「1-Cの白坂さん」 (130)
・アイドルマスターシンデレラガールズの白坂小梅のSSです
・若干百合注意かもしれません
・書き溜め3割程度、恐らく亀更新です
・はつSSですので色々となっていないところがあるかと思いますが、よろしくおねがいします
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1385144425
1.
1年3組には、私だけのアイドルがいる。
ちっちゃくて痩せぎすで、静かで口下手で、抱きしめると壊れてしまいそうな、
そんな儚い体つきをした私の友達。
したたかな女は、自分より劣る子を友達にして引き連れ、引き立て役に使うのだ、とよく言われる。
私もそうなのかもしれない。
いや、はじめは多分、そうだったはずなんだ。
小梅と初めて話したのは、オリエンテーションの日の廊下での事だった。
慌ただしく体育館へ急ぐ新品の制服の群れを外れて、
小梅は一人、音楽室の前でぼーっと立ち止まっていた。
バスに乗り遅れてHRを欠席した私は、
内容を聞いておこうと思って彼女に声をかけた。
「あの…… 白坂さん、だよね?」
「え? うん。えっと……」
「✕✕でいいよ。何してるの?」
「”あの子”が、ここにいるよ、って」
「はぁ?」
思わず生返事をしてしまった。
私の態度の急変にびっくりしたのか、黙りこくってしまう。
「ごめん。それより、はやく行かないと怒られるよ?」
嫌な空気を払うように、小梅の左手の袖を引き、体育館へと急いだ。
あとで知ったことなのだが、昔そこは調理室だったらしい。
火災が原因で校舎が半焼し、運悪く逃げ遅れた一人の当番の生徒が亡くなったのだとか。
そのせいもあってか、今ではうちの学校は弁当持参・パンの購買になっている。
とにかく、小梅が『見える』という秘密を共有したことで、私と小梅は仲良くなった。
>>3 修正
「でいいよ。何してるの?」
→「◯◯でいいよ。何してるの?」
2.
人違いかと思った。
制服でもこだわっているダボ袖と、少し褪せた、片目を隠す金髪を見なければ、多分気づかなかっただろう。
http://i.imgur.com/2dCCkUd.jpg
胸元の開いた大きめのトレーナー。
耳を覆うような幾つものゴテゴテしたピアス。
エナメルブラックに銀の棘のついたチョーカー。
ピンクに黒い水玉と言う派手な柄のリュックに、ドクロや目玉の缶バッジ。
何から聞いていいかわからなくて、とりあえず
「寒く無いの?」
と聞く。4月の終わりはまだまだ寒い。
「袖長いから…… 暖かいよ?」
違う、そうじゃない。
くっきりとした鎖骨の浮き出た胸元だ。
もはやアバラさえもうっすら見えている気がする。エロい。じゃなくて。
そんな少し邪な考えをふくらませる私に、
小梅は不思議そうな顔で首をかしげる。
なにこれ可愛い、持って帰ってもいいかな。じゃなくて。
「結構派手な格好するんだね、小梅って」
「えと…… 変、かな」
「いやいや、似合ってるよ」
ボーイッシュな格好が似合うとは思っていたけど、
ゴシックパンクなんかもイケるのか。
化粧はしてないようだが、目の下のクマがちょうどいいアクセントになっている。
――「今度、どっかに遊びに行かない?」そう言い出したのは私だった。
クラス内で派閥ができつつある中、
私は所属しているバスケ部メンバーが中心のグループに顔を出しつつも、
基本的には休み時間は部屋の隅で小梅と食事したりキャイキャイしていた。
周囲の反応は怪訝だったが、放課後と休日はバスケ部を中心に生活が回っていたので、
私のこの行動は「気まぐれ」として何事も無く受け入れられている。
小梅はと言うと、オカルト部とやらに所属しているようで、放課後は部室へと一直線。
クラスでも少し浮いてはいたけれど、人を苛つかせるような子ではなかったし、
何より私が睨みを聞かせていたから、イジメなどはなく平和にぼっちを満喫しているようだった。
むしろ小梅には、何か不思議なオーラのようなものがあって、
そのため近寄りがたく見えているのかもしれない。
私はそれに『魅力』を感じているし、
小梅を独り占めして可愛がれる事に幸せを感じていたのだけれど。
とにかく、私は小梅を遊びに誘った。
学校内だけで仲良くしてるのはもったいないし、
もっと仲良くなりたかったから。――
立ち話を終えた私達は、近くのショッピングモールで夕方まで過ごした。
小遣いの少ない健全な中学生ができる事なんて、せいぜいがウィンドウショッピングぐらいだ。
散々服屋を冷やかし、小梅にラブリーな服を着せてみたり、
今度親にねだる服を真剣に選定したりして、ひと通り服屋を回った。
カワイイ系の服を小梅に着せる事にかけては私はいい審美眼を持っていたようだが、
恥ずかしがってあまり着てくれなかった。
まあそもそも小梅はかなりファッションセンスのある方なので、
自分で自分に似合う服はおおよそ把握していたみたいだったが。
途中で通りかかった雑貨コーナーで小梅が発見した骸骨ストラップをお揃いで買って、
最後にゲーセンでプリをとった。
身長差がありすぎたようで、
備え付けの椅子に小梅を抱え込むようにして座った状態じゃないと一緒にフレームインすることが出来ず、
あまりよい構図にならなかったのがちょっと不満だけど、まあいいか。
そんな普通のお出かけだった。
3.
3限体育、4限家庭科。
火曜日は、小梅にとって憂鬱な日らしい。
体操服に着替えたものの外に出ようとしない小梅を、
私は掬い上げるようにして抱え、グラウンドへと連れて行く。
抗議のつもりか多少ジタバタするが、無視。授業はサボっちゃ駄目だよ。
どうやら小梅は、運動が嫌というよりは日差しを浴びるのが苦手らしい。
だからこんなに不健康な肌の白さなのか…と若干羨ましく思いながらも心配なので容赦はしない。
うちの学校は中高一貫の女子校で、お嬢様学校と言うよりは若干進学校寄り。
そのため素行に関しては厳しいが、その反面服装や容姿については意外と緩い。
よほど奇抜な色でなければ髪を染めても怒られないし、制服の改造もあまりに極端な例以外は見逃されるので、
大体皆好きなようにしている。
「校則で縛り付け過ぎるから反抗するのであって、少し自由なぐらいが良い」という理事長の理念のおかげで、
一般の中学生よりいくらかのびのびとした学生生活を送っている。
理事長バンザイ。
小梅なんかはその恩恵を受けている最たる例で、
この前の買い物の時に見たピアスやチョーカーはさすがに学校にはつけてこないものの、
髪は金色だし、制服はサイズ大きめで袖を限界まで伸ばしている。
この体育の時間なんかもそうで、もうすぐ夏だっていうのに冬用の長袖シャツを着ている。
私はと言うと、正直めんどくさくてあんまり改造はしていない。
初めてあった時からそうだけれど、
普段から頑なに手を袖から手を出そうとしないので、
「もしや・・・」と嫌な想像をしていたが、
さすがに杞憂だった。自傷癖も無いし虐待のみたいだし心配もなさそうだ。
ではなぜ、と言うとよくわからないが指先を出すのが恥ずかしいらしい。
私には理解できなかったけど、まあいいか。
>>14 修正
誤:虐待のみたいだし心配もなさそうだ
正:虐待の心配もなさそうだ
気をつけます
とも言っていられないのが4限目の家庭科である。
今日は調理実習で、オムレツを作る時間だった。
学校の方針として、家庭科・理科の時間は実習系の授業が多い。
(ちなみに技術の授業は女子校なのもあって情報系の実習のみである。)
おおよそ1週に1回はどちらかの実習があるペースで、
今週はこの後水曜に理科の燃焼実験もある豪華な週だ。
話が逸れたが、これらの実習中は当然服装にも制約がかかる。
長袖で火を扱うのは危ない。
包丁などの刃物は慎重を要するので素手でないと。
調理や実験だけでなく、裁縫なんかでも小梅の袖は危険だ。
ミシンなんかに巻き込まれてしまう可能性もある。
別に、小梅が料理が出来ないわけではない。
むしろ中学生にしては上手い方なのだが、手つきが危なっかしい。
なので私はハラハラしながらちょくちょく手をだし、
クラスメートから「お母さんみたい」と過保護っぷりを笑われている。
こうやって小梅の世話をいちいち焼いているうちに、
すっかり「保護者役」「姉御肌」なイメージが定着してしまった。
確かに保護射的友人がいそう
同級生なのに何cm差ある設定なのさ……
椅子に立ってさらに座るってきらりレベルやろ
かわいいのう
>>19
抱えていっしょに座ってね?
膝上に小梅乗せてるんだとおもってた
>>18 >>19 >>20
レスありがとうございます。
小梅が142cmなので凛(165cm)位を想定するとこんなかんじかな、と。
中学生でもバスケ・バレーやってる子ならたまに170台ぐらいまでならいるので。
夜中に4.を投下しに来ます。
4.
しとしとと雨が降る時期に、小梅と2度めのお出かけをした。
5月の新入生大会も終わり、雨の多い時期になって土日に暇の増えた私は、
小梅をカラオケに誘うことに成功した。
テスト勉強のため市内の図書館で勉強をしたり,
友達の誕プレ選びに付き合って貰ったりはしたけれど、
一日一緒に入られるのは久しぶりだった。
できれば、月末の集団訓練合宿の準備も一緒にしておきたい。
もちろん、小梅が何を歌うのかも楽しみだった。
音楽の時間に合唱をさせられる時、
パートが違うおかげで私はよく小梅の歌声を聴いている。
少女期の女の子たちの有象無象のソプラノの中で、一際高くて可憐な声。
声量があまり出ていないためか皆はあまり気づいていないようだが、
教師なんかは気づいているのかもしれない。
こんなに素敵な声がそばで聞こえるのに、どうして気づかないのだろう?
とは思うけれど、私の意識のし過ぎかもしれないので黙っている。
自分のハスキーな声のせいで、
高い女の子っぽい声への憧れが強く出ているだけかもしれない。
とにもかくにも、私はその「声」を間近で、
独り占めで聴きたいと思っていたのだ。
多分小梅はあんまり歌いたがらないだろうな、
なんて予想も出来たので賭けではあったけれど、
それはそれでいい。
一緒に楽しめれば、それで。
財布の中身などを鑑みて2時間ほど歌うことに決めて入った部屋は、
何かのイベントルームだったようで、
部屋一面が不細工な生き物の(ぴにゃこら太というらしい)ポップやぬいぐるみで埋めつくされていた。
何にも曲を予約していない筐体の画面では、
今飛ぶ鳥を落とす勢いの新人アイドルが新曲の宣伝をする映像。
《渋谷凛》。
同時にデビューした同事務所の4人のアイドルと共に、
圧倒的な歌唱力と惚れ惚れするパフォーマンスで有名チャートを席巻し、
”シンデレラガールズ” との愛称を得たそのうちの1人。
中でも彼女は、
coolな性格、無愛想な印象とは裏腹のひたむきさ、
整ったスタイル、そして低めのかっこいい声で、
古株の765プロ菊地真、876プロ秋月涼などとはまた違った
”新世代” のカッコカワいいアイドルとして注目を浴び、
男性だけでなく多くの女性からも、
特にJCJKからの高い人気を誇っている。
何を隠そう、私もそのファンの一人だったりする。
彼女の魅力を余すところなく盛り込んだMVに、
私も小梅もしばらく見惚けていた。
「アイドルかぁ…… すごいね、たった2つ上なのに」
とふとこぼすと、
「◯◯ちゃんみたいで、かっこいいよね…… えへ」
だなんて、思わぬ反応が飛んできたりして、首筋と耳たぶが少し熱を帯びる。
私、似てるかな?
ううん、ぜんぜん。
でも、声質は結構近いし歌も完璧に覚えてる。
ちょっとカッコイイとこ見せちゃおうかなーなんて張り切って、
一曲目に入れてマイクを握る。
全然駄目だった。
小梅はキラキラした目で見ていてくれたけど、声は裏返るし音がゆらゆら。
意気揚々と入れた自分が恥ずかしい。
やっぱ、普通のオンナノコなんてこんなもんだよねー、
とお茶を濁しながら、
もう一度流れてきたその映像を見直す。
やっぱりスゴい。
アイドルって、遠いなーなどと耽りながら次の曲を探す。
小梅はと言うとすっかり聴く体制に入っていたので、
ハニートーストを頼んであげて、
しばらくマイクは私のもの。
流行りの曲を中心に4曲ほど立て続けに歌って一息つくと、
小梅が何やらウズウズしつつデンモクを触っている。
どうやらカラオケに来たのは初めてだったらしく、
なるほどさっきのはしゃぎようがわかるな~と思いながら
「小梅、次歌う?」とマイクを渡す。
「わかんなくなったら中断しても大丈夫だから、2曲ぐらい行ってみなよ」
というと、
少し悩んだ後で見覚えのないタイトルを2曲入れた。
やくしまるえつこ ヤミヤミ
http://www.youtube.com/watch?v=Sj--bjZvtfI
谷山浩子 夢のスープ
http://www.youtube.com/watch?v=0dhl2AMyXFs
予想以上だった。いや、予想通り、だったかもしれない。
とろけるような甘い声、耳を溶かすウィスパーボイス。
そして時折、射殺すような低音。
ちょっと涙が出てしまって、気づかれる前に慌てて拭って、
とりあえず精一杯の拍手をする。
知らない曲で良かった。
知っていたら、自分の歌った経験と比べてしまうから。
同じ声域じゃなくてよかった。
この子に、届かぬ嫉妬なんてしたくなかったから。
小梅の事を私は過剰に褒めすぎる癖があるようで、
その度小梅はいつもちょっと泣きそうな声で
「私、そ、そんなにすごくないよ……」と言って顔を逸らしてしまう。
こんなに可愛いのに。
こんなに強いのに。
謙虚なのはいいことだけど、
自信の無さが魅力を押しつぶすようにして抱え込んでしまっていて、歯がゆい。
この子に自信を持たせてあげられるなら、きっと……
本当に?私はそうしたいと思っている?
真逆だ。
きっといつか、遠くに行ってしまうんじゃないかと恐れている。
私のようにこの子の魅力に気づいて、
それでいてその魅力を余すこと無く引き出してあげられる、
そんな人との出会いが、小梅にはきっとあるのだろう。
そうやって、いつか私のもとを離れて、遠くに感じるようになって……、
ああ駄目だ、そんな事を考えたくない。
今は、楽しまないと。
嫌な思考を打ち消すように、マイクを握り、がむしゃらに歌う。
歯ブラシやタオルなど、合宿用品を揃えに行った後で、
小梅と駅前のDVDレンタル店の前で別れた。
今日歌った曲の中に好きな映画の主題歌があって、
久しぶりに見たくなったらしい。
そういえばポップコーンやら何やらも買っていたっけ。
映画、か。
「今度映画見に行く?」
「映画館、あまり得意じゃなくて…… 人、多くて、緊張する」
「そっか。じゃあ、今度DVDでも借りて一緒に見よっか。何かオススメある?」
「えと、うちに一杯オススメの映画あるから…… 夏休みとかに、一緒に、見よ?」
なんと。家にお呼ばれしてしまった。ドキドキ。
どんな映画見るんだろうな―と浮かれながら門限ギリギリなのに気づいて急いで家に帰った。
オススメ(意味深)
おもろいなー、同級生視点って新鮮
すごく面白い
かわいいのう
>>37 >>38
ありがとうございます。
まとめサイトやらこの板やらでP×アイドル物を大量に読んでたので、
P×アイドル物も書きたいとは思っています。
今回は、ふと「クラスメートがアイドルになるってどんな感覚かなー」とおもったのでこの形式です。
(初書きにはちょっと難易度が高かったみたいで必死ですが)
一応最後まで書き上げました。
が、途中でちょっと方向性などが変わってしまった気がするので、
リカバリできればしつつ、少しづつ投下していきたいと思います。
今日中には終わる予定です。
5.
…油断していた。
そういえば、こういう子だった。
霊が見えたり、パンクなコーデが得意だったり、
力強い透き通る声で歌ったり。
外見とのギャップが大きい部分に毎回驚かされているのに、
なんで気を抜いていたのか。
膝の上でニコニコしている小梅とは裏腹に、
私は叫びたくなるのを必死でこらえていた。
――「凸凹コンビは今度の海企画、参加するの?」
終業式の日、クラスでは夏休みの話題で大盛り上がりだった。
どうも、委員長の親族が海の家を経営しているらしく、
海水浴に行くなら保護者役・車だしを両親がしてくれるらしいのだ。
人数が多いと一台では足りないらしいが、
家族以外との遠出ということでワクワクしているクラスメートも多い。
「私は行くよ―。小梅、どうする?」
「◯◯ちゃんがいくなら…お母さんに、相談、してみるね」
「だって―。うちの親、車出ししてくれるかも」
私と小梅の組み合わせは、
背の大小・男勝りと引っ込み思案・声の高低など、色々な面で正反対ながら、
いつも一緒なので「凸凹コンビ」と呼ばれるようになった。
何をするにも一緒、というか、
私が小梅を引っ張っているだけなのだが。
とにかく、海へのワクワクはあったが、
それ以上に私は放課後が来るのをうずうずしながら待っていた。
家に帰って支度したら、小梅の家で夜通し映画を見るのだ。
部活メンバーからのお茶のお誘いを断り、
小梅に「後でね」と声をかけて、急ぎ帰宅した。
小梅のおばさんは、意外と柔和な人だった。
「いつも小梅と一緒に居てくれてありがとうございます」
と言われた時には、
一瞬とはいえ虐待を疑ったことがあったのを思い出して申し訳ない気持ちになった。
小梅の趣味はここに居ない父親譲りだったりするのだろうか?
そんな事をぼーっと思いながらそっと聞いてみると、
「いえ、夫と私と両方からだと思いますよ?」
ぺろっと出した舌の先は、蛇のように割れていた。
メタル系バンドのボーカルだった父親と、
か弱いお嬢様の皮を被ったゴスロリ・V系ファッションリーダーの間に生まれたのが小梅らしい。
この親にしてこの子あり、か。
なんとなく色々と納得できる。
などと和気藹々としゃべっていると、準備が整ったらしく、
小梅が部屋から出てきた。
晩御飯を頂いて、寝る準備を整えてから小梅オススメの映画を
夜更かしできるギリギリまで見る。
そういう予定だ。
おばさんは良き理解者らしく、
「目が疲れたら休憩しなさいね?」
とだけ言ってふふふ、と笑っていた。
「それで、何を見るの?」
「ひ、秘密…… 見てのお楽しみかな、えへ」
どうやら内容には自信があるようなので、何も疑わず従うことにする。
どんな映画を見るんだろう?
恋愛…はなさそうだな。
アニメ?かもしれない。
やたら旧作だったらどうしよう。
まあスティングとかニュー・シネマ・パラダイスとか好きだけど。
などと呑気な事を考えつつ、
2人とも見やすいようにと小梅を膝の上に抱え込む形で座り、
タオルケットをかけた。
冷え性なのか小梅は体温が低めで、ひんやりとして気持ちいい。
夜だし、冷房いらずだなあ。
そんな邪な事ばかり考えていたせいで、
うっかりPG-15表記を見逃してしまったのが運の尽きだった。
飛び散る血。
這いまわる異形。
スプラッター耐性がないわけではないけれど、
人並みに怖がりの私には充分だった。
心臓に悪いBGMが響くたびビクビクして、
急に画面に何かが現れるたび飛び跳ねそうになる。
一旦避難しようとそっと立ち上がろうとすると、
「まだ、途中だよ…?」
と小梅に上目づかいで言われてしまった。
くそう、そんな目で言われたら離れられないじゃない。
この子存外にSなのね……くっ。
怖がる私の様子になんだか楽しそうだ。
まんまと罠に嵌ったようで悔しいが、小梅がカワイイからまあいいか。
エンドロール。
やっと一本目が終わった。
そう、まだ一本目だ。
夜はまだまだ浅い。
一体あと何時間耐えなければいけないのか……
近所迷惑にならないように、叫ばないようにだけ気を付けなきゃな、
と思いながら、TVの前にまた座り直す。
膝の上の小梅を、今度はぎゅっと抱きしめた。
かわいらしいのう
涼さんやキャプテン的な子なんだろうな。いう
>>51
そうですね、主人公(小梅のクラスメート)はアイドルにはなりませんが、
敢えて属性分けするなら(運動能力的に)Pa寄りのCoでしょう。
クラリス・舞・ありすなど同じ兵庫出身の子を絡ませたかったのですが上手く書けなかったので
出身などを無視して引っ張って来た子が出ちゃったりするかも知れませんが、
パラレルということでお許し下さい。
基本は小梅ちゃんのSSなので賑やかし程度です。
6.
結局,
あの後ぶっ続けで3本ほどホラー・スプラッターをみた結果、
私はすっかり精根尽き果ててしまったようでパタリと倒れて昼まで起きなかった。
小梅も満足したのか私の腕の中でぐっすり。
12時を回った頃、おばさんが
「2人ともお寝坊さんなんだからー」と言いながら起こしにきてくれた。
お昼ご飯まで頂いて、また来てね、
と言われたので満面の笑みを返し、お礼を述べる。
…でも今度は、できれば映画以外でだといいな。
寄り添って寝ている様子をおばさんが写メっていたようで、
姉妹みたいね、とからかわれた。
写真を貰ったので待ち受けにしてみる。
寝ている小梅もカワイイな。
寝起きが弱いらしくぼーっとしていた小梅の様子を
じっくり観察しながらも帰り支度をする。
今度はウチに呼びたいなあ。それならホラー映画も回避できるし。
DVDを返すついでということで、駅まで一緒に行く。
小梅は今晩もまたアレの続きを見るらしい。
「今度はアニメとかファンタジーとか見ない?」
というと、ちょっと不満そう。
まあ次は私の家の予定だから、
もっと学校の話とかそういうのを楽しもうね。
そういえば海に行くんだということをすっかり忘れていた。
「水着、一緒に選びにいこっか」
と約束をしておく。
中学生だから派手なのはアウトだろうけど、スク水は味気ないからな。
いやいや、小梅ならスク水のほうが需要ありそう?
なんて考えているうちに駅につく。
挨拶を交わして、私は構内へ。小梅はレンタルショップへ足を向けた。
【断章】
『あの、そこのキミ!』
『わ、私……?』
『そうそう、キミだよ。映画が好きなのかな?』
『えっと、その……』
『ああごめん、いきなり話しかけちゃびっくりするよね。
俺はこういう者で、そこの事務所で……』
次の日、残念なお知らせメールが小梅から届いた。
「ごめんなさい、用事ができちゃって…… 海、いけなくなっちゃった」
それ以来、何かと機会が取れず、
結局夏休み中に小梅と一度も会えなかった。
7.
新学期、久しぶりに小梅に会えるというのに、私の心は少し鬱々していた。
もしかして、嫌われるようなことでもしたかな?
さすがにそれは杞憂だったようで、小梅はいつもどおりだった。
久しぶりの再会を2人で喜んでいると、
何やらクラス中がにやにやしている。
「な、なんだよ……!?」
「いやさ、◯◯が夏休み中ずっとウチらといっしょだったから逆に心配になっちゃって」
「ねー。それでいて時々上の空なんだもん」
「そう……なの?」
「いやまあなんというか、小梅忙しかったみたいだし」
たのむから小首をかしげるのはやめて、小梅。
その攻撃は私に効く。
「喧嘩別れでもしたんなら、私がもらっちゃおっかなーなんて」
「私達、だろ」
「あんたらにはうちの小梅はやらん!!」
キャイキャイ言っているクラスメートを牽制しておく。
どうやら皆、少しずつ小梅の魅力に気づきはじめたらしい。
まずいな。いや良いことか。
いざ二学期が始まってからも、小梅は〈用事〉とやらで忙しいみたいで、
授業が終わるとすぐに教室を出るようになり、
遊ぶ機会がなかなか取れなかった。
彼氏でも出来たか、
と邪推したが女子校通いの中学生に出会いなどホイホイ転がっているわけがない。
希少な彼氏持ちだって大半は小学校の~とか幼なじみで~とか言ったクローズドな関係で、
中1でふしだらな出会いをしている子なんてうちの学校には存在しなかった。
本当に邪推でしかなかった。
休み時間にいちゃいちゃしている間にでも聞けばいい話なのだろうが、
なかなか言い出せないでいる。
多分聞けばすぐに教えてくれるのだろう。
でも、何かもやもやがあって聞けない。
知ってもいいのだろうか?
映画鑑賞の時に気づいたことなのだが、
小梅は『サプライズ』『とっておき』が好きなようだ。
思えば最初のお出かけの時だって、
想定外だった小梅のパンクファッションに対する反応に、
満足気に笑っていたではないか。
その『驚かすのが好き』と言う部分はホラー好きから来ているようにも思えるし、
Sっ気があるのもその派生なのかもしれない。
単に恥ずかしがりだから過程を見られたがらない、というのもあるだろう。
なら、小梅が教えてくれるまで待とうかな。
…こうやって無理やり納得しているから、モヤモヤが残っているのだ。
結局、私は小梅の何を知っているのだろうか?
家にも言った仲だし、
休み時間はいつも話しているし、
クラスの中では一番小梅と一緒にいる。
担任なんかよりもよっぽど多くの事を知っているだろう。
でもそれは、『私と一緒にいる小梅』だ。私の主観でしかない。
他に友達はいるの?
私みたいなのと居て、楽しいの?
クラス以外では、どうやって過ごしているの?
クラス以外、か。
一つだけ思い当たるところがあって、
私は適当な理由をこじつけて部活を休む事を友達に伝え、
理科準備室へと向かった。
8.
中学校の部活と言うのは、何故か義務になっている学校が大半だ。
〈帰宅部〉なんてのは主に高校で部活が任意になった結果、
塾通いだったりクラブチームだったり図書館の虫だったりコミュ力が低かったりした人間の総称なのだ、
とまで言うと言い過ぎだが。
うちの学校も同様で、中等部の間は最低1つの部活への所属が義務となっている。
これも理事長の「文武両道、勉学の他に打ち込めるものを持つべし」との崇高な理念の結晶だ。
などと一見厳しいように見えるけれど、
この方針にはひとつ大きな抜け穴がある。
運動部はテニス・バスケ・バレー・陸上などメジャーどころが揃い、
県下有数の強豪校として名高い部もちらほらある。
が、文化部はと言うと。
もちろん美術部・茶道部・放送部・吹奏楽部などは完備されているものの、
それらのテンプレ部以外に目を向けると…
・宗教部。
と言っても別段宗教的な所作を業々しく行うことはなく、
ハロウィン/正月/クリスマスなど、
宗教のエッセンスが残るイベントの時期に校内の飾り付けやら何やらで盛りたてる事を楽しむ集まり。
・テーブルゲーム部。
いわゆる非電源ゲームを遊び倒す部活。
顧問が蒐集熱心で、東西南北から様々なゲームを取り揃えており、
部員が地味に多い。
・FSS部。
"E"ではなく"F"で、〈腐〉のFだとか。
とにかくそんな趣味の人間の集まり。
といったように、生徒のしたい事を実現できるよう、新部の創設が容易となっており、
とりあえず部室と顧問が確保できて、
放課後に集まって何かしら活動して入ればいい、と言うなんとも緩い規則なのである。
小梅の所属しているオカルト部もその一端である。部長は確か…
星さん、といったか。
オリエンテーションでは部名の紹介だけだったし、実際はあったことはないが。
とにかく、オカルト部の人々ならば、小梅の事をもっと知っているかもしれない。
〈用事〉というのがオカルト部関連かもしれないし。
などと思案しつつ、理科準備室の扉の前に立つ。
ノックをしても反応がないので今日は休みか、と思ったが鍵はかかってない。
一応「失礼します」とだけ述べて中に入る。
おかしい。人の気配はするのに、
誰も居ないように見える。
準備室と言うのは器具倉庫兼教員室なので、デスクが4つ中心に有り、
壁は一面棚になっていて高そうな器具がずらっと並んでいる。
まさか”あの子”とやらの気配?
なんて変な勘ぐりに発展してしまって、
ちょっと怖くなったのでもう一度声をだすことにする。
"あの子"は音楽室のはず、だから大丈夫。
「失礼します。中等部一年の◯◯ともうしますが、
オカルト部の部長さんはいらっしゃいませんか」
ガタッと何かがぶつかる音がして、机の上の積まれた教材が一部崩れる。
身構え、周囲を見渡すも、特に変化はない…おや?
「あ、あの…ココに居ますけどー…」
「あうぅ…」
その2つの声は、机の下から聞こえて来た。
片方の声の主は、どうやら部長さんのようだった。
星輝子さん。3年生で、美術科選択だとか。
キノコの鉢をもって現れたけど気にしないほうがいいだろう。
何か親近感を感じるなーと思ったら、
恐らく小梅と同じぐらいの身長だ。
撫でやすい位置で揺れる癖毛を弄りたくてしょうがなかったが、
先輩に対して無礼だしグッと我慢する。
「小梅…、いや、白坂さんは今日は居ないんですか?」
「うめちゃんは…今日はレッスンだから休み…フヒッ」
レッスン?何か習い事をしているのだろうか。
脳裏に引っかかるものがあったが、
それよりも、
「うめちゃんって呼ばれてるのか」
ということの方が印象に残り、疑念は紛れて消えていった。
もう一人は奥側の机の下に隠れたままのようだ。
よく見れば机の手前に最近流行りの少女漫画が積んである。
出てこないのかな、と思ったが、
冷静に考えれば、
運動部の大女が静かな部室に急に現れたのである。
ビビってしまってもしょうがない。
安寧の時間を邪魔してしまって申し訳なかったな、
と反省し、軽く謝罪をして帰る事にする。
輝子さんに退室を告げると、
「梅ちゃんの友達なら・・・私のトモダチにもぜひ・・・」
といって、
お近づきの印にと、どこからかエリンギのようなものを持ってきて差し出して来た。
カワイイ子(先輩に対してry)と仲良くできるなら是非もない、
ということで、
それを受け取って(夕飯の鍋にそっと混ぜとこうかな)、
私は理科準備室を後にした。
なんて逸材揃いの部活なんだ……!
9.
次の日の昼。
小梅との昼食の最中に、詳細は伏せつつも
「星先輩と仲良くなったよ」とだけ伝えてみる。
「しょーちゃんは、ああみえて、えっと・・・カッコイイ?よ・・・
◯◯ちゃんとは、ちょっと、違った方向、だけど」
「かっこいい? 小梅みたいで可愛かったけどなー」
「えと、私、そんなに可愛くないよ・・・うぅ」
カッコイイとは、果たして。
星先輩も小梅と同じように"ギャップのある"キャラなんだろうか。
類は友を呼ぶ、というやつだろうか?
「うめちゃんって呼ばれてるんだね。昔から知り合いだった?」
「えっと、しょーちゃんは同じ事務所だし、気が、す、すごく合うから・・・」
別に嫉妬しているわけじゃないけど、
タメ口なのは気心がしれているからなのか、とつまらない事を気にしてしまう。
同時に、〈事務所〉というワードがまた何か引っかかった。
わかりそうで何もわからない。
喉元で止まっているかのように、消化不良。
モヤモヤが増える一方なのに困惑して、とうとう口をついて出てしまった。
「そういえば、用事って何をやってるの?」
……
しばらく、沈黙が流れる。
思案顔の小梅がそっと口を開く。
「…う、うーんと、まだ、秘密、かな」
秘密。
そう言われてしまうと、私にはどうしようもない。
やっぱり、知っていいことではなかったのかな……。
「まだ、ね。えっと、も、もうすぐ、教えられるから、えへっ」
不安が顔に出ていたのか、フォローを入れてくれる。
まだ、か。気落ちした心が少し回復する。
きっとまたサプライズなのだ。心配することはない。
この前みたいなこともあるし、ちょっと心の準備だけしとこうかな。
だけど、何かが心に引っかかっったままで、
言いようの知れぬ不安が鎮座して消えず、
微妙な距離感のまま、9月が過ぎていった。
>>78
類友、ってやつです。
森久某さんの方は描写できる自信がなかったので名前出さないでおきました…申し訳ない。
10.
結局あれから大した進展はなかったが、
10月3週に県公式の一年生大会が控えていたため、
私は不安を振り払うように部活に打ち込んだ。
結果は総合5位。
表彰台には上がれなかったものの、去年のベスト16からは大躍進だった。
顧問から「鬼神の如き活躍だった」と言われ、複雑な気分になる。
活躍出来たことは嬉しいんだけど。
打ち上げと称して、そのまま顧問のおごりで焼き肉食べ放題へ直行する。
土日の大会で閉会式が正午だったためか、
食事の後も時間に余裕ができ、
余力のあるメンバーでカラオケに行くことになった。
カラオケ、か。久しぶりだな。
6月ぶりかも。
ちょうどいいので、一番手でマイクを握り、
あの曲のリベンジをしておく。
結果はやはり駄目だった。
部の皆は口々に褒めてくれるし、前回と違ってミスも殆ど無い。
でも、やっぱりMVで歌う本人と比べると。
ああ、渋谷凛には到底・・・
冷や汗が、流れる。
ああ、もしかして。
気づいて、しまった。
きっと、勘違いではないのだろう。
脳内でつながっていく一連のワード。
〈レッスン〉、〈事務所〉、そして――
私の推測は、直後に来たメールを見て、確信に変わった。
『プロデューサーから、招待状を送って貰ったから、土曜日の晩のハロウィンパーティー、きて、ね?』
11.
10月4週。
小梅は、学校に来ていなかった。
公欠ということらしい。
クラスメートからの問いには「知らない」と答えておいたが、
直接聞きはせずとも私には理由が分かっていた。
招待状には、《halloween party》の文字と、
見覚えのある事務所名、そして、
この近辺ではそこそこ大きなイベント会場の名が地図とともに記されていた。
土曜日の晩。
母に頼み込んで夜間の外出許可をとり、
招待状を持って家をでる。
この手のイベントは危ないから…と今まで行ったことがなかったが、
本来ならワクワクして浮足立つものだろう。
わかっている、頭では。
けれど、そうは振る舞えなかった。
会場について受付に招待状を見せる。
待機列とは別の場所で待たされ、
ペンライトなどいくつかのグッズを手渡されて、
わざわざ席まで誘導してもらった。
どうやら関係者・親族扱いのようだ。
首からタグも下げさせられる。
チラチラと周囲を伺うと、小梅のおばさんとも目があい、会釈を交わす。
やがて照明が落ちて・・・
ライブが、始まった。
大きい会場に思えるがどうやら扱いとしては"プチ"ライブ、らしく、
プログラムを目で追っても私の憧れの人は載っていなかった。
とは言えさすがに有名事務所、アイドルの質もとても高い。
ギャルっぽい姉貴キャラ、
やたら背の高い不思議ちゃん、
ゴテゴテした黒衣装がセクシーな厨二病、
などの、勢いに乗っている2期・3期生。
最近売り出し始めたいくつかのユニット。
ハロウィンと謳いつつも、何でもござれのようで、
メイドからドレスまで様々な佇まい。
プログラムの後半には、「新人お披露目」とだけ書いてあった。
会場も程よくあったまってきて、いよいよだ。
一度静まり、そわそわとした空気が流れる。
最初に出てきたのは、どこか見覚えのある銀髪の少女。
メイクに気合が入っていて一瞬気付かなかったが・・・
あれは… 星さん、かな?
http://i.imgur.com/qT878ZX.jpg
学校であった時とは真逆の印象。
派手な衣装に、奇抜なメイク。
地を這うようなデスボイス。
血を吐くようなシャウト。
確かに、カッコイイ。
小梅のおばさんがうっとりしているのは、きっと昔を思い出しているのだろう。
彼女が曲を終えて、
魔女ユニット、仮装ユニットをはさみ、
いよいよトリ。
空気が冷える。スピーカーから不気味な囁きボイスが流れる。
真っ赤なラインと煙幕の中、登場したのは、
黒衣装と白い包帯に身を包んだ小梅だった。
http://i.imgur.com/t3V3eUd.jpg
ああ、やっぱり。
アイドルに、なったんだね。
いい人に出会えたんだね、手をとってもらえたんだね。
涙がただ頬を落ちる。
違う。
流したいのは、こんな涙じゃない。
マイク越しに可憐な歌声が響く。
あまりに強くて、あまりに響いて、
時々スピーカーとハウリングさえしている。
それさえも演出であるかのように、会場は熱狂し、
それに応えるように声を張り上げる。
小梅は、〈アイドル〉になったんだ。
ステージが遠い。
たった5m足らずの距離が、遠い。
私のもとを離れて、遠くへ――
目が、合った。
気のせいじゃない。
小梅が、こっちを見ている。
慌てて涙を拭ってもう一度目線を合わせると、
ちょっと下手くそなウィンクをしてくれた。
いつそんなこと覚えたんだろう。
歌いながらなのに、器用だ。
じっと見つめ合ったまま間奏に入る。
ダンスの振りの途中で、
何を思ったのか小梅がスカートをめくり上げた。
突然のファンサービスに沸く観衆。
でも私は、別の物に目が釘付けだった。
統一された衣装の中でただひとつ違和感を放つもの。
黒のドロワーズの腰元、包帯を巻いた右側についていた、
骸骨のストラップ。
小梅ちゃんのウインクだと…
右目があったのか……
>>110
そうですね、目隠れなので「下手くそなウィンク」と形容しときました。
12.
2度のアンコールが終わり、客席の明かりが点く。
外へと向かう流れに逆らい、
小梅のおばさんと合流して楽屋の方へと向かう。
懸念はしたがどうやら問題なく、通してもらえた。
扉の手前で待っていると、
小梅が、私の姿を見つけて、
飛び込んできた。
しっかりと受け止めて、抱きしめる。
ああ、なにから言おうか忘れてしまった。
全部吹っ飛んでしまった。
だから、とりあえず…
「小梅、お疲れ様」
「あ、ありがと…○○ちゃん、
わ、私…ちゃんと、アイドルらしく出来た…かな」
「うん、カッコ良かったよ。ねえ小梅、あのストラップ、」
「気づいて、くれた?」
「もちろん」
「お守り……の、代わり、なの」
「そう、」
「◯◯ちゃんが、ついてくれてるから、頑張らなきゃ、って」
「なんで」
「か、かっこいいとこ、みせたかった、の」
「そんな、」
「みて、欲しかったの、 …だいじな、友達だから」
こらえられなかった。
今度こそ、止めどなく溢れてくる涙を拭うこともせず、
抱き合ったまま、二人で泣いた。
ああ、私が莫迦だったんだ。
離れていくだなんて、勝手に勘違いして。
「○○ちゃん…あ、あの…あ、ありがとう」
「小梅」
「な、なに?」
「…こっちこそ、ありがと」
「うん」
「ずっと、見てるから」
「うん」
「ずっと、一緒だから、小梅が、望むなら」
「わ、私だって…ずっと、いっしょ」
「うん」
「だから… ずっと、みててね」
帰りがずいぶん遅くなってしまったので、
家に連絡を入れた後、
おばさんの厚意に甘えて、2度めのお泊りをさせてもらうことになった。
小梅と私は、話題が尽きるまでずっと、
それこそ一生分かと思うぐらい話し続けて…
抱き合って、眠りについた。
EP.
「白坂さーん、昨日のMスタ見たよー」
「あ、ありがと…」
「一緒に歌ってた子って、片方はウチの学校の子だよね?」
「う、うん……しょーちゃんは、3年の……A組、かな」
「もう一人の子は鳥人間の子だっけ?」
「あーこの間ヘリからダイブしてた子だよね」
「ねーねー白坂さん、なんで142'sってユニット名なの?」
「えと、……さ、3人とも、身長が、一緒だから」
「マジー!?てか、ちっちゃい子3人のカワイイユニットなのに迫力合ったよねー」
「そーそー。びっくりするほど歌がヤバかった」
「あぅ……」
「こらこら、小梅も困ってんだろ、その辺にしときなよ」
「えー?いっつも◯◯ばっかでずるいー」
「ウチらだってもっと小梅ちゃんとイチャイチャしたいのー。
あ、小梅ってよんでいいー?」
「え、……いい、よ?」
…
うちのクラスには、みんなのアイドルがいる。
まだまだ無名だけれど、大きな魅力を秘めている、
悪魔で天使な皆の癒しのアイドルが。
彼女は、寒がりでちょっとSで、ホラーとスプラッタが大好きな、
私の大切な友達。
{おわり}
終了です。
30分ぐらいしてから、HTML化?依頼出してきます。
乙乙、面白かった
乙
すげー良かった
いい話だった、掛け値なしに…
>>111
左様か、我が領域を陥れん単眼の魔女、恐るべし…(なるほどー、いや、想像したらすごいかわいかったから…野暮なこといってごめんね)
HTML化スレでのレス番が>>142だった…
狙ったわけじゃないけどちょっと嬉しい
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