが……そうだ、アイツに言っておいてくれないか。お陰さまで尻が二つに割れた」

男(見事に小首を傾げられ、俺は後悔一色で染め上げられる。笑い飛ばされることもなく、幼馴染と今度こそ一時お別れ)

幼馴染「それじゃあ男くん、またあとでねー!! [ピーーーーーーー]」

男「はぁーーー? 何だってぇーーー? (バカな、距離50mも離されても何かフィルターへ引っ掛かる台詞が出たことに気づけたぞ)」

幼馴染「あっ……な、何でもないよぉー!! ……もう///」

男(今度こそ幼馴染と別れ、靴を履き直して教室へ向かう、と)

オカルト研「……」

男「……頼むから毎回特殊な現われ方しないでくれないか。心臓に悪いんだよ」

オカルト研「あああああ、あなたに彼女がいるというデタラメを小耳に挟んだっ……そそそそそ、それこそ心臓に悪いっ……」

男「ていうか、だいぶ前に俺直々に話してやった心当たりがあるんだが」

オカルト研「悪魔の仕業に違いないわ。すぐにお祓いの準備をー!」

男「似た台詞そのまま前も同じように言われた覚えもあるんだが」

オカルト研「くっ……」

男(床へ崩れ落ち、長い前髪がハラリと横へ逸れれば悔しそうに涙を浮かべるオカルト研)

オカルト研「好きに、すればいい……もう私は何も言わない……!」

男「何度も申し訳ないけれど、それも前に同じ感じで、だ!!」

オカルト研「だって、まだ信じられないの。男くんは私が[ピーーーーーーー]」

男「おい、いま何て言ったんだ?」

オカルト研「こ、これまでなのかしら……私だって[ピーーーーー]、[ピーーーーーーーー]のにっ」

男(大変だ、オカルト研からオカルトの文字が外れかけている。さて、これを一体どうしたものか)

男(じゃあ……久々におみまいしてやろうか)

男「おいおい、いつまで床に座り込んでるつもりだよ。ほら、手貸すから立てって」

オカルト研「ん……」ぐい

男「ちょっ……お前、人が踏ん張る前に思い切り引っ張るな! うわあああぁぁぁ~~~!?」

オカルト研「わ、わ…きゃあっ!?」

男「だ、大丈夫か オカルト研……んふっ、やわら、かい?」

男(オカルト研を押し倒す形で転倒し、この手が掴んだ二つの禁断の果実。それらを味わうよう、2、3と確かに揉みつつ、わざとらしいタイミングで瞼を開けば)

オカルト研「っー……///」ジワァ

男(かわゆい、かわゆい美少女が赤面を浮かべているのは予想通りであった)

男「うおぉぉー! す、すまんオカルト研! 別に出来心があってこうなったわけじゃ!?」

オカルト研「[ピーーーー]……別に男くんならいいわ///」

オカルト研「とても胸がドキドキした……///」

男(何度揉んでも飽きがこない。ひょっとすれば上級生組とタメを張るレベルではないか。ああ、転校生に目撃されなかったのは幸い)

男(そして至福の感触をこの手にオカルト研とおさらば、の前に一言)

男「そうだ。もし良かったらだけどな、今日の昼飯一緒に食わないか? 一緒と言っても他に色んな奴がいるけれど」

オカルト研「むぅ、あなたと[ピーーーー]が望ましかった……」

男「はい? それで返事は? 別に嫌なら断っても構わないぜ」

オカルト研「誘いに乗ってあげるわ。男くんがいるところ、私有り、よ」

男「言わなくても来たって? へへ、わかった。じゃあ昼にな」

オカルト研「ばいばい……///」フリ、フリ

ここまで。また来年ー

男(教室へ無事…まぁ、無事としておこう。こうして辿り着いたわけだが、隣の転校生はまだ到着していないらしい)

男(席へ着き、机の上に書かれた例の落書きと周辺に掘られた特徴的な傷を撫ぜてみる)

男(ここ何ヶ月の間、俺の頭には転校生しかなかった。他のことなど何一つ気にも止めない。この落書きの存在にも)

男「だからといってこれが目に入らないわけがないんだ。何かを思い出す切っ掛けの要素としてはコイツだって十分だったのに」

男「もし、次の俺が落書きを全力スルーしたら? ……参ったな」

男(吹っ切れて考えても不安は残る。もう一つの約束を達成できなければ、委員長は消滅の道をただ辿るのみ。先行く俺を許してくれるだろうか?)

委員長「あの、男くん」

男「まだ覚えてるよ。明日……というか今日までは覚えてる。大丈夫」

委員長「まだ何も言ってないんだけど。でも良かった、私もまだ保ってられてるよ! …ふわぁぁ」

男「目の下のクマは? まさか一晩中起きて意識保ってたわけじゃないよな」

委員長「そう。あのまま寝てたらまた自分じゃなくなっちゃうかもって……怖かったから」

男(無理をするな、という言葉は出せなかった。彼女自身、無理を利かせなければすぐに美少女人格へ交代してしまう)

男(しかし、委員長の容姿である。その美麗な姿はいつ見てもウットリだが、黒ソックスが似合う素晴らしい足だが、もはや元の彼女はどのようだったか)

男「今更訊くけど委員長ってそういう見た目に憧れてたんだな。良い趣味してるぜ」

委員長「や、やめてよ。というか、男くんは変わらないよね? 見た目?」

男(言われてハッとするも、それはすぐに落ち着きへ変わった。別に容姿良く変えたいなどという願望を抱いたことは一度たりともなかったのだ)

男(憧れなんぞ、ご覧の通り。何もしなくとも美少女へ囲まれ、イチャラブな毎日を送る。もしくは空から美少女が俺の前に降ってきて、とか)

男「俺は自分の顔に自信はないけど、嫌いじゃない。見る人が見れば愛嬌あって味があるブサ男だと思ってたわけさ」

男「言ってしまえば自分LOVEということですな……怨んでたのは己の環境のみだ!」

委員長「ポジティブなのかネガティブかよくわからないかも……男くんに比べて私って欲深だったかな」

男「いいじゃないか別に。そのお陰で、違うか、そのせいでなのか」

男(俺ならば、災い転じて福となした。委員長だって実際ならば同じような思いになれていた筈なのに。それでも元の自分が良いなんて)

男「ああ、欲張りだなぁ、確かに」

男「ところで委員長、突然だが今日の昼休み、俺たちと一緒に」

委員長「あっ……ごめん。私はできるなら一人でいたいかな」

男(何故、と尋ねれば、たとえ俺と一緒にいてもこの世界の住人たちと過ごして、僅かでも楽しみを得れば、また自分を失いそうだから、と)

男(そこまで自分を縛りつけて何がとは思う。同時によほど元の世界への執着が強いと思い知らされたわけで)

男(ならば、かならず帰してやらなければと俺は誓ったわけで)

男「男の娘、今日も早いな。俺に比べてお前はいつも真面目だよ、感心感心~」

男の娘「男がいつも不真面目なだけでしょ? でも今日はいつもよりかなり早いよね、どうしたの」

男「どうもしねーよ。今朝は気分が良かった。とりあえずそれが理由ってところだなぁー」

男の娘「あはっ、そういうところが男らしいよね!」

男(男の娘も気分、機嫌が良さそうである。昨日の一件から避けられるとばかり考えていたが、やはり俺に都合がいいわけか)

男(と、思い込んでいたいところだが実際にはどうだろうかな。あまり楽観的に見て問題なさそうにもないが)

男の娘「……あのね、昨日は急に変なこと言っちゃってごめん」

男(意外、否、男の娘は良い子。自ら向き直ろうとするだと?)

男「昨日? 何の事だかさっぱりだ」

男の娘「えっ」

男「当人が覚えちゃいないんだ、ここは綺麗さっぱり無かったことにしちまえばいいんじゃねーか。まぁ謝ることが重要なら仕方ないけど」

男「お前が俺に対して悪いことをしたことは一度もない。少なくとも俺が思う範囲じゃね」

男の娘「い、いや! でも、だって……[ピーーーーーー]」

男「だっても何もって感じだぜ? 許すよ、きっと俺にも非があってのことだろう?」

男「自分でもよく分かっちゃいないけど、ごめんな 男の娘」

男の娘「[ピーーーーーー]……もう、本当に意味不明だ。男っていつもそうなんだ」ムス

男の娘「でも、男。僕これからも男のために頑張っていいかな? 男の役に立とうとしても大丈夫かな?」

男の娘「近寄っても、いいかなぁ……///」

男(ズボンとパンツを降ろして今すぐイチモツが生えているか確認したい。それほど彼が男とは信じられない顔をしている)

男「とりあえず穴はあるんだよなぁ……」

男の娘「え? あ、あのー…今のしっかり聞いてた?」

男「ああ、可愛いかったぞ。で、いま何か大事なことでも言ったか?」

男の娘「んもうっ! 男のバカ! てへへ…」

男(この週内にて男の娘の機嫌を取る必要はないだろう。だが、何もしないよりは良いし、俺自身が彼と仲を、形だけでも取り戻したかった)

男(甘えである。だが、心残りあって消えるなんて御免だろうが。今日は有意義に過ごして、そして)

男の娘「お昼休みにみんなで? 幼馴染さんも、転校生さんも一緒に? い、いいの!?」

男「ああ、転校生の了解はまだ得ちゃいないけどな。別にいいだろ? 俺たちだってお前らとまだ仲良くしていたいよ」

男「だから俺たちのことは一先ず置いて、お前らがどうだって話だよ。別に気まずい空間にするつもりはないからな」

男の娘「う、うん。なんか久しぶりだね、みんなでお昼取るのって……楽しみだよ、すごく」

男の娘「……でも、不良女さんいるんだよね?」

男「いるが、いたら不味かったりするのか」

男(男の娘は『不良女』の名前が出るたび、顔を強張らせて周囲をキョロキョロと警戒し始め出すのであった)

男「もしかして、あいつのこと苦手だったり?」

男の娘「……彼女、僕のこと男らしくないってからかってくるんだ」

~~回想1~~

不良女「お前本当に性別男なのかよ!ウソだろお前ー!ちょっと触らせてみろってー!」

男の娘「や、やめてよぉー! あっ……///」

~~~


男の娘「とかさ…」


~~回想2~~

不良女「お前何さっきからビクついてんの。度胸ねーな、それでも[ピーー]ついてんのかぁ? どれ、あたしに見せてみ! うりうり~!」

男の娘「だ、ダメ!そんなとこ掴んじゃ…あっ……///」

~~~


男の娘「といった感じで、事あるごとに僕の…その、触ってこようとするから…!」

男「役得じゃねーか!」

男の娘「そんなわけない!いつも無理矢理してくるんだ、恥ずかしいし、痛いもん!」

男「男の喜びを大切にしろよ、男の娘! 何もアクション無しで股間へアクション来るんだぜ!?」

男の娘「意味不明だよぉー!」

男「意味不明? 俺なら喜んでその身を捧げるというに!」

男の娘「じゃ、じゃあ……僕が男のあれをいきなりを掴んできたら、どうなの?///」

男(何度も言わせてもらうが、俺にそっちの気は皆無である。しかし、目の前にいる美少女に引けを取らぬ美少年ならば話は変わるだろう)

男「待ってろ!! いま下脱ぐからな、そこで待ってろよ……」

男の娘「ちょっとぉぉぉ~~~!!?///」アタフタ

男(ベルトを緩めようとする俺の雄姿を彼はその小さな顔を覆った両手の間から覗きみようとする。ハハ、まったく、ハレンチな奴め)

男(だがである。後頭部への強烈な一撃によって、二人の時間は破壊された)

転校生「この、超ド級最低クズの生ゴミスケベっ!! 変態っ!!」

男「……変態の一言で済むんじゃないだろうか」

転校生「物足りないぐらいよ! 朝っぱらから何変なことしようとしてるわけ!?」

男の娘「ち、違うよ 転校生さん! 僕が男をその気にさせちゃったから……!」

転校生「じゃああんたたち揃って変態じゃないっ!!」

男の娘「ぼ、僕も変態……!?」

男(どうやら彼にはこの二つ名の響きがお気に召さないらしい)

男「コンビ結成の良いキッカケができたな、男の娘。俺たち二人で『変態』だ」

転校生「バっカじゃないの……男の娘ごめんなさい。やっぱりこいつ一人に問題あったのよね? ね?」

男の娘「えーっと……そうかも?」

男「結成から5秒もせずにコンビ解散かよ」

男の娘「ぼ、僕は変態じゃないけど、いつだって男の味方だからね!? [ピーーーー]!」

転校生「はぁー…朝から呆れるぐらいいつも通りよね、あんた。お陰で私も一気に最高の気分だわ」

男「じゃあ問題ないじゃねーか。俺に感謝しとけよ!」

転校生「皮肉ってわかるかしら? ふん」

転校生「あ…ところでさっき幼馴染ちゃんと話たんだけれど、今日はみんなで一緒にご飯食べるって」

男「本題から逸れに逸れてたんだな。いま男の娘とそれについて話してたんだよ」

転校生「それで、アレに行くあんたたちって何なのよっ……?」

男の娘「脱線したのは僕にも原因があるんだよぉ~…転校生さんは、大丈夫なの? 来る?」

転校生「うん、きっと男もOKすると思ってすぐに了解って返事しちゃったわ。 か、勝手だったかしら…?」

男「ダメなんて言うわけないだろ。俺もお前と同じ考えで快く了解してやったよ」

転校生「あぁ、なら良かったわ。いつもあんたと二人きりのお昼も何だし、たまにはみんなと過ごすのも良いわよね!」

男(本当に二人きりの昼休みが長く続いていた。教室では周りの目が気になると、屋上へ行ってみたり、静まった空き教室を使ってみたり)

男(その整った環境下において、一切行為へ走ろうとしなかった俺はピュアな紳士としか言いようがない。今思えば惜しいこともしたが)

男(だが、もはや俺はその辺で負のオーラをまき散らすドーテイ諸君と違うところを知っておいて欲しい。この俺には敵うまいて)

男の娘「それじゃあみんな集まるんだね。だ、だったら僕も勇気出して参加してみようかな……」

転校生「勇気出して? ど、どうして? もしかしてあまり気が進まないの……?」

男(彼にとっては様々な要素が重なってそうなのだ、といった感じにはなると思われる)

男「不良女のことなら、次にお前に何かしようとしたら俺から注意してやる。安心しろ」

男「それだとかなり勿体ないと思うけどなぁー……!」

男の娘「い、嫌なものは嫌なの! もうっ!」

転校生「不良女ちゃん? ん? ん~…?」

男(話へ着いて行けず、俺たちを困った様子でオロオロ窺う可愛い転校生は放って、とりあえず男の娘も参加という事で話は進んだのである)

男(しかし初期と比べて難聴との付き合いも減ってきた。しばらくスキルが通じない転校生と一緒だったということもあるわけだが……なぜ攻略したキャラに難聴スキルが発動しないのか、疑問と思わないことがなかったわけではない)

男(だが、それを知ったところでである。無くなるのであれば、それに越したこともないだろう、と)

中断して夜か夕方に続くの巻

男(昼休み。俺を含めて他美少女5人が揃い、レッツパーリィである)

男(俺と不良女がバカをやり、それへ転校生がツッコミを入れる。その光景を観察して男の娘と幼馴染が微笑む。なんとバランスの良いことか)

男(ただ、そこへいまだ馴染めず端で大人しくしている美少女が約1名。お分かりの通り、彼女であった)

オカルト研「……」

男(もしかして余計なことをしてしまったか。という心配も杞憂で終わる)

男(ご覧の通りといった感じで)

不良女「あんた絶対着痩せするタイプだろ~? いつも体操着着替えたらスゲーもんなぁ」

オカルト研「な、なにを……はっ……だ、ダメよ。これは男くんだけのもの……!」

不良女「えー? 何て言ったか聞こえませんでした~……うりゃっ」ガシッ

オカルト研「ひんっ!?///」

幼馴染「オカルト研ちゃんは髪長くて綺麗だね。ツヤツヤで羨ましいなぁ、えへへ!」

オカルト研「あああ、あなたたち、私に無許可で勝手に触るなんて! 呪うわよぉぉ……!」

不良女「じゃあ呪われる前に精々こっちは楽しませてもらうっつー感じでな! きゃー!すっげーこれ!低反発!低反発!」

転校生「ある意味じゃ勇ましいスタンスよね……男の娘くん? さっきから何してるのよ?」

男の娘「いや、僕の代わりに犠牲となった彼女に感謝の意を…!」ググッ

オカルト研「そんなつもりなんて一切無いわぁっ……ひぅ!?///」

男「うーむ、何にしても良かったが、混沌だな。俺の入る隙間がないほどに」

男(さて、置いてけぼりを食らったとしても周りを複数の美少女が囲んでいるには違いない。つまり、これをプチハーレム状態と呼べるだろう)

男(ここにいる美少女で半分は埋まっている。もう5人揃えば形だけは完全なハーレムが出来上がるのだ。想像するだけでも胸踊る)

男(しかしだ、今さらだがハーレムを作るのは良しとして、周りに美少女を囲ませて具体的に何を楽しめばいいのだろう)

男(その答えは決まってはいない。一つでもない。思うがまま、好きに楽しめばいい。360度、どこを見渡そうと目の保養は約束され、美少女たちの甘い声が俺の名を囁くのだ)

男(いいじゃないか。まさに酒池肉林よ。全ての美少女が俺へ好意を持って接し、脇を温めてくれるのだぞ。まさに男の夢ではないか)

幼馴染「ねぇ、ちゃんと聞いてる? 男くん?」

男「はぇ? 何だって?」

幼馴染「今日のお弁当は100点満点中の何点かって。結構自信あるんだよ、厳しくどーぞ」

不良女「あーあー、ダメダメ。そいつ舌バカだから味なんてわかりっ子ないって!」

男「おーい、そいつは聞き捨てならんぞ……」

転校生「えぇっ、散々人の味覚がおかしいとかカラかっておいて自分が一番おかしかったってこと!? さ、さいていよっ」

男「ええいっ、人の言葉に一々流されるな!! 俺は正常だろう、なぁ!?」

男の娘「そ、それは分からないけど……男は僕が作ってくるお菓子美味しいって言ってくれるから……大丈夫だって思うよ!」

男(しまった。そいつは大丈夫ではないかもしれない)

男「ひ、人の舌がどうだろうとだっ。採点を任されたのは俺なんだからな! お前ら少し黙っておけ!」

転校生「上手く誤魔化したつもり? じゃあ私と勝負よ、変態バカ舌男。この幼馴染ちゃんが作った…えっとニモーノ」

オカルト研「肉じゃが…」ボソ

転校生「に、ニクジャガー!! これを私と食べ比べて、お互い味の感想を言い合うの。その後にみんなにも食べてもらって…」

男の娘「みんなの感想、というか多数派に近い感想が出てた方の舌が正常ってこと?」

転校生「その通りよ! ふふんっ、どう?これならシンプルで分かり易いし、ハッキリするんじゃないかしら?」

男「得意気に言ってるがな、多数の意見に縛られるなんぞ俺はご免だ! 横並びの意識なんぞくそ喰らえ、だ」

オカルト研「ええ、私も男くんに同意よ。理由は特にないけれども」

不良女「ないのかよ。まぁ、面倒に考えないでやってみよーぜ。結構楽しそうじゃんかぁ」

男「ふん……やらないとは一言も言っちゃいないが? ただ、ゲームの結果によって舌バカ、あるいは少数派だった奴らには」

男「……楽しい罰ゲームが必要だよなぁ~?」

男(ゲームには乗ってやろう。そしてこの状況を上手く使わせて頂こうというわけである)

男(白星を取る自信はある、たぶん。そうすれば、転校生は確定。あとは1人。幼馴染はあり得ないとして、残る3人の内から)

男(その辺りはランダムで任せるとしよう。もし引き分けてもという結果は想定しない。美少女2人をどう辱めてくれようかね)

幼馴染「罰ゲームなんてそんな」

不良女「いやー? 勝負は盛り上がってこそって感じじゃね。あたしはサンセ~!」

オカルト研「私も男くんがそうしたいなら……たとえそれが地獄だろうと付き合うわ」

男「阿鼻叫喚な光景には変わらんから安心しろ、オカルト研よ」

転校生「ふーん……まっ、私もそれで構わないわ。それで罰ゲームの内容は?」

男「エロくないがエロく聞こえる言葉を当人たちが考えて喋ってもらう」

転校生「……は?」

男「だから、エロくないがエロく聞こえ」

転校生「違うわよ!! 何よ、その滅茶苦茶ふざけてる罰ゲーム! まるっきり変態しか得しないじゃないのよっ!?」

男「バカめ。罰ゲームとは敗者を辱めるために存在する歴とした罰だぜ? 俺個人が喜ぶためのもんじゃない」

男(勿論楽しめること間違いないが。一応彼女がいる手前、俺へ何かイヤらしいことをしろとも言えないし、それでは残った美少女たちも面白くなかろう)

男(では、こうした羞恥を煽る、ギリギリのラインに踏み留まりながらエロスを生み出す罰がこの場では相応しい。ネタとしても、俺個人としても楽しめるのだからな)

男「結構公平な罰じゃないか? これぐらいが丁度良いと思うなぁ、俺は」

転校生「結局、あんたが、じゃないのよぉっ……!」

オカルト研「エロい、ことば……エロ……はぅ……///」

男「オカルト研はノリノリみたいだし、他のみんなはどうだ。さっさとゲームしようぜ?」

男の娘「いまの男、すっごく悪い顔してると思うの僕だけかな……」

幼馴染「別にいいんじゃない? だって男くんも負けちゃう可能性あるしね。むしろ、負けるかも?」

男「ふっ、冗談。俺はかならず勝利して汚名返上と同時に、転校生に恥をかかせてやろう。断言だ!」

転校生「じ……じょ、上等じゃないっ!! 絶対あんたがおかしいってこと思い知らせてやるわ!」

不良女「ほい決まったね。んじゃ、ゲームと罰ゲームはそれで早速始めてもらいましょーかぁ? にししっ」

転校生「後悔しないでよ、後で泣いて謝っても笑ってやるんだから!」

男「ありえない。お前が俺に勝てるわけねーだろ。ほれ、レディファーストだぞ。先手は譲ってやろうじゃないか」

転校生「うっ……」

幼馴染「どっちが先でも変わらないよ。大丈夫、男くんってゲームすごく弱い人だから。ふぁいとー!」

男(それに限るのは幼馴染を相手にした時のみ。俺は美少女殺しのハーレム主人公である。本番での対美少女戦ならば、負け知らず)

男(たかがゲーム、されどゲーム。味覚比べに本気も糞もないが、精々足掻けよ 転校生)

幼馴染「この肉じゃがは昨日の晩ご飯の残りなんだけど、一晩置いたから味が染みて美味しいと思うよ」

不良女「おーっと、料理人直々から一押しがついたぁ! はたして!?」

転校生「はぁぁー……ニモノ……じゃなくて、ニックジャガー……ごくり」

不良女「さすがイギリスからの転校生! 肉じゃがと某有名ミュージシャンをかけて余裕を見せていくぅ!」

男「素で言ったんだと思うんだけどな。ほら、早くしろ。後がつっかえてんだぜ!」

転校生「わ、わかってるわ! 食べて感想を言うだけよ、とっても簡単じゃない……食べるわよ

転校生「……食べるんだからねっ!?」

男「さっさと食えよ (周りから急かされ、遂に自分の弁当箱へよそった幼馴染特製肉じゃがへフォークが伸びる)」

不良女「まずは! ……肉じゃがのメインと言わざるをえないっ、肉が入った!」

幼馴染「お肉は昨日のスーパーで安売りしてた牛薄切り肉を使ってます。安さと味は比例しません」

幼馴染「その薄いながらも確かに満足を得られる食感。噛めば噛むほど染み込んだ甘じょっぱい味が…」

男の娘「味のこと言ったらアウトじゃない?」

幼馴染「あっ! いまのカットだよぉ~っ!?」アタフタ

不良女「おっと、うっかり! いまのコメントはなかったことになったぁー!」

男「あの、誰に向けて言ってるんだお前らは」

転校生「ふぅ……美味しいわよ。すごく」

不良女「ああっ、『美味しい』頂きましたぁ~~~!!」

オカルト研「肉だけでは判断はつかないはず。にんじん、ぐずぐずに煮えて溶けかけの玉ねぎ、そして肉じゃがもう一つのメイン…」

オカルト研「じゃがいも……! やっぱり肉じゃがと言えばじゃがいも。次で纏まった感想を貰いたいところ」

幼馴染「つ、作ったのはあたしなんだけど……うん、まぁ食べて聞かせて、転校生ちゃん!」

不良女「挑戦者へ審査員一同の注目が集まるぅー……さぁ、イギリス底力が出されるかっ!?」

転校生「もうっ、頼むから変な煽り入れたりジロジロ見ないでよぉ!! 恥ずかしいっ…///」

男「次は美味しいだなんて当たり障りのない言葉は無しだぜ。自分の舌と相談して、よく考えてコメントすることだなぁー」

転校生「わ、わかってるわよ……じゃあ次、最後……じゃがいも、食べるわ」

転校生「……食べるわよっ!?」

男の娘「ど、どうぞ……?」

不良女「転校生の口へ、じゃがいもが、じゃがいもが、は…入ったぁー!!」

不良女「ゆっくりと味わい確かめるように何度も、何度も芋を噛みぅー……あっと、まだ確かめるぅー?」

転校生「うっ、ふるひゃいっ(うるさい)!!///」ブンブンッ

男「それで、味のご感想は?」

転校生「ま、待って! まだ……んぐっ……い、いいわよ」

不良女「挑戦者の準備が整った様子だぁー。さぁ、これで決めてもらいたい! 肉じゃがの味は!?」

オカルト研「肉じゃがは肉じゃがよ。カレーの成りそこない」

「…………」

幼馴染「そ、そんなことないよー!?」

転校生「あの、肉じゃがって料理自体あまり口にしたことなかったんだけど……美味しかったわ。日本独特の味付けって感じで」

男「違うちがう。俺たちはお前が感じた味そのものを詳しく聞きたいんだよ。ほら、もっと細かに!!」

転校生「え~……うぅ……えっと、しょっぱさが少し強くて、でも噛んでるうちに甘みも出てきて…」

転校生「ぱ、パンに挟むともっと美味しくなるんじゃないかしら!?」

男(一同、沈黙。米との相性を知らずとは国の違いとは残酷である。必死にまだ何か言おうとしている転校生の肩を、俺たちは軽く叩いてやるのであった)

不良女「簡単にまとめると転校生の感想は、米との相性抜群なレベルで甘じょっぱかった! ってか」

転校生「お米なんて言ってないんだけど……ま、まぁそれでいいわ。次は男! あんたの番よ!」

男「いいですとも?」

男(あらかじめ肉じゃがを弁当蓋へよそっておいた。転校生の感想はいたって凡庸。こちらもそれと被る可能性もある。……だが、俺はもうこの肉じゃがへ隠された味に気づいているのだ)

ここまで。明後日かもしれないし、明日かもしれない

ごめん明日に続く!

男(このゲーム、自分の味覚の良さを示すことはさほど重要ではない。いかに共感を得られるかが問題となる)

男(その為転校生のような当たり障りのない凡庸的感想は強い。言ったもん勝ちという奴である)

男(だが、俺はこの点を重視せずに挑もうとした。何故か? 決まっている。共感も何も、俺には始めから確実に2人の味方がバックにいるのだ)

男(それが男の娘、オカルト研。彼、彼女らは異常なほど俺に夢中である。それは言動にも行動にもストレートに表れており、俺の勝利の為ならば犠牲を厭わない)

男(これは確信である。さて、ここでどうして幼馴染と不良女を外したか。察しが良い人なら既に理解できている筈)

男(彼女らはこの場において、愛、よりも、遊び、を優先する傾向が高いのだ。すなわち、何もせずとも味方へ回ってくれるようなタイプではない)

男(ここでまた俺は考え直すのだ。彼女らをこちら側へ着けるには? やはり共感を得られる感想が欲しい。それも転校生を超えるソレを)

転校生「ん~? どうしたのよ、まさか直前になって自信がなくなったの? ふふーんっ」

男「そんな風にお前には見えるのか? 最初に言っただろ。かならずお前を負かして恥かかすってなぁ~!」

不良女「男は転校生に対してとても挑戦的だぁー!! 煽って行く、煽って行くぅ!!」

男の娘「ところでさっきから何で実況まがいなこと喋ってるの……?」

不良女「かぁーっ! わかってねーなぁ、こういうのには盛り上げ役ってのが大切なの。淡々と飯食われて楽しいゲームか、それ?」

オカルト研「一理ある。でも今から男くんが食べる番、黙って見守るべきだと思う。いいえ、黙って」

不良女「だーから盛り上げ……はぁ……じゃあ早く食えよオラぁ」

男「逆に食いづらくなっただろうが……まぁ、いい。あまり待たせちゃ悪いからな」

男(転校生を超えた感想、そして二人にも理解されやすい単純かつ明確なものを言わねば)

男(仮に俺が適当に答えた結果、男の娘とオカルト研はかならずこちら側と想定しても、残る2人の内どちらかの賛成を得られなければ引き分ける)

男(だが、こう考えるとしようか。裏切りさえなければ転校生の勝利はけしてあり得ない。つまり、俺の敗北もないわけだ)

男(このゲームは始めから俺がどう幼馴染と不良女を味方に着けるかが試されるものであった。できるなら、罰ゲームのことも考えると二人の内一人を獲得できればそれで良い)

男(幼馴染か不良女、恥じらいつつも卑猥に聴こえる言葉を出す姿を想像すれば、どちらも生唾ゴクリ。だが、ここで狙いは幼馴染一人へ絞ることにする)

男(先程、俺が肉じゃがへ隠された味とやらを語ったことは覚えているだろうか?…そう、俺ならばわかる。料理を作った本人は、なにせ俺の家で、すぐ近くでそれを作ったのだから)

男「幼馴染。言っておくが、昨日の夜も食ったし、こいつの点数は割愛するからな」

幼馴染「えぇ! でも一晩置いてまた美味しくなってるんだよ!」

男「そもそも俺は単品に点数はつけん。飯、おかず、汁、全部セットになってるもので味と満足度から採点するのだ!」

転校生「そんなことは今はどうでもいいの。それより早く食べちゃいなさいよ!」

男「ああ、そうだったなぁ。でもいいのか? 敗北までの時間が縮まるだけだぜ……」

転校生「うるさいっ!! 縮まってるのはお昼休みの時間だけよ、あんたがそうやって伸ばしてる限りっ!」

男(それもそうだと、遂に俺は箸を取り、蓋の上に盛られた肉じゃがを豪快にかっこむ)

不良女「うわああぁ~~~っ!? 一気にいったぁー! 味わう気あんのかコイツ!」

オカルト研「[ピーーーー]みたいで素敵……///」

幼馴染「点数つけないとしてももっとちゃんと味わって食べてよー!」

男「ふぉうふっへほ、おはへのひょーひふぁふふぁひからへぇいきだ……!」

男の娘「飲み込んでから喋ろうよ、男。何言ってるかわかんないから……」

男(勝利をこの手に。大体の感想は俺も転校生とほとんど同じである。甘じょっぱい。だが、俺は知っている。幼馴染はこの肉じゃが作成の過程で麺つゆを使ったことを)

男(アレには鰹節出汁がよく効いていた……加えて麺つゆ独特のしょっぱさ。なるほど、よく味わってみれば甘さはかなり控えめではないか)

男(よし、多少卑怯ではあるが麺つゆを前面に出したグルメ的コメントをここで繰りだ……いや、待て。何だこれは?)

男「(……少し、すっぱい) ……はっ」ビクッ

オカルト研「どうしたの、男くん。あなたの中の悪霊が囁くの?」

不良女「何じゃそりゃ。で、どうなのよ? 転校生とそのまんまって感じか? でもそれじゃあ面白くないよな、勝負的に」

幼馴染「美味しいって思ってくれるだけで私的には勝ちかなぁ~♪ ふふふっ」

男「……幼馴染、美味い。いや、美味かったぞ。確かに転校生と大体の感想は同じだ」

転校生「もしかして私に先に食べさせて最初から真似る気だったとかじゃないでしょうね? だったらズルいわよ」

男「そんなわけあるか。勝負はフェアにだ……ただ、これを言っていいのかどうか」

男の娘「どういうこと? 何か隠し味的なものに気付いたとか!?」

男「隠し……ていうか、まぁ、素材が新しい味を生み出しちゃったというか……一晩置かれたことで」

幼馴染「えっ」

転校生「じ、焦らさないでさっさと言いなさいよ。何が新しいっていうの? 私がそれに気付けなかったって!?」

男「知るかそんなもん。お前の舌が正常か、俺のがハズレだったかだろう!!」

男「じゃがいもが……すっぱいんだよ」

転校生「……ん? 甘じょっぱい上に、すっぱかったの? ニクジャガーって」

不良女「ま、まさか……!」

幼馴染「そそそそ、そんなわけないよぉ!? だ、だってしっかり冷蔵庫に入れたし、朝だって火通したよー!?」

男の娘「と、とにかくみんなも食べてみたら分かるんじゃないかな。ちょっと怖いけど……」

男「すっぱさは本当に微かだった。まだ食えないことはないと思う……」

男(俺に続き、皆がおそるおそる肉じゃがへ箸をつけ始める。じゃがいもを掴み、凝視しては匂いを嗅いでみたりと非常に慎重。当たり前である)

男(ようやく事態を飲み込めた転校生は、自分が手をつけた肉じゃがを見つめて青白い顔で体をプルプル震わせていたのであった)

幼馴染「う、うそだよ。そんなわけないから……だ、だって」

男「食ってからもう一度その言葉を改め直しても遅くはないからな!」

幼馴染「あああ、あわ、あわわわわっ……!」

男(俺と転校生を除き、一同がそれらを口へ放る。皆、神妙な顔付きで顎をゆっくり動かし、一人は飲み物で一気に流し込んでしまったという)

男「一応言っておくけどな、転校生。勝負にハプニングは付きものだ。つまり何があろうと勝ち負けはしっかり区別させてもらおうか」

転校生「は、はぁぁぁ~~~!? 冗談でしょ!? だってこれもしかしたら」

男「もしかして、なんて通用しないぞ! 勝負の世界とは非情であることを知れ、イギリス帰り」

転校生「イギリス全然関係ないしっ……!!」

男「さてと、お前らもそれぞれ十分味わえた頃だろう。それじゃあ言ってくれ、いや、挙手してくれないか」

男「俺に同意の奴、挙手しろ!」

男の娘「ごめん、転校生さん。幼馴染さん……」ス

オカルト研「早すぎた。いいえ、むしろ遅すぎた……腐ってたわ」ス

幼馴染「っ!? ……ふ、不良女ちゃん?」ビクゥッ

不良女「……あー、ごめんね。ダメだったわ」ス

転校生「なぁっー!?」

男「……じゃあ、せっかくだから訊いておいてやろうかねぇ? 転校生に同意の奴は?」

転校生「くっ、ぐぬぬぅー……はいっ! はいはい!」バッ

男「お前はダメだ!! だが、幼馴染。それはどういうつもりなのかなぁー……」

幼馴染「て、転校生ちゃんが正しいって思っただけで……あの、そのぉー……はい」ス

男「フフ、往生際が悪い奴め。そんなに自分が作ったものを素直に認められないか?」

男の娘「ていうか作ったときには大丈夫だったんだよね。昨日も今日も少し気温高くて暖かったから……たぶん」

幼馴染「あうぅっ……!」

不良女「あんたは悪くないって。悪いのはタイミングだからさぁ」

オカルト研「ただし、負けは負けよ。敗者には相応の罰が与えられる……エロ」

転校生・幼馴染「っ!!///」ビクンッ

男(幼馴染は意地でも転校生側から離れようとはしなかった。認めれば楽になれたものを。これが意地か)

男(二人は見るみる内に小さくなっていき、汗を垂らして俺たちから目線を必死に逸らし始める。だが、可哀想だとは思わん。むしろ興奮してきた……服を脱げ)

男「(なんて冗談はともかく、である) さぁ、味覚障害ども。約束通り罰ゲームがお前たちに下されるわけ、だ」

転校生「鬼、悪魔ぁ、変態っ……ド変態スケベぇ!!///」

男「はっはっはぁー!! なにを言おうが許されることはあり得ないぜ。さっさとエロく聞こえる言葉を考えて俺たちの前で発表しろ! しっかり起立してだ!」

幼馴染「あ、あーっ! そ、そろそろ昼休みも終わるころじゃない? 教室に戻らないとー……あっ、まだ全然時間ある」

不良女「こうなったら腹括って一発言って貰わないとなぁ~……わくわく、わくわく!」

オカルト研「どんな言葉が出てくるかで、彼女たちの邪念がよくわかる。一体どんな大物をその身に宿しているのかしら」

転校生「変なこと言わないでよっ!? うぅ~……き、急にそんなこと考え付けって言われてもっ……///」

幼馴染「そ、そうだよねぇ……難しいっていうか、あはは……あ~……///」

男(転校生と幼馴染は並んで立ち尽くすのみ。ただ、それだけというわけでもない)

男(必死に頭を捻って単語を自身の辞書から模索しようとするも、そのたび顔を赤くして体をくねらせてみたり、アダルトな言葉が頭を過ぎったのかブンブンと頭を振ってみせる)

男(羞恥心が彼女たちを完全に支配してしまった。俺は、美少女がひたすらいやらしい事を考えようとする様に興奮を隠せずにいられなかった)

男「どうしたよぅ? 思いつかないってことはないだろ。色々あるだろうが? 食べ物でも、何かの専門用語でも」

転校生「じゃ、じゃああんたが例として何か一つ挙げてよ……」

男「俺か? 俺が言ってもセクハラ染みてて嫌だろ。それに俺は勝った。罰は受けない」

不良女「まぁ、試しに一つぐらい言ってやりゃいいじゃんか。あんたならすぐ思いつくでしょ?」

男「思いつくとも。じゃあ簡単なところから一つだけ……青函トンネル」

男(本当に簡単なところからである。言われて傍観者2名はしばらく考え、「あー」と声を揃える。内1名は)

男の娘「わ、わっ……男ぉ、[ピーーーーーー]、はずかしいよぉ……///」

男(そして、転校生と幼馴染はそのような単語を模索してる内に頭の中がピンク一色に変わったか、聞いただけでさらに恥じらいを強くし、黙り込んでしまった)

男「どうだ? 今のをお手本に何かぐっと来る単語を出してこい」

幼馴染「えっ……う、うーん……もう一つぐらい……お願いできないかな……」

男「もう一つだと。お前、そうやって俺にだけ言わせて時間まで逃げようとしてるわけじゃないだろうな?」

幼馴染「ち、違うよ!? ただ、やっぱりまだよくわかんなくて……それに[ピーーーーーーーー]///」

男(まさか。まさか俺が言うことで幼馴染は興奮を得ているのではないだろうか。だとすれば、なんていやらしい美少女だ。エロスめ)

男「中学生、とかどうだろう」

不良女「は? 何だそれ。どこがエロく聞こえるっての? 今のはあたしもよくわかんねぇーよ」

男の娘「え、えっと、僕もわからなかったかな。……あんまりわからない方が良い気もするけれど」

オカルト研「……なるほど。考えるな、感じろということよ」

男「ああ!その通りだ、俺が言いたいことはそれ! ていうか『中学生』の言葉がかもしだすエロさに何故気づかない?」

転校生「あんたにしか理解できないわよ、変態男……」

男「バカ野郎。『中学生』という言葉を色んな角度から見てみろ。じっくり、ねっとりとだ。想像してみるのも良い。紙に書いて眺めてみるのも、舐めるのも良いかもしれん」

男「さすれば開ける修羅の門、といった感じだろうか。説明するのは難しいが、エロに違いない!」

「…………」

男「いや、言わといて全員で引くなよ……傷つくから」

幼馴染「変態……」ぼそ

男「言うなよっ……!」

男「とにかくさっさと聞かせてもらおうか。俺からはもう十分言ってやったんだからな、もう大丈夫だろう!」

転校生「ま、待ちなさいよっ……心の準備が」

オカルト研「問題ない。私たちはとうの昔に準備できているわ。さぁ」

転校生「さぁ、じゃなくて!! 私たちの方が……///」

不良女「何にしても早くやれよ~罰ゲームなんだし、恥ずかしいのは当たり前でしょ? ほれほれ」

男の娘「ちょっと可哀想になってきちゃったかなぁー……」

男「哀れみなんて必要ないね。こいつは虐めじゃない。本人たちも最初から了解した上でだ!」

男「今から5秒数える。それまでに言う事ができなければ、更なる罰が加えられると思え! ……次は生易しくないぜ」

転校生・幼馴染「ひっ!?」

転校生「わ、わかったわよ!! 言えばいいんでしょ!? 言えばっ///」

男(全員の視線が転校生へ一点集中される。俺を含めて皆が期待でいっぱいである)

男(それだけで転校生は一気に焦り始め、ふたたび単語を探し始める。そのまま皆で期待の眼差しを向け続けていると)

転校生「……思いついたから、言うわよ…///」

男(スカートの裾をぎゅうっと掴み、必死に恥じらいを隠そうとしている。が、もはやその爆発寸前な赤面でバレバレだ)

男(意を決したのか、それでも照れながら、下向きかげんで転校生はそれを言い放った。蚊の鳴くような声で)

転校生「うぅ~……///」モジモジ

男の娘「えっと、ごめん。転校生さん。全然聞こえなかったかも……」

転校生「うっ! で、でもちゃんと今言ったわ。だからもういいでしょ!?」

オカルト研「良くない。この罰は言うことに意義があるのではなく、私たちに聞かせることに意義がある」

男「ああ、オカルト研の言う通りだな。今のじゃ全然だぜ。もっと大きな声で、はい、もう一回……」

転校生「あああ、あんたたちって鬼畜よぉっ!! 揃いも揃って、こ、こんな……!」

転校生「…………くりすます」

男「え?何だって?」

転校生「だ、だから『クリスマス』って言ったのっ!!///」

不良女「クリスマス……?」  男の娘「クリスマス……」  オカルト研「クリ、すます……」

男「クリスマスなのか……」

幼馴染「えーっと……クリスマス?」

転校生「あ、あぁ、ああ~~~……///」

「クリスマスぅ……」

転校生「いやあああぁぁーーー!! もう何なのよぉぉぉ~~~っ!!?///」

不良女「そっか、そっかー。転校生には『クリスマス』がいやらしい言葉に聞こえるんだなぁー」

転校生「ちょおっ……!?」

オカルト研「聖夜を……聖夜……邪念が溜まっているわ、あなたは」

転校生「ぐうっっっ!?」

男「転校生、クリスマスが待ち遠しいな。一体何考えてんだか」

転校生「あんたからは一番言われたくないわよっ!! もう、いやぁ……」

男(散々俺たちから遊ばれた転校生は真っ白な灰と化し、その場にぺたりと座り込み、両手で顔を覆ってしまったのであった)

男(さて、残るは幼馴染のみ。転校生が倒れる様を見て既に意気消沈気味となっているが、攻撃をここで止めるつもりはない)

幼馴染「転校生ちゃん……」

男「ほら、人の心配してる暇なんてないぞ。次はお前の番なんだからなぁ……」

男「じゃあ言ってもらおうか? 転校生を超える超ド級の爆弾ってやつをさぁー!!」

幼馴染「う、うん……わかったよ……[ピーーーーーー]///」

男(幼馴染も覚悟が決まったようだ。俺たちは転校生へ続き、幼馴染へ注目する)

男(彼女も転校生同様恥じらいを隠せず、頬をピンク色に染め、やけに色気を漂わせているのであった。だから、イイ)

オカルト研「それじゃあ今度こそあなたにも喋ってもらう。あなたにとってエロい響きを持つ何でもない言葉を……!」

幼馴染「じゃ、じゃあ……言うからね……一度だけだよ?///」

不良女「焦らすなっ、もう行けってば!!」

幼馴染「[ピッ]、[ピーーーーーー]……っ!」

男「……は?」

幼馴染「はぁ……もうっ、こんなの最低……///」

男の娘「うわぁ、い、いまのは……///」  不良女「マジか……ちょっとびっくり///」  オカルト研「いやらしい女よ……///」

男「ちょっと待ってくれ。え?何て言ったんだ? 幼馴染はいま何てエロい単語を言ったんだ?」

男「幼馴染はっ、何て、エロいっ、単語を言ったんだよっ!?」

幼馴染「一度だけって言ったじゃん。もう絶対いいませんっ……[ピーーーー]///」

男「言ってくれよ!? なぁ、お前らなんて言ったか聞こえたんだろ? 教えてくれないか?」

男の娘「……凄すぎて僕の口からは、ちょっと」  不良女「あ、あたしも嫌だわ。無理無理!」

男「オカルト研、頼む……!!」

オカルト研「[ピッ]、[ピーーーーー]……///」

男「ウソだろ、おい……バカな (難聴とは罪である。恥じらいに反応した結果、どうやら何でもない単語すらフィルターに引っ掛かり、ただ俺一人不完全燃焼とさせられたわけだった)」

男(昼休みはここで終了したらしい。放心した俺と転校生は、気づいた時には席に座っていた。試合に勝って勝負に負けた。ゆえに怨む、己に与えられし呪いを)

ここまで。たぶん明日

男(既にお忘れの事だと思い一応教えておこう。俺はこれでも生徒会役員の一員である)

男(与えられた役は書記。で、あるからして今こうして生徒会が月に1度発行する便りを作成すべく、PCと睨めっこしているわけなのだ)

男「文化祭ね……あれ、今のシーズンにあるのが普通だったっけ?」

先輩「男くぅ~ん、お仕事は捗っちゃってますかなぁ~? お姉さんが肩揉みしてリラックスさせよっか~……?」

男「言ってることとやろうとしてること、たぶん違いますよね。どうして執拗に俺の耳狙ってくるんです!?」

生徒会長「書記ぃ!! 仕事ぉーッ!!」

先輩「残念! もう任された仕事終わっちゃって暇してるところでしたー! スーパー余裕っす! わたしスーパーグッジョブ!」

生徒会長「くっ……だったら先に部室へ向かっていたらどうなんだ。男くんの邪魔をするのは感心しないぞ」

男「だったら手伝ってくれるとスーパー助かるんですけど」

先輩「おろろ? それは難しい相談だねぇ、チミィ。わたしってばこういうパソコン使うの苦手でさー。文章考えたりすんのもねっ!」

男(いつも彼女の個性的なトークを見せられる側としても、先輩にこういった仕事をさせるのはある意味難しいと思うわけだ)

男「文化祭近いんですよね。俺たち生徒会もこれに向けて何かやるんですか?」

先輩「え、知らない。わたし新人。あなたも新人。オーケー?」

男「その通り。訊く相手を間違えていた……生徒会長?」

生徒会長「ああ、各委員会からの意見をまとめたり、出費を抑えるため予算の見直しとか……まぁ、基本的には文化祭実行委員がメインだからな。私たちはちょっとした手伝いぐらいさ」

先輩「全然ちょっとって感じしない予感がたっぷりするんですけど……!」

生徒会長「会計に全て押し付けるわけではないよ。私たち皆で手分けしたさ、去年はな」

男「今年からやり方が変わらないことを祈るだけですよ、俺たち下働き組としちゃあ」

男(それにしても文化祭。美味しいイベントを前にしていたとは。開かれるのはまだ少し先の話だが、楽しめないのは惜しい)

男(悔しさを抱えつつ、後ろで俺の背中に指文字をすっすっと書く先輩に対応しつつ、俺は相変わらずPCと睨み合いを続けていた)

先輩「は、はーい! じゃあ今のは何て書いてたでしょーかっ!?///」

男「ハァン、はぁはぁ……い、いまのは…… (感度良好の背は『LOVE』の文字に歓喜をあげようとしていた。何でもないこの場面で、積極的すぎる。先輩よ)」

先輩「次もハズレたら……罰として、えーっと……[ピーーーーー]しちゃおっかなぁー……///」

男「あ、当てたら!? 当てたら何があるんです!?」

生徒会長「……彼の仕事の邪魔をするぐらいなら、そろそろ出て行ってもらおうかな?」

先輩「えー! ちぇ、わかったよぉー。それじゃあ先に部室行って待ってる」

先輩「……男くん、転校生ちゃんがいるのに変なこと期待しちゃダメ、だよ?」

男「そっ!? そんなわけないじゃないですかー! 調子乗ってみただけですよー!はっはっはっ……」

先輩「うん、うん。変な誘惑に乗せられちゃダメだからねっ! [ピーーーーー]……[ピーーーーーーーーーー]」

男「えっ、今なんて言いました? (非常に分かり易い人だ、彼女は。隠れた台詞が何かは知らないが、それ故に心苦しいではないか)」

先輩「な、何でもなぁーい!! 気のせい、気のせい!! じゃあねっ……」

男(嵐はピューッと吹いて、サーッと立ち去った。生徒会室は俺たち物静かな役員を残し、しばしの沈黙に包まれる)

「あの、生徒会長。書記の方の計算見直したら少しズレてました……」

生徒会長「雑ぅ!? どうりで異様に終えるのが早かったわけだ……後で家に持ち帰らせてやり直させる」

男「先輩さんらしいですよね。生徒会長、俺もこんな感じで終えたんですけれど見てもらえないですか?」

生徒会長「ああ、いいだろう。きみといえども厳しく拝見させてもらうよ」

男(お手柔らかにお願いしたい。その胸に抱えたボインのように)

生徒会長「……最近どうなんだ?」

男「はい?」

生徒会長「その……転校生との付き合いというか、う、上手くやれてるのかな」

男「上手くやれてるかは自分でもよくわからないけど、まぁ楽しくやれてますよ。お互いに」

生徒会長「そ、そうなのか……それは良いことだな……これからも応援させてもらうとしよう」

生徒会長「[ピーーーーーーーーーーーーーーーーガーーーーーーーーーーーーーーーーーーー]」

男「すみません。いま何て?」

生徒会長「い、いや……すまない。いまする話ではなかったな。気にしないでくれ……」

男(彼女としては、せっかくここまで俺と近づけたというのに、自分が知らぬ間に意中の相手は自分ではない他の女子を選んでしまった)

男(それだけであの時の動揺ぶりとショックの受け方に納得がつく。今だってどうにか自分へ振り向いてくれないかと思っていることだろう)

男(なにもそれは彼女に限った話ではなかった。他の美少女たちにも同じことが言える。だからこそ、今日の昼休みの和やかさは奇跡に等しい)

生徒会長「固いな」

男「えっ?」

生徒会長「ここが……って、きみは一体どこを見て言っているんだ!?///」

男「ち、ちょっとしたジョークみたいなものですよ! 嫌だなぁー!」

生徒会長「男くんの[ピーーーー]……文章だ。少し硬すぎるんだよ」

生徒会長「生徒へ見せることを目的とした便りなのだから、あまり堅苦しく内容では読む気が失せるというものだろう?」

男「ハハ、そもそも目を通す前に捨て……いや、今のも冗談でした (むっとして俺を疑うように睨む生徒会長。くだけている部分もあるが、やはり根は真面目)」

生徒会長「コホン。とにかく、構成などはこれで悪くはない。期限までまだ余裕も残っているし、些細な訂正ぐらいだ。ゆっくりと進めてもらって構わない」

生徒会長「うん、今日はこれで十分だろう。きみも部室へ行ってやってくれ」

男「いいんですか? でも生徒会長は」

生徒会長「私ももう少ししたら向かうとするよ。きみがいないとアレの相手を務める二人が苦労するだろう……?」

男(アレ……なるほど。アレか)

生徒会長「それにしても彼女には困ったものだ。今も昔も変わらないがな、フフッ」

生徒会長「今こうしてあの子と一緒にいられるのも、全て男くんのお陰といって過言ではないな。きみには感謝しきれないよ」

男「俺がやったことなんて誰でもできますよ。ただ、代わりを務めただけですってば」

生徒会長「……き、きみのそういうところが……私は……///」

生徒会長「それだけに……とても[ピーーーーーーーー]」

男(どうしてもネガティブな方向へ持っていきたがる。これが女心という奴か? 知らん、理解できない。だから)

生徒会長「さて、もう行くといい。彼女たちもきみを待ち侘びている頃だろうから」

男「あっ、ちょっと待って。生徒会長。肩に糸クズが……うおおぉぉ~~~!?」

生徒会長「はっ!?」

男(こういったことができてしまうのである。俺と生徒会長は抱き合う形で倒れ、それを他の役員たちが目を丸にして追ったわけである)

男「だ、大丈夫ですか 生徒会長!?」

生徒会長「やぁっ……男くんっ、近い……よ……こんなに[ピーーーーーー]///」

男(互いの体が隙間なくしっかり密着。良い香りもすれば、全身で生徒会長の柔らかさを感じられたのだ)

男(胸が、大きな大きな胸が、俺の胸板に押し潰されむにゅっと溢れる。俺たちは役員たちに見守られる中、体を熱くさせた)

生徒会長「み、みんなが見てるから……っ……///」

「あ、あの生徒会長が……」  「いやぁぁぁ!!」  「変態!!」

男「ちょっと待ってくれ! いまのはただの事故だ!」

生徒会長「そ、そうだ。皆、一旦落ち着いてくれ! 私たちは別に……!」

生徒会長「男くん、後のことは私に任せて行ってくれ。この場にきみが居ては彼らに言い訳も通用しそうにない!」

男「生徒会長っ……わかりました。あなた一人残して逃げる俺をどうか許してくれ!!」

男(偶然でもなく、変態でもあり、全ては俺の思うがままに行われたこと。悪いと思うか? 思いますとも)

男(生徒会長を残して部屋を飛び出した俺を、色々な意味での彼女が待っていた。壁に寄りかかって今か今かと。しかし、中の騒ぎを察してか俺の顔を見るや否や)

転校生「どこでもあんたって変態よね」

男「転校生。おい、部室で待ってたんじゃなかったのか? 中に用事でも?」

男(首を横に振って否定した後、俺を指差して彼女は嬉しい言葉を言ったのである)

転校生「もうすぐ終わる頃かと思って……ちょっとあんたを迎えに来てみただけよ、バカっ」

男「先輩さんから逃げてくるための口実ってわけじゃないだろうなぁー?」

転校生「そんなわけ……うん、まぁ……」

男「何だよその反応。まぁ、まさか待ってくれてるとは思わなかったぞ。嬉しいよ」

転校生「か、彼女として当然のことをしたまでじゃない! えへへ……///」

転校生「生徒会長さんは?」

男「まだ仕事が残ってるらしい。先に部室に行ってろってよ、そういうわけだし行こうぜ。不良女が心配だ」

転校生「あはは、何も変なことされてないといいんだけれど……ん」

男(部室へ向かう途中、転校生が不意に俺の制服の袖を掴んできたのだ。どうしたと尋ねると)

転校生「だれもいま廊下通ってないし……でも、手を繋いでるの見られたら恥ずかしいから……」

男「うぐふぅッッッ!!」

転校生「な、何よっ!? 悪いっていうの!?///」

男「い、いや……悪いとかそういう問題ではなく……高ぶったというかねっ……!」

男(あざとい。さりげないこのアピールが非常にあざとい。だが、美少女だから許されるのだろうか)

男(大いに許せるどころか、涎が口から漏れ出そうになったのだ。まるで心臓を一掴みされた気分である)

転校生「着いたわね。……ねぇ、何か中から変な声聞こえてこない?」

男「ああ、俺の気のせいと思っていたかったが……失礼します」

男(と、部室の戸をそっと開いて中を覗いてみれば、そこには先輩が不良女から制服を剥ぎ取っている真っ最中。下着が丸見えだ)

不良女「やめろぉー!! バカっ、よせ!! うわあああぁぁぁ~~~っ!?」

先輩「ゲヘヘ!! 良いではないか、良いではないかぁーっ!!」

男「これは…… (想像以上の光景が目の前に広がる。唖然としつつも、隣の転校生へ視線を移せば引きつった表情をして硬直していた)」

不良女「ふっざけんなよこのアホブチョー……あっ、ほんとっ、マジで無理っ! やめろって言ってんだよ! あぁーやめぇっ!!」

先輩「まぁーまぁまぁまぁ。すぐに済んじゃうからさー! 絶対不良女ちゃんも気に入りますからさぁー!」

男「逃げてきて良かったな、転校生。俺の存在に感謝してもらおうか」

転校生「言葉にできないってこういうことなのかしら……?」

先輩「いいから一回脱いじゃえって、部長命令だよ! ……おっ、男くんに転校生ちゃーん! 来てたんだ!」

不良女「はっ!? お、おい あたしのこと助けろ! 助けてぇっ!!」

男・転校生「……失礼しました」

不良女「待って! 待てよオイ! 見捨てんなっ!?」

男「いや、でもお取り込み中みたいだったしなぁ。それに俺に下着見られて平気か、お前?」

不良女「あっ……バカ変態この野郎っ! ジロジロ見てんじゃねーよぉ!///」

男「だろう? じゃあ終わるまで外で待ってるしかないよな、転校生」

転校生「終わったら言ってください、先輩さん。私たち邪魔しませんから」

先輩「ほい!」

不良女「ほい!、じゃねぇーよっ!?」

転校生「ていうか、どうして急にそんなことされてるの? あっ、今の訊いたら悪いことだったかしら……」

不良女「悪くない! むしろそっちに訊いて!」

先輩「いやぁー、実は演劇部から良いもの借りてきちゃって。んで、不良女ちゃんならサイズも丁度良いし、似合いそうかなーと?」

男(不良女を片手で捕まえたまま、演劇部から借りてきたであろうフリルがあしらわれたメイド服を俺たちの前へ突き出してきた)

転校生「わぁ~可愛い服じゃない! でも、どうして借りてきちゃったんですか……部活に関係ある?」

先輩「ラーメン愛好会に新風を巻き起こそうと思いまして!!」

不良女「何も起きねぇーよ!!」

男「ふむ、不良女のメイド姿……(イマイチその姿は想像できない。というか、こういう類の服を着るタイプではないだろう)」

男(だがしかし、美少女がメイドというだけでも一見の価値はあると判断する。良かろう、ここは俺が一肌脱いで穏便に事を済まさせてやろうじゃないか)

男「へぇ、似合う……冗談?」

不良女「は……はぁ? 何だよ、あたしじゃこういう服着ても似合わないって言いたいのかよ」

転校生「ちょっと今のはデリカシーなさすぎじゃないの? これだから変態はダメなのよ」

男「変態を無理に絡ませてくるなよ」

先輩「絶対に似合うこと間違いなしだよ、男くん! わたしの目に狂いはないのだからー!」

男「ふーん……でも本人が着たがってないみたいだし、それも結局わからないじゃないですか」

男「先輩さん、自分の価値観を人に押し付けるのは良くないですよ。こいつもあんなに嫌がってたんだから」

先輩「ん……それもそうかもだけどぉ……うん、そうだよねー……ごめんなさい」

男「だってよ、不良女。部長命令取り消しってことらしい。それ着る必要ねーぞ」

不良女「あ、ああ……」

転校生「でもなんだか少し勿体気もするわよね。だってせっかく借りてきたのに着ないで返しちゃうんでしょ?」

不良女「うぅ……」

男(良いぞ、良いタイミングで転校生が手伝った。もうひと押しが必要だ)

男「まぁ、でも見てみたくはあったかもしれないなー? 先輩さんの言う通り、悪くなかったかもしれないわけだし?」

不良女「でもあんたは似合わないって思ってんだろ……」

男「ああ。だけど、実際に見てみたらその決めつけも取り消して素直に誉めるかもしれない」

男「でも、そんなことお前は興味ないんだろ? 良かったな、俺のお陰でメイドの刑を回避できて」

不良女「いやその……[ピーーーーーーーー]」

男「え? 何だって?」

不良女「だ、だから……別に着るのが嫌なわけじゃなかったから、試しに着てみるぐらいなら……べつに」

不良女「……///」

男(先輩のやり方がいけないとも言えない。あの手の美少女は強情であり、ムキになって押しまくれば逆に引いて行くのみ)

男(では一旦その手を止め、対象の興味をそそるようにこちらから下がれば良い。例えるならば野菜嫌いの子供の前で大袈裟に美味そうな演技を取る、といったところだ)

男(場合によってはそのままフェードアウトしていく恐れがあることも否めない。俺に対する不良女の好意があっての相乗効果がもたらした結果といっても過言ではなかろう。なお、結果というのは)

先輩『男くーん! もう入ってオッケーだよー!』

男「うむ。さて、どう変身してくれたことやら……」

男(着替えが済んだらしく中から呼ばれ、早速見てやれば、見違えたといわんばかりの不良、否、控え目な様子の美少女メイドが迎えてくれた)

不良女「お、おかえりなさいませ……ごしゅじんさま……///」

男「言わされてる感がたまらねーな……(いやぁ、素が良すぎた為かかなり似合う。いつもの勝ち気でガサツな彼女の見る陰などなかったのである)」

不良女「う、うるせーよ……くそっ、[ピーーーーーーーー]///」

先輩「ふふーん! メイドさんといえばやっぱりこの台詞でしょう。やっぱしわたしの見立てに間違いなかったです!」

転校生「で、さっきの取り消して改める気になった?」

男「まぁ、馬子にも衣装って感じだろうかね」

先輩「え~? 男くんもっと気の効いた感想もっとあるよー?」

転校生「え、何よそれ? 孫って……ぷぷっ」

男「いやいや、そういう言葉が日本には古来からあってだなぁー」

不良女「あたし、あんたの孫じゃねーだろ? 頭大丈夫かよぉ~バーカ! あははっ!」

男「おう、お前以上に正常に働いてるぜ。バカメイド!」

男「やっぱり喋り出すとダメだな、せっかく綺麗に飾ってもこれだわ」

不良女「はあぁー!? 何だよ、結局似合ってないって言いたいのかよぉー!」

男「似合ってるぞ。少なくとも衣裳負けしちゃいないと思ってる。いいんじゃないか?」

不良女「っ!! [ピーーーーーー]……そ、そうやって最初から誉めてりゃいいんだよ、ばか///」

先輩「じゃあせっかくメイドさんがいるわけだし、お茶汲み係にそのままにんて……しないよぉ~、そんなに睨むなよぅ…!?」

不良女「冗談じゃない。もう満足できたし、脱ぐから男出てけよ」

転校生「ん? 生徒会長さんには見せないの? メイド姿の不良女ちゃん」

不良女「誰があんな奴に好き好んで見せてやるかよっ! 今回だってお前らに見せたのは特別だったから……」

男「いや、むしろ今のそのお前を逆手に取って生徒会長をビビらせられるかもしれんぞ?」

不良女「はぁ?」

先輩「ほうほう、なるほど。男くん お主も中々の悪よのぅ~……ちょいとメイドさん、お耳を拝借。……ゴニョゴニョ」

生徒会長「男くんには少しと言ったが誤りだったな。みんなを待たせてしまっているだろうか」

生徒会長「男くん……さっきはちょっと困ったが、反面嬉しくも思ってしまう自分がいた///」

生徒会長「な、何を考えているんだ私! 彼には転校生がいるのに!」

生徒会長「はぁ……諦めきれないよ、男くん……私……きみのことがずっと……だ、ダメだダメだ! 余計なことを考えるなぁ!」

生徒会長「しゃんとしろ、私! 生徒会長じゃないか。でも、一人の女子としては……」

生徒会長「とにかく、彼とはいつも通りに接しよう。そうでなければ彼を困らせてしまう」

生徒会長「遅れてすまない。仕事が思いのほか手こずってしまっ……」ガチャリ

不良女「おかえりなさいませ、ご主人さまぁ~♪」

生徒会長「……部室を、間違えてしまったみたいだ。すぐに出る」

不良女「ちょちょちょっ! 間違えてませんよぉー、ここがラーメン愛好会で間違いないです♪」

生徒会長「私が所属している部活の人間にこんな悪趣味な恰好をした者はいないのだが!」

不良女「悪趣味っ……このッ……まぁまぁ、ご主人さまぁ♪ お仕事で疲れたでしょ、さぁお掛けになってー♪」

生徒会長「不良女だろう? その恰好は何だ? 何が目的だ、言え。いや、言ってくれ! 怖いよっ!」

不良女「目的だなんてございませんよぉ。ご主人さまぁ、肩が凝っているのでは? 私めが揉んでさしあげましょうか?」

生徒会長「け、結構だよ……」

生徒会長「なぁ、そろそろ降参だよ。気味が悪くてしょうがない! もういいだろう!」

不良女「おほほほ…何を仰っているのか私にはわかりませんわ、ご主人さま♪」

生徒会長「大体きみのキャラではないだろう! その服も脱いでいつものきみに戻って!」

不良女「そう仰らずに、このクールビューティなメイドになんなりとお申し付けくださいよーぅ! うふひひひっ!」

生徒会長「ひ、ひぃ……そそそ、そういえば他のみんなはどうした!? 何処かに隠れて見ているのだろう!? 何処にいる!?」

不良女「も、もしかして私めではご主人さまを満足させてあげられないと!? そんなっ……およよよ」

生徒会長「そうと一言でも私は言ったか!?」

不良女「ぐすんっ。仕方がありません。私ではご不満だと言うのであれば、新たなメイドをここにお呼びしましょう」

生徒会長「いいっ! 必要ないから! もう私の言う事を無視して話が進んでないか!?」

不良女「では、ご主人さま。紹介いたしますわ。彼女が今日から私の代わりにあなたのメイドとなる者です……ぶっ!!!」

生徒会長「え? うぅ……!?」

男「…………」

生徒会長「な、何だアレは……彼は一体何をしているんだ……きみもだが」

不良女「ご、ご主人さまぁ、いひっ……くくくっ、やべぇ……あれが、ふふふっ……メイドですわっ……」

男「頼む、跡形もなく殺してくれ」

男(俺の登場によってこの茶番劇は幕が閉じた。最初に言っておくが、この俺が、メイド服を着る、なんぞ計画には入ってはいなかった)

男(屈辱にも近い感情がふつふつと沸き上がるも、人生初めての女装に背徳感を覚え、その感覚がやけに癖になってくるのは俺が変態である何よりの証拠か。いや、あり得ない)

男(しかしながら、我ながら悪くはないと思われる出来。見よ、このスカートから伸びるおみ足を。彼女たちに内緒で先程こっそり携帯のカメラに収めた事はさすがに暴露できない)

男(……そういえば時々あったな。主人公が無理矢理女装させられるイベントが)

不良女「いやぁー、それにしても全く似合ってないなー! 最初見たときこっちが驚いたわ!」

生徒会長「一番驚かされたのは私なんだがな……っ」

先輩「めんご、めんご。でも結構楽しめてた風に見えたから悪くなかったっしょ~!? えへへっ!」

生徒会長「なぁ、どの辺りで私が少しでも笑いを漏らしたというんだ」

転校生「それよりよく男が着れるサイズの服まで見つかりましたね。ふっ、その恰好してると犯罪者レベルよ、あんた~?」

男「大体、俺より転校生か先輩さんが着れば良かったでしょうが……あふ……だめっ、股が涼しい!」

転校生「私は嫌よ、そんなの。あんたが着るから面白かったの! 不良女ちゃんだけに任せようとしたそっちも悪いんだからね?」

男「俺だけが悪者かよ!」

不良女「なぁ、せっかくだからその恰好でアレ言ってよ。アーレ!」

先輩「さん、はいっ!」

男「……萌え萌えきゅん。 えっ、何だよ? 違うって? ちょっと……何で全員で少し困ってるんだよ!?」

先輩「男くん、どうして制服に着替えちゃったのさー? ぶーぶー」

男「むしろ何で着替えないと考えたんですか。さすがに部室の中とはいえ、あのままだと嫌です」

男(というか、俺が見たいのは自分の素晴らしい女装ではなく美少女のコスプレではないか。自惚れと恥ずかしさでどうかしていた)

男「じゃあ先輩、どうして不良女が制服に戻ってるのかは問わないんですか! もうあいつメイドじゃないですよっ!」

先輩「ちっちっちー、重要なのは見た目じゃない。中身、心なのだ! つまり奉公心さえあれば服装なんてもう関係ねーよぅ!」

不良女「何言ってんだこの人……」

生徒会長「聞こえたままのことを言っただけだと思うが? 少なくとも私には理解できなかったよ」

不良女「いや、それあたしも同じだし! なぁ……お、男はさっきのままの方が良かったのかよ……///」

男「だいぶ様になってきてた頃だったしな、しばらくあれでも悪くなかったんじゃないか」

不良女「ば……バーカ! 絶対もう着ないからなっ! ……[ピーーーーーーーー]///」

男「え?」

不良女「何でもないっ!! それより転校生は着ないの? ハーフだし、髪の色的にも似合ってたんじゃねー?」

転校生「私? 無理無理っ、全然よ! それに恥ずかしいし……」

不良女「あたしもかなり恥ずかしかったんですけど」

男「それにしちゃ結構ノリノリでメイドさん演じてたけどな、不良女」

男(さて、時は過ぎ、舞台も変わる。ラーメン愛好会としての活動のため、今日も俺たちは先輩さんに連れられ、彼女のオススメだというラーメン屋へ)

男(テーブルを5人で囲み、美少女に囲まれ、目の前に置かれた丼ぶりの見事っぷりに目を引かれたのである)

先輩「今日はスタミナラーメンが美味しいってところ! ……でも、どーしてみんな違うの頼んじゃってるわけ!?」

生徒会長「別に各々が好きな物を注文して悪いことはないだろう?」

不良女「そうそう。ていうかさ、帰りにこうやってラーメン食べるのはいいけど、活動とかしなくていいわけ?」

転校生「活動? こうしてただラメーン食べて帰るのが活動じゃない。今さらだけどね」

男「ラーメン、な」

転校生「う、うるさいっ!! 誰にだって間違いはあるわよ!!///」

生徒会長「そうではなく、彼女が言っているのは部活動としてキチンとした活動を行わずにいいのかという事だろう?」

先輩「それ、前にみんなで話し合って決めたじゃーん。ほらぁ、えっとー……なんか作るって」

男「覚えてないなら覚えてないってハッキリ言った方がいいですよ。情報誌紛いなものを俺たちで作るってやつでしょう?」

先輩「そうそう、それそれ! さっすがだよ 男くんてばっ!」

転校生「それなら今ここで食べてる物とかも軽くメモを取って、あとでレポートに纏めたりした方がいいわよね?」

生徒会長「もっと前から思い出していれば、早く取り掛かれていたんだがなぁー……?」

不良女「そういう会長だって今さっき思い出した口っしょ? あたしだけ覚えてるってなによこれ」

男(グダグダとした、しかし彩られた美少女たちとの時間はいつも楽しかった。ただ、丼ぶりの中のラーメンの量が減っていくたびに終わりの時が刻々と迫っていることを実感させられる)

先輩「わたしたちも文化祭で出し物とかやった方がいいのかなぁー」

不良女「えぇー? ラーメン愛好会が勧める超絶品カップラーメン展とか?」

転校生「カップラーメンで人を呼べるとは思えないけど……あっ、食べ物を出すとかはできないかしら!?」

転校生「ちょっとデミセってやつをやるの憧れてたのよね~!」

男「どこでそういう余計な知識蓄えてくるんだよ、お前は」

生徒会長「それは残念ながら難しいかもしれないな。やれても、部活展示の前日にあるクラスでの催しでだと思う」

不良女「でも、食べ物扱うのは3年生からじゃないと無理なんでしょ? あたしら結局ダメじゃん」

転校生「えぇ、デミセー……」

男(隣で肩を落とす転校生。そこまでして無駄な労働を行いたいか、気楽に空き教室で過ごすのが文化祭というものだろう)

男「そんな文化祭も今年でおさらばとなるわけか。俺は参加できそうにないけど」

先輩「あっ、メイド喫茶やったらウケるんじゃないかなぁー!?」

不良女・転校生「パス」

先輩「うえぇぇぇ~~~……いいと思ったのにぃ」

生徒会長「食べ物を扱うだろう、喫茶店なら。それに私も嫌だ」

先輩「いやー、今日も有意義な部活動したねぇ諸君! まんぷく、まんぷく!」

男「だから、結局部活動といえるようなことしたわけじゃないんでしょ……?」

不良女「べっつにいいんじゃねーの。楽なのに越したことはないしー」

生徒会長「そういうわけにはいかないな。これも歴とした部活なのだから、活動記録になるような物を作らないと」

生徒会長「ということで、各自帰って今日食べたもののレポートを書いてくること。明日、明後日でまとめて早速取り掛かろう?」

転校生「部長って誰だったかしら……」

先輩「もちろん、わたしですよ? もうっ、部長の貫録あるでしょう!?」

転校生「あー……ノーコメント」

不良女「レポートとか面倒くせーなぁ……まぁ、明後日までやればいいんでしょ? 適当に書いてくるよ」

生徒会長「適当では後で自分たちが困るだろうが! やるからにはしっかりと頼むぞ」

男(あーだこーだと言い合いつつ、雑談で賑わせていればあっというまに別れ道に立った。ここで俺と転校生を除く3人と別れるのだ)

男(着いて欲しくなかったとも思える。本当にこれで終わりなのだから。自分で決めたことではないか、今さら逃げ出すわけにもいかない)

男(しかし、今日一日存分に楽しめたことで消えたくないとワガママが生まれつつあった。だから)

不良女「んじゃあ、あたしたちこっちだから。おい、あんた彼氏なんだからしっかり転校生のこと家まで責任持って送れよなー……」

男(了解しかねる)

生徒会長「それじゃあくれぐれもさっき私が言ったことを忘れないようにな、二人とも」

転校生「んー、まだちょっとよく分からないけれど、自分なりに書いてきてみます。あんたもだからね? ちゃんと聞いてた?」

男「書けたら、書いてきますよ。書くことができればね」

転校生「それ絶対やらないつもりで言ってるでしょ。ダラしない奴の決まり文句よねー、それって」

男「まぁ……うん」

先輩「それじゃあ男くんと転校生ちゃんばいばぁ~い! また明日ねぇー!」

転校生「さようならぁー……ふぅ、行っちゃった。ねぇ? さっきからどうしたのよ」

男「どうしたって何がだ? 俺のことか」

転校生「ここに今あんたと私しかいないわよ。ご飯食べてる時も時々ぼーっとしたり、今だってそう。なんだか暗い顔しちゃって」

転校生「まぁ、何ともないなら別にいいんだけど。心配する方の身にもなってよね? そういうの不安になるんだから……」

男「ごめんな (転校生、すまない。本当にすまないと思っている。これからお前に、俺は謝っても謝り切れない言葉を吐く)」

転校生「素直にあやまるなんて、変なの……いいわ別に! ほら、私たちも帰りましょうよ」

男「なぁ……転校生、ちょっと黙って今から言うことを聞いてくれないか」

男(それで、どんな顔をするのかも大体は予想もついている。それでも俺はこれから転校生を、傷つけるだろう)

転校生「んー? えっ……どうしたの?」

男「あ、いや、すまん。まだ黙らなくていいや……話していてくれよ」

転校生「はぁ?」

男(一瞬、俺の気持ちを察するように不安そうにする彼女を見て 思わず止まってしまった)

男(もうこれで良いじゃないか。現状に不満があるわけではない、楽しい。転校生選んだことに間違いなんてなかったのだ)

男(だが、選択してしまったことによって、今、とてつもない後悔に俺は呑まれかかっている)

男「俺たちが付き合い始めてから今日までで、どれぐらい経ったかな」

転校生「い、いきなりすぎよ……たぶん3、4ヶ月ぐらいだと思うけど。うん、それぐらい」

男(まだたったそれぐらいの時間しか経っていなかった。始まったばかりだったのである)

男(たった3、4ヶ月ぽっちの中でも楽しかった。もっと長く続いても苦に感じることなんて考えられない。もっと彼女と一緒にいたかった)

転校生「どうしたの急に?」

男「いや、何となく訊いてみただけだって。本当に何でもないんだよ (どうしよう、どうすれば正解なのか今の俺には判断できない。きっと1週目、2週目の俺もこうして同じように悩んだ事だろう)」

男(ハーレムが何だというのだ、単なるつまらない欲望のために俺は一体何をしようとしているのだ? 諦めても罰は当たらないだろう。……いや、諦められない理由が別にある)

男「転校生、今度こそ黙って聞いててくれ」

転校生「うん……何よ……」

男「……俺たち、もう別れないか (だから、妥協は無しだ)」

ここまで。たぶん明日に続く?

今日の分の最初の方で先輩が書記みたいになってるけど会計の間違いね
あといまさらだけど誤字脱字は勝手に脳内補完頼みますわ。めんご

転校生「えっ、と……ごめん。今何て言ったか聞こえなかったわ」

男「転校生……」

男(困ったように耳にかかった髪を除けて、転校生は俺に向けて寂しく微笑んで見せた)

男(数秒の沈黙が俺の、いや 俺たちのやるせなさを助長させる。いつもなら気まずい空気なんて俺が冗談に変えて、転校生が怒って、笑いに変えられるのに)

男(たとえ誤魔化しの言葉が頭に浮かんできても、これ以上声に出すことはできなかった。むしろ、本当に聞こえなかったのならばこのまま無かったことにしてはどうだろう?)

転校生「最近夜になると凄く冷えるようになってきたわよね。さ、寒い、寒い…」

転校生「寒いわ、本当に……っ」

男「……そうだな (俺に背を向けて体を擦っている姿はとてもワザとらしかった。だって、震わせているのは彼女の声のみだったから)」

男(そんな彼女を後ろから抱きしめようとも考えたし、振り向かせてキスを一発お見舞いしてやれば最低な形のドッキリ大成功ということにも……いや、ハッキリさせてしまおう)

男(もう迷う必要はない。俺は既に言ってしまったのだから)

転校生「だから、早く帰りましょ? ていうか帰っていい? ……ねぇ、帰ろうよ」

男「聞こえてなかったみたいだからもう一度言わせてくれ、転校生」

転校生「か、帰ろうってば……」

男「転校生。もう別れ――――――」

転校生「わぁああああああああぁぁぁ~~~っ!!!!」

男(遮るように突然大声をあげられてしまった。驚き、たじろぎそうになるが、それでも話を続けた)

男「別れよう、転校生。勝手だって思われているかもしれないのは重々承知の上でだ」

男「今日で恋人同士の関係はお終いにして、明日から俺たちは」

転校生「わぁああああああぁぁぁ~~~!! っ……ぁあ……いやぁ……!」

男「俺たちは今まで通りの付き合いをするんだ。友達として、普通に過ごすんだ」

男「なかったことにしようとは思わない。けれども、元に戻すんだよ。3、4ヶ月前に」

転校生「いやよ、いや……やめてよ……やめてよっ……」

転校生「聞きたくない、そんなこと聞きたくないわ……もうやめて……」

男「ここでやめたって俺はもうお前を特別に見ることはできない!」

転校生「好きだって言ってくれたじゃない。何度も、何度も言ってくれたじゃない……違うの?」

転校生「本当は好きじゃなかったの? それとも嫌いになっちゃったの!?」

転校生「一緒にいても、楽しくも、嬉しくもなかったの……!?」

男「それは……なかったわけないだろう。お前と過ごしてきた時間に後悔なんてないさ」

男「ないけれど……転校生と一緒にいれて凄く良かったけれど……だが」

転校生「じゃあまだこのままでいいじゃない! これからも、ずっと一緒にいてもいいじゃない! ねぇ!?」

男(転校生は涙で顔をくしゃくしゃにさせながら制服を掴んで俺を強く揺さぶる。そんな彼女を直視できず、逸らしてばかりいたのである)

転校生「私は男が好き! だい、だい、大好きよ! 気づいたらこうなる前より、もっと好きになれてた!」

転校生「好きで、好きでしかたがなくなっちゃった……ずっと男のことしか考えてないの……あんたのせいよ」

男「俺も、同じだったよ」

転校生「……だった、になっちゃったんだ」

男(制服から手が離れると、そのまま転校生はゆっくりと後退りしていく。近くにいた彼女が、今ではあんなに遠く離れて行ったのである)

男(心臓が締め上げられているような苦しさが胸にあり、何も考えられないほど呆然となる。不思議な、消失感ともいえる居心地の悪い感覚が俺を襲う)

男(転校生が遠くなっていく。距離が離れていくほど苦しさが内側から大きくなっていく。瞬きすら忘れて瞳が乾いてきた)

男「転校生……ごめん……ごめんな」

転校生「あやまるぐらいだったら、始めからそんなこと言わないで」

男(後ろへ下がっていく転校生は、気づけば俺へ背中を向けていたらしい。立ち止まると彼女は先程とは打って変わった様子で)

転校生「……もう、話しかけないでよ。諦められなくなるじゃない」

男「……ああ」

転校生「理由なんて訊かないわ。聞きたくないから、言わなくていい。だから、さっきの言葉だけで十分」

転校生「……あんたがそうしたいって言うなら、今日で恋人ごっこはお終い!」

男「……あっさり受け入れてくれるんだな」

転校生「……あっさり? これがそんな風に見える?」

転校生「嫌に決まってるでしょ? すごく、すごく嫌に決まってるでしょ!?」

転校生「諦めらないから話しかけないでって言ったでしょ!? どうして黙っててくれなかったの!?」

男「……」

転校生「何が『恋人ごっこ』よ!? 本気のつもりだったわよ! 全部、全部、今日までずっと……ずーっと……!」

転校生「だから、終わりなんて言わせないでよ! まだ誕生日だって二人で祝えてないし、二人で行ったこともない場所だってたくさんあるわ!」

転校生「たくさん、あったんだから……キスだって足りなかったんだから……もっとあんたのこと知りたかった……!」

転校生「好きって言っていたかったわよ……」

男(「俺も」と言い出してしまいたかった。引き止めて撤回してしまいたかった。しかし、ここまで来てしまったのだ)

男(引き返すのも止め、考え直すことも止め、ただただ彼女の話へ頷くこともなく、耳を傾け続けていたのである)

男(嫌われるならば徹底的にだ。彼女は俺を罵倒しても、殴ってもいい、その権利がある。だからこそ、このままフェードアウトしていく転校生を見送るのがつらい)

男(感情的にさえならなければ、別れ話をつけるのは難しいわけではない。できるわけがないだろう。俺は転校生を嫌いになんてなるものか、好いたままだ)

男(きっと俺だけが苦しいわけではない。彼女の方がもっと苦しんでいる。比べものにならない程に)

男(なのに、俺は転校生の優しさに甘えたまま終わらせようとしていた)

男「転校生、最後に」

転校生「話しかけないでってば……」

男「いや、言っておかなきゃいけないと思って。見苦しい言い訳だと思って聞いていてほしい!」

男「振り向かないで、そのままでいい。すぐに済むから」

転校生「…………」

男(彼女へ俺が真性の屑野郎であると思わせて最高に嫌われてやろう……どうかしている。それでは彼女へ更に惨めな思いをさせるだけだ)

男(もう、このままでいい。これ以上余計なことを言う必要はない。なのに、それでも意思とは関係なしに口が動いていたのである)

男(距離は詰める必要はない。ここでいい、たった一言だけで転校生とさよならをしよう)

男「また明日、学校でな」

男(……今の俺はどうかしている。聞いただろうか、何が「また明日」で「学校で」だ。始めから気持ちの良い別れへ変えられる期待などしてはいなかった)

男(不意に飛び出た自分の無神経な最後の言葉と態度に、絶望した)

男「て、転校生!! 今のはっ……」

転校生「……うん。また明日ね、へーんたい」

転校生「ばいばい……!」

男「あっ……あぁぁー…………!!」

男(転校生がこの場から去って、どれぐらい時間が経っただろう。俺はいつまで案山子のようにここで突っ立っているのだろうか)

男(体の隅々で言いようもなくチクチクとした小さな痛みを感じる。頭の中は空っぽになっていて、それでいて、えっと)

男「あいつ、どんな顔して帰って行ったのかな。泣いていただろうか、怒ってしまっただろうか」

男「吐きそうなぐらい悲しいってこんな感じか……」

男(力が一気に抜け落ちると、近くの塀に寄りかかって糸が切れた人形のように崩れた)

男(いまだ今自分がしたことと、空虚と変わったこの現実に目を向けられずにいる俺がここにいる。口をポカーンと開いてマヌケな面だろう)

男「転校生を傷つけたのは他でもない俺。告白したくせに唐突に別れ話を持ち出したのも俺」

男「全部考えがあって、正しいと思ってしたことじゃないか……こうすることで前に進める。目的に近づけるんだろう」

男「じゃあ、それでオールオッケー……じゃないか」

男(なのに、どうして悔しくて堪らないのか。涙が自然と沸いてきて、それを自分で止めることすらままならない)

男(悔しさは途方もない悲しさに変わり、俺は声を漏らして情けなく泣いた。それから電柱の影で嘔吐もした。何をしても、考えても失ったものは帰っては来ない)

男「ど、どうして俺がモテてモテて仕方がない世界で……幸せになる為の世界でこんなにつらい目にあわなきゃいけないんだよぉぉぉー……っ」

男「転校生、好きなんだよ! まだ俺だって大好きだ! 離したくなかった、まだイチャイチャし足りないに決まってんだろう!?」

男「でも……このままだとダメだったから……しょうがなかったからさぁ……うっ」

男(さきほど胃に溜めたラーメンが、外に全部残らず飛び出したと思う)

男「はぁ、はぁー……おえぇ……最悪だ、何だこれ? 高校受験しくった時よりつらいぞ」

男(次週へ移行する方法を今まで明らかにしてはいないし、本当に前週や次週があると決まったわけではない)

男(それらしい証拠が見つかったとしても、直接自分の目で確かめなければ真実かわかるわけがない)

男(それでも信じる他なかったのである。無謀ではない。それだけが希望だったのだ。だから、俺は次週へ向かうためにどうするべきか考えてみた)

男(当初は告白したことで一人の美少女を落とした時点で終了するのではと考えたこともある。それは違い、その後の展開。いわゆる個人ルート辺が存在したのである)

男(勿論それを想定していなかったわけではない。問題なのは、目的や今までを忘れ、ひたすら転校生の虜となっていたこと。ここで自分を取り戻せなければハーレムどころか、委員長を救うこともできず全てを終えていただろう)

男(ならば、この個人ルートという名の拘束から解かれる為には? 対象である美少女をこちらから振って、関係を破壊すること)

男(その後のことまでは頭が回らなかった。そのまま隣の席の転校生と共に気まずい学生生活を送り続ける可能性だってあり得るのに)

男(だが、もし個人ルートから俺が外れたことで 何かが起こるなら、と。神頼みもいいところ。最後は自分の直感を頼りにそれを実行した。その結果が)

男「つらい、つらい……こんなに苦しい思いをしたんだ、どうにかなってくれ……」

男「頼むから神よ……前の俺も、その前の俺だってこの選択をし続けたんじゃないのか? だからこそ、今の俺があるんだろう!?」

男「返事をしてください、神様、仏様……そうじゃなきゃ俺が今したことは無駄になるじゃないか……そんなの嫌だ……!」

男「答えてくれよぉぉぉ…………ああ、最悪だ……俺はバカじゃないのか――――――」



―――BAD END

木曜と言ったな。あれはウソだったようだ・・・
続きは今日の夜にまた来れたら。来れなければ明日になる

BAD END――――――


神「あなたは一体何がしたいのですか?」

男「……」

男「え?」

神「あなたは一体何がしたいのだと訊いたのです。探偵ごっこが過ぎますよ^^」

神「なぜ自分の幸福に疑いを持つのですか? 美少女と幸せな日々を送るだけでは物足らないですか」

男「神……いや、神様……で間違いないでしょうか?」

神「質問へ質問で返して良いのはこの神だけですよ。人間風情が図々しい」

男「ず、図々しい」

男「それよりここはどこだ? 俺はいつのまにこんな所に来た……そして、目の前にいるのは」

神「ええ、間違いではありませんよ。あなたがよく知る私こと神様」

男「俺の声に応えて現われてくれたのか!? 予想は正しかったのか!?」

男「ああ、神よ、次週への引き継ぎはあるのだろうか! 俺は転校生を振って個人ルートから外れた! だから!」

男「……転校生」

神「ふむ、その絶望っぷり。毎度のことながらなぜあなたは自ら手にした幸福を手放してしまうのでしょうか」

神「そこまでして夢を実現させたいのですか? たった一人の可愛らしい彼女を手にできただけでも、あなたにとって奇跡としか言いようがないのに」

男「あ、あれだけ魅力的な美少女がいれば、その中から一人だけだなんて選び切れませんよ……」

男「ハーレムっていうヤツは男の夢です。そしてここはその夢を叶えられる世界! じゃあやるしかない!」

神「あらら、強欲な方です。何度同じことを尋ねても、返事はいつも変わらない」

神「その類稀なる精神力があなたをこの神の前へ導くのでしょうか」

男「なぁ……神よ、あなたはさっき『何度同じことを尋ねても』と話した。つまり、俺がこうしてあなたの前に現れたのは」

男「初回だけじゃない。その後も……今回と同じように」

神「あなたの答え合わせに付き合うつもりはありませんよ^^」

男「それはあなたにとって都合が悪い話だから? それとも」

神「後者です。話す必要がないと思ったのですよ」

神「必要がないことをこれ以上探ることはないでしょう? あなたは私から与えられた世界の中で最高の幸福を目指していたら良いのです」

神「だから、余計な詮索は止めましょう。ね? これからあなたは再びあの世界へ戻ります」

男「……それは俺の記憶がリセットされた状態で、ということだろうか」

男「転校生と付き合う以前の日か、それとも付き合っていたという痕跡がき」

神「それを知ったところで、無駄なことはもう分かっているのでしょう?」

男「し、しかし……」

神「ですから、答え合わせに付き合うつもりはないのです。自己満足だろうと、私には関係ありません」

神「フー……あなたがハーレムを叶えようとするのも、その為に何度も私の前に現れようと構いません。こうして迎えてさしあげましょう」

神「ですが、しつこいようですがね。疑って、それを調べるような愚かな行為だけは止めなさい」

男「どうして……そこまで調べられちゃあ困る問題でもあるっていうのか!?」

男「確かにあなたは俺に素晴らしいものを与えてくれた文字通りの神だ。だが、俺がそこで何をしようが構わないだろう!」

男「それがダメだっていうのなら、理由を聞かせて欲しい!」

神「聞いてあなたは納得してくれるとは思えません。一つ言っておきましょう」

神「この世界はあなたにとって都合の悪いものは何一つ存在しない。全てがあなたの味方で、あなたを満足させるものです」

男「胡散臭い話にも聞こえるが、事実そうなのだから認めざるを得ない!! ……だけど、それには裏があるとすれば?」

男「俺が隠された真実へ辿り着けたとき、どうなるというのだ、神よ?」

神「ええ、あなたにとって都合が悪いことが明らかになるのです」

男「俺にとってだと? 俺にとって都合が悪い? 知らない方がいいと?」

男「それは、元の世界での俺に関すること? はたまた、俺の理解を超える壮大なスケールでの話が…」

神「もう十分でしょう?」

男「いやいや……こうしてあなたにまた出会えたのが嬉しくて堪らん。訊きたいことが山ほどある!」

男「吐いてまで最悪な思いをする甲斐があった! 教えてくれ、いや、ください!」

男「なぜ枷として付けられた難聴が攻略を終えた美少女には発動しなくなる?」

神「…………^^」

男「時々、俺の思考が邪魔されたり、行動自体が狂ったりもしていた! なぜ! ……後者自体はほとんど稀なケースだったけれど」

神「うーん…………^^」

男「そして委員長! 彼女は元の世界へ帰りたがっている! そもそも彼女は本当に俺が元いた世界に存在した委員長なのか!?」

男「……もし彼女が本物なら、お願いします。委員長を帰してやってください」

神「ふぅ…………^^」

男「委員長はこの世界に満足しちゃいない。帰りたがっている。あなたは神なのだろう?」

男「彼女は今苦しんでいる。神ならば、救ってやって欲しい。……できるんだろう!? 連れて来たのは他でもないあなただ!!」

神「だから、あなたは一体何がしたいのですか?」

男「な、何って……」

神「彼女が真に苦しんでいるかどうか、あなたはそれが本当にわかって言っているのですか?」

男「俺は俺だ、他人の心の中なんぞわかってたまるか」

神「では、どうして?」

男「委員長が俺に助けを求めた。だから、俺は彼女に協力している」

男「彼女が助けて欲しいと頼み続ける限り、俺は何度でもこうして頭を下げよう……!」

神「ああ、なんと不器用な人間でしょう! これでは現実でも孤立してしまうわけです!」

神「彼女がもし本当に幸福を感じていないのならば……まぁ、とっくの昔に私の前へ現われている筈でしょう」

男「は?」

神「彼女はあなたとは『仕様』が異なるのです。私は神、あなた方へ最高の幸福を与えるために存在します」

神「不幸なあなた方を救う為ならば、如何なる手段を持ってかならず幸福を与えましょう」

男「……俺が神様との会話に慣れていないせいだろうか? まったく意味不明なのだが」

神「理解する必要はありません。どちらにせよ、あなたはあなたのことだけを考えていれば良いのです」

神「自分がしたいことをすれば良い。私はあなたが真に満足できる幸福を手に入れられることを祈っていますよ」

男「神よ……誤魔化したつもりかしれないが、そうはいかない。委員長を元の世界に帰すことはできるのか? できないのか?」

男「教えてほしい。もう、それだけでいい。それさえ聞ければ十分なんだ……頼むよ」

神「たとえ私が話したところで、あなたは聞いたことすら覚えていませんよ。無意味です」

神「もう一度、無意味です^^」

男「……そうか。それじゃあ仕方がないんだろうな」

神「今度こそ、十分ですね。私も神という立場上あまり暇ではいられませんので」

男「毎度、毎度迷惑かけているようで申し訳ないなぁ……ああ、ところで」

神「待った。あなたはいつまで質問を繰り返すつもりで? 私の話を理解していただけてはいない?」

男「質問というか、頼みを一つだよ。これで最後だと思って大人しく聞いてはもらえないだろうか」

男「あなたは神様でしょう? 全知全能で不幸な人間にとてもお優しいお方でいらっしゃるのでしょう? え、実はそうではない……!?」

神「……言ってみなさい。ただし、これで本当に最後としますよ」

男「さすがだ……俺の神……崇め直しますよ……」

男「委員長を除いて現在俺が攻略可能な美少女は10人。それで間違いは無いだろう?」

神「そうですよ。揃いもそろって美少女揃いなのです。何も不満はないとこちらでは考えていますけれど、まさか?」

男「俺の考えが少しならわかるようだな、神よ。その通りだとも」

男「……もう一人だけ、攻略可能な美少女を追加してほしい。可能なら、な!」

神「あらあらまぁ……」

神「本当にあなたは強欲ですねぇ。私が誰かわかっているのでしょうか」

男「神だ。神様には昔から頼み事をするものだと思っていたんだが、その認識は間違いか?」

神「神だろうと人だろうと、物を頼む時は段階を踏むべきでしょうに。それにしても追加ですって? なぜ?」

男「10人のハーレムってのもキリが良くて悪くはないけれど……この俺には少し物足りなく感じたのですよ」

男「だから、贅沢は言わないさ。1人だけでいいんだ。どんなキャラでも構わない」

神「既に贅沢の域なのですがねぇ……そうですか、物足りないと」

神「新規の美少女を加えて11人。それであなたは真に最高の幸福を得られる。ですね?」

男「ああ、これ以上は望まない。やってもらえると?」

神「よかろうなのです^^」

男「フフ、さすが神様、話がわかるお方……話はこれで全部終わり。いつでも俺をあの素晴らしい世界へ送還してもらって構わないぜ (後悔するなよ、神)」

神「言われずともですよ。次回こそはハーレムを諦め、一人の美少女と幸せの日々を送る妥協を取ってはどうです? 夢を実現する為にはまた苦しむ羽目になるのですし」

男「承知の上。ここまで来たらとことん苦しんで、最後に最高に幸せになってやろう (神を攻略するには骨が折れそうだ。予想以上に頑固で、俺を舐めている。何を尋ねてもきちんと答えようとしない)」

神「物好きな。それでは……いきますよ……目を閉じて……次に開いた時、そこはあなたの部屋……そして……」

男「(ならば、もう一人、に訊くまでだろう。置いた布石がこれで意味を成す) また会おう、神。すぐに戻ってこようじゃないか」

男「すぐになぁ!――――――」

ここまで

きたあああああああ!!
全裸で待ってるね?!

んぅっ(はぁと

んぅっ(はぁと

アサチュン

男「……今のは、やっぱり夢なのか。冗談みたいな話だったけど本当なら羨ましい話だ」

男「不思議な力を受けて楽にモテられなら苦労もしない。けれども現実は何も変わっていないじゃないか」

男「少し、早く起きたかな。下では母さんがもう朝飯を用意している頃だろう。最近は遅刻続きだったし、早めに家を出るのも悪くはない」

男「……とは頭で考えられるけれど、体がね、言う事聞いてくれないの。ギリギリまで眠れってさ」

男「…………もう一度夢の続き見れないかな。そうだ、きっと今いる世界こそが俺の夢なのだ」

男「つまり 今から目を閉じて、次に開けた時、俺がモテモテの世界に変わっている」

男「目を閉じ……んふぅー神様仏様、哀れな全俺をすくひたまへよ……」

男(瞼をゆっくり下ろせば、すぐに心地良い温もりの中で俺は夢の中へ誘われる)

男(筈だった。いや、正しくその通りであったと言おう)

?『男くーん、もう朝だよー。ご飯できてるから起きちゃってよー?』

男「母さん? 息子をくん付けで呼ぶとはどういう風の吹き回しだ、趣味が悪い」

男「あと5分ぐらい眠っていても問題ないだろう。どうせ俺の朝飯はトースト1枚、1分掛からず食い終える」

?『あっ、起きてるなら早く出て来てよ。妹ちゃんも起きて支度始めてるんだよ? あとは男くんだけなんだから!』

男「あああぁぁ、くん付けを止せ気色悪いなぁー!!」

?『何怒ってるの……て、ていうかくん付けが嫌って……じゃあこれからは[ピーーーーーー]』

男「はぁ? 何だってー!?」

男「ふ、ふ……やっぱり夢だ。違いない。大体、母さんは朝 俺を起こすときは勝手に部屋に入ってくる」

男「それによく聞けば声も違うじゃないか? 今さら若作りのつもりかい、必死だなっ」

?『もう、さっきから本当にどうしちゃったの? 変……なのはいつもだけど、具合悪かったりする?』

男「具合悪いから、学校に休むって連絡してくれないかな。体がダルくて起き上がれないよ、母さーん」

?『だ、大丈夫なの!? 風邪引いちゃった?』

男「ああ、そうだから俺のことは放っておいて! 意識が朦朧としてきたかもしれない!」

?『ちょ、ちょっと……開けるよ!?』

男「いいから放っておいてくれって言ってるだろ! 母さ……かあ、さ……ああっ」

幼馴染「男くん、大丈夫!?」

男「失礼ですが、どちら様でしょうか!?」

幼馴染「あー……大丈夫じゃないっぽいかも。なんて、冗談言ってないで本当に具合悪いのか教えて 男くん」

男「これが冗談を言っている奴の顔に見えます? もう一度、訊くぞ……あなたは」

幼馴染「もうっ、からかうならご飯食べてからにして! また遅刻しちゃうよ?」

男(どういうことだ? この美少女は? その美少女が俺の名前を呼んでいるという目の前の現実)

男「からかってなんていない!! 本当に君は……父さんと母さんは……俺の妹は」

幼馴染「はいはい。おじさまたちなら二人揃って海外に出張したでしょ? 妹ちゃんはもう起きてるんだってば」

男「揃って海外に出張! バカ言ってるんじゃないよ! もしそうだとして、どうして俺たちは家に残された!」

幼馴染「学校に行くためでしょ? もしかして寝惚けてる? ダメだよ、遅くまで起きてたりとかしちゃ」

男「……夢か、真か、いや……夢が叶ったのか……あれは」

男「そして まさかだが、このシチュエーション。どこかで見覚えがあるぞ」

男「君は俺の幼馴染っ……!!」

幼馴染「……えっと、そうだけど」

男「な、何だと。『幼馴染』っていうのはあの幼馴染で間違いない!? 昔、近所に住んでいて、隣の県へ越して行った……」

幼馴染「えー…………そ、それもそうだけど」

男(おかしい、おかしい。俺には中学まで幼馴染が近所にいたが、けしてこんな美少女ではなかった)

男(彼女には悪いが、この俺の美的感覚から言わせてもらうと、俺の幼馴染はデブスだった筈)

男「お、お前! 鼻のところにあったデカくて汚い黒子はどこにやった!本当に俺の幼馴染で間違いないのか、こんな美少女が!」

幼馴染「美少女って……[ピーーーーーーー]///」

男「は?」

幼馴染「ねぇ、あんまりしつこく訊きたくないけれど、本当に大丈夫? 少し様子がおかしい」

幼馴染「ううんっ、かなりおかしいよ!!」

男「おかしいのは俺じゃない。この世界だろう……だけど、俺は既にこの変化を受け入れようとしているわけだが」

男(一体全体何がどうしてこうなっている? 考えられる理由はただ一つだ、今朝俺が見た夢)

男(神だ、神がこの俺に力を授けてくれた。美少女を魅了し、モテモテになれる。それを俺は受け入れた)

男「夢じゃない。夢じゃないぞ、これは! 全部が現実だ! すげー!」

幼馴染「こ、今度はどうしたの!? 急に踊り始めて……びょ、病院行った方が」

男「待てまて!! 俺は正常……うわぁあああ!?」

幼馴染「えっ、きゃあっ!!」

男(神はこうも仰った「ラッキースケベは勿論」。だから、この状況は偶然か、はたまた必然なのか)

男(俺は幼馴染(美少女)を押し倒す。互いの顔と顔の距離が縮まり、可愛らしい彼女の顔で俺の瞳はいっぱいだ)

男「かわいい……」

幼馴染「っ……///」

幼馴染「[ピーーーーーー]、ダメだよ……こんな…///」

男「えっ、ああ!? ご、ごめん。いつまでも……すぐに退くから」

幼馴染「……待って」

男(上から退こうとする俺の腕を掴み、驚きだ。幼馴染は自ら俺の顔へぐーんと近寄る)

幼馴染「[ピッ]、[ピーーーーーーーー]」

男「えぇ? 何だって!? な、なにをする気で……」

男(頬を紅潮させた幼馴染が切なそうに俺を見つめる。早い、早すぎる。俺はこれからどうなってしまうのか)

男(体は自然と彼女へ身を委ね始めた。瞳を閉じて、来るべき、夢にまでみた美少女の柔らかな唇を……)

幼馴染「ん……熱はー、なさそう。良かった」ピト

男「えっ」

幼馴染「でも無理はしないでね。たぶん寝惚けてただけだと思うけど、変だったから。さっきの男くん」

男「そのまま頭よしよしと撫でて貰えれば、体調良くなると思うんだが……どうでしょうかね」

幼馴染「撫でてって、えぇっ!? 何変なこと頼んでるのっ……もう///」

男(気分は最高で絶好調である。そういうことか、神。今、完璧に確信した。この世界において 俺はいわばギャルゲーの主人公。美少女の幼馴染がいて、そして)

妹「……お兄ちゃんなにしてんの?」

男「こっちが幼馴染。で、そっちが俺の妹……本当に?」

妹「違うく見えるんなら今日から兄妹やめるからね! それより、さっきどうして幼馴染ちゃんのこと押し倒してたの!?」

幼馴染「あ、あれはただの事故だよ! 別にそんなんじゃ……///」

妹「知らない! あーあ、朝からお兄ちゃんってスケベだよね。妹としてこれからが心配だよ」

男「もう一度」

妹「え?」

男「もう一度、俺のことを呼んでくれないか。その、お兄ちゃんって」

妹「はぁ? ん……おにい、ちゃん……?」

男「うふぅっ!! ぐっ……ワンモアプリーズ。何度でも復唱! さぁさ!」

妹「うっ…ふざけんなーっ!!」

男(俺の知る妹はこの俺を「お兄ちゃん」なんて呼び方はしなかった。「おい」か「ん」、さらには顔を合わせるたびに、思い出したくもない)

男(呼び方どころではない。幼馴染同様、妹も美少女と化しているのだ)

男「悪い悪い、調子に乗り過ぎた。いや、でもあまりにも嬉しくて……へへへ」

妹「な、何なのほんとに……[ピーーーーーーーーーー]///」

男「え? いま何て言ったんだ?」

妹「うるさい!! おにい……バーカ!!」

妹「ふん、先に学校行ってるからねっ!」

男「ああ、行ってらっしゃい。車と変態には気をつけてな。とくにハイエースに乗った変態あたりに」

男「お前にもしものことがあれば、お兄ちゃんが心配するんだからな?」ポン

妹「っ~~~!? [ピーーーーーーー]! [ピーーーーーーーーー]……っ///」

男「また……お前何言ってるんだよ?」

妹「べーっ、だ! バーカ! おにいちゃんのあほ、[ピーーーーー]……///」

幼馴染「あっ、妹ちゃん! 行っちゃった……」

幼馴染「あたしたちもすぐに家出ようよ、男くん。今日は少し早く起きられたし、遅刻しないで済むかもよー?」

男「そうだな。すぐに支度してくるとするよ (ふむ……主人公らしい振る舞いで接してみたが、だいぶ好感触を得られたと思う)」

男(というより、彼女ら美少女は始めから俺に対しての好感度が高い。妹しかり幼馴染しかり、だ)

男(この分であれば、二人の他にもまだまだ美少女がいてもおかしくはない。すぐに学校へ向かって確認作業へと洒落込もうではないか)

幼馴染「それにしても今日はどうしちゃったの? 昨日、階段から転んじゃったとき、頭の打ち所が悪かったりしたのかなぁ…」

男「階段? それって俺のこと?」

幼馴染「え、覚えてないの? 昨日それで男くん登校が遅れちゃったんでしょ?」

男「怪我……いつしたんだ? こんな目立つところに」

男(洗面台の鏡を覗けば、そこには見なれたブ男の姿在り)

男(左頬にあるテープで固定されガーゼが目立つ。見なれないものだ。怪我なんてした覚えはなかったから)

男「……よく見たら、微妙に青痣みたいなの残ってないか? 本当に階段から落ちた?」

男「縫ったとか幼馴染は言っていたけれど、俺はそんな覚えないぞ。昨日だって……昨日」

男(昨日は何をしていただろうか。いつも通りの生活、学校へ行き、授業を受けて、放課後は真っ直ぐ家に帰宅して)

男「(そうだったか? 正直言って自信はない) まさか、頭を打って記憶喪失とかじゃあないだろう」

男(その時、洗濯機の上に放って置いた携帯電話が俺へ着信を報せた。電話だと……俺へ用がある人間なんて皆無である。久しぶりに着信音が鳴ったわけで……)

男(それ以上に驚かされたのは、その相手だ。俺はそいつを知っている。だが向こうを下手をすれば俺を知らないかもしれない。つまり、赤の他人だった)

男「ど、どうしてこいつの名前が電話帳に登録されてある? 名前の表示があるってことはそういうことだろ……『男の娘』」

男「あのキモオタデブが俺に何の用事があるってんだ!? 話をしたことすらないのに! ど、どうして」

男(年中フケを頭に乗せ、そいつを散布して歩く不潔極まりない男。彼はクラスで虐められていたキモオタデブ。それが俺の良く知る男の娘である)

男(関わったことなど一度もない。ましてや携帯電話の番号を交換した覚えも、メールアドレスもだ……接点なんて一つもなかった)

男「じゃあ、同名の別人? いや、そうだとしても家族以外に俺の番号なんて。そんなバカなっ」

男「お……俺にどうしろと。こいつを」

男(着信音は流れ続ける。ただ、出ろ、と俺に催促を続ける。ただでさえ今朝は信じられない奇跡のカーニバルで驚きであるというのに、美少女の次は何だ? 友人ポジションのキャラでも現われてくれるか)

男(幼馴染も妹も知った性格とはほとんど異なっていた。容姿も。つまり、この男もそうである可能性が高い。友人として奴を迎えるのは少々気が進まないが、中身も見た目も変化しているのだとすればどうだろう)

男「何も難しく考えることはないだろう。たかが電話だ。間違いならすぐに切ってやればいい! キモオタデブ相手にどうしてこの俺がビクつかなきゃならない…………もしもし?」

男の娘『もしもし、男 僕だよ。おはよう』

男の娘『……あれ、男? もしもーし。ねぇ、聞こえてる? 男ぉー?』

男「あ、ああ。聞こえてる、大丈夫…… (電話口から聞こえてきた声は、まるで女子の声そのものであった)」

男(それに加えて、話の仕方もどこか女々しく感じられる。ふわふわとしていて、まるでキモオタのイメージが沸いてこない)

男の娘『そう? じゃあ良かった、あらためておはよう。男! ……で、いつもの。覚えてる?』

男「おはよう……あの、何を (朝の挨拶のためだけに電話を利用してきた? そんなに俺たちの仲は良い設定なのだろうか)」

男の娘『……覚えてないの? 忘れた? 本当に?』

男「いや、何のことを訊かれてるのかさっぱりなんだけれど。 悪い、教えてくれないかな?」

男の娘『ん…[ピーーーー]:…そう、そうなんだ。本当の本当にだよね。冗談で言ってるんじゃないんだね? [ピーーーーーーーー]』

男「だから、本気で……ていうか、どうしてお前が俺の番号知って」

男の娘『あ、あのね……僕たち、付き合ってるんだよ。 忘れちゃった?』

男「へぇ…………なんだと。なんだと?」

ここまで

男(今こいつは何と言ったのだろう? まだ寝惚けているのか、俺は)

男(そうだ。そもそも、こんな美少女たちに囲まれた生活なんておかしい。少しだが良い思いはできた、目覚めよ我が肉体)

男の娘『[ピッ]、[ピーーーーーーーガーーーーーーー]……!』

男「何だよ!? こ、今度は何て言ったんだよ!?」

男「あ……あのな、どうしてお前が俺の番号を知っているのかやらはもう問わないとしよう」

男「だけど、冗談のつもりでこんな話をしているなら」

男の娘「僕がわざわざこんな時にそういうことを言うと思う?」

男の娘「ま、真面目……だよ……すごく、真面目な話をしてるの……」

男(真面目だとして、俺はそのような覚えは一切無い。付き合っている? 俺と、この男が?)

男(いや、待ってほしい。確かに俺は人生一度たりとも女子に好意的になられたこともなし、人生一度たりともである)

男(だからといって、男色へ迷走してしまうような妥協はない。断じて……それもキモオタデブを相手になんて)

男の娘「男はね、最近記憶が曖昧になって困っているって相談してくれたんだよ」

男「あ、曖昧? 俺が?」

男(少しでも元の話題から逸らそうと唐突に始まった彼の話を黙って聞いてみた)

男(要約すれば、俺は、彼……男の娘へ 自分の記憶が断続的に消失してしまう障害を抱えている、らしいと相談していたらしい)

男(記憶が無くなるタイミングはわからない。だから、もしもの時を考えて 男の娘がこうして毎日、確認のために電話を掛けてくれる。だから「覚えてる?」か)

男の娘「でも男が言ってたことは本当だったんだね。疑ってるわけじゃなかったんだけれど」

男の娘「こうやって話してると何も覚えてないんだもん……でも、[ピーーーーーーーーーー]」

男「え?」

男の娘「うっ、ううん! 何でもない! それより記憶が無くなっちゃったなら」

男「ああ、病院が先……今朝は忙しいな……」

男の娘「病院はみんなが心配するからいいって話でしょ? あ、覚えてないよね。それも」

男の娘「大丈夫、男。僕が全部 思い出させてあげるから。そうしてくれって男からも頼まれたんだもん! えへへ…っ」

男「……なんというか、まだお前と俺の関係はさっぱりだけど、申し訳ない」

男(だが、信用していいのかどうか。事実、記憶が昨日までの記憶は残っていないのだから、彼の話がすべてに疑いは持てない)

男(付き合っているというのは、恋人同士なわけで、その、男同士の。 純粋に異性LOVEな人間からすれば、これには喜べない)

男「思い出さなきゃいけないことが山ほどありそうだな……うう」

男の娘「心配しなくていいよ。ぼ、僕じゃあんまり頼りないかもしれないけど……でも! 男の為ならがんばるから!一生懸命!」

男(ああ……なぜだろう。今はあの醜い顔面をした男を相手にしているとは思えない。もしかして彼はこの世界においては僕っ娘の美少女なのでは)

男「男の娘って、女の子?」

男の娘「へ? ち、ちがうよー! 僕はちゃんとした男だからっ!」

男(神よ、こいつはシビアである)

男の娘「まさか僕の性別もわからないなんて……たしかに男ぽくないって言われて、女の子によく間違われるけど……むぅ」

男「待て、いま何て言ったんだ? 男っぽくない?」

男の娘「ちょっと もうやめようよぉ~……結構 僕 気にしてるんだから」

男(まさか、だがな。 いつ帰って来たのかわからない昔の幼馴染はデブスから、優しげな雰囲気を持つ美少女へ)

男(そして我が妹も、兄をまともに相手してくれて、口は悪い所もあるがどこか憎めない小動物的可愛らしさを放つ美少女へ)

男(これら二つのケースから想定されるもの。そして彼が男であるにも関わらず、女子に間違われるような容姿であるという情報を合わせると)

男「ああーっ!! もしかして、『男の娘』じゃないのかッ!?」

男の娘「わぁ!? きゅ、急に大きな声でどうしたの。びっくりしたよー……」

男(『男の娘』、そういうのもあったのか。予想外だが 先に二人の美化を目にする限り 容姿は期待して良いのでは?)

男(だが、所詮は男、か。 希望は見えるが、それだけは少し参ったな)

男「(この場合どちらが彼氏になる? 俺はタチかネコか? いかん、受け入れ始めようとしている) とりあえず、俺について色々訊いてもいいかな。早速なんだけれど―――」

男の娘『今からここで話すのはちょっと。長くなりそうだし。それに男から直接会って話して欲しいって言われてるんだ。僕もそうした方が……って、聞いてる?』

幼馴染「男くんの何を誰に訊いてるの? 早速って?」

男「えー……あー、えっとー……ねっ!?」   男の娘『男?』

男「お、幼馴染。少し待っててもらえないか? いま大事な話を、ねっ!!」

幼馴染「大事? [ピーーーーーーーー]……あんまり遅くならないでね?」

男「わかってるよぉー! ……なぁ、男の娘。俺が記憶喪失気味だって話はお前以外にも話したのだろうか」

男の娘『ん? うーん、そういう話は聞いてないけれど。 たぶん、僕だけに話したんじゃないかな。男は周りに心配掛けさせたくなさ気だったから』

男(彼にだけ相談をしたということでいいのだろうか。よほど信頼を置いていたのか、男の娘に。 友人として、と今は願っておきたいが)

男「わかった。もう十分……(ではない。だが、今は背後からの、突き刺さる、視線に耐えられそうにない)」

男の娘『そっか、じゃあ続きは学校でしようね。 あ、それから委員長さんに貸した物をちゃんと返してもらって?』

男「返してもらう? ていうか、委員長? 委員長もいるのか? あの委員長?」

幼馴染「おーとーこーくーん? 長電話してるとまた遅刻確定だよ。時間ちゃんと見てるの?」

男「いや……ああ、わかってるってば。 それじゃあ男の娘、あとで学校で続きを」

男の娘『うん、また学校で。……それと最後にこれだけ』

幼馴染「今日はいい天気になって良かったね~。昨日の酷い雨が続いたら大変だったよ」

男「そうなんだ……むふっ」

男(突然、小さくて細い幼馴染の指が俺の頬をぐうっと押した。呆気に取られ、彼女へ振り向くとつまらなそうに口を尖らせている)

幼馴染「男くん、ぼーっとしすぎ。危ないよ?」

男「……美少女の手が俺の体へ触れている。二度だ、二度も触れた!」

幼馴染「それよりさっきは誰と話してたの、電話。 女の子?」

男「何だよ。もしかして妬いてるのか? 朝から俺が可愛い女の子と仲良さ気に話しててさ」

幼馴染「ちっ、ちがいますっ!! 別に……仲良くするぐらいなら……[ピーーーーーーーーーー]」

男「え?何だって? (あれ、まるで今のギャルゲー主人公のような台詞が自然と口から出てきた。というより、いつもの会話、みたいな感覚が)」

幼馴染「何でもない! むぅ、もしかして部活の人たちからとか?」

男「いや、男の娘からだけど……なぁ、それより今 部活って言わなかった?」

幼馴染「あー、男の娘くんから……はぁ、[ピーーーーーー]……」ほっ

男「聞いてたか?」

幼馴染「えっ!? あ、あぁ! えっと、何!? ご、ごめん……あはは…///」

男(かわいい。俺の幼馴染はこんなにもかわいい。他の女かと思いきや、と焦燥感を煽られ、すぐにそうではないと分かれば 「ほっ」である)

男(しかし、幼馴染。そこで安心するには早いらしい)

男(男の娘と俺が付き合っているという話は誰にも公表していない。まだ、秘密にして欲しいという)

―『まだみんなに言う勇気がなくって。それに僕たちって……な、なんでもない』―

―『とにかくまだ秘密にしておいてほしいんだ。時期が来たら、うん、かならず。 [ピーーーーーー]』―

男「とは言われるけどなぁ、意味不明な俺の立場からされると……!」

幼馴染「ん?」

男「いや、何でもないんだ。それよりさっきお前が話してた部活の人たちって」

幼馴染「そのまんまの意味でしょ? 男くんの部活の人たち、ほら 転校生ちゃんも一緒にいるところの」

男「待て、待てまて!! 部活どころか、転校生って!? ……俺は部活に所属しちゃいないが」

幼馴染「えぇー? ふふっ、今日は色々不思議な男くんだ。ほぼ毎日放課後、部活してるじゃん」

男「お前が、じゃなくて? 俺がだと? (おかしい。この俺はスポーツおろか、文化部ですら入部すれば浮きそうな存在)」

男(そんな俺が自ら進んで部活動を行うわけもない。その覚えすらない。 俺の記憶が正しければ、高校ではどこにも所属せず、いわゆる帰宅部で)

男「そうか、帰宅部か。幼馴染も冗談が好きなようで? 確かに俺は放課後毎回部活動しているな、居もしない相手と帰宅までのタイムを競っているさ…」

幼馴染「……ん? 冗談、だよね。それって」

男「いやいや、そっちこそ……ねぇ?」

男「はぁ、ちなみに俺は何部へ入っている? まさかバスケットボールやサッカーボールやらではあるまいな。いや、あり得ん」

幼馴染「本当にどうしちゃったの? えーっと、ラーメン愛好会……でしょ?」

男「何だ そのふざけた所は?」

幼馴染「うん、今に始まったことじゃないと思うけれど……」

男(驚きが怒涛連続でやってくる。ここは、元いた世界とは様々な面で異なっていた)

男(幼馴染へ問い質せば、自分が知らないところでいつのまにか俺はその『ラーメン愛好会』とやらへ所属していたという)

男(さらに、ほぼ同時期に『生徒会』へ書記として入会しているそうな。……昨日までの俺は一体何を考えているというのだ)

幼馴染「急に色々やり出しちゃったからあたしもビックリしたんだよ。でも、男くんも楽しそうだったし大丈夫なのかなーって」

幼馴染「その代わり、あたしは[ピーーーーーーー]……なんだか[ピーーーー]男くんが段々[ピーーーーーーー]」

男「は? いま何て言ったんだ?」

幼馴染「あっ! き、気にしないで! 何でもないの!」

男(ここからはあまり疑ってかからない方が良いのだろうか。幼馴染も今までの俺を見てきたのなら、今の俺を不審に思うことだろう)

男(部活に生徒会。説明するまでもないが、俺はアグレッシブな人間ではない。そのようなものへ時間を取られることをなによりも嫌っている)

男(つまり、理由も無く 俺がそれらに席を置くことは満に一つあり得ない話である)

男「……じゃあ、何か目的があるんだろうか」

男(目的。 いや、それよりも俺の記憶が曖昧となっているというのは本当か? 別に男の娘を疑っているわけではないが)

男(俺の、昨日、は隣に美少女幼馴染もいなかったし、両親も仲の悪い妹も家にいた。だが、今ここにある俺の昨日は違った)

男(まさかパラレルワールドが実在して、俺は突然その世界に存在したもう一人の俺と入れ替わった、とか……考えすぎか? そもそもこれが現実かもよく分かっていないのに)

男(夢なら……夢、神……そうだ、俺は神と出会い、そこで美少女たちから簡単にモテるようになりたくはないかと話を持ち掛けられたのだ)

男(勿論、乗るしかなかった。そんな美味しい話を見逃す阿呆って? 少なくとも俺は違った……だから、今ここにいるのではないか)

男「(夢物語どころの話ではない、俺の願望が、理想が反映されている。この世界は俺が望んでいたもの) か、神は俺に正しく力を与えたのか。だったら有効活用するしかないだろ…!」

幼馴染「男くんっ、前!!」

男「え? …………うぐぅ~~~っ!?」ドン

?「きゃっ!!?」

幼馴染「だ、大丈夫!? もう、だからぼーっとしてたら危ないって言った……ああっ」

男「いてて、あ、頭がふらつく……ん、何やら柔らかくて大きなものを両手で掴んでいるような…?」ムニュゥ

?「あっ! ……っあ…ぐ、んぅ」

男「この柔らかさ、感じたこともない……!」

?「い、いつまで触ってるつもりですか!! この、変態っ!!」 スパァン!

男「ぐふぅ!?」

ここまで。次は今週の土日予定っぽい?

幼馴染「ああっ、男くん! 今すごい音しちゃってたけれど」

男「ぐっ、痛い……痛いが、悪くない気持ち (自分がマゾヒストだと感じた事は一度たりともない。おそらくノーマル)」

男(しかし、こうして美少女から平手を受ければ一瞬で属性がチェンジ。いや、元々その気があったとか……それは置いて、目の前の美少女)

男(いつのまにか俺の体を潜って脱出しているが、何故すぐに立ち上がらず俺へ下着を見せつけている。語弊があるか、正確にはストリッパーのように見せつけているわけではない。スカートが捲れていることに気が付いていないのだ)

?「殴ってすみませんでした。だけど、あなたも悪いんですからね」

男「ありがとう、ありがとうな……」

?「え、あの? 強くやり過ぎたかしら。さっきからどこを見て……はっ」

?「きゃあああぁぁぁ~~~~~~!?///」ばっ

幼馴染「どうしたの、って……男くん いま何見てたか教えてみてよ」

男「パン、いってッ!?」スパァーン!

?「はぁ、はぁ、あああぁぁ~……ばかばかばかばか、ばかっ……くぅぅ、[ピーーーーーーーーーーーーー][ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーー]!」

男「はぁー!? で、いま何と!? ていうか、今のはコイツが言えっていったからだなぁー」

幼馴染「知りませんっ」

男「おぉーい……そんなに頬っぺた膨らませちゃってさ……」

幼馴染「それよりちゃんと委員長さんに謝ろう、男くん?」

男「委員長さん?」

幼馴染「ねぇ、どうしたの今日の男くん。クラスメイトだよ? そろそろ記憶喪失ごっこは止めようよ」

男「この子が委員長だと……あの図書委員長の……び、美少女化している」

委員長「[ピーーーーーーー]。忘れたふりしたってさっきのことを無しにできると思わないでください、男」

男「いや、そういうわけでは……ああ、やっぱりダメかー! 空気読んで貰えると思ってたんだけどなぁー!」

委員長「都合良すぎます。大体あなたは朝からあんなにそそっかしくて、私だったからいいものを他の人にぶつかっていたら」

男「わかってる! でも、委員長だっていきなり飛び出してきたことを忘れるなよ。俺だけが加害者ってのは納得いかん」

委員長「そ、それは……ごめんなさい。私も角からあなたが出てくるとは思っていなくて……でも[ピーーーーーーーーー]///」

男「何だって?」

委員長「だから……ああっ、もう! とにかくあなたのせいで酷い目に会いました! 以上、です!」

男「投げやりな、って おい委員長? どこ行くんだよ?」

委員長「学校に決まってるでしょう! あなたには私がこれから買い物へ行くように見えるのですか」

男「わかんない! ……行ったか」

幼馴染「怒らせたままになっちゃったね。あとでちゃんと謝りに行こう? あたしにも悪いところあったから」

男「聖人かよ、俺の幼馴染は」

男(委員長。読み通り、俺が知る元の世界の女子たちはほとんど美少女化しているのか)

男(あの地味で垢抜けない図書委員長が驚きの変身を遂げていた。眼鏡でポニーテールの美少女だ。スカートも、うーんと短い)

男(彼女とは一度、ほんのちょっぴりだけ話をしたこともあったが、随分とまぁである。容姿どころか性格も違い、真面目、そして敬語……典型的委員長キャラ)

男(面影一つ残っていない。それは幼馴染たちにも同じことが言えるのだが。これは、美少女たちは元の世界の俺の周辺にいた人間をモデルとしているのか?)

男(だとすれば女子の知り合いなんて全く思い当たらん。これ以上の数は望めないかもしれない。いや、だがこれだけでも十分贅沢な域だろう)

幼馴染「今日は余裕持って学校着けたね、あたしが急がせたお陰だよー? お礼は? ふふっ」

男「何を貰えたら嬉しい? いつも世話になってるらしいし、それも兼ねて何かしてやらんでもないさ」

幼馴染「…………」

男「え、どうしたんだ? 急に固まって」

幼馴染「う、ううん! 男くんがいきなりそんなこと言い出すから……ビックリして」

男「(昨日までの俺よ、お前は一体どんな俺であったのか) まぁまぁ、俺だって優しい人間だよ。何でも言ってみろって」

幼馴染「[ピーーーーーーー]、そ…そう、だなぁー……えっと……きゅ、急だと何にも思いつかないね。あはは……[ピーーーーーーー]///」

男「え? な…… (今朝から美少女たちとの会話で、時々聴き取れない台詞がある。あまりにも、いや、露骨なぐらい聴こえないのだ。さすがの俺でも異常だと気づいたさ)」

男(そうか、これが神が俺へ余計に与えた『難聴』。俺はモテる代わりにハーレム主人公特有のスキルを持ったわけだ)

男(アニメや漫画ならばこの難聴スキルによって展開を先伸ばしたり、誤魔化すものだろう。だが、現実にこのリスクがあると、美少女たちと真に楽しめない。この俺が)

男(おお 神よ、あなたは慈悲深いが、なんと残酷なお方なのだろう)

男(今は幼馴染へ集中しよう。これは次のイベントを発生させる良い機会だと判断できないか? 俺は思う)

男(ここでお決まりの台詞で訊き返せば 何でもない と誤魔化されてしまうことは分かり切っている。では、あえて反応しなければ?)

男(試されている……試されているぞ、神は試練を与えられた……)

幼馴染「……///」モジモジ

男(何も思いつかない、なんて嘘だ。彼女は何かを求めている。物? 違う、幼馴染は現時点から好感度は高めであると思われる)

男「(すなわち、幼馴染が求めている物は一つ。俺自身である) 今度の休日に二人で遊びに行くか。飯でも奢ってやるよ」

幼馴染「ふ、ふふふっ、二人で!?」

男「ああ、気まずいなら妹も連れて行こう……いや、やっぱりお前と二人きりがいいのかな?」

幼馴染「えぇー!? あ、あ、あわわわー! [ピーーーーーー]、[ピーーーーーーガーーーー]///」

幼馴染「……も、もしかして男くん。あの時の[ピーーー]、ちゃんと覚えてて、それで……も、もしかしてその日に……[ピーーーーーーー]」

男(ビックリするぐらい意味不明だが、選択は間違っていなかったらしい)

男「へへ、それで返事はどうなんだよ? 嫌なら嫌って言ってもらえた方がスッキリするんだが?」

幼馴染「嫌なんて言うと思う!? あっ……うぅ…///」

男(抱きしめてキスしてぇ、抱きしめてキスしてぇ。中々どうして素晴らしきかな 美少女よ)

幼馴染「男くんが、そういうなら……あたしは」

男「うんうん!」

幼馴染「もちろん、い―――――――――」

先輩「おっとこくぅぅ~~~ん!! おはよう、そして朝イチのハグ!! ぎゅ~っ!」

男「うひぃいいい!? な、何!? あっ、あっ!」

男(予測された幼馴染のOKは思わぬ形で遮られた。俺の背後から誰かが、それは、新たな美少女)

男(振りほどこうにもガッチリホールドされ、顔も見られない。そして背中へ押し付けられるむにゅっ! そうか、こいつがダイナモ感覚! 刺激が、ああっ)

男「きゅう」

先輩「あれれのれ? おーい、男くーん? なんだよぅ、これぐらいでヘバってちゃ情けないぜー!」

男「あ、あなたは……もしかして上級生の先輩さんでしょうか」

先輩「いえーす! アイアーム!」チッチ

先輩「って、何その反応? まるで初対面の人 相手にしてるみたいな。鳩がショットガン受けたみたいな顔してるよん?」

男「豆、豆だ! ……それより先輩もだと。遠目から見たことがあるだけで、関わりの一つもない女子だというに」

男(あまり、深く考える必要もないのだろうか。女子バレー部に入っていて、男子からも人気が高い先輩)

男「あの つかぬ事を伺いますがね、あなたはサッカー部のかれ……あ、いや」

先輩「ん? 遠慮なく色々訊いちゃってよー、男くんになら答えられないことない! かも!?」

男「(非常に魅力的な挑発だが、ええいままよ。ただし) 先輩さんにサッカー部の彼氏がいるって噂に聞いたんですけれど、本当?」

先輩「えへへ、いると思う? そんなの。あのねぇ チミィ、わたしは生まれてこの方付き合ったことないよ~?」

男(嘘を、言っている様子はない。本当なのか。俺が知っている彼女には……まさか俺に合わせて彼女たち美少女の設定が書き変えられている?)

先輩「その噂、たぶん間違って伝わっちゃってる。前にサッカー部の人から告られちゃったことあるけど」

先輩「断っちゃったんだよ~……その……好きな人がいる、って……」

男(何だ。突然照れ始めたぞ、先輩。そんな中で上目遣いで時々俺をチラリと見てくる、ということは?)

先輩「……[ピーーーーーーーーーーーーーーーー]///」

男(サッカー部の彼氏? ざまぁみろ、とでも言って差し上げようじゃないか)

男「そうなんですか。それじゃあこっちの勘違いだったみたいですね。すみません、変なことをいきなり」

先輩「べべべ、べつにー!? 勘違いって誰にでもあるじゃんさぁ、うん……ねぇ、どうしてそんなこと訊いてきたの?」

男「な、何となく、ですかねぇー。え、えへへへへ…… (ここで意味深にチラリと視線を向け、逸らす)」

先輩「[ピッ]、[ピーーーーーーーガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー]///」

男「フ、フフフ…… (先輩、良いじゃあないか。幼馴染たちも大変魅力的であるが、彼女も良い。どちらも捨てがたい)」

男(待て、幼馴染? そういえば幼馴染はどうした? まったく会話へ入って来ない、というか、チラリ……)

続きはまたあとで。昼すぎからいけるだろう、たぶん

幼馴染「[ピーーーーーーー]」

男「は? あ、あぁー……(間違いなくお怒りの様子で。当然か、タイミングとしては最悪なところで放って置かれている)」

先輩「あり? どったの 男くん?」

男「すみません。今連れがいるので、また後で話しましょう!!」

幼馴染「別にあたしに遠慮することないもん。男くんはその人と引き続きお楽しみください」

男「待てってば! 突然ああして来られたら仕方がないだろう!」

幼馴染「うん、あたしも仕方ないと思ってるから平気。だから気にしないで。[ピーーーーーーーー]…」

男「そう言われて気にしない奴が何処にいる? 少なくとも俺はそんな人間じゃ……(言い終える前に、こちらを見向きすらせず去ろうとしていた彼女が振り返った)」

男(その仕草と、浮かべた作り笑いを見た瞬間、まるで頭を思い切り殴られたような衝撃とともに、あの時の[ピーーーーーーーーー])

幼馴染「知ってるから」

幼馴染「あたし、トイレに行ってから教室に行くね。だからここで一旦お別れ。バイバイ、男くん!」

男「お、おう……また……」

男(あえて、ダメな演技で引き止めにかかったのにも訳がある。聞いて呆れてくれようとも構わない)

男(委員長、先輩と続いた美少女との出会い。先輩という予想外のキャラが現われたことにより、これで俺の相手が打ち止めだとは思えなくなったわけだ)

男(最初こそは幼馴染とひたすらイチャラブを楽しもうかという考えもあったが、迷いというか、欲が出てきたらしい)

男(俺には男の娘という同姓の恋人がいる。それは定かではない。始めはかなり戸惑った話だが)

男(モテると言われたのに既に恋人の存在があった。何かおかしいとは思わないか? 浮気を前提にエンジョイしろというのか?)

男(男の娘も美化されている確率は高い。だが、この俺は間違っても同性愛へ傾く気も、悪いが最初から彼に縛られるつもりもないわけだ)

男(本題へ戻ろう。さて、俺は一人の美少女だけを愛するつもりはない。察しが良い方なら、この時点で理解したのでは? ……そう、全ての美少女を俺のものとする)

男(これから教室へ向かうが、おそらくは次々と新たなキャラが登場するに違いない。直感が告げている、否、美少女センサーがとでも言っておこうか)

男(一体どれだけの数かは見当つかんが、別の美少女が現われるたび俺は目移りしてしまうだろう。現にここまで何度も)

男(神は俺へ、この目的を達成できる可能性を持つ力を授けた。何度でも言おう、それは有効活用すべきではないか)

男「ふぅ……そのためにも、すまない 幼馴染よ。さっきは下手な追い方をしてしまって」

男「均等に接していく必要がある、他ならないこの俺の目的のために。好感度の並行を優先する……!」

男「目指すは、男の夢だよ。ハーレムだよ! 美少女のさぁー!」

男「幼馴染、妹、委員長、先輩。そして男の娘をカウントしようかどうか、か。見てから判断しても遅くはないだろう。品定めって大切だもの……」

男「……俺はゲスか? 違うね、美少女たちに優しい……そう…いわばハーレム主人公……!」

男(主人公だ。夢にまで見た、アニメやゲーム、漫画の類でしか起こりえない奇跡を体験できる。笑うしかない)

後輩「わっ、一人で廊下に突っ立って何笑っているんですか。すごく不気味ですよ……」

男「んー?」

男(そこには可愛らしい女子の姿。カメラを片手にこちらを向いて、表情を引き攣らせている)

男「(正しく美少女。つまり、次の子がいらっしゃったのだ。恐らく彼女も知り合いだろう?) 現われて早々困らせられるな」

男「そのカメラは? まさか俺を撮影するつもりだった?」

後輩「驚かせようと思ってそのつもりでしたけれど……お断りしますね」

男「被写体が進んで撮られてやろうってのに。そいつは悲しいなぁ」

後輩「えっと、なんだかすみませんでした。お邪魔しちゃいけない感じですかね」

男「釣れん奴め。で、本当は何か用事があったんじゃねーのか?」

後輩「そうかもしれませんね、ふふっ。あの約束 ちゃんと覚えてますか?」

男(これだ。こういったことを尋ねられるのが、現状つらい。俺には彼女たちと築いてきた今までを知らないわけで)

男「えっと~……デートだったよな。結構楽しみにしてるんだぜ、俺。あれ? 違ったっけ?」

後輩「デート……あっ、はい!! そ、それで合ってるかと……///」

男「マジかよ」       後輩「えっ」

男「あはぁー!! デート楽しみねぇ、二人でどこ行こうかねぇー!?」

後輩「行き先なら最初に決めたじゃないですか。私と一緒にカメラを見に行こうって」

男「えへへ、だったっけか? 悪い悪い! (すごいすごい、俺の勘も捨てたものではない)」

後輩「頼んでおいて今さらなんですけど、先輩はカメラとか興味ありませんよね。もしかしたらつまらないかも…」

男「そんなことはないよ。むしろ、そいつを切っ掛けに俺に新しい趣味が増えるかもしれんだろ?」

後輩「ええ、そうなれたら私も嬉しいです……先輩と一緒に……い、いえ 今のは 何でもないです……」

男(うーむ、やはり俺の分析に間違いなかった。早速目移りしかけているぞ)

男(ところで、彼女と会話していると違和感のようなものを感じて仕方がないのだが。これは一体?)

後輩「そういえば前に渡したインスタントカメラどうしました? 別に使い捨ての物だし、処分してもいいとは言いましたけれど」

男「……あー、今も大事に使わせてもらってる」

後輩「ふふっ! あんなものを大事にって。でも、なんだか嬉しいです」

後輩「……それであれから昔の記憶の方はどうですか。何か思い出せたこととか、写真とかは」

男(昔の記憶? 俺が抱えている事になった記憶喪失障害のことだろうか。男の娘以外に協力者がいたと?)

男「(だが、最後の『写真』が気になる。それがどうしたというのだろう) いや、特になんにもだよ。……お前の方は?」

後輩「はい? いえ、私も同じです。あれからは夢にも出てこないし、頭にふと思い浮かぶことも」

男「(……俺の、記憶の話ではないのか? 浮かんでこない? 夢にも?) それじゃなくてさ、写真だよ。写真」

後輩「えっと、写真の方は前に見せた物で全部って言いましたよね?」

男「ああ、そうだったな。うっかりしてたよ……んー?」

男(写真についてもっと尋ねるべきだろうか。だが、俺の目的に関係あるか? とにかく ここまでの会話でわかったことは彼女とのデートがある。それだけ)

男(委員長と同じ敬語キャラだが、性格はアレよりはくだけている。俺に対してどこか尊敬というか、上の者扱いなところを見るに、彼女は)

妹「あー! こんなところにいたんだ、後輩ちゃん。探したよー?」

後輩「妹ちゃん。ごめん、ちょっと先輩とどうでもいい話をしてて!」

男「どーでもいーい? ふーん? はぁーん!?」

後輩「合わせてくださいっ。ば、バレたら恥ずかしいじゃないですか……///」ヒソヒソ

男(もっと、もう少し近くで、耳元で囁いて。でも、これ以上は、抱きしめたくなるかも)

妹「お兄ちゃんと話したって無駄に時間過ごしちゃうだけだよ? 得る物 何一つ無しなんだからね」

後輩「う、うん。知ってる」     男「冗談でしょう? ねぇねぇ?」

妹「ふふーん、べーっ だ! 後輩ちゃん、ほら行こうよ。ずっと近くにいると変態ウィルスが移っちゃうからっ!」

男「だったら お前の体内には既にそれが充満してるだろうッ!!」

妹「私はすごいバリア張ってるから効かないもん!! もうっ、ほら 後輩ちゃん?」

後輩「わかったからそんなに急かさなくて大丈夫だよ。先輩、また連絡しますね」

後輩「……あの 私も今から楽しみにしてますから。デート……そ、それじゃあ失礼します…///」

男「この胸にふつふつと沸いてくるもの、劣情… (名は後輩、下級生で俺の妹と近しい関係。これだけでも今は十分な情報だ。ああ、やればできるじゃないか)」

すまん、ここまで。続きはかなり遅れて土曜日に

遅れるけどまっちくり~

わたしまーつーわいつまでもまーつーわ

どうでもいいけど>>1がこのssで好きなキャラは誰ですか?別に答えなくてもいいよー

男「後輩ちゃんとデートか、信じられないな。もしかして騙されているとかじゃない?」

男「いやいや、あの反応は期待して良い。乙女の顔をしていた……しかし、これで後輩との親密度が他を抜き去ってしまえば」

男「何事にも程々というのが大切か。俺にとっても、彼女たちにとっても生殺しが続く、か」

男(それでいい。ハーレムを目的とすれば、友達以上恋人未満の関係を展開する必要がある。そのモヤモヤ感が堪らない。そうだろう? ラブコメ的には)

男「学校の中も大して元の世界と変わらないか。変わったのは人間だけ……さぁ、次はどこから来る。俺はここにいるぞ。逃げも隠れもしないさ」

男「……さすがに自分からアクションを起こさなきゃ何にも始まりはしないか。甘えてばかりもいかんなぁー」

オカルト研「…………」

男「たとえば向こうの壁から俺を覗いてる美少女へ話しかけるとか」

男「よう、そんな所に隠れてられても困るんだがー? そんなに俺の顔見て何が面白いんだよ」

オカルト研「[ピーーーーーーー]……///」

男「何ですかー? えー? (難聴スキル。これからこいつと長い付き合いになっていくのか。どうにか取っ払いたいものだが)」

オカルト研「そ、そんな急に近づかれては私……あなたが放つ瘴気に当てられてダメになってしまうわ……」

男「また変態菌か。悪かったな、世の危ないおじさまらは俺が原因で狂ったらしい」

オカルト研「違う。そうではなくて あなたの中に潜む悪霊が今日は活発なの。いつも以上にあなたが禍々しい」

男「どちらにせよ良さ気なものを抱えてないのなっ……!」

男(距離は保たれたまま、俺と彼女の会話は続く。どうにも特殊な内容ばかり飛び出ててくるし、不思議な雰囲気を放つ美少女。そう、美少女には違いない)

男(だからこそ気づいた。彼女はもしかして『オカルト研』では? 元の彼女は、隣のクラスで有名な「わたし霊感あるの」と言い回る いわゆる構ってちゃんの腐女子だ)

男(腐女子ではあるが 元々顔は整っていた気がする。まぁ、何であろうが俺とは接点を持たないクラスで浮いた存在の女子である。それが今では不思議系美少女キャラへ)

男「なぁ、いつまでも離れたまま会話していてやり難いとは思わないか? 俺は思うんだ」

オカルト研「……きょ、今日だけはダメ。[ピーーーーーー]」

男「やれやれ、じゃあその理由を聞かせてもらいたいところだな。あいにく俺はオカルトの類を信じちゃいない。だから悪霊とやらも」

オカルト研「だめったらだめ! 本当にだめよ!」ふるふる

男「答えになってない。じゃあ俺はもう教室へ向かっていいのか?」

オカルト研「やぁ、まだ行っちゃいや……」

男「かわいい。かわいいが、面倒臭いのは嫌いな性質だ!!」ぐいっ

オカルト研「きゃ…きゃっ!?」

男(オカルト研の制止を振り切って無理矢理近づき、手を引いてこちらに出す、つもりが)

男「やわらかい……」

オカルト研「っあ、きゅー……[ピーーーーー]///」

男(偶然か、はたまた必然か 俺は彼女を押し倒す。長い前髪が横にそれ、可愛らしい顔が目の前にあったのだ。そして、俺の手にはいま柔らかな感触がある)

男(これがラッキースケベ? 今朝も近いものを体験したが、なんて素晴らしい力なのだろう。幸運も振り切れると恐ろしい)

男「(しばらくこの奇跡的感触を堪能していたいが、いつまでもこうしていて他の美少女へ目撃されては面倒になる) す、すまない。別に狙ったわけじゃ……どうした?」

オカルト研「[ピーーーーーーーー]///」

男「お、オカルト研? で、いいよな? どうしたってんだよ? (胸を揉まれるのを嫌がっている様子はない。彼女はとにかく両手で自分の顔を隠しているのだ)」

オカルト研「[ピーーーーーー]……[ピーーーーーーー]……!」

男「だから何を……なるほど (指の隙間からチラっと覗けてしまった。右頬に大きなニキビが一つ、これを彼女は見られたくないと)」

オカルト研「[ピーーーーーーーー]! [ピーーーーーーーガーーーーーーーー]、[ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーー]!」

オカルト研「[ピーーーーーーーーーーーーーー]……」

男「大丈夫、何にもおかしい所なんて見えないよ」

オカルト研「うそよ……!」

男「俺は嘘をつかない純粋な男子だって噂を知らない? もぐりかよ」

男「見てみろよ、俺のほっぺた。お前と同じところにニキビ出てる。これってお揃いってことになるな、へへ」

オカルト研「あっ……ほんとう……」

オカルト研「お揃い……男くんと私の……変だけど……ふふふ、[ピーーーーーー]///」

男「かわいい (かわいい)」

男「なっ、別に大丈夫だったろ? 恥ずかしいことなんて何一つなかった」

オカルト研「……それでも少し恥ずかしいわ」

オカルト研「でも、男くんが[ピーーーーーーーーー]。だから……///」

オカルト研「きょ、今日のところはあなたに助けられたみたい。本当は私があなたを早く悪霊から解放しなければならないのに」

男「お前はその悪霊に憑りつかれた男から救われたってことだな。気にするなよ、すごいの揉めたから…!」

オカルト研「……男くんのえっち。[ピッ]、[ピーーーーー]」

男「何だって?」

オカルト研「い、いいえ 何でもないの。また出直させて貰うわ……ばいばい」フリフリ

男「あれをこの手にした時、桃源郷が見えた気が、いや 違うか。俺は既に桃源郷の中にあるのだよ!」

男「にしても中々忙しいものだな、次から次へとイベントがやってくる。ふぅ、ハーレム主人公には息を吐く暇すら与えないと」

男「それもそうか、見ている人間を楽しめる必要があるからなぁ。ああ、もしかしていま俺は誰かに見られてたり? これはゲームか、漫画か?」

男(そんなメタ的ことが言える内は俺は俺だろう。誰かに動かされているわけではない、自らの意思でハーレムを目標に定めた)

男「……あの感触がまだ手に残っている。HRまで、時間はまだ残っている。……トイレに行こう。そうしよう」

男(別になにをするかは俺の自由だ。これは、休憩も兼ねている。そうなのだ。……だが、俺が動けばイベントも動く)

男の娘「あっ、男。こんなところで偶然だね! おはよう!」

男「ば、バカな! ここは男子トイレだぞ! どうして美少女が小便器の前に立っている!?」

男の娘「美少女って……何言ってるの? 僕は男だよ、もう」

男「男ぉー!?」

男の娘「ど、どうしたの急に屈みこんで。もしかしてお腹痛い!?」

男「ああぁぁ、別のところが!! そ、それよりお前はもしかすると例の」

男「男の娘では……」

男の娘「そうだけど、ってああ! そっか、忘れちゃってたんだよね……[ピーーーーー]」

男の娘「そうだよ、僕が男の娘。男のクラスメイトで、そして男の[ピーーーーーーー]///」

男(あまりにも衝撃すぎる。彼がそうなのか? 冗談みたいに美少女である。いや、ここでは美少年と言い変えた方が正しいのか)

男「付いてるのか? アレが? マジでか」

男の娘「色々混乱してるみたいだね、可哀想に……」

男(彼が俺の恋人だと。ああ、疑っていた自分を許して欲しい。まさかこんなにも可愛らしい顔していると思わなんだ)

男(でも、付いてるのか)

男「…………」

男の娘「男? どこ見てるの? ……あっ///」

男(何度見直しても男とは到底思えない顔立ち。そして俺の知る『男の娘』の面影一つ彼には見当たらない)

男「(予想通りの結果であったといえよう。全てが改変されている。だが、この男の娘も攻略可能キャラ一人なのか?) かわいいな、男の娘」

男の娘「[ピーーーーーーーーーーーーーー]…っ///」

男(そうらしい。これだけで確信できたわけではないが)

男(彼が言うには俺たちは付き合っている。だが、俺にはそれが信じられない。真相を暴く必要があるだろう)

男「なぁ、男の娘。早速で悪いが俺に今までのことを教えてくれないか? 何がなんだか朝からさっぱりなんだよ」

男の娘「ねぇ」

男「は?」

男の娘「……男はさ、僕と男が恋人同士だって言われてどう思った」

男の娘「怖くなかった? 気持ち悪いって思わなかった?」

男「お、おい まずは俺の話を!」

男の娘「信じられた?」

男「…………あ、いや……少し待ってくれよ」

男の娘「ごめんね。そんなこと訊かれてる場合じゃないのに。鬱陶しい真似しちゃって」

男の娘「でも、いまみんながいないから聞きたいんだ。男の正直な気持ちを」

男(真剣な話を持ち掛けられた経験なんて生れてこの方一つもない。他の要素にも面食らっているところだというのに、追い打ちをかけてきた)

男(男の娘はどうして今そんなことを尋ねた? 自信がないというのか。それとも以前の俺も付き合っているという事実を受け止められずにいた。それを彼に察せられていた、とか)

男(意図が全く読めない。可愛い顔が俺の顔を捉えて逃さない。どう答えるのが正解だ? 畜生、どうしてこうなる?)

男「俺はいま男の娘という人間の顔を初めて認識した。電話口で話している時は、お前のことを男だとしか知らなかったわけだよ」

男「どう思うかだって? 悪いが俺は同姓に興味を持ったことはない。はっきり言わせてもらえば怖かったさ」

男の娘「う、うん……」

男「だが、こうしてお前に実際会ってみればどうだよ。性格も良さ気で素直にいい奴と思えた」

男「記憶が無くなる前の俺がお前をどう感じていたのかはわからんが、これからお前を知る努力をするつもりだ」

男「で、今は納得してもらえるかな?」

男の娘「うん。やっぱり色々忘れても男は男だ……僕の知ってる男のままだよ」

男の娘「[ピーーーーーーーーーーーガーーーーーーーーーーーーガピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー]」

男(何を言っているのだろうか、男の娘。俺にはわからない。もしかしてここは外国か?)

男(話しているのはわかる。だが、俺の耳にけして届かない。この奇妙な感覚を表現するには語彙の乏しい俺には難しいわけだ)

男の娘「これを受け取って。男から教えられたことをメモに全部書いて取っておいたんだ。本当に必要になるなんて思ってもなかったけど」

男「結構長々と書かれてるなぁ……これを俺が? 何だよこれ」

男(書かれていることを理解するのは、正直無理だったかもしれない)

男(交友関係についてが一つ。今まで俺が親しくしていた相手は合計11人。その中には幼馴染や男の娘も含まれた)

男(これまでに遭遇していない相手の名前は、転校生・不良女・生徒会長・先生。転校生の名前には覚えがあるな、幼馴染がぽろりと口に出していたぞ)

男「俺は、確かにこの世界にいた。これは?」

男の娘「さぁ、僕にも訊かれても。全部男が言ったことなんだよ」

男「俺がねー……意味不明すぎる。前の俺の頭の中、ドリルで穴開けて覗きこんでみたいもんだ」

男「とりあえずこれは俺が男の娘へ伝えたことで間違いない。どんな考えでそうしたかはわからないが」

男「これだけは忘れちゃいけないこと、なのかな」

男の娘「何か浮かない顔してるけど? やっぱり何度読んでもわからない?」

男「いや……半端臭いと思って」

男「なぁ、これで全部なんだよな? 他に俺に頼まれて教えられたことは? どんなことでもいい」

男の娘「全部だよ。これで全部。頼まれたことといえば、朝も言ったように委員長に貸した物を返してもらってってことぐらいかなー?」

男(ああ、そういえばそんなことを言われた気がする。朝はすっかりその事が頭から抜けていたな、おそらく彼女の方も)

男「俺が委員長に何を貸したかまでは?」

男の娘「わかんないよ。でも、すごく大切な物だったって……[ピーーーーーー]」

男の娘「あ、学校の中とか案内した方がいい? 任せてよっ、僕得意なんだ! そういうの!」

男「校内は適当に調べ……問題ないさ、これから覚えていけばいいんだよ。お前と一緒にな」

男の娘「も、もう……///」

男(話も一段落、俺たちはようやく教室へ向かう。訊けばもう一人の美少女・転校生とは同じクラスらしい)

男(不良女は幼馴染と同じクラス。先生は俺たちの担任。生徒会長は先輩同様に上級生。なるほど、上から下まで幅広く揃えられている)

男(それはともかく委員長に会って再び話をしなければ。貸した物というのは気になる。わざわざ男の娘へ念を押して伝えろとしたものだ、重要アイテムと見ていいだろう)

男(……ところで俺は何も考えずに美少女たちの生活を朝から晩まで満喫する。それでいいのだろう? 男の娘から渡されたメモによってそんなものにより、もっと規模の大きい話に肥大していきそうな予感が)

男(俺はこの世界に確かに存在した、どういう意味だ? 俺は気づかなければならないことを抱えている? この世界とは? 神は何故、俺にこの力を?)

男「そんなの別にどうでもよくね?」

男の娘「男ぉー! そこは男の席じゃないよ、男のはあっち!」

男「え? なんだ、席の位置まで変えられているとは……窓際の一番後ろだと」

男の娘「隣が転校生さんだよ。まだ教室には来てないみたいだね? 遅れてるのかなぁ?」

男「その、転校生ってのはどんな奴なんだ?」

男の娘「ん~……外国から来たハーフの女の子で、日本語にはまだ慣れてないの。運動神経抜群なんだよ」

男の娘「僕の知る限りは優しくて素直な人だと思う。よく僕たち三人で話してたりするんだ」

男「俺たちは既に仲が良いと。だけど、転校生か……」

男(今までは既存の人物が美少女あるいは美少年化していた。だが、俺はこの女子を知らない)

男(名前も思い当たらない。外国からの転校生というのも、俺の知る限りではクラスには存在しなかった)

男「ほう……神め、気を効かせたというわけか! テンプレートな転校生を追加したと!」

男(どうせなら今朝登校路でぶつかるならば彼女を期待したかった。食パンを咥えて曲がり角で衝突、教室へ来てからばったり遭遇して俺たちは声を揃えて「あーっ!?」てな感じで)

男(といってもである。転校してからもうだいぶ日も経っているらしいし、その展開は望めないのだろう。ハーフともくればやはり美少女かな)

男「俺とそいつはよく口ゲンカする仲だったりするか? 最後に俺が殴られたりとかさ」

男の娘「あー、うん。まぁ……殴るのは稀だけど、結構な頻度で口ゲンカしてるかな」

男(気が強いことが判明した。暴力系寄りではないと。転校生といえばツンツンデレデレなイメージがあったが、近くとも遠からずか)

男(この男の娘が協力者であることに感謝したい。探りを入れようと、尋ねようと、全て記憶喪失設定のお陰で違和感を持たせず情報を事前に手に入れられる。心の準備もできるわけだ)

男「ひとまず今はここでゆっくり転校生と先生を待つとして、残り2人は後で会いに行くとしよう。焦る必要はない……逸るがなっ!」

委員長「ちょっといいですか、男」

男「わざわざそっちから来てくれるとは思わなかったよ。ちょっと用があったんだ」

委員長「用? それより朝のことはもう忘れてくださいよ……絶対にっ、ですからね……!」

男(あの感触と見られた物を簡単に忘れられる気はしない。心へ刻んださ、そりゃもう)

男「忘れた忘れた、もう頭の何処にも残っちゃいないって。それよりだ!」

男「俺が委員長に貸してたあった奴、あるだろう? そろそろ返して欲しいんだけど」

委員長「ああ、それですか。私もそのことでわざわざここに来たんですよ」

委員長「というか、明日すぐに返して欲しいって言ってきたでしょう? そろそろも何も」

男「漫画? ……これ?」

委員長「他にあなたから借りた物なんてありません。まぁ、貸されたというか、いきなり押し付けられたと言った方が正しいですかね」

委員長「その……良ければ、また続きを貸していただけませんか。食わず嫌いせずに手に取ってみたら、その…わりと」

男「……ああ、いいよ。明日にでも持ってくる。なぁ、委員長」

委員長「ところで男、それに挟まっていた紙は一体何なんですか? というよりも内容がですけど」

男「紙? (漫画を持ちページを一周適当に捲っていけば、床にメモらしき紙が一枚落ちる。委員長の言葉を無視してそれへ手を伸ばせば)」

男「……俺の字だ、このミミズの這ったような汚さ!」

委員長「ええ、確かにあなたの字で間違いないです。それなら書いてあることは? 私の名前とか書かれてたけれど」

男「こいつは俺が書いたのか? 本当に?」

委員長「はぁ? 自分の字だって今言ったところじゃないですか……」

男(怪訝そうな委員長である。俺とて同じ気持ちなのだ、信じられるか。自分の身に覚えのない、しかし 自分が確かに作成した物がここにある)

男(まるで未来からの贈り物じゃないか。だが、書いたのは過去の俺。記憶喪失はあながち間違いではないかもしれない)

男(メモの内容を男の娘がさきほど手渡した物と照らし合わせてみる……ほとんど同じようで、いや、違う。まるで補足のようではないか)

男(気になるのは11人の美少女たち数名の名に丸が描かれていること。転校生・後輩・先生、そして委員長。彼女らは特別とでも言いたいのか)

男(スキル×……委員長を除いた三人がこれに線を伸ばされている。転校生は点々線で、どういう意味だろう)

男(後輩→イベント有り、写真再度確認。イベントとは、もしかして今週末のデートのことを指す?)

男(幼馴染→要注意、攻略早め。 ……加えて約束注意の文字が見られる。約束とは一体?)

男(さて、一番気になるのが委員長についての文である。わざとらしく長々と書かれているし、行の区切りも滅茶苦茶。こいつは一目で何かを仕込んでいると判断できる)

男(立て読み、斜めからも読めるではないか。ご丁寧に分かり易く目印の字へ線を引いている、逆に鬱陶しいぞ 俺よ)

男「こうりやくふか。こっちからはどうだろう……ははは、これスゲー字汚ねェ!!」

男「たすけろぜつたい。なぜ倒置法にしてある? ああ、ただの癖かよ」

男(直してみよう、攻略不可と絶対助けろ、といったところか。後者は置いておくとして 攻略不可とは? 委員長を俺のハーレムへ加えられないと?)

男(このメモから察するに以前の俺も今と同じような目的を持って行動していた形跡が見られる。他人から読まれて困りそうなところは、だいぶ雑に書かれ読めたものではない。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね)

男(話を戻す、その俺が委員長を諦めているのか。その理由は『助けろ』に起因されるとでも? ……人格? 美少女化? これは? 『ヒント:彼女は知る、俺は変態』……はぁ?)

男「すごくわかった。こいつを見るに俺は短くまとめることは苦手らしいぞ。しかも伝えるのが下手っぴだ、絶望的に」

男「はぁ、いつのまにか委員長も男の娘もいなくなってるし……ん?」

男(男の娘→攻撃要注意。 ……攻撃って?)

男(攻略済み→スキル×→次週持ち越し(両者記憶×)。 気になっていたのだが、この『スキル』というのは 俺の難聴スキルを指すのではないだろうか)

男(そして『×』はよく分からないが、その前にある『攻略済み』というのは美少女を攻略したという解釈で間違いないだろう。ハーレムを目指すつもりでは? まさか欲に負けたのか、情けない)

男(……待て、『スキル×』というのは何を表す? 発動しない? 難聴が?)

男(後輩・先生・転校生。この3人の内で遭遇したのは後輩のみだ、他の美少女たちと変わりはあった?)

男「あるぞ、違和感の正体だ……会話があまりにもスムーズだった……それって!!」

男「難聴スキルが発動していないお陰じゃないのか!? 俺は後輩の言葉を一度も訊き返した覚えはないぞ!?」

男「つ、つまりだよ。俺は以前に後輩を攻略してしまった。その結果、なぜか彼女に対して難聴は発動しなくなってしまった……と?」

男(だが彼女と付き合っていた過去があったとしよう。さきほど話をした時、後輩は一度でもそのような素振りを見せただろうか。ない、たぶん全く)

男「それどころかデートを予定してるんだが。どうして最低限の情報しか書かない!? おまけに分かりづらい!!」

男「委員長に見られても問題ないようにってかー? クソったれめ……両者記憶×、あぁーなんだよ×って」

男(……男の娘には難聴スキルはしっかり発動していた。つまり、まだ俺は彼を攻略していない。付き合うだけでは攻略の内に入らないのか)

男(だが、『攻撃要注意』というのが気になる。攻撃とは? 殴られもしないし、刺されもしていないぞ。別の意味で? 俺にとって都合を悪くさせられると? あっ)

男「都合悪くか、それって……そう、なのかな」

男「このメモの俺を見る限りは、目的に向かう意思は徹底されてる。最初から妥協一つしてなかったんじゃ…」

男「この攻略済みには意味があるのか? 3股かけてるわけじゃなさそうだしな」

男「記憶×……今の俺はここでの昨日までを何一つ覚えていない。だけど、それは神から今日この世界へ連れて来られたから」

男「いや、『俺は確かにこの世界にいた』。引っ掛かる……元の記憶がリセットされているんじゃないか? 流れ的には美少女一人を攻略、難聴が発動しなくなる。その後がどうなんだって話だよ」

男「後輩の様子からヒントを得られないものか……気になることを話していたな、昔の記憶とか写真とか」

男「昔って、過去に俺とあいつが付き合っていたこととか。ああっ、訊かなきゃどうにもならんよなぁー!」

男「ふぇぇ…頭が沸騰しちゃうよぉぉ……訳が分からん。どうなってるんだよ、本当にさ」

男(メモをくしゃくしゃに丸めこんで制服のポケットへ突っ込むと、俺は机に思い頭を乗せた)

男「あの机も寝心地良くて気に入ってたんだけどなぁ……あっ、こことかザラつく。誰だよ 机彫る奴は? 最低だな」

男(個人的に気になる位置がズタズタに切られて、彫られている。最悪いまから机を変えてきても構わない。それほど目障り、というか手障りである)

男「落書きもまた。これもしかして全部俺が書いてる? まさかな、じゃあこれ……これは」

『これからあなたへ話しかける全ての人間を疑いなさい。顔をよく見なさい。けして逃がさないで。  神より』

男「…………」

女子「男くん、聞いた? 最近 委員長が男くんのこと気にしてるみたいなんだって。お似合いかもよ~ 応援してるね」

男「お前は誰だ?」

女子「…………えっ」

とりあえずここまで。続きは明後日

>>682
ん~、誰と言われると難しいけどやっぱりマミタスが一番
マミタスとの別れは力入れて書いたんだけど伝わった?やっぱり好きなキャラは贔屓しちゃうね

男(咄嗟に投げかけた問いに女子の表情が引きつり、こちらを見たまま硬直する)

男(誰だこいつは? 美少女とするにはあまりにも平凡な顔だ。この世界の中においてそれはモブキャラ同然)

男(クラスメイト全員が美化を遂げているかと思えばそうではなかった。性格こそは多少の違いはあれど、11人の美少女を除く全ての人間は元の世界の住人と変わりない)

男(ここにいる連中が俺を知っているかはわからないが、少なくとも俺は知っているぞ。あそこで談笑しているのはAさんとBさん。男子もだ)

男「誰? 隣のクラスの奴でもないよな。上履きの色から同学年とはわかるよ」

男(こんな顔した女子を一度も見たことはない。そもそも隣のクラスの人間だとすれば俺にこうして親しげに話しかけてくることなどありえん。しかも、モブ如きが)

男(彼女の台詞は会話をこれから始めようとするものではなかった。一方的に話しかけて、そして一方的に終えようとするもの。まるで俺の返答を待つ気はなかった)

男(なぜこうも突っかかっていくのか? だって神(俺)がそうしろと仰っている。それを無下にしていいものか)

男(俺は彼女へ「あなたはどなた?」と尋ねただけだ。知らない人にそうして悪いことなど一切ない。ついでに今は記憶喪失という便利な設定持ちだし)

男(さて、それじゃあ彼女のこの反応は何だろう。まるで聞かれちゃ困る、みたいな顔しちゃって)

女子「……男くんは私のこと知らなくて当然だよね~! だって私が一方的に知ってただけだし」

男「そうだったんだ。じゃあこれを機に君のこと知っておきたいなぁ!」

女子「え、えぇー! 私のこと口説くつもりなのぉー? もう、そんなの別にいいって!」

男「ふふ、どうしてだよ? そっちだけに俺のことを知られてるのも気味悪いし、気になるだろー!」

男「……それとも俺に知られたらまずいのかよ、お前」

女子「えっ、あ……」

男(沈黙は肯定としよう。間違っていたら謝ればいい、その必要があった時はだ)

男「どうしていきなり俺に話しかけてきた? 委員長が俺に? そいつはどうでもいい」

男「もしかして俺のこと好き? だから知っていた? でも、いきなりすぎるよな。あまりにもフレンドリーに来やがったな」

女子「知らなかったの? 男くんと私って実は前に話したことあって、その時仲良くなったんだよ」

男「それダウトォー!! ……さっき自分が言ったこと、よーく思い出してみろよ。なぁ、どうだった? 何て言いました?」

女子「……ほら男くんって物忘れ激しいじゃん。頭に障害があるんでしょ? だから」

男「気を遣ってくれていたと? 俺がお前に記憶喪失の話をしたのか」

女子「そうなの!」

男「ハハハハ、バカ言うなよ! どうしてこの俺がお前みたいな女子にそんなこと話してやることがあるんだよ~!」

男「俺は美少女以外の女には話しかけんぞッ!! (この世界においては、と付け足しておこう)」

女子「ひどいっ!?」

男「……仮にお前に相談していたとして、俺に何の利点がある? で、お前の名前は?」

男「もし知っている名前が出てきたら認めてやらなくもないんだが」

女子「名前……な、名前なんてどうでもよくないですか? 私のこと知ってどうするの!?」

男「友達なんだろ? 仲良しなんでしょ? これからは赤の他人として見られたかったのかよ、なぁーあ?」

女子「いや! そ、それは!」

男「へぇ、随分浅い関係してたんだな。そんな奴にわざわざ自分の抱えた問題を教えてやるようなお喋りじゃないぜ、俺」

男「また仲良くしようよ、なんとかさん。友達だろ、名前知らなきゃお前をどう呼べばいいのかな」

女子「そ、そうだ……記憶喪失の男くんがどうして知り合いの名前を覚えてるわけ!?」

女子「記憶喪失なんだよね? 私を知らなかったのが何よりの証拠ですよっ、本当はカマ掛けてるだけなんでしょう!」

男「口調が安定してこなくなってきたな。ビビってんのか? 即席でついたウソがボロボロ崩れて行く様に」

女子「今はそんなことどうでもいいのよー!!」

男「ふぅん。まぁ、いいさ……証拠なんていくつもあるぞ。物でも、証言でも。どれがいい? すぐに証明してやろう」

女子「何でもいいんですよそんなの! だったら出してみな……何これ?」

男「紙だよ、俺からすれば」

女子「っ~~~!! そうじゃなくて、何だっていうの!?」

男「まぁまぁ、そう怒るなよ~。ただの紙だが、こいつに書かれているものが重要だ」

女子「は、はぁ……?」

男「俺はよほど慎重な性格してたらしい。こいつには俺がもし記憶をいつ無くしてもいいように知り合いの名前が全てメモされてある」

女子「それが……何だって言うんだって話だ、ですよ……!」

男「合計11人。それ以外に関わりを持った覚えはない。さて、問題はその中にお前が含まれているのかどうかだね」

男「始めに言っておくぞ、全員美少女だ。俺の目からすればお前は美しくも、可愛くもない。ただのそこらへんの一女子」

女子「メモを見せてよ。そしたら」

男「ダメダメダメダメダメダメぇ~~~! ……お前の自己紹介が先だよ。簡単だろう? やって困ることなんてあります?」

男「もしこのメモに載ってなければお前は俺の友達でもなかった。そして全く関わりなんてなかった、とする。しっかりとした言い訳があるなら後で詳しく聞こう」

男「その後で俺はお前をこの学年担当の先生方へ聞いて、名前と顔を照らし合わそう。これでウソをつかれてたとしてもわかる……その時はお前にも付き合ってもらおうか」

男「逃がすなって言われてるからな (どうしてかは知らんが)」

女子「……私は転校生だよ」

男「ハズレ。間抜けか? 転校生はうちのクラスメイトだし、ハーフだってよ。お前は純日本人の面してるぜ」

女子「……ふ、不良女です」

男「おいおい、思い当たる名前全部並べてくつもりじゃないだろうな?」

女子「不良女だよ! 覚えてないのかよ、男くん!」

男「不良女は美少女なんだって。知ってるだろう? それにお前は随分お行儀良い恰好して、話口調だよな。何よりメモの特徴に当てはまらん」

女子「お、オカルト研……」

男「すまん。オカルト研にはさっき教室に来る前に会ったばかりだよ」

女子「……」

男「じゃあ、次にお前は……」

男・女子「「幼馴染っ!!」」

女子「ううぅぅ~~~っ!?」

男「……という。もう十分懲りただろう? 出てきた奴ら全員美少女じゃねーか」

男「それもまるで俺のメモ盗み見たかのように次々出てくるな。確かにそいつらはメモにあるぜ」

男「いや、メモとかじゃないよな。まるで俺の知り合い全員知っていそうだな、お前」

女子「お、男くんから話聞いたから……仲良いって」

男「おっ! 今度は俺がお前に自慢話か! お前は俺の親かよ、どうして他人に自分の報告してやらなきゃならん」

女子「親じゃなくても友達にそういう話するときあるでしょう!?」

男「知るか、俺はこれまで友達なんぞ作れた試しはないッ!!……そろそろウソは止めようよ。俺はただ、お前が誰なんだと訊いてるだけだろうが」

男「そうまでして必死に誤魔化そうとするのはどうして。理由があるんだろう?」

女子「……」

男「先に言っておけば良かったが、別にお前じゃなくとも、向こうにいる男の娘へ訊いてやってもいいんだ」

男「知らなくても他へ当たる。繰り返せばこのクラスの誰か一人ぐらいはお前を知る奴はいる筈だ」

男「だから、隠し通しても無駄なことぐらいわかってるだろう?」

女子「……」

男「困ったら黙り出すのは良くないねぇ。それじゃあもう仕方ないよな、おーい! 男の娘ー!」

男の娘「……お、男。僕に何か用?」

男「ここの女子のことをお前知らんか? ここの奴じゃないだろ。たぶん隣のクラスから来てると思う」

女子「……」

男「さっきから名前訊いても全然教えてくれないんだよ。そっちから絡んできたくせに」

男「なぁ、男の娘……おい、どうした?」

男の娘「え、いやぁ……そのね……」

男(男の娘が困惑している。俺へ視線すら合わせようともせず、気不味そうに答えたのであった)

男の娘「その女子の人ってどこにいるの? さっきからずっと」

男の娘「男は一人だったけれど……」

男「は?」

男の娘「言いづらいんだけどさ、男は一人で壁に向かって喋ってたよ」

男(気が付けば、クラスから話声は止んでいた。皆が俺へ向けて変な物でも見るような目を向けている)

男(まだ俺の前には謎の女子は立っている。それが見えていない。誰へ問いかけても「知ってる」なんて返事は返ってはこなかったわけだ)

女子「……ふふっ」

女子「どうしたの男くーん? みんなに私のこと訊いて回るんじゃなかったんですかー!?」

男「……」

男(見えていない。だけど俺には見えている。ここに彼女は確かに存在する)

男(オカルト研が俺には悪霊が取り憑いているだとか言っていたな。まさか彼女は幽霊系美少女!)

男(だがそんなものはメモには……まさか、1週終えるたびに新たな美少女が登場するというのか!)

男「いや、こいつはそもそも美少女なんかじゃないか」

女子「ま、まだそれを言うか!」

男(考えられるのは何だ。神(俺)はこいつをけして逃すなと言っている。かならずこの女子には何か秘密があるのだ)

男(この俺が意味の無いものを追うわけがない。……待て、なぜ俺はわざわざ落書きへ『神より』なんて付け足した?)

男(文字の形からこいつは自分が書いたのだとすぐに分かった。では冗談の一つだろうか?)

男(意味もなく神の名を借りて、ご丁寧にわざわざ? 文章まで? というかである、なぜメモに書けばいいものを机に残したのか)

男(答えは一つ、そうする必要があった為。文章から察するに俺はこの女子の登場を始めからわかっていたのではないか?)

男(確かに現われた。そして俺へ……なぜ委員長の話をしてきた)

男「おい、お前にまたしつも――――――」

女子「やーい! 男くんのバーカバーカ!」

男「あぁっ!? って、お前どこ行くつもりだ、逃げるのか!!」

女子「そりゃあ逃げますとも。勘の良い人間は嫌いですよ、私の正体? 一生気づかなくて結構っ!」

女子「あなたは私のこと忘れて美少女相手に頭働かせてりゃいいのです! ではっ、お幸せに!」

女子「ばぁぁぁ~~~……か!!」

男「ま、待て このバカ野郎!!」

男(ここで『奴』を逃したら取り返しがつかなくなってしまう、そんな気がしてならない)

男(とっ捕まえて色々吐き出させてやらなければ! 委員長が[ピーーーーーーーーーーーーーーーーーー]!)

男の娘「男、急にどこ行くの!?」

男「トイレだよ、トイレ! 言わせんな恥ずかしいなぁー!」

男(奴は教室を飛びだし、それを俺が追いかける。周りから見れば俺一人が廊下を醜い顔させて全力疾走という形である)

男(けして奴は足が早くはなかった。だが、それは俺も同じ。中々追いつけない状態が続く)

男「おーい、パンツ見えてんぞパンツ! 丸見えだ、すぐ止まらなきゃ柄言ってやる!」

女子「そんなバレバレのウソついたって止まりませんよー! 自分、最初から履いてないし」

男「ふぎぎっ…!」

女子「わぁー、もう! つーか、いつまでも追っかけて来るんじゃねーですよ!」

男「お前には訊きたいことが山ほどある! とりあえず止まれって!」

女子「だ~か~らぁ~……自分の正体のことなんて男くんにはどうでもいいんです!」

女子「諦めて美少女とラブラブしてりゃあいいんですよ! ほんとバっカだなー!」

男「何度も何度もバカバカ喧しいわ! 突然口悪くなりすぎだろ、お前!?」

男(このままでは埒があかない。さらに校内を走りながらパンツだ、何だと叫び回る奇人のレッテルを張られてしまいかねん)

男(あいつは一体何者なのだ。もう、明らかにこの学校の生徒ではないだろう。美少女でもなければ、人間でもない)

男(机に残された俺からの『神』としてのメッセージ……ここまで来れば、神との関連がある者としか思えない)

男「か……神から話を聞いていないのか! 俺へ協力しろと!」

女子「はぁ!?」

男(止まった。俺の言葉で足を止め、振り向いて口を開けたままの間抜け面を見せてくる、奴)

女子「ちょっと今のマジですか。自分は何にも話聞いてませんよ……はぁはぁ」

男「はぁはぁ、い、いいからちょっと……こっちに来い!!」

男(正体不明のそれを連れて人気のない階段まで行けば、それは息を整えると手すりへ体重を預けて正面を向けた)

女子「男くんさっきのマジで言ったことですか? 主がそう言ったんですか、マジ?」

男「……まだ聞いてなかったのか、神もうっかりしてるもんだな」

女子「ちょー! 主の悪口、自分の前で言うとかありえんです! 主に代わってお仕置きですよ!」

男(彼女が言う主とは神のことで間違いないだろう。となると、こいつの正体は)

男「天使さまとか、でしょうか。あなたさまは」

女子「あぁ!? やるかー!? ん、あー……え?」

女子「あれ、男くん 自分の正体全然気づいてない感じでしたよね? どうしてそれで自分にさっきの言葉を」

男「実は途中から気づいていたというか、考えられる可能性からそうだろうなと思って……はい」

男「まったく、だから何度も止まれって言ったのに! そそっかしい奴だな、お前」

女子「……本当に?」

男「えっ……なにが」

女子「いや、だから主が自分に男くん手伝えって話ですよ。一回聞いたんだからわかってください、バカなんですか? これだから…」

女子「ていうか手伝うって何をって感じですねぇ。男くん、胡散臭いのがプンプン漂ってますし」

女子「大体、さっきのイジメなんですか! 人のことブサイクみたいな言い方、ふざけんなですよぉ!」

男「悪かったって……ちょっとお前を試してみただけだよ」

男「お前だって始めから素直に自分が何者か吐けば良かったんだ。俺ばかりに非があると思うな、バーカ!」

女子「うっわ……マジ男くん腐ってますね。今まで影から見てたけど、想像通りの人間で吐き気すら催してくるゲロ以下ぁー!」

男「本当に口汚ねぇな、お前は」

男(まぁ、何はともあれである。こうして捕まえることで、ゆっくり腰を据えて話ができそうだ)

男(……とはいうものの、具体的にどんな話をしていいものか)

男「……あ、そういえばお前。俺に委員長がうんたらって話をしてきたよな?」

女子「ああ、あれですか? 男くんのリクエスト通り攻略可能の美少女追加しておいたって報告ですよ」

男「ちょっと待ってくれ。それが委員長だっていうのか? なぜ?」

女子「なぜって言われても……自分は主に言われた通りの仕事しただけで、詳しいことは知らねーですっ!」

男「だって、元々委員長は美少女としてこの世界にいた筈だろ。それってつまり……いや、でも俺が書いたメモには攻略不可能とあるぞ」

男「ん? つまり、前回では不可能だったことが今回からは可能になった……ん?」

男「わけが分からん。大体、この『絶対助けろ』は? 俺は俺に何を伝えるつもりでいたんだー?」

男「なぁ、これって何なんだよ?」

女子「自分から言わせりゃ、それは紙ですよー!! うへへへー!!」

男「……なぁ、お前本当にあの最高の神さまの下で働いてる天使ちゃん?」

女子「天使ぃ? ああ、まぁ……大体同じだし別にいいか」

男「奥歯に物が挟まったような言い方はやめろよ。ただでさえこっちは難聴スキルのせいで色々うんざりしてるんだから」

男「ていうか、天使って思ったより可愛くねーな。これなら幼馴染たちの方がよっぽど天使ちゃんだねぇ~!」

女子「はぁ!? これは男くんに怪しまれないようにするため変身してるだけですよっ、さっきからケンカ売ってんですか!」

男「つまりその姿は本当のお前じゃないと? なぁ、もう隠す必要もないんだし、見せてく――――あ!?」

男(先程までそこにいた生徒の姿を模ったそれの姿が見当たらない。逃げられたかと思い、辺りを探せば、背後から俺を呼ぶ声が)

男「(振り向けば、そこには) ……ちっちゃい美少女。ろ、ロリの美少女!」

天使「じゃじゃーん♪ ふふんっ、これで文句つけようねーでしょう!」

男「えっ、お前さっきの天使なの? このちっちゃい美少女が?」

天使「天使みたいに可愛い美少女でしょーう? まっ、ぶっちゃけこれも本当の姿じゃないですけど、って話聞いてる?」

男「うわぁぁぁ、犯罪の匂いがするレベルの美少女……」

男「うわぁぁぁ、おまけに履いてない……攻略は?」

天使「できるわけにないに決まってんだろーがですよっ!!」

天使「自分は男くんの監視役兼報告係の者なんです! お触り禁止、ダメ絶対!」

男「チッ、とりあえずはその容姿の免じて鬱陶しい喋り方と性格は放って置く……むしろ、美少女要素が相まって悪くないかもしれん」

男「そういえばお前は俺以外の人間には見えないんだよな。つまり、俺がお前に何かしようと誰も」

男「……法を無視して相手できるロリ美少女じゃないか」

天使「じゃないか、じゃないでしょう!! 気持ち悪すぎて眩暈がしてきますよ、この変態男くんっ!!」

男「ほら、悪くない……やっぱり見た目って大切だよ」

天使「美少女になっただけで手のひら返してくるんですねぇ…っ!」

男「当たり前だろう。さっきも言ったじゃないか、まともに相手するのは美少女だけだと」

男「それより天使ちゃんさ、俺のことを今まで影から見てたとか言ったよな? あと監視役とか」

天使「言いましたよ?」

男「つまり、ずっと俺を見てきたと」

天使「そのとーり。最初から現在まで我慢して男くんの行動を見てきましたとも。ときには唆してみたり、あるときは……ちょー!! 今のなしです、なしなしっ!!」ブンブン

男「はぁー? …まぁ、いい。それより見てきたのならこのメモに書かれてることもわかるんじゃないか」

天使「このメモとか、余計な真似しないで欲しいですねぇ。どうしてこういう事しちゃうんですか?」

男「どうしてって……そりゃあ忘れないために決まってるだろう。頭悪いな、天使ちゃん」

天使「そういうこと言ってんじゃねーですよ!! 自分たちとしては、せっかく男くんのハーレム作りのために時間戻してあげたんですよ、わざわざ。男くんの幸福のために、わーざわーざ」

天使「その代償として男くんの記憶をリセットしてるんです! こんなことされたら滅茶苦茶ってもんですよぉー!」

男「うわぁ、怒ってる! かわいい、かわいい!」ナデナデ

天使「さ、さっきからかなりキレてますよ、自分は……撫でんなっ!!」

男「じゃあ冗談はここまでとして、時間を戻すっていうのは」

天使「男くんが個人ルート?でしたっけ~。それへ入った翌日まで時間を巻き戻してやってるんですよ」

男(メモに書かれた次週というのは、その状態を指していたのか。そうなると今の俺は時間を撒き戻された、だから記憶も奪われたと)

男(頭の弱そうな天使ちゃんではあるが、だからこそ助かる。頼んでもいないことをベラベラと親切にも喋り続けてくれるのだ)

男「ああ、ところで攻略済みの美少女には難聴スキルが発動しないらしいんだが、それはどうして?」

天使「のーこめんと、ですっ」

男「……教えてほしいなぁ~? 天使ちゃん超可愛いよ?」

天使「こっちの都合なんですよ! だめっ!」

男「ああ、そうかよ。使えない天使ちゃんだな!」

男(まるで現実味のない夢物語を聞かされているみたいだったが、天使ちゃんの話から察するに俺は確かに神から力を授かったわけである)

男(だが、俺はその実感を得る為にこの子と接触しようと考えていたのか? まさか、可愛らしいロリ美少女と出会うために? 可能性はあるが、あまりそれを考えたくはない)

男(どこか必死さがある。それは別にハーレムのためとかではなく、もっと別の何か……膝の上に天使ちゃんを無理矢理乗らせて、メモを改めて見直していると)

男(目につくのは異彩を放っている委員長の欄。彼女は今回から攻略可能になった、天使ちゃんの話によれば俺の希望によって追加されたという)

男(それでも以前から美少女としてここへ存在していた。彼女の名前に丸が付いている意味は? 絶対助けろとは?)

男「……委員長が鍵と見ていいか。そして、天使ちゃんへ会おうとしていた目的なんじゃないか?」

天使「さっさと下ろせくださいっ!! 下ろせぇ~!!」ジタバタ

男「なぁ、委員長についてお前何か知ってるんじゃないか? 教えろ」

天使「いやに決まってんだろです! ていうか、まだ何について協力しろとか聞いてないんですけどっ!」

男「協力? ああ、もう始まってるだろうが。俺にこうして色々教えてくれるのがお前の仕事だよ」

天使「実はウソついてるんでしょ? 主が自分へ何もまだ伝えてないって変ですもんっ」

男「いいからさっさと知ってること全部俺に言え。委員長だ。彼女には秘密があるんだろう?」

天使「っ~~~……ああぁぁー! もう! 男くんと同じですよっ、あの人間も主が声をかけた一人なんです!」

男「俺と同じだと?」

ここまで。続きは明日、たぶん本当

男(委員長も俺同様に神と出会っていただと。声をかけられたというのは、そういうことだろう)

男「それじゃあ あの委員長は元々この世界の住人じゃないっていうのか!」

天使「ストップです。これ以上無駄なことを男くんに教えても話が厄介になるだけ」

天使「男くんはただ女の子とイチャイチャ幸せすくーるライフを過ごすこと。それのみを考えろですよ!」

男(天使ちゃんはあまりこの世界事情や詳しいことを訊かれるのを良しとしない。そちら側にとって俺がそれを知るのは都合が悪いのか)

男(前回の俺がここまでコソコソ動き回っていたというのもそれが理由? うーむ、わからない。だがである)

男(天使ちゃんという監視がいながら、メモやその他痕跡について知られていなかったのは。このバカな天使のことだ、何も思わなかっただけかもしれないが……さて、なぜ監視役が必要なのかが疑問である)

男(天使ちゃんは俺へ「美少女だけを見ていればいい」と念押しする。まるでそれが俺に課せられた義務かのように)

男「(やはり困るのだ、予想外の動きを取られてしまうのが) 委員長は俺と同じ。それってつまり委員長も難聴スキルを持つ代わりにモテモテ状態?」

天使「だーかーらー……むぅ。あの人間は違います、そこのところは男くんと違うんです」

天使「自分たちは男くんや委員長ちゃんにこの世界で幸福になってもらおうと考えてるのですよ~」

天使「男くんの場合は、今までの寂しい人生を塗り替えられるほどの美少女限定モテモテぱらだいす。ぷっ、マジ情けない願望です!」

男「訂正しろ、クソロリ。人のピュアな願いにケチつけてんじゃねーぞ!?」

天使「ひぃー! お、怒らないでくださいよぉ……キレるポイントが謎なんですけどっ」

男「いくら美少女だろうが、男の野望たる願いを貶す奴は許さん。覚えとけよ……」

男「俺の場合は美少女へモテるのが願い。その思いを汲んで神は力を授けた、難聴と鈍感という枷付きで」

男「……難聴はわかるが、鈍感は? まぁ、自分で気づけたものじゃないか」

男「俺はともかくだよ。委員長の場合はどうなのか気になるところだ、彼女も美少女化しているが」

男「まさか、俺視点でのみ委員長……幼馴染や妹が美少女に見えるとかそういうのじゃないよな? 他の奴からしたら俺は元の姿のままとかじゃないよなぁ!?」

天使「ご安心を、です。委員長ちゃんもしっかり美少女ですとも。彼女がそれを望んだ……というわけではありませんけど、まぁ、おまけって感じです」

男「おまけ? ようは委員長の願いは容姿端麗になるというわけではなく、もっと別の……」

男「つまり、彼女が美少女化して俺の目の前に現れたのは偶然であるということなのか。当たり?」

天使「あはは、それは今までの話でしょーよです。委員長ちゃんは既に男くんが攻略可能な一人の仲間入りを遂げちゃいましたからね~」

男「ああ、その意味がよくわからん! 彼女には彼女がすべきことがこの世界にある。委員長は俺と同じ元の世界からこちらへ来た存在なんだ」

男「お前たちは俺たちの願いを叶えて幸福を得らせるのが目的なんだろう? するってーと、委員長の願いは……ま、まさか俺と付き合うこと……なら、もっと前から攻略できてOKなはず」

男「意味がわからん。委員長の願いが途中から変わったっていうのかー!?」

天使「別にそれを男くんがどうこう考えようと、気にしようと、どうでもいいじゃねーですか。だってまた可愛い女の子が手に入るようになったんですよ!」

男「気にするなっていうのが難しいんだよ。確かに可愛いが、あれは俺の知ってる委員長では……?」

男「な、なぁ!? 彼女は本当に俺の知ってる委員長で間違いないんだよな!?」

天使「はぁ、だからそうだって言ってんじゃないですかー……」

天使「もう何度も同じことは言いたくないですよ、自分っ。あの人間も男くんと同じで、元の世界から来た人で~!」

男「いい、これ以上はもういい! ……美少女に変わると性格まで元のものとは違うくなるのかよ?」

天使「へ?」

男「だって、俺はこうして元の俺のままここに存在している。だが、彼女はどうだ? 容姿についてはもう追求しないが」

男「性格まで俺が知っているものではなかったぞ! 他の美少女たちのせいで全然気づかなかった、あれは委員長のキャラじゃない!」

男「それに彼女とは2、3回……もあったかわからんが、全く会話したこともない。さらにそこで仲良くなった覚えなんて一度もない。じゃああの接し方は何だ?」

男「話口調も違えば、性格も少々キツめな感じになっていた。そうだ、俺の知る委員長の要素なんて一片も残っちゃいないじゃないか……」

男「天使ちゃんこの野郎ッ! さっきのは適当言ってお茶濁そうってわけじゃないよな~!?」

天使「あうっあうっ、そんな強く体ゆさぶんなぁ~っ!!」

男「じゃあさっさと教えろ、舐めるぞ!!」

天使「マジですっ、大マジですからぁ! ウソなんてついてません、誓いますよぉ~!?」

男「……なら、あれは単に委員長が今までの自分を捨てて新しい自分へ変わったとかそういう? いや、それにしては妙だったが」

天使「ぜーぜー……も、元の彼女なら男くんより先に幸福になっちゃってますよぉ……」

男「は?」

天使「だから、満足しちゃったんですよ! もう男くんが知ってる委員長ちゃんはいないんですっ!」

天使「委員長ちゃんはこの世界で見事自分の願いを叶えて、満足しました。消えました」

天使「じゃんじゃん!」

男「じゃねーよ……ど、どういう意味なんだってば……」

男「消えたっては元の世界へ帰ったということなのか。満足して夢から覚めたって」

天使「夢じゃねーです。ここはちゃんとした現実……まぁ、みたいなところで、ここで起きたことは全部本当なんですよ」

男「なぁ、意味不明だぞ? それとも俺の頭じゃ理解しきれないほど難しい話されてるのか?」

天使「たかが人間如きが一片に色々呑み込めたら驚きです!」

男「何でもいい。消えたあの子はどうなってしまったんだ、そ、それじゃあ今この世界に存在する彼女は何なんだよ!?」

天使「あのですねぇ、消えるって言葉知ってますよね? 消えたっていえば消えたんですよ。どこにも存在しない」

天使「今ここにいる委員長ちゃんは、しいて言えば男くんの知る子じゃないんです。んーむ、どう説明したら理解してもらえますかねー?」

男「……まったく新しい人間、か?」

天使「あーそうですねぇ。新しいというか生まれ変わったというか、別人というか?」

天使「男くんの知ってる彼女は消えました。えーと、つまるところ一新した身体の中にあった元の魂が消滅」

天使「で、残った身体に美少女としての人格が完全に定着したというわけですよ。つまり、アレはただの『委員長』という名前の美少女なんです」

男(理解が追い付かない。いや、理解したくないと思った)

男「お前の話がさっぱりわからん……!」

男「元の世界の委員長はどうなるんだよ。こっちに俺と一緒に来てしまったんだろ? ここは現実と同じなんだろ?」

天使「はーい、そうですとも」

男「じゃあこっちで消えちゃったら、どうなるんだよ? 元の世界に帰れないのかよ」

天使「消えちゃったんですし、帰れるわけないじゃないですかぁ。ていうか、元々男くんたちはここから元いた世界には帰れませんよ? たぶん」

男「えっ」

天使「だって主とそういう契約をした筈ですもん。そうじゃなきゃこの世界に来られてないですよ……」

天使「ちゃんと男くん了承したと思います! 今さら帰りたいとか言っても困るんですからねっ」

男「お、俺は別に帰りたいとか (不思議なものだ。帰れないと聞かされると、途端に自分が元いた場所が恋しくなる。どんなに悲惨であったとしても)」

天使「思ってないんでしょ? じゃあそれでおーるおっけーですよ」

男「……俺も、消えるのか。委員長みたいに消えて無くなっちゃうのか?」

天使「男くんの場合は願いの形からして、そうなるとは思えねーですけど……だって一生美少女と遊んでいたいんでしょ?」

男「わけわかんないんだよ!? どうして俺の場合は大丈夫で、委員長が消えるんだ!? もう、消えるって何だよぉー!?」

天使「委員長ちゃんが最初にそう主へ願っていたんでしょ、自分は詳しい話は知らないんです」

天使「もしかして怖いんですか? この世界でずーっと楽しく暮らすことが?」

男(落ち着け、冷静になれ。頭を冷やすのだ。こうも取り乱して俺らしくもないではないか)

男「……嬉しいに決まってるだろう。帰ったところで俺にあそこで何が起きる? 何もないんだ」

男「この世界には俺が絶対手に入れられないものが簡単に掴める! 美少女に楽しい毎日、全て充実のそれだ!」

男「最高だよ、ここ。マジサイコー……ハハ!」

天使「ですよね、らしくもない感じになったんでビックリしちゃいましたよ。あんま自分を心配させないで欲しいですーっ!」

男(ウソではない、正直な言葉である。俺はこの世界に何一つ不満など持ってはいない……まだ始まったばかりだが)

男(幸せに満ち足りた生活を手放すバカがいるものか。ここが現実と変わりないならば、今日からここが俺が存在する世界だ)

男「……で、訊きたいんだが元の世界では今俺はいないことになっているのか?」

天使「ん?」

男「だから、ここは現実みたいなものだって天使ちゃん言っただろう。二つの世界があっても、俺の体はたった一つしかない」

天使「ああ、それなら大丈夫です。なーんと、今の男くんの体は元の世界の物と違うのです! 見た目は全然変わりないですけどねっ」

男「はぁー?」

天使「よく考えてみてくださいよ。男くん以外にもここには人間がいるでしょ? 全部この世界に合わせて主が作ったんです。モデルは元の世界から拾ってきてね」

男「つまり、俺のこの体もそうだっていうのか。じゃあ中身は? モツのこと言ってんじゃないぞ。もっと精神的な」

天使「男くんと委員長ちゃんだけが元の世界から魂をこっちの体へ移してるんですよ。他の人間はこっちで男くんの都合が良いように作ったんです……って、あぁ~~~!?」

天使「どうして余計なこと自分に喋らせるんですかー!? 禁則事項ってやつですよ今のぉー!!」

男「ありがとう、天使ちゃん!! バカって好きだよ!!」

天使「ぐうっ! 外道変態うんこ! うぇ……ぐすっ」

男(泣き喚きだしたコレは放って、一旦頭の整理をしよう。喧しいが落ち着いて今なら考えられる)

男(委員長の消滅については詳しいところわかってはいないというか、想像がつかない)

男(今存在している美少女版委員長はもはや別モノと考えるべきなのだろう。幼馴染たち同様に俺の為に生まれた美少女。だから、攻略も可能になった、らしい)

男(……助けろというメモに残された言葉が頭を過ぎる。俺は彼女をどうしようとしたのか)

男(今なら攻略不可の意味がわかる。……助けようとしたのは美少女の方ではない、元の委員長のことでは)

男(何をどう助けろというのだ。消滅を防げと? だが、そこのバカの話では既に救おうとした彼女はいない)

男「どうしようもないじゃないか。そもそも、どうして俺が彼女を救う必要があったんだよ。どうして?」

男(胸の奥がチクチクし出した。おまけに眩暈もする。俺が知るはずもない昨日までの俺を頭が勝手に思い出そうとしていた)

男([ピーーーーーーーーーーーーーー]。[ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー])

『男くん、で合ってますよね。名前』

『どうしてって……本の貸出カードに名前あったから。私、図書委員長なんです』

『本、返却日過ぎてたから。用はそれだけなんですけど……いつも一人だね』

『実は私もあんまりクラスに馴染めてなくて。同じなのかなって……ご、ごめんなさい。急に』

『寂しいですよね、朝から放課後までずっと。ううん、いつまでもずっと。自分の居場所がないみたいで』

『寂しいよね……不安になりますよね……あっ』

『待ってますから、本、返しに来てくれるの。全然明日でいいから!』

『……じゃ、男くん』

男「天使ちゃん、切っ掛けって何でもいいよな。本当に些細なことでも、自分がそう思ったなら」

天使「えぇ? 何だよぅ、このゲロ以下うんこ人間めっ! ……ぐすっ」

男(彼女は実在する天使だ。空想だと思っていた神だって存在した。そして俺へ奇跡を起こした)

男(奇跡の前でどうしようもない問題とはあるのだろうか。知るかそんなもの、やってみなければわからない)

男「消えた委員長ってどうにかして戻ってこさせることはできないもんかね」

天使「ちょ……何言ってやがるんですか、男くん」

男「そのまま意味なんだが。もしかして方法があったり?」

天使「し、知りませんよっ……大体そんなの主への冒涜です! 彼女は満足して消えたんですよ。幸せになれたのです!」

天使「もう委員長ちゃんのことはいいでしょ! 自分のことだけ考えてりゃいいんですよ、男くんは! 何度も言わせんなぁー!」

男(……何か、知っているな コイツ)

男「考えてるさ、俺だってせっかく美少女と触れ合える機会を得たんだ。それを放っていない奴のことばかりは気にしてられるかよ」

天使「だったら最初から変なこと言い出すんじゃねーですっ! ほんとのバカです、男くん!」

男「まぁまぁ、ちょっと気になったこと言ってみただけだろうが。怒るなよ、天使ちゃん」

男(天使ちゃんは実にチョロい。だが、けして現状この俺へ協力的でない。先程までのように上手く話を訊き出しても、消滅した存在をはたしてこの俺が救えるだろうか?)

男(ただの人間ができることは限界がある。スケールの大きな問題へ対しては無力にならざるを得ないのだ。だが、この規格外の生き物を味方へつければどうだろう)

男(上手くいけば神へ協力するよう話を持ち掛けてくれるかもしれない。そうでなくとも、頼りなさそうだが未知の力を持つであろうコレが助けてくれるかもしれない)

男(これは賭けだ。もし、どう足掻こうと俺が『約束』を果たせなければ、その時は許せよ、委員長。いま俺ができること、それは)

男「じゃあ……そろそろ非日常な話は終わって、教室に戻ろうか 天使ちゃん。美少女たちが俺を待ちかねている!」

天使「ちょー。どうして自分も一緒にいなきゃいけないんですかぁ!」

男「協力しろって言っただろうが。これからはずっと俺の傍にいろよ (この天使ちゃんを、落とす)」

ここまで

天使「まったく男くんは勝手ですよ。自分の都合も考えずに一緒にいろとか、しかも協力ってマジで何なんです! 教えろよぉ~!」

男「その時が来たら教えよう……ていうか、都合っていっても天使ちゃんは俺の監視役なんだろ? 良いじゃないか、こっちの方が見張り易いって」

天使「そういう問題じゃねーですから。あーあ、男くん嫌いです! きらいのきらいっ!」

男「嫌よ嫌よも好きのうちってな、実は俺のこと気になり始めてるだろう? 話すと意外に魅力的な人…あっ、実はカッコいいのかも!?」

天使「ふっ、そんなわけねーでしょう。自分だって男くんと同じでイケメンじゃなきゃ興味沸かないです。それ以外は虫、つまり男くんは虫なんです」

男「おい、顔で判断するとか最低だぜ、お前!? 何様だよっ」

天使「ん~? 天使さまでし・か・も美少女さまでしょ~う? つーか、男くんが言えた台詞じゃないです今の。うざ~……」

男(この美少女は俺へ対し好意の欠片も持っちゃいない。正直言えば俺という人間は、俺の事を好きにならない奴は苦手である。勝手? いや、結構)

男(しかし、正に天使の如き美少女の彼女を嫌う理由もない。美少女は世界の宝、ならば問答無用で好きになろうよ)

男(これから俺は彼女を落とす、がそれは恋にまでというわけでもない。天使ちゃんは他のキャラのような攻略対象にも含まれなければ、理由もなく俺をヨイショしてくれない)

男(つまり主人公補正が通用しない相手である。難しいが、素の俺のまま、どうにかイベントを起こして触れ合っていくしかなさそうだ)

男(難聴スキルが発動しないのが唯一ありがたいところか。とにかく、彼女と仲を深めて信頼を置いてもらわなければ)

男「そしてハーレムの夢を達成しようって話よ。両方こなさなくちゃいけないのが主人公のつらいところか…うーむ」

男「このメモを頼りに動けるところは動けば、誤魔化しつつ上手くやれそうだけど」

天使「だけど?」

男「これまでの俺って難聴を消す為に3人の美少女を攻略してきたんだろ。これをあと何回か繰り返すって考えると」

天使「その通りっ 面倒ですよね~♪ だからもう諦めて誰か一人に絞るとか、難聴気にしないで今回でハーレム作っちゃえば良いんですよ!」

男「よし、仮にそうしたとしよう。だけど我ながら面倒な奴と思うが、俺という人間は完璧が好きだ。となれるとだ、妥協して中途半端になれば満足はないと思うわけ」

男「それに色んな美少女とお付き合いできるなら最高じゃないか? じゃあ面倒とかないし! どんと来いだな、天使ちゃん!」

天使「主の言う通りマジでわかんない人間です……呆れるの通り越して感心~…」

男「誉めんなよ、照れるだろうが (それにしてもである。天使ちゃんに限らず、美少女相手の会話において俺のこの熟れた様子は一体何だ。自分が自分と信じられない)

男(今朝の幼馴染とだって最初こそ戸惑いもしたが、その後は素面で接していた。コミュ能力の向上だけじゃない。こうして一々頭で物を考えてから喋ろうとする人間でもなかった)

男(以前の俺と変わりないなんて到底思えずにいるわけだ。それに[ピーーーーーーーー])

男「お前のとんでもない話聞いてたら時間もあっという間に過ぎてるな。もうHRも終わった頃か?」

男「あれ、天使ちゃん? どこに行ったアイツ……まさか逃げられたわけじゃないよな!」

男「それだけはマジで困るぞ! おい、天使どこに消えた! ロリ美少女―――」

?「わっ」

男(騒々しい足音が後ろからやって来た。と思えば肩へ、どん、と音の正体はぶつかって行く)

?「ご、ごめんなさい!! 今急いでるのっ、ああもう! 寝坊するなんて私らしくないわ!」

男「何だあれ……女子? 一瞬だけど凄く良い香りが」

男(遅刻だー!!と女子は綺麗な長髪をたなびかせ、俺の前を駆けた。その様子に微笑ましさを感じながら、お返しに彼女のスカートの中でも覗いてやれと階段を昇るその姿を見上げた、その時)

男「ん、うおぉおおおおぉぉぉ~~~!?」

男(足を滑らせたであろうそれが、俺目掛けて尻あるいは背中を預け、落下した)

男「むぎゅう」

?「くぅ、いったぁ~……もう、今日は朝から本当にツイてない」

男「重ね同感だな、その台詞……」

?「え? わ、わぁあああ~~~!? な、ななな、何で私の下で潰れてるのよ!?」

男「潰れてるというか、潰されたんだよ! 良かったな俺のお陰でお前の尻は守られた!」

?「お尻って…うっ、ちょっとどこ触ってんの! このっ!///」スパーン

男「痛ぇ!? どういう頭してたら助けてくれた恩人殴る考えに至るんだ、お前!!」

?「とにかく早くその手よけなさいよ! いつまで掴んでるつもり!?」

?「このド変態っ!!」

男「誰がへんた…………あっ」

男(空もとい階段から降って来た女子。この瞬間、ようやく俺たちは顔を見合わせた)

男(それは青く透き通った瞳をした美少女だったのである)

男「…………」

?「……な、何よ。人の顔まじまじと見ちゃってさ」

男「かわいいと思って……」

?「はぁ!?///」

男(ぽつりと漏れた言葉は偽りではない。彼女は美少女だった。しばらく目を奪われている内に、彼女の顔がみるみる真っ赤へ染まっていくのに気付く)

男(俺の上から慌てて降りると、尻もちをついたまま素早く後退りした。口をぱくぱくと動かしたままなのは、言葉が見つからないためだろう。何故? 鈍感には気づけまい。シンプルな理由だ)

?「…ばばばばば、ばっ、ばっかじゃないのぉ~~~!!?///」

男「バカで結構だよ。そんなことよりいいのか? こうして話してる間に遅刻が伸びるぞ」

?「う、うるさいわね。わかってるわよそんなの……いたっ」

男「もしかして足首挫いたのか?」

男(立ち上がろうとするも、先程足を痛めたらしい。来たぞ俺よ。これは早速のイベントのご登場だ)

男(つまり、好機。先程の彼女の様子には触れず、近づき手を差し伸ばしてやれば)

?「いいわよ。こんなの一人で歩いても平気だから」

男「無理しないで頼ってくれていいんだぞ、お前の尻の恩人をな」

?「こ、この…今のセクハラで訴えてやるんだからぁーっ!!」

男「立てるか? 肩貸してや……おぶってやってもいいんだぞ?」

?「おぶる!? じょ、冗談言わないでよ。平気だって言ったじゃない」

男(罵倒されつつも俺の手を取って立ち上がった美少女。照れの中に喜びが見える。この手タイプは押しに弱いのが基本だ)

男「いいから黙って背負られとけって。お前がよほど重くなければ、すぐに教室に着くさ」

?「さっきから一々ケンカ売ってんのあんた……本当無神経バカなんだから!」

男「ほら、もたもたしてると遅くなるぜ?」

?「うぅ~~~…わ、わかったわよ。仕方ないから運んでもらう……」

男(肩へ乗る美少女の手、この手へ触れる美少女の太もも、そして背中へ当たる胸。間近で漂う美少女の香り)

男「(さぁ見よ、俺はいま美少女を物理的に手に入れたのだ) っふ、ぎ……!」

?「ねぇ、あんたこそ無理してない? 足がガクガクしてるんだけど」

男「無理は無茶は押し通すッ!! うおおぉぉ…問題、なし!!」

男(この俺の柔な体が悲鳴を上げる。慎重に一歩一歩と階段を踏み出せば、そのたびバランスを崩しそうになり、背中の彼女を怖がらせていた)

?「ちょー!? いやぁ! やっぱり降ろして! 降ろしなさいよ~っ!?」

男「ど、どうだ……最新のジェットコースターをも凌駕するドキドキ感だろう……!」

?「それどころじゃないでしょー!? ひぃ!?」

男(こうして不安にさせれば、俺の背中へ体を更に密着させてくることぐらい計算済み)

男(全ては俺が俺のために行動する俺中心なのである。さて、彼女も美少女ということは俺へそれなりの好意を抱いているはず)

男「も、もう少しで階段昇り終えるからなぁ……!?」

?「絶対一人で昇った方が早く着いたわよ! 上に着いたら降ろしてよ!? ねぇ!?」

男「いやいや、怪我した奴には優しくしてやれって母さんがよく言っててね…放っておけん、俺に任せとけって…」

?「お、大きなお節介よっ……でもちょっぴり嬉しいかも。ふふっ……」

男「え? 何だっ、てぇ……今何て言ったー!?」

?「わああぁぁぁぁ、何にも言ってないわよぉ~~~!?」

男「そ、そうか? 俺の聞き間違いじゃなけりゃ、うれしい、って……聴こえてたよな?」

男(振り向き背中にしがみ付く美少女を見た。薄々感じていたが、彼女はもしや)

?「っ! あんまり見ないでよ……変態」

男「変態じゃないだろう。俺の名前知らないわけじゃないんだから、いい加減誤解招きそうな呼び方止せよ」

?「ふん、あんたには変態が一番お似合いなの!」

男(可愛らしくあっかんべーした後、仄かに口元を緩める彼女。呆れ顔して正面へ向き直れば、気づいていないと思っていたか? お前が頬を背中へスリスリしていることに)

男(やはり彼女は)

?「最初ぶつかった時は必死すぎてあんたって気づかなかったけど、どうしてあんな所に突っ立っての?」

?「あっ、実はあんたも遅刻してたんでしょ。やっぱりダラしないわよね変態って~」

男「(向こうも俺を知っている。知り合いという体で会話して間違いなかった) 悪いが今日は時間通りでな。やぼ用で抜けてたんだ」

?「用? ふーん……っていう、カッコつけたウソでしょ~?」

男「じゃあどうして今俺は鞄を持ってないでしょうか。ん?」

?「わ、わかったわよ。ちょっとカラかってみただけじゃない。ほら、早く進んで!」

男「ワガママな奴だなぁ……教室見えてきたな。すぐだぞ」

?「……今日はツイてないとか言っちゃったけど全然そんなことなかったじゃない。むしろ、遅刻してラッキーだったかも」

男「ん?」

男(聴こえるか、聴こえないか程度の声量で彼女が一人で何かブツブツと話している)

男(どうやら俺に向かって直接言っているわけではなさそうだ。独り言か)

男(ここが難聴スキルの発動どころかわからないが、また綺麗に聴き取れているではないか)

男(しかし、これは中々興奮させられる。密着している分、彼女の息がすぅっと耳に触れるのだ)

男「ぞ、ゾクゾクする……!」

?「ちょっと情けない背中だけど、いい匂い。こ、こんなに近いと緊張しちゃうけど……あはっ、嬉しい」

男「おわぁーっ!!」ぼとっ  

?「きゃあーっ!?」どてっ

男(我慢ならず背中から彼女を振り落とすと、俺はそのまま床に崩れて冷め止まぬ興奮を口に手を当てて抑えるのであった)

男「ふーっ! ふーっ!」

?「ちょっといきなり何すんのよ!? しかも思いっきり落とすとか!!」

男「お前が俺の耳の傍で変なこと喋ってんのが悪いんだろ!?」

?「は、はぁあ~~~!? どうせモヤシのあんたが耐え切れなくなって落としたんでしょ、このモヤシ男!!」

男「お前の体重が重かったのが原因かもしれねーなぁ! あー重かったー! 今すっげぇー軽くなりましたわー!!」

?「バカ全然重くなんかないわよっ!! あんたが…」

先生「廊下でギャーギャー喧しいッ!! 遅刻して来たのが堂々と外で漫才やってるな!!」

男・?「……は、はい」

男(俺たちの教室から鬼の形相をした美女が飛び出す。初遭遇がこのような形になるとは思いもしなかったね、先生)

?「……あんたのせいで廊下に立たされた」

男「こうして二人並んで罰受けてるってことはお前も悪い」

?「私は被害者でしょ!? カッコつけておぶるとか言っておいてなにあのザマ!」

男「途中までは順調だったよ、途中までは!!」

先生「ガルルルルぅぅぅ~~~~……ッ!!」ガラッ

男「ひゅ~ひゅ~……♪」  ?「教科書の忘れものなかったかしら~、ああ気のせいだった~ん……♪」

男(ピシャンと大きな音を立てて、黒板用コンパスを振り投げようとした先生の頭が引っ込こむ)

?「あの先生が本気で怒ってるの初めて見たわよ……はぁ」

男「美人を怒らせると怖いってあながち冗談じゃなかったのかも」

男(なんて言ってはいるが、心中ではこの学園ラブコメ漫画のおまけ的な体験に喜びを感じている俺である)

男「なぁ、あれってもしかして俺も遅刻者に含まれてたりする?」

?「事実そうじゃない。机に鞄置いてあった本人が留守じゃ意味ないわよ」

男「実はお前を助けるために出て行ったとか言えば、俺だけ許してもらえるんじゃないか?」

?「さいっていの言い訳よ、それ!!」

男「まぁな、とりあえず良い案だと思ったんだ」

?「あーあ、二人揃って遅刻なんて情けないけど、笑えてきちゃうわね」

男(さすがに現状に呆れて怒る気も失せたのか、小さな笑顔を作ってこちらへ向けてくる。そのスマイルには点数をつけられん)

男(「そうだな」と適当に返事をした後は先生の襲来を恐れ、二人で黙って窓から見えるのどかな光景を眺めていた。いい、青春って感じがするだろう?)

男「お前、実は悪くないとか思ってるだろ? 俺と一緒に遅刻で」

?「え? ……そ、そんなわけないでしょ。嫌よ」

?「だけど、こうして二人きりになれたんだから悪くは、ないかも……? い、今なら邪魔されずに二人で…」

?「って、何おかしなこと考えてるのよ私っ…もぉー…///」

男「うおおおおぉぉぉぉ……うおおおおぉぉぉぉ……!?」

男(ここまでで彼女との会話に一度でも難聴スキルが発動したか? ない、一度もだ。やはり間違いないのだ。俺はこの美少女をかつて攻略した)

男「(その美少女の名は) 転校生、今日も部活あるのかな」

転校生「ん? あるって一昨日聞いたじゃない。昨日は先輩さんと生徒会長さんの都合が悪くてお休みだったけど」

男「物忘れ激しくてごめんよ。俺も歳らしい (鼻で笑い飛ばされ、いやらしい目で俺を一瞥な転校生である)」

転校生「一昨日の部活は色々あったわよね。うぅ、思い出してきちゃったわ……ほら、ゴき……げふんげふんっ!」

転校生「そ、それのせいであんたが先輩さんとキスしちゃったり!! ……あっ」

男「え?」

転校生「う、ううん! 何でもないわ! ……で、でも その後私もこいつとしたじゃない。雨の中、二人っきりのとき」

男(聞き逃せないな、その話は実に興味深いぞ。あの先輩さんどころか転校生ともキスをした? 二人きりの状況で?)

男(それを切っ掛けに俺たちは付き合った、ということか。前回の俺が憎いな。自分の首を絞めてやりたいところ)

転校生「……ちょっと待って。キス、なんてした? わ、私がこいつなんかと?」

男「転校生、どうした?」

転校生「うっ……ね、ねぇ? 私たち一昨日部活が終わったあと一緒に雨宿りとか…」

転校生「してなかったわよね? う、うん。そんなことあった覚えなんてない……あれ、でも?」

男「何一人でブツブツ言ってんだよ。うるさくしてるとまた鬼がそこから覗くぞ?」

転校生「そ、そうね……夢でも見たのかしら……夢だとしても、私が、ききき、キスっ……はわぁぁっ///」

男(彼女の語る思い出は事実だったか、夢なのかは俺には見当つかない。だが、付き合っていたという事実はメモが正しいなら……)

男(曖昧な記憶に頭を傾げて唸る転校生。それすらも可愛い。だが、今まで出会った美少女とは少し変わったアクションがあったわけだ)

男「記憶のリセット……それって俺以外の誰かもなんじゃ」

男(その時、教室の戸が開き、同時にチャイムが鳴り響く。HRが終了したらしい。出てきた先生は終始目を鋭くして、俺たちに説教を落として行った)

先生「次同じことやったら覚悟しといて。先生怒ると怖いんだからね?」

男・転校生「もう怒って……はい」

すまんここまでで
本当はねもう少し早く書き来れたはずなんだよ!でも板落ちてるならしょうがねぇよ!

で、続きがもう毎度の事ながら遅れるんです。予定としては金、土辺り
いつも予定何それで現われるけど、今回はがんばってみる

転校生「はぁ、やっと座れた……」

男の娘「男も転校生さんもお疲れ様、朝から災難だったよね。僕たちも先生怖かったよ~」

転校生「本当よ。散々続きで、ま、まぁ……悪いことばっかりじゃなかったけど」

男の娘「そうなの? って、男? さっきからキョロキョロしてどうかした?」

男「この辺にロリ美少女見なかった?」

男の娘「へ?」

転校生「先生に怒られすぎて現実逃避がまだ抜けてないのよ、きっと」

男(そういえば俺以外の人間に天使を知覚することはできなかった。ウッカリしてまた痛い目で見られるのは懲りごりだな)

男(だが、そうなると俺だけでアレを見つけるしかない。まだ校内に残っていてくれれば良いが……彼女が俺の言いなりになっている理由は、真意不明な話のお陰である)

男(もし神に直接確認を取られ、嘘がバレたとすればこちらに付き合う必要はない。もしかしたらペナルティとか下してくるかもしれない)

男(かなりの博打を打っている。委員長……俺の夢とは関係の無い彼女へどうしてそこまで尽くそうとするか。理由なんてどうでもいいではないか)

男「それが主人公のお人好しって奴だ。行き過ぎると第三者から鬱陶しがられそうだけどな、別に誰に見られてるわけでもないし……やれやれ」

男「……やれやれ。やれやれだぜ、やれやれ……今の俺に似合ってるんじゃないか? この如何にもな台詞。ぷぷーっ!」

転校生「あ、あんた一人で何笑ってんのよ……気持ち悪い……」

男の娘「はわわわっ、で、でも男は[ピーーーーーーーーーーーーーー]///」

男の娘「今日の男はねっ、僕には一段と輝いて見えるよ! カッコいいなぁ~!」

転校生「ふふん、男の娘くんはちょっとお医者に行ってきた方がいいかもしれないわよー?」

男「男の娘苛めてやるなよ。こいつは本当のこと言っただけだろうが。なぁ?」

転校生「本当? 冗談キツイわよ。あんたは別にカッコいい男子じゃなくて、変態バカ男なんだから」

男「やれやれ、何を言ってんだかだなぁ。中身と外面は関係ねーだろ!」

転校生「見た目が良くたって中身がおかしいなら全部台無しになるの。……まぁ、変なのに、好きになっちゃたんだけど」

男「うひょー!!何だって!?」

転校生「うっ……うるさい変態っ、こ、こっち見ないでよっ……ば、バカじゃないの私ったら……///」

男の娘「……二人は[ピーーーーーー]」

男「は?いま何て言ったんだ?」

男の娘「えっ、あ、あぁー!! な、何でもないよ!? 全然何でもっ!?」

男(気づいていないと思っていたのか。俺たちのやり取りに入っていけず、暗い顔で黙り込み、見守っていたお前を)

男(男の娘。男でありながらその美少女に引けを取らぬ容姿と性格から、美少女メンバーの一人とされている。過去にも彼との仲を深めるイベントを何度かこなしたとメモにある)

男(攻略するつもりであり、ハーレムに加えようとしたのは間違いない。だが前回の俺よ、彼がこの様な行動を起こすことを予測できたか? ……できていたんだろうな。全部お見通しだったんだな)

男(彼から歩み寄ってくる。何かしらしてくる筈だった、だから要注意)

男(記憶の無い俺を誑し込もうと以前から企んでいたと。だが、それなら男の娘は、俺の記憶喪失を頻繁に起こすなんて話を真に受けていたとなる)

男(信じて策を実行したのは非常にリスクある行動だ。呆れるを通り越して敬意を払いたくなる。結局、彼へした話は真実だったわけだがな)

男(俺が警戒していたことも、今の俺へ全てを伝えようとしていたことも、何もかもが男の娘の予想を超えていた。つまりそういうことである)

男(既に確信の域へ疑惑は達した。男の娘は、俺と恋人の関係など持ってはいない)

男(さて、問題はここからである。彼の嘘にいつまでも付き合い続け、事実と変えてしまおうか)

男(それとも、嘘を破ってハッキリさせてしまおうか。……後者は今後の展開へ響くのは確実だろう。最悪、男の娘は俺から離れていくに違いない)

男の娘「ねぇ、そろそろ体操着に着替えなきゃ時間まずいんじゃないかな?」

男「は? どうして?」

転校生「どうしてって、今日の一時限目は体育でしょ。ゆっくりしてる場合じゃなかったわねぇ……はぁ」

女子「転校生ちゃーん! 更衣室行ってるよー!」

転校生「あっ、はぁーい! ……じゃあ、私も行ってくるわね」

男「ちょっと待てよ。俺、今日は体操着なんて持ってきた覚えないんだが」

男の娘「えぇ~!? 忘れてきちゃったの!?」

男「ちっ……これも記憶喪失のせいかっ……!」

男「仕方がない! 転校生、替えの体操着持ってるだろ!」

転校生「貸さないわよっ!! ていうか、何変なこと考えてるのよ!?」

男「だって男の娘は一着しかないって言ってるし、お前のならもしかして入るかもしれんだろ」

転校生「もう、どうしようもないアホよねあんたって!! 知らないわよ。一人で怒られちゃえ」

男の娘「どうするの? 隣のクラスから借りてくるなら今すぐじゃないと間に合わないよ、男」

男「そうか……幼馴染のがあるかもしれ」

転校生「いい加減にしないと殴るわよ……っ」

男「バカ、冗談に決まってるだろ。誰が女子の体操着着て授業受けるかよ、変態かそいつ!?」

男(瞬間、かつてない暴力が俺を襲う。格ゲーなら台バンも免れん威力と拘束時間のあるコンボが華麗に俺へ繰り出された、らしい)

男「授業前のいい運動になっただろ……かんしゃの言葉が……き、きこえないぞっ……」

転校生「あんたなんかボール踏んで転んで脱臼してしねっ!ふん!」

男の娘「……顎とか、大丈夫?」

男「見ての通りって感じだな。ちょっとカラかい過ぎたらしい」

男の娘「らしいって……明らかに今のは男が悪かったと思うよ?」

後輩「私もそれに同感ですね」

男「……まるで最初からここにいたってぐらい自然に入ってきたな」

後輩「ええ、途中からそこにいましたからね。楽しそうだったので邪魔しちゃ悪いかと思って、ふふ」

男の娘「どうしてウチのクラスに来たの?」

後輩「えっ? あ、うん。実は妹ちゃんから先輩の体操着渡して貰えないかって頼まれちゃって。誰かさんは兄さんと違ってそそかしいから」

男「兄さん? ……そうか、お前ら兄妹だったんだっけ」

男の娘「前に話さなかったっけ? そうだよ、こっちは僕の妹。あんまり似てないって言われるけどね」

男(並び立つ彼彼女らを見比べれば、確かに似てない。共通しているのはどちらも可愛い。……しつこいが、きゃわいい)

後輩「今度からは忘れ物しないように気をつけてくださいよ、先輩。ふふっ、とはいっても間違って妹ちゃんがどっちも持って行っちゃったみたいですけど」

男「じゃあ俺に悪い点一つもなくありません?」

男の娘「持って行かなきゃいけなかったのに、忘れてたんだから男にも非があるんじゃないかな」

後輩「それじゃあ私はそろそろ教室に戻りますね。……兄さん、どうかした?」

男の娘「え?」

後輩「あ、えっと、今日は朝から機嫌良さそうだったから……兄さんから私に話しかけてくるのなんて珍しいし」

男の娘「ごめん。最後の方よく聞き取れなかったよ、もう一度いい?」

後輩「う、ううん! 何でもないから。それじゃあ先輩、さようなら! ……何か変」

男の娘「一先ずは良かったね、男。妹さんが間違えて持ってきてくれたことに感謝しないと!」

男「ああ、そうかも」

男の娘「ボーッとしてるねぇ? 早く着替えなきゃ遅れちゃうよー」

男「ああ、うん……わかってるよ」

男(先ほどの彼ら兄妹の会話におかしなところなんてない。ないが、後輩の様子が妙であった。どこかぎこちなかったような)

男(「何か変」だと最後に言い残していったが、いつも仲睦まじい兄妹しているわけではないのか?)

男の娘「あっ、男! 背中に糸ついてる。じっとしてて、僕が取っちゃうから!」

男「悪い……取れた? なんだか随分時間かかってないか?」

男(その時、俺の腹へゆっくりと、白く華奢な手が回った。それへ気づいたときにはもう遅かった)

男の娘「[ピーーーーーーーー]」ギュッ

男(男の娘が、背後から俺へ抱きついてきたのである。ラッキースケベも何も発動しちゃいない、彼からの積極的アタック)

男「おい、ふざけてる暇ないだろ。すぐに俺たちも体育館行かないと!」

男の娘「ねぇ……気づいてた? いま、教室に僕と男の二人しかいないよ……?」

男「ああ、都合良く俺とお前しか残ってないな。都合良く……」

男(ちょっと危険なかほりがして参りました、と思われる)

男(この状況が危険な理由をお教えしよう。男の娘へ対して俺は二つの対応を持つ。継続or拒絶である)

男(彼は勿論『継続』を望むだろう。嘘を真実へ替えるべく、こうしたアクションを起こしたのかはさておき。美少年にこうされて嫌な顔する人間はそういない)

男(なにせ俺もその一人だから、でも性癖はノーマル。……黙って抱きつかれたままでいれば、男の娘の様子が怪しくなってきた)

男の娘「[ピーーー]だよ、男。[ピーーー]。ずっと[ピーーーーーーー]ったんだ……[ピーーーーー]」

男(仮に俺がこのまま男の娘ルートへ走ったとする。ハーレムの為ならいずれそうせざるを得なかったわけだ、その点で見れば問題ない。時期が早まっただけ)

男(だが、はたしてそれで良いのか。彼の容姿は気に入った、だが性別の壁があった、やっぱ無理ぃ。そういうことではない)

男(せっかく捕まえた天使も、ポケットに押し込まれた例のメモも、全て台無しにしてしまいそうな気がしてならないのだ)

男「(第六感が告げる、全力で逃げろと) 授業、始まっちゃうだろ。もう行こうぜ?」

男の娘「勝手でごめん。だけど、やっと男とだけ一緒になれたから……[ピーーーーーー]、[ピーーーーーーガーーーーーーーー]?」

男「な、なんだって (震えるぞ心、燃え尽きるほど熱。こんな時でも身体は正直らしい。理性を保て、間違いを犯して良い時ではない)」

男(じゃあ、さっさと男の娘から離れろ。非力ではあるが、彼になら力負けはしない筈だろう)

男の娘「男の背中、あったかくて、おおきい……よ……[ピーーー]///」

男(こんな美少女【でも男】を自ら突き放そうだなんて、俺には、無理すぎる。もはや難聴フィルターへかかる言葉も気にならないぐらい、今心地が良い)

男「……な、なぁ」

男の娘「え? なぁに、やっぱりこうされるの、いや?」

男「俺たちは付き合っている、それ本当なんだよな?」

男の娘「ん……あっ、[ピーーーーーーーー]! [ピーーーーーーーー]!」

男「悪い、何て言った?」

男の娘「ななななっ、何でもない! そ、そうだよぉ……僕たち、前から」

男「ほう、いつからかな?」

男の娘「いつだったかなぁ……たぶん最近……!」

男「おいおい、結構あっさりくっ付いたのか俺たちって! 他の奴らには言ってないんだよな」

男の娘「う、うん……言ってない……[ピッ]、[ピーーーーーーーーーーーーーーー]」

男「どうしたんだよ、男の娘。心臓バクバクいってるじゃねーか。……くっ付かれてるからな、よくわかるぜ」

男(ばっ、と焦ったのか男の娘は俺から体を離して距離を取り始めた。そうだ、力付くじゃなくいい。それに俺から離れようとする必要はない)

男(今は彼が俺から離れるように動かしてやればいいのだ。あんな簡単な質問に動揺を見せるならば、それは容易い)

男の娘「そ、そろそろ僕たちも行こっか!! ごめんね、いきなり変なことしちゃって!!」

男「ああ、気にしてないよ……だって俺たち、恋人同士、なんだろう?」

男の娘「[ピーーーーーーー]……[ピッ]、[ピッ]、[ピーー]……!」

男「恋人同士なら仕方ないよな、急に魔が刺してこんなことしちゃってもさ」

男「悪かったな。俺もちょっといきなりすぎて驚いたんだよ、男の娘」

男の娘「そ、そうだよね……」

男(罪悪感、そして不安。男の娘は明らかに自分のついた嘘に対し自信を持っていない)

男(ならば、ちょっぴりだけそいつを煽ってやれば良い。この場は凌げる。だがその先で、彼が一気に勝負に出た時は別の策が必要となるだろう)

男(いつかは彼へ優しい嘘か厳しい事実を叩き込まなければならないだろう。いつまでもなぁなぁにしておくわけにもいかない)

男「そういえば、糸くずが付いてるって言ってたよな。取れた?」

男の娘「取れたよ……だいじょぶ……」

男「そうか。ウソが下手だな、男の娘は」

男の娘「っ~~~!?」

男「ん、どうした。別にただの口実に使っただけなんだろ? 言ってみただけだって!」

男「ほら、行こうぜ。授業も遅刻して行ったら今度こそ先生にマジギレされちゃうかもしれないしな」

男の娘「そ、そう、だね……あははは……」

男(少々やり過ぎているか。あまり追い込むと、彼がプレッシャーに潰されかねん)

男(酷だとは思う。だが、相応のことをしようとしたのだ。男の娘も罪を背負う覚悟があって迫ってきたのだろう?)

男(とことん、付き合ってやろうじゃないか)

続きは明日の深夜帯に
次スレはたぶんある

男(この俺の前に立ちはだかるモンスターボックス、高さ約100cm。敵が強大であるほど燃え滾る、ありえん。回れ右して美少女と触れ合う方が大切だよ)

体育教師「次は男。どうした、後が詰まってるから早く跳びなさい」

男「冗談じゃ……ないっすよ……」

男(チラリと横へ視線を向ければ、見事なフォームで箱を跳び越える転校生の姿が。惜しい、失敗して上に乗っかってもらえたら色々捗ったというのに)

女子たち「転校生さんすごーい!! プロの体操選手みたいだった!!」

転校生「あはっ、別にこんなの大したことないわ! それより~……ふっ」

男(女子らから俺へ向いた転校生の表情の生意気かわいいこと、意地悪い笑みを浮かべて俺が動き出すのを心待ちにしているのだ)

男「よぉ、何か言いたげそうな顔してるが」

転校生「もしかしてあんた、緊張してるの? 私が見てない方がいいかしらねー」

男「そんなこと言って実は期待してんだろ。この俺が華麗に技を決める瞬間に」

転校生「ないない! あんたもしかして運動音痴なのバレてないと思ってたわけ?」

男「あっ、急に腹の調子がぁー!! うぐぅー!?」

男の娘「男!?」

男「腹が痛けりゃ跳べないじゃねーかっ、やれやれだ、せっかく俺の本気を見せようとしたのに!」

転校生「ほんっとバカよね、あんた。……はぁ、別に無理してカッコつけなくても大丈夫なのに」

体育教師「本当に保健室に行かなくて平気なのか?」

男「そこであと30分ほど座ってれば治ると思いますので、はい」

男(……そして目の保養ができてしまうわけである。ベストポジション、ここからなら女子が跳ぶ姿を真横から眺めることが可能)

男の娘「男、お腹大丈夫? 無理しないでね」

男(そして隣には男の娘。あまり体育は好きではないが、この状況を楽しめるのは他ならぬこの授業だけだろう)

男(むちむち太ももを張って助走する女子、その間微かに弾むおっぱい。再び転校生の番が訪れたのだ)

男(勢いをつけ、踏み台から跳躍。もっと弾むおっぱい、躊躇なく開脚足、これに合わせ技で下のパンツにこれでもかと張る尻。たったの一瞬も瞬きをせず、それらを見守る。恐ろしく早い動作、俺でなきゃ見逃しちゃうね)

転校生「っ……と! へへ、また成功!」

男の娘「やっぱり転校生さんってすごいんだね。まだ高さ上がっても余裕でいけちゃった!」

男「神は二物を与えずって一体何なんだか、だわな」

男「それにしてもあの転校生を一度落としたのか。俺の手に余るレベルの美少女だぞ、いまだ信じられ……うわっ!?」

転校生「ねっ、ねっ! 今のしっかり見てた? 箱を跳ぶなんて運動初めてやったけど、案外楽ね!」

男(興奮冷め止まぬ調子で、機嫌良さ気に俺と男の娘の肩へ手を置き、間へぐっと顔を寄せてくる。間近で見る彼女の笑顔は想像を絶するかわいらしさを放っていた)

男の娘「すごかったよ転校生さーん! 僕見ててちょっとワクワクしたもん!」

転校生「そう? ふふ、ありがとう。……あ、あんたは? どう思った?」

男「どう? どうってそりゃあ……おっほ!」

転校生「え、何よ? 急に……ん」

男(屈んだ体勢が良かった。先ほど激しい動きをしたことでパンツの裾が上がり、奇跡の捲れが生まれ)

男「白パンみえ、ぶっっっ!!」

転校生「あああ、あ、あぁぁぁ~~……!?」

転校生「見えないでよエッチぃ~~~ッ!!///」

男「痛い! そんな、何度も、殴らんでも、ぐえぇっ! わかったから! ひひ……ぐぬぅっ!!」

転校生「最低最低最低っっっ! ド屑でアホの変態魔王! しね! も、もう知らない……ばかぁーっ!! うわぁ~ん!!」

男の娘「男……その、ちょっぴりだけ同情する」

男「教えてくれ、俺は今日何度殴られればいいのか」

男(仰向けでダウンしながらも首から上を動かし、赤面して走り去る転校生の尻を追い続ける。が、そこで丁度委員長の姿へ目がいった)

男「お? 委員長も、跳ぶのか?」

男の娘「みたいだね。次は彼女の番だってさ、確か委員長さんも運動神経よかったよね」

男の娘「転校生さんとどっちが高く跳べるのかな? 男はどっちだと思う?」

男「何だ、昼のジュース一本でも賭けるか? ……ん」

男の娘「どうしたの。真面目な顔しちゃって」

男「いやぁ……あそこにいる彼女はもう、俺が知ってる委員長じゃ」

男(凛として堂々とそこへ立つ委員長、もはや別物と言っていい。元の彼女も俺同様こうした授業を得意としていなかった)

男(委員長は消えた。あそこにいるのは名前だけ借りた美少女である。まぁ、それは他のキャラにも当てはまることだが、彼女の場合、ああなるまでの過程が確かにあったのだ)

男(……あの天使をどうにか探す必要がある。無駄になるかもわからんが、何かしなければ俺の気が済みそうにない)

男の娘「男、いまの見た!? 委員長さん、す、すごい……今の跳び方なに……」

男「知らねーよ。凄いジャンプってやつじゃないか」

女子たち「きゃーきゃー! きゃーきゃー! 委員長ってやっぱり違うわよねぇー!」

委員長「別に。大したことありませんよ、あの程度」

男「美少女だ、クールな知的委員長系美少女……だが、気に食わん」

男(俺としたことが今さら偽者だと彼女へ難癖をつけるつもりか。今の彼女自身に罪はない。委員長が望んだ理想の姿である)

男「うひー。勉強も運動もできて、容姿も優れて、人望もある完璧人間。そりゃあ憧れちゃうよな、嫌でも」

委員長「……男、何か?」

男「ああ、眼鏡外してる委員長も悪くないなってさ」

委員長「なっ……いきなりおかしなこと言わないで……[ピーーーーーーー]///」

男(あれから委員長へ対抗心を燃やした転校生が勝負を挑む形で、彼女ら二人の戦いが女子側で時間いっぱい繰り広げられたのは言うまでもなかろう。男子は? 無論だ)

男(さて、授業も終われば女子の生着替えをぐーぜん目撃してしまったり、ぐーぜん廊下でぶつかった先生が俺の顔面へ尻を乗せられてみたり、この俺が進む道道にラッキーなスケベは、呆れるほど転がっていることに気付かされたわけである)

生徒会長「おお、男くんじゃないか。……何やら全体的にボロボロに見えるが」

男「山あり谷ありって感じで現在に至った結果がこれなんですわ」

男「生徒会長……は、ここで何してるんです? 2年の廊下ですよ、ここ」

生徒会長「えっ、ああ、まぁ……[ピーー]、[ピーーーーーーーーー]」

男「え? 何だって?」

生徒会長「いや別に!? コホン、気にしないでくれ。ちょっと偶然ここを通っただけさ」

生徒会長「[ピーーー]……んぅ///」

男(彼女、生徒会長は伏し目がちに俺を窺い見ては、何度も腕を組み直して落ち着きがない)

男「あー、もしかして俺に会いに来ちゃった……なんてわけないですよねー! あはははっ」

生徒会長「[ピッ]、[ピーーーーーーーーーーガーーーーーーーーーーーーーーーーー]!?///」

生徒会長「[ピーーーーーーーーーーーーー]! [ピーーーー]! [ピーーーーーー]!!」ブンブン・・・

男(参った、の一言に限る)

生徒会長「あぅぅー……っ///」

男(ここでまた訊き返してみたり、余計な話を振れば難聴に彼女の台詞が遮られるだろう。今はむこうの好きにさせておくべきか)

生徒会長「[ピーーーーーーーーーーーー]……その、な? ほら、昨日は君の顔も見てなかったし、話もできてなかったし……ね!?」

生徒会長「ぐっ、くーっ…[ピーーーー]…と、とくに用はないんだ! それじゃあ私はこれで!!」

男「(ちょっと試してみようか、神が与えし最高の力とやらを) 生徒会長待って。背中にゴミが……おっ!?」

生徒会長「なあっ!?」

男「(慌てて振り向いた生徒会長。お陰で俺の手が触れたのは彼女の背中ではなく、大きな胸であった) す、すみません! でもこれは偶然な形で!」

生徒会長「っくぅ~~~!! ん、はぁっ……って、いつまでも触れてるつもりだぁ!?///」ドンッ

男・生徒会長「わっ!?」

男(ラッキーは連鎖的にラッキーを引き起こす。突き飛ばされた俺は床へ倒れ、何故かバランスを崩した生徒会長がよろければ……どん、って)

男「もごふっ (視界が闇に染まる。おそらくスカートで顔を包まれたのだろう。見えないが、鼻から口辺りに柔らかな何かの感触を感じる。これは)」

生徒会長「ひ…っあ……///」

男「ふほほほほはふっ、もが」

生徒会長「あっ、ん! くぁ……おとこ、くん……いましゃべっちゃ……やぁ……っ!///」

男(俺の上で生徒会長がもじもじと体を動かし悶えている姿が浮かぶ。なるほど、わかったぞ。これがS級ラッキースケベという)

男「がんめんきじょー……」

ここまで

>>860
スレチだがなんて名前の作品か教えてくれ

男(恐ろしきラッキースケベ。果たして現実にこのような奇跡が起こるだろうか? ありえない、どう足掻こうと)

男「(そろそろ脱出せねば息が上手くできずにつらい。生徒会長もいい加減退いてくれたら良いものを、俺の上でくねくね、ダンスを止めない) ふぁ、ふぁいほぉー」

生徒会長「んひぃ!? [ピーーーーーーーー]……///」

男(ああ、そうではなくて。そうではなくてだね。しかし、この状況を他の美少女に目撃された場合どうなる。まず誤解される、解くのは難しいかもしれん)

男(そうなればいっそのことだ、責任を取って彼女を選択し、イチャイチャも悪くない。[ピーーーーーーーー])

男(ここまでで思い知らされた。美少女の猛攻は一分一秒と訪れる。幸せだ、幸せだが正直苦しい)

男(我が夢・美少女の楽園を達成できる自信はまだ残っているか? いい加減心の折れ頃じゃないか。前回までの俺がどれだけ努力を重ねてきたかは知った事か、俺は俺だろう。[ピーーーーーーーーーー]!)

男([ピーーーーーーーーーー]! [ピーーーーーーーーーーーーーーー]!?)

男「ダメだ……生徒会長、今の鐘聴こえましたか?」

生徒会長「はぁはぁ……か、かね? チャイム?」

男「ええ、鳴ってますよ。そろそろ教室へ戻らないと遅れるんじゃないですか」

男「仮にも生徒会長の役についた人が授業に遅れるなんて、あっちゃマズイでしょう?」

生徒会長「そ、それはそう、だな。すまない、突然のトラブルで上手く頭が働かなかったらしい!」

生徒会長「[ピーーーーーーーーー]……[ピーーー]」

男「ん? 何か言いましたか」

生徒会長「い、いや気にしないでくれ! それより君も教室へ行かないとな。また放課後に会おう」

男「放課後……今日は生徒会での仕事は?」

生徒会長「そう頻繁にあるものではないと前に説明しただろう。部活でという意味だ、来るだろう?」

男「あ、ああ! ラーメン愛好会! そりゃ行きますよっ、今日はなんだか胃袋がラーメン求めている気がしちゃうなぁー!」

生徒会長「ふっ、あの子が聞いたら跳んではしゃぎ回るところだったね。では、急に悪かったよ……あっ」

生徒会長「[ピッ]、[ピーーーーーガーーーーーーーーーーー]!?」

男(ようやく元の調子に戻れる筈が、先ほどの体験を思い出したのだろう。肩を掴み、必死に俺へ何か懇願している)

男「わかってますよ。アレは偶然が重なって起きたことです。俺だってみんなに公言しようなんて思わない」

生徒会長「ああっ、それを聞いて安心した! はぁ……なぁ、男くん。あの時私の……その、み、見たのか?」

男「ん? 何をです?」

生徒会長「[ピーーーーーーーーーーーーーガーーーーーーーーーーーーーーー]っ~!!///」

男(これ以上彼女でからかい遊んでいたら、真面目に遅刻は免れないぞ)

男「見てませんよ、何にも。 あぁ~……今日は空が青いな、すごく青い……」

生徒会長「ちょおっ…[ピーーーーーー]…///」

男(可愛いあの子に、悪戯は止められそうにない)

男「うーむ、結局別れるまで何分かかっただろうか。それにしてもあの人が生徒会長か」

男「俺の記憶が正しければ彼女はもっと芋っぽい感じだったが……素晴らしい変化を遂げたな、実によろしいぜ」

天使「じゃああのまま告白の機を狙えば万々歳だったでしょうよ、です」

男「天使ちゃん!? お前、バカこのロリ美少女っ、急にいなくなるから心配したんだぞ!」

天使「んにゃあ~~~っ!? ど、どさくさに紛れてなに抱きつこうとしてんですか、このド変態!」

天使「はぁ……あのね、いなくなったわけじゃないですよ。今まで通り、近くで男くんを見張ってましたからねぇ」

男「近くって、何処にも見当たらなかったんだが」

天使「そりゃあ男くんに見えないよう透明になっちゃってましたから。傍にいろ、でも別に見えてる必要はない。くぷっ、約束ちゃんと守ってますがぁー?」

男「そうかい、なら これからは俺が呼んだらすぐに姿を現せ。それで文句無い」

天使「くっ、冷静に会話続けないでくださいよ! 今のはあえて男くんを苛立たせようと……」

男「ド! アホ! にイラついてるほど俺は余裕がない。見てただろ、何処へ行っても美少女と邂逅すりゃ、ラッキースケベも満載だぜ」

男「お前、実は俺がああなるように仕込んでるわけじゃないだろうな? 見えないのを良い事にさぁ」

天使「いえいえ、そんなこと、全然。自分がするわけ、ないじゃない、ですか」

男「……この力ってもしかして天使ちゃん有りき? 俺の願望を読んで天使ちゃんがラッキースケベを起こしてるとか?」

天使「まさか! 正しく主が男くんへ与えた力ですよ。まぁ、時々自分もサポートしちゃってますがね!」

男「サポートだ?」

天使「ええ、ええ。男くんがあまりにも煮え切らないことしていたり、躊躇していたら自分が後押ししてやってるんですとも!」

天使「男くんが呼ぶラッキースケベなる力は、任意で発動させられます。いっつも自分が代わりに起こしてるなんて思ったら大間違いですよー、はっはっはー!」

男(もしかすると、わざと話をしているのだろうか。訊いてもいないことをベラベラと……かわいいよ、天使ちゃん!)

男「ようは俺が狙ってもいない瞬間に発動したと思われた力は、天使ちゃんが、余計なお世話、でやっていたことだったと」

天使「はぁい! あっ……」

男「お前、まだ色々俺に内緒にしていることあるだろ。全部話してみ? 悪いようにはしない」

天使「話すわけないでしょう!? ひ、卑怯です男くんは! そうやって自分を弄ぶ! 屑めー!」

男「さっきの生徒会長の件といい、先生といい、よくもまぁ飽きずに次々と……俺が楽しむ為の世界だろうが! 邪魔すんな!」

天使「ふぇ……だ、だって男くんがいけないんですっ……何か滅茶苦茶慎重だし、もっと欲望のままに動き回ればいいのに」

男「いや、欲望の塊よ俺は。まさかお前はさっさと俺が誰かとくっ付いてしまえばいいとしか考えてねーのか。ハーレム実現を応援しないのか?」

天使「……ぶっちゃけ男くんが幸福に満たされたら何だっていいんです、こっちは。だから早いとこ、誰でもいいからイチャラブしてしまえよっ」

男「この状況でもなければ、かなり面白いこと言われてるぞ、俺」

男(天使がこうならば、その上にいる神はどう思っているだろう。彼らは俺の満足幸福とやらを事務的に達成させようとしている?)

男([ピーーーーーーーーーーー]。明らかに急かされている、俺の気持ちを知ったことかと。委員長の件についても触れられて欲しくはなさそうだし、一体何を企んでいる、神よ)

男(意図しないラッキースケベは神側が狙ったものであった。ならば、それだけで済んではいないと俺は見る)

男(何らかの形で、天使を介してか、俺へ干渉してきている。どうだろう? 無理矢理発生するイベントとか、狙い澄ましたタイミングで現われる美少女とか、探せば怪しい瞬間がボロボロ出てくる)

男(ゲームや漫画なら鴨がネギを背負ってやって来るなんて至極当然。まるでラブコメの主人公のように状況は展開されていく、不自然なぐらいに)

男(つまり、俺は始めから神のシナリオ通りに進まされていた……だが、ここで問題が。それがこの俺の目的、夢、野望、美少女ハーレム計画)

男(なぜ個人ルートへ進んでも、こうして次の俺が現われるかは謎だが、それまでの記憶の消去、まっさらな俺へ戻すことで神は俺を敷かれたレール通りに進むよう修正を行っている、なんて推論が俺の中で立つ)

男(前回の俺が残した物も、それまでの俺の揺るがなさも、神にとって予想外だったのかもしれない。……この俺は、神を欺いている途中にある?)

男(ハーレム自体には、天使ちゃんも『面倒』なだけと話したのはけして叶えられて困ることではないと考えられる。時間が掛かるのを嫌がっているのだろう)

男(では、もう一つの目的、委員長救出について。余計なことをして欲しくない、気にするな、彼女は満足して消失した、などと どうも俺には触れて欲しくはなさそうではあった)

男(これもレールから外れた行動の内なのだろうか。委員長は委員長の、俺は俺のシナリオを進めればいい。他のプレイヤーには干渉すべきではない、と)

男(仮に俺が委員長を救ったとして……神に不都合が生じてしまう。それが何かは不明だが)

男「もし、俺が天使ちゃんと結ばれたら満足するって言ったらさ、叶います?」

天使「か……かっ……かなうんでしたらねぇ~~~……!」

男(天使ちゃんがロリ美少女の姿を模ったのは俺の為と言って過言ではない。そして、望めばこの子と個人ルートへ進み、他の美少女同様に愛し合えるらしい)

男(嬉しい話だが、今となっては色々疑いを持ちたくなる。こうした彼女の唐突な登場があまりにも都合が良すぎると感じてならない)

男(神が……もし、このロリ美少女という布石を置いていたとしたら、だ)

男(彼女はいま美少女として俺の前に、今回初めて現われた。以前まで監視役として姿を見せずにいた彼女が)

男(俺が天使ちゃんと出会うように今まで仕込んできたというのは分かった。結果成功して現にこうして喋っている)

男(こう見ると俺がまんまと神の裏をかき、接触に成功したとばかり思われる。……慎重に考えてみよう、相手は他ならぬ神さまだ)

男(思い通りに、真っ直ぐ動こうとしない男へ注意を向けた神が、こちらの行動を先読みしていたとする。おそらく委員長については前々からどうにかしようと俺が行動していたのだ)

男(いずれ俺が天使へ近づこうとすると予測。この間抜けな性格した天使が俺の前で美少女化することも。で、望めば彼女を正式に攻略可能となる)

男(俺にしか見えない天使ちゃんだ、こちらの好き放題にできる。生意気だが彼女は確かに可愛い。考えなしで接していけば、さらに虜へなっていくだろう)

男(そうして目的から遠ざかっていく。早い段階から天使ちゃんとはイベントをこなせそうだからな、前回のような対策を練る前に俺の方から落とされるかもしれない)

男(そこからである。これまでの俺同様、また次の俺へ移行した場合、ハーレムはまだしも、委員長の痕跡へ辿り着くことはなくなってしまうだろう)

男(メモの件は天使ちゃんに既にバレた。いくら攻略可能キャラになり下がるとしても、彼女は他と比べイレギュラーの存在。俺に釣られて記憶がリセットされることはまず考えられない)

男(残した痕跡は知らぬ内に処分される。そうなれば、あとは何も気づかず俺はモテモテ学生生活をエンジョイ。いずれハーレムへ辿り着くか、途中挫折で幸福に満たされる……完)

男(……これは俺の勝手な推測だ。神がそこまで考えているのはかならずではない。だが、俺の頼りにならない勘が告げる。[ピーーーーー]。全てを疑えと)

男(彼女、天使ちゃんは俺の意図しない追加キャラだった。委員長はデコイ。俺は神を騙したつもりで、得意気に、その掌の上で踊らされている)

男(楽しいじゃないか、神よ。自分がこんなに疑り深い性格だと思ってもなかったぞ)

男(俺は神の裏の裏を行ってみせる。あなたが意図した攻略ではない、信頼を置かせるという形でこのロリ美少女を落とす)

男(ひん曲がりもここまで来るととんでもない考え起こす。神は明らかに裏から俺を制御しようと企んでいるに違いない)

男(俺を良い気にさせて、いつのまにって感じで。これ以上不審に思われないよう、最後まで用意したアトクションで楽しんで頂けますように、と。おもてなしの心が輝いている、さすがは神さまか)

転校生「今日はあんた怒られてばっかりよね。朝どころか授業にまで遅れて来るなんて、ぷっ!」

男の娘「そんなに色々僕たちに内緒で何してるの? ……[ピーーー]、[ピーーーーーーーーー]……いいよね、男は。可愛い女子の友達がいっぱいで」

男「ちょ、ちょっと待て! よく遅れて来るのは俺のトイレが長いだけだってさっき話しただろう!?」

男の娘「そんなに毎回トイレ行くかなぁ、普通」

転校生「何にしてもその遅刻癖は治した方がいいわよ? それに、あんたが隣にいないと私が落ち着かないんだから……」

男「何だってー?」

転校生「う、うるさい! 何にも言ってないわよっ……そんなことより早くお弁当開いちゃいましょ。私体育終わってからずぅーっとお腹減ってたのよ」

男の娘「うん、転校生さんいっぱい動いてたもんね」

男「弁当はいいとして……俺、昼飯なんて持ってきてないんだが?」

転校生「え? いつも幼馴染ちゃんに作ってもらってたじゃない。ああ、ほら、来たわよ?」

幼馴染「男くーん! ごめんごめん、ちょっと来るの遅れちゃった……えへへ」

不良女「ちーっす、今日はあたしも一緒にいいか? この子が前に話してたおかず食べさせてくれるって言っててさぁ」

男(幼馴染と共にやってきたこの美少女こそ最後の、不良女か。これで全員確認できたわけだ。11人+αの美少女たちを)

ここまで

>>866
後輩「オトコってなんですか?」男「は?」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1393940313/)
たぶんこれかしらん?

転校生「それでこいつったら連続よ、連続。考えられる?」

不良女「まぁ、男のことだしあたしは驚かないかなぁー。あはっ、お前、あたし以上に内申悪くなるんじゃねーの!?」

男(この前まで目立たず、しかし けして劣等生と呼ばれる事がなかった俺が今ではこれか。難儀するな、この手の主人公って)

幼馴染「男くん、あたしが居ないからってぼーっとしてたらダメだよ? あー、こっちの話聞いてたら心配になってきちゃったよ……」

幼馴染「というわけで! 今日からあたしもこっちのクラスに! そしたら男くんと[ピーーーーーーーーーー]っ、[ピッ]、[ピーーーーーー]///」

男「うーん、何て言いました?」

幼馴染「えへへ……[ピーーー]、[ピーーーーーーーーー]……///」

男「だから何て言ってるんだ!? 聞いてないのかよ、こいつ」

男の娘「だ、大丈夫だよ みんな! 男には僕が付いてるんだから!」

男の娘「これからは僕が男の不真面目なところを矯正するからね、男!」

不良女「お前がだぁ~? あーん? こんなチンチクリンの野郎モドキがえらそーに言ってくれるぜ」

男「少なくともお前が俺を扱くよりは、男の娘の方がそういうことには向いているとは思うけどな」

不良女「そういう問題じゃねーんだよ! あんたのことはあたしが……が……っあ///」

転校生「ていうか、どうして面倒見て貰う側が偉そうにしてるのよ……はぁ」

男(男の娘、今のはこの場にいる美少女たちへの宣戦布告のつもりか?)

男(冗談のようにして流され行った彼の発言。今はそれで良い。下手に引っ掻き回し、事を荒立てる必要もなければ、そうする意味も無し。そっとしておこう。……もしやと思うが、今回は前回以上に厄介な状態からスタートしているのでは?)

男(面倒事が全て俺へ丸投げだ。ハーレム達成の為のヒントといい、天使ちゃんとの出会い方といい、ありがたい贈り物ばかりではなさそう)

男「さて、またトイレに上手く逃げられたわけだが」

オカルト研「……///」ぎゅっ

男「説明してくれ、どうして突然俺はお前に腕を抱き付かれてるのかを」

オカルト研「今日の朝占ったの。[ピーーーー]の人へ急接近できると結果がでたわ」

オカルト研「確かに占い通りだった、こうなる運命だったのよ 男くん……///」

男「半ば実力行使でじゃねーかっ!!」

男「(俺に逃げ場などなかった。一体、男くんの安息の地は何処にあるのだ? 天使この野郎、嬉しいがしつこいぞ。この声が聴こえているなら後で覚悟しておけ) それで?」

オカルト研「えっ」

男「いや、この後のことはもう何もなさそうか? 占いの結果はもう出た。今日はこれでお終い、か?」

オカルト研「男くんが望むなら[ピーーーーーー]だって、[ピーーーーーー]もできる」

男「もはや占いそっちのけだろ、これ。なぁ、お前が入部してるあの胡散臭い部活」

オカルト研「訂正して、男くんともいえど今のは許せないわ。†クリムゾンファンタズム倶楽部†だから……」

男「締めを倶楽部で妥協したところに可愛らしさがあるかもしれんな」

オカルト研「まさか男くん、あそこに興味があるの? 良い選択よ。あなたの中の強大な悪霊を手懐けるにはそれが一番だと思っていた」

オカルト研「入部届け、貰いにいきましょっ……さぁ!」

男「待てまて! 逆だ逆! 早合点にも程がある。俺はオカルト趣味はないの」

男「もし良ければだぞ。お前もラーメン愛好会に入部してみないか? いま部員が少なくて部長がうるさいんだよ」

男(オカルト研、彼女との遭遇率は他のメンツに比べだいぶ低い方ではあると前回の俺から知った。それもそうか、隣のクラスで部活の所属も異なる)

男(おまけに昼食時にオカルト研がいなかったことが気になる。あまり交友が広いわけではないとみた。だとすれば、こちら側に無理矢理でも引き込めれば大きいのだ)

男「ラーメン愛好会という名の、俺の為の舞台がまた一つ潤うことだろう……あ、いや、今のは何でもないから!」

オカルト研「ん、無理」

男「ふむ、きっぱり言ったな?」

オカルト研「あそこのみんなを裏切ったら私は呪いによって始末されてしまうわ。それだけは無理なの」

オカルト研「で、でも……男くんがどうしてもというのなら……なんとかがんばって脱退を試みる……///」

男「いや、難しいならいいんだ。今の部活が楽しいならそれで良い。そのキングクリムゾンとやらに残ってやってくれよ」

オカルト研「次に間違えたら、男くん。月のない夜道に気をつけた方がいい」ムスッ

男(頬をぷくりと膨らませて言われても迫力はないだろう、さすが美少女、何をしても言っても可愛すぎた)

男(それにしても予想外だったかもしれない。てっきり彼女のことだから、二つ返事で承服するとばかり思っていたのだが)

男「アレだな。オカルト研がオカルトから離れたら、意味が代わって来ちゃうし仕方ないのかもしれない」

男「うん、やっぱりお前はそのままでいてくれた方が良い!」

オカルト研「言われた意味が上手く理解できないけれど、男くんがそう言うのなら」コクリ

オカルト研「……でも、もし私が今の研究会を抜けて、そっちに入り直せば男くんと[ピーーーーーーーーーー]」

オカルト研「一緒の[ピーーーーーーーーーーーーーー]。男くんともっと[ピーーーーーーーーーーーーーーーーーー]」

男(難聴フィルターへ引っ掛からない言葉と彼女の側に立って考えれば、隠された台詞もある程度は予想できる)

男(オカルト研自身も、俺と出会える時間が少ないことを気にしているようだ。以前、朝の登校時に一緒に行きたいと考えて待ち伏せしていたこともあったようだしな)

男(少しオカルト研にも考慮した動きが必要になってくるかもしれない。彼女の行動ばかりに甘えてばかりいては、好感度も高まらないだろう……元々かなり高い部分でキープしているし、これ以上が必要とも思えんが)

男「そのうち二人でどこか行けるといいな、オカルト研。お前とプライベートで遊んだこともあんまりないし」

オカルト研「……えっ」

男「ん? 嫌だったか、悪いなら別に聞かなかったことにしてくれてもいいぜ」

オカルト研「ち、ちがう……男くんから[ピーーーーーーーーーーーーー]、[ピーーーーーーーーーー]……!」

オカルト研「[ピーーーー]……」

男「え? 何だって? (想像した反応を裏切ってきた。食い気味で俺の誘いに乗って、あれこれと静かに、だが熱く積極的に、向かってくるとばかり思っていたが)」

男(途端にオカルト研はしおらしさを見せ、縮こまっていくではないか。……まさか、俺が彼女を誘ったのはこれが、初か?)

男「なぁ、どうした。急にそわそわし出して? もしかしてトイレか?」

オカルト研「……お、男くん」

男「えぇ? なに? (難聴で隠されたわけではない。単に音が小さすぎて聴き取りづらかっただけ。だから訊き返せば)

男(俯き加減であったオカルト研。その顔を覆った長い前髪がはらりと横へずれた。 頬をピンクに紅潮させ、上目遣いの可愛らしい表情が露わになったのである)

オカルト研「ドキドキする……」

オカルト研「あの……私、嫌じゃない。男くんとなら何にも嫌なんかじゃないっ」

オカルト研「う、あ……えと……男くん……[ピーーーーーーーーー]……[ピーーーーガーーーーーーーーーー]……///」

男「お、おう? 何て言ったんだ?」

オカルト研「……///」

男「あのあの? しつこいようで申し訳ないが、いま何と!?」

男(普段見づらい表情がこうもすぐ近くで露わになっていると、こちらまでドキドキである。殺しにでも来てるのか? 鼓動が更に早くなっていく)

オカルト研「……っ、今日はこれまでのようね。悪霊が私たちの接触を拒んでいるみたい」

男「待てって! 何だよ!? 結局ちゃんとした返事はー!? (何も言い残すことなく、そのままフェードアウト。逃がしてしまった。そこまで彼女を刺激した発言をしたか、俺は)

男(乙女心とはわからない。だが、それが良い……オカルト研の姿が見えなくなったその時、ポケットの中の携帯が震える)

オカルト研「『メール本文:いつでも暇にしておくから大丈夫。私も男くんと遊びに行きたいヽ(`Д´)ノ』

不良女「おっ、何だよ今帰ってきたのかよ。あたしたちもう教室戻るんだぞー」

男「知らないのか? 男のトイレも長いんだよ。結構デリケートなんだ」

男の娘「男って時々よくわかんない言い訳するよね……」

幼馴染「それじゃあそろそろ。チャイム鳴っちゃうからね、男くん今度からは気をつけるように! 遅刻しちゃダメなんだからね!」

男「俺も好きでそうなってるわけじゃない。……どうした? まだ行かないのか?」

幼馴染「え? あ、うん……行く……ね、ねぇ、男くん」

幼馴染「朝言ったこと、覚えてるかな……ほら! あの~……その~……///」

男「(覚えているとも、自分で切り出した話なのだから。だがここでその話をするのだけは不味い。美少女たちが見ているぞ)

男(バカ正直に「覚えてる。一緒に行こうぜ」とは言い出せない状況だ。すまない、幼馴染。帰宅してからゆっくりと話合おうじゃないか)

男「ん? 何だって?」

幼馴染「あ、あぁっ、な、何でもないよ!? それじゃ……あっ」

幼馴染「男くん……今日……」

男(連続攻撃だと。流石に周りの美少女がそろそろ黙ってはいない。だが、待ってくれ。幼馴染が先ほどと打って変わって表情が暗くなっている)

男「今日、どうしたんだ?」

幼馴染「[ピーーーーーーーーーーーーー]。ううん、やっぱりいいや! 気にしないで! えへへ…」

男(幼馴染の浮かない顔が忘れられない。彼女は俺へ何を話そうとしていたのだ?)

男(アレは後のイベントの為の切っ掛けに過ぎないかもしれない。近い内に幼馴染とのシリアスな展開が起こるとでも? まさか突然転校が決まったとか?)

男(何にしてもである。この先はフラグという物に気をつけて慎重かつ大胆に行動しなければ。それが主人公として課せられた俺の使命たるものよ)

男(時は放課後まで進む。そこまでへ至るまで特に変わったことは起きてはいない。しいていえば、俺と転校生が口ゲンカしている所を夫婦漫才だとクラスの連中から囃し立てられた程度)

転校生「もう、ばかぁ! あんたのせいでまたみんなから変なからかわれ方されちゃったじゃないのよっ!」

男(で、こんな感じ。ラーメン愛好会の部室には先輩一人を除いた俺たち四人が、それぞれ勝手なことをして青春を謳歌している真っ最中)

男「はっ、満更でもなさそうに見えたのは俺の勘違いだったかなー!?」

転校生「なっ……だ、誰があんたなんかと……///」

不良女「あんたたちって毎回毎日何かしでかしてるよな、ほんと飽きない奴ら」

転校生「私を勝手に含めないで! 私はこいつに巻き込まれた被害者よ!」

生徒会長「そんな事も全部私にとっては羨ましい限りだな……って、い、いまのは何でもないぞ!? 男くん聞いてなかったな!? [ピーーーーーーーーーーーー]!!」

男「そういえば先輩さんまだ来てないよな。生徒会長、我らがラーメン部長は?」

生徒会長「はぁはぁ……えっ!? あ、あの子ならもうすぐ来る頃じゃないだろうかな」

転校生「あの先輩さんのことだし、実は私たちより先に来ててこの部屋のどこかに隠れてるとかじゃないですか?」

不良女「……いや、そんな筈ねーって」

転校生「だってさっきからあそこにある置物。この前までなかったし、あれって、もがっ!?」

不良女「ないって! 前からアレ置いてある奴だから! ほら、気にしないでオセロでもしよっ、なー?」

転校生「ん~~んぅ~~っ!?」

男(……語弊があったかもしれない。四人ではない、既に五人いる。この部室の中には)

生徒会長「一体あの子は何処で油を売っているのだろうか。なぁ、男くん……」

男(目線が泳いでいるぞ、生徒会長。転校生以外は例の置物の存在に早い段階で気づいてはいた。いたが、誰もが触れずにいた)

男(かれこれ30分はこの状況が続く。そろそろ誰かが気づいてやらなければ哀れではないか)

置物?「……がたっ」

転校生「ぷはっ! ほら、今自分から音出してる風に喋ったわよ!?」

不良女「イギリスになかったから珍しいかもしれないけど、日本だと喋るんだわ……」

男「物にも魂が宿るということがあってだな、転校生。九十九神の一種だと思うぞ」

転校生「ウソよ。物が喋るなんてどう考えてもおかしいわ、あれ絶対先輩さ、むぐぅーっ!」

生徒会長「……私たちはいつまでこの茶番を続けるべきなのだろうか」

置物「がたっ、がたがたがたがたぁ~……!」

男「そろそろ誰かあれ調べた方がいいんじゃないですか。どう考えても怪しいぞ、あの置物は」

転校生「な、なんでそこ棒読みなのよ……ねぇ、みんなおかしいわ。調べなくてもあの中には」

不良女「そうなんだよ、もしかしたら神様とかいるかもしれないんだよなぁー。……だ、だから今日のところは触らないで帰っていいかもよ?」

生徒会長「それは……まずいだろう……」

男(全員が生徒会長を倣って置物を見つめる。それに応えるように、今度は左右にゆさゆさと動き始めた。というか、こちらへ徐々に迫ってきているのだ)

置物?「おやぁ? こんなところに怪しい物がー?」

生徒会長「うっ!?」

置物?「怪しいぞぉー昨日までこんな物置かれてなかったなぁー? うーん、これは怪しいっ?」

転校生「じ、自分で喋っちゃってる……」

置物?「もしかしたら爆弾かもしれない。それとも、中から凄いのが出て来るかも。絶対調べた方がいいと思う」

不良女「あ、あ……やばい。あたしどう反応したらいいか考えてないんだよ」

男(謙虚、と言い難いそれの為に、俺たちはおそるおそる近づいた。四人で顔を見合わせ、躊躇するも、ついにその手を伸ばし―――)

先輩「―――わぁあああああああぁぁぁ~~~~~~!!!」

「わぁあああああああぁぁぁ~~~~~~!!?」

男(た瞬間であった。ロッカーが勢いよく開かれると同時に先輩さんが飛び出し、俺たちへ襲いかかってきたのである)

転校生「ひっ、いやあああぁぁぁ~~~!!///」

不良女「おまえっ、ばか! てめ、どこ掴んで……ぃひゃあ!?」

先輩「うっひっひっひ~~~!! 誰がその中入ってるかもしれないってー!? ほーれほれほれーっ!!」

生徒会長「よせぇ!! どういうつもりだ!?」

男(先輩の豊満な胸がこれでもかと俺へ押し付けられている。四人揃って先輩さんに揉みくちゃにされているわけだ)

男(とりあえず嫌がるような、照れるような素振りを見せてはいるが、正直密着具合が素晴らし過ぎて堪らん。ハプニングとエロスとは、両立するものである)

生徒会長「やめろ……いい加減やめんか!」

先輩「あだっ!? もぉー別に叩く必要ないじゃんかよぅ」

生徒会長「なぁ、私たちはまんまと君に騙された。まさかロッカーの中に入っているとは思わなかった。だが、だとすればそれの中身は何だ……」

女子生徒「先輩っちー、もういい? うち そろそろカラオケ行きたいから帰りたいんだけど?」

転校生「な、中から出てきた……誰あの人?」

先輩「あ、ども~お疲れさん!! ……おっ、あの子? この為に雇ってきた」

不良女「知らねーよそんなの!?」

先輩「まぁまぁ、サプライズにはサプライズを重ねるのが常套だってば。つーことは? まだ驚いて頂くことがあるわけなのです…」

先輩「はい! 野郎ども聞いて驚けぃー、ラーメン愛好会 史上初、合宿しちゃうよ~!!」

夜に続く

男(一同揃って「は?」が重なる。誰もが疑問に思うだろう、ラーメン愛好会にそれが必要なのかと)

先輩「へへへ、皆さんまーたビックリしちゃいましたねぇ~!!」

転校生「……ガッシュクって何?」

男「まずお前の疑問はそこなのか」

先輩「ふふーん、転校生ちゃん。合宿というのは言ってしまえば訓練だよ、いや部員全員の心と体を鍛える鍛練かなっ!」

生徒会長「意味的には大体同じなんだが。それより、なぜこのタイミングでだ? というか私たちにそれは必要?」

先輩「いやいや! 必要とかそういうのじゃないのさ。確かにわたしたちが参加するような大会とかは無いし、特訓なんて意味ないけど……合宿やる事に意義があるわけ! 部活だよ、青春だよ!?」

不良女「ようは思い出作りみたいなもんじゃねーか!」

先輩「いっえーす! 合宿という名の思い出作りぃー!! へいへーい!!」

男「もう始めの方に話した訓練と鍛練は何処へ行ったのかって感じですね」

生徒会長「なら紛らわしい言い方せずに遊びだと言ってくれ……大体、唐突過ぎる。私たちで何処へ行こうというんだ?」

男(待ってましたと言わんばかりに先輩は鞄から取り出したチケットを広げ、得意気に自分を扇いで見せる)

転校生「先輩それは? よく見えないんですけど」

不良女「ああっ、それってこの前まで商店街の福引で景品だった……」

先輩「はいその通りっ! わたし当てちゃいました、これ2等賞だったの!」

男「十分だけど、ちょいと歯痒い感じっ! それで何のチケットなんです?」

不良女「お前知らねーのかよ? ほら、去年辺り開いたばっかのでっかい屋内プールと温泉があるちょっとしたテーマパークみたいなとこ」

男(プール? 温泉? テコ入れ……水着イベントの予感。早すぎる、初日していきなりお楽しみ中のお楽しみが訪れてしまうのか)

生徒会長「見たところ人数分あるようだが」

先輩「そうなんだよ! 丁度、偶然うちの部員分手に入っちゃってさー! いやぁ、神様っているのかもね~」

男(全くである。神様様だ、一生懸けても感謝し切れる気がしないぞ)

不良女「どれどれーちょっとあたしに見せて? ……わぁ、これ無料で遊べる上に1日宿泊もいけるし。マジ2等?」

男「つまり、遊んで帰らずにそのまま全員で一泊コースに?」

転校生「と、泊まりって!! 変態は絶対一人で別の部屋に寝なさいよ!?」

生徒会長「当たり前だろう!? で、でも[ピーーーーーーーーーーーーーーー]……///」

男「そういうのは当日になってから揉めようぜ、つーか別にやましいことする気ねーよ!」

転校生「わかんないでしょ、あんた本物の変態なんだから! ……うぅ~、あいつと同じ布団で寝ることになったらどうしようっ…///」

男「ぶうっっっー!!!」

男(難聴スキルは邪魔であることは間違いない。しかし、無ければ無いで一際刺激が強く感じられて仕方がないよ、転校生)

先輩「そりゃあ勿論一泊しちゃいますとも。夜までプールで泳いで遊んで、それから温泉でゆったりとしてーの! そこからはー……ん、[ピーーーーーーーー]」

男(何だと訊き返すのすら忘れてしまうほど、如何わしい場景が無限に沸き出す。俺はいま妄想発電所である)

生徒会長「温泉か……良いものだな。ふふっ、中々そそられる話じゃないか」

不良女「全くラーメン関係ないだろうけどねぇ。まぁ、この際どうでもいっかー♪」

転校生「別に行くのは構わないけど、いつなのか決まってるんですか?」

先輩「んっふふ~来週の日曜から月曜にかけてを予定! ほら、丁度月は祝日で連休になるでしょー?」

生徒会長「話も唐突なら、中身も唐突だな君は……私は特に予定はないから構わんが……お、男くんは?」

男(土日月、三連休か。オカルト研とのイベントはまだ多少先伸ばしても問題はなさそうだが、後輩と幼馴染との約束がある)

男(後輩に関しては休日という話ではなかったが、どうだろう。放課後デートということで手を打てるか?)

男(幼馴染は……土曜日に回すしかない。何にしても彼女らは俺へ期待満々だ)

男(デートを越えればまたデート。その先には水着で温泉、美少女たちと宿泊。ここで好感度を一気に上昇させられるボーナスステージが登場か。嬉しいが、厳しい戦いになるやもしれん)

男「これも全てお前が仕組んだことじゃないだろうな」

男(傍にいたままかは分からないが、どうなんだ天使ちゃんよ。俺の意図しないイベントはお前が手を出し、差し向けているのだろう?)

不良女「ていうか、プール入るんだよね? だったらあたし水着買わなきゃなー……[ピーーーーーーー]、[ピーーーー]///」

先輩「うむうむ、そうなんだよねぇー。てなわけでー!」

男(てなわけで、から舞台は部室からとあるデパートの中へ移る。周りを見渡せば女性、女性、女性。客もスタッフも皆である)

男(その中でただでさえ目立つことはないだろうこの俺が注目の的に。理由なんて一々説明する必要もない。とにかく送られてくる視線が痛かった)

男「俺だけ今日のところは帰っていいですか、先輩さん!!」

先輩「男くん? これは我がラーメン愛好会初記念すべき第一回合宿のために必要な準備活動だよ。一部員として男くんもいなきゃねっ!」

男「とは言ってもここ女性物専門の水着売り場じゃないですか!? さすがに周りの目がつらいんですよ!!」

転校生「本当よ! わざわざこいつまで連れて来る意味ある!?」

先輩「そんなこと言っちゃって……本当は男くんに[ピーーーーーーーーーー]?」

転校生「っ~~~!! ち、ちがっ……うわよ……っ///」

先輩「というわけで、男くんもわたしたちの水着選びに付き合ってくれると嬉しいなぁ~えへへ」

男(ほう、ならば上等だ。こちとらラッキースケベも起こす支度も整っている。実際に身に付けていない布切れなどに興味はないが、美少女の為、一肌脱いでやるさ)

男「そうだ、ここは別に下着売り場じゃない。水着はやらしい物ではないだろう。俺はここにいても悪くなーい! なぁ、転校生!」

転校生「……へんたいばーかっ」プイ

不良女「やっぱ時期外れだから大体のは安売りされてるじゃん。おっ、これとか過激! カイチョー似合うっぽいね!」

生徒会長「あ、あまりはしたない恰好にはなりたくない! 男くんだって見ることになるんだぞ!?///」

男(転校生も先輩から言い包められ、ようやく水着へ手を伸ばし始めた。俺といえば彼女たちを見守るぐらいしか今はすることもない)

男(まだ時間もたっぷり掛かるだろうし、一度天使ちゃん攻略について策を練るべきだろう。……何気ない会話が大切だ。、俺はもっと彼女を知らねばなるまい)

男(天使ちゃんの実情から好きな物、何だっていい、俺はまだアレが阿呆という程度しか理解できていない。相手を知らずに立ち回り、戦える人間がどこにいようか)

男(神が刺し向けた俺への監視役兼報告役、向こうは俺という人間を嫌というほど知っているだろう。今までの外道的立ち回りやゲスな性格を見届けてきた結果、あの嫌いようなわけだ)

男(美少女たちへ天使ちゃんを含めるとしたら、俺へ対する好感度はワースト1位。下の下以下である。できるのか? 補正が一切掛からない相手を落とすなんて……気を確かに持て、この世界の俺に不可能はない)

生徒会長「これは……[ピッ]、[ピーーーーーーーーーーーーーーー]///」

男「え?何だって? って、生徒会長も水着を? それ随分ストレートな黒ビキニ」

生徒会長「男くん!? いや、これ……わ、私はただあの子たちに付き合っているだけで買うつもりはないぞ!?」

生徒会長「別に家に帰れば以前使っていた物も残ってるだろうし、わざわざ新しいのはいいんだ。それに派手なのは私には似合わない、から……///」

男(ひょっとしてそれはギャグのつもりだろうか。その美麗たる容姿も然る事ながら、なんといっても胸に実ったたわわ! そいつを俺に晒さないとは勿体ないではないか!)

男「似合うんじゃないですか? 生徒会長はスタイルも良いし、きっと様になると思いますよ、俺」

生徒会長「うっ、変な冗談は止してくれ……はず[ピーーーーーーー]……///」

男「冗談? へへへっ、そうですか。ちょっと手に取って見てただけですよね。すみません、無理矢理勧める形になっちゃって」

生徒会長「い、いや。気にしてはいないからっ」

男(生徒会長、あなたは先輩たち同様新しい水着を欲している。そいつが気に入ったのか? 俺は話しかけるタイミングを間違えてしまったか?)

男(問題ない。俺が背中を押してやろうじゃないか……丁度良いところで彼女もそこに来ている。今だ)

男「でも、やっぱり生徒会長がそれ着たら似合うとは思うんですけどね。俺は好きですよ、そういうやつ美人が着ると堪らないっていうか! っあー!?」スパーンッ

転校生「こ、この変態はぁ~……!」

男「お前今日で何度殴ったか覚えてるか、暴力女!?」

転校生「私だってあんたなんかそう何回も叩きたくないわよ。こうでもしないと周りに迷惑掛けまくるんだからしょうがないでしょ!」

男「優しく言葉で諭してあげようって気にならんのか? 暴力は悲しみしか生まんぞ?」

転校生「勝手に悲しんで野垂れ死んじゃえばいいわよっ、アホ男!」

男(口出しさせる間も与えない転校生とのケンカという形で、俺たちは生徒会長一人を残してフェードアウトして行く)

男「……ククク、何とかと転校生は使いようってな」

転校生「はぁ? どうしたのよ、いま何か言った?」

男「ん? ああ、俺もここで合宿で着る水着買った方がいいのかなーって……待て、冗談」

転校生「しねっ!!」

生徒会長「[ピーーーーーーーーーーーーーーー]……着れば、彼は[ピーーーーーーーー]くれるだろうか……///」

男(生徒会長の性格上、俺があの場へ居座ったままでは購入を決断できずにいたと思われる。これで少しは気が楽になったのでは?)

夜と言ったな・・・確かに夜に書いた、すまん
短いけどここまで。明日も書く

不良女「これもいい、あそこにあるのもいい! 何だよもぉー!」

男「それでお前はどういうの買うつもりなんだよ、不良女」

不良女「どういうのってそりゃあ……って、気軽に聞いてんじゃんねーよ!?」

男「男一人こんな所で暇してるところでな、する事といえばお前らの気に入りそうな奴を一緒に探してやるぐらいなんだ」

男「前に不良女には妹に渡すプレゼント探すの手伝ってやっただろ? 同じ……あれ」

不良女「物と着るもんじゃ全然違うんだよ。それに[ピーーーーーーーーーー]じゃなきゃ嫌だし、失敗したくないし」

不良女「つーか、ちゃんと聞いてんのかよ? どうしたの。難しい顔して」

男「え? あ、ああ、妹に似合いそうな水着とかあるかなぁーと」

不良女「うぇ……あんた、実はシスコンとかじゃないよね?」

男「バカ、可愛い妹のために張り切る兄貴のどこがシスコンだ。俺は家族を思う優しいお兄さまなんだよ」

不良女「それも度が過ぎれば異常だっつーの。はぁ、大概にしとけよー、妹って兄貴から余計に構われるとウザがるからフツー」

不良女「……あたしのこともそれぐらい[ピーーーーーーーーーーーーーー]///」

男「え?」

不良女「っー! ま、真面目に選ぶの手伝う気ないならあっち行ってろよアホ男!」

男(妹に渡すプレゼント? 俺が不良女とそれを探した? 何だそのイベントは)

男(口に出してから気づいた。俺にはその記憶が無い。だが、不良女は疑問に思うことなく会話を続けていたではないか)

男(あったのか? それも以前、別の俺が体験していた? 俺には昨日までの記憶は何一つ残ってはいない、筈、なのに今のはどういう事なのだ)

男「天使ちゃんは俺の記憶を綺麗さっぱりリセットしたと言っていたが、それならなぜ今言葉に出てきた? まさか完全に消えてはいない、とか」

男「それとも……実は思い出せなくもない?」

男(眉間へ手を当て、強く自分の頭の中に眠った記憶を呼び覚まそうと試みる。[ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー])

男([ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー])

男「んーむ、わからない。この世界の昨日も、俺が元いた世界での昨日も、全部だ。何一つ思い出せる気がしないぞ」

男「俺の頭はいまどういう状態なんだ? この体も……元の俺の物じゃないって言われたな。神がこの世界に合わせて作ったとかだったっけ」

男「で、魂のみがこちら側に移されてて……待てよ、じゃあ元の世界に残った俺の体はどうなんだろう。魂が抜けてるって考えていいんだよな?」

男「あんまり宗教的な話を信じる気にはなれんが、それっていわゆる――――――」

先輩「おっとこくぅーん!! 白か黄色のチェック柄どっちが好き!?」

男「は!?」

先輩「いやぁ、わたし的には無色より色合った方が明るくて良いんじゃないかって思うんだけど、ちょっとこの色だと派手っぽい感じになっちゃわないかなーと! でもね、これ意外で探したら大体薄いのばっかりで困ってるんだよ~!」

男(この人は常にハイテンションでいないと死ぬのだろうか。たぶん、黙っていても息が詰まって窒息を起こすのかもしれない)

男(先輩は俺へ手に持った水着を自分へ重ねて「こう?」とか「どや?」などポーズを決めてはしゃいでいる。この無邪気なところが堪らなく美少女)

男「そのどっちかで決めないとダメなんですか?」

先輩「ダメってわけじゃないけど、今のとここの二つがわたしの中のベスト2かな。あっ、べ、別に男くんが言うなら他のでも……!」

先輩「せっかくだし、[ピーーーー]の人が好みの水着にしたいし、ね……あはは……///」

男(そのつもりだった事は流石に気づいていたとも。確信した、この俺に鈍感属性などない)

男(おそらく、難聴によって彼女ら美少女の見えみえな気持ちを察せられない、かつ、俺のあえてのスルーから鈍感の烙印を押されているのだろう。なるほど、難聴で鈍感になる代わりに……)

先輩「そ、そうだ! 男くんは新しい水着買わないの!?」

男「俺にここで一緒にビキニを買いなさいと?」

先輩「うおー、これなんか似合うかもよ!!」

男「似合って堪るかよっ……!」

男「俺はいいから、今は先輩さんたちの買い物でしょう? ていうか、別に今日じゃなくても」

先輩「思い立ったら即行動って言うじゃない! まぁ、無理矢理みんな巻き込んじゃったのは悪いと思ってるんだけど」

先輩「わたしも男くんが水着か下着選ぶときは着いて行って手伝うから、許してくださいっ!! この通りだよっ!!」

男「て、手伝うだと……!」

先輩「そ、それじゃあダメ? かな……なら、[ピーーーーーーーーー]でもいいし……///」

男「んぐぅーっ、邪魔だ難聴そこどけッ!! あっ……な、何て言いました?」

先輩「やっぱり実際に着てみなきゃわかんないかなぁ。でも水着の試着ってちょっと抵抗あるんだよね」

男「水着の試着用とかあるんですか? いくら何でも誰が着たか分からないやつを履くのはちょっと」

先輩「まぁ、気にする人は気にするかも。でもまさか素肌に直接付けるわけじゃないんだし、わたしは試着とか面倒なだけの理由でしてなぁー?」

男「えっ、それ下着付けたまま着るもん?」

先輩「はえっ……のぉ 男くんや、さすがに他の人も着るからさ、裸はバッチぃと思うわけヨ」

男(あの先輩が顔を強張らせて俺の胸を指で突っつきながら言う。知るわけないだろう、水着の試着なんて試したことないもの)

男(しかし待てよ、全員が下着を身に付けて試すとも限らない。転校生辺りは知らずにそのまま……ああ、いけない気持ちが沸き上がってくる。これ以上はいけない)

男「と、とりあえず似合うかどうか履いてきてみたらどうですか! ほら、そこに試着室ありますし!」

先輩「おぉー……それじゃ、そうしてみるかなぁ、うん! あっ、男くん絶対覗いたりしちゃやだからねー!」

男「こんな所で堂々と覗く度胸は俺に備わってませんよ。ぶっちゃけその勇気欲しい」

先輩「うむうむ、なら安心。……ほんとに覗いちゃだめだよ?///」

男(それはさぁ、覗けという意味と捉えてよろしいのだろうか)

男(赤面しながらカーテンを閉め中へ引っ込む先輩を見送ると、すぐそこに転校生と生徒会長の二人が。今度は転校生の水着選びらしい)

男「転校生、俺が一番やらしそうなの選んでやるよ。任せておけ……」

転校生「こっち来んな変態スケベっ!!」

生徒会長「ああ、男くん。いま転校生の水着を一緒に見ていたところだよ」

男「へー……ていうか、後ろに何か隠してませんか?」

生徒会長「うっ! き、君の気のせいじゃないかな……[ピーーーーーーー]」

男(当ててみせようか、後ろに隠した紙袋の中身は先ほどの水着だろう。まったくクールを装って可愛い上級生め)

転校生「あんたは今まで何してたのよ。まさか、変な目で水着見て回ってたとかじゃないでしょうね?」

男「ただの布に興味ねーよ。中身あって引き立つ装備だろ、ここに飾られてるのは! 見ろ、マネキンが着たって俺はぐっともこない」

転校生「あんたのこと変態って呼んでる私に何一つ間違いなんてなかったわね……」

男(ジト目が似合うぞ、転校生。良い感じに俺へ蔑んだ気持ちをぶつけてきて。これがイイんじゃあないか)

男「で、気に入ったものは見つかった? 生徒会長はこいつに何が似合うと?」

転校生「ちょっと。その言い方だと私に似合う水着が全くないみたいじゃない!」

生徒会長「男くん、口には気をつけないとな。……そうだな、例えばこういうのはどうだろう?」

男(彼女が手に取ったものは、まるで嫌がらせのように布面積が少ない三角ビキニ。こいつは下品すぎる)

男「良いセンス。とりあえず着れば?」

転校生「着ないわよぉ!?///」

生徒会長「あ、冗談だったのだが……」

男「じゃあお前はどういうのならお気に召すんだよ。言ってくれれば、一緒に探すぜ」

転校生「えぇ……そうね、なるべく着るなら機能性重視かしら。泳ぎやすいのが一番よね、水着なんだし」

男「見せるという考えは持たんのか、お前。今時の女子高生にしては逆に珍しいタイプだな」

転校生「見せる? 別に誰にも見てもらう必要ないわよ、体なんて」

転校生「……こいつに笑われない程度のは着た方がいいのかしら。だったら、可愛いのとか選んだ方が」

男「ふむ」

転校生「そ、そうよね。選ぶならそっちのがたぶん良いかも! わ、笑わないで似合ってるって誉めてもらえそうなやつとか……どういうの好みなのかな」

男(段々と胸が苦しくなってきたではないか。何なのだ、恋する美少女よ。その口から漏れている呟き全て、俺の耳へ届いているぞ)

男「からかって悪かったな、転校生。別にやらしいの探すことはないからな?」ポン

転校生「うっ、何よ急に。ていうか、最初からそういうの探してるつもりないわよ!」

男「だったな。まぁ、自分の好きなように見て回ればいいんじゃないの」

転校生「ねぇ……あんたはさっきみたいな際どいのが、良いの……?」

男「ふん、ついに穿く気になったか? 変態め」

転校生「ははは、穿くわけないでしょ~!? ばっかじゃないのっ!?///」

男(頼み込めば本気で着てくれそうな雰囲気を漂わせているのが恐ろしいところである)

生徒会長「機能性重視とは言っていたが、私たちが向かう場所は本格的に泳げることを期待しない方がいいと思うぞ」

転校生「確かにテーマパークみたいなとこって聞いたけど……いまは機能性より見た目の良さで選ぼうかと思ってまして」

生徒会長「ん? そうか、それならば私よりも先輩ちゃんや不良女の方が役に立つかもしれないね。でも、急転回だな。どうした?」

転校生「べ、べべべ、別にいいじゃないですかー!? ただの気まぐれですっ、遊びなんだし変に拘ることないかなと思ってー!!」

転校生「そんなの、言えるわけないじゃないっ……///」

男「しっかり言ってたじゃねーか、当事者の前で……畜生、かわいい…… (聞いているこちらが落ち着かなくなってくるではないか。傍から見てはコントだが、だいぶ卑怯だぞ)」

男「えーっと、そういうことなら俺は不良女探してきますよ、生徒会長。先輩さんはいま水着試してるらしいので」

生徒会長「ああ すまない、頼めるか? 私はこのまま彼女と一緒に目ぼしい物があるか探してみるよ」

男「はい。転校生、せっかくだし今日でいいの見つかると良いな」

転校生「あんたが好きなの選んでくれれば、すぐにでも決められるっての……」

男「え?」

転校生「な、何でもないわよぉー!? 早くどっか行って、あーもうっ!!///」

男(もう何が通常難聴スキルで隠された台詞なのか判別がつかなくなってきた。フリー状態がアンロックされた美少女だろうと、会話には気をつける必要がありそうだな)

男(触れていいポイント、スルーすべきポイント。ちょっとしたミスで告白まで持って行かれたら面倒になる。注意せねばなるまい)

男「難聴スキルがあったからこそ、あの破壊力なのか。それとも元々普通に聞けていたとしてもあの破壊力なのか。詰まるところ……どっちでもいいや」

男「危うく二人を前に悶え転がってしまうところだった。恐ろしいな、美少女! 得意になってつい侮ってしまった!」

天使「別に素直にかわいいって言ってあげたらいいじゃないですか。あっちも喜んだと思いますよ」

天使「そんで、しまいにゃ向こうからLOVEって告られ、男くんはハッピーエンドを迎える。わぁ、超簡単にエキサイティングですー!」

男「呼んだら出て来てねって約束をさっそく破ったな?」

天使「やぁあー!? スカート捲ろうとするなぁー! あっ、ひぃ、やめてください、マジでやめろですってば!!」

男「さぁ、お仕置きの時間だよベイビー。俺以外に見えないんだし、そもそも人間じゃないから法的にも問題ないってね!」グイグイ

男「……冗談はここまでにしておくとして、どうして急に現われた?」

天使「じょ、冗談にしちゃ、男くん目がマジで怖かったんですが……ふぅ、男くんがさっきは辛そうに見えたのでつい」

男「よく俺を観察してるじゃないか、まるで俺博士だな」

天使「ただの男くん博士じゃないのです。飽きるぐらい監視し続けましたしね、あなた以上に男くんには詳しいつもりですよ!」

男「実は俺のこと好きなんじゃないか、お前」

天使「いーえ、まったく! 大嫌いの部類に入ります!」

男「ストレートに言われるとかなりぐさっと来る言葉だな。まだ俺がハーレム諦めないか待ってるのか? 無駄って言っただろうが」

天使「でも……我慢は毒って人間はよく言うじゃないですか。自分はこれでも心配してやってるんですよ」

男「やれやれ、その心配が余計なお世話だとなぜいまだに気付かないかねぇ」

男「ハーレムは俺の夢で野望なの! しかも全員美少女の! 苦しむわけないだろうが、むしろそんな状況すら楽しむ余裕がある!」

天使「ふーん……まぁ、別にいいですけどー……結局誰ともくっ付くこともなければ、その目的も達成できなくなっても知りませんからね」

男「待て、そんな絶望バッドエンド展開ありえるのか?」

天使「可能性はなくもないって言っておきますよ。この世界は男くん次第でどうとでも動くんです」

天使「自分が言いたいのはとにかく自分が幸せになれることをしろっつーこと! もし男くんが絶望のどん底なんて状態になれば、何もかもパーですからね?」

男「どうなるかは予想できんが、神や天使ちゃんはこの世界に流れた時間を巻き戻せるんだろ? 最悪の場合に陥ってもそれでいくらでも取り返しが」

天使「いや、それって実はやる気の問題で叶うんですよ。ハーレムも彼女もできずに終わったら、流石の男くんもやる気失うでしょ? 男くんの気力がなによりも大切なんです」

男「はぁ? 天使ちゃん会話噛み合ってなくない?」

天使「話最後まで聞けーい。自分たちが男くんにガチ直接関与するのってぶっちゃけよろしくないんです」

男「しっかり俺へ無理にラッキースケベ起こさせてたじゃねーか。…それは美少女を使って間接的にだからできるって?」

天使「なんだわかってんじゃないですか!」

男「はいはいはい……で、それと時間を巻き戻すことに何の関連性があるんだよ。お前たちが親切で勝手にやってくれてることなんだろ?」

天使「確かに、超々親切心から、男くんのために自分たちがやってあげてます。でもそれは、何度も言うけど男くんの気力が関係するわけですよ」

天使「何としてでも今度こそは夢を実現したい、その強い意思にこの世界が反応した結果時間を戻す働きをしてくれるんです。ここは男くんに都合のいいところって説明したでしょ?」

天使「その働きに主に自分が名状しがたいスーパーパワーで力を貸す。ほら、これで直接手を出したわけじゃないです」

男「ああ、よく分からんが屁理屈臭い仕組みというのは分かったかもしれない」

男「それで俺の記憶を代償にというのは納得いかない話だな。天使ちゃんもケチだぜ」

天使「あのねぇ? これにだってちゃんとした理由があるんですよ? もし記憶を残したままリセットされれば、普通の人間なら混乱しちゃうでしょう」

男「ふむ、俺なら対応できるであろうことがなぜわからんのか?」

天使「いやー、さすがに無理ですよー……簡単に言ってるけど、実際なればかなり不安になるかと」

男(天使ちゃんはしっかり俺から元の記憶を抜き取ったつもりでいる。なら、先ほど不良女との会話時、不意に出てきた発言は一体なんぞ?)

男(これを彼女へ尋ねるべきかどうか迷いどころである。もし記憶消去が完全でなかったと発覚すれば、再度スーパーパワーによってブランク状態へ変えられる恐れが)

男(この世界は俺に都合がいい。都合がいいが、説明されるたび自分がここに拘束されているのではと思わせられる。幸せという名の檻の中だ)

男(そうだ、なぜ俺だけに都合がいい世界? 委員長にとってはどうだったのだろう? 俺だけの為に作られた世界なのに、なぜ委員長はここにいた?)

男「なぁ、委員長はどうして俺みたいに理想の世界を与えられなかったんだ?」

天使「うぇ? 与えてましたよ? ここがそうです。そういくつもバンバンと作れるわけでもないし、二人の願い的にも一緒に入って貰って問題なかったですし」

天使「……いや、今となったらありましたねぇ。男くんが余計な行動を取る何割かは委員長ちゃんが原因でした! まったくー!」

男「そう言われても今の俺的には困るというかだな。……ん? ということは委員長は俺より後にここへ来た?」

天使「うっさーい! 何でもかんでも教えてもらえると思うなぁー!」ブンブン

天使「とにかく! もう嫌になるぐらい言わせてもらいますけどっ、男くんは自分が幸せになることのみを考えてください!」

天使「もうハーレムでも何でもいいですから。絶対真バッドエンドみたいな胸糞悪くなる終え方だけはやめてくださいよ? だから心配してるんです自分はっ」

男「むしろ、俺のこのどうやってもモテまくりなウハウハ主人公状態でそうなるのは逆に難しいだろ。可能性といっても小数点以下レベルじゃない?」

天使「そりゃ難しいかもしれないけど……男くんの行動って予想外すぎるんですよ。本当に何をしだすか読めないから見てるこっちが怖い」

天使「だから、もしかしたら男くんならありない事じゃないかもって、思わせられやがるんです! 自分からすれば、これまで出会った人間の中であなたはイレギュラーって感じ!」

男「何も知らずにいた俺からしたらそっちこそだ! 良いだろう別に、俺に都合良い世界で好きなことしようと!」

男「……ちなみに訊いておいてやるが、もし真バッドエンドとやらを迎えたらどうなる?」

天使「知りません」

男「散々注意しておいて答えはそれかよ。もっとマシな回答用意しておけっての」

天使「何が起こるかなんてわかりませんよ。これまで面倒見てきたので、自分の幸福を蹴って絶望した人間なんて誰一人いませんでしたもん」

天使「でも男くんにはそうなる恐れがある。だから優しく忠告してやってるんですよ。どうなっちゃうかマジで分かりませんから……怖いですよ、未知って」

男「へぇ、俺を心配してるってウソじゃなかったのか。てっきりまた夢は諦めろとかしつこく来ると思ってたのにな」

男「口も汚いし生意気なロリ美少女とばかり思ってたけど、優しいところもあるんだな天使ちゃん。忠告ありがとう、精々気をつけるさ」

天使「わ……別に、本当はあなたなんて変態どうなったって気にしませんけどーっ……むぅ ///」

男(照れたな、誉められていま照れたな? 飴と鞭とはよく言ったものだ。自分から歩み寄ってくるとは思ってもみなかったぞ、天使ちゃん。これでいい、始めはジャブを打ち続けるのだ)

天使「そんなことより、不良女ちゃん探さなくていいんですか? 暇してるんですか~?」

男「突然声をかけてきたのはどっちだったかよーく思い出して欲しいところ。分かってるならはよ引っ込め!」

男(特に急ぎというわけでもないが、いま天使ちゃんと慣れ合う必要もない。あとで帰宅した後、自室でみっちりしごいてやろうじゃないか)

男「ていうか、今の会話他の人から見たら俺の愉快な一人劇か。割と笑えんぞ、それ」

男「確か不良女はこの辺りで品定めしてた筈だが……どこに消えた?」

男(かれこれ3分……10分にしておこう、彼女を探しまわった結果、発見できず。不良女も試着室へ入ったのではと、一旦あの二人と合流するため戻ってきた)

男「予想していたが、転校生と生徒会長もいないという。まさか俺一人残して帰ったとかじゃないよな? まさかな」

男(店員に皆の行方を尋ねる気も起きない俺は色取り取りな水着たちに囲まれ、突っ立つ。慣れというのも不思議だ、緊張は薄れ、むしろこの空間に親しみが持ててきたような)

男「気がしたら困るな、やっぱり。いつまでも手持ち沙汰じゃ退屈だし、もう少し探して……!?」

男(俺の腕を試着室から伸ばされた手ががっしりと掴む。呆気に取られ、しばらく硬直していると、手は俺の体を思いっきり引っ張り、中へ引き込むのであった)

男(頭の中は実にクリアだ。これから起こるであろうイベントに対する準備は整っている。さあ、いざ行かん。男子禁制秘密の部屋へ)

先輩「ごめーんついっ!!」

男「先輩さん……いきなりどうしたんですか? ていうか、何で俺を入れたんです!?」

先輩「え、えへへ! つい出来心っていうか……どうかな? これ似合うと思う?」

男(もしもの時にと、顔を覆わせた両手を下へさげていくと、そこには黄色チェック柄ビキニを身に付けた先輩が)

先輩「いやー、まず先に男くんに見せたいなって思っちゃって。そしたら偶然そこ歩いてるんだもん! じゃあ、やるしかなかった!」

男「それ大胆すぎませんかね!」

先輩「ん、この水着が?」

男「水着じゃなくて、行動の方がですよ。まぁ、確かに水着も大胆と聞かれれば……むふぅ」

男(制服の上からでも凄まじかったその体。それが今ここで脱がれ露わに。なんともまぁナイスなワガママボディだろう)

男(目の保養を十二分に超えた存在がここにある。思わず凝視し続けていると、先輩の様子が少しづつ変化しだした)

先輩「見せたいとは言ったけど~……そんなにまじまじ見られると、ちょっと恥ずかしいよぉ……///」

男(片手で胸を、もう片手で下半身を隠してしまった。顔を見れば、いつもの先輩かと疑いたくなる照れを前面に出した表情が見られる。良い、たまらん、実に男心をそそられるぞ)

男「(さて、鼻の下をいつまでも伸ばしている場合ではない。主人公ノルマを稼ぐ、否、役目を果たそう) でも、どうして俺に見せようと思ったんですか? 別に俺じゃなくても」

先輩「[ピッ]、[ピーーーーーーーーーーーーーーーーーー]。[ピーーーーーーーーーーーーー]///」

男「え? 何ですか?」

先輩「……男くんの[ピーーー]」

男(「鈍感」だろうか? それで良い。彼女たちには申し訳ないが、鈍感であると決めつけられたままの方が俺も立ち回り易い。ハーレムを築く身としてはな)

男(しかし、積極的な行動に出たものだ。彼女のようなタイプは恥じらいも強く感じるため、いざという時は後ろへ下がっていくとばかり思っていたが、今回は勝負に来ている?)

男(この半密室状態に露出の高い恰好。これでは自らライオンへ身を捧げる釈迦ではないか)

男「……半密室状態? ここは試着室、女性専用の。というよりこのフロアには女性しかいない」

男「そして中には水着姿とはいえ先輩さんがいる。ああ、こいつは」

先輩「あれ、どったの急に? 壁叩き始めちゃって?」

男「抜け道用の隠し扉とかないかなと……あるわけ、なかったよ」

男(俺の予想だ、ここから二人で出た瞬間、目の前に姿を消していた美少女たちが集っているだろう。すれば、色々勘ぐられる前に、彼女たちは大きな勘違いを起こす)

男(二人でこんな狭いとこ入ってナニしていたと。若い男女がこの中に二人きりでだ、猿でも思うことだな。最悪の場合、これからに支障を来すことがありえないか?)

男(たぶん転校生の鉄拳制裁で済むかと思いたいが、些細なミスもこの俺にとって恐怖である。時間は巻き戻せる……ただし、それは美少女と付き合い始めた日まで)

男(取り返しがつかないミスもありえるのだ。考えすぎて悪い筈がない。このイベント、喜ぶべきだが、素直に喜べる気がしない)

男「あはは、それってやっぱり中に下着つけたままですか? (まずは冷静にこちらから捌こう。会話と対処法を同時に考え、乗り越えなくては)」

先輩「当たり前でしょ! もぉー、男くんはエッチだなぁー!」

先輩「それで似合ってる……? 自分で見るとやっぱり自信なくって」

先輩「男くんがこれで良いって背中押してくれたら、諭吉さん出す勇気も出るってもんさー! [ピーーーーーーーーーーーーーー]」

男(いくら普段のハイテンションで押し切ろうとしても、その赤面は誤魔化しきれていないぞ、先輩よ。恥ずかしさの裏側で、俺へ期待しているか)

男「ええ、とっても似合っ、もが!?」

男(ちょっと待ってくれ、ここで台詞キャンセルだと?)

先輩「……しーっ///」

男(俺の口を塞ぎながら、口元に人差し指を立てて見せる先輩。ちらちらとカーテンの向こうの様子を窺っている。なるほど、察した)

男「外に生徒会長たちがいるんですか」

先輩「だ、ダメだよ声出したら。あっちに聴こえちゃうっ! そしたらみんなに[ピーーーーーーーーーーー]」

男(どうやら彼女たちは俺たち二人を探しているみたいだ。このタイミングで来るとは意外ではあったが、脱出の機会を作るチャンスが見えた)

男「先輩、あの三人俺たちのこと探してる感じですね。どうしますか?」

先輩「どうって言われても……あ、ごめんね。わたしが男くん中に入れちゃったのに」

男(素晴らしいお宝が見られたのだ、こちらとしては文句の一つ出す気もない。さて、外の三人がすぐ近くへ移動してきた)

男(ここで俺の中には慎重に脱出のみを考えるか、あるいは先輩とのイベントを果たしつつ脱出の二択が浮かぶ。チャレンジャー精神の見せどころだな、後者だ)

男(俺には達成できる自信がある。全ての展開から結果は、俺の望むように決まる。天使ちゃんは言った、この世界は俺次第でどうとでも動く……足元に先輩が脱いだ制服、これだ)

先輩「と、とりあえずみんなが行くまで大人しくしてよっか……[ピーーーーーーーー]だね///」

男「そうですね。こんな場面を見られるわけには、うおっ!?」

先輩「えっ? わきゃあっ!?」

男(ラッキースケベは俺の任意で発動できる、それが力だ。制服へあえて足を滑らせた俺は、先輩を壁際まで押し込み、キス寸前の距離で先輩の背後の壁へ手をついた)

男(こういうの何と言っただろうか。ああ、壁ドンではない、壁バンである)

男「せ、先輩さん……これはその狙ったわけでは……!」

先輩「っあ~……///」

男(距離はこのままを保っておこう。俺たちを包む試着室の雰囲気がおかしなことになりだした)

男(先輩は目を見開き、まばたきを繰り返しながら、俺の顔を見たまま固まっている。あの天真爛漫な彼女がどうだ、耳まで真っ赤に染まっているではないか)

男(心臓の鼓動が聴こえる。先輩はそこまで緊張しているというのか。否、こいつは俺から発せられている音である。かろうじて冷静を保っているのは思考のみ、体は嫌でも反応を起こす)

男「……」ドクンドクン

先輩「……///」ドキドキ

男(といった感じの膠着状態は続く。いま何分経った? 時間も気にしている余裕はない。俺たちお互いの顔から視線を逸らせず、見合ったまま止まる)

男(時間が凍結してしまったとでもいうのか。5秒…経過、6秒…経過、7秒経過! まだまだ止めていられるぞ!)

先輩「……[ピーー]とこくん」

男「え?」

先輩「男、くん……[ピーーーーーーーーーーーーー]……」

男「何ですか、って!?」

先輩「ん……///」

男(お決まり難聴スキルが空気を読まずなところで、台詞の予想を立てようとすればである。先輩が瞳を閉じて、ピンク色の唇を俺へ向けてきた)

男(何も語る必要などない、彼女は求めていらっしゃる、この俺を。雰囲気に呑まれたか、緊張のせいでいつも踏み止まっていたラインを越えようとしているか、どちらでもいい)

男(迷いなど俺にはもはやなかった。そのままゆっくりと、少しづつ、先輩の唇へ接近していく)

男(それにしても偶然というものは恐ろしい。あらゆるイベントを生み出し、喜ばすこともあれば、四苦八苦させることまで)

男(こいつは俺だけに言えた話ではない。そう、彼女も)

不良女「おぉーーーいブチョー! この中いるんだろーーー?」

先輩「きゃあっ!?」

不良女「おっ、声した。やっぱりまだ試着室の中いたんだよ、あの人。で、もう一人のバカ野郎はどこ行ったんだかなぁ」

生徒会長「先ほど大きな音と声がしたんだが、大丈夫か?」

先輩「だ、だいじょぶ~~~!! ちょっと躓いて転んじゃったんだよぉ、あははっ!!」

転校生「怪我とかしてないですか? それと、変態どこに行ったか知りません? あいつ不良女ちゃん探すって言ってそれっきりなのよ」

男「……下の階に降りてフードコートにいるって言ってください」

先輩「お、男くんなら先に下に降りてるって言ってたよ。なんかお腹減ったらしくて、食べ物買うって」

不良女「えぇー何だよアイツ、結局途中で抜け出してんじゃねーか」

生徒会長「まぁ、彼にとってはここを見ても退屈なだけだろう。仕方がないさ」

男「……ごくり」

男「次は……買い物が済んだか訊いてください」

先輩「みんなはもう買う物買えたー? 他に見る物とかない?」

転校生「はい。みんな大体済ませちゃいましたよ、あとはもう特には。先輩さんはまだ掛かりそうなの?」

生徒会長「慌てずにゆっくり選ぶといいさ。私たちに遠慮はいらないよ、ここで待ってるから」

不良女「何だったら着た奴見てやろうかぁ~? これでもあたし良いもん選ぶ自信あるよ?」

先輩「あっ……う、ううん! みんなは先に男くんのとこ行っててよ~! わたしもすぐに向かっちゃうからねっ!」

男(言い終えた先輩は不安そうに俺を見る。問題ない、そのアドリブは嬉しい)

男(三人は、でも、とまだ立ち止まっているが、彼女の無理な押しによってようやく去って行った。上出来じゃないか)

先輩「はぁぁぁ~~~……あー、なんか一気に疲れた感じするぅー……」

男「確かに三日分ぐらいの疲労が溜まった感じですよ。お互い、緊張で潰れそうになりましたねぇ……」

男「とりあえず三人とも下へ行ったみたいだし、俺も急いで向かわなきゃな。先輩、まだ立てないんですか? へへ、腰抜けたとか?」

先輩「[ピーーーーーーーーーーー]」

男「え? すみません、いま何て?」

先輩「な、何でもないよ? ……あのまま男くんと[ピーーーーーーーーーーーーーーーー]なってたんだろ」

先輩「……うぁ///」

男(先ほどの状況を思い出したのか、こっそり俺へ背中を向けて恥ずかしがっているようだ。というのも、備え付けの鏡にその顔がくっきり写し出されていた為である)

男「先輩さん、あのさっきのは本当にすみませんでしたーっ!!」

先輩「えっ!? わ、わたしの方こそごめんなさいだよ! 元はといえばわたしが男くん引っ張ってきちゃったのが悪いんだしさー!?」

先輩「ほ、ほら 早く生徒会長ちゃんたちのとこ行かないとまたいないって困らせちゃうよ! ほれほれ、もう行った行った! わたしも水着脱ぐからさ、ねっ!?」

男「わ、わかりました。じゃあ先に行ってますよ、先輩さん。……ああ、それから言い忘れてた」

先輩「へ?」

男「その水着、とても似合ってると思います。先輩さんらしくて俺は好きだなぁー……なんて」

先輩「は……そ、そっかぁ~!! よっしゃー、そう言われちゃあもう買うしかなーい!!」

先輩「[ピーーーーーーーガーーーーーーーーーーーーー]///」

男(全て俺の計画通りである。笑いを堪えるのが苦しい)

男(ミッションコンプリート、成し遂げた。イベント消化、そして無事この場から脱出。先輩の好感度はぐーんと上昇、まず間違いないだろう)

男「先輩に助けられたな。ある意味あの三人にも救われたが……利用できるものは利用するまでよ――――ん?」

男(携帯電話が震え、着信を報せる。おそらく転校生か不良女が俺へかけて来たのではないか? そろそろ俺がいないフードコートへ辿り着いた頃合いだ)

男「ありゃ、違う? 幼馴染からだと? ……もしもし、どうした? もう少しで家に帰るが」

幼馴染『お、男くん……お願いたすけて……』

ここまで。暇あるし明日もいける昼か夜かはわからんが

男(男くんゎ走った……幼馴染がまってる……意訳:俺は無我夢中で彼女の元へ走った。電話口の向こうは只事ではない様子であった、何事かと尋ねても脅えた口振りで助けを求めてくるばかり)

男(ラーメン愛好会のメンバーへは先輩を通じて俺の途中離脱が伝わっているだろう。何分、このような緊急事態は初体験である。幼馴染の身が危ない。四の五のやっている場合ではないだろう)

男(たとえ仕組まれたイベントだろうと、もし美少女に危険が迫っているとしたら、気が気でない。打算的な考えなんぞあるものか)

男「今までの流れから考えて急展開すぎるだろ! 天使ちゃんの仕業か!」

天使「自分はまだそんなことしてませんよ。大体、毎回疑われるの嫌だから言っときますけどね」

天使「男くんにあの子たち使って大きなアクション起こさせるなんて、滅多なことじゃやらねーです。して、悪戯ていどで抑えてますよ」

男「悪戯ぁー!? どうだっていい……今回は本当にお前のせいじゃないんだな?」

天使「当たり前ー! でも、助けてとか言っちゃう状況だと、幼馴染ちゃんは悪い男の人に捕まってたりとかだったりして」

天使「ぷぷ、そしたら良いとこ見せるチャンスじゃないですか!」

男「冗談でもバカなこと言うのはやめろ (幼馴染が悪漢に追い掛けられている。そんな展開、今までの日常から考えられるものか)」

男「おい……この世界だとそこらのDQN相手でも指先一つでダウンさせられるぐらい強化されてたりしませんか」

天使「しませんよ?」

男「わかった、悪人なんてここには一人もいない事を祈るしかないな。確か、この辺りにいるって幼馴染は言ってたんだが」

天使「切羽詰まってる感出してたんですよねー? そんな悠長に男くん待ってられるんですか?」

男「ええいっ、こっちが聞きたいぐらいだよ!! 幼馴染……幼馴染は……あっ、電話かかってきやがった」

男「幼馴染、無事か!! ふぅ……お前、コンビニの中入るんだったら先に教えてくれよ!」

幼馴染「ごめん……でも、よかった。男くん[ピーーーーーーーーーーーー]」

男(聴き取れない台詞に構っている場合かわからない。幼馴染は俺がここへ駆け付けても不安そうに辺りを窺っていたのだ)

男「結局ここまでどうしたか聞けなかったんだが、何があった? 襲われたか?」

幼馴染「襲われたとかじゃないけど……ね」

幼馴染「とりあえず一緒に家まで帰ってほしいの。巻き込む形になっちゃってごめん」

男(構うものか。大好きな美少女のピンチを颯爽と現われ、救えるのならば。ああ、ただでさえ高い好感度が振り切れてしまうかな)

男「結局打算ありありじゃねーか…… (欲望に素直な自分へある意味関心。しかし、彼女に何が起きたのだろう?)」

幼馴染「お、男くん[ピーーーー]いい?」

男「え? は?」

男(コンビニから出た俺たちは恐るおそる自宅を目指す。そんな時、不意に彼女は言い出した)

男(幼馴染の手が俺の手へぶつかる。 なるほど、だが、この状況で? 疑い半分で塞ぎ込む彼女を見ると、明らかに脅えたままだ)

幼馴染「見られてる」

男「冗談……とりあえず握ってろよ、ほら」

幼馴染「[ピーーーーー]」ギュゥゥ

男(頼りになっている感じがするぞ。ちょっとカッコイイと思われてたりするのでは? 真っ黒だな、俺)

男(握った手から伝わる幼馴染の体温はやけに低く感じた。震えはしていなかったが、かなり強張っている)

男「腹減ったな。きっと妹も空かしてる頃だよ、今日の夕飯は?」

幼馴染「えっ、ま、まだ考えてない」

男「そう、ならたまには出前でも取るか。いつもお前が食事作ってくれてるんだろ? 今日ぐらい休め」

男「ラーメンかピザか……うーん、丼ものも捨てがたいな! あと寿司!」

幼馴染「そんな物頼まなくてもあたしの家からおかず貰ってくるよ! 出前なんて勿体ない!」

男「ちょっと贅沢するぐらい別にいいだろ? たまにはって言ったじゃねーか」

幼馴染「だーめ。いくらおじさまたちがお金残していってくれたからって、無駄遣いしてたらすぐ無くなっちゃうんだよ?」

男「ケチな奥さんになるんだろうな、幼馴染さんは」

幼馴染「はぁ、男くんのこと放っておいたらあっという間に破産しそうで怖い。ふふ! やっぱりあたしがついてなきゃ」

幼馴染「……奥さん、かぁ……[ピーーー]、[ピーーーーーーーー]///」

男「えー? 聴こえなかったぞー?」

幼馴染「わ、わっ!? 別に聴こえなくていい事だったから!!///」

男(少しづつだが、幼馴染の緊張を解せているようだな。この調子で何事もなく帰宅できれば助かるが)

幼馴染「男くんの手は温かくて気持ちいいね。あたし、大好きだなぁ」

男「親からは仕事できそうにない怠け者の手だと酷評を食らった手なんだが」

幼馴染「あっ、その通りかもしれない!」

男(幼馴染はダメ男を好む傾向があるのかもしれない。しかし、そんな彼女が、おそらく珍しいのだろう、俺を頼ってきた)

男(先ほど「見られてる」と小声で言われた。そりゃあ美少女は誰にでも見られるだろう。誰にでも、つまり全員が憧れの眼差しで見ているとも限らない)

男(いや、それが度を超えてしまったのかもしれない。とにかく彼女の脅えようから周りの人間が全て不審に思えてきた)

男(ストーカー。俺の思い過ごしで済めばいいが……今日の昼休み時の幼馴染が気になる。あれは俺へこの事を相談しようとしていたのではないか?)

男(以前から後をつけられていた可能性がある。数分前の彼女の調子から見ても、今日初めてという感じはしなかった気が)

幼馴染「……ありがとう、男くん。男くんがいてくれてすごく助かってるよ」

男「気にするなって。いつも面倒掛けさせてるお詫びみたいなもんさ」

男「それより俺と手繋いでるところ誰かに見られたりしたらどうするんだ? 平気かよ?」

幼馴染「うん……///」

男(幼馴染の手がより強く俺の手を握ってきたのである。もうこれ恋人以上の感覚なのだが、どうしよう)

幼馴染「あたしは別に、いいよ。[ピーーーーー]……男くんが困りさえしなかったら――――――っ!?」

男「え!?」

男「おい、急にどうした!?」

男(手が離れたと思えば、突然彼女が抱きつく。人目は無くなってきたとはいえ、こんな住宅街の真っ只中でとは随分大胆な行動である)

男「ふ、震えてる……落ち着けよ、もうすぐ家に着くから」

幼馴染「聞こえなかった?」

男「ああ、何が?」

幼馴染「シャッター切る音。たぶんデジカメの……こ、こわい。さっきも、ううん、この前も一人でいた時鳴ったの」

男「それで耐え切れなくなって俺を呼んだのか。大丈夫、近くに人はいない。行こうぜ?」

幼馴染「……」

男(シャッター音なんて鳴ったのか、幼馴染の言葉に集中していたせいか全く気付けなかったが。この怖がり方はさすがに演技とは思えん)

男(ストーカーの被害を演じて俺の気を引こうとしたのかと疑いが少なくもあった。だが、申し訳ない事に俺の考えすぎらしい)

男(辺りに俺たち以外の人影は確かにない。まさか天使ちゃん? いや、本気で今回の件については知らないように見えた。幼馴染の不安が幻聴を呼び起こしたとか?)

妹「あれ? 二人揃って帰って来るなんて久しぶりじゃん。て、ていうか! 幼馴染ちゃんお兄ちゃんに引っ付きすぎ!」

男「悪い、今だけは許してやってくれよ。ちょっと怖い思いしたみたいなんだ」

妹「えっ……ユーレイ?」

男「おい、なぜお前まで俺に引っ付く?」

男「それじゃあ少し前から誰かにつけられてる気はしてたわけか」

幼馴染「うん……前に先生とあたしが話してたの見たでしょ? あの時ちょっと相談に乗ってもらってて」

男(夕食を簡単に済ませた俺たちは、妹をリビングへ置いて部屋に移った。あいつへ聞かせてやる話でもないわけだし、これ以上心配を掛けさせたくないと幼馴染も言う)

男(やはりストーカー被害に遭っているようで間違いないらしい。それも以前から。美少女を追いかけ回したくなる気持ちはわからんでもないが、わざわざ俺の美少女を狙うとは万死に値する)

男「といっても俺に制裁できる力も糞もないけれど……まぁ、許し難いわ!」

男「一応警察とかに届け出た方がいいんじゃないか?」

幼馴染「まだ実害があったわけじゃないし、あたしの気のせいかもしれないし」

男「気のせいで片づけて、この次に何か起これば手遅れになるだろ。自分のことだからって軽率に考えるなよ?」

男「なぁ、俺はこれでもかなり心配してるぞ、幼馴染。またいつでも俺を呼んでくれて構わん。頼むから放っておこうとするな」

幼馴染「心配してくれてるの?」

男「当たり前だろ? だって俺は」

幼馴染「お、おれは…… なに?///」

男「お前の幼馴染なんだからな! (こんな時でも抜かりはない。幼馴染は落胆、許せ)」

幼馴染「別にすぐ隣なんだから送ってくれなくても大丈夫なのに」

男「いいんだよ、ちょっと用もあるから」

幼馴染「用? わかった。今日はほんとにありがとう、男くん」

幼馴染「男くんが来てくれた時すごく嬉しかったんだよ。それだけで助かった気になっちゃって」

幼馴染「やっぱりあたし……男くんが[ピーーーーーーーーーーー]、[ピーーーー]」

男「ん?」

幼馴染「お、おやすみなさい! 今日は夜更かししないで早く寝てよね、男くんいつも起きる遅いんだから!」

男「わかってるよ。なるべくお前の手間はかけさせんって。じゃあな」

幼馴染「うん、また明日」

男(家の中へ彼女が入ったのを確認し終え、俺は家の前に屈みこんでロリ美少女の召喚を早速行う)

男(別に部屋に戻ってからでもと思ったが、妹の突然な襲来を恐れたのだ。なるべく話を遮られるのは避けたい。それに、一人で楽し気に会話する兄の姿を見せたくはないではないか)

天使「これは男くんと幼馴染ちゃんが一気に急接近しちゃうかもなイベントですかね!!」

男「そういう問題じゃねーだろ。天使ちゃんが手出ししてないのはわかった。だが、こんなことありえるのか?」

天使「ありえるんじゃないですか? 男くんが望めばどうとでもなるし」

天使「それに、この世界にいる人間は人形じゃないですよ。自分で考えるし、行動もしますとも」

男「モブも例外なくそうなるのか? 美少女だけじゃなくて?」

天使「ん、もちろん。確かに男くんにとって目立った動きをする事は少ないかもしれないけど、彼らだって同じでーす」

男「……じゃあ幼馴染へ目をつけた誰かがストーキングしてもそれはおかしな話じゃない?」

天使「ん~、珍しいケースではあるけどしょうがないんじゃないですか? あの子まぁまぁ可愛いし」

天使「まぁ~? 自分と比べるとかなり劣っちゃってますけどね!」

男(彼女がいくつか知ったこっちゃだが、「かわいいは13歳まで」と豪語する。生意気なロリだ。あとで風呂に一緒に入れよう)

男「ところで、さっき幼馴染がシャッター音を聴いたと言ってたの覚えてるか。天使ちゃんはどうだったよ」

天使「カメラの音ですよね? たぶん鳴ってたかなぁー」

男「マジで?」

天使「自分は男くんしか見てませんから他の人とか物に興味ないし、音もしっかり聴き取れちゃいないですけどね」

男「俺以外アウトオブ眼中か。受け取り方によっちゃ嬉しい限りだな!」

男「……ってことであまり期待しちゃいないが、後ろに誰かいたかもしれないというのは? 見たか?」

天使「興味ないもんに一々目が行くんですか、人間って? 見てるわけねーですよ」

男(幼馴染と天使ちゃんはカメラの音を確かに聴いた。そういえば、撮影されたのは一回ではないかもしれないと幼馴染が話していたな)

男(多くはないが、何度か自分の近くでシャッターの音がしたらしい。それから不自然に感じるようになり、背後の何者かの視線へ気づいたそうな)

男(犯人は幼馴染を盗撮しているのだろう、益々許し難い。それほど気に入ったか、渡すものか)

男「ん?」

天使「はえ?」

男「なぁ、もし自分の好きな子を写真に撮っていたとして、その子がどこぞの野郎と歩いてるとこを普通撮りたがるか?」

天使「いや、自分にそんなこと聞かれたって困ります! 知りませんよ変態の考えなんて!」

男「変態か……プチ寝取られ趣味の持ち主? いや、寝取るもなにも始まってすらいない。相手はどんな変態だ?」

天使「変態VS変態!! 誰が喜ぶんでしょーね、悪夢の対決です」

男「俺は変態じゃないんだが? 天使ちゃん、もし俺が犯人の立場だとしたらさすがに今日の場面を保存したくないと思うワケよ」

男「屈辱じゃん。わけのわからん男と憧れのあの子が手繋いで歩いてるとこ見せられるなんて! 考えるだけで腹立つわッ!」

天使「当事者意識持ってそれ言ってるんですよね?」

男「ああ、だから犯人ざまぁみろって感じだな。全く、俺には不思議で仕方ない……早いとこ幼馴染から手を引っ込めてもらいたい」

天使「だったら男くんがさっさとあの子と付き合っちゃえばいいじゃないですか! そしたらソイツも諦めるかもですよ!」

男「仮に付き合ったとしても、どうせ付き合う以前まで時間を巻き戻すことになるだろ? そしたら意味がないさ」

男(どこのどなたか存じないが、俺の美少女たちを困らせる者は障害である。かならず正体を暴き、社会的に始末しなくては)

男(充実しているな、俺。やる事が多くて毎日暇しそうにない。美少女ハーレム計画実現はいつになることやら、だ)

男「さてと、天使ちゃん。外にいて体冷えただろう? お兄さんとお風呂に入ろうか」

天使「このへんたい!! ドスケベ!!」

男「おやおや、転校生の受け売り文句か。別にいいだろ、もう知らない仲じゃあるまいし」

天使「今日対面したばっかりでしょ! 男くんみたいな変態といっしょにだなんて死んでもお断りですっ!」

天使「どう育てられたら男くんみたいなのになるんですか。悪い物ばっかり食べてきたんじゃないですか」

男「俺を歪めたのは他ならぬ俺自身だ。親は悪く言うな、心に刺さる!!」

男(さすがに時間も時間だ、冗談ではなく冷えてきた。家に帰って大人しく一人で湯船に浸かったさ。残念ながら、天使ちゃんと呼んでも姿を現す事はなかった)

男(天使ちゃんのスカートの下には何が待っているだろう、どうしたら見られるだろう、必死に悩んでみたものの胸が躍るばかり。いい加減上がらないと逆上せてしまう)

男「ああ、いかん……マジで長く浸かりすぎた……あっ」

妹「ちょっ……///」

男(風呂場へ出ると、狙い澄ましたタイミングで妹登場。どうやら乾燥させた洗濯物を取り出していた模様。俺の体を見るや否や、上から下へかけ真っ赤になっていく)

男「一応言っておきたいが、これはどう考えても俺は悪くない! 勝手に入ったのはお前の方だから!」

妹「いいから早く前隠してよぉぉぉ~~~!?///」

男(隠しきれるものか、結構大きいんだぞ。主観的にはだが)

妹「ん、お水」

男「サンキュー……おい何だよ、まだ素っ気ないな。俺はさっきのもう気にしてないぞ」

妹「お兄ちゃんが良くても私は良くないもん! 妹になんつーもん見せてくれたのさ!」

妹「確かに声かけないで入った私も悪かったけど、だからってフツー女の子目の前にして裸で、しかも堂々立ったままでいる!? ありえないよっ///」

男「機嫌直してくれよ。俺も動揺してたんだってば」

妹「むー……今度たまごプリン買ってくれたらね。ダメなら前話した割れチョコ」

男「わかった。明日スーパーで帰りに買ってくるよ、たべっこどうぶつ」

妹「遠回しに子ども扱いしてくんなっ!!」

男(美少女の妹とはいえ、こうして二人仲良くできるのは新鮮に感じられる。いつもはここに幼馴染が加わって、賑わせているのだろうか)

妹「ほんとお兄ちゃんって私のこと舐めてるよね。 妹だからって下に見てさー」

男(頬を可愛らしく膨らませ、ぶーぶーと文句をつけてくる。頭を撫でて落ち着かせてやれば喜ぶだろうか、なんて微笑ましく観察いれば)

妹「あ、そういえば覚えてる? 昔一日だけ兄妹入れ替えたの」

男「入れ替えって、俺が弟でお前がお姉さんか?」

妹「そうそう! でも途中で二人とも飽きたからやめちゃったんだよねぇ、2時間ぐらいで」

妹「[ピーーーーーーーーー]……ねぇねぇ、やっぱりお菓子いいからさ。もう一度だけやらない? 兄妹チェンジ」

次スレ急ぐ必要なさそうだし、もう少ししたら立てます。また明日

今日少し続き書いてから立てようと思ってたけど、さっさとやっちゃった方がよろしい?
まだスレタイなーんにも考えとらん!

男「どうせ今度は1時間で飽きのが既に見えてる」

妹「いいじゃん面白そうでしょ? たまにはお兄ちゃんにも私の苦労知ってもらわないと」

男(別の意図があるのではと始めに疑うのは悪い癖だろうか。いや、きっとあるのだろう)

男(妹としての自分に限界を感じた彼女は、煩わしく思ったその属性を捨てることで俺へ新しい自分で挑もうとしている。マンネリ化を防ごうとしているとも考えられる)

男「幼馴染に憧れたか? いくらお前がお姉さんになってもああはなれんぞ」

妹「そこで幼馴染ちゃんの名前出すのは違うから!」

妹「とにかく、ちょっとぐらい可愛い妹のワガママ聞いてもいいじゃんか~。ねぇ、お兄ちゃ~んっ」

男(お前は俺を「お兄ちゃん」と呼んでいる方が合っているぞ。だが、本人はいつまで経っても諦める様子はない)

男(ソファに腰掛けた俺の膝へ頭を乗せて、彼女はねだり続けたのだ。さっそくお姉さんとは思えない甘えっぷりにニヤニヤが止まらん)

男「いいよ。だけど寝るまでの間だけだからな、明日からは元通りの兄妹だ」

妹「一日も付き合ってくれないの!? ケチぃー……まっ、私がその気にさせちゃうけどね」

妹「これで[ピーーーーーーーーーーーーー]、お兄ちゃんなんか[ピーーーーーー]」

男「え? 何か言ったか?」

妹「兄妹ちぇーんじっ!!」

男(膝の上から頭を浮かせると、立ち上がって俺を自信満々で見下ろす妹。可愛い妹のためだ、付き合うさ)

妹「お姉さまとお呼び、弟!!」

男「そういうのがしたかったのかお前? じゃあアネキ」

妹「えぇーなんか可愛くないよー……設定は両親を早くに亡くした姉弟。姉は弟を育てるため、若くして毎日汗水垂らして働く苦労人」

男「どうでもいいがお姉ちゃん、俺は具体的に何をしたらいい?」

妹「あっ、結局呼び方普通になる。なにって何?」

男「ほら、弟をコキ使ってみるとか、姉の権限を乱用してコンビニにパシらせるとか」

男「……いつもと変わらないな」

妹「そんなに酷いことさせた覚えないもーんっ!!」

妹「ぐ、具体的にとか急に訊かれても困るし。私まだお姉ちゃん経験二時間とちょっとだよ?」

男「なるほど。こりゃあすぐに飽きるのも仕方ない話だわな」

男(必死にあーでもないこーでもないと頭を悩ます妹が実に微笑ましい。姉にはなれなくとも、最高の妹ではないか)

男(横になってテレビのチャンネルを回して待っていてやれば、俺へ背中をくっ付ける妹。そんな彼女の手が頭の上へとん、と置かれた)

妹「ふん……///」

男(不慣れな手つきでそのまま撫で始めたのである。「これは何だ?」と尋ねれば、口をへの字に結んで照れを隠す。おや、目が泳いでますよ)

妹「す、好きに甘えてくれば……?///」

男「甘える? どうしてお前なんかに俺が」

妹「私いまお姉ちゃんだもん! お兄ちゃんより上なの!」

妹「だから……仕方なくだよ? お姉ちゃんに甘えたらいいじゃん……」

妹「うわわわっ、[ピッ]、[ピーーーーーーーーーガーーーーーーーーーーーーーーーーーー]!?///」

男「はぁー? 始めからそうして貰いたいなら素直に頼めば良かったのに」

妹「きょきょきょ、今日だけの特別なんだからっ!! 明日からは私にそんな事しちゃダメだよっ!!」

妹「[ピーーーーーーーー]。別に、嫌ならしなくたっていいけどさ……」

男(今度は口を尖らせ、チラチラと俺を様子を伺っているお姉ちゃん妹。口ではそう言っているが、どうしてもといった感じが伝わってくる)

男(適当に甘えたところでマズい展開になるとは考えられな……くもない。慎重にならざるを得ないのだ。予想外が起きて後から面倒になればどうする?)

男(とはいうものの、妹の勇気を無碍にしては男としても、兄としても情けなさすぎるだろうが)

男「じゃあせっかくだし、お姉ちゃんに膝枕でもしてもらおうかね?」

妹「膝枕! し、しょうがないなもぉー! ほんとにお兄ちゃ……弟は甘えん坊なんだからー!」

妹「早く頭乗っけなよ。お姉ちゃんの太ももに頭置けるのを光栄に思え!」

男「ふむ、ならお言葉に甘えて……あぁ~」

妹「えへへっ、[ピーーーーーーーーーーーーー]///」

男(先ほどの俺と妹のしたことが逆転してしまったわけだ。兄と妹という立場も同じく)

男(すぐ目の前に妹の顔がある。少し照れ気味ではあるが、満足気に俺を見て笑っている)

男(近くだと益々美少女な妹、これが俺の実兄妹とは思えん。似てなさすぎるし、腹違いの子では? もう、ありがとう神さま)

妹「あっ、ちょっと横向いて? うわ……私の方にじゃなくて反対っ!!///」

男「どっち向こうが関係ないだろうが」

妹「恥ずかしいじゃん。あーあ、やっぱり予想通りだよ。耳の中すごい溜まってる」

男「……へぇ? じゃあ耳掃除したいから、もう頭どけるよ」

妹「わ、私がしてあげてもいいけど? せっかく膝枕してあげてるんだしね……[ピーーーーーーー]」

男(やはり最初からそれを狙っていたか、妹よ。準備が大変よろしい事に耳掻きもすぐ脇へスタンバってらっしゃる)

男(ここは大人しくされてやろう。むしろ、この機会は願っても無いチャンスである)

男(美少女に膝枕をされ、おまけに耳掻き。近々幼馴染からとばかり考えていたが、まさか妹が相手になるとは。妹は既に腕まくりまでしてやる気を見せる)

妹「人の耳掃除するの初めてだけど、たぶん大丈夫だよ! 任せて!」

男「優しくね、やさしく」

妹「動いたらズボッて刺さるかもしれないから黙ってじっとね? 鼓膜破るかもしんない」

男「くれぐれも優しくな……っ!!」

男(転校生の暴力に耐えられる頑丈になった俺とはいえ、内部破壊は苦しい。そういう問題ではないか)

妹「じゃあ入れるからね。本当に動かないで」

男「なぁ、その手の震え取れてからにしないか?」

妹「気にしないで、平気だから」

男「怖いこわいこわいっっっ!?」

妹「静かに!! ……できるだけ優しくやるから。ほら、横なって」

男(観念、いや、腹を括ろう。美少女のためだろうが、耳の一つや二つがどうした。こうした触れ合いもハーレム達成にとって重要になるかもしれないだろう?)

男(阿呆か。耳掻きで何がハーレムだ、ちょっと疲れてるのか俺。落ち着け、美少女の耳掻きだぞ。現実ならば、制限時間付きで高い金をふんだくられる行為である)

男(そう考えれば実にお得で素晴らしいサービス……あっ、入って、あっあっ、入ってきた、耳掻きが、あっ)

妹「っしょ……んと……えへへ、気持ちいいでしょ?」

男「脳味噌くちゅくちゅされてる気分かな」

男(正直な感想、本当に妹は優しく耳掻きを扱ってくれているのか、太ももの柔らかさも相まって心地良い、あっ)

男「少し眠くなってきた……やっぱり気持ちいいわ、これ……」

妹「目閉じても大丈夫だよ。あ、でもそれで寝られたら反対側掃除できないじゃん」

男(このまま眠れた最高ではないか。それとなく太ももを手で撫でようとしたら、耳内に激痛が走る。お触り厳禁とは聞いていないのに)

妹「うわっ、でっかいの取れたー! 見たい? ちょっと引くぐらいかも」

男「誰がそんなもの喜んで見たいと思った。記念にくれてやる」

妹「バカじゃないの? ……バカじゃないの」

男「二段階に分けてまで扱き下ろす意味がわからん」

男「耳糞も引かれ、本人も引かれ、散々だな。それよりお姉ちゃん役はもう飽きた頃じゃないか? 丁度30分経ってるぜ」

妹「も、もう少し続けてもいいでしょ? 耳掃除だって中途半端だし、それに寝るまでって約束だよ!?」

男「別にやめるなんて一言も言ってないだろ。なんだ、こんな事やって楽しめてるのかお前?」

妹「楽しいとかじゃなくて……[ピーーーーーーーーーー]……」

男「んー?」

妹「な、何でもないっ! これで全部取れたかな。フワフワで綺麗にするよ?」

男「それ正式名称は梵天っていうんだ、おほぉ~、き、きもひいぃぃ……」

妹「一々変な声あげるなバカお兄ちゃん! 気持ち悪いっ!」

男(お兄ちゃんに戻っているぞ、と茶化してやれば耳から引き抜いた梵天を鼻へつけられそうになる。自分の中から出たものとはいえ、おぞましいな)

妹「じゃあ次反対もやるから……ぎゃ、逆の方向いてよ///」

男「ん? 自分の方向かれるの嫌がってたじゃないか。俺が向き変えて横になれば、別に」

妹「い、一々そうするの面倒でしょ! いいから早く!」

男(やれやれ、なんて滅相もない。お望み通りそうさせて貰うさ、俺もそいつを望んでいた)

男(今度は妹のお腹を見る体勢になるわけだが、なるほど、嫌がる気持ちもわかる。悪戯に腹をくすぐってやると、肘が落ちてきた)

妹「殴るよ!?」

男「殴ったあとじゃねーか!?」

妹「もう、じっとしてて! 次おかしな事やったら本当に耳掻き刺すからね!」

男「はい、善処しますよ。あひっ、また入ってきた……はえぇ~……」

妹「やっぱりお姉ちゃんの耳掻き上手でしょ。おに、弟ってばすっごいだらしない顔しちゃってるよー?」

男「仕方ないだろう、マジで……ひああぁぁぁ~ん……」

妹「なにその声、変なの。ねぇ、私お姉ちゃんらしいことできてるのかな?」

男「まぁ、正直こんなことお姉ちゃんにならなくとも十分可能な範囲なんだが」

妹「だ、だよね~あはは……[ピーーーーーーーー]」

男(思っていた感じと違った、とでも思っているのだろう。突然こうなったとはいえ、お互いどうして良いか迷うのは当然だが)

男(しかし、膝枕に耳掃除。良い切っ掛けを作れたではないか。俺も妹もハッピーである……何もアクションが起きない内はな)

男(ゆったりとしたこの時間に完全に身を任せることは無理だった。いつ妹が固定ルートへ導こうと攻撃を仕掛けて来るのか、臨戦態勢は解けないまま)

男(だが、このイベントによって妹の好感度を上げる必要がある。普段は学校でも近づかれず、家の中でも幼馴染がいる状態ばかりとなる。すると、彼女と接する機会はかならずしも多いとは言えないだろう)

男(……まぁ、妹も俺へ対して持った好感度は既にかなり高い状態なわけだが。妹以外もだ、他の美少女も俺を好きで好きで堪らないといった様子)

男(本当の意味でのハーレムは叶っていると考えていいだろう。では、俺が目指す夢とは一体どういうものか?)

男(簡単に説明すれば一夫多妻状態である。最終的に美少女たちは俺を取り合うことなく、互いが納得して全員が俺とイチャラブできるものこそ、この胸に抱いた理想)

男(その為、美少女たちの好感度を一定に保ち、かつ公平に扱う。いずれは俺自身が、いや、難聴スキルとおさらばした俺が詰めへ入らなければならないわけだ)

男(好感度を上げる。だが、やりすぎは禁物。限界を超えた愛は暴走して止まらない。ルート固定の危険回避、そして必要以上に俺を求めさせない。一人占めへ向かわせないコントロールが重要となる)

男(メモから得た情報だと、上級生組はどちらも俺へ好意を抱いていることに気付き、それでも仲良く過ごしているようだ。今日の先輩の言動から転校生についても勘付いていたみたいだな)

男(幼馴染は俺が他のキャラへ近づくことをひとまず容認済み。そうなると、順番的にはラーメン愛好会メンバーから慣らしていきたいところである)

男(残るは委員長と天使ちゃんを抜いて五人。さて、もうお分かりだろうが問題は発生してしまっている……男の娘だ)

男(彼は完全に俺を獲りに来た。避けようもなかった、ここで先手を打たれてしまうとは。彼を説得して、幼馴染同様、俺の自由を許してもらう必要がある)

男(そのためには、どう動いたものか考えものである。今日は彼へ良心の呵責を感じてもらったのを覚えているだろうか? 臨時の撃退策としては仕方がなかったとはいえ、そう何度もアレを繰り返すわけにはいかない)

男(厄介なことに今の男の娘は爆弾そのものだ。下手に解除を行って起爆させれば、俺の美少女ハーレムから彼を失いかねん)

男(こうなれば、俺は何とかして次の俺へバトンを渡す用意を済ませ、男の娘ルートへ進むのが一番と思われる)

男(いつかは彼へ発動する難聴スキルを取っ払わなければならないのだ。その時期が早まった、そう考えれば……何も……何か、声が聞こえないか……?)

妹「やっぱり寝ちゃってる……あは、こうやって黙ってればカッコいいのになぁ」

妹「おーい、耳掃除終わっちゃいましたよー? ん、全然聞こえてないんだ」

妹「[ピーーーーーーーーーー]」

男(俺は、いつから、眠りに落ちていたというのだ)

男(迂闊だった。あれだけ緊張を保ったままでいたつもりだったというに、頭の中で考えを張り巡らせていたら、気づかぬうちに)

男(妹が俺を覗きこんでいるのがわかる。おまけに頬へ手を当てて、優しく撫で回されているぞ。さらに難聴スキルが連続発動されているらしい、何も聴き取れなくなった)

男(どうする? ここでいま目を開けてしまうべきか? 遅れるほど厳しい展開が待っている予感がしてならない。いや、むしろこのまま本当に寝てしまうべきか?)

妹「寝顔かわいい。[ピーーーーーーー]……///」

男「っー!?」

男(落ち着け、先輩の時だってわけなく乗り越えられただろう。恐れるな。自分を信じて行動すれば活路は開ける)

男(ここは相手の出方を見るのだ。キスを狙ってくる可能性が僅かに考えられる、もしその動きを見せようものなら、直前で起きてやれ。きっと必死に誤魔化そうとして、惜しくもイベント終了という形で自室へ帰れるさ)

男(ビンタの一発や二発は覚悟した――――――が、俺の狙いは外れた。妹は俺の顔から耳元へ近づく……あれ、これ[ピーーーーーーーーー])

妹「お姉ちゃんになりたいとか、ほんとはどうでもよかったよ」スゥ

男「ぐうっ!? (俺の頭を愛おしそうに抱きながら、そうささやき始める妹。息が敏感な箇所へ触れるたび、ゾクゾクさせられる)」

男(何故だ、やはりこれは以前にも[ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー]。覚え[ピーーーーーーーーーーー])

妹「でも、ああでもしなきゃこんな風にお兄ちゃん乗っけられなかったんだ」

妹「わたし、いっつもお兄ちゃんに素直になれない。どうやったら[ピーーー]って気づいてもらえるかわかんないよ」

男(手へ爪を食いこませ、歯を食いしばり、刺激と送られる台詞へ耐える。まだこのタイミングではない。わざとらしく目を開けば、訊かれていたと思われるに違いない)

男(告白が済んだ後でいい。むしろ、今は避けるべきである。耐えろ、とにかく耐え抜くしかないのだ)

妹「やっぱりわたしはお兄ちゃんの妹がいい。えへへ、お兄ちゃんに大事に思われてるいまが一番いい」

妹「……ごめん、うそ。お兄ちゃんが[ピーーー]なのに、こんなの苦しいよ」

妹「ちょっぴり切なくなってくる。[ピーーー]なの、お兄ちゃんのこと昔から[ピーーー]だから///」

妹「今もその気持ちかわってないんだ。ねぇ、気づいてる? そんななわけ……ないよね」

男(滅茶苦茶気づいていますが。ここまで露骨にアピールされて気づかないのはあり得んのですが)

男(鈍感、こいつがある印象のお陰で何もかもを狂わせてしまっているのだろう。恐ろしく罪深すぎる。「実は俺全部知ってたわ」と言えた時のカタルシスは相当だろう)

妹「[ピーーーーーーーーー]。[ピーーーーーーー]してほしい、ずっと二人で[ピーーーーー]」

妹「[ピーーー]だよ、おにいちゃん……」

男(妹×美少女×デレ=破壊力)

男(もうゴールしても良いだろうか? 難聴に遮られなくとも、何の話をされているのか容易に想像できる。その想像が悪かった。俺自身が俺を誘惑し始めつつあるのだ、というより、手遅れ)

男「妹、おはよう」

男(……後悔? 今になって出てきたさ、取り返しのつかない事をしてしまったと)

男(限界だったのだ。つい出来心で、本当についやってしまった)

男(明らかに狙ったタイミングで起きだした俺、それを見て妹は何を思うか? 告白が伝わったと、明らかだろう)

男(ここから言い逃れはできそうにない。認めよう、俺の完璧な敗北である。たった一日だ、それで積み重ねてきた全て苦労が水の泡と化す)

男(構わない。彼女の心を身勝手に弄びなにがハーレムか。ここいらで潮時だろう。負けたよ、どうしようもなく負けだ)

男(……いや、試合に勝って勝負に負けたらしい。運は俺へ味方していた)

妹「すー……すー……おにい、ちゃ……ん」

男(この難聴鈍感兄にして妹というべきか、こちらからのアタックを自然に回避してしまった。よく見るが良い、俺を抱えてすやすやと寝息を立てているこの妹を)

男(偶然とは思えないレベルの寝落ちだが、ある意味感心させられる。まさか今後も俺から妹へ積極的に動けば、こうした『偶然』で避けられるのでは)

男(そうなれば今までから逆の立場へ入れ替わるわけか。いや、今はそんなことはどうでもいい。とにかく)

男「危なかった!!」

男「ドマヌケがっ、妹が予想外に寝てくれたからいいものをあと少しで全部台無しにするところだったぞ!?」

天使「ちっ!」

男「よぉ……天使ちゃん、どうやら神、いいや、運命は俺へ味方しているらしいぜ」

男「なんとしてでもハーレムを実現させろってよぉー!」

ここで止めておこう

スレタイ:男「モテる代わりに難聴で鈍感になったけど質問ある?」
内容:続き

1、男「モテる代わりに難聴で鈍感になるんですか?」
男「モテる代わりに難聴で鈍感になるんですか?」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1379798915/)

2、男「モテる代わりに鈍感で難聴になりましたが」
男「モテる代わりに鈍感で難聴になりましたが」 - SSまとめ速報
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3、男「モテる代わりに難聴で鈍感になった結果」
男「モテる代わりに難聴で鈍感になった結果」 - SSまとめ速報
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これで親切な誰かかわりに立ててもらえるか?

男「モテる代わりに難聴で鈍感になったけど質問ある?」
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ほいさ

親切な>>987ちゃんありがとうちゅっちゅ

とりあえず次回からは向こうに移りますね
ここは放置か適当に潰すか、俺のためにえっちぃ画像貼ってくれてもOKよ

そういえば合いの手って入れた方が良いんですか?
あまり無いので自粛する流れだと思ってしてなかったんですけど?

>>990
はぁどっこい!あぁよいしょ!大歓迎、でも頑張って盛り上げなくてもぼくさみしくないからへいきだよ!ありがとう!

せっかくだし何か聞きたいことがあれば、答えられる範囲で答えてみる
見返りにえっちぃ画像要求するがな

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年12月12日 (木) 18:05:48   ID: 6rmUeGJv

絵師が書いてくれた幼馴染がめちゃくちゃかわいかった!

2 :  SS好きの774さん   2014年01月24日 (金) 23:22:21   ID: QTi2cL9h

このシリーズまだ続いてたのか…
そしてここまでしかすすんでないのか…
続き読みてぇ

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