ほむら「仲良くしましょう?」さやか「は?」 (201)
さやか「悪魔のあんたと仲良くなんて……」
さやか「っていうかあんた何してんの?」
ほむら「鍋よ」
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さやか「通学路で鍋してんじゃないわよ! あんた一体何を企んで……」
ほむら「あら、心外ねぇ。寒くなって来たから鍋でも食べようって。それだけよ」
ほむら「ほら、これコタツなのよ」
さやか「知らないわよ!……あんたコレ他の人に見えてんの?」
ほむら「今の私を認識できるのはあなただけにしておいたわ。このコタツに入ればあなたも認識されない」
ほむら「さあ、鍋パしましょう?」
さやか「する訳無いでしょ! 悪魔のあんたと……ていうかこれから学校だから!」
ほむら「……いいのかしら。ここであなたが断ったら」
さやか「!? まさか……」
ほむら「上条君のヴァイオリン部分の設定が、全てウクレレに書き変わることになるわ」
ほむら「うふふ、高木ブーの後継者として有名になれるわね」
さやか「や、やめろ! 恭介に関わるな!」
ほむら「あら、あなたウクレレを否定するの? ブーを否定するの?」
さやか「いや、ウクレレが駄目とかっていうんじゃなくて……」
さやか「そう! 勝手に恭介のことを……」
ほむら「だったらあなたは鍋するしかないわねぇ。美樹さやか?」
さやか「くそっ、朝っぱらから鍋なんて、この悪魔め……」
ほむら「ふふ、褒め言葉ね」
さやか「くそうあったかいなコタツ……どうなってんのよこれ」
ほむら「ほら、見なさいさやか。白滝がポン酢で黒く染まっていくわ」
ほむら「まるで世界の姿ね」
さやか「何言ってんのコイツ」
ほむら「……もしかしてマロニー派?」
さやか「……とっと済ませよう。何企んでんのかも分かんないし」
ほむら「どうしたのぉ? 早くしないと肉は全部私のものよ? 悪魔にそういう配慮はないのよ?」
さやか「誘ったなら配慮しろよ!」
ほむら「ふふ、春菊を食べなさい、さやか」
さやか「ふざけんな!」
ほむら「ほら椎茸」
さやか「食べるけどさあ!」
さやか「……無駄に美味しいな」
ほむら「あらどうしたの? 美味しかったの? 悪魔の鍋美味しかったの?」
さやか「うっざいわあ……」
さやか「うわ、人参がハート型にくり抜いてある……」
ほむら「そういうのはこだわる方なの」
さやか「知らねーよ」
…………
ほむら「あ、コンロのガスが切れたわね。さやか、替えて。そこにボンベあるから」
さやか「あんたのなんだから、自分で替えなさいよ」
ほむら「そんなこと言っていいの?」
さやか「……っ」
ほむら「早乙女先生を蝋人形にして結婚式場に安置するわよ」
さやか「ひどすぎるだろ! 先生に何の恨みがあんのよ!」
ほむら「恨みなんてないわ。でも先生の運命は、あなたに掛かっているのよ?」
さやか「この悪魔め……!」
…………
ほむら「ふふ、そろそろ楽しい鍋も終わりね」
さやか「結局最後まで付き合わされた……」
ほむら「さて……」
さやか「! あんたそれは……」
ほむら「分かってるくせに。水洗いしてぬめりをとったご飯よ」
さやか「まさか」
ほむら「〆よ!」
さやか「ぞ、雑炊まで!」
…………
ほむら「ごちそうさまぁ」
さやか「……」
ほむら「さて、学校に行きましょうか」
さやか「……あんたさあ、何がしたいの?」
ほむら「……さあ、何かしら?」
さやか「……あんたは」
ほむら「こんな時間に一緒に登校なんて、噂になったらどうしましょう?」
さやか「恐ろしいこと言うな!」
教室
ほむら「~♪」
さやか「……」
杏子「どーした、さやか。何か気になるのか?」
さやか「あ、いや大したことじゃ……」
杏子「あー、何だっけ暁美ほむら?」
さやか「ちょっ、あんまりあいつのこと……」
杏子「? そういや今日なんで一緒に来たんだよ」
さやか「鍋に付き合わされてね……」
杏子「はあ?」
さやか「まあ色々あって……ってこっち見てる!」
杏子「何か妙な感じの奴だよな」
さやか「……あんまり関わらない方が」
杏子「おい、見ろ! 何かでかいジュース飲んでるぞ! しかもグラスで!」
さやか「うわあ、本当だ……」
杏子「あんなの学食で売ってたか?」
さやか「多分自前だと思う」
ほむら(使い魔セレクトのドリンク、これ何味なのかしら)
ほむら(……多いわコレ)
ほむら(でも残したらあの子達が……)
まどか「……えっと、暁美さん?」
ほむら「!?」
杏子「吹いたぞ」
さやか「吹いたね」
まどか「!? あの、ごめんね!? 驚かせて……」
ほむら「き、気にしないで。気にしないで!」
ほむら「それで何か用かしら、まどか?」
まどか「……」
まどか「あのね、おかしいと思うかもしれないけど……」
ほむら「思わないわ」
まどか「あの、やっぱりここじゃなくて……」
ほむら「行きましょう、どこにでも」
まどか「じ、じゃあ……」
さやか「……」
杏子「出て行ったな」
さやか「……あいつ」
杏子「何だ?」
さやか「……なんでも無い」
杏子「?」
さやか「……」
杏子「出て行ったな」
さやか「……あいつ」
杏子「何だ?」
さやか「……なんでも無い」
杏子「?」
さやか「悪魔だって分かってるのに、まどかが近づくのを」
さやか「全然止める気にならなかった」
さやか「……」
杏子「そういやさあ、上条のコンサートって今日なんだろ?」
さやか「へ? あ、そうだよ」
杏子「やっぱ行くのか?」
さやか「当然じゃん! あたし恭介に席貰ってるんだから!」
杏子「何だよ、あたしの分も貰ってくれりゃあいいのに」
さやか「あんた寝るでしょ」
杏子「寝るだろうな」
さやか「……ま、これは私と仁美だけなの」
杏子「そういうもんか」
さやか「うん」
杏子「楽しんでこいよ」
さやか「……うん」
さやか「あとウクレレになってないか確認しないと」
杏子「!?」
夕方 コンサートホールに続く道
さやか「ちょっと遅くなっちゃったなあ」
さやか「ん、でも間に合うか……」
さやか(結局あの後まどかは帰ってこなかった)
さやか(……あの悪魔も)
さやか(止めないと、駄目だった。やっぱり……)
通行人1(女)「ねえ、見てあの子。すごい可愛くない?」
通行人2(女)「わ、本当だ。何ていうのアレ、ゴスロリ?」
通行人(男)「やべえ、すげえ美人だ……」
通行人(爺)「しかしあの娘、何を背負って生きておるんじゃ……」
さやか「……ん?」
さやか「何だろ、騒がし……」
ほむら「こんばんは、美樹さやか」
ほむら「素敵な夜になりそうね?」
さやか「……何してる」
ほむら「?」
さやか「何してるって言ってんの!!」
ほむら「こんなところにこの時間、目的はきっと、あなたと同じよね」
さやか「……恭介に何かするつもりなら」
さやか「あたしは……!!」
ほむら「しないわよ。興味もないわ」
さやか「……あんたの目的は何」
ほむら「若き天才ヴァイオリニストのコンサートよ? 私も聞いてみたいわ」
さやか「絶対嘘だろ」
ほむら「嘘、と言ったら信じるの? 私悪魔なのよ」
さやか「……もう良い。勝手にすれば」
ほむら「……」
さやか「あたしもう行くから」
ほむら「つれないのねえ……」
会場
さやか「で」
さやか「何であたしの席の隣な訳!?」
ほむら「いいじゃない、折角クラスメイトなのだし」
さやか「良くねーよ! クラスメイトの前に悪魔だろアンタ!」
ほむら「ウクレレ」
さやか「ちくしょー!」
さやか「ていうかここ、かなり良い席なんだけど、あんたチケット買ったの?」
ほむら「いいえ?」
さやか「やっぱりか……あんたのせいで誰かが追い出されたんだ……」
ほむら「いえ、普通に空席だったわ」
さやか「あれ? あんたがまた悪魔の力で改ざんしたんじゃ……」
ほむら「改ざんしたのは、この席が私の席になるということだけ」
ほむら「空席を貰っただけよ」
さやか「……」
ほむら「……まあ、天才と言ってもそうそう簡単に席埋まらないわよね」
さやか「止めろぉ! いらん現実を持ち込むな!」
さやか「この悪魔め!」
ほむら「……音楽で食べていくのは大変よね」
さやか「あああ」
ほむら「知り合いに買ってもらったりするのよね、チケット」
さやか「聞こえなーい。恭介はヴァイオリーン」
さやか「……あんたの私服、それなんだ」
ほむら「あら、褒めてくれるの?」
さやか「……まあ似合ってるのは認めるけどさ」
さやか「それ喪服なんじゃないの?」
ほむら「ゴスロ……」
さやか「いや何か黒いもん。あれでしょ、魔女ん時の」
ほむら「何よ、文句あるの?」
さやか「喪服で晴れのコンサートはないわぁ」
ほむら「はあ……」
ほむら「分かったわよ。全力の悪魔衣装でいくわ」
さやか「全力? ……待ってそれどんなのよ」
ほむら「背中がこう、大きく開いた……」
さやか「ほう」
ほむら「割と露出のある……」
さやか「ほほう」
ほむら「……」
さやか「それで?」
ほむら「……ほら、こうして赤い紐とかあしらったら喪服に見えない」
ほむら「ゴシックね」
さやか「おい、悪魔衣装はどうした」
ほむら「何のことかしら」
さやか「……あれか、恥ずかしいのか」
ほむら「……」
さやか「顔赤いぞー」
ほむら「だって」
さやか「いやー、いいと思うよ? あんた綺麗だし肌の色多めでも全然……」
ほむら「「「黙りなさい!!」」」
さやか「ぎゃああああ!! 何そのセルフエコー!!」
ほむら「リリィ呼んでやろうか」
さやか「わ、私が悪かったよ……」
さやか「……やっぱエロイ感じ?」
ほむら「……」
さやか「……」
ほむら「……エロいわ」
さやか「……頑張ったね」
さやか「で、悪魔さんよ」
ほむら「何よ。何でちょっと馴れ馴れしいの」
さやか「悪魔的にさあ、アヴェ・マリアとかアリなの?」
ほむら「? どういうことかしら?」
さやか「いやあれ聖歌みたいなもんでしょ? 悪魔が聞いたらしんどかったりすんのかなって」
ほむら「ばーか」
さやか「あ?」
ほむら「……だいたい私はそういう悪魔じゃないし」
さやか「まあそうだろうけど」
ほむら「まったく下らない……」
ほむら「知ってるかしら? あのグレゴリオ聖歌とかって半音の上げ下げがほとんどないのよ?」
さやか「シャープとかフラットとかの?」
ほむら「そう。不安定な音は悪魔を引き寄せる、って理由で」
さやか「へー」
ほむら「他にも妙に秩序的な構造で……」
さやか「……ほお」
ほむら「宗教音楽らしい……」
さやか「……それ調べたの?」
ほむら「……」
さやか「……」
ほむら「……悪魔として、勉強することはあるわ」
さやか「どんな悪魔だ」
ほむら「あー、もういい。始まれコンサート」
さやか「なんかコイツの対処法が分かってきた」
まもなく開演となります……
…………
さやか「……やっぱ良かったなあ、恭介の演奏」
さやか「またこれが聞けるなんて……」
さやか「って、あんたのやったことを……」
さやか「あれ、いない……?」
さやか「……」
仁美「さやかさん! やっと見つけましたわ!」
さやか「おー、仁美。良かったねコンサート」
仁美「ええ、それはもう……」
さやか「仁美は舞台の方で?」
仁美「ええ、さやかさんもいらっしゃれば良かったのに」
さやか「いーの。そういうのは彼女さんの特権でしょ?」
仁美「そんな……」
さやか「照れない照れない」
さやか「あー、そういやさあ、私の隣の……」
仁美「お隣? 誰もいらっしゃらなかったと思いますが……」
さやか「え? いやゴス服の……」
さやか「って、勘違い勘違い。気にしないで」
仁美「? 変なさやかさんですわ」
さやか「……」
帰り道
さやか「……結局私もこの世界が好きになりかけてる」
さやか「人間としての幸せ……」
さやか「だけど、私は……」
ほむら「ご機嫌ねぇ、美樹さやか?」
さやか「!? 出たな悪魔!」
さやか「あんた急にどっか……」
ほむら「コンビニのおでんも中々悪くないわね」
さやか「……何してんの?」
ほむら「おでん」
さやか「いや見りゃわかるけど」
ほむら「卵」
さやか「知らん」
さやか「悪魔がおでん食ってていいの?」
ほむら「ふふ、店員は新入りのアルバイトのようだった……」
さやか「あ?」
ほむら「散々に迷いながら、何度も注文を変えてやったわ……」
さやか「……」
ほむら「まさに悪魔の所行……」
さやか「あんた向いてないんじゃないの?」
ほむら「何よ」
さやか「あんたの中の悪魔のイメージが、アレだよね」
ほむら「私の悪魔ぶりにケチをつけるつもりかしら」
さやか「はあ……まあいいけど」
さやか「……あんたさあ、何で私につきまとうのよ」
ほむら「……」
さやか「監視のつもり? あんただったら私一人くらい指先一つで消せるんでしょ」
ほむら「瞬きで充分だわ」
さやか「だったら一々私の前で変なことする目的は何よ」
ほむら「……」
ほむら「……うぬぼれてるんじゃないかしら?」
さやか「何よそれ」
ほむら「私はあなた以外にも悪魔な交流をしているわ」
ほむら「あなたの相手なんて思いつきの戯れにすぎない」
さやか「! それって……!」
ほむら「そう、例えば巴マミ」
さやか「マミさんに何を……!」
ほむら「彼女の部屋に緑茶と和菓子をもって押し掛けたこともあるわ」
さやか「……」
ほむら「ケーキに紅茶のマミのこと。ショックだったでしょうね……ふふ」
さやか「……他には?」
ほむら「他?」
ほむら「そう、なぎさなんかも私の毒牙に掛かった……」
さやか「で、何したの?」
ほむら「何よその感じ」
さやか「いいから」
ほむら「……そうね、圧倒的な力の差を見せつけてやった、というとこかしら」
さやか「ほほう」
ほむら「……アイカツで」
さやか「……」
ほむら「資金力の差よ。所詮現実はそんなもの」
さやか「……」
ほむら「その上私のカードは全部くれてやったわ。正直興味ないし」
さやか「ふーん」
…………
なぎさ「聞いて欲しいのです! ゴスロリの綺麗なお姉さんからカードを一杯もらったのです!」
マミ「あら、本当にたくさん……ちゃんとお礼は言った?」
なぎさ「勿論なのです! でもなんだかお姉さんは……」
???「ふふふ、なんて悪魔なのかしら……」
なぎさ「すごいレアカードもあるのです!」
マミ「本当? 見せて!」
なぎさ「だめなのですー!」
マミ「もう!」
…………
ほむら「はああ、我ながら恐ろしい……」
さやか「コワイワーアクマコワイナー」
ほむら「私の魔なる気配に卵も染まっていくわ……」
さやか「ダシに染まってんだよ」
ほむら「ハフ、熱……」
まどか「……ほむらちゃん?」
ほむら「ハフッ!!」
さやか「ちょ、熱! 汁がかかる!」
ほむら「ななな、何かしらまどか。こんなところで」
ほむら「おでん?」
まどか「違うよ」
まどか「ちょっとコンビニで牛乳を……」
ほむら「そ、そう」
さやか「……」
ほむら「じゃ、じゃあ私はこれで」
まどか「待って」
ほむら「……どうかした?」
まどか「今日は下着」
さやか「!?」
まどか「ノーで来て」
さやか「!?!?」
ほむら「ええ……」
まどか「じゃ、私お使いがあるから」
まどか「二人ともバイバイ♪」
ほむら「ええ、さようなら……」
さやか「ばいばい……」
ほむら「じゃ、ばいば……」
さやか「待て待て待て! 説明してもらおうか! 何さっきのまどかの発言!」
ほむら「さあ、アメリカの風習じゃない?」
さやか「な訳あるか! あんたまどかに何したの!」
ほむら「私がまどかにされてるのよ!!」
さやか「!?」
ほむら「あ」
さやか「……どういうことよ。もう私あんたの銀の庭が分からん……」
ほむら「……今夜も私は」
ほむら「この下に何も着けず、まどかの寝室に行く」
さやか「はあ!?」
ほむら「……あの子もう思い出してるんじゃないかしら」
さやか「あんたまさか……」
さやか「……悪魔になったのに、もう主導権を」
ほむら「持ってかれたわ」
さやか「普通のまどかに」
ほむら「あっという間だったわ」
さやか「……」
ほむら「予定では、悪魔な私がものにする、筈だった」
さやか「されてんじゃん」
ほむら「さすがはまどかだわ……」
さやか「あんたもう悪魔止めたら?」
ここまで。
別の日 教室
早乙女先生「はい、じゃあこれで終わります。皆さん気をつけて帰ってくださいね」
早乙女先生「あと、暁美さんは明日こそ制服で来てくださいね」
ほむら「これ実は喪服なんですけど」
早乙女先生「ダメです♪」
まどか「怒られちゃったねー♪」
ほむら「……まどか、言った筈だけど」
まどか「?」
ほむら「私は悪魔。あなたは……」
まどか「ほむらちゃんが悪魔なら、私は神様かな?」
ほむら「!?」
まどか「?」
ほむら「……あの、まどか? 実は全部覚えてるとか……?」
まどか「何を?」
ほむら「えっと、あの……」
まどか「……何となくわかるんだ」
ほむら「……」
まどか「私とほむらちゃんの、関係性っていうか、立ち位置っていうか……」
ほむら(無意識のうちに、感じ取っているんだ……)
ほむら(私の罪、私の思い……)
ほむら(これが因果……)
まどか「明日は何を着てもらおうかなー」
ほむら(そういうところで私が逆らえない感じなのも!)
ほむら(今度は何を求められるのかしら。また体を見られる?)
ほむら(アメリカンな積極性がこんなところで発揮されるなんて……!)
ほむら「今はもう……」
ほむら「輝きと幸福と罪悪感と快楽しか見えない……!」
さやか「ノリノリじゃねーか!」
放課後
さやか「はあ……私はどうすりゃいいんだか」
さやか「ていうか、できることなんてあいつが悪魔だって覚えてることぐらいか……」
さやか「それもあいつのさじ加減なんだろうけど……」
杏子「おーい、何ぼんやりしてんだよ?」
さやか「ん、ああごめん。ちょっとね」
杏子「腹減ってんのか? だったら何か食おうぜ」
さやか「あんたがお腹へってるだけでしょ! 今日は服買いに行くんだってば」
杏子「あたしは服より飯だなー」
さやか「……言っとくけど、あんたの服だからね」
杏子「へ? あたしの?」
さやか「折角うちに居候してるんだから、ちょっとは女の子っぽい格好もさせてみようかなってさあ」
杏子「は、はあ? 似合わねえよそんなもん……」
さやか「まあまあ、あんた可愛いんだから遠慮しなさんな」
杏子「可愛いって、いやでもさあ……」
さやか「~♪」
杏子「ったくよぉ……」
店
さやか「こんなのどうよ?」
杏子「だからぁ、フリルとかあたしには……」
さやか「いいから着てみなって」
店員「試着はこちらですー」
杏子「ああ、畜生! 覚えてろよさやか!」
さやか「はいはい」
さやか「私も何か買おっかなあ……」
さやか「最近寒くなってきたし……」
さやか「すみません、私も試着室借りますー」
店員「どうぞごゆっくりー」
さやか「~♪」カーテンシャッ
「きゃあっ」
さやか「うわ、すみません! 気付かな……」
さやか「……あんた何してんの?」
ほむら「ま、また会ったわね、美樹さやか」
さやか「……今度は何のつもり?」
ほむら「……普通に買い物なのだけれど」
さやか「はあ?」
ほむら「あなたは今、試着中の私を覗いている」
さやか「……本当だ」
ほむら「早く閉めなさい」
さやか「あ、顔赤い」
ほむら「……」
さやか「いやー、まさか悪魔のした……」
ほむら「……!」
さやか「って、消えた!?」
さやか「まさか普通にいるとはね……」
……
杏子「やっぱ似合わねえよこんなの……」
さやか「お、終わった? 見せてよ杏子!」
杏子「……」
さやか「おー、いいじゃん! 可愛いって!」
杏子「あー、畜生!」
さやか「おお、そういう感じでもアリ!」
杏子「うるせー!」
店員「ありがとうございましたー」
さやか「ふふーん、良い買い物したね!」
杏子「覚えてろよ……」
さやか「さ、何か食べて帰ろっか」
杏子「当たり前だ!」
さやか「ふふーん、ふー……」
さやか「ん……」
ほむら「……」
さやか「……」
ほむら「今回は容赦しな……」
杏子「ん? 暁美ほむら?」
ほむら「……」
杏子「お前も買い物かなんかか?」
ほむら「杏子……」
さやか「……さっきのは悪かったよ。別にわざとじゃ」
ほむら「……ええ、そうね。仕方ないわ」
さやか「!?」
杏子「?」
ほむら「……ところで、あなたたちはこれから食事でしょう?」
さやか「え、うん。まあ」
ほむら「そこの裏に安くて美味しいレストランがあるわ。しかも今なら割引中」
杏子「へえ、うまいのか?」
ほむら「ええ、保障する」
さやか「……」
ほむら「是非一度行ってみるといいわ」
杏子「ふーん、どうするさやか」
さやか「……まあ、行っても良いけどさ」
ほむら「それじゃあ、私はこれで」
杏子「おー、また学校でな」
さやか「……」
杏子「どうした?」
さやか「怪しい……」
杏子「? 良いじゃん。折角だから行こうぜ?」
ほむら「行ったわね……」
ほむら「はい。今ここに集え、私の使い魔たち」
レストラン
杏子「へー、いい感じじゃん。でもこれ高いんじゃないか?」
さやか「いやこれ高級な……こともない。以外と安い」
杏子「入るぞー」
さやか「大丈夫かなあ……」
店員「いらっしゃいませ」
店員「どうぞ、窓際の席に」
さやか「うわ、すごい夜景……」
杏子「おー、これはあれだな。デートとかで女が喜ぶ奴だろ?」
さやか「デートねえ……」
杏子「へっ、王子様じゃなくて悪かったな」
さやか「ま、あんたも悪くないわよ」
杏子「んだよ、それ」
裏路地
ほむら「二人の食事は一時間くらいでしょう……」
ほむら「その間に」
ほむら「大通りをイルミネーションで飾り付ける!」
使い魔「「「 Ja ! 」」」
ほむら「……え?」
ほむら「どうしてこんなことを?」
ほむら「あの子には借りが……」
ほむら「……いいえ、甘い夢を見せるのは、いつだって悪魔の仕事よ」
使い魔「……」ツンツン
ほむら「? どうしたの?」
ほむら「デザイン? イルミネーションの?」
ほむら「……そこの本屋で調べなさい。いや、私知らないし……」
ほむら「よし、それじゃああなたたちは」
使い魔「「「?」」」
ほむら「パレードの用意を」
使い魔「「「!?」」」
ほむら「ほら、夢の国のあれみたいな、盛り上がる奴あるでしょう?」
使い魔「「「……」」」
ほむら「花火も!」
使い魔「「「「 Ja !」」」」
レストラン
杏子「なんだ? 外が妙に騒がしいな」
さやか「またなんかやってんじゃないでしょうね……」
杏子「ま、いいか。あたしは食うぞー」
さやか「本当おいしそうに食べるよね、あんたは」
店員「ごゆっくりー」
大通り
ほむら「すっごいチカチカする……」
ほむら「イルミネーションってこんなだったかしら……」
使い魔「?」
ほむら「もうちょっと明るさを抑えましょうよ……」
使い魔「……」
ほむら「何故ザクロを取り出したの? 文句あるの?」
レストラン
店員「ありがとうございました」
杏子「やー、食った食った」
さやか「普通に安くて美味しかった……」
杏子「あいつの言う通りにしてよかったな!」
さやか「まあねー、でもまだ何か信用……」
杏子「!」
杏子「おい見ろさやか! すげえことになってる!!」
さやか「はあ? 何が……」
さやか「うわお……」
ほむら「以外といい感じになったじゃない。さすが悪魔な私……」
使い魔「Schauen Sie!」
ほむら「あら、パレードの準備……」
ホムリリィ「……」
ほむら「……え?」
使い魔「?」
ほむら「……リリィを引き立てて、あなたたちが周りで踊る?」
ほむら「……え?」
杏子「おい、さやか! 向こうでパレードだってよ!」
さやか「はいはい。全く、あんたにはロマンチックも何もないんだから」
……
ほむら「……うん」
ほむら「ハロウィンホラーナイト的な何かということにしましょう」
ほむら「あとリリィは手枷外しましょう」
ほむら「見ていて心が痛いわ」
大通り
ホムリリィ「~♪」
使い魔「~♪」
杏子「おー、何かよく分からんけど、本格的じゃん?」
さやか「いやこれ……まあ……」
さやか(アイツ何してんの!?)
杏子「さやかー、写真撮ろうぜ」
さやか「……ま、いいか!」
ほむら「ふふふ……」
使い魔「 Ja !」
ほむら「後は仕上げね」
イルミネーション広場
杏子「……綺麗だな」
さやか「だねえ……」
杏子「何かさ、信じられねえよ」
さやか「……何が?」
杏子「分かんねーけどさ……」
杏子「こんな風にさやかと歩いてるのが……」
さやか「……杏子」
杏子「へへっ、何言ってんだろなあたし」
さやか「……」
ほむら「ふふ……」
使い魔「Schauen Sie!」
ほむら「二人が手を握った?」
使い魔「Ja !」
ほむら「よし。今よ、花火!」
使い魔「Ignite!」
杏子「おお……花火だ」
さやか「どこの馬鹿がこんなことしてんだか……」
杏子「でも悪くねえじゃん?」
さやか「……そうだね」
杏子「けどこんなんあるって、前から言ってたか?」
さやか「さあ……、あれでしょ」
さやか「悪魔のきまぐれってやつ」
杏子「はあ?」
しばらく後 銀の庭
ほむら「みんなご苦労様。おかげでまあ、上手くいったのでしょう」
使い魔「「「「Ja ! 」」」
ほむら「今日は無礼講よ」
使い魔「「「「……!」」」」
ほむら「……」
ほむら「あの、無礼講って」ビシャ
ほむら「ザクロ投げ放題って意味じゃないのよ?」
ほむら「……」ビシャビシャ
翌日 通学路
ほむら「……」
さやか「……」
さやか「……どういうつもりだったの」
ほむら「!」
ほむら「……っ」
さやか「ちょ、何で消えるのよ!」
さやか「今回くらいは普通にお礼……」
さやか「言っちゃ駄目か……私は」
…………
別のある日
三年 教室
マミ「はあ……」
クラスメイトA「マミちゃんどうしたの? 元気ないけど」
マミ「いえ、少し喧嘩というか……」
クラスメイトB「なあに、恋人?」
マミ「ち、違います!」
クラスメイトA「本当かなあ?」
クラスメイトB「あ、そう言えばさあ、何かおまじないあったよね」
マミ「おまじない?」
クラスメイトA「あー、恋の願い事が叶うんだっけ?」
クラスメイトB「そうそう。何でもメガネと砂時計と銃を置いて、三回回りながらホムホムって」
マミ「……唱えるの?」
二年 教室
ほむら「は? 恋の?」
使い魔「 Ja ! 」
ほむら「何それ、広まってるの?」
ほむら「……馬鹿馬鹿しい。付き合ってられないわ」
ほむら「え、マミ?」
ほむら「メガネ買った?」
ほむら「……本当に?」
ここまで。
ほむほむのどこがかたいって?
>>117
杏子「頭」
まどか「関節」
マミ「意思」ドヤァ
さやか「胸」(ゲス顔)
さやか「って訳でさあ、本当もう……」
杏子「ははは、マジくだらねーの」
さやか「……ん?」
ほむら(噂を広めたのはあなた?)
さやか「……」
さやか(ちーがー……わない!)
ほむら(……!)
さやか(まあ、あんたも少しは人のために働きなさいよ)ドヤア
杏子「どした?」
さやか「なんでもなーい」
杏子「なんだよー教えろよー」
ほむら「……」パンパン
さやか(手を叩いた!? 何かが起こ……)
さやか(らない……?)
ほむら「はあ……まあ、これも一興ね……」
ほむら「それにしても、マミも何を考えてるのかしら」
杏子「おい、そろそろ飯食いにいこうぜー」
さやか「おー、私今日パン買って来たんだ」
杏子「ふーん。どんなのだよ」
さやか「新発売だったんだー♪ このクリームとフルーツの……」
さやか「あれ……」
杏子「それ、ただの」
杏子「乾パンじゃねーか……」
さやか「あ、悪魔め……」
放課後 マミの部屋
マミ「メガネと砂時計、それにモデルガンだけど拳銃……」
マミ「揃えてしまったわ……」
マミ「ここに菱形の紋章を描き、無限の時間と意志を表現する……」
マミ「回転」
マミ「そして祈りの言葉」
マミ「ほむほむほむほむ……」
ほむら「本当にやってる……」
マミ「焔よ立ちのぼれ……光よ……」
ほむら「アレンジを加えるな」
マミ「来れ!!」
ほむら「……」
ほむら「顔は隠していきましょうか……」
ほむら「シーツと喪服スタイルで」
マミ「……来れ!!」
ほむら「……来たわよ」
マミ「キャー!?」
ほむら「何よ!?」
マミ「ままま、まさか本当に恋の使者がくるなんて……!」
ほむら「……」ゲンナリ
ほむら「あの、一応言っておくけど、私は悪魔だから」
マミ「!」
ほむら「まあ、今回はあなたの話を聞いてもいいけれど」
マミ「成る程ね……」
マミ「図らずも私は悪魔との契約に際しているということ……」
マミ「悪魔……!」
ほむら「何でちょっと嬉しそうなのよ……」
マミ「でも随分綺麗な姿をしているわね……あなたはさしずめ堕天使というところ?」
ほむら「……」
マミ「そうね、ルシファー、と呼ばせてもらうわ」ワクワク
ほむら「……はい」
ほむら「それであなたの願い事は何? 恋愛関係なんでしょう?」
マミ「……恋愛、というわけではないわ」
ほむら「何よもう」
マミ「人間関係、いえ……」
マミ「……仲直りしたい子がいるの」
ほむら「ああ、またあなたはそういう感じなのね」
マミ「?」
マミ「?」
ほむら「気にしないで。それでその相手は?」
マミ「……」
ほむら「なぎさ?」
マミ「ど、どうしてわかるの!?」
ほむら「悪魔だもの」
マミ「……その通りよ。あの子と喧嘩をしてしまって……」
ほむら「年下の子と何してるのよ……」
マミ「話を、聞いてくれる?」
ほむら「気が滅入るわね……」
マミ「ことの発端は一週間ほど前にさかのぼるわ……」
ほむら「……」
…………
…………
ほむら「……つまりまとめると」
ほむら「なぎさが自分とばかり遊んで同年代の子と疎遠になっているようで気になる」
ほむら「そう言ったらなぎさが怒った」
ほむら「あなたは寂しいけれど、なぎさのためを思って突き放してしまった」
ほむら「それで一週間、交流がない」
ほむら「で、いいのかしら」
マミ「ええ……」
ほむら「あなたはどうしたいの?」
マミ「……」
マミ「あの子にはちゃんと小学校の友達を作ってもらって」
マミ「それで私とも姉妹のような関係でいてくれたらって……」
ほむら「別にもう、なぎさにべったりでいいじゃない」
マミ「良くないわよ!」
ほむら「良くないの?」
マミ「同年代の友達がいないって寂しいのよ!?」
ほむら「!?」
マミ「あの子にそんな思いはさせないわ……!」
マミ「だから、ルシファー」
マミ「あなたにお願いするわ」
マミ「……私がいくら言っても、あの子は私に嫌われたって思うばっかりだから……」
ほむら「それ悪魔に頼むようなことかしら……」
マミ「いえ、私もそんなつもりなかったんだけど、あなたが本当に来るから……」
ほむら「こんな儀式の準備までして?」
マミ「だって、こういうのワクワクするじゃない?」
ほむら「……まあ、いいわ。今回だけは付き合ってあげる」
マミ「いいのかしら」
ほむら「……ちゃんと報酬は用意しておくのよ」
マミ「! や、やっぱり乙女の生き血とかそういう……!」
ほむら「いらない」
マミ「それじゃあまさか、魂……」
ほむら「ああ、もう報酬もいらないわ……タダでいい……」
マミ「え……」
翌日 小学校
ほむら「学校をずる休みしてしまったわ……私は何て罪深いのかしら♪」
ほむら「小学校は、今は休み時間のようね……」
ほむら「……行きましょうか」
運動場
小学生A「せんせー、シーツを被ったゴスロリのお姉ちゃんがいるよー」
小学生B「あの人誰ー?」
先生「ふ、不審者……?」
ほむら「!? い、いえ、私は悪魔!」
ほむら「学校くらい平然と侵入するわ!」
先生「……失礼ですが、どちら様でしょう。部外者の方はご遠慮頂いていますが」
ほむら「……」
ほむら「あ、これ入校許可証です……」
ほむら「シーツで見えませんでしたね……」
先生「ああ、すみません。失礼しました!」
ほむら「いえ、こちらこそ教育研究に協力頂いて……」
ほむら「ふ、ふふふ、悪魔の力で許可証を偽造するなんて、私ってなんてデビル」
ほむら「これで心置きなく校内を歩けるわ……」
小学生C「せんせー、あの人なんなのー?」
小学生D「ねーせんせー」
運動場 片隅
なぎさ「……」
ほむら「……確かになんだか浮いているわね」
ほむら「他人と決定的な違いがあるものね、小学生なら当然かしら」
ほむら「……」
「ねー、おねーさん遊ぼー」
「遊ぼー」
「お姉さんが鬼ね!」
ほむら「鬼? いや私は悪魔……」
「逃げろー!」
「三十秒数えてね!」
ほむら「鬼ごっこ? 悪魔が? するわけ無いでしょう……」
「やーい、鬼さんこちらー」
「悪魔さんビビってるー」
ほむら「……」
ほむら「……」バサッ
「鬼さんに翼が生えた!?」
「リアル鬼ごっこ!?」
ほむら「……いーち、にー」
「逃げろー!」「すごーい!」
ほむら「ふふふ、恐れ戦きなさい。悪魔に追われるという現実に!」
「キャー!」
「捕まっちゃったよー」
「ここ安全地帯だからセーフ!」
ほむら「な!? 聞いてないわよ……!」
「セーフー!」
ほむら「……」
「!? あれ……?」
ほむら「安全地帯なんて、この世界から消し去ってやったわ……」ドヤア
「大人げないよー!」
なぎさ「……」
なぎさ「楽しそうなのです……」
先生「なぎさちゃんも遊んでもらったら?」
なぎさ「いいのです……」
先生「……そっか。気が向いたらまた……ね?」
なぎさ「はい……」
なぎさ(なぎさはみんなとは違うのです……)
なぎさ(みんなみたいには遊べないのに……)
なぎさ(……)
ほむら「マミのことを考えているのかしら」
なぎさ「!」
なぎさ「あなたは……」
ほむら「見なさい、最早この校庭で私の手にかからなかったのはあなただけ」
「飛ぶなんてはんそくー」「ずるだずるだー」「せこいぞー」
ほむら「だーまーりーなーさーいー」
ほむら「さあ、逃げ惑いなさい」
なぎさ「……いやなのです」
ほむら「チーズあげるから。裂けるチーズよ」
なぎさ「知らない人からチーズを貰ってはだめなのです」
ほむら「マミに言われたの?」
なぎさ「……?」
「お前だけが頼りだぞ!」「なぎさちゃん頑張って!」「鬼ごっこだよ!」
なぎさ「……」
ほむら「あなたがこんなだと、マミが安心してあなたとベタベタできないでしょう」
なぎさ「え……?」
ほむら「マミはあれで弱いところもあるんだから、あなたがしっかりしないと」
なぎさ「私が……?」
ほむら「むしろマミがあなたに甘えられるように」
なぎさ「そんなの、おかしいのです」
ほむら「マミを心配させちゃだめでしょう?」
なぎさ「……」
「行けー!」「なぎさー!」「鬼ずるいー!」
なぎさ「……」
先生「なぎさちゃん、あなたならできるわ!」
なぎさ「なぎさに……」
なぎさ「任せるのです!」
なぎさ「悪魔なんかに負けないのです!」
ほむら「ふふふ、さあ。あなたも私の手に捕われる時が来たわ……」
なぎさ「そうはいかないのですー!」
ほむら「ふふ」
ほむら「……なんだか良い学校ね」
なぎさ「ここまでおいでなのです!」
ほむら「でも、逃がす訳にはいかない」
ほむら「悪魔の名に賭けて……!」
キーンコーン カーンコーン
ほむら「あ」
夕方 街
ほむら「……」
さやか「!」
さやか「悪魔が入校許可証をもって黄昏れている……?」
ほむら「タイムアップとは言え、悪魔が鬼ごっこに負けるというのはどうなのかしら……」
さやか「……」
マミ「あら、美樹さん?」
さやか「! マミさん?」
マミ「こんなところで奇遇ね」
さやか「ははは、そうですね」
マミ「……あの子?」
さやか「は?」
マミ「不思議な雰囲気の子ね。人を惹付けるような、突き放すような……」
さやか「いやー、あれはそんなもんじゃ……」
マミ「友達?」
さやか「ま、まさか!」
マミ「うふふ、まあそういうことにしておきましょう」
さやか「いやマジ勘弁してください」
マミ「それじゃ、私はこれで。チーズを仕入れておかないと」
さやか「なぎさですか? あんまり甘やかすのはどうかと思うなあ」
マミ「今日はいいの」
さやか「?」
…………
ほむら「……」
さやか「よう悪魔さん」
ほむら「美樹さやか」
さやか「おまじないにはちゃんと付き合って上げてんの?」
ほむら「悪魔が付き合うと思うの? そんなだからあなたは乾パンなのよ」
さやか「乾パンにはあんたがしたんだろうが! ていうか私のパン返せよ!」
ほむら「あのパンはもうこの世界には存在しないわ。残念だったわね」
さやか「……おいしかった?」
ほむら「ええ、甘さとフルーツのバランスがとて……」
ほむら「何のことかしら」
さやか「完全に食ってんじゃん! これは許せないわ……」
ほむら「いい気味よ。美樹乾パン」
さやか「誰よ!」
後日 教室
杏子「今朝のマミは何か機嫌良かったな」
さやか「なーんか、段々なぎさと親子みたいになってない? あの二人」
杏子「いいんじゃねーの?」
ほむら「……」
ほむら「マミから報酬と称して、変なシルバーアクセサリーを貰ってしまった……」
ほむら「悪魔から見てもこれはない……マミはカッコイイと思ってこれを?」
ほむら「……」
まどか「ほむらちゃん、それ何?」
ほむら「! まどか、これはあの」
まどか「……もしかしてまだ悪魔とか言って、そんなの買ったの?」
ほむら「いえ、違うの。これは……」
ほむら「いや待って。私は悪魔だって」
まどか「ふーん。じゃあ今度悪魔さんに似合うアクセサリーを買いに行こっか。私が選んであげる」
ほむら「本当! あ、いや、あなたは悪魔に近づくべきじゃ……」
まどか「悪魔さんは鎖とか似合うかな?」
ほむら「く、鎖?」
まどか「次は裂かれないように首輪で……ってなんでもないよ」
ほむら「まどか?」
まどか「楽しみだねー」
ほむら「……」
ここまで。
別の日
ほむら「……良い朝ね」
ほむら「こんな日はベッドから出るのが億劫だわ」
ほむら「ふふ、怠惰も悪魔には美徳かしら?」
ほむら「で、何で私はベッドに縛りつけられてるの?」
ほむら「……」
ほむら「知ってる天井だわ……」
ほむら「ここは多分、まど」
ほむら「いえ、そんな筈はないわね」
ほむら「さっさと脱出しましょう」
まどか「あ、ほむらちゃん起きてる? おはよう♪」
ほむら「まどかー……」
ほむら「あの、これはどういう……?」
まどか「それはもう、お仕置き?」
ほむら「……えっと」
まどか「ほむらちゃんの気持ちは分かってるよ? いつだって私のためにだって」
ほむら「!」
まどか「それが正しいとかいけないとか、私は言いたくない」
ほむら「ごめんなさいなんて、言わないわ……」
まどか「うん、分かってる」
ほむら「……」
まどか「私はね、ほむらちゃん」
ほむら「滅ぼして」
まどか「!」
ほむら「あなたに叛逆した悪魔よ。全て思い出したあなたなら、滅ぼすことができる」
ほむら「私を……」
まどか「……」
ほむら「何もためらうこヒヤァっ!?」
まどか「……」
ほむら「なな、何故氷を私の服の中に!?」
まどか「ほら、ほむらちゃん悪魔衣装は背中丸出しでしょ」
ほむら「それがなんのヒュエ!?」
まどか「冷たい?」
ほむら「当たり前でしょう!」
ほむら「……」
まどか「どうして私がほむらちゃんを滅ぼさないといけないの?」
ほむら「……そうじゃないなら、私は何度でも」
まどか「あなたはほむらちゃん」
ほむら「……?」
まどか「私は鹿目まどか」
ほむら「……」
まどか「争うことなんてある?」
ほむら「だけど!」
まどか「ほら、泣かないで」
ほむら「泣いてない!」
まどか「……何度だって私に叛逆すればいい」
まどか「私も何度でも受け止めちゃうよ」
ほむら「……ふざけないで」
まどか「今回は不意を突かれちゃったけどねー」
ほむら「ふざけないで!」
まどか「……ふざけてなんてないよ」
まどか「私のためにここまでしてくれる、ここまで思ってくれる」
まどか「そんな『叛逆』なら私は何度でも受け止める」
ほむら「……」
まどか「それで、私は何度でもほむらちゃんを制圧しちゃうんだ」
ほむら「……悪魔を甘くみてるのね」
まどか「神様にそんなこというの?」
ほむら「……」
まどか「……」
ほむら「あなたのことは、幸せにする。どんな手を使っても」
まどか「ありがとー。ミートゥーだよ」
ほむら「……それはアメリカ設定の名残かしら」
まどか「さて、それでお仕置きだけど」
ほむら「……え?」
まどか「? それは続けるよ?」
ほむら「あの、私たちは神と悪魔として相争いながら……」
まどか「一回戦はほむらちゃんの奇襲勝ち。で、今回は私の逆襲」
ほむら「あの……」
まどか「でもほむらちゃんを裂いちゃうのは違うと思うし……」
まどか「だからお仕置きです」
ほむら「……あの、一つ質問だけど」
まどか「何かな?」
ほむら「この世界はどうするつもり? あなたが勝ったなら、また改変されるはず」
まどか「あ、もう改変しちゃった」
ほむら「!?」
まどか「ここはほむらちゃんの世界の最後の場所」
ほむら「まどかの部屋……」
まどか「ここをお仕置きルームとします」
ほむら「あなたの世界で、私は……」
まどか「魔獣を倒しながら、私に迫るチャンスを探すことになるかな♪」
ほむら「悪魔の私よ。意外とすぐに三回戦になるわ」
まどか「私は負けないよー?」
ほむら「もし仮に私が勝ったら?」
まどか「また改変だね」
ほむら「……」
まどか「じゃ、いただきます♪」
ほむら「!? 待って、まだ余韻というか、感慨みたいなものを……」
まどか「だめー」
ほむら「ま、まどかぁー!?」
まどか「ウェヒヒ」
ほむら「そんなとこまで!?」
まどか「♪」
ほむら「! あふぅ……あ……ダメ……」
…………
…………
宇宙的概念時間で八時間後
ほむら「も、もう私……」
まどか「さすがの悪魔さんも限界かなー?」
ほむら「ひゃんっ!? もう……」
ほむら「まどかぁ……」
ほむら「……」
まどか「……眠っちゃった」
まどか「自分の世界じゃ、ほとんど眠れなかったのにね」
まどか「……ほむらちゃん」
まどか「……」
まどか「……一人ぼっちになっちゃ駄目だよ」
まどか「私がいるからね」
新世界 河川敷
ほむら「……」
ほむら「さやかもなぎさもいない」
ほむら「まどかがいない」
ほむら「鹿目一家にはあの小さな弟さんだけ」
ほむら「……」
杏子「よお、ほむら」
ほむら「杏子」
杏子「んだよ、辛気くさい顔しやがって。また『まどか』なのかよ」
ほむら「そういうあなたは……」
ほむら「いえ、何でも無い」
杏子「……」
マミ「二人とも、何をしてるの? 今日の魔獣退治の打ち合わせ?」
杏子「まあ、そんなとこだ」
ほむら「……」
マミ「だったら私も混ぜて欲しいわ。一人で家にいるなんて寂しいでしょ」
ほむら「……」
杏子「一番年上が何言ってんだよ……」
マミ「ケーキだってあるわよ?」
杏子「食うけどさ」
マミ「暁美さんも」
ほむら「……ごめんなさい。私行くところがあるの」
マミ「?」
ほむら「だから」バサァ
マミ「翼!?」
杏子「お前……!?」
ほむら「あなたたちは待ってなさい」
ほむら「ちょっと叛逆してくるわ」
おわり
おわりです。読んでくださった方、ありがとうございました。
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